説明

蓋体開閉装置

【課題】自動車の小物入れ等の蓋体の開閉装置を、意匠性と操作性の双方に優れたものにすること。
【解決手段】蓋体10が、略垂直姿勢をもって筐体の開口部を塞ぐ閉蓋位置と、略水平姿勢で筐体後方側に移動した開蓋収納位置に加えて、略水平姿勢で筐体前方側に前進移動して筐体前方に突出した閉蓋準備位置を選択的に取ることができるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体開閉装置に関し、特に、自動車のセンタコンソールやインストルメントパネル等に設置される収納ケースや車室内機器の蓋体(リッド)の手動式の開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内に小物入れ等として設置される収納ケースや、車室内機器の蓋体の開閉装置として、前蓋が水平なヒンジ軸による下部ヒンジによって取り付けられ、下部ヒンジのヒンジ軸を中心として前蓋が回動することにより開閉し、プッシュロック・プッシュオープン動作のオルタネイト式ラッチ機構によって閉蓋位置に保持されるよう構成された単純な前倒し式のもの(例えば、特許文献1)、蓋体(扉体)がスライダに接続され、スライダの水平移動によって蓋体が略垂直姿勢の閉蓋位置と略水平姿勢に引き上げられた開蓋位置との間に移動可能で、蓋体がばねによって開蓋方向に付勢され、プッシュロック・プッシュオープン動作のオルタネイト式ラッチ機構によって閉蓋位置に保持されるよう構成されたものがある(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−213138号公報
【特許文献2】特開2005−306225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自動車の車室内等に設置される蓋体の開閉装置では、開蓋された蓋体の全体を、センタコンソール等の前面がなす意匠面より、例えば水平姿勢で、奥側にしまい込み、蓋体が邪魔にならないようにすると共に、開蓋状態では、蓋体が見えないようにして、フラットサーフェース化により意匠性の向上を図る要望がある。
【0004】
このことに対して、従来の蓋体開閉装置は、開蓋位置と閉蓋位置の二つの位置を選択的に取ることができ、蓋体装置として有用に機能するが、手動式のものでは、蓋体全体が意匠面より奥側にしまい込まれれると、蓋体を指先で掴むことが難しくなり、開蓋状態より蓋閉じ操作が難しものになる。このため、従来の蓋体開閉装置では、意匠性と操作性の両立を図ることが難しい。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、蓋体開閉装置を、意匠性と操作性の双方に優れたものとに、しかも、見栄えよく趣向性に富んだものにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による蓋体開閉装置は、筐体の前面部に形成された開口部を開閉する蓋体の開閉装置であって、前記筐体に前後方向に移動可能に設けられた第一のスライダと、前記筐体に前後方向に移動可能に設けられた第二のスライダと、前記筐体と前記第一のスライダとの間に設けられて前記第一のスライダを筐体前方側へ付勢する第一のばね手段と、前記第一のスライダと前記第二のスライダとの間に設けられて前記第二のスライダを筐体後方側へ付勢する第二のばね手段と、一端を前記第二のスライダに枢動連結され他端を前記蓋体に枢動連結されたリンク部材と、前記第一のスライダを前記筐体に対して筐体後方位置に解除可能に係止する第一のラッチ装置と、前記第二のスライダを前記筐体に対して筐体前方位置に解除可能に係止する第二のラッチ装置とを有し、前記蓋体は、略垂直姿勢をもって前記開口部を塞ぐ閉蓋位置と、前記第二のラッチ装置による前記第二のスライダの係止が解除されることにより、前記第二のスライダが前記第二のばね手段のばね力によって筐体後方側に移動し、略垂直姿勢より略90度回動して略水平姿勢になり、略水平姿勢で筐体後方側に移動した開蓋収納位置と、前記第一のラッチ装置による前記第一のスライダの係止が解除されることにより、前記第一のスライダが前記第一のばね手段のばね力によって筐体前方側に移動し、前記第二のスライダと共に略水平姿勢で筐体前方側に前進移動して筐体前方に突出した閉蓋準備位置とを選択的に取ることができ、前記閉蓋準備位置にある前記蓋体が手操作によって略水平姿勢より略垂直姿勢に戻されることにより、前記第一のスライダが前記第一のばね手段のばね力に抗して筐体後方位置に戻って前記第一のラッチ装置により前記筐体に対して係止され、前記第二のスライダが前記第二のばね手段のばね力に抗して筐体前方位置に戻って前記第二のラッチ装置によって前記筐体に対して係止され、前記閉蓋位置に係止されることを特徴としている。
【0007】
また、本発明による蓋体開閉装置は、筐体の前面部に形成された開口部を開閉する蓋体の開閉装置であって、前記筐体に前後方向に移動可能に設けられた第一のスライダと、前記筐体に前後方向に移動可能に設けられた第二のスライダと、前記筐体と前記第一のスライダとの間に設けられて前記第一のスライダを筐体前方側へ付勢する第一のばね手段と、前記第一のスライダと前記第二のスライダとの間に設けられて前記第二のスライダを筐体後方側へ付勢する第二のばね手段と、一端を前記第二のスライダに枢動連結され他端を前記蓋体に枢動連結されたリンク部材と、前記蓋体の左右両側に各々一体的に設けられたアーム部材と、前記第一のスライダを前記筐体に対して筐体後方位置に解除可能に係止する第一のラッチ装置と、前記第二のスライダを前記筐体に対して筐体前方位置に解除可能に係止する第二のラッチ装置とを有し、前記筐体の両側部には、前記筐体の前後水平方向に直線状に延在する第一の案内レール部と、円弧部と前記筐体の前後水平方向に直線状に延在して前記円弧部の端部に連続する水平直線部よりなる第二の案内レール部とが形成され、前記アーム部材には、前記第一の案内レール部に移動可能に係合する第一の係合子と、前記第二の案内レール部に移動可能に係合する第二の係合子とが設けられており、
前記蓋体は略垂直姿勢をもって前記開口部を塞ぐ閉蓋位置に位置し、前記第二のラッチ装置による前記第二のスライダの係止が解除されることにより、前記第二のスライダが前記第二のばね手段のばね力によって筐体後方側に移動し、当該移動によって閉蓋位置にある前記蓋体が前記第一の係合子を回転中心として前記第二の係合子が前記第二の案内レール部の前記円弧部に案内されて移動して略90度回動して略水平姿勢になって開蓋し、これよりさらに、前記第一の係合子が前記第一の案内レール部に案内され、且つ前記第二の係合子が第二の案内レール部の前記水平直線部に案内されて各々筐体後方側に移動することにより、前記蓋体が略水平姿勢で筐体後方側に移動して開蓋収納位置に位置し、前記蓋体が前記開蓋収納位置にある状態で、前記第一のラッチ装置による前記第一のスライダの係止が解除されることにより、前記第一のスライダが前記第一のばね手段のばね力によって前記第二のスライダと共に筐体前方側に移動し、当該移動によって前記第一の係合子が前記第一の案内レール部に案内され、前記第二の係合子が前記第二の案内レール部の前記水平直線部に案内されて各々筐体前方側に移動することにより、前記蓋体が略水平姿勢で筐体前方側に前進移動して筐体前方に突出した閉蓋準備位置に位置し、前記閉蓋準備位置にある前記蓋体が手操作によって略水平姿勢より略垂直姿勢に戻されることにより、前記第一のスライダが前記第一のばね手段のばね力に抗して筐体後方位置に戻って前記第一のラッチ装置により前記筐体に対して係止され、前記第二のスライダが前記第二のばね手段のばね力に抗して筐体前方位置に戻って前記第二のラッチ装置によって前記筐体に対して係止され、前記蓋体が前記閉蓋位置に係止されることを特徴としている。
【0008】
本発明による蓋体開閉装置は、好ましくは、前記第一のラッチ装置と前記第二のラッチ装置は、各々、プッシュロック・プッシュオープン動作のオルタネイト式ラッチ機構により構成されており、前記蓋体あるいは前記筐体の前面部に設けられた押し釦が押されることによりプッシュ操作されることを特徴としている。
【0009】
本発明による蓋体開閉装置は、好ましくは、前記筐体の前方に化粧パネルが配置され、当該化粧パネルには前記閉蓋位置にある前記蓋体が整合配置される貫通開口が形成され、前記蓋体は、前記開蓋収納位置では全体を化粧パネルより後方に収納され、前記閉蓋準備位置では前記化粧パネルより前方に突出露呈すことを特徴としている。
【0010】
本発明による蓋体開閉装置は、好ましくは、前記筐体と前記化粧パネルの前記貫通開口の縁部との間に、前記蓋体を前記開蓋収納位置に出し入れするために形成されるスリット状開口部分を開閉するフラッパが回動可能に設けられており、前記フラッパはばねによって閉じ位置側に付勢されて前記蓋体と当接し、前記蓋体の前記開蓋収納位置への移動に伴って前記ばねのばね力によって閉じ位置に回動し、前記蓋体が前記閉蓋位置へ移動されることにより前記ばねのばね力に抗して開き位置に回動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明による蓋体開閉装置は、第一のスライダと第二のスライダの二つのスライダのスライド作動と、第一のラッチ装置と第二のラッチ装置の二つのラッチ装置のラッチ・ラッチ解除作動により、蓋体が、略垂直姿勢をもって筐体の開口部を塞ぐ閉蓋位置と、略水平姿勢で筐体後方側に移動した開蓋収納位置に加えて、略水平姿勢で筐体前方側に前進移動して筐体前方に突出した閉蓋準備位置を選択的に取ることができるから、開蓋収納位置では、蓋体全体を化粧パネルによる意匠面より奥側にしまい込んで、フラットサーフェース化し、閉蓋準備位置では、蓋体が前記化粧パネルより前方に突出露呈することにより、その突出露呈部をもって蓋体の閉じ操作を行うことできる。これにより、見栄えがよく、意匠性と操作性の双方を優れたものとすることができる。
【0012】
また、蓋体の閉蓋位置より開蓋収納位置への開き動作は、第一のラッチ装置のラッチ解除だけで、第一のばね手段のばね力により自動的に行われ、蓋体の開蓋収納位置より閉蓋準備位置への移動は、第二のラッチ装置のラッチ解除だけで、第二のばね手段のばね力により自動的に行われ、使用者は、閉蓋準備位置より閉蓋位置へ蓋体を動かすだけでよく、使い勝手がよく、安全性に優れ、しかも趣向性に富んだものになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による蓋体開閉装置は、例えば、図1に示されているように、乗用車のセンタコンソール100に埋設された小物入れ用ポケットの蓋体(リッド)10の開閉装置として用いられる。
【0014】
図2〜図12は、本発明による蓋体開閉装置の実施形態1を示している。これらの図において、符号20は、小物入れ用ポケット等の小物収納室21を画定する筐体を示している。筐体20の前面部は、小物収納室21に対する物品出し入れ用の矩形の開口部22になっている。
【0015】
筐体20の前方には化粧パネル101が配置されている。化粧パネル101には、筐体20の開口部22の前方(手前側)にあって、閉蓋位置にある蓋体10が整合配置される矩形の貫通開口102が形成されている。蓋体10は、化粧パネル101の貫通開口102より少し矩形の板状のものであり、筐体20の開口部22の開閉に伴って化粧パネル101の貫通開口102を開閉する。
【0016】
筐体20の上面には板状のベース部材23が固定装着されている。筐体20には、第一のスライダ41と、第二のスライダ42が、各々個別に、筐体20の前後方向に移動可能に設けられている。
【0017】
第一のスライダ41は、ステープル形状で、筐体20の上側を跨ぐように配置され、筐体20の左右両側面に形成された前後方向の直線ガイドレール部24に案内されて筐体20の前後方向にスライド移動する。第二のスライダ42は、短冊形状で、ベース部材23の左右両側縁部に形成された前後方向の直線ガイドレール部25に案内されて筐体20の前後方向にスライド移動する。第一のスライダ41と第二のスライダ42は高さ違いに設けられており、第二のスライダ42は第一のスライダ41の下側に潜り込みことができる。
【0018】
ベース部材23には第一のコンストンばね26のロール部26Aが取り付けられている。第一のコンストンばね26の先端部26Bは第一のスライダ41に係止されている。つまり、第一のコンストンばね26は、筐体20と第一のスライダ41との間に設けられて第一のスライダ41を筐体前方側へ付勢する。
【0019】
第一のスライダ41には第二のコンストンばね27のロール部27Aが取り付けられている。第二のコンストンばね27の先端部27Bは第二のスライダ42に係止されている。つまり、第二のコンストンばね27は、第一のスライダ41と第二のスライダ42との間に設けられて第二のスライダ42を筐体後方側へ付勢するの間に設けられて第一のスライダ41を筐体後方側へ付勢する。
【0020】
筐体20の上面部には直線ガイドレール部25と平行にラック28が形成されている。第二のスライダ42には回転式ダンパ29が取り付けられている。回転式ダンパ29の回転軸にはラック28に噛合するピニオン(図示省略)が設けられている。このラック・ピニオン噛合により、回転式ダンパ29は、ダンパ作用によって第二のスライダ42の前後方向移動に対して抵抗を与え、第二のスライダ42の前後方向の移動速度、特に、第二のコンストンばね27のばね力による筐体後方側への移動速度を、比較的低速なものに設定する。
【0021】
第一のスライダ41と筐体20には、第一のスライダ41を筐体20に対して筐体後方位置(図6、図7参照)に解除可能に係止する第一のラッチ装置(ロック装置)43が設けられている。第一のラッチ装置43は、プッシュロック・プッシュオープン動作する公知のハートカム方式のオルタネイト式ラッチ機構により構成されており、蓋体10あるいは筐体20の前面部に設けられた押し釦32によって第一のスライダ41が奥側(図6、図7で見て左側)に押されることにより、プッシュ操作され、係止と係止解除を交互に繰り返す。
【0022】
押し釦32は、図8に示されているように、筐体20に上面を前後方向に移動可能に設けられており、指先で押されることにより、圧縮コイルばね33のばね力に抗して左方向(奥方向)へ移動し、これに伴い作動子34が傾斜カム面35に案内されて上昇前進し、作動子34が第一のスライダ41の下底面部の係合部44に当接し、第一のスライダ41を左方向に押して第一のラッチ装置43をプッシュ操作する。なお、蓋体10の下端側が押されたことにより、第一のスライダ41が左方向に押され、第一のラッチ装置43がプッシュ操作される機構については、後述する。
【0023】
第二のスライダ42と筐体20には、第二のスライダ42を筐体20に対して筐体前方位置(図6、図7参照)に解除可能に係止する第二のラッチ装置(ロック装置)45が設けられている。第二のラッチ装置43は、プッシュロック・プッシュオープン動作する公知のクランプ爪方式のオルタネイト式ラッチ機構により構成されており、蓋体10によって第二のスライダ42が手前側(図6、図7で見て右側)に押されることにより、プッシュ操作され、係止と係止解除を交互に繰り返す。
【0024】
蓋体10は、一端を枢軸11によって第二のスライダ42に枢動連結され、他端を枢軸12によって蓋体10の裏面側に一体に設けられたブラケット13に枢動連結された左右一対のリンク部材14によって第二のスライダ42に水平軸線周りに回動可能に連結されている。
【0025】
筐体20の両側部には、各々、筐体20の前後水平方向に略直線状に延在する第一の案内レール部30と、略上下方向の円弧部31Aと筐体20の略前後水平方向に直線状に延在して円弧部31Aの下端部に連続する水平直線部31Bよりなる第二の案内レール部31とが形成されている。
【0026】
蓋体10の左右両側にはアーム部15が各々一体的に設けられている。アーム部材15には、第一の案内レール部30に摺動可能に係合する第一の係合子16と、第二の案内レール部31に摺動可能に係合する第二の係合子17とが設けられている。第一の係合子16はアーム部材15の基部側(図7で見て右側)にあり、第二の係合子17はアーム部材15の先端側にある。
【0027】
アーム部15の先端部には押圧子18が設けられている。押圧子18は、第一のスライダ41の左右の脚部46の垂直前面47に当接し、蓋体10の閉蓋移動(図7,図12で見て時計廻り方向方向の回動)を第一のスライダ41に戻し方向の移動として伝達する。また、押圧子18は、水平姿勢の蓋体10(図10参照)が指先で奥側へ押されることにより、第一のスライダ41を左方向に押して第一のラッチ装置43をプッシュ操作する。
【0028】
第一のスライダ41の脚部46には板ばね48が取り付けられている。板ばね48は、閉蓋位置にある蓋体10(図7参照)の押圧子18に当接し、閉蓋位置にある蓋体10(図7参照)の下端側が指先で押された時に、その操作に対して適度の反発感を与える。
【0029】
筐体20の前端上縁部には枢軸36によって横長矩形のフラッパ37が回動可能に設けられている。フラッパ37は、筐体20の上側に確保されている蓋体20の開蓋収納位置に蓋体20を出し入れするために、筐体20の上側と化粧パネル101の貫通開口102の上縁部102Aとの間に設けられる横長矩形のスリット状開口部分103(図10参照)を開閉するものである。
【0030】
フラッパ37は、捩りばね38によって閉じ位置側(図7で見て反時計廻り方向)に付勢されて蓋体10と当接し、蓋体10の開閉動作に追従する。つまり、蓋体10の開蓋収納位置への移動に伴って捩りばね38のばね力によって閉じ位置(図10参照)に回動し、蓋体10が閉蓋位置へ移動されることにより、蓋体10に押されて捩りばね38のばね力に抗して開き位置(図7参照)に回動する。フラッパ37は、開き位置では、図7に示されているように、蓋体10を表側より見て蓋体10の裏面側に隠される。
【0031】
つぎに、蓋体10の開閉動作について説明する。
【0032】
蓋体10は、図2、図7に示されているように、略垂直姿勢をもって化粧パネル101の貫通開口102に整合してフラットサーフェース状態で、これを閉じ、併せて筐体20の開口部22を塞ぐ閉蓋位置に位置する。
【0033】
この蓋体10の閉蓋位置は、図6〜図8に示されているように、第一のラッチ装置43によって第一のスライダ41が筐体20に対して筐体後方位置に係止され、第二のラッチ装置45によって第二のスライダ42が筐体20に対して筐体前方位置に係止されることにより得られる。この閉蓋位置では、板ばね48が押圧子48を上から押していることにより、蓋体10が奥側にふらつくことがない。
【0034】
閉蓋位置にある蓋体10の下端部(図2のプッシュマーク部10A)が指先で軽く押されると、蓋体10が板ばね48のばね力に抗して少し時計廻り方向(図7で見て)に回動し、これとリンク接続の第二のスライダ42が手前側に引張られる。これにより、第二のラッチ装置45による第二のスライダ42の筐体前方位置の係止が解除される。
【0035】
そして、指先を蓋体10より離すと、第二のコンストンばね27のばね力によって第二のスライダ42が筐体後方側にスライド移動する。
【0036】
この第二のスライダ42の筐体後方側移動により、閉蓋位置にある蓋体10は、まず、第二の係合子17が第二の案内レール部31の円弧部31Aに案内されて移動しつつ、第一の係合子16を回転中心として略90度、跳ね上がり回動して略水平姿勢になる。これにより、蓋体10は、化粧パネル101の貫通開口102を開き、筐体20の開口部22を開放し、開蓋する。
【0037】
引き続き、第二のスライダ42が筐体後方側へスライド移動することにより、第一の係合子16が第一の案内レール部30に案内され、且つ第二の案内レール部31の円弧部31Aの下端に到達した第二の係合子31が第二の案内レール部31の水平直線部31Bに案内されて各々筐体後方側に移動する。これにより、蓋体10は、略水平姿勢で、筐体20の上側を筐体後方側に水平移動し、図9、図10に示されている開蓋収納位置に位置する。
【0038】
この蓋体10の閉蓋位置から開蓋収納位置への移動は、回転式ダンパ29のダンパ作用によって第二のスライダ42の筐体後方側への移動速度が制限されていることにより、低速度で、ゆっくり重厚感をもって行われる。
【0039】
蓋体10は、この開蓋収納位置では、全体を化粧パネル101より後方(奥側)に収納され、しかも、フラッパ37が捩りばね38のばね力によって閉じ位置に回動し、蓋体10の端部に当接してスリット状開口部分103を閉じる。
【0040】
これにより、図3に示されているように、蓋体10の収納においてフラットサーフェース化が図られ、しかも、フラッパ37によって蓋体10の収納部が隠され、意匠性よく見栄えのよいものになる。
【0041】
蓋体10が上述の開蓋収納位置にある状態で、指先で、押し釦32が押されるか、閉じ位置フラッパ37を介して蓋体10が押されると、第一のラッチ装置43による第一のスライダ41の筐体後方位置の係止が解除される。この係止解除により、第一のコンストンばね26のばね力によって第一のスライダ41が第二のスライダ42と共に筐体前方側に移動する。
【0042】
この移動によって第一の係合子16が第一の案内レール部30に案内され、第二の係合子17が第二の案内レール部31の水平直線部31に案内されて各々筐体前方側に移動し、図4、図11、図12に示されているように、蓋体10が、開蓋収納の略水平姿勢のまま、フラッパ37を押し開きながら、筐体前方側に前進移動して筐体20の前方に突出した閉蓋準備位置に位置する。
【0043】
この閉蓋準備位置では、蓋体10は、略水平姿勢で、所定量だけ、化粧パネル101より前方(手前)に突出露呈する。この状態の蓋体10は、庇として機能し、蓋体10がナビゲータ等の表示パネルのリッドであるように場合、表示パネルに太陽光が入射することを遮蔽する庇として有効に機能する。
【0044】
この蓋体10の開蓋収納位置閉から閉蓋準備位置への移動も、回転式ダンパ29のダンパ作用によって第二のスライダ42の筐体前方側への移動速度が制限されていることにより、低速度で、ゆっくり重厚感をもって行われる。
【0045】
閉蓋したい場合には、閉蓋準備位置にある蓋体10のうち、化粧パネル101より手前に突出露呈する部分を手操作によって押し下げ、蓋体10を略水平姿勢より略垂直姿勢に戻す。
【0046】
この動作により、第一のスライダ41が第一の第一のコンストンばね27のばね力に抗して筐体後方位置に戻り、第一のラッチ装置43により筐体20に対して筐体後方位置で係止され、第二のスライダ42が第二のコンストンばね28のばね力に抗して筐体前方位置に戻り、第二のラッチ装置45によって筐体20に対して筐体前方位置に係止される。これにより、第一のコンストンばね27、第二のコンストンばね28に力が蓄えられると共に、蓋体20が元の閉蓋位置に係止される。
【0047】
上述したように本実施形態の蓋体開閉装置は、第一のスライダ1と第二のスライダ42の二つのスライダのスライド作動と、第一のラッチ装置43と第二のラッチ装置45の二つのラッチ装置のラッチ・ラッチ解除作動により、蓋体10が、略垂直姿勢をもって筐体20の開口部22を塞ぐ閉蓋位置と、略水平姿勢で筐体後方側に移動した開蓋収納位置に加えて、略水平姿勢で筐体前方側に前進移動して筐体前方に突出した閉蓋準備位置を選択的に取ることができるから、開蓋収納位置では、蓋体全体を化粧パネル101による意匠面より奥側にしまい込んで、フラットサーフェース化し、閉蓋準備位置では、蓋体10が化粧パネル101より前方に突出露呈することにより、その突出露呈部をもって蓋体10の閉じ操作を行うことできる。これにより、見栄えがよく、意匠性と操作性の双方を優れたものとすることができる。
【0048】
また、蓋体10の閉蓋位置より開蓋収納位置への開き動作は、第一のラッチ装置43のラッチ解除だけで、第一のコンストンばね27のばね力により自動的に行われ、蓋体10の開蓋収納位置より閉蓋準備位置への移動は、第二のラッチ装置45のラッチ解除だけで、第二のコンストンばね27のばね力により自動的に行われるから、使用者は、閉蓋準備位置より閉蓋位置へ蓋体10を動かすだけでよく、使い勝手がよく、趣向性に富んだものになる。蓋体10を閉蓋位置に戻すことは、使用者の手操作により行われるから、釦操作だけで、ばね力によって閉蓋される場合に比して、閉蓋時に、指を詰める虞れが減り、安全性が向上する。
【0049】
実施形態1では、蓋体10は、回動中心が筐体20の上側にあって、跳ね上げ式に開くが、本発明による蓋体開閉装置は、実施形態2として、図13〜図22に示されているように、蓋体10の回動中心が筐体20の下側にあって、前倒し式に開くものでも、同様に適用できる。
【0050】
この場合、実施形態1と実施形態2とは、天地が逆だけで、実質的に同様に構成することができる。したがって、実施形態2を示す図13〜図22において、実施形態1を示す図2〜図12に対応する部分は、図2〜図12に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0051】
実施形態2では、天地逆により、開蓋収納位置での蓋体10は、トレーとして機能する。また、実施形態2では、押し釦32が省略され、開蓋収納位置での蓋体10を奥側に押すことにより、第一のラッチ装置43のラッチを解除して蓋体10を閉蓋準備位置へ移動させるようになっている。
【0052】
また、実施形態1、実施形態2のものを水平軸線周りに90度回転させ、蓋体10の姿勢を、閉蓋位置で略水平状態、開蓋収納位置、閉蓋準備位置で略垂直状態にすることもでき、実施形態1、実施形態2において、蓋体10の姿勢を、閉蓋位置で略水平状態、開蓋収納位置、閉蓋準備位置で略水平状態としたのは、説明の便宜上のことである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による蓋体開閉装置の適用例を示す乗用車の運転席部分の斜視図である。
【図2】本発明による蓋体開閉装置の実施形態1の閉蓋状態を示す斜視図である。
【図3】本発明による蓋体開閉装置の実施形態1の開蓋収納状態を示す斜視図である。
【図4】本発明による蓋体開閉装置の実施形態1の閉蓋準備状態を示す斜視図である。
【図5】本発明による蓋体開閉装置の実施形態1の要部の斜視図である。
【図6】本発明による蓋体開閉装置の実施形態1の閉蓋状態を示す平面図である。
【図7】本発明による蓋体開閉装置の実施形態1の閉蓋状態を示す側面図である。
【図8】図6の線VIII−VIIIに沿った断面図である。
【図9】本発明による蓋体開閉装置の実施形態1の開蓋収納状態を示す平面図である。
【図10】本発明による蓋体開閉装置の実施形態1の開蓋収納状態を示す側面図である。
【図11】本発明による蓋体開閉装置の実施形態1の閉蓋準備状態を示す平面図である。
【図12】本発明による蓋体開閉装置の実施形態1の閉蓋準備状態を示す側面図である。
【図13】本発明による蓋体開閉装置の実施形態2の閉蓋状態を示す斜視図である。
【図14】本発明による蓋体開閉装置の実施形態2の開蓋収納状態を示す斜視図である。
【図15】本発明による蓋体開閉装置の実施形態2の閉蓋準備状態を示す斜視図である。
【図16】本発明による蓋体開閉装置の実施形態2の要部の斜視図である。
【図17】本発明による蓋体開閉装置の実施形態2の閉蓋状態を示す底面図である。
【図18】本発明による蓋体開閉装置の実施形態2の閉蓋状態を示す側面図である。
【図19】本発明による蓋体開閉装置の実施形態2の開蓋収納状態を示す底面図である。
【図20】本発明による蓋体開閉装置の実施形態2の開蓋収納状態を示す側面図である。
【図21】本発明による蓋体開閉装置の実施形態2の閉蓋準備状態を示す底面図である。
【図22】本発明による蓋体開閉装置の実施形態2の閉蓋準備状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 蓋体
11、12 枢軸
13 ブラケット
14 リンク部材
15 アーム部
16 第一の係合子
17 第二の係合子
18 押圧子
20 筐体
21 小物収納室
22 開口部
23 ベース部材
24、25 直線ガイドレール部
26 第一のコンストンばね
27 第二のコンストンばね
28 ラック
29 回転式ダンパ
30 第一の案内レール部
31 第二の案内レール部
32 押し釦
33 圧縮コイルばね
34 作動子
35 傾斜カム面
36 枢軸
37 フラッパ
38 捩りばね
41 第一のスライダ
42 第二のスライダ
43 第一のラッチ装置
44 係合部
45 第二のラッチ装置
46 脚部
47 垂直前面
100 センタコンソール
101 化粧パネル
102 貫通開口
103 スリット状開口部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の前面部に形成された開口部を開閉する蓋体の開閉装置であって、
前記筐体に前後方向に移動可能に設けられた第一のスライダと、
前記筐体に前後方向に移動可能に設けられた第二のスライダと、
前記筐体と前記第一のスライダとの間に設けられて前記第一のスライダを筐体前方側へ付勢する第一のばね手段と、
前記第一のスライダと前記第二のスライダとの間に設けられて前記第二のスライダを筐体後方側へ付勢する第二のばね手段と、
一端を前記第二のスライダに枢動連結され他端を前記蓋体に枢動連結されたリンク部材と、
前記第一のスライダを前記筐体に対して筐体後方位置に解除可能に係止する第一のラッチ装置と、
前記第二のスライダを前記筐体に対して筐体前方位置に解除可能に係止する第二のラッチ装置とを有し、
前記蓋体は、略垂直姿勢をもって前記開口部を塞ぐ閉蓋位置と、前記第二のラッチ装置による前記第二のスライダの係止が解除されることにより、前記第二のスライダが前記第二のばね手段のばね力によって筐体後方側に移動し、略垂直姿勢より略90度回動して略水平姿勢になり、略水平姿勢で筐体後方側に移動した開蓋収納位置と、前記第一のラッチ装置による前記第一のスライダの係止が解除されることにより、前記第一のスライダが前記第一のばね手段のばね力によって筐体前方側に移動し、前記第二のスライダと共に略水平姿勢で筐体前方側に前進移動して筐体前方に突出した閉蓋準備位置とを選択的に取ることができ、
前記閉蓋準備位置にある前記蓋体が手操作によって略水平姿勢より略垂直姿勢に戻されることにより、前記第一のスライダが前記第一のばね手段のばね力に抗して筐体後方位置に戻って前記第一のラッチ装置により前記筐体に対して係止され、前記第二のスライダが前記第二のばね手段のばね力に抗して筐体前方位置に戻って前記第二のラッチ装置によって前記筐体に対して係止され、前記閉蓋位置に係止されることを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項2】
筐体の前面部に形成された開口部を開閉する蓋体の開閉装置であって、
前記筐体に前後方向に移動可能に設けられた第一のスライダと、
前記筐体に前後方向に移動可能に設けられた第二のスライダと、
前記筐体と前記第一のスライダとの間に設けられて前記第一のスライダを筐体前方側へ付勢する第一のばね手段と、
前記第一のスライダと前記第二のスライダとの間に設けられて前記第二のスライダを筐体後方側へ付勢する第二のばね手段と、
一端を前記第二のスライダに枢動連結され他端を前記蓋体に枢動連結されたリンク部材と、
前記蓋体の左右両側に各々一体的に設けられたアーム部材と、
前記第一のスライダを前記筐体に対して筐体後方位置に解除可能に係止する第一のラッチ装置と、
前記第二のスライダを前記筐体に対して筐体前方位置に解除可能に係止する第二のラッチ装置とを有し、
前記筐体の両側部には、前記筐体の前後水平方向に直線状に延在する第一の案内レール部と、円弧部と前記筐体の前後水平方向に直線状に延在して前記円弧部の端部に連続する水平直線部よりなる第二の案内レール部とが形成され、
前記アーム部材には、前記第一の案内レール部に移動可能に係合する第一の係合子と、前記第二の案内レール部に移動可能に係合する第二の係合子とが設けられており、
前記蓋体は略垂直姿勢をもって前記開口部を塞ぐ閉蓋位置に位置し、前記第二のラッチ装置による前記第二のスライダの係止が解除されることにより、前記第二のスライダが前記第二のばね手段のばね力によって筐体後方側に移動し、当該移動によって閉蓋位置にある前記蓋体が前記第一の係合子を回転中心として前記第二の係合子が前記第二の案内レール部の前記円弧部に案内されて移動して略90度回動して略水平姿勢になって開蓋し、これよりさらに、前記第一の係合子が前記第一の案内レール部に案内され、且つ前記第二の係合子が第二の案内レール部の前記水平直線部に案内されて各々筐体後方側に移動することにより、前記蓋体が略水平姿勢で筐体後方側に移動して開蓋収納位置に位置し、
前記蓋体が前記開蓋収納位置にある状態で、前記第一のラッチ装置による前記第一のスライダの係止が解除されることにより、前記第一のスライダが前記第一のばね手段のばね力によって前記第二のスライダと共に筐体前方側に移動し、当該移動によって前記第一の係合子が前記第一の案内レール部に案内され、前記第二の係合子が前記第二の案内レール部の前記水平直線部に案内されて各々筐体前方側に移動することにより、前記蓋体が略水平姿勢で筐体前方側に前進移動して筐体前方に突出した閉蓋準備位置に位置し、
前記閉蓋準備位置にある前記蓋体が手操作によって略水平姿勢より略垂直姿勢に戻されることにより、前記第一のスライダが前記第一のばね手段のばね力に抗して筐体後方位置に戻って前記第一のラッチ装置により前記筐体に対して係止され、前記第二のスライダが前記第二のばね手段のばね力に抗して筐体前方位置に戻って前記第二のラッチ装置によって前記筐体に対して係止され、前記蓋体が前記閉蓋位置に係止されることを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項3】
前記第一のラッチ装置と前記第二のラッチ装置は、各々、プッシュロック・プッシュオープン動作のオルタネイト式ラッチ機構により構成されており、前記蓋体あるいは前記筐体の前面部に設けられた押し釦が押されることによりプッシュ操作されることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋体開閉装置。
【請求項4】
前記筐体の前方に化粧パネルが配置され、当該化粧パネルには前記閉蓋位置にある前記蓋体が整合配置される貫通開口が形成され、前記蓋体は、前記開蓋収納位置では全体を化粧パネルより後方に収納され、前記閉蓋準備位置では前記化粧パネルより前方に突出露呈すことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の蓋体開閉装置。
【請求項5】
前記筐体と前記化粧パネルの前記貫通開口の縁部との間に、前記蓋体を前記開蓋収納位置に出し入れするために形成されるスリット状開口部分を開閉するフラッパが回動可能に設けられており、前記フラッパはばねによって閉じ位置側に付勢されて前記蓋体と当接し、前記蓋体の前記開蓋収納位置への移動に伴って前記ばねのばね力によって閉じ位置に回動し、前記蓋体が前記閉蓋位置へ移動されることにより前記ばねのばね力に抗して開き位置に回動することを特徴とする請求項4に記載の蓋体開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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