説明

薄膜形成装置

【課題】薄膜材料蒸気を互いに異なる複数の場所から均一に放出させ、均一な膜厚で薄膜を成膜できる薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】
真空槽11内に配置された放出装置20は、一個又は二個以上の放出ユニット20aを有し、各放出ユニット20aは、中空で長手方向を有する放出容器21aを有し、放出容器21a内には放出容器21aの長手方向に沿って二本以上の導入管31a1〜31a3が、放出口25aから異なる距離で位置するように配置され、異なる導入管31a1〜31a3に設けられた導入口35a1〜35a3は、長手方向上の異なる場所に位置するように形成されている。各導入管31a1〜31a3への蒸気供給速度を制御することで各放出口25aからの蒸気放出量を均一にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELは、発光効率が高く、薄い発光装置を組み立てることができることから、近年では、大面積化する表示装置や照明機器の用途に注目されており、有機薄膜を大面積基板に均一に成膜する技術が求められている。
図6は従来技術である薄膜成膜装置101の内部構成図を示している。
薄膜成膜装置101は、真空槽111と、放出装置120と、蒸気生成装置140を有している。
放出装置120は、真空槽111の内部に配置され、蒸気生成装置140に接続されている。
真空排気装置112によって真空槽111内を真空排気しておき、真空槽111内に成膜対象物105を配置して、蒸気生成装置140内で薄膜材料蒸気を生成し、放出装置120に供給すると、放出装置120から真空槽111の内部に薄膜材料蒸気が放出され、成膜対象物105に到達すると、成膜対象物105の表面に薄膜が形成されるようになっている。
【0003】
放出装置120を説明すると、放出装置120は中空で細長の放出容器121を有している。放出容器121の成膜対象物105と対面する位置には、放出口125が設けられ、放出容器121の内部空間と真空槽111の内部空間は、放出口125によって接続されている。
放出口125が複数個あると、各放出口125は放出容器121の長手方向に沿って並べられており、放出口125が一個又は少数の場合は、放出口125を長手方向に沿った細長の放出口に形成することもできる。いずれにしろ、放出容器121からは、長手方向の異なる複数の場所から薄膜材料蒸気が放出され、成膜対象物105に到着できるようにされている。
上記従来の薄膜成膜装置101では、放出口125から放出された薄膜材料蒸気の流量は蒸気生成装置140に近い方が遠い方よりも多いため、成膜対象物105に薄膜を均一な膜厚で成膜することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−146219号公報
【特許文献2】特開2002−249868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、薄膜材料蒸気を互いに異なる複数の場所から均一に放出させ、均一な膜厚で薄膜を成膜できる薄膜形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、真空槽と、前記真空槽内に配置された放出装置と、前記放出装置に接続され、前記放出装置に薄膜原料蒸気を供給する蒸気生成装置とを有し、前記放出装置は、前記蒸気生成装置から供給された前記薄膜原料蒸気を前記真空槽内に放出させ、前記真空槽内に配置された成膜対象物の表面に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、前記放出装置は、一個又は二個以上の放出ユニットを有し、各前記放出ユニットは、中空で長手方向を有する細長の放出容器と、前記放出容器に形成され、前記放出装置内部空間と前記真空槽の内部空間とを接続する放出口と、前記放出容器の前記長手方向に沿って前記放出容器内に配置された二本以上の導入管と、前記導入管に形成された導入口とを有し、前記導入管は前記放出容器内で前記放出口から異なる距離で位置するように配置され、異なる前記導入管の前記導入口は、前記長手方向上の異なる場所に位置するように形成された薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記導入口は、前記導入管の両側に配置された第一、第二の導入口によって構成され、前記第一、第二の導入口から、前記放出口が位置する方向に対して横方向に向けられた薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、各前記導入管の先端は閉塞された薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記放出口は、前記放出容器の前記成膜対象物に対面する位置に形成され、前記放出容器の前記放出口が形成された位置とは反対側には、測定口が形成され、前記測定口と対面する位置には、膜厚センサが配置された薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記測定口は、前記放出容器の長手方向にそって、複数個形成され、各前記測定口と対面する位置に前記膜厚センサがそれぞれ配置された薄膜形成装置である。
本発明は、前記放出容器と前記導入管は水平に配置され、前記放出口が上方に向けられ、前記測定口が下方に向けられた薄膜形成装置であって、前記測定口は前記導入口の鉛直下方に配置された薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、一の前記放出容器内の前記導入管に、前記薄膜材料蒸気を前記導入管毎に異なる供給速度で前記蒸気生成装置から供給させられる制御装置が設けられ、前記供給速度は、前記膜厚センサの検出結果に基づいて変更可能に構成された薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記放出装置は複数の前記放出ユニットの前記放出容器が、前記長手方向とは直角な方向に並べられ、各前記導入管は互いに平行になるようにされ、各前記導入管には、同じ物質の前記薄膜原料蒸気が供給される薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記放出装置は複数の前記放出ユニットの前記放出容器が、前記長手方向とは直角な方向に並べられ、各前記導入管は互いに平行になるようにされ、複数の前記放出ユニット内の前記導入管には、同じ物質の前記薄膜原料蒸気が供給され、前記薄膜原料蒸気には、異なる物質の第一、第二の蒸気が含まれ、複数の前記放出ユニットには、前記第一の蒸気が供給される前記放出ユニットと、前記第二の蒸気が供給される放出ユニットとが含まれる薄膜形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
成膜対象物である基板の大きさに依らずに均一な膜厚で薄膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の薄膜形成装置の一例の内部構成図
【図2】本発明の薄膜形成装置の一例のA−A線切断断面図
【図3】本発明の薄膜形成装置の一例のB−B線切断断面図
【図4】本発明の薄膜形成装置の一例のC−C線切断断面図
【図5】本発明の薄膜形成装置の一例のD−D線切断断面図
【図6】従来技術の薄膜形成装置の一例の内部構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照し、符号1は本発明の一例の薄膜形成装置1を示している。
この薄膜形成装置1は、真空槽11と、放出装置20と、蒸気生成装置40a1〜40a3、40b1〜40b3、40c1〜40c3、40d1〜40d3、40e1〜40e3と、キャリアガス供給装置19を有している。
放出装置20は、真空槽11の内部に配置され、蒸気生成装置40a1〜40a3、40b1〜40b3、40c1〜40c3、40d1〜40d3、40e1〜40e3に接続されている。
真空排気装置12によって真空槽11内を真空排気しておき、蒸気生成装置40a1〜40a3、40b1〜40b3、40c1〜40c3、40d1〜40d3、40e1〜40e3内で薄膜材料蒸気を生成し、放出装置20に供給すると、放出装置20から真空槽11の内部に薄膜材料蒸気が放出され、後述するように真空槽11内に搬入された成膜対象物5に到達すると、成膜対象物5の表面に薄膜が形成されるようになっている。
【0010】
放出装置20を説明すると、放出装置20は、複数の放出ユニット20a〜20eを有している。
各放出ユニット20a〜20eは、それぞれ一個の放出容器を有している。ここでは各放出容器の内部は分離されており、各放出容器に薄膜材料蒸気が供給されるが、放出容器間を薄膜材料蒸気が移動することはない。
また、複数の放出容器は、中空の大きな容器の内部を隔壁によって区分けして形成してもよいし、分離可能な複数の小さな容器によって構成してもよい。
【0011】
図2は薄膜形成装置1のA−A線切断断面図、図3は同B−B線切断断面図、図4は同C−C線切断断面図、図5は同D−D線切断断面図を示している。符号21a〜21eは放出容器を示している。
各放出容器21a〜21eの内部には、それぞれ二本以上の複数の導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3、31e1〜31e3が配置されている。
各放出容器21a〜21eは細長であり、複数の導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3、31e1〜31e3は、各放出容器21a〜21e内で長手方向に沿って配置されており、各導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3又は31e1〜31e3は、各放出容器21a〜21e内で長手方向とは直角方向に、互いに平行に並んで配置されている。
真空槽11内に搬入された成膜対象物5は、薄膜が形成される成膜面6を有しており、各放出容器21a〜21eは、後述するように真空槽11内に搬入された成膜対象物5の成膜面6と平行に対面するように配置されている。
本実施例では、各放出ユニット20a〜20eの放出容器21a〜21eは長手方向を互いに平行にして、長手方向とは直角な方向に並べられている。
【0012】
各放出容器21a〜21e内の複数の導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3又は31e1〜31e3は、成膜面6が位置する平面と垂直な平面上に位置するように並べられており、各放出容器21a〜21eの導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3又は31e1〜31e3が位置する平面は互いに平行にされている。
本例では、それぞれ3本の導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3又は31e1〜31e3が各放出容器21a〜21e内に配置されている。
各放出容器21a〜21eの成膜対象物5と対面する位置には、一個又は複数個の放出口25a〜25eが配置されている。各放出容器21a〜21e内の内部空間は、放出口25a〜25eと後述する測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3、26e1〜26e3を除き、他の部分は閉塞されており、各放出容器21a〜21e内の内部空間は、放出口25a〜25eによって真空槽11の内部空間と接続されている。
【0013】
放出口25a〜25eが複数個あると、各放出口25a〜25eはそれぞれ放出容器21a〜21eの長手方向に沿って並べられており、放出口25a〜25eが一個又は少数の場合は、放出口25a〜25eを放出容器21a〜21eの長手方向に沿った細長の放出口に形成することもできる。いずれにしろ、放出容器21a〜21eからは、長手方向の異なる複数の場所から後述する薄膜材料蒸気とキャリアガスが放出され、成膜対象物5の成膜面6に到着できるようにされている。
また、放出容器21a〜21eの各放出口25a〜25eと、成膜面6が位置する平面との距離は等しくされている。
【0014】
各放出ユニット20a〜20eの構成は同じであるので、図2を参照し符号20aの放出ユニットで代表して説明すると、各導入管31a1〜31a3は、根本部分が放出容器21aから突き出され、蒸気生成装置40a1〜40a3に接続されており、各導入管31a1〜31a3の先端部分は閉塞されている。
各導入管31a1〜31a3は導入口35a1〜35a3を有しており後述するように、蒸気生成装置40a1〜40a3からキャリアガスと共に薄膜材料蒸気が各導入管31a1〜31a3に供給されると、導入口35a1〜35a3から放出容器21a内にキャリアガスと薄膜材料蒸気が導入される。
放出容器21a内の導入管31a1〜31a3は、その導入管31a1〜31a3が配置された放出容器21aの長手方向の異なる位置に導入口35a1〜35a3が形成されており、ここでは、放出容器21aの内部空間の一端から他端までの間であって、一端からの距離が、小の位置に開口が形成された導入管31a1と、中の位置に形成された導入管31a2と、大の位置に形成された導入管31a3が放出容器21a内に配置されている。
【0015】
また、本実施例では、導入口35a1、35a2又は35a3はそれぞれ二個一組の第一、第二の導入口で構成されており、各導入管31a1〜31a3から見て放出口25aが位置する方向を前方、反対側を後方とすると、第一の導入口は、各導入管31a1〜31a3の左側方の部分、第二の導入口は、各導入管31a1〜31a3の右側方の部分に配置されている。以下、各二個一組の第一、第二の導入口に符号35a1、35a2又は35a3を付して説明する。
【0016】
一本の導入管31a1、31a2又は31a3の第一、第二の導入口35a1、35a2又は35a3は長手方向の同じ場所に位置し、各導入管31a1〜31a3の第一、第二の導入口35a1〜35a3は、導入管31a1〜31a3毎に長手方向の異なる場所に位置している。
蒸気生成装置40a1〜40a3は、キャリアガス供給装置19に接続された一又は複数の蒸気生成槽41a1〜41a3と、キャリアガス供給装置19から各蒸気生成槽41a1〜41a3にそれぞれ供給されるキャリアガスの流量を制御する流量制御装置44a1〜44a3と、各蒸気生成槽41a1〜41a3内にそれぞれ位置する薄膜材料46a1〜46a3と、各蒸気生成槽41a1〜41a3内の薄膜材料46a1〜46a3をそれぞれ加熱する加熱装置42a1〜42a3とを有している。
蒸気生成槽41a1〜41a3は、一又は複数個の導入管31a1〜31a3に接続されており、蒸気生成槽41a1〜41a3と導入管31a1〜31a3の間に設けられたバルブ45a1〜45a3を開けると、蒸気生成槽41a1〜41a3の内部は、放出ユニット20aを介して真空槽11の内部に接続され、真空排気装置12によって真空槽11内を真空排気すると、蒸気生成槽41a1〜41a3内も真空排気される。
【0017】
蒸気生成槽41a1〜41a3内は、真空槽11に接続された真空排気装置12や蒸気生成槽41a1〜41a3に接続された不図示の真空排気装置によって真空排気され、蒸気生成槽41a1〜41a3、放出ユニット20a、及び真空槽11内が所定圧力まで真空排気された状態で、蒸気生成槽41a1〜41a3内にキャリアガスを供給しながら加熱装置42a1〜42a3によって薄膜材料46a1〜46a3を加熱し、薄膜材料46a1〜46a3から薄膜材料蒸気を生成し、キャリアガスと共に薄膜材料蒸気を放出容器21a内の導入管31a1〜31a3に供給する。
【0018】
各導入管31a1〜31a3に供給されたキャリアガスと薄膜材料蒸気は、第一、第二の導入口35a1〜35a3から放出容器21aの内部に放出される。
各導入管31a1〜31a3の第一、第二の導入口35a1〜35a3は側方に向けられており、第一、第二の導入口35a1〜35a3から放出されたキャリアガスと蒸気は、放出口25aに向かって飛行せず、放出容器21a内に充満する。
後述するように、蒸気生成装置40から供給された気体は、各導入管31a1〜31a3毎に長手方向の異なる位置で、第一、第二の導入口35a1〜35a3から放出され、各導入管31a1〜31a3に設けられた第一、第二の導入口35a1〜35a3の近傍毎に、その第一、第二の導入口35a1〜35a3から導入されたキャリアガスと薄膜材料蒸気とが形成する圧力のガス雰囲気が形成される。
従って、各導入管31a1〜31a3に均一にキャリアガスと薄膜材料蒸気を供給すると、放出容器21a内のキャリアガスの分圧と薄膜材料蒸気の分圧とは均一になり、キャリアガスと薄膜材料蒸気は均一な供給速度と均一な濃度で、長手方向に亘って配置された一又は複数の放出口25aから真空槽11内に放出される。
【0019】
真空槽11内の放出容器21aの上方の天井側には、放出容器21aの長手方向とは垂直な方向に、細長の搬送装置9が放出容器21aとは離間して配置されている。
搬送装置9には基板ホルダ8が取り付けられており、搬送装置9が動作することで、基板ホルダ8は放出容器21aと離間した位置を、放出容器21aの長手方向とは垂直な方向に移動する。
成膜対象物5は、成膜面6にマスク板7が配置された状態で、成膜面6を放出容器21aに向けて基板ホルダ8に保持されている。
真空槽11には不図示の搬入口と搬出口が設けられており、搬送装置9は基板ホルダ8を成膜対象物5とマスク板7と共に搬入口から真空槽11内に搬入し、真空槽11内を移動させた後、搬出口から真空槽11の外部に搬出させるように構成されている。ここでは、成膜対象物5は成膜面6を鉛直下方に向けられており、マスク板7と成膜対象物5とは互いに固定されて相対的に静止した状態で水平に移動するようにされている。
【0020】
マスク板7には底面に成膜対象物5の成膜面6が露出する開口が設けられており、真空排気装置12によって真空排気しながら、放出口25aから薄膜材料蒸気を真空槽11内に放出させた状態で、成膜対象物5とマスク板7とが、放出口25aと対面しながら放出容器21aの上方位置を通過するようにすると、放出口25aと対面する部分の開口を放出口25aから放出された蒸気が通過し、開口底面の成膜対象物5の成膜面6に到達し、マスク板7と同パターン形状の薄膜が成膜面6に均一な膜厚で形成される。
そして、成膜対象物5とマスク板7とを一緒に移動させながら、成膜面6の放出口25aと対向する部分に薄膜を形成すると、成膜対象物5の移動方向に沿った方向の範囲に薄膜が形成される。図1を参照し、成膜対象物5は、真空槽11内の全ての放出容器21a〜21e上を通過した後、次の工程の真空槽に移動され、後工程が行われる。
【0021】
図1を参照し、ここでは、蒸気生成装置40a1〜40a3、40b1〜40b3、40c1〜40c3、40d1〜40d3、40e1〜40e3は複数設けられており、一個の放出ユニット20a〜20eの導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3又は31e1〜31e3、即ち、同じ放出容器21a〜21e内の導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3又は31e1〜31e3は、異なる蒸気生成装置40a1〜40a3、40b1〜40b3、40c1〜40c3、40d1〜40d3又は40e1〜40e3に接続されているが、同じ放出容器21a〜21e内の導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3又は31e1〜31e3が接続された蒸気生成装置40a1〜40a3、40b1〜40b3、40c1〜40c3、40d1〜40d3又は40e1〜40e3には、同じ薄膜材料が配置され、同じ薄膜材料蒸気が供給されるようになっている。
この場合、各放出ユニット20a〜20eの導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3又は31e1〜31e3が接続された蒸気生成装置40a1〜40a3、40b1〜40b3、40c1〜40c3、40d1〜40d3又は40e1〜40e3に同じ薄膜材料を配置すると、各放出ユニット20a〜20eから同じ薄膜材料蒸気が放出される。
【0022】
他方、一部の蒸気生成装置40a1〜40a3、40c1〜40c3、40e1〜40e3と他の蒸気発生装置40b1〜40b3、40d1〜40d3に異なる薄膜材料を配置し、一部の放出ユニット20a、20c、20eを、一方の種類の薄膜材料が配置された蒸気生成装置40a1〜40a3、40c1〜40c3、40e1〜40e3に接続し、他方の放出ユニット20b、20dを、他方の種類の薄膜材料が配置された蒸気生成装置40b1〜40b3、40d1〜40d3に接続すると、一部の放出ユニット20a、20c、20eと他方の放出ユニット20b、20dの間で、異なる薄膜材料蒸気が放出され、異なる薄膜材料蒸気が成膜対象物5にそれぞれ到着し、異なる薄膜材料が混合された薄膜を形成することができる。
例えば、形成する有機薄膜の主成分となるホスト有機材料を一部の蒸気生成装置40a1〜40a3、40c1〜40c3、40e1〜40e3に配置し、発色剤等のドーパント有機材料を他の蒸気生成装置40b1〜40b3、40d1〜40d3に配置し、発光する有機薄膜を成膜面6上に形成することもできる。
【0023】
この場合、ドーパント有機材料は全体の数%程度の含有率なので、ドーパント有機材料が配置された放出ユニット20b、20dからは、ホスト有機材料が接続された放出ユニット20a、20c、20eからよりも少量の蒸気が放出されるようにする。
なお、上記実施例では、有機化合物を薄膜材料として、蒸気生成装置40a1〜40a3、40b1〜40b3、40c1〜40c3、40d1〜40d3、40e1〜40e3の蒸気生成槽の内部に配置したが、薄膜材料は有機化合物であるだけではなく、無機化合物の場合や有機化合物と無機化合物の混合物の場合も本発明に含まれる。
【0024】
次に、より均一に薄膜材料蒸気を放出させる構造を説明すると、図2〜5を参照し、本実施例の薄膜形成装置1の各放出容器21a〜21eの放出口25a〜25eとは反対側の位置には、二以上の測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3又は26e1〜26e3が形成されている。
ここでは、測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3又は26e1〜26e3は、少なくとも導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3又は31e1〜31e3の本数と同数設けられており、長手方向上の第一、第二の導入口35a1〜35a3、35b1〜35b3、35c1〜35c3、35d1〜35d3又は35e1〜35e3が位置する場所と同じ場所に、それぞれ配置されており、各測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3又は26e1〜26e3は、各導入管31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3又は31e1〜31e3の第一、第二の導入口35a1〜35a3、35b1〜35b3、35c1〜35c3、35d1〜35d3又は35e1〜35e3が形成するガス雰囲気に露出され、そのガス雰囲気中のキャリアガスと薄膜材料蒸気が測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3又は26e1〜26e3から真空槽内11に流出する。
【0025】
各測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3、26e1〜26e3に対面する真空槽11内の位置には膜厚センサ16a1〜16a3、16b1〜16b3、16c1〜16c3、16d1〜16d3、16e1〜16e3が配置されており、測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3、26e1〜26e3から流出した薄膜材料蒸気によって膜厚センサ16a1〜16a3、16b1〜16b3、16c1〜16c3、16d1〜16d3、16e1〜16e3上に薄膜が形成される。
膜厚センサ16a1〜16a3、16b1〜16b3、16c1〜16c3、16d1〜16d3、16e1〜16e3は制御装置17に接続され、各膜厚センサ16a1〜16a3、16b1〜16b3、16c1〜16c3、16d1〜16d3、16e1〜16e3上に成長している薄膜の膜厚と成膜時間が制御装置17によって測定されており、各膜厚センサ16a1〜16a3、16b1〜16b3、16c1〜16c3、16d1〜16d3、16e1〜16e3が対面する測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3、26e1〜26e3から放出される薄膜材料蒸気についての成膜速度が測定される。
【0026】
各測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3、26e1〜26e3の成膜速度は、放出容器21a〜21eの長手方向の同じ場所に位置する導入口35a1〜35a3、35b1〜35b3、35c1〜35c3、35d1〜35d3、35e1〜35e3から放出容器内に導入される薄膜材料蒸気の導入速度と同じ値であるか、又は比例する値となっており、成膜面6上の、各導入口35a1〜35a3、35b1〜35b3、35c1〜35c3、35d1〜35d3、35e1〜35e3と近接する位置の成膜速度を反映する値であり、成膜面6上には、測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3、26e1〜26e3の成膜速度と、その測定口26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3、26e1〜26e3に対応する導入口35a1〜35a3、35b1〜35b3、35c1〜35c3、35d1〜35d3、35e1〜35e3の位置とを反映した膜厚分布の薄膜が形成される。
各放出ユニット20a〜20eの構成は同じなので、図2を参照し符号20aの放出ユニットで代表して説明すると、制御装置17は、測定結果によって加熱装置42a1〜42a3の発熱量と流量制御装置44a1〜44a3によるキャリアガスの流量を制御しており、設定された基準値よりも許容量を超えて成膜速度が速い測定値を得た場合には、その導入管31a1〜31a3に供給される薄膜材料蒸気の供給速度を減少させる。逆に、設定された基準値よりも許容量を超えて成膜速度が遅い測定値を得た場合には、その導入管31a1〜31a3に供給される薄膜材料蒸気の供給速度を増加させる。いずれの場合でも、導入管31a1〜31a3に一対一で対応した膜厚センサ16a1〜16a3の成膜速度測定値が基準値になるように、導入管31a1〜31a3への供給速度を変更する。
【0027】
本例では、各導入管31a1〜31a3は、それぞれ異なる蒸気生成装置40a1〜40a3に接続されており、蒸気生成装置40a1〜40a3の蒸気生成速度を変化させると、その蒸気生成装置40a1〜40a3に接続された一本の導入管31a1、31a2又は31a3への蒸気供給速度を変化させることができる。
また、本例では、成膜対象物5の成膜面6が位置する平面は、水平面にされており、各放出容器21aの放出口25aはその水平面の下方に位置し、各放出口25aの成膜面6が位置する水平面からの距離は互いに等しくなるようにされている。
また、各導入管31a1〜31a3も水平であり、各導入管31a1〜31a3には長手方向の同一位置に、第一、第二の導入口35a1〜35a3が一組だけ設けられており、測定口26a1〜26a3は、放出容器21a底面の、第一、第二の導入口35a1〜35a3の鉛直下方位置に、一組の第一、第二の導入口35a1〜35a3と一対一に対応して、一組の第一、第二の導入口35a1、35a2又は35a3に対して一個の測定口26a1、26a2又は26a3が設けられている。
従って、各導入管31a1〜31a3から放出容器21a内に導入される有機材料蒸気の導入速度は、その導入管31a1〜31a3の第一、第二の導入口35a1〜35a3に対応する測定口26a1〜26a3と対面する膜厚センサ16a1〜16a3によって、各導入管31a1〜31a3毎に測定される。
【0028】
各蒸気生成装置40a1〜40a3内の加熱装置42a1〜42a3の温度を増加させると蒸気供給速度が増大し、温度を低下させると蒸気供給速度が小さくなり、また、キャリアガスの各蒸気生成装置40a1〜40a3への導入流量を制御しても、蒸気供給速度を制御することができるから、加熱装置42a1〜42a3の温度とキャリアガスの供給量を制御し、各導入管31a1〜31a3から放出容器21a内に導入される薄膜材料蒸気の導入速度をそれぞれ予め設定された値になるように制御するとよい。
【0029】
なお、上記実施例の薄膜形成装置1では、成膜対象物5の成膜面6が位置する平面は水平面にされており、各放出容器21aの放出口25aはその水平面の下方に位置し、成膜対象物5を成膜面6を下方に向けた状態で各放出容器21aの上方を水平に通過するように構成されていたが、本発明はこれに限定されず、各放出容器21aの放出口25aはその水平面の上方に位置し、成膜対象物5を成膜面6を上方に向けた状態で各放出容器21aの下方を水平に通過するように構成されていてもよい。
【0030】
また、本発明の薄膜形成装置1は、成膜対象物5の成膜面6が位置する平面は水平面に対して垂直にされており、各放出容器21aの放出口25aは成膜面6が位置する平面の側方に位置し、放出口25aから見て成膜面6が位置する平面の方向を前方、その反対側を後方とすると、成膜対象物5を成膜面6を後方に向けた状態で各放出容器21aの前方を、成膜面6が位置する平面に平行に通過するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1……薄膜形成装置
5……成膜対象物
11……真空槽
16a1〜16a3、16b1〜16b3、16c1〜16c3、16d1〜16d3、16e1〜16e3……膜厚センサ
17……制御装置
20……放出装置
20a〜20e……放出ユニット
21a〜21e……放出容器
25a〜25e……放出口
26a1〜26a3、26b1〜26b3、26c1〜26c3、26d1〜26d3、26e1〜26e3……測定口
31a1〜31a3、31b1〜31b3、31c1〜31c3、31d1〜31d3、31e1〜31e3……導入管
35a1〜35a3、35b1〜35b3、35c1〜35c3、35d1〜35d3、35e1〜35e3……導入口
40a1〜40a3、40b1〜40b3、40c1〜40c3、40d1〜40d3、40e1〜40e3……蒸気生成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽と、
前記真空槽内に配置された放出装置と、
前記放出装置に接続され、前記放出装置に薄膜原料蒸気を供給する蒸気生成装置とを有し、
前記放出装置は、前記蒸気生成装置から供給された前記薄膜原料蒸気を前記真空槽内に放出させ、前記真空槽内に配置された成膜対象物の表面に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、
前記放出装置は、一個又は二個以上の放出ユニットを有し、
各前記放出ユニットは、中空で長手方向を有する細長の放出容器と、
前記放出容器に形成され、前記放出装置内部空間と前記真空槽の内部空間とを接続する放出口と、
前記放出容器の前記長手方向に沿って前記放出容器内に配置された二本以上の導入管と、
前記導入管に形成された導入口とを有し、
前記導入管は前記放出容器内で前記放出口から異なる距離で位置するように配置され、
異なる前記導入管の前記導入口は、前記長手方向上の異なる場所に位置するように形成された薄膜形成装置。
【請求項2】
前記導入口は、前記導入管の両側に配置された第一、第二の導入口によって構成され、
前記第一、第二の導入口から、前記放出口が位置する方向に対して横方向に向けられた請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
各前記導入管の先端は閉塞された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記放出口は、前記放出容器の前記成膜対象物に対面する位置に形成され、
前記放出容器の前記放出口が形成された位置とは反対側には、測定口が形成され、
前記測定口と対面する位置には、膜厚センサが配置された請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記測定口は、前記放出容器の長手方向にそって、複数個形成され、各前記測定口と対面する位置に前記膜厚センサがそれぞれ配置された請求項4記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記放出容器と前記導入管は水平に配置され、前記放出口が上方に向けられ、前記測定口が下方に向けられた薄膜形成装置であって、
前記測定口は前記導入口の鉛直下方に配置された請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
一の前記放出容器内の前記導入管に、前記薄膜材料蒸気を前記導入管毎に異なる供給速度で前記蒸気生成装置から供給させられる制御装置が設けられ、前記供給速度は、前記膜厚センサの検出結果に基づいて変更可能に構成された請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項8】
前記放出装置は複数の前記放出ユニットの前記放出容器が、前記長手方向とは直角な方向に並べられ、各前記導入管は互いに平行になるようにされ、
各前記導入管には、同じ物質の前記薄膜原料蒸気が供給される請求項1乃至請求項7記載の薄膜形成装置。
【請求項9】
前記放出装置は複数の前記放出ユニットの前記放出容器が、前記長手方向とは直角な方向に並べられ、各前記導入管は互いに平行になるようにされ、
複数の前記放出ユニット内の前記導入管には、同じ物質の前記薄膜原料蒸気が供給され、
前記薄膜原料蒸気には、異なる物質の第一、第二の蒸気が含まれ、
複数の前記放出ユニットには、前記第一の蒸気が供給される前記放出ユニットと、前記第二の蒸気が供給される放出ユニットとが含まれる請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の薄膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−179073(P2011−179073A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44764(P2010−44764)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】