説明

蓄電装置及びその製造

【課題】 加熱による他の部材への影響を回避しつつ電極体ユニットの正極又は負極と他の接続用端子とを接合して蓄電装置を製造する方法と、そのような方法によって好適に製造される蓄電装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の蓄電装置1は、正極13及び負極を有する電極体ユニット5を少なくとも一つ備える蓄電装置であって、前記電極体ユニットを収容し得る電極体ユニット収容部11が形成されている枠体3と、該枠体に保持された端子7であって前記電極体ユニットと電気的に接続される一又は二以上の端子とを有し、前記端子のうちの少なくとも一つの端子と前記電極体ユニットの正極及び/又は負極とが加熱を伴う手段によって接合されており、その接合部と前記枠体とに近接して蓄熱部28が備えられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの電極体ユニットが端子と電気的に接続されて構成される蓄電装置(複数の電極体ユニットが接続されて構成されるモジュールタイプを含む。)及びその製造技術に関する。特に、電極体ユニットと枠体に保持される端子(正極端子、負極端子、及び複数の電極体ユニットを含む場合にはユニット間接続用端子を含む。)とを加熱を伴う手段によって接合した接合部を有する蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の電池(例えばリチウム二次電池)やキャパシタ等の蓄電素子は、電気を駆動源とする車両、パソコンその他の電気製品等に搭載される電源として利用される。
このような蓄電素子を車両等に搭載する場合、耐衝撃性の向上や形状の安定化等の観点から、一又は二以上の蓄電素子を目的に応じた種々の形態の枠体に収容して成る蓄電装置が利用されている。
例えば、特許文献1には、外部接続用端子(即ち正極端子及び負極端子)に接続された発電要素(蓄電素子)がフランジフレーム(枠体)に収容されて成る薄型電池が記載されている。この薄型電池では、樹脂製枠体に保持された端子の一部と蓄電素子を構成する電極体ユニットの一部(正極又は負極)とを適当な溶接手段によって接合しつつ、該枠体に該電極体ユニット(延いては蓄電素子)を収容することにより構成されている。
この文献に記載されるように、この種の電池(蓄電装置)において枠体に保持される接続用端子と電極体ユニットの正極又は負極との接続は、通常の溶接により行われている。電池(蓄電装置)等における端子の溶接技術に関連する従来技術の一例として、特許文献2に記載の技術が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−87432号公報
【特許文献2】特開平2−56853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来行われる溶接のような加熱を伴う手段によって接続用端子と電極体ユニットとを接合する場合、それらの接合部分のみならずその近傍、具体的には、枠体や他の部材(例えば電池では蓄電素子(セル)に含まれ得るセパレータ)にも溶接時の熱が伝導され得る。かかる枠体やセパレータは、典型的には樹脂や繊維等により構成され、耐熱性がそれほど高くはない。このため、溶接時における加熱温度が高すぎたり或いは加熱時間が長すぎたりすると、熱による影響、例えば枠体その他の熱可塑性部材に変形が生じる虞があった。従って、溶接等の加熱を伴う手段による接合作業において、端子と電極体ユニットとの接続に十分な加熱温度に設定しつつも、当該加熱に基づく他の部材への影響を最小限に抑えることが要求されていた。換言すれば、溶接のような加熱を伴う手段によって端子と電極体ユニットとを接合する場合、接合部分近傍にある蓄電装置構成部材に対する熱の影響を軽減して変形等を防止すべく接合作業において細心の注意を払い、或いは、接続(加熱)条件を厳格に制御することが必要であった。即ち、従来、加熱を伴う接続作業自体が煩雑であった。
【0005】
本発明は、かかる従来の課題を解決すべく開発されたものであり、その目的とするところは、加熱による他の部材への影響を回避しつつ電極体ユニット(正極及び/又は負極)と他の接続用端子とを接合することを包含する蓄電装置製造方法を提供することである。また、他の目的は、そのような製造方法に好適に用いられ得る蓄電装置構築用枠体を提供することである。また、他の目的は、そのような方法及び材料によって製造され得る蓄電装置であって電極体ユニットと他の接続用端子とを接合する際の熱による変形その他の影響を受けずに所望する形状及び/又は性能(蓄電機能)を備えた蓄電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される枠体は、正極及び負極を有する電極体ユニットを少なくとも一つ備える蓄電装置を構築するための枠体である。ここで開示される枠体には、上記電極体ユニットを収容し得る電極体ユニット収容部が形成されており、該収容部の近傍には上記電極体ユニットのいずれかと電気的に接続され得る一又は二以上の端子が保持されている。そして、該端子のうちの少なくとも一つの端子には上記枠体に近接して蓄熱部が備えられていることを特徴とする。
本明細書において「蓄電装置」とは、所定の電気エネルギーを取り出し得る蓄電素子(典型的には電池(セル)或いはキャパシタ)を備える装置をいい、特定の蓄電機構に限定されない。リチウム二次電池その他の二次電池(単電池(セル)をいう。)、或いは、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)は、ここでいう蓄電装置に包含される典型例である。また、これら蓄電素子を電気的に接続した状態で複数配列させた蓄電素子集合体、即ち、蓄電モジュールも本蓄電装置に包含される。
また、本明細書において「電極体ユニット」とは、少なくとも一つずつの正極及び負極を含み、電池又はキャパシタ(蓄電素子)の主体を成す構造体をいう。
また、本明細書において「枠体」とは、ここで開示される蓄電装置を構成する一部材であって一又は複数の電極体ユニットを物理的に保持(収容)可能な部材をいい、その形状に特に制限はない。大まかにみてフレーム、ボックス或いはケースと視認されるような形状の電極体保持部材は、ここでいう枠体の典型的な形状(外形)であり得る。
【0007】
かかる構成の枠体では、上記接続用端子が蓄熱部を備えたことにより、蓄熱部の近傍で加熱を伴う手段によって端子と電極体ユニットの正極及び/又は負極とを接合しても、その際に生じる熱が蓄熱部に蓄えられ、結果、枠体及び該蓄熱部の近傍(換言すれば端子と電極体ユニットとの接合部分の近傍)に配置される他の部材に過剰の熱が伝導されるのを防止することができる。このため、かかる枠体を用いることによって、当該枠体、及び蓄熱部(端子と電極体ユニットとの接合部分)の近傍に配置される他の部材に対して、上記接合の際に生じる過剰な熱による変形その他の影響を与えることなく所望する形状及び/又は性能(蓄電機能)を備えた蓄電装置を製造することができる。また、ここで開示される枠体を用いると、端子と電極体ユニットとの接合作業における熱的な制御が容易となり、これらの接続に係る作業効率を向上させることができる。
【0008】
本発明によって提供される蓄電装置は、正極及び負極を有する電極体ユニットを少なくとも一つ備える蓄電装置である。この蓄電装置は、ここで開示される枠体、即ち上記電極体ユニットを収容し得る電極体ユニット収容部が形成されている枠体と該枠体に保持された端子であって上記電極体ユニットと電気的に接続される一又は二以上の端子とを有している。そして、上記端子のうちの少なくとも一つの端子と上記電極体ユニットの正極及び/又は負極とが加熱を伴う手段によって接合されており、その接合部と枠体とに近接して(好ましくは接合部と枠体との間)に蓄熱部が備えられていることを特徴とする。
かかる構成の蓄電装置では、端子と電極体ユニットの正極及び/又は負極との接合時において生じた過剰な熱による影響を上記蓄熱部の存在によって回避しているため、所望する形状と性能を具備することができる。
【0009】
ここで開示される蓄電装置及び蓄電装置構築用枠体として好ましい一つの態様では、上記蓄熱部が上記端子と一体に形成されていることを特徴とする。
かかる構成によると、接続用端子に加えられた熱をスムーズに蓄熱部に伝導させ、吸収させることができる。また、蓄熱部を接続用端子と一体に形成することにより、蓄熱部を別途に装備する手間が省け、蓄電装置の製造工程(組立工程)が簡易化され得る。
【0010】
この態様において、特に蓄熱部が接続用端子と同じ材料であることが好ましい。この場合には、熱容量が等しいため、熱の伝導が特に好適に行われ得る。即ち、蓄熱部近傍における接合部分において生じた熱が速やかに蓄熱部に伝導されるとともに、蓄熱部近傍における端子以外の部材(材質が異なる他の部材)への熱の伝導速度を遅くし、該部材に伝わる熱を低減することができる。また、同じ材料であることにより、蓄熱部付き端子を容易に製造することができる。
【0011】
ここで開示される蓄電装置として好ましい他の一つの態様では、上記接合部は溶接によって形成されていることを特徴とする。
電極体ユニットと端子との接合手段として溶接を採用する場合、溶接時に発生する高熱が他の部材へ伝達され易く、熱の影響を受けやすい。本発明によると、電極体ユニットと端子とが溶接によって確実に接合されるとともに、その周囲の部材への溶接時における熱の影響を抑止し、信頼性の高い蓄電装置を提供することができる。
【0012】
この態様において、好ましくは、上記接合部において、二箇所以上のスポット溶接部位を有することを特徴とする。
ここで開示される枠体に保持される端子は蓄熱部を備えるため、当該端子の被接合部分(以下「接合予定部分」ともいう。)を溶接する際に発生する熱が他の部材(枠体等)に伝わり難い。従って、蓄電装置の構築時に、端子と電極体ユニットそれぞれの接合予定部分において二箇所又はそれよりも多い箇所を同時に、例えば直列に電流を通しつつスポット溶接を行うことができる。
また、かかる溶接は、蓄熱部が配置されない方向側から所定の熱を加えることにより行うことができる。例えば、枠体を背にして電極体ユニット収容方向(開放されている方向)から熱を加えることができる。このため、効率よく溶接作業を行うことができる。
【0013】
ここで開示される蓄電装置及び蓄電装置構築用枠体として好ましい他の一つの態様では、上記端子における接合部(又は接合予定部分)が銅を含むことを特徴とする。
銅は溶接時に発生する熱による影響を受け難く、本発明を適用する金属材料として好適である。
【0014】
また、ここで開示される蓄電装置及び蓄電装置構築用枠体として特に好ましい態様では、枠体が種々の熱可塑性樹脂その他の樹脂材料から成る樹脂成形品であることを特徴とする。枠体が樹脂製である場合には、特に熱による影響を受け易く、変形等が起こり易い。このため、本発明を適用するのに好適な枠体である。
【0015】
また、本発明は、他の側面として、蓄電装置の製造方法を提供する。即ち、本発明によって提供される製造方法は、正極及び負極を有する電極体ユニットを少なくとも一つ備える蓄電装置の製造方法である。そして、該方法は、一又は二以上の電極体ユニットを用意する工程と、上記電極体ユニットを収容し得る電極体ユニット収容部が形成されている枠体であって該収容部の近傍には電極体ユニットのいずれかと電気的に接続され得る一又は二以上の端子が保持されているとともに該端子のうちの少なくとも一つの端子には枠体に近接して蓄熱部が備えられている枠体を用意する工程と、上記電極体ユニットを上記電極体ユニット収容部に収容する工程と、上記蓄熱部を備えた端子における上記蓄熱部に熱伝導可能な部位と電極体ユニットの正極及び/又は負極とを加熱を伴う手段によって接合する工程とを包含する。
かかる製造方法によれば、ここで開示される蓄熱部を備えた枠体を用いることによって、上記のような本発明に係る蓄電装置を製造することができる。
【0016】
好ましくは、上記接合工程において、上記蓄熱部を備えた端子における該蓄熱部に熱伝導可能な部位と上記電極体ユニットの正極及び/又は負極との接合予定部分に対して、枠体を背にして電極体ユニット収容方向から熱が加えられる。
予め枠体に配置された端子と電極体ユニットとを接合するために、電極体ユニット収容方向から熱を加えることによって、接合作業をより簡便に行うことができる。また、電極体ユニット収容方向と反対側の部材(特に枠体)に対する熱の影響を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、端子及び蓄熱部の構成、並びに端子と電極体ユニットとの接合方法等)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、電極体ユニット、正極及び負極間に挿入されるセパレータの構成、並びに電解質の組成)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0018】
本発明の蓄電装置及び該蓄電装置構築用枠体は、端子と電極体ユニット(具体的には電極体ユニットの正極又は負極)との接合部と枠体とに近接して(好ましくは接合部と枠体との間に)蓄熱部が備えられていればよく、種々の材料や構成をその目的のために適用し得る。
例えば、電池その他の蓄電装置(或いは蓄電モジュール)に備えられる電極体ユニットは、所定の電力を貯蔵及び放出し得る蓄電素子構成要素(或いは発電素子構成要素ともいえる)たり得るものであれば特に限定されない。かかる電極体ユニットの形状やサイズには特に制限はなく、所望の形態、サイズをとり得る。典型的な蓄電素子としては、種々の形態の一次電池(例えばリチウム一次電池、マンガン電池)、二次電池(例えばリチウム二次電池、ニッケル水素電池)、或いはキャパシタ(例えば電気二重層キャパシタ)を挙げることができる。例えば、本発明をリチウム二次電池その他の二次電池(又は二次電池モジュール)に適用する場合の好適な態様の電極体ユニットとしては、正極と負極と更にセパレータとを積層又は捲回して成る電極体ユニットが挙げられる。典型的には、電極体ユニットと共に種々の電解質(電解液、固体電解質等)が備えられるが、かかる電解質の内容は電池の種類に応じて異なり得る。例えば、非水系電解液を備えたリチウム二次電池を蓄電素子とする蓄電装置は、本発明によって提供される蓄電装置(蓄電モジュール)の好適な一態様である。
【0019】
本発明の電池その他の蓄電装置を構成する枠体自体、或いは電極体ユニット収容部のサイズや形状は、収容対象の電極体ユニットの種類、サイズ、形状等によって異なり得る。耐衝撃性材料であり、且つ、収容(保持)する対象の蓄電素子(例えば単電池)を構成する電解質や蓄電素子の使用による反応生成物に対して耐性がある材料から形成された枠体が好ましい。典型的には、絶縁性材料を選択することが好ましい。合成樹脂材料は、比較的製造コストが低く、所望する形状に成形加工することが容易であり上述した条件を好適に満たすものが多い。このような理由で合成樹脂は枠体の構成材料として好ましく用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が好ましく選択される。また、PPS(ポリフェニレンスルフィド樹脂)、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、PES(ポリエーテルスルホン樹脂)等を用いてもよい。枠体は、これらの樹脂から選択される単一の樹脂材料から構成されたものでもよいし、二種以上の樹脂が混合された材料から構成されてもよい。
また、枠体に収容される電極体ユニットの電気的な性能を下げない範囲で副材料を添加してもよい。例えば、種々の安定剤(例えばフェノール系、ステアリン酸系の熱安定剤)、金属不活性剤(例えばヒドラジン系の金属不活性剤)、耐衝撃強化剤(例えばセラミックス粉体)、ラジカル反応停止剤を適宜配合することができる。
なお、枠体は材料に応じて選択される一般的な方法で製造又は成形加工されればよく、本発明の実施にあたって特別なプロセスは要求されない。例えば材料として合成樹脂を用いた場合、材料の性質(例えば、熱可塑性、熱硬化性の硬化特性)に応じて射出成形、熱成形(真空成形、圧縮空気成形)等の一般的な成形加工技法が採用される。
【0020】
次に、本発明の蓄電装置(枠体)に保持される端子について説明する。蓄電装置に備えられる端子としては、蓄電装置(具体的には該装置に収容される電極体ユニットの正極及び負極)と外部電気回路(電気機器)とを接続する少なくとも一対の外部接続用端子(典型的には装置全体の総正極端子及び総負極端子)が挙げられる。また、電極体ユニットを複数配列して収容する蓄電装置(即ち蓄電モジュール)の場合には、かかる外部接続用端子の他に、枠体に収容される電極体ユニット間を電気的に接続するためのユニット間接続用端子(以下「装置内接続用端子」ともいう。)が挙げられる。これら接続用端子のうちの少なくとも一つに、対応する蓄熱部が備えられておればよく、本発明の蓄電装置(又は枠体)は、該装置(又は枠体)が有する端子の全てにそれぞれ蓄熱部が備えられているものに限られない。枠体に近接する位置に接合部(溶接部等)が形成される何れか一の端子(例えば装置内接続用端子)のみに蓄熱部が備えられたものであってもよい。
なお、外部接続用の正極端子及び負極端子は、蓄電装置と外部の電気回路とを電気的に接続し得るものであればよく、その形状や組成に特に限定はない。同様に、装置内接続用端子は、二つの電極体ユニット(即ち蓄電素子)間を電気的に接続し得るものであればよく、その形状や組成に特に限定はない。枠体と一体に形成し易い形状、例えば略板状或いは略棒状の端子が好適である。また、使用され得る端子は典型的には金属製である。銅、アルミニウム、金、銀、白金、ニッケル等が端子を構成する金属材料として挙げられる。負極端子として多用される銅製の端子は、蓄熱部を備える端子の好適例である。或いは、端子は、2種類以上の成分(或いは合金)で構成されていてもよい。例えば、二つの電極体ユニットを直列に接続する装置内接続用端子にあっては、正極側接続部分がアルミニウム製であり、負極側接続部分が銅製であるものを好適に使用することができる。
【0021】
なお、これら端子を枠体と一体に形成する手段としては、材料に応じて選択される一般的な成形加工法を適用すればよく、本発明の実施にあたって特別なプロセスは要求されない。例えば、インサート加工法、圧入加工法、カシメ加工法、加熱圧着(ホットプレス)加工法等が挙げられる。枠体が合成樹脂製であり、端子が金属製である場合、所定形状の端子を型内に配置して樹脂成形体を製造するいわゆるインサート加工(インサート成形)法が特に好ましい。
【0022】
本発明の蓄電装置(枠体)に備えられる蓄熱部は、枠体に近接する部位であって、加熱を伴う手段によって所定の電極体ユニットと接合され得る端子の接合予定部分から熱伝導可能な部位に備えられる蓄熱可能な(即ち熱を蓄え得る)部材から構成されておればよく、その形状(容積等)や組成は、蓄電装置(枠体)の用途や形状に応じて異なり得る。例えば、枠体と一体に成形された端子の一部に接触させて蓄熱性能の高い部材(例えば金属片、セラミック片)を接合予定部分近傍の熱伝導可能な部位に配置してもよい。
或いは、後述するいくつかの実施例のように、端子の一部(典型的には接合予定部分の近傍)を蓄熱部としてもよい。この場合には、蓄熱部を構成する別途の部材を用意する必要が無く、部品点数の増大を防ぐことができる。
【0023】
ここで開示される典型的な電池その他の蓄電装置(或いはモジュール)は、本発明に係る蓄熱部を備える枠体を使用すること以外、従来の電池その他の蓄電装置(或いはモジュール)を構築する場合と同様のプロセスによって構築、製造することができる。
典型的には、蓄熱部を備える端子と枠体の所定の収容部位に収容された電極体ユニットの正極又は負極とは、加熱を伴う手段によって接合される。かかる加熱を伴う手段としては特に制限はないが、金属製の端子と電極体ユニットの正極及び/又は負極とを接合する場合には、種々の様式の溶接(例えばシリーズスポット溶接、ダイレクトスポット溶接、インダイレクトスポット溶接、パラレルギャップ溶接等のスポット溶接)が好ましい。なお、溶接に限られず、例えばハンダ付けのような手段もここでいう加熱を伴う手段に包含される。
好ましい態様は、後述する実施例のように、枠体本体を背にして蓄熱部を備えた端子と電極体ユニットの正極及び/又は負極とを一方向(典型的には電極体ユニット収容方向)から加熱してこれら被接合部材同士を接合する。この態様は、シリーズスポット溶接のような一方向から溶接ヘッド(電極チップ)を接合予定部分に当てて溶接する方法によって好適に実施することができる。
【0024】
一又は二以上の電極体ユニット(延いては蓄電素子)を枠体に収容して成る蓄電装置(モジュール)の好適な一形態として、枠体を水分バリア性の高いフィルムで包装したいわゆるフィルム外装型の電池その他の蓄電装置が挙げられる。使用される外装フィルムとしては、従来のフィルム外装型蓄電装置(典型的には二次電池)において使用されているものであれば特に限定することなく用いることができる。例えば、リチウム二次電池等の外装体として従来使用されているラミネートフィルムを用いることができる。好ましくは高融点樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)系樹脂)から構成された外面(保護)層と、金属箔(例えばアルミニウム、スチール)から構成されたバリア層(ガスや水分を遮断するバリア層)と、熱融着性樹脂(比較的低融点である樹脂、例えばエチレンビニルアセテート、或いはポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂)から構成された接着層との三層構造を有するラミネートフィルムを好適に用いることができる。このような三層構造ラミネートフィルムは、適当な加熱圧着手段(例えばヒートプレス機)を使用することによって、接着層同士を容易に接着(融着)することができる。また、この種のラミネートフィルムは、絞り加工その他の一般的な加工(典型的にはプレス加工)によって容易に凹部を形成することができるため、電極体ユニット形状に適合して外装させることができる。特に好ましいラミネートフィルムとしては、ラミネートフィルムの内側材質(接着層)が枠体と同じものが挙げられる。例えば、枠体とラミネートフィルムの内側材質(接着層)が共にポリプロピレンであることが好ましい。この構成によれば、枠体とラミネートフィルムとを容易に熱融着することができる。尚、フィルム外装手段としては、このようなラミネートフィルムに限定されず、蓄電装置を外装する用途に用いることができる種々の他のフィルムを用いることができる。
【0025】
以下、本発明に関する好適ないくつかの実施例を図面を参照しつつ説明するが、本発明をかかる図面に示すものに限定することを意図したものではない。
【0026】
<第一実施例>
先ず、図1及び図2に基づいて第一実施例に係る蓄電装置1を説明する。本実施例に係る蓄電装置1は、フィルム外装型のリチウム二次電池である。
図1は、ラミネートフィルムによって外装する前(即ち、ラミネートフィルムを除いた状態)の蓄電装置1を示す側面図である。図2は、図1の枠体3及び正極端子7のII‐II線断面図である。図1に示すように、本実施例に係る蓄電装置1は、主に、枠体3と、電極体ユニット5と、正極端子7及び負極端子9とから構成されている。
【0027】
本実施例に係る電極体ユニット5は正極シート(正極)と負極シート(負極)をセパレータと共に積層し、さらに正極シートと負極シートとをややずらしつつ捲回して作製される一般的な捲回型電極体ユニットである。かかる捲回型電極体ユニットの捲回方向に対する横方向の一方の端面には、上記のようにややずらしつつ捲回された結果として、正極シートの端の一部が捲回コア部分(即ち正極シート(正極)と負極シート(負極)とセパレータとが密に捲回されている部分)からはみ出しており、それらはみ出し部分を束ねた部分(集束部35)が形成され、当該部分の先端がこの電極体ユニット5全体の正極13を構成している(図2参照)。同様に、捲回型電極体ユニットの捲回方向に対する横方向の他方の端面には、上記のようにややずらしつつ捲回された結果として、負極シートの端の一部が捲回コア部分からはみ出しており、それらはみ出し部分を束ねた部分(集束部)が形成され、当該部分の先端がこの電極体ユニット5全体の負極15を構成している。これら正極13及び負極15がそれぞれ後述する正極端子7及び負極端子9と電気的に接続される。
尚、かかる電極体ユニット5の構成自体は本発明を制限するものではなく、従来使用されている種々の材料を用いて構成されておればよい。例えば、正極シートは長尺状の正極集電体の上にリチウム二次電池用正極活物質層が付与されて形成され得る。正極集電体にはアルミニウム箔等の金属箔が好適に使用される。正極活物質は従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種又は二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、LiMn、LiCoO、LiNiO等を挙げることができる。他方、負極シートは長尺状の負極集電体の上にリチウム二次電池用負極活物質層が付与されて形成され得る。負極集電体には銅箔等の金属箔が好適に使用される。負極活物質は従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種又は二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム含有遷移金属酸化物や遷移金属窒化物等を挙げることができる。正負極シート間に使用される好適なセパレータシートとしては多孔質オレフィン系樹脂で構成されたものが挙げられる。
【0028】
本実施例に係る枠体3は合成樹脂により構成されている。特にラミネートフィルムとの接着性に優れ且つ剛性な樹脂(例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン製)であることが好適である。図1及び図2に示すように本実施例に係る枠体3はその外形が厚み方向と長手方向の長さが顕著に異なる筐体構造である。その一方の側面には、外周部分を残した中央部分において、奥行き方向(厚さ方向)に窪む電極体ユニット収容用の凹部11(以下「電極体ユニット収容部」と略称する。)が設けられている。そして図1及び図2に示すように、かかる電極体ユニット収容部11にその開口方向から電極体ユニット5を収容する。このように枠体3に電極体ユニット収容部11を設けて電極体ユニット5を収容することにより、電極体ユニット5が物理的に保護され、外側からの応力による変形、破損等を防止することができる。このため、信頼性の高い蓄電素子を構成することができる。
【0029】
この枠体3との一体成形(インサート成形)によって、本実施例に係る後述する蓄熱部を備えた一対の端子である薄板形状の外部接続用正極端子7と外部接続用負極端子9とが、該枠体3の電極体ユニット収容部11の近傍にその一部を埋設した状態で保持されている。
即ち、図1及び図2に示すように、正極端子7は、枠体3の前端部17の厚さ方向ほぼ中央に配置され、その一端部21は電極体ユニット収容部11において露出している一方で、他端部19は枠体3の前端部17から外方に突出している。また、負極端子9は、正極端子7と向かい合うようにして枠体3の後端部23の厚さ方向ほぼ中央に配置され、その一端部27は電極体ユニット収容部11において露出している一方で、他端部25は枠体3の後端部23から外方に突出している。通常の電池と同様、かかる正極端子7はアルミニウム製であり、負極端子9は銅製である。
【0030】
そして、電極体ユニット5の正極13と枠体3の外部接続用正極端子7とが接合されているとともに、電極体ユニット5の負極15と枠体3の外部接続用負極端子9とが接合されている。即ち、電極体ユニット収容部11において露出した正極端子7の一端部(接合予定部分)21と電極体ユニット5の正極(具体的には電極体ユニット5の上記捲回部分から引き出され束ねられた正極集電体の端部)13とが接合されている。一方、正極端子7と向かい合うようにして、電極体ユニット収容部11において露出した負極端子9の一端部(接合予定部分)27と電極体ユニット5の負極(具体的には電極体ユニット5の上記捲回部分から引き出され束ねられた負極集電体の端部)15とが接合されている。
【0031】
かかる形態によって、枠体3に保持された外部接続用正極端子7及び外部接続用負極端子9における電極体ユニット収容部11に露出した一端部21,27を、それぞれ、電極体ユニット収容部11に収容された電極体ユニット5の正極13及び負極15と接続し得、且つ、前端部17(前端面)及び後端部23(後端面)から引き出された外部接続用正極端子7及び外部接続用負極端子9それぞれの他方の端部19,25を図示しない外部回路(典型的には電源回路)と接続することができる。
【0032】
正極端子7は、図1のII−II線断面図である図2によく示されるように、電極体ユニット5の正極13と接合される一端部21が一部折り返され密着して重ねられている。即ち、一端部(接合予定部分)21は、端子の隣接する部分に折り返されて重ねられたことにより、当該部分(折り返された二重部分)の端子の厚さはその他の部分のほぼ2倍に形成されている。ここで、正極端子7の先端部分であって折り返されて接合予定部分21と重ねられている部分が本実施例に係る蓄熱部28を構成する。また、図には示していないが、負極端子9も同様に端子の一端が一部折り返され重ねられて蓄熱部を形成している。
【0033】
図2に示すように、枠体3の電極体ユニット収容部11は、電極体ユニット収容部11内に露出した正極端子7の一部並びにその上に電極体ユニット5の正極13の一部を載置する端子載置部29が形成されている。かかる端子載置部29は、電極体ユニット収容部11内においてその厚さ方向のほぼ中央に形成される水平部31と、該水平部31から電極体ユニット収容部11の底面30に向かってほぼ一定に緩やかに傾斜するスロープ部33とから構成される。
そして、水平部31において、正極端子7を電極体ユニット収容部11内の厚さ方向ほぼ中央に保持する。さらに、スロープ部33において、電極体ユニット5の正極側集束部35を保持する。また、その断面図を示さないが、電極体ユニット収容部11には、負極端子9を載置する端子載置部も同様に形成されている。
【0034】
図1に示すように、本実施例に係る枠体3の上面37には、底面39に向かって窪み(凹部)41が形成されている。本実施例においてはかかる凹部41が排気路41を構成している。即ち、枠体3の外面をラミネートフィルムで覆う(封止する)ことにより、枠体本体上面37とラミネートフィルムとの間に凹部41に対応する空間即ち排気路41が形成される。この排気路41は、枠体上面37の縁部を除く中央寄りの部分において長手方向に連なるように形成されている。
【0035】
さらに、図1に示すように、排気路41と電極体ユニット収容部11との間には、ガス透過孔45が形成されている。そしてガス透過孔45の排気路41側の端部には、ガス透過膜47が配置されている。ガス透過膜47は、ガスのみが透過可能であり、固体及び液体(電解質等)の透過を阻止し得る。かかる構成により、本装置(リチウム二次電池)1の使用時において電極体ユニット5が収容された電極体ユニット収容部11において発生したガスは、ガス透過孔45から全て排気路41に透過される。
【0036】
排気路41は、図1に点線で示すように、前端部(端面)17において、上面37から一旦底面39側に略垂直に曲がり、前端部17に設けられた排気弁(圧力リリーフバルブ)51と連結される。即ち、電極体ユニット収容部11から発生したガスは、排気路41を通過し、蓄電装置1に付加がかからないように排気弁51から排出される。排気路41に排気弁51を設けることにより、蓄電装置1内(例えば排気路41内)の圧力上昇を防止し、ラミネートフィルムの溶着部へのダメージを軽減することができる。
【0037】
また、図1に示されるように、電極体ユニット収容部11の上面37には、横方向略中央に、電解質注入孔53が形成されている。即ち、蓄電装置1を組み立ててラミネートフィルムにて電極体ユニット収容部11を外装後、電解質注入孔53から電極体ユニット収容部11内に所定の電解質(ここではリチウム二次電池用の組成の非水電解液)を注入することができる。具体的には、電解質注入孔53に図示しない電解質注入針を刺し込んで電極体ユニット収容部11に電解質を注入する。注入後、電解質注入針を引き抜くことによって、電解質注入孔53は再び密閉される。かかる目的に適する弾性部材を枠体3の所定部位に配置することによって電解質注入孔53が構成されている。
【0038】
次に、本蓄電装置1の組み立て手順を説明する。まず、枠体3の電極体ユニット収容部11に、図1に示すように電極体ユニット5を収容する。具体的には、枠体3の側面方向に開口した電極体ユニット収容部11に、正極端子7及び負極端子9と電極体ユニット5の正極13及び負極15とがそれぞれ電気的に接続されるように電極体ユニット5を配置・収容する。本実施例の蓄電装置1(枠体3)によれば、電極体ユニット収容部11に電極体ユニット5を配置・収容することによって、容易に当該電極体ユニット5は位置決めされ、且つ、電極体ユニット5と正極端子7及び負極端子9とを電気的に接続することができる。
【0039】
次いで、電極体ユニット5の正極13と正極端子7とを一般的な所謂シリーズスポット溶接技法に基づいて接合する。即ち、これらを重ね合わせた接合予定部分において、正極13の露出面側(図2の上方向)から二つの溶接ヘッド(電極チップ)により同時に加圧し、該電極チップ間に直列に電流を流し、二箇所の溶接部55を同時に形成することができる。同様に、電極体ユニット5の負極15と負極端子9とを二箇所の溶接部56において接合する。
かかるシリーズスポット溶接では、一方向(電極体ユニット収容方向)からの溶接作業(加熱)により溶接することができるため、枠体3の電極体ユニット収容部11が電極体ユニット収容方向と反対側(即ち、他の側面側)に開口していなくても(即ち、枠体自体によって閉ざされていても)溶接作業が可能である。このため、蓄電装置1を強度的に保護しつつ、作業性が良好である。
【0040】
また、本実施例では、外部接続用端子(正極端子7又は負極端子9)と電極体ユニット5(正極13又は負極15)との接合部(溶接部55,56)と、枠体3との間に蓄熱部28が配置された結果、溶接作業により生じる熱が蓄熱部28に蓄えられ、枠体3に直接高い熱が伝導されるのを防止することができる。即ち、蓄熱部28に一旦熱が蓄えられることにより、熱が枠体3に伝わるまでの時間が遅延し、典型的には枠体3を構成する樹脂成形体が影響を受け難い温度程度の弱い熱エネルギーしか枠体3に伝わっていかない。さらには、接合予定部分21から蓄熱部28に積極的に熱が移行するため、セパレータのような電極体ユニット側の熱に弱い部材に直接高い熱が伝導されるといったリスクも軽減することができる。
従って、かかる蓄熱部28を設けることによって、溶接によって端子7,9と電極体ユニット5とが接合されているにも拘わらず、枠体3本体をはじめ、端子、電極体ユニット(例えばセパレータ)等の蓄電装置1を構成する部材が熱による影響(変形等)を受けておらず、所望する形状及び性状を維持した蓄電装置1であり得る。
【0041】
次いで、図示しないが、ラミネートフィルムによって枠体3の全体を覆うようにして外装する。使用するラミネートフィルムには予め前端部17から突出する正極端子7及び排気弁51が貫通し得る穴と、後端部23から突出する負極端子9が貫通し得る穴とが形成されている。そして、枠体3(装置1)内部の液密性が保持されるように、枠体3本体を構成する樹脂とラミネートフィルム(溶着部)とを上面37を除いて熱融着する。尚、ラミネートフィルムの熱融着手段としては特別な方法を要さず、一般的な加熱手段(例えばヒートプレス機)によって行うことができる。
フィルム外装後、電解質注入孔53からリチウム二次電池用電解質を注入し、電極体ユニット収容部11に収容された電極体ユニット5に所定量の電解質を配置する。最後に、枠体3の上面37をラミネートフィルムによって熱融着等によって封止することによって、蓄電装置1の組み立て(構築)が完成する。尚、かかる電解質注入路の構成及び電解質注入プロセスは、従来のリチウム二次電池の製造で行われている手法と同様でよく、本発明を特徴付けるものではない。
【0042】
なお、ここで注入される電解質は従来からリチウム二次電池の電解質として使用されるものであれば特に制限なく使用し得、本発明を特徴付けるものではない。典型的には液状(例えば非水電解液)或いは典型的にはゲル状であるポリマー電解質を用いる。例えば、ジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)の混合溶媒(例えばDEC:ECが7:3の質量比である混合溶媒)にリチウム塩として1mol/LのLiPFを溶解した非水電解液を好適に使用することができる。
【0043】
<蓄熱部に係る他の実施例>
図3〜図6に基づいて蓄熱部の形態に関する他のいくつかの実施例を説明する。蓄熱部としては、例えば、図3〜図5に示すように、端子を折り曲げずにその接合(溶接)部を他の部分に比べて二倍の厚さに一体成形(好適には鍛造成形)したものであってもよい。即ち、図3に示すように、外部接続用端子101の接合予定部分に隣接して形成された蓄熱部103は、電極体ユニット105の正極又は負極107接合側と反対側(即ち枠体方向)に向かって凸状に厚くなる形状であり得る。
また、図4に示すように、外部接続用端子111の接合予定部分に隣接して形成された蓄熱部113は、電極体ユニット115の正極又は負極117接合側に向かって凸状に厚くなる形状であってもよい。
或いは、図5に示すように、外部接続用端子121の接合予定部分に隣接して形成された蓄熱部123は、電極体ユニット125の正極又は負極127接合側及びその反対側の両方に向かって厚くなる形状であってもよい。
【0044】
さらに、図6に示すように、蓄熱部133は、外部接続用端子131とは別に用意された板状その他の形状の蓄熱用部材であって、電極体ユニット135の正極又は負極137と端子131との接合予定部分に接して配置されたもの(或いは予め接合されたもの)でもよい。この場合には、蓄熱部133は、外部接続用端子131と同質材料から成る部材であってもよく、端子131と異質の材料であってもよい。端子131と適合性のよい熱容量の高いものを使用して蓄熱効果をより高めることができる。
【0045】
以上に説明(図示)した蓄熱部103,113,123,133の厚さは、一例を示したものにすぎず、蓄電装置の構成や大きさ、用途等に応じて、蓄熱部の実際の厚さや該厚さと端子の厚さ(接合に係る部分)との比率は異なり得る。
例えば、図7に示すように、蓄熱部143は、外部接続用端子141が電極体ユニット145の正極又は負極147と接合する方向のみならず、該接合方向と略垂直な方向であってもよい。図示するように、蓄熱部143は、端子本体と一体に形成された肉厚部分であって枠体142の端部144と正極又は負極147との間に形成されていてもよい。
【0046】
<第二実施例>
蓄電装置の第二実施例として蓄電モジュール201を図8に基づいて説明する。本実施例に係る蓄電モジュール201は、第一実施例と同様の電極体ユニットを複数備えて成るリチウム二次電池を構成するフィルム外装型の電池モジュールである。
図8はラミネートフィルムによって外装する前(即ち、ラミネートフィルムを除いた状態)の側面図である。
本実施例に係る蓄電モジュール201は、上記第一実施例において一つの電極体ユニット5を用いたのに対し、計四つの電極体ユニット205,207(但し図中奥側に配置される二つのユニットは図示されていない)を用いている。即ち、本蓄電モジュール201は、主に、枠体203と、四つの電極体ユニット205,207(図中奥側の二つは図示されず)と、三つのユニット間接続用端子(装置内接続用端子)215,217(図中奥側の一つは図示されず)と、一対の外部接続用端子である総負極端子213及び総正極端子220とから構成されている。ここで、三つの装置内接続用端子215,217(図中奥側の一つは図示されず)、並びに総負極端子213及び総正極端子220には、上記第一実施例と同様、隣接する電極体ユニットの正負いずれかの電極との接合部に近接して蓄熱部が備えられている。
【0047】
枠体203は、上記第一実施例と同様の材料から構成され、その外形が厚み方向と長手方向の長さが顕著に異なる長板状の筐体構造であり、後述する総正極端子220及び総負極端子213並びに排気弁297が配置される前端部(前面)257(以下「外部接続用端部(端面)」ともいう。)からみて長手方向に延びる両側面221には、図8に示すように、それぞれ奥行き方向に窪んだ電極体ユニット収容部225,227が並んで2箇所ずつ、枠体3の長手方向への中心を背中合わせにして合計4箇所設けられている。図示するように、これら電極体ユニット収容部225,227の開口部は矩形状であり、枠体3の側面(長手方向に対して横方向)から、電極体ユニット205,207をコンパクトに枠体3内に位置決めし、配置することができる。
【0048】
また、図8に示すように、枠体3の一方の側面221に並ぶ2箇所の電極体ユニット収容部225,227、及び他方の側面に並ぶ2箇所の電極体ユニット収容部(図示せず)の間には、両収容部の境界に相当する隔壁部235がそれぞれ形成されている。該隔壁部235内には、縦方向においてほぼ中央部に、薄板状の装置内接続用端子215が枠体本体と一体となって配置されている。これら装置内接続用端子215は、各電極体ユニットの正極に接続されるアルミニウム製端子と各電極体ユニットの負極に接続される銅製端子とを溶接によって一体化した部材である。即ち、各装置内接続用端子215の正極側(端子の長手方向の概ね半分)はアルミニウムで構成されており、負極側(端子の長手方向の概ね半分)は銅で構成されている。このように正極側端子と負極側端子とを一体化した接続端子を用いることにより、バスバー等の接続部材を別途必要とせずに電極体ユニット205,207を直接接続することができる。図示されるように、装置内接続用端子215は、正極側と負極側との接合部が隔壁部235によって被覆(埋設)されると共に、その両端部239,241がそれぞれ電極体ユニット収容部225,227内において隔壁部235から枠体203外方にははみ出さずに露出している。即ち、この露出した装置内接続用端子215の正極側の端部及び負極側の端部が、電極体ユニット収容部225,227に収容された状態の電極体ユニット205,207の正極205b及び負極207aと電気的に接続され得る構成となっている。
【0049】
一方、図8に示すように、枠体203の外部接続用端部(端面)257とは反対側の後端部247側において、接続端子217(ここでは一つ)が枠体203の内部において縦方向略中央に枠体203の一方の側面221から他方の側面に向かって(即ち幅方向に)回り込むように配置されている。この接続端子217は、上述の隔壁部235に配置された装置内接続用端子215と同様、その中心部即ち正極側及び負極側の溶接部は後端部247に被覆(埋設)されているとともに両端部249についてはそれぞれ対応する電極体ユニット収容部227において枠体203外方にはみ出さずに露出している。即ち、この露出した一方の端部249及び他方の端部が、それぞれ、一側面の電極体ユニット収容部227及び他の側面の電極体ユニット収容部に収容された状態の電極体ユニット207の正極207b及び他側面の電極体ユニットの負極(図示せず)と電気的に接続され得る構成となっている。
【0050】
さらに、図8に示すように、枠体203の外部接続用端部(端面)257において、薄板形状の総負極端子213及び総正極端子220が枠体203の内部において電極体ユニット収容部225(図中奥側は図示せず)から外部接続用端部(端面)257に向かって配置されている。この総正極端子220と総負極端子213は、上述の装置内接続用端子215,17と同様、その一端部259は電極体ユニット収容部225において枠体203外方にはみ出さずに露出し、他端部263,265は外部接続用端部(端面)257からその前方に引き出されている。かかる形態によって、電極体ユニット収容部225に露出した一方の端部259を電極体ユニット収容部225に収容された電極体ユニット205の負極205a(図中手前の側面221側)又は正極(図中奥の側面側であって、図示せず)と接続し得、且つ、外部接続用端部(端面)257からその前方に引き出された他方の端部263,265を図示しない外部回路(典型的には電源回路)と接続することができる。また、総正極端子220と総負極端子213は相互にオフセットとなる位置、具体的には一方の側面寄りでやや上方に総正極端子220が露出・配置され、他方の側面221寄りでやや下方に総負極端子213が露出・配置されている。このような水平または鉛直方向に揃わず、互いにずれ(偏差)のある位置に配置されることによって、総正極端子220と総負極端子213との間の距離が大きくなり、これら端子213,220を他の電気回路(端子)と接続する作業が容易となる。
【0051】
枠体203の上面271には、第一実施例と同様の底面に向かって窪む排気路275が形成されている。また、上記第一実施例と同様に、排気路275と電極体ユニット収容部225,227との間には、それぞれ対応してガス透過孔285,287が形成され、ガス透過孔285,287にはガス透過膜293,295が配置されている。ガスを排出するための排気路275を各電極体ユニット収容部225,227(図中奥側は図示せず)でユニット化或いは共通化することによって、排気路275の構成を簡素化し、モジュール自体の省スペース化及び低コスト化を実現することができる。さらに、枠体203の端部257には圧力リリーフ弁297を設けている。また、上記第一実施例と同様に、電極体ユニット収容凹部225,227にそれぞれ対応して、合計4箇所の電解質注入孔299,301(図中奥側は図示せず)が形成されている。
【0052】
さらに、図8に示すように、蓄電モジュール201には、種々の用途の信号線(ここでは電圧検出線)307,309,310(図中奥側は図示せず)が予め枠体203内に埋設された状態で配線されている。各電圧検出線307,309,310の一端は、それぞれ、対応する装置内接続用端子215,217、総負極端子213及び総正極端子220に接続されている。電圧検出線307,309,310の他端は集約され、枠体203の外部接続用端部(端面)257の下部において、総負極端子213及び総正極端子220と同じ方向に並列して引き出されている。これら電圧検出線307,309,310によって、各電極体ユニット205,207(図中奥側は図示せず)の電圧を検知して、各電極体ユニット205,207間の電圧バランスを調整することができる。かかる電圧検出線307,309,310或いはその他の種々の用途の信号線を枠体203に配線(典型的には埋設)することにより、枠体203周囲においてそれら信号線のための余分な配線スペースの確保が不要となるため、より省スペース化に資することができる。
また、これら信号線(ここでは電圧検出線)307,309,310が総正負極端子213,220と同じ向きで、さらに好ましくは同じ端部(端面)に形成されることにより、モジュール201と外部電気回路(外部端子)との接続作業や複数の同型モジュール201を相互に組付ける作業(端子接続作業を含む)を効率よく行うことができる。
【0053】
次に、本蓄電モジュール201の組み立て手順を説明する。本実施例の蓄電モジュール201は、上記第一実施例と同様に製造することができる。即ち、枠体203の各電極体ユニット収容部225,227に電極体ユニット205,207をそれぞれ収容する。具体的には、枠体203の側面方向に開口した複数の電極体ユニット収容部225,227のそれぞれに、相互に離隔し且つ総正極端子220から総負極端子213に至るまで直列に電気的に接続されるように正しい向きで配列させた状態で、上記構成の捲回型電極体ユニット205,207を計四つ配置・収容する。
本実施例の蓄電モジュール201(枠体203)によれば、各電極体ユニット収容部225,227に電極体ユニット205,207を個々に配置・収容することによって、容易に当該電極体ユニット205,207は位置決めされ、且つ、電極体ユニット205,207間を電気的に接続することができる。次いで、四つの電極体ユニット205,207(図中奥側は図示せず)と各接続用端子215,217、又は総正極端子及び総負極端子213,220とを、上記第一実施例と同様にシリーズスポット溶接し、各接合予定部分ごとに計二箇所の溶接部255を形成する。
直接的に図示してはいないが本実施例においても、第一実施例と同様、装置内接続用端子215,217ならびに総正極端子220及び総負極端子213に図2に示すような蓄熱部が形成されている。このため、溶接工程時における加熱による影響を受け難い。このため、熱的に精密に制御することなく、容易に溶接を行うことができる。尚、他の製造手順(例えばフィルム外装工程、電解質注入工程)については、第一実施例と同様であるために、その説明を省略する。
【0054】
尚、ここで開示される蓄電装置又は蓄電モジュールに搭載される電極体ユニット(ここでは別途電解質を供給して単電池となり得る)の数は、上記第一実施例において一つ又は第二実施例において四つであるが、これに限定されず、所望の電力量に応じて、二つ又三つ或いは四つ以上の電極体ユニットを配置して二次電池その他の蓄電装置(モジュール)を構成することができる。
【0055】
ここで開示される蓄電装置(モジュールを含む)は、種々の付加的構成要素を備えることができる。例えば、電極体ユニットと外部の回路との電気的接続又は蓄電素子相互間の電気的接続を行うためのリード線、タブ端子等を有し得る。これら付加的構成要素の有無やその性状は、従来の蓄電装置と同様でよく、本発明を特徴付けるものではないため詳細な説明は省略する。
【0056】
以上、本発明の好適な実施態様を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した態様を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例に係る蓄電装置(ラミネートフィルム外装前のリチウム二次電池)の構成を模式的に示す側面図である。
【図2】図1の蓄電装置の蓄熱部を模式的に示すII−II線断面図である。
【図3】蓄熱部の構造に係る他の変更例を模式的に示す説明図である。
【図4】蓄熱部の構造に係る他の変更例を模式的に示す説明図である。
【図5】蓄熱部の構造に係る他の変更例を模式的に示す説明図である。
【図6】蓄熱部の構造に係る他の変更例を模式的に示す説明図である。
【図7】蓄熱部の構造に係る他の変更例を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明の一実施例に係る蓄電装置(ラミネートフィルム外装前のリチウム二次電池モジュール)の構成を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,201 蓄電装置
3,203 枠体
5,205,207 電極体ユニット
7 外部接続用正極端子
9 外部接続用負極端子
13,205b,207b 電極体ユニットの正極
15,205a,207a 電極体ユニットの負極
215,217 装置内接続用端子
213 総負極端子(外部接続用負極端子)
220 総正極端子(外部接続用正極端子)
11,225,227 電極体ユニット収容部
28,103,113,123,133,143 蓄熱部
55,56,255 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を有する電極体ユニットを少なくとも一つ備える蓄電装置であって、
前記電極体ユニットを収容し得る電極体ユニット収容部が形成されている枠体と、該枠体に保持された端子であって前記電極体ユニットと電気的に接続される一又は二以上の端子とを有し、
前記端子のうちの少なくとも一つの端子と前記電極体ユニットの正極及び/又は負極とが加熱を伴う手段によって接合されており、その接合部と前記枠体とに近接して蓄熱部が備えられていることを特徴とする、蓄電装置。
【請求項2】
前記蓄熱部は、前記端子と一体に形成されている、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記接合部は、溶接によって形成されている、請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記接合部において、二箇所以上のスポット溶接部位を有する、請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記端子の接合部が銅を含む、請求項3又は4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
正極及び負極を有する電極体ユニットを少なくとも一つ備える蓄電装置を構築するための枠体であって、
前記電極体ユニットを収容し得る電極体ユニット収容部が形成されており、
該収容部の近傍には前記電極体ユニットのいずれかと電気的に接続され得る一又は二以上の端子が保持されているとともに該端子のうちの少なくとも一つの端子には前記枠体に近接して蓄熱部が備えられていることを特徴とする、枠体。
【請求項7】
正極及び負極を有する電極体ユニットを少なくとも一つ備える蓄電装置の製造方法であって、
一又は二以上の電極体ユニットを用意する工程と、
前記電極体ユニットを収容し得る電極体ユニット収容部が形成されている枠体であって、該収容部の近傍には前記電極体ユニットのいずれかと電気的に接続され得る一又は二以上の端子が保持されているとともに該端子のうちの少なくとも一つの端子には前記枠体に近接して蓄熱部が備えられている枠体を用意する工程と、
前記電極体ユニットを前記電極体ユニット収容部に収容する工程と、
前記蓄熱部を備えた端子における該蓄熱部に熱伝導可能な部位と前記電極体ユニットの正極及び/又は負極とを、加熱を伴う手段によって接合する工程と、
を包含する方法。
【請求項8】
前記接合工程において、前記蓄熱部を備えた端子における該蓄熱部に熱伝導可能な部位と前記電極体ユニットの正極及び/又は負極との接合予定部分に対して、前記枠体を背にして前記電極体ユニット収容方向から熱が加えられる、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−147249(P2006−147249A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333433(P2004−333433)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】