説明

蓋持ち上げ式メモリカードコネクタ

【課題】高温環境において絶縁ベースの変形が避けられ、金属蓋を任意角度に持ち上げても優れた固定性を有する蓋持ち上げ式メモリカードコネクタを提供する。
【解決手段】メモリカードを収容する絶縁ベース1と絶縁ベース1と向かい合って持ち上げ可能な金属蓋2とから構成する。絶縁ベース1と金属蓋2との間の旋接構造を改良し、絶縁ベース1と金属蓋2とが圧迫して挟む作用のない噛み合わせ構造にする。絶縁ベース1の細長い旋接溝17に延長溝172を設け、金属蓋2の旋接突起部23の内側は延長溝17と向かい合う延長突起部231を設ける。これにより、コネクタが高温環境のハンダ付け工程を通過するとき、熱応力による絶縁ベース1の異常が避けられるほか、金属蓋2を持ち上げるとき、金属蓋2の延長突起部231により、細長い旋接溝17の頂部内壁に干渉力を発生させ、金属蓋2を任意角度に持ち上げても優れた固定性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋持ち上げ式メモリカードコネクタに関し、特に絶縁ベースと金属蓋との旋接機構に特徴を有する蓋持ち上げ式メモリカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓋持ち上げ式メモリカードコネクタは、主にプラスチック製の絶縁ベース及び金属蓋より構成される。そのうち、金属蓋は絶縁ベース回転可能に接続し、金属蓋を持ち上げた後、メモリカード(通常のMICRO SDメモリカードなど)を挿入し、再びこれを押下げることにより、絶縁ベースと蓋の閉まった状態となる。さらに、金属蓋を前後に移動し、金属蓋が絶縁ベースに固定(LOCK)、又は固定解除(OPEN)される状態となる。
【0003】
前記した蓋持ち上げ式メモリカードコネクタは、側面の蓋持ち上げ構造のほか、そのほとんどは絶縁ベースの両側の端部に設けられる突起部と金属蓋の両側の端部に設けられる細長い旋接溝とが掛け合わさり、回転可能に接続される。金属蓋両側の旋接突起部は絶縁ベース両側の細長い旋接溝を緊密に圧接して挟むことにより、金属蓋を持ち上げるときに生じる摩擦の働きで任意の持ち上げ角度に固定することができる。
【0004】
蓋持ち上げ式メモリカードコネクタは、上述した金属蓋の任意角度における固定機能が要求されるため、旋接突起部と旋接溝とが摩擦力を発生させる機構が必要である。しかしながら、金属部材とプラスチック材とが磨耗を引き起こすため、1万回の持ち上げ耐久試験のような厳しい要求を満足できない。特に旋接突起部と旋接溝とが圧接して挟む形態のままで組み合わせた後、コネクタがリフローを通過しプリント基板に結合するとき、高温ハンダ付け工程において、プラスチックで形成された旋接溝が金属加工の旋接突起部に押圧されることにより、プラスチック絶縁ベースの旋接溝が熱応力を受け、異常変形して製品不良が発生するため、改善の余地がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、絶縁ベースと金属蓋とが圧接して挟み合うことなく、金属蓋を任意角度で固定できる蓋持ち上げ式メモリカードコネクタを提供することである。
本発明の次の目的は、1万回の持ち上げ耐久試験回数が確保可能な蓋持ち上げ式メモリカードコネクタを提供することである。
さらに、本発明の又一つの目的は、金属蓋の旋接突起部により、優れた一時制止効果を与える蓋持ち上げ式メモリカードコネクタを提供することをである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる蓋持ち上げ式メモリカードコネクタは、メモリカードを収容する絶縁ベースと、この絶縁ベースと向き合い持ち上げ可能な金属蓋とから構成される。この絶縁ベースの細長い旋接溝に延長溝を設け、金属蓋旋接突起部の内側に延長溝と向き合う延長突起部を設ける。これにより、コネクタが高温環境のハンダ付け工程を通過するとき、熱応力による絶縁ベースの異常が避けられる。さらに、金属蓋を持ち上げるとき、金属蓋の延長突起部により、細長い旋接溝頂部内壁に摩擦力を発生させ、金属蓋を任意角度に持ち上げても優れた固定性を有する。
【0007】
本発明にかかる蓋持ち上げ式メモリカードコネクタは、絶縁ベースと金属蓋とが押圧し噛み合う状態から解放するため、絶縁ベースの細長い旋接溝と金属蓋の旋接突起部とにそれぞれ互いに向き合う延長溝と延長部とを設ける。これにより、金属蓋を持ち上げるとき、金属蓋の延長突起部により、細長い旋接溝の頂部内壁に干渉を発生させる。このため、金属蓋を任意角度で固定することができる。
【0008】
本発明にかかる蓋持ち上げ式メモリカードコネクタは、絶縁ベースと金属蓋との回転可能な接合部に圧接して挟むことがない。このため、コネクタがリフローを通過しプリント基板に結合するとき、プラスチックの旋接溝は金属製の旋接突起部から継続に圧迫されることが防止できる。この結果、プラスチック製絶縁ベースの旋接溝付近に異常が発生することを防止できる。
本発明にかかる蓋持ち上げ式メモリカードコネクタは、絶縁ベースの旋接端の細長い旋接溝の中間場所に突起部を設け、この突起部は金属蓋旋接端の突起部を仕切る係止めを形成する。このため、金属蓋の旋接突起部が前後移動する範囲は、突起部による係止作用により、金属蓋の移動変化を正確に捉え、金属蓋の旋接突起部により、優れた一時制止効果を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタを図1から図5に示す。本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタは、メモリカードを収容する絶縁ベース1と、絶縁ベース1と向かい合って設けられる金属蓋2とにより構成される。そのうち、絶縁ベース1はプラスチック製の絶縁ベース体より形成され、ベース体にメモリカードと合致する寸法の収容溝11を設ける。収容溝11の両側にそれぞれ側壁12、13を設け、収容溝11の内部に複数の導通端子14を設けて、メモリカードと電気接続する。各導通端子14の後ろ側のハンダ付け部141はリフローハンダ付けにより、プリント基板に結合する。さらに、絶縁ベース1の両側の底部に、少なくとも一つの接地プレート15、16を設け、絶縁ベース1の両側の旋接端に細長い旋接溝17をそれぞれ設け、旋接溝17の下部面に埋め込み開口部171を設けて、溝内部に延長溝172(図5参照)を設ける。
【0010】
金属蓋2は、金属プレートをプレス加工により断面が逆U字型の蓋体に形成する。その端面の片側に少なくとも一つの接地ばねシート21を設け、両側は内側に折り曲げられた噛み合わせシート22をそれぞれ設け、その両側の回転中心側の端部に旋接突起部23をそれぞれ設け、旋接突起部23と隣り合う内側に、延長溝172と向き合う延長突起部231を設ける。延長突起部231は水平方向へ適度に延びており、回転するときは旋接溝17の頂部内壁と摩擦抵抗を発生し、金属蓋2の両側の旋接端の旋接突起部23は絶縁ベース1の両側の旋接溝17との間に、押圧することのない噛み合わせ状態(図6参照)を形成する。
【0011】
絶縁ベース1と金属蓋2との組み合わせにより、絶縁ベース1と金属蓋2との間に、押圧することのない噛み合わせ状態を形成する。絶縁ベース1と金属蓋2とは、それぞれ回転中心側の端部において、向かい合う旋接溝17と旋接突起部23とが互いに組み合わさる延長溝172と延長突起部231とを設ける。このため、金属蓋2の旋接突起部23は、旋接溝17の内部で前後に移動可能である。図6に示すのは、前進してロックした状態で、図7及び図8に示すのは、後ろ側に移動して解除した状態である。解除状態のとき、金属蓋2は抵抗無く持ち上げることができる。さらに、金属蓋2の延長突起部231により、旋接溝17の頂部の内壁に摩擦が発生する(図9の点線で示す)。このため、金属蓋2は任意の持ち上げ角度において停止することができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る絶縁ベース1と金属蓋2との旋接噛み合わせは、押圧することがない。このため、コネクタがリフローハンダ付け工程を通過してプリント基板に結合するとき、プラスチック製の旋接溝17は、金属製の旋接突起部23の圧迫を受けない。絶縁ベース1の旋接溝17の付近で熱変形の異常が発生しないため、品質が向上し、1万回の持ち上げ耐久試験に耐えられる。
【0013】
本発明の他の実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタを図10及び図11に示す。本発明の他の実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタは、さらに絶縁ベース2の旋接溝17の中間の位置に突起部173を設ける。突起部173は、金属蓋2の旋接突起部23を適当な摩擦力により係止するため、金属蓋2の旋接突起部23が前後して移動する過程で突起部173による引っかかりを利用し、金属蓋2の移動を正確に捉え、旋接突起部23を突起部173で係止し、優れた一時制止効果を与える。
【0014】
さらに、図2に示す通り、絶縁ベース1の底部に備える一つの接地プレート15は、接地プレート15の上部面に2本のピン151を形成し、金属蓋2に設けられた接地ばねシート21に向き合う位置に絶縁ベース1の溝表面18を開ける。溝表面18はさらに二つの挿入孔181を形成し、接地プレート15に備わる2本のピン151を下から上へ向かい合う二つの挿入孔181に挿入し、2本のピン151を折り曲げて溝表面18に密着させ、接地プレート15と金属蓋2の接地ばねシート21とを導通接触(図12及び図13参照)する。
前記した本発明の一実施形態は、本発明の主な技術説明に提示したものであり、本発明の技術請求範囲に何らの制限を加わるものではない。よって、このほかの等効果の応用又は簡易な変更、置き換えなどは、なお本発明の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタにおいて、金属蓋を持ち上げた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタを示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタにおいて、金属蓋がロックされた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタにおいて、金属蓋が解除された状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタにおいて、絶縁ベースと金属蓋旋接端とを解放した状態の部分斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタにおいて、絶縁ベースと金属蓋旋接端のロック状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタにおいて、絶縁ベースと金属蓋旋接端のロックが解除された状態を示す部分断面図である。
【図8】本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタの金属蓋を持ち上げた状態を示す部分断面図である。
【図9】本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタの金属蓋の旋接突起部が前後して移動する状態を示す模式図である。
【図10】本発明の他の実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタにおいて、絶縁ベースと金属蓋旋接端とを解放した状態の部分斜視図である。
【図11】本発明の他の実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタの金属蓋の旋接突起部が前後して移動する状態を示す模式図である。
【図12】本発明の一実施形態による蓋持ち上げ式メモリカードコネクタにおいて、接地プレートと金属蓋接地ばねシートとの導通接触状態を示す模式図である。
【図13】図12のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1:絶縁ベース、2:金属蓋、11:収容溝、12、13:側壁、14:導通端子、141:ハンダ付け部、15、16:接地プレート、151:ピン、17:旋接溝、171:開口部、172:延長溝、173:突起部、18:溝表面、181:挿入孔、21:接地ばねシート、22:噛み合わせシート、23:旋接突起部、231:延長突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリカードを収容する絶縁ベースと、前記絶縁ベースに向き合って設けられ、回転して持ち上げ可能な金属蓋と、を備え、
前記絶縁ベースは、プラスチックからなる絶縁ベース体に複数の導通端子を埋め込み、底部の両端に接地プレートを設け、回転中心側の端部の両側にそれぞれ細長い旋接溝を設け、
前記金属蓋は、金属から形成され、端部に接地ばねシートを設け、両側面にそれぞれ内側に折り曲げられた噛み合わせシートを設け、両側の回転中心側の端部にそれぞれ旋接突起部を設け、
前記絶縁ベースは、前記旋接溝の内部に延長溝を設け、
前記金属蓋は、前記旋接突起部と隣り合う内側に絶縁ベースと釣り合う延長突起部を設け、
前記延長突起部が回転するとき、前記旋接溝の頂部内壁との間に摩擦が発生することにより、前記金属蓋が任意の持ち上げ角度においても固定可能となり、前記金属蓋の両側の旋接端の前記旋接突起部と前記絶縁ベースの両側の前記旋接溝とが押圧しないことを特徴とする蓋持ち上げ式メモリカードコネクタ。
【請求項2】
前記絶縁ベースは、前記旋接溝の下部面に埋め込み開口部を有することを特徴とする請求項1に記載の蓋持ち上げ式メモリカードコネクタ。
【請求項3】
前記金属蓋の前記延長突起部は、水平方向に延びて形成されることを特徴とする請求項1に記載の蓋持ち上げ式メモリカードコネクタ。
【請求項4】
前記絶縁ベースは、前記旋接溝の中間の位置に突起部を設け、前記突起部と前記金属蓋の前記旋接突起部との摩擦力により係止されることを特徴とする請求項1に記載の蓋持ち上げ式メモリカードコネクタ。
【請求項5】
前記絶縁ベースは選択された前記接地プレートの上部面に2本のピンを設け、前記金属蓋の前記接地ばねシートと向き合う位置において、前記絶縁ベースに溝表面を設け、前記溝表面に二つの挿入孔を開け、前記接地プレートに備えられる2本の前記ピンを下から上へ向き合う二つの前記挿入孔に挿入し、2本の前記ピンを折り曲げ前記溝表面に密着させ、前記金属蓋の前記接地ばねシートと導通接触することを特徴とする請求項1に記載の蓋持ち上げ式メモリカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−117329(P2009−117329A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39696(P2008−39696)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願変更の表示】意願2008−165(D2008−165)の変更
【原出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(502249150)詮欣股▲分▼有限公司 (9)
【Fターム(参考)】