説明

薄膜太陽電池およびその製造方法

【課題】光の有効利用が可能な、光電変換効率に優れた薄膜太陽電池およびその製造方法を得ること。
【解決手段】透光性基板1上に、透明導電膜からなる第1電極層2と、光電変換を行う第1光電変換層3と、中間層4と、光電変換を行う第2光電変換層5と、第2電極層7と、をこの順で有する薄膜太陽電池であって、前記第1光電変換層3の光入射側に複数の凹凸からなる第1のテクスチャ構造2aが形成され、前記第2光電変換層5の光入射側であって前記第1光電変換層3と前記第2光電変換層5との間に複数の凹凸からなる第2のテクスチャ構造4aが形成され、前記第1のテクスチャ構造2aにおける前記凹凸の形成間隔P1が前記第2光電変換層5で光電変換に用いる光の波長よりも短く、前記第2のテクスチャ構造4aにおける前記凹凸の形成間隔P2が前記第1のテクスチャ構造2aにおける前記凹凸の形成間隔P1よりも長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光電変換素子層を有する薄膜太陽電池およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の積層型薄膜太陽電池では、透明導電膜の表面に適切な凹凸形状によるテクスチャ構造をつけて基板に製膜し、その上に複数の光電変換層を積層しこれを電気的に直列接続している。そして、半導体バンドギャップが異なる複数の光電変換層を積層することにより、入射した太陽光の短波長から長波長までの広い波長の光を吸収することが可能となる。
【0003】
通常、光入射側に短波長領域の光を吸収する光電変換層が、裏面電極側に高波長領域の光を吸収する光電変換層が配され、入射した太陽光は、短波長から順に吸収されていく。このとき、入射した太陽光は、透明導電膜と光電変換層との屈折率の差および透明導電膜の表面に形成された凹凸によって屈折する。これにより、光電変換層での光路長を増加させることによって、積層型薄膜太陽電池の発電効率を上げている。
【0004】
積層型薄膜太陽電池では、透明導電膜の上に第1光電変換層や中間層、第2光電変換層を製膜するため、第1光電変換層、中間層、第2光電変換層の表面に形成される凹凸は、透明導電膜の表面に形成された凹凸と周期は同じであるが高低差が鈍った状態となる。このため、中間膜から第2光電変換層へ太陽光が浸入する際に、太陽光の屈折が不十分である、反射が起こる、などの状態が生じる。
【0005】
そこで、第2光電変換層側から光が入射する積層型光電変換素子において、第1電極層と光入射側の第2電極層とに挟持された少なくとも2層の光電変換素子層および少なくとも1層の中間層からなる積層型光電変換素子において、光電変換素子層に挟持された中間層および該中間層の第1電極側に隣接する光電変換素子層がそれらの光入射側の各表面に凹凸を有し、かつ前記光電変換素子層が前記中間層より大きい平均高低差の凹凸を有することにより第2光電変換層で利用する光が第1光電変換層と中間層の界面で反射することを抑制して第2光電変換層での光電変換効率を上げる技術が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−69061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術によれば第1光電変換層と第2光電変換層との平均高低差を変えることによる反射防止効果は期待できるが、第1光電変換層の凹凸の形成間隔と第2光電変換層の凹凸の形成間隔(周期)とが同じ場合は、凹凸の形成間隔によっては、第1光電変換層で光電変換に用いる波長の太陽光のみならず第2光電変換層で光電変換に用いる波長の太陽光も屈折し、第2光電変換層で光電変換に用いる波長の太陽光の光路長が第1光電変換層において長くなり損失が起こる。
【0008】
また、第1光電変換層の凹凸の形成間隔を、第2光電変換層で光電変換に用いる波長の太陽光は透過し、且つ第1光電変換層で光電変換に用いる波長の太陽光が屈折するように設定すると、中間層と第2光電変換層との凹凸の形成間隔もこれと同じとなる。このため、第2光電変換層においても、光電変換に用いる波長の太陽光が屈折せずに透過するため光路長が短くなり、光電変換効率が低下する。すなわち、第1光電変換層と第2光電変換層とにおけるテクスチャ構造の凹凸の形成間隔に関しては考慮されていない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光の有効利用が可能な、光電変換効率に優れた薄膜太陽電池およびその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる薄膜太陽電池は、透光性基板上に、透明導電膜からなる第1電極層と、光電変換を行う第1光電変換層と、中間層と、光電変換を行う第2光電変換層と、第2電極層と、をこの順で有する薄膜太陽電池であって、前記第1光電変換層の光入射側に複数の凹凸からなる第1のテクスチャ構造が形成され、前記第2光電変換層の光入射側であって前記第1光電変換層と前記第2光電変換層との間に複数の凹凸からなる第2のテクスチャ構造が形成され、前記第1のテクスチャ構造における前記凹凸の形成間隔が前記第2光電変換層で光電変換に用いる光の波長よりも短く、前記第2のテクスチャ構造における前記凹凸の形成間隔が前記第1のテクスチャ構造における前記凹凸の形成間隔よりも長いこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各光電変換層が光電変換に用いる光の波長に合わせて各光電変換層の光入射側のテクスチャにおける凹凸形成間隔を変更することにより、各光電変換層で光電変換に寄与する波長の太陽光の光路長が長くなり光電変換効率が向上し、太陽光の有効利用が可能な、光電変換効率に優れた積層型薄膜太陽電池が得られる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池である積層型薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池における太陽光の透過と散乱の関係を示す模式図である。
【図3−1】図3−1は、本発明の実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【図3−2】図3−2は、本発明の実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【図3−3】図3−3は、本発明の実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【図3−4】図3−4は、本発明の実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【図3−5】図3−5は、本発明の実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池である積層型薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池における太陽光の透過と散乱の関係を示す模式図である。
【図6−1】図6−1は、本発明の実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【図6−2】図6−2は、本発明の実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【図6−3】図6−3は、本発明の実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【図6−4】図6−4は、本発明の実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【図6−5】図6−5は、本発明の実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる薄膜太陽電池およびその製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池である積層型薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる積層型薄膜太陽電池は、透光性基板1、透光性基板1上に形成され第1電極層となる前面透明電極層2、前面透明電極層2上に形成された第1の薄膜半導体層である第1光電変換層3、第1光電変換層3上に形成された中間層4、中間層4上に形成された第2の薄膜半導体層である第2光電変換層5、第2光電変換層5上に形成された裏面透明導電膜6、裏面透明導電膜6上に形成された第2電極層となる裏面電極層7、が順次積層された構造を有する。この積層型薄膜太陽電池においては、透光性基板1側が太陽光50の入射する光入射側である。
【0015】
透光性基板1としては、ガラス、ポリイミドまたはポリビニルなどの耐熱性を有する透光性樹脂、またはこれらが積層されたものなどを適宜用いることができるが、光透過性が高く、太陽電池全体を構造的に支持し得るものであれば特に限定されない。また、これらの表面に、透過性の高い金属膜、透明導電膜、絶縁膜を成膜したものであっても良い。
【0016】
前面透明電極層2は、透光性導電材料からなり、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、ITO等の透明性導電膜を用いることができる。なお、前面透明電極層2の膜中に微量の不純物が添加されていてもよい。たとえば、酸化亜鉛(ZnO)が主成分である場合には5×1020〜5×1021cm−3程度のガリウム(Ga)やアルミニウム(Al)やボロン(B)といった第IIIB族元素、または銅(Cu)のような第IV族元素が含有されることにより抵抗率が低減するため、電極として使用するのに適している。前面透明電極層2の製法は、スパッタリング法、常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法、減圧CVD法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、電子ビーム蒸着法、ゾルゲル法、電析法、スプレー法等の公知の方法によって作製できる。
【0017】
また、前面透明電極層2における第1光電変換層3側の表面(前面透明電極層2と第1光電変換層3との界面)には、光散乱用のテクスチャ構造2a(以下、テクスチャ2aと呼ぶ)として凹凸が形成されている。光散乱用のテクスチャ2aの凹凸は、前面透明電極層2の面内方向において所定の凹凸形成間隔P1で周期的に形成されている。そして、凹凸形成間隔P1は第2光電変換層5で光電変換に用いられる光の波長よりも短くされている。
【0018】
ここで、光散乱用のテクスチャ2aの凹凸の高さとは、凹凸の平均高低差である。また、光散乱用のテクスチャ2aの凹凸形成間隔P1とは、テクスチャ2aの凹凸での前面透明電極層2の面内方向における隣接する凸部の頂点位置間の距離(または隣接する凹部の底部位置間の距離)である。このテクスチャにより光の散乱・屈折が生じ、前面導電膜以下の光電変換層内での光閉じ込め効果が得られ、短絡電流密度の向上を図ることができる。また、光散乱用のテクスチャ2aの凹凸の高さと凹凸形成間隔P1とのアスペクト比(高さ/凹凸形成間隔P1)は1〜1/4の範囲が好ましい。
【0019】
このテクスチャの形成方法については特に限定されないが、透光性基板1または前面透明電極層2の表面にドライエッチング、またはウェットエッチングなどを施すことにより形成することができる。ドライエッチングでは、たとえばプラズマ放電によりエッチングガスをイオン化またはラジカル化して照射し、物理的または化学的にエッチングして凹凸を形成することができる。物理的なエッチングにはエッチングガスとしてアルゴン(Ar)などの不活性ガスが用いられる。また、化学的エッチングでは、たとえばエッチングガスとしてフッ素系ガスである四フッ化メタン(CF)、六フッ化エタン(C)、塩素系ガスである四塩化炭素(CCl)、四塩化ケイ素(SiCl)などが用いられる。
【0020】
ウェットエッチングとしては、透光性基板1または前面透明電極層2を、酸またはアルカリ溶液中に浸漬する方法などを用いることができる。この際、使用できる酸溶液としては塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、酢酸、蟻酸、過塩素酸等のうちの1種、または2種以上の混合物が挙げられる。
【0021】
また、サンドブラストのような機械加工を行うことによってもテクスチャ形成が可能である。さらに、上述のようなエッチング法を用いずに、CVD法による透明導電膜堆積時に、透明導電膜材料の結晶成長により形成される表面凹凸をテクスチャとして利用する方法、およびゾルゲル法やスプレー法による透明導電膜形成時の結晶粒径に依存した凹凸をテクスチャとして利用する方法等が使用可能である。
【0022】
光電変換層としては、受光面側(透光性基板1)から順番に第1光電変換層3、第2光電変換層5が配置される。第1光電変換層3および第2光電変換層5の膜厚は、たとえば500nm〜1000nm程度が好ましい。なお、本実施の形態では、光電変換層として、第1光電変換層3および第2光電変換層5の2つの光電変換層を備える例を示しているが、本発明において光電変換層の積層数は2つに限定されず、2つ以上の複数層を積層した構成とすることができ、少なくとも2つの光電変換層の間に中間層を狭持した構成とすることができる。この場合は、光電変換層は受光面側から順番に第1光電変換層、第2光電変換層、第3光電変換層・・・の順に、複数の光電変換層が積層され、少なくとも2つの光電変換層の間に中間層が狭持される。
【0023】
積層型薄膜太陽電池における光電変換層はシリコン系、化合物系を問わず半導体光電変換層であり、たとえばp型半導体層、i型(真性)半導体層、n型半導体層の各半導体層を有するpin接合構造またはp型半導体層とn型半導体層とのPN接合により構成される。第1光電変換層3は、たとえば図示しないp型半導体層、i型(真性)半導体層、およびn型半導体層が受光面側から順次積層形成されている。また、第2光電変換層5は、たとえば図示しないp型半導体層、i型(真性)半導体層、およびn型半導体層が受光面側から順次積層形成されている。なお、真性半導体層は、光電変機能を損なわない限り、弱いp型、n型の導電性を示すものであってもよい。
【0024】
ここで、半導体光電変換層とは、アモルファス酸化シリコン(a−SiO)、アモルファス炭化シリコン(a−SiC)、アモルファスシリコン(a−Si)、アモルファスシリコンゲルマニウム(a−SiGe)、シリコン(Si)ナノドット、微結晶シリコン(μc−Si)、ナノ結晶シリコン(nc−Si)などのシリコン系、およびCIGS(Cu(InGa)Se)等の化合物系、ゲルマニウム(Ge)のいずれかを主成分とする母材からなり、それぞれの半導体に適したアクセプタまたはドナーが添加されてp型またはn型を形成し、pin構造を構成する3つの半導体層からなる光電変換層を意味する。これらの製法としては、CVD法が一般的である。CVD法としては、常圧CVD、減圧CVD、プラズマCVD、熱CVD、ホットワイヤーCVD、MOCVD法等が挙げられる。
【0025】
第1光電変換層3は、主に短波長領域の光を吸収して光電変換を行う光電変換層であり、たとえば太陽光の吸収波長領域が短いアモルファスシリコン(a−Si)系の材料からなることが好ましい。このような半導体光電変換層としては、アモルファス酸化シリコン(a−SiO)、アモルファス炭化シリコン(a−SiC)、アモルファスシリコン(a−Si)等が挙げられる。本実施の形態においては、第1光電変換層3にアモルファスシリコン(a−Si)を使用する場合について説明する。
【0026】
第2光電変換層5は、主に第1光電変換層3よりも高波長領域の光を吸収して光電変換を行う光電変換層であり、たとえば吸収する太陽光の吸収波長領域が長いアモルファスシリコンゲルマニウム(a−SiGe)等が挙げられる。本実施の形態においては、第2光電変換層5にシリコンゲルマニウム(SiGe)を使用する場合について説明する。
【0027】
なお、3つ以上の複数の光電変換層を積層する場合は、光電変換層は受光面側から順番に第1光電変換層、第2光電変換層、第3光電変換層・・・の順に、複数の光電変換層が積層され、少なくとも2つの光電変換層の間に中間層が狭持される。そして、第1光電変換層、第2光電変換層、第3光電変換層・・・の順に、吸収する光の波長域が長くなる。
【0028】
中間層4は、隣接する第1光電変換層3と第2光電変換層5との間に狭持され、第1光電変換層3と屈折率が異なり、導電性が高く、光吸収が少ない材料、たとえば導電性酸化物やドープト酸化シリコン(SiO)、ドープト(SiN)などからなることが好ましい。また、中間層4の膜厚は、たとえば80nm〜200nm程度が好ましい。本実施の形態では、中間層4にドープト酸化シリコン(SiO)を使用する。
【0029】
隣接する第1光電変換層3と屈折率の異なる中間層4を設けることにより、その界面における光反射を大きくさせて、第1光電変換層3へ反射される光量を増加させることにより第1光電変換層3で発生する光電流を増大させることができる。このとき中間層4の酸化シリコンの屈折率は、第1光電変換層3の屈折率に対してより小さい方が、第1光電変換層3への光反射を大きくすることができる。
【0030】
また、中間層4の光吸収係数は、小さいほど好ましく、光吸収がないことがより好ましい。中間層4で吸収されなかった光は、第2光電変換層5へ到達し、第2光電変換層5において光電流を発生させるために有効に利用されるからである。
【0031】
また、中間層4における第2光電変換層5側の表面(中間層4と第2光電変換層5との界面)には光散乱用のテクスチャ構造4a(以下、テクスチャ4aと呼ぶ)として凹凸が形成されている。光散乱用のテクスチャ4aの凹凸は、中間層4の面内方向において所定の凹凸形成間隔P2で形成されている。そして、凹凸形成間隔P2は、テクスチャ2aの凹凸形成間隔P1よりも長くされている。
【0032】
ここで、光散乱用のテクスチャ4aの凹凸の高さとは、凹凸の平均高低差である。また、光散乱用のテクスチャ4aの凹凸形成間隔P2とは、光散乱用のテクスチャ4aの凹凸での前面透明電極層2の面内方向における隣接する凸部の頂点位置間の距離(または隣接する凹部の底部位置間の距離)である。このテクスチャにより光の散乱・屈折が生じ、前面導電膜以下の光電変換層内での光閉じ込め効果が得られ、短絡電流密度の向上を図ることができる。また、光散乱用のテクスチャ4aの凹凸の高さと凹凸形成間隔P2とのアスペクト比(高さ/凹凸形成間隔P2)は1〜1/4の範囲が好ましい。
【0033】
このテクスチャの形成方法については特に限定されないが、中間層4の表面にドライエッチング、またはウェットエッチングなどを施すことにより形成することができる。たとえば、中間層4を製膜した後に、任意の間隔(P2)のパターンでレジストを塗布し、これをマスクとして中間層4の表面をウェットエッチングすることで、中間層4の表面に凹凸を形成して光散乱用のテクスチャを形成することができる。また、中間層4を製膜した後に、任意の間隔(P2)のパターンを有するドライエッチング用マスクを用いて中間層4の表面をドライエッチングすることで、中間層4の表面に凹凸を形成して、光散乱用のテクスチャ4aを形成することができる。
【0034】
裏面透明導電膜6は、透光性導電材料からなり、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、ITO等の透明性導電膜を用いることができる。なお、裏面透明導電膜6の膜中に微量の不純物が添加されていてもよい。たとえば、酸化亜鉛(ZnO)が主成分である場合には所定量のガリウム(Ga)やアルミニウム(Al)やボロン(B)といった第IIIB族元素、または銅(Cu)のような第IV族元素が含有されることにより抵抗率が低減するため、電極として使用するのに適している。裏面透明導電膜6の製法は、スパッタリング法、常圧CVD法、減圧CVD法、MOCVD法、電子ビーム蒸着法、ゾルゲル法、電析法、スプレー法等の公知の方法によって作製できる。
【0035】
裏面電極層7は、裏面電極として機能するとともに、光電変換層で吸収されなかった光を反射して再度光電変換層に戻す反射層として機能するため、光電変換効率の向上に寄与する。したがって、裏面電極層7は、光反射率が大きく導電率が高い程好ましい。裏面電極層7は、たとえば可視光反射率の高い銀(Ag)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)もしくはパラジウムなどの金属材料、またはこれらの金属材料の合金、これらの金属材料の窒化物、これらの金属材料の酸化物などにより形成することができる。なお、これらの裏面電極層7の具体的材料は特に限定されるものではなく、周知の材料から適宜に選択して用いることができる。
【0036】
図2は、上記のように構成された実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池における太陽光の透過と散乱の関係を示す模式図である。アモルファスシリコン(a−Si)からなる第1光電変換層3では、およそ350nm〜600nmの波長の太陽光51が光電変換に利用され、特に約500nm付近の波長の太陽光51の光電変換効率が高い。そこで、実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池では、第1光電変換層3で光電変換に用いられる太陽光51をテクスチャ2aで屈折させるために、前面透明電極層2における第1光電変換層3側の界面に形成する光散乱用のテクスチャ2aの凹凸形成間隔P1を、第1光電変換層3で光電変換に利用する太陽光51の波長と同レベル〜1/2の範囲、すなわち250nm〜500nmに設定している。
【0037】
このような周期構造を有するテクスチャ2aを備えることにより、第1光電変換層3において光電変換に用いられる太陽光51(およそ350nm〜600nmの波長の太陽光)はテクスチャ2aの界面、すなわち、第1光電変換層3における光入射側界面において屈折して第1光電変換層3に入射する。これにより、第1光電変換層3における太陽光51の光路長が長くなり、光電変換効率を向上させることができる。なお、第1光電変換層3で光電変換に利用される太陽光51のテクスチャ2aにおける反射を防止するためには、テクスチャ2aの凹凸形成間隔P1は250nm〜350nm程度が好ましい。
【0038】
また、第2光電変換層5において光電変換に用いられる太陽光52(およそ500nm〜900nmの波長の太陽光)は、第1光電変換層3で用いる光よりも波長が長いため、テクスチャ2aの界面で屈せずせずに第1光電変換層3に入射する。これにより、第1光電変換層3における太陽光52の光路長を短くでき、第1光電変換層における太陽光52の吸収損失を低減でき、光電変換効率を向上させることができる。
【0039】
一方、シリコンゲルマニウム(a−SiGe)からなる第2光電変換層5では、およそ500nm〜900nmの波長の太陽光が光電変換に利用され、特に約700nm付近の波長の太陽光51の光電変換効率が高い。そこで、実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池では、第2光電変換層5で光電変換に用いられる太陽光52をテクスチャ4aで屈折させるために、中間層4における第2光電変換層5側の界面に形成する光散乱用のテクスチャ4aの凹凸形成間隔P2を、第2光電変換層5で光電変換に利用する太陽光52の波長と同レベル〜1/2の範囲、すなわち350nm〜700nmに設定している。
【0040】
このような周期構造を有するテクスチャ4aを備えることにより、第2光電変換層5において光電変換に用いられる太陽光52(およそ500nm〜900nmの波長の太陽光)はテクスチャ4aの界面、すなわち、第2光電変換層5における光入射側である中間層4と第2光電変換層5との界面において屈折して第2光電変換層5に入射する。これにより、第2光電変換層5における太陽光52の光路長が長くなり、光電変換効率を向上させることができる。なお、第2光電変換層5で光電変換に利用される太陽光52のテクスチャ4aにおける反射を防止するためには、テクスチャ4aの凹凸形成間隔P2は350nm〜600nm程度が好ましい。
【0041】
上述したように、実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池においては、第1光電変換層3の光入射側であって前面透明電極層2における第1光電変換層3側の表面(前面透明電極層2と第1光電変換層3との界面)に形成された光散乱用のテクスチャ2aと、第2光電変換層5の光入射側であって中間層4における第2光電変換層5側の表面(中間層4と第2光電変換層5との界面)に形成された光散乱用のテクスチャ4aと、を備える。そして、テクスチャ2aの凹凸形成間隔P1が第2光電変換層5において光電変換に用いられる太陽光52の波長よりも短く、且つテクスチャ4aの凹凸形成間隔P2がテクスチャ2aの凹凸形成間隔P1よりも長く設定されている。
【0042】
このような構成を有することにより、入射した太陽光のうち、第1光電変換層3で光電変換に用いられる波長の光(太陽光51)は、第1光電変換層3の光入射側のテクスチャ2aにより屈折して第1光電変換層3に斜めから入射するため光路長が長くなり発電効率が上がる。また、第2光電変換層5で光電変換に用いられる波長の光(太陽光52)は第1光電変換層3で光電変換に用いられる光よりも波長が長いため、第1光電変換層3の光入射側のテクスチャ2aでは屈折せずに透過し、第1光電変換層3を通過する際の光路が最短となるため、第1光電変換層3内での吸収損失を防ぐことができる。さらに、第2光電変換層5の光入射側のテクスチャ4aの凹凸形成間隔P2を第1光電変換層3の光入射側のテクスチャ2aの凹凸形成間隔P1よりも長くして第2光電変換層5で光電変換に用いる光を屈折させて第2光電変換層に斜めに入射させるため、第2光電変換層5での光路長が長くなり、光電変換効率が向上する。
【0043】
したがって、実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池によれば、各光電変換層が光電変換に用いる光の波長に合わせて各光電変換層の光入射側のテクスチャにおける凹凸形成間隔を変更することにより、各光電変換層で光電変換に寄与する波長の太陽光の光路長が長くなり光電変換効率が向上し、太陽光の有効利用が可能な、光電変換効率に優れた積層型薄膜太陽電池が実現されている。
【0044】
次に、上記のように構成された本実施の形態にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法について図3−1〜図3−5を参照して説明する。図3−1〜図3−5は、実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【0045】
まず、透光性基板1を用意する。ここでは、透光性基板1としてたとえば平板状の白板ガラスを用いる。この透光性基板1上に前面透明電極層2を公知の方法で形成する。たとえば、透光性基板1上に酸化亜鉛(ZnO)膜からなる前面透明電極層2をスパッタリング法により形成する。また、成膜方法として、CVD法などの他の成膜方法を用いてもよい。そして、たとえばウェットエッチングにより前面透明電極層2の表面に光散乱用のテクスチャ2aとして凹凸を所定の凹凸形成間隔P1で形成する(図3−1)。
【0046】
次に、前面透明電極層2上に第1光電変換層3を公知の方法で形成する(図3−2)。たとえば、第1光電変換層3としてアモルファスシリコン(a−Si)からなる図示しないp型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層をプラズマCVD法により前面透明電極層2上に順次積層形成する。なお、第1光電変換層3の表面は、前面透明電極層2の表面と同等の凹凸形状とされている。
【0047】
次に、第1光電変換層3上の全面に中間層4を公知の方法で形成する。たとえば、中間層4としてドープト酸化シリコン(SiO)膜をプラズマCVD法により第1光電変換層3上に形成する。この時点では、中間層4の表面は、第1光電変換層3の表面と同等の凹凸形状、すなわち前面透明電極層2の表面と同等の凹凸形状とされており、中間層4の表面凹凸は、前面透明電極層2の表面と同等の凹凸形成間隔を有する。
【0048】
続いて、たとえばウェットエッチングにより中間層4の表面に光散乱用のテクスチャ4aとして凹凸を所定の凹凸形成間隔P2で周期的に形成する。これにより、テクスチャ2aと異なる所定の凹凸形成間隔P2で形成されたテクスチャ4aを表面に有する中間層4が得られる(図3−3)。
【0049】
次に、中間層4上に第2光電変換層5を公知の方法で形成する(図3−4)。たとえば、第2光電変換層5としてシリコンゲルマニウム(SiGe)からなる図示しないp型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層をプラズマCVD法により中間層4上に順次積層形成する。
【0050】
次に、第2光電変換層5上に裏面透明導電膜6を公知の方法で形成する。たとえば、第2光電変換層5上に酸化亜鉛(ZnO)膜からなる裏面透明導電膜6をスパッタリング法により形成する。また、成膜方法として、CVD法などの他の成膜方法を用いてもよい。
【0051】
続いて、裏面透明導電膜6上に裏面電極層7を公知の方法で形成する。たとえば、裏面透明導電膜6上に高反射率を有する銀(Ag)膜からなる裏面電極層7をスパッタリング法により形成する(図3−5)。以上の処理により、図1に示す本実施の形態にかかる積層型薄膜太陽電池が得られる。
【0052】
上述したように、実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法においては、第1光電変換層3の光入射側であって前面透明電極層2における第1光電変換層3側の表面(前面透明電極層2と第1光電変換層3との界面)に、凹凸形成間隔P1が第2光電変換層5において光電変換に用いられる太陽光52の波長よりも短くなるように、光散乱用のテクスチャ2aを形成する。そして、第2光電変換層5の光入射側であって中間層4における第2光電変換層5側の表面(中間層4と第2光電変換層5との界面)に、凹凸形成間隔P2がテクスチャ2aの凹凸形成間隔P1よりも長くなるように、光散乱用のテクスチャ4aを形成する。
【0053】
このような光散乱用のテクスチャ2aおよびテクスチャ4aを形成することにより、入射した太陽光のうち、第1光電変換層3で光電変換に用いられる波長の光(太陽光51)は、第1光電変換層3の光入射側のテクスチャ2aにより屈折して第1光電変換層3に斜めから入射するため光路長が長くなり発電効率が上がる。また、第2光電変換層5で光電変換に用いられる波長の光(太陽光52)は第1光電変換層3で光電変換に用いられる光よりも波長が長いため、第1光電変換層3の光入射側のテクスチャ2aでは屈折せずに透過し、第1光電変換層3を通過する際の光路が最短となるため、第1光電変換層3内での吸収損失を防ぐことができる。さらに、第2光電変換層5の光入射側のテクスチャ4aの凹凸形成間隔P2を第1光電変換層3の光入射側のテクスチャ2aの凹凸形成間隔P1よりも長くして第2光電変換層5で光電変換に用いる光を屈折させて第2光電変換層に斜めに入射させるため、第2光電変換層5での光路長が長くなり、光電変換効率が向上する。
【0054】
したがって、実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法によれば、各光電変換層が光電変換に用いる光の波長に合わせて各光電変換層の光入射側のテクスチャにおける凹凸形成間隔を変更することにより、各光電変換層で光電変換に寄与する波長の太陽光の光路長が長くなり光電変換効率が向上し、太陽光の有効利用が可能な、光電変換効率に優れた積層型薄膜太陽電池を作製することができる。
【0055】
なお、上述した実施の形態においては光電変換層が2層である場合について説明したが、本発明を3層以上の光電変換層が積層された積層型薄膜太陽電池に適用した場合においても、上記と同様に本発明の効果が得られる。
【0056】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、中間層4の表面の光散乱用のテクスチャ4aの凹凸形成間隔をテクスチャ2aの凹凸形成間隔と異ならせることにより、第2光電変換層5の光入射側のテクスチャの凹凸形成間隔P2が第1光電変換層3の光入射側のテクスチャの凹凸形成間隔P1よりも長くなるように構成したが、第1光電変換層3と中間層4との界面の光散乱用のテクスチャの凹凸形成間隔をテクスチャ2aの凹凸形成間隔と異ならせてもよい。
【0057】
図4は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池である積層型薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図4に示すように、本実施の形態にかかる積層型薄膜太陽電池は、透光性基板1、透光性基板1上に形成され第1電極層となる前面透明電極層2、前面透明電極層2上に形成された第1の薄膜半導体層である第1光電変換層3、第1光電変換層3上に形成された中間層4、中間層4上に形成された第2の薄膜半導体層である第2光電変換層5、第2光電変換層5上に形成された裏面透明導電膜6、裏面透明導電膜6上に形成された第2電極層となる裏面電極層7、が順次積層された構造を有する。この積層型薄膜太陽電池においては、透光性基板1側が太陽光50の入射する光入射側である。
【0058】
なお、図4においては、実施の形態1と同様の部材については図1と同じ符号を付すことにより、詳細な説明は省略する。以下では、実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0059】
第1光電変換層3は、中間層4側の表面(第1光電変換層3と中間層4との界面)には光散乱用のテクスチャ3a(以下、テクスチャ3aと呼ぶ)として凹凸が形成されている。光散乱用のテクスチャ3aの凹凸は、第1光電変換層3の面内方向において所定の凹凸形成間隔P3で形成されている。そして、凹凸形成間隔P3は、テクスチャ2aの凹凸形成間隔P1よりも長くされている。
【0060】
ここで、光散乱用のテクスチャ3aの凹凸の高さとは、凹凸の平均高低差である。また、光散乱用のテクスチャ3aの凹凸形成間隔P3とは、光散乱用のテクスチャ3a凹凸での第1光電変換層3の面内方向における隣接する凸部の頂点位置間の距離(または隣接する凹部の底部位置間の距離)である。このテクスチャにより光の散乱・屈折が生じ、前面導電膜以下の光電変換層内での光閉じ込め効果が得られ、短絡電流密度の向上を図ることができる。また、光散乱用のテクスチャ3aの凹凸の高さと凹凸形成間隔P3とのアスペクト比(高さ/凹凸形成間隔P3)は1〜1/4の範囲が好ましい。
【0061】
図5は、上記のように構成された実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池における太陽光の透過と散乱の関係を示す模式図である。アモルファスシリコン(a−Si)からなる第1光電変換層3では、およそ350nm〜600nmの波長の太陽光51が光電変換に利用され、特に約500nm付近の波長の太陽光51の光電変換効率が高い。そこで、実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池では、第1光電変換層3で光電変換に用いられる太陽光51をテクスチャ2aで屈折させるために、前面透明電極層2における第1光電変換層3側の界面に形成する光散乱用のテクスチャ2aの凹凸形成間隔P1を、第1光電変換層3で光電変換に利用する太陽光51の波長と同レベル〜1/2の範囲、すなわち250nm〜500nmに設定している。
【0062】
このような周期構造を有するテクスチャ2aを備えることにより、第1光電変換層3において光電変換に用いられる太陽光51(およそ350nm〜600nmの波長の太陽光)はテクスチャ2aの界面、すなわち、第1光電変換層3における光入射側界面において屈折して第1光電変換層3に入射する。これにより、第1光電変換層3における太陽光51の光路長が長くなり、光電変換効率を向上させることができる。なお、第1光電変換層3で光電変換に利用される太陽光51のテクスチャ2aにおける反射を防止するためには、テクスチャ2aの凹凸形成間隔P1は250nm〜350nm程度が好ましい。
【0063】
また、第2光電変換層5において光電変換に用いられる太陽光52(およそ500nm〜900nmの波長の太陽光)は、第1光電変換層3で用いる光よりも波長が長いため、テクスチャ2aの界面で屈せずせずに第1光電変換層3に入射する。これにより、第1光電変換層3における太陽光52の光路長を短くでき、第1光電変換層における太陽光52の吸収損失を低減でき、光電変換効率を向上させることができる。
【0064】
一方、アモルファスシリコンゲルマニウム(a−SiGe)からなる第2光電変換層5では、およそ500nm〜900nmの波長の太陽光が光電変換に利用され、特に約700nm付近の波長の太陽光51の光電変換効率が高い。そこで、実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池では、第2光電変換層5で光電変換に用いられる太陽光52をテクスチャ3aで屈折させるために、第1光電変換層3における中間層4の界面に形成する光散乱用のテクスチャ3aの凹凸形成間隔P3を、第2光電変換層5で光電変換に利用する太陽光52の波長と同レベル〜1/2の範囲、すなわち350nm〜700nmに設定している。
【0065】
このような周期構造を有するテクスチャ3aを備えることにより、第2光電変換層5において光電変換に用いられる太陽光52(およそ500nm〜900nmの波長の太陽光)はテクスチャ3aの界面、すなわち、第2光電変換層5における光入射側であって第1光電変換層3と中間層4との界面において屈折して第2光電変換層5に入射する。これにより、第2光電変換層5における太陽光52の光路長が長くなり、光電変換効率を向上させることができる。なお、第2光電変換層5で光電変換に利用される太陽光52のテクスチャ3aにおける反射を防止するためには、テクスチャ3aの凹凸形成間隔P3は350nm〜600nm程度が好ましい。
【0066】
上述したように、実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池においては、第1光電変換層3の光入射側であって前面透明電極層2における第1光電変換層3側の表面(前面透明電極層2と第1光電変換層3との界面)に形成された光散乱用のテクスチャ2aと、第2光電変換層5の光入射側であって第1光電変換層3における中間層4側の表面(第1光電変換層3と中間層4との界面)に形成された光散乱用のテクスチャ3aと、を備える。そして、テクスチャ2aの凹凸形成間隔P1が第2光電変換層5において光電変換に用いられる太陽光52の波長よりも短く、且つテクスチャ3aの凹凸形成間隔P3がテクスチャ2aの凹凸形成間隔P1よりも長く設定されている。
【0067】
このような構成を有することにより、入射した太陽光のうち、第1光電変換層3で光電変換に用いられる波長の光(太陽光51)は、第1光電変換層3の光入射側のテクスチャ2aにより屈折して第1光電変換層3に斜めから入射するため光路長が長くなり発電効率が上がる。また、第2光電変換層5で光電変換に用いられる波長の光(太陽光52)は第1光電変換層3で光電変換に用いられる光よりも波長が長いため、第1光電変換層3の光入射側のテクスチャ2aでは屈折せずに透過し、第1光電変換層3を通過する際の光路が最短となるため、第1光電変換層3内での吸収損失を防ぐことができる。さらに、第2光電変換層5の光入射側のテクスチャ3aの凹凸形成間隔P3を第1光電変換層3の光入射側のテクスチャ2aの凹凸形成間隔P1よりも長くして第2光電変換層5で光電変換に用いる光を屈折させて第2光電変換層に斜めに入射させるため、第2光電変換層5での光路長が長くなり、光電変換効率が向上する。
【0068】
したがって、実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池によれば、各光電変換層が光電変換に用いる光の波長に合わせて各光電変換層の光入射側のテクスチャにおける凹凸形成間隔を変更することにより、各光電変換層で光電変換に寄与する波長の太陽光の光路長が長くなり光電変換効率が向上し、実施の形態1にかかる積層型薄膜太陽電池と同様に、太陽光の有効利用が可能な、光電変換効率に優れた積層型薄膜太陽電池が実現されている。
【0069】
次に、上記のように構成された本実施の形態にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法について図6−1〜図6−5を参照して説明する。図6−1〜図6−5は、実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。
【0070】
まず、透光性基板1を用意する。ここでは、透光性基板1としてたとえば平板状の白板ガラスを用いる。この透光性基板1上に前面透明電極層2を公知の方法で形成する。たとえば、透光性基板1上に酸化亜鉛(ZnO)膜からなる前面透明電極層2をスパッタリング法により形成する。また、成膜方法として、CVD法などの他の成膜方法を用いてもよい。そして、たとえばウェットエッチングにより前面透明電極層2の表面に光散乱用のテクスチャ2aとして凹凸を所定の凹凸形成間隔P1で形成する(図6−1)。
【0071】
次に、前面透明電極層2上に、表面に光散乱用のテクスチャ3aを有する第1光電変換層3を形成する(図6−2)。たとえば、第1光電変換層3としてアモルファスシリコン(a−Si)からなる図示しないp型半導体層およびi型半導体層をプラズマCVD法により前面透明電極層2上に順次積層形成する。次に、任意の間隔(P3)のパターンでレジストを塗布し、これをマスクとしてi型半導体層の表面をウェットエッチングすることで、i型半導体層の表面に光散乱用のテクスチャ3aとして凹凸を所定の凹凸形成間隔P3で形成する。続いて、i型半導体層にイオン注入を行ってi型半導体層の表面をn型半導体層に改質する。これにより、テクスチャ2aと異なる所定の凹凸形成間隔P3で形成された光散乱用のテクスチャ3aを表面に有する第1光電変換層3を形成することができる。
【0072】
次に、第1光電変換層3上の全面に中間層4を公知の方法で形成する。たとえば、中間層4としてドープト酸化シリコン(SiO)膜をプラズマCVD法により第1光電変換層3上に形成する(図6−3)。
【0073】
次に、中間層4上に第2光電変換層5を公知の方法で形成する(図6−4)。たとえば、第2光電変換層5としてアモルファスシリコンゲルマニウム(a−SiGe)からなる図示しないp型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層をプラズマCVD法により中間層4上に順次積層形成する。
【0074】
次に、第2光電変換層5上に裏面透明導電膜6を公知の方法で形成する。たとえば、第2光電変換層5上に酸化亜鉛(ZnO)膜からなる裏面透明導電膜6をスパッタリング法により形成する。また、成膜方法として、CVD法などの他の成膜方法を用いてもよい。
【0075】
続いて、裏面透明導電膜6上に裏面電極層7を公知の方法で形成する。たとえば、裏面透明導電膜6上に高反射率を有する銀(Ag)膜からなる裏面電極層7をスパッタリング法により形成する(図6−5)。以上の処理により、図4に示す本実施の形態にかかる積層型薄膜太陽電池が得られる。
【0076】
上述したように、実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法においては、第1光電変換層3の光入射側であって前面透明電極層2における第1光電変換層3側の表面(前面透明電極層2と第1光電変換層3との界面)に、凹凸形成間隔P1が第2光電変換層5において光電変換に用いられる太陽光52の波長よりも短くなるように、光散乱用のテクスチャ2aを形成する。そして、第2光電変換層5の光入射側であって第1光電変換層3における中間層4側の表面(第1光電変換層3と中間層4との界面)に、凹凸形成間隔P3がテクスチャ2aの凹凸形成間隔P1よりも長くなるように、光散乱用のテクスチャ3aを形成する。
【0077】
このような光散乱用のテクスチャ2aおよびテクスチャ3aを形成することにより、第1光電変換層3には該第1光電変換層3で光電変換に用いられる太陽光51のみが屈折して入射し、第2光電変換層5には該第2光電変換層5で光電変換に用いられる太陽光52が屈折して入射する。これにより、それぞれの光電変換層においては、各光電変換層で光電変換に寄与する波長の太陽光の光路長が長くなり光電変換効率が向上する。一方、第1光電変換層3においては、該第1光電変換層3で光電変換に寄与しない波長の太陽光52は屈折せずに透過するため第1光電変換層3における光路長が短くなる。これにより、第1光電変換層3での吸収損失を低減することができ、より多くの太陽光52が第2光電変換層5に入射されるため、光電効率が向上する。
【0078】
したがって、実施の形態2にかかる積層型薄膜太陽電池の製造方法によれば、各光電変換層が光電変換に用いる光の波長に合わせて各光電変換層の光入射側のテクスチャにおける凹凸形成間隔を変更することにより、各光電変換層で光電変換に寄与する波長の太陽光の光路長が長くなり光電変換効率が向上し、実施の形態1と同様に、太陽光の有効利用が可能な、光電変換効率に優れた積層型薄膜太陽電池を作製することができる。
【0079】
なお、上述した実施の形態では光電変換層として第1光電変換層3と第2光電変換層5とを備える場合について説明しているが、3層以上の光電変換層が積層された構造を有する積層型薄膜太陽電池の場合は、上記の第1光電変換層3を「第X光電変換層」と、上記の第2光電変換層5を「第(X+1)光電変換層」と読み替えて一般化することができる。ここで、Xは積層された複数の光電変換層のうちの受光面からの順番を表す。そして、このような積層型薄膜太陽電池において、「第X光電変換層」と「第(X+1)光電変換層」とに関して上記と同様の構造を採用することにより、上述した本発明の効果を得ることが可能である。
【0080】
また、上述した実施の形態では第1光電変換層3において光電変換に用いられる太陽光51が光散乱用のテクスチャ2aにより屈折する場合について説明したが、第1光電変換層3の光入射側であって透光性基板1の表面(透光性基板1と前面透明電極層2との界面)に形成された光散乱用のテクスチャにより太陽光51が屈折する構成とすることも可能である。この場合においても上述した本発明の効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明にかかる薄膜太陽電池は、光を有効利用した光電変換効率に優れた薄膜太陽電池の実現に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 透光性基板
2 前面透明電極層
2a テクスチャ構造
3 光電変換層
3a テクスチャ構造
4 中間層
4a テクスチャ構造
5 光電変換層
6 裏面透明導電膜
7 裏面電極層
50 太陽光
51 太陽光
52 太陽光
P1 凹凸形成間隔
P2 凹凸形成間隔
P3 凹凸形成間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、透明導電膜からなる第1電極層と、光電変換を行う第1光電変換層と、中間層と、光電変換を行う第2光電変換層と、第2電極層と、をこの順で有する薄膜太陽電池であって、
前記第1光電変換層の光入射側に複数の凹凸からなる第1のテクスチャ構造が形成され、
前記第2光電変換層の光入射側であって前記第1光電変換層と前記第2光電変換層との間に複数の凹凸からなる第2のテクスチャ構造が形成され、
前記第1のテクスチャ構造における前記凹凸の形成間隔が前記第2光電変換層で光電変換に用いる光の波長よりも短く、
前記第2のテクスチャ構造における前記凹凸の形成間隔が前記第1のテクスチャ構造における前記凹凸の形成間隔よりも長いこと、
を特徴とする薄膜太陽電池。
【請求項2】
前記第2のテクスチャ構造は、前記中間層における前記第2光電変換層側に形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池。
【請求項3】
前記第2のテクスチャ構造は、前記第1光電変換層における前記中間層側に形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池。
【請求項4】
透光性基板上に、透明導電膜からなる第1電極層と、光電変換を行う第1光電変換層と、中間層と、光電変換を行う第2光電変換層と、第2電極層と、をこの順で有する薄膜太陽電池の製造方法であって、
前記第1光電変換層の光入射側に複数の凹凸からなる第1のテクスチャ構造を形成する工程と、
前記第2光電変換層の光入射側であって前記第1光電変換層と前記第2光電変換層との間に複数の凹凸からなる第2のテクスチャ構造を形成する工程と、
を含み、
前記第1のテクスチャ構造における前記凹凸の形成間隔が前記第2光電変換層で光電変換に用いる光の波長よりも短く、
前記第2のテクスチャ構造における前記凹凸の形成間隔が前記第1のテクスチャ構造における前記凹凸の形成間隔よりも長いこと、
を特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記透光性基板上に、前記第1のテクスチャ構造を表面に有する前記第1電極層を形成する工程と、
前記第1電極層上に、前記第1光電変換層を形成する工程と、
前記第1光電変換層上に、前記第2のテクスチャ構造を表面に有する前記中間層を形成する工程と、
前記中間層上に、前記第2光電変換層を形成する工程と、
前記第2光電変換層上に、前記第2電極層を形成する工程と、
を含むこと、
を特徴とする請求項4に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記透光性基板上に、前記第1のテクスチャ構造を表面に有する前記第1電極層を形成する工程と、
前記第1電極層上に、前記第2のテクスチャ構造を表面に有する前記第1光電変換層を形成する工程と、
前記第1光電変換層上に、前記中間層を形成する工程と、
前記中間層上に、前記第2光電変換層を形成する工程と、
前記第2光電変換層上に、前記第2電極層を形成する工程と、
を含むこと、
を特徴とする請求項4に記載の薄膜太陽電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図3−3】
image rotate

【図3−4】
image rotate

【図3−5】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図6−3】
image rotate

【図6−4】
image rotate

【図6−5】
image rotate


【公開番号】特開2011−135021(P2011−135021A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295615(P2009−295615)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】