説明

薬剤溶出型埋め込み型医療用具の熱処理

コーティング及びステントのような埋め込み型医療用具をコートする方法を開示する。当該方法は、用具の埋め込みに続くコーティングからの活性剤の放出率の低下を生じうる温度条件にコーティングをさらすことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その一例がステントである、薬剤溶出型埋め込み型医療用具に関する。さらに詳しくは、本発明は、薬剤溶出型埋め込み型医療用具を熱で処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮経管冠動脈形成術(PTCA)は、心臓疾患を治療する処置である。上腕動脈又は大腿動脈を介して経皮的に患者の循環器系にバルーン部分を有するカテーテル組み立て部品を導入する。バルーン部分が閉塞病変を横切って位置するまで、冠状脈管構造を通ってカテーテル組み立て部品を進める。病変を横切る位置に来るとすぐに、バルーンをあらかじめ決めた大きさに膨らませ、血管壁をリモデリングさせる。次いでバルーンを小さくしぼませて、患者の脈管構造からカテーテルを引き抜く。
【0003】
上記の処置に関連する問題には、内膜弁の形成又は動脈内層の引き裂きが挙げられ、それらは、バルーンをしぼませた後の導管を破壊し、閉塞させうる。血管痙攣及び血管壁の反跳も血管を閉鎖する恐れがある。さらに、処置の数ヵ月後にわたって、血栓症及び動脈の再狭窄が発生する可能性があり、それらは、別の血管形成処置又は外科的バイパス手術を必要とさせる可能性がある。動脈内層の崩壊による動脈の閉塞の一部又は全部を軽減するために、並びに血栓症及び再狭窄の発生の機会を減らすために、ステントを内腔に埋め込んで血管の開放性を維持する。
【0004】
ステントは、物理的に開放を保ち、所望であれば、通路の壁を拡張するように機能する足場として作用する。通常、ステントは、カテーテルにより小さな内腔を介して挿入でき、次いで所望の位置で一度さらに大きな直径に拡張できるように圧縮可能である。ステントを介した機械的介入は、バルーンによる血管形成術に比べて再狭窄の比率を減らしている。けれども、再狭窄は、20〜40%の範囲の比率で未だ深刻な臨床的課題である。ステント留置部位で再狭窄が起きれば、単にバルーンで治療した病変に比べて、臨床的選択肢が限定されるので、その治療は難題でありうる。
【0005】
ステントは、機械的介入だけでなく、生物学的治療を提供する媒体としても使用される。ステントに薬物を適用することによって生物学的治療を達成することができる。薬物を適用されたステントは、病気の部位で治療物質の局所投与を提供する。治療部位に有効な濃度を提供するために、そのような薬剤の全身投与は、患者にとって有害な又は毒性さえある副作用を生じることが多い。局所送達は、全身投与量に比べて少ない全量の薬剤を投与するが、特定の部位で濃縮されるという点で好ましい治療方法である。従って、局所送達は、より少ない副作用でさらに好都合な成績を達成する。
【0006】
ステントに薬物を適用する提案された方法の1つでは、ステントの表面にコートされたポリマーのキャリアの使用が含まれる。組成物にステントを浸すことによって、又はステント上に組成物をスプレーすることによって溶媒、溶媒に溶解したポリマー及び混合物に分散した活性剤を含む組成物をステントに塗布する。溶媒を蒸発させ、ポリマー及びポリマーに含浸させた活性剤のコーティングをステントストラットの表面上に残す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ステントに薬物を適用する前述の方法の潜在的な欠点は、活性剤の放出率が高すぎて有効な治療を提供できない可能性があるということである。この欠点は、特定の活性剤で特に顕著であってもよい。たとえば、標準的なポリマーコーティングからの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出率は、約24時間で50%を超えることが見い出されている。従って、さらに有効な放出率プロフィールを提供するために、活性剤の放出率を抑えるコーティングに対するニーズがある。
【0008】
ステントに薬物を適用する前述の方法のもう1つの欠点は、製造上、重要な不整合がありうるということである。たとえば、様々なステントの間で、放出率の変異がありうる。コーティング方法のパラメータが一致していても、幾つかのポリマーがステント上で乾燥してコーティングを形成する場合、様々なポリマー形態が様々なステントコーティングを生み出しうると考えられる。ポリマー形態における差異は、ポリマーコーティングからの活性剤の放出率を有意に変えてしまう可能性がある。ステント間の一致しない放出率プロフィールの結果として、臨床的な混乱がありうる。従って、ステントを保存する場合、保存している間にステントコーティングからの放出率が変わる可能性があり、それは、「放出率ドリフト」として知られている。従って、ステント間及び長期にわたる、活性剤の放出率の変動を減らす方法に対するニーズがある。本発明は、そのほかのニーズと同様に前述のニーズを満たす方法及びコーティングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の側面の1つによれば、用具上の乾燥コーティングを持続時間の間、常温より高い温度に暴露することを含み、該乾燥コーティングがポリマー、活性剤及び2%未満の残留流体含量(w/w)を含み、暴露の持続時間が、コーティングを生体内腔に埋め込んだ後、コーティングからの活性剤の放出率を抑えるのに十分である、埋め込み型医療用具の製造方法が開示される。実施態様の1つでは、乾燥コーティングは、活性剤を有するリザーバ層及びリザーバ層の部分の下に配置される下塗り層を含む。別の実施態様では、乾燥コーティングは、活性剤を有するリザーバ層及びリザーバ層の部分を覆うバリア層を含む。さらに別の実施態様では、ポリマーは、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(メタクリル酸ブチル)又はこれらの組み合わせを含む。別の実施態様では、活性剤は、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン、又はその機能的類縁体若しくは構造的誘導体である。別の実施態様では、24時間での活性剤の平均放出率の標準偏差は、温度に暴露しなかった用具の群の平均放出率の標準偏差より小さい。
【0010】
本発明のさらなる側面によれば、ステントに組成物を塗布することを含み、該組成物がポリマー及び溶媒を含み、溶媒を蒸発させてコーティングを形成することを含み、持続時間の間、ポリマーのガラス転移温度以上の温度にコーティングを暴露することを含む、薬剤溶出型ステントの製造方法が開示される。実施態様の1つでは、組成物はさらに活性剤を含む。別の実施態様では、溶媒を蒸発させて、約2%未満の残留流体含量(w/w)を含む乾燥コーティングを形成する。別の実施態様では、温度は、ポリマーのガラス転移温度とポリマーの融解温度を足して2で割ったものに等しい。さらなる実施態様では、ポリマーは2種以上のポリマーの混合物である。
【0011】
本発明の別の側面では、ステントに組成物を塗布することを含み、該組成物が半結晶性ポリマー、活性剤及び溶媒を含み、溶媒を蒸発させて乾燥コーティングを形成することを含み、該乾燥コーティングは約2%未満の残留流体含量(w/w)を含み、持続時間の間、乾燥コーティングをポリマーの結晶化温度に暴露することを含む、薬剤溶出型ステントの製造方法が開示される。
【0012】
さらなる側面では、約2%未満の残留流体含量(w/w)を有する乾燥ポリマーコーティングをステント上に形成することを含み、該乾燥ポリマーコーティングは、ポリマー及び活性剤を含むリザーバ層及びリザーバ層の部分を覆うポリマーを含むバリア層を含み、バリア層に含まれるポリマーを、ポリマーのガラス転移温度以上の温度に暴露することを含む、薬剤溶出型ステントの製造方法が開示される。実施態様の1つでは、バリア層に含まれるポリマーのガラス転移温度は、リザーバ層に含まれるポリマーのガラス転移温度よりも低い。
【0013】
本発明の別の側面では、ステント上にポリマーコーティングを形成することを含み、該ポリマーコーティングが、半結晶性のポリマー及び活性剤を含むリザーバ層を含み、リザーバ層に含まれるポリマーをポリマーの結晶化温度に暴露することを含む、薬剤溶出型ステントの製造方法が開示される。さらなる側面では、ステント上にポリマーコーティングを形成することを含み、該ポリマーコーティングが、ポリマー及び活性剤を含むリザーバ層、及びリザーバ層の部分を覆う半結晶性のポリマーを含むバリア層を含み、バリア層に含まれるポリマーをポリマーの結晶化温度に暴露することを含む、薬剤溶出型ステントの製造方法が開示される。
【0014】
さらに別の側面では、組成物を埋め込み型医療用具に塗布することを含み、該組成物が溶媒に溶解されたポリマーを含み、ポリマーのガラス転移温度以上の温度に組成物を加熱することを含む、埋め込み型医療用具をコートする方法が開示される。実施態様の1つでは、用具上に乾燥コーティングが形成されるまで該温度に加熱され、該コーティングは、約2%未満の残留溶媒(w/w)を含む。実施態様の1つでは、組成物は実質的にいかなる活性剤も含まない。さらに別の実施態様では、組成物はさらに活性剤を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〈コーティング〉
本明細書では、熱処理工程を用いることによる、ステントのような薬剤溶出型埋め込み型用具の製造方法が開示される。該方法は、コーティングからの薬剤の放出率を抑えるのに十分な温度にポリマーの薬剤コーティングを暴露する(加熱する)ことを含む。コーティングは、1以上のポリマーに分散された1以上の活性剤を含むことができる。活性剤は、治療効果又は予防効果を発揮することが可能である任意の物質であることができる。「ポリマー」、「ポリ」及び「ポリマーの」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを含み、そのランダム、交互、ブロック、架橋、混合及びグラフトの変形を含む。
【0016】
ポリマーコーティングの一部の実施態様を図1A〜1Eによって説明する。図は大きさどおりには描かれておらず、種々の層の厚さは、説明の目的で大きく又は小さく強調されている。
【0017】
図1Aを参照して、ステントのような医療用基材20の本体が、表面22を有して図解される。ポリマー及びポリマーに分散された活性剤(たとえば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン)を有するリザーバ層24が表面22上に堆積される。リザーバ層24におけるポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどであることができ、そのランダム、交互、ブロック、架橋、混合及びグラフトの変形を含むことができる。医療用基材20が生体内腔に挿入されると、リザーバ層24は活性剤を放出することができる。
【0018】
図1Bを参照して、医療用基材20は、点から成る領域28によって図解されるような、放出可能に活性剤を含有するために本体にて形成された空洞又は微小孔26を含む。ポリマーを含むバリア層又は率低下膜30を医療用基材20の表面22に配置して、空洞26を覆う。バリア層30は、医療用基材20からの活性剤の放出率を低下させるように機能する。
【0019】
図1Cを参照して、表面22に堆積させた活性剤含有層又はリザーバ層24を有する医療用基材20を図解する。リザーバ層24の少なくとも選択された部分の上にバリア層30が形成される。
【0020】
図1Dを参照して、リザーバ層24は、下塗り層32の上に堆積される。リザーバ層24の少なくとも一部の上にバリア層30が形成される。下塗り層32は、リザーバ層24と表面22との間の接着を高めるために中間層として作用する。ポリマー内に混合される活性剤の量の増加は、リザーバ層24の表面22への接着性を減らしうる。従って、中間下塗り層としての活性剤を含まないポリマーの使用によって、リザーバ層24に対する活性剤の含量を高めることができる。
【0021】
図1Eは、医療用基材20の表面22の選択された部分に配置された第1のリザーバ層24を有する医療用基材20を図解する。第1のリザーバ層24Aは第1の活性剤、たとえば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含有する。第2のリザーバ層24Bも表面22上に配置することができる。第2のリザーバ層24Bは第2の活性剤、たとえば、タキソールを含有する。第1及び第2のリザーバ層24A及び24Bはそれぞれ、第1及び第2のバリア層30A及び30Bによって覆われる。種々の選択された放出パラメータを提供できるように、リザーバ層の選択された領域上にのみバリア層を堆積できることを当業者は十分に理解することができる。活性剤の組み合わせを使用し、そのそれぞれが異なった放出パラメータを必要とする場合、そのような選択されたパラメータが特に有用になってもよい。
【0022】
限定ではないが、一例として、含浸されたリザーバ層24は、約0.1ミクロン〜約10ミクロン、さらに狭くは、約0.5ミクロン〜約2ミクロンの厚さを有することができる。リザーバ層24の特定の厚さは、医療用基材20が用いられる処置の種類及び送達されるべき活性剤の量に基づく。互いの上に複数のリザーバ層24を適用することによって、医療用基材20に含まれるべき活性剤の量をさらに増やすことができる。バリア層30の厚さは、たとえば、所望の放出率及びステントが使用される処置のような、しかし、これらに限定されないパラメータに依存するので、バリア層30は、任意の好適な厚さを有することができる。たとえば、バリア層30は、約0.1ミクロン〜約10ミクロン、さらに狭くは、約0.25ミクロン〜約5ミクロンの厚さを有することができる。下塗り層32は、任意の好適な厚さを有することができ、その例は、約0.1ミクロン〜約10ミクロン、さらに狭くは、約0.1ミクロン〜約2ミクロンの範囲であることができる。
【0023】
〈コーティングの熱処理〉
本発明の実施態様に従って製造される埋め込み型医療用具は、ヒト又は家畜の患者に埋め込みできるいかなる好適な医療用基材であってもよい。簡略にするため、本明細書では、薬剤溶出型ステントの製造方法を記載する。しかしながら、当業者は、本発明の方法を用いてそのほかの医療用基材を製造できることを理解するであろう。
【0024】
上で述べたように、本発明の方法は、コーティングからの薬剤の放出率を抑えるのに十分な温度にポリマー薬剤コーティングを暴露することを含む。ポリマー薬剤コーティングを有するステントを熱処理工程に供することができる。或いは、本明細書でさらに詳細に記載されるようにステント表面上でポリマー薬剤コーティングを形成することができる。
【0025】
本発明の実施態様の1つでは、ポリマーコーティングは、乾燥コーティングである。「乾燥コーティング」は、約10%未満の残留流体(たとえば、溶媒又は水)含量(w/w)を伴うコーティングとして定義される。実施態様の1つでは、コーティングは、約2%未満の残留流体含量(w/w)、さらに狭くは、約1%未満の残留流体含量(w/w)を有する。コーティング中の残留流体の量は、カール・フィッシャー又はサーモグラビメトリックアナリシス(TGA)の試験によって決定することができる。たとえば、コートされたステントをTGA機器に入れ、水含量の指標として100℃にて重量変化を測定することができ、又は溶媒含量の指標としてコーティングで使用した溶媒の沸点に等しい温度にて重量変化を測定することができる。
【0026】
組成物をステントに塗布した直後に熱処理工程を実施することができる。或いは、乾燥ポリマー薬剤コーティングをステント上に形成した後、コーティングを熱処理工程の対象とすることができる。製造の任意の適当な段階、たとえば、包装中、又はカテーテルのようなステント送達装置にステントを固定している間に、ステントは熱処理を受けることができる。言い換えれば、後者の選択肢では、ステントを送達装置上に折り曲げながら、ステントコーティングを適当な温度に暴露することができる。
【0027】
コーティングを熱で処理するのに使用される熱源/エミッタは、ポリマーコーティングを加熱することが可能である放熱を発する任意の装置であることができる。たとえば、熱源は、焼灼器のチップ、RFソース又はマイクロ波エミッタであることができる。熱源はまた、送風機が温かい気体(たとえば、空気、アルゴン、窒素等)を埋め込み型用具に向けることができるように加熱する装置を含む送風機であることもできる。たとえば、加熱装置は、加熱コイルを組み込んだ電気ヒータ、又は気体源及びステントに向けられた気体の温度を制御するコンピュータ制御装置を含むシステムであることができる。
【0028】
図2を参照して、熱処理工程のための気体システムは、気体源40、流量制御装置42(たとえば、バージニア州、リーズバーグのエレクトロケムコントロール社から入手可能な流量制御装置)、インラインヒータ44(たとえば、マサチューセッツ州、ダンバーズのシルベニアから入手可能なインラインヒータ)、コンピュータ制御装置46、複数のステント50を保持するための気密槽48及び排気52を包含することができる。コンピュータ制御装置46は、流量制御装置42及びインラインヒータ44と連通することができ、それぞれ、空気の量及び温度を制御し、それは槽48に送達される。排気52は、ステントコーティングから除かれた後、移動するための望ましくない成分(たとえば、酸素)の経路である。インラインヒータ44は、気体源40により送達された気体の温度を熱処理を行うのに使用される温度に正確に且つ徐々に高めるのに使用することができる。
【0029】
熱処理をしなければ、活性剤(たとえば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン)が特定の臨床条件については、高すぎる比率でポリマーマトリクスから拡散することができるので、熱処理は有益でありうる。たとえば、本発明の工程を用いることによって、以下の実施例17で実証されるように、対照群に比べて約50%、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン又はその類縁体若しくは誘導体の放出率を低下させるのに有効である十分な温度にコーティングを暴露することができる。
【0030】
さらに、本発明の熱処理工程は、ステント間の活性剤の放出率の変動を抑えることによって薬剤溶出型ステントの製造上の整合性を高めることができる。熱処理工程は、長期間にわたる放出率のドリフトも抑えることができる。「放出率のドリフト」は、長期にわたると、たとえば、ステントを保存している間、ポリマーコーティングからの活性剤の放出率が変化しうる現象を言う。長期にわたるポリマーコーティングの形態における変化のために、たとえば、ポリマーコーティングが酸素及び水分のような分解剤にさらされれば、放出率のドリフトが生じる可能性がある。実施例59で実証されるように、コーティングにおけるポリマーのガラス転移温度より高い温度にステントコーティングを暴露することによって、ステントのベースライン群(たとえば、熱処理の対象とされなかったステント)の平均放出率の標準偏差より、標準偏差が小さくなるように、24時間の間における活性剤の平均放出率の標準偏差を低下させることができる。熱処理工程は、ポリマーステントコーティングを熱力学的平衡に近づけることによって製造上の整合性を高めることができると考えられている。
【0031】
本発明の実施態様の1つでは、コーティングからの活性剤の放出率を低下させるのに十分である常温より高い温度に、活性剤を有するポリマーコーティングを暴露する。たとえば、図1A〜1Eに図解されたコーティングを熱処理工程に暴露してコーティングからの活性剤の放出率を低下させることができる。いかなる特定の理論にも束縛されないで、本発明の熱処理工程は、活性剤を集塊させることにより、コーティング中の活性剤のミクロ相分布を再分布させることによってポリマー薬剤コーティングからの活性剤の放出率を下げることができると考えられている。特に、集塊が処理部位で流体に暴露されるので、再分布は、活性剤集塊の表面積を減らすことができる。さらに、(1)非晶性ポリマーにおける空隙率を減らし、(2)コーティングにおけるポリマーの架橋を増やし、(3)最初のコーティング工程で形成される割れ目のようなコーティングにおける微細な不完全部を修復することによって、熱処理は活性剤の放出率を下げることができる。
【0032】
本発明の別の実施態様では、コーティング中のポリマーは半結晶性のポリマー(たとえば、ポリ塩化ビニル又はエチレンビニルアルコールコポリマー)であり、ポリマーコーティングは、ポリマーの結晶化温度(Tc)に暴露される。実施態様の1つでは、ポリマーのTcは常温よりも高い。「結晶化温度」は、半結晶性のポリマーが最高比率の結晶性を有する温度を言う。非晶性のポリマーは結晶化温度を示さない。結晶化温度を測定する方法は以下に記載する。エチレンビニルアルコールコポリマー(44モル%エチレン)の結晶化温度は、たとえば、約415°Kである(エチレンビニルアルコールコポリマー(「EVAL」)は、一般名EVOH又は商標名EVALによって一般に知られている)。結晶化温度のそのほかの例には、示差走査熱量計によって測定したときのポリ(エチレンテレフタレート)の396°K(Parravicini et al., J. Appl. Polym. Sci., 52(7), 875-85 (1994)によって報告されたような)、及び示差走査熱量計によって測定したときのポリ(p−硫化フェニレン)の400°K(Ding, et al. Macromolecules, 29(13), 4811-12 (1996)によって報告されたような)が挙げられる。
【0033】
活性剤は、ポリマーの結晶性領域に比べて、非晶性領域でさらに大きな分散性を有すると考えられている。薬剤溶出型ステントのコーティングに使用されるポリマー材料はほとんど、多少結晶性を有し、空隙率の変化及び結晶相の体積分率の増加のために、ポリマーの結晶性の程度は活性剤の分散性に直接影響を及ぼす。さらに、組成物の成分(たとえば、溶媒)及びステントをコートするのに使用されることが多い工程パラメータは、ポリマーマトリクスにおける最大の結晶性を可能にはしないと考えられている。組成物に揮発性の極めて高い溶媒が含まれていれば、たとえば、そのときは、ポリマーは、溶媒がコーティングから蒸発する前に完全に結晶化する十分な時間を有さない。
【0034】
いかなる特定の理論にも束縛されないで、ポリマーの加熱がポリマーの結晶性比率を高めるので、ポリマーからの活性剤の分散率を下げることができると考えられている。「結晶性比率」は、結晶形態にあるポリマー材料の比率を言う。本発明の実施態様の1つでは、ポリマーは40〜75%の結晶性を有する半結晶性ポリマーである(たとえば、約65%の結晶性を達成するポリ(フッ化ビニリデン)及び約64%の結晶性を達成するポリ(6−アミノカプロン酸)。本発明の方法は、結晶性比率を約5〜30%、さらに狭くは約20〜30%の結晶性比率に高めることができる。
【0035】
当業者は、ポリマーにおいて結晶性比率を決定するための幾つかの方法があることを理解している。これらの方法は、たとえば、L.H. Sperline, Introduction to Physical Polymer Science(物理的ポリマー科学への序論)(第3版、2001年)に記載されている。第1は、熱量測定法による全試料の融解熱の決定が関与する。次いで、融点下降実験によって結晶材料のモル当たりの融解熱を独立して概算することができる。次いで、全試料の融解熱を結晶材料の融解熱で割り、100倍することによって結晶性比率が得られる。
【0036】
第2の方法には、結晶構造のX線解析を介した結晶部分の密度の決定及び100%結晶材料の理論的密度の決定が含まれる。非晶性材料の密度は、当該温度への融解物の密度を外挿することによって決定することができる。結晶性比率は、以下の式よって得られ、式中、ρexptlは、実験上の密度を表し、ρamorph及びρ100%crystはそれぞれ、非晶性の密度及び結晶部分の密度を表す。
【数1】

【0037】
第3の方法は、X線回折が関与する電子の数に依存するので、密度に比例するという事実に由来する。結晶部分のブラッグ回折ラインのほかに、ポリマーの非晶性部分により生じる非晶性の後光がある。原子間隔がさらに大きいので、非晶性の後光は、相当する結晶性のピークよりもやや小さな角度に生じる。分子の不規則性のために、非晶性の後光は、相当する結晶性のピークよりも幅が広い。結晶性指数CIによってこの第3の方法を定量することができる。式中、A及びAはそれぞれ、ブラッグ回折ライン下面積及び相当する非晶性の後光を表す。
【数2】

【0038】
本発明の別の実施態様では、熱処理工程を用いて、ポリマーのガラス転移温度(T)以上の温度に、ステント上でポリマーコーティングを加熱することができる。或いは、別の実施態様では、コーティングは活性剤を含むことができ、コーティングにおけるポリマーのT以上の温度にコーティングを暴露することによってコーティングを熱処理の対象として、活性剤の放出率を抑えることができる。実施態様の1つでは、ポリマーのT及びTは常温より高い。非晶性及び半結晶性のポリマーは双方ともガラス転移温度を示す。従って、ポリマーが半結晶性のポリマーであれば、コーティングにおけるポリマーのT以上且つ融解温度(T)未満の温度に、乾燥ポリマーコーティングを暴露することができる。非晶性ポリマーはTを示さない。
【0039】
さらに別の実施態様では、ポリマーが半結晶性のポリマーであれば、ポリマーコーティングをポリマーのアニーリング温度に暴露する。「アニーリング温度」は、(T+T)/2に等しい温度を言う。たとえば、EVALのアニーリング温度は約383°Kである。別の実施態様では、ポリマーコーティングを、ポリマーの融解温度の0.9倍に等しい温度に暴露することもでき、融解温度はケルビンで表す(たとえば、EVALについては約394°K)。
【0040】
は、大気圧にてポリマーの非晶性部分がもろいガラス質状態から可塑性の状態に変化する温度である。言い換えれば、Tは、ポリマー鎖における断片的な動きが始まる温度に相当する。非晶性又は半結晶性のポリマーが上昇する温度に暴露されると、温度が上昇するにつれて、ポリマーの膨張係数及び熱容量が共に増すということは、分子の動きが増えることを示している。温度が上昇するにつれて、試料中の実際の分子の体積は一定のままなので、膨張係数の上昇は、系に関係する空隙率の増加、従って、分子が動くための自由度の増加を示す。熱容量の増加は、動きを介した熱損失の増加に相当する。
【0041】
所定のポリマーのTは、加熱率に依存することができ、ポリマーの熱履歴が影響しうる。さらに、ポリマーの化学構造は移動性に影響を及ぼすことによってガラス転移に大きく影響する。一般に、柔軟な主鎖成分は、Tを下げ、嵩高な側鎖基はTを上げ、柔軟な側鎖基の鎖長の増加はTを下げ、主鎖の極性の増大はTを上げる。さらに、架橋されたポリマー成分の存在は、所定のポリマーの観察されるTを高めることができる。たとえば、図4は、ポリマーの弾性率における温度及び架橋の影響を図解し、ポリマーにおける架橋の形成は、Tを高め、弾性反応をより高い頭打ちにシフトさせることができることを示し、ポリマーがさらにガラス質でもろくなったことを示すものである。さらに、分子量、特に、鎖端に関係する余分な空隙率が有意である低分子量はTに有意に影響することができる。
【0042】
他方、ポリマーのTは、試料を上昇する温度に暴露したとき、ポリマーにおいて最後の微量の結晶性が消失する温度である。ポリマーのTは、溶融温度(Tf)としても知られている。所定のポリマーについてTは常にTより大きい。
【0043】
と同様に、所定のポリマーの融解温度は、ポリマーの構造によって影響される。最も影響のある分子間及び分子内の構造的特徴には、構造的規則性、結合の柔軟性、最密能、及び鎖間引力が挙げられる。一般に、高い融点は、高度に規則性の構造、柔軟性のない分子、最密容量、強い鎖間引力又は2以上のこれらの因子の組み合わせに関係する。
【0044】
図3を参照して、コーティングポリマーが半結晶性のポリマーであれば、ポリマーコーティングを上昇する温度に暴露するにつれて、ポリマーは、第1の曲線60、第2の曲線62及び第3の曲線64によって表される3つの特徴的な熱転移を示す。図3は、示差走査熱量測定(DSC)法によって測定したときの、ポリマーを上昇する温度に暴露したときの半結晶性ポリマーの熱容量(吸熱対発熱)における変化を図解している。DSCは、ポリマーの熱特性を決定するために熱容量と温度の関係を基準として用い、さらに以下に記載される。
【0045】
例証として、半結晶性のポリマーを上昇する温度に暴露した場合、上昇する温度がTに達するにつれて、ポリマーの結晶性が高まり始める。T以上では、ポリマーの分子運動の増加によってポリマー鎖がさらに動き回り、さらに熱力学的に安定した関係を獲得し、それによってポリマー試料の結晶性比率が高まる。図3において、Tは、熱容量における上昇の半分が生じた(ΔCp)温度である、第1の曲線60の点Tとして示される。次いで、点Tの後、結晶性比率は急速に高まり、点Tc(第2の曲線62の頂点)で示されるポリマーのTcで最大となる。温度は上昇し続けるので、温度はポリマーの融解温度(T)に近づき、温度がポリマーの融解温度(曲線64の点T)に達するまで、結晶性比率は低下する。上で述べたように、Tは、ポリマーにおける最後の微量の結晶性が消失する温度である。結晶化の熱ΔHc及び溶融の熱ΔHfは、曲線62及び64の下面積として算出することができる。結晶化の熱及び溶融の熱は等しく、しかし、反対の記号を持たなければならない。
【0046】
どちらの温度を乾燥ポリマーコーティングを熱で処理するのに使用することができるかを決定するために、熱処理に暴露されるべきポリマーのT及び/又はTを実験的に測定すべきである。本明細書で使用するとき、「試験ポリマー」は、ポリマーのT及び/又はTを決定するために測定されるポリマーを意味する。「コーティングポリマー」は、ステントコーティングの成分として実際に塗布されるポリマーを意味する。
【0047】
コーティングポリマーの熱特性を正確に特徴付けるために、ポリマーのT及びTに影響する因子の数を考慮すべきである。特に、因子には、(1)ポリマーの構造(たとえば、側鎖基の修飾及び異なる立体規則性)、(2)ポリマーの分子量、(3)ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)、(4)ポリマーの結晶性、(5)ポリマーの熱履歴、(6)ポリマーに含まれる添加剤又は充填剤、(7)ポリマーが加熱される際に適用される圧力、(8)ポリマーにおける残留流体及び(9)ポリマーが加熱される速度が挙げられる。
【0048】
コーティングポリマーと実質的に同一であり、ポリマーコーティングの熱処理を行うのに使用される条件と実質的に同一の条件下で試験される試験ポリマーを用いて前述の因子を説明することができる。試験ポリマーはコーティングポリマーと同一の化学構造を有するべきであり、コーティングポリマーと実質的に同一の分子量及び分子量分布を有するべきである。たとえば、ポリマーがコポリマー又はホモポリマーの混合物であるならば、試験ポリマーはコーティングポリマーと実質的に同一の成分比率を有するべきである。同時に、試験ポリマーはコーティングポリマーと実質的に同一の結晶性を有するべきである。結晶性を決定する方法は本明細書に記載される。さらに、試験ポリマーを形成するのに使用される組成物は、コーティングポリマーと混合される同一の化合物(たとえば、治療剤のような添加剤)及び流体(たとえば、溶媒及び水)を含むべきである。さらに、試験ポリマーは、コーティングポリマーと同一の熱履歴を有するべきである。試験ポリマーは、たとえば、同一の溶媒、温度、湿度及び混合条件を用いるような、コーティングポリマーと同一の条件下で調製されるべきである。最後に、試験ポリマーの転移温度を決定するのに使用される加熱速度は、ポリマーコーティングの熱処理を行うのに使用される加熱速度と実質的に類似させるべきである。
【0049】
ポリマーのバルク試料を調べることによって試験ポリマーのT及びTを実験的に測定することができる。当業者によって理解されるように、標準の技法、たとえば、ポリマーの転移温度を測定するために使用される機器に伴った文書で概説されるようなものによってポリマーのバルク試料を調製することができる。
【0050】
ポリマーのT及びTを測定するのに使用することができる幾つかの方法がある。温度の関数として幾つかの基礎的な熱力学的、物理的、機械的又は電子的な特性を測定することによってT及びTを実験的に観察することができる。ガラス転移温度及び融解温度を測定する方法は、当業者により理解されており、たとえば、L.H. Sperling, Introduction to Physical Polymer Science, Wiley-Interscience, New York (3rd ed. 2001), and R.F. Boyer, in Encyclopedia of Polymer Science 及び Technology, Suppl. Vol. 2, N.M. Bikales, ed., Interscience, New York (1977)に記載されている。
【0051】
上昇する温度にポリマーを暴露したときのポリマーの膨張を測定することによりバルク試料のTを観察することができる。この過程は熱膨張計測として知られている。熱膨張計測を介してポリマーを特徴付ける2つの方法がある。方法の1つは、ポリマー試料の直線的な膨張性を測定することである。もう1つの方法は、ポリマーを液体に閉じ込め、温度が上昇するときの体積の変化を記録する体積−温度測定を行うことを含む。有機ポリマーを膨潤せず、当該温度範囲のほとんどを通してそれ自体の転移がないので、普通閉じ込める液体は水銀である。分枝鎖ポリ(酢酸ビニル)の熱膨張計測試験の代表例を図解する図5に示すように、比体積対温度として結果をプロットしてもよい。体積−温度試験におけるL字に曲がった部分が鋭くないので(熱膨張計測試験を用いたTの測定は約20〜30℃の分散を示す)、転移の下及び上の2本の直線をそれらが出会うまで外挿する。外挿した出会った点をTとする。熱膨張計測試験を介してTを測定するのに使用できる装置の代表例はディラトメータDIL402PC(ペンシルベニア州、エクストンのNetzschから入手可能)である。
【0052】
バルク試料のTを測定するのに温度法も使用することができる。2つの密接に関係する方法は、示差熱分析(DTA)及び示差走査熱量測定(DSC)である。双方の方法は、吸熱及び発熱の転移に関係するピークを生じ、熱容量の変化を示す。DTA装置の代表例は、DTA及びDSCを介した同時熱分析を提供するRheometricsSTA1500である。
【0053】
DTAにより生産することができる情報に加えて、DSC法もポリマーにおけるエンタルピーの変化(溶融熱の温度ΔHf)に関係する定量的情報を生じる。DSCは、2つの温度が均等にとどまるように変化する比率で試料及び参照にエネルギーを供給するサーボ系を使用する。DSCの出力は、平均温度に対して供給されたエネルギーをプロットする。この方法によってピーク下面積は、定量的にエンタルピーの変化に直接関係する。
【0054】
図3を参照して、Tを熱容量ΔCpの上昇の半分が生じた温度とすることができる。ΔCpにおける増加は、ポリマーの分子運動の増加に関係する。
【0055】
熱容量における変化の再生可能な結果からヒステレシスのピークのような一時的な現象を分離する方法は、変調されたDSCの使用を介して得られる。ここでは、温度ランプの上に正弦波をかける。コンピュータによるリアルタイム解析によって全体のデータだけでなく、一時的な成分及び再生可能な成分もプロットすることができる。変調されたDSC装置の代表例は、デラウエア州、キャッスルのTAインスツルメンツからのQシリーズ(商標)DSC製品ラインにおけるものである。
【0056】
を測定するための基礎技術としてDSCを使用する装置の別の代表例は、ミクロサーマルアナライザ、たとえば、TAインスツルメンツのμTA(商標)2990製品である。ミクロサーマルアナライザは、熱分析計と共に使用される原子間力顕微鏡(AFM)を有することができる。その機器を使用してAFM画像から同定される個々の試料の領域を分析することができる。μTA(商標)2990のようなミクロサーマルアナライザでは、AFMの測定ヘッドは、プログラム可能な熱源及び温度センサーとして機能する超小型プローブを含有することができる。従って、ミクロサーマルアナライザは、伝統的な熱分析の情報に類似するが顕微鏡的スケールの情報を提供することができる。たとえば、μTA(商標)2990は、トポグラフィ、相対的な熱伝導性及び相対的な熱拡散性という点で試料の画像を提供することができる。μTA(商標)2990はまた、熱プローブによる約1μmの空間解像及び通常のAFMプローブによる原子解像も提供することができる。μTA(商標)2990のそのほかの利点は、それが、常温〜約500℃に1500℃/分の加熱速度でポリマー試料を加熱することができ、それによって迅速な熱性状分析ができ(たとえば、60秒未満)、幅広い範囲の温度(たとえば、−70〜300℃)で等温的に試料を保持することができ、それによって幅広い温度範囲で熱性状分析ができるということである。
【0057】
ガラス−ゴム転移の考えは、軟化挙動に由来するので、機械的方法は、バルク試料に関するTの非常に直接的な決定を提供することができる。2つの基本的な種類の測定が普及している:静的方法、又は準静的方法及び動的方法である。非晶性ポリマー及び結晶性が100%に届かない多数の種類の半結晶性ポリマーについては、さらに複雑な方法に進む前に、応力緩和、Gehman及び/又はGlash-Berg計測が、静的測定方法を介した、新しいポリマーの温度挙動の迅速且つ安価な走査を提供する。さらに、動的機械的分光光度(DMS)又は動的機械的分析(DMA)の挙動を測定するのに用いることができる機器がある。DMA法についての装置の代表例は、ペンシルベニア州、エクストンのNetzschから入手可能なDMA242である。
【0058】
あらゆる種類のポリマー、特に自己支持性でないものの機械的スペクトルを検討する別の方法は、ねじれブレード分析(TBA)である。この場合、試料を支持するガラスブレードにポリマーを浸漬する。ブレードをねじれの動きに設定する。温度が変化するときの時間の関数としてねじれ作用の正弦衰退を記録する。ブレードは支持媒体として作用するので、絶対等級の転移は得られず、その温度及び相対的な強度のみが記録される。
【0059】
電磁気法の利用によってもポリマーのバルク試料のTを観察することができる。ポリマーにおける転移の性状分析にための電磁気法の代表例は、誘電損失(たとえば、デラウエア州、ニューキャッスルのTAインスツルメンツから利用可能なDEA2970誘電分析計を用いた)及び広幅核磁気共鳴(NMR)である。
【0060】
コーティングポリマーの厚さが極薄(たとえば、1ミクロン未満)であれば、特殊化された測定技法を利用いて少なくともバルクポリマー試料を測定することによって決定された値を持つ結果と比較し、バルクの値がポリマー層の厚さによって影響を受けていないことを裏付けることが有用であってもよい。最近、ポリマー層の厚さによってポリマーのTが影響されうることが認められているので、特殊化された技法は有用である。たとえば、研究者らは、フィルムの厚さが0.04ミクロン未満であれば、水素を不動態化したSi上のポリスチレンフィルムは、バルクの値より低いガラス転移温度を有したことを認めている。Forest et al., 薄いポリマーフィルムのTにおける遊離表面の影響、Physical Review Letters 77(10), 2002-05 (Sept. 1996)を参照のこと。
【0061】
ブリユアン光散乱(BLS)を用いて極薄フィルムのポリマーのTを測定することができる。ポリマーを基材の上にスピン成形することにより極薄フィルムを調製することができる(たとえば、ステント上でコーティングポリマーを支えるのに使用される同じ基材)。スピン装置は、たとえば、テキサス州、ガーランドのヘッドウエイリサーチ社から入手可能である。バルク試料におけるポリマーのTを見つけるのにもBLSを使用することができる。バルクポリマーのBLS試験では、バルクの長手方向の音量子の速度vを測定するが、その際、v=(C11/p)1/2であり、C11が長手方向の弾性定数であり、pは密度である。C11がpの強力な関数なので、試料温度が変化するにつれて、vの温度依存性は、熱膨張性が不連続である温度、すなわち、Tにて傾きに突然の変化を示す。薄いフィルムについては、BLSは、フィルムがガイドする音響上の音量子の観察を介して弾性特性を精査する。ガイドされた音響モードを自由に立っているフィルムについてラムモードと呼ぶ。Tの測定についてのBLSの適用のさらなる議論に関しては、Forest et al.薄いポリマーフィルムのガラス転移温度における遊離表面の影響、Physical Review Letters 77(10), 2002-05 (Sept. 1996) and Forest et al. Mater. Res. Soc. Symp. Proc. 407, 131 (1996)を参照のこと。
【0062】
3つの相補的な技法:局所熱分析、偏光解析法及びX線反射率を用いて、極薄ポリマーフィルムのTを決定することもできる。たとえば、Fryer et al., ポリマーフィルムのガラス転移温度の界面エネルギー及び厚さへの依存、Macromolecules 34, 5627-34 (2001)を参照のこと。偏光解析法(たとえば、ラドルフオートELゼロ点取得偏光解析計によって)及びX線反射率(たとえば、サイタグXDS2000によって)を用いて、フィルムの熱膨張における変化を測定することによってTを決定する。他方、局所的な熱分析を用いて、フィルムの熱容量及び熱伝導性及びプローブとプローブ表面との間の接触面積の変化を測定することによりTを決定する。
【0063】
表1は、本発明の実施態様で使用したポリマーの一部についてのTを列記する。引用した温度は、書き留めた参考文献で報告された温度であり、説明の目的のみで提供され、限定することを意味しない。
【表1】

【0064】
上で述べたように、本発明で使用するとき、「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを含み、そのランダム、交互、ブロック、架橋、混合及びグラフトの変形を含む。上述の測定方法を用いることによって、これらの種類のポリマーの幾つかについて1より多くのTを観察してもよい。たとえば、二相系を示す一部のポリマー混合物は、1より多くのTを有しうる。さらに、一部の半結晶性ポリマーは、特に高い結晶性比率を有する場合、2つのガラス転移を有しうる。Edith A. Turi, ポリマー物質の熱的性状分析、Academic Press, Orlando, FL (1981)を参照のこと。たとえば、バルク結晶化したポリエチレン及びポリプロピレンは、相対的に高い結晶性比率で2つのガラス転移温度を有しうる。2つの転移の低い方は、ゼロ結晶性にて従来のTと同一でありうるT(L)として表される。高い方の転移は、T(U)として示され、結晶性が増すにつれてさらに検出しやすくなる。差異、ΔT=T(U)−T(L)は、分画の結晶性Xがゼロに近づくにつれてゼロに近づく傾向がある。
【0065】
ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーは2つの別個のガラス転移温度を有しうるとも報告されている。これらポリマーの一部については、各Tは、母型ホモポリマーのTに近い可能性がある。以下の表2は、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーの代表例のガラス転移温度を列記する。表2によって説明されるように、これらブロックコポリマー及びグラフトコポリマーのほとんどが2つのガラス転移温度を示す。引用した温度は、Black and Worsfold, J. Appl. Polym. Sci., 18, 2307 (1974) に報告されたものであり、彼らは温度を測定するのに熱膨張技法を用いた。温度は説明のみの目的で提供される。
【表2】

【0066】
本発明の実施態様の1つでは、ポリマーが1より多くのTを示せば、観察された最低のT以上の温度にポリマーを暴露する。最低のT以上の温度にポリマーを暴露することによって、非晶性領域の少なくとも一部はその過程で改変されるので、ポリマーの放出率は測定可能な程度に低下するはずであると考えられている。別の実施態様では、ポリマーが1より多くのTを示せば、観察された最高のT以上の温度にポリマーを暴露する。最高のTにポリマーを暴露することによって、放出率の低下を最大化できると考えられている。
【0067】
上で述べたように、実施態様の1つでは、薬剤ポリマー薬剤コーティングをポリマーのT以上且つT未満の温度に暴露することができる。ポリマーのTを測定するのに使用できる幾つかの種類の方法がある。たとえば、温度の関数として、視覚的な、物理的な及び熱的な特性を測定することにより、融解温度を観察することができる。
【0068】
顕微鏡的技法を用いることにより、視覚的観察によってTを測定することができる。たとえば、直交ニコル(すなわち、プリズムとして機能する光学物質、2つの部分を通過する分離している光線、そのうち一方は反射し、他方は透過する)の間に試料を格納して顕微鏡によって、半結晶性又は結晶性のポリマーにおける結晶性の消失を観察することができる。ポリマー試料が加熱されるにつれて、結晶性材料に特徴的な鋭いX線パターンが、Tにて非晶性の後光に移行する。
【0069】
を観察する別の方法は、温度による比体積の変化を観察することである。融解は、一次相変化を構成するので、体積における不連続性が期待される。Tは、付随する鋭い融点によって、体積に不連続性を生じるはずである。しかしながら、バルク結晶化したポリマーにおける非常に小さなサイズの結晶のために、ほとんどのポリマーは数度の範囲にわたって融解する。Tは、最後の微量の結晶性が消失する温度である。これは、最大の及び/又は「完全な」結晶が融解している温度である。
【0070】
或いは、熱プローブ(たとえば、コネチカット州、ノーウォークのパーキンエルマーより入手可能)を使用する熱機械分析(TMA)を用いてTを決定することができる。熱に基づいた方法によってもTを決定することができる。たとえば、Tを決定するのに示差走査熱量測定(DSC)試験も使用することができる。Tの決定について上述したものと同じDSCの工程を用いてTを決定することができる。図3を参照して、代表的なポリマーのTは曲線64のピークである。
【0071】
表3は、本発明の実施態様で使用されたポリマーの一部のTを列記する。引用された温度は、記された参考文献で報告された温度であり、説明のみの目的で提供され、限定を意味するものではない。
【表3】

【0072】
本発明の実施態様では、熱処理工程を使用して、種々のコーティング構造を有するポリマーコーティングからの活性剤の放出率を抑えることができる。図1Aを参照して、たとえば、リザーバ層24はポリマー及び活性剤を有する。リザーバ層24からの活性剤の放出率を抑えるのに十分な温度に、リザーバ層24のポリマーを暴露することができる。実施態様の1つでは、リザーバ層24におけるポリマーをポリマーのT以上の温度に暴露する。別の実施態様では、リザーバ層24におけるポリマーを、ポリマーのT以上且つT未満の温度に暴露する。他の実施態様では、(1)ポリマーのTc、(2)ポリマーのアニーリング温度又は(3)ポリマーのTの0.9倍に等しい温度に、ポリマーを暴露する。
【0073】
熱処理工程をまた、図1Bで図解されるようなバリア層を有するコーティングに方向付けることができる。図1Bを参照して、活性剤が空洞26に堆積され、バリア層30によって覆われることができる。本発明の実施態様の1つでは、バリア層30におけるポリマーが、ポリマーのT以上の温度に暴露される。他の実施態様では、バリア層30におけるポリマーは、(1)ポリマーのT以上且つT未満、(2)ポリマーのTc、(3)ポリマーのアニーリング温度又は(4)ポリマーのTの0.9倍に等しい温度に暴露される。
【0074】
熱処理工程は、図1C及び図1Dで図解されるような少なくとも一部でバリア層30により覆われるポリマーリザーバ層24を有するポリマーコーティングを指向することができる。図1Dを参照して、リザーバ層24は任意の下塗り層32上に堆積され、バリア層30によって覆われることができる。実施態様の1つでは、リザーバ層24及びバリア層30におけるポリマーはそれぞれ同時に2つの層におけるポリマーのT以上の温度に暴露される。他の実施態様では、リザーバ層24及びバリア層30におけるポリマーは同時に、(1)ポリマーのT以上且つT未満、(2)ポリマーのTc、(3)ポリマーのアニーリング温度又は(4)ポリマーのTの0.9倍に等しい温度に暴露される。たとえば、リザーバ層24におけるポリマーがバリア層30におけるポリマーと同一の又は実質的に同一の熱特性を有していれば、リザーバ層24及びバリア層30におけるポリマーを同時に適当な温度に暴露することができる。たとえば、リザーバ層24におけるポリマーがバリア層30におけるポリマーとほぼ同一のTc又はTを有しうる。熱処理を行うのに使用される温度が各ポリマーについて選択される温度(たとえば、アニーリング温度、Tc等)を超えるのに十分に高ければ、リザーバ層24及びバリア層30におけるポリマーを同時に適当な温度に暴露することができる。
【0075】
熱処理工程を行って種々のポリマー層を選択的に処理することができる。たとえば、異なった熱特性を有するポリマーを持つ層を有するコーティングを構築することによってポリマー層を選択的に処理することができる。たとえば、図1C及び図1Dで図解されるコーティングは、リザーバ層24のポリマーがバリア層30のポリマーとは異なる熱特性を有するように構築することができる。
【0076】
実施態様の1つでは、リザーバ層24のポリマーがバリア層30のポリマーのTcより高いTcを有すれば、ポリマーコーティングは、バリア層30のポリマーのTcより高く、リザーバ層24のポリマーのTcより低い温度に暴露される。リザーバ層24のポリマーのTのアニーリング温度がバリア層30のポリマーのTのアニーリング温度より高い場合も、この工程を使用することができる。
【0077】
別の実施態様では、リザーバ層24のポリマーがバリア層30のポリマーのTcより低いTcを有すれば、ポリマーコーティングは、リザーバ層24のポリマーのTcより高く、バリア層30のポリマーのTcより低い温度に暴露される。リザーバ層24のポリマーのTのアニーリング温度がバリア層30のポリマーのTのアニーリング温度より低い場合も、この工程を使用することができる。
【0078】
さらに別の実施態様では、ポリマーからの活性剤の拡散率がコーティングの種々の部分で異なるように、ステントの特定の部分にのみ又は特定の持続時間にのみ、熱源を方向付けることができる。図1Eを参照して、たとえば、バリア層30Bのポリマー材料を熱処理に暴露するが、バリア層Aのポリマー材料は暴露しない。その結果、バリア層Bのポリマー材料からの活性剤の放出率を、バリア層Aのポリマー材料からの活性剤の放出率よりも低くすることができる。たとえば、バリア層30Bのポリマーはバリア層30Aのポリマー材料よりも高い結晶性比率を有するので、放出率の差異が生じうる。
【0079】
別の例では、埋め込み型用具は、埋め込み型用具の縦軸に沿って、2以上の区分、たとえば、第1区分、第2区分及び第3区分を有することができる。焼灼器チップを用いて、実質的に第1区分及び第3区分でのみ放射線を向ければよい。或いは、第1区分及び第3区分について放射線を高く設定すればよい、又は第2区分よりも第1区分及び第3区分に長い持続時間、放射線を向ければよい。その結果、第1区分及び第3区分の沿ったポリマーは、第2区分沿ったポリマーよりも高い結晶性比率を有する。従って、第1区分及び第3区分に沿ったポリマーマトリクスからの活性剤の拡散率は、第2区分に沿った拡散率よりも少なくなる。実施態様の1つでは、第1区分及び第3区分はステントの向き合った末端部分にあり、第2区分はステントの中間部分である。
【0080】
暴露温度は、コーティングに存在する活性剤の特徴に有害な影響を与えるべきではない。コーティング中の活性剤又はポリマーの分解の可能性を防ぐために、コーティング工程の前、又はその最中に、添加剤をポリマーに混合してポリマーの温度プロフィールを移動することができる(すなわち、ポリマーのT及びTを下げる)。たとえば、普通、低分子量の非揮発性分子である可塑剤を、塗布工程の前にポリマーと共に溶解することができる。可塑剤は活性剤であることができる。添加剤の代表例は、フタル酸ジオクチルである。
【0081】
熱処理の選択される持続時間は、そのほかの因子の間で、選択された暴露温度、コーティング中のポリマーの熱特性、活性剤の熱安定性及び所望の放出率に依存することができる。たとえば、熱処理の持続時間は、約30秒〜約7時間であることができる。一例として、EVAL及びアクチノマイシンDを有するコーティングの熱処理においてポリマーは、約473°Kの温度に約2分間、又は約353°Kの温度に約2時間、暴露することができる。
【0082】
別の実施態様では、コーティング中のポリマーが半結晶性であれば、コーティングの厚さ全体を通して結晶性比率が最大にならないようにコーティングを放射線に暴露する時間を限定することができる。言い換えれば、コーティングの浅い領域は深い領域よりも高い結晶性比率を有する。コーティングの深さの関数として、結晶性の程度は減少する。特定の例では、熱処理を制御することにより、コーティングが、最深として第4の領域を持つ、4つの領域を有すると定義されれば、第1の領域又は最浅の領域がさらに高い結晶性比率を有し、第2、第3の領域が続き、最後に最低の結晶性を有する第4の領域が続く。当業者の1人は、暴露の持続時間及び温度がポリマーを通した活性剤の所望の拡散率及びコーティング中に使用されるポリマーの固有の特徴に依存することを理解するであろう。
【0083】
〈埋め込み型用具の滅菌〉
本発明の種々の実施態様に従って埋め込み型用具をコートした後、種々の方法によって埋め込み型用具を滅菌することができる。本発明の実施態様では、コーティングを滅菌するのに使用される特定の手段を用いて熱処理工程を行うことができる。たとえば、電子ビーム又はガス滅菌の手段を用いて熱処理工程を行い、ステント上に形成されているコーティングを滅菌することができる。ガス滅菌手段の代表例には、エチレンオキシド、蒸気/オートクレーブ、過酸化水素及び過酢酸を用いるものが挙げられる。工程の間生産される温度がポリマーコーティングからの活性剤の放出率を低下させるのに十分であるように、滅菌工程を改変することができるが、活性剤を有意に分解しない。たとえば、電子ビーム滅菌については、暴露温度は、コーティング材料の用量、線量率、熱容量、及び生成物の絶縁の程度の少なくとも関数である。コーティングが適当な温度に暴露されるようにこれらの変数を調整することができる。
【0084】
〈活性剤を含有するコーティングを形成〉
所定の量のポリマーを所定の量の相溶性の溶媒に加えることにより、先ずポリマー溶液を形成することによって活性剤を含有する組成物を調製することができる。「溶媒」は、組成物成分と相溶性であり、組成物において所望される濃度で成分を溶解することが可能である液体の物質又は組成物として定義される。
【0085】
大気圧にて、無水の雰囲気下でポリマーを溶媒に加えることができる。必要に応じて、穏やかな加熱、撹拌及び/又は混合を採用して、たとえば、約60℃の温水浴で12時間で、溶媒へのポリマーの溶解を達成することができる。
【0086】
次いで、ポリマー及び溶媒の混合組成物にて十分量の活性剤を分散することができる。活性剤が真の溶液を形成するように、又は混合組成物中で飽和になるように、活性剤をポリマー溶液と混合することができる。活性剤が組成物に完全に可溶性でなければ、混合、撹拌及び/又は激しい撹拌を含む操作を採用して残余の均質性を達成することができる。ポリマー組成物と混合する前に、活性剤をさらに迅速に溶解することが可能である溶媒に先ず、活性剤を加えることもできる。分散が微粒子状であるように活性剤を加えることもできる。
【0087】
ポリマーは、組成物の合計重量の約0.1重量%〜約35重量%、さらに狭くは約0.5重量%〜約20重量%を構成することができ、溶媒は、組成物の合計重量の約59.9重量%〜約99.8重量%、さらに狭くは約79重量%〜約99重量%を構成することができ、及び活性剤は、組成物の合計重量の約0.1重量%〜約40重量%、さらに狭くは約1重量%〜約9重量%を構成することができる。ポリマーと溶媒の特定の重量比の選択は、たとえば、用具が作製される材料、用具の幾何学的構造、採用される活性剤の種類及び量、並びに所望の放出率のような、しかし、これらに限定されない因子に依存する。
【0088】
リザーバ層について活性剤と組み合わせることができるポリマーの代表例には、EVAL;ポリ(メタクリル酸ブチル);ビニルモノマー同士及びオレフィンとのコポリマー、たとえば、エチレンメチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレン酢酸ビニルコポリマー;ポリ(ヒドロキシバレレート);ポリ(L−乳酸);ポリ(ε−カプロラクトン);ポリ(ラクチド−co−グリコリド);ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート);ポリジオキサン;ポリオルソエステル;ポリ無水物;ポリ(グリコール酸);ポリ(D,L−乳酸);ポリ(グリコール酸−co−炭酸トリメチレン);ポリホスホエステル;ポリホスホエステルウレタン;ポリ(アミノ酸);シアノアクリレート;ポリ(炭酸トリメチレン);ポリ(イミノカーボネート);コポリ(エーテル−エステル)(たとえば、PEO/PLA);ポリアルキレンオキサレート;ポリホスファゼン;たとえば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸のような生体分子;ポリウレタン;シリコーン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレートとエチレンαオレフィンのコポリマー;アクリル系ポリマー及びコポリマー;ポリ塩化ビニルのようなビニルハロゲン化物ポリマー及びコポリマー;ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル;ポリフッ化ビニリデン及びポリ塩化ビニリデンのようなポリビニリデンハロゲン化物;ポリビニルケトン;ポリスチレンのようなポリビニル芳香族化合物;ポリ酢酸ビニルのようなポリビニルエステル;ナイロン66及びポリカプロラクタムのようなポリアミド;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂;ポリウレタン;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;酢酸セルロース;酪酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル;及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0089】
EVALは、機能的に、ポリマーの非常に好適な選択である。EVALコポリマーは、エチレン及びビニルアルコールモノマー双方の残基を含むコポリマーを言う。当業者は、少量の追加のモノマー、たとえば、約5モル%未満のスチレン、プロピレン又はそのほかの好適なモノマーを含めるように、エチレンビニルアルコールコポリマーがターポリマーであってもよいことを理解する。エチレンビニルアルコールコポリマーは、たとえば、ウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチケミカルカンパニー又はイリノイ州、ライルのEVALカンパニーオブアメリカのような会社から市販されており、又は、当業者に周知の従来の重合法によって調製することができる。
【0090】
EVALのコポリマーは、活性剤の放出率の良好な制御能を可能にする。原則として、エチレンコモノマー含量の増加は、活性剤がコポリマーマトリクスから放出される比率を低下させる。活性剤の放出率は通常、コポリマーの親水性が低下するにつれて、低下する。特にビニルアルコールの含量が付随して低下するとき、エチレンコモノマー含量の増加はコポリマーの全体的な疎水性を高める。放出率及び放出される活性剤の累積量は、コポリマーマトリクスにおける活性剤の最初の総含量に直接比例するとも考えられている。従って、エチレンコモノマー含量及び活性剤の最初の量を改変することによって幅広いスペクトルの放出率を達成することができる。
【0091】
ポリ(メタクリル酸ブチル)(「PBMA」)及びエチレン−酢酸ビニルコポリマーも特に好適な、リザーバ層用のポリマーでありうる。実施態様の1つでは、リザーバのコーティングにおけるポリマーはPBMAとエチレン−酢酸ビニルコポリマーの混合物である。
【0092】
溶媒の代表例には、クロロホルム、アセトン、水(緩衝された生理食塩水)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコールメチルエーテル(PM)、イソ−プロピルアルコール(IPA)、n−プロピレンアルコール、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、ブタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、2−ブタノン、シクロヘキサノン、ジオキサン、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、ホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,1,1−トリフルオロエタノール及びヘキサメチルホスホルアミド、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0093】
活性剤は、本発明の実践において治療効果又は予防効果を発揮することが可能であるいかなる物質であってもよい。そのような活性剤の例には、増殖抑制物質、抗腫瘍物質、抗炎症物質、抗血小板物質、抗凝固物質、抗フィブリン物質、抗血栓物質、有糸分裂抑制物質、抗生物質、及び抗酸化物質並びにこれらの組み合わせが挙げられる。増殖抑制物質の例は、アクチノマイシンD又はその誘導体及び類縁体(ウィスコンシン州53233、ミルウォーキー、ウエストセントポール通り1001のシグマ−アルドリッチにより製造される、又はメルクから入手可能なコスメゲン)である。アクチノマイシンDの同義語には、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、及びアクチノマイシンCが挙げられる。抗腫瘍剤の例にはパクリタキセル及びドセタキセルが挙げられる。抗血小板剤、抗凝固性剤、抗フィブリン剤、及び抗血栓性剤の例には、アスピリン、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類縁体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗血栓剤)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗剤、組換えヒルジン、トロンビン阻害剤(バイオゲンから入手可能)及び7E−3B(登録商標)(セントコールの抗血小板剤)が挙げられる。有糸分裂抑制剤の例には、メソトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、アドリアマイシン及びムタマイシンが挙げられる。細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤の例には、アンギオペプチン(イブセンのソマトスタチン類縁体)、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、たとえば、カプトプリル(スクイブから入手可能)、シラザプリル(ホフマン・ラ・ロシュから入手可能)又はリシノプリル(たとえば、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーションのメルク社から入手可能);カルシウムチャンネル遮断剤(たとえば、ニフェジピン)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗剤、ヒスタミン拮抗剤、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素の阻害剤、メルク社のコレステロール低下剤)、モノクローナル抗体(たとえば、PDGF受容体)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤(グラゾから入手可能)、セラミン(PDGF拮抗剤)、セロトニン遮断剤、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗剤)及び酸化窒素が挙げられる。適当であってもよいそのほかの治療物質又は治療剤には、α−インターフェロン、遺伝子操作を施した上皮細胞、デキサメタゾン、エストラジオール、プロピオン酸クロベタゾール、シスプラチン、インスリン増感剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤及びカルボプラチンが挙げられる。組成物の活性剤への暴露が活性剤の組成又は特徴を有害に変えるべきではない。従って、混合された組成物との相溶性について特定の活性剤を選択する。
【0094】
ラパマイシンは活性剤の非常に好適な選択でありうる。さらに、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン又はその機能的類縁体又はその構造的誘導体は、活性剤の特に機能的な選択でありうる。40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの化学構造は以下のとおりである。
【化1】

40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの類縁体又は誘導体の例には、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン及び40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、細胞質のイムノフィリンFKBP12に結合し、T細胞及び血管平滑筋細胞を含む、増殖因子に由来する細胞の増殖を阻害する。初期のT細胞特異的な遺伝子の転写活性を遮断するタクロリムスやシクロスポリンのようなそのほかの免疫抑制剤に比べて、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの作用は、細胞周期の後期(すなわち、G1期)に生じる。40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは強力な増殖抑制剤として作用するので、ステントのようなポリマーをコートした埋め込み型用具から局所の治療部位に送達されることによって40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは再狭窄を治療するのに有効な作用剤でありうると考えられている。
【0096】
種々の方法及び本明細書に記載されるようなコーティングによって40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出率を有利に制御することができる。特に、本発明の方法及びコーティングを使用することによって、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン又はその類縁体若しくは誘導体の放出率を24時間で約50%未満にすることができる。
【0097】
40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンをリザーバ層用のポリマーと混合する場合、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン又はその類縁体若しくは誘導体とリザーバ層におけるポリマーとの重量比は約1:2.8〜約1:1でありうる。リザーバ層中の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン又はその類縁体若しくは誘導体は、約50μg〜約500μg、さらに狭くは、約90μg〜約350μgの量であり、ポリマーは約50μg〜約1000μg、さらに狭くは約90μg〜約500μgの量でありうる。
【0098】
治療効果を生じるのに必要とされる活性剤の投与量又は濃度は、活性剤が望ましくない毒性効果を生じるレベルよりも少なく、且つ治療効果が得られないレベルよりも多くすべきである。血管領域の所望の細胞性の活性を抑制するのに必要とされる活性剤の投与量又は濃度は、たとえば、患者の特定の状況、外傷の性質、所望の治療の性質、投与された成分が血管部位にとどまる時間、他の生物活性のある物質が採用される場合、その物質の種類又は物質の組み合わせのような因子に依存しうる。治療上有効な投与量は、経験的に、たとえば、好適な動物モデル系の血管に注入し、免疫組織学的方法、蛍光法又は電子顕微鏡法を用いて作用剤及びその効果を検出することによって、又は好適な試験管内試験を行うことによって決定することができる。投与量を決定するための標準的な薬学試験は当業者に理解されている。
【0099】
〈放出率を抑えるためのバリア層の形成〉
一部のコーティングでは、活性剤の放出率が高すぎて臨床的に有用でない可能性がある。たとえば、以下の実施例22に示すように、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンについては、ブタ血清の放出率法で測定した場合、24時間でバリア層なしのステントコーティングから放出された40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの比率は58.55%だった。実施例22のコーティングからの放出率は、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを活性剤として用いる治療にとって高すぎる可能性がある。バリア層は、放出率を抑えることができ、又は活性剤がリザーバ層から放出される時を遅らせることができる。
【0100】
実施態様の1つに従って、バリア層をリザーバ層の選択された領域に塗布して比率低減部材を形成することができる。熱処理の前に又はそれに続いて、バリア層をリザーバ層に塗布することができる。バリア層用の組成物は実質的に活性剤を含まない。或いは、最大限の血液適合性については、たとえば、ポリエチレングリコール、ヘパリン、疎水性の対イオンを有するヘパリン誘導体又はポリエチレンオキシドのような化合物は、バリア層に添加することができ、又はバリア層の上に配置することができる。
【0101】
バリア層のためのポリマーの選択は、リザーバ層のための選択されたポリマーと同一でありうる。一部の実施態様で記載されるように、同一ポリマーの使用は、2つの異なったポリマー層の採用では存在する可能性がある接着性の欠如のような界面の非適合性を有意に減らす又は除く。
【0102】
バリア層に使用できるポリマーには、リザーバ層のために上で列記した例が挙げられる。バリア層用のポリマーの代表例には、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエラストマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、フルオロエチレン−アルキルビニルエーテルコポリマー、ポリヘキサフルオロプロピレン、高分子量を有する低密度直鎖ポリエチレン、エチレン−オレフィンコポリマー、アタクチックポリプロピレン、ポリイソブテン、ポリブチレン、ポリブテン、スチレン−エチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、及び低メタクリル酸含量のスチレンメタクリル酸コポリマーも挙げられる。
【0103】
EVALは、バリア層用ポリマーの機能的に非常に好適な選択である。コポリマーは約27%〜約48%のモル%のエチレンを含むことができる。フルオロポリマーもバリア層組成物への好適な選択である。たとえば、フッ化ポリビニリデン(さもなければ、KYNARとして知られ、ペンシルベニア州、フィラデルフィアのATOFINAケミカルから入手可能)をアセトン、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド及びシクロヘキサノンに溶解し、適宜、EVALと組み合わせてバリア層組成物を形成することができる。また、フルオロポリマー、特に旭硝子から入手可能なCYTOP及びデュポンから入手可能なTEFLON AFのような低結晶性の種類の溶液加工も可能である。たとえば、非極性で低沸点の溶媒であるFC75(商品名FLUORINERTのもと3Mから入手可能)のようなパーフルオロ溶媒中で約15%(wt/wt)までの溶液が可能である。そのような揮発性によって、埋め込み型用具へのポリマー−溶媒溶液の塗布に続いて、溶媒を容易に且つ迅速に蒸発させることができる。
【0104】
ポリ(メタクリル酸ブチル)(「PBMA」)及びエチレン−酢酸ビニルコポリマーもバリア層にとって特に好適なポリマーであることができる。実施態様の1つでは、バリア層にポリ(メタクリル酸ブチル)(「PBMA」)を用いることができる。たとえば、キシレン、アセトン及びHIFE FLUX REMOVER(テキサス州、アマリロ、テクスプレー)の溶液にPBMAを溶解することができる。別の実施態様では、バリア層のポリマーは、PBMA及びエチレン−酢酸ビニルコポリマーの混合物である。
【0105】
バリア層はまた、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマーであることもできる。たとえば、トルエン、キシレン及びデカリンのような、しかし、これらに限定されない非極性溶媒にスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマー、たとえば、KratonGシリーズを溶解することができる。
【0106】
律速膜のためのポリマーのそのほかの選択には、エチレン無水物コポリマー及び、たとえば、約2%〜約25%のモル%のアクリル酸を有するエチレン−アクリル酸コポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。ビネルから入手可能なエチレン無水物コポリマーは、EVALによく接着するので、EVALで出来たリザーバ層の上でバリア層として上手く機能する。ジメチルスルホキシド及びジメチルアセトアミドのような有機溶媒にコポリマーを溶解することができる。トルエン及びn−ブチルアセトンのような有機溶媒にエチレン酢酸ビニルコポリマーを溶解することができる。メタノール、イソプロピルアルコール及びジメチルスルホキシドのような有機溶媒にエチレン−アクリル酸コポリマーを溶解することができる。
【0107】
律速膜のためのポリマーのさらに別の選択は、架橋されたシリコーンエラストマーである。粘着性のないシリコーン及び架橋性が極めて低いシリコーンは炎症性の生物反応の原因になると考えられている。しかしながら、溶出型のシリコーンポリマー及びオリゴマーを低レベルで有する十分に架橋されたシリコーンエラストマーは本質的に非炎症性物質であると考えられている。たとえば、1200〜1500psiの間の引っ張り強度を有するヌシル、MED−4750、MED−4755又はMED2−6640のようなシリコーンエラストマーは、ステントの折り曲げ、送達及び拡張の間、最良の耐久性を有すると共に、たとえばEVALのようなリザーバ層又は埋め込み型用具の表面への良好な接着性を有する可能性が高い。
【0108】
上述のようなポリマー溶液を調製するのに使用される方法によって、率低減膜又は拡散バリア層のための組成物を調製することができる。ポリマーは、組成物全重量の約0.1〜約35重量%、さらに狭くは約1〜約20重量%を構成することができ、溶媒は、組成物全重量の約65〜約99.9重量%、さらに狭くは約80〜約98重量%を構成することができる。ポリマーと溶媒の特定の重量比の選択は、たとえば、採用されるポリマー及び溶媒の種類、下にあるリザーバ層の種類及び塗布方法のような、しかし、これらに限定されない因子に依存する。
【0109】
〈下塗り層の形成〉
ポリマーマトリクスにおける活性剤の存在は、用具表面に効果的に接着するマトリクスの能力を妨害することができる。活性剤の量の増加によって接着の有効性は低下する。コーティングにおける薬剤の高い負荷は、用具の表面におけるコーティングの保持を妨げることができる。下塗り層は、用具の表面と活性剤を含有するコーティング又はリザーバコーティングとの間の機能的に有用な中間層として作用する。下塗り層は、リザーバコーティングと用具との間に接着性を提供し、それは、実際、用具の送達、及び適用可能であれば、拡張の間、用具上に効果的に含有されるべきリザーバコーティングの能力を危うくすることなく、リザーバコーティング中で増加させるべき活性剤の量を可能にする。
【0110】
下塗り層に好適なポリマーの代表例には、ポリイソシアネート、たとえば、トリイソシアネート及びポリイソシアネート;ジフェニルメタンジイソシアネートに基づくポリウレタン;アクリレート、たとえば、エチルアクリレートとメタクリル酸のコポリマー;チタネート、たとえば、テトライソプロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネート;ジルコネート、たとえば、n−プロピルジルコネート及びn−ブチルジルコネート;シランカップリング剤、たとえば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び(3−グリジドキシプロピル)メチルジエトキシシラン;高アミノ含量ポリマー、たとえば、ポリエチレンアミン、ポリアリルアミン及びポリリジン;高含量の水素結合基を持つポリマー、たとえば、ポリエチレン−co−ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル及びメラミンホルムアルデヒド;並びに不飽和ポリマー及びプレポリマー、たとえば、ポリカプロラクトンジアクリレート、少なくとも2つのアクリレート基を持つポリアクリレート及びポリアクリレート化ポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。当業者に理解されるように、不飽和のプレポリマーの使用によって、熱又はUVで硬化する又は架橋する工程のための組成物に遊離のラジカル又はUV開始剤を添加することができる。
【0111】
下塗り材料に使用できるポリマーの代表例には、上述のようなリザーバ層に使用できるそれらのポリマーも挙げられる。同一ポリマーの使用は、異なった2つのポリマー層を採用すると存在する可能性がある、接着性の関係又は結合の欠如のような界面の不適合性を有意に低減する又は除く。
【0112】
EVALは、下塗り層用のポリマーの非常に好適な選択である。コポリマーは、ステントの表面、特にステンレス鋼の表面への良好な接着性を持ち、ステントの表面からのコポリマーのいかなる有意な脱離もなしでステントと共に拡張する能力を例証している。
【0113】
一例として、ポリマーは、組成物全重量の約0.1〜約35重量%、さらに狭くは約1〜約20重量%を構成することができ、溶媒は、組成物全重量の約65〜約99.9重量%、さらに狭くは約80〜約98重量%を構成することができる。特定の重量比は、埋め込み型用具が作製される材料、用具の幾何学的構造、ポリマー−溶媒の組み合わせの選択及び塗布方法のような因子に依存する。
【0114】
EVAL、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)等のような下塗り用の熱可塑性ポリマーの使用によって、堆積された下塗り組成物を選択されたポリマーのTより高く且つT未満の範囲の温度で熱処理に暴露することができる。この処理は、ポリマーと溶媒の実際の組成物に対して行われる。下塗りコーティングの乾燥後の時間でコーティングが生じる又は広がったとき、熱処理を終了することができる。或いは、ポリマーが乾燥形態である場合、溶媒の蒸発後に処理を行うことができる。この温度範囲のもとで、組成物の熱処理と共に、予期しない結果、特に、ステントの金属表面へのコーティングの強い接着又は結合が発見されている。用具の表面での下塗りコーティングの形成が可能であるいかなる好適な持続時間でも熱処理に用具を暴露すべきである。
【0115】
表4は、任意の下塗り層に使用することができるポリマーの一部に関するT及びTを列記する。暴露について引用した例示の温度及び時間は、説明の目的で提供されたものであり、限定を意味するものではない。
【表4】

下塗り層のポリマーがポリマーの組み合わせ又は混合物であるのならば、そのときは、前述のように選択される温度を決定する。たとえば、下塗りがEVALとポリビニルアルコールの混合物であれば、DSC法を用いて混合物のTを算出することができる。
【0116】
〈仕上げ層の形成〉
リザーバ層又はバリア層に使用されるポリマーに依存して、患者に挿入された場合、生体内腔に暴露されるコーティングの表面に、特に生体適合性である仕上げ層を形成することが有利であってもよい。熱処理に続いて、コーティングの表面上に仕上げ層を形成することができる。仕上げ層のための生体適合性ポリマー又は生体適合性作用剤の代表例には、EVAL、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン、ヘパリン、疎水性対イオンを有するもののようなヘパリン誘導体及びホスフィルコリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
〈組成物を用具に塗布する方法〉
先ず、任意の下塗り組成物をステントに塗布することができる。従来のいかなる方法、たとえば、人工装具上に組成物をスプレーすることによって、又は組成物に人工装具を浸漬することによって、組成物を塗布することができる。さらに均一なコーティングを達成するために、ぬぐうこと、遠心、吹きつけ、又はそのほかのウエブクリーニング行為のような操作も行うことができる。手短に言えば、ぬぐうことは、ステントの表面からの過剰なコーティングの物理的な除去を言い;遠心は、回転の軸についてのステントの高速回転を言い;吹きつけは、堆積したコーティングへの選択された圧力での空気の適用を言う。過剰なコーティングを用具の表面から吸い取ることもできる。
【0118】
下塗り層の塗布の後、リザーバ層の組成物の塗布の前に、ステント上の組成物における溶媒を除くべきである。溶媒を蒸発させるか、又は所定の温度で所定の時間、用具を加熱することによって蒸発を誘導することができる。たとえば、約60℃の温度にて約10分間〜約24時間、用具を加熱することができる。無水の雰囲気で大気圧にて加熱を行うことができ、加熱は活性剤に有害な影響を与える温度を超えるべきではない。加熱は減圧下でも行うことができる。
【0119】
用具の下塗りコーティング又は表面の指定された領域に、活性剤を含有する組成物を塗布することができる。下塗り層について上で述べたように、溶媒を蒸発させる又はステントを加熱することによって溶媒を組成物から除くことができる。
【0120】
溶媒の蒸発及び活性剤含有コーティングのポリマーの乾燥に続いて、活性剤含有コーティングの指定された領域上で拡散バリア層を形成することができる。或いは、ポリマーのリザーバコーティングが採用されない実施態様では、人工装具の表面の範囲内で活性剤を含有する空洞の上に直接、率低減膜を形成することができる。拡散バリア層の形成について上述の工程を同様に繰り返すことができる。
【0121】
コーティング工程によっては、溶媒を除くのに使用された加熱乾燥工程の後、残留する水及び酸素が残る可能性がある。たとえば、60%の相対湿度のコーティング環境で生じるコーティング工程の後、EVALによるコーティングは約2%の水の残留含量(w/w)を有することができる。これらの残留成分は、前もって除かれないと、熱処理工程の間、ポリマーと有害に反応する可能性がある。ステントを有利に加工して、コーティング工程の間、組成物によって吸収された可能性がある水及び酸素を本質的にすべて除くことができる。たとえば、ステントをデシケータに入れ、次いで対流式オーブンで加熱し、残留する水を除くことができる。熱処理工程を受ける前にステントを真空オーブン又はガスチャンバーに入れることもできる。ガスチャンバーを使用するのであれば、コーティング中の水及び遊離の酸素を除くことができる窒素又はアルゴンのような不活性ガスを提供するガス源とチャンバーを連通することができる。残留水を除く工程に必要とされる持続時間は、カール・フィッシャー試験又はTGA試験によって決定することができる。
【0122】
〈用具の例〉
本発明のための医療用具の例には、自己拡張可能なステント、バルーン拡張可能なステント、ステント移植片、移植片(たとえば、大動脈移植片)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカーの電極、及び心内膜のリード(たとえば、カリフォルニア州、サンタクララのガイダント社より入手可能なフィネリン及びエンドタック)が挙げられる。用具の下に置く構造は、事実上、いかなる設計のものでもよい。用具は、たとえば、コバルトクロム合金(エルギロイ)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、たとえば、バイオドゥール108、コバルトクロム合金、L−605、「MP35N」、「MP20N」、エラスチナイト(ニチノール)、タンタル、ニッケルチタン合金、白金イリジウム合金、金、マグネシウム又はそれらの組み合わせのような、しかし、これらに限定されない金属材料又は合金から作製することができる。「MP35N」及び「MP20N」は、ペンシルベニア州、ジェンキンタウンのスタンダードプレススチール社から入手可能なコバルト、ニッケル、クロム及びモリブデンの合金の商標名であり、「MP35N」は、35%のコバルト、35%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンから成り、「MP20N」は、50%のコバルト、20%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンから成る。生体吸収性又は生体安定性のポリマーから作製される用具も本発明の実施態様と共に使用すればよい。
【0123】
本発明の実施態様は、小血管用ステントのコーティングに特に有用であってもよい。小血管用ステントは一般に拡張状態で内径2.5mm未満を有するとして類別される。その小さなサイズのために、小血管用ステントは薬剤送達について独特の課題を提供する。特に、従来のサイズのステントに比べて、小血管用ステントはさらに大きな表面:体積比を有する。従って、小血管用ステントが生体内腔に挿入された場合、小血管用ステントを取り囲む血管組織は、さらに高い濃度のポリマーに暴露される。ステント構造上に必要とされるポリマーの量を減らす一方で、効果的な放出率を維持するために本発明を使用することができる。従って、本発明は、小血管において薬剤送達用具として小型ステントが使用された場合、血管組織による炎症反応のリスクを軽減することができる。
【0124】
〈使用方法〉
上述の方法に従って、活性剤を用具、たとえば、ステントに塗布し、送達の間、ステント上で保持し、所望の制御率で、所定の持続時間、埋め込み部位にて放出することができる。上述のコーティング層を有するステントは、一例として、胆管、食道、気管/気管支及びそのほかの生体通路において腫瘍により生じた閉塞の治療を含む、種々の医療処置に有用である。上述のコーティング層を有するステントは、平滑筋細胞の異常な又は不適当な移動及び増殖、血栓及び再狭窄により生じた血管の閉塞領域を治療するのに特に有用である。ステントを多様な血管、動脈及び静脈の双方に留置してもよい。部位の代表例には、腸骨動脈、腎臓動脈及び冠状動脈が挙げられる。
【0125】
簡単に言えば、先ず、血管造影を行ってステント療法の適当な位置取りを決定する。血管造影法は通常、X線を当てながら、動脈又は静脈に挿入したカテーテルを介して放射線不透過性の造影剤を注射することによって達成される。次いで、治療病変又は治療の提案部位にガイドワイヤを進める。ガイドワイヤの上に送達カテーテルが通し、それが、通路に挿入されるべき折りたたんだ構成のステントを運ぶ。送達カテーテルは、経皮的に又は外科処置のいずれかで、大腿動脈、上腕動脈、大腿静脈、又は上腕静脈に挿入され、蛍光透視の案内のもとで、循環器系を介してカテーテルを操縦することによって、適当な血管に進められる。次いで、治療の所望領域にて、上述のコーティング層を有するステントを拡張してもよい。挿入後の血管造影を利用して適当な位置取りを確認してもよい。
【実施例】
【0126】
本発明の実施態様を以下の述べる実施例によって説明する。
【0127】
〈実施例1〉
98%(w/w)ジメチルアセトアミド中のポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)(44モル%エチレン)(「EVAL」)の2%溶液をスプレーすることにより、35 13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。68.2%(w/w)のジメチルアセトアミドと29.2%(w/w)のエタノールの混合物中の1.9%(w/w)EVALと0.7%(w/w)40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液を、各ステント上で175μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの目標での厚さに、ステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。76%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの4%(w/w)溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0128】
選択した数のステントを分析して、目標のコーティング処方を最終的なコーティング処方と比較した。結果は以下のとおりである。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、43±3μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:2.857、リザーバコーティング全体の目標の乾燥重量は675μgであり、実際の平均乾燥重量は、683±19μgだった。リザーバ層についてはまた、実施例2に記載する工程によってステントコーティング中の平均薬剤総含量を決定した。平均薬剤含量は、cm当たり133μg又は152μgだった。バリア層については、ポリマーの目標乾燥重量は300μgであり、測定された平均乾燥重量は、320±13μgだった。
【0129】
〈実施例2〉
薬剤をコートしたステントを容量フラスコに入れた。適当量の抽出溶媒アセトニトリルを保護剤としての0.02%BHTと共に加えた(たとえば、10mLの容量フラスコ中、9mLの溶媒を加えた)。リザーバ領域から薬剤をすべて抽出するのに十分な時間、フラスコを超音波処理した。次いで、フラスコの溶液が溶媒溶液でマークまで満たされた。HPLCにより薬剤溶液を分析する。HPLCシステムは、分析ポンプ、カラム区分(40℃に設定)、自動試料採取装置及び996PDA検出器を備えたウォーターズ2690システムから成った。カラムは40℃の温度に維持されたYMCProC18(150mmx4.6I.D.粒子サイズ3μm)であった。移動相は、75%アセトニトリル及び25%の20mM酢酸アンモニウムから成った。流速は、1mL/分に設定した。参照標準と結果を比較することによりHPLC放出率の結果を定量した。次いで、ステントの薬剤総含量を算出した。
【0130】
〈実施例3〉
EVALの2%溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、34 13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。67.9%(w/w)のジメチルアセトアミドと29.1%(w/w)のエタノールの混合物中の1.9%(w/w)EVALと1.1%(w/w)40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液を、各ステント上で275μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの目標での厚さに、ステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。76%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの4%(w/w)溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0131】
選択した数のステントを分析して、目標のコーティング処方を最終的なコーティング処方と比較した。結果は以下のとおりである。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、43±3μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1.75、リザーバコーティング全体の目標の乾燥重量は757μgであり、実際の平均乾燥重量は、752±23μgだった。リザーバ層についてはまた、実施例2に記載する工程によってステントコーティング中の平均薬剤総含量を決定した。平均薬剤含量は、cm当たり205μg又は235μgだった。バリア層については、ポリマーの目標乾燥重量は200μgであり、測定された平均乾燥重量は、186±13μgだった。
【0132】
〈実施例4〉
EVALの2%溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、24 13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。67.8%(w/w)のジメチルアセトアミドと29.1%(w/w)のエタノールの混合物中の1.9%(w/w)EVALと1.2%(w/w)40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液を、各ステント上で325μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの目標での厚さに、ステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。76%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの4%(w/w)溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0133】
選択した数のステントを分析して、目標のコーティング処方を最終的なコーティング処方と比較した。結果は以下のとおりである。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、41±2μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1.6、リザーバコーティング全体の目標の乾燥重量は845μgであり、実際の平均乾燥重量は、861±16μgだった。リザーバ層についてはまた、実施例2に記載する工程によってステントコーティング中の平均薬剤総含量を決定した。平均薬剤含量は、cm当たり282μg又は323μgだった。バリア層については、ポリマーの目標乾燥重量は125μgであり、測定された平均乾燥重量は、131±9μgだった。
【0134】
〈実施例5〉
本実施例5は、「放出率特性試験法」と呼ばれる。バンケルバイオ−ディス放出率テスタ(ノースカロライナ州、カリーのバンケル社)のステントホルダに、薬剤をコートしたステントを入れた。1%トリトンX−100(シグマ社)と共にリン酸緩衝液生理食塩水溶液(10mM、pH7.4)を含む、試験溶液中で40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを安定化する人工媒体に、指定された時間量(たとえば、3時間)ステントを浸漬した。次いで、HPLC法を用いて、ステントコーティングから放出された薬剤の量について溶液を分析した。HPLCシステムは、分析ポンプ、カラム区分(40℃に設定)、自動試料採取装置及び996PDA検出器を備えたウォーターズ2690システムから成った。カラムは40℃の温度に維持されたYMCProC18(150mmx4.6I.D.粒子サイズ3μm)であった。移動相は、75%アセトニトリル及び25%の20mM酢酸アンモニウムから成った。流速は、1mL/分に設定した。薬剤溶液をHPLCで分析した後、参照標準とHPLC放出率の結果を比較することにより結果を定量した。
【0135】
実験プロトコールにより、ステントが追加の時間実験条件の対象とされることが必要とされれば、そのときは、必要とされる時間量(たとえば追加の3時間)の間、新鮮な媒体溶液にステントを浸漬し、上述のHPLC法に従って溶液中に放出された薬剤を分析した。必要とされるデータ点の数に従って手順を繰り返した。次いで、時間に対して媒体中に放出された累積薬剤をプロットすることによって放出率特性を生成すればよい。
【0136】
〈実施例6〉
実施例5に記載したような試験管内HPLC法を用いて、実施例1、3及び4での工程によって製造されたコーティングを持つステントからの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出率を調べた。各ステントの溶液について2回HPLCを行い、結果を平均した。
【0137】
以下の表5は、実施例1の2つのステントに関する放出率法の結果を要約する。
【表5】

【0138】
以下の表6は、実施例3の2つのステントに関する放出率法の結果を要約する。
【表6】

【0139】
以下の表7は、実施例4の2つのステントに関する放出率法の結果を要約する。
【表7】

【0140】
実施例1、3及び4のステントについての放出率の比較を図6にグラフで示す。
【0141】
〈実施例7〉
以下の実施例7は、「3日の生体内放出率法」又は「9日の生体内放出率法」と呼ばれ、日数に依存して、ステントを実験動物に挿入する。以下は本実施例に使用した材料である。
1.実験動物:30〜45kgのヨークシャー系のブタ1匹
2.BMW(商標)ワイヤ0.014”、190cm
3.ガイドワイヤ0.035”、190cm
4.バイキングガイドカテーテル7F
5.誘導子シース(8〜10F)
6.ACS20/20インデフレータ(商標)膨張装置
7.生理食塩水;ヘパリン加溶液
8.ニトログリセリン、リドカイン、そのほかの変力性/変時性の薬剤
9.標準的な外科処置用器具、麻酔剤及び必要に応じた薬物
10.呼吸及び血液動態をモニターするシステム
11.陽圧の人工呼吸器及び関連する呼吸経路
12.ACT機及び付属品
13.PTCA部品
14.移動式除細動器
15.蛍光透視機器及び
16.非イオン性造影剤
【0142】
以下は本実施例に用いた手順である。
A.動物の準備
1.ステント埋め込みの一日前に開始する1日1回のアスピリン(325mgPO)を投与する。
2.ブタを鎮静させる。
3.経口アプローチを介して気管に挿管する。
4.イソフルラン(約5%まで)を送達して適当な水準の麻酔を達成し、維持する。
5.シース導入領域を剃毛して被毛をなくし、外科用石鹸及び/又は消毒液で外科処置部位を磨く。
6.右又は左の大腿動脈に7Fの誘導子シースを入れる。
7.ベースラインACTのために動脈血試料を得る。
8.200単位/kg(100,000単位を超えない)のヘパリンをIVで投与し、5〜10分後ACTを測定するために採血する。
9.300秒以上のACTを維持するのに必要であればヘパリンを繰り返す。
10.動脈血圧、心拍数及び心電図(ECG)を測定し、記録する。
【0143】
B.血管選択のための血管造影
1.ガイドワイヤ上のガイドカテーテルを大動脈弓に進め、所望の血管にカニューレを挿入する。
2.ベースラインの血管造影に先立って、内腔内にニトログリセリン(200μg)投与する。
3.ベースラインの血管造影を行い、画像を映画に記録する。
4.ガイドカテーテルの直径を参照として、標的ステントと動脈の比を約1.1:1.0にできる脈管構造を選択する。
【0144】
C.ステントの調製及び設置
1.オンラインQCAを行い、ベースラインの近位、標的、及び遠位の参照部位を測定する。
2.ステントを設置する前に内腔内にニトログリセリン(200μg)投与し、次いで必要に応じて冠状動脈の血管痙攣を制御する。
3.ステント送達システムを検査する。ステントがバルーン上で正しく位置づけされていることを確認する。異常についてステントを検査する。
4.流体がガイドワイヤの刻み目に存在するまでガイドワイヤの内腔にヘパリン加生理食塩水を勢いよく流す。
5.希釈した(約50:50)造影媒体と共にインデフレータ/注射器を調製する。
6.試験カテーテルの膨張ポートに注射器を取り付け;希釈造影剤で膨張内腔を満たすには標準の技法を用いる。
7.注射器及び試験カテーテル膨張内腔の空気すべてを取り除く。
8.インデフレータの空気すべてを取り除き、試験カテーテルの膨張ポートに取り付ける。
9.標的動脈の遠位床に適当なガイドワイヤを位置づける。
10.ガイドワイヤ上のガイドカテーテルを介してステント送達システムを挿入する。
11.事前に選択した動脈の設置部位にステント送達システムを進める。
12.膨張のためのバルーンを位置づける。
13.膨張法のためにIFUを参照する。IFUが利用できなければ、緩やかな安定した比率でステントを所望の直径まで拡張する圧にバルーンを膨張させる。この圧力を30秒間保持する。
14.画像を引くことによって膨張したバルーンを映画に記録する。オンラインQCAを行い、膨張したバルーンの直径を測定する。
15.陰圧を引くことによってバルーンをしぼませる。システムを引き出しながら、触覚的に且つ蛍光透視的に観察する。いかなる抵抗も記録する。
16.内腔内にニトログリセリン(200μg)投与する。
17.冠状血管造影を介してステントの開放度、設置及び留置を評価する。
18.TIMI血管造影低等級を評価する。
19.映画及びビデオに記録する。
20.術後の近位、標的及び遠位のMLDをQCAで測定する。
21.ステント送達システムをそのままにしてCの部分を繰り返す。
22.心拍数、動脈血圧及び心電図(ECG)を測定し、記録する。
【0145】
D.ステント処置の終了
1.ガイドワイヤ、ガイドカテーテル及び誘導子シースを外す。
2.大腿動脈から誘導子シースを外す。
3.シースを入れた側で大腿動脈に圧力を適用する。
4.個別ケージで動物を麻酔から回復させる。
5.痛みには必要に応じてブプレノルフィン(0.05mg/kg)PRNを与える。
6.追跡血管造影の日まで1日1回チクロピジン(250mgPO)及びアスピリン(325mgPO)を投与する。
【0146】
E.試験の終了
1.過剰量のバルビツール系麻酔剤及び/又は塩化カリウムによってブタを安楽死させる。
2.血管洗浄せずに心臓を摘出する。
3.ステント処置した動脈をすべて回収する。
4.処置された血管すべてからステントを外し、次いで、その後の薬剤濃度の分析のために、暗褐色のバイアルに入れる。
5.動脈組織を液体窒素中で急速凍結し、HPLCで測定される薬剤濃度に関する次の組織分析まで−70℃で保存する。
【0147】
HPLC法を用いて、実験動物から回収したステントを調べ、どれくらいの量で薬剤がステントに残っているかを決定した。実験動物から外した薬剤をコートしたステントを容量フラスコに入れた。適当量の抽出溶媒アセトニトリルを保護剤としての0.02%BHTと共に加えた(たとえば、10mLの容量フラスコ中、9mLの溶媒を加えた)。リザーバ領域から薬剤をすべて抽出するのに十分な時間、フラスコを超音波処理した。次いで、フラスコの溶液が溶媒溶液でマークまでが満たされた。HPLCシステムは、分析ポンプ、カラム区分(40℃に設定)、自動試料採取装置及び996PDA検出器を備えたウォーターズ2690システムから成った。カラムは40℃の温度に維持されたYMCProC18(150mmx4.6I.D.粒子サイズ3μm)であった。移動相は、75%アセトニトリル及び25%の20mM酢酸アンモニウムから成った。流速は、1mL/分に設定した。参照標準と結果を比較することによりHPLC放出率の結果を定量した。生体内で放出された合計薬剤は、ステントに負荷した平均薬剤と実験動物へのステントの埋め込み後ステントに残っている薬剤の量との間の差異であった。
【0148】
〈実施例8〉
実施例7で記載されたような3日間生体内の方法を用いて、実施例1のもとでの工程により製造されたコーティングを持つステントからの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出率を調べた。特に、実施例1のステントを実験動物に埋め込み、次いで、HPLCによりステントを調べ、どれくらいの量の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンがステントコーティングから血管に拡散しているかを決定した。HPLC分析によれば、21.8μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン又はコーティングの薬剤総含量の16.4%が3日間でコーティングから放出された。
【0149】
〈実施例9〉
実施例7で記載されたような3日間生体内の方法を用いて、実施例3のもとでの工程により製造されたコーティングを持つステントからの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出率を調べた。特に、実施例3のステントを実験動物に埋め込み、次いで、HPLCによりステントを調べ、どれくらいの量の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンがステントコーティングから血管に拡散しているかを決定した。HPLC分析によれば、7.8μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン又はコーティングの薬剤総含量の3.8%が3日間でコーティングから放出された。
【0150】
〈実施例10〉
実施例7で記載されたような3日間生体内の方法を用いて、実施例4のもとでの工程により製造されたコーティングを持つステントからの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出率を調べた。特に、実施例4のステントを実験動物に埋め込み、次いで、HPLCによりステントを調べ、どれくらいの量の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンがステントコーティングから血管に拡散しているかを決定した。HPLC分析によれば、50.8μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン又はコーティングの薬剤総含量の18%が3日間でコーティングから放出された。
【0151】
〈実施例11〉
実施例7で記載されたような9日間生体内の方法を用いて、実施例3のもとでの工程により製造されたコーティングを持つステントからの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出率を調べた。特に、実施例3のステントを実験動物に埋め込み、次いで、HPLCによりステントを調べ、どれくらいの量の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンがステントコーティングから血管に拡散しているかを決定した。HPLC分析によれば、29.7%の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンが9日間でコーティングから放出された。
【0152】
〈実施例12〉
実施例7で記載されたような9日間生体内の方法を用いて、実施例4のもとでの工程により製造されたコーティングを持つステントからの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出率を調べた。特に、実施例4のステントを実験動物に埋め込み、次いで、HPLCによりステントを調べ、どれくらいの量の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンがステントコーティングから血管に拡散しているかを決定した。HPLC分析によれば、39.4%の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンが9日間でコーティングから放出された。
【0153】
〈実施例13〉
13mmのPIXELステント(ガイダント社から入手可能)をコートした。ステントは、エチレンビニルアルコールコポリマー及びアクチノマイシンDを含む黄色味がかった金色のコーティングを有した。約106℃の温度に相当する2.2アンペアに設定した電流にてステントから約0.006インチの距離で、焼灼器チップによってステントの末端を15秒間加熱した。
【0154】
ステントを焼灼器チップの熱に暴露した後、ステントを50%(w/w)メタノール:水の水槽に沈めた。24時間後、ステントは黄色っぽい色合いで示されるようなステント末端の環に存在する薬剤を有することが認められた。しかしながら、ステントの中間の部分は透明であり、それは薬剤がポリマーから放出されたことを示していた。この工程を40のステントで繰り返し、すべてのステントについて同様の結果を得た。
【0155】
〈実施例14〉
13mmのPIXELステントをコートした。ステントは、エチレンビニルアルコールコポリマー及びアクチノマイシンDを含む黄色味がかった金色のコーティングを有した。ステントを3つの実験群に分け、各群について表8で示されるパラメータに従って、焼灼器チップによってステントの末端を加熱した。ステントを焼灼器チップの熱に暴露した後、ステントを50%(w/w)メタノール:水の水槽に沈めた。24時間後、ステントは、表8に要約されるように観察された。
【表8】

【0156】
焼灼器チップの熱に十分暴露されなかった、ステント中間部分におけるコーティングは透明であることが観察された。このことは、薬剤がステントから溶出したことを示している。他方、焼灼器チップの熱に暴露されたステントの末端の環は、依然として金色に見え、ステントコーティングにおける薬剤の存在を示していた。上記の結果は、時間量及び熱暴露を変えることによってステントからの薬剤の溶出率を改変できることを示している。
【0157】
〈実施例15〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、8mmのPIXELステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0158】
選択した数のステントを分析して、目標のコーティング処方を最終的なコーティング処方と比較した。結果は以下のとおりである。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は26μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、28±3μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1.25、測定された平均の薬剤含量は、128μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、84μgだった。
【0159】
〈実施例16〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、8mmのPIXELステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0160】
選択した数のステントを分析して、目標のコーティング処方を最終的なコーティング処方と比較した。結果は以下のとおりである。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は26μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、28±2μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1.5、測定された平均の薬剤含量は、130μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、81μgだった。
【0161】
溶媒を実質的に除き、コーティングを形成した後、次いで、80℃の熱にステントを2時間暴露することにより選択した数のステントを熱処理した。
【0162】
〈実施例17〉
実施例5で記載されたような方法を用いて、実施例15及び16のもとでの工程により製造されたコーティングを持つステントからの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出率を調べた。以下の表9は、実施例15の3つのステントについての放出率法の結果を要約する。
【表9】

【0163】
以下の表10は、実施例16の3つのステントについての放出率法の結果を要約する。
【表10】

【0164】
実施例15〜16のステントに関する放出率の比較を図7にグラフで示す。予期に反して結果は、実施例16で熱処理に暴露されたステントコーティングは、実施例15のステントコーティングよりも有意に低い放出率を有することを示している。
【0165】
〈実施例18〉
本実施例18は、「ブタ血清放出率法」と呼ばれる。バンケルバイオ−ディス放出率テスタのステントホルダに薬剤をコートしたステントを入れた。0.1%アジ化ナトリウムを加えたブタ血清にステントを24時間浸漬させた。ステントをブタ血清から取り出し、HPLC法により薬剤溶液を分析し、どれくらいの量の薬剤がブタ血清中に放出されたかを決定した。HPLCシステムは、分析ポンプ、カラム区分(40℃に設定)、自動試料採取装置及び996PDA検出器を備えたウォーターズ2690システムから成った。カラムは40℃の温度に維持されたYMCProC18(150mmx4.6I.D.粒子サイズ3μm)であった。移動相は、75%アセトニトリル及び25%の20mM酢酸アンモニウムから成った。流速は、1mL/分に設定した。参照標準と結果を比較することによりHPLC放出率の結果を定量した。
【0166】
〈実施例19〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0167】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、45±1μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、151μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、234μgだった。
【0168】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、32.6μg又は全体の21.6%であると決定された。
【0169】
〈実施例20〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0170】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、44±3μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1.8、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、97μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、184μgだった。
【0171】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、24.1μg又は全体の24.8%であると決定された。
【0172】
〈実施例21〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0173】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、41±1μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1.8、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、227μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、181μgだった。
【0174】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、27.5μg又は全体の12.1%であると決定された。
【0175】
〈実施例22〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。本実施例ではバリア層を塗布しなかった。
【0176】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、44±2μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1.8、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、221μgだった。
【0177】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、129.4μg又は全体の58.55%であると決定された。
【0178】
〈実施例23〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0179】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、42μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1.5、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、184μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、81μgだった。
【0180】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、70.1μg又は全体の38.1%であると決定された。
【0181】
〈実施例24〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、8mmのPIXELステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0182】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、45±1μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1.75、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、200μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、180μgだった。
【0183】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、39.0μg又は全体の19.5%であると決定された。
【0184】
〈実施例25〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、8mmのPIXELステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0185】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、41±4μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、167μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、184μgだった。
【0186】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、6.0μg又は全体の3.6%であると決定された。
【0187】
〈実施例26〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、8mmのPIXELステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0188】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は26μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、24±2μgだった。リザーバ層については、目標の薬剤:ポリマーの比は、1:1.25、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、120μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、138μgだった。
【0189】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、11.0μg又は全体の9.2%であると決定された。
【0190】
〈実施例27〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。1%(w/w)ポリメタクリル酸ブチル(「PBMA」)、5.7%(w/w)アセトン、50%(w/w)キシレン及び43.3%(w/w)HFE FLUX REMOVER(テキサス州、アマリロのテクスプレー)の溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0191】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、44±4μgだった。リザーバ層については、薬剤:ポリマーの比は、1:1、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、183μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、168μgだった。
【0192】
ステント上にコーティングを 形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、21.6μg又は全体の11.8%であると決定された。
【0193】
〈実施例28〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。1%(w/w)PBMA、5.7%(w/w)アセトン、50%(w/w)キシレン及び43.3%(w/w)HFEFLUX REMOVERの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0194】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、41±2μgだった。リザーバ層については、薬剤:ポリマーの比は、1:1.8、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、102μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、97μgだった。
【0195】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、9.1μg又は全体の8.9%であると決定された。
【0196】
〈実施例29〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、8mmのPIXELステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。1%(w/w)PBMA、5.7%(w/w)アセトン、50%(w/w)キシレン及び43.3%(w/w)HFE FLUX REMOVER(テキサス州、アマリロのテクスプレー)の溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0197】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は26μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、27±2μgだった。リザーバ層については、薬剤:ポリマーの比は、1:1.25、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、120μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、68μgだった。
【0198】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、22.0μg又は全体の18.3%であると決定された。
【0199】
〈実施例30〉
実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について実施例3の選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、22.8μg又は全体の11.1%であると決定された。
【0200】
〈実施例31〉
実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について実施例4の選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、57.0μg又は全体の20.2%であると決定された。
【0201】
〈実施例32〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、2つのステントをコートし、下塗り層を形成した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は100μgであり、ポリマーの測定された乾燥重量はそれぞれ93μg及び119μgだった。次いで、2:1の薬剤:ポリマーの比でのEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの混合物で2つのステントをコートしてリザーバ層を製造した。塗布後、リザーバ層はそれぞれ610μg及び590μgの重量を有することが決定された。リザーバ層の総重量及び薬剤:ポリマーの比から、コーティングはそれぞれ、407μg及び393μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含有することが概算された。ポリマーのバリア層もステントに塗布し、バリア層の重量はそれぞれ279μg及び377μgであることが決定された。
【0202】
次いで、エチレンオキシド滅菌法を用いて、本実施例のステントを滅菌した。特に、ステントをチャンバーに入れ、130〜140°F、相対湿度45〜80%にてエチレンオキシドガスに6時間暴露した。次いで110〜130°Fにて72時間、ステントを空気にさらした。
【0203】
滅菌の後、次いで、HPLCを用いてコーティングを分析し、ステントコーティングにおける薬剤のピーク純度を決定した。コーティング中の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、およそ95%を超えるピーク純度を有することが決定された。図8は、「Ref.Std.」と呼ばれる40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの参照標準と比較したときの「ETO」と呼ばれるコーティングの1つにおける40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンのピーク純度を示すクロマトグラフである。
【0204】
〈実施例33〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、2つのステントをコートし、下塗り層を形成した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は100μgであり、ポリマーの測定された乾燥重量はそれぞれ99μg及び94μgだった。次いで、2:1の薬剤:ポリマーの比でのEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの混合物で2つのステントをコートしてリザーバ層を製造した。塗布後、リザーバ層はそれぞれ586μg及び588μgの重量を有することが決定された。リザーバ層の総重量及び薬剤:ポリマーの比から、コーティングはそれぞれ、391μg及び392μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含有することが概算された。ポリマーのバリア層もステントに塗布し、バリア層の重量はそれぞれ380μg及び369μgであることが決定された。
【0205】
次いで、e−ビーム滅菌法を用いて本実施例のステントを滅菌した。特に、e−ビームチャンバーを通り抜けるステント容器にステントを入れた。コンベアベルトによってe−ビームを動いている間、ステント容器が33.11〜46.24KGyの間を受け取るように一定のエネルギーレベルでステント容器をe−ビームに暴露した。従って、ステントは、ステントの長さに沿ったいかなる点でも最低25KGyを受け取った。
【0206】
滅菌の後、次いで、HPLCを用いてコーティングを分析し、ステントコーティングにおける薬剤のピーク純度を決定した。コーティング中の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、およそ95%を超えるピーク純度を有することが決定された。図8は、「Ref.Std.」と呼ばれる40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの参照標準と比較したときの「e−ビーム」と呼ばれるコーティングの1つにおける40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンのピーク純度を示すクロマトグラフである。
【0207】
〈実施例34〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0208】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、44±3μgだった。リザーバ層については、薬剤:ポリマーの比は、1:2、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、245μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、104μgだった。
【0209】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、23.5μg又は全体の9.6%であると決定された。
【0210】
〈実施例35〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPENTAステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。70%(w/w)のジメチルアセトアミドと30%(w/w)のエタノールの混合物中のEVALと40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をステント上にスプレーコートした。次いで、50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることにより、バリア層を形成した。50℃にてさらに2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0211】
選択した数のステントを分析して、コーティング成分を定量した。下塗り層については、ポリマーの目標乾燥重量は40μgであり、ポリマーの測定された平均乾燥重量は、45±3μgだった。リザーバ層については、薬剤:ポリマーの比は、1:1.5、測定された平均の薬剤含量は実施例2により決定すると、337μgだった。バリア層については、測定された平均乾燥重量は、169μgだった。
【0212】
ステント上にコーティングを形成した後、実施例18に記載された手順に従って、コーティングからの薬剤の放出率について選択された数のステントを調べた。24時間で放出された平均薬剤は、37.1μg又は全体の11.0%であると決定された。
【0213】
〈実施例36〉
実施例32に記載の方法に従って、実施例34のステント及び実施例35のステントを滅菌した。次いで、実施例5に記載の方法に従って、滅菌した及び滅菌しなかったステントコーティングにおける薬剤の放出率を調べた。放出率試験の結果は図9にグラフで示す。
【0214】
〈実施例37〉
ステント上にEVAL、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン及びエタノールの溶液をスプレーすることにより13mmのPENTAステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間加熱乾燥して溶媒を除き、300μgのEVAL及び300μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVAL及びペンタンの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、320μgのEVALによるバリアコーティングを得ることができる。
【0215】
〈実施例38〉
ステント上にEVAL及びDMACの溶液をスプレーすることにより13mmのPENTAステントをコートすることができる。140℃で2時間加熱乾燥することにより溶媒を除き、100μgのEVALによる下塗りコーティングを得る。ステント上にEVAL、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン及びエタノールの溶液をスプレーすることによりリザーバ層を塗布することができる。次いで50℃にて2時間を加熱乾燥して溶媒を除き、200μgのEVAL及び400μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVAL及びペンタンの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、350μgのEVALによるバリアコーティングを得る。
【0216】
〈実施例39〉
ステント上にEVAL、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン及びエタノールの溶液をスプレーすることにより13mmのPENTAステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、500μgのEVAL及び250μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVAL及びペンタンの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、300μgのEVALによるバリアコーティングを得る。
【0217】
〈実施例40〉
ステント上にEVAL、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン及びエタノールの溶液をスプレーすることにより13mmのPENTAステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、475μgのEVAL及び175μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVAL及びペンタンの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、300μgのEVALによるバリアコーティングを得る。
【0218】
〈実施例41〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、400μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVALの溶液及びジメチルアセトアミドとペンタンの混合物でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、300μgのEVALによるバリアコーティングを得る。
【0219】
〈実施例42〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、400μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。PBMA及びHFE FLUX REMOVERの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、150μgのPBMAによるバリアコーティングを得る。
【0220】
〈実施例43〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、200μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVALの溶液及びジメチルアセトアミドとペンタンの混合物でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、200μgのEVALによるバリアコーティングを得る。
【0221】
〈実施例44〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン及びエタノールの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、200μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。PBMA及びHFE FLUX REMOVERの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、150μgのPBMAによるバリアコーティングを得る。
【0222】
〈実施例45〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、200μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVALの溶液及びジメチルアセトアミドとペンタンの混合物でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、200μgのEVALによるバリアコーティングを得る。
【0223】
〈実施例46〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、200μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。PBMA及びHFE FLUX REMOVERの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、100μgのPBMAによるバリアコーティングを得る。
【0224】
〈実施例47〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、270μgのEVAL及び150μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVALの溶液及びジメチルアセトアミドとペンタンの混合物でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、150μgのEVALによるバリアコーティングを得る。
【0225】
〈実施例48〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、170μgのEVAL及び150μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。PBMA及びHFE FLUX REMOVERの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、75μgのPBMAによるバリアコーティングを得る。
【0226】
〈実施例49〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、150μgのEVAL及び150μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVALの溶液及びジメチルアセトアミドとペンタンの混合物でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、200μgのEVALによるバリアコーティングを得る。次いで、EVAL、ポリエチレンオキシド(分子量17.5K)(「PEO」)及びジメチルアセトアミドの溶液でステントをスプレーすることにより仕上げ層を塗布することができる。50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して溶媒を除き、83μgのEVAL及び17μgのPEOによる仕上げコーティングを得る。
【0227】
〈実施例50〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、270μgのEVAL及び150μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVALの溶液及びジメチルアセトアミドとペンタンの混合物でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、150μgのEVALによるバリアコーティングを得る。次いで、EVAL、PEO及びジメチルアセトアミドの溶液でステントをスプレーすることにより仕上げ層を塗布することができる。50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して溶媒を除き、83μgのEVAL及び17μgのPEOによる仕上げコーティングを得る。
【0228】
〈実施例51〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、200μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVALの溶液及びジメチルアセトアミドとペンタンの混合物でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、100μgのEVALによるバリアコーティングを得る。
【0229】
〈実施例52〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、200μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVAL、KYNAR及びHFE FLUX REMOVERの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、50μgのEVAL及び50μgのKYNARによるバリアコーティングを得る。
【0230】
〈実施例53〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、350μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVALの溶液及びジメチルアセトアミドとペンタンの混合物でステントをスプレーすることによりバリア層を形成する。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、200μgのEVALによるバリアコーティングを得る。
【0231】
〈実施例54〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、350μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。PBMA及びHFE FLUX REMOVERの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、75μgのPBMAによるバリアコーティングを得る。
【0232】
〈実施例55〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、350μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVALの溶液及びジメチルアセトアミドとペンタンの混合物でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、200μgのEVALによるバリアコーティングを得る。
【0233】
〈実施例56〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、350μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。EVALの溶液及びジメチルアセトアミドとペンタンの混合物でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、100μgのEVALによるバリアコーティングを得る。次いで、EVAL、PEO及びジメチルアセトアミドの溶液でステントをスプレーすることにより仕上げ層を塗布することができる。50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して溶媒を除き、83μgのEVAL及び17μgのPEOによる仕上げコーティングを得る。
【0234】
〈実施例57〉
ステント上にジメチルアセトアミドとエタノールの混合物中のEVAL及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの溶液をスプレーすることにより8mmのPIXELステントをコートすることができる。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して、350μgのEVAL及び200μgの40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンによるリザーバコーティングを得る。PBMA及びHFE FLUX REMOVERの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成することができる。50℃にて2回目の2時間の加熱乾燥を行って溶媒を除き、75μgのPBMAによるバリアコーティングを得る。次いで、PBMA、PEO及びジメチルアセトアミドの溶液でステントをスプレーすることにより仕上げ層を塗布することができる。50℃にて2時間ステントを加熱乾燥して溶媒を除き、62.5μgのPBMA及び12.5μgのPEOによる仕上げコーティングを得る。
【0235】
〈実施例58〉
本試験の目的は、28日間のブタの冠状動脈ステントモデルにおけるステント留置後の新生内膜の過剰な増殖を抑える能力において40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを評価することであった。具体的には、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン及びEVALの2つの処方をマルチ・リンクPenta(商標)ステントにコートした。28日間のブタ生体内モデルにおける安全性及び有効性という点で、薬剤溶出型ステントのこれら2つの処方をポリマー対照及びステントのみの対照と比較した。
【0236】
以下は本実施例で使用した材料である。
1.実験動物:13匹の30〜45kgのヨークシャー系ブタ、オス又はメス
2.以下のようにコートしたステント:マルチ・リンクPENTA(商標)(3.0x13mm)
・6個のステンレス鋼製のステントのみ(対照群);
・9個のトゥルーコート(商標)ステント(EVALポリマー対照群)が800μgのEVALを有する;
・40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(205μgの薬剤、1:1.75の薬剤:ポリマー比)によるリザーバ層及び189μgのEVAL上塗り層を有する9個のステント;
・40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(282μgの薬剤、1:1.6の薬剤:ポリマー比)によるリザーバ層及び130μgのEVAL上塗り層を有する9個のステント。
3.BMW(商標)ワイヤ0.014”、190cm
4.ガイドワイヤ0.035”、190cm
5.バイキングガイドカテーテル7F
6.誘導子シース(8〜10F)
7.ACS20/20インデフレータ(商標)膨張装置
8.ヘパリン加生理食塩水
9.ニトログリセリン、リドカイン、そのほかの変力性/変時性の薬剤
10.標準的な外科処置用器具、麻酔剤及び必要に応じた薬物
11.呼吸及び血液動態をモニターするシステム
12.陽圧の人工呼吸器及び関連する呼吸経路
13.ACT機及び付属品
14.PTCA部品
15.移動式除細動器
16.蛍光透視機器及び
17.非イオン性造影剤
【0237】
本試験では13匹のブタを評価した。薬剤溶出型ステントへの血管の反応を評価するために11匹のブタを28日間の長期試験に使用した。各動物に3種のステントを埋め込んだ。右冠状動脈(RCA)、左前下行動脈(LAD)及び左回旋冠状動脈(LCX)に28日間、ステントを設置した。ステント留置後の新生内膜の過剰増殖を抑える薬剤の能力を評価するために、ステントはすべて1.1:1のステント:動脈比で設置し、軽度〜中程度の傷をつけた。血管の長期的な細胞性の反応を評価し、対照に比べて新生内膜の増殖を減らすことにおいて、薬剤が何らかの効果を有するかどうかを評価するために、ステントが留置された各血管について、追跡血管造影及び組織病理的評価を行った。
【0238】
実験動物の飼育及び使用に関するNIH指針に従って、前臨床動物試験を行った。動物施設に動物を収容した。処置からいったん完全に回復したら、長期飼育のために離れたところに移した。動物の飼育、取り扱い及び獣医的事柄はすべて指導的獣医の責任のもとにあった。
【0239】
ステント留置を受ける前3日間、動物すべてにアスピリン(325mgPO)及びチクロピジン(500mgPO)を1日1回服用させた。ステント留置処置はすべて、無菌法を用いて麻酔したブタで行った。ベースラインの血管造影図を得て、3つの標的部位(冠状動脈当り1)を2.7〜3.2mmの血管直径で選択した。参照として、又はオンラインの冠状血管造影定量分析(QCA)と共にガイドカテーテルを用いて、血管のサイズを決定した。標的部位の選択後、使用するために適当な生成物を調製し、血管の1.1:1.0の過剰拡張を達成するような方法でステントを設置した。麻酔から回復した後、試験期間の間1日1回のチクロピジン(500mgPO)及び試験期間の間1日1回のアスピリン(325mgPO)で各ブタを治療した。
【0240】
28日後、ステントの開放度、設置及び留置を再評価するために各動物について追跡血管造影を行った。さらに、オンラインQCAの測定を行って最小内腔直径(MLD)及び血管内腔再狭窄の比率の血管造影的概算を提供した。追跡血管造影法はすべて、清浄法を用いて麻酔したブタで行った。これは短期の処置なので無菌法を必要としなかった。
【0241】
追跡血管造影の直後、ブタを安楽死させた。心臓を取り出し、ホルマリンと共に標識された容器に入れる前に、生理食塩水で潅流し、圧力潅流したものをホルマリンで固定し、病理学的評価に供した。治療した冠状動脈の切片を委託した病理検査の場所へ送った。各血管末端の1枚及びステント留置領域の3枚を含む5枚のステント留置した血管の断面切片を調製した。エラスチン染色と共にヘマトキシリンとエオシンで組織を染色した。ステントストラットの位置の評価並びに血管/内腔面積、狭窄比率、外傷スコア、内膜及び中膜の面積及び内膜/中膜の比の決定を含む、ステント留置した動脈の形態学的分析を行った。
【0242】
以下は、本実施例で用いた一般的手順の列記である。
A.動物の準備
1.ステント埋め込みの3日前に開始する1日1回のアスピリン(325mgPO)及びチクロピジン(500mgPO)を投与する。
2.施設の標準的な操作手順に従ってブタを鎮静させる。
3.経口アプローチを介して気管に挿管する。
4.イソフルラン(約5%まで)を送達して適当な水準の麻酔を達成し、維持する。
5.シース導入領域を剃毛して被毛をなくし、外科用石鹸及び/又は消毒液で外科処置部位を磨く。
6.右又は左の大腿動脈に8〜10Fの誘導子シースを入れる。
7.ベースラインACTのために動脈血試料を得る。
8.直腸温を記録する。
9.200単位/kg(100,000単位を超えない)のヘパリンをIVで投与し、5〜10分後ACTを測定するために採血する。
10.300秒以上のACTを維持するのに必要であればヘパリンを繰り返す。
11.動脈血圧、心拍数及び心電図(ECG)を測定し、記録する。
【0243】
B.血管選択のための血管造影
1.ガイドワイヤ上のガイドカテーテルを大動脈弓に進め、所望の血管にカニューレを挿入する。
2.ベースラインの血管造影に先立って、内腔内にニトログリセリン(200μg)投与する。
3.ベースラインの血管造影を行い、画像を映画に記録する。
4.ガイドカテーテルの直径を参照として、標的ステントと動脈の比を約1.1:1.0にできる脈管構造を選択する。
【0244】
C.ステントの調製及び設置
1.オンラインQCAを行い、ベースラインの近位、標的、及び遠位の参照部位を測定する。
2.ステントを設置する前に内腔内にニトログリセリン(200μg)投与し、次いで必要に応じて冠状動脈の血管痙攣を制御する。
3.ステント送達システムを検査する。ステントがバルーン上で正しく位置づけされていることを確認する。異常についてステントを検査する。
4.流体がガイドワイヤの刻み目に存在するまでガイドワイヤの内腔にヘパリン加生理食塩水を勢いよく流す。
5.希釈した(約50:50)造影剤媒体と共にインデフレータ/注射器を調製する。
6.試験カテーテルの膨張ポートに注射器を取り付け;希釈造影剤で膨張内腔を満たすには標準の技法を用いる。
7.注射器及び試験カテーテル膨張内腔の空気すべてを取り除く。
8.インデフレータの空気すべてを取り除き、試験カテーテルの膨張ポートに取り付ける。
9.標的動脈の遠位床に適当なガイドワイヤを位置づける。
10.ガイドワイヤ上のガイドカテーテルを介してステント送達システムを挿入する。
11.事前に選択した動脈の設置部位にステント送達システムを進める。
12.膨張のためのバルーンを位置づける。
13.膨張法のためにIFUを参照する。IFUが利用できなければ、緩やかな安定した比率でステントを所望の直径まで拡張する圧にバルーンを膨張させる。この圧力を30秒間保持する。
14.画像を引くことによって膨張したバルーンを映画に記録する。オンラインQCAを行い、膨張したバルーンの直径を測定する。
15.陰圧を引くことによってバルーンをしぼませる。システムを引き出しながら、触覚的に且つ蛍光透視的に観察する。いかなる抵抗も記録する。
16.内腔内にニトログリセリン(200μg)投与する。
17.冠状血管造影を介してステントの開放度、設置及び留置を評価する。
18.TIMI血管造影低等級を評価する。
19.映画及びビデオに記録する。
20.術後の近位、標的及び遠位のMLDをQCAにより測定する。
21.ステント送達システムをそのままにしてCの部分を繰り返す。
22.心拍数、動脈血圧及び心電図(ECG)を測定し、記録する。
【0245】
D.ステント処置の終了
1.ガイドワイヤ、ガイドカテーテル及び誘導子シースを外す。
2.大腿動脈から誘導子シースを外す。
3.シースを入れた側にて3−0の縫合材で動脈を結紮する。
4.縫合材を用いて筋肉組織層及び皮下組織層を並置する。
5.個別ケージで動物を麻酔から回復させる。
6.痛みには必要に応じてブプレノルフィン(0.05mg/kg)PRNを与える。
7.追跡血管造影の日まで1日1回チクロピジン(250mgPO)及びアスピリン(325mgPO)を投与する。
【0246】
E.28日間のブタ試験に関する追跡血管造影
1.一晩の絶食に続いて、施設の標準的な操作手順に従ってブタを鎮静させる。
2.経口アプローチを介して気管に挿管する。
3.必要に応じて5%までの濃度のイソフルランを送達し、外科処置水準の麻酔を維持する。
4.静脈切開領域を剃毛して被毛をなくし、外科用石鹸及び/又は消毒液で外科処置部位を磨く。
5.動脈血圧、心拍数及び心電図(ECG)を測定し、記録する。
6.動物番号及び試験同定タグを映画に記録する。
7.ガイドワイヤ上のガイドカテーテルを進め、適当な血管への上行大動脈にカニューレを挿入する。
8.血管造影に先立ってニトログリセリン(200μgIC)を投与する。
9.血管造影を実施する。画像を映画及びビデオ(利用できれば)に記録する。
10.血管造影を介してステントの開放度、設置及び留置を評価する。
11.オンラインのQCA測定値を入手して、近位及び遠位の参照血管の直径及び最小内腔直径(MLD)を記録する。
12.TIMIスコアを与える。
【0247】
F.手順の終了
1.ガイドカテーテル及び誘導子シースを外す。
2.過剰量のバルビツール系麻酔剤及び/又は塩化カリウムによって動物を安楽死させる。
3.心臓及び埋め込まれたステントを含有する動脈をすべて取り出す。
4.250mLの乳酸加リンガー液又は生理食塩水を注入し、次いで、約0.5〜1.0リットルのホルマリンを約100mmHgの圧力下で注入することによって心臓及びそのほかの埋め込まれた血管を潅流固定する。
5.心臓及び埋め込まれた脈管構造の肉眼的及び顕微鏡的検査のためにホルマリン溶液と共に、心臓を標識の付いた容器に入れる。
【0248】
様々な群についての狭窄の平均パーセント及び新生内膜領域の平均パーセントを算出した。以下の表11は、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを有する薬剤溶出型のステントの処方の双方が、対照に比べて有意に狭窄のパーセント及び新生内膜領域の平均パーセントを低下させたことを明らかにしている。
【表11】

【0249】
〈実施例59〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPIXEL−Dステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。目標の下塗り層重量は58.2μgだった。リザーバ層については、75%(w/w)ジメチルアセトアミドと25%(w/w)エタノールの混合物中のEVALとアクチノマイシンDの溶液をステント上にスプレーコートした。EVALとアクチノマイシンDの比は9:1だった。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。リザーバ層の目標重量は90μgだった。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成した。50℃にて2時間、別の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。バリア層の目標重量は218μgだった。
【0250】
溶媒を実質的に除き、コーティングを形成した後、カテーテルにステントを搭載するために、次いで選択した数のステントを標準のグリップ工程の対象とした。ステントを4つの試験群に分けた。第1群は対照とし、室温にて搭載した。第2群は約82.2℃(180°F)の温度に約2分間暴露し、第3群は約93.3℃(200°F)の温度に約2分間暴露し、第4群は約121.1℃(250°F)の温度に約2分間暴露した。
【0251】
熱処理によって活性剤の総含量が影響を受けるかどうかを明らかにするために各群からの5つのステントを調べた。結果は熱処理工程は総含量に影響を与えないことを明らかにした。薬剤総含量試験の結果を表12に示す。
【表12】

【0252】
各群からの10のステントを調べて24時間の活性剤の放出率を決定した。結果は、熱処理工程が24時間の平均放出率を下げることを明らかにした。さらに、熱処理工程は標準偏差を小さくした。放出率試験の結果を表13に示す。
【表13】

【0253】
〈実施例60〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPIXEL−Dステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。目標の下塗り層重量は40μgだった。リザーバ層については、75%(w/w)ジメチルアセトアミドと25%(w/w)エタノールの混合物中のEVALとアクチノマイシンDの溶液をステント上にスプレーコートした。EVALとアクチノマイシンDの比は9:1であり、目標の総用量は7.9μgだった。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。リザーバ層の目標重量は79μgだった。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成した。50℃にて2時間、別の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。バリア層の目標重量は135μgだった。
【0254】
溶媒を実質的に除き、コーティングを形成した後、選択された数のステントを次いで異なった熱処理工程の対象とした。工程の1つには、搭載工程の前にステントを2時間の熱処理の対象とすることが含まれた。特に、選択した数のコートされたステントを対流式オーブンに入れ、約80℃の熱に約2時間さらした。別の工程には、搭載工程の間、ステントを2分間の熱処理の対象とすることが含まれた。特に、第1群は対照であり、室温で搭載した。第2群は約82.2℃(180°F)の温度に約2分間暴露し、第3群は約121.1℃(250°F)の温度に約2分間暴露した。表14は各試験群で使用したステントの数を示す。
【表14】

【0255】
2時間の熱処理行程によって活性剤の総含量が影響を受けるかどうかを決定するために、2時間処理群及び非2時間処理群を含む第2群のステントを調べた。結果は熱処理工程は総含量に影響を与えないことを明らかにした。特に、2時間の熱処理工程の対象としたステントの平均総含量は9.3±0.6μg/cmであり、2時間の熱処理工程の対象としなかったステントの平均総含量は8.8±0.6μg/cmであった。
【0256】
次いで、各群からの選択した数のステントを調べて24時間の活性剤の放出率を決定した。結果は、双方の熱処理工程が24時間の平均放出率を下げることを明らかにした。放出率試験の結果を表15に示す。
【表15】

【0257】
〈実施例61〉
EVALの2%(w/w)溶液及び98%(w/w)ジメチルアセトアミドをスプレーすることにより、13mmのPIXEL−Dステントをコートした。140℃にて2時間加熱乾燥することにより溶媒を除いた。リザーバ層については、75%(w/w)ジメチルアセトアミドと25%(w/w)エタノールの混合物中のEVALとアクチノマイシンDの溶液をステント上にスプレーコートした。EVALとアクチノマイシンDの比は9:1だった。次いで50℃にて2時間ステントを加熱乾燥した。80%(w/w)ジメチルアセトアミドと20%(w/w)ペンタンの混合物中のEVALの溶液でステントをスプレーすることによりバリア層を形成した。50℃にて2時間、別の加熱乾燥を行って溶媒を除いた。
【0258】
溶媒を実質的に除き、コーティングを形成した後、次いで、ステントを種々の熱処理及び保存条件の対象とした。特に、(1)温度(40、50、又は80℃)への暴露、(2)暴露時間(2又は7時間)及び(3)保存時間(0又は30日)の影響を調べるために試験群を様々な条件の対象とした。表16は様々な試験パラメータを要約する。
【表16】

【0259】
ステントを熱処理に暴露した後、e−ビーム法を用いてステントを滅菌した。e−ビーム法の間、1パス法を用いてステントを35kGyの放射線に暴露した。
【0260】
熱処理によって活性剤の総含量が影響を受けるかどうかを明らかにするために各群からの5つのステントを調べた。次いで、各群からの10のステントを調べて24時間の活性剤の放出率を決定した。結果は熱処理工程は総含量に影響を与えないことを明らかにした。結果はまた、熱処理工程が24時間の平均放出率を下げることも明らかにした。総含量及び放出率の試験の結果を表17に示す。
【表17】

【0261】
本発明の特定の実施態様を示し、記載してきたが、さらに広い側面において本発明から逸脱することなく変更及び修正を行うことができることは当業者に明らかであろう。従って、添付のクレームは、そのような変更や修正のすべてを、本発明の真の精神及び範囲に含まれるものとして、その範囲に含むべきである。
【図面の簡単な説明】
【0262】
【図1A】本発明の種々の実施態様に係る埋め込み型医療用基材上に堆積されたコーティングを説明するものである。
【図1B】本発明の種々の実施態様に係る埋め込み型医療用基材上に堆積されたコーティングを説明するものである。
【図1C】本発明の種々の実施態様に係る埋め込み型医療用基材上に堆積されたコーティングを説明するものである。
【図1D】本発明の種々の実施態様に係る埋め込み型医療用基材上に堆積されたコーティングを説明するものである。
【図1E】本発明の種々の実施態様に係る埋め込み型医療用基材上に堆積されたコーティングを説明するものである。
【図2】薬剤溶出型ステントを熱処理するシステムの説明であるものである。
【図3】ポリマーの熱容量と温度の関係のグラフである。
【図4】ポリマーの弾性と温度の関係のグラフである。
【図5】ポリマーの比体積と温度の関係のグラフである。
【図6】実施例6で参照されるステントコーティングからの活性剤の放出率を示すグラフである。
【図7】実施例17で参照されるステントコーティングからの活性剤の放出率を示すグラフである。
【図8】実施例32及び33で参照されるクロマトグラフである。
【図9】実施例36で参照されるステントコーティングからの活性剤の放出率を示すグラフである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤溶出型の埋め込み型医療用具の製造方法であって、前記用具上の乾燥コーティングを常温よりも高い温度に持続時間の間暴露することを含み、前記乾燥コーティングがポリマー、活性剤及び約2%未満の残留流体含量(w/w)を含み、暴露の前記持続時間が、前記コーティングを生体内腔に埋め込んだ後における前記コーティングからの前記活性剤の放出率を下げるのに十分である方法。
【請求項2】
前記乾燥コーティングが、前記活性剤を有するリザーバ層及び前記リザーバ層の位置の下に配置される下塗り層を含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記乾燥コーティングが、前記活性剤を有するリザーバ層及び前記リザーバ層の位置を覆うバリア層を含む請求項1の方法。
【請求項4】
前記用具がステントである請求項1の方法。
【請求項5】
前記乾燥コーティングを前記温度に暴露することに続いて前記乾燥コーティングの上にバリア層を形成することをさらに含む請求項1の方法。
【請求項6】
前記活性剤が、前記温度に暴露された際、有害に分解しない種類である請求項1の方法。
【請求項7】
前記暴露により前記コーティングにおける前記活性剤の総含量が低下しない請求項1の方法。
【請求項8】
前記ポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(メタクリル酸ブチル)又はこれらの組み合わせを含む請求項1の方法。
【請求項9】
前記暴露が、前記温度に設定された気体流を前記コーティングに向けることを含む請求項1の方法。
【請求項10】
24時間の前記活性剤の平均放出率の標準偏差が、前記温度に暴露されていない用具の平均放出率の標準偏差よりも低い請求項1の方法。
【請求項11】
前記乾燥コーティングが約1%未満の残留流体含量(w/w)を含む請求項1の方法。
【請求項12】
前記活性剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、又はそれらの機能的類縁体若しくは構造的誘導体である請求項1の方法。
【請求項13】
ステントコーティングを製造する方法であって、
組成物をステントに塗布することであって、前記組成物はポリマー及び溶媒を含むこと;
前記溶媒を蒸発させてコーティングを形成すること;及び
持続時間の間、前記ポリマーのガラス転移温度以上の温度に前記コーティングを暴露すること;
を含む方法。
【請求項14】
前記組成物がさらに活性剤を含む請求項13の方法。
【請求項15】
前記ステントに前記組成物を塗布する前に前記ステント上に下塗り層を形成することをさらに含む請求項14の方法。
【請求項16】
前記コーティングを前記温度に暴露する前に前記コーティング上にバリア層を形成することをさらに含む請求項14の方法。
【請求項17】
前記コーティングを前記温度に暴露するのに続いて前記コーティング上にバリア層を形成することをさらに含む請求項14の方法。
【請求項18】
前記活性剤が、前記温度に暴露された際、有害に分解しない種類である請求項14の方法。
【請求項19】
前記暴露によって前記コーティングにおける前記活性剤の総含量が低下しない請求項14の方法。
【請求項20】
前記活性剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、又はそれらの機能的類縁体若しくは構造的誘導体である請求項14の方法。
【請求項21】
前記溶媒を蒸発させて約2%未満の残留流体含量(w/w)を含む乾燥コーティングを形成する請求項13の方法。
【請求項22】
前記乾燥コーティングが約1%未満の残留流体含量(w/w)を含む請求項21の方法。
【請求項23】
前記温度が前記ポリマーの融解温度より低い請求項13の方法。
【請求項24】
前記組成物がさらに、添加剤なしの前記ポリマーの実際のガラス転移温度又は融解温度とは異なる温度に、前記ガラス転移温度又は前記融解温度を変化させる添加剤を含む請求項13の方法。
【請求項25】
前記ポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(メタクリル酸ブチル)又はこれらの組み合わせを含む請求項13の方法。
【請求項26】
前記温度が前記ポリマーのガラス転移温度と融解温度を足して2で割ったものに等しい請求項13の方法。
【請求項27】
前記温度が、前記ポリマーの融解温度の0.9倍に等しく、前記ポリマーの融解温度がケルビンで表される請求項13の方法。
【請求項28】
前記ガラス転移温度が、熱膨張、示差熱分析、示差走査熱量測定、ブリユアン光散乱、局所熱分析、偏光解析法及びX線反射率から成る群から選択される方法によって決定される請求項13の方法。
【請求項29】
前記ポリマーが2種以上のポリマーの混合物である請求項13の方法。
【請求項30】
前記ポリマーが、前記暴露の前では約40〜75%の結晶性を有する半結晶性ポリマーである請求項13の方法。
【請求項31】
前記ポリマーが非晶性ポリマーである請求項13の方法。
【請求項32】
前記ポリマーがブロックコポリマーである請求項13の方法。
【請求項33】
前記ポリマーがグラフトコポリマーである請求項13の方法。
【請求項34】
前記ポリマーが2以上のガラス転移温度を示し、前記方法が、示された最低のガラス転移温度以上の温度に前記ポリマーを暴露することを含む請求項13の方法。
【請求項35】
前記ポリマーが2以上のガラス転移温度を示し、前記方法が、示された最高のガラス転移温度以上の温度に前記ポリマーを暴露することを含む請求項13の方法。
【請求項36】
薬剤溶出型ステントの製造方法であって、
組成物をステントに塗布することであって、前記組成物は半結晶性のポリマー、活性剤及び溶媒を含むことと、
前記溶媒を蒸発させて乾燥コーティングを形成することであって、前記乾燥コーティングは約2%未満の残留流体含量(w/w)であることと、
持続時間の間、前記ポリマーの結晶化温度に前記乾燥コーティングを暴露することを含む方法。
【請求項37】
前記ポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマーを含む請求項36の方法。
【請求項38】
前記活性剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、又はそれらの機能的類縁体若しくは構造的誘導体である請求項36の方法。
【請求項39】
薬剤溶出型ステントの製造方法であって、ステント上に約2%未満の残留流体含量(w/w)を有する乾燥ポリマーコーティングを形成することであって、前記乾燥ポリマーコーティングは、ポリマー及び活性剤を含むリザーバ層並びに前記リザーバ層の部分を覆うポリマーを含むバリア層を含むことと、
前記バリア層に含まれる前記ポリマーを前記ポリマーのガラス転移温度以上の温度に暴露することを含む方法。
【請求項40】
前記バリア層に含まれるポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(メタクリル酸ブチル)又はこれらの組み合わせを含む請求項39の方法。
【請求項41】
前記活性剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、又はそれらの機能的類縁体若しくは構造的誘導体である請求項39の方法。
【請求項42】
前記バリア層に含まれるポリマーのガラス転移温度が、前記リザーバ層に含まれるポリマーのガラス転移温度よりも高い請求項39の方法。
【請求項43】
前記バリア層に含まれるポリマーのガラス転移温度が、前記リザーバ層に含まれるポリマーのガラス転移温度よりも低い請求項39の方法。
【請求項44】
前記バリア層に含まれるポリマーのガラス転移温度が、前記リザーバ層に含まれるポリマーのガラス転移温度とほぼ同じである請求項39の方法。
【請求項45】
前記温度が、前記バリア層に含まれるポリマーの融解温度よりも低い請求項39の方法。
【請求項46】
前記温度が、前記リザーバ層に含まれるポリマーの融解温度よりも低い請求項39の方法。
【請求項47】
前記温度が、前記バリア層に含まれるポリマーのガラス転移温度と前記バリア層に含まれるポリマーの融解温度を足して2で割ったものに等しい請求項39の方法。
【請求項48】
前記温度が、前記バリア層に含まれるポリマーの融解温度の0.9倍に等しく、前記バリア層に含まれるポリマーの融解温度がケルビンで表される請求項39の方法。
【請求項49】
薬剤溶出型ステントの製造方法であって、
ステント上にポリマーコーティングを形成することであって、前記ポリマーコーティングは半結晶性のポリマー及び活性剤を含むリザーバ層を含むことと、
前記リザーバ層に含まれるポリマーを前記ポリマーの結晶化温度に暴露することを含む方法。
【請求項50】
前記ポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマーを含む請求項49の方法。
【請求項51】
前記活性剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、又はそれらの機能的類縁体若しくは構造的誘導体である請求項49の方法。
【請求項52】
薬剤溶出型ステントの製造方法であって、
ステント上にポリマーコーティングを形成することであって、前記ポリマーコーティングはポリマー及び活性剤を含むリザーバ層及び前記リザーバ層の部分を覆う半結晶性のポリマーを含むバリア層を含むことと、
前記バリア層に含まれる前記ポリマーを前記ポリマーの前記結晶化温度に暴露することを含む方法。
【請求項53】
前記ポリマーコーティングが、約2%未満の残留流体含量(w/w)を含む請求項52の方法。
【請求項54】
前記ポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマーを含む請求項52の方法。
【請求項55】
前記活性剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、又はそれらの機能的類縁体若しくは構造的誘導体である請求項52の方法。
【請求項56】
前記リザーバ層に含まれるポリマーが半結晶性のポリマーであり、前記バリア層に含まれるポリマーの結晶化温度が、前記リザーバ層に含まれるポリマーの結晶化温度よりも高い請求項52の方法。
【請求項57】
前記リザーバ層に含まれるポリマーが半結晶性のポリマーであり、前記バリア層に含まれるポリマーの結晶化温度が、前記リザーバ層に含まれるポリマーの結晶化温度よりも低い請求項52の方法。
【請求項58】
前記リザーバ層に含まれるポリマーが半結晶性のポリマーであり、前記バリア層に含まれるポリマーの結晶化温度が、前記リザーバ層に含まれるポリマーの結晶化温度と同等である請求項52の方法。
【請求項59】
ステントコーティングの製造方法であって、
組成物をステントに塗布することであって、前記組成物は、ポリマー及び溶媒を含むことと、
前記溶媒を蒸発させてコーティングを形成することと、
前記コーティングの少なくとも一部におけるポリマーの結晶性を上げるのに十分な温度に前記コーティングを暴露することを含む方法。
【請求項60】
前記コーティングが約2%未満の残留流体含量(w/w)を含む請求項59の方法。
【請求項61】
前記組成物が、さらに活性剤を含む請求項59の方法。
【請求項62】
前記活性剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、又はそれらの機能的類縁体若しくは構造的誘導体である請求項59の方法。
【請求項63】
前記ポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマーを含む請求項59の方法。
【請求項64】
薬剤溶出型ステントの製造方法であって、
ステントストラット上に活性剤を含むポリマーコーティングを形成することであって、前記コーティングはステントの長さ方向に測定される第1の区分及び第2の区分を有することと、
前記活性剤の前記コーティングの第1の区分におけるポリマーを介した拡散率が、前記コーティングの第2の区分におけるポリマーを介した場合よりも高くなるように前記第1の区分及び前記第2の区分を異なった温度条件に暴露することを含む方法。
【請求項65】
前記コーティングが約2%未満の残留流体含量(w/w)を含む請求項64の方法。
【請求項66】
前記ポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(メタクリル酸ブチル)又はこれらの組み合わせを含む請求項64の方法。
【請求項67】
前記活性剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、又はそれらの機能的類縁体若しくは構造的誘導体である請求項64の方法。
【請求項68】
前記第2の区分のポリマーが、前記第1の区分のポリマーより高い温度に暴露される請求項64の方法。
【請求項69】
前記ポリマーコーティングが常温より高い温度に暴露され、前記コーティングの第2の区分のポリマーが、前記第1の区分のポリマーよりも長い持続時間、前記温度に暴露される請求項64の方法。
【請求項70】
放射方向に拡張可能な本体及び前記本体の少なくとも一部を覆うコーティングを含むステントであって、前記コーティングがポリマー及び活性剤を含み、前記ポリマーが少なくとも2つの結晶化度を含むステント。
【請求項71】
前記結晶化度がステントの表面に近いほど低くなる請求項70のステント。
【請求項72】
前記結晶化度が、前記コーティングの浅い領域から前記コーティングのさらに深い領域にかけて低下する請求項70のステント。
【請求項73】
前記ポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマーを含む請求項70のステント。
【請求項74】
前記活性剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、又はそれらの機能的類縁体若しくは構造的誘導体である請求項70のステント。
【請求項75】
埋め込み型医療用具をコートする方法であって、
埋め込み型医療用具に組成物を塗布することであって、前記組成物は溶媒に溶解されたポリマーを含むことと、
前記ポリマーのガラス転移温度以上の温度に前記組成物を加熱することを含む方法。
【請求項76】
乾燥コーティングが前記用具上に形成されるまで前記組成物を前記温度に加熱し、前記コーティングが約2%未満の残留流体含量(w/w)を含む請求項75の方法。
【請求項77】
乾燥コーティングが前記用具上に形成されるまで前記組成物を前記温度に加熱し、前記コーティングが約2%未満の残留流体含量(w/w)を含み、前記乾燥コーティングが形成された後、ある持続時間加熱する請求項75の方法。
【請求項78】
前記用具が金属の本体を含み、前記組成物を前記本体の金属表面に塗布する請求項75の方法。
【請求項79】
前記組成物が実質的にいかなる活性剤も含まない請求項75の方法。
【請求項80】
前記組成物が活性剤をさらに含む請求項75の方法。
【請求項81】
前記活性剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、又はそれらの機能的類縁体若しくは構造的誘導体である請求項75の方法。
【請求項82】
前記ポリマーが、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(メタクリル酸ブチル)又はこれらの組み合わせを含む請求項75の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−521069(P2007−521069A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517163(P2006−517163)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/017060
【国際公開番号】WO2005/004945
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】