薬剤投与針
【課題】薬剤投与対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を投与することができる薬剤投与針を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる薬剤投与針1は、内部にルーメン4を有する細長い外筒2と、尖った穿刺部6が先端に形成された先端部7と先端部7より基端側に位置する細長い軸部8とを有し、少なくとも軸部8が外筒2のルーメン4内部に軸方向に移動可能に挿通され、全長が外筒2より長い内針3と、外筒2の内側面と内針3の軸部8との間の空間41に薬剤を供給する薬剤注入口10と、を備える。
【解決手段】本発明にかかる薬剤投与針1は、内部にルーメン4を有する細長い外筒2と、尖った穿刺部6が先端に形成された先端部7と先端部7より基端側に位置する細長い軸部8とを有し、少なくとも軸部8が外筒2のルーメン4内部に軸方向に移動可能に挿通され、全長が外筒2より長い内針3と、外筒2の内側面と内針3の軸部8との間の空間41に薬剤を供給する薬剤注入口10と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体組織内に穿刺されて薬剤の投与に用いられる薬剤投与針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人間を含む哺乳動物の生体組織内に穿刺されて薬剤の投与に用いられる薬剤投与針が知られている。このような薬剤投与針では、針の先端に薬剤吐出口が設けられ、針の内部のルーメンを通って送られてきた薬剤が先端の開口から吐出される。
【0003】
また、薬剤投与針を内針と外針とのいわゆる2重針で構成する技術も知られている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。このような2重針構成の薬剤投与針では、内針を外針内部のルーメンの挿入した状態で生体組織に針を穿刺し、所望の位置に針先端が到達した後に内針を外針から抜き出してから、薬剤を投与する。この場合、生体組織内には外針のみが留置され、この外針の先端から薬剤が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−202030号公報
【特許文献2】特開平10−94601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薬剤投与針の先端から薬剤を吐出する方法では、生体組織の狭い領域にしか薬剤を浸潤させることができなかった。また、生体組織の広い領域に薬剤を湿潤させるために薬剤針側面に開口を複数設けることもできるものの、開口を増やすと針自体の強度が弱くなるため、側面開口による薬剤の投与領域の拡大には限界があった。
【0006】
また、薬剤投与針を生体組織内に導入した段階で開口が組織片で塞がれ、薬剤の吐出がスムーズに行われないこともあった。この場合、吐出の圧力を高めて無理に吐出させようとすると、組織を破損する場合や、薬剤投与針の導入で形成された組織内の空間から薬剤が勢いよく飛び出して薬剤投与対象外の他の生体組織にまで薬剤が飛散してしまうことも考えられる。
【0007】
さらに、薬剤投与対象の生体組織によって穿刺の容易さは異なる。たとえば、肝臓がんの治療目的で針を肝臓内の腫瘍まで穿刺するのは比較的容易であるが、膵臓がんの腫瘍は繊維性間質が豊富な固形腫瘍であり、穿刺が困難である。
【0008】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、薬剤投与対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を投与することができる薬剤投与針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる薬剤投与針は、内部にルーメンを有する細長い外筒と、尖った穿刺部が先端に形成された先端部と前記先端部より基端側に位置する細長い軸部とを有し、少なくとも前記軸部が前記外筒のルーメン内部に軸方向に移動可能に挿通され、全長が前記外筒の全長より長い内針と、前記外筒の内側面と前記内針の軸部との間の空間に薬剤を供給する薬剤注入口と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の軸部は、当該軸部が前記外筒のルーメン内部に軸方向に挿通された場合に、前記内針の軸部の側面と前記外筒の内側面との間に、前記薬剤注入口と当該軸部先端とを連通させる空間を形成可能とする形状を有することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記外筒の先端には、尖った穿刺部が形成され、前記内針の先端部は、前記外筒のルーメンに挿通可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の先端部の径は、前記軸部の径よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の先端部は、前記外筒のルーメン内に液密に挿通される寸法および形状であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の軸部が貫通する貫通穴が形成され、前記外筒の内側面と前記内針の軸部との間に液密に挿入される栓をさらに備えたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記軸部は、側面に溝が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記溝は、該溝の縁にテーパー部またはR部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の軸部内部には、ルーメンが形成され、前記軸部の側面には、前記軸部内部のルーメンと前記軸部外部とを連通させる開口が形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の軸部は、断面形状が円弧形の部分を有することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の軸部側面には、前記外筒の内側面に当接して、当該内針を前記外筒の内側面に対して支持する支持部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針は、複数の針を束ねることによって形成されることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記複数の針は、前記外筒から突出した部位が前記外筒の径方向に外側に開くようにくせ付けされていることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記複数の針は、束ねられたときに、内部に軸方向に沿ったルーメンが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
この発明にかかる薬剤投与針は、内部にルーメンを有する細長い外筒と、尖った穿刺部が先端に形成された先端部と前記先端部より基端側に位置する細長い軸部とを有し、少なくとも前記軸部が前記外筒のルーメン内部に軸方向に移動可能に挿通され、全長が前記外筒より長い内針と、前記外筒の内側面と前記内針の軸部との間の空間に薬剤を供給する薬剤注入口と、を備え、内針を外針先端から前進または後退させることにより外針先端方向の生体組織を押し広げて薬剤の導路を確保し、外筒の内側面と前記内針の軸部との間の空間に供給された薬剤を該導路を介して生体組織に投与できるため、生体組織の硬さによらず薬剤投与対象の生体組織に円滑に薬剤を投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、実施の形態にかかる薬剤投与針の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す薬剤投与針を該薬剤投与針の軸に沿って切断した断面図である。
【図3】図3は、図1に示す薬剤投与針を用いた薬剤投与の方法を説明する図である。
【図4】図4は、図1に示す内針先端の他の例を示す斜視図である。
【図5】図5は、図1に示す内針先端の他の例を示す斜視図である。
【図6】図6は、図1に示す内針先端の他の例を示す斜視図である。
【図7】図7は、図6の溝を軸部径方向に沿って切断した図である。
【図8】図8は、実施の形態の変形例1における内針先端の斜視図である。
【図9】図9は、図8のA−A線断面図である。
【図10】図10は、実施の形態の変形例1における内針先端の他の例を示す斜視図である。
【図11】図11は、図10のB−B線断面図である。
【図12】図12は、実施の形態の変形例2における内針先端の斜視図である。
【図13】図13は、図12のC−C線断面図である。
【図14】図14は、図12に示す内針を有する薬剤投与針を、内針の軸部部分で軸方向との鉛直面で切断した断面図である。
【図15】図15は、実施の形態の変形例2における内針先端の他の例の斜視図である。
【図16】図16は、図15のD−D線断面図である。
【図17】図17は、図15に示す内針を有する薬剤投与針を、内針の軸部部分で軸方向との鉛直面で切断した断面図である。
【図18】図18は、実施の形態の変形例3における内針先端の斜視図である。
【図19】図19は、図18に示す内針を先端から見た場合を示す図である。
【図20】図20は、図18に示す内針を有する薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【図21】図21は、実施の形態の変形例4における内針先端の斜視図である。
【図22】図22は、図21に示す内針を先端から見た場合を示す図である。
【図23】図23は、図21のE−E線断面図である。
【図24】図24は、図21に示す内針を有する薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【図25】図25は、実施の形態の変形例5にかかる薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【図26】図26は、実施の形態にかかる他の薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【図27】図27は、実施の形態にかかる他の薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【図28】図28は、実施の形態にかかる他の薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態として、人間を含む哺乳動物の生体組織内に導入される薬剤投与針について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0026】
(実施の形態)
まず、実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる薬剤投与針の斜視図である。図2(1)〜(4)は、図1に示す薬剤投与針を該薬剤投与針の軸に沿って切断した断面図であり、実施の形態にかかる薬剤投与針を用いた薬剤投与の方法を説明する図である。
【0027】
図1に示すように、実施の形態にかかる薬剤投与針1は、内部にルーメン4を有し両端が開口した外筒2、矢印Y1のように外筒2のルーメン4内に挿通可能である内針3、および矢印Y2のように外筒2の基端に嵌め込まれる栓5を備える。
【0028】
外筒2は、細長い形状をしている。外筒2の先端にも尖った穿刺部11が形成されている。この外筒2の側面には、薬剤注入導管9が立設しており、その基端には薬剤注入口10が設けられている。薬剤注入口10から注入された薬剤は、薬剤注入導管9の内部を通って、外筒2の内部に導かれる。
【0029】
内針3は、尖った穿刺部6が形成された先端部7と、先端部7より基端側に位置する細長い軸部8とを有する。内針3は、少なくとも軸部8が外筒2のルーメン4内部に軸方向に移動可能に挿通されており、内針3の全長は、外筒2の全長より長い。
【0030】
内針3の先端部7は、外筒2のルーメン4に挿通可能な形状および寸法になっている。内針3の先端部7の基端部7aの径は、外筒2のルーメン4の内径とほぼ同径である。先端部7は、基端部7aから先端にかけて尖った形状を有する。
【0031】
そして、先端部7の基端部7aの径は、軸部8の径よりも大きい。言い換えると、軸部8の径は、先端部7の基端部7aの径よりも小さい。このため、外筒2のルーメン4には、内針3の先端部7と軸部8とのいずれの部分も挿通可能であるとともに、内針3の先端部7と軸部8とを一体として軸方向に移動させることができる。
【0032】
また、軸部8の径は先端部7の基端部7aの径よりも小さいため、ルーメン4の内径よりも小さい。したがって、内針3の軸部8が外筒2のルーメン4内部に軸方向に挿通された場合、軸部8は、内針3の軸部8の側面と外筒2の内側面との間に、薬剤注入口10と当該軸部先端とを連通させる空間41(図2(1)参照)を形成する。薬剤注入口10から注入された薬剤は、薬剤注入導管9の内部を通って、外筒2の内側面と、外筒2のルーメン4内に挿通された内針3の軸部8側面との間の空間41に導かれる。
【0033】
外筒2および内針3の軸部8は、内視鏡のチャネル経由の手技が可能になるため、非金属の屈曲容易な材料で形成することが望ましい。外筒2および内針3の軸部8は、ポリエーテルサルホン、フッ素樹脂などを材料に用いて形成される。一方、外筒2および内針3の軸部8をたとえば耐食鋼などの金属材料で形成することで、外筒2および内針3の剛性を高めて、生体組織内への薬剤投与針1の挿入を容易にすることもできる。
【0034】
栓5には、内針3の軸部8が貫通する貫通穴12が形成されている。栓5は、挿入部13と把持部14とを備える。挿入部13は、外筒2のルーメン4の内側面と、内針3の軸部8との間に液密に挿入される。矢印Y1のように外筒2先端からルーメン4内に内針3を差し込みし、内針3の軸部8の基端が外筒2の基端から突出するまで内針3を挿通する。その後、外筒2基端から突出する内針3の軸部8を貫通穴12に通しながら、栓5を外筒2の基端に嵌め込むことで、薬剤注入口10から注入され、外筒2のルーメン4の内側面と内針3の軸部8との間の空間41にある薬剤が、外筒2の基端側開口から漏出するのを防止する。
【0035】
次に、図2および図3を参照して、図1に示す薬剤投与針1を用いた薬剤投与の方法を説明する。まず、図2(1)に示すように、薬剤投与対象の腫瘍24に到達するまで、薬剤投与針1を生体組織内に穿刺する。薬剤投与針1は、たとえば図3に示すように、内視鏡20のチャネル21を経由して経口的に胃の中に導入される。そして、薬剤投与針1は、胃壁22に穿刺され貫通した後、体内臓器(例えば、膵臓)23内の腫瘍24に先端が到達するまで穿刺される。この薬剤投与針1からは、たとえば抗がん剤が腫瘍24に対して投与される。
【0036】
ここで、図2(1)に示すように、薬剤投与針1は、外筒2のルーメン4に先端6まで内針3が収容された状態で、操作者により内視鏡20のチャネル21を経由して胃の中に導入される。そして、操作者は外筒2の先端に形成された穿刺部11で、胃壁22を穿刺して貫通させる。次いで、操作者は、矢印Y11のように薬剤投与針1をさらに前進させて体内臓器23内に穿刺し、穿刺部11を腫瘍24の近傍に達する位置に位置付ける。
【0037】
次に、図2(2)に示すように、操作者は、内針3の軸部8基端を矢印Y12のように押すことで、内針3の先端部7を外筒2の先端から突出させ、矢印Y13のように内針3の先端部7を腫瘍24内部まで穿刺する。この場合、軸部8よりも大きな径の先端部7の基端部によって腫瘍24の生体組織が押し広げられるため、軸部8の突出部分の周囲には空間25が形成される。この空間25は、後述するように薬剤の導路を構成する。
【0038】
このとき、腫瘍24が、繊維性間質が豊富な固形腫瘍であるなど穿刺が困難であっても、操作者は、軸部8を押し引きすることで内針3の前進、後退を繰り返して、穿刺動作を複数回行うことができる。このような内針3の押し引き動作を繰り返しても、外筒2は、生体組織に対して静止しているので、薬剤投与対象外の生体組織を損傷する可能性は低い。また、このような外筒2からの内針3の前進、後退動作によって、軸部8よりも大きな径の先端部7によって腫瘍24の生体組織が押し広げられるため、生体組織の組織片によって、外筒2先端の開口部が閉塞される可能性も低い。この薬剤投与針1は、外筒2のルーメン4に先端6まで内針3を収容可能なので、上記の繰り返し動作で長いストロークが確保できる。
【0039】
そして、図2(3)に示すように、操作者は、薬剤投与針1の内針3の先端6が腫瘍24内部に十分侵入したら、外筒2の基端側から薬剤が漏出するのを防止するため、外筒2の基端に栓5を取り付ける。
【0040】
その後、図2(4)に示すように、操作者は、内針3を外筒2先端から突出させた状態のままで、矢印Y14のように薬剤注入口10から薬剤30を注入する。この結果、薬剤30は、外筒2のルーメン4の内側面と、腫瘍24に穿刺されたままの内針3の軸部8との間の空間41に導かれ、薬剤注入口10からの注入圧によって、空間41を通って外筒2先端まで導入される。そして、空間41内に導入された薬剤30は、軸部8表面に沿って外筒2先端から先端方向に流出する。この外筒2先端から流出した薬剤30は、軸部8表面から前述した空間25内に充填され、領域S26内の腫瘍24に浸透する。言い換えると、突出した内針3の軸方向に沿った広い領域S26に薬剤30が投与される。
【0041】
このように、実施の形態にかかる薬剤投与針1は、以上に述べた内針3を外筒2先端11から前進または後退させる操作を行うことによって外筒2先端の生体組織を押し広げて薬剤の導路となる空間25を確保してから、薬剤20を投与することができるため、開口数を増やさなくても生体組織の広く薬剤30を浸潤させることができる。
【0042】
また、薬剤投与針1においては、内針3を外筒2先端11から前進または後退させることによって腫瘍24の生体組織が押し広げられるため、生体組織の組織片によって、外筒2先端の開口部が閉塞される可能性も低いことから、薬剤30の注入圧を必要以上に高めずとも薬剤投与対象の生体組織に円滑に薬剤を投与することができる。
【0043】
また、薬剤投与針1においては、内針3の軸部8を押し引きすることで内針3の外筒2先端11からの前進または後退を繰り返して、内針3による穿刺動作を複数回行えるため、固形腫瘍に対しても十分に穿刺可能である。
【0044】
また、薬剤投与針1においては、薬剤投与のために内針3を外筒2から抜き出す必要がなく、内針3を腫瘍24内に留め置いたままの状態で薬剤30を投与するため、内針の引き抜き動作に起因する外筒2先端の位置ずれを防ぐことができ、所望の領域に円滑に薬剤30を投与できる。
【0045】
なお、図4〜図6の内針3a〜3cに示すように、軸部8a〜8cの側面に、さらに溝81〜83を形成して、薬剤30の送液量を高めてもよい。図4に示すように、軸部8aの軸に沿った方向に複数の長い溝81を形成することによって送液効率を高めることができる。また、軸部8a側面の溝は長い方が好ましいが、必ずしも末端までつながっている必要はない。図5に示すように、溝81よりも短い溝82を軸部8bに形成してもよい。また、たとえば図6の螺旋状の溝83に示すように、軸部8cの軸に沿った方向以外の方向の溝でもよい。さらに、図6の溝83を軸部8の径方向に沿って切断した図7に示すように、溝83の縁に、テーパー部83aまたはR部83bを形成して、溝83の縁に生体組織が引っかかることを低減してもよい。
【0046】
もちろん、たとえば軸部8の軸方向に沿った溝を一本だけ形成するなど、溝を軸に沿って非対称に形成して、溝が形成された方向への薬剤の送液量が多くなるようにしてもよい。このように溝を軸に沿って非対称に形成した場合には、外筒2に対して内針3を回転させることにより、薬剤吐出量のプロフィールを変化させることができる。
【0047】
(実施の形態の変形例1)
次に、実施の形態の変形例1について説明する。図8は、実施の形態の変形例1における内針先端の斜視図である。図9は、図8のA−A線断面図である。図8および図9に示すように、実施の形態の変形例1における内針3dは、軸部8d内部に先端近傍まで延伸するルーメン84bが形成され、軸部8dの側面には、軸部8d内部のルーメン84bと軸部8d外部とを連通させる開口84が形成される。内針の軸部は、軸方向に移動可能に外筒2に挿通されれば足りるため、中実のロッド形状でなくともよく、軸部8dのようにルーメン84bおよび開口84を有していてもよい。
【0048】
この場合、薬剤注入口10から注入された薬剤は、空間41に加え軸部8内部のルーメン84b内にも流入し、そのまま軸部8dの先端近傍まで導かれる。そして、薬剤は、軸部8dの外筒2からの突出部分において、図9の矢印のようにルーメン84bから軸部8dの外側面に回りこむように流れ出す。
【0049】
このように、内針3dの軸部8dにルーメン84bおよび開口84を形成して軸部8dの内部まで薬剤の導路を広げることによって、薬剤の注入圧がルーメン84bを介して軸部8d先端まで十分に伝達されるため、薬剤投与針の先端部までの薬剤の送達が容易になる。
【0050】
なお、図10は、実施の形態の変形例1における内針先端の他の例を示す斜視図であり、図11は、図10のB−B線断面図である。図10および図11に示す内針3eのように、断面形状が、軸方向に沿って円筒の半分を切り取ったような円弧状の部分を有する軸部8eとした場合も、薬剤の導路が広がり、薬剤の注入圧がルーメン85bを介して軸部8e先端まで十分に伝達されるため、内針3dと同様の効果を奏する。
【0051】
(実施の形態の変形例2)
次に、実施の形態の変形例2について説明する。図12は、実施の形態の変形例2における内針先端の斜視図である。図13は、図12のC−C線断面図である。図14は、図12に示す内針を有する薬剤投与針を、内針の軸部部分で軸方向との鉛直面で切断した断面図である。
【0052】
図12〜14に示すように、実施の形態の変形例2における内針3fは、内針3fの軸部8fの側面に、軸部8fの径方向に突出した支持部86を有する。支持部86は、内針3が外筒2に挿通されたときに外筒2のルーメン4内側面に当接して、内針3を外筒2のルーメン4内側面に対して支持する。
【0053】
このように、支持部86が外筒2のルーメン4内側面に当接することによって、薬剤投与針の屈曲等で内針3fの軸部8fの側面と外筒2の内側面との間の空間の断面積が変化するのを低減できるため、薬剤の導路となる空間を確保することができることから、外筒2の先端11までの薬剤送達の安定性を高めることができる。
【0054】
なお、図15は、実施の形態の変形例2における内針先端の他の例の斜視図である。図16は、図15のD−D線断面図である。図17は、図15に示す内針を有する薬剤投与針を、内針の軸部部分で軸方向との鉛直面で切断した断面図である。図15〜17に示す内針3gように、軸部8gの断面形状を外筒2のルーメン4の内径に対応させた大きさの三角形にした場合も、軸部8gの各頂点87が外筒2のルーメン4内側面に当接できるため、内針3fと同様の効果を奏する。
【0055】
(実施の形態の変形例3)
次に、実施の形態の変形例3について説明する。図18は、実施の形態の変形例3における内針先端の斜視図である。図19は、図18に示す内針を先端から見た場合を示す図である。図20は、図18に示す内針を有する薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図であり、この薬剤投与針を用いた薬剤投与の方法を説明する断面図である。
【0056】
図18〜20に示すように、実施の形態の変形例3における内針3hは、たとえば3本の針31を束ねた構造を有する。内針3hは、尖った穿刺部61が形成された先端部7hと、外筒2のルーメン4の内径とほぼ同径である軸部8hとを有する。
【0057】
各針31の側面31bには、軸方向に沿って延伸する溝31cがそれぞれ形成されている。3本の針31が束ねられた内針3hの軸部8hが外筒2のルーメン4内部に軸方向に挿通された場合、この溝31cによって、内針3hの軸部8hの側面と外筒2の内側面との間に、薬剤注入口10と当該軸部8h先端とを連通させる空間44(図20参照)を形成できるため、薬剤投与針1と同様の効果を奏する。
【0058】
さらに、図20に示すように、束ねられた3本の針31は、外筒2から突出する部分である先端部7hおよび先端部7h近傍の軸部8hが、矢印のように径方向の外側に向かって開くように、形状がくせ付けされている。
【0059】
このため、内針3hの外筒2からの突出による各針31の開動作によって腫瘍24が押し広げられて、軸部8hの突出部分の周囲の空間25aとともに内針3h先端側においても各先端部31aの広がりによって空間25bが形成される。これによって、内針3hを用いた薬剤投与針は、薬剤投与針1よりもさらに広い領域を薬剤の導路として確保することができるため、薬剤投与針1よりも広い領域に薬剤を投与できる。また、内針3hを用いた場合、各針31の開動作によって内針3hが生体組織内に係留されることも望めるため、薬剤投与中の位置ずれを防止することができる。
【0060】
(実施の形態の変形例4)
次に、実施の形態の変形例4について説明する。図21は、実施の形態の変形例4における内針先端の斜視図である。図22は、図21に示す内針を先端から見た場合を示す図である。図23は、図21のE−E線断面図である。図24は、図21に示す内針を有する薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図であり、この薬剤投与針を用いた薬剤投与の方法を説明する断面図である。
【0061】
図21〜図24に示すように、実施の形態4における内針3iも、内針3hと同様に、3本の針32を束ねた構造を有する。内針3iは、尖った穿刺部62が形成され基端部32cの径が外筒2のルーメン4の内径とほぼ同径である先端部7iと、先端部7iの径よりも小さい径を有する軸部8iとを有する。このため、3本の針32が束ねられた内針3iの軸部8iが外筒2のルーメン4内部に軸方向に挿通された場合には、内針3iの軸部8iの側面と外筒2の内側面との間に、薬剤注入口10と当該軸部8i先端とを連通させる空間45(図24参照)を形成するため、薬剤投与針1と同様の効果を奏する。
【0062】
そして、図24に示すように、束ねられた3本の針32は、外筒2から突出する部分である先端部7iおよび先端部7i近傍の軸部8iが、矢印のように径方向の外側に向かって開くように、形状がくせ付けされている。このため、内針3iの外筒2からの突出による各針32先端の開動作によって腫瘍24が押し広げられて、軸部8iの突出部分の周囲の空間25aとともに、各先端部32aの広がりによって内針3i先端側においても空間25bも薬剤の導路として確保できるため、実施の形態の変形例3と同様の効果を奏する。
【0063】
さらに、3本の針32は、束ねられたときに、ルーメン32i(図23参照)が形成されるように円筒を3等分した形状を有する。このため、内針3iの外筒2からの突出による各針32の開動作によって、ルーメン32iも空間45,25a,25bに連通し、このルーメン32i内に流入した薬剤が各針32先端の外側面に回りこむように流れ出すため、内針3dと同様に、薬剤投与針の軸部外側面32dおよび先端32aまでの薬剤の送達を容易化することができる。
【0064】
(実施の形態の変形例5)
次に、実施の形態の変形例5について説明する。図25は、実施の形態の変形例5にかかる薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図であり、実施の形態の変形例5にかかる薬剤投与針を用いた薬剤投与の方法を説明する図である。
【0065】
図25(1)に示すように、薬剤投与針1jは、内針3jを有し、内針3jは、内針3と比較し、先端部7jが外筒2のルーメン4内側面に液密に挿通される寸法および形状を有する点が異なる。これによって、外筒2と内針3jを相対的に前進後退する場合の抵抗は高まり、内針3jを誤って滑らせてしまうことがないため、内針3jの外筒2先端からの押し出し制御をより正確化できる。
【0066】
また、内針3jの先端部7jは、外筒2のルーメン4内側面と液密に挿通できるため、内針3の軸部8の側面と外筒2の内側面との間の空間41に薬剤30を保持し、さらに、外筒2の基端部に栓5を嵌めた状態で生体組織内に薬剤投与針1jを穿刺することもできる。さらに、この状態で薬剤投与針1jを穿刺した後、内針3jを矢印Y21のように外筒2の先端11から突出させることで矢印Y22のように空間41の薬剤30の投与を開始でき、突出させた内針3jを引き外筒2のルーメン4内に収納することで薬剤30の投与を停止できる。このように、内針3jの外筒2に対する位置調整で、薬液投与の開始および停止を制御できる。
【0067】
なお、実施の形態では、丸針形状の内針を例に説明したが、もちろん、図26の薬剤投与針1kに示すように、円柱を斜めに切り欠いたような先端6kを有する角針形状の内針3kでもよい。
【0068】
また、実施の形態では、内針の先端部の外径が、外筒2のルーメン4の内径とほぼ同径である場合を例に説明したが、これに限らず、図27の薬剤投与針1mに示すように、内針3mの先端部71mの外径が、外筒2mの外径と同径であってもよい。この場合、内針3mの先端6mで生体組織を穿刺すればよいため、外筒2mの先端に尖った穿刺部を形成する必要がない。そして、軸部8と先端部71mとの中間部72mは、外筒2のルーメン4の内径とほぼ同径である。さらに、中間部72mは、外筒2のルーメン4内側面に液密に挿通される寸法および形状とし、薬剤投与針1jと同様に、内針3mの外筒2mに対する位置調整で、薬液投与の開始および停止を制御できるようにしてもよい。もちろんこの場合も、図28の薬剤投与針1nに示すように、円柱を斜めに切り欠いたような先端6nを有する角針形状の内針3nを採用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,1j,1k,1m,1n 薬剤投与針
2,2m 外筒
3,3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g、3h,3i,3j,3k,3m,3n 内針
4,32i ルーメン
5 栓
6,11,61 穿刺部
7,7h,7i,7j 先端部
8,8a,8b,8c,8d,8e,8f,8g,8h,8i 軸部
9 薬剤注入導管
10 薬剤注入口
12 貫通穴
13 挿入部
14 把持部
20 内視鏡
21 チャネル
31,32 針
31c,81〜83 溝
84 開口
86 支持部
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体組織内に穿刺されて薬剤の投与に用いられる薬剤投与針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人間を含む哺乳動物の生体組織内に穿刺されて薬剤の投与に用いられる薬剤投与針が知られている。このような薬剤投与針では、針の先端に薬剤吐出口が設けられ、針の内部のルーメンを通って送られてきた薬剤が先端の開口から吐出される。
【0003】
また、薬剤投与針を内針と外針とのいわゆる2重針で構成する技術も知られている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。このような2重針構成の薬剤投与針では、内針を外針内部のルーメンの挿入した状態で生体組織に針を穿刺し、所望の位置に針先端が到達した後に内針を外針から抜き出してから、薬剤を投与する。この場合、生体組織内には外針のみが留置され、この外針の先端から薬剤が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−202030号公報
【特許文献2】特開平10−94601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薬剤投与針の先端から薬剤を吐出する方法では、生体組織の狭い領域にしか薬剤を浸潤させることができなかった。また、生体組織の広い領域に薬剤を湿潤させるために薬剤針側面に開口を複数設けることもできるものの、開口を増やすと針自体の強度が弱くなるため、側面開口による薬剤の投与領域の拡大には限界があった。
【0006】
また、薬剤投与針を生体組織内に導入した段階で開口が組織片で塞がれ、薬剤の吐出がスムーズに行われないこともあった。この場合、吐出の圧力を高めて無理に吐出させようとすると、組織を破損する場合や、薬剤投与針の導入で形成された組織内の空間から薬剤が勢いよく飛び出して薬剤投与対象外の他の生体組織にまで薬剤が飛散してしまうことも考えられる。
【0007】
さらに、薬剤投与対象の生体組織によって穿刺の容易さは異なる。たとえば、肝臓がんの治療目的で針を肝臓内の腫瘍まで穿刺するのは比較的容易であるが、膵臓がんの腫瘍は繊維性間質が豊富な固形腫瘍であり、穿刺が困難である。
【0008】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、薬剤投与対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を投与することができる薬剤投与針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる薬剤投与針は、内部にルーメンを有する細長い外筒と、尖った穿刺部が先端に形成された先端部と前記先端部より基端側に位置する細長い軸部とを有し、少なくとも前記軸部が前記外筒のルーメン内部に軸方向に移動可能に挿通され、全長が前記外筒の全長より長い内針と、前記外筒の内側面と前記内針の軸部との間の空間に薬剤を供給する薬剤注入口と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の軸部は、当該軸部が前記外筒のルーメン内部に軸方向に挿通された場合に、前記内針の軸部の側面と前記外筒の内側面との間に、前記薬剤注入口と当該軸部先端とを連通させる空間を形成可能とする形状を有することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記外筒の先端には、尖った穿刺部が形成され、前記内針の先端部は、前記外筒のルーメンに挿通可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の先端部の径は、前記軸部の径よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の先端部は、前記外筒のルーメン内に液密に挿通される寸法および形状であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の軸部が貫通する貫通穴が形成され、前記外筒の内側面と前記内針の軸部との間に液密に挿入される栓をさらに備えたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記軸部は、側面に溝が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記溝は、該溝の縁にテーパー部またはR部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の軸部内部には、ルーメンが形成され、前記軸部の側面には、前記軸部内部のルーメンと前記軸部外部とを連通させる開口が形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の軸部は、断面形状が円弧形の部分を有することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針の軸部側面には、前記外筒の内側面に当接して、当該内針を前記外筒の内側面に対して支持する支持部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記内針は、複数の針を束ねることによって形成されることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記複数の針は、前記外筒から突出した部位が前記外筒の径方向に外側に開くようにくせ付けされていることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる薬剤投与針は、上記の発明において、前記複数の針は、束ねられたときに、内部に軸方向に沿ったルーメンが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
この発明にかかる薬剤投与針は、内部にルーメンを有する細長い外筒と、尖った穿刺部が先端に形成された先端部と前記先端部より基端側に位置する細長い軸部とを有し、少なくとも前記軸部が前記外筒のルーメン内部に軸方向に移動可能に挿通され、全長が前記外筒より長い内針と、前記外筒の内側面と前記内針の軸部との間の空間に薬剤を供給する薬剤注入口と、を備え、内針を外針先端から前進または後退させることにより外針先端方向の生体組織を押し広げて薬剤の導路を確保し、外筒の内側面と前記内針の軸部との間の空間に供給された薬剤を該導路を介して生体組織に投与できるため、生体組織の硬さによらず薬剤投与対象の生体組織に円滑に薬剤を投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、実施の形態にかかる薬剤投与針の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す薬剤投与針を該薬剤投与針の軸に沿って切断した断面図である。
【図3】図3は、図1に示す薬剤投与針を用いた薬剤投与の方法を説明する図である。
【図4】図4は、図1に示す内針先端の他の例を示す斜視図である。
【図5】図5は、図1に示す内針先端の他の例を示す斜視図である。
【図6】図6は、図1に示す内針先端の他の例を示す斜視図である。
【図7】図7は、図6の溝を軸部径方向に沿って切断した図である。
【図8】図8は、実施の形態の変形例1における内針先端の斜視図である。
【図9】図9は、図8のA−A線断面図である。
【図10】図10は、実施の形態の変形例1における内針先端の他の例を示す斜視図である。
【図11】図11は、図10のB−B線断面図である。
【図12】図12は、実施の形態の変形例2における内針先端の斜視図である。
【図13】図13は、図12のC−C線断面図である。
【図14】図14は、図12に示す内針を有する薬剤投与針を、内針の軸部部分で軸方向との鉛直面で切断した断面図である。
【図15】図15は、実施の形態の変形例2における内針先端の他の例の斜視図である。
【図16】図16は、図15のD−D線断面図である。
【図17】図17は、図15に示す内針を有する薬剤投与針を、内針の軸部部分で軸方向との鉛直面で切断した断面図である。
【図18】図18は、実施の形態の変形例3における内針先端の斜視図である。
【図19】図19は、図18に示す内針を先端から見た場合を示す図である。
【図20】図20は、図18に示す内針を有する薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【図21】図21は、実施の形態の変形例4における内針先端の斜視図である。
【図22】図22は、図21に示す内針を先端から見た場合を示す図である。
【図23】図23は、図21のE−E線断面図である。
【図24】図24は、図21に示す内針を有する薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【図25】図25は、実施の形態の変形例5にかかる薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【図26】図26は、実施の形態にかかる他の薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【図27】図27は、実施の形態にかかる他の薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【図28】図28は、実施の形態にかかる他の薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態として、人間を含む哺乳動物の生体組織内に導入される薬剤投与針について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0026】
(実施の形態)
まず、実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる薬剤投与針の斜視図である。図2(1)〜(4)は、図1に示す薬剤投与針を該薬剤投与針の軸に沿って切断した断面図であり、実施の形態にかかる薬剤投与針を用いた薬剤投与の方法を説明する図である。
【0027】
図1に示すように、実施の形態にかかる薬剤投与針1は、内部にルーメン4を有し両端が開口した外筒2、矢印Y1のように外筒2のルーメン4内に挿通可能である内針3、および矢印Y2のように外筒2の基端に嵌め込まれる栓5を備える。
【0028】
外筒2は、細長い形状をしている。外筒2の先端にも尖った穿刺部11が形成されている。この外筒2の側面には、薬剤注入導管9が立設しており、その基端には薬剤注入口10が設けられている。薬剤注入口10から注入された薬剤は、薬剤注入導管9の内部を通って、外筒2の内部に導かれる。
【0029】
内針3は、尖った穿刺部6が形成された先端部7と、先端部7より基端側に位置する細長い軸部8とを有する。内針3は、少なくとも軸部8が外筒2のルーメン4内部に軸方向に移動可能に挿通されており、内針3の全長は、外筒2の全長より長い。
【0030】
内針3の先端部7は、外筒2のルーメン4に挿通可能な形状および寸法になっている。内針3の先端部7の基端部7aの径は、外筒2のルーメン4の内径とほぼ同径である。先端部7は、基端部7aから先端にかけて尖った形状を有する。
【0031】
そして、先端部7の基端部7aの径は、軸部8の径よりも大きい。言い換えると、軸部8の径は、先端部7の基端部7aの径よりも小さい。このため、外筒2のルーメン4には、内針3の先端部7と軸部8とのいずれの部分も挿通可能であるとともに、内針3の先端部7と軸部8とを一体として軸方向に移動させることができる。
【0032】
また、軸部8の径は先端部7の基端部7aの径よりも小さいため、ルーメン4の内径よりも小さい。したがって、内針3の軸部8が外筒2のルーメン4内部に軸方向に挿通された場合、軸部8は、内針3の軸部8の側面と外筒2の内側面との間に、薬剤注入口10と当該軸部先端とを連通させる空間41(図2(1)参照)を形成する。薬剤注入口10から注入された薬剤は、薬剤注入導管9の内部を通って、外筒2の内側面と、外筒2のルーメン4内に挿通された内針3の軸部8側面との間の空間41に導かれる。
【0033】
外筒2および内針3の軸部8は、内視鏡のチャネル経由の手技が可能になるため、非金属の屈曲容易な材料で形成することが望ましい。外筒2および内針3の軸部8は、ポリエーテルサルホン、フッ素樹脂などを材料に用いて形成される。一方、外筒2および内針3の軸部8をたとえば耐食鋼などの金属材料で形成することで、外筒2および内針3の剛性を高めて、生体組織内への薬剤投与針1の挿入を容易にすることもできる。
【0034】
栓5には、内針3の軸部8が貫通する貫通穴12が形成されている。栓5は、挿入部13と把持部14とを備える。挿入部13は、外筒2のルーメン4の内側面と、内針3の軸部8との間に液密に挿入される。矢印Y1のように外筒2先端からルーメン4内に内針3を差し込みし、内針3の軸部8の基端が外筒2の基端から突出するまで内針3を挿通する。その後、外筒2基端から突出する内針3の軸部8を貫通穴12に通しながら、栓5を外筒2の基端に嵌め込むことで、薬剤注入口10から注入され、外筒2のルーメン4の内側面と内針3の軸部8との間の空間41にある薬剤が、外筒2の基端側開口から漏出するのを防止する。
【0035】
次に、図2および図3を参照して、図1に示す薬剤投与針1を用いた薬剤投与の方法を説明する。まず、図2(1)に示すように、薬剤投与対象の腫瘍24に到達するまで、薬剤投与針1を生体組織内に穿刺する。薬剤投与針1は、たとえば図3に示すように、内視鏡20のチャネル21を経由して経口的に胃の中に導入される。そして、薬剤投与針1は、胃壁22に穿刺され貫通した後、体内臓器(例えば、膵臓)23内の腫瘍24に先端が到達するまで穿刺される。この薬剤投与針1からは、たとえば抗がん剤が腫瘍24に対して投与される。
【0036】
ここで、図2(1)に示すように、薬剤投与針1は、外筒2のルーメン4に先端6まで内針3が収容された状態で、操作者により内視鏡20のチャネル21を経由して胃の中に導入される。そして、操作者は外筒2の先端に形成された穿刺部11で、胃壁22を穿刺して貫通させる。次いで、操作者は、矢印Y11のように薬剤投与針1をさらに前進させて体内臓器23内に穿刺し、穿刺部11を腫瘍24の近傍に達する位置に位置付ける。
【0037】
次に、図2(2)に示すように、操作者は、内針3の軸部8基端を矢印Y12のように押すことで、内針3の先端部7を外筒2の先端から突出させ、矢印Y13のように内針3の先端部7を腫瘍24内部まで穿刺する。この場合、軸部8よりも大きな径の先端部7の基端部によって腫瘍24の生体組織が押し広げられるため、軸部8の突出部分の周囲には空間25が形成される。この空間25は、後述するように薬剤の導路を構成する。
【0038】
このとき、腫瘍24が、繊維性間質が豊富な固形腫瘍であるなど穿刺が困難であっても、操作者は、軸部8を押し引きすることで内針3の前進、後退を繰り返して、穿刺動作を複数回行うことができる。このような内針3の押し引き動作を繰り返しても、外筒2は、生体組織に対して静止しているので、薬剤投与対象外の生体組織を損傷する可能性は低い。また、このような外筒2からの内針3の前進、後退動作によって、軸部8よりも大きな径の先端部7によって腫瘍24の生体組織が押し広げられるため、生体組織の組織片によって、外筒2先端の開口部が閉塞される可能性も低い。この薬剤投与針1は、外筒2のルーメン4に先端6まで内針3を収容可能なので、上記の繰り返し動作で長いストロークが確保できる。
【0039】
そして、図2(3)に示すように、操作者は、薬剤投与針1の内針3の先端6が腫瘍24内部に十分侵入したら、外筒2の基端側から薬剤が漏出するのを防止するため、外筒2の基端に栓5を取り付ける。
【0040】
その後、図2(4)に示すように、操作者は、内針3を外筒2先端から突出させた状態のままで、矢印Y14のように薬剤注入口10から薬剤30を注入する。この結果、薬剤30は、外筒2のルーメン4の内側面と、腫瘍24に穿刺されたままの内針3の軸部8との間の空間41に導かれ、薬剤注入口10からの注入圧によって、空間41を通って外筒2先端まで導入される。そして、空間41内に導入された薬剤30は、軸部8表面に沿って外筒2先端から先端方向に流出する。この外筒2先端から流出した薬剤30は、軸部8表面から前述した空間25内に充填され、領域S26内の腫瘍24に浸透する。言い換えると、突出した内針3の軸方向に沿った広い領域S26に薬剤30が投与される。
【0041】
このように、実施の形態にかかる薬剤投与針1は、以上に述べた内針3を外筒2先端11から前進または後退させる操作を行うことによって外筒2先端の生体組織を押し広げて薬剤の導路となる空間25を確保してから、薬剤20を投与することができるため、開口数を増やさなくても生体組織の広く薬剤30を浸潤させることができる。
【0042】
また、薬剤投与針1においては、内針3を外筒2先端11から前進または後退させることによって腫瘍24の生体組織が押し広げられるため、生体組織の組織片によって、外筒2先端の開口部が閉塞される可能性も低いことから、薬剤30の注入圧を必要以上に高めずとも薬剤投与対象の生体組織に円滑に薬剤を投与することができる。
【0043】
また、薬剤投与針1においては、内針3の軸部8を押し引きすることで内針3の外筒2先端11からの前進または後退を繰り返して、内針3による穿刺動作を複数回行えるため、固形腫瘍に対しても十分に穿刺可能である。
【0044】
また、薬剤投与針1においては、薬剤投与のために内針3を外筒2から抜き出す必要がなく、内針3を腫瘍24内に留め置いたままの状態で薬剤30を投与するため、内針の引き抜き動作に起因する外筒2先端の位置ずれを防ぐことができ、所望の領域に円滑に薬剤30を投与できる。
【0045】
なお、図4〜図6の内針3a〜3cに示すように、軸部8a〜8cの側面に、さらに溝81〜83を形成して、薬剤30の送液量を高めてもよい。図4に示すように、軸部8aの軸に沿った方向に複数の長い溝81を形成することによって送液効率を高めることができる。また、軸部8a側面の溝は長い方が好ましいが、必ずしも末端までつながっている必要はない。図5に示すように、溝81よりも短い溝82を軸部8bに形成してもよい。また、たとえば図6の螺旋状の溝83に示すように、軸部8cの軸に沿った方向以外の方向の溝でもよい。さらに、図6の溝83を軸部8の径方向に沿って切断した図7に示すように、溝83の縁に、テーパー部83aまたはR部83bを形成して、溝83の縁に生体組織が引っかかることを低減してもよい。
【0046】
もちろん、たとえば軸部8の軸方向に沿った溝を一本だけ形成するなど、溝を軸に沿って非対称に形成して、溝が形成された方向への薬剤の送液量が多くなるようにしてもよい。このように溝を軸に沿って非対称に形成した場合には、外筒2に対して内針3を回転させることにより、薬剤吐出量のプロフィールを変化させることができる。
【0047】
(実施の形態の変形例1)
次に、実施の形態の変形例1について説明する。図8は、実施の形態の変形例1における内針先端の斜視図である。図9は、図8のA−A線断面図である。図8および図9に示すように、実施の形態の変形例1における内針3dは、軸部8d内部に先端近傍まで延伸するルーメン84bが形成され、軸部8dの側面には、軸部8d内部のルーメン84bと軸部8d外部とを連通させる開口84が形成される。内針の軸部は、軸方向に移動可能に外筒2に挿通されれば足りるため、中実のロッド形状でなくともよく、軸部8dのようにルーメン84bおよび開口84を有していてもよい。
【0048】
この場合、薬剤注入口10から注入された薬剤は、空間41に加え軸部8内部のルーメン84b内にも流入し、そのまま軸部8dの先端近傍まで導かれる。そして、薬剤は、軸部8dの外筒2からの突出部分において、図9の矢印のようにルーメン84bから軸部8dの外側面に回りこむように流れ出す。
【0049】
このように、内針3dの軸部8dにルーメン84bおよび開口84を形成して軸部8dの内部まで薬剤の導路を広げることによって、薬剤の注入圧がルーメン84bを介して軸部8d先端まで十分に伝達されるため、薬剤投与針の先端部までの薬剤の送達が容易になる。
【0050】
なお、図10は、実施の形態の変形例1における内針先端の他の例を示す斜視図であり、図11は、図10のB−B線断面図である。図10および図11に示す内針3eのように、断面形状が、軸方向に沿って円筒の半分を切り取ったような円弧状の部分を有する軸部8eとした場合も、薬剤の導路が広がり、薬剤の注入圧がルーメン85bを介して軸部8e先端まで十分に伝達されるため、内針3dと同様の効果を奏する。
【0051】
(実施の形態の変形例2)
次に、実施の形態の変形例2について説明する。図12は、実施の形態の変形例2における内針先端の斜視図である。図13は、図12のC−C線断面図である。図14は、図12に示す内針を有する薬剤投与針を、内針の軸部部分で軸方向との鉛直面で切断した断面図である。
【0052】
図12〜14に示すように、実施の形態の変形例2における内針3fは、内針3fの軸部8fの側面に、軸部8fの径方向に突出した支持部86を有する。支持部86は、内針3が外筒2に挿通されたときに外筒2のルーメン4内側面に当接して、内針3を外筒2のルーメン4内側面に対して支持する。
【0053】
このように、支持部86が外筒2のルーメン4内側面に当接することによって、薬剤投与針の屈曲等で内針3fの軸部8fの側面と外筒2の内側面との間の空間の断面積が変化するのを低減できるため、薬剤の導路となる空間を確保することができることから、外筒2の先端11までの薬剤送達の安定性を高めることができる。
【0054】
なお、図15は、実施の形態の変形例2における内針先端の他の例の斜視図である。図16は、図15のD−D線断面図である。図17は、図15に示す内針を有する薬剤投与針を、内針の軸部部分で軸方向との鉛直面で切断した断面図である。図15〜17に示す内針3gように、軸部8gの断面形状を外筒2のルーメン4の内径に対応させた大きさの三角形にした場合も、軸部8gの各頂点87が外筒2のルーメン4内側面に当接できるため、内針3fと同様の効果を奏する。
【0055】
(実施の形態の変形例3)
次に、実施の形態の変形例3について説明する。図18は、実施の形態の変形例3における内針先端の斜視図である。図19は、図18に示す内針を先端から見た場合を示す図である。図20は、図18に示す内針を有する薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図であり、この薬剤投与針を用いた薬剤投与の方法を説明する断面図である。
【0056】
図18〜20に示すように、実施の形態の変形例3における内針3hは、たとえば3本の針31を束ねた構造を有する。内針3hは、尖った穿刺部61が形成された先端部7hと、外筒2のルーメン4の内径とほぼ同径である軸部8hとを有する。
【0057】
各針31の側面31bには、軸方向に沿って延伸する溝31cがそれぞれ形成されている。3本の針31が束ねられた内針3hの軸部8hが外筒2のルーメン4内部に軸方向に挿通された場合、この溝31cによって、内針3hの軸部8hの側面と外筒2の内側面との間に、薬剤注入口10と当該軸部8h先端とを連通させる空間44(図20参照)を形成できるため、薬剤投与針1と同様の効果を奏する。
【0058】
さらに、図20に示すように、束ねられた3本の針31は、外筒2から突出する部分である先端部7hおよび先端部7h近傍の軸部8hが、矢印のように径方向の外側に向かって開くように、形状がくせ付けされている。
【0059】
このため、内針3hの外筒2からの突出による各針31の開動作によって腫瘍24が押し広げられて、軸部8hの突出部分の周囲の空間25aとともに内針3h先端側においても各先端部31aの広がりによって空間25bが形成される。これによって、内針3hを用いた薬剤投与針は、薬剤投与針1よりもさらに広い領域を薬剤の導路として確保することができるため、薬剤投与針1よりも広い領域に薬剤を投与できる。また、内針3hを用いた場合、各針31の開動作によって内針3hが生体組織内に係留されることも望めるため、薬剤投与中の位置ずれを防止することができる。
【0060】
(実施の形態の変形例4)
次に、実施の形態の変形例4について説明する。図21は、実施の形態の変形例4における内針先端の斜視図である。図22は、図21に示す内針を先端から見た場合を示す図である。図23は、図21のE−E線断面図である。図24は、図21に示す内針を有する薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図であり、この薬剤投与針を用いた薬剤投与の方法を説明する断面図である。
【0061】
図21〜図24に示すように、実施の形態4における内針3iも、内針3hと同様に、3本の針32を束ねた構造を有する。内針3iは、尖った穿刺部62が形成され基端部32cの径が外筒2のルーメン4の内径とほぼ同径である先端部7iと、先端部7iの径よりも小さい径を有する軸部8iとを有する。このため、3本の針32が束ねられた内針3iの軸部8iが外筒2のルーメン4内部に軸方向に挿通された場合には、内針3iの軸部8iの側面と外筒2の内側面との間に、薬剤注入口10と当該軸部8i先端とを連通させる空間45(図24参照)を形成するため、薬剤投与針1と同様の効果を奏する。
【0062】
そして、図24に示すように、束ねられた3本の針32は、外筒2から突出する部分である先端部7iおよび先端部7i近傍の軸部8iが、矢印のように径方向の外側に向かって開くように、形状がくせ付けされている。このため、内針3iの外筒2からの突出による各針32先端の開動作によって腫瘍24が押し広げられて、軸部8iの突出部分の周囲の空間25aとともに、各先端部32aの広がりによって内針3i先端側においても空間25bも薬剤の導路として確保できるため、実施の形態の変形例3と同様の効果を奏する。
【0063】
さらに、3本の針32は、束ねられたときに、ルーメン32i(図23参照)が形成されるように円筒を3等分した形状を有する。このため、内針3iの外筒2からの突出による各針32の開動作によって、ルーメン32iも空間45,25a,25bに連通し、このルーメン32i内に流入した薬剤が各針32先端の外側面に回りこむように流れ出すため、内針3dと同様に、薬剤投与針の軸部外側面32dおよび先端32aまでの薬剤の送達を容易化することができる。
【0064】
(実施の形態の変形例5)
次に、実施の形態の変形例5について説明する。図25は、実施の形態の変形例5にかかる薬剤投与針を軸に沿って切断した断面図であり、実施の形態の変形例5にかかる薬剤投与針を用いた薬剤投与の方法を説明する図である。
【0065】
図25(1)に示すように、薬剤投与針1jは、内針3jを有し、内針3jは、内針3と比較し、先端部7jが外筒2のルーメン4内側面に液密に挿通される寸法および形状を有する点が異なる。これによって、外筒2と内針3jを相対的に前進後退する場合の抵抗は高まり、内針3jを誤って滑らせてしまうことがないため、内針3jの外筒2先端からの押し出し制御をより正確化できる。
【0066】
また、内針3jの先端部7jは、外筒2のルーメン4内側面と液密に挿通できるため、内針3の軸部8の側面と外筒2の内側面との間の空間41に薬剤30を保持し、さらに、外筒2の基端部に栓5を嵌めた状態で生体組織内に薬剤投与針1jを穿刺することもできる。さらに、この状態で薬剤投与針1jを穿刺した後、内針3jを矢印Y21のように外筒2の先端11から突出させることで矢印Y22のように空間41の薬剤30の投与を開始でき、突出させた内針3jを引き外筒2のルーメン4内に収納することで薬剤30の投与を停止できる。このように、内針3jの外筒2に対する位置調整で、薬液投与の開始および停止を制御できる。
【0067】
なお、実施の形態では、丸針形状の内針を例に説明したが、もちろん、図26の薬剤投与針1kに示すように、円柱を斜めに切り欠いたような先端6kを有する角針形状の内針3kでもよい。
【0068】
また、実施の形態では、内針の先端部の外径が、外筒2のルーメン4の内径とほぼ同径である場合を例に説明したが、これに限らず、図27の薬剤投与針1mに示すように、内針3mの先端部71mの外径が、外筒2mの外径と同径であってもよい。この場合、内針3mの先端6mで生体組織を穿刺すればよいため、外筒2mの先端に尖った穿刺部を形成する必要がない。そして、軸部8と先端部71mとの中間部72mは、外筒2のルーメン4の内径とほぼ同径である。さらに、中間部72mは、外筒2のルーメン4内側面に液密に挿通される寸法および形状とし、薬剤投与針1jと同様に、内針3mの外筒2mに対する位置調整で、薬液投与の開始および停止を制御できるようにしてもよい。もちろんこの場合も、図28の薬剤投与針1nに示すように、円柱を斜めに切り欠いたような先端6nを有する角針形状の内針3nを採用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,1j,1k,1m,1n 薬剤投与針
2,2m 外筒
3,3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g、3h,3i,3j,3k,3m,3n 内針
4,32i ルーメン
5 栓
6,11,61 穿刺部
7,7h,7i,7j 先端部
8,8a,8b,8c,8d,8e,8f,8g,8h,8i 軸部
9 薬剤注入導管
10 薬剤注入口
12 貫通穴
13 挿入部
14 把持部
20 内視鏡
21 チャネル
31,32 針
31c,81〜83 溝
84 開口
86 支持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にルーメンを有する細長い外筒と、
尖った穿刺部が先端に形成された先端部と前記先端部より基端側に位置する細長い軸部とを有し、少なくとも前記軸部が前記外筒のルーメン内部に軸方向に移動可能に挿通され、全長が前記外筒の全長より長い内針と、
前記外筒の内側面と前記内針の軸部との間の空間に薬剤を供給する薬剤注入口と、
を備えたことを特徴とする薬剤投与針。
【請求項2】
前記内針の軸部は、当該軸部が前記外筒のルーメン内部に軸方向に挿通された場合に、前記内針の軸部の側面と前記外筒の内側面との間に、前記薬剤注入口と当該軸部先端とを連通させる空間を形成可能とする形状を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項3】
前記外筒の先端には、尖った穿刺部が形成され、
前記内針の先端部は、前記外筒のルーメンに挿通可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項4】
前記内針の先端部の径は、前記軸部の径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項5】
前記内針の先端部は、前記外筒のルーメン内に液密に挿通される寸法および形状であることを特徴とする請求項4に記載の薬剤投与針。
【請求項6】
前記内針の軸部が貫通する貫通穴が形成され、前記外筒の内側面と前記内針の軸部との間に液密に挿入される栓をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項7】
前記軸部は、側面に溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項8】
前記溝は、該溝の縁にテーパー部またはR部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の薬剤投与針。
【請求項9】
前記内針の軸部内部には、ルーメンが形成され、
前記軸部の側面には、前記軸部内部のルーメンと前記軸部外部とを連通させる開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項10】
前記内針の軸部は、断面形状が円弧形の部分を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項11】
前記内針の軸部側面には、前記外筒の内側面に当接して、当該内針を前記外筒の内側面に対して支持する支持部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針である。
【請求項12】
前記内針は、複数の針を束ねることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項13】
前記複数の針は、前記外筒から突出した部位が前記外筒の径方向に外側に開くようにくせ付けされていることを特徴とする請求項12に記載の薬剤投与針。
【請求項14】
前記複数の針は、束ねられたときに、内部に軸方向に沿ったルーメンが形成されることを特徴とする請求項12に記載の薬剤投与針。
【請求項1】
内部にルーメンを有する細長い外筒と、
尖った穿刺部が先端に形成された先端部と前記先端部より基端側に位置する細長い軸部とを有し、少なくとも前記軸部が前記外筒のルーメン内部に軸方向に移動可能に挿通され、全長が前記外筒の全長より長い内針と、
前記外筒の内側面と前記内針の軸部との間の空間に薬剤を供給する薬剤注入口と、
を備えたことを特徴とする薬剤投与針。
【請求項2】
前記内針の軸部は、当該軸部が前記外筒のルーメン内部に軸方向に挿通された場合に、前記内針の軸部の側面と前記外筒の内側面との間に、前記薬剤注入口と当該軸部先端とを連通させる空間を形成可能とする形状を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項3】
前記外筒の先端には、尖った穿刺部が形成され、
前記内針の先端部は、前記外筒のルーメンに挿通可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項4】
前記内針の先端部の径は、前記軸部の径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項5】
前記内針の先端部は、前記外筒のルーメン内に液密に挿通される寸法および形状であることを特徴とする請求項4に記載の薬剤投与針。
【請求項6】
前記内針の軸部が貫通する貫通穴が形成され、前記外筒の内側面と前記内針の軸部との間に液密に挿入される栓をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項7】
前記軸部は、側面に溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項8】
前記溝は、該溝の縁にテーパー部またはR部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の薬剤投与針。
【請求項9】
前記内針の軸部内部には、ルーメンが形成され、
前記軸部の側面には、前記軸部内部のルーメンと前記軸部外部とを連通させる開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項10】
前記内針の軸部は、断面形状が円弧形の部分を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項11】
前記内針の軸部側面には、前記外筒の内側面に当接して、当該内針を前記外筒の内側面に対して支持する支持部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針である。
【請求項12】
前記内針は、複数の針を束ねることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与針。
【請求項13】
前記複数の針は、前記外筒から突出した部位が前記外筒の径方向に外側に開くようにくせ付けされていることを特徴とする請求項12に記載の薬剤投与針。
【請求項14】
前記複数の針は、束ねられたときに、内部に軸方向に沿ったルーメンが形成されることを特徴とする請求項12に記載の薬剤投与針。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
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【図21】
【図22】
【図23】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−143(P2012−143A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135264(P2010−135264)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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