薬剤散布用管理作業車両
【課題】単位面積当たり所定量の薬液散布による適正な薬剤散布のために、高精度の散布速度を安定して取得することができる薬剤散布用管理作業車両を提供する。
【解決手段】薬剤散布用管理作業車両は、圃場走行可能に機体を支持する前輪3及び後輪4と、散布車速を連動基準として散布量制御する制御部Cにより単位面積当たり所定量の薬液量で薬剤散布を行う車速連動散布装置Dとを備えて構成され、上記前輪3及び後輪4の駆動動作を検出する駆動センサS1とGPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサS2とを設け、このGPSセンサS2によって得られた機体の移動速度を散布車速として車速連動散布装置Dを散布量制御するとともに、駆動センサS1によって得られる機体の駆動速度について上記移動速度との差から算出される前輪3及び後輪4のスリップ率を取出し可能に保持する格納部C1を備えたものである。
【解決手段】薬剤散布用管理作業車両は、圃場走行可能に機体を支持する前輪3及び後輪4と、散布車速を連動基準として散布量制御する制御部Cにより単位面積当たり所定量の薬液量で薬剤散布を行う車速連動散布装置Dとを備えて構成され、上記前輪3及び後輪4の駆動動作を検出する駆動センサS1とGPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサS2とを設け、このGPSセンサS2によって得られた機体の移動速度を散布車速として車速連動散布装置Dを散布量制御するとともに、駆動センサS1によって得られる機体の駆動速度について上記移動速度との差から算出される前輪3及び後輪4のスリップ率を取出し可能に保持する格納部C1を備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場走行可能な4輪駆動式の走行機台に車速連動式散布装置を搭載した薬剤散布用管理作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2に記載のように、圃場走行可能な4輪駆動式の走行機台上に車速連動式散布装置を搭載した薬剤散布用管理作業車両が知られている。この管理作業車両は、4輪駆動の走行機台の走行系駆動動作を検出することによって得られる機体の駆動速度に基づく補正速度を散布車速として走行速度連動制御を行うことにより、単位面積当たり所定量の薬液で薬剤散布走行することができる。また、一般的に知られているスリップ率から求められる補正速度を散布車速とすることによって幅広い散布条件について適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−18334号公報
【特許文献2】特開2003−265089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、薬剤散布作業における圃場走行時のスリップ率は、圃場の状況その他の要因によって変化することから、散布された薬剤濃度の過不足を招く場合があり、また、過小散布を避けるための過剰散布によって薬剤コストの増加や環境負荷の増大を招くという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、単位面積当たり所定量の薬液量による適正な薬剤散布のために、散布走行時の車速を高精度でかつ安定して取得することができる薬剤散布用管理作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場走行可能に機体を支持する前輪及び後輪と、連動基準としての散布車速によって散布量制御する制御部により単位面積当たり所定量の薬液量で薬剤散布を行う車速連動散布装置とを備える薬剤散布用管理作業車両において、上記前輪及び後輪の駆動動作を検出する駆動センサとGPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサとを設け、このGPSセンサによって得られた機体の移動速度を散布車速として車速連動散布装置の散布量を制御するとともに、駆動センサによって得られる機体の駆動速度について上記移動速度との差から算出される前輪及び後輪のスリップ率を取出し可能に保持する格納部を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記GPSセンサによって機体の移動速度が得られ、この移動速度を散布車速として車速連動散布装置が単位面積当たり所定量の薬液量で散布動作するとともに、駆動センサによって得られる駆動速度について算出されるスリップ率が取出し可能に格納部に保持されていることから、このスリップ率を使用することにより、駆動速度に応じて機体の移動速度が推定される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記GPSセンサの異常を検出した場合に、格納部から取出したスリップ率と駆動速度とにより推定される推定移動速度を散布車速とすることを特徴とする。
上記GPSセンサの異常の際は、スリップ率の適用により走行状況の延長として得られる推定移動速度によって連動散布が継続される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明の薬剤散布用管理作業車両は、GPSセンサによって機体の移動速度が得られ、この移動速度を散布車速として車速連動散布装置が単位面積当たり所定量の薬液量で散布動作するとともに、駆動センサによって得られる駆動速度について算出されるスリップ率が取出し可能に格納部に保持されていることから、このスリップ率を使用することにより、駆動速度に応じて移動速度を推定することができるので、GPSセンサの異常に対しても、それまでの走行状況の延長として高精度の散布走行をバックアップすることが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明の薬剤散布用管理作業車両は、請求項1の効果に加え、GPSセンサの異常の際に、スリップ率の適用による推定移動速度によって走行状況の延長として連動散布が継続されることから、GPS異常時にも、それまでの作業状況に準じて高精度の散布作業を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】散布制御のシステム構成図
【図2】散布制御のフローチャート
【図3】散布制御システムのブロック構成図
【図4】車速補正についてのフローチャート
【図5】散布装置交換型散布システムの構成図
【図6】ブームタブラの側面図
【図7】ブームタブラの平面図
【図8】乗用型防除機のブーム収納時の側面図
【図9】乗用型防除機の散布動作時の正面図
【図10】散布装置の配管図
【図11】防除操作盤の平面図
【図12】散布装置の配管図
【図13】散布走行時の平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明を適用した薬剤散布用管理作業車両の一例である乗用型防除機1は、図8及び図9に沿って後に詳述するように、左右の前輪3,3と左右の後輪4,4について4WSを含む前後輪操舵式であり、後輪駆動(2WD)と前後輪駆動(4WD)の切り替え可能な走行装置による圃場走行可能な走行機台を構成し、薬剤散布装置Dの薬液タンク5を機体後部に搭載し、薬液散布用のノズル11を形成して左右に展開散布可能なブーム9a,9b,9cを機体前端位置に配置するとともに、薬液タンク5の底部の電動式流量制御弁36を散布車速に連動して開度調節することにより、運転席6に設けた防除操作盤21で設定した単位面積当たり所定量の薬液量による一様な薬剤散布を可能とする散布制御システムを構成する。
【0013】
散布制御システムは、図1のシステム構成図に示すように、本機コントローラC1に2WDと4WDの切り替え可能な走行装置3,4の駆動動作を検出する駆動センサによる車速センサS1とGPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサS2とを設け、このGPSセンサS2によって得られた機体位置情報によって算出される機体の移動速度を散布車速として防除機コントローラC2により流量制御する車速連動散布装置を構成する。また、駆動センサS1によって得られる機体の駆動速度について移動速度との差から算出される2WDと4WDの切り替え可能な走行装置3,4のスリップ率を取出し可能に保持する格納部を本機コントローラC1に設ける。スリップ率は、必要により可視表示可能に構成してもよい。
【0014】
本機と防除機のそれぞれのコントローラC1,C2は通信部材Tによって接続して全体で薬剤散布システムの制御部Cを構成し、GPSセンサS2の異常を検出した場合は、格納部C1から取出したスリップ率と駆動速度とにより推定される推定移動速度によって車速を補正し、この補正車速を散布車速として散布制御するように、必要により散布制御システムを構成する。
【0015】
制御処理について説明すると、図2のフローチャートに示すように、実車速測定処理のステップ1(以下において、「S1」の如くの略記による。)でGPSセンサS2からの機体位置情報による機体の移動速度を取得してその当否判定を行う(S2)。
【0016】
この移動速度が正常取得された場合は、車速センサS1による駆動速度のスリップ率を算出して移動平均処理結果を不揮発メモリに格納(S3〜S6)するとともに、GPSセンサS2による機体の移動速度を散布車速として車速に応じた散布圧力による車速連動散布(S7)を行い、また、移動速度が正常取得されなかった場合は、格納されているスリップ率を用いて車速センサS1による駆動速度から推定車速を算出して散布車速とすることにより車速連動散布(S7)を行う。
【0017】
上記構成の散布制御システムは、GPSセンサS2によって得られる機体位置情報によって機体の移動速度が得られ、この移動速度を散布車速として車速連動散布装置が単位面積当たり所定量の薬液量で散布動作するとともに、駆動センサS1によって得られる駆動速度について算出されるスリップ率が取出し可能に格納部C1に保持されていることから、このスリップ率を使用することにより、駆動速度に応じて移動速度を推定することができるので、GPSセンサの異常に対しても、走行状況の延長として高精度の散布走行のバックアップが可能となり、これをシステム化してGPSセンサの異常の際にスリップ率の適用に自動切替えすることにより、走行状況の延長として得られる推定移動速度によって連動散布が継続されることから、GPS異常時にも、切替えまでの作業状況に準じて高精度の散布作業を継続することができる。
【0018】
(スリップ率Sによる補正)
上記散布制御システムにおける車速補正については、図3のブロック構成図に示すように、制御部Cによって
流量制御弁の開度調節モータFを制御可能に構成し、GPS受信機によるGPSセンサS2と車速センサS1を設け、GPS受信機から得られる速度情報を車速として設定散布量から設定圧力を計算し、散布量を制御するように防除機を構成し、散布量設定値と車速等により計算した設定圧力となるように、供給するべき薬剤量をモータ駆動の開閉弁にて制御する。
【0019】
車速補正についての具体的な制御処理は、図4のフローチャートに示すように、GPS受信機から得られる速度情報を車速として設定散布量から設定圧力を計算することにより散布量を制御する制御処理について、一定時間毎のGPS速度情報と計算速度からスリップ率Sを計算(S11〜S16)する。車速センサによる制御用車速計算の際は、そのスリップ率Sを使用(S17)して車速計算を行う。
【0020】
このように、散布作業中にGPS速度情報から求めたGPS車速と車速パルスから求めた計算車速からスリップ率Sを算出し、その値で計算車速を補正して制御に使用する車速を計算することにより、安定した実速度を検出することが可能となり、高精度の散布作業を行うことができる。
【0021】
(スリップ率)
この場合において、上記スリップ率は、上限規制値を別途設定した上で、この上限規制値を越える場合にその値とすることにより、大きな速度変化による散布量の急激な変化を抑えることができ、安定した作業を行うことができる。
【0022】
また、算出されたスリップ率を前回の値と比較し、その変化量が一定値以上のときはその一定値に置き換えて制御に使用する補正車速を計算するように制御処理を構成することにより、大きな速度変化による散布量の急な変化を抑えることができ、安定した作業を行うことが可能となる。また、必要により、上記変化量が一定値以上のときは前回のスリップ率に置き換えることが可能であり、この場合も同様に、大きな速度変化による散布量の急な変化を抑えることができ、安定した作業を行うことが可能となる。
【0023】
散布終了は、コントローラの電源オフの判定を待った上でそのスリップ率を不揮発メモリに書込み、これを運転再開時に使用するように制御処理を構成することにより、作業再開後に速度補正を直ちに行うことができ、散布開始時の散布性能を向上することができる。
【0024】
(多用途乗用管理機)
次に、散布装置交換が可能な多用途型乗用管理機について説明すると、図5の散布システム構成図に示すように、例えば、薬液噴霧用のブームスプレーヤD1と粉粒剤散布用のブームタブラD2とを載せ換え可能にそれぞれユニットに構成し、GPS利用の車速センサS2の車速信号を本機コントローラC1で取得し、この信号を載せ換え後のブームスプレーヤD1またはブームタブラD2のコントローラに通信部材Tを介して送信するように構成することにより、GPSユニットの接続のやり直しを要することなく、ブームスプレーヤD1またはブームタブラD2の散布制御が可能となる。
【0025】
上記ブームタブラを搭載した粉粒剤散布用の管理機は、図6、図7にそれぞれ側面図と平面図を示すように、機体後部に粉粒剤収容タンクTを設け、その背面位置に配した送風ファンBから送風を受ける左右の第1噴管P1,P1に臨んでタンクTの底部に回転調節可能に定量繰出しする左右の電動繰出弁V,Vを設け、繰出された粉粒剤を機体の側方に通風案内しつつ均一噴出する多数の噴口H…を形成した左右の第2噴管P2,P2を車側部に収納可能に構成し、散布車速に応じて電動繰出弁V,Vを回転調節することにより所要の面積密度で薬剤を散布する。
【0026】
この場合において、前述の薬液散布制御と同様に、GPSセンサS2による移動速度を散布車速として電動繰出弁を制御しつつスリップ率を格納保持し、必要により、GPSセンサS2によることなく、スリップ率を使用して高精度の薬剤散布を確保することができる。
【0027】
(薬液噴霧作業車両)
ここで、薬液噴霧作業車両の一例である乗用型防除機について詳細に説明する。乗用型防除機は、その収納時の側面図と散布時の正面図を図8及び図9に示すように、機体の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を左右の前輪3,3と左右の後輪4,4とに伝えるように構成している。機体後部には薬液を収容している薬液タンク5が設置され、該薬液タンク5の前側に運転席6が、その前方にはステアリングハンドル7が装備されている。前記運転席6の両側には、薬液タンク5が張り出している構成である。17はエンジン回転数の表示や各種警告灯を設けているパネルである。
【0028】
薬液タンク5内の薬液は、ポンプ8により後述する散布ブーム9に設けられた散布ホース10の各ノズル11から噴出される構成である。ポンプ8は、エンジンEからベルトプーリ伝動系8aで駆動される構成である。
【0029】
機体の左右両側には散布ブーム9を収納支持するためのブーム収納支持枠13,13が立設され、受け具14によって係止保持されるように構成されており、収納時の於ける高速走行時の振動吸収のために受け具14には弾性体が設けられている。
【0030】
散布ブーム9について説明する。中央の散布ブーム(センタブーム)9aは機体の横幅に略一致し、その左右両側に連結される左右散布ブーム(サイドブーム)9b,9bは前記中央の散布ブ−ム(センタブーム)9aよりも長さが長く構成されている。
【0031】
サイドブーム9bは、中央のセンターブーム9aに対し回動自在に連結され、サイドブーム上下シリンダ15により上方へ回動させて収納状態に保持させたり、或いは地面と略平行となる散布作業姿勢状態に回動させて支持させたりすることができる。なお、16は散布ブーム全体を昇降させるブーム昇降シリンダである。
【0032】
次に、図10と図11に基づいて乗用型防除機のブームスプレーヤ(薬液散布装置)の散布回路12について説明する。
操作盤20及び防除操作盤21や、手動で開閉できる各ブーム9a,9bの噴霧コックC1,C2,C3等が運転席6の側部に設置されている。
【0033】
また、操作盤20を備えた防除操作盤21には、中央上部のディスプレイ22の左側に上位から散布設定23、圧力24、流量計25、流量累計26等の表示部が表示されていて、ディスプレイ22の左端部に点灯される三角マークによって、このディスプレイに表示されるデータ内容が指示される。ディスプレイ22の右側には表示切替手段である表示切替ボタン28が設けられている。また、これらの下方には、自動押しボタン(スイッチ)29が設けられ、この自動押しボタン(スイッチ)29の入り状態をパイロットランプ30で表示するようになっている。更に、散布設定ボタンスイッチ31、増減ボタンスイッチ32,33、累計リセットスイッチ34等が設けられている構成である。
【0034】
散布回路12の薬液吸込吐出経路は、薬液タンク5からポンプ8間に至る低圧吸水経路35と、ポンプ8から流量制御弁36を経て各散布ブーム9a,9b間に至る高圧吐水経路37とから構成されており、ホース等で連結されている。9cは延長ブームであり、散布ブーム9bに連結する構成としており、作業状態に合わせて着脱する構成としている。仮に、延長ブーム9cを常時連結している場合においては、延長ブーム9cを使用して噴霧場合はコック9dを開いて散布を行い、延長ブーム9cを使用しない場合はコック9dを閉じて散布を行わないようにしてもよい。
【0035】
高圧吐水経路37には、一定圧以上の液圧を逃がす安全弁38を有した余水戻し経路40が設けられており、薬液タンク5に還元できるようになっている。また、この薬液タンク5の底部との間には撹拌経路41が連通されて、一部の薬液をタンク内へ常時噴出還元させて、この薬液タンク5内の薬液を撹拌する構成としている。前記流量制御弁36と各ブーム9a,9bへの噴霧コックC1,C2,C3間における高圧吐水経路37には、この液圧を検出する圧力センサ42と、流量を検出する第1流量センサ43が設けられる。なお、流量制御弁36は制御モータによって開度が制御される。39はエアチャンバである。
【0036】
噴霧コックC1,C2,C3からそれぞれ左サイドブーム9b、センターブーム9a、右サイドブーム9bへの薬液の流れは、配管D1,D2,D3で接続されている構成である。
【0037】
また、前記低圧吸水経路35には、薬液タンク5とポンプ8との間においてサクションフィルタ44が設けられ、更に、このサクションフィルタ44とポンプ8との間には吸水経路内の流量を検出する第2流量センサ45が設けられる。
【0038】
前述のごとく構成した乗用型防除機において、図8に示しているように後部散布装置50を設ける構成としている。この後部散布装置50は、機体後部の支持体51に対して回動支点52を支点として、前後方向に回動可能に構成している。この前後方向に回動については、油圧シリンダ54で作動する構成としている。また、後部散布装置50の左右のノズル部53,53については、左右の後輪4,4の後方に位置する構成としている。
【0039】
左右のノズル53,53については、それぞれ支持部57,57で支持されており、さらに、支持部57,57は連結プレート58で接続されているので、油圧シリンダ54は左側のみに設けられている。もちろん、右側に設けてもよい。
【0040】
このように、左右の後部散布装置50のノズル53については、1個の油圧シリンダ54で前後移動可能に構成しているので、廉価で簡素な構成となる。
また、左右の後部散布装置50のノズル53は、後輪4,4のトレッドの延長線上に位置する構成としているので、作物とノズル53の干渉を防止できるようになる。油圧シリンダ54についても同様で、後輪4(左側)の延長線上に位置する構成としているので、油圧シリンダ54と作物との干渉を防止できるようになる。
【0041】
図10と図12に示しているように、後部散布装置50への薬液の流れは、噴霧コックC2からセンターブーム9aへの配管D2の途中に分岐金具55を設け、この分岐金具55から配管D4を経由して後部散布装置50へ接続している構成である。前記配管D4の途中には、コック56を設けている。
【0042】
前記後部散布装置50については、左右の後輪4,4(左右前輪3,3)が通過後の部分にも充分な薬液の散布を行うことを目的としており、防除効果が良好に得られるようになる。
【0043】
図8に示しているように、後部散布装置50のノズル53が後輪4に接近しているときは散布を行い、ノズル53が後輪4から離れているときは散布をしないように構成する。具体的には、図12に示しているように、前記支持部57に案内プレート59を設け、この案内プレート59はコック56に連結する構成としている。
【0044】
即ち、油圧シリンダ54が伸長してノズル53が後輪4から遠ざかると、案内プレート59はコック56を閉じるように構成している。また、油圧シリンダ54が縮小してノズル53が後輪4に近づくと、案内プレート59はコック56を開くように構成している。
【0045】
また、後部散布装置50からの散布については、後部散布装置50の前後方向の動きと連動して自動的に散布の入り切りが行われるので、操作性が向上するようになる。また、ポンプ8については作業中常時駆動する構成としているので、前記コック56の上流側は高圧(30Kg/cm2)となっている。このため、後部散布装置50が後輪4に接近してノズル53から散布するときには、高圧の薬液が一気に噴霧されるようになり、無散布域の発生を防止できるようになる。薬液散布の入り切りについては、図10に示す制御弁64で電気的に行う構成としてもよい。
【0046】
(散布走行)
乗用型防除機による薬剤散布走行は、図13の平面図に示すように、まず、圃場端に沿って畦からブーム全長の範囲を散布走行し、この時、駆動輪のスリップがあっても、GPSセンサによる実際の移動車速により所要の薬剤散布を高精度で行うことができる。また、GPSセンサが使用できない状況であっても、スリップ率による推定車速を使用することにより、それまでの走行状況の延長として所要の薬剤散布を高精度で行うことができる。
【0047】
圃場端における機体旋回においては、GPSセンサによる機体の位置情報に基づいてブーム端の位置を合わせた上で隣接領域の散布走行を開始することにより、散布済み領域との間に重なりや隙間が生じないようにして、前記同様の散布走行を行い、その繰り返しにより、単位面積当たり所定量の薬液量で圃場全面を均一に薬剤散布を行うことができる。特に、ブーム等の端部を考慮して旋回後の機体中心の位置を画面等に指示することで、運転操作が容易となる。
【符号の説明】
【0048】
1 乗用型防除機
3 前輪
4 後輪
5 薬液タンク
6 運転席
9a,9b,9c ブーム
21 防除操作盤
C 制御部
C1 本機コントローラ(格納部)
C2 防除機コントローラ
D 薬剤散布装置
D1 ブームスプレーヤ
D2 ブームタブラ
F 流量調節モータ
S スリップ率
S1 車速センサ(駆動センサ)
S2 GPSセンサ
T 通信部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場走行可能な4輪駆動式の走行機台に車速連動式散布装置を搭載した薬剤散布用管理作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2に記載のように、圃場走行可能な4輪駆動式の走行機台上に車速連動式散布装置を搭載した薬剤散布用管理作業車両が知られている。この管理作業車両は、4輪駆動の走行機台の走行系駆動動作を検出することによって得られる機体の駆動速度に基づく補正速度を散布車速として走行速度連動制御を行うことにより、単位面積当たり所定量の薬液で薬剤散布走行することができる。また、一般的に知られているスリップ率から求められる補正速度を散布車速とすることによって幅広い散布条件について適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−18334号公報
【特許文献2】特開2003−265089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、薬剤散布作業における圃場走行時のスリップ率は、圃場の状況その他の要因によって変化することから、散布された薬剤濃度の過不足を招く場合があり、また、過小散布を避けるための過剰散布によって薬剤コストの増加や環境負荷の増大を招くという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、単位面積当たり所定量の薬液量による適正な薬剤散布のために、散布走行時の車速を高精度でかつ安定して取得することができる薬剤散布用管理作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場走行可能に機体を支持する前輪及び後輪と、連動基準としての散布車速によって散布量制御する制御部により単位面積当たり所定量の薬液量で薬剤散布を行う車速連動散布装置とを備える薬剤散布用管理作業車両において、上記前輪及び後輪の駆動動作を検出する駆動センサとGPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサとを設け、このGPSセンサによって得られた機体の移動速度を散布車速として車速連動散布装置の散布量を制御するとともに、駆動センサによって得られる機体の駆動速度について上記移動速度との差から算出される前輪及び後輪のスリップ率を取出し可能に保持する格納部を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記GPSセンサによって機体の移動速度が得られ、この移動速度を散布車速として車速連動散布装置が単位面積当たり所定量の薬液量で散布動作するとともに、駆動センサによって得られる駆動速度について算出されるスリップ率が取出し可能に格納部に保持されていることから、このスリップ率を使用することにより、駆動速度に応じて機体の移動速度が推定される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記GPSセンサの異常を検出した場合に、格納部から取出したスリップ率と駆動速度とにより推定される推定移動速度を散布車速とすることを特徴とする。
上記GPSセンサの異常の際は、スリップ率の適用により走行状況の延長として得られる推定移動速度によって連動散布が継続される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明の薬剤散布用管理作業車両は、GPSセンサによって機体の移動速度が得られ、この移動速度を散布車速として車速連動散布装置が単位面積当たり所定量の薬液量で散布動作するとともに、駆動センサによって得られる駆動速度について算出されるスリップ率が取出し可能に格納部に保持されていることから、このスリップ率を使用することにより、駆動速度に応じて移動速度を推定することができるので、GPSセンサの異常に対しても、それまでの走行状況の延長として高精度の散布走行をバックアップすることが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明の薬剤散布用管理作業車両は、請求項1の効果に加え、GPSセンサの異常の際に、スリップ率の適用による推定移動速度によって走行状況の延長として連動散布が継続されることから、GPS異常時にも、それまでの作業状況に準じて高精度の散布作業を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】散布制御のシステム構成図
【図2】散布制御のフローチャート
【図3】散布制御システムのブロック構成図
【図4】車速補正についてのフローチャート
【図5】散布装置交換型散布システムの構成図
【図6】ブームタブラの側面図
【図7】ブームタブラの平面図
【図8】乗用型防除機のブーム収納時の側面図
【図9】乗用型防除機の散布動作時の正面図
【図10】散布装置の配管図
【図11】防除操作盤の平面図
【図12】散布装置の配管図
【図13】散布走行時の平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明を適用した薬剤散布用管理作業車両の一例である乗用型防除機1は、図8及び図9に沿って後に詳述するように、左右の前輪3,3と左右の後輪4,4について4WSを含む前後輪操舵式であり、後輪駆動(2WD)と前後輪駆動(4WD)の切り替え可能な走行装置による圃場走行可能な走行機台を構成し、薬剤散布装置Dの薬液タンク5を機体後部に搭載し、薬液散布用のノズル11を形成して左右に展開散布可能なブーム9a,9b,9cを機体前端位置に配置するとともに、薬液タンク5の底部の電動式流量制御弁36を散布車速に連動して開度調節することにより、運転席6に設けた防除操作盤21で設定した単位面積当たり所定量の薬液量による一様な薬剤散布を可能とする散布制御システムを構成する。
【0013】
散布制御システムは、図1のシステム構成図に示すように、本機コントローラC1に2WDと4WDの切り替え可能な走行装置3,4の駆動動作を検出する駆動センサによる車速センサS1とGPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサS2とを設け、このGPSセンサS2によって得られた機体位置情報によって算出される機体の移動速度を散布車速として防除機コントローラC2により流量制御する車速連動散布装置を構成する。また、駆動センサS1によって得られる機体の駆動速度について移動速度との差から算出される2WDと4WDの切り替え可能な走行装置3,4のスリップ率を取出し可能に保持する格納部を本機コントローラC1に設ける。スリップ率は、必要により可視表示可能に構成してもよい。
【0014】
本機と防除機のそれぞれのコントローラC1,C2は通信部材Tによって接続して全体で薬剤散布システムの制御部Cを構成し、GPSセンサS2の異常を検出した場合は、格納部C1から取出したスリップ率と駆動速度とにより推定される推定移動速度によって車速を補正し、この補正車速を散布車速として散布制御するように、必要により散布制御システムを構成する。
【0015】
制御処理について説明すると、図2のフローチャートに示すように、実車速測定処理のステップ1(以下において、「S1」の如くの略記による。)でGPSセンサS2からの機体位置情報による機体の移動速度を取得してその当否判定を行う(S2)。
【0016】
この移動速度が正常取得された場合は、車速センサS1による駆動速度のスリップ率を算出して移動平均処理結果を不揮発メモリに格納(S3〜S6)するとともに、GPSセンサS2による機体の移動速度を散布車速として車速に応じた散布圧力による車速連動散布(S7)を行い、また、移動速度が正常取得されなかった場合は、格納されているスリップ率を用いて車速センサS1による駆動速度から推定車速を算出して散布車速とすることにより車速連動散布(S7)を行う。
【0017】
上記構成の散布制御システムは、GPSセンサS2によって得られる機体位置情報によって機体の移動速度が得られ、この移動速度を散布車速として車速連動散布装置が単位面積当たり所定量の薬液量で散布動作するとともに、駆動センサS1によって得られる駆動速度について算出されるスリップ率が取出し可能に格納部C1に保持されていることから、このスリップ率を使用することにより、駆動速度に応じて移動速度を推定することができるので、GPSセンサの異常に対しても、走行状況の延長として高精度の散布走行のバックアップが可能となり、これをシステム化してGPSセンサの異常の際にスリップ率の適用に自動切替えすることにより、走行状況の延長として得られる推定移動速度によって連動散布が継続されることから、GPS異常時にも、切替えまでの作業状況に準じて高精度の散布作業を継続することができる。
【0018】
(スリップ率Sによる補正)
上記散布制御システムにおける車速補正については、図3のブロック構成図に示すように、制御部Cによって
流量制御弁の開度調節モータFを制御可能に構成し、GPS受信機によるGPSセンサS2と車速センサS1を設け、GPS受信機から得られる速度情報を車速として設定散布量から設定圧力を計算し、散布量を制御するように防除機を構成し、散布量設定値と車速等により計算した設定圧力となるように、供給するべき薬剤量をモータ駆動の開閉弁にて制御する。
【0019】
車速補正についての具体的な制御処理は、図4のフローチャートに示すように、GPS受信機から得られる速度情報を車速として設定散布量から設定圧力を計算することにより散布量を制御する制御処理について、一定時間毎のGPS速度情報と計算速度からスリップ率Sを計算(S11〜S16)する。車速センサによる制御用車速計算の際は、そのスリップ率Sを使用(S17)して車速計算を行う。
【0020】
このように、散布作業中にGPS速度情報から求めたGPS車速と車速パルスから求めた計算車速からスリップ率Sを算出し、その値で計算車速を補正して制御に使用する車速を計算することにより、安定した実速度を検出することが可能となり、高精度の散布作業を行うことができる。
【0021】
(スリップ率)
この場合において、上記スリップ率は、上限規制値を別途設定した上で、この上限規制値を越える場合にその値とすることにより、大きな速度変化による散布量の急激な変化を抑えることができ、安定した作業を行うことができる。
【0022】
また、算出されたスリップ率を前回の値と比較し、その変化量が一定値以上のときはその一定値に置き換えて制御に使用する補正車速を計算するように制御処理を構成することにより、大きな速度変化による散布量の急な変化を抑えることができ、安定した作業を行うことが可能となる。また、必要により、上記変化量が一定値以上のときは前回のスリップ率に置き換えることが可能であり、この場合も同様に、大きな速度変化による散布量の急な変化を抑えることができ、安定した作業を行うことが可能となる。
【0023】
散布終了は、コントローラの電源オフの判定を待った上でそのスリップ率を不揮発メモリに書込み、これを運転再開時に使用するように制御処理を構成することにより、作業再開後に速度補正を直ちに行うことができ、散布開始時の散布性能を向上することができる。
【0024】
(多用途乗用管理機)
次に、散布装置交換が可能な多用途型乗用管理機について説明すると、図5の散布システム構成図に示すように、例えば、薬液噴霧用のブームスプレーヤD1と粉粒剤散布用のブームタブラD2とを載せ換え可能にそれぞれユニットに構成し、GPS利用の車速センサS2の車速信号を本機コントローラC1で取得し、この信号を載せ換え後のブームスプレーヤD1またはブームタブラD2のコントローラに通信部材Tを介して送信するように構成することにより、GPSユニットの接続のやり直しを要することなく、ブームスプレーヤD1またはブームタブラD2の散布制御が可能となる。
【0025】
上記ブームタブラを搭載した粉粒剤散布用の管理機は、図6、図7にそれぞれ側面図と平面図を示すように、機体後部に粉粒剤収容タンクTを設け、その背面位置に配した送風ファンBから送風を受ける左右の第1噴管P1,P1に臨んでタンクTの底部に回転調節可能に定量繰出しする左右の電動繰出弁V,Vを設け、繰出された粉粒剤を機体の側方に通風案内しつつ均一噴出する多数の噴口H…を形成した左右の第2噴管P2,P2を車側部に収納可能に構成し、散布車速に応じて電動繰出弁V,Vを回転調節することにより所要の面積密度で薬剤を散布する。
【0026】
この場合において、前述の薬液散布制御と同様に、GPSセンサS2による移動速度を散布車速として電動繰出弁を制御しつつスリップ率を格納保持し、必要により、GPSセンサS2によることなく、スリップ率を使用して高精度の薬剤散布を確保することができる。
【0027】
(薬液噴霧作業車両)
ここで、薬液噴霧作業車両の一例である乗用型防除機について詳細に説明する。乗用型防除機は、その収納時の側面図と散布時の正面図を図8及び図9に示すように、機体の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を左右の前輪3,3と左右の後輪4,4とに伝えるように構成している。機体後部には薬液を収容している薬液タンク5が設置され、該薬液タンク5の前側に運転席6が、その前方にはステアリングハンドル7が装備されている。前記運転席6の両側には、薬液タンク5が張り出している構成である。17はエンジン回転数の表示や各種警告灯を設けているパネルである。
【0028】
薬液タンク5内の薬液は、ポンプ8により後述する散布ブーム9に設けられた散布ホース10の各ノズル11から噴出される構成である。ポンプ8は、エンジンEからベルトプーリ伝動系8aで駆動される構成である。
【0029】
機体の左右両側には散布ブーム9を収納支持するためのブーム収納支持枠13,13が立設され、受け具14によって係止保持されるように構成されており、収納時の於ける高速走行時の振動吸収のために受け具14には弾性体が設けられている。
【0030】
散布ブーム9について説明する。中央の散布ブーム(センタブーム)9aは機体の横幅に略一致し、その左右両側に連結される左右散布ブーム(サイドブーム)9b,9bは前記中央の散布ブ−ム(センタブーム)9aよりも長さが長く構成されている。
【0031】
サイドブーム9bは、中央のセンターブーム9aに対し回動自在に連結され、サイドブーム上下シリンダ15により上方へ回動させて収納状態に保持させたり、或いは地面と略平行となる散布作業姿勢状態に回動させて支持させたりすることができる。なお、16は散布ブーム全体を昇降させるブーム昇降シリンダである。
【0032】
次に、図10と図11に基づいて乗用型防除機のブームスプレーヤ(薬液散布装置)の散布回路12について説明する。
操作盤20及び防除操作盤21や、手動で開閉できる各ブーム9a,9bの噴霧コックC1,C2,C3等が運転席6の側部に設置されている。
【0033】
また、操作盤20を備えた防除操作盤21には、中央上部のディスプレイ22の左側に上位から散布設定23、圧力24、流量計25、流量累計26等の表示部が表示されていて、ディスプレイ22の左端部に点灯される三角マークによって、このディスプレイに表示されるデータ内容が指示される。ディスプレイ22の右側には表示切替手段である表示切替ボタン28が設けられている。また、これらの下方には、自動押しボタン(スイッチ)29が設けられ、この自動押しボタン(スイッチ)29の入り状態をパイロットランプ30で表示するようになっている。更に、散布設定ボタンスイッチ31、増減ボタンスイッチ32,33、累計リセットスイッチ34等が設けられている構成である。
【0034】
散布回路12の薬液吸込吐出経路は、薬液タンク5からポンプ8間に至る低圧吸水経路35と、ポンプ8から流量制御弁36を経て各散布ブーム9a,9b間に至る高圧吐水経路37とから構成されており、ホース等で連結されている。9cは延長ブームであり、散布ブーム9bに連結する構成としており、作業状態に合わせて着脱する構成としている。仮に、延長ブーム9cを常時連結している場合においては、延長ブーム9cを使用して噴霧場合はコック9dを開いて散布を行い、延長ブーム9cを使用しない場合はコック9dを閉じて散布を行わないようにしてもよい。
【0035】
高圧吐水経路37には、一定圧以上の液圧を逃がす安全弁38を有した余水戻し経路40が設けられており、薬液タンク5に還元できるようになっている。また、この薬液タンク5の底部との間には撹拌経路41が連通されて、一部の薬液をタンク内へ常時噴出還元させて、この薬液タンク5内の薬液を撹拌する構成としている。前記流量制御弁36と各ブーム9a,9bへの噴霧コックC1,C2,C3間における高圧吐水経路37には、この液圧を検出する圧力センサ42と、流量を検出する第1流量センサ43が設けられる。なお、流量制御弁36は制御モータによって開度が制御される。39はエアチャンバである。
【0036】
噴霧コックC1,C2,C3からそれぞれ左サイドブーム9b、センターブーム9a、右サイドブーム9bへの薬液の流れは、配管D1,D2,D3で接続されている構成である。
【0037】
また、前記低圧吸水経路35には、薬液タンク5とポンプ8との間においてサクションフィルタ44が設けられ、更に、このサクションフィルタ44とポンプ8との間には吸水経路内の流量を検出する第2流量センサ45が設けられる。
【0038】
前述のごとく構成した乗用型防除機において、図8に示しているように後部散布装置50を設ける構成としている。この後部散布装置50は、機体後部の支持体51に対して回動支点52を支点として、前後方向に回動可能に構成している。この前後方向に回動については、油圧シリンダ54で作動する構成としている。また、後部散布装置50の左右のノズル部53,53については、左右の後輪4,4の後方に位置する構成としている。
【0039】
左右のノズル53,53については、それぞれ支持部57,57で支持されており、さらに、支持部57,57は連結プレート58で接続されているので、油圧シリンダ54は左側のみに設けられている。もちろん、右側に設けてもよい。
【0040】
このように、左右の後部散布装置50のノズル53については、1個の油圧シリンダ54で前後移動可能に構成しているので、廉価で簡素な構成となる。
また、左右の後部散布装置50のノズル53は、後輪4,4のトレッドの延長線上に位置する構成としているので、作物とノズル53の干渉を防止できるようになる。油圧シリンダ54についても同様で、後輪4(左側)の延長線上に位置する構成としているので、油圧シリンダ54と作物との干渉を防止できるようになる。
【0041】
図10と図12に示しているように、後部散布装置50への薬液の流れは、噴霧コックC2からセンターブーム9aへの配管D2の途中に分岐金具55を設け、この分岐金具55から配管D4を経由して後部散布装置50へ接続している構成である。前記配管D4の途中には、コック56を設けている。
【0042】
前記後部散布装置50については、左右の後輪4,4(左右前輪3,3)が通過後の部分にも充分な薬液の散布を行うことを目的としており、防除効果が良好に得られるようになる。
【0043】
図8に示しているように、後部散布装置50のノズル53が後輪4に接近しているときは散布を行い、ノズル53が後輪4から離れているときは散布をしないように構成する。具体的には、図12に示しているように、前記支持部57に案内プレート59を設け、この案内プレート59はコック56に連結する構成としている。
【0044】
即ち、油圧シリンダ54が伸長してノズル53が後輪4から遠ざかると、案内プレート59はコック56を閉じるように構成している。また、油圧シリンダ54が縮小してノズル53が後輪4に近づくと、案内プレート59はコック56を開くように構成している。
【0045】
また、後部散布装置50からの散布については、後部散布装置50の前後方向の動きと連動して自動的に散布の入り切りが行われるので、操作性が向上するようになる。また、ポンプ8については作業中常時駆動する構成としているので、前記コック56の上流側は高圧(30Kg/cm2)となっている。このため、後部散布装置50が後輪4に接近してノズル53から散布するときには、高圧の薬液が一気に噴霧されるようになり、無散布域の発生を防止できるようになる。薬液散布の入り切りについては、図10に示す制御弁64で電気的に行う構成としてもよい。
【0046】
(散布走行)
乗用型防除機による薬剤散布走行は、図13の平面図に示すように、まず、圃場端に沿って畦からブーム全長の範囲を散布走行し、この時、駆動輪のスリップがあっても、GPSセンサによる実際の移動車速により所要の薬剤散布を高精度で行うことができる。また、GPSセンサが使用できない状況であっても、スリップ率による推定車速を使用することにより、それまでの走行状況の延長として所要の薬剤散布を高精度で行うことができる。
【0047】
圃場端における機体旋回においては、GPSセンサによる機体の位置情報に基づいてブーム端の位置を合わせた上で隣接領域の散布走行を開始することにより、散布済み領域との間に重なりや隙間が生じないようにして、前記同様の散布走行を行い、その繰り返しにより、単位面積当たり所定量の薬液量で圃場全面を均一に薬剤散布を行うことができる。特に、ブーム等の端部を考慮して旋回後の機体中心の位置を画面等に指示することで、運転操作が容易となる。
【符号の説明】
【0048】
1 乗用型防除機
3 前輪
4 後輪
5 薬液タンク
6 運転席
9a,9b,9c ブーム
21 防除操作盤
C 制御部
C1 本機コントローラ(格納部)
C2 防除機コントローラ
D 薬剤散布装置
D1 ブームスプレーヤ
D2 ブームタブラ
F 流量調節モータ
S スリップ率
S1 車速センサ(駆動センサ)
S2 GPSセンサ
T 通信部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場走行可能に機体を支持する前輪(3)及び後輪(4)と、連動基準としての散布車速によって散布量制御する制御部(C)により単位面積当たり所定量の薬液量で薬剤散布を行う車速連動散布装置(D)とを備える薬剤散布用管理作業車両において、
上記前輪(3)及び後輪(4)の駆動動作を検出する駆動センサ(S1)とGPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサ(S2)とを設け、このGPSセンサ(S2)によって得られた機体の移動速度を散布車速として車速連動散布装置(D)の散布量を制御するとともに、駆動センサ(S1)によって得られる機体の駆動速度について上記移動速度との差から算出される前輪(3)及び後輪(4)のスリップ率を取出し可能に保持する格納部(C1)を備えたことを特徴とする薬剤散布用管理作業車両。
【請求項2】
前記GPSセンサ(S2)の異常を検出した場合に、格納部(C1)から取出したスリップ率と駆動速度とにより推定される推定移動速度を散布車速とすることを特徴とする請求項1記載の薬剤散布用管理作業車両。
【請求項1】
圃場走行可能に機体を支持する前輪(3)及び後輪(4)と、連動基準としての散布車速によって散布量制御する制御部(C)により単位面積当たり所定量の薬液量で薬剤散布を行う車速連動散布装置(D)とを備える薬剤散布用管理作業車両において、
上記前輪(3)及び後輪(4)の駆動動作を検出する駆動センサ(S1)とGPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサ(S2)とを設け、このGPSセンサ(S2)によって得られた機体の移動速度を散布車速として車速連動散布装置(D)の散布量を制御するとともに、駆動センサ(S1)によって得られる機体の駆動速度について上記移動速度との差から算出される前輪(3)及び後輪(4)のスリップ率を取出し可能に保持する格納部(C1)を備えたことを特徴とする薬剤散布用管理作業車両。
【請求項2】
前記GPSセンサ(S2)の異常を検出した場合に、格納部(C1)から取出したスリップ率と駆動速度とにより推定される推定移動速度を散布車速とすることを特徴とする請求項1記載の薬剤散布用管理作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−239755(P2011−239755A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117324(P2010−117324)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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