説明

薬剤揮散装置

【課題】 ファンによって発生した気流が薬剤保持装置を通過することによる薬剤揮散装置において、薬剤保持体につき、メッシュ状薬剤保持繊維と、他の薬剤保持繊維との配置に基づき、薬剤保持機能を有するだけではなく、薬剤揮散効果を向上し得るような薬剤揮散装置の構成を提供すること。
【解決手段】 繊維を素材とする薬剤保持体1に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置であって、薬剤保持体1の両側面に、二次元方向に規則的なメッシュ形状の薬剤保持繊維2を配置すると共に、各メッシュの単位を形成している上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維2との間において、曲げ弾性を有することによって、上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維2を所定の間隔を以って支持し、かつ連結している薬剤保持繊維3を複数本配置したことによる薬剤保持体1を採用したことに基づき、前記課題を達成することができる薬剤揮散装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維を素材とする薬剤保持体に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人の出願である特開2001−247406号公報においては、モーターによる遠心力とファンによる風力によって揮散する薬剤を含浸している粒状の含浸体を収納しているカートリッジの構成を開示しているが、当該構成に基づく方法は、揮散性能や害虫防除効果に高い有用性を示すが、薬剤含浸体を収納するカートリッジを必要とし、特に洋服タンスやクローゼットなどの衣料防虫用途として構造がシンプルとは言えないという難点があった。
【0003】
他方、繊維を素材とする薬剤保持体に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置として、例えば、特開2001−200239号公報においては、撚糸からなるネットを複数枚重畳したことによる薬剤保持体の構成が開示されており、一枚のネットによる構成よりも薬剤の保持量、及び揮散量において優れていることが記載されている。
【0004】
しかしながら、前記構成においては、精々薬剤の保持量、及び揮散量によってネットの枚数に比例した効果が得られているだけであって、ネットによる薬剤保持繊維と、他の薬剤保持繊維との間によって形成される積層構成に基づき、特に薬剤揮散機能を向上させるような基本的技術思想が開示されている訳ではない。
【特許文献1】特開2001−200239号公報
【特許文献2】特開2001−247406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、繊維を素材とする薬剤保持体に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置であって、薬剤を保持している各繊維の協働によって、薬剤保持機能だけでなく、薬剤揮散効果を向上し得るような薬剤保持体の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)繊維を素材とする薬剤保持体に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置であって、薬剤保持体の両側面に、二次元方向に規則的なメッシュ形状の薬剤保持繊維(以下「メッシュ状薬剤保持繊維」と略称する。)を配置すると共に、各メッシュの単位を形成している上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維との間において、曲げ弾性を有することによって、上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維を所定の間隔を以って支持し、かつ連結している薬剤保持繊維(以下「支持連結用薬剤保持繊維」と略称する。)を複数本配置したことによる薬剤保持体を採用したことに基づく薬剤揮散装置、
(2)メッシュ状薬剤保持繊維が撚糸状態であることを特徴とする前記(1)記載の薬剤揮散装置、
(3)支持連結用薬剤保持繊維が、上下方向に略並行に配列されることによって柱構造を形成していることを特徴とする前記(1)、(2)記載の薬剤揮散装置、
(4)支持連結用薬剤保持繊維が、上下両側において対応しているメッシュの単位の反対側の辺を連結するように配列されることによって筋違構造を形成していることを特徴とする前記(1)、(2)記載の薬剤揮散装置、
(5)上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維間に、当該メッシュよりも小さな隙間を有し、かつ両側のメッシュ状薬剤保持繊維と接続している小隙間薬剤保持繊維を配置していることを特徴とする前記(1)記載の薬剤揮散装置、
(6)上下両側面に配置されたメッシュ状薬剤保持繊維とその間に配置された支持連結用薬剤保持繊維による薬剤保持体を複数枚重畳したことを特徴とする前記(1)記載の薬剤揮散装置、
(7)両側のメッシュ状薬剤保持繊維間の距離が1.0mm〜10.0mmであることを特徴とする前記(3)記載の薬剤揮散装置、
(8)薬剤保持体の上下両側面をそれぞれ上側部分及び下側部分によって囲み、かつ外側周囲を複数個の保持枠によって囲んでいる保護ケースによって収納された状態にある前記(1)記載の薬剤揮散装置、
からなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明による薬剤揮散装置においては、ファンによって発生する気流が通過する薬剤保持体におけるメッシュ状薬剤保持繊維と、他の薬剤保持繊維との配置に基づき、単に薬剤保持機能を有するだけでなく、薬剤揮散効果を向上し得ることによって、極めて有用であり、しかも、構造がシンプルであるため、製造コストにおいても、極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においては、図1(a)、(b)、(c)に示すように、ファンによって生じた気流が通過する薬剤保持体1として、
上下両側に配置されているメッシュ状薬剤保持繊維2+上下両側の間に配置されている支持連結用薬剤保持繊維3
を基本的な特徴点としている。
【0009】
図1(a)、(c)においては、メッシュ状薬剤保持繊維2のメッシュ形状として、六角形の場合を示しているが、当該メッシュ形状は、矩形、三角形など他の形状をも採用し得るのは、当然である。
図1(a)、(b)、(c)では、上下両側のメッシュの単位が水平方向において略同一位置を形成し、かつ上下両側のメッシュの単位が同一形状である場合を示しているが、本発明の実施形態においては、そのような場合だけでなく、上下両側のメッシュの単位が水平方向に所定幅を以って偏差した状態にて(ずれた状態にて)配列される場合、及び上下両側のメッシュの単位形状が相互に相違している場合(例えば、一方のメッシュの単位形状が六角形状であるのに対し、他方のメッシュの形状が矩形である場合、及び同一形状であっても、例えば、上側のメッシュの単位形状よりも、下側のメッシュの単位形状の方が小さな場合)をも包摂している。
尚、前記のように、上下両側のメッシュの単位形状が相違している場合の実施形態は、図2(a)、(b)、(c)に示すとおりである。
【0010】
図1(b)においては、支持連結用薬剤保持繊維3として、上下方向の繊維、及び当該上下方向と斜交する繊維をそれぞれ採用しているが、支持連結用薬剤保持繊維3の支持連結形状は、このような形態に限定される訳ではなく、要するに、各メッシュの単位を形成している上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維2を、複数本の状態にて、曲げ弾性を以って支持し、かつ連結するのであれば、如何なる方向による形態であっても良い(尚、典型的な実施形態は、図3、図4に即して後述するとおりである。)。
【0011】
本発明の薬剤揮散装置における薬剤保持体1は、メッシュ状薬剤保持繊維2と、他の薬剤保持繊維との配置に基づき、薬剤保持機能を有するだけではなく、薬剤揮散効果を向上し得る。
【0012】
前記の薬剤揮散効果が向上し得る基本的根拠としては、支持連結用薬剤保持繊維3の介在によって、単にメッシュ状薬剤保持繊維2のみを採用した場合に比し、薬剤を保持する量が多くなっていること、及びメッシュ状薬剤保持繊維2+支持連結用薬剤保持繊維3の構成の場合には、所謂不織布のように、略均一な状態にて繊維が充満している構成に比し隙間が多く、気流が通過し易いことから、保持されている薬剤を、強力に揮散することを想定することができる。
【0013】
但し、前記の薬剤揮散効果の根拠に関する詳細なメカニズムについては、完全に解明されている訳ではない。
【0014】
二次元方向のメッシュ状薬剤保持繊維2において、良好な保持機能を有するためには、当該繊維を前記(2)記載のように撚糸状態とし、しかも撚糸を構成する糸の数を大きくすることによって、毛細管現象に基づき、薬剤の保持を可能とするような隙間を形成するとよい。
【0015】
前記メッシュ状薬剤保持繊維2、及び支持連結用薬剤保持繊維3を構成する素材としては、薬剤の安定性に影響のないもので、揮散が一定で持続性が良好なものが好ましく、例えば、天然繊維の木綿、麻、羊毛、絹等、またレーヨン等の半合成繊維、合成繊維のポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド等、無機繊維のガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維等が使用可能である。
【0016】
支持連結用薬剤保持繊維3は、各メッシュ形状の構成単位にてメッシュ状薬剤保持繊維2と結合していることから、水平方向において、微細な隙間を構成しており、当該隙間において毛細管現象に基づいて薬剤を保持する機能を有している。
したがって、支持連結用薬剤保持繊維3間の隙間は、前記毛細管現象による保持機能が生ずる程度であることを必要としている。
【0017】
支持連結用薬剤保持繊維3の典型例としては、前記(3)に記載し、かつ図3に示すように、支持連結用薬剤保持繊維3が、上下方向に略並行に配列され、柱構造を形成していることによる実施形態、
更には、前記(4)に記載し、かつ図4に示すように、支持連結用薬剤保持繊維3が、上下両側において対応しているメッシュの単位の反対側の辺を連結するように配列されることによって筋違構造を形成している実施形態を挙げることができる(尚、図3、図4においては、上下両側の各メッシュ形状が同一であり、かつ同一位置に配置されていることから、図1、図2の各(c)のような下側の平面図を省略した。)。
【0018】
前記(3)の実施形態は、製造工程が簡便であるという長所を有しており、前記(4)の実施形態は、筋違構造に基づいて、上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維2と、その間の支持連結用薬剤保持繊維3とが、強固に結合することができるという長所を有している。
【0019】
支持連結用薬剤保持繊維3の実施形態は、前記(3)、(4)の場合だけでなく、例えば、上下方向ランダムな配列による実施形態もまた、採用可能である。
【0020】
図3及び図4に示すように、本発明の薬剤保持体1においては、メッシュ状薬剤保持繊維2+支持連結用薬剤保持繊維3のみにて形成することが可能であるが、このような実施形態以外に、前記(5)に記載し、かつ図5に示すように、上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維2間に、当該メッシュよりも小さな隙間を有し、かつ両側のメッシュ状薬剤保持繊維2と接続している小隙間薬剤保持繊維5を配置していることによる実施形態も採用することができる。
【0021】
前記(5)の実施形態においては、薬剤保持機能を増大させることが可能となるが、当該小隙間薬剤保持繊維5として、不織布のように、略均一な状態にて繊維が充満している構成を採用することは、揮散効率維持のうえで好ましくないことから、避けることが好ましい。
【0022】
本発明においては、上下両側に配置されているメッシュ状薬剤保持繊維2+上下両側の間に配置されている支持連結用薬剤保持繊維3による構成単位をベースとして、薬剤保持体1が形成されているが、図1に示すように、前記の構成単位を単位数の状態にて採用する実施形態だけでなく、前記(6)に記載するように、上下両側面に配置されたメッシュ状薬剤保持繊維2とその間に配置された支持連結用薬剤保持繊維3による薬剤保持体1を複数枚重畳したことによる実施形態も採用することができる。
【0023】
前記(6)記載の実施形態においては、積層構成に基づいて、十分な薬剤保持機能を発揮することが可能となる。
【0024】
上下両側に配置されているメッシュ状薬剤保持繊維2+上下両側の間に配置されている支持連結用薬剤保持繊維3による構成単位の上下幅は、メッシュ状薬剤保持繊維2の各単位の面積、及び支持連結用薬剤保持繊維3の水平方向における密度によって左右され、各単位のメッシュ形状の面積が大きく、かつ支持連結用薬剤保持繊維3の密度が小さい程、距離を大きく設定することになるが、通常1.0〜10.0mmの範囲内に設定することが多い。
【0025】
薬剤保持体1の形状は特に限定されず、円盤状、ドーナツ状、歯車状、扇風機状など、目的に応じて適宜決定すればよい。本発明は小型の薬剤揮散装置に適用される薬剤保持体1を意図しているため、例えば、円盤状であれば、外径3〜5cm程度による規格が使用上便宜である。
【0026】
本発明で用いる薬剤としては、揮散性を有する殺虫剤、殺ダニ剤、忌避剤、芳香剤、消臭剤などがあげられる。
【0027】
殺虫剤のなかでは、常温揮散性ピレスロイド系薬剤が好適で、このような薬剤としては、一般式(I)
【化1】

(式中、Xは水素原子又はメチル基を表す。Xが水素原子の時、Yはビニル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2,2−ジクロロビニル基、2,2−ジフルオロビニル基又は2−クロロ−2−トリフルオロメチルビニル基を表し、Xがメチル基の時、Yはメチル基を表す。また、Zは水素原子、フッ素原子、メチル基、メトキシメチル基又はプロパルギル基を表す)で表されるフッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物を例示することができる。
【0028】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Aと称す)、4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Bと称す)、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Cと称す)、4−プロパルギル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Dと称す)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。一般式(I)で表される化合物は一種類を使用してもよいし、又は二種類以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。尚、一般式(I)で表される化合物には、その不斉炭素や二重結合に基づく光学異性体や幾何異性体が存在するが、これらの各々やそれらの任意の混合物の使用も本発明に含まれるのは勿論である。
【0029】
薬剤保持体1において保持する薬剤量は、薬剤の種類、有効期間、及び薬剤保持体1の大きさ等にもよるが、例えば前記段落〔0028〕に記載されている常温揮散性ピレスロイド系薬剤の場合には、20〜400mg程度に設定するのが適当である。
【0030】
薬剤を保持させるに際しては、必要に応じ溶剤、希釈剤、界面活性剤、分散剤、徐放化剤などを用い、また従来から知られている各種手段を採用することができる。更に薬剤に安定剤、香料、着色剤、帯電防止剤などを適宜配合することも可能である。
【0031】
薬剤揮散効率を向上させるためには,薬剤保持体1の一方側の面をファンの回転面と近接させることが好ましい。
【0032】
薬剤保持体1が変形し易い形状の場合や、薬剤保持体1を薬剤揮散装置に取り付ける際に手指が薬剤に触れるのを防止するために、薬剤保持体1の上下両側面をそれぞれ上側部分及び下側部分によって囲み、かつ外側周囲を複数個の保持枠41によって囲むことによって、上下及び周囲から支持している保護ケースによって収納してもよい。保護枠41の形状や数は特に限定されている訳ではないが、設計上の便宜をも考慮し、例えば上下両側には板状、また周囲には断面が丸形、三角形又は四角形状のものを複数個設けるのが適当である。
【0033】
図7及び図8は、それぞれファンとして、シロッコファン6、軸流ファン7を採用した場合を示すが、ファンの形状は、これらに限定される訳ではなく、薬剤保持体1の片側面に気流を発生し得る構成であるならば、如何なる構成をも採用することが可能である。
【0034】
以下、実施例に従って説明する。
【実施例1】
【0035】
上下両側に、撚糸状態のポリエステル繊維を用いて二次元のメッシュ状薬剤保持繊維2を編成し、当該両側間にナイロン繊維からなる支持連結用薬剤保持繊維3(上下幅:2.5mm)を配置し、全体として、上下方向の厚みが3.5mmで、外径が4.5cmの円盤状の薬剤保持体1を作製した。
【0036】
化合物A[2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート]70mgを保持させ、240時間用とした。
【0037】
この薬剤保持体1を図7又は図8の薬剤揮散装置に設置し、1400rpmの回転速度にて犬小屋内にて吊り下げ、1日あたり8時間作動させ、当該作動を約30日間継続した。
【0038】
このような作動の継続において、いずれの薬剤揮散装置も、蚊、ユスリカなどの害虫に対して安定した殺虫効力を発揮し、犬は害虫に悩まされることはなかった。
【実施例2】
【0039】
実施例1に準じ、各種薬剤保持体1を図7及び図8の薬剤揮散装置に設置したうえで、1600回転速度にて6畳の部屋で作動させ、開始直後、及び120時間後に、蚊成虫に対する殺虫効力を調べた。対照例として、支持連結用薬剤保持繊維3(表中、Mと略称)を編成せずメッシュ状薬剤保持繊維2(表中、上側をF、下側をBと略称)のみで構成した薬剤保持体1(対照例1)、メッシュ状薬剤保持繊維2を別体で2枚併置した場合(対照例2;特開2001−200239号公報に準じた薬剤保持体)、及び板状体の不織布を用いた場合(対照例3)を採用した。
【0040】
【表1】

【0041】
試験の結果からも明らかなように、メッシュ状薬剤保持繊維2のみで構成した薬剤保持体1(対照例1)、及びメッシュ状薬剤保持繊維2を別体で3枚併置した場合(対照例2)は、本発明品に比し、薬剤保持性能並びに薬剤揮散機能ともに悪く、殺虫効力が明白に劣っていることが判明し、これによって、上下両側に配置されているメッシュ状薬剤保持繊維2+上下両側の間に配置されている支持連結用薬剤保持繊維3の結合による薬剤揮散機能上の効果が存在することを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の薬剤保持体は、薬剤を効率的に揮散、放出させるので、有効成分を適宜選択したうえで、例えば芳香、消臭、抗菌用途など、害虫防除以外の分野でも実用化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の薬剤保持体の基本構成を示しており、(a)は上側からの平面図であり、(b)は当該平面図の特定位置における上下方向の断面図であり、(c)は下側からの平面図である。
【図2】本発明において、上下両側の各メッシュの単位形状が相違している実施形態の構成を示しており、(a)は上側からの平面図であり、(b)は当該平面図の特定位置における上下方向の断面図であり、(c)は下側からの平面図である。
【図3】前記(3)の構成を示しており、(a)は平面図であり、(b)は当該平面図の特定位置における上下方向の断面図である。
【図4】前記(4)の構成を示しており、(a)は平面図であり、(b)は当該平面図の特定位置における上下方向の断面図である。
【図5】前記(5)の構成を示す断面図である(尚、支持連結用薬剤保持繊維としては、図3に示すような柱構造による支持連結用薬剤保持繊維の場合を示している。)。
【図6】薬剤保持体が収納される保護ケースにつき、薬剤保持体の上側に位置している蓋部分と薬剤保持体の下側に位置している薬剤保持体保持部分とに分解した斜視図である。
【図7】薬剤保持体がシロッコファンに近接して設置された場合の実施例における薬剤揮散装置の概略の分解斜視図である。
【図8】薬剤保持体が軸流ファンに近接して設置された場合の実施例における薬剤揮散装置の概略の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 薬剤保持体
2 メッシュ状薬剤保持繊維
3 支持連結用薬剤保持繊維
4 保護ケース
41 保持枠
5 小隙間薬剤保持繊維
6 シロッコファン
7 軸流ファン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維を素材とする薬剤保持体に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人の出願である特開2001−247406号公報においては、モーターによる遠心力とファンによる風力によって揮散する薬剤を含浸している粒状の含浸体を収納しているカートリッジの構成を開示しているが、当該構成に基づく方法は、揮散性能や害虫防除効果に高い有用性を示すが、薬剤含浸体を収納するカートリッジを必要とし、特に洋服タンスやクローゼットなどの衣料防虫用途として構造がシンプルとは言えないという難点があった。
【0003】
他方、繊維を素材とする薬剤保持体に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置として、例えば、特開2001−200239号公報においては、撚糸からなるネットを複数枚重畳したことによる薬剤保持体の構成が開示されており、一枚のネットによる構成よりも薬剤の保持量、及び揮散量において優れていることが記載されている。
【0004】
しかしながら、前記構成においては、精々薬剤の保持量、及び揮散量によってネットの枚数に比例した効果が得られているだけであって、ネットによる薬剤保持繊維と、他の薬剤保持繊維との間によって形成される積層構成に基づき、特に薬剤揮散機能を向上させるような基本的技術思想が開示されている訳ではない。
【特許文献1】特開2001−200239号公報
【特許文献2】特開2001−247406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、繊維を素材とする薬剤保持体に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置であって、薬剤を保持している各繊維の協働によって、薬剤保持機能だけでなく、薬剤揮散効果を向上し得るような薬剤保持体の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)繊維を素材とする薬剤保持体に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置であって、薬剤保持体の両側面に、二次元方向に規則的なメッシュ形状の薬剤保持繊維(以下「メッシュ状薬剤保持繊維」と略称する。)を配置すると共に、各メッシュの単位を形成している上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維との間において、曲げ弾性を有することによって、上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維を所定の間隔を以って支持し、かつ連結している薬剤保持繊維(以下「支持連結用薬剤保持繊維」と略称する。)を当該メッシュ形状の辺の中途部位において上下両側において対応しているメッシュの単位の反対側の辺を連結するように配列されることによって筋違構造を形成していることによる薬剤保持体を採用したことに基づく薬剤揮散装置、
(2)メッシュ状薬剤保持繊維が撚糸状態であることを特徴とする前記(1)記載の薬剤揮散装置、
(3)支持連結用薬剤保持繊維が、当該メッシュ形状の辺の端部において上下方向に略並行に配列されることによって柱構造をも形成していることを特徴とする前記(1)、(2)記載の薬剤揮散装置、
(4)上下両側面に配置されたメッシュ状薬剤保持繊維とその間に配置された支持連結用薬剤保持繊維による薬剤保持体を複数枚重畳したことを特徴とする前記(1)記載の薬剤揮散装置、
(5)両側のメッシュ状薬剤保持繊維間の距離が1.0mm〜10.0mmであることを特徴とする前記(3)記載の薬剤揮散装置、
(6)薬剤保持体の上下両側面をそれぞれ上側部分及び下側部分によって囲み、かつ外側周囲を複数個の保持枠によって囲んでいる保護ケースによって収納された状態にある前記(1)記載の薬剤揮散装置、
からなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明による薬剤揮散装置においては、ファンによって発生する気流が通過する薬剤保持体におけるメッシュ状薬剤保持繊維と、他の薬剤保持繊維との配置に基づき、単に薬剤保持機能を有するだけでなく、薬剤揮散効果を向上し得ることによって、極めて有用であり、しかも、構造がシンプルであるため、製造コストにおいても、極めて有利であると共に、筋違構造に基づいて、上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維2と、その間の支持連結用薬剤保持繊維3とが、強固に結合することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においては、図1(a)、(b)、(c)に示すように、ファンによって生じた気流が通過する薬剤保持体1として、
上下両側に配置されているメッシュ状薬剤保持繊維2+上下両側の間にて、当該メッシュ形状の辺の中途部位において、上下両側に対応しているメッシュの単位の反対側の辺を連結するように配列されることによって、筋違構造を形成している支持連結用薬剤保持繊維3
を基本的な特徴点としている。
【0009】
図1(a)、(c)においては、メッシュ状薬剤保持繊維2のメッシュ形状として、六角形の場合を示しているが、当該メッシュ形状は、矩形、三角形など他の形状をも採用し得るのは、当然である。
図1(a)、(b)、(c)では、上下両側のメッシュの単位が水平方向において略同一位置を形成し、かつ上下両側のメッシュの単位が同一形状である場合を示しているが、本発明の実施形態においては、そのような場合だけでなく、上下両側のメッシュの単位が水平方向に所定幅を以って偏差した状態にて(ずれた状態にて)配列される場合、及び上下両側のメッシュの単位形状が相互に相違している場合(例えば、一方のメッシュの単位形状が六角形状であるのに対し、他方のメッシュの形状が矩形である場合、及び同一形状であっても、例えば、上側のメッシュの単位形状よりも、下側のメッシュの単位形状の方が小さな場合)をも包摂している。
【0010】
本発明の薬剤揮散装置における薬剤保持体1は、メッシュ状薬剤保持繊維2と、他の薬剤保持繊維との配置に基づき、薬剤保持機能を有するだけではなく、薬剤揮散効果を向上し得る。
【0011】
前記の薬剤揮散効果が向上し得る基本的根拠としては、支持連結用薬剤保持繊維3の介在によって、単にメッシュ状薬剤保持繊維2のみを採用した場合に比し、薬剤を保持する量が多くなっていること、及びメッシュ状薬剤保持繊維2+前記のような筋違構造を形成している支持連結用薬剤保持繊維3の構成の場合には、所謂不織布のように、略均一な状態にて繊維が充満している構成に比し隙間が多く、気流が通過し易いことから、保持されている薬剤を、強力に揮散することを想定することができる。
【0012】
但し、前記の薬剤揮散効果の根拠に関する詳細なメカニズムについては、完全に解明されている訳ではない。
【0013】
二次元方向のメッシュ状薬剤保持繊維2において、良好な保持機能を有するためには、当該繊維を前記(2)記載のように撚糸状態とし、しかも撚糸を構成する糸の数を大きくすることによって、毛細管現象に基づき、薬剤の保持を可能とするような隙間を形成するとよい。
【0014】
前記メッシュ状薬剤保持繊維2、及び支持連結用薬剤保持繊維3を構成する素材としては、薬剤の安定性に影響のないもので、揮散が一定で持続性が良好なものが好ましく、例えば、天然繊維の木綿、麻、羊毛、絹等、またレーヨン等の半合成繊維、合成繊維のポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド等、無機繊維のガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維等が使用可能である。
【0015】
支持連結用薬剤保持繊維3は、各メッシュ形状の構成単位にてメッシュ状薬剤保持繊維2と結合していることから、水平方向において、微細な隙間を構成しており、当該隙間において毛細管現象に基づいて薬剤を保持する機能を有している。
したがって、支持連結用薬剤保持繊維3間の隙間は、前記毛細管現象による保持機能が生ずる程度であることを必要としている。
【0016】
支持連結用薬剤保持繊維3の典型例としては、前記(3)に記載し、かつ図2に示すように、支持連結用薬剤保持繊維3が、上下方向に略並行に配列され、柱構造をも形成していることによる実施形態を挙げることができる(尚、図2においては、上下両側の各メッシュ形状が同一であり、かつ同一位置に配置されていることから、図1(c)のような下側の平面図を省略した。)。
【0017】
前記(3)の実施形態の特徴点による構成は、製造工程が簡便である。
【0018】
本発明においては、上下両側に配置されているメッシュ状薬剤保持繊維2+上下両側の間に、前記のような筋違構造を形成して、配置されている支持連結用薬剤保持繊維3による構成単位をベースとして、薬剤保持体1が形成されているが、図1に示すように、前記の構成単位を単位数の状態にて採用する実施形態だけでなく、前記(4)のように、上下両側面に配置されたメッシュ状薬剤保持繊維2とその間に配置された支持連結用薬剤保持繊維3による薬剤保持体1を複数枚重畳したことによる実施形態も採用することができる。
【0019】
前記(4)記載の実施形態においては、積層構成に基づいて、十分な薬剤保持機能を発揮することが可能となる。
【0020】
上下両側に配置されているメッシュ状薬剤保持繊維2+上下両側の間に、前記のような筋違構造を形成して、配置されている支持連結用薬剤保持繊維3による構成単位の上下幅は、メッシュ状薬剤保持繊維2の各単位の面積、及び支持連結用薬剤保持繊維3の水平方向における密度によって左右され、各単位のメッシュ形状の面積が大きく、かつ支持連結用薬剤保持繊維3の密度が小さい程、距離を大きく設定することになるが、通常前記(5)のように、1.0〜10.0mmの範囲内に設定することが多い。
【0021】
薬剤保持体1の形状は特に限定されず、円盤状、ドーナツ状、歯車状、扇風機状など、目的に応じて適宜決定すればよい。本発明は小型の薬剤揮散装置に適用される薬剤保持体1を意図しているため、例えば、円盤状であれば、外径3〜5cm程度による規格が使用上便宜である。
【0022】
本発明で用いる薬剤としては、揮散性を有する殺虫剤、殺ダニ剤、忌避剤、芳香剤、消臭剤などがあげられる。
【0023】
殺虫剤のなかでは、常温揮散性ピレスロイド系薬剤が好適で、このような薬剤としては、一般式(I)
【化1】

(式中、Xは水素原子又はメチル基を表す。Xが水素原子の時、Yはビニル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2,2−ジクロロビニル基、2,2−ジフルオロビニル基又は2−クロロ−2−トリフルオロメチルビニル基を表し、Xがメチル基の時、Yはメチル基を表す。また、Zは水素原子、フッ素原子、メチル基、メトキシメチル基又はプロパルギル基を表す)で表されるフッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物を例示することができる。
【0024】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Aと称す)、4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Bと称す)、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Cと称す)、4−プロパルギル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Dと称す)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。一般式(I)で表される化合物は一種類を使用してもよいし、又は二種類以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。尚、一般式(I)で表される化合物には、その不斉炭素や二重結合に基づく光学異性体や幾何異性体が存在するが、これらの各々やそれらの任意の混合物の使用も本発明に含まれるのは勿論である。
【0025】
薬剤保持体1において保持する薬剤量は、薬剤の種類、有効期間、及び薬剤保持体1の大きさ等にもよるが、例えば前記段落〔0023〕に記載されている常温揮散性ピレスロイド系薬剤の場合には、20〜400mg程度に設定するのが適当である。
【0026】
薬剤を保持させるに際しては、必要に応じ溶剤、希釈剤、界面活性剤、分散剤、徐放化剤などを用い、また従来から知られている各種手段を採用することができる。更に薬剤に安定剤、香料、着色剤、帯電防止剤などを適宜配合することも可能である。
【0027】
薬剤揮散効率を向上させるためには、薬剤保持体1の一方側の面をファンの回転面と近接させることが好ましい。
【0028】
薬剤保持体1が変形し易い形状の場合や、薬剤保持体1を薬剤揮散装置に取り付ける際に手指が薬剤に触れるのを防止するために、前記(6)に記載し、かつ図3に示すように、薬剤保持体1の上下両側面をそれぞれ上側部分及び下側部分によって囲み、かつ外側周囲を複数個の保持枠41によって囲むことによって、上下及び周囲から支持している保護ケースによって収納してもよい(尚、図3においては、支持連結用薬剤保持繊維3における筋違構造の図示は省略している。)。保護枠41の形状や数は特に限定されている訳ではないが、設計上の便宜をも考慮し、例えば上下両側には板状、また周囲には断面が丸形、三角形又は四角形状のものを複数個設けるのが適当である。
【0029】
図4及び図5は、それぞれファンとして、シロッコファン6、軸流ファン7を採用した場合を示すが、ファンの形状は、これらに限定される訳ではなく、薬剤保持体1の片側面に気流を発生し得る構成であるならば、如何なる構成をも採用することが可能である(尚、図4及び図5においては、支持連結用薬剤保持繊維3における筋違構造の図示は省略している。)
【0030】
以下、実施例に従って説明する。
【実施例1】
【0031】
上下両側に、撚糸状態のポリエステル繊維を用いて二次元のメッシュ状薬剤保持繊維2を編成し、当該両側間にナイロン繊維からなる前記筋違構造に、前記(3)のような柱構造を付加したことによる支持連結用薬剤保持繊維3(上下幅:2.5mm)を配置し、全体として、上下方向の厚みが3.5mmで、外径が4.5cmの円盤状の薬剤保持体1を作製した。
【0032】
化合物A[2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート]70mgを保持させ、240時間用とした。
【0033】
この薬剤保持体1を図4又は図5の薬剤揮散装置に設置し、1400rpmの回転速度にて犬小屋内にて吊り下げ、1日あたり8時間作動させ、当該作動を約30日間継続した。
【0034】
このような作動の継続において、いずれの薬剤揮散装置も、蚊、ユスリカなどの害虫に対して安定した殺虫効力を発揮し、犬は害虫に悩まされることはなかった。
【実施例2】
【0035】
実施例1と同一構造による各種薬剤保持体1を図4及び図5の薬剤揮散装置に設置したうえで、1600回転速度にて6畳の部屋で作動させ、開始直後、及び120時間後に、蚊成虫に対する殺虫効力を調べた。対照例として、支持連結用薬剤保持繊維3(表中、Mと略称)を編成せずメッシュ状薬剤保持繊維2(表中、上側をF、下側をBと略称)のみで構成した薬剤保持体1(対照例1)、メッシュ状薬剤保持繊維2を別体で3枚併置した場合(対照例3;特開2001−200239号公報に準じた薬剤保持体)、及び板状体の不織布を用いた場合(対照例2)を採用した。
【0036】





【表1】

【0037】
試験の結果からも明らかなように、メッシュ状薬剤保持繊維2のみで構成した薬剤保持体1(対照例1)、及びメッシュ状薬剤保持繊維2を別体で3枚併置した場合(対照例3)は、本発明品に比し、薬剤保持性能並びに薬剤揮散機能ともに悪く、殺虫効力が明白に劣っていることが判明し、これによって、上下両側に配置されているメッシュ状薬剤保持繊維2+上下両側の間に配置されている前記のような筋違構造を形成している支持連結用薬剤保持繊維3の結合による薬剤揮散機能上の効果が存在することを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の薬剤保持体は、薬剤を効率的に揮散、放出させるので、有効成分を適宜選択したうえで、例えば芳香、消臭、抗菌用途など、害虫防除以外の分野でも実用化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の薬剤保持体の基本構成を示しており、(a)は上側からの平面図であり、(b)は当該平面図の特定位置における上下方向の断面図であり、(c)は下側からの平面図である。
【図2】前記(3)の構成を示しており、(a)は平面図であり、(b)は当該平面図の特定位置における上下方向の断面図である。
【図3】薬剤保持体が収納される保護ケースにつき、薬剤保持体の上側に位置している蓋部分と薬剤保持体の下側に位置している薬剤保持体保持部分とに分解した斜視図である。
【図4】薬剤保持体がシロッコファンに近接して設置された場合の実施例における薬剤揮散装置の概略の分解斜視図である。
【図5】薬剤保持体が軸流ファンに近接して設置された場合の実施例における薬剤揮散装置の概略の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 薬剤保持体
2 メッシュ状薬剤保持繊維
3 支持連結用薬剤保持繊維
4 保護ケース
41 保持枠
5 小隙間薬剤保持繊維
6 シロッコファン
7 軸流ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を素材とする薬剤保持体に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置であって、薬剤保持体の両側面に、二次元方向に規則的なメッシュ形状の薬剤保持繊維(以下「メッシュ状薬剤保持繊維」と略称する。)を配置すると共に、各メッシュの単位を形成している上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維との間において、曲げ弾性を有することによって、上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維を所定の間隔を以って支持し、かつ連結している薬剤保持繊維(以下「支持連結用薬剤保持繊維」と略称する。)を複数本配置したことによる薬剤保持体を採用したことに基づく薬剤揮散装置。
【請求項2】
メッシュ状薬剤保持繊維が撚糸状態であることを特徴とする請求項1記載の薬剤揮散装置。
【請求項3】
支持連結用薬剤保持繊維が、上下方向に略並行に配列されることによって柱構造を形成していることを特徴とする請求項1、2記載の薬剤揮散装置。
【請求項4】
支持連結用薬剤保持繊維が、上下両側において対応しているメッシュの単位の反対側の辺を連結するように配列されることによって筋違構造を形成していることを特徴とする請求項1、2記載の薬剤揮散装置。
【請求項5】
上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維間に、当該メッシュよりも小さな隙間を有し、かつ両側のメッシュ状薬剤保持繊維と接続している小隙間薬剤保持繊維を配置していることを特徴とする請求項1記載の薬剤揮散装置。
【請求項6】
上下両側面に配置されたメッシュ状薬剤保持繊維とその間に配置された支持連結用薬剤保持繊維による薬剤保持体を複数枚重畳したことを特徴とする請求項1記載の薬剤揮散装置。
【請求項7】
両側のメッシュ状薬剤保持繊維間の距離が1.0mm〜10.0mmであることを特徴とする請求項3記載の薬剤揮散装置。
【請求項8】
薬剤保持体の上下両側面をそれぞれ上側部分及び下側部分によって囲み、かつ外側周囲を複数個の保持枠によって囲んでいる保護ケースによって収納された状態にある請求項1記載の薬剤揮散装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を素材とする薬剤保持体に対し、ファンによる気流を通過させることによって、当該薬剤を揮散させる薬剤揮散装置であって、薬剤保持体の両側面に、二次元方向に規則的なメッシュ形状の薬剤保持繊維(以下「メッシュ状薬剤保持繊維」と略称する。)を配置すると共に、各メッシュの単位を形成している上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維との間において、曲げ弾性を有することによって、上下両側のメッシュ状薬剤保持繊維を所定の間隔を以って支持し、かつ連結している薬剤保持繊維(以下「支持連結用薬剤保持繊維」と略称する。)を当該メッシュ形状の辺の中途部位において上下両側において対応しているメッシュの単位の反対側の辺を連結するように配列されることによって筋違構造を形成していることによる薬剤保持体を採用したことに基づく薬剤揮散装置。
【請求項2】
メッシュ状薬剤保持繊維が撚糸状態であることを特徴とする請求項1記載の薬剤揮散装置。
【請求項3】
支持連結用薬剤保持繊維が、当該メッシュ形状の辺の端部において上下方向に略並行に配列されることによって柱構造をも形成していることを特徴とする請求項1、2記載の薬剤揮散装置。
【請求項4】
上下両側面に配置されたメッシュ状薬剤保持繊維とその間に配置された支持連結用薬剤保持繊維による薬剤保持体を複数枚重畳したことを特徴とする請求項1記載の薬剤揮散装置。
【請求項5】
両側のメッシュ状薬剤保持繊維間の距離が1.0mm〜10.0mmであることを特徴とする請求項3記載の薬剤揮散装置。
【請求項6】
薬剤保持体の上下両側面をそれぞれ上側部分及び下側部分によって囲み、かつ外側周囲を複数個の保持枠によって囲んでいる保護ケースによって収納された状態にある請求項1記載の薬剤揮散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−101726(P2006−101726A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290048(P2004−290048)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【特許番号】特許第3708949号(P3708949)
【特許公報発行日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】