薄膜状試料の測定方法
【課題】薄膜状試料が小さく、電圧測定を行う端子の距離が小さい場合に、十分な温度勾配を付与して、薄膜状試料のゼーベック特性を安定かつ正確に測定することのできる薄膜状試料の測定方法を提供する。
【解決手段】表面に複数の電極を露出させた基板上に、少なくとも一対の前記電極に接するように薄膜状試料を配置し、前記一対の電極の一方の電極側を加熱し、当該加熱により他方の電極側に伝導する熱を熱伝導媒体により吸収しながら、前記一対の電極の電極間を通電することで、前記薄膜状試料の特性を測定することを特徴とする薄膜状試料の測定方法である。
【解決手段】表面に複数の電極を露出させた基板上に、少なくとも一対の前記電極に接するように薄膜状試料を配置し、前記一対の電極の一方の電極側を加熱し、当該加熱により他方の電極側に伝導する熱を熱伝導媒体により吸収しながら、前記一対の電極の電極間を通電することで、前記薄膜状試料の特性を測定することを特徴とする薄膜状試料の測定方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜状試料の測定方法に関し、特に、薄膜状試料のゼーベック特性の測定に好適な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼーベック効果を利用した熱電変換素子は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することを可能とする。その性質を利用し、産業・民生用プロセスや移動体から排出される排熱を有効な電力に変換することができるため、熱電変換素子は、環境問題に配慮した省エネルギー技術として注目されている。
【0003】
ゼーベック係数の評価は熱電変換素子に用いられる熱電変換材料の開発に不可欠であり、種々のゼーべック特性の測定方法が提案されている。ここで、熱電変換材料の無次元性能指数ZTは、α:ゼーベック係数、T:測定温度、ρ:電気抵抗率、κ:熱伝導率を個別に測定し、下記式(A)に従って算出することができる。
ZT=α2T/(ρκ) …式(A)
【0004】
上記のようにα、ρ、κを個別に測定する場合、バルク状の試料(通常、少なくとも一辺が数mm以上の平行六面体)を作製する必要がある。このようなバルク試料は、作製後、切断、加工及び研磨等の処理が施された後に、装置にセッティングされ、測定されるため非常に煩雑であり、特に、多次元系物質等で状態図がない場合には、試料作製が非常に困難になってしまう。また、現状の上記α、ρ、κの測定法は、試料を一つずつ測定することが前提とされており、一回に評価できるのは一試料のみであることから、特に多試料間で特性の優劣をつける場合に長時間を要する。
これらの測定方法としては種々のものが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−83855号公報
【特許文献2】特開2004−3872号公報
【特許文献3】特開2000−74862号公報
【特許文献4】特開平9−222403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記ハーマン法の場合には、測定時において断熱状態が必要であり、正確な測定値を得るためにはZTが0.1以上であることが必要である。このため、安定した測定値を得ることが困難であり、データの再現性に難がある。また、試料のセッティングに時間がかかるといった問題もある。更に、ハーマン法の場合、測定時の条件(試料寸法、断熱条件、電極の配置法)等を揃えることが煩雑であり、わずかな条件の差異が測定値に影響を及ぼしてしまう。このように、未だ熱電変換材料における種々のゼーべック特性を安定して正確に測定できる技術は確立されていないのが現状である。
【0007】
また、薄膜評価基板が緻密な(少なくとも、1W/m/K以上の熱伝導率を有する)材料で構成されている場合、抵抗体で発生した熱量は速やかに基板全体に行き渡り、基板全体の温度が均一に近くなる。従って、この場合、薄膜評価基板および薄膜状試料に温度勾配を付与することは困難となる。
【0008】
上述の問題を解決すべく、本発明は、薄膜状試料が小さく、電圧測定を行う端子の距離が小さい場合に、十分な温度勾配を付与して、薄膜状試料のゼーべック特性を安定かつ正確に測定することのできる薄膜状試料の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薄膜状試料の測定方法(以下、「本発明の測定方法」という場合がある。)は、表面に複数の電極を露出させた基板上に、少なくとも一対の前記電極に接するように薄膜状試料を配置し、前記一対の電極の一方の電極側を加熱し、当該加熱により他方の電極側に伝導する熱を熱伝導媒体により吸収しながら、前記一対の電極の電極間を通電することで、前記薄膜状試料の特性を測定することを特徴とする。
【0010】
本発明の測定方法によれば、薄膜状試料に直接接するように複数の電極群が配置されているため、それに通電することで薄膜状試料の特性(ゼーべック係数)を簡便に測定することができる。ここで、「薄膜状試料」とは、例えば、厚さ0.5mm以下の膜状の試料を意味する。
また、基板を熱浴の上に単に載置して抵抗体などにより通電加熱を行うと、抵抗体で発生した熱は基板全体に広がって均一に温度を上昇させてしまうので、薄膜状試料の両端部に発生する温度勾配は小さくなることがある。これに対して、本発明のように、基板と熱浴との間に熱伝導媒体を配置して伝導する熱をこれにより吸収するような態様とすることで、抵抗体の加熱による熱は、速やかに熱浴に逃げる。従って、基板と薄膜状試料に大きな温度勾配を付与することができる。
【0011】
本発明の測定方法は、前記基板を、少なくとも4つの前記電極を備えるように構成し、前記4つの電極が前記薄膜状試料の四隅に接するように前記基板上に配置されるようにして行うことができる。
本発明の測定方法によれば、薄膜状試料の4つの電極を薄膜状試料の四隅に接するように配置することで、ファン・デル・ポール法による薄膜状試料の電気抵抗率の測定も行うことができる。
【0012】
本発明の測定方法は、少なくとも一対の前記電極が前記薄膜状試料に接しており、且つ、前記一対の電極が平行に対向するブロード状の電極であるように構成して行うことができる。ここで、「ブロード状の電極」とは、基板を上方から観察した際における電極の直径(円相当径)が2mm以上(好ましくは2〜10mm、更に好ましくは2〜5mm)のものを意味し、例えば、前記電極表面の形状が、長方形のものや楕円形のもの等が挙げられる。このため、上記ブロード状の電極には点状電極は含まれない。また、「一対の電極が平行に対向する」とは、ブロード状電極が例えば、長方形の場合等のように直線状の辺を有する場合には、対向する2つの辺がそれぞれ平行になるように対向している状態を意味する。
また、本発明の測定方法は、前記基板として前記電極間に通電するための通電パットを備えたものを用いることができる。
【0013】
更に、本発明の測定方法は、更に前記電極と前記通電パットとを同一の材料で形成し、且つ、前記電極と前記通電パットとを、前記電極及び前記通電パットと同一の材料で接続して測定することができる。本発明の測定方法によれば、前記電極と前記通電パットとを、前記電極及び前記通電パットと同一の材料で接続した基板を用いることで、異種金属接合部において熱起電力が発生し、測定誤差が生じるのを防止することができる。
【0014】
また、本発明の測定方法は、前記基板上に複数の前記薄膜状試料を配置し、前記電極間に通電して得られた薄膜状試料の特性を前記複数の前記薄膜状試料間で相対比較することができる。これにより、一個の薄膜状試料の絶対値では誤差が多い場合であっても、多数個の薄膜状試料間の相対比較であれば、迅速に測定を行うことができる。
【0015】
本発明の測定方法は、前記薄膜状試料を、前記電極に接するように前記電極上に成膜するができる。これにより、簡易に薄膜状試料を電極に接するように設置することができる。前記電極上に薄膜状試料を成膜する技術としては、例えば、物理蒸着法、化学蒸着法、及び鍍金等が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薄膜状試料が小さく、電圧測定を行う端子の距離が小さい場合に、十分な温度勾配を付与して、薄膜状試料のゼーべック特性を安定かつ正確に測定することのできる薄膜状試料の測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の測定方法について詳細に説明する。
本実施の形態は、基板上に4つの点状電極が、各々正方形の頂点に位置するように配置された基板を用い、電極上に成膜された一枚の薄膜状試料(以下、単に「試料」という記載の場合がある。)の熱電特性(ゼーベック係数α)を評価する方法である。
【0018】
−電極付多層基板−
まず、図1〜3を用いて本実施の形態に用いられる電極付多層基板について説明する。図1は、第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略図である。図2は、第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略断面図である。また、図3は、第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。
【0019】
図1に示すように基板10(電極付多層基板)の表面には、電極12A〜12D(以下、単に「電極12」という記載の場合もある。)と、通電パッド14A〜14D(以下、単に「通電パッド14」という記載の場合もある。)と、が配置されており、プローブ16を通じて図示を省略する測定機器により電極12間を通電可能なように構成されている。
【0020】
基板10は、図2に示すように薄膜18a〜18cを積層した多層構造を有しており、基板10の層間に、薄膜状の配線パターン20a〜20f(以下、単に「配線パターン20」という記載の場合もある。)を形成することによって高集積化された回路が形成されている。基板10の素材は特に限定なく、本発明の効果を損なわない範囲で、半導体素子等に用いられる公知の絶縁材料を適宜選定して用いることができる。また、基板の厚さ及びサイズ等についても任意に設定することができる。以下の実施の形態において用いられる基板についても同様である。
【0021】
電極12は、直径1mm以下の円形の電極(点状電極)であり、図2に示す配線パターン20によって通電パッド14と接続されている。また、図3に示すように電極12は、それぞれが四角形の頂点に位置するように基板10表面に配置されており、測定試料となる薄膜22が形成された場合には、薄膜22の四隅に位置するように基板10の表面に配置されている。電極12間の距離としては特に限定はないが、測定の精度を考慮すると、0.5〜10mmが好ましく、2〜5mmが更に好ましい。
【0022】
通電パッド14は、測定機器に接続されるプローブ16を通じて電流が流され、電極12間を通電する。また、本実施の形態における基板に接続可能な、測定機器として、例えば、定電流源、電源、電流計、電圧計、波形発生器、増幅器、オシロスコープ等を用いることができる。
電極12、通電パッド14及び配線パターン20の素材は、導電性のある部材であれば特に限定されず、例えば、銅、金、ニッケル、タングステン、モリブテン等を用いることができる。また、電極12、通電パッド14及び配線パターン20の素材は同一のものを用いることが好ましい。これらの素材として同一のものを用いることで、電極12及び通電パッド14間に異種金属等の接合箇所がなくなり、異種金属の接合箇所で発生する電圧降下が測定値に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0023】
また、図1及び図2に示すように、基板10の裏面(薄膜22を設ける側とは逆の面)には、基板10全体の温度を制御するための全体用ヒーター(熱浴ともいう)24が備えられており、当該裏面と全体用ヒーター24との間に、加熱により他方の電極側に伝導する熱を吸収する熱伝導媒体25が設けられている。更に基板10の内部には薄膜22に温度差を付与するための温度差付与用ヒーター26が備えられている。
【0024】
温度差付与用ヒーター26により、一対の電極の一方の電極側を加熱して、温度勾配を得ることができるが、当該温度の拡散が大きいと他方の電極側へ熱が伝導し、大きな温度勾配が得られない。そこで、熱伝導媒体25を図1および図2に示すように設けることで、薄膜22に大きな温度勾配を形成してゼーベック係数を効率よく測定することができる。また、熱伝導媒体25は、これを全面に設けることで、全体用ヒーター24からの熱を基板に均一に伝えること可能となり、温度勾配をより大きくすることができる。
【0025】
熱伝導媒体25としては、グリースや、熱伝導性のフィラーを含有させた硬化性シリコーン樹脂を使用することができる。熱伝導性のフィラーとしては、金属やセラミック粉末が挙げられる。熱伝導媒体25は、公知の塗布法やシート状となった熱伝導媒体を貼り合わせることにより設けることができる。熱伝導媒体25の厚さとしては、数mm以下とすることが好ましく、0.1〜1mm程度とすることが好ましい。なお、熱伝導媒体25は、基板10の裏面と全体用ヒーター24との間の全体とすることが好ましいが、温度差付与用ヒーター26が設けられる領域に対応する領域に設けてもよい。
【0026】
次に、測定対象となる薄膜22について説明する。薄膜22は、PVD(物理蒸着)、イオンビーム蒸着、レーザー蒸着などの物理蒸着法、CVD等の化学蒸着法等によって電極上に成膜される。上記成膜法に関しては、例えば、H.Koinuma,I.Takeuchi: Nature Materials 3, pp.249−438,01Jul.2004、鯉沼秀臣及び川崎雅司監修「コンビナトリアルテクノロジー」丸善2004、X.D.Xiang, I.Takeuchi:Combinatorial Materials Synthesis, Marcel Dekker Inc.2003、に記載されている。
【0027】
薄膜22は、例えば、Bi−Sb−Te、Ti−Ni−Sn、Mg−Sn−Si等の材料を上記成膜法により電極12上に積層させた形態である。薄膜22の形状は特に限定されないが、正方形であることが好ましい。また、薄膜22のサイズについても特に限定されないが、縦2〜10mm×横2〜10mm程度が更に好ましい。また、薄膜22の厚さとしては0.1mm以下が好ましいが、0.1〜10μmがより好ましく、0.5〜2μmが更に好ましい。
【0028】
−ゼーベック係数αの測定(1)−
ゼーベック係数αの測定(1)は、図1及び2に示すように基板10中に埋め込まれた温度差付与用ヒーター26および熱伝導媒体25によって基板10全体(薄膜22を含む)に大きな温度勾配を形成し、該温度勾配によって一枚の薄膜22に接する一対の電極間に生じた起電力Vefを測定することによって行われる。
まず、上記温度勾配は、図3における電極12A及び12C(又は、電極12B及び12D)を結ぶ直線と平行な方向、或いは、電極12A及び12B(又は、電極12C及び12D)を結ぶ直線と平行な方向に形成する。例えば、温度勾配が図3における矢印Bで示されるように、電極12Aから12Cへの方向、又は、電極12Bから12Dへの方向に形成される場合には、電極12A及び12C、又は、電極12B及び12Dが用いられ、図3における矢印Aで示されるように、電極12Aから12Bへの方向、又は、電極12Cから12Dへの方向に形成される場合には、電極12A及び12B、又は、電極12C及び12Dが用いられる。
【0029】
例えば、図3における矢印Bの方向に温度勾配を形成する場合には、図4に示すように、電極12Aから電極12Bに向かって、温度差(ΔT)を形成するのが好ましい。図4は、第1の実施の形態における薄膜22の温度勾配を示すための説明図である。
【0030】
プローブ16から供給される電流は通電パッド14Aおよび14Bのそれぞれを介し、電極12Aおよび12Bのそれぞれに通電される。電極12Aおよび12B上には、薄膜22が載置されている。通電中は、温度差付与用ヒーター26による加熱が行われるが、全体用ヒーター24と基板との間にある熱伝導媒体25により、電極12Bから電極12Aへの熱の拡散は抑えられ(図面中の矢印方向へ拡散され)、図4に示すような温度勾配が示されることになる。
【0031】
なお、薄膜22の温度差ΔTから求められる温度勾配Tsは、例えば、サーモグラフィや熱電対等で計測することができる。更に、上記温度勾配は、温度差付与用ヒーター26で形成されるものに限定されず、その他の機構(例えば、レーザー加熱、等)で形成してもよい。
【0032】
また、測定に用いられる一対の電極12(例えば、図3における矢印B方向に温度勾配が形成されている場合には電極12A及び電極12C)に対応するプローブ16には、起電力Vefを測定するための電圧計が並列に接続される。
薄膜22のゼーベック係数αは、上述のようにして測定した各測定値を用い下記の式(B)に従って算出される。なお、式(B)中、Vefは温度勾配によって生じた起電力であり、Tsは薄膜22の温度差(ΔT)から求められる温度勾配である。
【0033】
【数1】
【0034】
−ゼーベック係数αの測定(2)−
ゼーベック係数αの測定(2)は、一つの薄膜22に接する一対の電極12間に直流又は交流電流を通電し、ペルチェ効果によって生じた起電力(VDC及びVAC)を測定することによって行われる。
【0035】
まず、図3における電極12A及び12Dに対応するプローブ16に図示を省略する電源を接続し、電極12A及び12D間に直流電流IDCを通電すると、ペルチェ効果によって温度勾配が形成され起電力VDCが生じる。かかる起電力VDCを測定し、該起電力VDCと薄膜22の電気抵抗率ρ×直流電流IDCとの和である電極12A及び12D間の電圧降下RDCを求める。
次いで、電極12A及び12D間に交流電流IACを通電し、同様に起電力VACを測定する。該起電力VACと薄膜22の電気抵抗率ρ×交流電流IACとの和である電極12A及び12D間の電圧降下RACを求める。
【0036】
この際、周波数を十分高くすると、ペルチェ効果による温度勾配が形成される前に極性反転することから、電極12A及び12D間の電圧降下RACにはペルチェ効果の寄与分が含まれない。このため、RDC−RAC=αΔT/Iが成立することから、下記の式(C)に従って、ゼーベック係数αを算出することができる。ここで、下記式(C)中、ΔTは、電極12A及び12D間の温度差を示し、赤外線サーモグラフィ、放射温度計、及び熱電対等で測定することができる。また、式(C)中、Iは、直流電流値(IDC)を示す。
【0037】
【数2】
【0038】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、第1の実施の形態で説明したように正方形の頂点に位置するように配置された電極群が、複数配置された電極付多層基板を用いた例について説明する。本実施の形態によれば、多数試料を同時に測定することができるため、熱電特性の比較などを高速に行うことができる。
【0039】
まず、図5を用いて第2の実施の形態における電極付多層基板について説明する。図5は、第2の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。図5に示すように本実施の形態における基板30には、正方形の頂点に位置するように配置された4つ1組の電極32が計9組(グループA〜グループI)設けられており、それに対応する通電パッド34及びプローブ36が備えられている。また、各グループに電極32上には一枚の薄膜38が形成されており、グループごとに第1の実施の形態に記載されたそれぞれの測定を9枚同時に行うことができる。このため、バルク試料を用いて一つずつ作製・評価する場合と比較して、例えば、多グループの測定を同時に行う場合には、格段に高速に多数試料間の熱電特性を測定できるとともに、試料間の優劣をつけることができる。更に、基板30において1試料ずつ測定する場合であっても、試料交換に要する時間は、端子切替え時間にすぎないため、従来の測定法と比較しても非常に迅速に測定を行うことが出来る。
【0040】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、基板上に2つの点状電極及びその外側に互いに平行に配置された2つのブロード状の電極が、各々の中心が直線上に位置するように配置された電極付多層基板を用い、電極上に成膜された一枚の薄膜状試料の熱電特性(ゼーベック係数α)を評価する方法である。本実施の形態によれば、4つの電極を用いて測定する四端子測定や、ブロード状の電極のみを用いる測定を、適宜目的に応じて使いわけることができる。
【0041】
−電極付多層基板−
まず、図6〜8を用いて本実施の形態に用いられる電極付多層基板について説明する。図6は、第3の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略図である。図7は、第3の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略断面図である。また、図8は、第3の実施の形態において用いられる電極付基板の上面図である。
【0042】
図6に示すように基板50(電極付多層基板)の表面には、点状電極52A及び52B(以下、単に「点状電極52」という記載の場合もある。)と、通電電極53C及び53D(以下、単に「通電電極53」という記載の場合もある。)と、通電パッド54A〜54D(以下、単に「通電パッド54」という記載の場合もある。)と、が配置されており、プローブ56を通じて図示を省略する測定機器により点状電極52間及び通電電極53間を通電可能なように構成されている。
基板50は、図7に示すように薄膜58a〜58cを積層した多層構造を有しており、基板50の層間に、薄膜状の配線パターン60a〜60l(以下、単に「配線パターン60」という記載の場合もある。)を形成することによって高集積化された回路が形成されている。
【0043】
点状電極52は、直径1mm以下の円形の電極(点状電極)であり、図7に示す配線パターン60d〜60f及び60j〜60lによって通電パッドと接続されている。点状電極52は、四端子測定用の電極であり、その形状は点状のものであれば特に限定されない。また、本実施の形態における点状電極52は、その中心が通電電極53の中心と直線状になるように配置されているが、これに限定されるものではなく、通電電極53間にあり、薄膜62と接する位置に配置されていればよい。
通電電極53は、サイズ0.1〜5mm×0.5〜10mmの長方形の電極であり、図7に示す、配線パターン60a〜60c及び60g〜60iによって通電パッドと接続されている。更に、通電電極53は、互いに対向する辺が平行となるように配置される。
これら点状電極52及び通電電極53は、図8に示すように2つの点状電極52を通電電極53が挟むように配置されており、各電極の中心を結ぶ線が直線となるように配置されている。電極のうち点状電極52は、主として4端子測定用として用いられる。
【0044】
通電パッド54は、測定機器に接続されるプローブ56を通じて電流が流され、各電極間を通電する。また、本実施の形態における基板に接続可能な、測定機器として、例えば、定電流源、電源、波形発生器、増幅器、電流計、電圧計、オシロスコープ等を用いることができる。
点状電極52、通電電極53、通電パッド54及び配線パターン60の素材は、導電性のある部材であれば特に限定されず、例えば、銅、金、ニッケル、タングステン、モリブテン等を用いることができる。また、点状電極52、通電電極53、通電パッド54及び配線パターン60の素材は同一のものを用いることが好ましい。これらの素材として同一のものを用いることで、各電極及び通電パッド54間に異種金属等の接合箇所がなくなり、異種金属の接合箇所で発生する電圧降下が測定値に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0045】
また、基板50の裏面(薄膜を設ける側とは逆の面)には、基板50全体の温度を制御するための全体用ヒーター64が備えられており、当該裏面と全体用ヒーター64との間に、加熱により他方の電極側に伝導する熱を吸収する熱伝導媒体65が設けられている。更に基板50の内部には薄膜62に温度差を付与するための温度差付与用ヒーター66が備えられている。温度差付与用ヒーター66により、一対の電極の一方の電極側を加熱して、温度勾配を得ることができるが、当該温度の拡散が大きいと他方の電極側へ熱が伝導し、大きな温度勾配が得られない。そこで、熱伝導媒体65を図6および図7に示すように設けることで、薄膜62に大きな温度勾配を形成してゼーベック係数を効率よく測定することができる。なお、熱伝導媒体65の態様については、既述の熱伝導媒体25と同様である。
【0046】
次に、測定対象となる薄膜62について説明する。薄膜62は、上述と同様にPVD(物理蒸着)、イオンビーム蒸着、レーザー蒸着などの物理蒸着法、CVD等の化学蒸着法、鍍金等によって通電電極53と両端で接触するように成膜される。上記成膜法に関しては、例えば、H.Koinuma,I.Takeuchi: Nature Materials 3, pp.249−438,01Jul.2004、鯉沼秀臣及び川崎雅司監修「コンビナトリアルテクノロジー」丸善2004、X.D.Xiang, I.Takeuchi:Combinatorial Materials Synthesis, Marcel Dekker Inc.2003、に記載されている。
【0047】
薄膜62は、例えば、Bi−Sb−Te,Ti−Ni−Si,Mg−Sn−Si等の材料を上記成膜法により電極52上に積層させた形体である。薄膜62の形状は、その長辺(図8における辺F及びG)が、各電極の中心を結んだ線である図8における波線Hと平行になるように形成される。薄膜62の形状は、前記条件を満たす限り特に限定されるものではないが、各電極の配置を考慮すると、長方形であることが好ましい。また、薄膜62のサイズについても特に限定されないが、縦0.5〜10mm×横1〜10mm程度が更に好ましい。また、薄膜62の厚さとしては0.1mmが好ましいが、0.1〜10μmがより好ましく、0.5〜2μmが更に好ましい。
【0048】
−ゼーベック係数αの測定(1)−
ゼーベック係数αの測定(1)は、通電電極53C及び53Dのみを用いる。ゼーベック係数αの測定(1)は、通電電極53C及び53D間に直流又は交流電流を通電し、ぺルチェ効果によって生じた起電力(VDC及びVAC)を測定することによって行われる。
まず、図8における通電電極53C及び53Dに対応するプローブ56に図示を省略する電源を接続し、通電電極53C及び53D間に直流電流IDCを通電すると、ペルチェ効果によって温度勾配が形成され起電力VDCが生じる。かかる起電力VDCを測定し、該起電力VDCと薄膜62の電気抵抗率ρ×直流電流IDCとの和である通電電極53C及び53D間の電圧降下RDCを求める。
次いで、通電電極53C及び53D間に交流電流IACを通電し、同様に起電力VACを測定する。該起電力VACと薄膜62の電気抵抗率ρ×交流電流IACとの和である通電電極53C及び53D間の電圧降下RACを求める。
【0049】
この際、周波数を十分高くすると、ペルチェ効果による温度勾配が形成される前に極性反転することから、通電電極53C及び53D間の電圧降下RACにはペルチェ効果の寄与分が含まれない。このため、RDC−RAC=αΔT/Iが成立することから、既述の式(C)に従って、ゼーベック係数αを算出することができる。ここで、式(C)中、ΔTは、通電電極53C及び53D間の温度差を示し、赤外線サーモグラフィ、放射温度計、及び熱電対等で測定することができる。また、式(C)中、Iは、直流電流値を示す。
【0050】
本実施の形態のように、通電電極として点状電極よりも薄膜との接触面積が大きいブロード状の電極(長方形の電極)を用いると、局所的に電流密度が上昇してジュール熱の影響によりΔT測定の精度が失われることを防止することができる。
【0051】
−ゼーベック係数αの測定(2)−
ゼーベック係数αの測定(2)は、通電電極53C及び53Dのみを用いる。ゼーベック係数αの測定(2)は、図6及び7に示すように基板50中に埋め込まれた温度差付与用ヒーター66および熱伝導媒体65によって基板50全体(薄膜62を含む)に大きな温度勾配を形成し、該温度勾配によって一枚の薄膜62に接する一対の電極間に生じた起電力Vefを測定することによって行われる。
【0052】
まず、上記温度勾配は、図8における一点鎖線Hと平行な方向に形成する。例えば、図8における矢印Iの方向に温度勾配を形成する場合には、図4と同様に、通電電極53Cから通電電極53Dに向かって、温度差(ΔT)を形成するのが好ましい。また、薄膜62の温度差(ΔT)から求められる温度勾配Tsは、例えば、サーモグラフィや熱電対等で計測することができる。更に、上記温度勾配は、温度差付与用ヒーター66で形成されるものに限定されず、その他の機構(例えば、レーザー加熱、等)で形成してもよい。また、通電電極53に対応するプローブ56には、起電力Vefを測定するための電圧計が並列に接続される。
このように温度勾配によって生じた起電力Vefを測定し、該起電力Vefと得られた温度勾配Tsとから既述の式(B)に従ってゼーベッグ係数αが算出される。
【0053】
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、第3の実施の形態で説明したように基板上に2つの点状電極及びその外側に互いに平行に配置された2つのブロード状の電極が、各々の中心が直線上に位置するように配置された電極付多層基板を用いた例について説明する。本実施の形態によれば、多数試料を同時に測定することができるため、熱電特性の比較などを高速に行うことができる。
【0054】
まず、図9を用いて第4の実施の形態における電極付多層基板について説明する。図9は、第4の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。図9に示すように本実施の形態における基板70には、2つの点状電極72及びその外側に互いに平行に配置された2つの長方形の通電電極73が9つのグループ(グループJ〜グループR)設けられており、それに対応する通電パッド74及びプローブ76が備えられている。また、各グループの通電電極73上には一枚の薄膜78が形成されており、各グループごとに第3の実施の形態に記載されたそれぞれの測定を9枚同時に行うことができる。このため、バルク試料を用いて一つずつ作製・評価する場合と比較して、例えば、多グループの測定を同時に行う場合には、格段に高速に多数試料間の熱電特性を測定できるとともに、試料間の優劣をつけることができる。更に、基板70において1試料ずつ測定する場合であっても、試料交換に要する時間は、端子切替え時間にすぎないため、従来の測定法と比較しても非常に迅速に測定を行うことが出来る。
【0055】
(第5の実施の形態)
上述の第1〜第4の実施の形態においては、各電極と通電パッドとが多層基板の層間に設けられた薄膜パターンにより接合されているが、本実施の形態に示すように、電極付基板の表面にパターンを形成し、各電極と通電パッドとを接続させることが出来る。なお、温度差付与用ヒーターや熱伝導媒体については、上記実施の形態と同様である。
図10〜12を用いて、基板上に点状電極とブロード状電極とが設けられた、電極付基板であって、各電極と電通パッドとが基板表面に形成された配線パターンによって接合された例について説明する。
【0056】
まず、電極付基板表面に形成された配線パターンで点状電極及びブロード状の電極と通電パッドとを接続した表面パターン付基板について説明する。図10は、第5の実施の形態において用いられる表面パターン付基板の上面図である。図10に示すように基板90(電極付基板)の表面には、点状電極92A及び92B(以下、単に「点状電極92」という記載の場合もある。)と、通電電極93C及び93D(以下、単に「通電電極93」という記載の場合もある。)と、通電パッド94A〜94D(以下、単に「通電バッド94」という記載の場合もある。)と、が配置されており、プローブ96を通じて図示を省略する測定機器により点状電極92間及び通電電極93間を通電可能なように構成されている。
【0057】
基板90においては、点状電極92及び通電電極93と通電パッド94とが基板表面に形成された配線パターン98A〜Dで接続されている。また、点状電極92、通電電極93、通電パッド94及び配線パターン98の素材は、導電性のある部材であれば特に限定されず、例えば、銅、金、ニッケル、タングステン、モリブテン等の材料を用いることができる。また、点状電極92、通電電極93、通電パッド94及び配線パターン98の素材は同一のものを用いることが好ましい。これらの素材として同一のものを用いることで、各電極及び通電パッド94間に異種金属等の接合箇所がなくなり、異種金属の接合箇所で発生する電圧降下が測定値に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0058】
次に、電極付多層基板表面に形成された配線パターンでブロード状の電極と通電パッドとを接続すると共に、電極付多層基板の層間に設けられた配線パターンによって点状電極と通電パッドとを接続した表面パターン付多層基板について図11及び図12を用いて説明する。図11は、第5の実施の形態において用いられる他の表面パターン付多層基板の上面図である。また、図12は、第5の実施の形態において用いられる表面パターン付多層基板の概略断面図である。
【0059】
図11に示すように基板110(電極付基板)の表面には、点状電極112A及び112B(以下、単に「点状電極112」という記載の場合もある。)と、通電電極113C及び113D(以下、単に「通電電極113」という記載の場合もある。)と、通電パッド114A〜114D(以下、単に「通電バッド114」という記載の場合もある。)と、が配置されており、プローブ116を通じて図示を省略する測定機器により点状電極112間及び通電電極113間を通電可能なように構成されている。
【0060】
基板110においては、通電電極113C及び113Dと通電パッド114C及び114Dとは、基板110表面に形成された配線パターン118D及び118Cで接続されている。また、図12に示すように、点状電極112A及び112Bは、多層基板である基板110の層間に形成された配線パターン118A及びBで通電パッド114A及び114Bと接続されている。
基板110の裏面(薄膜を設ける側とは逆の面)には、基板110全体の温度を制御するための全体用ヒーター124が備えられており、当該裏面と全体用ヒーター124との間に、加熱により他方の電極側に伝導する熱を吸収する熱伝導媒体125が設けられている。更に基板110の内部には薄膜に温度差を付与するための温度差付与用ヒーター126が備えられている。熱伝導媒体125および温度差付与用ヒーター126などの態様は、第1の実施の形態の熱伝導媒体25および温度差付与用ヒーター26などと同様である。
【0061】
点状電極112、通電電極113、通電パッド114及び配線パターン118A〜Dの素材は、導電性のある部材であれば特に限定されず、例えば、銅、金、ニッケル、タングステン、モリブテン等の材料を用いることができる。また、点状電極112、通電電極113、通電パッド114及び配線パターン118A〜Dの素材は同一のものを用いることが好ましい。これらの素材として同一のものを用いることで、各電極及び通電パッド114間に異種金属等の接合箇所がなくなり、異種金属の接合箇所で発生する電圧降下が測定値に影響を及ぼすことを防止することができる。
【実施例】
【0062】
(実施例)
第1の実施形態に係る方法により、薄膜のゼーベック係数を求めた。具体的には、図1〜3に示すように、銅板上に導電性グリース(東レ・ダウコーニング社製H.V.G、厚さ:0.2〜0.5mm)を塗布して、熱伝導媒体25を設け、さらにその上に基板10を載置した。電極12Aおよび電極12B上に、薄膜(材質:コンスタンタン、厚み:0.001mm)22を設けた。基板10は、アルミナ製で内部に温度差付与用ヒーター26としてのヒーター抵抗体を具備している。電極12Aと電極12Bとの距離は、3mmとした。
【0063】
抵抗体に通電・加熱した際の電極12Aと電極12Bとの温度差をΔT、平均値を「温度上昇」として、通電開始からの変化を図13(A)に示す。ΔTは通電・加熱開始後速やかに1℃以上となり、ゼーベック係数測定を行うために十分な温度勾配を付与することができた。なお、図13中、右の縦軸が温度差(ΔT)を表し、左の縦軸が温度上昇を表す。
【0064】
(比較例)
熱伝導媒体を設けなかった以外は、実施例と同様にして通電開始からの変化を調べた。結果を図13(B)に示す。ΔTは通電開始後50秒程度の間0.3〜0.4℃であるが、その後は0.2℃以下であり、ゼーベック係数の測定には不十分であった。また、評価基板全体の温度は2分間で約12℃上昇した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略図である。
【図2】第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略断面図である。
【図3】第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。
【図4】第1の実施の形態における薄膜の温度勾配の一例を説明するための説明図である。
【図5】第2の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。
【図6】第3の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略図である。
【図7】第3の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略断面図である。
【図8】第3の実施の形態において用いられる電極付基板の上面図である。
【図9】第4の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。
【図10】第5の実施の形態において用いられる表面パターン付基板の上面図である。
【図11】第5の実施の形態において用いられる他の表面パターン付多層基板の上面図である。
【図12】第5の実施の形態において用いられる表面パターン付多層基板の概略断面図である。
【図13】(A)は実施例における通電開始からの経過時間と温度変化との関係を示す図であり、(B)は比較例における通電開始からの経過時間と温度変化との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10,30,50,70,110 基板
12A〜D,32 電極
14A〜D,34,54A〜D,74,94A〜D,114A〜D 通電パッド
22,38,62,78 薄膜
25,65,125 熱伝導媒体
26,66,126 温度差付与用ヒーター
52A〜B,72,92A〜B、112A〜B 点状電極
53C〜D,73,93C〜D、113C〜D 通電電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜状試料の測定方法に関し、特に、薄膜状試料のゼーベック特性の測定に好適な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼーベック効果を利用した熱電変換素子は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することを可能とする。その性質を利用し、産業・民生用プロセスや移動体から排出される排熱を有効な電力に変換することができるため、熱電変換素子は、環境問題に配慮した省エネルギー技術として注目されている。
【0003】
ゼーベック係数の評価は熱電変換素子に用いられる熱電変換材料の開発に不可欠であり、種々のゼーべック特性の測定方法が提案されている。ここで、熱電変換材料の無次元性能指数ZTは、α:ゼーベック係数、T:測定温度、ρ:電気抵抗率、κ:熱伝導率を個別に測定し、下記式(A)に従って算出することができる。
ZT=α2T/(ρκ) …式(A)
【0004】
上記のようにα、ρ、κを個別に測定する場合、バルク状の試料(通常、少なくとも一辺が数mm以上の平行六面体)を作製する必要がある。このようなバルク試料は、作製後、切断、加工及び研磨等の処理が施された後に、装置にセッティングされ、測定されるため非常に煩雑であり、特に、多次元系物質等で状態図がない場合には、試料作製が非常に困難になってしまう。また、現状の上記α、ρ、κの測定法は、試料を一つずつ測定することが前提とされており、一回に評価できるのは一試料のみであることから、特に多試料間で特性の優劣をつける場合に長時間を要する。
これらの測定方法としては種々のものが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−83855号公報
【特許文献2】特開2004−3872号公報
【特許文献3】特開2000−74862号公報
【特許文献4】特開平9−222403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記ハーマン法の場合には、測定時において断熱状態が必要であり、正確な測定値を得るためにはZTが0.1以上であることが必要である。このため、安定した測定値を得ることが困難であり、データの再現性に難がある。また、試料のセッティングに時間がかかるといった問題もある。更に、ハーマン法の場合、測定時の条件(試料寸法、断熱条件、電極の配置法)等を揃えることが煩雑であり、わずかな条件の差異が測定値に影響を及ぼしてしまう。このように、未だ熱電変換材料における種々のゼーべック特性を安定して正確に測定できる技術は確立されていないのが現状である。
【0007】
また、薄膜評価基板が緻密な(少なくとも、1W/m/K以上の熱伝導率を有する)材料で構成されている場合、抵抗体で発生した熱量は速やかに基板全体に行き渡り、基板全体の温度が均一に近くなる。従って、この場合、薄膜評価基板および薄膜状試料に温度勾配を付与することは困難となる。
【0008】
上述の問題を解決すべく、本発明は、薄膜状試料が小さく、電圧測定を行う端子の距離が小さい場合に、十分な温度勾配を付与して、薄膜状試料のゼーべック特性を安定かつ正確に測定することのできる薄膜状試料の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薄膜状試料の測定方法(以下、「本発明の測定方法」という場合がある。)は、表面に複数の電極を露出させた基板上に、少なくとも一対の前記電極に接するように薄膜状試料を配置し、前記一対の電極の一方の電極側を加熱し、当該加熱により他方の電極側に伝導する熱を熱伝導媒体により吸収しながら、前記一対の電極の電極間を通電することで、前記薄膜状試料の特性を測定することを特徴とする。
【0010】
本発明の測定方法によれば、薄膜状試料に直接接するように複数の電極群が配置されているため、それに通電することで薄膜状試料の特性(ゼーべック係数)を簡便に測定することができる。ここで、「薄膜状試料」とは、例えば、厚さ0.5mm以下の膜状の試料を意味する。
また、基板を熱浴の上に単に載置して抵抗体などにより通電加熱を行うと、抵抗体で発生した熱は基板全体に広がって均一に温度を上昇させてしまうので、薄膜状試料の両端部に発生する温度勾配は小さくなることがある。これに対して、本発明のように、基板と熱浴との間に熱伝導媒体を配置して伝導する熱をこれにより吸収するような態様とすることで、抵抗体の加熱による熱は、速やかに熱浴に逃げる。従って、基板と薄膜状試料に大きな温度勾配を付与することができる。
【0011】
本発明の測定方法は、前記基板を、少なくとも4つの前記電極を備えるように構成し、前記4つの電極が前記薄膜状試料の四隅に接するように前記基板上に配置されるようにして行うことができる。
本発明の測定方法によれば、薄膜状試料の4つの電極を薄膜状試料の四隅に接するように配置することで、ファン・デル・ポール法による薄膜状試料の電気抵抗率の測定も行うことができる。
【0012】
本発明の測定方法は、少なくとも一対の前記電極が前記薄膜状試料に接しており、且つ、前記一対の電極が平行に対向するブロード状の電極であるように構成して行うことができる。ここで、「ブロード状の電極」とは、基板を上方から観察した際における電極の直径(円相当径)が2mm以上(好ましくは2〜10mm、更に好ましくは2〜5mm)のものを意味し、例えば、前記電極表面の形状が、長方形のものや楕円形のもの等が挙げられる。このため、上記ブロード状の電極には点状電極は含まれない。また、「一対の電極が平行に対向する」とは、ブロード状電極が例えば、長方形の場合等のように直線状の辺を有する場合には、対向する2つの辺がそれぞれ平行になるように対向している状態を意味する。
また、本発明の測定方法は、前記基板として前記電極間に通電するための通電パットを備えたものを用いることができる。
【0013】
更に、本発明の測定方法は、更に前記電極と前記通電パットとを同一の材料で形成し、且つ、前記電極と前記通電パットとを、前記電極及び前記通電パットと同一の材料で接続して測定することができる。本発明の測定方法によれば、前記電極と前記通電パットとを、前記電極及び前記通電パットと同一の材料で接続した基板を用いることで、異種金属接合部において熱起電力が発生し、測定誤差が生じるのを防止することができる。
【0014】
また、本発明の測定方法は、前記基板上に複数の前記薄膜状試料を配置し、前記電極間に通電して得られた薄膜状試料の特性を前記複数の前記薄膜状試料間で相対比較することができる。これにより、一個の薄膜状試料の絶対値では誤差が多い場合であっても、多数個の薄膜状試料間の相対比較であれば、迅速に測定を行うことができる。
【0015】
本発明の測定方法は、前記薄膜状試料を、前記電極に接するように前記電極上に成膜するができる。これにより、簡易に薄膜状試料を電極に接するように設置することができる。前記電極上に薄膜状試料を成膜する技術としては、例えば、物理蒸着法、化学蒸着法、及び鍍金等が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薄膜状試料が小さく、電圧測定を行う端子の距離が小さい場合に、十分な温度勾配を付与して、薄膜状試料のゼーべック特性を安定かつ正確に測定することのできる薄膜状試料の測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の測定方法について詳細に説明する。
本実施の形態は、基板上に4つの点状電極が、各々正方形の頂点に位置するように配置された基板を用い、電極上に成膜された一枚の薄膜状試料(以下、単に「試料」という記載の場合がある。)の熱電特性(ゼーベック係数α)を評価する方法である。
【0018】
−電極付多層基板−
まず、図1〜3を用いて本実施の形態に用いられる電極付多層基板について説明する。図1は、第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略図である。図2は、第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略断面図である。また、図3は、第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。
【0019】
図1に示すように基板10(電極付多層基板)の表面には、電極12A〜12D(以下、単に「電極12」という記載の場合もある。)と、通電パッド14A〜14D(以下、単に「通電パッド14」という記載の場合もある。)と、が配置されており、プローブ16を通じて図示を省略する測定機器により電極12間を通電可能なように構成されている。
【0020】
基板10は、図2に示すように薄膜18a〜18cを積層した多層構造を有しており、基板10の層間に、薄膜状の配線パターン20a〜20f(以下、単に「配線パターン20」という記載の場合もある。)を形成することによって高集積化された回路が形成されている。基板10の素材は特に限定なく、本発明の効果を損なわない範囲で、半導体素子等に用いられる公知の絶縁材料を適宜選定して用いることができる。また、基板の厚さ及びサイズ等についても任意に設定することができる。以下の実施の形態において用いられる基板についても同様である。
【0021】
電極12は、直径1mm以下の円形の電極(点状電極)であり、図2に示す配線パターン20によって通電パッド14と接続されている。また、図3に示すように電極12は、それぞれが四角形の頂点に位置するように基板10表面に配置されており、測定試料となる薄膜22が形成された場合には、薄膜22の四隅に位置するように基板10の表面に配置されている。電極12間の距離としては特に限定はないが、測定の精度を考慮すると、0.5〜10mmが好ましく、2〜5mmが更に好ましい。
【0022】
通電パッド14は、測定機器に接続されるプローブ16を通じて電流が流され、電極12間を通電する。また、本実施の形態における基板に接続可能な、測定機器として、例えば、定電流源、電源、電流計、電圧計、波形発生器、増幅器、オシロスコープ等を用いることができる。
電極12、通電パッド14及び配線パターン20の素材は、導電性のある部材であれば特に限定されず、例えば、銅、金、ニッケル、タングステン、モリブテン等を用いることができる。また、電極12、通電パッド14及び配線パターン20の素材は同一のものを用いることが好ましい。これらの素材として同一のものを用いることで、電極12及び通電パッド14間に異種金属等の接合箇所がなくなり、異種金属の接合箇所で発生する電圧降下が測定値に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0023】
また、図1及び図2に示すように、基板10の裏面(薄膜22を設ける側とは逆の面)には、基板10全体の温度を制御するための全体用ヒーター(熱浴ともいう)24が備えられており、当該裏面と全体用ヒーター24との間に、加熱により他方の電極側に伝導する熱を吸収する熱伝導媒体25が設けられている。更に基板10の内部には薄膜22に温度差を付与するための温度差付与用ヒーター26が備えられている。
【0024】
温度差付与用ヒーター26により、一対の電極の一方の電極側を加熱して、温度勾配を得ることができるが、当該温度の拡散が大きいと他方の電極側へ熱が伝導し、大きな温度勾配が得られない。そこで、熱伝導媒体25を図1および図2に示すように設けることで、薄膜22に大きな温度勾配を形成してゼーベック係数を効率よく測定することができる。また、熱伝導媒体25は、これを全面に設けることで、全体用ヒーター24からの熱を基板に均一に伝えること可能となり、温度勾配をより大きくすることができる。
【0025】
熱伝導媒体25としては、グリースや、熱伝導性のフィラーを含有させた硬化性シリコーン樹脂を使用することができる。熱伝導性のフィラーとしては、金属やセラミック粉末が挙げられる。熱伝導媒体25は、公知の塗布法やシート状となった熱伝導媒体を貼り合わせることにより設けることができる。熱伝導媒体25の厚さとしては、数mm以下とすることが好ましく、0.1〜1mm程度とすることが好ましい。なお、熱伝導媒体25は、基板10の裏面と全体用ヒーター24との間の全体とすることが好ましいが、温度差付与用ヒーター26が設けられる領域に対応する領域に設けてもよい。
【0026】
次に、測定対象となる薄膜22について説明する。薄膜22は、PVD(物理蒸着)、イオンビーム蒸着、レーザー蒸着などの物理蒸着法、CVD等の化学蒸着法等によって電極上に成膜される。上記成膜法に関しては、例えば、H.Koinuma,I.Takeuchi: Nature Materials 3, pp.249−438,01Jul.2004、鯉沼秀臣及び川崎雅司監修「コンビナトリアルテクノロジー」丸善2004、X.D.Xiang, I.Takeuchi:Combinatorial Materials Synthesis, Marcel Dekker Inc.2003、に記載されている。
【0027】
薄膜22は、例えば、Bi−Sb−Te、Ti−Ni−Sn、Mg−Sn−Si等の材料を上記成膜法により電極12上に積層させた形態である。薄膜22の形状は特に限定されないが、正方形であることが好ましい。また、薄膜22のサイズについても特に限定されないが、縦2〜10mm×横2〜10mm程度が更に好ましい。また、薄膜22の厚さとしては0.1mm以下が好ましいが、0.1〜10μmがより好ましく、0.5〜2μmが更に好ましい。
【0028】
−ゼーベック係数αの測定(1)−
ゼーベック係数αの測定(1)は、図1及び2に示すように基板10中に埋め込まれた温度差付与用ヒーター26および熱伝導媒体25によって基板10全体(薄膜22を含む)に大きな温度勾配を形成し、該温度勾配によって一枚の薄膜22に接する一対の電極間に生じた起電力Vefを測定することによって行われる。
まず、上記温度勾配は、図3における電極12A及び12C(又は、電極12B及び12D)を結ぶ直線と平行な方向、或いは、電極12A及び12B(又は、電極12C及び12D)を結ぶ直線と平行な方向に形成する。例えば、温度勾配が図3における矢印Bで示されるように、電極12Aから12Cへの方向、又は、電極12Bから12Dへの方向に形成される場合には、電極12A及び12C、又は、電極12B及び12Dが用いられ、図3における矢印Aで示されるように、電極12Aから12Bへの方向、又は、電極12Cから12Dへの方向に形成される場合には、電極12A及び12B、又は、電極12C及び12Dが用いられる。
【0029】
例えば、図3における矢印Bの方向に温度勾配を形成する場合には、図4に示すように、電極12Aから電極12Bに向かって、温度差(ΔT)を形成するのが好ましい。図4は、第1の実施の形態における薄膜22の温度勾配を示すための説明図である。
【0030】
プローブ16から供給される電流は通電パッド14Aおよび14Bのそれぞれを介し、電極12Aおよび12Bのそれぞれに通電される。電極12Aおよび12B上には、薄膜22が載置されている。通電中は、温度差付与用ヒーター26による加熱が行われるが、全体用ヒーター24と基板との間にある熱伝導媒体25により、電極12Bから電極12Aへの熱の拡散は抑えられ(図面中の矢印方向へ拡散され)、図4に示すような温度勾配が示されることになる。
【0031】
なお、薄膜22の温度差ΔTから求められる温度勾配Tsは、例えば、サーモグラフィや熱電対等で計測することができる。更に、上記温度勾配は、温度差付与用ヒーター26で形成されるものに限定されず、その他の機構(例えば、レーザー加熱、等)で形成してもよい。
【0032】
また、測定に用いられる一対の電極12(例えば、図3における矢印B方向に温度勾配が形成されている場合には電極12A及び電極12C)に対応するプローブ16には、起電力Vefを測定するための電圧計が並列に接続される。
薄膜22のゼーベック係数αは、上述のようにして測定した各測定値を用い下記の式(B)に従って算出される。なお、式(B)中、Vefは温度勾配によって生じた起電力であり、Tsは薄膜22の温度差(ΔT)から求められる温度勾配である。
【0033】
【数1】
【0034】
−ゼーベック係数αの測定(2)−
ゼーベック係数αの測定(2)は、一つの薄膜22に接する一対の電極12間に直流又は交流電流を通電し、ペルチェ効果によって生じた起電力(VDC及びVAC)を測定することによって行われる。
【0035】
まず、図3における電極12A及び12Dに対応するプローブ16に図示を省略する電源を接続し、電極12A及び12D間に直流電流IDCを通電すると、ペルチェ効果によって温度勾配が形成され起電力VDCが生じる。かかる起電力VDCを測定し、該起電力VDCと薄膜22の電気抵抗率ρ×直流電流IDCとの和である電極12A及び12D間の電圧降下RDCを求める。
次いで、電極12A及び12D間に交流電流IACを通電し、同様に起電力VACを測定する。該起電力VACと薄膜22の電気抵抗率ρ×交流電流IACとの和である電極12A及び12D間の電圧降下RACを求める。
【0036】
この際、周波数を十分高くすると、ペルチェ効果による温度勾配が形成される前に極性反転することから、電極12A及び12D間の電圧降下RACにはペルチェ効果の寄与分が含まれない。このため、RDC−RAC=αΔT/Iが成立することから、下記の式(C)に従って、ゼーベック係数αを算出することができる。ここで、下記式(C)中、ΔTは、電極12A及び12D間の温度差を示し、赤外線サーモグラフィ、放射温度計、及び熱電対等で測定することができる。また、式(C)中、Iは、直流電流値(IDC)を示す。
【0037】
【数2】
【0038】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、第1の実施の形態で説明したように正方形の頂点に位置するように配置された電極群が、複数配置された電極付多層基板を用いた例について説明する。本実施の形態によれば、多数試料を同時に測定することができるため、熱電特性の比較などを高速に行うことができる。
【0039】
まず、図5を用いて第2の実施の形態における電極付多層基板について説明する。図5は、第2の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。図5に示すように本実施の形態における基板30には、正方形の頂点に位置するように配置された4つ1組の電極32が計9組(グループA〜グループI)設けられており、それに対応する通電パッド34及びプローブ36が備えられている。また、各グループに電極32上には一枚の薄膜38が形成されており、グループごとに第1の実施の形態に記載されたそれぞれの測定を9枚同時に行うことができる。このため、バルク試料を用いて一つずつ作製・評価する場合と比較して、例えば、多グループの測定を同時に行う場合には、格段に高速に多数試料間の熱電特性を測定できるとともに、試料間の優劣をつけることができる。更に、基板30において1試料ずつ測定する場合であっても、試料交換に要する時間は、端子切替え時間にすぎないため、従来の測定法と比較しても非常に迅速に測定を行うことが出来る。
【0040】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、基板上に2つの点状電極及びその外側に互いに平行に配置された2つのブロード状の電極が、各々の中心が直線上に位置するように配置された電極付多層基板を用い、電極上に成膜された一枚の薄膜状試料の熱電特性(ゼーベック係数α)を評価する方法である。本実施の形態によれば、4つの電極を用いて測定する四端子測定や、ブロード状の電極のみを用いる測定を、適宜目的に応じて使いわけることができる。
【0041】
−電極付多層基板−
まず、図6〜8を用いて本実施の形態に用いられる電極付多層基板について説明する。図6は、第3の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略図である。図7は、第3の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略断面図である。また、図8は、第3の実施の形態において用いられる電極付基板の上面図である。
【0042】
図6に示すように基板50(電極付多層基板)の表面には、点状電極52A及び52B(以下、単に「点状電極52」という記載の場合もある。)と、通電電極53C及び53D(以下、単に「通電電極53」という記載の場合もある。)と、通電パッド54A〜54D(以下、単に「通電パッド54」という記載の場合もある。)と、が配置されており、プローブ56を通じて図示を省略する測定機器により点状電極52間及び通電電極53間を通電可能なように構成されている。
基板50は、図7に示すように薄膜58a〜58cを積層した多層構造を有しており、基板50の層間に、薄膜状の配線パターン60a〜60l(以下、単に「配線パターン60」という記載の場合もある。)を形成することによって高集積化された回路が形成されている。
【0043】
点状電極52は、直径1mm以下の円形の電極(点状電極)であり、図7に示す配線パターン60d〜60f及び60j〜60lによって通電パッドと接続されている。点状電極52は、四端子測定用の電極であり、その形状は点状のものであれば特に限定されない。また、本実施の形態における点状電極52は、その中心が通電電極53の中心と直線状になるように配置されているが、これに限定されるものではなく、通電電極53間にあり、薄膜62と接する位置に配置されていればよい。
通電電極53は、サイズ0.1〜5mm×0.5〜10mmの長方形の電極であり、図7に示す、配線パターン60a〜60c及び60g〜60iによって通電パッドと接続されている。更に、通電電極53は、互いに対向する辺が平行となるように配置される。
これら点状電極52及び通電電極53は、図8に示すように2つの点状電極52を通電電極53が挟むように配置されており、各電極の中心を結ぶ線が直線となるように配置されている。電極のうち点状電極52は、主として4端子測定用として用いられる。
【0044】
通電パッド54は、測定機器に接続されるプローブ56を通じて電流が流され、各電極間を通電する。また、本実施の形態における基板に接続可能な、測定機器として、例えば、定電流源、電源、波形発生器、増幅器、電流計、電圧計、オシロスコープ等を用いることができる。
点状電極52、通電電極53、通電パッド54及び配線パターン60の素材は、導電性のある部材であれば特に限定されず、例えば、銅、金、ニッケル、タングステン、モリブテン等を用いることができる。また、点状電極52、通電電極53、通電パッド54及び配線パターン60の素材は同一のものを用いることが好ましい。これらの素材として同一のものを用いることで、各電極及び通電パッド54間に異種金属等の接合箇所がなくなり、異種金属の接合箇所で発生する電圧降下が測定値に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0045】
また、基板50の裏面(薄膜を設ける側とは逆の面)には、基板50全体の温度を制御するための全体用ヒーター64が備えられており、当該裏面と全体用ヒーター64との間に、加熱により他方の電極側に伝導する熱を吸収する熱伝導媒体65が設けられている。更に基板50の内部には薄膜62に温度差を付与するための温度差付与用ヒーター66が備えられている。温度差付与用ヒーター66により、一対の電極の一方の電極側を加熱して、温度勾配を得ることができるが、当該温度の拡散が大きいと他方の電極側へ熱が伝導し、大きな温度勾配が得られない。そこで、熱伝導媒体65を図6および図7に示すように設けることで、薄膜62に大きな温度勾配を形成してゼーベック係数を効率よく測定することができる。なお、熱伝導媒体65の態様については、既述の熱伝導媒体25と同様である。
【0046】
次に、測定対象となる薄膜62について説明する。薄膜62は、上述と同様にPVD(物理蒸着)、イオンビーム蒸着、レーザー蒸着などの物理蒸着法、CVD等の化学蒸着法、鍍金等によって通電電極53と両端で接触するように成膜される。上記成膜法に関しては、例えば、H.Koinuma,I.Takeuchi: Nature Materials 3, pp.249−438,01Jul.2004、鯉沼秀臣及び川崎雅司監修「コンビナトリアルテクノロジー」丸善2004、X.D.Xiang, I.Takeuchi:Combinatorial Materials Synthesis, Marcel Dekker Inc.2003、に記載されている。
【0047】
薄膜62は、例えば、Bi−Sb−Te,Ti−Ni−Si,Mg−Sn−Si等の材料を上記成膜法により電極52上に積層させた形体である。薄膜62の形状は、その長辺(図8における辺F及びG)が、各電極の中心を結んだ線である図8における波線Hと平行になるように形成される。薄膜62の形状は、前記条件を満たす限り特に限定されるものではないが、各電極の配置を考慮すると、長方形であることが好ましい。また、薄膜62のサイズについても特に限定されないが、縦0.5〜10mm×横1〜10mm程度が更に好ましい。また、薄膜62の厚さとしては0.1mmが好ましいが、0.1〜10μmがより好ましく、0.5〜2μmが更に好ましい。
【0048】
−ゼーベック係数αの測定(1)−
ゼーベック係数αの測定(1)は、通電電極53C及び53Dのみを用いる。ゼーベック係数αの測定(1)は、通電電極53C及び53D間に直流又は交流電流を通電し、ぺルチェ効果によって生じた起電力(VDC及びVAC)を測定することによって行われる。
まず、図8における通電電極53C及び53Dに対応するプローブ56に図示を省略する電源を接続し、通電電極53C及び53D間に直流電流IDCを通電すると、ペルチェ効果によって温度勾配が形成され起電力VDCが生じる。かかる起電力VDCを測定し、該起電力VDCと薄膜62の電気抵抗率ρ×直流電流IDCとの和である通電電極53C及び53D間の電圧降下RDCを求める。
次いで、通電電極53C及び53D間に交流電流IACを通電し、同様に起電力VACを測定する。該起電力VACと薄膜62の電気抵抗率ρ×交流電流IACとの和である通電電極53C及び53D間の電圧降下RACを求める。
【0049】
この際、周波数を十分高くすると、ペルチェ効果による温度勾配が形成される前に極性反転することから、通電電極53C及び53D間の電圧降下RACにはペルチェ効果の寄与分が含まれない。このため、RDC−RAC=αΔT/Iが成立することから、既述の式(C)に従って、ゼーベック係数αを算出することができる。ここで、式(C)中、ΔTは、通電電極53C及び53D間の温度差を示し、赤外線サーモグラフィ、放射温度計、及び熱電対等で測定することができる。また、式(C)中、Iは、直流電流値を示す。
【0050】
本実施の形態のように、通電電極として点状電極よりも薄膜との接触面積が大きいブロード状の電極(長方形の電極)を用いると、局所的に電流密度が上昇してジュール熱の影響によりΔT測定の精度が失われることを防止することができる。
【0051】
−ゼーベック係数αの測定(2)−
ゼーベック係数αの測定(2)は、通電電極53C及び53Dのみを用いる。ゼーベック係数αの測定(2)は、図6及び7に示すように基板50中に埋め込まれた温度差付与用ヒーター66および熱伝導媒体65によって基板50全体(薄膜62を含む)に大きな温度勾配を形成し、該温度勾配によって一枚の薄膜62に接する一対の電極間に生じた起電力Vefを測定することによって行われる。
【0052】
まず、上記温度勾配は、図8における一点鎖線Hと平行な方向に形成する。例えば、図8における矢印Iの方向に温度勾配を形成する場合には、図4と同様に、通電電極53Cから通電電極53Dに向かって、温度差(ΔT)を形成するのが好ましい。また、薄膜62の温度差(ΔT)から求められる温度勾配Tsは、例えば、サーモグラフィや熱電対等で計測することができる。更に、上記温度勾配は、温度差付与用ヒーター66で形成されるものに限定されず、その他の機構(例えば、レーザー加熱、等)で形成してもよい。また、通電電極53に対応するプローブ56には、起電力Vefを測定するための電圧計が並列に接続される。
このように温度勾配によって生じた起電力Vefを測定し、該起電力Vefと得られた温度勾配Tsとから既述の式(B)に従ってゼーベッグ係数αが算出される。
【0053】
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、第3の実施の形態で説明したように基板上に2つの点状電極及びその外側に互いに平行に配置された2つのブロード状の電極が、各々の中心が直線上に位置するように配置された電極付多層基板を用いた例について説明する。本実施の形態によれば、多数試料を同時に測定することができるため、熱電特性の比較などを高速に行うことができる。
【0054】
まず、図9を用いて第4の実施の形態における電極付多層基板について説明する。図9は、第4の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。図9に示すように本実施の形態における基板70には、2つの点状電極72及びその外側に互いに平行に配置された2つの長方形の通電電極73が9つのグループ(グループJ〜グループR)設けられており、それに対応する通電パッド74及びプローブ76が備えられている。また、各グループの通電電極73上には一枚の薄膜78が形成されており、各グループごとに第3の実施の形態に記載されたそれぞれの測定を9枚同時に行うことができる。このため、バルク試料を用いて一つずつ作製・評価する場合と比較して、例えば、多グループの測定を同時に行う場合には、格段に高速に多数試料間の熱電特性を測定できるとともに、試料間の優劣をつけることができる。更に、基板70において1試料ずつ測定する場合であっても、試料交換に要する時間は、端子切替え時間にすぎないため、従来の測定法と比較しても非常に迅速に測定を行うことが出来る。
【0055】
(第5の実施の形態)
上述の第1〜第4の実施の形態においては、各電極と通電パッドとが多層基板の層間に設けられた薄膜パターンにより接合されているが、本実施の形態に示すように、電極付基板の表面にパターンを形成し、各電極と通電パッドとを接続させることが出来る。なお、温度差付与用ヒーターや熱伝導媒体については、上記実施の形態と同様である。
図10〜12を用いて、基板上に点状電極とブロード状電極とが設けられた、電極付基板であって、各電極と電通パッドとが基板表面に形成された配線パターンによって接合された例について説明する。
【0056】
まず、電極付基板表面に形成された配線パターンで点状電極及びブロード状の電極と通電パッドとを接続した表面パターン付基板について説明する。図10は、第5の実施の形態において用いられる表面パターン付基板の上面図である。図10に示すように基板90(電極付基板)の表面には、点状電極92A及び92B(以下、単に「点状電極92」という記載の場合もある。)と、通電電極93C及び93D(以下、単に「通電電極93」という記載の場合もある。)と、通電パッド94A〜94D(以下、単に「通電バッド94」という記載の場合もある。)と、が配置されており、プローブ96を通じて図示を省略する測定機器により点状電極92間及び通電電極93間を通電可能なように構成されている。
【0057】
基板90においては、点状電極92及び通電電極93と通電パッド94とが基板表面に形成された配線パターン98A〜Dで接続されている。また、点状電極92、通電電極93、通電パッド94及び配線パターン98の素材は、導電性のある部材であれば特に限定されず、例えば、銅、金、ニッケル、タングステン、モリブテン等の材料を用いることができる。また、点状電極92、通電電極93、通電パッド94及び配線パターン98の素材は同一のものを用いることが好ましい。これらの素材として同一のものを用いることで、各電極及び通電パッド94間に異種金属等の接合箇所がなくなり、異種金属の接合箇所で発生する電圧降下が測定値に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0058】
次に、電極付多層基板表面に形成された配線パターンでブロード状の電極と通電パッドとを接続すると共に、電極付多層基板の層間に設けられた配線パターンによって点状電極と通電パッドとを接続した表面パターン付多層基板について図11及び図12を用いて説明する。図11は、第5の実施の形態において用いられる他の表面パターン付多層基板の上面図である。また、図12は、第5の実施の形態において用いられる表面パターン付多層基板の概略断面図である。
【0059】
図11に示すように基板110(電極付基板)の表面には、点状電極112A及び112B(以下、単に「点状電極112」という記載の場合もある。)と、通電電極113C及び113D(以下、単に「通電電極113」という記載の場合もある。)と、通電パッド114A〜114D(以下、単に「通電バッド114」という記載の場合もある。)と、が配置されており、プローブ116を通じて図示を省略する測定機器により点状電極112間及び通電電極113間を通電可能なように構成されている。
【0060】
基板110においては、通電電極113C及び113Dと通電パッド114C及び114Dとは、基板110表面に形成された配線パターン118D及び118Cで接続されている。また、図12に示すように、点状電極112A及び112Bは、多層基板である基板110の層間に形成された配線パターン118A及びBで通電パッド114A及び114Bと接続されている。
基板110の裏面(薄膜を設ける側とは逆の面)には、基板110全体の温度を制御するための全体用ヒーター124が備えられており、当該裏面と全体用ヒーター124との間に、加熱により他方の電極側に伝導する熱を吸収する熱伝導媒体125が設けられている。更に基板110の内部には薄膜に温度差を付与するための温度差付与用ヒーター126が備えられている。熱伝導媒体125および温度差付与用ヒーター126などの態様は、第1の実施の形態の熱伝導媒体25および温度差付与用ヒーター26などと同様である。
【0061】
点状電極112、通電電極113、通電パッド114及び配線パターン118A〜Dの素材は、導電性のある部材であれば特に限定されず、例えば、銅、金、ニッケル、タングステン、モリブテン等の材料を用いることができる。また、点状電極112、通電電極113、通電パッド114及び配線パターン118A〜Dの素材は同一のものを用いることが好ましい。これらの素材として同一のものを用いることで、各電極及び通電パッド114間に異種金属等の接合箇所がなくなり、異種金属の接合箇所で発生する電圧降下が測定値に影響を及ぼすことを防止することができる。
【実施例】
【0062】
(実施例)
第1の実施形態に係る方法により、薄膜のゼーベック係数を求めた。具体的には、図1〜3に示すように、銅板上に導電性グリース(東レ・ダウコーニング社製H.V.G、厚さ:0.2〜0.5mm)を塗布して、熱伝導媒体25を設け、さらにその上に基板10を載置した。電極12Aおよび電極12B上に、薄膜(材質:コンスタンタン、厚み:0.001mm)22を設けた。基板10は、アルミナ製で内部に温度差付与用ヒーター26としてのヒーター抵抗体を具備している。電極12Aと電極12Bとの距離は、3mmとした。
【0063】
抵抗体に通電・加熱した際の電極12Aと電極12Bとの温度差をΔT、平均値を「温度上昇」として、通電開始からの変化を図13(A)に示す。ΔTは通電・加熱開始後速やかに1℃以上となり、ゼーベック係数測定を行うために十分な温度勾配を付与することができた。なお、図13中、右の縦軸が温度差(ΔT)を表し、左の縦軸が温度上昇を表す。
【0064】
(比較例)
熱伝導媒体を設けなかった以外は、実施例と同様にして通電開始からの変化を調べた。結果を図13(B)に示す。ΔTは通電開始後50秒程度の間0.3〜0.4℃であるが、その後は0.2℃以下であり、ゼーベック係数の測定には不十分であった。また、評価基板全体の温度は2分間で約12℃上昇した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略図である。
【図2】第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略断面図である。
【図3】第1の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。
【図4】第1の実施の形態における薄膜の温度勾配の一例を説明するための説明図である。
【図5】第2の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。
【図6】第3の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略図である。
【図7】第3の実施の形態において用いられる電極付多層基板の概略断面図である。
【図8】第3の実施の形態において用いられる電極付基板の上面図である。
【図9】第4の実施の形態において用いられる電極付多層基板の上面図である。
【図10】第5の実施の形態において用いられる表面パターン付基板の上面図である。
【図11】第5の実施の形態において用いられる他の表面パターン付多層基板の上面図である。
【図12】第5の実施の形態において用いられる表面パターン付多層基板の概略断面図である。
【図13】(A)は実施例における通電開始からの経過時間と温度変化との関係を示す図であり、(B)は比較例における通電開始からの経過時間と温度変化との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10,30,50,70,110 基板
12A〜D,32 電極
14A〜D,34,54A〜D,74,94A〜D,114A〜D 通電パッド
22,38,62,78 薄膜
25,65,125 熱伝導媒体
26,66,126 温度差付与用ヒーター
52A〜B,72,92A〜B、112A〜B 点状電極
53C〜D,73,93C〜D、113C〜D 通電電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の電極を露出させた基板上に、少なくとも一対の前記電極に接するように薄膜状試料を配置し、前記一対の電極の一方の電極側を加熱し、当該加熱により他方の電極側に伝導する熱を熱伝導媒体により吸収しながら、前記一対の電極の電極間を通電することで、前記薄膜状試料の特性を測定することを特徴とする薄膜状試料の測定方法。
【請求項2】
前記基板は、少なくとも4つの前記電極を備え、前記4つの電極が前記薄膜状試料の四隅に接するように前記基板上に配置された請求項1に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項3】
少なくとも一対の前記電極が前記薄膜状試料に接しており、且つ、前記一対の電極が平行に対向するブロード状の電極であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項4】
前記基板が前記電極間に通電するための通電パットを備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項5】
前記電極と前記通電パットとが同一の材料で形成されており、且つ、前記電極と前記通電パットとを、前記電極及び前記通電パットと同一の材料で接続した請求項4に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項6】
前記基板上に複数の前記薄膜状試料を配置し、前記電極間に通電して得られた薄膜状試料の特性を前記複数の前記薄膜状試料間で相対比較する請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項7】
前記薄膜状試料が、前記電極に接するように前記電極上に成膜された請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項1】
表面に複数の電極を露出させた基板上に、少なくとも一対の前記電極に接するように薄膜状試料を配置し、前記一対の電極の一方の電極側を加熱し、当該加熱により他方の電極側に伝導する熱を熱伝導媒体により吸収しながら、前記一対の電極の電極間を通電することで、前記薄膜状試料の特性を測定することを特徴とする薄膜状試料の測定方法。
【請求項2】
前記基板は、少なくとも4つの前記電極を備え、前記4つの電極が前記薄膜状試料の四隅に接するように前記基板上に配置された請求項1に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項3】
少なくとも一対の前記電極が前記薄膜状試料に接しており、且つ、前記一対の電極が平行に対向するブロード状の電極であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項4】
前記基板が前記電極間に通電するための通電パットを備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項5】
前記電極と前記通電パットとが同一の材料で形成されており、且つ、前記電極と前記通電パットとを、前記電極及び前記通電パットと同一の材料で接続した請求項4に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項6】
前記基板上に複数の前記薄膜状試料を配置し、前記電極間に通電して得られた薄膜状試料の特性を前記複数の前記薄膜状試料間で相対比較する請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜状試料の測定方法。
【請求項7】
前記薄膜状試料が、前記電極に接するように前記電極上に成膜された請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄膜状試料の測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−42127(P2009−42127A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208852(P2007−208852)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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