薬剤を腹部へ送達させるための装置及び方法
【課題】動物の体腔、体空間又は体表面に送達させる気体を処理する装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る装置は、入口及び出口を有するチャンバーを規定するハウジングを備える。1つ又は複数の薬剤が、チャンバー内を流れるガス流に取り込まれ、前記薬物はガス流によって動物へ運ばれる。また、送気装置と前記体腔、体空間又は体表面との間の経路の少なくとも一部を構成する少なくとも1つの液体流路を規定する、少なくとも1つの構造体に結合される薬剤チャンバーを使用することができる。
【解決手段】本発明に係る装置は、入口及び出口を有するチャンバーを規定するハウジングを備える。1つ又は複数の薬剤が、チャンバー内を流れるガス流に取り込まれ、前記薬物はガス流によって動物へ運ばれる。また、送気装置と前記体腔、体空間又は体表面との間の経路の少なくとも一部を構成する少なくとも1つの液体流路を規定する、少なくとも1つの構造体に結合される薬剤チャンバーを使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の体腔、体空間及び体表面へ送達される気体の処理に関し、詳細には、薬剤がガス流によって動物に搬送されるように、気体を1つ又は複数の薬剤で処理するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な目的のために、気体を患者の体内へ注入することは周知である。気体は、特定の目的で、柔らかい表面を膨張させるために又は圧力を生成するために、腹部などの体腔内へ注入される。気体を注入して腹部を膨張させて気腹が形成されると、検査、治療、除去及び外科的処置を行うための空間が得られる。気体の注入によって形成された空間は、腹腔鏡手術の基本要素である。ガス流及び圧力によって形成された身体の空間の内部では、組織表面及び器官を安全に露出させることができ、前記空間内には診断及び治療目的に使用される装置が挿入される。前記目的の例としては、これらに限定されるものではないが、例えば、凝固、切開、把持、固定、縫合、ステープル、移動、縮退、及び細切除去などがある。ガス流の性質は、ろ過、加熱及び加湿によって、改質及び調節することができる。米国特許第5,411,474号及び前述の米国特許出願は、気体を上記のような方法によって調節する方法を開示している。
【0003】
しかし、さらなる改善及び進歩の余地がある。体腔、体空間又は体表面に気体を注入する際に、薬理学的に活性又は不活性な、有機又は無機の薬剤を追加することによって、組織治癒の向上、感染の減少、癒着形成の減少、免疫応答の修飾、腫瘍の治療、特定の疾患過程の治療、痛みの軽減、及び診断の支援を行うことができる。そのため、気体を上記のような方法で処理するのに適した装置及び方法が求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
簡潔に説明すると、本発明は、体腔、体空間又は体表面に送達させる気体を、1つ又は複数の薬剤で処理する方法及び装置に関する。前記気体は、気体源から前記装置に供給される。前記装置は、入口(前記気体源からガス流が供給される入口)及び出口を有する少なくとも1つのチャンバーを規定するハウジングを備える。所定量の1つ又は複数の薬剤がチャンバー内に放出される。放出された薬剤は、送達装置によって、動物に送達されるガス流と混合される。ガス流は、前記ハウジング内で、随意的に、加湿及び/又は加熱される。
【0005】
本発明の上記の及び他の目的及び利点は、添付した図面を参照しつつ行う以下の説明によって明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<定義>
【0007】
本明細書中及び特許請求の範囲では、単数は複数の場合も含む。
【0008】
ここで使用される、「所定の温度」又は「所定の温度範囲」は、ユーザによって予め設定された又はプログラムされた処置中の温度である。例えば、望ましい温度範囲は、体の生理的温度、すなわち約35〜40℃である。後述するように、気体の温度は、「ダイアル」型又は他の型の調節器によって調節される。
【0009】
ここで使用される「加湿溶液」という用語は、水、生理食塩水、乳酸加リンガー液、任意の緩衝化した液体若しくは溶液、水溶液、非水性溶液、水性若しくは非水性溶液と他の物質との組み合わせ、又は、水性若しくは非水性溶液と他の物質を含んでいるゲル物質を意味する。
【0010】
ここで使用される「薬剤」という用語は、組織の治癒に効果がある又は治癒を促進する、感染を減少させる、癒着形成を減少させる、免疫応答を修飾する、特定の疾病過程を治療する、痛みを和らげる、又は他の治療若しくは診断目的に使用される、任意の有機物質、無機物質、生物学的な不活性若しくは活性物質を意味する。これらのものとしては、固相、液相若しくは気相の物質、水性、コロイド性及び非コロイド性の物質、懸濁液、混合物、溶液、ヒドロゲル、凍結乾燥物質、疎水性、親水性、アニオン性、カチオン性及び表面活性物質、外科用補助剤、抗凝血剤、抗生物質、免疫促進剤、免疫抑制剤、成長抑制剤、成長促進剤、診断用物質、麻酔剤、及び鎮痛剤がある。また、これらの物質は、そのまま使用してもよいし、これらに限定されるものではないが、例えば、アルコール、エーテル、エステル、脂質及び溶剤などの他の物質に溶解させてもよい。
【0011】
前記薬剤は、例えば粉末状に乾燥させてもよい。治療又は診断目的でガス流によって体腔内又は体表面に搬送することができる薬剤ならいずれでも、本発明によって送達させることができる。ただし、本発明は、上記の薬剤の例に限定されるわけではない。さらに、ガス流は、本発明によって、任意の種類又は組み合わせの薬剤で処理することができる。一例としては、乾燥を防止するためにガス流を加湿する加湿溶液、感染を減少させる抗生物質、炎症を抑える抗炎症性薬、及び接着を防止し治癒を向上させる接着防止剤によって処理することができる。前記接着防止剤としては、例えば、ML Laboratories社製のAdept(登録商標)、Gliatech社製のAdcon(登録商標)、及びAtrix Laboratories社製のAtrisol(登録商標)などがある。
【0012】
ここで使用される「気体(ガス)」という用語は、自然発生した又は製造された又は容器内に入れられた又は作成された、任意の気体、又は任意の比率の混合気体を意味する。
【0013】
ガス流の処理に関連して使用される「処理」という用語は、固相薬剤の場合はガス流がフューム(fume)若しくはダスト(dust)となるように、液相薬剤の場合はガス流がミスト若しくはスプレーとなるように、ガス流に1つ又は複数の薬剤を注入又は放出することを意味する。ある実施形態では、薬剤は液体形態なので、薬剤は容器から取り込まれる又は取り出される。他の実施形態では、薬剤はガス流へ注入又は放出される。一般に、1つ又は複数の薬剤で処理されるガス流に対しては、加湿も行われる。
【0014】
「腔」又は「空間」という用語は、例えば、胸内腔、心膜、腹膜腔若しくは腹部、複数の腔、膝の空間、肩の空間、眼球、胃、及び肺などの、任意の体腔又は空間を意味する。
【0015】
「エアロゾル」という用語は、液体又は固体粒子が気体中に拡散したものを意味する。
【0016】
「スプレー」という用語は、噴霧器から噴射された液体の噴流を意味する。
【0017】
「ミスト」という用語は、気体中に拡散した粒子状の液体を意味する。
【0018】
「霧」という用語は、気体中に拡散した液体微粒子が凝縮した蒸気を意味する。
【0019】
「蒸気」という用語は、物質分子が拡散した気体を意味する。
【0020】
本発明の基本理念は、薬剤がガス流に能動的又は受動的に注入され、流動力学、蒸気圧及び/又は蒸発率の結果としてガス流の一部を構成するように、ガス流を1つ又は複数の薬剤によって処理することである。そのため、例えば特定の治療、診断又は予防方法などに関連する気体送達によって得られる結果を向上させる目的で、ガス流にユーザが所望する添加物を含めるために、前記ガス流は調節される。
【0021】
「体表面」という用語は、体内若しくは体外の、又は、元々露出している若しくは外科的処置によって露出させた、身体の任意の表面を意味する。
【0022】
図1を参照して、符号100は、気体を処理又は調節するための装置を示す。装置100は、例えば注入器などの気体調節器10から、気体を受け取るように構成される(高圧又は低圧で、高流速又は低流速で)。装置100は、気体処理部120と、随意的なフィルタ110と、随意的な制御モジュール140とを備える。装置100の様々な構成要素は、チューブによって互いに接続される。特に、第1のチューブ160は、雄型ルアーロック166(又は気体調節器10の出口と適合する他の適切なアダプタ)を介して、気体調節器10の出口とフィルタ110の入口とを接続する。第2のチューブ162は、フィルタ110の出口と気体処理部120の入口とを接続する。第3のチューブ164は、雄型ルアーロック168(又は他の適切な接続アダプタ)を介して、気体処理部120の出口と図示しない気体送達装置とを接続する。前記気体送達装置としては、例えば、トロカール、ベレス針(Veres needle)、内視鏡、又は、体腔若しくは空間に入れられるチューブなどがあり、処理された気体を動物の体内に注入する。また、気体を体表面に送達させる場合は、前記気体送達装置は、気体の流れ(ガス流)を体表面に導く又は拡散させるように成形、形成又は構成される。
【0023】
気体送達を必要とする処置を行う際に、気体調節器10及び制御モジュール140を動物から離れたて使い勝手の良い位置に配置することができるように、チューブ160,162,164は可撓性及び十分な長さを有することが好ましい。ガス流の送達時の温度は要求範囲内にすべきなので、装置100の使用時は、気体処理器120を気体が送達される位置のすぐ近傍に配置することが好ましい。
【0024】
フィルタ110は、随意的な構成要素であり、その細孔サイズが、好ましくは、気体供給シリンダ又は気体調節器10の内部で発生する全ての固形微粒子及び細菌性若しくは真菌性物質を排除することができるくらい小さい(すなわち、0.5ミクロン以下、好ましくは約0.3ミクロン)、高性能な疎水性フィルタ(例えば、Gelman Sciences Metricel M5PU025)から構成される。好ましいフィルタとしては、例えば、ガラス繊維型フィルタ(例えば、Metrigard by Gelman Sciences or Porous Media Ultraphobic filter, Model DDDF 4700 M02K-GB)などの疎水性フィルタがある。他の適切なフィルタとしては、例えば、ポリサルフォン(Supor, HT Tuffrin, Gelman Sciences)や、混合繊維素エステル(GN-6 Metricel, Gelman Sciences)などがある。フィルタ110の細孔サイズが0.1ミクロン以下になると、気体の圧力損失が大きくなり、流速が著しく減少する。実施しようとする処置が、比較的高圧力及び/又は高流速の気体を動物に送達させる必要がある場合(例えば、腹腔鏡検査の場合)は、細孔サイズを0.2ミクロン以下にしないことが好ましい。疎水性フィルタは、腹水又は洗浄水の誤った吸引又は吸い上げに起因して生じる水圧によって裂ける可能性が低いの。よって、親水性フィルタよりも疎水性フィルタを用いることが好ましい。
【0025】
ある用途では、気体調節器120の出口から動物の内部の導管又は連結部までの気体移送距離が最短になるように、気体調節器120を気体送達装置のすぐ近傍に配置することが望ましい。このように配置することの目的は、動物に送達させる気体の温度及び水分含有量を、体内又は他の体表面の生理的温度等と十分に近い温度等に保つことにある。すなわち、ある用途では、本発明に係る装置が、きわめて小型であり動物のすぐ近くに配置することが可能な高性能な処理チャンバーを備えていることにより、気体が動物に送達されるまでに熱力学的に冷却されることを防止する。
【0026】
制御モジュール140は、電気ハウジング210の内部に収容され、絶縁された電気ケーブル170の中に含まれる何本かのペア線によって気体調節器120に接続される。特に、電気ケーブル170の一端には、制御モジュール140用の電気ハウジング210の回路コネクタ212と電気的に接続するコネクタ172が設けられる。電気ケーブル170の他端は、密閉された電気接続端子174によって、気体処理部120に電気的に接続される。電気ケーブル170は、プラスチックテープ又はクリップ176によって、第2のチューブ162に取り付けられる。あるいは、電気ケーブル170は、熱融着、押出成形、超音波溶接、若しくは接着剤によって第2のチューブ162に取り付けられる、又は、第2のチューブ162の内部に挿入される。
【0027】
制御モジュール140及びそれに関連する気体調節器120内の構成要素は、AC/DC変換器180を電源とすることが好ましい。AC/DC変換器180は、プラグコネクタ182によって、制御モジュール140内の回路の電源コンセント214に接続される出力端子を有する。また、AC/DC変換器180は、標準的なAC電源出力端子に接続することができる、標準的なAC電源出力プラグ184を有する。例えば、AC/DC変換器180は、手術室の他の装置にも使用されるAC電源コードに接続される。あるいは、装置100の電力は、電池や太陽光電源から供給される。他の方法としては、制御モジュール140の内部に、DC信号ではなく、AC信号で動作する回路を設ける方法がある。この場合、制御モジュール140を、AC出力によって直接的に駆動させることができる。制御モジュール140、並びに、気体処理部120の内部の加熱及び加湿要素の詳細については後述する。
【0028】
ある実施形態では、気体処理部120は、薬剤及び/又は加湿溶液の供給を受け取ることができる充填口190を有している。充填口190には、例えば所定量の液体薬剤が充填されている注射器200が挿入され、気体処理部120に前記液体薬剤を初充填又は再充填する。装置100は、初回の充填が不要なように、気体処理部120に薬剤及び/又は加湿溶液が予め充填された状態で販売され得る。
【0029】
図2を参照しつつ、気体処理部120について詳細に説明する。気体処理部120は、気体入口124と気体出口126を有するハウジング122を備えている。ハウジング122は、チャンバー128を規定する。チャンバー128は、入口124から供給された気体を薬剤によって処理するための処理サブチャンバーを含む。また、いくつかの実施形態では、チャンバー128は、加熱及び加湿を実質的に同時に行う構成要素、並びに、チャンバー128から排出される際の気体の温度を検出する温度検出手段136及び相対湿度を検出する相対湿度検出手段138を含む。
【0030】
特に、図2に示す実施形態では、チャンバー128の内部には、液体を保持する又は薬剤を吸収する1つ又は複数の層130,131,132から成るサブチャンバーが設けられている。当然のことながら、液体保持層130,131,132の数、間隔及び吸収能力は、目的によって異なる。この3つの層は、一例として示しているのにすぎない。層130,131,132の材料としては、例えばレーヨン/ポリエステルなどの、任意の好ましい液体保持又は吸収材料(例えば、Johnson & Johnson Medical, Incにより製造され販売されるNU GAUZE(TM))を用いることができる。選択された材料の細孔サイズは、液体保持能力と圧力損失とのバランスを考慮して選ぶ必要がある。細孔サイズを大きくすると、気体をエアロゾル化すべく気体と接触させるための、液体保持能力が大きくなる。
【0031】
処理サブチャンバーの他の形態は中空のチャンバーから成り、反対端に気体を通過させるための半透性膜を有するチャンバー128(吸収層を有さない)内に、液体が入れられるサブコンテナ又はサブチャンバーが設けられる。チャンバー内の薬剤は、随意的に、チャンバーの周囲に設置された加熱ジャケットによって加熱される。
【0032】
気体処理部120の内部に設けられる加熱手段は、少なくとも1つの加熱素子134から構成される。加熱素子134は、ハウジング122の内部に、例えば吸収層130,131の間に設置される。加熱素子134は、例えば、電気抵抗線である。加熱素子134は、複数の吸収層の間に配置する、又は吸収層の材料内(繊維内)にエンメッシュ(enmesh)することが好ましい。加熱素子134は、制御モジュール140から送信される加熱制御信号の制御下で、入口124から供給された気体を加熱する。前記加熱は、気体がチャンバー128を通過する際に、気体の処理と実質的に同時に行われる。また、チャンバー内に、さらなる加熱素子を設置することもできる。
【0033】
気体処理部120から排出される際の気体の温度及び湿度を検出するために、温度センサ136及び相対湿度センサ138が設置される。温度センサ136は、チャンバー128内の気体流路の任意の場所に配置することができるが、加熱素子134の下流における複数の液体保持層の間に配置することが好ましい。温度センサ136は、サーミスタ(例えば、Thermometrics MA100 Seres chip thermistor、又はThermometrics Series BR23, Thermometrics, Inc., Edison, New Jersey)である。温度センサ136の誤差範囲は、約0.2℃であることが好ましい。本発明では、装置のその場所における気体を処理した際の温度変化が修正され、エンタルピー変化と相殺されるので、気体の温度は気体を処理した後(及び、随意的に加湿された後)に検出することが好ましい。
【0034】
湿度センサ138は、チャンバー128から排出される気体の流路上に配置される。湿度センサ138は、加熱素子134の下流における複数の液体保持層の間、又は、前記吸収層の下流におけるハウジング122の出口126の近傍に配置されることが好ましい。湿度センサ138は、前記層と接触しないことが好ましい。図2に示す実施形態では、湿度センサ138は、複数の吸収層の終端側に位置し、ハウジング122の内部に広がる多孔性のメッシュ(プラスチック又は金属)層133によって、液体保持層132から隔てられている。湿度センサ138は、実際に、多孔性メッシュ層133と接触しておらず、前記層133から十分に離間している。
【0035】
湿度センサ138は、ある実施形態では、湿度の変化に応じて電気容量が変化する、湿度に敏感な電気容量式センサ(例えば、Philips Corporation製の電気容量式湿度センサ)である。湿度センサ138は、気体湿度をモニタリングすべく、及び、気体処理部120(すなわち、層130、131及び132)に残っている加湿溶液の量を検出すべく、チャンバー128を通過する際の気体の相対湿度を測定する。後述するように、ある実施形態では、湿度センサ138には、計時/除算集積回路(IC)145(図5参照)が接続される。集積回路IC145は、ハウジング122内の、湿度センサ138と実質的に同一の場所に配置されることが好ましい。気体の湿度を測定するための他の測定手段も、本発明の範囲に含まれる。
【0036】
図2に示した気体処理部を使用して、気体を1つ又は複数の薬剤によって処理する方法の1つとしては、注入口190を介して注射器200からチャンバー128の内部に液体薬剤を注入して、層130〜132の1つに吸収させる方法がある。ガス流が層130〜132を通過すると、ガス流は前記薬剤によって処理される。その結果、前記薬剤を、気体処理部120から動物に搬送することができる。チャンバー128内に導入することができる薬剤の量は、使用される吸収パッドのサイズ及び種類に依存する。また、大きいサイズの吸収パッドに対応すべく、チャンバー128のサイズを大きくすることにより、薬剤の導入能力を高めることができる。
【0037】
本発明のいくつかの他の実施形態について、図3〜9及び図12〜15を参照しつつ説明する。これらの実施形態では、気体処理部120のハウジング122を通過するガス流を1つ又は複数の薬剤で処理するのに効果的な、異なる構造のハウジング122が示されている。また、これらの実施形態では、薬剤を収容し、その薬剤を気体処理部120のチャンバー内のガス流に放出するための、異なる種類の容器が示されている。
【0038】
図3及び4は、例えばハウジング122の特定の長さ部分にまで延びた(ハウジングの全長に渡って延びる必要はない)3つのチャンバー128A、128B及び128Cなどの、複数のチャンバーを有するハウジング122の実施形態を示している。これらのチャンバーは、壁又はパーティション202、204及び206によって隔てられている。チャンバー128A、128B及び128Cには、それぞれ、外付けのバッグや注射器などの各供給源からの薬剤の供給を受け取る充填口190A、190B及び190Cが設けられる。薬剤は、加圧下で、各充填口を介してチャンバーに送達される、又は充填口からチャンバー内に挿入されたバッグの小さい開口から放出される(図5及び6)。別の実施形態では、各チャンバー128A、128B及び128Cは、図2に示した実施形態と同様に、所定量の薬剤を吸収する1つ又は複数の吸収パッド又は吸収層をその内部に有する。さらなる別の実施形態では、異なる薬剤が充填された各チャンバーに、半透性の分離膜が設けられる。
【0039】
各チャンバーには、異なる種類の薬剤を充填することができる。例えば、チャンバー128Aに加湿溶液を充填し、チャンバー128Bに薬剤Aを充填し、チャンバー128Cに薬剤Bを充填することができる。図3及び4には図示していないが、図3及び4に示すハウジングの実施形態では、随意的に、図2に示した加熱素子、温度センサ及び相対湿度センサを様々な配置で含むことができる。図3及び4の実施形態では、ガス流がハウジング122を通過するとき、ガス流は、チャンバー128Aから加湿溶液を取り込み又は取り出し、チャンバー128Bからの薬剤Aと混合され、チャンバー128Cからの薬剤Bと混合される。したがって、動物に送達するためにハウジング120から排出されるガス流は、加湿される及び薬剤で処理される。
【0040】
図5及び6は、ガス流によって搬送される薬剤がバッグに収容されている、別の実施形態を示している。図5では、例えば、それぞれ所定量の薬剤を収容する2つのバッグ220及び230が示されている。この装置は、バッグ220及び230に所定量の薬剤を予め装填又は充填した状態で出荷することができる、又は、使用する前に所定量の薬剤を充填することができる。バッグ220及び230は、例えばポリエチレン又は他の同様の材料などの、可撓性材料から作成される。ある実施形態では、バッグ220及び230は、その中に収容された薬剤が、バッグの表面を通ってハウジング122を通過するガス流によって取り込まれるように、半透性の膜材料から形成される。他の実施形態では、ハウジング122内のバッグ220,230の一方の端部は、それぞれ、制限オリフィス、ノズル又は孔222及び232(前記薬剤をガス流と接触させて混合させるためのスプレー孔又は噴霧孔)である。バッグ220,230の他方の端部は、それぞれ、所定量の薬剤のバッグ220及び230への導入を可能にする、随意的な充填口224及び234である。ハウジング122には、バッグ220及び230の全長をチャンバー内に入れるための開口が設けられる。
【0041】
バッグが充填されている場合、バッグはチャンバー128内部で膨張する。バッグ220及び230内に充填された所定量の薬剤の圧力及び/又は孔222及び232での毛管現象は、薬剤を孔222及び232から外に滴下させる。このことにより、薬剤は、チャンバー128を通過するガス流によって取り込まれ又は取り出され、ハウジング122の出口ポートから搬出される。バッグ220及び230を半透性の膜材料から形成する実施形態では、バッグ内に充填された所定量の薬剤の圧力が、薬剤が膜を介して取り込まれることを促進する。バッグ220及び230は、それらが充填され膨張したときに、実質的にチャンバーの所定の領域内にとどめられ、他のバッグを通るガス流を妨げないように、チャンバー128内に配置される。例えば、加熱コイル124又は吸収パッドを使用して、チャンバー128内でバッグ220と230を隔てることができる。
【0042】
図5は、2つのバッグ220及び230のみを図示しているが、当然のことながら、ガス流によって搬送する薬剤の種類の数に応じて、1つ又は複数のバッグを使用することができる。
【0043】
図6は、図5の実施形態の変形例を示す。図6の実施形態では、バッグ220及び230は、ハウジング122の外側又は外部に配置される。この実施形態では、ハウジング122に開口が設けられ、バッグの孔222及び232は、ハウジング122の前記開口のちょうど内側に配置される。薬剤は、孔222及び232から連続的に送出され、チャンバー128を通過するガス流に取り込まれる又は取り出される。さらに、バッグ220及び230内の薬剤は、蒸気圧の変化によって孔222及び232からガス流に取り込まれるという自然的な傾向がある。その理由は、ガス流は比較的乾燥しているが、バッグ220及び230内の薬剤はある程度の水分を含有しているため、蒸気圧平衡を達成しようとして、水分を含有している湿潤薬剤がバッグから取り込まれるという自然的なメカニズムが生じるからである。ガス流の流速が速いほど、バッグ220及び230からガス流に取り込まれる薬剤は少なくなる。図5の実施形態にも、同じ動作理論が当てはまる。
【0044】
ハウジング122の外側に配置した場合も、バッグ220及び230は、図5を参照して説明したのと同様な方法で、各々の充填口224及び234を介して充填することができる。バッグの数は、特定の用途に応じて変更することができる。図5及び6は、一例として、2つのバッグを示しているだけである。ハウジング122の加熱、加湿及び検出に関するその他の全ての機能を、図5及び6に示した実施形態に適用することができる。
【0045】
図5及び6に示した実施形態のさらなる変形例は、バッグから、ハウジング122の内部に配置された随意的な吸収パッド130まで延びる、随意的なチューブ部材250を備えている。
【0046】
1つ又は複数の薬剤をガス流中に放出するさらなる実施形態を、図7及び8に示す。図7では、ハウジング122のチャンバー128内に、細長いチューブ部材300が配置されている。チューブ部材300は非常に長く、チャンバー128内の全域を蛇行している(図7では図示を単純化している)。チューブ部材300としては、例えば、MicroLumen社(フロリダ州タンパ)製のポリアミドチューブ製品を用いることができる。チューブ部材の重要な特徴は、チューブ部材300が搬送することが可能な薬剤の量を最大化するために、チューブ部材300の側壁の厚さができる限り薄くされたことである。チューブ部材300の先端又は末端は、ガス流内に薬剤を連続的に送出又は排出する、制限オリフィス又は孔310である。そして、各々が異なる種類の薬剤を収容する、複数のチューブ部材が設置される。また、チューブ部材300に所定量の薬剤を供給するために、ハウジング122のすぐ外側に位置するチューブ部材300の近位端には、充填口312が設けられる。
【0047】
図8は、図7に示した実施形態の変形例を示す。図8の実施形態は、薬剤をチャンバー128内に放出する1つ又は複数の孔又はミシン目410がその長手方向に沿って形成されたチューブ部材400を備えている。チャンバー128を通過するガス流は、孔410から薬剤を取り込み又は取り出し、ガス流によって薬剤を搬送する。チューブ部材400は、チューブ部材300の充填口312と同様の充填口412を有する。また、複数の種類の薬剤をガス流に放出するために、チャンバー内に複数のチューブ部材400を設けることもできる。各チューブ部材400の長さ、並びに、孔412の数及びサイズは、チャンバー128を通過するガス流に取り込まれる又は取り出される、異なるチューブ部材400からの異なる薬剤の速度を制御すべく選択される。
【0048】
図2〜8に示した実施形態では、気体処理部のハウジング122のチャンバー128のサイズは、使用目的、ガス流、薬剤の種類、吸収パッドの有無及び吸収パッドの枚数などに応じて変更することができる。本発明を実施するためのチャンバーのサイズは、限定されるものではなく、比較的小さい又は比較的大きいという制限はない。
【0049】
図9は、さらなる別の実施形態を示している。図9の実施形態が備えるインクジェット印字ヘッドカートリッジ500は、1つ又は複数の所定量の薬剤を含有する蒸気泡を、ハウジング122のチャンバー128内に放出するために使用される。インクジェット印字ヘッドカートリッジ500は、ヒューレット・パッカード社、キャノン社などが販売するインクジェットプリンタで使用されるような、周知のインクジェット印字ヘッドである。
【0050】
当該技術分野では周知のように、インクジェット印字ヘッドカートリッジ500は、貯留容器510、印字ヘッド520、及び複数のコンタクトパッド530を備える。カートリッジ500の導電配線は、コンタクトパッド530によって終端される。コンタクトパッド530は、一般に、プリンタと相互接続するように設計されている。そして、コンタクトパッド530が、プリンタの電極と接触し、外部で生成された通電信号を印字ヘッド520に供給することによって、インクを紙に吹き付ける。サーマルインクジェット印字ヘッドは、複数の加熱器の表面でインク温度を過熱限界まで上昇させることによって、蒸気泡を生成する。これと同じ方法を使用して、1つ又は複数の薬剤の蒸気泡を生成することができる。印字ヘッド520は複数のノズル522を有し、前記加熱器に電圧が印加され、貯留容器に貯留された所定量の薬剤が加熱されると、ノズル522から蒸気泡が放出される。
【0051】
本発明では、インクジェット印字ヘッドカートリッジ500は、コンタクトパッド530に適合する接点を有するコネクタ610を介して、制御回路600に接続される。制御回路600は、図1に示した制御モジュール140の内部に含めることができ、電気ケーブル170の中に含まれる1つ又は複数の導電体によってカートリッジ500に接続される。貯留容器510には、チャンバー128の内部に放出される、1つ又は複数の所定量の薬剤が充填される。例えば、カラーインクジェット印字ヘッドカートリッジは、3色の各インク用の、複数のチャンバー又は貯留容器を備えている。これと同一種類の装置を使用すると、インクジェット印字ヘッドカートリッジは、制御された量で個別に又は同時にチャンバーに送達される、所定量の複数の異なる種類の薬剤を含むことができる。コネクタ610を介してカートリッジ500に接続される制御回路600は、印字ヘッド520内の加熱器を駆動する、及び1つ又は複数の薬剤の蒸気泡をノズル522からチャンバー内に放出するための適切な制御信号を生成する。
【0052】
1つ又は複数の薬剤がチャンバー128内に放出されると、チャンバーを通過するガス流が、薬剤をハウジング122の出口ポートから搬出して動物へ搬送する。個々の薬剤はそれぞれ、チャンバー128内に異なる速度又は量で放出することができる。さらに、チャンバー128内の別個の各サブチャンバーに、異なるインクジェット印字ヘッドカートリッジを設け、動物に送達する前の所定の期間、薬剤が混合されないようにすることも可能である。
【0053】
再び図2を参照して、気体処理部120のハウジング122内部の構成要素への電気的接続は、以下のとおりである。温度センサ136、加熱素子134及び相対湿度センサ138・計時/除算器145の各装置は、接地又は通電導体(特に図示せず)と接続される。ワイヤ175(プラス側の導線)は、加熱素子134と電気的に接続され、ワイヤ176(プラス側の導線)は、温度センサ136と電気的に接続される。また、3本のワイヤ177A、177B及び177Cは、相対湿度センサ138・計時/除算回路と電気的に接続される。ワイヤ177AはDC電源を計時/除算器145に供給し、ワイヤ177Bは許可信号を計時/除算器145に供給し、ワイヤ177Cは計時/除算器145から出力信号(データ)を搬送する。全てのワイヤは、絶縁ケーブル170から接続端子174内に供給され、ハウジング122の小さな孔を介してチャンバー128内に入る。接続端子174は、ケーブル170の周囲の開口178においてを密閉される。
【0054】
充填口190は、ハウジング122の側方延長部139に取り付けられる。充填口190は、再密閉可能部材194を有する円筒形の本体192を備える。再密閉可能部材194には、注射器又は類似装置を、その先端の外側周囲を密閉した状態で挿入することができる。このことにより、前記注射器等の中に既に充填された液体を放出することなく、所定量の液体薬剤又は加湿溶液を、チャンバー128の内部に送達させることができる。再密閉可能部材194としては、例えば、Baxter社製のBaxter InterLink(登録商標)インジェクションサイト、2N3379を用いることができる。また、充填口としては、注射器又は類似装置を挿入可能な、一方向弁、密閉可能なポート、スクリューキャップ、溝付キャップなどを用いることができる。前記類似装置としては、例えば、B. Braun Medical社製のSafeline(登録商標)インジェクションサイト、部品番号NF9100、又は、注射器の挿入及び収容された液体又は気体の逆流の防止が可能な他のカバー材料若しくは部材がある。気体処理部120で処理される気体の湿度が、所定の又はユーザがプログラムした相対湿度を下回ると、制御モジュール140が警告を発する(詳細については後述する)。
【0055】
別の形態では、又は上述の検出及び監視機能に加えて、液体薬剤及び/又は加湿溶液用の補助又は予備供給容器が設けられる。再び図1を参照して、補助供給容器のある形態は、装置100からだらりと垂れ下がった容器800である。容器800は、アクセスチューブ810によって充填口190に接続される。容器800は、例えば静脈内輸液バッグなどのバッグであり、アクセスチューブ810は静脈注射タイプのチューブである。
【0056】
補助供給容器の他の形態は、装置100の一部に取り付けられる容器850である。容器850は、例えば、チューブ状の容器、バッグ、注射器又はタンクである。容器850は、気体処理部120の近傍で、チューブ162に取り付けられる、又はストラップで固定される。別の形態では、容器850は、気体処理部120のハウジング122の外側に、ストラップで固定される。容器850は、上述のアクセスチューブ810の場合と同様に、アクセスチューブ860によって充填口190に接続される。
【0057】
アクセスチューブ810及び860は、その先端に透過膜(図示せず)を有しており、充填口190を貫通して、気体処理部120のハウジング122のチャンバー128に接続される。また、アクセスチューブ860の代わりに、容器850における充填口190に近接する側の端部に注射器200の先端部材と同様の先端部材を設け、充填口190に直接的に挿入して充填口190を貫通させることもできる。
【0058】
容器800及び850は、当該技術分野では周知の技術を用いて、予め充填する又は使用する前に充填することができる。例えば、容器850は、容器850に液体を注入するための注入部位862を有している。
【0059】
補助供給容器800及び850のアクセスチューブ810又は860(又は容器850と一体になった貫通用の先端)は、容器中の液体を毛管力によって層130〜132の1つに放出すべく、層130〜132の1つと接触できるように、充填口190を通り抜けて十分に長く延びることが好ましい。また、アクセスチューブ810又は860(又は容器850と一体になった貫通用の先端)の長さを層130〜132の手前までの長さとし、ハウジング122を通過するガス流により生成される圧力差によって、これら部材の端部から液体薬剤及び/又は加湿溶液を放出させて気体の処理を行うようにしてもよい。
【0060】
図2に示す別の変形例では、延長チューブ870によって、アクセスチューブ810又は860(又は容器850と一体になった貫通用の先端)が終端する充填口190から、チャンバー128内部の処理サブチャンバーまで導き、1つ又は複数の層130〜132に接触させている。液体薬剤及び/又は加湿溶液は、延長チューブ870の端部から層130〜132の1つに、継続的に放出される。
【0061】
いずれの形態の補助供給容器も、基本原理は同じである。補助供給容器は、充填口190を介してチャンバー128内の処理サブチャンバーに接続され、処理サブチャンバー(例えば1つ又は複数の層130、131又は132)に常に補給を行う。処理サブチャンバーは、予め充填された又は使用前に充填された、初期量の液体薬剤及び/又は加湿溶液を有する。そして、チャンバーを通過するガス流によって、補助供給容器からの補助供給が処理サブチャンバーに常に供給されるので、処理サブチャンバーは常に充填される。そのため、気体の十分な加湿及び/又は処理に要する全時間は、全ての又はほぼ全ての気体送達用途に適合する存続時間まで長くなる。その結果、送達される気体の湿度の低下を考慮する必要はない。補助供給容器は、全体の処置に渡って気体の加湿及び/又は処理を提供するための補助機能を果たす。したがって、装置100のある形態では、ここで記載した、湿度及び温度の検出及び監視機能、又は再充電警報を備える必要はない。また、補助供給容器の代わりに又は補助供給容器に加えて、特定の用途に有用であり得る別の種類の補助を設けることもできる。
【0062】
気体処理部の望ましい幅及び直径は、使用目的、気体発生源からのガス流の速度、及び維持されるべき圧力(チャンバー128の長さよりも、チャンバー128の直径の方により大きく影響される)などの、複数の要素によって決定される。当業者であれば、ここで与えられた教示及び例示から、過度の実験を行うことなく、チャンバー128の適切な寸法を容易に決定することができるであろう。しかし、装置を起動する又は装置に関する要求(例えば、流速又は圧力)を変更する場合、適切な気体温度又は所望する温度を達成すべく気体の温度を検出し加熱素子を調整するためのラグタイムはわずか10分の数秒しかないことに留意されたい。このような高速の起動時間は、極めて有益である。
【0063】
図10は、加熱素子134の詳細を示している。加熱素子134は、複数回(例えば、6〜8回)の巻きを有する同軸コイル構造の電気抵抗線であり、ハウジング128に配置される。あるいは、第2の加熱素子134´が設けられる。加熱素子134´は、そのコイルが、第1の加熱素子134のコイルに対して、チャンバーを通過するガス流の方向にオフセットされるように配置される。2つ又は複数の加熱素子を用いる場合、それらが気体処理部のチャンバー内で、互いに約3〜4mmの距離で離隔して配置されることが好ましい。第1の加熱素子134及び第2の加熱素子134´のコイルの巻き方向は、互いに反対方向にすることもできる。このようにすると、チャンバーを通過するガス流と加熱素子との接触が最大化する。加熱素子134は、コイルを使用しない他の構造を用いることもできる。
【0064】
図11は、気体処理部120の他の形態を示している。ハウジング122の注入口及び/又は出口には、気体処理部120に供給される気体を全体に拡散しやすくするための、溝付の表面123が設けられている。溝付の表面123は、チャンバー128を通過するガス流の動態を改善し、ガス流がチャンバー128を通過する際に、均一に加熱及び加湿されるようにする。
【0065】
図12及び13は、ガス流を固相薬剤で処理するための装置の実施形態を示す。図12は、固相薬剤の容器700を示す。容器700は、例えば動力内蔵式であり、気体処理部のハウジング122のチャンバー128内に配置される。容器700は、チェックバルブ710及び加圧器(二酸化炭素カートリッジなど)720を含む。加圧器720が起動すると、容器700内部の圧力が上昇し、チェックバルブ710の付勢を抑えて、薬剤をチャンバー128に放出する。ハウジング122の外側に設けられたボタン730は、ワイヤ又はその他の手段によって加圧器720に接続され、加圧器を遠隔操作によって起動させる。
【0066】
図13は、固相薬剤の容器700が、ハウジング122の外側に配置される場合を示している。容器700のチェックバルブ710は、ハウジング122に設けられた開口を介してチャンバー128の内部に貫通接続している。加圧器を起動させるためのボタン730は、随意的に容器700の外側に配置される。図13に示した構造の動作は、図12に示した構造の動作と同様である。
【0067】
図12及び13に示す実施形態では、固相薬剤がチャンバー128内に放出される速度は、加圧器720によって容器700内で生成される圧力及びチェックバルブ710のサイズに依存する。固相薬剤をガス流に一気に送達すること、又は、固相薬剤をガス流に継続的に送達することが望ましいと思われる。必要ならば、ガス流を長期間に渡って処理するために、別個の圧力補助発生源を容器700に接続させることもできる。いずれの場合でも、ハウジング122を通過するガス流は、固相薬剤を出口ポートから搬出する。
【0068】
図14は、制御モジュール140の詳細を示す。制御モジュール140は、装置100用の監視回路及び制御回路を含む。当然のことながら、装置100のある形態では、湿度(及び加熱)検出、監視、温度制御及び再充電警報機能を含む必要はない。制御モジュール140は、電圧調節器141、マイクロコントローラ142、A/D変換器143、デュアルオペアンプ(以下、「オペアンプ」という。)、モジュール144、及び計時/除算器145を備える。制御モジュール140の監視回路部は、マイクロコントローラ142及び計時/除算器145の組合せからなる。制御モジュール140の制御回路部は、マイクロコントローラ142、A/D変換器143及びオペアンプモジュール144からなる。監視回路は、計時/除算器145が生成する信号に基づいて、チャンバーから排出される気体の相対湿度を監視する。制御回路は、チャンバーから排出される気体の温度を監視し、監視結果に基づいて加熱素子への電力を制御し、気体の温度をユーザがプログラムした又は所定の温度若しくは温度範囲に調節する。チャンバーから排出される気体の温度は能動的に制御されるが、チャンバー内の気体の相対湿度は能動的に制御されない。その代わり、相対湿度を監視し、所定の閾値を下回ったときに警報を発生し、気体処理部120に液体薬剤又は加湿溶液を補給するなどの適切な対応を行うようにする。
【0069】
図14に示すように、複数の構成要素は好ましくは電気ハウジング210(図1参照)の内部に配置され、その他の構成要素は気体処理部120(図2参照)のハウジング内部に配置される。特に、計時/除算器145及びそれに付随する抵抗R4及びR5は、好ましくは、気体処理部120のハウジング122内に、回路パッケージ内に収容された相対湿度センサ138と共に配置される。相対湿度センサ138は、回路パッケージの1つ又は複数の表面上に露出される。より詳しくは、計時/除算器145は、相対湿度センサ138と同一位置に配置される。この構造は、浮遊配線インダクタンス及び浮遊容量によるタイミングエラーを最小限に抑えることができる(センサは、計時/除算器145の能動回路に近接している)。さらに、計時/除算器145及び相対湿度センサ138を同一位置に配置することによって、ワイヤの相互接続が不要となるため、望ましくない信号輻射を防止することができる。
【0070】
電圧調整器141は、AC/DC変換器180(図1)から、制御モジュールのアナログ構成要素に使用するのに適したDC出力(例えば、DC9V)を入力として受け取る。電圧調整器141は、前記電圧を調節して、制御モジュールのデジタル構成要素に使用される低電圧(例えば、DC5V)を生成する。当技術分野では周知のように、電圧調整器141の出力側のキャパシタC1は、様々なAC構成要素をフィルタにかける役割を果たす。また、バッテリ又は太陽光電源から適切なDC電源が提供されることが、参照符号149で示されている。
【0071】
マイクロコントローラ142は、マイクロコントローラIC、PIC16C84であり、システムの動作を制御する。セラミック共振器146(4MHz)は、信号処理機能用のクロック信号を生成するために使用される未加工のクロック信号を、マイクロコントローラ142のピン15及び16に供給する(詳細については後述する)。
【0072】
オペアンプモジュール144は、ワイヤ176を介して、気体処理部のハウジングに取り付けられた温度センサ(サーミスタ)136に接続される。オペアンプモジュール144は、例えば、2つのオペアンプ(以下、「オペアンプA」及び「オペアンプB」という)を有する、低入力オフセット電圧デュアルオペアンプIC、LTC1013である。オペアンプモジュール144のオペアンプAの非反転入力はピン3であり、反転入力はピン2である。オペアンプAの出力は、ピン1である。オペアンプモジュール144のオペアンプAは、抵抗R1及びR2より形成される電圧分配器の出力電圧のバッファとして用いられる。バッファ出力電圧Vxは、オペアンプモジュール144のオペアンプBに印加される。オペアンプBは、ゲインが21.5の非反転オフセット補正アンプとして設定される。また、オペアンプBは、抵抗R3によって調整される温度センサ136の出力(電圧Vy)を入力として受け取る。オペアンプBの出力電圧VOは、ピン7である。出力電圧VOは、21.5Vy〜20.5Vxと等しく、気体処理部のハウジング内の気体温度と反比例する。出力電圧VOの範囲は0〜DC5Vであり、チャンバー内の気体温度によって決定される。
【0073】
A/D変換器143は、アナログデジタル変換IC、ADC0831であり、オペアンプモジュール144の出力VOを、ピン2で入力として受け取る。A/D変換器143は、出力電圧VOを表す複数ビットのデジタル言語(例えば8ビットからなるデジタル言語)を生成して、出力としてピン6からマイクロコントローラ142のI/Oピン8に供給する。マイクロコントローラ142は、I/Oピン10からA/D変換器143のチップ選択ピン1へ制御信号を出力することによって、A/D変換器143にデジタル言語を出力するように命令する。さらに、マイクロコントローラ142は、ピン9からA/D変換器143のクロック入力ピン7へ一連のパルスを出力することによって、A/D変換器143がデジタル言語を出力する速度を制御する。抵抗R1、R2及びR3の「不平衡ブリッジ」の値は、約20〜45℃の気体温度の範囲で、0〜5VのDC出力を生成するように選択される。ブリッジ及びA/D変換器143の基準電圧は同一のDC5V発生源から提供されるので、様々な基準電圧の変化に起因するエラーを防止することができる。
【0074】
計時/除算器145は、例えば、精密計時/除算IC、MC14541である。相対湿度センサ138は、ピン2、並びに、抵抗R4及びR5に接続される。計時/除算器145は、マイクロコントローラ142のピン12から計時/除算器のピン6へ出力された許可信号に応じて、抵抗R4の値、相対湿度センサ138の静電容量(気体処理部のハウジング内部における気体の相対湿度により変化する)、及び所定の除算定数によって決定される速度で発振する出力信号を生成する。除算定数は、例えば256である。具体的には、計時/除算器145の出力信号は方形波であり、おおよそ、1/[256*2.3*R4t*Ct]Hzの周波数で、0V(「低」)乃至5V(「高」)で発振する。ここで、R4tは、例えば56キロオームであり、Ctは、チャンバー内の気体の相対湿度によって決定される相対湿度センサ138のある時間(t)における静電容量である。上述の相対湿度センサは、例えばPhillips Electronics社製であり、10〜90%RH(相対湿度)の範囲を測定することができる。ここで、1%RH当たり0.4+/−0.5pFの感度のとき、43%RHにおけるCtは122pF(+/−15%)である。計時/除算器145の出力信号は、ピン8からマイクロコントローラ142のI/Oピン13へ出力される。したがって、計時/除算器145は、本質的に、相対湿度センサに接続された発振回路であり、相対湿度センサの静電容量に応じた周波数を伴う出力信号を生成する。周波数が可変静電容量によって決定される信号を出力として生成することができる様々な発振回路を、計時/除算器145に用いることができる。
【0075】
マイクロコントローラ142は、気体処理部のハウジング内における気体の相対湿度の測定を、計時/除算器145の出力信号の特性を計時又は計測することにより実行する。具体的には、マイクロコントローラ142は、計時/除算器145の出力信号における1つの位相の継続時間を測定する。例えば、「高」位相は、おおよそ、1/2*[256*2.3*R4t*Ct]である。上述したように、計時/除算器の発振速度は、相対湿度センサ138の静電容量によって決定されるため、前記継続時間は、気体処理部のチャンバー内における気体の相対湿度を示す。例えば、10〜50%及び/又は50%のRHが90%に変化する場合、計時/除算器出力信号の「高」位相の継続時間は13%変化する。マイクロコントローラ142は、このようにして、チャンバーから排出される気体の相対湿度を監視する。そして、マイクロコントローラ142は、相対湿度が所定の閾値を下回ると(対応する計時/除算器145の発振速度の所定の変化により示される)、トランジスタQ3を駆動するための信号(再充電信号)を生成してピン17から出力し、ブザー147などの音響警報装置を起動させる。ブザー147は、気体処理部内の気体の相対湿度が所定の閾値を下回り、気体処理部に液体を補給する必要があることを示す可聴音を生成する。所定の相対湿度閾値は、気体処理部から排出される気体の所望する相対湿度範囲における最低水準に相当し、例えば40%であり得る。所定の相対湿度閾値は、マイクロコントローラ142で調節可能又はプログラム可能なパラメータである。随意的に、マイクロコントローラ142は、発光ダイオード(LED)148Aを発光させるなどの別の警報信号を生成してピン7から出力し、気体処理部内の相対湿度が所定の閾値を下回ったこと及び気体処理部120に液体を補給する必要があることを視覚的に表示することもできる。さらに、マイクロコントローラ142は、「符号化障害」(発生は極めて少ない)があるとき、又は、気体処理部内の気体の相対湿度が臨界閾値(所定の相対湿度閾値より低い)を下回ったとき(例えば10%のとき)、異常又は警報信号を生成してピン6から出力し、LED148B(例えば、LED148Aと異なる色である)を駆動させることもできる。どちらの場合も、警報信号に応じて、加熱素子134への電力供給が遮断される。
【0076】
また、マイクロコントローラ142は、気体処理部の内部における気体の温度を調節するため、加熱素子134の制御も行う。したがって、マイクロコントローラ142は、A/D変換器143から供給されるデジタル言語を処理して、気体処理部のハウジングの内部における気体の温度を測定する。その測定結果に応じて、マイクロコントローラ142は、トランジスタQ1を駆動させる加熱制御信号を生成して出力ピン11から出力し、それによってMOSFETパワートランジスタQ2を駆動して加熱素子134に電流を供給する。気体処理部の内部における気体の温度は、気体が所定の温度範囲内で気体処理部から排出され患者の体内に送達されるように、マイクロコントローラ142によって調節される。気体が調節される所定の温度範囲は、約35〜40℃であり、好ましくは37℃である。上述したように、制御モジュール140の監視回路部によって測定された気体処理部の内部の相対湿度が臨界閾値を下回ると、それに応じて制御回路部は加熱素子134への電力供給を遮断し、非常に乾燥した暖かい気体が送達されることを防止する。
【0077】
気体の相対湿度を監視するための回路は、当該技術分野では周知の他の回路によって具現することもできる。また、制御モジュール140は、1つのマイクロコントローラ142によって、チャンバーから排出される気体の温度及び相対湿度を表す信号を監視するため、及び気体の温度を制御するべく加熱素子を制御すると説明してきたが、当然のことながら、前記監視及び制御の各機能は2つ又は複数のマイクロコントローラによって個別に行うこともできる。さらに、マイクロコントローラ142の機能は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル論理回路、マイクロプロセッサ又はデジタル信号プロセッサなどの他の回路によって達成することもできる。
【0078】
図15は、感湿キャパシタ138の代わりに感湿抵抗を使用して行う、気体の相対湿度の監視についての別の実施形態を示す。湿度検出スキームは、図14に示した計時/除算回路145を必要としない、抵抗性の相対湿度センサを用いる。感湿抵抗900は、気体処理部のハウジングの内部における、気体処理部120を通過するガス流の相対湿度を検出するのに適切な位置に配置される。適している感湿抵抗は、Ohmic社製の抵抗、型番UPS600である(45%RHで約30.7キロオーム)。抵抗R10は、電圧分配器の構造内で、感湿抵抗900と接続する。マイクロコントローラ142の3つのピンは、抵抗R10及び感湿抵抗900によって形成される電圧分配器と接続する。
【0079】
マイクロコントローラ142のピン910は抵抗R10の一方の端子と接続し、ピン912は感湿抵抗900の一方の端子と接続し、ピン914は抵抗R10と感湿抵抗900との間にある端子と接続する。感湿抵抗900は、AC励起を必要とするタイプであり得る。したがって、マイクロコントローラ142は、交流パルス(例えば5V)をピン910及び912に印加することによって感湿抵抗900を励起し、所定の期間に渡って、ピン912が「高」で、ピン910が「低」であるようにする。その結果、感湿抵抗900への平均励起電圧はゼロとなる。ピン910が「高」の期間中、マイクロコントローラ142は、ピン914にてタップ電圧が論理値「0」又は論理値「1」であるか否かを判断することによって、気体の湿度を検出する。感湿抵抗900の抵抗が低く、論理値が0(低電圧)の場合は、気体の相対湿度が依然として高いことを示す。感湿抵抗900の抵抗は高く、論理値が1(高電圧)の場合は、気体の相対湿度が低いことを示す。抵抗R10の値は、所望の相対湿度閾値で、ピン914に変化が生じるように選択される(例えば、45%RHで、低電圧から高電圧に2.5V遷移するように選択される)。抵抗R10の抵抗は、例えば30キロオームである。抵抗性の相対湿度センサを使用するある実施形態では、適しているマイクロコントローラは、PIC16C558である(図14を参照しつつ説明した上述の型番のマイクロコントローラと置き換えられる)。この検出スキームは、DC励起可能な相対湿度センサを使用する場合は、さらに簡素化することができる。この場合、湿度検出のために必要なのは、マイクロコントローラ142の1つのピンである。
【0080】
抵抗性の相対湿度センサは、容量性の相対湿度センサに対して様々な利点を有する。上述した特定種類の抵抗性相対湿度センサは、ユーザが誤って気体処理部120に水を充填しすぎた場合でも、気体処理部120内で水に浸されることに耐性があることが分かっている。また、抵抗性センサを使用する検出スキームは、ある装置使用環境では望ましくない比較的高い周波数の方形波信号を必要としない。そして、抵抗性センサは、ある用途では、相対湿度をより高い精度で検出することができる。
【0081】
図14に示した回路において、その他の変更又は拡張を行うことが可能である。マイクロコントローラは、例えばPIC16C715などの、A/D変換器143の機能を内蔵するタイプを使用することができる。マイクロコントローラ、PIC16C715は、複数チャネルのA/D変換器を内蔵している。さらに、液晶ディスプレイ(LCD)又はLEDディスプレイなどのディスプレイを追加することが可能な、より機能豊富なマイクロコントローラを使用することができる。このマイクロコントローラは、気体温度及び相対湿度などの情報を周期的に生成して、ユーザに表示することができる。さらに、マイクロコントローラは、警報装置を、図14で示したようにトランジスタを介して間接的に駆動するのではなく、直接的に駆動するようにしてもよい。これらは、制御モジュール140で使用するために選択されたマイクロコントローラの種類に応じて可能な変更又は変形例である。
【0082】
図1及び2を参照して、装置100の設定及び動作を説明する。AC/DC変換器180は、例えば壁コンセント又は電源コードなどの110VのAC電源に接続される。制御モジュール140は、AC/DC変換器180に接続される。また、装置100は、バッテリ又は太陽光電源から電源の供給を受けることもできる。チューブ160の一端をルアーロック166で注入器10の出口に取り付けることによって、加熱器/加湿チューブセットが設置される。装置100は、フィルタ110及び気体処理部120にチューブ160、162及び164が予め取り付けられた状態で販売され得る。ケーブル170は、制御モジュール140の電気ハウジング210にコネクタ172によって取り付けられる。
【0083】
気体処理部120は、注射器200から液体薬剤及び/又は加湿溶液が供給されることによって充填される。注射器200が充填口190に挿入され、注射器200の針又はカニューレが再密閉可能部材194(図2)を貫通する。そして、貫通した針又はカニューレから前記液体が気体処理部120に注入され、吸収層によって吸収される。注射器200は、その後、充填口190から取り外され、充填口190はそれ自身で密閉される。チューブ164の自由端は、ルアーロック168又は他の適切なコネクタによって、気体送達装置に取り付けられる。また、気体処理部120に予め液体が充填されている場合は、作動前に充填する必要はない。
【0084】
図5又は6の実施形態の場合は、バッグ220及び230には、所定量の1つ又は複数の薬剤が充填される(それらが予め充填されている場合を除く)。同様に、図7又は8の実施形態の場合は、チューブ部材300又はチューブ部材400には、所定量の1つ又は複数の薬剤が充填される(それらが予め充填されている場合を除く)。図9の実施形態の場合は印字ヘッド520のノズル522は、ハウジング122の開口と一致するように位置合わせされる。そして、図12又は13の実施形態の場合は、容器700は、図12及び13を参照しつつ上述したように使用できるように用意される。
【0085】
気体調節器10が作動すると、気体調節器は気体供給シリンダから気体を受け取り、気体の圧力及び流速を調節する。圧力及び流速は両方ともユーザが調節することができる。圧力及び体積流量は、気体調節器10の制御装置(図示せず)を調節することにより制御される。気体は、チューブ160を通って随意的なフィルタ110に流入してフィルタにかけられ、その後、チューブ162を通って気体処理部120に流入する。気体は、気体処理部120の内部で、図2で示したように気体の流路中に配置された随意的な電気式加熱素子134及び随意的な加湿液体保持層130〜132と接触する。
【0086】
図2〜9、12又は13の実施形態では、ガス流は使用される気体処理部に応じて所定量の1つ又は複数の薬剤で処理される。このことにより、1つ又は複数の薬剤が気体処理部120から搬出され、動物に送達される。ある用途及び温度範囲条件のために、気体処理部120は、処理された気体が送達される場所に極めて近接して配置されることが望ましい場合がある。
【0087】
また、気体の加熱及び加湿が所望され、適切な構成要素が気体処理部120内、ひいてはチャンバー128内に配置される形態では、気体は、加熱素子134及び層130〜132の液体容量を調節することによって、適切な生理学的範囲となるように同時に加熱及び加湿される。前記調節は、チャンバー128から排出される気体の温度が、予め選択された生理学的温度の範囲内(好ましくは35〜40℃である。しかし、様々な所望する温度範囲を予め選択することが可能である)及び予め選択された相対湿度範囲内(好ましくは40%を越える相対湿度。例えば、80〜95%の範囲の相対湿度)となるように行われる。ユーザが動作の開始前に液体薬剤及び/又は加湿溶液を手動で充填することを忘れて、又は装置が液体を予め充填しないまま販売され(すなわち、乾燥状態)、気体処理部120に液体薬剤及び/又は加湿溶液のどちらも充填されずに装置を作動させた場合は、気体処理部120のチャンバーの内部における気体の相対湿度の測定結果は所定の閾値を下回るため、警報が発せられ、気体処理部120に液体の充填が必要であることがユーザに警告される。装置は、気体処理部120に液体薬剤及び/又は加湿溶液を充填する必要があることをユーザに警告するための警報を自動的に発することによって、動物へ未加湿気体がさらに送達されることを防止する。
【0088】
図5を参照して、制御モジュール140は、チャンバーから排出される気体の相対湿度を監視し、チャンバー128内の気体の温度をさらに調節する。特に、チャンバー内の気体の相対湿度が所定の相対湿度閾値を下回ると、マイクロコントローラ142は再充填信号を生成し、気体処理部120が液体供給量の再充填を必要としていることを知らせる。ブザー147が発する警報音及び/又はLED148Aが発する視覚的な警報は、主治医又はユーザに、気体処理部120が再充填を必要としていることを警告する。マイクロコントローラ142は、気体処理部120に液体が再充填され、チャンバー内の湿度が所定の相対湿度閾値を上回るレベルに戻るまで警報を継続させることが好ましい。また、気体処理部120内の気体の相対湿度レベルが臨界相対湿度閾値を下回ると、マイクロコントローラ142は、LED148Bを発光させるなどの第2の警報を発し、その時点で加熱素子134への電力供給を停止する。さらに、マイクロコントローラ142は、加熱素子134に供給される電力を制御することによって気体の温度を制御する。
【0089】
ある場合では、湿度の制御は、加熱の制御よりも重要である。そのような場合は、装置は、(図7〜13の実施形態に基づいて)ガス流を1つ又は複数の薬剤で処理する構成要素、及びガス流を加湿するための構成要素のみを備える。さらに、ある場合では、ガス流の湿度の監視も、随意的なものである。例えば、ガス流を乾燥剤で処理する場合は、通常は、加熱又は加湿を必要としない。
【0090】
本発明の方法及び装置は、加熱された及び加湿されたガスの供給を必要とする様々な医療処置に使用することができる。また、医療処置に必要とされるガスの無菌性に応じて、随意的にろ過が行われる。ガスは、実施する医療処置に応じて選択される。ガスとしては、二酸化炭素、酸素、亜酸化窒素、アルゴン、ヘリウム、窒素、大気及び他の不活性ガスなどの、任意の医学上有用なガスを使用することができる。内視鏡検査に使用するのに望ましいガスは、二酸化炭素及び亜酸化窒素である。また、上記のガスの組み合わせも使用することができる(つまり、単一のガスを100%使用する必要はない)。医療処置としては、望ましくは、腹腔鏡検査、大腸内視鏡検査、胃鏡検査、気管支鏡検査及び胸腔鏡検査などの内視鏡検査がある。しかしながら、本発明は、加熱された及び加湿された、呼吸用の酸素若しくは任意の麻酔ガス又はこれらのガスの組み合わせを供給するのに、或いは麻酔若しくは呼吸療法を施すのに使用することもできる。特に、本装置は小型であり、携帯可能であるため、携帯が必要な用途での使用に適している。ガスを患者に直接接触させるガス送達装置は、行われる当該技術分野では周知の医療処置に応じて選択される必要がある。本装置によって調節される気体は、圧力、容積又はその両方が調節される。
【0091】
ある実施形態では、加熱器/加湿器120に供給される他の薬剤(上記の薬物)とは異なるいくつかの薬物を供給することが望ましい。薬剤によっては、加熱器/加湿器を使用して送気ガスを加湿及び加熱し、薬剤を別々に供給することが望ましい場合がある。あるいは、1つ又は複数の薬剤を、加熱器/加湿器を用いて供給することができる。また、1つ又は複数のさらなる薬剤は、送気ガスに個別に供給することもできる。
【0092】
薬剤は、例えば、腹腔鏡検査、大腸内視鏡検査、胃鏡検査及び/又は胸腔鏡検査、或いは膨張を必要とするその他の医療処置を行う間、ガス流を通じて供給することができる。一例としては、現在、これらの医療処置は、手術時は、例えば腹部に治療量の麻酔を投与する全身麻酔下で行われる(ただし、これに限定されるものではない)。しかし、手術を素早く行う場合及び患者の回復を速める場合は、全身麻酔を少量で行う又は全く行わない場合がある。例えば、虫垂切除術、胆嚢摘出術又は卵管結紮術は、全身麻酔なしで行われる場合がある。
【0093】
本発明を使用して、いかなる種類の薬剤も送達させることができる。医療処置の間にガス流で送達させることができる薬剤の主な例としては、麻酔剤、鎮痛剤、化学療法薬剤、抗感染症薬及び抗接着剤などが挙げられる。
【0094】
麻酔剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アルコール、ブピバカイン、塩酸クロロプロカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プロカイン、ロピバカイン及びテトラカインがある。
【0095】
鎮痛剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、エクセドリン(Excedrin)、タイレノール(Tylenol)、デイクイル(DayQuil)、ナイクイル(NyQuil)などの呼吸器系の薬剤、デュラクロン(Duraclon)及びウルトラム(Ultram)などの中枢作用性鎮痛剤、カルバトロール(Carbatrol)、ヒアルガン(Hyalgan)、リドダーム(Lidoderm)、ニューロピン(Nuropin)、ニューロンチン(Neurontin)、フェネグラン(Phenegran)及びテグレトール(Tegretol)などの様々な鎮痛薬、並びにヌベイン(Nubein)、ダルボセット(Darvocet)、ダイロディッド(Dilaudid)、Lortab、オキシコンチン(OxyContin)、ペルコセット(Percocet)及びバイコディン(Vicodin)などの麻酔薬がある。
【0096】
化学療法薬剤(別名:抗腫瘍薬)としては、これらに限定されるものではないが、例えば次のものがある。アルトレタミン、BCG、ブレオマイシン硫酸塩、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジンイミダゾールカルボキサミド(Dacarbazine imidazole carboxamide)、ダクチノマイシン、ダウノルビジン、ダウノマイシン、デキサメタゾン、ドキソルビジン、エトピシド−エピポドフィロトキシン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタマイド、フルダラビン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、HCL、イホスファミド(イソホスファミド)、インターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファn3、イリノテカン、ロイコボリンカルシウム、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メゲストロール、メルファラン(L−フェニルアラニンマスタード)、L−サルコリシン、塩酸メルファラン、MESNA、メクロレタミン、ナイトロジェンマスタード、メチルプレドニゾロン、メトトレキサート(アメトプテリン)、マイトマイシン(マイトマイシンC)、ミトキサントロン、メルカプトプリン、パクリタキセル、プリカマイシン(ミトラマイシン)、プレドニゾン、プロカルバジン、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)、タモキシフェン、6−チオグアニン、チオテパ(トリエチレンチオホスホルアミド)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及び酒石酸ビノレルビン。
【0097】
抗感染症薬は、駆虫薬及び抗生物質に分類される薬剤を含む。抗生物質はさらに、次のものに分類することができる。アミノグリコシド、抗真菌性抗生物質、セファロスポリン、b−ラクタム抗生物質、クロラムフェニコール、マクロライド、ペニシリン、テトラサイクリン、様々な抗生物質、抗結核薬、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、抗マラリア薬、キノロン、スルホンアミド、スルホン、尿路抗感染薬及び様々な抗感染症薬。
【0098】
駆虫薬としては、これに限定されるものではないが、例えば、チアベンダゾールなどがある。
【0099】
アミノグルコシドとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン及びトラブマイシンがある。
【0100】
抗真菌性抗生物質としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アムホテリシンB、脂質製剤T.E.、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ナイスタチン及びテルビナフィンがある。
【0101】
セファロスポリンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、セファクロール、セファゾリン、セフェピム、セフィキシム、セフォニシド、セフォタクシム、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン及びセフラジンがある。
【0102】
B−ラクタム抗生物質としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アズトレオナム、セフォテタン、セフォキシチン及びイミペネム/シラスタチンがある。
【0103】
クロラムフェニコールとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール及びコハク酸クロラムフェニコールがある。
【0104】
マクロライドとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、エチルコハク酸エリスロマイシン及びラクトビオン酸エリスロマイシンがある。
【0105】
テトラサイクリンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン及びテトラサイクリンがある。
【0106】
様々な抗生物質としては、これらに限定されるものではないが、例えば、バシトラシン、クリンダマイシン、ポリミキシンB、スペクチノマイシン及びバンコマイシンがある。
【0107】
抗結核薬としては、これらに限定されるものではないが、例えば、エタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファブチン及びリファンピンがある。
【0108】
抗ウイルス薬としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アシクロビル、アマンタジン、ファムシクロビル、フォスカネット、ガンシクロビル、リバビリン、バラシクロビル及びバルガンシクロビルがある。
【0109】
抗レトロウイルスとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、アバカビル、アンプレナビル、ディダノシン、エファビレンツ、インディナビル、ラミブジン、ロピナビル、ネルフィナビル、ネビラピン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、ザルシタビン及びジドブジンがある。
【0110】
抗マラリア薬としては、これらに限定されるものではないが、例えば、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ピリメタミン及びキニーネがある。
【0111】
キノロンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、ガチフロキサシン、レポフロキサシン及びオフロキサシンがある。
【0112】
スルホンアミドとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン及びスルフイソキサゾールがある。
【0113】
スルホンとしては、これに限定されるものではないが、例えば、ダプソーンがある。
【0114】
尿路抗感染症としては、これに限定されるものではないが、例えば、ニトロフラントインがある。
【0115】
様々な抗感染症薬としては、これらに限定されるものではないが、例えば、クロファザミン(Clofazamine)、コトリモキサゾール、メトロニダゾール及びペンタミジンなどがある。
【0116】
抗接着薬としては、これらに限定されるものではないが、例えば、次のものがある。アスピリン、カルシウムチャンネル遮断薬、カルボキシメチルセルロース、コンドロイチン硫酸、コルチコステロイド、キマーゼ阻害剤、デキストラン、透析液、ジフェンヒドラミン、フィブリン接着剤、ヘパリン、ヒアルロン酸、L−アアルギニン、メチレンブルー、ミフェプリストン、ミトマイシンC、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、酢酸オクトレオチド、ペントキシフィリン、腹膜移植片(Peritoneal transplant)、光重合ヒドロゲル、ポリエチレングリコール、ポリオキサマー、乳酸リンゲル液、サリン、界面活性剤、及び組織プラスミノゲン活性化因子。
【0117】
また、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩/カルボキシメチルセルロース(Hyaluronate-carboxymethylcellulose)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン70及びイコデキストリン4%などの溶液又はゲルも知られている。
【0118】
上記のものは、液体、溶液又はゲルであり、本発明に使用できることは、当業者であれば理解できるであろう。また、ヒアルロン酸塩/カルボキシメチルセルロース、酸化再生セルロース、ポリエチレンオキシド−酸化再生セルロース(polyethylene oxide-oxidized regenerated cellulose)、延伸ポリテトラフルオロエチレン及び心膜パッチなどの市販の抗接着バリアー(anti adhesion barrier)も知られている。
【0119】
上記薬剤を本発明で使用可能にするためには、上記薬剤を破砕、微粉砕又は粉砕した後に、液体と混合する必要があるであろう。
【0120】
本発明は、まだ発明されていない上記の種類の薬剤、並びに上記の種類に含まれるが記載されていない薬剤の使用も含む。
【0121】
図16〜20は、処理された又は未処理の送気ガスを介して薬剤を患者の腹部に提供するのに特に有用と考えられる、本発明の実施形態を示している。前記実施形態は、送気装置と、前記送気装置と患者の腹部との間の経路の少なくとも一部を形成する少なくとも1つの液体流路を含む少なくとも1つの構造体と、前記少なくとも1つの構造体と接続し、前記少なくとも1つの構造体を介して薬剤を前記腹部の内部に供給するように構成されたチャンバーとを備える。
【0122】
図16は、手術部位に送気ガスを供給する、上記のStortz Model 26012などの送気装置915又は他の任意の送気装置を示している。送気装置915は、送気ガスを供給する出口916を有している。
【0123】
送気装置915の下流には、送気装置915と流体的に接続された加熱器/加湿器120が随意的に設けられる。加熱器/加湿器120は、入口917及び出口918を有している。第1の導管919は、送気装置の出口916と加熱器/加湿器120の入口917を接続する。したがって、送気装置915は、加熱器/加湿器120と流体的に接続される。
【0124】
本明細書で説明する実施形態では、導管は、短い場合もあれば長い場合もあり、太い場合もあれば細い場合もある。ある場合では、導管は、それらが流体的に接続する装置からは分離した部品である。他の場合では、導管は、それらが流体的に接続する装置と一体化される。ある場合では、様々な装置は、導管を使用せずに互いに接続又は結合される。他の場合では、様々な装置は、複数のチャンバーを有する単一装置として構成される。これらの実施形態の全ては、本発明の範囲に含まれる。
【0125】
送気ガスが乾燥していても加湿されていても、又は加熱されていても冷たくても、患者の腹部に送達されるガス流に薬剤を添加することは有益となり得る。本発明の範囲は、任意の条件下での薬剤の添加を含む。好ましい方法は、送気ガスを加熱及び加湿する方法である。
【0126】
第2の導管920の一方の端部920Aは、加熱器/加湿器120の出口918に接続されており、他方の端部920Bは開放されている。どちらの端部も、例えばルアーロックなどのコネクタを1つ以上含み得る。手術の間、第2の導管920は、患者Pの腹部922に予め設置されたトロカールアセンブリ921と流体的に接続される。したがって、加熱器/加湿器120は、患者の腹部と流体的に接続される。また、ベレス針又は他の器具も、腹部へ接続するために使用可能である(本発明の範囲から逸脱することなく)。第1の導管919又は第2の導管920は、それらに接続したフィルタを有し得る。
【0127】
本発明のこの実施形態では、薬剤チャンバー925が、加熱器/加湿器120の外部に離間して設けられている。薬剤チャンバー925は、少なくとも1つの出口926を有する。第3の導管927の一方の端部927Aは、薬剤チャンバーの出口926と接続している。第3の導管927の他方の端部927Bは、トロカールアセンブリ921と流動的に接続している(適切なコネクタを使用して、導管920と流動的に接続することもできる)。
【0128】
2つの注入口を有するトロカールアセンブリ930(図31)を用いることもできる。または、必要に応じて、改良したトロカール933(図32)を用いることもできる。第3の導管927は大気中に開いているので、薬剤チャンバー925内の薬剤を送気ガス流に送達させるために、送気装置915以外のある圧力源を使用する場合がある。圧力源の例は後述する。
【0129】
患者Pの腹部922に薬剤をエアロゾルスプレー状、ミスト状、霧状又は蒸気状で送達させるためには、拡散装置948が使用される。拡散装置948は、薬剤の有効性を高めると考えられている。
【0130】
拡散装置948の配置は、薬剤を送気ガスに導入する位置及び方法に応じて決定される。薬剤チャンバー925が直列に接続されていない場合、拡散装置948は、第3の導管927又はトロカール921内の任意の場所に設置される。
【0131】
図17は、図16に示した構造の変形例を示している。この実施形態では、出口916を有する送気装置915が再び設けられている。加熱器/加湿器120の入口917は、第1の導管919を介して送気装置915の出口916と接続している。しかしながら、この実施形態では、注入口936及び出口937を有する変更薬剤チャンバー935(「変更(modified)」とは、入口及び出口を有することである)が、加熱器/加湿器120と直列に設置される。変更薬剤チャンバー93は、第2の導管920を介して加熱器/加湿器120と接続される。したがって、必要に応じて、薬剤を送達させるために、送気ガスの圧力を使用することができる。「変更薬剤チャンバー」という用語は便宜的に使用しているのであって、特許請求の範囲において、「薬剤チャンバー」又は「変更薬剤チャンバー」の特別な定義を規定するためのものではない。「薬剤チャンバー」という用語は、特許請求の範囲で使用されているように、薬剤を含み得る任意のチャンバーを広く意味するためのものである。
【0132】
第4の導管938が、薬剤チャンバー935の出口937に接続している。第4の導管938は、外科手術の間、薬剤チャンバー935を患者Pの腹部922内のトロカールアセンブリ921と流体的に接続するために使用される。拡散装置948は、変更薬剤チャンバー935の下流における任意の場所に設置することができる(例えば、第4の導管938に挿入される又は接続される)。上述したように、腹部との接続には、例えばベレス針などのトロカール921以外の機器を使用することができる。
【0133】
拡散装置948は、その種類に応じて、前記導管の内部に設置する(液体が拡散装置948の中又は周囲を流れる)、又は前記導管を囲むように設置することができる(当業者であれば理解できるであろう)。また、特定の導管のための用途に応じて、拡散装置を導管の内部及び外部の両方に設ける場合もある。
【0134】
図18では、薬剤チャンバー925は、加熱器/加湿器120の上流に接続されている。薬剤チャンバー925は、第5の導管940によって、加熱器/加湿器120と流動的に接続されている。第5の導管940は、薬剤チャンバー925を加熱器/加湿器120と流動的に接続するために、送気装置915の出口916と加熱器/加湿器120の入口917との間の任意の場所に接続される。上記の場合と同様に、第2の導管920は、加熱器/加湿器120の出口918に接続され、トロカールアセンブリ921を介して、加熱器/加湿器120を患者の腹部と流体的に接続する。上述したように、腹部との接続には、例えばベレス針などのトロカール921以外の器具を使用することができる。
【0135】
薬剤チャンバー925は送気装置915と並列に接続されているので、拡散装置948は、薬剤チャンバー925の下流における任意の場所に接続又は配置することができる(例えば、第2の導管920内に)。
【0136】
図19に示す実施形態は、入口936及び出口937を有する変更薬剤チャンバー935が、加熱器/加湿器120の下流ではなく上流に設置されている点以外は、図17に示した実施形態と同様である。第1の導管919が、送気装置915の出口916と変更薬剤チャンバーの注入口936との間を接続しており、変更薬剤チャンバー935が送気装置915と流体的に接続されている。
【0137】
第6の導管941が、変更薬剤チャンバー935の出口937を、加熱器/加湿器120の入口917に接続する。第7の導管942が、加熱器/加湿器120の出口918に接続している。第7の導管942は、外科手術の間、患者Pの腹部922に予め設置されたトロカールアセンブリ921と流体的に接続するように設置される。上述したように、腹部との接続には、例えばベレス針などのトロカール921以外の器具を使用することができる。気体が送気装置915から送出され、変更チャンバー935に薬剤が残っている場合、薬剤は患者Pの腹部922に送達される。上記の場合と同様に、拡散装置948は、薬剤チャンバーの下流における任意の場所に設置される(例えば、第7の導管942に挿入される又は接続される)。
【0138】
図20に示す実施形態は、出口926を有する薬剤チャンバー925が加熱器/加湿器120の上流ではなく下流に接続されている点以外は、図18に示した実施形態と同様である。第1の導管919が、送気装置915の出口916と加熱器/加湿器の注入口917との間を接続しており、加熱器/加湿器120が送気装置915と流体的に接続されている。
【0139】
第2の導管920は、加熱器/加湿器120の出口918に接続されている。上記の場合と同様に、第2の導管920は、外科手術の間、患者Pの腹部922に設置されたトロカールアセンブリ921と流動的に接続するように設置される。上述したように、腹部との接続には、例えばベレス針などのトロカール921以外の器具を使用することができる。薬剤チャンバー925の出口926には、第8の導管943が接続されている。第8の導管943の他端は、加熱器/加湿器120の出口918とトロカールアセンブリ921との間の任意の場所で、加熱器/加湿器120から送出されるガス流と流動的に接続される。拡散装置948は、薬剤チャンバー925の下流における任意の場所に設置される(例えば、第2の導管920内に挿入される又は接続される)。薬剤チャンバー925内の薬剤に圧力が加えられると、送気装置915からの気体の送出の有無に関わらず、薬剤は患者Pの腹部922に供給される。
【0140】
用途に応じて、図1〜20に示した構造は、所望する結果を得るために、組み合わせられる又は複数設けられる。例えば、加熱器/加湿器120を介して1つ又は複数の薬剤を導入する場合は、1つ又は複数の薬剤は1つ又は複数の薬剤チャンバー(925、935)を介して導入する。また、ここで示したいずれのチャンバーも、複数の薬剤を追加するために、単一又は複数で使用することができる。気体は、必要に応じて、加熱及び/又は加湿される。チャンバーは、空であってもよいし、液体を吸収又は吸着するための様々な手段を有していてもよい。
【0141】
図21は、薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に導入する方法の1つを示している。図21には変更薬剤チャンバー935が示されているが、薬剤チャンバー925の場合でも作動する。変更薬剤チャンバーは外部ポート950を有し、外部ポート950にはその中の流量を調節するための閉鎖部材968が設けられている。外部ポート950には、所望の量の薬剤が充填された注射器951が挿入される。適当な時に、外科医、麻酔医又は他の医療関係者は、閉口部968が存在する場合は閉口部968を開き、注射器951のプランジャ952を押圧して、薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に注入する。薬剤は、上述したように、患者の腹部に送達される。
【0142】
図22は、本発明の様々な実施形態において、薬剤チャンバー(925、935)に薬剤を導入するのに使用することができる他の器具を示している。この実施形態では、ポンプ954を使用して、薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に送達する。外蠕動性又は他の適切な種類のポンプ954が接続される部ポート950が設けられる。また、ポート950への流量を調節する閉鎖部材968が設けられる。図示しないが、少なくとも所望の量の薬剤を含有する容器が設けられる。
【0143】
適当な時に、外科医、麻酔医又は他の医療関係者は、閉口部968が存在する場合は閉口部968を開き、ポンプ954を作動させ、所望の量の薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に供給する。薬剤は、上述したように、患者の腹部に送達される。全ての実施形態において、閉鎖部材968は加減弁であり得ることに留意されたい。
【0144】
図23は、本発明の様々な実施形態において、薬剤チャンバー(925、935)に所望の量の薬剤を導入するのに使用することができる別の機器を示している。この実施形態では、予めに所望の量の薬剤が予め充填された加圧シリンダ956が、薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に送達するために使用される。加圧シリンダ956が接続される外部ポート950が設けられる。シリンダ956とポート950との間に、閉鎖部材968が設置されている。シリンダには、所望の量の薬剤に加えて、所定量の加圧剤(不活性ガスなど)が充填され得る。また、所望の時に、薬剤の放出を引き起こす装置(例えば、電子的に制御されたバルブ)を有し得る。適当な時に、外科医、麻酔医又は他の医療関係者は、閉口部968が存在する場合は閉口部968を開き、放出装置を作動させ、所望の量の薬剤を薬剤チャンバーに供給する。薬剤は、上述したように、患者の腹部に送達される。
【0145】
図24は、薬剤チャンバー(925、935)に薬剤を導入するのに使用することができるさらなる別の機器を示している。この実施形態では、所望の量の薬剤を含んでいる柔軟な袋958が、チューブ959によって外部ポート950に接続されている。柔軟な袋958からの薬剤の放出を調節する装置(例えば、加減弁)の設置の有無は、用途に応じて決定される。閉口部968は、放出装置の役割を果たす。手術のときの所望する時に、柔軟な袋958は圧搾され、放出装置は、放出装置が存在する場合は放出装置を作動させ、薬剤チャンバー(925、935)に薬剤を送る。
【0146】
当然のことながら、図21〜24に示した、薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に導入する方法の全ては、図16〜20に示した本発明の全ての実施形態に用いることができる。さらに、当然のことながら、薬剤をチャンバー(925、935)に導入する他の方法も、本発明の範囲から逸脱することなく、用いることができる。
【0147】
図25〜28を参照して、何らかの理由で別個の薬剤チャンバーを用いるのが好ましくない場合は、図16〜20に示した実施形態に薬剤を供給するのに、注射器951、ポンプ954、加圧シリンダ956及び柔軟な袋958を用いる場合がある。適切な外部ポート又はコネクタ965は、送気ガスの流路内となるように、適切な導管と直列に設けられる。様々な機器の動作は、図21〜24を参照して説明した通りである。
【0148】
図29は、本発明に係る薬剤チャンバー(925、935)として機能し得るさらなる装置を示している。圧電チャンバー961は、入口963及び出口964を有する中空チャンバー962を備えている。圧電チャンバー961は、適切な導管と流動的に接続されており、送気装置の作動中は、チャンバー内に送気ガス970が流れる。中空チャンバー962の内部には、所望の量の、液体状の薬剤966が充填されている。薬剤966は、圧電性結晶965と共にチャンバー内に充填されている。圧電性結晶965を活性化させるために、その後、結晶965に電圧が印加する。結晶965が活性化すると、薬剤の霧(agent fog)962を引き起こすほどの速いスピードで、薬剤の分子を振動させる。薬剤の霧962は、送気ガス970に取り込まれ、患者の腹部に送達される。
【0149】
図30は、薬剤の患者の腹部への投与に有用と考えられる、さらなる別の実施形態を示している。この実施形態は、トロカール972と共に使用される、変更注射器971の使用を含む。トロカール972は、管状部973と、拡大された上部974とを有する。変更注射器971は、プランジャ979を密閉状態で受容する、通常の大きさの中空本体部978を有する。プランジャ979は、本体部978の中を往復運動する。本体部978には、細長く、中空及び管状であり、その遠位端に拡散装置948が取り付けられた下端部980が接続又は一体化されている。
【0150】
使用中、薬剤は、針又は下端部980を介して、変更注射器971に吸い込まれる。まだ取り付けられていないときは、下端部980が取り付けられる。そして、下端部980及び拡散装置948がトロカール972の管状部にスライド自在に適合する状態で、変更注射器971をトロカールアセンブリ972に挿入する。
【0151】
変更注射器971の細長い管状の下端部980の長さは、変更注射器971がトロカール972に挿入されたとき、下端部980の遠位端980Aがトロカール972の管状部973の端部から延出するほどの長さであるべきである。このような方法で、手術の間、腹部に薬剤を投与することが所望され、変更注射器971がトロカール972に完全に挿入されている場合は、拡散装置948は実際に気腹の内部に存在し得る。したがって、プランジャ979が押し下げられると、変更注射器971にすでに充填されている薬剤は、拡散装置948を通って、エアロゾル、スプレー、ミスト、霧又は蒸気(拡散装置948及び薬剤によって決定される)の状態で腹部に送達される。なお、上記の状態で拡散させることができない薬剤も存在する。
【0152】
図31は、2つの注入口を有するトロカール930を示している。2つの注入口を有するトロカール930は、拡大された上部975Aを有する管状の本体部975と、送気装置915から供給された送気ガスが注入される1つの注入口976とを備える点に関しては、当該技術分野で周知のトロカールと同様である。トロカールにおいて薬剤を送気ガス流に導入することが所望される可能性があるので、第2の注入口977を有する、2つの注入口を有するトロカール930が望ましい。所望する場合、送気ガス流は、第1の注入口976を介して、2つの注入口を有するトロカール930に入り、薬剤ガス流は、第2の注入口977を介してトロカールに入る(逆もまた同様)。
【0153】
図31に示したトロカールの構造を変更したものを、図32に示す。変更トロカール933が示されている。変更トロカール933は、上記のトロカロールと同様に、管状の本体部975と、拡大された上部974とを有している。また、変更トロカール933は、注入口976を有している。しかし、変更トロカール933は、第2の注入口977の代わりに、分岐した注入口934を有している。分岐した注入口934は、完全に別個の第2の注入口から薬剤を供給するのではなく、薬剤流を変更トロカール933に直接的に接続するために、注入口976から分岐している。送気装置948は、分岐した注入口934の遠位端に、随意的に設けられる。閉鎖部材968は、随意的に設けられる。
【0154】
図33は、いくつかの点に関しては図32に示した実施形態と同様である、さらなる別の実施形態を示している。この実施形態は、図32に示した構造とほとんど同じであり、管状の下部975及び拡大された上部974を有する変更トロカール933を、単一の注入口976及び分岐した注入口934と共に使用する。この変更では、分岐した注入口934は、所望の量の薬剤及び高圧ガスが充填された加圧エアゾルスプレー缶981を取り付けるのに適合する大きさ及び形状を有している。
【0155】
加圧容器又はスプレー缶981は、ノズル982を有する。ノズル982は、エアロゾルスプレー、ミスト、霧又は蒸気を形成するためのオリフィスを有する。前記オリフィスは、使用される薬物に応じて選択される。ノズル982は、分岐した注入口934に圧入することができるように構成される。ノズルが薬剤の所望どおりの拡散を生成することができるので、この実施形態から拡散装置948を省略することができる。また、必要に応じて、設置することもできる。
【0156】
図34は、本発明の様々な実施形態で行われる一連のステップを示すフローチャートである。最初のステップ1000では、患者Pの腹部922にアクセスする。これは、外科手術分野の当業者には周知の任意の外科的技術を使用することで行うことができる。前記外科的技術は、一般に、患者の腹部を外科的に切開するステップと、そこにトロカールを挿入するステップとを含む。
【0157】
次のステップ1010では、送気ガスの気体流を患者の腹部922に導入する。これは、送気装置120を設けるステップと、送気装置とトロカールとの間に流路を形成するステップと、最初に患者の腹部を約2〜3リットルの送気ガスで膨張させるステップとを含む。最初に患者の腹部を膨張させた後、送気ガスを腹部に所望の速度で流入させ続ける、又は、特定の状況に応じて流入を停止させる。
【0158】
薬剤又は薬剤流は、その後、送気ガスと共に気腹に導入される(ステップ1020)。特定の処置に適した、所定の濃度が選択される。
【0159】
行われる外科手術のための、薬剤の所望の濃度が決定されると、上述したように、薬剤を気腹に導入する方法はいくつかの方法がある。
【0160】
使用される方法に関係なく、所望の量の薬剤が導入されると、薬剤又は薬剤流の流入を遮断する(ステップ1030)。
【0161】
本明細書中では、様々な特許文献が参照されている。これらの文献は、本発明が関連する従来技術をより詳しく説明するために参照した(この参照により本発明に含まれるものとする)。
【0162】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本発明に係る装置の概略図である。
【図2】本発明に係る装置に含まれる気体処理部の断面図である。
【図3】気体処理部のハウジングに複数のチャンバーを備える他の実施形態の概略図である。
【図4】図3の実施形態における、気体処理部のハウジングの端面図である。
【図5】ハウジングの内部に1つ又は複数のバッグを備える別の実施形態の内面図である。
【図6】ハウジングの外部に1つ又は複数のバッグを備えるさらなる別の実施形態の内面図である。
【図7】ハウジングの内部にその遠位端に制限開口を有するチューブ部材を備える他の実施形態の内面図である。
【図8】ハウジングの内部にその長手方向に沿って複数の孔が形成されたチューブ部材を備える別の実施形態の内面図である。
【図9】所定量の1つ又は複数の薬剤を気体処理部のチャンバー内に制御放出するためのインクジェット印字ヘッドを備えるさらなる別の実施形態の概略図である。
【図10】気体処理部に使用される加熱素子の概略図である。
【図11】気体処理部のチャンバーの断面図であり、チャンバーの気体入口及び出口に溝付が形成されていることを示している。
【図12】気体処理部のハウジングの内面図であり、所定量の固相薬剤を放出するための容器を示している。
【図13】図12と同様の気体処理部のハウジングの内面図であるが、前記容器はチャンバーの外側に位置している。
【図14】気体の温度を制御するため、及び気体の湿度の監視するための回路の概略図である。
【図15】気体の湿度を監視するための回路の他の実施形態の概略図である。
【図16】処理された又は未処理の気体及び薬剤を体腔、体空間及び体表面に送達することができる本発明に係る装置のある実施形態を示す概略図である。
【図17】処理された又は未処理の気体及び薬剤を体腔、体空間及び体表面に送達することができる本発明に係る装置の他の実施形態を示す概略図である。
【図18】処理された又は未処理の気体及び薬剤を体腔、体空間及び体表面に送達することができる本発明に係る装置の別の実施形態を示す概略図である。
【図19】処理された又は未処理の気体及び薬剤を体腔、体空間及び体表面に送達することができる本発明に係る装置のさらなる別の実施形態を示す概略図である。
【図20】処理された又は未処理の気体及び薬剤を体腔、体空間及び体表面に送達することができる本発明に係る装置のさらなる別の実施形態を示す概略図である。
【図21】本発明のある実施形態で使用される薬剤チャンバーに薬剤を導入する方法を示す正面図である。
【図22】薬剤チャンバーに薬剤を導入する他の方法を示す正面図である。
【図23】薬剤チャンバーに薬剤を導入する別の方法を示す正面図である。
【図24】薬剤チャンバーに薬剤を導入するさらなる別の方法を示す正面図である。
【図25】注射器を薬剤チャンバーとして使用する方法を示す正面図である。
【図26】ポンプを薬剤チャンバーとして使用する方法を示す正面図である。
【図27】与圧チャンバーを薬剤チャンバーとして使用する方法を示す正面図である。
【図28】バッグを薬剤チャンバーとして使用する方法を示す正面図である。
【図29】圧電チャンバーを薬剤チャンバーとして使用する方法を示す正面図である。
【図30】本発明のさらなる実施形態を示す図である。
【図31】本発明の一部を構成する、2つの注入口を有するトロカールを示す正面図である。
【図32】図31に示した構造の変形例である。
【図33】図31に示した構造のさらなる変形例である。
【図34】本発明の様々な実施形態で行われる一連のステップを示すフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の体腔、体空間及び体表面へ送達される気体の処理に関し、詳細には、薬剤がガス流によって動物に搬送されるように、気体を1つ又は複数の薬剤で処理するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な目的のために、気体を患者の体内へ注入することは周知である。気体は、特定の目的で、柔らかい表面を膨張させるために又は圧力を生成するために、腹部などの体腔内へ注入される。気体を注入して腹部を膨張させて気腹が形成されると、検査、治療、除去及び外科的処置を行うための空間が得られる。気体の注入によって形成された空間は、腹腔鏡手術の基本要素である。ガス流及び圧力によって形成された身体の空間の内部では、組織表面及び器官を安全に露出させることができ、前記空間内には診断及び治療目的に使用される装置が挿入される。前記目的の例としては、これらに限定されるものではないが、例えば、凝固、切開、把持、固定、縫合、ステープル、移動、縮退、及び細切除去などがある。ガス流の性質は、ろ過、加熱及び加湿によって、改質及び調節することができる。米国特許第5,411,474号及び前述の米国特許出願は、気体を上記のような方法によって調節する方法を開示している。
【0003】
しかし、さらなる改善及び進歩の余地がある。体腔、体空間又は体表面に気体を注入する際に、薬理学的に活性又は不活性な、有機又は無機の薬剤を追加することによって、組織治癒の向上、感染の減少、癒着形成の減少、免疫応答の修飾、腫瘍の治療、特定の疾患過程の治療、痛みの軽減、及び診断の支援を行うことができる。そのため、気体を上記のような方法で処理するのに適した装置及び方法が求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
簡潔に説明すると、本発明は、体腔、体空間又は体表面に送達させる気体を、1つ又は複数の薬剤で処理する方法及び装置に関する。前記気体は、気体源から前記装置に供給される。前記装置は、入口(前記気体源からガス流が供給される入口)及び出口を有する少なくとも1つのチャンバーを規定するハウジングを備える。所定量の1つ又は複数の薬剤がチャンバー内に放出される。放出された薬剤は、送達装置によって、動物に送達されるガス流と混合される。ガス流は、前記ハウジング内で、随意的に、加湿及び/又は加熱される。
【0005】
本発明の上記の及び他の目的及び利点は、添付した図面を参照しつつ行う以下の説明によって明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<定義>
【0007】
本明細書中及び特許請求の範囲では、単数は複数の場合も含む。
【0008】
ここで使用される、「所定の温度」又は「所定の温度範囲」は、ユーザによって予め設定された又はプログラムされた処置中の温度である。例えば、望ましい温度範囲は、体の生理的温度、すなわち約35〜40℃である。後述するように、気体の温度は、「ダイアル」型又は他の型の調節器によって調節される。
【0009】
ここで使用される「加湿溶液」という用語は、水、生理食塩水、乳酸加リンガー液、任意の緩衝化した液体若しくは溶液、水溶液、非水性溶液、水性若しくは非水性溶液と他の物質との組み合わせ、又は、水性若しくは非水性溶液と他の物質を含んでいるゲル物質を意味する。
【0010】
ここで使用される「薬剤」という用語は、組織の治癒に効果がある又は治癒を促進する、感染を減少させる、癒着形成を減少させる、免疫応答を修飾する、特定の疾病過程を治療する、痛みを和らげる、又は他の治療若しくは診断目的に使用される、任意の有機物質、無機物質、生物学的な不活性若しくは活性物質を意味する。これらのものとしては、固相、液相若しくは気相の物質、水性、コロイド性及び非コロイド性の物質、懸濁液、混合物、溶液、ヒドロゲル、凍結乾燥物質、疎水性、親水性、アニオン性、カチオン性及び表面活性物質、外科用補助剤、抗凝血剤、抗生物質、免疫促進剤、免疫抑制剤、成長抑制剤、成長促進剤、診断用物質、麻酔剤、及び鎮痛剤がある。また、これらの物質は、そのまま使用してもよいし、これらに限定されるものではないが、例えば、アルコール、エーテル、エステル、脂質及び溶剤などの他の物質に溶解させてもよい。
【0011】
前記薬剤は、例えば粉末状に乾燥させてもよい。治療又は診断目的でガス流によって体腔内又は体表面に搬送することができる薬剤ならいずれでも、本発明によって送達させることができる。ただし、本発明は、上記の薬剤の例に限定されるわけではない。さらに、ガス流は、本発明によって、任意の種類又は組み合わせの薬剤で処理することができる。一例としては、乾燥を防止するためにガス流を加湿する加湿溶液、感染を減少させる抗生物質、炎症を抑える抗炎症性薬、及び接着を防止し治癒を向上させる接着防止剤によって処理することができる。前記接着防止剤としては、例えば、ML Laboratories社製のAdept(登録商標)、Gliatech社製のAdcon(登録商標)、及びAtrix Laboratories社製のAtrisol(登録商標)などがある。
【0012】
ここで使用される「気体(ガス)」という用語は、自然発生した又は製造された又は容器内に入れられた又は作成された、任意の気体、又は任意の比率の混合気体を意味する。
【0013】
ガス流の処理に関連して使用される「処理」という用語は、固相薬剤の場合はガス流がフューム(fume)若しくはダスト(dust)となるように、液相薬剤の場合はガス流がミスト若しくはスプレーとなるように、ガス流に1つ又は複数の薬剤を注入又は放出することを意味する。ある実施形態では、薬剤は液体形態なので、薬剤は容器から取り込まれる又は取り出される。他の実施形態では、薬剤はガス流へ注入又は放出される。一般に、1つ又は複数の薬剤で処理されるガス流に対しては、加湿も行われる。
【0014】
「腔」又は「空間」という用語は、例えば、胸内腔、心膜、腹膜腔若しくは腹部、複数の腔、膝の空間、肩の空間、眼球、胃、及び肺などの、任意の体腔又は空間を意味する。
【0015】
「エアロゾル」という用語は、液体又は固体粒子が気体中に拡散したものを意味する。
【0016】
「スプレー」という用語は、噴霧器から噴射された液体の噴流を意味する。
【0017】
「ミスト」という用語は、気体中に拡散した粒子状の液体を意味する。
【0018】
「霧」という用語は、気体中に拡散した液体微粒子が凝縮した蒸気を意味する。
【0019】
「蒸気」という用語は、物質分子が拡散した気体を意味する。
【0020】
本発明の基本理念は、薬剤がガス流に能動的又は受動的に注入され、流動力学、蒸気圧及び/又は蒸発率の結果としてガス流の一部を構成するように、ガス流を1つ又は複数の薬剤によって処理することである。そのため、例えば特定の治療、診断又は予防方法などに関連する気体送達によって得られる結果を向上させる目的で、ガス流にユーザが所望する添加物を含めるために、前記ガス流は調節される。
【0021】
「体表面」という用語は、体内若しくは体外の、又は、元々露出している若しくは外科的処置によって露出させた、身体の任意の表面を意味する。
【0022】
図1を参照して、符号100は、気体を処理又は調節するための装置を示す。装置100は、例えば注入器などの気体調節器10から、気体を受け取るように構成される(高圧又は低圧で、高流速又は低流速で)。装置100は、気体処理部120と、随意的なフィルタ110と、随意的な制御モジュール140とを備える。装置100の様々な構成要素は、チューブによって互いに接続される。特に、第1のチューブ160は、雄型ルアーロック166(又は気体調節器10の出口と適合する他の適切なアダプタ)を介して、気体調節器10の出口とフィルタ110の入口とを接続する。第2のチューブ162は、フィルタ110の出口と気体処理部120の入口とを接続する。第3のチューブ164は、雄型ルアーロック168(又は他の適切な接続アダプタ)を介して、気体処理部120の出口と図示しない気体送達装置とを接続する。前記気体送達装置としては、例えば、トロカール、ベレス針(Veres needle)、内視鏡、又は、体腔若しくは空間に入れられるチューブなどがあり、処理された気体を動物の体内に注入する。また、気体を体表面に送達させる場合は、前記気体送達装置は、気体の流れ(ガス流)を体表面に導く又は拡散させるように成形、形成又は構成される。
【0023】
気体送達を必要とする処置を行う際に、気体調節器10及び制御モジュール140を動物から離れたて使い勝手の良い位置に配置することができるように、チューブ160,162,164は可撓性及び十分な長さを有することが好ましい。ガス流の送達時の温度は要求範囲内にすべきなので、装置100の使用時は、気体処理器120を気体が送達される位置のすぐ近傍に配置することが好ましい。
【0024】
フィルタ110は、随意的な構成要素であり、その細孔サイズが、好ましくは、気体供給シリンダ又は気体調節器10の内部で発生する全ての固形微粒子及び細菌性若しくは真菌性物質を排除することができるくらい小さい(すなわち、0.5ミクロン以下、好ましくは約0.3ミクロン)、高性能な疎水性フィルタ(例えば、Gelman Sciences Metricel M5PU025)から構成される。好ましいフィルタとしては、例えば、ガラス繊維型フィルタ(例えば、Metrigard by Gelman Sciences or Porous Media Ultraphobic filter, Model DDDF 4700 M02K-GB)などの疎水性フィルタがある。他の適切なフィルタとしては、例えば、ポリサルフォン(Supor, HT Tuffrin, Gelman Sciences)や、混合繊維素エステル(GN-6 Metricel, Gelman Sciences)などがある。フィルタ110の細孔サイズが0.1ミクロン以下になると、気体の圧力損失が大きくなり、流速が著しく減少する。実施しようとする処置が、比較的高圧力及び/又は高流速の気体を動物に送達させる必要がある場合(例えば、腹腔鏡検査の場合)は、細孔サイズを0.2ミクロン以下にしないことが好ましい。疎水性フィルタは、腹水又は洗浄水の誤った吸引又は吸い上げに起因して生じる水圧によって裂ける可能性が低いの。よって、親水性フィルタよりも疎水性フィルタを用いることが好ましい。
【0025】
ある用途では、気体調節器120の出口から動物の内部の導管又は連結部までの気体移送距離が最短になるように、気体調節器120を気体送達装置のすぐ近傍に配置することが望ましい。このように配置することの目的は、動物に送達させる気体の温度及び水分含有量を、体内又は他の体表面の生理的温度等と十分に近い温度等に保つことにある。すなわち、ある用途では、本発明に係る装置が、きわめて小型であり動物のすぐ近くに配置することが可能な高性能な処理チャンバーを備えていることにより、気体が動物に送達されるまでに熱力学的に冷却されることを防止する。
【0026】
制御モジュール140は、電気ハウジング210の内部に収容され、絶縁された電気ケーブル170の中に含まれる何本かのペア線によって気体調節器120に接続される。特に、電気ケーブル170の一端には、制御モジュール140用の電気ハウジング210の回路コネクタ212と電気的に接続するコネクタ172が設けられる。電気ケーブル170の他端は、密閉された電気接続端子174によって、気体処理部120に電気的に接続される。電気ケーブル170は、プラスチックテープ又はクリップ176によって、第2のチューブ162に取り付けられる。あるいは、電気ケーブル170は、熱融着、押出成形、超音波溶接、若しくは接着剤によって第2のチューブ162に取り付けられる、又は、第2のチューブ162の内部に挿入される。
【0027】
制御モジュール140及びそれに関連する気体調節器120内の構成要素は、AC/DC変換器180を電源とすることが好ましい。AC/DC変換器180は、プラグコネクタ182によって、制御モジュール140内の回路の電源コンセント214に接続される出力端子を有する。また、AC/DC変換器180は、標準的なAC電源出力端子に接続することができる、標準的なAC電源出力プラグ184を有する。例えば、AC/DC変換器180は、手術室の他の装置にも使用されるAC電源コードに接続される。あるいは、装置100の電力は、電池や太陽光電源から供給される。他の方法としては、制御モジュール140の内部に、DC信号ではなく、AC信号で動作する回路を設ける方法がある。この場合、制御モジュール140を、AC出力によって直接的に駆動させることができる。制御モジュール140、並びに、気体処理部120の内部の加熱及び加湿要素の詳細については後述する。
【0028】
ある実施形態では、気体処理部120は、薬剤及び/又は加湿溶液の供給を受け取ることができる充填口190を有している。充填口190には、例えば所定量の液体薬剤が充填されている注射器200が挿入され、気体処理部120に前記液体薬剤を初充填又は再充填する。装置100は、初回の充填が不要なように、気体処理部120に薬剤及び/又は加湿溶液が予め充填された状態で販売され得る。
【0029】
図2を参照しつつ、気体処理部120について詳細に説明する。気体処理部120は、気体入口124と気体出口126を有するハウジング122を備えている。ハウジング122は、チャンバー128を規定する。チャンバー128は、入口124から供給された気体を薬剤によって処理するための処理サブチャンバーを含む。また、いくつかの実施形態では、チャンバー128は、加熱及び加湿を実質的に同時に行う構成要素、並びに、チャンバー128から排出される際の気体の温度を検出する温度検出手段136及び相対湿度を検出する相対湿度検出手段138を含む。
【0030】
特に、図2に示す実施形態では、チャンバー128の内部には、液体を保持する又は薬剤を吸収する1つ又は複数の層130,131,132から成るサブチャンバーが設けられている。当然のことながら、液体保持層130,131,132の数、間隔及び吸収能力は、目的によって異なる。この3つの層は、一例として示しているのにすぎない。層130,131,132の材料としては、例えばレーヨン/ポリエステルなどの、任意の好ましい液体保持又は吸収材料(例えば、Johnson & Johnson Medical, Incにより製造され販売されるNU GAUZE(TM))を用いることができる。選択された材料の細孔サイズは、液体保持能力と圧力損失とのバランスを考慮して選ぶ必要がある。細孔サイズを大きくすると、気体をエアロゾル化すべく気体と接触させるための、液体保持能力が大きくなる。
【0031】
処理サブチャンバーの他の形態は中空のチャンバーから成り、反対端に気体を通過させるための半透性膜を有するチャンバー128(吸収層を有さない)内に、液体が入れられるサブコンテナ又はサブチャンバーが設けられる。チャンバー内の薬剤は、随意的に、チャンバーの周囲に設置された加熱ジャケットによって加熱される。
【0032】
気体処理部120の内部に設けられる加熱手段は、少なくとも1つの加熱素子134から構成される。加熱素子134は、ハウジング122の内部に、例えば吸収層130,131の間に設置される。加熱素子134は、例えば、電気抵抗線である。加熱素子134は、複数の吸収層の間に配置する、又は吸収層の材料内(繊維内)にエンメッシュ(enmesh)することが好ましい。加熱素子134は、制御モジュール140から送信される加熱制御信号の制御下で、入口124から供給された気体を加熱する。前記加熱は、気体がチャンバー128を通過する際に、気体の処理と実質的に同時に行われる。また、チャンバー内に、さらなる加熱素子を設置することもできる。
【0033】
気体処理部120から排出される際の気体の温度及び湿度を検出するために、温度センサ136及び相対湿度センサ138が設置される。温度センサ136は、チャンバー128内の気体流路の任意の場所に配置することができるが、加熱素子134の下流における複数の液体保持層の間に配置することが好ましい。温度センサ136は、サーミスタ(例えば、Thermometrics MA100 Seres chip thermistor、又はThermometrics Series BR23, Thermometrics, Inc., Edison, New Jersey)である。温度センサ136の誤差範囲は、約0.2℃であることが好ましい。本発明では、装置のその場所における気体を処理した際の温度変化が修正され、エンタルピー変化と相殺されるので、気体の温度は気体を処理した後(及び、随意的に加湿された後)に検出することが好ましい。
【0034】
湿度センサ138は、チャンバー128から排出される気体の流路上に配置される。湿度センサ138は、加熱素子134の下流における複数の液体保持層の間、又は、前記吸収層の下流におけるハウジング122の出口126の近傍に配置されることが好ましい。湿度センサ138は、前記層と接触しないことが好ましい。図2に示す実施形態では、湿度センサ138は、複数の吸収層の終端側に位置し、ハウジング122の内部に広がる多孔性のメッシュ(プラスチック又は金属)層133によって、液体保持層132から隔てられている。湿度センサ138は、実際に、多孔性メッシュ層133と接触しておらず、前記層133から十分に離間している。
【0035】
湿度センサ138は、ある実施形態では、湿度の変化に応じて電気容量が変化する、湿度に敏感な電気容量式センサ(例えば、Philips Corporation製の電気容量式湿度センサ)である。湿度センサ138は、気体湿度をモニタリングすべく、及び、気体処理部120(すなわち、層130、131及び132)に残っている加湿溶液の量を検出すべく、チャンバー128を通過する際の気体の相対湿度を測定する。後述するように、ある実施形態では、湿度センサ138には、計時/除算集積回路(IC)145(図5参照)が接続される。集積回路IC145は、ハウジング122内の、湿度センサ138と実質的に同一の場所に配置されることが好ましい。気体の湿度を測定するための他の測定手段も、本発明の範囲に含まれる。
【0036】
図2に示した気体処理部を使用して、気体を1つ又は複数の薬剤によって処理する方法の1つとしては、注入口190を介して注射器200からチャンバー128の内部に液体薬剤を注入して、層130〜132の1つに吸収させる方法がある。ガス流が層130〜132を通過すると、ガス流は前記薬剤によって処理される。その結果、前記薬剤を、気体処理部120から動物に搬送することができる。チャンバー128内に導入することができる薬剤の量は、使用される吸収パッドのサイズ及び種類に依存する。また、大きいサイズの吸収パッドに対応すべく、チャンバー128のサイズを大きくすることにより、薬剤の導入能力を高めることができる。
【0037】
本発明のいくつかの他の実施形態について、図3〜9及び図12〜15を参照しつつ説明する。これらの実施形態では、気体処理部120のハウジング122を通過するガス流を1つ又は複数の薬剤で処理するのに効果的な、異なる構造のハウジング122が示されている。また、これらの実施形態では、薬剤を収容し、その薬剤を気体処理部120のチャンバー内のガス流に放出するための、異なる種類の容器が示されている。
【0038】
図3及び4は、例えばハウジング122の特定の長さ部分にまで延びた(ハウジングの全長に渡って延びる必要はない)3つのチャンバー128A、128B及び128Cなどの、複数のチャンバーを有するハウジング122の実施形態を示している。これらのチャンバーは、壁又はパーティション202、204及び206によって隔てられている。チャンバー128A、128B及び128Cには、それぞれ、外付けのバッグや注射器などの各供給源からの薬剤の供給を受け取る充填口190A、190B及び190Cが設けられる。薬剤は、加圧下で、各充填口を介してチャンバーに送達される、又は充填口からチャンバー内に挿入されたバッグの小さい開口から放出される(図5及び6)。別の実施形態では、各チャンバー128A、128B及び128Cは、図2に示した実施形態と同様に、所定量の薬剤を吸収する1つ又は複数の吸収パッド又は吸収層をその内部に有する。さらなる別の実施形態では、異なる薬剤が充填された各チャンバーに、半透性の分離膜が設けられる。
【0039】
各チャンバーには、異なる種類の薬剤を充填することができる。例えば、チャンバー128Aに加湿溶液を充填し、チャンバー128Bに薬剤Aを充填し、チャンバー128Cに薬剤Bを充填することができる。図3及び4には図示していないが、図3及び4に示すハウジングの実施形態では、随意的に、図2に示した加熱素子、温度センサ及び相対湿度センサを様々な配置で含むことができる。図3及び4の実施形態では、ガス流がハウジング122を通過するとき、ガス流は、チャンバー128Aから加湿溶液を取り込み又は取り出し、チャンバー128Bからの薬剤Aと混合され、チャンバー128Cからの薬剤Bと混合される。したがって、動物に送達するためにハウジング120から排出されるガス流は、加湿される及び薬剤で処理される。
【0040】
図5及び6は、ガス流によって搬送される薬剤がバッグに収容されている、別の実施形態を示している。図5では、例えば、それぞれ所定量の薬剤を収容する2つのバッグ220及び230が示されている。この装置は、バッグ220及び230に所定量の薬剤を予め装填又は充填した状態で出荷することができる、又は、使用する前に所定量の薬剤を充填することができる。バッグ220及び230は、例えばポリエチレン又は他の同様の材料などの、可撓性材料から作成される。ある実施形態では、バッグ220及び230は、その中に収容された薬剤が、バッグの表面を通ってハウジング122を通過するガス流によって取り込まれるように、半透性の膜材料から形成される。他の実施形態では、ハウジング122内のバッグ220,230の一方の端部は、それぞれ、制限オリフィス、ノズル又は孔222及び232(前記薬剤をガス流と接触させて混合させるためのスプレー孔又は噴霧孔)である。バッグ220,230の他方の端部は、それぞれ、所定量の薬剤のバッグ220及び230への導入を可能にする、随意的な充填口224及び234である。ハウジング122には、バッグ220及び230の全長をチャンバー内に入れるための開口が設けられる。
【0041】
バッグが充填されている場合、バッグはチャンバー128内部で膨張する。バッグ220及び230内に充填された所定量の薬剤の圧力及び/又は孔222及び232での毛管現象は、薬剤を孔222及び232から外に滴下させる。このことにより、薬剤は、チャンバー128を通過するガス流によって取り込まれ又は取り出され、ハウジング122の出口ポートから搬出される。バッグ220及び230を半透性の膜材料から形成する実施形態では、バッグ内に充填された所定量の薬剤の圧力が、薬剤が膜を介して取り込まれることを促進する。バッグ220及び230は、それらが充填され膨張したときに、実質的にチャンバーの所定の領域内にとどめられ、他のバッグを通るガス流を妨げないように、チャンバー128内に配置される。例えば、加熱コイル124又は吸収パッドを使用して、チャンバー128内でバッグ220と230を隔てることができる。
【0042】
図5は、2つのバッグ220及び230のみを図示しているが、当然のことながら、ガス流によって搬送する薬剤の種類の数に応じて、1つ又は複数のバッグを使用することができる。
【0043】
図6は、図5の実施形態の変形例を示す。図6の実施形態では、バッグ220及び230は、ハウジング122の外側又は外部に配置される。この実施形態では、ハウジング122に開口が設けられ、バッグの孔222及び232は、ハウジング122の前記開口のちょうど内側に配置される。薬剤は、孔222及び232から連続的に送出され、チャンバー128を通過するガス流に取り込まれる又は取り出される。さらに、バッグ220及び230内の薬剤は、蒸気圧の変化によって孔222及び232からガス流に取り込まれるという自然的な傾向がある。その理由は、ガス流は比較的乾燥しているが、バッグ220及び230内の薬剤はある程度の水分を含有しているため、蒸気圧平衡を達成しようとして、水分を含有している湿潤薬剤がバッグから取り込まれるという自然的なメカニズムが生じるからである。ガス流の流速が速いほど、バッグ220及び230からガス流に取り込まれる薬剤は少なくなる。図5の実施形態にも、同じ動作理論が当てはまる。
【0044】
ハウジング122の外側に配置した場合も、バッグ220及び230は、図5を参照して説明したのと同様な方法で、各々の充填口224及び234を介して充填することができる。バッグの数は、特定の用途に応じて変更することができる。図5及び6は、一例として、2つのバッグを示しているだけである。ハウジング122の加熱、加湿及び検出に関するその他の全ての機能を、図5及び6に示した実施形態に適用することができる。
【0045】
図5及び6に示した実施形態のさらなる変形例は、バッグから、ハウジング122の内部に配置された随意的な吸収パッド130まで延びる、随意的なチューブ部材250を備えている。
【0046】
1つ又は複数の薬剤をガス流中に放出するさらなる実施形態を、図7及び8に示す。図7では、ハウジング122のチャンバー128内に、細長いチューブ部材300が配置されている。チューブ部材300は非常に長く、チャンバー128内の全域を蛇行している(図7では図示を単純化している)。チューブ部材300としては、例えば、MicroLumen社(フロリダ州タンパ)製のポリアミドチューブ製品を用いることができる。チューブ部材の重要な特徴は、チューブ部材300が搬送することが可能な薬剤の量を最大化するために、チューブ部材300の側壁の厚さができる限り薄くされたことである。チューブ部材300の先端又は末端は、ガス流内に薬剤を連続的に送出又は排出する、制限オリフィス又は孔310である。そして、各々が異なる種類の薬剤を収容する、複数のチューブ部材が設置される。また、チューブ部材300に所定量の薬剤を供給するために、ハウジング122のすぐ外側に位置するチューブ部材300の近位端には、充填口312が設けられる。
【0047】
図8は、図7に示した実施形態の変形例を示す。図8の実施形態は、薬剤をチャンバー128内に放出する1つ又は複数の孔又はミシン目410がその長手方向に沿って形成されたチューブ部材400を備えている。チャンバー128を通過するガス流は、孔410から薬剤を取り込み又は取り出し、ガス流によって薬剤を搬送する。チューブ部材400は、チューブ部材300の充填口312と同様の充填口412を有する。また、複数の種類の薬剤をガス流に放出するために、チャンバー内に複数のチューブ部材400を設けることもできる。各チューブ部材400の長さ、並びに、孔412の数及びサイズは、チャンバー128を通過するガス流に取り込まれる又は取り出される、異なるチューブ部材400からの異なる薬剤の速度を制御すべく選択される。
【0048】
図2〜8に示した実施形態では、気体処理部のハウジング122のチャンバー128のサイズは、使用目的、ガス流、薬剤の種類、吸収パッドの有無及び吸収パッドの枚数などに応じて変更することができる。本発明を実施するためのチャンバーのサイズは、限定されるものではなく、比較的小さい又は比較的大きいという制限はない。
【0049】
図9は、さらなる別の実施形態を示している。図9の実施形態が備えるインクジェット印字ヘッドカートリッジ500は、1つ又は複数の所定量の薬剤を含有する蒸気泡を、ハウジング122のチャンバー128内に放出するために使用される。インクジェット印字ヘッドカートリッジ500は、ヒューレット・パッカード社、キャノン社などが販売するインクジェットプリンタで使用されるような、周知のインクジェット印字ヘッドである。
【0050】
当該技術分野では周知のように、インクジェット印字ヘッドカートリッジ500は、貯留容器510、印字ヘッド520、及び複数のコンタクトパッド530を備える。カートリッジ500の導電配線は、コンタクトパッド530によって終端される。コンタクトパッド530は、一般に、プリンタと相互接続するように設計されている。そして、コンタクトパッド530が、プリンタの電極と接触し、外部で生成された通電信号を印字ヘッド520に供給することによって、インクを紙に吹き付ける。サーマルインクジェット印字ヘッドは、複数の加熱器の表面でインク温度を過熱限界まで上昇させることによって、蒸気泡を生成する。これと同じ方法を使用して、1つ又は複数の薬剤の蒸気泡を生成することができる。印字ヘッド520は複数のノズル522を有し、前記加熱器に電圧が印加され、貯留容器に貯留された所定量の薬剤が加熱されると、ノズル522から蒸気泡が放出される。
【0051】
本発明では、インクジェット印字ヘッドカートリッジ500は、コンタクトパッド530に適合する接点を有するコネクタ610を介して、制御回路600に接続される。制御回路600は、図1に示した制御モジュール140の内部に含めることができ、電気ケーブル170の中に含まれる1つ又は複数の導電体によってカートリッジ500に接続される。貯留容器510には、チャンバー128の内部に放出される、1つ又は複数の所定量の薬剤が充填される。例えば、カラーインクジェット印字ヘッドカートリッジは、3色の各インク用の、複数のチャンバー又は貯留容器を備えている。これと同一種類の装置を使用すると、インクジェット印字ヘッドカートリッジは、制御された量で個別に又は同時にチャンバーに送達される、所定量の複数の異なる種類の薬剤を含むことができる。コネクタ610を介してカートリッジ500に接続される制御回路600は、印字ヘッド520内の加熱器を駆動する、及び1つ又は複数の薬剤の蒸気泡をノズル522からチャンバー内に放出するための適切な制御信号を生成する。
【0052】
1つ又は複数の薬剤がチャンバー128内に放出されると、チャンバーを通過するガス流が、薬剤をハウジング122の出口ポートから搬出して動物へ搬送する。個々の薬剤はそれぞれ、チャンバー128内に異なる速度又は量で放出することができる。さらに、チャンバー128内の別個の各サブチャンバーに、異なるインクジェット印字ヘッドカートリッジを設け、動物に送達する前の所定の期間、薬剤が混合されないようにすることも可能である。
【0053】
再び図2を参照して、気体処理部120のハウジング122内部の構成要素への電気的接続は、以下のとおりである。温度センサ136、加熱素子134及び相対湿度センサ138・計時/除算器145の各装置は、接地又は通電導体(特に図示せず)と接続される。ワイヤ175(プラス側の導線)は、加熱素子134と電気的に接続され、ワイヤ176(プラス側の導線)は、温度センサ136と電気的に接続される。また、3本のワイヤ177A、177B及び177Cは、相対湿度センサ138・計時/除算回路と電気的に接続される。ワイヤ177AはDC電源を計時/除算器145に供給し、ワイヤ177Bは許可信号を計時/除算器145に供給し、ワイヤ177Cは計時/除算器145から出力信号(データ)を搬送する。全てのワイヤは、絶縁ケーブル170から接続端子174内に供給され、ハウジング122の小さな孔を介してチャンバー128内に入る。接続端子174は、ケーブル170の周囲の開口178においてを密閉される。
【0054】
充填口190は、ハウジング122の側方延長部139に取り付けられる。充填口190は、再密閉可能部材194を有する円筒形の本体192を備える。再密閉可能部材194には、注射器又は類似装置を、その先端の外側周囲を密閉した状態で挿入することができる。このことにより、前記注射器等の中に既に充填された液体を放出することなく、所定量の液体薬剤又は加湿溶液を、チャンバー128の内部に送達させることができる。再密閉可能部材194としては、例えば、Baxter社製のBaxter InterLink(登録商標)インジェクションサイト、2N3379を用いることができる。また、充填口としては、注射器又は類似装置を挿入可能な、一方向弁、密閉可能なポート、スクリューキャップ、溝付キャップなどを用いることができる。前記類似装置としては、例えば、B. Braun Medical社製のSafeline(登録商標)インジェクションサイト、部品番号NF9100、又は、注射器の挿入及び収容された液体又は気体の逆流の防止が可能な他のカバー材料若しくは部材がある。気体処理部120で処理される気体の湿度が、所定の又はユーザがプログラムした相対湿度を下回ると、制御モジュール140が警告を発する(詳細については後述する)。
【0055】
別の形態では、又は上述の検出及び監視機能に加えて、液体薬剤及び/又は加湿溶液用の補助又は予備供給容器が設けられる。再び図1を参照して、補助供給容器のある形態は、装置100からだらりと垂れ下がった容器800である。容器800は、アクセスチューブ810によって充填口190に接続される。容器800は、例えば静脈内輸液バッグなどのバッグであり、アクセスチューブ810は静脈注射タイプのチューブである。
【0056】
補助供給容器の他の形態は、装置100の一部に取り付けられる容器850である。容器850は、例えば、チューブ状の容器、バッグ、注射器又はタンクである。容器850は、気体処理部120の近傍で、チューブ162に取り付けられる、又はストラップで固定される。別の形態では、容器850は、気体処理部120のハウジング122の外側に、ストラップで固定される。容器850は、上述のアクセスチューブ810の場合と同様に、アクセスチューブ860によって充填口190に接続される。
【0057】
アクセスチューブ810及び860は、その先端に透過膜(図示せず)を有しており、充填口190を貫通して、気体処理部120のハウジング122のチャンバー128に接続される。また、アクセスチューブ860の代わりに、容器850における充填口190に近接する側の端部に注射器200の先端部材と同様の先端部材を設け、充填口190に直接的に挿入して充填口190を貫通させることもできる。
【0058】
容器800及び850は、当該技術分野では周知の技術を用いて、予め充填する又は使用する前に充填することができる。例えば、容器850は、容器850に液体を注入するための注入部位862を有している。
【0059】
補助供給容器800及び850のアクセスチューブ810又は860(又は容器850と一体になった貫通用の先端)は、容器中の液体を毛管力によって層130〜132の1つに放出すべく、層130〜132の1つと接触できるように、充填口190を通り抜けて十分に長く延びることが好ましい。また、アクセスチューブ810又は860(又は容器850と一体になった貫通用の先端)の長さを層130〜132の手前までの長さとし、ハウジング122を通過するガス流により生成される圧力差によって、これら部材の端部から液体薬剤及び/又は加湿溶液を放出させて気体の処理を行うようにしてもよい。
【0060】
図2に示す別の変形例では、延長チューブ870によって、アクセスチューブ810又は860(又は容器850と一体になった貫通用の先端)が終端する充填口190から、チャンバー128内部の処理サブチャンバーまで導き、1つ又は複数の層130〜132に接触させている。液体薬剤及び/又は加湿溶液は、延長チューブ870の端部から層130〜132の1つに、継続的に放出される。
【0061】
いずれの形態の補助供給容器も、基本原理は同じである。補助供給容器は、充填口190を介してチャンバー128内の処理サブチャンバーに接続され、処理サブチャンバー(例えば1つ又は複数の層130、131又は132)に常に補給を行う。処理サブチャンバーは、予め充填された又は使用前に充填された、初期量の液体薬剤及び/又は加湿溶液を有する。そして、チャンバーを通過するガス流によって、補助供給容器からの補助供給が処理サブチャンバーに常に供給されるので、処理サブチャンバーは常に充填される。そのため、気体の十分な加湿及び/又は処理に要する全時間は、全ての又はほぼ全ての気体送達用途に適合する存続時間まで長くなる。その結果、送達される気体の湿度の低下を考慮する必要はない。補助供給容器は、全体の処置に渡って気体の加湿及び/又は処理を提供するための補助機能を果たす。したがって、装置100のある形態では、ここで記載した、湿度及び温度の検出及び監視機能、又は再充電警報を備える必要はない。また、補助供給容器の代わりに又は補助供給容器に加えて、特定の用途に有用であり得る別の種類の補助を設けることもできる。
【0062】
気体処理部の望ましい幅及び直径は、使用目的、気体発生源からのガス流の速度、及び維持されるべき圧力(チャンバー128の長さよりも、チャンバー128の直径の方により大きく影響される)などの、複数の要素によって決定される。当業者であれば、ここで与えられた教示及び例示から、過度の実験を行うことなく、チャンバー128の適切な寸法を容易に決定することができるであろう。しかし、装置を起動する又は装置に関する要求(例えば、流速又は圧力)を変更する場合、適切な気体温度又は所望する温度を達成すべく気体の温度を検出し加熱素子を調整するためのラグタイムはわずか10分の数秒しかないことに留意されたい。このような高速の起動時間は、極めて有益である。
【0063】
図10は、加熱素子134の詳細を示している。加熱素子134は、複数回(例えば、6〜8回)の巻きを有する同軸コイル構造の電気抵抗線であり、ハウジング128に配置される。あるいは、第2の加熱素子134´が設けられる。加熱素子134´は、そのコイルが、第1の加熱素子134のコイルに対して、チャンバーを通過するガス流の方向にオフセットされるように配置される。2つ又は複数の加熱素子を用いる場合、それらが気体処理部のチャンバー内で、互いに約3〜4mmの距離で離隔して配置されることが好ましい。第1の加熱素子134及び第2の加熱素子134´のコイルの巻き方向は、互いに反対方向にすることもできる。このようにすると、チャンバーを通過するガス流と加熱素子との接触が最大化する。加熱素子134は、コイルを使用しない他の構造を用いることもできる。
【0064】
図11は、気体処理部120の他の形態を示している。ハウジング122の注入口及び/又は出口には、気体処理部120に供給される気体を全体に拡散しやすくするための、溝付の表面123が設けられている。溝付の表面123は、チャンバー128を通過するガス流の動態を改善し、ガス流がチャンバー128を通過する際に、均一に加熱及び加湿されるようにする。
【0065】
図12及び13は、ガス流を固相薬剤で処理するための装置の実施形態を示す。図12は、固相薬剤の容器700を示す。容器700は、例えば動力内蔵式であり、気体処理部のハウジング122のチャンバー128内に配置される。容器700は、チェックバルブ710及び加圧器(二酸化炭素カートリッジなど)720を含む。加圧器720が起動すると、容器700内部の圧力が上昇し、チェックバルブ710の付勢を抑えて、薬剤をチャンバー128に放出する。ハウジング122の外側に設けられたボタン730は、ワイヤ又はその他の手段によって加圧器720に接続され、加圧器を遠隔操作によって起動させる。
【0066】
図13は、固相薬剤の容器700が、ハウジング122の外側に配置される場合を示している。容器700のチェックバルブ710は、ハウジング122に設けられた開口を介してチャンバー128の内部に貫通接続している。加圧器を起動させるためのボタン730は、随意的に容器700の外側に配置される。図13に示した構造の動作は、図12に示した構造の動作と同様である。
【0067】
図12及び13に示す実施形態では、固相薬剤がチャンバー128内に放出される速度は、加圧器720によって容器700内で生成される圧力及びチェックバルブ710のサイズに依存する。固相薬剤をガス流に一気に送達すること、又は、固相薬剤をガス流に継続的に送達することが望ましいと思われる。必要ならば、ガス流を長期間に渡って処理するために、別個の圧力補助発生源を容器700に接続させることもできる。いずれの場合でも、ハウジング122を通過するガス流は、固相薬剤を出口ポートから搬出する。
【0068】
図14は、制御モジュール140の詳細を示す。制御モジュール140は、装置100用の監視回路及び制御回路を含む。当然のことながら、装置100のある形態では、湿度(及び加熱)検出、監視、温度制御及び再充電警報機能を含む必要はない。制御モジュール140は、電圧調節器141、マイクロコントローラ142、A/D変換器143、デュアルオペアンプ(以下、「オペアンプ」という。)、モジュール144、及び計時/除算器145を備える。制御モジュール140の監視回路部は、マイクロコントローラ142及び計時/除算器145の組合せからなる。制御モジュール140の制御回路部は、マイクロコントローラ142、A/D変換器143及びオペアンプモジュール144からなる。監視回路は、計時/除算器145が生成する信号に基づいて、チャンバーから排出される気体の相対湿度を監視する。制御回路は、チャンバーから排出される気体の温度を監視し、監視結果に基づいて加熱素子への電力を制御し、気体の温度をユーザがプログラムした又は所定の温度若しくは温度範囲に調節する。チャンバーから排出される気体の温度は能動的に制御されるが、チャンバー内の気体の相対湿度は能動的に制御されない。その代わり、相対湿度を監視し、所定の閾値を下回ったときに警報を発生し、気体処理部120に液体薬剤又は加湿溶液を補給するなどの適切な対応を行うようにする。
【0069】
図14に示すように、複数の構成要素は好ましくは電気ハウジング210(図1参照)の内部に配置され、その他の構成要素は気体処理部120(図2参照)のハウジング内部に配置される。特に、計時/除算器145及びそれに付随する抵抗R4及びR5は、好ましくは、気体処理部120のハウジング122内に、回路パッケージ内に収容された相対湿度センサ138と共に配置される。相対湿度センサ138は、回路パッケージの1つ又は複数の表面上に露出される。より詳しくは、計時/除算器145は、相対湿度センサ138と同一位置に配置される。この構造は、浮遊配線インダクタンス及び浮遊容量によるタイミングエラーを最小限に抑えることができる(センサは、計時/除算器145の能動回路に近接している)。さらに、計時/除算器145及び相対湿度センサ138を同一位置に配置することによって、ワイヤの相互接続が不要となるため、望ましくない信号輻射を防止することができる。
【0070】
電圧調整器141は、AC/DC変換器180(図1)から、制御モジュールのアナログ構成要素に使用するのに適したDC出力(例えば、DC9V)を入力として受け取る。電圧調整器141は、前記電圧を調節して、制御モジュールのデジタル構成要素に使用される低電圧(例えば、DC5V)を生成する。当技術分野では周知のように、電圧調整器141の出力側のキャパシタC1は、様々なAC構成要素をフィルタにかける役割を果たす。また、バッテリ又は太陽光電源から適切なDC電源が提供されることが、参照符号149で示されている。
【0071】
マイクロコントローラ142は、マイクロコントローラIC、PIC16C84であり、システムの動作を制御する。セラミック共振器146(4MHz)は、信号処理機能用のクロック信号を生成するために使用される未加工のクロック信号を、マイクロコントローラ142のピン15及び16に供給する(詳細については後述する)。
【0072】
オペアンプモジュール144は、ワイヤ176を介して、気体処理部のハウジングに取り付けられた温度センサ(サーミスタ)136に接続される。オペアンプモジュール144は、例えば、2つのオペアンプ(以下、「オペアンプA」及び「オペアンプB」という)を有する、低入力オフセット電圧デュアルオペアンプIC、LTC1013である。オペアンプモジュール144のオペアンプAの非反転入力はピン3であり、反転入力はピン2である。オペアンプAの出力は、ピン1である。オペアンプモジュール144のオペアンプAは、抵抗R1及びR2より形成される電圧分配器の出力電圧のバッファとして用いられる。バッファ出力電圧Vxは、オペアンプモジュール144のオペアンプBに印加される。オペアンプBは、ゲインが21.5の非反転オフセット補正アンプとして設定される。また、オペアンプBは、抵抗R3によって調整される温度センサ136の出力(電圧Vy)を入力として受け取る。オペアンプBの出力電圧VOは、ピン7である。出力電圧VOは、21.5Vy〜20.5Vxと等しく、気体処理部のハウジング内の気体温度と反比例する。出力電圧VOの範囲は0〜DC5Vであり、チャンバー内の気体温度によって決定される。
【0073】
A/D変換器143は、アナログデジタル変換IC、ADC0831であり、オペアンプモジュール144の出力VOを、ピン2で入力として受け取る。A/D変換器143は、出力電圧VOを表す複数ビットのデジタル言語(例えば8ビットからなるデジタル言語)を生成して、出力としてピン6からマイクロコントローラ142のI/Oピン8に供給する。マイクロコントローラ142は、I/Oピン10からA/D変換器143のチップ選択ピン1へ制御信号を出力することによって、A/D変換器143にデジタル言語を出力するように命令する。さらに、マイクロコントローラ142は、ピン9からA/D変換器143のクロック入力ピン7へ一連のパルスを出力することによって、A/D変換器143がデジタル言語を出力する速度を制御する。抵抗R1、R2及びR3の「不平衡ブリッジ」の値は、約20〜45℃の気体温度の範囲で、0〜5VのDC出力を生成するように選択される。ブリッジ及びA/D変換器143の基準電圧は同一のDC5V発生源から提供されるので、様々な基準電圧の変化に起因するエラーを防止することができる。
【0074】
計時/除算器145は、例えば、精密計時/除算IC、MC14541である。相対湿度センサ138は、ピン2、並びに、抵抗R4及びR5に接続される。計時/除算器145は、マイクロコントローラ142のピン12から計時/除算器のピン6へ出力された許可信号に応じて、抵抗R4の値、相対湿度センサ138の静電容量(気体処理部のハウジング内部における気体の相対湿度により変化する)、及び所定の除算定数によって決定される速度で発振する出力信号を生成する。除算定数は、例えば256である。具体的には、計時/除算器145の出力信号は方形波であり、おおよそ、1/[256*2.3*R4t*Ct]Hzの周波数で、0V(「低」)乃至5V(「高」)で発振する。ここで、R4tは、例えば56キロオームであり、Ctは、チャンバー内の気体の相対湿度によって決定される相対湿度センサ138のある時間(t)における静電容量である。上述の相対湿度センサは、例えばPhillips Electronics社製であり、10〜90%RH(相対湿度)の範囲を測定することができる。ここで、1%RH当たり0.4+/−0.5pFの感度のとき、43%RHにおけるCtは122pF(+/−15%)である。計時/除算器145の出力信号は、ピン8からマイクロコントローラ142のI/Oピン13へ出力される。したがって、計時/除算器145は、本質的に、相対湿度センサに接続された発振回路であり、相対湿度センサの静電容量に応じた周波数を伴う出力信号を生成する。周波数が可変静電容量によって決定される信号を出力として生成することができる様々な発振回路を、計時/除算器145に用いることができる。
【0075】
マイクロコントローラ142は、気体処理部のハウジング内における気体の相対湿度の測定を、計時/除算器145の出力信号の特性を計時又は計測することにより実行する。具体的には、マイクロコントローラ142は、計時/除算器145の出力信号における1つの位相の継続時間を測定する。例えば、「高」位相は、おおよそ、1/2*[256*2.3*R4t*Ct]である。上述したように、計時/除算器の発振速度は、相対湿度センサ138の静電容量によって決定されるため、前記継続時間は、気体処理部のチャンバー内における気体の相対湿度を示す。例えば、10〜50%及び/又は50%のRHが90%に変化する場合、計時/除算器出力信号の「高」位相の継続時間は13%変化する。マイクロコントローラ142は、このようにして、チャンバーから排出される気体の相対湿度を監視する。そして、マイクロコントローラ142は、相対湿度が所定の閾値を下回ると(対応する計時/除算器145の発振速度の所定の変化により示される)、トランジスタQ3を駆動するための信号(再充電信号)を生成してピン17から出力し、ブザー147などの音響警報装置を起動させる。ブザー147は、気体処理部内の気体の相対湿度が所定の閾値を下回り、気体処理部に液体を補給する必要があることを示す可聴音を生成する。所定の相対湿度閾値は、気体処理部から排出される気体の所望する相対湿度範囲における最低水準に相当し、例えば40%であり得る。所定の相対湿度閾値は、マイクロコントローラ142で調節可能又はプログラム可能なパラメータである。随意的に、マイクロコントローラ142は、発光ダイオード(LED)148Aを発光させるなどの別の警報信号を生成してピン7から出力し、気体処理部内の相対湿度が所定の閾値を下回ったこと及び気体処理部120に液体を補給する必要があることを視覚的に表示することもできる。さらに、マイクロコントローラ142は、「符号化障害」(発生は極めて少ない)があるとき、又は、気体処理部内の気体の相対湿度が臨界閾値(所定の相対湿度閾値より低い)を下回ったとき(例えば10%のとき)、異常又は警報信号を生成してピン6から出力し、LED148B(例えば、LED148Aと異なる色である)を駆動させることもできる。どちらの場合も、警報信号に応じて、加熱素子134への電力供給が遮断される。
【0076】
また、マイクロコントローラ142は、気体処理部の内部における気体の温度を調節するため、加熱素子134の制御も行う。したがって、マイクロコントローラ142は、A/D変換器143から供給されるデジタル言語を処理して、気体処理部のハウジングの内部における気体の温度を測定する。その測定結果に応じて、マイクロコントローラ142は、トランジスタQ1を駆動させる加熱制御信号を生成して出力ピン11から出力し、それによってMOSFETパワートランジスタQ2を駆動して加熱素子134に電流を供給する。気体処理部の内部における気体の温度は、気体が所定の温度範囲内で気体処理部から排出され患者の体内に送達されるように、マイクロコントローラ142によって調節される。気体が調節される所定の温度範囲は、約35〜40℃であり、好ましくは37℃である。上述したように、制御モジュール140の監視回路部によって測定された気体処理部の内部の相対湿度が臨界閾値を下回ると、それに応じて制御回路部は加熱素子134への電力供給を遮断し、非常に乾燥した暖かい気体が送達されることを防止する。
【0077】
気体の相対湿度を監視するための回路は、当該技術分野では周知の他の回路によって具現することもできる。また、制御モジュール140は、1つのマイクロコントローラ142によって、チャンバーから排出される気体の温度及び相対湿度を表す信号を監視するため、及び気体の温度を制御するべく加熱素子を制御すると説明してきたが、当然のことながら、前記監視及び制御の各機能は2つ又は複数のマイクロコントローラによって個別に行うこともできる。さらに、マイクロコントローラ142の機能は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル論理回路、マイクロプロセッサ又はデジタル信号プロセッサなどの他の回路によって達成することもできる。
【0078】
図15は、感湿キャパシタ138の代わりに感湿抵抗を使用して行う、気体の相対湿度の監視についての別の実施形態を示す。湿度検出スキームは、図14に示した計時/除算回路145を必要としない、抵抗性の相対湿度センサを用いる。感湿抵抗900は、気体処理部のハウジングの内部における、気体処理部120を通過するガス流の相対湿度を検出するのに適切な位置に配置される。適している感湿抵抗は、Ohmic社製の抵抗、型番UPS600である(45%RHで約30.7キロオーム)。抵抗R10は、電圧分配器の構造内で、感湿抵抗900と接続する。マイクロコントローラ142の3つのピンは、抵抗R10及び感湿抵抗900によって形成される電圧分配器と接続する。
【0079】
マイクロコントローラ142のピン910は抵抗R10の一方の端子と接続し、ピン912は感湿抵抗900の一方の端子と接続し、ピン914は抵抗R10と感湿抵抗900との間にある端子と接続する。感湿抵抗900は、AC励起を必要とするタイプであり得る。したがって、マイクロコントローラ142は、交流パルス(例えば5V)をピン910及び912に印加することによって感湿抵抗900を励起し、所定の期間に渡って、ピン912が「高」で、ピン910が「低」であるようにする。その結果、感湿抵抗900への平均励起電圧はゼロとなる。ピン910が「高」の期間中、マイクロコントローラ142は、ピン914にてタップ電圧が論理値「0」又は論理値「1」であるか否かを判断することによって、気体の湿度を検出する。感湿抵抗900の抵抗が低く、論理値が0(低電圧)の場合は、気体の相対湿度が依然として高いことを示す。感湿抵抗900の抵抗は高く、論理値が1(高電圧)の場合は、気体の相対湿度が低いことを示す。抵抗R10の値は、所望の相対湿度閾値で、ピン914に変化が生じるように選択される(例えば、45%RHで、低電圧から高電圧に2.5V遷移するように選択される)。抵抗R10の抵抗は、例えば30キロオームである。抵抗性の相対湿度センサを使用するある実施形態では、適しているマイクロコントローラは、PIC16C558である(図14を参照しつつ説明した上述の型番のマイクロコントローラと置き換えられる)。この検出スキームは、DC励起可能な相対湿度センサを使用する場合は、さらに簡素化することができる。この場合、湿度検出のために必要なのは、マイクロコントローラ142の1つのピンである。
【0080】
抵抗性の相対湿度センサは、容量性の相対湿度センサに対して様々な利点を有する。上述した特定種類の抵抗性相対湿度センサは、ユーザが誤って気体処理部120に水を充填しすぎた場合でも、気体処理部120内で水に浸されることに耐性があることが分かっている。また、抵抗性センサを使用する検出スキームは、ある装置使用環境では望ましくない比較的高い周波数の方形波信号を必要としない。そして、抵抗性センサは、ある用途では、相対湿度をより高い精度で検出することができる。
【0081】
図14に示した回路において、その他の変更又は拡張を行うことが可能である。マイクロコントローラは、例えばPIC16C715などの、A/D変換器143の機能を内蔵するタイプを使用することができる。マイクロコントローラ、PIC16C715は、複数チャネルのA/D変換器を内蔵している。さらに、液晶ディスプレイ(LCD)又はLEDディスプレイなどのディスプレイを追加することが可能な、より機能豊富なマイクロコントローラを使用することができる。このマイクロコントローラは、気体温度及び相対湿度などの情報を周期的に生成して、ユーザに表示することができる。さらに、マイクロコントローラは、警報装置を、図14で示したようにトランジスタを介して間接的に駆動するのではなく、直接的に駆動するようにしてもよい。これらは、制御モジュール140で使用するために選択されたマイクロコントローラの種類に応じて可能な変更又は変形例である。
【0082】
図1及び2を参照して、装置100の設定及び動作を説明する。AC/DC変換器180は、例えば壁コンセント又は電源コードなどの110VのAC電源に接続される。制御モジュール140は、AC/DC変換器180に接続される。また、装置100は、バッテリ又は太陽光電源から電源の供給を受けることもできる。チューブ160の一端をルアーロック166で注入器10の出口に取り付けることによって、加熱器/加湿チューブセットが設置される。装置100は、フィルタ110及び気体処理部120にチューブ160、162及び164が予め取り付けられた状態で販売され得る。ケーブル170は、制御モジュール140の電気ハウジング210にコネクタ172によって取り付けられる。
【0083】
気体処理部120は、注射器200から液体薬剤及び/又は加湿溶液が供給されることによって充填される。注射器200が充填口190に挿入され、注射器200の針又はカニューレが再密閉可能部材194(図2)を貫通する。そして、貫通した針又はカニューレから前記液体が気体処理部120に注入され、吸収層によって吸収される。注射器200は、その後、充填口190から取り外され、充填口190はそれ自身で密閉される。チューブ164の自由端は、ルアーロック168又は他の適切なコネクタによって、気体送達装置に取り付けられる。また、気体処理部120に予め液体が充填されている場合は、作動前に充填する必要はない。
【0084】
図5又は6の実施形態の場合は、バッグ220及び230には、所定量の1つ又は複数の薬剤が充填される(それらが予め充填されている場合を除く)。同様に、図7又は8の実施形態の場合は、チューブ部材300又はチューブ部材400には、所定量の1つ又は複数の薬剤が充填される(それらが予め充填されている場合を除く)。図9の実施形態の場合は印字ヘッド520のノズル522は、ハウジング122の開口と一致するように位置合わせされる。そして、図12又は13の実施形態の場合は、容器700は、図12及び13を参照しつつ上述したように使用できるように用意される。
【0085】
気体調節器10が作動すると、気体調節器は気体供給シリンダから気体を受け取り、気体の圧力及び流速を調節する。圧力及び流速は両方ともユーザが調節することができる。圧力及び体積流量は、気体調節器10の制御装置(図示せず)を調節することにより制御される。気体は、チューブ160を通って随意的なフィルタ110に流入してフィルタにかけられ、その後、チューブ162を通って気体処理部120に流入する。気体は、気体処理部120の内部で、図2で示したように気体の流路中に配置された随意的な電気式加熱素子134及び随意的な加湿液体保持層130〜132と接触する。
【0086】
図2〜9、12又は13の実施形態では、ガス流は使用される気体処理部に応じて所定量の1つ又は複数の薬剤で処理される。このことにより、1つ又は複数の薬剤が気体処理部120から搬出され、動物に送達される。ある用途及び温度範囲条件のために、気体処理部120は、処理された気体が送達される場所に極めて近接して配置されることが望ましい場合がある。
【0087】
また、気体の加熱及び加湿が所望され、適切な構成要素が気体処理部120内、ひいてはチャンバー128内に配置される形態では、気体は、加熱素子134及び層130〜132の液体容量を調節することによって、適切な生理学的範囲となるように同時に加熱及び加湿される。前記調節は、チャンバー128から排出される気体の温度が、予め選択された生理学的温度の範囲内(好ましくは35〜40℃である。しかし、様々な所望する温度範囲を予め選択することが可能である)及び予め選択された相対湿度範囲内(好ましくは40%を越える相対湿度。例えば、80〜95%の範囲の相対湿度)となるように行われる。ユーザが動作の開始前に液体薬剤及び/又は加湿溶液を手動で充填することを忘れて、又は装置が液体を予め充填しないまま販売され(すなわち、乾燥状態)、気体処理部120に液体薬剤及び/又は加湿溶液のどちらも充填されずに装置を作動させた場合は、気体処理部120のチャンバーの内部における気体の相対湿度の測定結果は所定の閾値を下回るため、警報が発せられ、気体処理部120に液体の充填が必要であることがユーザに警告される。装置は、気体処理部120に液体薬剤及び/又は加湿溶液を充填する必要があることをユーザに警告するための警報を自動的に発することによって、動物へ未加湿気体がさらに送達されることを防止する。
【0088】
図5を参照して、制御モジュール140は、チャンバーから排出される気体の相対湿度を監視し、チャンバー128内の気体の温度をさらに調節する。特に、チャンバー内の気体の相対湿度が所定の相対湿度閾値を下回ると、マイクロコントローラ142は再充填信号を生成し、気体処理部120が液体供給量の再充填を必要としていることを知らせる。ブザー147が発する警報音及び/又はLED148Aが発する視覚的な警報は、主治医又はユーザに、気体処理部120が再充填を必要としていることを警告する。マイクロコントローラ142は、気体処理部120に液体が再充填され、チャンバー内の湿度が所定の相対湿度閾値を上回るレベルに戻るまで警報を継続させることが好ましい。また、気体処理部120内の気体の相対湿度レベルが臨界相対湿度閾値を下回ると、マイクロコントローラ142は、LED148Bを発光させるなどの第2の警報を発し、その時点で加熱素子134への電力供給を停止する。さらに、マイクロコントローラ142は、加熱素子134に供給される電力を制御することによって気体の温度を制御する。
【0089】
ある場合では、湿度の制御は、加熱の制御よりも重要である。そのような場合は、装置は、(図7〜13の実施形態に基づいて)ガス流を1つ又は複数の薬剤で処理する構成要素、及びガス流を加湿するための構成要素のみを備える。さらに、ある場合では、ガス流の湿度の監視も、随意的なものである。例えば、ガス流を乾燥剤で処理する場合は、通常は、加熱又は加湿を必要としない。
【0090】
本発明の方法及び装置は、加熱された及び加湿されたガスの供給を必要とする様々な医療処置に使用することができる。また、医療処置に必要とされるガスの無菌性に応じて、随意的にろ過が行われる。ガスは、実施する医療処置に応じて選択される。ガスとしては、二酸化炭素、酸素、亜酸化窒素、アルゴン、ヘリウム、窒素、大気及び他の不活性ガスなどの、任意の医学上有用なガスを使用することができる。内視鏡検査に使用するのに望ましいガスは、二酸化炭素及び亜酸化窒素である。また、上記のガスの組み合わせも使用することができる(つまり、単一のガスを100%使用する必要はない)。医療処置としては、望ましくは、腹腔鏡検査、大腸内視鏡検査、胃鏡検査、気管支鏡検査及び胸腔鏡検査などの内視鏡検査がある。しかしながら、本発明は、加熱された及び加湿された、呼吸用の酸素若しくは任意の麻酔ガス又はこれらのガスの組み合わせを供給するのに、或いは麻酔若しくは呼吸療法を施すのに使用することもできる。特に、本装置は小型であり、携帯可能であるため、携帯が必要な用途での使用に適している。ガスを患者に直接接触させるガス送達装置は、行われる当該技術分野では周知の医療処置に応じて選択される必要がある。本装置によって調節される気体は、圧力、容積又はその両方が調節される。
【0091】
ある実施形態では、加熱器/加湿器120に供給される他の薬剤(上記の薬物)とは異なるいくつかの薬物を供給することが望ましい。薬剤によっては、加熱器/加湿器を使用して送気ガスを加湿及び加熱し、薬剤を別々に供給することが望ましい場合がある。あるいは、1つ又は複数の薬剤を、加熱器/加湿器を用いて供給することができる。また、1つ又は複数のさらなる薬剤は、送気ガスに個別に供給することもできる。
【0092】
薬剤は、例えば、腹腔鏡検査、大腸内視鏡検査、胃鏡検査及び/又は胸腔鏡検査、或いは膨張を必要とするその他の医療処置を行う間、ガス流を通じて供給することができる。一例としては、現在、これらの医療処置は、手術時は、例えば腹部に治療量の麻酔を投与する全身麻酔下で行われる(ただし、これに限定されるものではない)。しかし、手術を素早く行う場合及び患者の回復を速める場合は、全身麻酔を少量で行う又は全く行わない場合がある。例えば、虫垂切除術、胆嚢摘出術又は卵管結紮術は、全身麻酔なしで行われる場合がある。
【0093】
本発明を使用して、いかなる種類の薬剤も送達させることができる。医療処置の間にガス流で送達させることができる薬剤の主な例としては、麻酔剤、鎮痛剤、化学療法薬剤、抗感染症薬及び抗接着剤などが挙げられる。
【0094】
麻酔剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アルコール、ブピバカイン、塩酸クロロプロカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プロカイン、ロピバカイン及びテトラカインがある。
【0095】
鎮痛剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、エクセドリン(Excedrin)、タイレノール(Tylenol)、デイクイル(DayQuil)、ナイクイル(NyQuil)などの呼吸器系の薬剤、デュラクロン(Duraclon)及びウルトラム(Ultram)などの中枢作用性鎮痛剤、カルバトロール(Carbatrol)、ヒアルガン(Hyalgan)、リドダーム(Lidoderm)、ニューロピン(Nuropin)、ニューロンチン(Neurontin)、フェネグラン(Phenegran)及びテグレトール(Tegretol)などの様々な鎮痛薬、並びにヌベイン(Nubein)、ダルボセット(Darvocet)、ダイロディッド(Dilaudid)、Lortab、オキシコンチン(OxyContin)、ペルコセット(Percocet)及びバイコディン(Vicodin)などの麻酔薬がある。
【0096】
化学療法薬剤(別名:抗腫瘍薬)としては、これらに限定されるものではないが、例えば次のものがある。アルトレタミン、BCG、ブレオマイシン硫酸塩、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジンイミダゾールカルボキサミド(Dacarbazine imidazole carboxamide)、ダクチノマイシン、ダウノルビジン、ダウノマイシン、デキサメタゾン、ドキソルビジン、エトピシド−エピポドフィロトキシン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタマイド、フルダラビン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、HCL、イホスファミド(イソホスファミド)、インターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファn3、イリノテカン、ロイコボリンカルシウム、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メゲストロール、メルファラン(L−フェニルアラニンマスタード)、L−サルコリシン、塩酸メルファラン、MESNA、メクロレタミン、ナイトロジェンマスタード、メチルプレドニゾロン、メトトレキサート(アメトプテリン)、マイトマイシン(マイトマイシンC)、ミトキサントロン、メルカプトプリン、パクリタキセル、プリカマイシン(ミトラマイシン)、プレドニゾン、プロカルバジン、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)、タモキシフェン、6−チオグアニン、チオテパ(トリエチレンチオホスホルアミド)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及び酒石酸ビノレルビン。
【0097】
抗感染症薬は、駆虫薬及び抗生物質に分類される薬剤を含む。抗生物質はさらに、次のものに分類することができる。アミノグリコシド、抗真菌性抗生物質、セファロスポリン、b−ラクタム抗生物質、クロラムフェニコール、マクロライド、ペニシリン、テトラサイクリン、様々な抗生物質、抗結核薬、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、抗マラリア薬、キノロン、スルホンアミド、スルホン、尿路抗感染薬及び様々な抗感染症薬。
【0098】
駆虫薬としては、これに限定されるものではないが、例えば、チアベンダゾールなどがある。
【0099】
アミノグルコシドとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン及びトラブマイシンがある。
【0100】
抗真菌性抗生物質としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アムホテリシンB、脂質製剤T.E.、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ナイスタチン及びテルビナフィンがある。
【0101】
セファロスポリンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、セファクロール、セファゾリン、セフェピム、セフィキシム、セフォニシド、セフォタクシム、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン及びセフラジンがある。
【0102】
B−ラクタム抗生物質としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アズトレオナム、セフォテタン、セフォキシチン及びイミペネム/シラスタチンがある。
【0103】
クロラムフェニコールとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール及びコハク酸クロラムフェニコールがある。
【0104】
マクロライドとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、エチルコハク酸エリスロマイシン及びラクトビオン酸エリスロマイシンがある。
【0105】
テトラサイクリンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン及びテトラサイクリンがある。
【0106】
様々な抗生物質としては、これらに限定されるものではないが、例えば、バシトラシン、クリンダマイシン、ポリミキシンB、スペクチノマイシン及びバンコマイシンがある。
【0107】
抗結核薬としては、これらに限定されるものではないが、例えば、エタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファブチン及びリファンピンがある。
【0108】
抗ウイルス薬としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アシクロビル、アマンタジン、ファムシクロビル、フォスカネット、ガンシクロビル、リバビリン、バラシクロビル及びバルガンシクロビルがある。
【0109】
抗レトロウイルスとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、アバカビル、アンプレナビル、ディダノシン、エファビレンツ、インディナビル、ラミブジン、ロピナビル、ネルフィナビル、ネビラピン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、ザルシタビン及びジドブジンがある。
【0110】
抗マラリア薬としては、これらに限定されるものではないが、例えば、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ピリメタミン及びキニーネがある。
【0111】
キノロンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、ガチフロキサシン、レポフロキサシン及びオフロキサシンがある。
【0112】
スルホンアミドとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン及びスルフイソキサゾールがある。
【0113】
スルホンとしては、これに限定されるものではないが、例えば、ダプソーンがある。
【0114】
尿路抗感染症としては、これに限定されるものではないが、例えば、ニトロフラントインがある。
【0115】
様々な抗感染症薬としては、これらに限定されるものではないが、例えば、クロファザミン(Clofazamine)、コトリモキサゾール、メトロニダゾール及びペンタミジンなどがある。
【0116】
抗接着薬としては、これらに限定されるものではないが、例えば、次のものがある。アスピリン、カルシウムチャンネル遮断薬、カルボキシメチルセルロース、コンドロイチン硫酸、コルチコステロイド、キマーゼ阻害剤、デキストラン、透析液、ジフェンヒドラミン、フィブリン接着剤、ヘパリン、ヒアルロン酸、L−アアルギニン、メチレンブルー、ミフェプリストン、ミトマイシンC、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、酢酸オクトレオチド、ペントキシフィリン、腹膜移植片(Peritoneal transplant)、光重合ヒドロゲル、ポリエチレングリコール、ポリオキサマー、乳酸リンゲル液、サリン、界面活性剤、及び組織プラスミノゲン活性化因子。
【0117】
また、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩/カルボキシメチルセルロース(Hyaluronate-carboxymethylcellulose)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン70及びイコデキストリン4%などの溶液又はゲルも知られている。
【0118】
上記のものは、液体、溶液又はゲルであり、本発明に使用できることは、当業者であれば理解できるであろう。また、ヒアルロン酸塩/カルボキシメチルセルロース、酸化再生セルロース、ポリエチレンオキシド−酸化再生セルロース(polyethylene oxide-oxidized regenerated cellulose)、延伸ポリテトラフルオロエチレン及び心膜パッチなどの市販の抗接着バリアー(anti adhesion barrier)も知られている。
【0119】
上記薬剤を本発明で使用可能にするためには、上記薬剤を破砕、微粉砕又は粉砕した後に、液体と混合する必要があるであろう。
【0120】
本発明は、まだ発明されていない上記の種類の薬剤、並びに上記の種類に含まれるが記載されていない薬剤の使用も含む。
【0121】
図16〜20は、処理された又は未処理の送気ガスを介して薬剤を患者の腹部に提供するのに特に有用と考えられる、本発明の実施形態を示している。前記実施形態は、送気装置と、前記送気装置と患者の腹部との間の経路の少なくとも一部を形成する少なくとも1つの液体流路を含む少なくとも1つの構造体と、前記少なくとも1つの構造体と接続し、前記少なくとも1つの構造体を介して薬剤を前記腹部の内部に供給するように構成されたチャンバーとを備える。
【0122】
図16は、手術部位に送気ガスを供給する、上記のStortz Model 26012などの送気装置915又は他の任意の送気装置を示している。送気装置915は、送気ガスを供給する出口916を有している。
【0123】
送気装置915の下流には、送気装置915と流体的に接続された加熱器/加湿器120が随意的に設けられる。加熱器/加湿器120は、入口917及び出口918を有している。第1の導管919は、送気装置の出口916と加熱器/加湿器120の入口917を接続する。したがって、送気装置915は、加熱器/加湿器120と流体的に接続される。
【0124】
本明細書で説明する実施形態では、導管は、短い場合もあれば長い場合もあり、太い場合もあれば細い場合もある。ある場合では、導管は、それらが流体的に接続する装置からは分離した部品である。他の場合では、導管は、それらが流体的に接続する装置と一体化される。ある場合では、様々な装置は、導管を使用せずに互いに接続又は結合される。他の場合では、様々な装置は、複数のチャンバーを有する単一装置として構成される。これらの実施形態の全ては、本発明の範囲に含まれる。
【0125】
送気ガスが乾燥していても加湿されていても、又は加熱されていても冷たくても、患者の腹部に送達されるガス流に薬剤を添加することは有益となり得る。本発明の範囲は、任意の条件下での薬剤の添加を含む。好ましい方法は、送気ガスを加熱及び加湿する方法である。
【0126】
第2の導管920の一方の端部920Aは、加熱器/加湿器120の出口918に接続されており、他方の端部920Bは開放されている。どちらの端部も、例えばルアーロックなどのコネクタを1つ以上含み得る。手術の間、第2の導管920は、患者Pの腹部922に予め設置されたトロカールアセンブリ921と流体的に接続される。したがって、加熱器/加湿器120は、患者の腹部と流体的に接続される。また、ベレス針又は他の器具も、腹部へ接続するために使用可能である(本発明の範囲から逸脱することなく)。第1の導管919又は第2の導管920は、それらに接続したフィルタを有し得る。
【0127】
本発明のこの実施形態では、薬剤チャンバー925が、加熱器/加湿器120の外部に離間して設けられている。薬剤チャンバー925は、少なくとも1つの出口926を有する。第3の導管927の一方の端部927Aは、薬剤チャンバーの出口926と接続している。第3の導管927の他方の端部927Bは、トロカールアセンブリ921と流動的に接続している(適切なコネクタを使用して、導管920と流動的に接続することもできる)。
【0128】
2つの注入口を有するトロカールアセンブリ930(図31)を用いることもできる。または、必要に応じて、改良したトロカール933(図32)を用いることもできる。第3の導管927は大気中に開いているので、薬剤チャンバー925内の薬剤を送気ガス流に送達させるために、送気装置915以外のある圧力源を使用する場合がある。圧力源の例は後述する。
【0129】
患者Pの腹部922に薬剤をエアロゾルスプレー状、ミスト状、霧状又は蒸気状で送達させるためには、拡散装置948が使用される。拡散装置948は、薬剤の有効性を高めると考えられている。
【0130】
拡散装置948の配置は、薬剤を送気ガスに導入する位置及び方法に応じて決定される。薬剤チャンバー925が直列に接続されていない場合、拡散装置948は、第3の導管927又はトロカール921内の任意の場所に設置される。
【0131】
図17は、図16に示した構造の変形例を示している。この実施形態では、出口916を有する送気装置915が再び設けられている。加熱器/加湿器120の入口917は、第1の導管919を介して送気装置915の出口916と接続している。しかしながら、この実施形態では、注入口936及び出口937を有する変更薬剤チャンバー935(「変更(modified)」とは、入口及び出口を有することである)が、加熱器/加湿器120と直列に設置される。変更薬剤チャンバー93は、第2の導管920を介して加熱器/加湿器120と接続される。したがって、必要に応じて、薬剤を送達させるために、送気ガスの圧力を使用することができる。「変更薬剤チャンバー」という用語は便宜的に使用しているのであって、特許請求の範囲において、「薬剤チャンバー」又は「変更薬剤チャンバー」の特別な定義を規定するためのものではない。「薬剤チャンバー」という用語は、特許請求の範囲で使用されているように、薬剤を含み得る任意のチャンバーを広く意味するためのものである。
【0132】
第4の導管938が、薬剤チャンバー935の出口937に接続している。第4の導管938は、外科手術の間、薬剤チャンバー935を患者Pの腹部922内のトロカールアセンブリ921と流体的に接続するために使用される。拡散装置948は、変更薬剤チャンバー935の下流における任意の場所に設置することができる(例えば、第4の導管938に挿入される又は接続される)。上述したように、腹部との接続には、例えばベレス針などのトロカール921以外の機器を使用することができる。
【0133】
拡散装置948は、その種類に応じて、前記導管の内部に設置する(液体が拡散装置948の中又は周囲を流れる)、又は前記導管を囲むように設置することができる(当業者であれば理解できるであろう)。また、特定の導管のための用途に応じて、拡散装置を導管の内部及び外部の両方に設ける場合もある。
【0134】
図18では、薬剤チャンバー925は、加熱器/加湿器120の上流に接続されている。薬剤チャンバー925は、第5の導管940によって、加熱器/加湿器120と流動的に接続されている。第5の導管940は、薬剤チャンバー925を加熱器/加湿器120と流動的に接続するために、送気装置915の出口916と加熱器/加湿器120の入口917との間の任意の場所に接続される。上記の場合と同様に、第2の導管920は、加熱器/加湿器120の出口918に接続され、トロカールアセンブリ921を介して、加熱器/加湿器120を患者の腹部と流体的に接続する。上述したように、腹部との接続には、例えばベレス針などのトロカール921以外の器具を使用することができる。
【0135】
薬剤チャンバー925は送気装置915と並列に接続されているので、拡散装置948は、薬剤チャンバー925の下流における任意の場所に接続又は配置することができる(例えば、第2の導管920内に)。
【0136】
図19に示す実施形態は、入口936及び出口937を有する変更薬剤チャンバー935が、加熱器/加湿器120の下流ではなく上流に設置されている点以外は、図17に示した実施形態と同様である。第1の導管919が、送気装置915の出口916と変更薬剤チャンバーの注入口936との間を接続しており、変更薬剤チャンバー935が送気装置915と流体的に接続されている。
【0137】
第6の導管941が、変更薬剤チャンバー935の出口937を、加熱器/加湿器120の入口917に接続する。第7の導管942が、加熱器/加湿器120の出口918に接続している。第7の導管942は、外科手術の間、患者Pの腹部922に予め設置されたトロカールアセンブリ921と流体的に接続するように設置される。上述したように、腹部との接続には、例えばベレス針などのトロカール921以外の器具を使用することができる。気体が送気装置915から送出され、変更チャンバー935に薬剤が残っている場合、薬剤は患者Pの腹部922に送達される。上記の場合と同様に、拡散装置948は、薬剤チャンバーの下流における任意の場所に設置される(例えば、第7の導管942に挿入される又は接続される)。
【0138】
図20に示す実施形態は、出口926を有する薬剤チャンバー925が加熱器/加湿器120の上流ではなく下流に接続されている点以外は、図18に示した実施形態と同様である。第1の導管919が、送気装置915の出口916と加熱器/加湿器の注入口917との間を接続しており、加熱器/加湿器120が送気装置915と流体的に接続されている。
【0139】
第2の導管920は、加熱器/加湿器120の出口918に接続されている。上記の場合と同様に、第2の導管920は、外科手術の間、患者Pの腹部922に設置されたトロカールアセンブリ921と流動的に接続するように設置される。上述したように、腹部との接続には、例えばベレス針などのトロカール921以外の器具を使用することができる。薬剤チャンバー925の出口926には、第8の導管943が接続されている。第8の導管943の他端は、加熱器/加湿器120の出口918とトロカールアセンブリ921との間の任意の場所で、加熱器/加湿器120から送出されるガス流と流動的に接続される。拡散装置948は、薬剤チャンバー925の下流における任意の場所に設置される(例えば、第2の導管920内に挿入される又は接続される)。薬剤チャンバー925内の薬剤に圧力が加えられると、送気装置915からの気体の送出の有無に関わらず、薬剤は患者Pの腹部922に供給される。
【0140】
用途に応じて、図1〜20に示した構造は、所望する結果を得るために、組み合わせられる又は複数設けられる。例えば、加熱器/加湿器120を介して1つ又は複数の薬剤を導入する場合は、1つ又は複数の薬剤は1つ又は複数の薬剤チャンバー(925、935)を介して導入する。また、ここで示したいずれのチャンバーも、複数の薬剤を追加するために、単一又は複数で使用することができる。気体は、必要に応じて、加熱及び/又は加湿される。チャンバーは、空であってもよいし、液体を吸収又は吸着するための様々な手段を有していてもよい。
【0141】
図21は、薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に導入する方法の1つを示している。図21には変更薬剤チャンバー935が示されているが、薬剤チャンバー925の場合でも作動する。変更薬剤チャンバーは外部ポート950を有し、外部ポート950にはその中の流量を調節するための閉鎖部材968が設けられている。外部ポート950には、所望の量の薬剤が充填された注射器951が挿入される。適当な時に、外科医、麻酔医又は他の医療関係者は、閉口部968が存在する場合は閉口部968を開き、注射器951のプランジャ952を押圧して、薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に注入する。薬剤は、上述したように、患者の腹部に送達される。
【0142】
図22は、本発明の様々な実施形態において、薬剤チャンバー(925、935)に薬剤を導入するのに使用することができる他の器具を示している。この実施形態では、ポンプ954を使用して、薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に送達する。外蠕動性又は他の適切な種類のポンプ954が接続される部ポート950が設けられる。また、ポート950への流量を調節する閉鎖部材968が設けられる。図示しないが、少なくとも所望の量の薬剤を含有する容器が設けられる。
【0143】
適当な時に、外科医、麻酔医又は他の医療関係者は、閉口部968が存在する場合は閉口部968を開き、ポンプ954を作動させ、所望の量の薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に供給する。薬剤は、上述したように、患者の腹部に送達される。全ての実施形態において、閉鎖部材968は加減弁であり得ることに留意されたい。
【0144】
図23は、本発明の様々な実施形態において、薬剤チャンバー(925、935)に所望の量の薬剤を導入するのに使用することができる別の機器を示している。この実施形態では、予めに所望の量の薬剤が予め充填された加圧シリンダ956が、薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に送達するために使用される。加圧シリンダ956が接続される外部ポート950が設けられる。シリンダ956とポート950との間に、閉鎖部材968が設置されている。シリンダには、所望の量の薬剤に加えて、所定量の加圧剤(不活性ガスなど)が充填され得る。また、所望の時に、薬剤の放出を引き起こす装置(例えば、電子的に制御されたバルブ)を有し得る。適当な時に、外科医、麻酔医又は他の医療関係者は、閉口部968が存在する場合は閉口部968を開き、放出装置を作動させ、所望の量の薬剤を薬剤チャンバーに供給する。薬剤は、上述したように、患者の腹部に送達される。
【0145】
図24は、薬剤チャンバー(925、935)に薬剤を導入するのに使用することができるさらなる別の機器を示している。この実施形態では、所望の量の薬剤を含んでいる柔軟な袋958が、チューブ959によって外部ポート950に接続されている。柔軟な袋958からの薬剤の放出を調節する装置(例えば、加減弁)の設置の有無は、用途に応じて決定される。閉口部968は、放出装置の役割を果たす。手術のときの所望する時に、柔軟な袋958は圧搾され、放出装置は、放出装置が存在する場合は放出装置を作動させ、薬剤チャンバー(925、935)に薬剤を送る。
【0146】
当然のことながら、図21〜24に示した、薬剤を薬剤チャンバー(925、935)に導入する方法の全ては、図16〜20に示した本発明の全ての実施形態に用いることができる。さらに、当然のことながら、薬剤をチャンバー(925、935)に導入する他の方法も、本発明の範囲から逸脱することなく、用いることができる。
【0147】
図25〜28を参照して、何らかの理由で別個の薬剤チャンバーを用いるのが好ましくない場合は、図16〜20に示した実施形態に薬剤を供給するのに、注射器951、ポンプ954、加圧シリンダ956及び柔軟な袋958を用いる場合がある。適切な外部ポート又はコネクタ965は、送気ガスの流路内となるように、適切な導管と直列に設けられる。様々な機器の動作は、図21〜24を参照して説明した通りである。
【0148】
図29は、本発明に係る薬剤チャンバー(925、935)として機能し得るさらなる装置を示している。圧電チャンバー961は、入口963及び出口964を有する中空チャンバー962を備えている。圧電チャンバー961は、適切な導管と流動的に接続されており、送気装置の作動中は、チャンバー内に送気ガス970が流れる。中空チャンバー962の内部には、所望の量の、液体状の薬剤966が充填されている。薬剤966は、圧電性結晶965と共にチャンバー内に充填されている。圧電性結晶965を活性化させるために、その後、結晶965に電圧が印加する。結晶965が活性化すると、薬剤の霧(agent fog)962を引き起こすほどの速いスピードで、薬剤の分子を振動させる。薬剤の霧962は、送気ガス970に取り込まれ、患者の腹部に送達される。
【0149】
図30は、薬剤の患者の腹部への投与に有用と考えられる、さらなる別の実施形態を示している。この実施形態は、トロカール972と共に使用される、変更注射器971の使用を含む。トロカール972は、管状部973と、拡大された上部974とを有する。変更注射器971は、プランジャ979を密閉状態で受容する、通常の大きさの中空本体部978を有する。プランジャ979は、本体部978の中を往復運動する。本体部978には、細長く、中空及び管状であり、その遠位端に拡散装置948が取り付けられた下端部980が接続又は一体化されている。
【0150】
使用中、薬剤は、針又は下端部980を介して、変更注射器971に吸い込まれる。まだ取り付けられていないときは、下端部980が取り付けられる。そして、下端部980及び拡散装置948がトロカール972の管状部にスライド自在に適合する状態で、変更注射器971をトロカールアセンブリ972に挿入する。
【0151】
変更注射器971の細長い管状の下端部980の長さは、変更注射器971がトロカール972に挿入されたとき、下端部980の遠位端980Aがトロカール972の管状部973の端部から延出するほどの長さであるべきである。このような方法で、手術の間、腹部に薬剤を投与することが所望され、変更注射器971がトロカール972に完全に挿入されている場合は、拡散装置948は実際に気腹の内部に存在し得る。したがって、プランジャ979が押し下げられると、変更注射器971にすでに充填されている薬剤は、拡散装置948を通って、エアロゾル、スプレー、ミスト、霧又は蒸気(拡散装置948及び薬剤によって決定される)の状態で腹部に送達される。なお、上記の状態で拡散させることができない薬剤も存在する。
【0152】
図31は、2つの注入口を有するトロカール930を示している。2つの注入口を有するトロカール930は、拡大された上部975Aを有する管状の本体部975と、送気装置915から供給された送気ガスが注入される1つの注入口976とを備える点に関しては、当該技術分野で周知のトロカールと同様である。トロカールにおいて薬剤を送気ガス流に導入することが所望される可能性があるので、第2の注入口977を有する、2つの注入口を有するトロカール930が望ましい。所望する場合、送気ガス流は、第1の注入口976を介して、2つの注入口を有するトロカール930に入り、薬剤ガス流は、第2の注入口977を介してトロカールに入る(逆もまた同様)。
【0153】
図31に示したトロカールの構造を変更したものを、図32に示す。変更トロカール933が示されている。変更トロカール933は、上記のトロカロールと同様に、管状の本体部975と、拡大された上部974とを有している。また、変更トロカール933は、注入口976を有している。しかし、変更トロカール933は、第2の注入口977の代わりに、分岐した注入口934を有している。分岐した注入口934は、完全に別個の第2の注入口から薬剤を供給するのではなく、薬剤流を変更トロカール933に直接的に接続するために、注入口976から分岐している。送気装置948は、分岐した注入口934の遠位端に、随意的に設けられる。閉鎖部材968は、随意的に設けられる。
【0154】
図33は、いくつかの点に関しては図32に示した実施形態と同様である、さらなる別の実施形態を示している。この実施形態は、図32に示した構造とほとんど同じであり、管状の下部975及び拡大された上部974を有する変更トロカール933を、単一の注入口976及び分岐した注入口934と共に使用する。この変更では、分岐した注入口934は、所望の量の薬剤及び高圧ガスが充填された加圧エアゾルスプレー缶981を取り付けるのに適合する大きさ及び形状を有している。
【0155】
加圧容器又はスプレー缶981は、ノズル982を有する。ノズル982は、エアロゾルスプレー、ミスト、霧又は蒸気を形成するためのオリフィスを有する。前記オリフィスは、使用される薬物に応じて選択される。ノズル982は、分岐した注入口934に圧入することができるように構成される。ノズルが薬剤の所望どおりの拡散を生成することができるので、この実施形態から拡散装置948を省略することができる。また、必要に応じて、設置することもできる。
【0156】
図34は、本発明の様々な実施形態で行われる一連のステップを示すフローチャートである。最初のステップ1000では、患者Pの腹部922にアクセスする。これは、外科手術分野の当業者には周知の任意の外科的技術を使用することで行うことができる。前記外科的技術は、一般に、患者の腹部を外科的に切開するステップと、そこにトロカールを挿入するステップとを含む。
【0157】
次のステップ1010では、送気ガスの気体流を患者の腹部922に導入する。これは、送気装置120を設けるステップと、送気装置とトロカールとの間に流路を形成するステップと、最初に患者の腹部を約2〜3リットルの送気ガスで膨張させるステップとを含む。最初に患者の腹部を膨張させた後、送気ガスを腹部に所望の速度で流入させ続ける、又は、特定の状況に応じて流入を停止させる。
【0158】
薬剤又は薬剤流は、その後、送気ガスと共に気腹に導入される(ステップ1020)。特定の処置に適した、所定の濃度が選択される。
【0159】
行われる外科手術のための、薬剤の所望の濃度が決定されると、上述したように、薬剤を気腹に導入する方法はいくつかの方法がある。
【0160】
使用される方法に関係なく、所望の量の薬剤が導入されると、薬剤又は薬剤流の流入を遮断する(ステップ1030)。
【0161】
本明細書中では、様々な特許文献が参照されている。これらの文献は、本発明が関連する従来技術をより詳しく説明するために参照した(この参照により本発明に含まれるものとする)。
【0162】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本発明に係る装置の概略図である。
【図2】本発明に係る装置に含まれる気体処理部の断面図である。
【図3】気体処理部のハウジングに複数のチャンバーを備える他の実施形態の概略図である。
【図4】図3の実施形態における、気体処理部のハウジングの端面図である。
【図5】ハウジングの内部に1つ又は複数のバッグを備える別の実施形態の内面図である。
【図6】ハウジングの外部に1つ又は複数のバッグを備えるさらなる別の実施形態の内面図である。
【図7】ハウジングの内部にその遠位端に制限開口を有するチューブ部材を備える他の実施形態の内面図である。
【図8】ハウジングの内部にその長手方向に沿って複数の孔が形成されたチューブ部材を備える別の実施形態の内面図である。
【図9】所定量の1つ又は複数の薬剤を気体処理部のチャンバー内に制御放出するためのインクジェット印字ヘッドを備えるさらなる別の実施形態の概略図である。
【図10】気体処理部に使用される加熱素子の概略図である。
【図11】気体処理部のチャンバーの断面図であり、チャンバーの気体入口及び出口に溝付が形成されていることを示している。
【図12】気体処理部のハウジングの内面図であり、所定量の固相薬剤を放出するための容器を示している。
【図13】図12と同様の気体処理部のハウジングの内面図であるが、前記容器はチャンバーの外側に位置している。
【図14】気体の温度を制御するため、及び気体の湿度の監視するための回路の概略図である。
【図15】気体の湿度を監視するための回路の他の実施形態の概略図である。
【図16】処理された又は未処理の気体及び薬剤を体腔、体空間及び体表面に送達することができる本発明に係る装置のある実施形態を示す概略図である。
【図17】処理された又は未処理の気体及び薬剤を体腔、体空間及び体表面に送達することができる本発明に係る装置の他の実施形態を示す概略図である。
【図18】処理された又は未処理の気体及び薬剤を体腔、体空間及び体表面に送達することができる本発明に係る装置の別の実施形態を示す概略図である。
【図19】処理された又は未処理の気体及び薬剤を体腔、体空間及び体表面に送達することができる本発明に係る装置のさらなる別の実施形態を示す概略図である。
【図20】処理された又は未処理の気体及び薬剤を体腔、体空間及び体表面に送達することができる本発明に係る装置のさらなる別の実施形態を示す概略図である。
【図21】本発明のある実施形態で使用される薬剤チャンバーに薬剤を導入する方法を示す正面図である。
【図22】薬剤チャンバーに薬剤を導入する他の方法を示す正面図である。
【図23】薬剤チャンバーに薬剤を導入する別の方法を示す正面図である。
【図24】薬剤チャンバーに薬剤を導入するさらなる別の方法を示す正面図である。
【図25】注射器を薬剤チャンバーとして使用する方法を示す正面図である。
【図26】ポンプを薬剤チャンバーとして使用する方法を示す正面図である。
【図27】与圧チャンバーを薬剤チャンバーとして使用する方法を示す正面図である。
【図28】バッグを薬剤チャンバーとして使用する方法を示す正面図である。
【図29】圧電チャンバーを薬剤チャンバーとして使用する方法を示す正面図である。
【図30】本発明のさらなる実施形態を示す図である。
【図31】本発明の一部を構成する、2つの注入口を有するトロカールを示す正面図である。
【図32】図31に示した構造の変形例である。
【図33】図31に示した構造のさらなる変形例である。
【図34】本発明の様々な実施形態で行われる一連のステップを示すフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻酔剤を患者の腹部に導入するための装置であって、
a)送気装置と、
b)前記送気装置と前記腹部との間の経路の少なくとも一部を形成する少なくとも1つの液体流路を規定する少なくとも1つの構造体と、
c)前記少なくとも1つの構造体と接続し、前記少なくとも1つの構造体を介して麻酔剤を前記腹部の内部に供給するように構成されたチャンバーとを備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記麻酔剤の拡散を引き起こすように構成された拡散装置をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーが予め充填されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーは、充填装置を受容するための外部ポートを有することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
前記充填装置は、注射器であることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーは、注射器であることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーは、バッグであることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーは、ポンプであることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項2に記載の装置であって、
前記拡散装置は、エアロゾルを生成することを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項2に記載の装置であって、
前記拡散装置は、スプレーを生成することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項2に記載の装置であって、
前記拡散装置は、ミストを生成することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項2に記載の装置であって、
前記拡散装置は、霧を生成することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項2に記載の装置であって、
前記拡散装置は、蒸気を生成することを特徴とする装置。
【請求項14】
患者の腹部にガス流を供給することができる送気装置と共に使用される麻酔剤送達システムであって、
a)前記送気装置と前記腹部との間の経路の少なくとも一部を形成する少なくとも1つの液体流路を規定する少なくとも1つの構造体と、
b)前記少なくとも1つの構造体と接続し、前記少なくとも1つの構造体を介して前記麻酔剤を前記腹部の内部に供給するように構成されたチャンバーとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、
前記チャンバーの下流で、前記チャンバーと流体的に接続した拡散装置を備えることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項14に記載の装置であって、
前記チャンバーとトロカールとの間に配置された拡散装置を備えることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項14に記載の装置であって、
前記チャンバーが予め充填されていることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項14に記載の装置であって、
前記チャンバーは、充填装置を受容するための外部ポートを有することを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーは、圧電性チャンバーであることを特徴とする装置。
【請求項20】
送気ガス用の第1の注入口と、
前記第1の注入口とは別個である、麻酔剤用の第2の注入口とを有するトロカール。
【請求項21】
送気ガス用の第1の注入口と、
前記第1の注入口と流体的に接続する、麻酔剤用の分岐した注入口とを有するトロカール。
【請求項22】
請求項21に記載のトロカールであって、
エアロゾルは、前記分岐した注入口に接続された加圧された麻酔剤の源を含むことを特徴とするトロカール。
【請求項23】
患者に麻酔剤を投与する方法であって、
a)送気装置からガス流を供給するステップと、
b)麻酔剤ガス流を作成すべく、前記ガス流に少なくとも1つの麻酔剤を注入するステップと、
c)内視鏡検査処置中に、前記麻酔剤ガス流を患者の体内に送達させるステップとを含む方法。
【請求項24】
請求項19に記載の方法であって、
前記ガス流が、少なくとも1つの所定量の麻酔剤を吸収した吸収材料を含んでいるチャンバーを通過することによって、前記麻酔剤が注入されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法であって、
前記チャンバーは、前記チャンバーと流体的に接続するポートをさらに有することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項20に記載の方法であって、
前記ガス流を前記チャンバー内で加熱するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項20に記載の方法であって、
前記ガス流を前記チャンバー内で加熱及び加湿するステップを含み、
前記加湿ステップは前記麻酔剤とは異なる加湿剤を使用して行われることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項20に記載の方法であって、
前記ガス流を前記チャンバー内で加湿するステップを含み、
前記加湿ステップは前記麻酔剤とは異なる加湿剤を使用して行われることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項19に記載の方法であって、
前記ガス流を加熱するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項19に記載の方法であって、
前記ガス流を加熱及び加湿するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項19に記載の方法であって、
前記ガス流を加湿するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項19に記載の方法であって、
前記麻酔剤ガス流を加熱するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項19に記載の方法であって、
前記麻酔剤ガス流を加熱及び加湿するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項19に記載の方法であって、
前記麻酔剤ガス流を加湿するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
麻酔剤を患者の腹部に導入するための装置であって、
a)送気装置と、
b)前記送気装置と前記腹部との間の経路の少なくとも一部を形成する少なくとも1つの液体流路を規定する少なくとも1つの構造体と、
c)前記少なくとも1つの構造体と接続し、前記少なくとも1つの構造体を介して麻酔剤を前記腹部の内部に供給するように構成されたチャンバーとを備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記麻酔剤の拡散を引き起こすように構成された拡散装置をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーが予め充填されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーは、充填装置を受容するための外部ポートを有することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
前記充填装置は、注射器であることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーは、注射器であることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーは、バッグであることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーは、ポンプであることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項2に記載の装置であって、
前記拡散装置は、エアロゾルを生成することを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項2に記載の装置であって、
前記拡散装置は、スプレーを生成することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項2に記載の装置であって、
前記拡散装置は、ミストを生成することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項2に記載の装置であって、
前記拡散装置は、霧を生成することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項2に記載の装置であって、
前記拡散装置は、蒸気を生成することを特徴とする装置。
【請求項14】
患者の腹部にガス流を供給することができる送気装置と共に使用される麻酔剤送達システムであって、
a)前記送気装置と前記腹部との間の経路の少なくとも一部を形成する少なくとも1つの液体流路を規定する少なくとも1つの構造体と、
b)前記少なくとも1つの構造体と接続し、前記少なくとも1つの構造体を介して前記麻酔剤を前記腹部の内部に供給するように構成されたチャンバーとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、
前記チャンバーの下流で、前記チャンバーと流体的に接続した拡散装置を備えることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項14に記載の装置であって、
前記チャンバーとトロカールとの間に配置された拡散装置を備えることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項14に記載の装置であって、
前記チャンバーが予め充填されていることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項14に記載の装置であって、
前記チャンバーは、充填装置を受容するための外部ポートを有することを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1に記載の装置であって、
前記チャンバーは、圧電性チャンバーであることを特徴とする装置。
【請求項20】
送気ガス用の第1の注入口と、
前記第1の注入口とは別個である、麻酔剤用の第2の注入口とを有するトロカール。
【請求項21】
送気ガス用の第1の注入口と、
前記第1の注入口と流体的に接続する、麻酔剤用の分岐した注入口とを有するトロカール。
【請求項22】
請求項21に記載のトロカールであって、
エアロゾルは、前記分岐した注入口に接続された加圧された麻酔剤の源を含むことを特徴とするトロカール。
【請求項23】
患者に麻酔剤を投与する方法であって、
a)送気装置からガス流を供給するステップと、
b)麻酔剤ガス流を作成すべく、前記ガス流に少なくとも1つの麻酔剤を注入するステップと、
c)内視鏡検査処置中に、前記麻酔剤ガス流を患者の体内に送達させるステップとを含む方法。
【請求項24】
請求項19に記載の方法であって、
前記ガス流が、少なくとも1つの所定量の麻酔剤を吸収した吸収材料を含んでいるチャンバーを通過することによって、前記麻酔剤が注入されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法であって、
前記チャンバーは、前記チャンバーと流体的に接続するポートをさらに有することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項20に記載の方法であって、
前記ガス流を前記チャンバー内で加熱するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項20に記載の方法であって、
前記ガス流を前記チャンバー内で加熱及び加湿するステップを含み、
前記加湿ステップは前記麻酔剤とは異なる加湿剤を使用して行われることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項20に記載の方法であって、
前記ガス流を前記チャンバー内で加湿するステップを含み、
前記加湿ステップは前記麻酔剤とは異なる加湿剤を使用して行われることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項19に記載の方法であって、
前記ガス流を加熱するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項19に記載の方法であって、
前記ガス流を加熱及び加湿するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項19に記載の方法であって、
前記ガス流を加湿するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項19に記載の方法であって、
前記麻酔剤ガス流を加熱するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項19に記載の方法であって、
前記麻酔剤ガス流を加熱及び加湿するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項19に記載の方法であって、
前記麻酔剤ガス流を加湿するステップを含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公表番号】特表2008−515529(P2008−515529A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535655(P2007−535655)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/032854
【国際公開番号】WO2006/041474
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507114532)レキション・メディカル・エルエルシー (4)
【氏名又は名称原語表記】LEXION MEDICAL, LLC
【住所又は居所原語表記】5000 Township Road, St. Paul, MN 55110, U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/032854
【国際公開番号】WO2006/041474
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507114532)レキション・メディカル・エルエルシー (4)
【氏名又は名称原語表記】LEXION MEDICAL, LLC
【住所又は居所原語表記】5000 Township Road, St. Paul, MN 55110, U.S.A.
【Fターム(参考)】
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