説明

薬効性組成物

【課題】 タデの持つ特性を有効に活用するために、タデにおける有効成分を抽出し、健康食品や医薬の原料として用い、より効率的にタデをしようできる薬効性の高い組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 タデ科タデ属の植物、特には、ヤナギタデの栽培品種である、紅タデの若芽からの抽出物で、水及び酢酸可溶性又は酢酸難溶性であるが、エタノール可溶性であるもの、さらには、イデイン又はケルシトリンを主たる成分とするものは、薬効性が高く、当該組成物は、タデの特性を有する健康食品や医薬の原料となるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タデ科植物からの抽出によって得られる薬効性を有する組成物に関するものであって、健康食品の原料として、さらには、各種疾病の予防又は治療用の医薬として使用される可能性の高いもので、それらの健康食品調製、医薬調製技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タデ科タデ属の植物は、北海道から沖縄にわたる日本全土、台湾や中国を含む北半球の温帯から熱帯にかけて広く分布する、河川、沼地などの水辺に生える一年草で、特に、ヤナギダテは、栽培品種も開発され、発芽した子葉は「芽ダテ」と称され、刺身のつまやタデ酢として使用されている。
【0003】
また、タデは、秋に全草を採取して民間薬、すなわち、利尿、解熱、虫刺され、食あたり、暑気あたりなどの治療薬として用いられているもので、タデには、血液凝固促進作用や血圧下降作用があるとされている。
【0004】
一方、生体内で生成される活性酸素やフリーラジカルが、生体組織の酸化を促し、生活習慣病の発症や進行に関与していることが明らかにされ、抗酸化活性を有する植物ポリフェノールやフラボノイド類に関心が寄せられている。
特に、フラボノイドの摂取が冠動脈心疾患を予防する可能性が疫学調査により明らかにされ、特表2001−51153号公報(特許文献1)には、水溶性で生体吸収性の高いプロアントシアニジンを主体とするブドウ種子抽出物を血管治療薬の成分として利用することが示されている。
【0005】
さらに、福岡県朝倉地区で多量に栽培されている紅タデには、アントシアニン系の紅色の色素が41.5μg/100g、ポリフェノール類が230mg/100g含まれ、それらは抗酸化活性の高いものであるから、生活習慣病の発症や進行を抑える働きが期待されているものである。
【0006】
また、本出願人は、先に、特許第3108059号公報(特許文献2)に示したように、精白ハトムギ粉末を高濃度酢酸処理後プロテアーゼ分解することにより、生理活性ペプチド組成物が得られることを見出している。
【特許文献1】特表2001−51153号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3108059号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者等は、タデの持つ特性をより深く追求し、それらの特性を有効に活用するために、タデにおける有効成分を探索し、また、健康食品や医薬の原料として用い、より効率的にタデを使用することについて検討した。
【0008】
その結果、発明者は、タデからの酢酸抽出、特に、精白ハトムギ粉末から生理活性ペプチド組成物を作出する際に用いた、高濃度酢酸処理後のタデからの酢酸による抽出が、殺菌、脂溶成分の溶出、抗酸化成分に有効であることを見出し、この発明を完成したのである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、この発明の請求項1に記載の発明は、
タデ科タデ属の植物からの抽出物からなるもので、
酢酸可溶性又は酢酸難溶性であるが、エタノール可溶性であること
を特徴とする薬効性組成物である。
【0010】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の薬効性組成物において、
前記酢酸可溶性の抽出物が、
水にも可溶性であること
を特徴とするものである。
【0011】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の薬効性組成物において、
前記タデ科タデ属の植物が、
ヤナギタデ又はその栽培品種であること
を特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の薬効性組成物において、
前記タデ科タデ属の植物が、
紅タデであること
を特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載の薬効性組成物において、
前記抽出物が、
酢酸による抽出物であること
を特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載の薬効性組成物において、
前記抽出物が、
高濃度酢酸処理が施されたタデ科タデ属の植物からの酢酸抽出物であること
を特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項6に記載の薬効性組成物において、
前記高濃度酢酸処理における酢酸濃度が、
20〜30質量%で、抽出時の酢酸濃度が4質量%以下であること
を特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1に記載の薬効性組成物において、
前記エタノール濃度が、
50〜80質量%であること
を特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項1〜8のいずれかに記載の薬効性組成物において、
前記タデ科タデ属の植物からの抽出物が、
前記植物の若芽又は生育葉からの抽出物であること
を特徴とするものである。
【0018】
さらに、この発明の請求項10に記載の発明は、
イデイン、ケルシトリン又はポリフェノール類を主たる成分とするものであること
を特徴とする薬効性組成物である。
【0019】
また、この発明の請求項11に記載の発明は、
請求項10に記載の薬効性組成物において、
前記イデイン、ケルシトリンまたはポリフェノール類を主たる成分とするものが、
タデ科タデ属の植物からの抽出物であること
を特徴とするものである。
【0020】
さらにまた、この発明の請求項12に記載の発明は、
請求項1〜11のいずれかに記載の薬効性組成物を含有すること
を特徴とする医薬である。
【0021】
さらにまた、この発明の請求項13に記載の発明は、
請求項1〜11のいずれかに記載の薬効性組成物を含有すること
を特徴とする健康食品である。
【発明の効果】
【0022】
この発明の薬効性組成物は、以下のような優れた医学的効果を奏するもので、健康食品の素材として、また医薬の原料として、有効に利用されるものである。
1.赤血球変形能の改善(いわゆる血液さらさら状態への改善)
2.軽症糖尿病の治療効果
3.肝機能の改善
4.免疫機能の活性化
5.血小板、白血球の増大
【0023】
また、この発明の薬効性組成物は、粉末状態でも、酢酸あるいは水又はエタノール溶液としても使用することができるため、上記のような効果を発現させるために、健康食品や医薬として利用する際に、効率的に又効果的に活用することを可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明は、タデ科タデ属の植物からの抽出物からなるもので、タデ科タデ属の植物としては、通常、マタデ、ホンタデとも呼ばれるヤナギタデ、好ましくは、その栽培品種である紅タデ(ムラサキタデ)、アザブタデ、ホソバタデ等が用いられ、特に好ましいものは紅タデである。
【0025】
抽出に際しては、前記タデの葉が用いられ、好ましいのは発芽した子葉、すなわち「芽ダテ」であるが、生育した葉、すなわち「生育タデ」も十分に使用可能である。
【0026】
それら「芽ダテ」や「生育タデ」は、凍結乾燥または通風乾燥して粉末としたものが、抽出するには好適であるが、粉末とせず、葉そのものを用いることも可能で、それら生葉は、水道水、脱イオン水で洗浄した上で、特に高濃度酢酸処理が施された後に抽出、通常酢酸抽出処理される。
【0027】
高濃度酢酸処理は、合成酢酸や醸造酢を濃縮した濃厚酢酸など90%濃度の酢酸から始めて、水により3〜4倍に希釈して1〜2時間処理することであり、高濃度酢酸処理後は、多量の水を加えて、希酢酸とし、その状態で抽出するのが好ましく、その際の酢酸濃度としては4%以下、特に2〜3%とするのが好ましい。
【0028】
このようにして抽出されたものは、種々の成分からなる組成物であるが、希酢酸、特に2〜3%濃度の希酢酸に溶解するものである。また、後述する種々の特性を有するものであるので、健康食品の素材として、また、医薬の原料として、有効に利用されるものである。
【0029】
また、酢酸による抽出後に残存する残渣物を、50〜80%エタノールで抽出処理することによって、希酢酸に難溶でエタノール可溶性である抽出物が得られる。この組成物も後述するように、上記組成物とは若干異なるが、それなりの特性を有するものである。
【0030】
酢酸およびエタノールによる抽出は、室温で0.5〜2時間、攪拌しながら行うことが好ましく、それにより、目的とする抽出物が得られる。
【0031】
上記したように、この発明における抽出物は、酢酸抽出を主に、エタノールを従にして得られたものである。その際、エタノールを主に、酢酸を従にする抽出物とすることも可能である。しかしながら、その場合は、異なる成分が構成成分となり、特性に異なるところがあるので、使用に際しては、十分に検討を加えてから行うのが望ましい。
【実施例】
【0032】
<組成物の調製>
紅タデの芽タデおよび生長タデの、それぞれの凍結乾燥粉末100gに90%酢酸125ml加え、ついで250mlの脱イオン水を加えて掻き混ぜ、室温で2時間インキュベート処理した。
その後、さらに2.5lの脱イオン水を加えて約1時間攪拌後、80メッシュの濾布を用いて遠心濾過し、残渣に再び2lの脱イオン水を加えて攪拌後、遠心濾過した。得られた濾液を併せて、遠心分離(10,000回転で10分間)して、上清と沈殿に分け、得られた上清液を、減圧濃縮後凍結乾燥して組成物Aを得た。
組成物Aは、水、希酢酸、エタノール(80%)のいずれにも可溶で、芽タデからは36.5g、生長タデからは33.7g得られた。
一方、遠心濾過における残渣物と遠心分離における沈殿物は併せて、凍結乾燥した後、80%エタノールを600ml加え、室温で1時間攪拌した。
遠心分離して得られた上清液を、減圧濃縮後凍結乾燥して組成物Bを得た。
組成物Bは、希酢酸に難溶で、エタノール(80%)に可溶で、一部水(pH7)にも可溶なもので、芽タデからは9.0g、生長タデからは8.3g得られた。
【0033】
<組成物Aの分析>
芽タデから抽出した組成物A500mgを用いて、以下の条件によるゲル濾過法により構成成分の検出と分取を行い、得られたゲル濾過の溶出パターンを図1に、19の画分に分けて分取した結果を、表1に示す。
【0034】
<ゲル濾過条件>
凍結乾燥した組成物Aを1%酢酸溶液に溶解し、遠心分離して得られた上清液を、予め1%酢酸溶液で洗浄したBio−Gel P−10(4×45cm)カラムに供し、1%酢酸溶液で展開した。溶出液はドロップカウンターを用いて一定量ずつ分取し、成分の検出は230nmと280nmにおける吸光度を測定して行った。
【0035】
【表1】

【0036】
<抗酸化活性の測定1>
上記で得られた各画分の抗酸化活性を、リノ−ル酸の酸化物がβ−カロチンを退色させる作用を利用したMillerらの方法に準じ、以下の方法で測定した結果を図2に示した。図から明らかなように多くの画分に抗酸化活性が認められた。
【0037】
<抗酸化活性の測定方法>
試料液0.1mlを分注した分光光度計用試験管セルに、リノ−ル酸−β−カロチン溶液4.9mlを加えて攪拌し、温度50℃の恒温槽で、一定時間インキュベ−トした場合のβ−カロチンの退色度を470nmの吸光度によって求め、試料を加えない場合の酸化度を100として酸化度を求めた。
【0038】
<免疫機能測定>
芽タデから抽出された組成物Aによる免疫機能の活性化を判断するために、組成物AのTNF(Tumor Necrosis Factor)−αの産生量を測定した。
図3に示される結果から明らかなように、組成物Aにより免疫機能の活性化が図れることが認められる。なお、TNF−αの産生量の測定は、以下のようにして行った。
【0039】
<TNF−αの産生量測定方法>
ヒト末梢血より分離した好中球の浮遊液(1.0×10細胞/ml)500μlに、芽タデから得た組成物Aの、希釈度の異なる溶液10μlを加え、5%COを含むインキュベータ中で、温度37℃で、6時間インキュベータ処理をした後、1500rpmで5分間遠心分離し、得られた上清液400μl中のTNF−α量を、ELISA法により定量した。なお、添加した試料の濃度は、希釈度によって表した。
【0040】
<赤血球変形能低下抑制機能測定1>
赤血球変形能は、酸化剤(AAPH:2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩)の影響で低下するが、上記組成物Aによる低下抑制機能を、以下に示す方法で測定した。
図4はその結果で、上記組成物Aによる抑制効果が顕著に認められた。
【0041】
<赤血球変形能低下抑制機能測定方法>
3.8%クエン酸ソーダ溶液1.0mlを含む採血管に、採血した血液10.0mlを2500rpm×10分遠心分離して赤血球を沈殿させた後、洗浄し、HEPESを加え、6.0%赤血球浮遊液を調製した。
この6.0%赤血球浮遊液3mlにHEPESを(a3.0ml、b2.40ml、c2.34ml)加え、温度37.0℃で予備インキュベートしたのち、bとcには500mMのAAPH溶液0.6ml、cには組成物Aの酢酸溶液0.06ml(10.0mg/ml)を添加し、温度37.0℃で45分インキュベートした。
その後、測定するまで氷冷し、測定は、温度25.0℃で7分、再度インキュベートしてから行った。なお、aはコントロールである。
【0042】
なお、赤血球変形能は、従来の定量性と再現性に難点のある微細孔(nucleipore)フィルターを用いた方法に代わるものとして、発明者が開発したフィルター特性が顕著に改善された、ニッケルメッシュ(nickel mesh)フィルターを用いる、以下の方法で測定した。
ニッケルメッシュは、フォトレジスト法と特殊メッキ法を組み合わせて作成されたニッケル薄膜フィルターで、微小孔の数、形状、分布が正確に一定であるばかりでなく、数秒間の超音波洗浄によって100回以上の再使用が可能である。
加えて、ニッケルメッシュの微小孔の辺縁は滑らかでテーパを持ち、これにより混入白血球が機械的影響を受けることはなく、微小孔には融合や分枝がまったくない。これらの特徴により、以下の方法は、高い定量性と再現性を保持するものである。
【0043】
<赤血球変形能測定法(Nickel mesh filtration法)>
試験は、垂直に立てたガラス管(vertical tube)に、タイゴンチューブを介してニッケルメッシュホルダーを接続し、通常15cmの高さ(height:h)より、HEPESバッファーで調整した生理食塩水を用いて作成した赤血球浮遊液を濾過させて行う。
ガラス管の周囲は恒温水を還流させて、試料を定温に保っている。
ガラス管のゼロレベルに設置した圧力(pressure:P)トランスデューサーで、試料を濾過中の圧力降下を連続的に検出し、これを増幅器とAD変換器を介してパソコンに取り込み、流量(flowrate:Q)を計算する。
流量は、圧力を高さに変換し(P=ρgh)、高さ‐時間(h−t)曲線の微分値(dh/dt)を取って、これにガラス管の断面積(a)を乗じて得られる(Q=dh/dt・a)。
血球を含まないコントロール溶液(HEPESバッファー調整生食水:ニュートン流体)の圧‐流量曲線を対照として、赤血球浮遊液の圧‐流量曲線を検討し、ある一定圧(通常100mm・HO)での、対照液の流量に対する赤血球浮遊液の流量(%)をもって赤血球変形能を評価する。
【0044】
<赤血球変形能低下抑制機能測定2>
図1に示されるように、組成物Aは、大きく分けて、前半に溶出される抗酸化性フェノール酸含有画分と、後半に溶出される赤紅色のフラボノイド含有画分とに分けることができるので、それぞれの画分をプールして、赤血球変形能低下抑制機能を測定した。
なお、ここで使用した試料は、組成物Aの70%エタノール可溶画分である。
図5に示されるように、赤血球変形能低下抑制機能はフラボノイド含有画分に顕著に認められた。なお、aはコントロールで、bはAAPHのみ添加、cはAAPHとフェノール酸含有画分添加、dはAAPHとフラボノイド含有画分を添加した試料である。
【0045】
<抗酸化活性の測定2>
上記で得られた二つの画分の抗酸化活性を、前記した方法に準じ、測定し、合成抗酸化剤BHA(t−ブチルヒドロキシアニソール)換算量として示した結果を図6に示す。
図から明らかなように、フェノール酸含有画分の抗酸化活性は小さいものであった。なお、aは組成物Aそのもので、bはフェノール酸含有画分、cはフラボノイド含有画分である。
【0046】
<ラジカル捕捉活性の測定>
上記で得られた二つの画分と組成物Aのラジカル捕捉活性を、以下の方法で測定した。その結果を図7に示す。図7から明らかなように、フラボノイド含有画分は顕著なラジカル捕捉活性を示した。
【0047】
<ラジカル捕捉活性測定法>
DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)溶液(DPPH400μM:MES200μM:20%エタノール=1:1:1)900μlに、80%エタノール(300−a)μlと試料aμlを加え、室温で20分間反応させた後、520nmでの吸光度の減少を測定する。
アスコルビン酸(AsA)でDPPHラジカル捕捉活性の検量線を作成し、試料g当たりのラジカル捕捉活性をAsA当量(μmol)で表した。
【0048】
<フラボノイド含有画分の再分画>
上記の顕著な特性を示すフラボノイド含有画分を、逆相HPLCで再分画を行い、図8の結果が得られた。
3つのピークa、aおよびbについて、吸収スペクトルを測定した結果は図9のとおりである。
ピークaの成分はイデイン、ピークbの成分はケルシトリンと推定された。
【0049】
<再分画条件>
フラボノイド含有画分5.7mgを230μlの0.1%TFA溶液に溶解した後、200μlを逆相HPLC(21.5×300mm)に供した。温度40℃、5ml/minの流速で溶出し、280nmで検出を行った。
1回の逆相HPLCで、ピークaで示される成分2.8mg、ピークaで示される成分1.8mg、ピークbで示される成分2.0mg得られた。
【0050】
<赤血球変形能低下抑制機能測定3>
フラボノイド含有画分の再分画で得られた、ピークaの成分、すなわちイデイン、ピークbの成分、すなわちケルシトリンの赤血球変形能低下抑制機能を測定し、その結果を図10に示す。
図10に示されるように、両者に赤血球変形能低下抑制機能が認められたが、ピークaの成分には抑制機能は認められなかった。
なお、aはコントロールで、bはAAPHのみ添加、cはAAPHとピークa成分添加、dはAAPHとピークb成分を添加した試料である。
【0051】
<生体での機能測定>
この発明の薬効性組成物の生体に与える影響について、ラットを用いて検討した。
ラットとしては、9〜10週齢雄Wistar系SPFラットを用い、糖尿病での影響をみるために、糖尿病を誘発するSTZ(ストレプトゾトシン)の投与したラットについても検討した。
この発明の薬効性組成物としては、芽タデから抽出した組成物Aと、生長タデから抽出した組成物Bを選択し、その0.5%と0.1%をオリエンタル酵母(株)の飼料MFに混入してラットに与えた。
検討項目は、以下のとおりである。
1.体重
2.血糖値(尾静脈:グルテストエースR(三和化学研究所)使用)
3.血液検査(腹大動脈から採血:血液一般、生化学検査(血漿)、赤血球変形能)
4.組織観察(顕微鏡)
【0052】
表2は、STZを投与し、糖尿病などの異常を起こさせたラットにおける、この発明の薬効性組成物の影響を調べた結果を示すものである。
この発明の薬効性組成物の投与によって、AST、ALTの数値が著しく改善されており、肝機能の改善に効果のあることが認められ、また、LDLコレステロールの減少にも機能していることが認められた。
【0053】
【表2】

【0054】
表3は、表1と同様に試験したものであるが、より多くの検査を行ったものである。
この表からは、この発明の薬効性組成物の投与により赤血球変形能が著しく改善され、血液をさらさらにする効果が認められた。また、生長タデ群はSTZ投与による血小板減少を防止する効果が見られた。
【0055】
【表3】

【0056】
表4および表5は、正常のラットにこの発明の薬効性組成物を投与することによる影響を調べたもので、正常なラットについては、血小板増加効果が認められたが肝機能その他悪影響は全く見られなかった。
【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
免疫機能検査としては、TNF−αと膵臓ランゲルハンス島の免疫染色による組織観察によって行った。
タデを投与することによって、TNF−αは増大し、免疫機能促進効果が見られた。
【0060】
組織観察は、WistarラットにSTZ45mg/Kgを腹腔内に注射し、糖尿病モデル動物を作成して行った。
それらモデル動物を、体重の減少と血糖値を指標にして、重症糖尿病モデル群と軽症糖尿病モデル群の2群に分けた。
各群に0.5%組成物A(芽タデ)含有食餌を与えて、糖尿病モデル動物の膵臓ランゲルハウス島(ラ氏島)を顕微鏡で観察し、この発明にかかる薬効性組成物の糖尿病の膵臓に及ぼす影響を調査した。
顕微鏡観察は、各動物を、エーテル麻酔下で屠殺後、膵臓を摘出し、クリオスタット切片を作製、H・E染色と抗インシュリン抗体を用いた免疫染色を施し、一次抗体は、マウス抗インシュリンモノクローナル抗体(Lab Vision.、Co.、CA、USA)、二次抗体は、ウマ抗マウスIgG−FITC(Vector Labs、CA、USA)を用い蛍光抗体法によって染色したのち行った。
【0061】
図11は、正常対照ラットの膵臓ラ氏島のH・E染色像を示し、図12は、正常対照ラットの膵臓ラ氏島のインシュリン抗体による免疫染色像を示す。
図13は、重症糖尿病モデルラットの膵臓ラ氏島のH・E染色像を示し、図14は、重症糖尿病モデルラット膵臓ラ氏島のインシュリン抗体による免疫染色像を示す。
図15は、芽タデ投与後における軽症糖尿病モデルラットの膵臓ラ氏島のH・E染色像を示し、図16は、芽タデ投与後の軽症糖尿病モデルラット膵臓ラ氏島のインシュリン抗体による免疫染色像を示す。
【0062】
これらの図から明らかなように、体重減と高血糖値を示した重症糖尿病モデル群は、ラ氏島の顕著な萎縮、内分泌細胞の変形・変性とアポトーシスによる、細胞死が惹起されていた。
免疫染色の結果、インシュリン産生B細胞は、数の著減とともに変形・変性像が観察された。
残存している変形・変性B細胞の核は、偏在しており、細胞質のインシュリンは、弱陽性な免疫染色反応を示した。重症糖尿モデル群に対して芽タデ投与の効果は、特に観察されなかった。
一方、芽タデを投与した軽症糖尿病モデル群では、ラ氏島の大きさに特に変化は認められなかった。免疫染色の結果も、ラ氏島周辺部に微弱な免疫陽性反応を示す細胞が少数局在していたが、これ以外はほぼ正常に類似の形態と免疫染色反応で示された。
以上の結果から芽タデの投与は、軽症糖尿病モデル群に対して有効に働き、軽症糖尿病から重症糖尿病への移行を抑制するか、あるいは遅延させる可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明の薬効性組成物は、上記のような優れた特性を有し、かつ粉末ないし水、酢酸またはエタノールの無毒の溶媒溶液として供給可能なため、健康食品産業や医薬業界で広く利用される可能性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の薬効性組成物のゲル濾過法における溶出パターン図である。
【図2】この発明の薬効性組成物を分画して得た各画分の抗酸化活性を示す図である。
【図3】この発明の薬効性組成物の添加によるTNF−αの産生量の変化を示した図である。
【図4】この発明の薬効性組成物の赤血球変形能低下抑制機能を示した図である。
【図5】この発明の薬効性組成物の分画分の赤血球変形能低下抑制機能を示した図である。
【図6】この発明の薬効性組成物の分画分の抗酸化活性を示した図である。
【図7】この発明の薬効性組成物と分画分のラジカル捕捉活性を示した図である。
【図8】この発明の薬効性組成物のフラボノイド含有画分の逆相HPLCチャートである。
【図9】フラボノイド含有画分の逆相HPLCで再分画された成分の吸収スペクトルである。
【図10】再分画分の赤血球変形能低下抑制機能を示した図である。
【図11】正常対照ラットの膵臓ラ氏島のH・E染色像を示す顕微鏡写真である。
【図12】正常対照ラットの膵臓ラ氏島のインシュリン抗体による免疫染色像を示す顕微鏡写真である。
【図13】重症糖尿病モデルラットの膵臓ラ氏島のH・E染色像を示す顕微鏡写真である。
【図14】重症糖尿病モデルラット膵臓ラ氏島のインシュリン抗体による免疫染色像を示す顕微鏡写真である。
【図15】この発明の薬効性組成物投与後の軽症糖尿病モデルラットの膵臓ラ氏島のH・E染色像を示す顕微鏡写真である。
【図16】この発明の薬効性組成物投与後の軽症糖尿病モデルラット膵臓ラ氏島のインシュリン抗体による免疫染色像を示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0065】
なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タデ科タデ属の植物からの抽出物からなり、
酢酸可溶性又は酢酸難溶性であるが、エタノール可溶性であること
を特徴とする薬効性組成物。
【請求項2】
前記酢酸可溶性の抽出物が、
水にも可溶性であること
を特徴とする請求項1に記載の薬効性組成物。
【請求項3】
前記タデ科タデ属の植物が、
ヤナギタデ又はその栽培品種であること
を特徴とする請求項1又は2に記載の薬効性組成物。
【請求項4】
前記タデ科タデ属の植物が、
紅タデであること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬効性組成物。
【請求項5】
前記抽出物が、
酢酸による抽出物であること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薬効性組成物。
【請求項6】
前記抽出物が、
高濃度酢酸処理が施されたタデ科タデ属の植物からの酢酸抽出物であること
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薬効性組成物。
【請求項7】
前記高濃度酢酸処理における酢酸濃度が、
20〜30質量%で、抽出時の酢酸濃度が4質量%以下であること
を特徴とする請求項6に記載の薬効性組成物。
【請求項8】
前記エタノール濃度が、
50〜80質量%であること
を特徴とする請求項1に記載の薬効性組成物。
【請求項9】
前記タデ科タデ属の植物からの抽出物が、
前記植物の若芽又は生育葉からの抽出物であること
を特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の薬効性組成物。
【請求項10】
イデイン、ケルシトリン又はポリフェノール類を主たる成分とするものであること
を特徴とする薬効性組成物。
【請求項11】
前記イデイン、ケルシトリン又はポリフェノール類を主たる成分とするものが、
タデ科タデ属の植物からの抽出物であること
を特徴とする請求項10に記載の薬効性組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の薬効性組成物を含有すること
を特徴とする医薬。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の薬効性組成物を含有すること
を特徴とする健康食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−241143(P2006−241143A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22747(P2006−22747)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(599035339)株式会社 レオロジー機能食品研究所 (16)
【Fターム(参考)】