説明

薬剤耐性遺伝子の利用

【課題】リグニン分解能力に優れ、セルロース分解酵素の活性が低く、かつ処理速度が速い微生物を提供する。
【解決手段】セルロース分解酵素発現抑制遺伝子とアラゲカワラタケの薬剤感受性に関与する遺伝子に変異を導入して得られる薬剤耐性遺伝子とを担持するアラゲカワラタケ形質転換体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース分解酵素遺伝子の発現が抑制され、かつアラゲカワラタケに由来する薬剤耐性遺伝子が導入されたアラゲカワラタケ形質転換体、および該形質転換体を用いて繊維成分を製造する方法に関する。
【0002】
より詳細には栄養要求性などの人為的な変異処理に曝されていない野生型アラゲカワラタケを宿主として、セルロース分解酵素遺伝子の発現を抑制するとともに、アラゲカワラタケ由来の遺伝子に人為的変異を導入して作出された薬剤耐性遺伝子を導入することにより、セルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体に関する。また、該形質転換体によってリグノセルロース材料を前処理し、その後、繊維化工程を経て、繊維成分を取り出すことを特徴とする、省資源または省エネルギー型の繊維の製造方法に関する。特に、紙パルプ原料からの紙パルプの製造における、省資源または省エネルギー型の紙パルプ製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リグノセルロース材料から繊維成分を取り出す工程では、繊維間の結合に関与するリグニンやヘミセルロースの構造を機械的な力によって破壊する、またはリグニンやヘミセルロースを選択的に化学的に溶解または分解することによって繊維成分を取り出すことが行われている。
【0004】
紙パルプの製造工程においても、木材やその他のリグノセルロース材料から機械的、化学的処理により、繊維間結合物質を切断または分解し、繊維成分であるパルプを調製している。この様な紙パルプの製造工程はエネルギーを必要とする工程であり、省エネルギー化には長年に亘りさまざまな対策が実施されてきた。しかし、環境問題を解決するため、更に省エネルギー化する技術の開発が求められている。
【0005】
紙パルプ工業で製造されているパルプは、その製造方法により機械パルプと化学パルプに分けられる。機械パルプは機械的エネルギーを用いて木材繊維を物理的に摩砕して製造する。木材成分をほとんどそのまま含んでいるため、高い収率で製造することができ、薄く不透明度の高い紙を作ることができる。しかしながら、摩砕のために大きな電力を必要とする。
【0006】
前記のような多大な電力の消費を抑制するため、微生物、特に白色腐朽菌と呼ばれるリグニン分解力を有する担子菌で予め木材チップを処理し、エネルギーを削減しようという研究が行われてきた。例えば、ハンノキの一次解繊サーモメカニカルパルプ(TMP)の製造に先立ち、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)をグルコースとともに木材チップに添加し、2週間放置すると、TMP製造における二次解繊のエネルギーを25〜30%削減できたという報告がある(非特許文献1)。また、ファネロカエテ・クリソスポリウムとディコミタス・スクアレンス(Dichomitus squalens)を用い、アスペン材を処理した際には、コントロールと比べて紙力強度が増加することが報告されている(非特許文献2)。
【0007】
Akamatsuらは、アラゲカワラタケ(Coriolus hirsutus)を含む白色腐朽菌10株を用い、これをポプラ材上に培養し、パルプ収率、解繊エネルギー、パルプ強度について調べている。その結果、アラゲカワラタケで処理すると解繊エネルギーが減少し、結晶化度が増加するなど、用いた菌株の中ではアラゲカワラタケがチップの前処理菌として好ましいことが示された。しかしながら、このときの収率が約7%低下した(非特許文献3)。
【0008】
また、Nishibeらは、白色腐朽菌61種、85株から予備選抜した10種類の腐朽菌を使って、サワグルミ木片と針葉樹2次離解TMPを微生物分解し、選択的に脱リグニンを行い、パルプ繊維の崩壊が少ないネナガノヒトヨタケ(Coprinus cinereus)、ファネロカエテ・クリソスポリウムを選抜することにより、グルコースと尿素の存在下では紙力強度の低下が抑えられることを示した。しかし、パルプ収率の低下が、14日間、30℃の処理でそれぞれ6.3%、9.7%であった。アラゲカワラタケを用いた場合、収率減は7.5%であった(非特許文献4)。
【0009】
Kashinoらは、白色腐朽菌IZU-154を自然界からスクリーニングし、ファネロカエテ・クリソスポリウムやカワラタケ(Trametes versicolor)より選択的にリグニンを分解し、広葉樹を7日間処理した場合、解繊エネルギーが1/2〜2/3減少することを確認した。また、パルプ強度は約2倍増加した。針葉樹を10〜14日間処理した場合では解繊エネルギーが1/3減少し、強度増加も得られた。培地を加えた場合には7日間で同等の結果を得ることができた(非特許文献5)。
【0010】
さらに、米国ではUSDA Forest Products Laboratoryのグループを中心に研究機関、紙パルプ産業数社から成るバイオパルピング・コンソーシアムを形成し、リグニン分解力が高く、セルロース分解力の低い菌株のスクリーニングを行い、セリポリオプシス・サブバーミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)を新たに選抜した。この株を用いて機械パルプの動力削減を検討し、例えば、TMPの製造エネルギーの40%近くを削減でき、このときの収率の低下が3〜5%程度であり、心配される紙の強度への悪影響はなく、むしろ強度が上がっていると報告している(非特許文献6)。
【0011】
USDA Forest Products Laboratoryでは既にパイロットプラントを建設し、単離したセリポリオプシス・サブバーミスポラの実証試験を行っている。米国内の工場を想定し、工場のチップヤードで微生物処理を行うことを考えている。しかし、セリポリオプシス・サブバーミスポラは増殖に好適な温度が低く、32℃までの温度でしか効果が得られないが、チップを保存しているパイル内部が高温となるため、冷却のための通気のエネルギーおよびコストが大きく、温暖な地域での使用には不適切である。
【0012】
また、これまでスクリーニングで得られてきた微生物はリグニン分解の選択性が必ずしも高くなく、リグニンのみでなく、セルロースも分解するため、パルプ収率や紙力低下を生じる。従って、リグニン分解の選択性を高めた微生物、すなわち、リグニン分解能力には優れるが、セルロース分解は抑制されている微生物の取得・作製が求められている。
【0013】
リグニン分解の選択性を高めた変異体はAnderらにより作製されている。彼らは、UV照射によりスポロトリカム・プルベルレンタム(Sporotrichum pulverulentum)に変異処理を行い、セルロース分解酵素活性が弱い変異株Cel44株を開発している。野生株とこのセルロース分解酵素抑制株Cel44とを用いてカバ材木片の分解を行ったところ、前者がリグニンおよびキシランをよく分解するのに対し、後者はリグニンおよびキシランをよく分解するが、グルカンをほとんど分解しなかった(非特許文献7)。このCel44株を用いてバーチ材を6週間処理した後、機械パルプの製造を行ったところ、紙力強度の増加が見られた(非特許文献8)。また、バーチ材とパイン材を用いて実験を行い、処理時間を増加させることによって、繊維のフィブリル化とリファイニングのエネルギーが30%減少したと報告している(非特許文献9)。彼らはフレビア・ラヂアータ(Phlebia radiata)においても同様にセルロース分解酵素活性の弱い株Cel26を作製した。このCel26株でパイン材のチップとパルプを処理した後、機械パルプを製造した際、いずれの場合も紙力の改善は見られなかったものの、解繊エネルギーの低下が見られた。また、重量減少は2%以下であった(非特許文献10)。
【0014】
一方、化学パルプは、化学薬品を用いて木材中のリグニンを溶出させセルロース、ヘミセルロースを取り出す方法により製造される。現在では水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを用いて脱リグニンを行うクラフトパルプが主流となっている。クラフトパルプにおいても機械パルプと同様に微生物処理を行い、蒸解前に脱リグニンを行うことでの製造エネルギーの削減、パルプ品質の向上が試みられている。
【0015】
例えばファネロカエテ・クリソスポリウムを用いて、レッドオーク材やアスペン材を30日間処理すると、同一Ka価における収率が向上し、叩解エネルギーが削減すること、また、引張り強度と破裂強度が増加するという報告がある(非特許文献11)。同じく、ファネロカエテ・クリソスポリウムを用いた実験において、破裂強度、引裂き強度の増加が報告されている(非特許文献12)。Molinaらはラジアータパインをカワラタケとヒラタケ(Pleurotus ostreatus)で処理した際には、11〜14%の製造エネルギーが削減できると報告している。しかしながら、カワラタケの場合にはパルプ強度の減少が見られた(非特許文献13および非特許文献14)。
【0016】
Bajpaiらは、セリポリオプシス・サブバーミスポラを用いた実験において活性アルカリを18%削減し、蒸解時間を33%削減し、白液中の硫化度を30%削減することができることを報告している(非特許文献15)。
【0017】
上記のように、クラフトパルプにおける微生物処理は蒸解性を向上させエネルギーの削減をもたらすが、収率や紙力強度を低下させる場合があり、機械パルプと同様に微生物処理を実用化するには、リグニンを分解する能力には優れるが、セルロースを分解する能力は抑制されているような、リグニン分解の選択性を高めた微生物の取得・作製が必要となっている。それに対し、上記のようにセルロース分解酵素活性の弱い変異株の作製が行われ、機械パルプ処理への利用の検討が行われているが、これらの変異株は紫外線照射により変異処理しているため、変異株の成長速度が遅く、分解処理に長時間かかってしまうという問題がある。このため、成長速度には影響せずセルロース分解活性のみを抑える変異株の作製が望まれている。
【0018】
セルロースを分解する酵素(セルラーゼとも称される)は、β-1,4-グルカン(セルロース)またはその誘導体のβ-1,4-グルコピラノシル結合を加水分解する数種の酵素の総称であり、エンドグルカナーゼ(EG)、セロビオヒドロラーゼ(CBH)I、II、などからなる。EGはセルロース主鎖のβ-1,4-グルコピラノシル結合をエンド型に加水分解することでセルロース鎖に断点を入れ、続いてCBHがその断点から順次セロビオース単位で分解し結晶性の高い部分も分解することが知られている。CBH Iはセルロース鎖の還元末端からセロビオース残基を切り取り、CBH IIは非還元末端から切り取ってゆく。また生じたセロビオースを酸化するセロビオースデヒドロゲナーゼ、セロオリゴ糖の末端からβ結合を加水分解するβ−グルコシダーゼが知られている。そして、これらの加水分解酵素が相乗的に作用することによりセルロース基質が低分子化してセロビオースを生じ、さらにβ−グルコシダーゼが関与することにより、グルコース単位まで分解される。しかしながらセルロース分解酵素の研究が進むにつれて、セロビオヒドロラーゼがEGのような活性を示すケース、その逆のケースもあり、これまでの分類方法では説明できない酵素が見つかってきている。
【0019】
これまでに多数のセルロース分解酵素が単離精製され、また遺伝子の配列が明らかにされている。セルロース分解酵素はハイドロフォービッククラスターアナリシスとよばれる疎水性アミノ酸のクラスタ構造に基づく二次元的解析によりグリコシドヒドロラーゼファミリーとしてグループ分けできることが明らかにされている(非特許文献16)。これらの酵素の分類では、CBHとEGのセルロース分解特性の違いはそれぞれの活性中心を上から覆うペプチドループの有無ならびにその存在状態の際に基づくことが示されている。Trichoderma属ではCBHIとCBHIIの三次元結晶構造の特徴として活性中心がペプチドループによって覆い隠されているトンネル構造を持つことが報告されている。一方、エンド型の酵素は活性中心にクレフトと呼ばれる溝を持ち、そこでセルロース鎖を捕捉、切断後、一旦セルロース鎖から離れ、再度セルロース鎖を捕捉するノンプロセッシブな切断様式で作用する。(非特許文献17)。
【0020】
また、セロビオースデヒドロゲナーゼは、セロビオースやセロオリゴ糖を酸化してセロビオノラクトンを生成すると同時にキノン、鉄などの金属錯体、フェノキシラジカル、酸素などを還元する酸化還元酵素である。この酵素は、微生物がセルロースを分解するときにセルロース分解酵素と同時に産生されること(非特許文献18)、セロビオースによるセルロース分解酵素活性の阻害、すなわち生成物阻害を解除する(非特許文献19)ことから、セルロース分解酵素との共役でセルロース分解を促進すると考えられている。
【0021】
また、セロビオースデヒドロゲナーゼは強力にセルロースを分解するハイドロキシラジカルを発生するFenton反応を引き起こすため、セルロース分解に深く関与していると考えられている。このことはDumonceauxらによるセロビオースデヒドロゲナーゼ活性を抑制した変異株の作製ならびにその諸性質の検討結果によっても示唆されている。彼らは、抗生物質であるフェロマイシンを指標にした相同組換え法によるセロビオースデヒドロゲナーゼ欠損株の作製を行い、セロビオースデヒドロゲナーゼ欠損株では非晶性セルロースを炭素源とした場合には野生株と成長速度が変わらないが、結晶性セルロース上で培養した際には生育速度が著しく遅くなること、セロビオースデヒドロゲナーゼ欠損株においても広葉樹未漂白パルプのリグニンや合成リグニンである14C-DHPを野生株と同等に分解することを報告している(非特許文献20)。
【0022】
セロビオースデヒドロゲナーゼの総説(非特許文献21)等によれば、セロビオースデヒドロゲナーゼを生産する微生物としてはファネロカエテ・クリソスポリウム、カワラタケ、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)等の木材腐朽菌、コネオフォラ・プテアナ(Coneophora puteana)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)等のカビ類が知られている(非特許文献21)。
【0023】
また、セロビオースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(以下、セロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子と称する)については、例えば、ファネロカエテ・クリソスポリウムでは、K3株のcDNA(非特許文献22)、OGC101株のcDNA(非特許文献23)、染色体遺伝子のクローニングが行われている(非特許文献24)。また、カワラタケ(非特許文献25)や、シュタケ(Pycnoporus cinnabarinus)(非特許文献26)においてもセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子が報告されている。
【0024】
機械パルプや化学パルプ製造における微生物処理にあたって、リグニン分解の選択性を高めた微生物の取得・作製に必要なアラゲカワラタケ由来のセロビオースデヒドロゲナーゼをはじめとするセルロース分解酵素やセルロース分解酵素遺伝子の解明、ならびに該遺伝子を用いた遺伝子組換え技術、およびそのような技術によって得られる形質転換体を用いた効果的なパルプ処理方法については、特許文献1および特許文献2に示されている。しかしながら、これまで作製されているセルロース分解酵素活性抑制株はアミノ酸などの栄養要求性変異株を宿主とした形質転換微生物である。そのため、形質転換微生物を用いて菌処理する場合、アミノ酸などの要求性を相補する栄養源を予め添加しておかなくてはならない。そこで野性株を宿主とした有効なベクター系の開発が望まれている。
【0025】
担子菌において野性株を宿主としたベクター系の開発は、ファネロカエテ・クリソスポリウムME446株やファネロカエテ・クリソスポリウムBKM-F株を宿主として、推定されるファネロカエテ・クリソスポリウム由来の自律複製開始領域を含む酵母のYIp5に大腸菌由来のカナマイシン耐性遺伝子を組み込んだベクターpRR12による形質転換系の開発が報告されている(非特許文献27)。しかし、その形質転換効率は1μg当たり数個と非常に低いものであった。さらに異種微生物のDNAを担子菌に導入することによる安全性を確認する必要があり、法制上の問題から菌処理場が制約を受ける可能性がある。そこで内在性の遺伝子を用いた野生型のベクター系の開発が望まれている。
【0026】
Koenらは異担子菌門クロボ菌(Ustilago maydis)のカルボキシン耐性変異株から染色体ライブラリーを作製し、野生型クロボ菌に形質転換することによりカルボキシン耐性を示す形質転換株を得、導入遺伝子を解析し、コハク酸脱水素酵素のIpサブユニット遺伝子が関与していることを見出した(非特許文献28)。さらにBroomfieldらはコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子内のHis257がLeu257に置換されていることを見出した(非特許文献29)。本田らはヒラタケのコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子のクローニングを行い、他の微生物で良く保存された領域のHis残基をLeu残基に置換した変異遺伝子がカルボキシン耐性遺伝子として機能することを見出した(特許文献3)。佐藤らは新たにシイタケ(Lentinus edodes)から取り出したコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子を取り出し、変異導入することでシイタケでの形質転換系を開発したことを報告している(特許文献4)。
【0027】
【特許文献1】WO 03/070939、
【特許文献2】WO 03/070940
【特許文献3】特開2001-69987
【特許文献4】特開2003-189855
【非特許文献1】Bar-Lev and K.T. Kirk, Tappi J., 65, (10), 111, 1982
【非特許文献2】Myers., Tappi J., 71, (5), 105, 1988
【非特許文献3】Akamatsu et al., Mokuzai Gakkaishi, 30 (8) 697-702, 1984
【非特許文献4】Nishibe et al., Japan Tappi, 42 (2), 1988
【非特許文献5】Kashino et al., Tappi J., 76 (12), 167, 1993
【非特許文献6】Scott et al., Tappi J., 81. (12). 153, 1998
【非特許文献7】Ander and Eriksson, Svensk Papperstid., 18, 643, 1975
【非特許文献8】Ander and Eriksson, Svensk Papperstid., 18, 641, 1975
【非特許文献9】Eriksson and Vallander., Svensk Papperstid, 85, R33, 1982
【非特許文献10】Samuelsson et al., Svensk Papperstid., 8, 221, 1980
【非特許文献11】Oriaran et al., Tappi J., 73, (7), 147, 1990
【非特許文献12】Chen et al., Wood Fiber Sci., 27. 198, 1995
【非特許文献13】Molina, 50th Appita Annual General Conference, pp.57-63, 1996
【非特許文献14】Molina, 51th Appita Annual General Conference, pp.199-206 1997
【非特許文献15】P. Bajpai et al. J. Pulp and Paper Science: 27 (7), 235-239, 2001
【非特許文献16】Henrissat, B., Bairoch, A., Biochem. J., 293, 781(1993)
【非特許文献17】Henrissat, B., Cellulose. Commun., 5, 84-90 (1998)
【非特許文献18】Eriksson et al., FEBS Lett., 49, 282-285, 1974
【非特許文献19】Igarashi et al., Eur. J. Biochem., 253, 101, 1998
【非特許文献20】Dumonceaux, Enzyme Microb. 29, 478-489, 2001
【非特許文献21】G. Henriksson et al., J. Biotechnol. 78 (2000) 93-113
【非特許文献22】Raices et al., FEBS Letters, 69, 233-238, 1995
【非特許文献23】Li et al., Appl. Environ. Microbiol., 62(4), 1329-1335, 1996
【非特許文献24】Li et al. Appl. Environ. Microbiol., 63(2), 796-799, 1997
【非特許文献25】T.J.Dumonceaux et al., Gene. 210. 211-219 (1998)
【非特許文献26】S.M.Moukha et al., Gene, 234, 23-33, 1999
【非特許文献27】T. Randall et. al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 161(2), 720-725, 1989
【非特許文献28】J. P. R. Keon et. al., Curr. Genet. 19, 475-481, 1991
【非特許文献29】P. L. E. Broomfield et. al., Curr. Genet. 22, 117-121, 1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
リグノセルロース材料から繊維成分を取得する方法、特に紙パルプ製造において、省資源、省エネルギー化を目的に機械パルプや化学パルプ製造に先立ち、微生物処理を行うと、微生物が生産するセルロース分解酵素により、紙の主成分であるセルロースが分解され、パルプ収率や紙力の低下が生じる。また、また微生物の生育速度に合わせた長い処理時間を要す。これらの問題を解決する方法としてリグニン分解能力に優れ、セルロース分解酵素の活性が低く、併せて処理速度が速い微生物の作出が求められている。本発明者らはこれまでにリグニン分解力に優れ、複数のセルロース分解酵素活性が抑制された有用菌株の作製に成功している。しかしながら、これまで作製されているセルロース分解酵素活性抑制株はアミノ酸などの栄養要求性変異株を宿主とした形質転換微生物である。そのため、この形質転換微生物を用いて菌処理する場合、アミノ酸などの要求性を相補する栄養源を予め添加しておく必要がある。そこで野性株を宿主として作製された有効な形質転換微生物の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、アラゲカワラタケの薬剤感受性に関与する遺伝子に変異を導入することにより、薬剤耐性遺伝子を作出できること見出した。そして、セルロース分解酵素遺伝子の発現を抑制する遺伝子とともに、当該遺伝子を薬剤耐性マーカーとして用いることにより、セルロース分解酵素の活性が低く、増殖能力の高い微生物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0030】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)セルロース分解酵素発現抑制遺伝子とアラゲカワラタケの薬剤感受性に関与する遺伝子に変異を導入して得られる薬剤耐性遺伝子とを担持するアラゲカワラタケ形質転換体。
(2)セルロース分解酵素発現抑制遺伝子が、セルロース分解酵素遺伝子から転写されるmRNAの全部またはその一部に対して実質的に相補的な配列を有するアンチセンスRNAをコードするアンチセンスDNAである、(1)記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
(3)アンチセンスDNAが、セロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子またはグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターの制御下に連結されている、(2)項記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
(4)6種類以上のセルロース分解酵素遺伝子に対するセルロース分解酵素発現抑制遺伝子を担持する、(1)〜(3)のいずれかに記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
(5)エンドグルカナーゼ遺伝子、セロビオヒドロラーゼ遺伝子およびセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に対するセルロース分解酵素発現抑制遺伝子を担持する、(1)〜(4)のいずれかに記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
(6)リグノセルロース材料から繊維成分を取り出すことにより繊維成分を製造する方法であって、(1)〜(5)のいずれかに記載のアラゲカワラタケ形質転換体でリグノセルロース材料を処理し、繊維成分を分離・取得することを含む前記方法。
(7)繊維成分がパルプである(6)記載の方法。
(8)パルプが紙パルプである(7)記載の方法。
(9)紙パルプを分離・取得する方法が、化学パルプ化法、機械パルプ化法、またはセミケミカルパルプ化法である(8)記載の方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、リグニン分解能力に優れ、セルロース分解酵素の活性が低く、併せて処理速度が速い微生物が提供される。本発明により、機械パルプの製造においては、収率低下という従来技術の問題点が解消されるとともに、エネルギーの削減および紙力強度の向上が可能となる。また化学パルプの製造においては収率や紙力強度低下を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明者らは、アラゲカワラタケからカルボキシンによってその機能が抑制される遺伝子であるコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子を単離し、該遺伝子に人為的変異を導入することにより、カルボキシン耐性遺伝子を作出することに成功した。そして当該遺伝子を薬剤耐性遺伝子として利用することにより、野生型アラゲカワラタケを形質転換できることを見出した。そして、アラゲカワラタケにおいて、当該薬剤耐性遺伝子を薬剤耐性マーカーとして用い、セルロース分解酵素遺伝子の発現をアンチセンス法で抑制した結果、生育が早く、かつセルロース分解酵素活性が抑制された形質転換株を作出することに成功した。本発明は上記知見に基づくものである。
【0033】
一実施形態において本発明は、セルロース分解酵素発現抑制遺伝子とアラゲカワラタケの薬剤感受性に関与する遺伝子に変異を導入して得られる薬剤耐性遺伝子とを担持するアラゲカワラタケ形質転換体に関する。
【0034】
セルロース分解酵素発現抑制遺伝子は、該遺伝子が導入された宿主において転写されると、該宿主におけるセルロース分解酵素の発現、すなわちセルロース分解酵素遺伝子の発現を抑制する機能を有する遺伝子をさす。本発明において、セルロース分解酵素発現抑制遺伝子は、好ましくは、アンチセンス法、共抑制法、リボザイム法またはRNA干渉法に基づく機構により、セルロース分解酵素遺伝子の発現を抑制する。
【0035】
セルロース分解酵素遺伝子は、セルロース分解活性、すなわちβ-1,4-グルカン(セルロース)またはその誘導体のβ-1,4-グルコピラノシル結合を加水分解する活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、発現抑制の対象となるセルロース分解酵素遺伝子は、野生型アラゲカワラタケが有するセルロース分解酵素遺伝子である。例えば、セロビオースデヒドロゲナーゼ(CDH)遺伝子、エンドグルカナーゼ(EG)遺伝子(例えば、EG5遺伝子、EG12遺伝子、EG61遺伝子)、セロビオヒドロラーゼ遺伝子(例えば、CBHI-27遺伝子、CBHI遺伝子、CBHII遺伝子)が挙げられる。好ましくは、セルロース分解酵素遺伝子の2種以上、より好ましくは6種以上の発現を抑制することにより、セルロース分解力の抑制を強めた微生物を得ることができる。
【0036】
一実施形態において、セルロース分解酵素発現抑制遺伝子は、セルロース分解酵素遺伝子から転写されるmRNAの全部またはその一部に対して実質的に相補的な配列を有するRNA(アンチセンスRNA)をコードするアンチセンスDNAである。アンチセンスDNAの転写産物であるアンチセンスRNAは、宿主内に存在した場合に、その相補鎖であるセルロース分解酵素遺伝子のmRNAと結合し、それによってセルロース分解酵素遺伝子の翻訳を阻害し、発現を抑制する。
【0037】
また、実質的にとは、このアンチセンスRNAがmRNAとハイブリダイズして二本鎖を形成し、それがmRNAのタンパク質への翻訳を阻害する限り、このmRNAに相補的な配列に欠失、置換または付加等の変異があってもよいことを意味する。より詳しくは、アンチセンスRNAが、対象となるセルロース分解酵素遺伝子mRNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを意味する。ここでストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、すなわち、高い相同性(相同性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)を有する核酸がハイブリダイズする条件をいう。より具体的には、このような条件は、0.5〜1MのNaCl存在下42〜68℃で、または50%ホルムアミド存在下42℃で、または水溶液中65〜68℃で、ハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液を用いて室温〜68℃で洗浄することにより達成できる。
【0038】
アンチセンスRNAをコードするアンチセンスDNAの塩基配列の長さは、対象となるセルロース分解酵素遺伝子の発現を抑制し得る長さであれば適宜設定可能であり、セルロース分解酵素遺伝子mRNAの塩基配列の全部と等しい長さである必要は必ずしもない。一部とは、セルロース分解酵素遺伝子mRNAの塩基配列全体の通常30%、好ましくは50%、より好ましくは80%、さらに好ましくは90%に該当する長さである。
【0039】
アンチセンスRNAをコードするアンチセンスDNAの調製および宿主への導入方法については、当業者に公知の常法によって実施することができる。具体的には、セルロース分解酵素遺伝子mRNAに対するアンチセンスDNAは、セルロース分解酵素遺伝子の塩基配列のエクソン部分が得られるようにPCR法にて増幅を行い、適当な制限酵素で消化することにより得ることができる。また、セルロース分解酵素遺伝子cDNAからも取得可能である。さらには、このアンチセンスDNAは、セルロース分解酵素遺伝子の塩基配列情報をもとに人工的に作られた合成DNAであってもよい。
【0040】
このようなアンチセンスDNAを、好ましくは少なくとも2種類を、ベクターにおいてアンチセンスの方向に連結する。連結は、直接でも、またはリンカーを介した連結でもよい。発現を抑制する対象となる遺伝子は、異なる活性を持つセルロース分解酵素の遺伝子でもよいし、また同一の活性を有するアイソザイムの遺伝子であってもよい。なるべく多くの種類のアンチセンスDNAを結合することが好ましい。6種類以上のセルロース分解酵素遺伝子に対する発現抑制遺伝子を連結することがさらに好ましい。
【0041】
アンチセンスDNAは、宿主内で転写されたときに、セルロース分解酵素遺伝子の転写産物であるmRNAに対してハイブリダイズするアンチセンスRNAが生成するように宿主に導入する。通常、アンチセンスDNAを、アンチセンスRNAが生成するようにベクターに連結し、該ベクターを宿主に導入する。アンチセンスRNAが生成するようにベクターに連結するには、プロモーター配列を有するDNA断片の下流にアンチセンスの方向(逆向き方向)にアンチセンスDNAを連結し、プロモーターの作動によりRNAに転写されるようにする。得られるRNAは、セルロース分解酵素遺伝子のmRNAに対するアンチセンスRNAである。
【0042】
プロモーターとしては、プロモーターの作用を有する遺伝子断片であれば特に限定されることなく、あらゆる遺伝子のプロモーターを使用することができる。例えばセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、GPD(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子プロモーター、ras遺伝子プロモーター、リグニン分解関連遺伝子プロモーターなどが挙げられる。これらのプロモーターは、ジーンバンクに登録される配列、文献記載の配列等に基づいて周知のゲノムクローニングまたはPCR法によっても取得可能である。あるいは、寄託されている遺伝子については、分譲請求により入手可能なものを利用することができる。
【0043】
プロモーターとセルロース分解酵素遺伝子のアンチセンスDNAとは、必要に応じて制限部位の導入、平滑末端化または付着末端化後、適当なDNAリガーゼを用いて連結することができる。クローニング、連結反応、PCR等を含む組換えDNA技術は、例えば、J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989ならびにShort Protocols In Molecular Biology, Third Edition, A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.に記載の方法を利用することができる。
【0044】
セルロース分解酵素遺伝子の発現の抑制は、また、セルロース分解酵素発現抑制遺伝子として、リボザイムをコードするDNAを利用して行うことも可能である。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子のことをいう。リボザイムには種々の活性を有するものがあるが、中でもRNAを切断する酵素としてのリボザイムの研究により、RNAの部位特異的な切断を目的とするリボザイムの設計が可能となった。リボザイムには、グループIイントロン型や、RNasePに含まれるM1RNAのように400塩基以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40塩基程度の活性ドメインを有するものもある。標的を切断できるよう設計されたリボザイムをコードするDNAは、宿主中で転写されるようにプロモーターおよび転写終結配列に連結される。しかし、その際、転写されたRNAの5'末端や3'末端に余分な配列が付加されていると、リボザイムの活性が失われてしまうことがある。このようなとき、転写されたリボザイムを含むRNAからリボザイム部分だけを正確に切り出すために、リボザイム部分の5'側や3'側に、トリミングを行うためのシスに働く別のトリミングリボザイムを配置させることも可能である (K.Taira et al., Protein Eng., 3:733(1990); A.M.Dzianott およびJ.J.Bujarski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 86:4823(1989); C.A.Grosshans およびR.T.Cech, Nucleic Acids Res., 19:3875(1991); K.Taira et al., Nucleic Acids Res., 19 :5125(1991))。また、このような構成単位をタンデムに並べ、標的mRNA内の複数の部位を切断できるようにして、より効果を高めることもできる(N.Yuyama et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 186:1271, 1992)。このようなリボザイムを用いてセルロース分解酵素遺伝子の転写産物を特異的に切断し、該遺伝子の発現を抑制することができる。
【0045】
セルロース分解酵素遺伝子の発現の抑制は、さらに、セルロース分解酵素発現抑制遺伝子として、共抑制によりセルロース分解酵素遺伝子の発現を抑制するRNAをコードするDNA、すなわち、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有するDNAを用いることによっても達成されうる。共抑制とは、宿主に標的セルロース分解酵素遺伝子と同一もしくは類似した配列を有するDNAを形質転換により導入すると、導入した外来遺伝子および標的セルロース分解酵素遺伝子の両方の発現が抑制される現象のことをいう。共抑制に用いる遺伝子は、標的遺伝子と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の配列の同一性を有する。
【0046】
セルロース分解酵素遺伝子の発現の抑制は、セルロース分解酵素発現抑制遺伝子として、RNA干渉によりセルロース分解酵素遺伝子の発現を抑制するRNAをコードするDNA、すなわち、標的セルロース分解酵素遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を逆位反復に配置したDNAを用いることによっても達成されうる。RNA干渉とは、植物に標的セルロース分解酵素遺伝子と同一もしくは類似した配列を逆位反復に配置したDNAを形質転換により導入すると、外来DNAに由来する二本鎖RNAが発現し、標的遺伝子の発現が抑制される現象のことをいう。RNA干渉の機構としては、第一段階として標的遺伝子のmRNAと導入配列由来の二本鎖RNAが複合体を形成し会合した配列をプライマーとして相補的なRNAが合成され、第二段階として内在性RNase によってこの複合体が断片化され、第三段階として20〜30塩基対に断片化した二本鎖RNAが二次的なRNA干渉のシグナルとして機能することによって再び、標的遺伝子のmRNAを分解すると考えられている(Curr. Biol., 7:R793, 1997; Curr. Biol., 6:810, 1996)。RNA干渉に用いるDNAの長さとしては、標的遺伝子の全長を使用してもよいが、少なくとも20塩基、好ましくは30塩基以上、より好ましくは50塩基以上であればよい。
【0047】
薬剤耐性遺伝子は、特定の薬剤に対する抵抗性を宿主に付与する遺伝子をさす。本発明では、アラゲカワラタケの薬剤感受性に関与する遺伝子に変異を導入することにより宿主であるアラゲカワラタケ由来の薬剤耐性遺伝子を作製することに成功した。当該薬剤耐性遺伝子を形質転換の際の選抜マーカーとして用いることができる。このような薬剤耐性遺伝子は、宿主であるアラゲカワラタケに由来する遺伝子であることから、選抜マーカーとしてアラゲカワラタケに導入しても、アラゲカワラタケの増殖能力が低下することがない。従って、増殖能力の高く処理速度が速いアラゲカワラタケ形質転換体が得られる。また、栄養要求性変異株を宿主とした形質転換体と異なり、要求性を相補する栄養源を予め添加しておく必要もない。
【0048】
変異を導入する薬剤感受性に関与する遺伝子としては、アラゲカワラタケに存在するものであれば特に制限されず、例えば、コハク酸脱水素酵素Ipサブユニットをコードする遺伝子が挙げられる。その他、β−チューブリン遺伝子のコドン198における1塩基置換によりベンゾイミダゾール系薬剤に対して耐性を付与する薬剤耐性遺伝子が得られる。また、チトクロムb遺伝子の1塩基変異によりストロビルリン系薬剤に対して耐性を付与する薬剤耐性遺伝子が得られる。好ましくはコハク酸脱水素酵素Ipサブユニットをコードする遺伝子に変異を導入する。コハク酸脱水素酵素Ipサブユニットをコードする遺伝子に変異を導入することにより、カルボキシンに対して抵抗性を示す変異型コハク酸脱水素酵素Ipサブユニット、すなわちカルボキシン耐性遺伝子を作出することができる。
【0049】
本発明で導入する変異は、遺伝子が本来コードするアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を生じさせるものである。変異されるアミノ酸の数は、本発明の遺伝子が目的とする薬剤耐性遺伝子として効果を有する限り限定されない。
【0050】
コハク酸脱水素酵素Ipサブユニットをコードする遺伝子に変異を導入することにより得られるカルボキシン耐性遺伝子の一例として、配列番号33のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAが挙げられる。そのような塩基配列としては、配列番号32の塩基配列が挙げられる。本発明の薬剤耐性遺伝子には、配列番号32の塩基配列からなるDNAと機能的に同等のDNAが包含される。あるDNAと機能的に同等のDNAを調製する当業者によく知られた方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook, J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47-9.58, Cold Spring Harbor Lab. press(1989))を利用する方法が挙げられる。
【0051】
配列番号32の塩基配列からなるDNAと機能的に同等のDNAとしては、配列番号32の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが挙げられる。当該DNAはカルボキシン耐性遺伝子の機能を有する。ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、すなわち、高い相同性(相同性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)を有するDNAがハイブリダイズする条件をいう。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、5×SSC、0.1% SDSの条件であり、好ましくは50℃、5×SSC、0.1% SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、0.1×SSCおよび0.1% SDSの条件である。
【0052】
すなわち、配列番号32の塩基配列全長において、種々の人為的処理、例えば部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断による核酸断片の変異、欠失、連結等により、部分的にその配列が変化したものであっても、これらの変異型DNAが配列番号32の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、カルボキシン耐性遺伝子として機能するかぎり、配列番号32の塩基配列との相違に関わらず、本発明の薬剤耐性遺伝子に含まれる。
【0053】
また本発明の薬剤耐性遺伝子には、配列番号32記載の塩基配列と少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらに好ましくは少なくとも99%の同一性を有する塩基配列からなるDNAも包含される。
【0054】
上記のセルロース分解酵素発現抑制遺伝子および薬剤耐性遺伝子は、一般的な遺伝子組み換え技術に従って、アラゲカワラタケに導入することができる。典型的には、これらの遺伝子を適当なベクターに連結し、該ベクターでアラゲカワラタケを形質転換することにより、本発明のアラゲカワラタケ形質転換体を得ることができる。セルロース分解酵素発現抑制遺伝子と薬剤耐性遺伝子は、同じベクターに連結してもよいし、別々のベクターに連結してもよい。
【0055】
ベクターの種類は特に限定されないが、自律複製可能または染色体中に相同組換え可能なベクターを使用することができる。プラスミド、ファージを含むウイルス、コスミドなどである。ベクターは、選択マーカー、複製開始点、ターミネーター、ポリリンカー、エンハンサー、リボゾーム結合部位などを適宜含むことができる。種々のベクターが市販されているか、あるいは、文献等に記載されている。
【0056】
ベクターへの遺伝子の連結は、例えば、J. Sambrookら(上記)に記載される技術を使用して実施することができる。なお、アンチセンスRNAをコードするアンチセンスDNAをベクターに連結するにあたっては、上述のように、転写によりセルロース分解酵素遺伝子mRNAに対するアンチセンスRNAが生成するように連結する。組換えDNAを環状のまま形質転換に用いることも可能である。また他の生物由来の遺伝子を同時に形質転換することを避けるために、必要な領域のみを切り出して形質転換に供することも可能である。
【0057】
宿主細胞であるアラゲカワラタケは、特に制限されないが、例えば、独立行政法人製品評価技術機構からNBRC4917株として入手することができる株を使用できる。
【0058】
形質転換法としては、塩化カルシウム/PEG法、エレクトロポーレション法、プロトプラスト法、リポフェクション法などを例示できるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明はまた、リグノセルロース材料から繊維成分を取り出すことにより繊維成分を製造する方法であって、本発明のアラゲカワラタケ形質転換体でリグノセルロース材料を処理し、繊維成分を分離・取得することを含む前記方法に関する。
【0060】
本発明で対象となるリグノセルロース材料は、木材、竹、綿、リンター、トウモロコシ穂軸、バガス、ビール粕、わら類、もみ殻等の農産廃棄物、古新聞、雑誌、段ボール、オフィス古紙、パルプおよび製紙メーカーから排出する廃パルプ等が挙げられる。本発明の方法は、リグニン含量の高い木材および農産廃棄物等において特にその効果を発揮する。
【0061】
また、繊維成分として、好ましくはパルプを、より好ましくは紙パルプを分離・取得する。繊維成分として紙の原料となるパルプを取り出す場合、リグノセルロース材料として、木材を機械的に2〜3cm、厚さ約5 mmの大きさに小片化した木材チップが挙げられる。例えばマツ、スギ、モミ、トウヒ、ダグラスファー、ラジアータパイン等の針葉樹およびブナ、カバ、ハンノキ、カエデ、ユーカリ、ポプラ、アカシア、ラワン、ゴム等の広葉樹を含む木材から得られ、パルプ等の原料として用いることができるものであればいずれの材種のチップも用いることができる。紙パルプを分離・取得方法としては、化学パルプ化法、機械パルプ化法およびセミケミカルパルプ化法などを使用できる(紙パルプ製造技術シリーズ、第1巻クラフトパルプ、第2巻メカニカルパルプ、紙パルプ技術協会編)。
【0062】
リグノセルロース材料を本発明の形質転換体で処理する工程において、セルロース分解力が抑制された本発明の形質転換体が十分に生育するのであれば、リグノセルロース材料は前処理なくそのまま用いることができるが、他の微生物を殺菌するための前処理を実施した方が本発明の形質転換体が生育しやすいのであれば、オートクレーブやスチーミング等の処理により、リグノセルロース材料を予め処理することが好ましい。
【0063】
リグノセルロース材料を、本発明の形質転換体で処理する温度は10〜60℃が好ましく、さらに好ましくは20〜30℃である。リグノセルロース材料中の水分は20〜80%、好ましくは30〜50 %とするのがよい。接種後リグノセルロース材料への空気供給量はセルロース分解力を抑制した微生物が十分に生育可能であれば必要ないが、通常、対チップもしくはリグノセルロース材料容積1L当たりに供給する空気量が毎分0.001〜1 L/(L・min)(以下、空気供給量の単位 L/(L・min)をvvmと称する)とするのがよく、好ましくは、対チップもしくはリグノセルロース材料容積当たり0.01 vvm〜0.1 vvmである。
【0064】
本発明の形質転換体のリグノセルロース材料への接種量は、パルプ収率や紙力を軽減することがない限り、適宜設定することができる。本発明の形質転換体は、滅菌水とともに粉砕し、リグノセルロース材料に対して植菌して培養することができるが、リグノセルロース材料に培地を添加して処理してもよい。培地は、本発明の形質転換体が生育できるのであればいずれの培地も用いることができる。例えば、炭素源としては、グルコース、セロビオース、デンプン、非晶性セルロース等を使用することができる。また、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、各種アミノ酸、大豆粕、コーンスティープリカー、尿素や各種無機窒素などの窒素化合物を用いることができる。さらに、必要に応じて、各種塩類やビタミン、ミネラル等を適宜用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0066】
実施例1 カルボキシン耐性遺伝子の作製
a.アラゲカワラタケ由来カルボキシン耐性遺伝子を、以下の工程により得た。
1)アラゲカワラタケのゲノムDNAライブラリーの調製
2)コハク酸脱水素酵素Ipサブユニットの単離
3)塩基配列の決定
4)変異の導入
【0067】
以下、各工程について順に説明する。
1)アラゲカワラタケのゲノムDNAライブラリーの調製
アラゲカワラタケ(IFO 4917株)の平板寒天培養から直径5 mmの寒天片をコルクボーラーで打ち抜き、グルコース・ペプトン培地(グルコース2 %、ポリペプトン0.5 %、酵母エキス0.2 %、KH2PO4 0.1 %、MgSO4・7H2O 0.05 %、リン酸でpH 4.5に調整)200 mlに植菌し、28 ℃で7日間回転振盪培養を行った。菌体を濾過により集菌後、1Lの滅菌水で菌体を洗浄し、液体窒素で凍結した。
【0068】
この凍結菌体5gを乳鉢により粉砕した。粉砕した菌体を遠心管に移し、溶菌緩衝液(100 mM トリス(pH 8)、100 mM EDTA、100 mM NaCl、さらにプロテイナーゼKを100 μg/mLとなるように添加)10 mlを加え、55℃で3時間インキュベートした。インキュベート後、フェノール処理、クロロホルム処理を行い、水層部分にエタノールを徐々に添加しDNAが析出したところで染色体DNAを巻取り、TE溶液に懸濁した。
【0069】
得られたゲノムDNA 100μgを制限酵素Sau3AIで部分分解し、5〜20%ショ糖密度勾配超遠心分離(30,000 rpm,18時間)により分画し、20〜40 kbp断片区分を集めた。この断片区分を東洋紡社製ファージλEMBL3-BamHIアームにT4DNAリガーゼを用いて連結し、得られたファージDNAをSTRATAGENE社製ギガパックゴールドによりパッケージング後、大腸菌P2392株に感染せしめゲノムDNAライブラリーとした。
【0070】
2)ゲノムDNAライブラリーからのコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子の単離
目的とするカルボキシン感受性に関与するコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子はゲノムDNAライブラリーから公知の方法(プラークハイブリダイゼーション法やPCR法など)によりスクリーニングすることができる。すなわち、コハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子において保存性の高いアミノ酸配列をもとに配列番号1の縮重センスプライマーおよび配列番号2の縮重アンチセンスプライマーを合成し、それらを用いて縮重PCR法を行ったところ、233塩基対のDNA断片が増幅された。得られたDNA増幅断片の塩基配列を公知の方法により決定し、他の担子菌、例えば、ヒラタケやシイタケにおける公知のコハク酸脱水素酵素Ipサブユニットと比較したところ相同性を有していた。その後、該DNA断片をプローブとしてAmarsham AlkPhos Direct Labering and Detection Systemを用いて、上記1)で得られたゲノムDNAライブラリーからスクリーニングを行った。その結果、約40,000個のプラークの中から2個の陽性クローンを選抜することができた。陽性クローンから常法に従って調製した組換え体ファージDNAを各種制限酵素で消化し、上記の合成DNAを用いてサザンハイブリダイゼーションを行った。その結果、共に約3kbのSal I断片にハイブリダイズした。この断片をpBluescriptsII SK(-)にサブクローニングした。
【0071】
3)塩基配列の決定
上記2)で得られたDNA断片をApplied Biosystems社製塩基配列解析試薬を用いてPCR反応を行い、反応産物をApplied Biosystems社製DNAシーケンサABI PRISM 310自動塩基配列決定装置を用いて塩基配列を決定した。
【0072】
その結果を配列番号3に示す。より具体的にはこのSal I断片には約1.7kbのプロモーター領域、1kbの構造遺伝子領域、そして約100bpのターミネーター領域から成っていた。構造遺伝子領域は他の担子菌コハク酸脱水素酵素遺伝子アミノ酸配列と比較すると、268アミノ酸残基から構成され、5つのイントロンにより分断されていると考えられた。なお、このアラゲカワラタケ由来の配列番号4のコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット(CbxS)と配列番号5のヒラタケ由来のコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット(CbxS)を比較するとアミノ酸配列上で81.4%の相同性が認められた。また、保存性の高い領域としてcystein-rich clusterがI〜IIIと3カ所認められた(図1)。
【0073】
4)変異の導入
カルボキシン耐性遺伝子は、コハク酸脱水素酵素Ipサブユニットの特徴的構造であるCys-rich clusterIIIに含まれるHis残基をLeuに部位特異的変異を導入することでカルボキシン耐性遺伝子が得られる。そこで配列番号3に示す塩基配列のうち、5’上流側末端を1番目とするときの2834番目のアデニン(A)をチミン(T)に置き換えた塩基配列を持つ配列番号6のセンスプライマーを作製し、変異導入にはTAKARA Mutan-super Express Km Kitを用いた。また変異導入するために上記3kbのSal I断片をクローニングベクターpKF19kのSal Iサイトへサブクローニングした。
【0074】
得られたプラスミドに対し変異導入用センスプライマーとキット付属のselectionプライマーを用いて表1に示す組成で94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で4分間PCR反応を30サイクル行った。
【0075】
【表1】

【0076】
得られたPCR産物に25μlの4M酢酸アンモニウムおよび100μlのエタノールを加え、-20℃で30分間放置した。その後、微量遠心機で10分間遠心し、沈殿を回収した。70%エタノールで2回沈殿を洗浄し、エタノールを除去後、真空乾燥により沈殿を乾燥させた。沈殿を5μlの滅菌蒸留水で懸濁した。大腸菌MV1184コンピテントセル100μlにエタノール沈殿により回収したDNA溶液2μlを混合し、0℃で30分間、42℃で45秒間、0℃で2分間静置した。その後、37℃のLB培地を加えて、1mlとし、37℃で1時間振盪した。カナマイシン100μg/mlを含むLB-Kmプレート上に振盪液を20μl塗布し、37℃で一晩静置した。出現したコロニーからDNAを調製し、シーケンスを行い、239残基目のHisがLeuに変異していることを確認し、プラスミドpCHCBX1を得た。
【0077】
実施例2 カルボキシン耐性遺伝子によるアラゲカワラタケの形質転換
1)一核菌糸体培養
直径6 mm前後のガラスビーズを約30個入れた500 ml容三角フラスコにSMY培地(シュークロース1 %、麦芽エキス1 %、酵母エキス0.4 %)100 mlを分注して滅菌後、アラゲカワラタケIFO4917株の平板寒天培地から直径5 mmの寒天片をコルクボーラーで打ち抜きSMY培地に植菌し、28 ℃で7日間静置培養した(前培養)。ただし、菌糸を細分化するために、1日に1〜2回振り混ぜた。次に、1L容の三角フラスコにSMY培地200 mlを分注し、さらに回転子を入れ、滅菌後、前培養菌糸をナイロンメッシュ(孔径30μm)で濾集し、全量を植菌し、28 ℃で培養した。なお、スターラーで1日2時間程度撹拌することにより菌糸を細分化した。この培養を4日間行った。
【0078】
2)プロトプラストの調製
上記液体培養菌糸をナイロンメッシュ(孔径30μm)で濾集し、浸透圧調節溶液(0.5 M MgSO4、50mlマレイン酸バッファー(pH 5.6))で洗浄した。次に、湿菌体100 mgあたり1 mlの細胞壁分解酵素液に懸濁し、緩やかに振盪しながら28℃で3時間インキュベートしてプロトプラストを遊離させた。細胞壁溶解酵素として、次の市販酵素製剤を組み合わせて使用した。即ち、セルラーゼ・オノズカ(cellulase ONOZUKA RS;ヤクルト社製)5 mg、ヤタラーゼ(Yatalase;宝酒造社製)10 mgを上記浸透圧調節溶液1 mgに溶解して酵素液として用いた。
【0079】
3)プロトプラストの精製
上記酵素反応液からナイロンメッシュ(孔径30μm)で菌糸断片を除いた後、プロトプラストの回収率を高めるため、ナイロンメッシュ上に残存する菌糸断片とプロトプラストを上記浸透圧調節溶液で1回洗浄した。得られたプロトプラスト懸濁液を遠心分離(1,000×g、5分間)し、上静を除去し、4 mlの1Mシュークロースを含む20 mM MOPS緩衝液(pH 6.3)で再懸濁後、遠心操作を繰り返し、上記1Mシュークロース溶液で2回洗浄した。沈殿物に1Mソルビトールを含む20 mM MES緩衝液(pH 6.4)に40 mM塩化カルシウムを加えた溶液500μlに懸濁し、プロトプラスト懸濁液とした。この懸濁液を4℃で保存した。プロトプラスト濃度は血球計算盤を用いて、直接検鏡により求めた。すべての遠心操作はスウィングローターで1,000×g、5分間、室温で行った。
【0080】
4)形質転換
約106個/100μlのプロトプラスト懸濁液100μlに対して、実施例1で作製したプラスミドpCHCBX1を制限酵素SalIで切り出し、アラゲカワラタケ由来のDNA部分のみをアガロースゲルから回収したDNA断片を2μg添加し、30分間氷冷した。次に、プロトプラストDNA混合液に対して等量のPEG溶液(50 % PEG 3,400を含む20 mM MOPS緩衝液(pH6.4))を加え、さらに30分間氷冷した。次に、0.5 Mシュークロースを含む最小寒天培地(寒天1%)10mlに緩やかに混和して固化し、28℃で培養した。上記シャーレを28℃で数日間培養を行い、3日後カルボキシン2μg/mlを含む最小寒天培地10mlを重層し、さらに培養を継続した。重層後、生育した形質転換体を選抜した。なお、この時、pCHCBXを混和していない形質転換系では菌体の生育は認められなかった。
【0081】
実施例3 セルロース分解酵素発現抑制遺伝子を含むベクターの構築
実施例2においてアラゲカワラタケ由来コハク酸脱水素酵素Ipサブユニットの239残基目のHis残基をLeu残基へ変異導入することにより当該変異型遺伝子がカルボキシンに対して耐性を有することが認められた。この薬剤耐性遺伝子を選抜マーカーとして用い、セルロース分解酵素発現抑制遺伝子と共に用いることにより成長が速く、かつセルロース分解酵素活性が抑制された有用株の選抜を行った。
【0082】
1)アンチセンスRNAを生成するプロモーターを有するベクタープラスミドの調製
アラゲカワラタケで機能するプロモーターであればどのようなプロモーターを用いても構わないが、木質バイオマス上で機能させるためリグニン分解関連遺伝子プロモーターやセルロース分解酵素関連遺伝子プロモーターを用いることが好ましい。そこでパルプ上でアラゲカワラタケを培養したときに酵素活性が高いセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター領域の増幅を行うため、アラゲカワラタケのゲノムDNAを鋳型にして、配列番号7に示すプライマーと配列番号8に示すプライマーを用いてPCR反応を行った。得られた約2.2kbのDNA断片は、TOPO TA Cloning Kit (Invitrogen 社製)を用いてクローニングを行い、pTACDHPを得た。プロモーター領域において翻訳開始点の約800 bp上流に、NcoIサイトが存在したため、pTACDHPを制限酵素NcoIで消化後、末端平滑化反応を行い、再度ライゲーション反応を行った。このプラスミドは、制限酵素BamHI、制限酵素NotIで消化後、pBluescriptII SK+プラスミドを制限酵素BamHIならびに制限酵素NotIで消化したベクターに導入し、pCDHPとした。
【0083】
さらにpCDHPの下流にマンガンパーオキシダーゼ遺伝子(MnP)のイントロンを含む3’末端領域(0.8 kb)を導入するために、アラゲカワラタケ由来MnP遺伝子を含むプラスミドpBSMPOG1を鋳型に、配列番号9に示すプライマーと配列番号10に示すプライマーを用いて、PCR反応を行った。得られた0.8 kbのDNA断片はTOPO TA Cloning Kit を用いてクローニングを行った後、得られたプラスミドを制限酵素NcoIと制限酵素NotIで消化した後、アガロースゲル電気泳動により0.8 kbのDNA断片を回収し、上記プラスミドpCDHPを制限酵素NcoIと制限酵素NotIで消化したベクターpCDHPに導入し、プラスミドpCDHP-Mnpterとした。
【0084】
2)アンチセンスDNAを含むプラスミドの調製
エンドグルカナーゼ・ファミリー61遺伝子(EG61)のDNA断片を増幅するため、チップ上で生育中のアラゲカワラタケから作製したcDNAライブラリーを鋳型に、配列番号11に示すプライマーと配列番号12に示すプライマーを用いてPCRにより増幅し、430bpの断片をTOPO TA Cloning Kit を用いてクローニングを行い、得られたプラスミドを配列番号13に示すM13フォワード(-20)プライマーを用いて解析を行い、pCR-TOPO上に存在するlacZ遺伝子(β-ガラクトシダーゼ遺伝子)に対し、センス方向に挿入されているクローンを選抜し、pTA-EG61とした。
【0085】
次にセロビオヒドロラーゼII遺伝子の第三エクソン領域(620 bp)を増幅するためにゲノムDNAを鋳型に、制限酵素サイトを付加した配列番号14に示すプライマーと配列番号15に示すプライマーを用いてPCRを行った。得られたDNA断片は制限酵素HindIII、制限酵素HincIIで消化し、挿入断片を得た。このDNA断片を上記プラスミドpTA-EG61を制限酵素HindIIIならびに制限酵素HincIIで消化したベクターに導入し、pTA-CBHII-EG61とした。
【0086】
次にセロビオヒドロラーゼI-27遺伝子の第三エクソン領域(750 bp)を増幅するため、ゲノムDNAを鋳型に、制限酵素サイトを付加した配列番号16に示すプライマーと配列番号17に示すプライマーを用いてPCR法にて増幅した。得られたDNA断片を制限酵素SacI、制限酵素XbaIで消化し、挿入断片を得た。このDNA断片を上記プラスミドpTA-CBHII-EG61を制限酵素SacI、制限酵素XbaIで消化したベクターに導入し、プラスミドpTA-CBHII-EG61-CBHIとした。
【0087】
さらに、セロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子の630 bpのDNA断片を増幅するためにゲノムDNAを鋳型に、制限酵素サイトを付加した配列番号18に示すプライマーと配列番号19に示すプライマーをを用いてPCR法にて増幅した。得られたDNA断片は制限酵素SacIで消化し、挿入DNA断片を得た。このDNA断片を上記プラスミドpTA-CBHII-EG61-CBHIをSacIで消化したベクターに導入し、得られたプラスミドを配列番号17に示すプライマーと配列番号18に示すプライマーを用いてPCRを行い約1.4kbのDNA断片が増幅されるクローンを選抜し、pTA-CBHII-EG61-CDH-CBHIとした。
【0088】
さらに、エンドグルカナーゼ・ファミリー5遺伝子(EG5)の500 bpのDNA断片を取得するため、チップ上で生育しているアラゲカワラタケから作製したcDNAライブラリーを鋳型に、配列番号20に示すプライマーと配列番号21に示すプライマーを用いてPCRを行い、DNA断片を増幅した。得られたDNA断片はTOPO TA Cloning Kit を用いてクローニングを行い、M13プライマーによる解析の結果、βガラクトシダーゼ遺伝子とセンス方向に挿入されているクローンをpTA-EG5とした。
【0089】
また、エンドグルカナーゼ・ファミリー12遺伝子(EG12)の500 bpのDNA断片を取得するため、チップ上で生育しているアラゲカワラタケから作製したcDNAライブラリーを鋳型に配列番号22に示すプライマーと配列番号23に示すプライマーを用いてPCR法にて増幅した。得られた断片は制限酵素XhoIならびに制限酵素XbaIで消化後、上記で得られたプラスミドpTA-EG5を制限酵素XhoIならびに制限酵素XbaIで消化したベクターに導入し、pTA-EG5-EG12とした。
【0090】
EG5とEG12を含むDNA断片を調製するために配列番号24に示すプライマーと配列番号25に示すプライマーを用いてPCRを行った。得られたDNA断片を制限酵素KpnIで消化し、両端にKpnIサイトを持つ約1kbの断片を得た。この断片を4種類のセルロース分解酵素遺伝子断片を持つプラスミドpTA-CBHII-EG61-CDH-CBHIのCDH(セロビオースデヒドロゲナーゼ)遺伝子部位に存在するKpnIサイトに導入し、6種の遺伝子断片が同方向に連結したDNA配列をもつプラスミドpTA-CBHII-EG61-EG5-EG12-CDH-CBHIを調製した。
【0091】
次にCDH遺伝子プロモーター領域を含むプラスミドpCDHP-Mnpterにセルロース分解酵素遺伝子のDNA断片をアンチセンス方向に挿入する操作を行った。上記プラスミドから6種類のセルロース分解関連酵素遺伝子のDNA断片を含む領域を増幅するため、配列番号26に示すプライマーと配列番号27に示すプライマーを用いて上記プラスミドpTA-CBHII-EG61-EG5-EG12-CDH-CBHIを鋳型にPCR反応を行い、約3.4kbのDNA断片を得た。得られたDNA断片はNcoIで消化後、pCDHP-Mnpterのプロモーター領域とMnp遺伝子3’末端領域の連結部位のNcoIサイトにセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターに対してアンチセンス方向に挿入した。プロモーター領域の下流には順にCBHI-27、CDH、EG12、EG5、EG61、CBHII遺伝子断片が連結している。以上の操作により、CDH遺伝子のプロモーターにより6種類のセルロース分解酵素遺伝子に対するアンチセンスRNAを生成する、6種類のアンチセンスDNAを含むプラスミドpCDHP-T6とした(図2)。
【0092】
実施例4 セルロース分解酵素活性が抑制された形質転換体の選抜
実施例1で得られたpCHCBX1(0.2μg)と実施例3で得られたpCDHP-T6(2.0μg)を用いて、実施例2記載の方法によりアラゲカワラタケを形質転換した。前記形質転換法にて単離された形質転換体は酸素漂白後広葉樹パルプ(LOKP)・ペプトン培地(LOKP 1 %、ポリペプトン1 %、KH2PO4 0.15 %、 MgSO4 0.05 %、リン酸でpH 5.0に調製)を100 mlずつ含む300 ml容三角フラスコに植菌し、28 ℃、120 rpmで振盪培養した。セロビオヒドロラーゼI活性、セロビオースデヒドロゲナーゼ活性、CMC分解活性を経時的に測定した。その結果、培養5日目において、セロビオヒドロラーゼI活性が80%、セロビオースデヒドロゲナーゼ活性が90%、CMC分解活性が30%抑制された形質転換体を得ることができた。一方、同条件下で培養したpCHCBHI27PMPを含まないアラゲカワラタケOJI-1078株(FERM BP-4210)の培養上清には本活性は認められなかった。
【0093】
実施例5 セルロース分解酵素活性を抑制された形質転換体で処理した木材チップからの機械パルプの製造
実施例4により選抜したセルロース分解酵素活性が抑制された形質転換株をポテトデキストロース寒天培地上で28 ℃にて培養した後、4℃で保存した。このプレートから直径5mmのコルクボーラーで打ち抜いた切片を5個ずつ、グルコース・ペプトン培地(グルコース3 %、ポリペプトン1 %、KH2PO4 0.15 %、MgSO4 0.05 %、リン酸でpH 5.0に調製)100 mlを含む300 ml容三角フラスコに植菌し、28℃、100 rpmで1週間振盪培養した。培養後、菌体をろ別し、菌体に残存した培地を滅菌水で洗浄した。菌体は滅菌水と共に、ワーリングブレンダーで45秒間処理し、絶乾重量1 kgの針葉樹チップに対し、菌体の乾燥重量が5 mgになるように植菌した。植菌後は菌が全体に行き渡るようによく撹拌した。培養は28 ℃で通気をしながら2週間培養を行った。この時、チップ含水率が40〜65 %になるように随時飽和水蒸気を通気させた。また、通気する際の通気量は対チップ当り、0.01 vvmになるように行った。
【0094】
菌処理後の木材チップをラボ用リファイナー(熊谷理機工業社製)を用いて叩解して、カナディアンスタンダードフリーネスを80 mlとした後、パルプ物理用試験用手抄きシートの調製はJIS試験法(P8209)に準拠して、パルプ手抄きシートの物理試験はTappi法T220 om-83に準拠して行った。使用電力量はワットメーター(Hiokidenki model 3133)と積分計(model 3141)を用いた。チップ収率測定は水分を含んだ木材チップを容器に絶乾重量で1 kg分取し、処理前後のチップ絶乾重量を測定し、以下の式を用いてチップ収率を算出した。
【0095】
(処理後の絶乾重量)/(処理前の絶乾重量)×100
結果を表2に示した。
【0096】
比較例1 アラゲカワラタケ野生株を用いた機械パルプの製造
実施例5で、セルロース分解酵素活性が抑制された形質転換株の代わりにアラゲカワラタケの野生株を用いた他は、同様の方法で行った。結果を表2に示した。
【0097】
比較例2 菌処理を行わないチップからの機械パルプの製造
実施例5で、菌を接種することなしに同様の方法で行った。結果を表2に示した。
【0098】
【表2】

【0099】
表2に示すようにセルロース分解酵素活性が抑制された実施例4の形質転換株は比較例2に示した菌処理をしない場合に比べて解繊エネルギーを削減できた。比較例1の野性株は、比較例2の菌処理をしない場合に比べると解繊エネルギーは削減できるが、チップ収率も、紙力(比引裂強さと比破裂強さ)も共に低下が大きかった。実施例4の形質転換株は比較例1に示す野性株に比べて収率の減少を改善することができ、また、引裂き強さ、破裂強さ共に比較例1の野性株より改善することができた。
【0100】
実施例6 セルロース分解酵素活性が抑制された形質転換体により処理したチップからのクラフトパルプの製造
実施例5に準じてラジアータパイン(針葉樹チップ)の代わりに広葉樹ユーカリ材のチップ処理を行った後、絶乾重量400 gのチップを測りとり、オートクレーブ内で液比5、硫化度30 %、有効アルカリ16 %(Na2Oとして)となるように蒸解白液を加え、蒸解温度を160 ℃の間で蒸解後のカッパー価が16になるようにクラフト蒸解を行った。クラフト蒸解終了後、黒液を分離し、得られたチップを高濃度離解機によって解繊後、濾布で遠心脱水と水洗浄を3回繰り返した。次いでスクリーンにより、未蒸解の粕を分離し、遠心脱水し蒸解未漂白パルプを得た。粕は105 ℃で乾燥後絶乾重量を測定した。また未漂白パルプの一部を採って絶乾重量を測定し、チップからの収率(精選収率)を求めた。またパルプのカッパー価の測定を、JIS P 8211に準じて行った。結果を表3に示した。
【0101】
次にクラフト蒸解して得られたパルプに対して、NaOHを2.0質量%添加し、酸素ガスを注入し、100 ℃、酸素ゲージ圧0.49 MPa(5 kg/cm2)で60分間処理を行った。続いて得られたパルプを下記に示すように、二酸化塩素処理(D)−アルカリ抽出処理(E)−過酸化水素処理(P)−二酸化塩素処理(D)の4段漂白処理を行った。最初の二酸化塩素処理(D)は、パルプ濃度が10質量%となるように調製し、二酸化塩素を0.4質量%添加し、70 ℃、40分間処理を行った。次いで、イオン交換水にて洗浄、脱水後、パルプ濃度を10質量%に調製し、苛性ソーダを1質量%添加し、70 ℃、90分間のアルカリ抽出処理(E)を行った。次いで、イオン交換水にて洗浄、脱水後、パルプ濃度を10質量%に調製し、過酸化水素0.5質量%、苛性ソーダ0.5質量%を順次添加し、70 ℃、120分間の過酸化水素処理(P)を行った。次いで、イオン交換水にて洗浄、脱水後、パルプ濃度を10 %に調製し、二酸化塩素0.25質量%を添加し、70 ℃、180分間、二酸化塩素処理(D)を行った。最後にイオン交換水にて洗浄、脱水後、JIS P 8123に準じた白色度86.0 %の漂白パルプを得た。
【0102】
上記で得たパルプ濃度が4質量%のパルプスラリーをリファイナーによりフリーネスが410 ml(CSF)となるように叩解した。パルプ物理試験用手抄きシートの調製はJIS試験法(P8209)に準拠して、パルプ手抄きシートの物理試験はTappi法T220 om-83に準拠して行った。結果を表3に示した。
【0103】
比較例3 アラゲカワラタケ野生株を用いたクラフトパルプの製造
実施例6で、セルロース分解酵素活性が抑制されたた形質転換株の代わりにアラゲカワラタケの野生株を用いた他は、同様の方法で行った。結果を表3に示した。
【0104】
比較例4 菌処理を行わないチップからのクラフトパルプの製造
実施例6で、菌を接種することなしに同様の方法で行った。結果を表3に示した。
【0105】
【表3】

【0106】
表3に示すように、形質転換株で処理した木材チップ(実施例6)、野生株で処理した木材チップ(比較例3)をカッパー価16となるように蒸解した際のパルプの精選収率は菌で処理しなかった場合(比較例4)に比べて、いずれも増加し、粕率は減少した。またいずれの菌処理(実施例6,比較例3)でも、処理しない場合(比較例4)に比べて、目標フリーネスが410 mlに達するまでのPFIミルによる叩解の回転数を削減できた。
【0107】
また野性株で処理した場合(比較例3)は菌で処理しない場合(比較例4)に比べて、比引裂強さ、裂断長、比破裂強さ、耐折強さのいずれも低下していたが、形質転換体で処理した場合(実施例6)は菌処理しない場合(比較例4)に比べて、比引裂強さ、裂断長の強度低下がみられるものの、その低下の程度は野性株の場合(比較例3)に比べて小さくなっており、また比破裂強さはむしろ菌処理しない場合より強度が高まっていた。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明により得られたセルロース分解酵素活性が抑制された形質転換体を木材チップに接種し、通気、保温することにより、パルプの収率低下や紙力の低下の少ない方法で、木材中のリグニンを分解することができ、機械パルプの製造工程では大量に電力エネルギーを消費する叩解エネルギーを削減することができる。また、化学パルプの製造工程では、蒸解性の向上と収率増加が可能となり、紙パルプ製造工程上有利である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】アラゲカワラタケ由来のコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット(CbxS)とヒラタケ由来のコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット(CbxS)とを比較した結果を示す。
【図2】6種類のセルロース分解酵素遺伝子に対するアンチセンスRNAを生成する、6種類のアンチセンスDNAを含むプラスミドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース分解酵素発現抑制遺伝子とアラゲカワラタケの薬剤感受性に関与する遺伝子に変異を導入して得られる薬剤耐性遺伝子とを担持するアラゲカワラタケ形質転換体。
【請求項2】
セルロース分解酵素発現抑制遺伝子が、セルロース分解酵素遺伝子から転写されるmRNAの全部またはその一部に対して実質的に相補的な配列を有するアンチセンスRNAをコードするアンチセンスDNAである、請求項1記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
【請求項3】
アンチセンスDNAが、セロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子またはグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターの制御下に連結されている、請求項2項記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
【請求項4】
6種類以上のセルロース分解酵素遺伝子に対するセルロース分解酵素発現抑制遺伝子を担持する、請求項1〜3のいずれか1項記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
【請求項5】
エンドグルカナーゼ遺伝子、セロビオヒドロラーゼ遺伝子およびセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に対するセルロース分解酵素発現抑制遺伝子を担持する、請求項1〜4のいずれか1項記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
【請求項6】
リグノセルロース材料から繊維成分を取り出すことにより繊維成分を製造する方法であって、請求項1〜5のいずれか1項記載のアラゲカワラタケ形質転換体でリグノセルロース材料を処理し、繊維成分を分離・取得することを含む前記方法。
【請求項7】
繊維成分がパルプである請求項6記載の方法。
【請求項8】
パルプが紙パルプである請求項7記載の方法。
【請求項9】
紙パルプを分離・取得する方法が、化学パルプ化法、機械パルプ化法、またはセミケミカルパルプ化法である請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−104937(P2007−104937A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297869(P2005−297869)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】