説明

薄膜表面の塵埃除去装置

【課題】薄膜の表面に付着された塵埃を簡単な構成で確実に剥離して除去できる薄膜表面の塵埃除去装置を提供する。
【解決手段】薄膜の走行を案内する複数のローラと、走行途中の薄膜の表面に付着した塵埃を除去する塵埃除去部を備えた薄膜表面の塵埃除去装置において、前記塵埃除去部は前記ローラの間を走行する薄膜を伸縮させる伸縮付与手段と、伸縮によって薄膜から剥離した塵埃を捕捉する捕捉手段を備え、伸縮付与手段は、薄膜の走行を案内する一部のローラを振動させて薄膜を伸縮させる振動子を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜表面の塵埃除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の素子表面、フラットパネルディスプレイ(FPD)に使用するプラスチック製の機能性フィルムおよび携帯電話や精密機器に使用される金属箔は、その製造工程において材料表面に大気塵埃や製造工程で出た製品製造由来の塵埃が付着すると、製品の歩留まり低下につながり、また、出荷後の製品不良の原因になるので塵埃除去は重要な事項となる。
【0003】
図7の先行技術文献1に示される従来の付着塵埃の除去装置の概要を示す。巻き出しロール1から巻き出されたフィルム6は、蒸着ロール2を経由して巻き取りロール3に巻き取られる。フィルム6は、蒸着する直前に、蒸着ロール2と粘着ロール4で挟まれ、表面に付着している塵埃が粘着ロール4に転移され除去されるものである。また、図8の先行技術文献2に示される従来の付着塵埃の除去装置の概要を示す。図7の粘着ロール4に代えて、静電気除去性能を有する粘着剤をロール表面に設けた2個の粘着ロール5の間にフィルム6を通し、フィルム表面の付着塵埃を除去しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-299321号公報
【特許文献2】特開2001-334224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に示される薄膜ウェブの表面に付着した塵埃の除去では、粘着剤に接触した薄膜上に微量の粘着剤が残り、浮遊粉塵が再付着するという問題があった。また、ロール表面の粘着剤が直接薄膜に接触するため、ロールの粘着剤に付いた塵埃が薄膜にキズを付け、製品不良の原因になるなどの問題もあった。さらに、製造工程で薄膜の表面に押付けられた塵埃(製造由来の塵埃も含む)などは、従来の粘着剤による塵埃除去では、十分に除去できないという問題があった。
【0006】
本発明は上記従来技術の欠点にかんがみ、薄膜の表面に付着された塵埃を簡単な構成で十分に剥離して除去できる薄膜表面の塵埃除去装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、薄膜の走行を案内する複数のローラと、該複数のローラ間を走行途中の薄膜の表面に付着した塵埃を除去する塵埃除去部を備えた薄膜表面の塵埃除去装置において、前記塵埃除去部は、薄膜を伸縮させる伸縮付与手段を有することを特徴とする。
【0008】
また上記に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、前記伸縮付与手段で前記薄膜を伸縮することによって薄膜から剥離した塵埃を捕捉する捕捉手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、前記伸縮付与手段は、薄膜の走行を案内するローラを振動させて薄膜を伸縮させる振動子を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、上記に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、前記伸縮付与手段は、薄膜の走行を案内するローラの断面がカム形状であることを特徴とする。
【0011】
また、上記に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、前記伸縮付与手段は、ローラに案内されて走行する薄膜を加熱、冷却して伸縮させる加熱冷却手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、上記の薄膜表面の塵埃除去装置において、前記加熱冷却手段は、ローラに案内されて走行する薄膜に熱風と冷風を吹き出す吹き出口からなることを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、前記加熱冷却手段は、薄膜の走行を案内する一部のローラを加熱・冷却する加熱、冷却用コイルからなることを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、前記捕捉手段は、薄膜から剥離した塵埃を吹き飛ばす清浄空気吹出し装置と、塵埃を吸引する塵埃吸引装置とから構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薄膜の表面に付着された塵埃を比較的簡単な構成で十分に剥離して除去できる薄膜表面の塵埃除去装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明実施例1の薄膜表面の塵埃除去装置の概要図。
【図2】本発明実施例1の断面概要図。
【図3】本発明実施例1の平面概要図。
【図4】本発明実施例2の概要図。
【図5】本発明実施例2の断面概要図。
【図6】本発明実施例3の断面概要図。
【図7】従来の塵埃除去装置の概要図。
【図8】従来の他の塵埃除去装置の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について図とともに説明する。
【実施例1】
【0018】
図1〜図3に本発明の実施例1を示す。10はフラットパネルディスプレイ(FPD)に使用するプラスチック製の機能性フィルム、又は、携帯電話や精密機器に使用される金属箔などの薄膜である。薄膜10は複数のローラ11〜15に掛けまわして案内された状態で、図示しない駆動モータにより走行駆動される。ローラ11、12は、薄膜の走行を安定にするための固定ローラで、図示しない巻き出しロールから巻き出された薄膜10が固定ローラ11を経由して塵埃除去部16を通過し、最終的に固定ローラ12を経由して図示しない巻き取りロールに巻き取られる。
【0019】
図2に示すように塵埃除去部16は、少なくとも薄膜10を振動させる振動ローラ13、14と、テンションローラ15と、清浄空気吹出し装置17と、塵埃吸引装置18を有している。振動ローラ13、14は、薄膜10の案内に加えて伸縮付与手段としても作用し、それぞれ図2に示すように振動子13aと14aを内蔵する。振動子13aと14aは、電気駆動により薄膜10の長手方向に伸縮するように矢印A、B方向に振動し、薄膜10を矢印C、D方向にある周期で伸縮させる。
【0020】
振動子としては、超音波振動子やピエゾ素子などであり、伸縮の幅と周期は薄膜10の性能に影響しない程度の幅とする。振動ローラ13、14は回転、または静止しており、静止の場合は薄膜10が摺動しながら案内される。
【0021】
上記テンションローラ15は回転しながら薄膜10に適度の張りを持たせるローラで、図示しないばねによって図2の左側に常時付勢されている。上記清浄空気吹出し装置17と塵埃吸引装置18は、上記各ローラの両端と薄膜10の両端を挟むように対向して配置され、薄膜から剥離した塵埃を捕捉する捕捉手段を構成している。上記清浄空気吹出し装置17は、パイプ状の取入口から供給された清浄空気を薄膜10の面に沿うように吹出す。上記塵埃吸引装置18は、塵埃と共に清浄空気を吸込んでパイプ状の吹出し口から外部に排気する。
【0022】
上記構成において、薄膜10が、固定ローラ11、振動ローラ13、テンションローラ15、振動ローラ14、固定ローラ12を介して走行する。振動ローラ13と14は所定周期で矢印A、B方向に振動して薄膜10を振動させる。この振動により、薄膜10は振動と同じ周期で矢印C、D方向に伸縮する。
【0023】
この伸縮は、振動ローラ13、14とテンションローラ15の間の適度な力で張られた薄膜10で発生する。薄膜10にもとから付着している塵埃や、製造工程で押付けられて付着した塵埃は、薄膜10と共に伸縮する。しかし、塵埃の伸縮量は薄膜の伸縮量より小さいので、この伸縮量の差により薄膜10の付着塵埃が薄膜の伸縮に追随できずに薄膜10の表裏両面から剥離する。薄膜10には振動ローラ13と14による振動も加わるので、この振動の払い落とし作用によりさらに塵埃の剥離が促進される。
【0024】
薄膜10から剥離した塵埃は、薄膜10の近傍を浮遊している状態では薄膜10に再付着する恐れがあるので、前述したように清浄空気吹出し装置17からHEPAフィルタなどによって塵埃が除去された清浄空気を薄膜10の表面に沿うように均一に吹きつけることで、剥離塵埃を表面付近から吹き飛して塵埃吸引装置18で吸込むようにしている。このとき、図3に示すように清浄空気は、振動ローラ13とテンションローラ15の間と、テンションローラ15と振動ローラ14の間との上下の薄膜10の面に沿うように、均一に吹き付けられる。剥離塵埃は、清浄空気によって持ち運ばれ、対向側に設けた塵埃吸引装置18によって清浄空気と共に全て吸引されることで再付着が防止される。
【0025】
なお、清浄空気吹出し装置17、テンションローラ15、振動ローラ13、14、および塵埃吸引装置18を有する塵埃除去部16を、ボックス内にいれる構成としても良い。この構成にすれば、吹出された清浄空気が塵埃吸引装置18に全て吸込まれるので、剥離塵埃の塵埃吸引装置18外への飛散を防止することができる。
【0026】
このように本実施例によれば、薄膜10から剥離した塵埃を清浄空気で吹き飛ばし、それを全て吸引するようにしたので、剥離塵埃の薄膜10への再付着が防止でき、清浄な薄膜10が得られる。
なお、振動ローラ13,14の断面が楕円などのいわゆるカム形状になるようになるように形成することで、振動ローラ13,14が回転することで振動子13a、14aを用いなくても、又は用いても薄膜10に対して振動を与えることが出来、比較的安価に構成することが出来る。
【実施例2】
【0027】
図4と図5に本発明の実施例2の概要を示す。実施例2は、図に示すように薄膜10を伸縮させるための伸縮付与手段として、先の実施例の振動ローラ13,14に加え、熱風や冷風を薄膜10に当てる加熱冷却手段により、線膨張により薄膜10を伸縮させることで塵埃を剥離させるようにしている。薄膜10の熱による伸縮が起こり易い性質を利用することで、薄膜表面に付着した塵埃を剥離させるようにしている。振動ローラ13を通過した薄膜10の上方に加熱手段としての熱風の吹出し口19を配置し、その下流側の近傍の薄膜10の下方に同じく冷却手段としての冷風の吹出し口21を配置している。
【0028】
また、図5に示すように、テンションローラ15を通過した薄膜10の近傍にも冷風の吹出し口22を配置し、この下流側の近傍に熱風の吹出し口20を配置している。上記構成で、走行中の上方の薄膜10は、熱風の吹出し口19と冷風の吹出し口21からの熱風と冷風によって熱膨張と熱収縮を起こして伸縮し、また、冷風吹出し口22と熱風の吹出し口20からの冷風と熱風によって下方の薄膜10は熱収縮と熱膨張を起こして伸縮する。
【0029】
薄膜10の表裏両面から伸縮によって剥離した塵埃は、先の実施例と同様に清浄空気吹出し装置17と塵埃吸引装置18を含む塵埃除去部16内での清浄空気の吹付けによって、除去され外部に排出される。本実施例では、振動ローラ13,14の振動による薄膜10の伸縮の前後に、温度変化でも薄膜10を伸縮させているので伸縮の機会が増加し、塵埃の剥離するチャンスが増加し、塵埃の除去が促進される。また、薄膜10には振動ローラ13と14による振動も加わるので、この振動の払い落とし作用によりさらに塵埃の剥離が促進される。
【0030】
なお、上記熱風の吹出し口19,20と冷風の吹出し口21、22は、交互に配置されれば良く、順序が逆でも良い。また、冷風や熱風の吹き出し方は、薄膜10の表面にスポット的(部分的)に吹出しても良く、ライン状(線状)に吹き出しても良い。冷風、温風は空気の代わりに炭酸ガスなどを用いても良い。
【0031】
上記では冷風と熱風の両方を交互に吹出して薄膜10を伸縮させているが、冷風と熱風のいずれか一方だけでも薄膜10の伸縮が行える。すなわち、冷風と常温、熱風と常温の温度差により薄膜10の伸縮が行えるので、冷風の吹出し口と熱風の吹出し口の一方を省略することができる。また、振動ローラ13、14の振動を併用しないで、冷風か熱風の一方だけでも良い。
【0032】
そして、清浄空気の吹付けは、薄膜10の温度を常温にさます作用があるため、熱風や冷風で加熱または冷却された薄膜10の温度を短時間で常温に戻すことができ、薄膜の伸縮がより促進される。
【実施例3】
【0033】
図6に本発明の実施例3の断面の概要を示す。本実施例では、振動ローラ13、14自体を加熱や冷却できるように、加熱、冷却用コイル13b、14bを内蔵している。加熱、冷却用コイル13b、14bには、加熱または冷却のための冷媒が供給される。薄膜10は、加熱されている振動ローラを接触通過するとき熱膨張し、通過後に常温に戻ることで熱収縮して伸縮がなされる。また、薄膜10は、冷却されている振動ローラを接触通過するとき熱収縮し、通過後に常温に戻ることで熱膨張して伸縮がなされる。このとき薄膜10には、振動ローラの振動と、冷却、加熱の熱変形が重なった状態で複雑な伸縮がなされるので、塵埃の剥離する機会が増加し、塵埃の除去が促進される。
【0034】
先の実施例2は、吹出し口から熱風や冷風を薄膜10に当てるように構成されているが、熱風や冷風が、清浄空気吹出し装置17から吹出される清浄空気によって遮られてうまく薄膜10に届かず、薄膜10が効果的に伸縮されない場合がある。本実施例では、振動ローラ自体が加熱源と冷熱源になっているので、振動ローラに接触している薄膜10に確実に伝熱することができ、清浄空気によって熱が遮られるという問題点を解決できる。
【0035】
なお、変形例として、振動ローラの代わりに、加熱、冷却用コイル13b、14bが内蔵され、振動子13a、14aが内蔵されないローラを用いる場合は、上記と同様に清浄空気によって熱が遮られるという問題点を解決できる。そして、清浄空気の吹付けは、薄膜10の温度を常温にさます作用があるため、ローラで加熱または冷却された薄膜10の温度を短時間で常温に戻すことができ、薄膜の伸縮がより促進される。
【0036】
上記した実施例2および実施例3では、温度によって薄膜10を伸縮させているが、この温度は薄膜10の特性に影響を与えない範囲に設定されるものとする。
【符号の説明】
【0037】
10…薄膜
11〜15…ローラ
11、12…固定ローラ
13、14…振動ローラ、伸縮付与手段
13a、14a…振動子
13b、14b…加熱、冷却用コイル、伸縮付与手段、加熱冷却手段
15…テンションローラ
16…塵埃除去部
17…清浄空気吹出し装置
18…塵埃吸引装置
17、18…捕捉手段
19〜22…吹出し口、伸縮付与手段、加熱冷却手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜の走行を案内する複数のローラと、
該複数のローラ間を走行途中の薄膜の表面に付着した塵埃を除去する塵埃除去部を備えた薄膜表面の塵埃除去装置において、
前記塵埃除去部は、薄膜を伸縮させる伸縮付与手段を有することを特徴とする薄膜表面の塵埃除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、
前記伸縮付与手段で前記薄膜を伸縮することによって薄膜から剥離した塵埃を捕捉する捕捉手段を備えたことを特徴とする薄膜表面の塵埃除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、
前記伸縮付与手段は、薄膜の走行を案内するローラを振動させて薄膜を伸縮させる振動子を備えたことを特徴とする薄膜表面の塵埃除去装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、
前記伸縮付与手段は、薄膜の走行を案内するローラの断面がカム形状であることを特徴とする薄膜表面の塵埃除去装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、
前記伸縮付与手段は、ローラに案内されて走行する薄膜を加熱、冷却して伸縮させる加熱冷却手段を備えたことを特徴とする薄膜表面の塵埃除去装置。
【請求項6】
請求項5に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、
前記加熱冷却手段は、ローラに案内されて走行する薄膜に熱風と冷風を吹き出す吹き出口からなることを特徴とする薄膜表面の塵埃除去装置。
【請求項7】
請求項5に記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、
前記加熱冷却手段は、薄膜の走行を案内する一部のローラを加熱・冷却する加熱、冷却用コイルからなることを特徴とする薄膜表面の塵埃除去装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の薄膜表面の塵埃除去装置において、
前記捕捉手段は、薄膜から剥離した塵埃を吹き飛ばす清浄空気吹出し装置と、塵埃を吸引する塵埃吸引装置とから構成されたことを特徴とする薄膜表面の塵埃除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−24658(P2012−24658A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163059(P2010−163059)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】