説明

蓄電装置及び車両

【課題】ガスの発生を正確に検知して、かつ、収容容器の内圧上昇を抑制できる蓄電装置を提供する。
【解決手段】組電池12と、組電池12を収容する電池収容ケース13と、電池収容ケース13の内部を満たし、組電池12と熱交換を行う冷却液23と、電池収容ケース13の内圧値に関する情報を取得する圧力センサ41と、電池収容ケース13の内部に設けられるカプセル31とを有し、組電池12からガスが発生するガス発生状態において、カプセル31は、電池収容ケース13の内圧値が少なくとも圧力センサ41の検知圧力値に達するまで電池収容ケース13の内圧上昇を許容するように収縮せず、前記内圧値が前記検出圧力値を超えた所定圧力値に上昇すると破壊される。カプセル31の内部には、カプセル31が破壊された際に、電池収容ケース13の内圧によって圧縮される弾性体32が格納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電部及び蓄電部と熱交換を行う液状の熱交換媒体を収容容器に収容した蓄電装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱密度が高い蓄電部を油とともに収容容器に収容した蓄電装置が知られている(特許文献1参照)。この蓄電装置では、蓄電部から発生したガスを収容容器の外部に放出させる構造を有している。
【0003】
また、電池の冷却構造ではないが、シリンダの油室内に弾性樹脂材料からなるガスボール(以下、弾性部材という)を浮遊状態で収容し、弾性部材の内部にはガスを封入し、油室内の圧力に応じて弾性部材を拡縮させるように構成した油圧緩衝器が知られている(特許文献2参照)
【0004】
また、収容容器の内部に内圧を検出するための圧力センサを設けることができる。圧力センサは、収容容器の内圧が所定圧力になると、コントローラに信号を出力し、コントローラは、蓄電部の電流を遮断する。
【特許文献1】特開昭63−98953号公報
【特許文献2】特開平6―221361号公報
【特許文献3】特開平7−71611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蓄電部からガスが発生すると、弾性部材が収縮して収容容器の内圧上昇が抑制される。そのため、圧力センサが作動せず、ガスの発生を検知できなくなるおそれがある。
【0006】
その一方で、蓄電部から放出されるガスの放出量が多い場合には、収容容器の内圧上昇を速やかに抑制する必要がある。
【0007】
そこで、本願発明は、ガスの発生を正確に検知して、かつ、収容容器の内圧上昇を抑制できる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の蓄電装置は、(1)蓄電部と、前記蓄電部を収容する収容容器と、前記収容容器の内部を満たし、前記蓄電部と熱交換を行う液状の熱交換媒体と、前記収容容器の内圧値に関する情報を取得する検出素子と、前記収容容器の内部に設けられ、前記熱交換媒体に対して隔離された空間を有する格納部とを有し、前記蓄電部からガスが発生するガス発生状態において、前記格納部は、前記収容容器の内圧値が少なくとも前記検出素子の検知圧力値に達するまで前記収容容器の内圧上昇を許容し、前記内圧値が前記検出圧力値を超えた所定圧力値に上昇すると破壊され、前記格納部の空間には、前記格納部が破壊された際に、前記収容容器の内圧によって圧縮される圧縮体が格納されていることを特徴とする。
【0009】
(1)の構成によれば、検出素子の検知圧力値に達するまで収容容器の内圧上昇が許容されるため、蓄電部からのガスの発生を正確に検知することができる。また、格納部が破壊されると圧縮体が圧縮されるため、圧力上昇を緩和することができる。
【0010】
(2)(1)の構成において、前記格納部をカプセル形状に形成することができる。カプセルを別体で形成し、収容容器に投入するのみでよいため、簡単な方法で(1)の蓄電装置を得ることができる。
【0011】
(3)(1)の構成において、前記格納部を前記収容容器の内面に沿って形成することができる。これにより、格納部及び収容容器をユニット化することができる。
【0012】
(4)(1)の構成において、前記蓄電部は、蓄電素子を支持する支持部材を有し、前記格納部を、前記支持部材に形成することができる。これにより、格納部及び支持部材をユニット化できる。さらに、支持部材の内部のデッドスペースを有効に活用することもできる。
【0013】
(5)(1)〜(4)の構成において、前記蓄電部は、コントローラに接続されており、前記コントローラは、前記収容容器の内圧値が前記検知圧力値に達すると、前記蓄電部の電流を遮断する。これにより、蓄電部からのガスの発生に応じて、蓄電部の電流を遮断することができる。
【0014】
(6)(5)の構成において、前記収容容器には、前記蓄電部から発生したガスを外部に排出するための排出管が接続されており、前記排出管には、作動圧力値に達すると前記排出管からのガスの排出を許容する弁が設けられており、前記作動圧力値は、前記検知圧力値よりも高いことを特徴とする。これにより、蓄電部からのガスの放出が少ない場合には、蓄電部の電流を遮断することができる。さらに、蓄電部からのガスの放出が多い場合には、蓄電部の電流を遮断することに加えて、圧縮体の圧縮作用及び排出管からのガス排出作用により、圧力上昇を緩和することができる。
【0015】
(7)(1)〜(6)の構成において、前記格納部の空間には、さらに、前記蓄電部から流出する電解液を中和する中和剤、冷却剤及び消炎剤のうち少なくとも一つを格納することができる。これにより、蓄電部から流出した電解液を中和したり、蓄電部を冷却することができる。
【0016】
(8)(1)〜(7)の構成において、前記蓄電部は、複数の蓄電素子を接続した蓄電モジュールとすることができる。つまり、本願発明は、発熱量の高い蓄電部にも適用することができる。
【0017】
(9)(1)〜(8)の構成において、前記格納部は、前記検知圧力値に達するまで収縮しない。ここで、「収縮しない」とは、「ガスが発生した際に格納部が収縮して、収容容器の内圧が圧力センサの検知圧力値に満たなくなる」場合を排除する主旨であり、格納部が僅かに収縮して、僅かに圧力上昇が緩和されるような場合は、本発明の範囲である。
【0018】
(10)(1)〜(9)の構成において、前記格納部の外壁の少なくとも一部をガラスで構成することができる。これにより、蓄電部からガスが放出された際に、収容容器の内圧が圧力センサの検知圧力値に達するまで、収容容器の内圧上昇を確実に許容することができる。
【0019】
(11)(1)〜(10)の構成において、前記格納部の空間に格納される前記圧縮体として、空気を用いることができる。これにより、コストを削減できる。
【0020】
本願発明の蓄電装置は、別の観点として、(12)蓄電部と、前記蓄電部を収容する収容容器と、前記収容容器の内部を満たし、前記蓄電部と熱交換を行う液状の熱交換媒体と、前記収容容器の内部に設けられ、前記熱交換媒体に対して隔離された空間を有する格納部とを有し、前記蓄電部からガスが発生するガス発生状態において、前記格納部は、収縮することなく破壊され、前記格納部の空間には、前記格納部が破壊された際に、前記収容容器の内圧によって圧縮される圧縮体が格納されていることを特徴とする。圧縮体が圧縮されることにより、収容容器の内圧上昇を抑制できる。(12)の蓄電装置の基本構成として実施例1を用いることができる。ただし、圧力センサを省略することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、蓄電部からガスが発生したことを正確に検知することができる。また、圧縮体が圧縮することにより収容容器の内圧上昇を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は蓄電装置をY−Z面で切断したときの断面図であり、X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する三軸を示している。同図において、蓄電装置1は、組電池(蓄電部、蓄電モジュール)12、組電池12及び冷却液(液状の熱交換媒体)23を収容する電池収容ケース(収容容器)13を含む。電池収容ケース13は、ケース本体13a及び上蓋13bからなる。本実施例の蓄電装置1は、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車の駆動用または補助電源として用いることができる。
【0024】
ケース本体13aは、上側が開口しており、ケース本体13aの上端面に対して上蓋13bが固定されている。固定手段には、不図示のボルトを用いることができる。電池収容ケース13には、熱伝導率が高く、耐圧性が高い金属を用いることができる。例えば、鉄を用いることができる。電池収容ケース13の外面には、図示しない複数の放熱フィンを形成することができる。放熱フィンを複数設けることにより、電池収容ケース13の放熱面積を増やすことができる。
【0025】
電池収容ケース13は、図示しない座席の下方に位置するフロアパネル2に固定することができる。ただし、後部座席とトランクルームとの間に形成された空間に配置することもできる。上蓋13bには、組電池12から発生したガスを排出するためのガス排出口113bが形成されている。ガス排出口113bは、Z軸方向視において、上蓋13bの略中央に位置する。上蓋13bの内面(冷却液23に接する側の面)は、X−Y面に沿って延びている。ただし、上蓋13bの内面を、ガス排出口113bに近づくにしたがって、上側に傾斜させた傾斜面とすることもできる。この場合、組電池12から放出されたガスが前記傾斜面に沿って進むため、ガスの排出を速めることができる。
【0026】
ガス排出口113bには、ガス排出パイプ15が接続されている。ガス排出パイプ15には、樹脂や金属を用いることができる。ガス排出パイプ15は、車室外位置となる領域(例えば、車両のクウォータトリム)に向かって延びている。ガス排出パイプ15及びガス排出口113bの接続部分には、ガスリリーフ弁21が設けられている。
【0027】
ガスリリーフ弁21は、電池収容ケース13の内圧が所定値(作動圧力値)に達すると作動して、電池収容ケース13からガス排出パイプ15へのガスの移動を許容する。なお、ガスリリーフ弁21が非作動状態である場合には、電池収容ケース13からガス排出パイプ15への冷却液23の移動が禁止される。なお、ガスリリーフ弁21の作動圧力値は、例えば2気圧に設定することができる。
【0028】
電池収容ケース13の内部は、冷却液23で満たされている。冷却液23は、非圧縮性流体であり、比熱、熱伝導性と沸点が高く、電池収容ケース13、組電池12を腐食させず、熱分解、空気酸化、電気分解などを受けにくい物質が適している。さらに、電極端子間の短絡を防止するために、電気的絶縁性の液体が望ましい。例えば、フッ素系不活性液体を使用することができる。フッ素系不活性液体としては、スリーエム社製フロリナート、Novec HFE(hydrofluoroether)、Novec1230を用いることができる。また、フッ素系不活性液体以外の液体(例えば、シリコンオイル)を用いることもできる。
【0029】
組電池12は、複数の円筒型電池122を電気的に接続することにより構成されており、個数が増えるにしたがって発熱量が多くなる。このため、組電池12を空気で冷却する方法では、冷却不足となり、電池劣化が進行するおそれがある。そこで、本実施例では、組電池12を冷却する冷却媒体として、空気よりも冷却性能に優れた液体を使用している。
【0030】
上蓋13bの内面には、ガス排出口113bと異なる位置に圧力センサ(検出素子)41が取り付けられている。圧力センサ41は、信号線48を介して監視ユニット42に接続されている。圧力センサ41は、電池収容ケース13の内圧が所定値(検知圧力値)に上昇すると監視ユニット42に電気信号を出力する。監視ユニット42において、組電池12のSOC(state of charge)を監視する監視部としての機能を兼用させることもできる。
【0031】
監視ユニット42は、信号線49を介してコントローラ43に接続されている。コントローラ43は、監視ユニット42から出力される信号に基づき、組電池12の電流を遮断する。監視ユニット42及びコントローラ43は、電池収容ケース13に隣接して配置されるジャンクションボックス44に収容することができる。なお、コントローラ43の内部に監視ユニット42を設けることもできる。
【0032】
なお、圧力センサから電池収容ケース13の内圧値が、常時、監視ユニット42に出力される構成にしてもよい。この場合、監視ユニット42は、モニタした電池収容ケース13の内圧が所定値(検知圧力値)に達すると、コントローラ43に信号を出力する。つまり、「検知圧力値」とは、組電池12の電流を遮断する指示信号を出力するときの電池収容ケース13の内圧値を示している。圧力センサ41による検知圧力値は、例えば、1.5気圧に設定することができる。
【0033】
次に、組電池12の構成を説明する。組電池12は、複数の円筒型電池122を含む。各円筒型電池122は、Y軸方向に延びている。これらの円筒型電池122は、向き合って配置される一対の電池フォルダ(支持部材)123に支持されている。各円筒型電池122の両端部には、突状の端子電極131、132が設けられている。端子電極131、132の外面には、ネジ溝131a、132aが形成されている。
【0034】
端子電極131、132は、電池フォルダ123から突出している。円筒型電池122は、バスバー124を介して直列に接続されている。バスバー124は、平板状に形成されている。バスバー124には、端子電極131、132を貫通させるための図示しない開口部が形成されている。端子電極131、132のネジ溝131a、132aに対して、締結ナット125を締結することにより、バスバー124は固定される。
【0035】
図2を参照しながら、円筒型電池122の構成を詳細に説明する。図2は、円筒型電池122をY−Z面で切断した断面図である。単電池ケース134の内部には、発電要素135が巻かれた状態で収納されている。
【0036】
この発電要素135は、正電極体135bと、負電極体135cと、正電極体135b及び負電極体135cの間に配置されたセパレータ135aとで構成される。ここで、正電極体135bは、集電体と、集電体の表面に形成された正極層とで構成されている。正極層は、集電体の片面又は両面に形成することができる。正極層とは、正極に応じた活物質や導電剤等を含む層である。
【0037】
また、負電極体135cは、集電体と、集電体の表面に形成された負極層とで構成されている。負極層は、集電体の片面又は両面に形成することができる。負極層とは、負極に応じた活物質や導電剤等を含む層である。
【0038】
なお、集電体の一方の面に正極層を形成し、集電体の他方の面に負極層を形成した電極(いわゆるバイポーラ電極)を用いることもできる。また、本実施例では、電解液を用いているが、粒子で形成された固体電解質を用いることもできる。固体電解質としては、高分子固体電解質や無機固体電解質がある。
【0039】
ここで、円筒型電池122がニッケル−水素電池である場合には、正極層の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlMnCo(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、単電池1がリチウムイオン電池である場合には、正極層の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極層の活物質として、カーボンを用いることができる。また、導電剤として、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0040】
発電要素135の電池長手方向(Y方向)の両端には、円板状の集電板136が溶接されている。集電板136には、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔を用いることができる。集電板136は、導電線137を介して、保持板139に電気的及び機械的に接続されている。保持板139は、端子電極131、132を保持している。保持板139には、端子電極131、132の取り付け位置とは異なる位置に破壊式の弁139aが形成されている。この破壊式の弁139aは、保持板139に対してパンチ加工を施すことにより形成されている。
【0041】
円筒型電池122が過充電、過放電などされると、発電要素135に含まれる電解液が電気分解してガスが発生し、単電池ケース134の内圧が上昇する。単電池ケース134の内圧が所定値(例えば、2気圧)以上になると、破壊式の弁139aが破壊され、円筒型電池122の外部にガスが放出される。これにより、単電池ケース134の内圧上昇を抑制できる。
【0042】
円筒型電池122の代わりにキャパシタ(蓄電部)を用いることもできる。キャパシタは、活性炭と電解液との界面に発生する電気二重層を動作原理とした電気二重層キャパシタのことである。固体として活性炭、液体として電解液(希硫酸水溶液)を用いて、これを接触させるとその界面にプラス、マイナスの電極が極めて短い間隔を隔てて相対的に分布する。イオン性溶液中に一対の電極を浸して電気分解が起こらない程度に電圧を負荷させると、それぞれの電極の表面にイオンが吸着され、プラスとマイナスの電気が蓄えられる(充電)。外部に電気を放出すると、正負のイオンが電極から離れて中和状態に戻る。また、円筒型電池122の代わりに角型電池を用いることもできる。
【0043】
次に、図1を参照しながら、電池収容ケース13の内部に設けられるカプセル(格納部)31の構成を詳細に説明する。カプセル31は、球形であり、内部に格納領域部31aを有している。カプセル31を球形に形成することにより、耐圧性能を維持しつつカプセル31の厚みをより薄くすることができる。カプセル31には、少なくとも圧力センサ41の検知圧力値に達するまで圧力上昇を許容するような収縮しにくい材料を用いることができる。具体的には、ガラスを用いることができる。
【0044】
ここで、カプセル31を弾性部材(例えば、ゴム)で構成したと仮定する。この場合、組電池12からガスが発生すると、カプセル31が弾性変形して、電池収容ケース13の内圧上昇が緩和される。そのため、圧力センサ41の検知圧力値に達する前に電池収容ケース13の内圧上昇が停止するおそれがある。その結果、組電池12からガスが放出されているにもかかわらず、組電池12の電流を遮断できなくなる。
【0045】
これに対して、本実施例では、圧力センサ41の検知圧力値に達するまで内圧上昇を許容するような収縮しにくい材料でカプセル31を構成している。したがって、圧力センサ41からの出力信号に基づき、組電池12のガス放出現象を確実に検知することができる。
【0046】
カプセル31は、電池収容ケース13の内圧が所定圧力値に達すると破壊される。ここで、「所定圧力値」は、圧力センサ41の検知圧力値よりも高く、かつ、電池収容ケース13の限界耐圧値よりも低く設定しなければならない。例えば、2気圧に設定することができる。
【0047】
次に、電池収容ケース13の内部を冷却液23で満たすことによる効果について説明する。図4は、本発明の比較例であり、図1に対応している。なお、実施例1と同一の機能を有する部分には、同一符号を付している。比較例では、冷却液23の液面を低く設定して、上蓋13b及び冷却液23の間に空気層91を設けている。
【0048】
比較例の構成において、電池異常により組電池12からガスが発生すると、空気層91が圧縮され、電池収容ケース13の内圧上昇が緩和される。そのため、圧力センサ41の検知圧力値に達する前に電池収容ケース13の内圧上昇が停止する。したがって、組電池12からガスが放出されているにもかかわらず、組電池12の電流を遮断できなくなるおそれがある。
【0049】
これに対して、本発明では、図1に図示するように、電池収容ケース13の内部を冷却液23で満たしているため、組電池12からガスが放出すると、ガス放出量に応じて電池収容ケース13の内圧が上昇する(ガスの放出量が少ない場合に限る)。そのため、圧力センサ41からの出力信号に基づき、組電池12のガス放出現象を確実に検知することができる。
【0050】
さらに、比較例では、電池収容ケース13に収納される冷却液23の液量をより正確に測定しなければならないため、作業効率が低下するおそれがある。これに対して、本発明では、電池収容ケース13の内部を冷却液23で満たせばよいため、厳密な液量測定を省略することができる。
【0051】
カプセル31は、球形以外の形状に形成することもできる。例えば、立方体形状、円錐形状、円柱形状に形成することもできる。カプセル31は、電池収容器ケース13の内部において冷却液23に浮いている。ただし、カプセル31を、電池収容ケース13の内面、組電池12に固定することもできる。
【0052】
カプセル31の格納領域部31aには、弾性体(圧縮体)32が格納されている。弾性体32には、ゴムを用いることができる。弾性体32の代わりに圧縮性のある気体(例えば、空気)を用いることもできる。空気を用いることにより、コストを削減することができる。
【0053】
電池異常の際に、カプセル31が破損すると、弾性体32は収縮する。これにより、電池収容ケース13の内圧上昇を抑制できる。なお、カプセル31の破壊圧と、リリーフバルブ21の作動圧を同じ値に設定した場合には、弾性体32の収縮動作及びガス排出管15からのガス排出動作が同時に行われ、より効果的に電池収容ケース13の内圧上昇を抑制できる。
【0054】
図5に図示するように、カプセル31の格納領域部31aには、さらに、電解液の中和剤33を格納することができる。図5は、カプセル31の内部構造を示す断面図である。電池異常時に、カプセル31が破壊されると、中和剤33が冷却液23の中に流出する。この中和剤33により、組電池12からガスとともに流出した電解液を中和することができる。
【0055】
中和剤33の代わりに冷却剤34を用いることもできる。電池異常時に、カプセル31が破壊されると、冷却剤34が冷却液23の中に流出する。この冷却剤34により、組電池12の温度上昇を抑制することができる。中和剤33の代わりに消炎剤35を用いることもできる。これらの中和剤33、冷却剤34及び消炎剤35を組み合わせてカプセル31に格納することもできる。
【0056】
次に、図3を参照しながら、電池異常時の蓄電装置1の動作について説明する。図3は、蓄電装置1をY−Z面で切断した断面図であり、図1に対応している。図3Aはガスの発生が少ない場合を模式的に示しており、図3Bはガスの発生が多い場合を模式的に示している。
【0057】
組電池12が過充電等されると、円筒型電池122の電解液が電気分解してガスが発生する。このガスにより、単電池ケース134の内圧が所定値を超えると、破壊式の弁139aが破壊される。破壊式の弁139aが破壊されると、冷却液23の中にガスが放出され、電池収容ケース13の内圧が上昇する。
【0058】
図3Aに図示するように、組電池12から放出されるガスの放出量が少ない場合には、カプセル31は収縮しない。また、電池収容ケース13の内部は、空気層が設けられないように冷却液23で満たされている。したがって、ガス放出量に応じて電池収容ケース13の内圧値は高くなる。電池収容ケース13の内圧値が圧力センサ41の検知圧力値に達すると、圧力センサ41から監視ユニット42に検出信号が出力され、コントローラ43が組電池12の電流を遮断する。
【0059】
組電池12の電流を遮断した後に、さらに電池収容ケース13の内圧が上昇する場合には、つまり、図3Bに図示するように、組電池12から放出されるガスの放出量が多い場合には、下記の動作が行われる。
【0060】
電池収容ケース13の内圧が所定値(例えば、2気圧)に達すると、カプセル31が破壊されるのと同時に、ガスリリーフ弁21が作動する。カプセル31が破壊されると、弾性体32が収縮して、電池収容ケース13の内圧上昇を抑制することができる。なお、図3Bでは、破壊されたカプセル31を省略している。ガスリリーフ弁21が作動すると、電池収容ケース13の内部のガスが、ガス排出管15から排出される。弾性体32の収縮動作及びガス排出管15からのガス排出動作により、電池収容ケース13の内圧上昇を効果的に抑制できる。
【実施例2】
【0061】
図6を参照しながら、実施例2の蓄電装置について説明する。図6は、蓄電装置をY−Z面で切断したときの断面図であり、図1に対応している。実施例1と同一の構成要素には、同一符号を付している。電池収容ケース13の内部には、ケース本体13aの内面に沿ってX軸方向に延びる格納部材36が設けられている。格納部材36の内部には、X軸方向視において矩形の格納領域部36aが形成されている。格納部材36は、実施例1のカプセル31と同じ材料で構成することができる。
【0062】
格納部材36の格納領域部36aには、弾性体37が格納されている。弾性体37には、実施例1の弾性体32と同じ材料を用いることができる。格納領域部36aには、さらに、実施例1と同様に、中和剤33、冷却剤34及び消炎剤35を格納することもできる。
【0063】
組電池12から発生するガスの放出量が少ない場合には、格納部材36は収縮しない。
組電池12から発生するガスの放出量が多い場合には、格納部材36が破壊され、弾性体37が収縮する。上述の構成によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、格納部材36及びケース本体13aをユニット化できるため、蓄電装置100の組み立て作業を容易化できる。なお、格納部材36を上蓋13bの内面に沿って配置することもできる。
【実施例3】
【0065】
図7を参照しながら、実施例3の蓄電装置について説明する。図7は、蓄電装置をY−Z面で切断したときの断面図であり、図1に対応している。実施例1と同一の構成要素には、同一符号を付している。電池フォルダ123には、Z軸方向に延びる穴部123aが形成されている。穴部123aには、弾性体39が収容されている。弾性体39には、実施例1の弾性体32と同じ材料を用いることができる。
【0066】
穴部123aは、板材38によりシールされている。すなわち、穴部123aのZ軸方向の開口部分を板材38で覆うことにより、穴部123aに冷却液23が流入するのを阻止している。板材38及び穴部123aにより、特許請求の範囲に記載の格納部が構成される。
【0067】
組電池12から発生するガスの放出量が少ない場合には、板材38は穴部123aの内部側に変形しない。組電池12から発生するガスの放出量が多い場合には、板材38が破壊され、弾性体39が収縮する。上述の構成によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、電池フォルダ123の内部のデッドスペースを有効に活用することができる。さらに、前記格納部及び電池フォルダ123をユニット化できるため、蓄電装置の組み立て作業を容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】蓄電装置をY−Z面で切断したときの断面図である。
【図2】円筒型電池をY―Z面で切断したときの断面図である。
【図3A】蓄電装置をY−Z面で切断したときの断面図である(ガス放出量が少ない場合を図示している)。
【図3B】蓄電装置をY−Z面で切断したときの断面図である(ガス放出量が多い場合を図示している)。
【図4】比較例の蓄電装置をY−Z面で切断したときの断面図である。
【図5】カプセルの断面図である。
【図6】実施例2の蓄電装置をY−Z面で切断したときの断面図である。
【図7】実施例3の蓄電装置をY−Z面で切断したときの断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 100 200 蓄電装置
2 フロアパネル
12 組電池
122 円筒型電池
123 電池フォルダ
31 カプセル
32 37 39 弾性体
41 圧力センサ
43 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電部と、
前記蓄電部を収容する収容容器と、
前記収容容器の内部を満たし、前記蓄電部と熱交換を行う液状の熱交換媒体と、
前記収容容器の内圧値に関する情報を取得する検出素子と、
前記収容容器の内部に設けられ、前記熱交換媒体に対して隔離された空間を有する格納部とを有し、
前記蓄電部からガスが発生するガス発生状態において、前記格納部は、前記収容容器の内圧値が少なくとも前記検出素子の検知圧力値に達するまで前記収容容器の内圧上昇を許容し、前記内圧値が前記検出圧力値を超えた所定圧力値に上昇すると破壊され、
前記格納部の空間には、前記格納部が破壊された際に、前記収容容器の内圧によって圧縮される圧縮体が格納されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記格納部は、カプセル形状であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記格納部は、前記収容容器の内面に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記蓄電部は、蓄電素子を支持する支持部材を有し、
前記格納部は、前記支持部材に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記蓄電部は、コントローラに接続されており、
前記コントローラは、前記収容容器の前記内圧値が前記検知圧力値に達すると、前記蓄電部の電流を遮断することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記収容容器には、前記蓄電部から発生したガスを外部に排出するための排出管が接続されており、
前記排出管には、作動圧力値に達すると前記排出管からのガスの排出を許容する弁が設けられており、前記作動圧力値は、前記検知圧力値よりも高いことを特徴とする請求項5に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記格納部の空間には、さらに、前記蓄電部から流出する電解液を中和する中和剤、冷却剤及び消炎剤のうち少なくとも一つが格納されていることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記蓄電部は、複数の蓄電素子を接続した蓄電モジュールであることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記格納部は、前記収容容器の前記内圧値が前記検知圧力値に達するまで収縮しないことを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記格納部は、ガラスからなる外壁を有することを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項11】
前記格納部の空間に格納される前記圧縮体は、空気であることを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちいずれか一つに記載の蓄電装置を搭載した車両。




【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−289668(P2009−289668A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142816(P2008−142816)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】