説明

薄膜蒸発装置

【課題】 樹脂薄膜を用い電子材料などを形成する際に厚みむらや欠陥があると薄膜化の効果が半減、性能不良に繋がる。薄膜の実用化には、膜質と生産性の両立が求められるが、従来の樹脂材料塗布方法は、重力による自然流動方式のため塗布したい加熱板面の範囲に対して流動させる時間を要し、また、流動する間に厚みむらや欠陥を生じ易いなど課題がある。
【解決手段】 樹脂材料の塗布方法としてニードルバルブによる吐出方法を採用することで、加熱板面上に均一な樹脂量が吐出可能となる。また。付着させる幅に応じ樹脂材料の供給点を複数個所設けることで、効率良く均一な吐出が可能となる。また、吐出粒径および吐出量の制御が可能となる。重力による自然流動方式で無いため、樹脂粘度の変化に対しても影響を受け難く、均一に吐出させながら蒸発させることで支持体に高速で安定した成膜が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ、半導体など電子材料として樹脂薄膜は広く利用されている。広く利用されるには安定かつ経済的に製造できることが重要である。これらを満足する樹脂薄膜の形成方法として多くの試みがなされている。例えばコンデンサなどの用途においては、高速大量生産に有利な連続巻取り真空蒸着が行われている。その際、蒸発材料と基板材料を形成する薄膜の目的に合わせて選ぶと同時に、必要に応じて真空槽内に反応ガスを導入することや、基板に電位を設けた状態で薄膜を形成することにより目的の特性を持った薄膜を形成することが出来る。(特許文献1〜5)
【0003】
従来の樹脂薄膜の製造方法は、図10に示すように、樹脂材料は供給弁4を経て真空槽5の中に導入される。支持体である長尺基板1は、捲き出しロール15から捲き出され、ガイドロールを経て、円筒状キャン7に沿って走行し、ガイドロール17を経て捲き取りロール16に捲き取られる。長尺基板上に樹脂薄膜を形成するための樹脂蒸気は供給管から供給された樹脂材料を気化することによって得られる。液状で供給された樹脂材料は加熱板11に沿って流動中にその一部が気化しつつ、加熱板に沿い薄い液膜状に拡がる。樹脂材料を一か所に止まらせて加熱すると、樹脂材料の対流が悪く均一に加熱されないため加熱体付近の樹脂材料が熱硬化してしまったり、突沸して粗大粒子を多数発生させたり、順次供給される低温の樹脂材料により樹脂温度上昇が妨げられたり、多量の安定した蒸発量を確保できなかったりする。即ち、自然重力による樹脂材料の供給方法の場合、樹脂材料の熱効果による供給管の目詰まりが生じ、安定した樹脂材料の供給が得難くなる。また、供給された樹脂材料の自然重力による加熱板上の流動方法の場合、樹脂材料の供給量によっては加熱板上の樹脂材料の流動が不均一となり易く安定した蒸発量が確保出来なくなったりする。
【0004】
樹脂材料を用いた薄膜の形成は塗装による方法が広く使われ、リバースコート方式や、ダイコート方式が工業的に使われており、溶剤で希釈した樹脂材料を塗布後乾燥硬化させることが一般的である。また、これらの工法で形成される樹脂膜厚の膜厚の下限は使用する材料によるが、1μm前後であることが多く、それ以下の膜厚は得難い場合が多い。一般的な塗布手段では塗布直後の厚みが数μm以上となるために極薄樹脂厚の形成には溶剤希釈が必要であり、しかも1μm以下の樹脂薄膜が得られない場合も多い。更に、溶剤希釈を行うと乾燥後の塗膜に欠陥が生じ易い。また、環境保護の観点からも好ましくない。そこで溶剤希釈を行わなくとも樹脂薄膜が形成できる方法が提案されている。これは、真空中で樹脂材料を気化または霧化した後に支持体に付着させる方法であり、この方法によれば空隙欠陥の無い樹脂薄膜を形成することが出来ると共に、溶剤希釈の必要もない。
【0005】
樹脂薄膜の上に更に異種の薄膜を組合せて堆積することによって、高耐熱または高耐湿など従来得られなかった様々な性能の複合被膜が得られるようになり、利用分野も多岐にわたる。なかでも電子部品分野での需要は非常に有望であり、コンデンサ、コイル、抵抗、容量性電池あるいはこれらの複合部品等が、薄膜積層によって極めて小型かつ高性能に形成出来つつあり、商品化が始まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−346339号公報
【特許文献2】特表2007−517134号公報
【特許文献3】特開平9−310172号公報
【特許文献4】特許第3485297号公報
【特許文献5】特許第3500395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの樹脂薄膜を形成する際に、重要となるのが樹脂薄膜の厚みむらや欠陥である。厚みむらや欠陥があると薄膜化の効率が半減し、場合によっては性能不良に繋がる。
【0008】
薄膜の実用化には膜質と生産性の両立が求められるが、従来の方法では必ずしも十分ではなかった。膜質の確保に於いては、従来の樹脂材料塗布方法では塗布量および塗布した加熱板面の範囲に対して均一性の確保が困難であった。また、生産性の確保には従来の方法では樹脂材料の重力による自然流動のため塗布したい加熱板面の範囲に対してある程度の流動時間を要し、また、加熱板面上を流動する樹脂材料量が樹脂材料供給位置とそれから離れた位置により差が生じる場合があり、高速でかつ安定な成膜方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、これらの課題を解決するために真空中で樹脂材料を蒸発させ、支持体に均一に付着させる製造方法において、樹脂材料の供給方法としてニードルバルブを用いて樹脂材料を加熱板面上の所定範囲に一定の厚みでかつむら無く塗布し、蒸発させることを特徴とする製造装置である。また、支持体に樹脂材料を付着させる幅に応じ、複数個所の樹脂供給点を設けることで効率良く均一な供給が可能となる。特に本発明はニードルバルブのノズル部の制御により、供給量および供給速度の制御が可能となる。また、ニードルバルブの先端がノズル穴から飛び出る構造とすることで、ニードルを開閉動作させ樹脂材料の目詰まりを防止回避できる。従って樹脂材料の供給部は、連続して安定した樹脂材料を供給できることになる。即ち、高速でかつ安定した薄膜の成膜の両立が実現可能となる。また、ニードルの制御に電動アクチュエータを用いることで、樹脂材料の供給量および供給速度の遠隔操作が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速でかつ安定した膜質の薄膜の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の薄膜の製造および製造装置の一実施例を示す図である。
【図2】本発明に使用される樹脂材料供給方法としてニードルバルブを用い、ニードルバルブと加熱板との設定距離の事例を示した図である。
【図3】本発明に使用される樹脂材料供給方法としてニードルバルブを用い、ニードルバルブと加熱板との設定相対角度の事例を示す図である。
【図4】本発明に使用される樹脂材料供給方法としてニードルバルブを用い、ニードルバルブを加熱板の幅方向に複数個設けた事例を示す図である。
【図5】本発明に使用される樹脂材料供給方法としてニードルを用い、ニードルバルブを加熱板の進行方向に複数個設けた事例を示す図である。
【図6】本発明に使用される樹脂材料供給方法および樹脂材料蒸発方法としてとして加熱板の進行方向にニードルバルブと加熱板を複数個設けた事例を示す図である。
【図7】本発明に使用される樹脂材料供給方法としてニードルバルブを用い、ニードルバルブ弁の開閉および調整方法に電動アクチュエータを採用した事例を示す図である。
【図8】本発明に使用される樹脂材料供給方法としてニードルバルブを用い、ニードルバルブ弁を閉じた方向に動作させたとき、ニードルバルブの針先がノズルの穴から飛び出る構造にした事例を示す図である。
【図9】本発明に使用される樹脂材料供給方法としてニードルバルブを用い、ニードルバルブ弁を開けた場合を示す事例である。
【図10】従来に係る薄膜の製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1から図10に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の薄膜の製造および製造装置の一実施例を示す図である。
図1で樹脂材料は供給弁4を経て真空槽の中に導入される。支持体である長尺基板1は捲き出しロール15から捲き出され、ガイドロール17を経て円筒状キャン7に沿って走行し、ガイドロール17を経て捲き取りロール16に捲き取られる。長尺基板上に樹脂薄膜を形成するための樹脂蒸気は供給弁4から供給された樹脂材料を気化することによって得られる。液状で供給された樹脂材料は加熱板11に薄い液膜状に霧状に拡がる。即ち、樹脂材料は加熱板面に均一に供給、塗布されることにより加熱板面上で均一に加熱され蒸発量が安定する。樹脂材料を一か所に止まらせ加熱すると、樹脂材料の供給量が過大となり、均一に加熱されないために加熱体付近の樹脂材料が熱硬化してしまったり、突沸して粗大粒子を多数個発散させたり、順次供給される低温の樹脂材料により樹脂材料の温度上昇が妨げられたり、多量の安定した蒸発量を確保できなかったりする。
【0013】
図1のように樹脂材料の供給部にニードルバルブを用いることにより、加熱板面上に樹脂材料を必要量および必要面積に供給、塗布できる。また、加熱板の加熱温度を変えることで樹脂材料に合わせて最適昇温パターンに設定することが出来る。
【0014】
尚、加熱板に接触したばかりの樹脂材料は急激な昇温のため粗大粒子となって一部が飛散する場合がある。これは樹脂材料が滴下方式の場合、加熱板面に滴下した際、小径とはいえ樹脂材料の塊となるためと考えられる。樹脂材料供給部にニードルバルブを用いれば樹脂材料を微小粒径または霧状に加熱板面上に塗布できるため加熱板に接触した時の急激な昇温の影響を受け難く、従って粗大粒子が出来ず飛散が生じ難い。また、周囲壁も加熱構造にして、微量であるが周囲壁に付着する樹脂材料の再蒸発を行わせることで、樹脂材料の材料効率を向上できる。樹脂薄膜の硬化を行う硬化装置14として、紫外線照射装置を用いた。
【実施例2】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を用いて説明する。
図2は本発明の薄膜の製造方法および製造装置に使用される樹脂材料供給の一例を示す概略図である。
【0015】
図2のように樹脂材料の供給方法としてニードルバルブを用いる。ニードルバルブの先端部から加熱板面までの距離を5〜200mmに設定することにより、ニードルバルブの先端部から供給した樹脂材料は加熱板上に広い面積で拡がる。即ち、広い面積に樹脂材料を塗布しながら拡がることが可能となるため、樹脂材料は均一にかつ蒸発効率が向上する。即ち、高速で安定した薄膜の成膜が実現できる。
【実施例3】
【0016】
次に、本発明の第3の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
図3は本発明の薄膜の製造方法および製造装置に使用される樹脂材料供給方法の更に別の一例を示す概略図である。
【0018】
図3のように樹脂材料の供給方法としてニードルバルブを用いる。ニードルバルブの先端部から加熱板面までの距離を5〜200mmおよびニードルバルブの先端部と加熱板との相対角度を95〜150度に設定することにより、ニードルバルブの先端部から供給した樹脂材料は加熱板上に広い面積で拡がる。即ち、高速でかつ広い面積に樹脂材料を塗布しながら拡がることが可能となるため、樹脂材料は均一に効率良く蒸発する。即ち、高速で安定した薄膜の成膜が実現できる。
【実施例4】
【0019】
次に、本発明の第4の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
図4は本発明の薄膜の製造方法および製造装置に使用される樹脂材料供給方法の更に別の一例を示す概略図である。図4のように樹脂材料の供給方法としてニードルバルブを用いる。支持体に樹脂材料を付着させる幅に応じてニードルバルブを複数個設けることを特徴とする。加熱板面の幅方向にニードルを複数個設けることにより、樹脂材料を広い面積に高速で供給することで樹脂材料の蒸発効率が向上、即ち高速で安定した薄膜の成膜が実現できる。
【実施例5】
【0021】
次に、本発明の第5の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
図5は本発明の薄膜の製造方法および製造装置に使用される樹材料供給方法の更に別の一例を示す概略図である。 図5のように支持体に樹脂材料を付着させる幅に応じて加熱板に対して進行方向にニードルバルブを複数個設けることを特徴とする。加熱板面の進行方向にニードルバルブを複数個設けることにより、樹脂材料を広い面積に高速で供給することで樹脂材料の蒸発効率が向上、即ち、高速で安定した薄膜の成膜が実現出来る。
【実施例6】
【0023】
次に、本発明の第6の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
図6は本発明の薄膜の製造方法および製造装置に使用される樹脂材料供給方法の更に別の一例を示す概略図である。図6のようにニードルと加熱板を複数個設け、装置を小型化しても蒸発面積を大きくできることを特徴とする。図6のように個々のニードルバルブはニードルバルブ先端部と加熱板面との距離を5〜200mmの範囲に任意に設定できかつニードルバルブ先端部と加熱板面との相対角度を95〜150度の範囲に任意に設定できることにより装置を小型化しても、装置を小型化しても蒸発面積を大きくすることが可能となる。即ち、高速で安定した薄膜の成膜が実現出来る。
【実施例7】
【0025】
次に、本発明の第7の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0026】
図7は本発明の薄膜の製造方法および製造装置に使用される樹脂材料方法の更に別の一例を示す概略図である。 図7のように樹脂材料の供給方法としてニードルバルブを用いる。ニードルバルブの調整方法として電動アクチュエータを用いニードルバルブ先端部からの樹脂材料の供給量を任意にかつ自動的に制御が可能となる。また、ニードルバルブを複数用いる場合、個々のニードルバルブの調整が任意にかつ自動的に制御が出来る。また、ニードルバルブの調整方法として電動アクチュエータを用いることにより遠隔操作が可能となる。従って、支持体への付着厚み情報とニードルバルブからの樹脂材料の供給量情報をリンクさせることで、任意の厚みの薄膜が安定して得られることが可能となる。
【実施例8】
【0027】
次に、本発明の第8の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0028】
図8および図9は本発明の薄膜の製造方法および製造装置に使用される樹脂材料供給方法の更に別の一例を示す概略図である。図8はノズルバルブのニードルバブル弁が閉状態、図9は開状態を示す。図9のようにニードルバルブ弁開の状態で樹脂材料の熱硬化でノズル穴が目詰まりした場合、図8のように針先が穴から飛び出る構造にすることで目詰まり部を除去、正常な樹脂供給を回復出来る。この構造により、樹脂材料が万一熱硬化していてもニードルバルブ弁を開閉させることで目詰まりを回復出来、かつ作業前に動作することで目詰まりが防止可能となる。即ち、連続で安定した薄膜の成膜が実現出来る。
【0029】
図1のように、樹脂材料の供給方法としてニードルバルブを用いると樹脂材料を加熱板面上の所定範囲に一定の厚みでかつむら無く塗布出来る。これにより加熱板上からの安定した樹脂量の確保また、支持体に樹脂材料を付着させる幅に応じて、複数個所の樹脂供給点を設けることにより、より効率良く均一な供給が可能となる。樹脂材料の供給方法にニードルバルブを用いることで、安定した樹脂供給がなることを述べた。更にニードルバルブの先端がノズル穴から飛び出る構造とすることで設備稼働中にニードルバルブ弁を開閉させ、樹脂材料の目詰まりを防止回避できる。また、樹脂材料は加熱板上に均一に塗布されるため、自然重力だけによる樹脂材料の拡がりで無いため、加熱板上での樹脂材料の停滞が防止できる。尚、樹脂薄膜の硬化を行う硬化装置14として紫外線照射装置を用いた。
【0030】
実施の形態2〜実施の形態8および比較例の構成で樹脂薄膜の作成を行い、作成条件と膜質の関係を調べた。アクリレート系の樹脂材料を用い、樹脂薄膜の堆積速度を変えて成膜を行った。作成した膜の5cm×5cmの範囲を光学顕微鏡で観察し、直径3μm以上の粒を欠陥とし、この個数で樹脂膜質を評価した。その結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
(表1)に示す実施例2〜6では、それぞれ順に上記の形態2〜8に示した装置を使用した。
【0033】
(表1)から、従来例の構成においても樹脂薄膜の堆積速度が小さい場合には作成した樹脂薄膜の欠陥数は少ない。しかしながら堆積速度が概ね1000mm/sec以上となると欠陥数が急激に増加することがわかる。
【0034】
これに対して、実施の形態2〜実施の形態8の構成では堆積速度が1000mm/sec以上においても作成した樹脂薄膜の欠陥数が少ない。この理由は以下のように考えられる。即ち、堆積速度を高くするには樹脂材料の供給量を増やす必要があるが、従来例の構成では蒸発面積が不足となり、堆積速度を確保するためには加熱板上の温度条件を高める必要があることが示されている。
【0035】
次に実施の形態2〜実施の形態8の構成で、ニードルバルブ先端部と加熱板面との距離およびニードルバルブ先端部と加熱板面との相対角度を変えてノズル詰まり状態の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
(表2)から、ニードルバルブのノズル詰まりが生じないのはニードル先端部と加熱板面との距離は5〜200mmの範囲に設定かつニードルバルブ先端部と加熱板面との相対角度を95〜150度の範囲に設定すればよいことがわかる。
【0038】
従って、ニードルバルブ先端部と加熱板面との距離を5〜200mmの範囲に任意に設定できかつニードルバルブ先端部と加熱板面との相対角度を95〜150度の範囲に任意に設定できることにより装置を小型化しても樹脂材料を広い面積に高速で供給することで可能となり、また、装置を小型化しても蒸発面積を大きくすることが可能となる。即ち、高速で安定した薄膜の成膜が実現出来ることが示されている。
【0039】
一方、樹脂材料の供給量が増えると加熱板上の表面積に対して樹脂材料の拡がり量が不均一となり易い傾向となり、加熱板上の温度条件を高め設定と相まって、樹脂の一部は熱硬化や突沸現象を起こすようになる。従来例の構成で高堆積速度の場合に見られた欠陥数はこうした突沸粒子の一部が支持体に付着するものと思われる。真空を利用した蒸発方法の場合、こうした突沸粒子は直進性が高く支持体に付着する確立が高い。
【0040】
これに対して実施の形態1〜8の構成では樹脂材料の供給量が加熱板面に均一にかつ広くできることを目的とした構造となっており、これによって樹脂材料の供給量の多い場合、即ち、堆積速度が高い場合でも突沸や熱硬化が起こり難い。従って、欠陥数の少ない樹脂薄膜が得られるものと思われる。
【0041】
また、実施の形態3の構成では樹脂材料の供給個所を樹脂材料の進行方向に加熱板の幅に応じて複数設定することで均一に短時間に樹脂材料を供給できる構造となっており、これによって樹脂材料の供給量の多い場合、即ち、堆積速度が高い場合にも突沸や熱硬化が起こりにくい。従って、欠陥数の少ない樹脂薄膜が得られるものと思われる。
【0042】
また、実施の形態4〜5の構成では樹脂材料の供給個所と加熱板の組み合わせを複数設定することで樹脂材料を均一かつ短時間に供給できかつ蒸発できる構造となっており、これによって樹脂材料の供給量の多い場合、即ち堆積速度が高い場合にも突沸や熱硬化が起こりにくい。 従って、欠陥数の少ない樹脂薄膜が得られるものと思われる。
【0043】
また、比較例の構成では、すでに述べたように堆積速度が高い場合、樹脂の熱硬化が起こる割合が大きく樹脂材料の蒸発速度が成膜時間と共に変化し易いため、成膜条件の制御も実施の形態1〜実施の形態8に比べて困難であった。また、実施の形態1〜8のように樹脂材料の高堆積速度を望む場所においても突沸や熱硬化が起こりにくく、即ち、樹脂材料の飛散が起こりにくいため飛散防止壁が不要となり、蒸発装置の機構がシンプルになる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上の結果から、本発明の薄膜の製造方法および製造装置によれば樹脂材料を効率良く蒸発させると共に、熱硬化や突沸を出来るだけ抑えて安定な成膜を高堆積速度で行うことができ、また、蒸発部の機構がシンプルであることから工業上の意義が大きいものと思われる。
【0045】
尚、上記実施の形態では、誘電体としてアクリレート系の樹脂材料を用いた場合について述べたが、エポキシ系等の他の材料を用いることが出来る。また、実施の形態では硬化の方法として紫外線硬化および電子線硬化を用いた場合について述べたが、本発明は特に硬化の手段によって限定されるものではない。
【0046】
以上の様に本発明の薄膜の製造方法および製造装置によれば、高速で優れた樹脂薄膜が得られる。
【符号の説明】
1 長尺基板
2、2a、2b、2c、2d ニードルバルブ
3、3a、3b、3c、3d ノズル
4 供給弁
5 真空槽
6 排気系
7 キャン
11,11a、11b 加熱板
13 周囲壁
14 硬化装置
15 捲き出しロール
16 捲き取りロール
17 ガイドロール
18 駆動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空中で樹脂材料を蒸発させて支持体に付着させる薄膜の製造方法において、樹脂材料を噴射により加熱板面に均一の厚みに吐出させながら蒸発させることを特徴とする蒸発装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂材料の供給方法において、ニードルバルブを用いることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂材料の供給方法において、ニードルバルブの開閉駆動および制御に電動アクチュエータを用いることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂材料の供給方法において、支持体に樹脂材料を付着させる長さに応じてニードルバルブを用いた樹脂材料の供給点を加熱板の長さ方向に複数個所設けることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂材料の供給方法において、支持体に樹脂材料を付着させる幅に応じてニードルバルブを用いた樹脂材料の供給点を加熱板の幅方向に複数個所設けることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂材料の供給方法において、ニードルバルブを用いた樹脂材料の供給部と加熱板の組み合わせをひとつのユニットとして加熱板の長さ方向に複数ユニット設けることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂材料の供給方法において、ニードルバブルの先端部から加熱板までの距離を、5〜200mmとすることを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項8】
前記樹脂材料の供給方法において、ニードルバルブの先端部と加熱板面との相対角度を、95〜150度とすることを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項9】
前記樹脂材料の供給方法において、ニードルバルブの先端針先部がニードルバルブノズル部下面から飛出し出来ることを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項10】
前記樹脂材料の供給方法において、ニードルバルブノズル部下面からのニードルバルブ先端針先部までの飛出し距離を2mmとすることを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項11】
前記樹脂材料の供給方法において、ニードルバルブノズル部の角度を12.5度とすることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−44050(P2013−44050A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195461(P2011−195461)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(309024907)マシン・テクノロジー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】