説明

薬剤分包装置

【課題】視覚障害のある人や印字内容の判読が困難な人などでも、分包紙の印字内容を的確に把握確認できる薬剤分包装置を提供すること。
【解決手段】所定量の薬剤が包装される分包紙に、少なくとも包装される薬剤の処方を含む分包紙の印字内容を表す文字列がコード化された二次元コードを印刷するコード印刷手段と、この二次元コードから包装される薬剤の処方を表す文字列を光学的に読み取る二次元コード読取手段と、この二次元コード読取手段の文字列読取出力を音声情報に変換して出力する音声情報変換手段、を含むことを特徴とする薬剤分包装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤分包装置に関し、詳しくは、分包紙に印字されている処方や注意事項や患者の氏名などの印字内容を判読できない視覚障害のある人や読み書きが困難な人などでも、印字内容を的確に把握確認できる分包印刷の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬剤分包装置として、たとえば特許文献1に記載されているように、薬剤を所定量ずつ包装する分包紙に、処方や服用にあたっての注意事項や患者の氏名などを、直接印字したり、視覚障害のある人のために点字刻印したり、これらが印字されたり刻印されたシールを貼付することが提案されている。
【0003】
【特許文献1】 特開2000−142602
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、点字は1文字が6個の点で構成される6ビットデータであることから、基本的には最大でも2の6乗個、つまり、64個の文字しか表すことができない。そこで、2つの点字を組み合わせて1文字を表すことも行われているが、分包紙のような限られた領域に刻印できる点字数はかなり制限されてしまうことになり、分包紙に印字される処方などと同等の内容を点字で刻印することは困難である。
【0005】
また、点字は、視覚障害のある人すべてが読めるものではなく、習得していない人は読むことができない。また、点字を習得していても、怪我や障害などで指先が使えない状態になる場合もある。
【0006】
また、老眼の人にとっては、分包紙のような限られた領域に印字されている文字は比較的小さいことから、判読しにくいことが多い。
【0007】
また、日常会話は支障なくできるものの、日本語の読み書きは発達途上という段階の外国人などにも、分包紙の印字内容を的確に理解することは困難と思われる。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に着目したものであり、その目的は、視覚障害のある人や印字内容の判読が困難な人などでも、分包紙の印字内容を的確に把握確認できる薬剤分包装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を達成する請求項1の発明は、
所定量の薬剤が包装される分包紙に、少なくとも包装される薬剤の処方を含む分包紙の印字内容を表す文字列がコード化された二次元コードを印刷するコード印刷手段と、
この二次元コードから包装される薬剤の処方を表す文字列を光学的に読み取る二次元コード読取手段と、
この二次元コード読取手段の文字列読取出力を音声情報に変換して出力する音声情報変換手段、
を含むことを特徴とする薬剤分包装置である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の薬剤分包装置において、前記二次元コードは、SPコードであることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2記載の薬剤分包装置において、前記コード印刷手段は前記二次元コードを任意の比率で拡大印刷し、前記二次元コード読取手段は拡大印刷された二次元コードを光学的に縮小して読み取ることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2記載の薬剤分包装置において、前記コード印刷手段は前記二次元コードを任意の比率で拡大印刷し、前記二次元コード読取手段は拡大印刷された二次元コードをそのまま光学的に読み取り、前記音声情報変換手段に入力するときにソフト的に縮小することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1記載の薬剤分包装置において、前記二次元コードは、QRコードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
少なくとも包装される薬剤の処方を含む分包紙の印字内容が音声情報に変換して出力されるので、視覚障害のある人や印字内容の判読が困難な人などでも、分包紙の印字内容を的確に把握確認できる。
【0015】
二次元コードを任意の比率で拡大印刷し、拡大印刷された二次元コードを光学的またはソフト的に縮小して音声情報変換を行うので、印字分解能が比較的低い汎用的なインクジェットヘッドであっても、二次元コードを印刷するコード印刷手段として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について、図面を用いて説明する。図1は本発明を実施する装置の具体例を示す構成図である。図1において、軸1にロール状に巻回されている2ツ折りの分包紙2は、ガイドローラー3を介して、印刷部4→薬剤ホッパー部5→ヒートシール部6→打抜部7へ各ステップごとに断続的に送り出される。
【0017】
2ツ折りの分包紙2は、純正の木材パルプのみで作られたグラシン紙にポリエチレンがラミネートされたグラシンポリや、セロファンにポリエチレンがコーティングされたセロポリなどが用いられる。
【0018】
印刷部4は、従来と同様に、図2に示すように、分包紙2の所定の領域21に処方や服用にあたっての注意事項や患者の氏名などをたとえばカラーインクで印字するとともに、所定の領域22や23に少なくとも包装される薬剤の処方を含む分包紙の印字内容を表す文字列がコード化された二次元コードを印刷する。二次元コードを印刷するインクは、必ずしも黒に限るものではなく、二次元コードを読み取る受光素子の波長感度特性に応じて赤や青や黄その他の色であってもよい。
【0019】
このような印刷部4としては、従来と同様に、熱転写プリンタ、レーザープリンタ、インクジェットプリンタなどを用いることができるが、コスト的には印字分解能が公称300dpi程度の汎用インクジェットプリンタのインクジェットヘッドを用いることが望ましい。
【0020】
二次元コードとしては、各社や各団体から各種コードが提案され実用化されているが、本実施例では、たとえばコード化ソフトウェアが無償配布されるとともに専用のコード読取音声変換出力端末機がスピーチオ(登録商標)やテルミー(登録商標)として商品化されているSPコード(登録商標)を用いる。このSPコードによれば、18mm角の切手サイズの面積に最大800字の文字情報をコード化して印字でき、前述の専用端末磯で読み取ることにより文字列を音声で再生出力できる。したがって、分包紙2の所定の領域21に印字される処方や服用にあたっての注意事項や患者の氏名などを音声で再生出力できる。なお、SPコードは英語版もあるので、必要に応じて英語版を印刷してもよいし、一方の二次元コードは日本語版印刷にして他方の二次元コードを英語版印刷にしてもよい。
【0021】
ところで、SPコードの印刷にあたっては、印字分解能の規格として最低でも600dpiが必要とされている。本発明において、コスト的な観点から用いる印字分解能が300dpiのインクジェットヘッドは、このままではSPコードの印刷規格を満たさないことになる。また、分包紙2の紙質によっても、インクのにじみ度合いに明らかな違いが見られる。グラシンポリの場合はインクドットが鮮明に印字されるが、インクジェット印字用の加工処理が施されていないセロポリではグラシンポリと比べると明らかにドットにじみが大きい。
【0022】
そこで、本発明では、図2に示すように、印字分解能が300dpiのインクジェットヘッドで二次元コード22や23を任意の比率で拡大印刷し、拡大印刷された二次元コード22や23を図3に示すように二次元コード読取機30で光学的に縮小して読み取る。たとえば二次元コード22や23を長さ2倍に拡大して印刷すると、分包紙2には等価的に600dpiの印字分解能で二次元コード22や23が印刷されることになる。
【0023】
図3に示す二次元コード読取機30において、光学的読取部31はたとえば2倍に拡大印刷された二次元コード22や23を1/2に縮小してコード読取部32に入力する。文字列変換部33は、コード読収部32から入力されるコード信号を少なくとも包装される薬剤の処方を含む分包紙の印字内容を表す文字列に変換する。音声変換部34は、文字列変換部33から入力される文字列を音声信号に変換する。そして、音声出力部35は、音声変換部34から入力される音声信号を視覚障害のある人や印字内容の判読が困難な人などが聴取できる音圧レベルに増幅して出力する。
【0024】
再び図1において、印刷部4で所定の印刷が施された分包紙2は薬剤ホッパー部5に送られ、分包紙2の所定の領域には処方に基づく所定の薬剤(散剤、顆粒、錠剤、カプセル剤など)が所定量投入される。
【0025】
薬剤ホッパー部5での薬剤投入が終わると、分包紙2はヒートシール部6に送られる。ヒートシール部6は、2ツ折りされている分包紙2の2ツ折り部を底辺として、図2の網かけ表示していない左右側辺と上辺を加熱して溶着する。これにより、薬剤ホッパー部5で投入された薬剤は、分包紙2の所定領域24に封入密閉されることになる。
【0026】
ヒートシール部6での加熱溶着が終わると、分包紙2は打抜部7に送られる。打抜部7は、側辺の加熱溶着部に、図2に示すような切り離しのためのミシン目25と、二次元コード22や23の印刷があることを視覚障害のある人に触感で明確に伝えるための切り欠き26を打抜き形成する。ここで、切り欠き26は、分包紙2を開封するためのガイド溝としても機能するものであり、高齢者や手先に障害のある人が自力で分包紙2を開封することを支援することができる。
【0027】
なお、上記実施例では、分包紙2に2個の二次元コード22と23を設ける例を示したが、音声で伝えたい情報量が800字未満の場合には1個だけ設ければよい。
【0028】
また、上記実施例では、拡大印刷された二次元コードを光学的読取部31で光学的に縮小して音声情報変換を行う例を説明したが、光学的読取部31は拡大印刷された二次元コードをそのまま光学的に読み取り、音声情報変換手段に入力するときにソフト的に縮小するようにしてもよい。
【0029】
また、印刷部4で用いるインクジェットヘッドは200dpi程度であってもよく、印刷拡大率に応じてズームレンズや固定レンズの組み合わせで任意の率で縮小すればよい。
【0030】
また、上記実施例では、分包紙2の送り方向に沿って、印刷部4→薬剤ホッパー部5→ヒートシール部6と配列する例を示したが、印刷部4の前段に分包紙2の両側辺のシールを行う別のヒートシール部を設け、ヒートシール部6では分包紙2の上辺のシールのみを行うようにしてもよい。
【0031】
これにより、印刷部4に送り込まれる分包紙2に安定した印刷に必要な剛性を与えることができるとともに、薬剤ホッパー部5で投入される薬剤が隣接する領域に移動することを完全に防ぐことができる。なお、印刷前に両側辺のシールを行うのにあたり、上辺近傍をシールしないことにより、分包紙2の薬剤投入領域の開口部を広くでき、薬剤ホッパー部5における薬剤投入を安定に行うことができる。
【0032】
また、上記実施例では、二次元コードとしてSPコードを用いる例を説明したが、近年各分野で広く用いられているQRコード(登録商標)を用いてもよい。
【0033】
QRコードは、必要とされる印刷分解能がSPコードよりも比較的低いことから、汎用のインクジェットヘッドでも十分対応できる。
【0034】
また、印刷するQRコードの大きさはコード化したい情報量に応じて任意に設定できるので、システム設計における自由度が大きい。
【0035】
さらに、印刷されたQRコードの音声読み上げ機能が各社の携帯電話機端末に標準実装されつつあるので、専用端末機を準備しなくてもよく、高い利便性が得られる。
【0036】
また、図1の実施例では、印刷部4が走行する分包紙2に対して水平方向に印刷する例を示したが、垂直方向に印刷する構成であってもよい。
【0037】
また、二次元コードは、SPコ−ドとQRコードを併用してもよい。これは、利用者によっては、SPコードの専用端末機しかないとか携帯電話機端末しかないなどの利便性を考慮したものである。この場合、SPコードを専用端末機で読み取るのにあたっては、切り欠き26を目安にして、SPコードが専用端末機に対して右下に位置するように配置する。
【0038】
SPコードとQRコードを併用するのにあたっては、切り欠き26の形状をSPコードとQRコードとで異ならせて、両者を判別できるようにすることが望ましい。純正のSPコードについては半円形とし、倍率を変えたSPコードの場合には純正のSPコードと区別するため半楕円形とし、QRコードについては実施例のような半矩形にすればよい。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、視覚障害のある人や印字内容の判読が困難な人などでも、分包紙の印字内容を音声情報によって的確に把握確認できる薬剤分包装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を実施する装置の具体例を示す構成図である。
【図2】本発明における分包紙2の具体例図である。
【図3】本発明で用いる二次元コード読取機30の具体例を示す構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
1 軸
2 分包紙
21 印字領域
22,23 二次元コード
24 薬剤封入密閉領域
25 ミシン目
26 切り欠き
3 ガイドローラー
4 印刷部
5 薬剤ホッパー部
6 ヒートシール部
7 打抜部
30 二次元コード読取機
31 光学的読取部
32 コード読取部
33 文字列変換部
34 音声変換部
35 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の薬剤が包装される分包紙に、少なくとも包装される薬剤の処方を含む分包紙の印字内容を表す文字列がコード化された二次元コードを印刷するコード印刷手段と、
この二次元コードから包装される薬剤の処方を表す文字列を光学的に読み取る二次元コード読取手段と、
この二次元コード読取手段の文字列読取出力を音声情報に変換して出力する音声情報変換手段、
を含むことを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項2】
前記二次元コードは、SPコードであることを特徴とする請求項1記載の薬剤分包装置。
【請求項3】
前記コード印刷手段は前記二次元コードを任意の拡大率で拡大印刷し、前記二次元コード読取手段は拡大印刷された二次元コードを光学的に縮小して読み取ることを特徴とする請求項1または請求項2記載の薬剤分包装置。
【請求項4】
前記コード印刷手段は前記二次元コードを任意の拡大率で拡大印刷し、前記二次元コード読取手段は拡大印刷された二次元コードをそのまま光学的に読み取り、前記音声情報変換手段に入力するときにソフト的に縮小することを特徴とする請求項1または請求項2記載の薬剤分包装置。
【請求項5】
前記二次元コードは、QRコードであることを特徴とする請求項1記載の薬剤分包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−50672(P2009−50672A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248066(P2007−248066)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(507319517)エースシステム工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】