薄膜コンデンサ
【課題】トレンチ型の薄膜コンデンサの反りを抑制すること。
【解決手段】基板と、誘電体膜と、一対の電極と、を備え、誘電体膜が、基板から離れる方向に向けて延びる複数の凸部を形成する凹凸面に沿って設けられている薄膜コンデンサ。凹凸面が、基板の主面に平行な面に配置された1又は2以上の区画7を有するパターン5aを構成し、区画7の部分及びこれ以外の部分のうちいずれかに凸部が配されている。区画7のうち少なくとも一部がx軸方向に沿って延びた部分71を有し、x軸方向に直交するy軸方向から見たときに、2以上の延びた部分71が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。
【解決手段】基板と、誘電体膜と、一対の電極と、を備え、誘電体膜が、基板から離れる方向に向けて延びる複数の凸部を形成する凹凸面に沿って設けられている薄膜コンデンサ。凹凸面が、基板の主面に平行な面に配置された1又は2以上の区画7を有するパターン5aを構成し、区画7の部分及びこれ以外の部分のうちいずれかに凸部が配されている。区画7のうち少なくとも一部がx軸方向に沿って延びた部分71を有し、x軸方向に直交するy軸方向から見たときに、2以上の延びた部分71が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜コンデンサの小型化、高容量化を図るために、基板にトレンチを形成することにより電極表面積を増大させた、いわゆるトレンチ型の薄膜コンデンサが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−325970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のトレンチ型の薄膜コンデンサは、外部から熱を受けたときに反りが生じやすいという問題を有していた。特に、トレンチを増やして高い静電容量を達成しようとすると、反りの問題が顕在化する傾向にあった。薄膜コンデンサの反りは、誘電体膜の特性の変動等、種々の不具合を引き起こすため、この反りを十分に抑制することが強く求められる。
【0004】
そこで、本発明の目的は、トレンチ型の薄膜コンデンサの反りを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板と、該基板の一方面側に設けられた誘電体膜と、該誘電体膜を間に挟んで設けられた一対の電極膜とを備え、誘電体膜が、基板から離れる方向に向けて延びる凸部を形成する凹凸面に沿って設けられている薄膜コンデンサに関する。凹凸面は、基板の主面に平行な面に配置された1又は2以上の区画を有するパターンを構成し、この区画の部分及びこれ以外の部分のうちいずれかに凸部が配されている。この区画のうち少なくとも一部が所定の方向に沿って延びた部分を有し、所定の方向に直交する方向から見たときに、2以上の延びた部分が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。
【0006】
上記区画に凸部が配されている場合には、上記所定の方向に直交する方向において、凸部の端部の位置が揃うことなく、ずれた状態となる。換言すれば、上記所定の方向に直交する方向から区画を投影した場合に、その投影像において上述した区画以外の部分は残らなくなる。このように凸部の端部の位置がずれていると、それら凸部の間のトレンチは、屈曲した線に沿って形成される。トレンチの部分の剛性は、凸部の部分よりも相対的に低いため、トレンチが直線状に連続的に形成されていると、その部分でトレンチに直交する方向に対する薄膜コンデンサの剛性が低下して、反りが生じやすい。しかし、上記のようにトレンチが屈曲することにより、トレンチが直線状に形成されている部分が少なくなり、その結果薄膜コンデンサの反りが抑制される。上記区画以外の部分に凸部が配されている場合も同様に、トレンチが直線状に形成されている部分が少なくなるため、薄膜コンデンサの反りが抑制される。
【0007】
上記延びた部分を有する区画は、互いに直交する2以上の短冊状の部分が連結した形状を有するものを含んでいることが好ましい。これにより反り抑制の効果がより顕著になる。また、これらの区画に凸部が配されている場合には、凸部自体が安定して形成されるため、凸部を形成する工程やその後の工程において凸部が損傷することが少なくなる。その結果、より高い歩留まりで薄膜コンデンサを製造することが可能になる。さらには、電極表面積を高密度に形成できる点でも有利である。
【0008】
本発明に係る薄膜コンデンサにおいては、基板の主面内の任意の直線上に少なくとも1つの凸部が配されていることが好ましい。基板の主面内の直線上にトレンチのみが連続的に形成されていると、その直線に直交する方向において反り抑制の効果が小さくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の薄膜コンデンサによれば、反りの発生を十分に抑制しながら、電極表面積を大きくして高い静電容量を達成することが可能である。また、凸部又はトレンチが、所定の方向において終端する区画の部分に配されていることにより、その所定の方向の全域にわたって凸部又はトレンチが形成されている場合と比較して、その方向における応力が緩和される。応力が緩和されると、誘電体膜の損傷等に起因するリーク電流も抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について必要により図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。各図において同一又は相当する要素には同一符号が付される。重複する説明は適宜省略される。
【0011】
図1及び2は、薄膜コンデンサの一実施形態を示す斜視図及び平面図である。図3は図2のIII−III線に沿う端面図である。図1〜3に示す薄膜コンデンサ1は、基板10と、基板10の一方面側に設けられた誘電体膜20と、誘電体膜20を間に挟んで設けられた下部電極11及び上部電極12と、誘電体膜20の基板10とは反対側にある上部電極12上に設けられ、下部電極11又は上部電極12の一部が露出する2つの開口21aを形成している保護膜21と、開口21aにおいて下部電極11又は上部電極12にそれぞれ接続された2つの電極パッド15とを備える。下部電極11、誘電体膜20及び上部電極12は基板10上のトレンチ形成層50に設けられている。
【0012】
下部電極11の誘電体膜20側の面Sは、基板10から離れる方向に向けて延びる複数の凸部3を形成する凹凸面である。隣り合う凸部3の間にはトレンチ4が形成されている。下部電極11上の誘電膜20は、この凹凸面Sに沿って設けられている。
【0013】
凹凸面Sは、基板10の主面に平行な面に配列された複数の区画7を有する周期的な二次元のパターンを構成している。図4は、凹凸面Sのパターンを示す平面図である。図3の一部は図4のIII−III線に沿う端面図に相当する。図4に示すパターン5aは、互いに離れて規則的に配置された複数の区画7を有する。区画7の部分に凸部3が配される。
【0014】
区画7は、基板10の長手方向であるx軸方向に沿って延びた短冊状の第1の部分71、及び/又はx軸に直交するy軸方向に沿って延びた短冊状の第2の部分72を有している。第1の部分71及び第2の部分72を有する区画7は、これらがそれぞれの中間部において互いに直交しながら連結した形状を有している。係る形状を有する区画7は十字型であると言うこともできる。
【0015】
パターン5aにおいては、パターン5a内でx軸方向に直交するy軸方向から見たときに、2以上の第1の部分71が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第1の部分71を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7xのx軸方向における位置を互い違いにずらしながらy軸方向に沿って配列されている。同様に、x軸方向から見たときに、2以上の第2の部分72が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第2の部分72を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7yのy軸方向における位置を互い違いにずらしながらx軸方向に沿って配列されている。このように複数の区画7が互い違いに配列されていることにより、区画7以外の部分に配されるトレンチ4が多くの部分で屈曲した線に沿って形成される。これにより反り抑制の効果が高められる。
【0016】
パターン5aにおいては、基板10の主面内に任意の直線を引いたときに、その直線上に少なくとも1つの区画7が存在する。これは、薄膜コンデンサ1において、基板10の主面内の任意の直線上に少なくとも1つの凸部10が設けられることに対応する。
【0017】
図5、6、7、8及び9は、それぞれ、凹凸面Sのパターンの他の実施形態を示す平面図である。
【0018】
図5に示すパターン5bを構成する区画7も、x軸方向に沿って延びた短冊状の第1の部分71、及び/又はy軸方向に沿って延びた短冊状の第2の部分72を有している。パターン5bを構成する区画7は、2つの第1の部分71及び1つの第2の部分72を有し、これらが第1の部分71の中間部において互いに直交しながら連結された形状を有するものを含んでいる。係る形状を有する区画はH形であると言うこともできる。
【0019】
パターン5bをy軸方向から見たときに、2以上の第1の部分71が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第1の部分71を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7xのx軸方向における位置を互い違いにずらしながらy軸方向に沿って配列されている。同様に、パターン5bをx軸方向から見たときに、2以上の第2の部分72が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第2の部分72を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7yのy軸方向における位置を互い違いにずらしながらx軸方向に沿って配列されている。このように隣り合う2つの区画を抽出したとき、一方の区画の短冊状の第1の部分71と、他方の区画の端部7xとが重なるようにずらして配置されていることが好ましく、また、そのような位置関係で複数の区画が交互に周期的に配列されていることがより好ましい。
【0020】
図6に示すパターン5cは、x軸方向に沿って延びた短冊状の第1の部分71からなる区画7aと、y軸方向に沿って延びた短冊状の第2の部分72からなる区画7bとから構成される。y軸方向からパターン5cを見たときに、第1の部分71は、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第1の部分71を有する複数の区画7aが、それぞれが終端する端部7xの位置を一定方向に順次ずらしながら配列されている。また、x軸方向からパターン5cを見たときに、第2の部分72は、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第2の部分72を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7yの位置を一定方向に順次ずらしながら配列されている。
【0021】
図7に示すパターン5dを構成する区画7は、x軸方向に沿って延びた短冊状の第1の部分71、及び/又はy軸方向に沿って延びた短冊状の第2の部分72を有している。パターン5dを構成する区画7は、第1の部分71及び第2の部分72を有し、これらがそれぞれの一方の端部において互いに連結された形状を有するものを含んでいる。
【0022】
パターン5dをy軸方向から見たときに、2以上の第1の部分71が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第1の部分71を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7xの位置を一定方向に順次ずらしながら配列されている。また、パターン5dをx軸方向から見たときに、2以上の第2の部分72が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第2の部分72を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7yの位置を一定方向に順次ずらしながら配列されている。
【0023】
図8に示すパターン5eを構成する区画7は、x軸方向の全域にわたって延びた短冊状の非終端部分70と、y軸方向に延びた短冊状の複数の第2の部分72とを有し、これらがそれぞれの中間部において互いに直交しながら連結された形状を有するものを含んでいる。パターン5eをx軸方向から見たとき、2以上の第2の部分72が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第2の部分72を有する2つの区画7が、それぞれが終端する端部7yの位置が互い違いになるように配列されている。
【0024】
図9に示すパターン5fは、x軸方向又はy軸方向の全域にわたって延びた複数の短冊状の部分によって形成された格子状の非終端部分70、及びy軸方向に沿って延びた短冊状の第2の部分72を有する区画7aと、x軸方向に沿って延びた短冊状の第1の部分71及び/又はy軸方向に延びた短冊状の第2の部分72を有する区画7bとから構成される。区画7bの格子状の非終端部分70によって区分された各領域内に区画7bが配置されている。区画7bは、1つの第1の部分71及び2つの第2の部分72を有し、これらが第2の部分72の中間部において互いに直交しながら連結された形状を有するものを含んでいる。
【0025】
パターン5fをx軸方向から見たときに、区画7aが有する第2の部分72と、区画7bが有する第2の部分72とが、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、2以上の第2の部分72が、y軸方向において終端する端部7yを互い違いにずらしながら配列されている。
【0026】
各図面に例示したパターンで凹凸面が形成されている薄膜コンデンサにおいては、凸部とトレンチ部のような、互いに応力の大きさが異なる部分が、基板の一方面上に配置されている。基板面上の任意の一直線上に、凸部またはトレンチ部が連続的に繋がることがない配置を採用することで、反りを防止することができる。このような配置は基板面上の一部において形成されていれば、反りの効果は発現されるが、凸部やトレンチ部を形成する領域の対向する一対の端部を直線的に繋ぐ部分がないことががより好ましい。また、凹凸面のパターンは十字型の区画及び/又はH形の区画を含んでいることが好ましい。これらの形状を有する凸部は応力に対する耐性が強く、特に良好な耐久性が得られる。
【0027】
凹凸面のパターンは以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変形が可能である。例えば、パターンを構成する区画が所定の方向に延びた部分の形状は短冊状である必要は必ずしもなく、例えば多角形状、楕円状のような形状を有していてもよい。各区画が曲線に沿って延びている場合、その延びた部分の端部における当該曲線の接線に直交する方向からパターンを見たときに、延びた部分が重なり合うとともに互いに異なる位置で終端していればよい。また、反り抑制や応力緩和の観点からは、区画7の部分に凸部が配されていることが好ましいが、区画7以外の部分に凸部が配されていてもよい。言い換えると、区画7の部分にトレンチが形成されていてもよい。
【0028】
図10、11、12及び13は、図1の薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を端面図により示す工程図である。本実施形態に係る方法は、凹凸面Sを有する金属層11を基板10上に形成する工程(図10)と、基板10上の金属層11の一部を除去して下部電極11の部分を残す工程(図11)と、下部電極11上に、凹凸面Sに沿って設けられ、下部電極11の一部が露出する開口20aが形成された誘電体膜20を形成する工程(図12)と、誘電体膜20上に、開口20aが露出する開口12aが形成された上部電極12を形成する工程(図12)と、上部電極12上に、下部電極11又は上部電極12の一部が露出する開口21aが形成された保護膜21を形成する工程(図13)と、開口21a内に下部電極11又は上部電極12に接続された電極パッド15を形成する工程とを備える。
【0029】
基板10としては、例えば、シリコン基板、アルミナ等のセラミックス基板、ガラスセラミックス基板、サファイア、MgO及びSrTiO3等の単結晶基板、Ti、Fe−Ni合金等の金属基板が用いられる。基板10として金属板及びシリコン基板のように導電性を有する基板を用いる場合、その表面に酸化膜等の絶縁膜を形成することが好ましい。
【0030】
基板10上に、金属層11の下地部分が形成される。金属層11の下地部分を構成する金属の好適な例として、Au、Pt、Ag、Sn、Cr、Co、Ni、Cu及びこれらを含む合金が挙げられる。特に下地部分がNiを主成分として含むと、膜応力が小さくなることから、反り防止の効果が一層顕著に奏される。この下地部分は、例えば、スパッタリング法等のPVD法、又はCVD法によって形成することができる。
【0031】
金属層11の下地部分上に、所定のパターンを有するレジスト層31が形成される(図10(a))。レジスト層31は、ネガ型又はポジ型の感光性樹脂を用いて形成することができる。次いで、レジスト層31の開口31a内に、めっき法により金属層11のめっき部分が形成される(図10(b))。このめっき部分を構成する金属としては、例えば、Au、Pt、Ag、Sn、Cr、Co、Ni、Cu及びこれらを含む合金から選ばれ、下地部分の金属とは異なる種類のものが用いられる。下地部分の主成分がNiであり、めっき部分の主成分がCuであることが特に好ましい。レジスト層31を除去して、凸部3及びこららの間のトレンチ4から構成される凹凸面Sを有する金属層11が得られる。金属層11の基板10とは反対側の表面(主面)は、必要により、CMP法等による研磨によって平坦化される。
【0032】
金属層11の一部を覆うレジスト層32を形成し(図11(a))、レジスト層32をマスクとして金属層11の下地部分の一部が除去される。これにより、隣接する他の金属層部分(下部電極)から分離した下部電極11が基板10上に残される。金属層11の選択的な除去は、ウェットエッチング等の通常の方法により行われる。下部電極11が形成された後、レジスト層32が除去される(図11(b))。
【0033】
続いて、金属層11の凹凸面Sを覆う誘電体膜20が形成される(図12(a))。誘電体膜20を構成する誘電体材料としては、例えば、Al2O3、SiN、PZT及びBaTiO3が好適である。誘電体膜20は、CVD法、PVD法等の方法により成膜することができる。凹凸面を均一な厚さで被覆することが容易である等の観点から、CVD法が特に好ましい。成膜された誘電体膜20に対して、必要により、誘電分極を励起させるための熱処理が施される。形成された誘電体膜20の一部をフォトリソグラフィー法により除去して、下部電極11が露出する開口20aが形成される(図12(b))。
【0034】
誘電体膜20の下部電極11とは反対側の全面を覆い、開口20a内で下部電極11に接続される膜状の上部電極12が形成される。上部電極12上には、上部電極12の一部が露出する開口33aが形成されたレジスト層33が形成される(図12(c))。その状態で、レジスト層33をマスクとして用いた上部電極12の選択的なエッチングにより、開口20aが露出する開口12aが形成される(図12(d))。
【0035】
その後、得られた積層体の基板10とは反対側の全面を覆うとともに、トレンチ4を充填する絶縁性の保護層21が形成される(図13(a))。保護層21は、例えば、SiO2及びAl2O3等の無機材料、又はポリイミド及びエポキシ樹脂等の有機材料により形成される。
【0036】
保護膜21上に保護膜21の一部が露出する開口34aが形成されたレジスト層34を形成し(図13(b))、レジスト層34をマスクとして用いて保護膜21の一部が除去する方法により、下部電極11又は上部電極12が露出する開口21aが形成される(図13(c))。そして、開口21a内に電極パッド15を形成して、図1の薄膜コンデンサ1が得られる。電極パッド15は、例えばAuによって形成される。
【0037】
図1の薄膜コンデンサ1のように下部電極によって凹凸面が形成されるのに代えて、他の層によって形成された凹凸面に沿って誘電体膜が設けられてもよい。例えば、図14に示す薄膜コンデンサのように、凹凸面が絶縁層によって主として形成されていてもよい。
【0038】
図14に示す薄膜コンデンサ1は、基板10上に設けられた絶縁層25を備える。絶縁層25は、基板10を底面に有するトレンチ4が形成されるようにパターニングされている。すなわち、基板10及び絶縁層25によって、基板10から離れる方向に延びた凸部3を有する凹凸面Sが形成されている。トレンチ4の底面上にはエッチングストッパー層22が設けられている。凹凸面Sに沿って、下部電極11、誘電体膜20及び上部電極12がこの順に積層されている。これ以外の構造は図1と本質的に同様である。
【0039】
図15、16、17及び18は、図14の薄膜コンデンサを製造する方法の一実施形態を端面図によって示す工程図である。図15〜18の実施形態に係る製造方法は、基板10表面を底面とし、該底面上にエッチングストッパー層22が設けらているトレンチ4が形成されるようにパターニングされた絶縁層25を基板10上に形成する工程(図15)と、絶縁層25及びエッチングストッパー層22上に、基板10及び絶縁層25によって形成された凹凸面Sに沿って設けられる膜状の下部電極11を形成する工程(図16)と、下部電極11上に、凹凸面Sに沿って設けられ下部電極11の一部が露出する開口20aが形成された誘電体膜20を形成する工程(図17)と、誘電体膜20上に開口20aが露出する開口12aが形成された膜状の上部電極12を形成する工程(図17)と、上部電極12上に、下部電極11又は上部電極12が露出する開口21aが形成された保護層21を形成する工程(図18)と、開口21a内に下部電極11又は上部電極12に接続された電極パッド15を形成する工程とを備える。
【0040】
まず、基板10上のトレンチ4の底部に相当する位置にエッチングストッパー層22が形成される。エッチングストッパー層22は、例えばSi3N4、SiCのような絶縁材料によって形成される。エッチングストッパー層22は通常のフォトリソグラフィー法によりパターニングすることができる。
【0041】
次いで、基板10及びエッチングストッパー層22を覆う絶縁層25がスパッタ法等の成膜法により形成される(図15(a))。絶縁層25は、例えばSiO2、Al2O3のような絶縁材料によって形成される。
【0042】
絶縁層15上に、エッチングストッパー層22の上部に位置する開口35aが形成されたレジスト層35が形成される(図15(b))。レジスト層35をマスクとしたエッチングにより、開口35aの位置においてエッチングストッパー層22が露出するまで絶縁層25が除去される(図15(c))。これにより、凸部3を有する凹凸面Sが基板10及び絶縁層25によって形成される。
【0043】
絶縁層25上のレジスト層35が除去された後、凹凸面Sに沿う膜状の下部電極11が形成される(図16(a))。膜状の下部電極11は、例えばCVD法により形成される。下部電極11の一部は、フォトリソグラフィー法により除去される(図16(b))。
【0044】
得られた構造体の基板10とは反対側の全面に、CVD法等の方法により誘電体膜20が形成される(図17(a))。形成された誘電体膜20の一部を除去して、下部電極11の一部が露出する開口20aが形成される。これ以降、図13等に示す工程と本質的に同様の図18に示す工程を経て、図14の薄膜コンデンサ1が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】薄膜コンデンサの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】薄膜コンデンサの一実施形態を示す平面である。
【図3】図2のIII−III線に沿う端面図である。
【図4】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図5】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図6】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図7】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図8】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図9】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図10】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図11】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図12】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図13】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図14】薄膜コンデンサの一実施形態を示す端面図である。
【図15】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図16】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図17】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図18】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【符号の説明】
【0046】
1…薄膜コンデンサ、3…凸部、4…トレンチ、5a,5b,5c,5d,5e,5f…凹凸面のパターン、7,7a,7b…区画、71…区画7がx軸方向に沿って延びた部分、72…区画7がy軸方向に沿って延びた部分、7x…延びた部分71がx軸方向において終端する端部、7y…延びた部分72がy軸方向において終端する端部、10…基板、11…下部電極、12…上部電極、15…電極パッド、20…誘電体膜、21…保護層、25…絶縁層、31,32,33,34…レジスト層、S…凹凸面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜コンデンサの小型化、高容量化を図るために、基板にトレンチを形成することにより電極表面積を増大させた、いわゆるトレンチ型の薄膜コンデンサが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−325970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のトレンチ型の薄膜コンデンサは、外部から熱を受けたときに反りが生じやすいという問題を有していた。特に、トレンチを増やして高い静電容量を達成しようとすると、反りの問題が顕在化する傾向にあった。薄膜コンデンサの反りは、誘電体膜の特性の変動等、種々の不具合を引き起こすため、この反りを十分に抑制することが強く求められる。
【0004】
そこで、本発明の目的は、トレンチ型の薄膜コンデンサの反りを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板と、該基板の一方面側に設けられた誘電体膜と、該誘電体膜を間に挟んで設けられた一対の電極膜とを備え、誘電体膜が、基板から離れる方向に向けて延びる凸部を形成する凹凸面に沿って設けられている薄膜コンデンサに関する。凹凸面は、基板の主面に平行な面に配置された1又は2以上の区画を有するパターンを構成し、この区画の部分及びこれ以外の部分のうちいずれかに凸部が配されている。この区画のうち少なくとも一部が所定の方向に沿って延びた部分を有し、所定の方向に直交する方向から見たときに、2以上の延びた部分が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。
【0006】
上記区画に凸部が配されている場合には、上記所定の方向に直交する方向において、凸部の端部の位置が揃うことなく、ずれた状態となる。換言すれば、上記所定の方向に直交する方向から区画を投影した場合に、その投影像において上述した区画以外の部分は残らなくなる。このように凸部の端部の位置がずれていると、それら凸部の間のトレンチは、屈曲した線に沿って形成される。トレンチの部分の剛性は、凸部の部分よりも相対的に低いため、トレンチが直線状に連続的に形成されていると、その部分でトレンチに直交する方向に対する薄膜コンデンサの剛性が低下して、反りが生じやすい。しかし、上記のようにトレンチが屈曲することにより、トレンチが直線状に形成されている部分が少なくなり、その結果薄膜コンデンサの反りが抑制される。上記区画以外の部分に凸部が配されている場合も同様に、トレンチが直線状に形成されている部分が少なくなるため、薄膜コンデンサの反りが抑制される。
【0007】
上記延びた部分を有する区画は、互いに直交する2以上の短冊状の部分が連結した形状を有するものを含んでいることが好ましい。これにより反り抑制の効果がより顕著になる。また、これらの区画に凸部が配されている場合には、凸部自体が安定して形成されるため、凸部を形成する工程やその後の工程において凸部が損傷することが少なくなる。その結果、より高い歩留まりで薄膜コンデンサを製造することが可能になる。さらには、電極表面積を高密度に形成できる点でも有利である。
【0008】
本発明に係る薄膜コンデンサにおいては、基板の主面内の任意の直線上に少なくとも1つの凸部が配されていることが好ましい。基板の主面内の直線上にトレンチのみが連続的に形成されていると、その直線に直交する方向において反り抑制の効果が小さくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の薄膜コンデンサによれば、反りの発生を十分に抑制しながら、電極表面積を大きくして高い静電容量を達成することが可能である。また、凸部又はトレンチが、所定の方向において終端する区画の部分に配されていることにより、その所定の方向の全域にわたって凸部又はトレンチが形成されている場合と比較して、その方向における応力が緩和される。応力が緩和されると、誘電体膜の損傷等に起因するリーク電流も抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について必要により図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。各図において同一又は相当する要素には同一符号が付される。重複する説明は適宜省略される。
【0011】
図1及び2は、薄膜コンデンサの一実施形態を示す斜視図及び平面図である。図3は図2のIII−III線に沿う端面図である。図1〜3に示す薄膜コンデンサ1は、基板10と、基板10の一方面側に設けられた誘電体膜20と、誘電体膜20を間に挟んで設けられた下部電極11及び上部電極12と、誘電体膜20の基板10とは反対側にある上部電極12上に設けられ、下部電極11又は上部電極12の一部が露出する2つの開口21aを形成している保護膜21と、開口21aにおいて下部電極11又は上部電極12にそれぞれ接続された2つの電極パッド15とを備える。下部電極11、誘電体膜20及び上部電極12は基板10上のトレンチ形成層50に設けられている。
【0012】
下部電極11の誘電体膜20側の面Sは、基板10から離れる方向に向けて延びる複数の凸部3を形成する凹凸面である。隣り合う凸部3の間にはトレンチ4が形成されている。下部電極11上の誘電膜20は、この凹凸面Sに沿って設けられている。
【0013】
凹凸面Sは、基板10の主面に平行な面に配列された複数の区画7を有する周期的な二次元のパターンを構成している。図4は、凹凸面Sのパターンを示す平面図である。図3の一部は図4のIII−III線に沿う端面図に相当する。図4に示すパターン5aは、互いに離れて規則的に配置された複数の区画7を有する。区画7の部分に凸部3が配される。
【0014】
区画7は、基板10の長手方向であるx軸方向に沿って延びた短冊状の第1の部分71、及び/又はx軸に直交するy軸方向に沿って延びた短冊状の第2の部分72を有している。第1の部分71及び第2の部分72を有する区画7は、これらがそれぞれの中間部において互いに直交しながら連結した形状を有している。係る形状を有する区画7は十字型であると言うこともできる。
【0015】
パターン5aにおいては、パターン5a内でx軸方向に直交するy軸方向から見たときに、2以上の第1の部分71が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第1の部分71を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7xのx軸方向における位置を互い違いにずらしながらy軸方向に沿って配列されている。同様に、x軸方向から見たときに、2以上の第2の部分72が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第2の部分72を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7yのy軸方向における位置を互い違いにずらしながらx軸方向に沿って配列されている。このように複数の区画7が互い違いに配列されていることにより、区画7以外の部分に配されるトレンチ4が多くの部分で屈曲した線に沿って形成される。これにより反り抑制の効果が高められる。
【0016】
パターン5aにおいては、基板10の主面内に任意の直線を引いたときに、その直線上に少なくとも1つの区画7が存在する。これは、薄膜コンデンサ1において、基板10の主面内の任意の直線上に少なくとも1つの凸部10が設けられることに対応する。
【0017】
図5、6、7、8及び9は、それぞれ、凹凸面Sのパターンの他の実施形態を示す平面図である。
【0018】
図5に示すパターン5bを構成する区画7も、x軸方向に沿って延びた短冊状の第1の部分71、及び/又はy軸方向に沿って延びた短冊状の第2の部分72を有している。パターン5bを構成する区画7は、2つの第1の部分71及び1つの第2の部分72を有し、これらが第1の部分71の中間部において互いに直交しながら連結された形状を有するものを含んでいる。係る形状を有する区画はH形であると言うこともできる。
【0019】
パターン5bをy軸方向から見たときに、2以上の第1の部分71が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第1の部分71を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7xのx軸方向における位置を互い違いにずらしながらy軸方向に沿って配列されている。同様に、パターン5bをx軸方向から見たときに、2以上の第2の部分72が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第2の部分72を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7yのy軸方向における位置を互い違いにずらしながらx軸方向に沿って配列されている。このように隣り合う2つの区画を抽出したとき、一方の区画の短冊状の第1の部分71と、他方の区画の端部7xとが重なるようにずらして配置されていることが好ましく、また、そのような位置関係で複数の区画が交互に周期的に配列されていることがより好ましい。
【0020】
図6に示すパターン5cは、x軸方向に沿って延びた短冊状の第1の部分71からなる区画7aと、y軸方向に沿って延びた短冊状の第2の部分72からなる区画7bとから構成される。y軸方向からパターン5cを見たときに、第1の部分71は、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第1の部分71を有する複数の区画7aが、それぞれが終端する端部7xの位置を一定方向に順次ずらしながら配列されている。また、x軸方向からパターン5cを見たときに、第2の部分72は、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第2の部分72を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7yの位置を一定方向に順次ずらしながら配列されている。
【0021】
図7に示すパターン5dを構成する区画7は、x軸方向に沿って延びた短冊状の第1の部分71、及び/又はy軸方向に沿って延びた短冊状の第2の部分72を有している。パターン5dを構成する区画7は、第1の部分71及び第2の部分72を有し、これらがそれぞれの一方の端部において互いに連結された形状を有するものを含んでいる。
【0022】
パターン5dをy軸方向から見たときに、2以上の第1の部分71が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第1の部分71を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7xの位置を一定方向に順次ずらしながら配列されている。また、パターン5dをx軸方向から見たときに、2以上の第2の部分72が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第2の部分72を有する複数の区画7が、それぞれが終端する端部7yの位置を一定方向に順次ずらしながら配列されている。
【0023】
図8に示すパターン5eを構成する区画7は、x軸方向の全域にわたって延びた短冊状の非終端部分70と、y軸方向に延びた短冊状の複数の第2の部分72とを有し、これらがそれぞれの中間部において互いに直交しながら連結された形状を有するものを含んでいる。パターン5eをx軸方向から見たとき、2以上の第2の部分72が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、第2の部分72を有する2つの区画7が、それぞれが終端する端部7yの位置が互い違いになるように配列されている。
【0024】
図9に示すパターン5fは、x軸方向又はy軸方向の全域にわたって延びた複数の短冊状の部分によって形成された格子状の非終端部分70、及びy軸方向に沿って延びた短冊状の第2の部分72を有する区画7aと、x軸方向に沿って延びた短冊状の第1の部分71及び/又はy軸方向に延びた短冊状の第2の部分72を有する区画7bとから構成される。区画7bの格子状の非終端部分70によって区分された各領域内に区画7bが配置されている。区画7bは、1つの第1の部分71及び2つの第2の部分72を有し、これらが第2の部分72の中間部において互いに直交しながら連結された形状を有するものを含んでいる。
【0025】
パターン5fをx軸方向から見たときに、区画7aが有する第2の部分72と、区画7bが有する第2の部分72とが、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している。言い換えると、2以上の第2の部分72が、y軸方向において終端する端部7yを互い違いにずらしながら配列されている。
【0026】
各図面に例示したパターンで凹凸面が形成されている薄膜コンデンサにおいては、凸部とトレンチ部のような、互いに応力の大きさが異なる部分が、基板の一方面上に配置されている。基板面上の任意の一直線上に、凸部またはトレンチ部が連続的に繋がることがない配置を採用することで、反りを防止することができる。このような配置は基板面上の一部において形成されていれば、反りの効果は発現されるが、凸部やトレンチ部を形成する領域の対向する一対の端部を直線的に繋ぐ部分がないことががより好ましい。また、凹凸面のパターンは十字型の区画及び/又はH形の区画を含んでいることが好ましい。これらの形状を有する凸部は応力に対する耐性が強く、特に良好な耐久性が得られる。
【0027】
凹凸面のパターンは以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変形が可能である。例えば、パターンを構成する区画が所定の方向に延びた部分の形状は短冊状である必要は必ずしもなく、例えば多角形状、楕円状のような形状を有していてもよい。各区画が曲線に沿って延びている場合、その延びた部分の端部における当該曲線の接線に直交する方向からパターンを見たときに、延びた部分が重なり合うとともに互いに異なる位置で終端していればよい。また、反り抑制や応力緩和の観点からは、区画7の部分に凸部が配されていることが好ましいが、区画7以外の部分に凸部が配されていてもよい。言い換えると、区画7の部分にトレンチが形成されていてもよい。
【0028】
図10、11、12及び13は、図1の薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を端面図により示す工程図である。本実施形態に係る方法は、凹凸面Sを有する金属層11を基板10上に形成する工程(図10)と、基板10上の金属層11の一部を除去して下部電極11の部分を残す工程(図11)と、下部電極11上に、凹凸面Sに沿って設けられ、下部電極11の一部が露出する開口20aが形成された誘電体膜20を形成する工程(図12)と、誘電体膜20上に、開口20aが露出する開口12aが形成された上部電極12を形成する工程(図12)と、上部電極12上に、下部電極11又は上部電極12の一部が露出する開口21aが形成された保護膜21を形成する工程(図13)と、開口21a内に下部電極11又は上部電極12に接続された電極パッド15を形成する工程とを備える。
【0029】
基板10としては、例えば、シリコン基板、アルミナ等のセラミックス基板、ガラスセラミックス基板、サファイア、MgO及びSrTiO3等の単結晶基板、Ti、Fe−Ni合金等の金属基板が用いられる。基板10として金属板及びシリコン基板のように導電性を有する基板を用いる場合、その表面に酸化膜等の絶縁膜を形成することが好ましい。
【0030】
基板10上に、金属層11の下地部分が形成される。金属層11の下地部分を構成する金属の好適な例として、Au、Pt、Ag、Sn、Cr、Co、Ni、Cu及びこれらを含む合金が挙げられる。特に下地部分がNiを主成分として含むと、膜応力が小さくなることから、反り防止の効果が一層顕著に奏される。この下地部分は、例えば、スパッタリング法等のPVD法、又はCVD法によって形成することができる。
【0031】
金属層11の下地部分上に、所定のパターンを有するレジスト層31が形成される(図10(a))。レジスト層31は、ネガ型又はポジ型の感光性樹脂を用いて形成することができる。次いで、レジスト層31の開口31a内に、めっき法により金属層11のめっき部分が形成される(図10(b))。このめっき部分を構成する金属としては、例えば、Au、Pt、Ag、Sn、Cr、Co、Ni、Cu及びこれらを含む合金から選ばれ、下地部分の金属とは異なる種類のものが用いられる。下地部分の主成分がNiであり、めっき部分の主成分がCuであることが特に好ましい。レジスト層31を除去して、凸部3及びこららの間のトレンチ4から構成される凹凸面Sを有する金属層11が得られる。金属層11の基板10とは反対側の表面(主面)は、必要により、CMP法等による研磨によって平坦化される。
【0032】
金属層11の一部を覆うレジスト層32を形成し(図11(a))、レジスト層32をマスクとして金属層11の下地部分の一部が除去される。これにより、隣接する他の金属層部分(下部電極)から分離した下部電極11が基板10上に残される。金属層11の選択的な除去は、ウェットエッチング等の通常の方法により行われる。下部電極11が形成された後、レジスト層32が除去される(図11(b))。
【0033】
続いて、金属層11の凹凸面Sを覆う誘電体膜20が形成される(図12(a))。誘電体膜20を構成する誘電体材料としては、例えば、Al2O3、SiN、PZT及びBaTiO3が好適である。誘電体膜20は、CVD法、PVD法等の方法により成膜することができる。凹凸面を均一な厚さで被覆することが容易である等の観点から、CVD法が特に好ましい。成膜された誘電体膜20に対して、必要により、誘電分極を励起させるための熱処理が施される。形成された誘電体膜20の一部をフォトリソグラフィー法により除去して、下部電極11が露出する開口20aが形成される(図12(b))。
【0034】
誘電体膜20の下部電極11とは反対側の全面を覆い、開口20a内で下部電極11に接続される膜状の上部電極12が形成される。上部電極12上には、上部電極12の一部が露出する開口33aが形成されたレジスト層33が形成される(図12(c))。その状態で、レジスト層33をマスクとして用いた上部電極12の選択的なエッチングにより、開口20aが露出する開口12aが形成される(図12(d))。
【0035】
その後、得られた積層体の基板10とは反対側の全面を覆うとともに、トレンチ4を充填する絶縁性の保護層21が形成される(図13(a))。保護層21は、例えば、SiO2及びAl2O3等の無機材料、又はポリイミド及びエポキシ樹脂等の有機材料により形成される。
【0036】
保護膜21上に保護膜21の一部が露出する開口34aが形成されたレジスト層34を形成し(図13(b))、レジスト層34をマスクとして用いて保護膜21の一部が除去する方法により、下部電極11又は上部電極12が露出する開口21aが形成される(図13(c))。そして、開口21a内に電極パッド15を形成して、図1の薄膜コンデンサ1が得られる。電極パッド15は、例えばAuによって形成される。
【0037】
図1の薄膜コンデンサ1のように下部電極によって凹凸面が形成されるのに代えて、他の層によって形成された凹凸面に沿って誘電体膜が設けられてもよい。例えば、図14に示す薄膜コンデンサのように、凹凸面が絶縁層によって主として形成されていてもよい。
【0038】
図14に示す薄膜コンデンサ1は、基板10上に設けられた絶縁層25を備える。絶縁層25は、基板10を底面に有するトレンチ4が形成されるようにパターニングされている。すなわち、基板10及び絶縁層25によって、基板10から離れる方向に延びた凸部3を有する凹凸面Sが形成されている。トレンチ4の底面上にはエッチングストッパー層22が設けられている。凹凸面Sに沿って、下部電極11、誘電体膜20及び上部電極12がこの順に積層されている。これ以外の構造は図1と本質的に同様である。
【0039】
図15、16、17及び18は、図14の薄膜コンデンサを製造する方法の一実施形態を端面図によって示す工程図である。図15〜18の実施形態に係る製造方法は、基板10表面を底面とし、該底面上にエッチングストッパー層22が設けらているトレンチ4が形成されるようにパターニングされた絶縁層25を基板10上に形成する工程(図15)と、絶縁層25及びエッチングストッパー層22上に、基板10及び絶縁層25によって形成された凹凸面Sに沿って設けられる膜状の下部電極11を形成する工程(図16)と、下部電極11上に、凹凸面Sに沿って設けられ下部電極11の一部が露出する開口20aが形成された誘電体膜20を形成する工程(図17)と、誘電体膜20上に開口20aが露出する開口12aが形成された膜状の上部電極12を形成する工程(図17)と、上部電極12上に、下部電極11又は上部電極12が露出する開口21aが形成された保護層21を形成する工程(図18)と、開口21a内に下部電極11又は上部電極12に接続された電極パッド15を形成する工程とを備える。
【0040】
まず、基板10上のトレンチ4の底部に相当する位置にエッチングストッパー層22が形成される。エッチングストッパー層22は、例えばSi3N4、SiCのような絶縁材料によって形成される。エッチングストッパー層22は通常のフォトリソグラフィー法によりパターニングすることができる。
【0041】
次いで、基板10及びエッチングストッパー層22を覆う絶縁層25がスパッタ法等の成膜法により形成される(図15(a))。絶縁層25は、例えばSiO2、Al2O3のような絶縁材料によって形成される。
【0042】
絶縁層15上に、エッチングストッパー層22の上部に位置する開口35aが形成されたレジスト層35が形成される(図15(b))。レジスト層35をマスクとしたエッチングにより、開口35aの位置においてエッチングストッパー層22が露出するまで絶縁層25が除去される(図15(c))。これにより、凸部3を有する凹凸面Sが基板10及び絶縁層25によって形成される。
【0043】
絶縁層25上のレジスト層35が除去された後、凹凸面Sに沿う膜状の下部電極11が形成される(図16(a))。膜状の下部電極11は、例えばCVD法により形成される。下部電極11の一部は、フォトリソグラフィー法により除去される(図16(b))。
【0044】
得られた構造体の基板10とは反対側の全面に、CVD法等の方法により誘電体膜20が形成される(図17(a))。形成された誘電体膜20の一部を除去して、下部電極11の一部が露出する開口20aが形成される。これ以降、図13等に示す工程と本質的に同様の図18に示す工程を経て、図14の薄膜コンデンサ1が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】薄膜コンデンサの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】薄膜コンデンサの一実施形態を示す平面である。
【図3】図2のIII−III線に沿う端面図である。
【図4】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図5】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図6】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図7】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図8】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図9】凹凸面のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【図10】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図11】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図12】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図13】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図14】薄膜コンデンサの一実施形態を示す端面図である。
【図15】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図16】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図17】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図18】薄膜コンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【符号の説明】
【0046】
1…薄膜コンデンサ、3…凸部、4…トレンチ、5a,5b,5c,5d,5e,5f…凹凸面のパターン、7,7a,7b…区画、71…区画7がx軸方向に沿って延びた部分、72…区画7がy軸方向に沿って延びた部分、7x…延びた部分71がx軸方向において終端する端部、7y…延びた部分72がy軸方向において終端する端部、10…基板、11…下部電極、12…上部電極、15…電極パッド、20…誘電体膜、21…保護層、25…絶縁層、31,32,33,34…レジスト層、S…凹凸面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の一方面側に設けられた誘電体膜と、該誘電体膜を間に挟んで設けられた一対の電極と、を備え、
前記誘電体膜が、前記基板から離れる方向に向けて延びる凸部を形成する凹凸面に沿って設けられており、
前記凹凸面が、前記基板の主面に平行な面に配置された1又は2以上の区画を有するパターンを構成し、前記区画の部分及びこれ以外の部分のうちいずれかに前記凸部が配されており、
前記区画のうち少なくとも一部が所定の方向に沿って延びた部分を有し、
前記所定の方向に直交する方向から見たときに、2以上の前記延びた部分が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している、
薄膜コンデンサ。
【請求項2】
前記延びた部分を有する区画が、互いに直交する2以上の短冊状の部分が連結した形状を有するものを含む、請求項1記載の薄膜コンデンサ。
【請求項3】
前記基板の主面内の任意の直線上に少なくとも1つの前記凸部が配されている、請求項1又は2記載の薄膜コンデンサ。
【請求項1】
基板と、該基板の一方面側に設けられた誘電体膜と、該誘電体膜を間に挟んで設けられた一対の電極と、を備え、
前記誘電体膜が、前記基板から離れる方向に向けて延びる凸部を形成する凹凸面に沿って設けられており、
前記凹凸面が、前記基板の主面に平行な面に配置された1又は2以上の区画を有するパターンを構成し、前記区画の部分及びこれ以外の部分のうちいずれかに前記凸部が配されており、
前記区画のうち少なくとも一部が所定の方向に沿って延びた部分を有し、
前記所定の方向に直交する方向から見たときに、2以上の前記延びた部分が、重なり合うとともに互いに異なる位置で終端している、
薄膜コンデンサ。
【請求項2】
前記延びた部分を有する区画が、互いに直交する2以上の短冊状の部分が連結した形状を有するものを含む、請求項1記載の薄膜コンデンサ。
【請求項3】
前記基板の主面内の任意の直線上に少なくとも1つの前記凸部が配されている、請求項1又は2記載の薄膜コンデンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−246180(P2009−246180A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91801(P2008−91801)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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