説明

薬剤供給パッケージ

薬剤供給パッケージに固有の識別情報を記憶するメモリと、薬剤供給パッケージの外部の受信装置による受信用に識別情報を送信するよう動作可能な送信器と、データを受信し、受信したデータをメモリに記憶するよう動作可能な受信器とを備える薬剤供給パッケージ。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、薬剤供給パッケージ、並びに、薬剤供給パッケージを使用するためのシステム及び方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
添付図面の図1は、既知の薬剤供給パッケージ100(患者用キット又は臨床供給パッケージとしても知られている)を示す概略図である。パッケージ100は、薬剤入れ104(又はトレイ若しくはシート)をその内部に挿入又は収納することができる箱102を備えている。薬剤入れ104は、一以上のブリスタ106を備えている。ブリスタ106は、ある量(例えば1錠剤又は1丸薬)の薬剤製品又は組成物(例えば実薬又はプラセボ)を収納するための、離間した密封収納室である。ブリスタ106は、例えばアルミニウム箔などの金属箔(図示せず)で収納室を覆うなど、多くの方法で密封することができる。患者は、フラップ108を用いて箱102を開けて、薬剤入れ104を箱102から取り出すことができる。次いで、患者は、ブリスタ106のシールを破り、その中に収納されている薬剤製品を取り出すことができる。薬剤製品を患者に提供するために使用することができる薬剤供給パッケージはその他にも様々あり、また、それらの薬剤供給パッケージが図1に示す構造とは異なる構造を有し得ることを理解されたい。
【0003】
新しい薬剤製品を開発するときには、臨床試験が行われる。薬剤製品の開発者は、臨床試験に使用するパッケージ100を、臨床試験にあたる検査官(薬剤師、化学者、医師、病院など)に提供する。開発者は、最初に販売者に対してパッケージ100を提供し、販売者が、開発者の代理としてパッケージ100を検査官に送付して提供することもある。その後、検査官は、臨床試験の期間中、患者(被験者又はユーザ)に一以上のパッケージ100を提供する。その後、患者が、パッケージ100に入った薬剤を、実施される臨床試験に従って使用する。検査官は、患者から試験結果を得て、その結果に従って製品開発者に報告を行う。
【0004】
当然、各パッケージ100は、個々に識別され、その中身が判断され得るように、ラベル付けされている。
【0005】
臨床試験中に使用されるパッケージ100には、既に開発済みの医療品の薬剤製品を入れることもできるし、或いはプラセボを入れることもできる。当技術分野で既知のように、医療品パッケージ及びプラセボパッケージの配布は、無作為化表で行われる。医療品の薬剤製品の用量又は濃度は、臨床試験で必要となる検査に応じて、パッケージ100ごとに変えることができる。さらに、臨床試験中に患者に与えられる活性な薬剤製品の用量又は濃度は、パッケージ100ごとに変えることができる。例えば、用量又は濃度は、年齢、性別、体重、地理的位置など、患者の何らかの特性に応じて決定することができる。薬剤製品の性質及び投与量に関する情報は、パッケージ100に添付されるラベルに反映され得る。
【0006】
さらに、臨床試験の実施に関する既定は、国によって異なることが多い。1つの臨床試験に関わっている国の間で気候が異なり、そのことが臨床試験に影響を及ぼすこともある。例えば、赤道直下の国では、その南国の気候のために、試験している薬の有効期限が、温帯気候のヨーロッパの国で試験している同じ薬の有効期限より短くなってしまう恐れがある。
【0007】
その結果、一部の臨床試験では、各パッケージ100をそれが送られる国に合わせて、各国別にパッケージ100を生産し、提供する必要がある。そのために、パッケージ100に、その国の言語を用いて国別のデータ(当該国での有効期限など)及び製品関連データ(当該薬剤製品の用量又は濃度、及び試験中の薬剤製品を患者が使用する際の適当な用法など)を示す、国別ラベルを添付することができる。この国別手法では、臨床試験を実施する際の時間及びコストが増大する。
【0008】
一般に、各国用のパッケージ100は、多めに供給される。例えば、患者が臨床試験を途中でやめたり、臨床試験に登録した患者の数が予想より少なかったりすることもある。その場合、未使用のパッケージ100は、新たな国用に再度ラベル付け作業を行わなければ、別の国で再利用することはできない。したがって、いずれにしても、損が発生する(未使用のパッケージ100を排気した場合)か、或いは再ラベル付けを行うことによって時間及びコストが増大することになる。時間の増大は、新しいラベルの生産及び添付作業によって生じるだけでなく、新しいラベルが適切なパッケージに間違いなく貼られていることを確実にするために必要な照合作業によっても生じる。例えば、プラセボに関するラベルが実薬の入ったパッケージ100に貼付されたり、間違ったラベルが貼られたことで薬剤の間違った用法がパッケージ100に記載されてしまったりすると、患者の健康に有害である恐れがあり、また臨床試験の結果に影響を及ぼす恐れがあるからである。
【0009】
複数の国にパッケージ100を供給するための代替の手法として、パッケージ100に多言語のブックレットを添付する(例えばのりで貼付する)こともある。このような多言語ブックレットの1例を、添付図面の図2a及び図2bに示す。
【0010】
このブックレットの表紙には、様々な情報が英語で書かれた英語のラベル200がある。例えば、その情報は以下のようなものである。
・パッケージ100に入っている薬剤製品の合成物番号202。ここでは「R076477SCH3018」。
・臨床試験を承認した監督機関から与えられた試験承認番号204。ここでは「2006−00664234」。
・供給される薬剤製品の性質及び品質に関するデータ206。ただし、パッケージ100がプラセボを収納したものである場合でも、中身がプラセボであることを患者に悟らせないように、データ206は臨床試験の実薬に関するデータを示すことに留意されたい。
・パッケージオーダー番号208。ここでは「353284」。
・薬物番号210(又は箱番号若しくはパッケージ番号)。ここでは「300000」。
・患者、検査官、及び試験段階に関するデータ212。この情報は、検査官がパッケージ100を患者に提供するときにのみ、ラベル200に記入することができる。
・使用する大量の化合物の調製に関する製造情報を示すバッチ番号214又はロット番号。ここでは「7AG1026−X」。
・供給された薬剤製品の収納及び用法に関するデータ216(有効期限並びに適当な温度範囲及び湿度条件など)。
【0011】
薬物番号210は、試験無作為化番号である。パッケージ100には、実薬の入っているものもあれば、プラセボの入っているものもある。薬物番号210は、特定のパッケージ100に実薬が入っているかプラセボが入っているかを判定する鍵となる。薬物番号210とパッケージオーダー番号208の組合せによって、パッケージ100は一意に識別される。1つのパッケージオーダー番号208に対する薬物番号210は1つしか存在しない。
【0012】
多言語ブックレットには、様々な言語で多くのページが存在する。各ページでは、英語ラベル200に記載された情報の一部又は全てについて言及している。図2bは、多言語ブックレットのフランス語ページ220を示す図である。例えば、フランス語ページ220には、英語ラベル200上の関連データ216を示すことによってパッケージ100の有効期限を判断する方法を示す文章222が、フランス語で記載されている。
【0013】
多言語ブックレットのページ数は、当該臨床試験を行う国々で使用される言語の種類の数によって決まる。臨床試験中に使用される可能性のある言語ごとに、多言語ブックレットには対応するページが設けられている。
【0014】
しかし、臨床試験の途中で、さらに別の国に臨床試験を拡張するということもよくある。こうして加えられた新たな国々で、それまでの臨床試験で使用されていた他言語ブックレットが対応していない言語が1つ又は複数使用されていることもある。この場合には、この臨床試験用の将来のパッケージ100をラベル付けして配布することができるように、既存の多言語ブックレットを、追加の言語のページを含む新たな更新版の多言語ブックレットと交換しなければならない。この場合には、当然、既存のラベルは無駄になり、コスト及び時間もが増大することになる。
【0015】
さらに、臨床試験が進むうちに、試験中の薬に関する新たな情報が発見されたり、決定されたりすることも多い。この場合、有効期限や収納温度の情報など、英語ラベル200が提供するデータに影響がある可能性がある。例えば、臨床試験の開始時に、2、3ヶ月という短い貯蔵寿命を表す有効期限を使用することはよくある。しかし、試験が進むうちに、この貯蔵寿命が例えば1年に延びることもある。この場合には、(i)新たなパッケージ100用に、新たな多言語ブックレット(又は少なくとも新たな英語ラベル200)を準備しなければならないか、(ii)新たな多言語ブックレットを検査官に配布して、検査官が、以前に与えられ、現在保存してあるパッケージ100に新たな多言語ブックレットを添付することができるようにしなければならないか、或いは(iii)パッケージ100の販売者に新たな多言語ブックレットを提供して、販売者がそれをパッケージ100に添付してから検査官に配布することができるようにしなければならない。或いは、検査官に、既存の多言語ブックレットを手作業で訂正するように命令することもある。これらの手法では、(時間及び労力の両面で)臨床試験のコストが増えることになる。さらに、パッケージ100の一部に更新漏れがあったり、或いは間違って更新されたりして、エラーが発生する恐れもある。この場合には、患者を危険にさらす可能性があり、また臨床試験の結果に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0016】
さらに、臨床試験中に患者が検査官のもとを再訪して2回目の(又は後続の)パッケージ100を入手する場合には、正しい適切な後続のパッケージ100がその患者に供給されることが重要である。例えば、その患者がプラセボの投与中である場合には、その患者に与えられる全てのパッケージ100にプラセボが入っていることが重要である。或いは、その患者が特定用量の実薬の投与中である場合には、臨床試験の期間中を通じて、この特定用量を維持する必要がある。不適切なパッケージ100を患者に与えてしまうと、患者が危険にさらされる恐れがあり(例えば年齢や性別などの理由で薬の用量がその患者に合っていない場合など)、また臨床試験の結果にも悪影響が出る恐れがある。しかし、検査官が患者にパッケージ100を配布する現在の方法では、十分な措置が講じられておらず、各患者に対して常に適当なパッケージ100が提供されることを保証する完全に信頼できる特徴はない。
【0017】
したがって、現在の臨床試験中のパッケージのラベル付け、配布及び供給の方法には多くの問題があり、これらの問題によって、薬剤製品及びパッケージ100が無駄になり、コスト、時間及び労力が増大する可能性があることは明らかである。したがって、これらの、また、その他の問題に対処することが望ましい。
【発明の概要】
【0018】
本発明の一態様によれば、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を記憶するメモリと、薬剤供給パッケージの外部にある受信装置による受信用に識別情報を送信するよう動作可能な送信器と、データを受信し、受信したデータをメモリに記憶するように動作可能な受信器とを備える薬剤供給パッケージが提供される。パッケージの出力装置(或いは出力チャネル又は出力ポート)から出力することができる一意の識別情報を記憶することにより、パッケージを判別することができる。その後、これを利用して、当該パッケージに固有のデータを判別することができる。また、これを利用して、検査官が患者に与えようとしているパッケージが、実際にその患者に与えるべき正しいパッケージであることを検証することもできる。さらに、受信器(この受信器は入力装置、入力チャネル、又は入力ポートであってもよい)を使用して、パッケージを、当該パッケージに固有のデータを記憶するように構成することができる。
【0019】
例えば、パッケージは、受信してメモリに記憶したデータの少なくとも一部の視覚表示を提供する電子ラベル又はディスプレイを備えていてもよい。これは、多言語ブックレットが必要でなくなることを意味する。
【0020】
ディスプレイは、メモリに記憶されているデータを表示するのに適していれば、どのような種類のディスプレイであってもよい。ディスプレイは、メモリに記憶されているデータの少なくとも一部の視覚表示を提供するために電力を必要とすることもあり、この場合には、ディスプレイに視覚表示を提供させる、又は視覚表示の提供を停止させるためのスイッチを備えることができる。これは、エネルギーの節約に役立ち、特にパッケージがバッテリを利用する場合に有用である。或いは、電子ラベル又はディスプレイは、加熱に応答して外見を変化させる感熱部材と、感熱性部材に熱を加えて、感熱部材の外見を変化させて、メモリに記憶されているデータの少なくとも一部を表示させる加熱器と、を備えることもできる。
【0021】
送信器は、受信器によって受信されメモリに記憶されたデータの少なくとも一部を送信するよう動作可能であってもよい。送信器から出力されるデータは、識別情報に加えて、メモリに記憶されているその他のデータの一部を含んでいてもよい。送信器から送信されたデータは、薬剤供給パッケージの外部の装置によって受信され、表示されてもよい。これは、パッケージがそれ自体のディスプレイを有する必要がないことを意味する。データを表示するために外部装置を使用することは、パッケージが多言語ブックレットを使用する必要がないことを意味する。
【0022】
本発明の一実施形態によるシステムは、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を記憶するメモリ、及び薬剤供給パッケージの外部の受信装置による受信用に識別情報を送信するよう動作可能な送信器を備える薬剤供給パッケージと、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を薬剤供給パッケージから受信するよう動作可能な受信装置と、受信装置と通信するように動作可能な制御システムであって、複数の薬剤供給パッケージに関連するデータを記憶するデータベースを備える当該制御システムと、を備える。制御システムは、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を用いて薬剤供給パッケージに関連するデータを取り出すことができる。制御システムは、薬剤供給パッケージをユーザに割り当てるように構成されている。また、制御システムは、受信装置が特定の薬剤供給パッケージから受信した識別情報を当該受信装置から受信したときに、特定の薬剤供給がユーザに割り当てられた薬剤供給パッケージであることをチェックするように構成されている。このシステムは、パッケージが記憶している識別情報を利用して、正しいパッケージだけが患者に与えられることを保証する。これは、それがなければ患者に及んでいた可能性のある健康上の危険を防止するのに役立ち、臨床試験の結果の正確性を保証するのに役立つ。この薬剤供給パッケージは、上述の薬剤供給パッケージのいずれであってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態による別のシステムは、上述の薬剤供給パッケージの少なくとも1つと、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を薬剤供給パッケージから受信するよう動作可能な受信装置と、受信装置と通信するよう動作可能な制御システムであり、複数の薬剤供給パッケージに関連するデータを記憶するデータベースを備える当該制御システムと、を備えている。制御システムは、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を用いて薬剤供給パッケージに関連するデータを取り出すことができる。受信装置は、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を受信したときに、その識別情報を制御システムに通信して、薬剤供給パッケージに関連するデータの一部又は全てをデータベースから取得するよう動作可能であり、制御システムは、薬剤供給パッケージに関連するデータの一部又は全てを受信器に通信するように動作可能である。受信装置は、薬剤供給パッケージの受信器を介して、取得したデータを薬剤供給パッケージに供給するよう動作可能である。
【0024】
このシステムは、薬剤供給パッケージのメモリに記憶され薬剤供給パッケージから送信されたデータを薬剤供給パッケージから受信するよう動作可能な端末を備えていてもよい。端末は、薬剤供給パッケージから受信したデータの少なくとも一部の視覚表示を提供するディスプレイを備え得る。端末は、携帯電話、PDA、ラップトップなどの個人用携帯装置であってもよい。
【0025】
本発明の一実施形態による別のシステムは、上述の薬剤供給パッケージの少なくとも1つと、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を薬剤供給パッケージから受信するように動作可能な装置と、当該装置と通信するように動作可能な制御システムであり、複数の薬剤供給パッケージに関連するデータを記憶するデータベースを備える当該制御システムと、を備えている。制御システムは、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を用いて薬剤供給パッケージに関連するデータを取り出すことができる。当該装置は、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を受信したときに、その識別情報を制御システムに通信して、薬剤供給パッケージに関連するデータの一部又は全てをデータベースから取得するよう動作可能であり、制御システムは、薬剤供給パッケージに関連するデータの一部又は全てを該装置に通信するよう動作可能である。当該装置は、受信したデータの少なくとも一部の視覚表示を当該装置のユーザに提供するディスプレイを備える。この装置は、携帯電話、PDA、ラップトップなどの個人用携帯装置であってもよい。
【0026】
上述のシステムは、臨床試験を実施するのに特に有用である。
【0027】
本発明の一態様によれば、薬剤供給パッケージを用いた方法が提供される。薬剤供給パッケージは、当該薬剤供給パッケージに固有の識別情報を記憶するメモリ、及び薬剤供給パッケージの外部の受信装置による受信用に識別情報を送信するよう動作可能な送信器を備える。この方法は、ユーザに使用されるように意図された特定の薬剤供給パッケージをユーザに割り当てるステップと、薬剤供給パッケージを識別するステップと、識別された薬剤供給パッケージに固有の識別情報が、当該ユーザに割り当てられた薬剤供給パッケージに固有の識別情報に対応しているか否かを判定するステップと、識別された薬剤供給パッケージに固有の識別情報が当該ユーザに割り当てられた薬剤供給パッケージに固有の識別情報に対応している場合に、識別された薬剤供給パッケージを該ユーザに提供するステップと、を含む。この薬剤供給パッケージは、上述の薬剤供給パッケージのいずれか1つとすることができる。
【0028】
本発明の一態様によれば、上述の薬剤供給パッケージの少なくとも1つを使用する方法が提供される。この方法は、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を受信するステップと、受信した識別情報を使用して、複数の薬剤供給パッケージに関連するデータを記憶するデータベースにアクセスして、薬剤供給パッケージに関連するデータの一部又は全てを取り出すステップと、取り出したデータを薬剤供給パッケージのメモリに記憶するステップと、を含む。
【0029】
薬剤供給パッケージがディスプレイを有する場合には、この方法は、薬剤供給パッケージのメモリに記憶されているデータの少なくとも一部を薬剤供給パッケージのディスプレイに表示するステップを含んでいてもよい。
【0030】
さらに、この方法は、薬剤供給パッケージのメモリに記憶されているデータの少なくとも一部を、ディスプレイを有する装置に送信するステップと、薬剤供給パッケージから当該装置に送信されたデータの少なくとも一部を、当該装置のディスプレイに表示するステップとを含んでいてもよい。
【0031】
本発明の一態様によれば、上述の薬剤供給パッケージの少なくとも1つを使用する方法が提供される。この方法、薬剤供給パッケージに固有の識別情報を、薬剤供給パッケージからディスプレイを有する装置に送信するステップと、受信した識別情報を使用して、複数の薬剤供給パッケージに関連するデータを記憶するデータベースにアクセスして、薬剤供給パッケージに関連するデータの一部又は全てを取り出すステップと、データベースから取り出したデータの少なくとも一部を該装置のディスプレイに表示するステップとを含む。
【0032】
上述の方法は、データベースから取り出したデータを所定の言語にフォーマットするステップを含んでいてもよい。
【0033】
上述の方法は、上述の薬剤供給パッケージのうちの一つ以上を使用する臨床試験を実施するのに特に有用である。
【0034】
本発明の別の態様によれば、コンピュータによって実行されたときに上述の方法の少なくとも1つを実行するコンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは、記憶媒体(CD−ROMやDVDなど)や伝送媒体(ネットワークケーブルや同報伝送など)のデータ搬送媒体上で搬送されてもよい。
【0035】
次に、添付の図面を参照しながら、例示のみを目的として本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】既知の薬剤供給パッケージを示す概略図である。
【図2a】既知の多言語ブックレットの英語ラベルを示す図である。
【図2b】既知の多言語ブックレットのフランス語ページを示す図である。
【図3a】本発明の実施形態による薬剤供給パッケージを示す概略図である。
【図3b】本発明の実施形態による薬剤供給パッケージを示す概略図である。
【図3c】本発明の実施形態による薬剤供給パッケージを示す概略図である。
【図4a】本発明の実施形態によるシステムを示す概略図である。
【図4b】本発明の実施形態によるシステムを示す概略図である。
【図4c】本発明の実施形態によるシステムを示す概略図である。
【図4d】本発明の実施形態によるシステムを示す概略図である。
【図5】患者が最初に臨床試験に登録するときの、図4aに示すシステムの動作を概略的に示す流れ図である。
【図6】臨床試験への登録を済ませ、薬剤供給パッケージを既に提供されている患者が検査官のもとを再度訪れたときの、図4aに示すシステムの動作を概略的に示す流れ図である。
【図7】患者が最初に臨床試験に登録するときの、図4b又は図4cに示すシステムの動作を概略的に示す流れ図である。
【図8】患者が最初に臨床試験に登録するときの、図4dに示すシステムの動作を概略的に示す流れ図である。
【発明の詳細な説明】
【0037】
以下の説明及び図面では、本発明の特定の実施形態について述べる。ただし、本発明は、以下に述べる実施形態に限定されないこと、及び実施形態によっては以下に述べる特徴の全てを必ずしも含んでいなくてもよいことを理解されたい。また、添付の特許請求の範囲に記載する本発明のより広範な範囲を逸脱することなく、本明細書に様々な修正及び変更を加えることができることは明らかであろう。
【0038】
図3aは、本発明の一実施形態による薬剤供給パッケージ300(患者用キット又は臨床供給パッケージとしても知られている)を示す概略図である。パッケージ300は、図1のパッケージ100と同様の物理的形状を有する。
【0039】
パッケージ300は、メモリ304及び当該メモリ304と結合された送信器306を有する電子装置302を備えている。電子装置302は、マイクロチップ、集積回路、半導体素子など、以下に述べる機能を提供することができる任意の電子装置とすることができる。
【0040】
メモリ304は、パッケージ300に固有の識別情報を記憶する。すなわち、パッケージ300のメモリ304に記憶された識別情報は、当該パッケージ300を一意に特定するものであり、又は、少なくとも臨床試験においては当該パッケージ300に固有である。識別情報は、番号、文字列、数字や、番号、文字、及び記号の組合せ、又は、他の任意の形態のデータであってもよく、メモリ304に記憶して、当該パッケージ300に固有の一意の識別情報として使用することができるものである。この識別情報は、単一の識別情報で構成することもできるし、或いは、組み合わさって当該パッケージ300を一意に識別する複数の識別情報(臨床試験を示す識別情報と当該臨床試験で使用するパッケージ300の番号を示す識別情報との組合せなど)で構成することもできる。
【0041】
メモリ304は、例えば一意の識別情報を用いて一度だけメモリを構成する場合には、読取り専用メモリであってもよい。或いは、例えば同一の臨床試験又は後続の臨床試験においてパッケージ300の識別情報を変更して再利用する場合など、メモリを再構成可能にする場合には、メモリ304は、ランダムアクセスメモリとし得る。さらに、後述のように、本発明の幾つかの実施形態では、メモリ304を、薬剤供給パッケージに対して送受するデータを記憶するために使用する。この場合には、メモリ304はランダムアクセスメモリである。当技術分野では既知のように、任意の適切なメモリ手段をメモリ304として使用することができる。
【0042】
送信器306は、電子装置302の制御下でメモリ304に記憶されたデータの一部又は全て(パッケージ304の一意の識別情報を含む)を読み取り、送信することができる、任意の種類の装置とし得る。例えば、送信器306は、電磁波を介して(例えばBluetoothや赤外線リンクなどにより)データを送信することができる。このようにして、パッケージ300は、メモリ304に記憶されたデータを無線通信によって伝送することができる。或いは、送信器306が受信器(図3aには図示せず)と接触している場合に受信器と協働するよう、当該送信器306を構成することもできる。これは、任意の既知の接触(すなわち非無線)通信手段によって実現することができる。送信器306は、メモリ304と外部受信器の間の単なるインタフェースであってもよく、外部受信器がメモリ304からデータを読み取ることができるようにするだけでもよい。
【0043】
図3aに示す電子装置302は、バッテリ308から給電される。バッテリ308は、適当なレベルの電力を適当な期間(例えばメモリ304及び送信器306を動作させるのに十分な電力を臨床試験の予想実施期間にわたって)、電子装置302に供給することができる。或いは、太陽電池などその他の手段によって、電子装置302に給電することもできる。この場合には、可能性としては無制限の期間にわたって電子装置302に電力を供給することができ、これは臨床試験の実施期間が長い、又は分からない場合に特に適している。太陽電池とバッテリ308を組み合わせて電子装置302に給電するなど、様々な給電手段を組み合わせて使用してもよい。さらに、電子装置302は、それ自体の電源を備えず、外部装置から給電を受けるように構成されていてもよい。例えば、送信器306が物理的接続によって外部受信器と通信する場合には、この物理的接続を使用して、電子装置302に電力を供給することもできる。或いは、誘導によって、すなわちパッケージ300と別の装置との間の物理的接続を実際には必要とせずに、電子装置302に給電することもできる。
【0044】
送信器306は、メモリ304に記憶されたデータを常に送信していてもよい。或いは、送信器306は、外部受信器(図3aには図示せず)と協働するように構成して、外部受信器が付近にあるとき、又はデータの提供を要求したときにのみデータを外部受信器に提供するようにしてもよい。この場合も、当技術分野で既知の任意の技術で実現することができる。例えば、電子装置302が外部装置との誘導結合によって給電されている場合には、送信器306は、電力が適当なレベルに達したときにメモリ304に記憶されているデータを送信するように構成することもできる。
【0045】
図3bは、本発明の別の実施形態による薬剤供給パッケージ340(患者用キット又は臨床供給パッケージとしても知られている)を示す概略図である。図3bのパッケージ340は、以下で述べるように幾つかの機構が追加されていることを除けば、図3aのパッケージ300と同様である。
【0046】
パッケージ340の電子装置302は、パッケージ340の外部にある送信器(図3bには図示せず)からデータを受信するように構成された受信器350を備える。パッケージ340の電子装置302は、受信器350が受信したデータをメモリ304に記憶し得るように構成される。
【0047】
受信器350は、外部送信器からデータを受信する任意の種類の装置とすることができる。例えば、受信器350は、電磁波を介して(例えばBluetoothや赤外線リンクなどにより)データを受信してもよい。このようにして、パッケージ340は、無線通信によってデータを受信し、メモリ304に記憶し得る。或いは、受信器340が外部送信器と接触している場合に、外部送信器と協働するように当該受信器340を構成してもよい。これは、任意の既知の接触(すなわち非無線)通信手段によって実現することができる。受信器340を、メモリ304と外部受信器の間の単なるインタフェースとし、外部受信器がメモリ304にデータを書き込むことができるようにするだけでもよい。
【0048】
送信器306と受信器350は協働し得ることを理解されたい。例えば、電子装置302は、データの送信を要求する命令を受信したときにのみ、メモリ304に記憶されているデータを送信してもよい。この命令は、受信器350で受信することができ、この時点で、電子装置302は、送信器306にデータを送信させてもよい。電子装置302並びにその送信器306及び受信器350は、任意の既知の通信方法及びプロトコルを使用することができる。
【0049】
送信器306は、受信器350が受信してメモリ304に記憶したデータの一部又は全てを送信することができるように構成される。
【0050】
したがって、送信器306及び受信器340は、入出力インタフェースの形態をとり得る。この入出力インタフェースは、能動的であってもよい(すなわち、パッケージ300から給電され、能動的にデータを外部に送信し、能動的にデータを要求及び受信する)。入出力インタフェースは、受動的であってもよい(すなわち、給電を受けず、単に外部装置自体が直接メモリに書込みを行ったりメモリから読取りを行ったりすることを可能とするインタフェースとして作用する)。
【0051】
パッケージ340は、メモリ304に記憶されているデータの少なくとも一部の視覚表示を提供するためのディスプレイ(又は電子ラベル)352を有する。ディスプレイ352は電子装置302に結合されており、電子装置302を、メモリ304に記憶されているデータをディスプレイ352に伝送するように構成することができ、ディスプレイを、受信した情報を人間が読み取ることができる形態で表示するように構成することができる。メモリ304に記憶されているデータをディスプレイ352に表示させる技術は周知であり、本明細書では詳細には説明しない。
【0052】
例えば、ディスプレイ352は、メモリ304に記憶されているデータを表示する(そしてその表示を維持する)ために電力を必要とするLCDディスプレイパネルやLEDディスプレイパネルなどの電動ディスプレイ(例えばバッテリ308から電力を受ける)とすることができる。ディスプレイは、可撓性であることが好ましい。これは、パッケージ340がねじれたり、つぶれたりしたときに、ディスプレイ352が損傷を受けないようにすることに役立つ。
【0053】
或いは、ディスプレイ352は、熱が加えられたときに外見を変化させる(例えば色又は陰影を変化させる、或いは黒と白の間で切り替わる)感熱部材(感熱紙又は感熱生地など)を備えていてもよい。この場合には、ディスプレイ352は、感熱部材の外見を変化させてメモリ304に記憶されているデータの一部又は全てを表示させるよう制御された態様で感熱部材を加熱するように構成されたヒータ(又は加熱器)を備える。このようなディスプレイ352は、1回限りのディスプレイとすることもできる。すなわち、感熱部材の外見が一度変化したら、元に戻すことはできず、ディスプレイ352が表示する情報を更新することができないものであってもよい。或いは、感熱性構成要素は、(上記の反復不能な視覚的修正とは反対に)その外見を繰り返し修正することができ、ディスプレイ352に表示された情報を更新することができるようなものであってもよい。
【0054】
パッケージ340は、ディスプレイ352に与えられる電力を制御するために使用されるスイッチ354(或いはボタン又はアクティベータ)を備えていてもよい。例えば、スイッチ354を使用して、(i)ディスプレイ352がメモリ304内のデータの視覚表示を提供するようにディスプレイ352に電力を供給する状態と、(ii)ディスプレイ352がメモリ304内のデータの視覚表示を提供しなくなるようにディスプレイ352への電力の供給を停止した状態とを、切り替えることができる。或いは、スイッチ354によってタイマ(図示せず)を起動して、所定の時間だけディスプレイ352を起動して(そして視覚表示を提供する)もよい。したがって、スイッチ354は、バッテリ308(又はその他の給電手段)の電力を節約し、それにより電子装置302の寿命を延ばすのに有用である。
【0055】
図3cは、本発明の別の実施形態による薬剤供給パッケージ(患者用キット又は臨床供給パッケージとも呼ぶ)380を示す概略図である。図3cのパッケージ380は、ディスプレイ352又はスイッチ354が存在しないことを除けば、図3bのパッケージ340と同様である。したがって、図3cのパッケージ380は、図3aのパッケージ300に、受信器350を追加したものと同様である。
【0056】
図4aは、本発明の一実施形態によるシステムを示す概略図である。
【0057】
検査官側の構成は、検査官の1人が使用するコンピュータ400からなる。コンピュータ400は、以下で更に詳細に述べるように、臨床試験で使用される1つ以上のコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行する。臨床試験には複数の検査官(薬剤師、化学者、医師、病院など)が関わることもできるが、分かりやすくするために、図4aでは1人しか示していないことを理解されたい。コンピュータ400は、データ受信器402(或いは入力装置又は受信装置)に接続されており、当該受信器402は、図3aのパッケージ300、図3bのパッケージ340、又は図3cのパッケージ380からパッケージ300/340/380の送信器306を介して送信されたデータを受信することができる。受信器402は、パッケージ300/340/380の送信器306と協働するのに適した任意の受信器とすることができる。例えば、送信器306がBluetooth送信器である場合には、受信器402もBluetooth受信器であり、送信器306が赤外線送信器である場合には、受信器402も赤外線受信器であり、送信器306がパッケージ300/340/380のメモリ304に記憶されているデータを送信するために物理的接続を必要とする場合には、受信器402は、送信器306と協働して必要な物理的リンクを形成する適切な接続を備える。
【0058】
受信器402は、コンピュータ400に一体化されていてもよく、コンピュータ400に(例えばUSB接続を介して)結合された別個の装置であってもよい。さらに、コンピュータ400は、任意の汎用コンピュータであってもよく、本発明の実施形態を実施するように特に設計されたコンピュータであってもよい。
【0059】
このシステムは、臨床試験システム420(又は制御システム)も備える。この臨床試験システム420は、一以上のコンピュータの形態をとることができる。臨床試験システム420は、以下で更に詳細に述べるように、臨床試験で使用される一以上のコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行する。臨床試験システム420と検査官のコンピュータ400とは、例えばインターネット又はイントラネットを介して、或いはコンピュータ400と臨床試験システム420の間でのデータの送信に適した任意の通信ネットワーク430を介して、互いに通信することができる。
【0060】
臨床試験システム420は、臨床試験に関連する情報、又は複数の臨床試験を行っているときには複数の臨床試験に関連する情報を記憶し、提供するデータベース422を備える。データベース422に記憶されるデータは、データベースの分野で周知のように、任意の適切な方法で構成し、分類し、順序付けすることができる。
【0061】
データベース422は、検査官から提供された患者の詳細(名前、年齢、性別、体重、身長、住所など)を記憶する(後述参照)。データベース422は、検査官の詳細(名前、住所など)も記憶する。
【0062】
さらに、データベース422は、臨床試験のために作成された各パッケージ300/340/380に関する情報も記憶する。したがって、データベース422は、各パッケージ300/340/380にそれぞれ関連する複数のレコードを記憶する。データベース422は、パッケージ300の一意の識別情報を、対応するパッケージ300/340/380に関係(関連)するデータとリンクさせる。このように、データベース422内で一意の識別情報を鍵として使用して、対応するパッケージ300/340/380に関連するデータに指し示し(ルックアップ)し、取り出す(アクセスする)ことができる。このデータは、例えば、有効期限など、多言語ブックレットに使用されていた任意のデータ(図2a及び図2bに示す)とすることができる。さらに、パッケージ300/340/380で提供される薬がプラセボであるか医療品の合成物であるかに関するデータや、パッケージ300/340/380がどの検査官に対して配布されたかに関するデータなど、多言語ブックレットで提供されない情報を、パッケージ300/340/380の一意の識別情報と関連付けてデータベース422に記憶することもできる。
【0063】
臨床試験システム420は、検査官のコンピュータ400を介して検査官からデータを受信するように構成されている。この情報は、例えば、当該特定の検査官の識別情報、臨床試験に参加している患者の詳細、患者に与えられ又は患者によって使用されるパッケージ300/340/380を識別するデータ、患者に使用され検査官に戻されたパッケージ300/340/380を識別するデータ、又はその他の、パッケージ300/340/380のメモリ304に記憶され、送信器306及び受信器402を介して検査官のコンピュータ400に提供されたデータとすることもできる。
【0064】
臨床試験システム420は、データ(どのパッケージ300/340/380を特定の患者に提供すればよいかを示す識別情報など)を検査官にも提供するように構成される。
【0065】
臨床試験システム420は、単一のエンティティ(企業又は組織)によって1箇所で運用及び編成されてもよい。或いは、臨床試験システム420の様々な機能が、異なる(別個の)エンティティ及び/又は異なる(別個の)場所で運用及び編成されてもよい。例えば、(i)データベース422の管理は、患者のデータ及び試験の結果を保護するための適当なセキュリティ措置を採用している、臨床試験を行う組織のデータ制御装置が制御し、(ii)検査官のコンピュータ400と臨床試験システム420の間のインタフェースは、この臨床試験又はその他の臨床試験用のウェブサイトインタフェースを提供する別の組織が管理するようにすることもできる。
【0066】
データベース422は、単一のデータベースとして構成されていてもよいし、複数の別個のデータベースとして構成されていてもよい。(上述のように)異なるエンティティ及び/又は異なる場所を使用するときには、データベース422を、それらの異なるエンティティ及び/又は異なる場所に分散させてもよい。
【0067】
上述のシステムは、ネットワーク型の通信(インターネットやイントラネットなど)を利用して、検査官のコンピュータ400と臨床試験システム420の間でデータの通信を行う。これに加えて、又はこれに代えて、臨床試験システム420は、対話型音声応答装置を使用することもできる。この場合には、臨床試験システム420にかかってきた電話越しに検査官が話す情報を識別するために、音声認証の使用が必要となり得る。或いは、検査官は、電話のタッチパッド(キー)を用いて情報(パッケージ300/340/380の一意の識別情報又は患者の詳細など)を提供することもできる。電話のボタンを使用して、対話型音声応答装置から提供されるメニュー及び/又はオプションを操作することもできる。さらに、臨床試験システム420は、その後、電話を介した音声通信として検査官に情報を送り返すこともできる。
【0068】
図5は、患者が最初に臨床試験に登録するときの、図4aに示すシステムの動作を概略的に示す流れ図である。
【0069】
ステップS500で、患者は検査官のもとを訪れ、臨床試験に登録する。
【0070】
ステップS502で、患者は、自分の詳細を検査官に提供する。これらの詳細としては、例えば、年齢、性別(性)、住所、身長、体重、及び既知の疾患などがある。次いで、検査官は、コンピュータ400を使用し、例えばインターネットを介して、これらの詳細を臨床試験システム420に伝送する。さらに、検査官は、自信を臨床試験システム420に対して特定する。これを容易にするために、臨床試験システム420は、ウェブサイトを提供して、例えば患者の詳細などを入力するためのユーザインタフェースを検査官に提供することもできる。
【0071】
ステップS504で、臨床試験システム420は、患者の詳細をデータベース422に記憶する。
【0072】
ステップS506で、臨床試験システム420は、当該患者に対して、特定のパッケージ300/340/380を割り当てる。上述のように、検査官は、臨床試験に参加する患者に提供すべき幾つかのパッケージ300/340/380を既に受け取っている。検査官の身元が分かると、臨床試験システム420は、検査官が所有している(且つまだどの患者にも与えていない)パッケージ300/340/380の1つを、当該患者に割り当てる。臨床試験システム420は、無作為化と呼ばれるプロセスで当該患者にどのパッケージ300/340/380を与えるかを決定するために、患者の詳細を使用しなくてもよいし、患者の詳細の一部又は全てを使用してもよい。患者に提供されるパッケージ300/340/380は、プラセボを有するものでも、実薬(医薬品の合成物又は医薬品の組成物)を有するものでもよい。
【0073】
次いで、臨床試験システム420は、当該患者にどのパッケージ300/340/380を与えるかを検査官に通知して、ステップS508において検査官が適当なパッケージ300/340/380を検出することができるようにする。検査官が正しいパッケージ300/340/380を検出しやすくするために、パッケージ300/340/380は、それからパッケージ300/340/380を識別できる英語ラベル200を備えていてもよい。(後述のように、実施形態によっては、ユーザに与える薬剤供給パッケージに関するデータを記憶させておくこともできる。この場合には、英語ラベルは、電子装置302が故障した場合に備えた好適なバックアップとなる。)或いは、単純にパッケージ300/340/380に識別データ(箱番号210及び/又はパッケージオーダー番号208など)を印刷して、検査官が正しいパッケージ300/340/380を識別することを支援することもできる。更なる別法として、パッケージ300/340/380は、検査官が(バーコード読取り装置を用いて)読み取ることができる、パッケージ300/340/380に固有のバーコードを有していてもよい。
【0074】
患者に与えるパッケージ300/340/380を取り出したら、ステップS510で、検査官は、コンピュータ400の受信器402を使用して、パッケージ300/340/380のメモリ304に記憶されている一意の識別情報を読み取る。次いで、検査官は、その一意の識別情報を臨床試験システム420に送信する。
【0075】
次いで、臨床試験システム420は、検査官から受信した一意の識別情報が、検査官から患者に与えさせるパッケージ300/340/380の一意の識別情報と対応していることをチェックする。このようにして、臨床試験システム420は、検査官によって識別されたパッケージ300/340/380が、患者に割り当てられたパッケージ300/340/380であることをチェック(又は検証)する。検査官が正しいパッケージ300/340/380を識別した場合には、ステップS514で、臨床試験システム420は、検査官に肯定応答信号を提供し、パッケージ300/340/380の患者への供給に関する詳細でデータベース422を更新する(患者の識別情報をパッケージ300/340/380の一意の識別情報と関連付ける、患者にパッケージ300/340/380を与えることに関するデータを記憶する、など)。検査官が正しいパッケージ300/340/380を識別していなかった場合には、ステップS516で、臨床試験システム420は、検査官に否定応答信号を提供する。
【0076】
ステップS518で、検査官は、臨床試験システム420から肯定応答信号が送信されたか、否定応答信号が送信されたかを判定する。検査官に対して否定応答信号が送信された場合には、コンピュータ400は、「パッケージが違います。正しいパッケージを探して下さい」などのメッセージを、検査官に与えることができる。処理はステップS508に戻り、検査官は、正しいパッケージ300/340/380を探す。
【0077】
一方、検査官に対して肯定応答信号が送信された場合には、コンピュータ400は、「正しいパッケージです。患者に与えて下さい」などのメッセージを、検査官に与えることができる。次いで、ステップS520で、検査官が患者にパッケージ300/340/380を与えて、ステップS522で、患者がパッケージ300/340/380を受け取り、臨床試験に従ってそれを使用することができるようにする。
【0078】
このようにして、パッケージ300/340/380に記憶された一意の識別情報は、検査官が、正しい患者に正しいパッケージ300/340/380を提供することを保証する。これは、検査官側における人的エラーをなくすのに役立ち、(間違った(すなわち不適切な)パッケージ300/340/380が患者に与えられた場合に)患者の健康に有害である恐れのある影響が及ぶのを防止するのに役立ち、臨床試験の結果の正確性を保証するのに役立つ。
【0079】
図6は、臨床試験への登録を済ませ、パッケージ300/340/380を既に与えられている患者が検査官のもとを再度訪れたときの、図4aに示すシステムの動作を概略的に示す流れ図である。図6に示すステップの幾つかは、図5に示すステップと同様であるので、同じ参照番号で示す。これらのステップについては、再度詳細には説明しない。
【0080】
ステップS600で、患者は検査官のもとを再度訪れ、最初に検査官から与えられたパッケージ300/340/380を返却する。もちろん、患者は、パッケージ300/340/380で最初に提供された薬剤製品の一部又は全てを既に使用していることになる。
【0081】
ステップS602で、検査官は、コンピュータ400の受信器402を使用して、患者のパッケージ300/340/380から一意の識別情報を読み取る。コンピュータ400は、パッケージ300/340/380のメモリ304に記憶され得るその他のデータを読み取ることもできる。例えば、上述のように、パッケージ300/340/380は、患者がどのブリスタ106を開けたか、また、いつ開けたかを電子装置302が判定し、記録するように構成することができる。この情報は、送信器306及び受信器402を介してパッケージ300/340/380からコンピュータ400が読み取ることもできる。
【0082】
次いで、検査官は、パッケージ300/340/380から読み取った情報を、臨床試験システム420に送信する。さらに、検査官は、患者の健康に関するデータ(例えば一般的な健康状態、試験している薬剤製品の副作用など)など、パッケージ300/340/380から読み取る以外の情報を、臨床試験システム420に送信することもできる。
【0083】
ステップS604で、臨床試験システム420は、検査官から受信したデータをデータベース422に記憶する。
【0084】
ステップS606で、臨床試験システム420は、新たな又は次のパッケージ300/340/380を患者に割り当てる。これは、図5のステップS506と同様である。ただし、それ以前に既に患者がパッケージ300/340/380を与えられているので、臨床試験システム420は、データベース422をチェックして、当該患者に対して以前にどの種類のパッケージ300/340/380が与えられたかを判定して、適切なパッケージ300/340/380を選択できるようにする。例えば、当該患者が以前にプラセボを与えられていた場合には、次のパッケージ300/340/380にもプラセボが入っていなければならない。同様に、当該患者が以前に実薬を与えられていた場合には、次のパッケージ300/340/380にも実薬が入っていなければならない。したがって、臨床試験ユニット420は、検査官が患者に与えるべき適切なパッケージ300/340/380を(臨床試験の実施に応じて)識別する。
【0085】
次いで、臨床試験システム420は、どのパッケージ300を患者に与えるかを検査官に通知する。
【0086】
その後、このプロセスは、図5を参照して述べたように、ステップS508、S510、S512、S514又はS516、S518、S520及びS522と進む。
【0087】
このようにして、パッケージ300/340/380に記憶された一意の識別情報は、臨床試験を通じて適切なパッケージ300/340/380が患者に提供される(例えば、決まった用量及び用法で、一貫してプラセボ又は実薬を与えるなど)ことを保証するのに役立つ。これは、検査官側における人的エラーをなくすのに役立ち、患者の健康に有害である恐れのある影響が及ぶのを防止するのに役立ち、臨床試験の結果の正確性を保証するのに役立つ。
【0088】
図4bは、本発明の一実施形態による別のシステムを示す概略図である。図4bのシステムは、図4aのシステムと同様である。ただし、図4bでは、図4aの受信器402の代わりに送受信器440(入出力装置)を使用し、使用する薬剤供給パッケージは、図3bのパッケージ340である。
【0089】
送受信器440は、パッケージ340から(送信器306を介して)送信されるデータを受信し、パッケージ340に(受信器350を介して)データを送信するよう構成されている。パッケージ340のメモリ304に記憶されているデータは、図4aを参照して上述したのと同様の方法で読み取られ、臨床試験システム420に伝送され得る。さらに、検査官は、コンピュータ400を使用して、臨床試験システム420から受信したデータやコンピュータ400で生成された(又はコンピュータ400に入力された)データなどのデータを、パッケージ340のメモリ304にロードし、記憶することもできる。
【0090】
送受信器440は、パッケージ340の送信器306と協働するのに適した任意の受信器と、パッケージ340の受信器350と協働するのに適した任意の送信器とを備え得る。送受信器440は、コンピュータ400に一体化されていてもよく、コンピュータ400に(例えばUSB接続を介して)結合された別個の装置であってもよい。
【0091】
図7は、患者が最初に臨床試験に登録するときの、図4bに示すシステムの動作を概略的に示す流れ図である。図7は、極めて図5に類似しており、図7のステップで図5のステップと同じものは、同じ参照番号で示す。これらのステップについては、再度詳細には説明しない。
【0092】
図5では、検査官が患者にとって正しいパッケージ340を選択したことを臨床試験システム420が(ステップS512で)確認したら、処理はステップS514に進む。これに対して、図7では、ステップS514の代わりにステップS700及びS702を行う。
【0093】
ステップS700で、臨床試験システム420は、患者に与えるパッケージ340に関係する(関連する)最新の試験データの一部又は全てを識別(取得)する。この情報はデータベース422から取り出され、臨床試験システムは、患者のパッケージ340の一意の識別情報を使用して、データベース422に記憶されているパッケージ340に関連するデータを指し示す(アクセスする)。これは、任意の既知のデータベースアクセス技術によって行うことができる。
【0094】
臨床試験システム420がデータベース422から取り出すデータは、パッケージ340のディスプレイ352に表示されるデータである。このデータは、図2aに示す情報、すなわち普通なら英語ラベル200によって表示されるはずの情報の一部又は全てを含み得る。
【0095】
上述のように、例えば、パッケージ340の有効期限が臨床試験の途中で変化したり、試験中の薬の推奨されている用法が試験の途中で調整されたりする可能性がある。これらの詳細の変更が行われた場合には、データベース422を更新して、臨床試験及び当該臨床試験で使用されているパッケージ340に関する最新の情報がデータベース422に入っているようにする。
【0096】
次いで、ステップS702で、臨床試験システム420は、ステップS700で取り出したデータ及び肯定応答信号の双方を、検査官に送信(供給)する。
【0097】
ステップS518で、検査官が肯定応答を受信した場合には、処理はステップS704に進んだ後に、ステップS520に進む。
【0098】
ステップS704で、検査官は、送受信器440及びパッケージ340の受信器350を用いて、臨床試験システム420から受信したパッケージ340に関連するデータを、パッケージ340に送信する。このようにして、パッケージ340に関連する最新のデータを、パッケージ340のメモリ304にロードし、記憶することができる。さらに、検査官は、パッケージ340に送信してメモリ304に記憶することができる情報(例えば特定の医師の名前など)を提供することもできる。
【0099】
患者は、パッケージ340を使用するために持ち帰ると(ステップS522)、ステップS706で、パッケージ340に関連するデータにアクセスして、そのデータがパッケージ340のディスプレイ352に表示されるようにすることができる。例えば、患者は、スイッチ354を使用してディスプレイ352を起動して、メモリ304に記憶されているデータの一部又は全てがディスプレイ352によって視覚的に表示されるようにすることができる。
【0100】
データは、例えばディスプレイ352のサイズ及び/又は解像度に適するように、様々な方法でディスプレイ352の表示用にフォーマットすることができる。ただし、データを表示する言語は、患者の要求に合わせて調節することができる。例えば、臨床試験システム420は、患者又は検査官の住所に基づいて、使用する適当な言語を決定することができる。或いは、患者を臨床試験に登録するときに、検査官が取得して臨床試験システム420に伝送される患者データの1要素として、好ましい言語を示す指標を含めてもよい。このようにして、臨床試験システム420は、適当な言語を決定し、パッケージ340と関連付けることができる。臨床試験システム420は、データを検査官に送信するときに、ステップS702で、パッケージ340で使用する言語に従ってデータをフォーマット及び/又は翻訳することもできる。こうして、患者のパッケージ340は、当該患者に適した言語でデータを受信することになる。
【0101】
或いは、臨床試験システム420は、ステップS702で、説明文(例えば「有効期限」、「湿度レベル」など)なしで、単純に生データ(例えば有効期限、湿度レベルなど)を検査官に送信することもできる。この場合、検査官のコンピュータは、その生データを自分で翻訳及び/又は処理して、患者に適した言語のデータを生成することができる。
【0102】
このように、パッケージ340は、多言語ブックレットを必要としない。ディスプレイ352での表示用にメモリ304に記憶されたデータは、患者に適した言語で記憶することができる。これにより、交換用の多言語ブックレットを製造し、配布し、使用する必要なく、新たな言語を容易に臨床試験に組み込むことができる。
【0103】
さらに、メモリ304に記憶されているデータは、パッケージ340を患者に供給する時点における最新のデータである。したがって、有効期限や用法、収納条件などのデータの変更に関連する多言語ブックレットやラベルなどに関するいずれの問題も解消される。
【0104】
臨床試験への登録を済ませ、既にパッケージ340を与えられ使用している患者が、検査官のもとを再度訪れ、次の(後続の)パッケージ340を入手することもある。この場合も、図6に示す方法を同じように図4bのシステムに適用するが、(i)図6のステップS514の代わりに図7のステップS700及びS702を行う(図5のステップS514を図7でステップS700及びS702で置き換えたのと同様)点、(ii)図6のステップS518とS520の間に追加のステップS704を使用する点、及び(iii)ステップS706に関連して述べたのと同様の方法で、患者が交換用パッケージ340に関連するデータにアクセスすることができる点が異なる。
【0105】
図4cは、本発明の一実施形態による別のシステムを示す概略図である。図4cのシステムは、図4bのシステムと同様であるが、図4cでは、使用する薬剤供給パッケージが受信器350を使用しており、薬剤供給パッケージが図3bのパッケージ340であっても図3cのパッケージ380であってもよいようになっている。
【0106】
図4cでは、患者(実際には患者に限らず任意の人でよい)は、装置(又は端末)450(携帯電話、携帯情報端末、コンピュータなど)を使用する。装置450は、情報(例えば図2aの英語ラベルに見られる情報など、パッケージ340/380のメモリ304に記憶される臨床試験情報など)を表示するのに適したディスプレイ452を有する。
【0107】
装置450は、パッケージ340/380から送信されてきたデータを受信することができる。このように、装置450は、図4cの送受信器440が使用している受信器と同様の受信器を有することができる。例えば、装置450は、Bluetoothを介してパッケージ340/380と通信することができるBluetooth対応装置にすることができる。したがって、NFC装置(近距離通信装置)などの装置は、パッケージ340/380に近接したときにパッケージ340/380と通信することができるので、特に適している。ただし、データを受信及び/又は送信するために物理的接続を必要とする装置を代わりに使用することもできる。装置450とパッケージ340/380の間でデータ通信を行うための任意の既知の技術を使用することができることは、当業者なら理解するであろう。
【0108】
図4cのシステムを動作させる方法は、図4bのシステムを動作させる図7に示す方法と同じである。ただし、図7のステップS706を改変して、パッケージ340/380のメモリ304からパッケージ340/380に関連するデータを患者が読み取ることができるようにする代替の方法にも対応するようにすることができる。パッケージ340/380は、例えばパッケージ340/380と装置450が互いに通信できるほど十分に装置450がパッケージ340/380に接近したとき(又はパッケージ340/380と接触したとき)に、そのデータの一部又は全てを装置450に送信するように構成される。次いで、装置450は、装置450に対して送信され、装置450が受信したデータを、ディスプレイ452に表示することができる。
【0109】
このように、薬剤供給パッケージは、それ自体のディスプレイを備える必要がない(例えば図3cのパッケージ380)。さらに、薬剤供給パッケージがそれ自体のディスプレイ352を有している(例えば図3bのパッケージ340)が、そのディスプレイ352が壊れている場合にも、患者は、装置450を介してパッケージ340のメモリ304内のデータにアクセスすることができる。さらに、装置350を使用するということは、パッケージ340/380が多言語ブックレットを備える必要がなく、したがってこのブックレットに関連する上述の問題が解消されることを意味する。
【0110】
もちろん、図3bのパッケージ340を使用している場合には、患者は、パッケージ340のディスプレイ352を使用して、パッケージ340のメモリ304に記憶されているデータの一部又は全てを表示することもできる。
【0111】
図4dは、本発明の一実施形態による別のシステムを示す概略図である。図4dのシステムは、図4cのシステムと同様であるが、図4dでは、使用する薬剤供給パッケージが、そのメモリ304に記憶するデータを受信する受信器350を必ずしも必要としないため、薬剤供給パッケージは、図3aのパッケージ300であっても、図3bのパッケージ340であっても、図3cのパッケージ380であってもよい。
【0112】
図4dのシステムでは、装置450及びパッケージ300/340/380は、パッケージ300/340/380がメモリ304に記憶されている当該パッケージ300/340/380の一意の識別情報を装置450に送信することができるように、互いに通信するように構成されている。
【0113】
さらに、臨床試験システム420は、装置450と通信することができるように構成されている。これは、例えば、装置450がネットワーク430に接続できるようにすることによっても(例えばインターネット対応携帯電話など)、或いは装置450及び臨床試験システム420が電話通信(SMS又はMMSによるテキストメッセージなど)を受信、処理、生成及び送信することができるようにすることによっても、達成することができる。このような装置450と臨床試験システム420の間でデータを通信する技術は周知であり、本明細書ではこれ以上詳細に説明しない。
【0114】
図8は、患者が最初に臨床試験に登録するときの、図4dに示すシステムの動作を概略的に示す流れ図である。図8は、図5の最終ステップS522の後に幾つかのステップが続くことを除けば、図5と同じである。図8のステップ出ず5のステップと同じものは、同じ参照番号で示す。これらのステップについては、再度詳細には説明しない。
【0115】
ステップS522で患者がパッケージ300/340/380を入手した後、患者は、ステップS800で、パッケージ300/340/380がメモリ304に記憶されている識別情報を装置450に通信するように準備する。例えば、近距離通信装置の場合には、装置450とパッケージ300/340/380とを、互いに通信できるように十分に接近させることを伴い、パッケージ300/340/380は、その付近に装置450を検出すると、自動的にその一意の識別情報を送信する。次いで、装置450は、臨床試験システム420に一意の識別情報を通信する。これは、装置450が自動的に行ってもよいし、患者が適当なメッセージ(例えばSMSテキストメッセージ又は電子メールなど)を作成して、臨床試験システム420に送信してもよい。
【0116】
臨床試験システム420は、一意の識別情報を受信すると、ステップS802で、患者に与えられたパッケージ300/340/380に関する最新の試験データの一部又は全てを識別(取得)する。これは、図7のステップS700で行う処理と同様である。次いで、臨床試験システム420は、このデータを装置450に返送する。
【0117】
次いで、ステップS804で、臨床試験システム420からデータを受信した装置450が、装置450のディスプレイ452にデータを表示する。使用している薬剤供給パッケージも受信器350を有している場合には、装置450が受信したデータをパッケージ340/380に送信して、そのデータをその後メモリ304に記憶することができる。
【0118】
このようにして、患者は、検査官のもとを訪れなくても、自分の薬剤パッケージに関連する最新の情報を取得することができる。したがって、患者が検査官のもとを最後に訪れた後で、患者に提供された臨床試験データに対してどのような更新が行われても、患者はその更新を利用することができる。
【0119】
臨床試験への登録を済ませ、パッケージ300/340/380を既に与えられ使用している患者が、検査官のもとを再度訪れ、次の(後続の)パッケージ300/340/380を入手することもある。この場合も、図6に示す方法を同じように図4dのシステムに適用するが、図8のステップS800、S802及びS804を使用して、患者がパッケージ300/340/380に関連するデータにアクセスすることができる点が異なる。
【0120】
上記例のシステム及び動作方法には、様々な修正を加えることができることを理解されたい。例えば、患者は、実際に検査官のもとを訪れる代わりにインターネットを介してオンラインで登録することもできる。この場合には、検査官は、適当なパッケージ300/340/380を郵便で患者に送付するように手配する。この場合には、患者も、使用済みのパッケージ300/340/380を、郵便で検査官に返送すればよい。
【0121】
さらに、図3bのパッケージ340を、図4dのシステムで使用することもできる。この場合には、電子装置302を、直接臨床試験システム420と通信するように構成する。このようにすれば、患者は、別の装置450を使用する必要がなく、パッケージ340が、その識別情報を直接臨床試験システム420に送信し、パッケージ340に関係する最新のデータを要求することができる。次いで、臨床試験システム420が、当該データを直接パッケージ340に戻し、当該データのディスプレイ352上の表示及び/又はメモリ304への記憶が行われる。
【0122】
さらに、パッケージ340/380が最新の臨床試験データをそのメモリ304にロードする図7のステップS704で、検査官のコンピュータ400が、この臨床試験データを表示した別個のラベルを印刷するように構成することもできる。この場合には、検査官は、患者が関連データを見るための追加又は代替の手段として、このラベルをパッケージ340/380に添付することができる。
【0123】
さらに、図7及び図8に示す方法では、ステップS510、S512、S514、S516、及びS518で行われる検証(妥当性検査)を実行する必要がない。例えば、図8でこれらのステップを省略することができる。また、図7において、ステップS700及びS702をステップS506と組み合わせて、ステップS506で患者に薬剤供給パッケージを割り当てたときに、臨床試験システム420が、当該パッケージに関連する最新の試験データも検査官に通信するようにすることもできる。
【0124】
本発明の実施形態がコンピュータプログラムによって実施される限り、当該コンピュータプログラムの記憶媒体及び伝送媒体も、本発明の態様であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤供給パッケージに固有の識別情報を記憶するメモリと、
前記薬剤供給パッケージの外部の受信装置による受信のために前記識別情報を送信するよう動作可能な送信器と、
データを受信し、受信したデータを前記メモリに記憶するよう動作可能な受信器と、
を備える、薬剤供給パッケージ。
【請求項2】
前記メモリに記憶されているデータの少なくとも一部の視覚表示を提供するディスプレイを備える、請求項1に記載の薬剤供給パッケージ。
【請求項3】
前記ディスプレイが、前記メモリに記憶されているデータの前記少なくとも一部の前記視覚表示を提供するために電力を必要とする、請求項2に記載の薬剤供給パッケージ。
【請求項4】
前記ディスプレイに前記視覚表示を提供させる、又は前記視覚表示の提供を停止させるためのスイッチを備える、請求項3に記載の薬剤供給パッケージ。
【請求項5】
前記ディスプレイが、
加熱に応答して外見を変化させる感熱部材と、
前記メモリに記憶されているデータの前記少なくとも一部を表示させるよう前記感熱部材の外見を変化させるために前記感熱部材に熱を加える加熱器と、
を備える、請求項2に記載の薬剤供給パッケージ。
【請求項6】
前記送信器が、前記受信器によって受信され前記メモリに記憶された少なくとも一部のデータを、前記薬剤供給パッケージの外部の装置による受信、及び、表示のために、送信するよう動作可能である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬剤供給パッケージ。
【請求項7】
薬剤供給パッケージに固有の識別情報を記憶するメモリ、及び該薬剤供給パッケージの外部の受信装置による受信のために前記識別情報を送信するよう動作可能な送信器を備える該薬剤供給パッケージと、
前記薬剤供給パッケージに固有の前記識別情報を前記薬剤供給パッケージから受信するよう動作可能な受信装置と、
前記受信装置と通信するよう動作可能な制御システムであって、複数の薬剤供給パッケージに関連するデータを記憶するデータベースを備える、該制御システムと、
を備え、
前記制御システムは、薬剤供給パッケージに関連するデータを、該薬剤供給パッケージに固有の前記識別情報を用いて、取り出すことができ、
前記制御システムは、薬剤供給パッケージをユーザに割り当てるように構成されており、
前記制御システムは、前記受信装置によって特定の薬剤供給パッケージから受信された識別情報を該受信装置から受信したときに、前記特定の薬剤供給が前記ユーザに割り当てられた薬剤供給パッケージであることをチェックするよう構成されている、システム。
【請求項8】
前記薬剤供給パッケージが、請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬剤供給パッケージである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬剤供給パッケージと、
前記薬剤供給パッケージに固有の識別情報を前記薬剤供給パッケージから受信するよう動作可能な受信装置と、
前記受信装置と通信するよう動作可能な制御システムであって、複数の薬剤供給パッケージに関連するデータを記憶するデータベースを備える、該制御システムと、
を備え、
前記制御システムは、薬剤供給パッケージに関連するデータを、該薬剤供給パッケージに固有の識別情報を用いて取り出すことができ、
前記受信装置は、前記薬剤供給パッケージに固有の前記識別情報を受信したときに、該識別情報を前記制御システムに伝送して、前記薬剤供給パッケージに関連するデータの一部又は全てを前記データベースから取得するよう動作可能であり、前記制御システムは、前記薬剤供給パッケージに関連するデータの前記一部又は全てを前記受信器に伝送するよう動作可能であり、
前記受信装置は、前記薬剤供給パッケージの受信器を介して取得した前記データを前記薬剤供給パッケージに供給するよう動作可能である、
システム。
【請求項10】
前記薬剤供給パッケージの前記メモリに記憶され該薬剤供給パッケージから送信されるデータを該薬剤供給パッケージから受信するよう動作可能な端末を備え、
前記端末が、前記薬剤供給パッケージから受信したデータの少なくとも一部の視覚表示を提供するディスプレイを備える、
請求項5に従属するときの請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記端末が個人用携帯装置である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬剤供給パッケージと、
前記薬剤供給パッケージに固有の識別情報を該薬剤供給パッケージから受信するよう動作可能な装置と、
前記装置と通信するよう動作可能な制御システムであって、複数の薬剤供給パッケージに関連するデータを記憶するデータベースを備える、該制御システムと、
を備え、
前記制御システムは、薬剤供給パッケージに関連するデータを、該薬剤供給パッケージに固有の識別情報を用いて、取り出すことができ、
前記装置は、前記薬剤供給パッケージに固有の前記識別情報を受信したときに、該識別情報を前記制御システムに伝送して、該薬剤供給パッケージに関連するデータの一部又は全てを前記データベースから取得するよう動作可能であり、前記制御システムは、前記薬剤供給パッケージに関連するデータの前記一部又は全てを前記装置に伝送するよう動作可能であり、
前記装置は、前記受信したデータの少なくとも一部の視覚表示を前記装置のユーザに提供するディスプレイを備える、
システム。
【請求項13】
前記装置が個人用携帯装置である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
臨床試験を実施するシステムであって、請求項7〜13のいずれか一項に記載のシステムを備える、システム。
【請求項15】
薬剤供給パッケージを使用する方法であって、該薬剤供給パッケージは、該薬剤供給パッケージに固有の識別情報を記憶するメモリ、及び該薬剤供給パッケージの外部の受信装置による受信のために前記識別情報を送信するよう動作可能な送信器を備え、該方法は、
ユーザに使用されるように意図された特定の薬剤供給パッケージを該ユーザに割り当てるステップと、
薬剤供給パッケージを識別するステップと、
識別された前記薬剤供給パッケージに固有の識別情報が、前記ユーザに割り当てられた薬剤供給パッケージに固有の識別情報に対応しているか否かを判定するステップと、
識別された前記薬剤供給パッケージに固有の識別情報が前記ユーザに割り当てられた薬剤供給パッケージに固有の識別情報に対応している場合に、識別された前記薬剤供給パッケージを前記ユーザに提供するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記薬剤供給パッケージが、請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬剤供給パッケージである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬剤供給パッケージを使用する方法であって、
前記薬剤供給パッケージに固有の識別情報を受信するステップと、
前記薬剤供給パッケージに関連するデータの一部又は全てを取り出すために、受信した前記識別情報を使用して、複数の薬剤供給パッケージに関連するデータを記憶するデータベースにアクセスするステップと、
取り出した前記データを前記薬剤供給パッケージのメモリに記憶するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記薬剤供給パッケージが、請求項2に記載の薬剤供給パッケージであり、
前記方法は、前記薬剤供給パッケージのメモリに記憶されているデータの少なくとも一部を前記薬剤供給パッケージのディスプレイに表示するステップを含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤供給パッケージのメモリに記憶されているデータの少なくとも一部を、ディスプレイを有する装置に送信するステップと、
前記薬剤供給パッケージから前記装置に送信されたデータの少なくとも一部を、前記装置の前記ディスプレイに表示するステップと、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬剤供給パッケージを使用する方法であって、
前記薬剤供給パッケージに固有の識別情報を、前記薬剤供給パッケージからディスプレイを有する装置に送信するステップと、
前記薬剤供給パッケージに関連するデータの一部又は全てを取り出すために、受信した前記識別情報を使用して、複数の薬剤供給パッケージに関連するデータを記憶するデータベースにアクセスするステップと、
前記データベースから取り出したデータの少なくとも一部を前記装置の前記ディスプレイに表示するステップと、
を含む方法。
【請求項21】
前記データベースから取り出したデータを所定の言語にフォーマットするステップを含む、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
臨床試験を実施する方法であって、
該臨床試験は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬剤供給パッケージを一つ以上異使用し、
請求項15〜21のいずれか一項に記載の方法を実行するステップを含む、
方法。
【請求項23】
コンピュータによって実行されたときに、請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法を実行するコンピュータプログラム。
【請求項24】
請求項23に記載のコンピュータプログラムを搬送するデータ搬送媒体。
【請求項25】
記憶媒体又は伝送媒体である、請求項24に記載の媒体。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−504381(P2011−504381A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531601(P2010−531601)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002882
【国際公開番号】WO2009/056945
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(397060175)ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー. (28)
【Fターム(参考)】