説明

薄型静電容量式タッチパネル及び液晶表示装置

【課題】簡単な構成で光学特性や耐久性に優れ、ハンディタイプの機器に適用可能な薄型静電容量式タッチパネルを提供し、さらにその薄型静電容量式タッチパネルを備えた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】ベースフィルム11上に透明導電膜12と、誘電体層14とが積層された構造であり、前記透明導電膜12と誘電体層14との間に、前記誘電体層14上の接触部の位置座標を静電容量の変化により検知するための電極となる導電膜パターン層13を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型静電容量式タッチパネル及び該タッチパネルを備えた液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、指やペンなどによる接触が行われた場所の位置を検出し、外部からデータを入力する入力インターフェース装置であり、その検出方式には抵抗式、静電容量式、超音波式、光学式などがある。
【0003】
これらの検出方式は使用環境により使い分けられているが、コストの点から抵抗式タッチパネルが広く使用されており、とくに携帯情報端末(PDA)携帯電話、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどの各種ハンディタイプの機器に搭載されるタッチパネルは、そのほとんどが抵抗式である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
抵抗式タッチパネルの構成例を図8に示す。
抵抗式タッチパネル90は、上部透明基板91と、この上部透明基板91の表面に形成された上部透明導電膜92と、下部透明基板94と、この下部透明基板94の表面に形成され、上部透明導電膜92に対向配置された下部透明導電膜95とを有する。上部透明基板91と下部透明基板94の外周部には、上部透明導電膜92と下部透明導電膜95との距離を規定し、かつ上部透明基板91と下部透明基板94とを固定するための両面粘着テープ97が設けられ、空気層96が形成されている。また、抵抗式タッチパネル90は、液晶表示装置本体50上に搭載されることにより、液晶表示装置が構成されている。
【0005】
この液晶表示装置では、データ入力用のペンの先端部あるいは人の指先が上部透明基板91を押圧することにより、液晶表示装置本体50の画面表示に応じたデータが入力可能となっている。すなわち、データ入力用のペンの先端部等が上部透明基板91を押圧することにより、上部透明基板91が部分的に変形し、上部透明導電膜92と下部透明導電膜95とが部分的に接触する。この接触に応じた上部透明導電膜92及び下部透明導電膜95の抵抗値を検出し、検出した抵抗値に基づいて接触位置を特定し、この接触位置に対応する液晶表示装置本体50の画面に表示されたデータと対応づけられて液晶表示装置が組み込まれた機器に入力される。
【0006】
しかしながら、このような抵抗式タッチパネルは光学特性や耐久性が不十分であった。すなわち、抵抗式タッチパネルは2枚の透明導電膜の間に空気層を設ける構成であるため、透明導電膜と空気層との屈折率の違いからその界面で光の反射が発生し光学特性(透過率)が低下する問題があった。また、中間に空気層を有する積層構造に対して押圧が繰り返される機構であるため、その積層構造の耐久性にも問題があった。
【0007】
最近では、この光学特性を改善(反射低減)するため、偏光板付き抵抗式タッチパネルが提案されている。これは、液晶の上部偏光板を取り外してタッチパネルの上部に設置、液晶表示素子の構成中にタッチパネルが入り込んだ構成とし、インナータッチパネルとも呼ばれるものである。ここで、液晶の偏光板は、そのまま取り付けておいてもよい。なお、タッチパネル基板として光学的等方性を有するものを用いる必要がある。
【0008】
また、光学特性を改善(反射低減)するために、偏光板と1/4λ位相差板による円偏光板を設置するタイプも提案されている。これは、タッチパネル表面から入射した外光を円偏光に変え、タッチパネルの各界面で反射したときの円偏光方向を変えることにより、反射光を偏光板に吸収させてしまうことを原理とするものであり、原理的には、タッチパネルの最上面を除き3界面に関して設定波長での反射率を0にできる。ただし、この構成の場合、1/4λ位相差板の影響で液晶から出てくる光の位相が変化して着色してしまうことから、これを補正するために、90°軸を変えた1/4λ位相差板を新たに、タッチパネルの下面に取り付けるか、液晶の上面に取り付ける必要がある。
【0009】
また、光学特性を改善(反射低減)するためにこの他、前記積層構造の各界面に反射防止(AR)処理を施したり、前記偏光板を使用する構成と組み合わせたりすることが提案されている。
【0010】
また、積層構造の耐久性を改善するために、空気層に液状物質やゲル状物質を充填する方法が提案されている。
【0011】
加えて、ハンディタイプの機器の使用を前提とした場合には、タッチパネル自体の軽量化や薄型化も要求されており、抵抗式タッチパネルにおいては、基板をガラス‐フィルムの組み合わせから、プラスチック‐フィルム、フィルム‐フィルム等にする改善提案がなされている。
【0012】
【特許文献1】特開2003−307723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記抵抗式タッチパネルの光学特性や耐久性に関する改善はいずれも新たな構成材料が付加され、構造が複雑になった。また、そのための貼り合わせなどの製造工程が増える結果となった。
【0014】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で光学特性や耐久性に優れ、ハンディタイプの機器に適用可能な薄型静電容量式タッチパネルを提供し、さらにその薄型静電容量式タッチパネルを備えた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは、前記課題を検討するに当たり、光学特性や耐久性の改善対策を施した抵抗式タッチパネルではコスト面での優位性がほとんどなくなっていることに着目し、ほかの方式のタッチパネルを検討することにより本発明を成すに至った。
【0016】
すなわち、前記課題を解決するために提供する本発明は、ベースフィルム上に透明導電膜と、誘電体層とが積層された構造であり、前記透明導電膜と誘電体層との間に、前記誘電体層上の接触部の位置座標を静電容量の変化により検知するための電極となる導電膜パターン層を有することを特徴とする薄型静電容量式タッチパネルである(請求項1)。
【0017】
ここで、前記ベースフィルムの厚みは、5〜200μmであることが好ましい。
また、前記ベースフィルムは、偏光機能を有する樹脂フィルムであることが好適である。
【0018】
前記課題を解決するために提供する本発明は、誘電体フィルム上に透明導電膜と、前記誘電体フィルム上の接触部の位置座標を静電容量の変化により検知するための電極となる導電膜パターン層とが積層された構造であることを特徴とする薄型静電容量式タッチパネルである(請求項4)。
【0019】
ここで、前記誘電体フィルムの厚みは、5〜25μmであることが好ましい。
【0020】
前記課題を解決するために提供する本発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載の薄型静電容量式タッチパネルが、液晶表示装置本体の画面上に前記誘電体層が外面となるように搭載されてなることを特徴とする液晶表示装置である(請求項6)。
【0021】
前記課題を解決するために提供する本発明は、請求項4または5に記載の薄型静電容量式タッチパネルが、液晶表示装置本体の画面上に前記誘電体フィルムが外面となるように搭載されてなることを特徴とする液晶表示装置である(請求項7)。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光学特性及び耐久性に優れ、薄型で軽量化できる薄型静電容量式タッチパネル及び液晶表示装置を提供することが可能となる。とくに、ハンディタイプの機器に適用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る薄型静電容量式タッチパネルの第1の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る薄型静電容量式タッチパネルの第1の実施の形態における構成を示す断面図である。
図1に示すように、薄型静電容量式タッチパネル10は、ベースフィルム11上に透明導電膜12と、導電膜パターン層13と、誘電体層14とが順次積層された構造である。
【0024】
ここで、ベースフィルム11は、電気的絶縁性を有し、可視光領域(例えば、450〜650nmの波長領域)の光透過率が高い材料で形成されており、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミドなどが挙げられる。
【0025】
また、外形は矩形のフィルムであることが好ましく、その厚みは5〜200μmであることが好ましい。5μm未満であると耐久性が不十分となり、200μmを超えると光学特性の面で好ましくない。
【0026】
透明導電膜12は、誘電体層14の下面の全面に形成される導電性を有する透明膜であり、その表面抵抗は1000Ω/□以下であることが好ましい。その構成材料としては、例えばITO(インジウム錫酸化物)などが挙げられ、ベースフィルム11の面上にスパッタリング法により形成するとよい。また、その厚みは20〜100nmあればよい。
【0027】
導電膜パターン層13は、透明導電膜12と誘電体層14との間で、透明導電膜12の四辺に、所定パターンで形成されており、透明導電膜12に所定の電圧を印加し、誘電体層14上の接触部の位置座標を静電容量の変化により検知する電極として機能する。
【0028】
導電膜パターン層13のパターン例を図2に示す。図2は本タッチパネル10を上から見た図である。
図2に示すように接触ポイントの座標検出のため、タッチパネルの縁に沿って導電膜パターン層13を有し、その四隅が電極A,B,C,Dとなっている。ここではその形状を単純な矩形で模式的に示しているが、実際には本タッチパネル10のタッチセンサ部分14a(誘電体層14平面上の導電膜パターン層13を除いた部分であり、図中点線で囲われた部分)に均一な電場を形成するような任意のパターンとすることが好ましい。
【0029】
導電膜パターン層13は、銀ペーストなどの導電性を有するインクで透明導電膜12に密着性よく印刷により形成されたもの、あるいは透明導電膜12上にAlなどの金属膜をパターニングし形成されたものであればよい。
【0030】
誘電体層14は、誘電体からなる光学薄膜であり、タッチパネル10において形成される回路の感知レベルに合わせてその種類と厚みを決定すればよい。例えば、厚み100〜50nmのSiO薄膜をスパッタリング法などにより透明導電膜12上に形成することが好ましい。
【0031】
なお、誘電体層14上に反射防止膜(AR膜)を形成してもよく、また誘電体層14上にハードコート層を形成し、その上に反射防止膜を形成してもよい。あるいは、誘電体層14上にハードコート層、反射防止膜を形成し、さらにその上に防汚層を形成してもよい。
【0032】
ここで、反射防止膜は、異なる屈折率を有する屈折率層を2層以上積層したものを用いることができ、例えば、第1の屈折率層、第2の屈折率層、第3の屈折率層、第4の屈折率層からなる4層構造のもの、あるいは第1〜第3の屈折率層からなる3層構造のものとすればよい。
【0033】
特に、誘電体層14側から順に、比較的屈折率の高い第1の屈折率層、比較的屈折率の低い第2の屈折率層、比較的屈折率の高い第3の屈折率層、比較的屈折率の低い第4の屈折率層より構成することによって、即ち第1及び第3の屈折率層の屈折率を、第2及び第4の屈折率層の屈折率に比して大として構成することによって、それらの光干渉効果を利用して反射率を効率良く抑えることができる。
【0034】
また特に、第3の屈折率層の光学厚みを光の波長λ(特に、最も視認性の高い波長である550nmの波長)の1/2付近の厚みとし、第4の屈折率層の厚みを光の波長λの1/4付近に調整すると、可視光全域に渡り反射防止性能が得られることはよく知られている。
【0035】
各屈折率層の成膜方法としては湿式コート、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法など各種考案されていてどのような方法で成膜しても十分な反射防止性能は得られるが、表示体の最表面、特にタッチパネルの最表面として十分な機械特性、耐久性、耐環境性が必要とされることからスパッタリング法が望ましく、さらに生産性を高めるため基材をロール状にして真空槽内で巻き取りながら成膜するロールコーティング法が最も望ましい。
【0036】
そして反射防止膜を構成する屈折率層のうち、比較的屈折率の高い第1及び第3の屈折率層の材料としては、1.85以上の屈折率を持つ光透過性材料であれば特に制限は無いが、SiN、TiO、Nb、Ta、ITO及びこれらを主成分とした合金酸化物が一般的に用いられる。即ち、上述のSiN、TiO、Nb、Ta、ITOを主成分としてその特性に影響を与えない範囲でSi、Sn、Zr、Al等の金属を添加したものがあげられる。尚、上述のTaは原料が高価であること、TiOは短波長領域において吸収が出易く特にスパッタリング法で形成する際には生産性が悪くばらつきも出易いことから、NbもしくはSiNが望ましい。
【0037】
また帯電防止性能が要求される場合にはITOの導電性膜が用いられるが、ITOは100℃以下の低温で成膜した場合は450nm以下の波長で光の吸収があるため好ましくない。
比較的屈折率の低い第2及び第4の屈折率層としては、MgF、SiO等、またはこれに微量の添加物を混入した材料が用いられるが、スパッタリング法を用いる場合はSiOが最も望ましい。
【0038】
また誘電体層14側から順に第1〜第3の屈折率層を設けて、第2の屈折率層の屈折率を第1の屈折率層に比して大とし、第3の屈折率層の屈折率を第1の屈折率層の屈折率に比して小とする場合にも、各層の光干渉効果を利用して同様の反射防止性能が得られる。
特に、比較的屈折率の高い第2の屈折率層の光学厚みを光の波長λの1/2付近の厚みとし、比較的屈折率の低い第3の屈折率層の厚みを光の波長λの1/4付近に調整すると可視光全域に渡り反射防止性能が得られる。第1の屈折率層の屈折率はフィルム基材及びその上のハードコートの屈折率に依存するが、フィルム基材としてPETフィルムもしくはTACフィルムを用いる場合は1.70〜1.80の屈折率とすることが望ましい。
【0039】
このような構成において第1の屈折率層をスパッタリング法で作製するには、Siを含む金属合金酸化物が用いられる。代表的なものとしてはSiTi酸化物合金、SiZr酸化物合金、SiSn酸化物合金、NbSi酸化物合金が知られていて、それぞれの合金の配合比によって所望の屈折率が得られる。
【0040】
第2の屈折率層については前述の第1〜第4の屈折率層を設ける構成とする場合の高屈折率層である第1及び第3の屈折率層と同様に、SiN、TiO、Nb等を用いることができる。また第3の屈折率層としては、MgF、SiO等、またはこれに微量の混入物を混入した材料を用いることができる。スパッタリング法を用いる場合はSiOが望ましい。
【0041】
ハードコート層としては、メラニン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂などの硬化型樹脂が用いられる。厚みとしては十分な硬度をもつ範囲で薄く施すのが好ましく、5μm以上、15μm以下の範囲とすることが望ましい。しかしながら、このハードコート層の厚さはその材料特性から厚さむらが±1〜2μm程度生じる恐れがある。実用上、このハードコート層の厚さが3μm未満であると、タッチパネルに用いる場合の入力時即ち押圧時の硬度が十分得られなくなる恐れがあり、20μmを越えると、材料の特性からベースフィルムとの応力の違いから反りが発生する恐れがある。従って、ハードコート層の厚さとしては、3μm以上20μm以下とすることが望ましい。
【0042】
また、このハードコート層内にシリカゲル、樹脂ビーズ等を分散させたものを用いる場合は、光を散乱させることにより防眩性を付与することができ、より視認性の向上をはかることができる。
【0043】
なお、ハードコート層上、または誘電体層14上に反射防止膜を形成する前に、両者の密着性を向上させるため、真空槽内でプラズマ処理をして表面を改質するとよい。さらにその後、密着層を被着するのが望ましい。
【0044】
この密着層としては、CrO(x=1〜2)、SiN等の金属酸化物、金属窒化物を用いることができる。特に、スパッタリング法により成膜されたSiO(x=1〜2)の還元気味Si酸化物を3nm以上、10nm以下程度施したものが好ましく用いられる。SiOが3nm未満では十分な密着性が得られず、10nm以上ではSiO膜の光吸収により十分な透過率が得られない。
【0045】
反射防止膜の上に形成する防汚層としては、3nm以上5nm以下程度の厚みの層を湿式法で形成するのが望ましい。3nm未満では十分な防汚性能が得られず、厚さが5nmを越えると光学特性に影響を与えるためである。
【0046】
防汚層の材料としては、下記の一般式(1)〜(3)で示す材料を用いるものである。
すなわち、防汚層としては、例えば下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することが好ましい。
【0047】
(RO)Si−R−RCO−Rf−COR−R−Si(OR…(1)
但し、式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基、RはO、NH、Sのいずれかであり、Rはアルキレン基を、Rはアルキル基を示す。
【0048】
また、他の防汚剤として、下記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することもできる。
RfCOR−R−Si(OR …(2)
但し、式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基、RはO、NH、Sのいずれかであり、Rはアルキレン基を、Rはアルキル基を示す。
【0049】
更に、他の防汚剤としては、例えば下記一般式(3)で示されるフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することが好ましい。
Rf´−R−Si(OR …(3)
但し、Rf´はフルオロアルキル基を、Rは炭素数7未満のアルキレン基を、Rはアルキル基を其々示す。
【0050】
上述の一般式(1)〜(3)で示される各材料を防汚層として用いることによって、汚れの付着力を低下させることができ、また硬い表面を形成することができる。更に、表面エネルギーの極性項成分γpを低くすることができ、耐久性、防汚性等に優れた反射防止膜を形成することができ、これを用いることにより防汚性、耐久性等の特性に優れたタッチパネル、液晶表示装置を構成することができる。
【0051】
被覆層を形成させる方法には、有機フッ素化合物を溶剤に溶解させてそれをグラビアコーターにより形成する方法(グラビアコート法)、ディッピングあるいは噴霧により塗布する方法、擦り付けて塗布する方法の他、真空法により形成させる方法等がある。
本発明に用いる防汚剤は、通常、上記式(1)又は(2)で示されるパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物と上記式(3)で示されるフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を、溶媒に希釈して用いる。溶媒として用いられるものは、特に限定されないが、使用にあたっては組成物の安定性、被塗布面の最表面層に対する濡れ性、揮発性などを考慮して決められるべきである。
【0052】
本発明においては、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、sec−アミルアルコール等のアルコール系溶剤が好ましく、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、アルコール系溶剤に炭化水素系溶剤を混合して混合溶剤とすることも可能である。
このような炭化水素系溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン等のパラフィン類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン等のシクロパラフィン等の沸点が50〜120℃の範囲の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
その他、フッ化炭化水素系溶媒を用いることも可能である。フッ化炭化水素系溶媒は、脂肪族炭化水素、環式炭化水素、エーテル等の炭化水素系溶媒の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換した化合物である。例えば日本ゼオン社製の商品名ZEORORA−HXE(沸点78℃)、パーフルオロヘプタン(沸点80℃)、パーフルオロオクタン(沸点102℃)、アウジモント社製の商品名H−GALDEN−ZV75(沸点75℃)、H−GALDEN−ZV85(沸点85℃)、H−GALDEN−ZV100(沸点95℃)、H−GALDEN−C(沸点135℃)、H−GALDEN−D(沸点165℃)等のハイドロフルオロポリエーテル或いはSV−110(沸点110℃)、SV−135(沸点135℃)等のパーフルオロポリエーテル、住友3M社製のFCシリーズ等のパーフルオロアルカン等を例示することができる。これらのフッ化炭化水素系溶媒の中でも、上記一般式(1)、(2)又は(3)のフッ素系化合物を溶解する溶媒として、ムラのない、膜厚が均一な有機膜を得るために、沸点が70〜240℃の範囲のものを選択し、さらにはハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)若しくはハイドロフルオロカーボン(HFC)を選択し、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることが好ましい。沸点が低すぎると、例えば塗布ムラになりやすい場合があり、一方沸点が高すぎると乾燥がうまく行かず塗布形態が良くならない場合がある。また、HFPE又はHFCは、一般式(1)、(2)又は(3)で表されるアルコキシラン化合物に対する溶解性が優れており、優れた塗布面を得る事が出来る。
【0053】
また、特に末端にアルコキシシラノ基をもつ有機フッ素化合物を塗布することによって十分な効果を得ることができる。
有機フッ素化合物としては、分子内にフッ素を有する有機化合物であればエステル、アミン、カルボン酸等、いずれも使用可能であるが、パーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキル基を使用することが特に好ましい。
表面エネルギーを低下させるには、その有機分子の配向を考えなければならない。有機分子の長さは通常2〜3nmであるために、その分子がうまく配向しないと低表面エネルギーを得ることができない。つまり、うまくフッ素原子が最表面に表れないと表面エネルギーを低下させることはできない。分子がランダムに配向し、極性基が表れると表面エネルギー、特に極性項が上昇する。
【0054】
一般に、表面エネルギーの極性項成分γpが3.0(erg/cm)以下であれば耐汚染性が良好であるとされる。
上述の被覆方法により反射防止膜の上に防汚層を形成することによって、表面エネルギーを低下させることができ、本発明においては十分な防汚性、撥水性を得ることができる。
【0055】
つぎに、本発明で使用する静電容量結合方式による位置検出方法の基本原理を説明する。
図3は、X軸(図中横方向)に着目した位置検出方法の基本原理である。なお、Y軸も同様な検出原理であり、実際の回路においてはスイッチング回路の切替によってX座標、Y座標を確認する。
【0056】
まず、四隅の電極には、同相同電位の電圧(交流)が印加される。この時、4電極は同電位にあるため、電極間(タッチセンサ部)に電流は流れない。
【0057】
ついで、例えば図2においてタッチセンサ部分14a上の点Pを指、導電性ペン等でタッチする。ここで、キルヒホッフの法則により、つぎの関係式が成り立つ。なお、接触位置から電極A、Dまでの抵抗をr1、電極B、Cまでの抵抗をr2、R=r1+r2とし、この時の接触物からグランドまでのインピーダンスをZ、電極A,B,C,Dに流れる電流をそれぞれia,ib,ic,idとする。
【0058】
(ia+id)r1+(ia+ib+ic+id)Z+V1=0 …式1
(ib+ic)r2+(ia+ib+ic+id)Z+V2=0 …式2
【0059】
ついで、式1,2より、
(ia+id)r1+V1=(ib+ic)r2+V2
【0060】
ついで、この式にR−r1=r2を代入して、式を整えると、次式3となる。
r1/R=(ib+ic)/(ia+ib+ic+id)+(V2−V1)/(ia+ib+ic+id)R …式3
【0061】
ここで、通常回路では、電極A,B,C,Dから電流は流れない。したがって、電流を流さない設定とするためV1=V2とすると、式3は次式となる。
【0062】
r1/R=(ib+ic)/(ia+ib+ic+id) …式4
【0063】
よって、それぞれの電極に流れる電流が測定によって求められれば、上式4よりX軸方向の接触位置を求めることが可能である。具体的には、電極A,B,C,Dに電流検出器を取り付け、それぞれの電流検出器からの電流信号により接触部の位置座標を算出する信号処理回路を備えるとよい。
また、上式4は、接触物とグランド間のインピーダンスZに依存しない。よって、インピーダンスがゼロ、無限大で無い限り、接触物の変化、状態は無視でき、式は成立する。
【0064】
薄型静電容量式タッチパネル10を液晶表示装置本体と組み合わせた例を図4に示す。
薄型静電容量式タッチパネル10が、配光膜及び液晶駆動用スイッチング素子からなる液晶51と偏光板52,53を備えた液晶表示装置本体50の画面上に誘電体層14が外面となるように搭載されてなる構成である。
【0065】
液晶表示装置本体50は、電源が投入されると駆動回路(図示せず)により液晶駆動用スイッチング素子を駆動させ、液晶の配列状態を変化させて文字や画像を表示する。
【0066】
この際、薄型静電容量式タッチパネル10の四隅の電極にも電圧が印加されており、例えば液晶表示装置本体50の画面に表示された文字や画像から選択すべき項目が位置する誘電体層14(タッチセンサ部14a)上の対応部分を指等でタッチすると、接触部分が容量結合して静電容量が変化するので前記説明した通り、式4により位置座標が算出される。ついで、その位置座標を示す信号が制御回路に出力され、制御回路はその座標信号に基づいて液晶表示装置本体50の画面上に表示された文字や画像に対するタッチ箇所を特定することができる。したがって、制御回路はそのタッチ箇所に応じた内容に基づき、文字や画像を液晶表示装置本体50の画面上に表示させたり、あるいはほかの装置に対応する処理を行わせたりすることが可能となる。
【0067】
なお、液晶表示装置本体50としては、液晶駆動用のスイッチング素子がTFTであるTFT液晶が軽量、低消費電力の点で好適であるが、STN液晶などほかの液晶であっても本発明に使用することができる。
【0068】
つぎに、本発明に係る薄型静電容量式タッチパネルの第2の実施の形態の構成を図5に示す。
薄型静電容量式タッチパネル20は、第1の実施の形態である薄型静電容量式タッチパネル10において、ベースフィルム11から偏光フィルム21に変更され、その偏光フィルム21上に第1の実施の形態と同様の透明導電膜12と、導電膜パターン層13と、誘電体層14とが順次積層された構造とするものである。
【0069】
偏光フィルム21は、いわゆる偏光板であり、それ自体で液晶表示装置本体における偏光板と同じ偏光機能を有する。
【0070】
また、本タッチパネル20は、第1の実施の形態の薄型静電容量式タッチパネル10と同様の原理(図3)で誘電体層14上の接触部の位置検出が可能である。
【0071】
なお、第1の実施の形態と同様に、誘電体層14上に反射防止膜(AR膜)を形成してもよく、また誘電体層14上にハードコート層を形成し、その上に反射防止膜を形成してもよい。あるいは、誘電体層14上にハードコート層、反射防止膜を形成し、さらにその上に防汚層を形成してもよい。
【0072】
この薄型静電容量式タッチパネル20を液晶表示装置本体と組み合わせる場合には、例えば図4において、薄型静電容量式タッチパネル10から薄型静電容量式タッチパネル20に変更すればよい。さらに、それに加えて液晶表示装置本体50の偏光板53を省略することも可能である。また、このような構成の液晶表示装置は図4の液晶表示装置と同様の機能を有する。
【0073】
つぎに、本発明に係る薄型静電容量式タッチパネルの第3の実施の形態の構成を図6に示す。
図6に示すように、薄型静電容量式タッチパネル30は、誘電体フィルム31上に透明導電膜12と導電膜パターン層13とが順次積層された構造である。
【0074】
ここで、誘電体フィルム31は、誘電体で、可視光領域(例えば、450〜650nmの波長領域)の光透過率が高い材料で形成されたフィルムであり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN))、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミドなどが挙げられる。
【0075】
また、外形は矩形のフィルムであることが好ましく、その厚みは5〜25μmであることが好ましい。5μm未満であると耐久性が不十分となり、25μmを超えると誘電体として不適である。
【0076】
導電膜パターン層13は、透明導電膜12上の四辺に、所定パターンで配置されるものであり、透明導電膜12に所定の電圧を印加し、誘電体フィルム31上の接触部の位置座標を静電容量の変化により検知する電極として機能する。
この導電膜パターン層13のパターンは第1の実施の形態の場合と同様でよい。
【0077】
また、導電膜パターン層13は、銀ペーストなどの導電性を有するインクを透明導電膜12に密着性よく印刷により形成したり、あるいは透明導電膜12上にAlなどの金属膜をパターニングし形成したりすればよい。
【0078】
透明導電膜12は、誘電体フィルム31の全面に形成される導電性を有する透明膜であり、その表面抵抗は1000Ω/□以下であることが好ましい。その構成材料としては、例えばITO(インジウム錫酸化物)などが挙げられ、スパッタリング法により形成するとよい。また、その厚みは20〜100nmあればよい。
【0079】
また、本タッチパネル30は、第1の実施の形態の薄型静電容量式タッチパネル10と同様の原理(図3)で誘電体フィルム31上の接触部の位置検出が可能である。
【0080】
なお、第1の実施の形態と同様に、誘電体フィルム31の透明導電膜12が形成される面とは反対面上に反射防止膜(AR膜)を形成してもよく、また誘電体フィルム31上にハードコート層を形成し、その上に反射防止膜を形成してもよい。あるいは、誘電体フィルム31上にハードコート層、反射防止膜を形成し、さらにその上に防汚層を形成してもよい。
【0081】
薄型静電容量式タッチパネル30を液晶表示装置本体と組み合わせた例を図7に示す。
薄型静電容量式タッチパネル30が、配光膜及び液晶駆動用スイッチング素子からなる液晶51と偏光板52,53を備えた液晶表示装置本体50の画面上に誘電体フィルム31が外面となるように搭載されてなる構成である。
【0082】
この液晶表示装置では、液晶表示装置本体50への電源投入と同時に、薄型静電容量式タッチパネル30の四隅の電極にも電圧が印加される。ここで、例えば液晶表示装置本体50の画面に表示された文字や画像から選択すべき項目が位置する誘電体フィルム31のタッチセンサ部上の対応部分を指等でタッチすると、接触部分が容量結合して静電容量が変化するので第1の実施の形態において説明した通り、式4により位置座標が算出される。ついで、その位置座標を示す信号が制御回路に出力され、制御回路はその座標信号に基づいて液晶表示装置本体50の画面上に表示された文字や画像に対するタッチ箇所を特定することができる。したがって、制御回路はそのタッチ箇所に応じた内容に基づき、文字や画像を液晶表示装置本体50の画面上に表示させたり、あるいはほかの装置に対応する処理を行わせたりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る薄型静電容量式タッチパネルの第1の実施の形態における構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る薄型静電容量式タッチパネルの第1の実施の形態における構成を示す上面図である。
【図3】本発明に係る薄型静電容量式タッチパネルにおける接触部の位置検出の原理に関する説明図である。
【図4】本発明に係る液晶表示装置の一実施の形態における構成を示す断面図である。
【図5】本発明に係る薄型静電容量式タッチパネルの第2の実施の形態における構成を示す断面図である。
【図6】本発明に係る薄型静電容量式タッチパネルの第3の実施の形態における構成を示す断面図である。
【図7】本発明に係る液晶表示装置の他の実施の形態における構成を示す断面図である。
【図8】従来の抵抗式タッチパネルを搭載した液晶表示装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
10,20,30…薄型静電容量式タッチパネル、11…ベースフィルム、12…透明導電膜、13…導電膜パターン層、14…誘電体層、14a…タッチセンサ部、21…偏光フィルム、31…誘電体フィルム、50…液晶表示装置本体、51…液晶、52,53…偏光板、90…抵抗式タッチパネル、91,94…透明基板、92,95…透明導電膜、96…空気層、97…両面粘着テープ、A,B,C,D…電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム上に透明導電膜と、誘電体層とが積層された構造であり、
前記透明導電膜と誘電体層との間に、前記誘電体層上の接触部の位置座標を静電容量の変化により検知するための電極となる導電膜パターン層を有することを特徴とする薄型静電容量式タッチパネル。
【請求項2】
前記ベースフィルムの厚みは、5〜200μmであることを特徴とする請求項1に記載の薄型静電容量式タッチパネル。
【請求項3】
前記ベースフィルムは、偏光機能を有する樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の薄型静電容量式タッチパネル。
【請求項4】
誘電体フィルム上に透明導電膜と、前記誘電体フィルム上の接触部の位置座標を静電容量の変化により検知するための電極となる導電膜パターン層とが積層された構造であることを特徴とする薄型静電容量式タッチパネル。
【請求項5】
前記誘電体フィルムの厚みは、5〜25μmであることを特徴とする請求項4に記載の薄型静電容量式タッチパネル。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一に記載の薄型静電容量式タッチパネルが、液晶表示装置本体の画面上に前記誘電体層が外面となるように搭載されてなることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項4または5に記載の薄型静電容量式タッチパネルが、液晶表示装置本体の画面上に前記誘電体フィルムが外面となるように搭載されてなることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−23904(P2006−23904A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200375(P2004−200375)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】