説明

薬学的に活性な因子の骨への局在化を促進するための方法および組成物

脊椎動物において、骨は、ハイドロキシアパタイトのカルシウムベースの結晶性構造に埋め込まれたコラーゲン線維によって形成される結合組織である。骨に対して結合特異性を有するペプチドのファミリーを含む組成物、およびコーティング組成物を生成するためのそれらの使用が提供される。上記コーティング組成物は、薬学的に活性な因子を骨に送達するために使用され、骨インプラント、骨修復、および骨関連疾患に関する方法において使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本明細書に記載される本発明の事項は、薬学的に活性な因子を骨に標的化するための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明の事項は、骨インプラント、骨修復、および骨関連疾患に関連する組成物および方法において有用な骨向性ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
脊椎動物において、骨は、ハイドロキシアパタイトのカルシウムベースの結晶性構造に埋め込まれたコラーゲン線維によって形成される結合組織である。骨の完全性は、外傷、感染、癌腫、変性疾患、もしくは外科手術手順によって損なわれる。
【0003】
鉱物質を失った骨マトリクス(DBM)は、骨インプラント物質として臨床の実践において広く使用されてきた。しかし、DBMは、骨誘導性である能力が比較的低い。DBMが骨誘導を誘導する能力を欠いていることは、骨の代替の形態として、上記物質の使用を制限する要因と考えられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明に従う一実施形態は、コーティング組成物を含む。上記コーティング組成物は、骨に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、および薬学的に活性な因子に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインを含む。上記骨に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインは、上記薬学的に活性な因子に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインに連結される。上記骨に特異的に結合する1つの結合ドメインは、ペプチドを含む。上記ペプチドは、約5アミノ酸から約50アミノ酸;および上記ペプチドのN末端から最初の5アミノ酸から最初の10アミノ酸内の範囲において連続するアミノ酸を含む配列内に、3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基から構成されるドメインもしくはモチーフを含む。上記ペプチドはまた、骨に対して結合特異性を有する。上記ペプチドは、配列Gly−Ile−Alaによって特徴づけられるコラーゲン配列細胞結合ドメインを欠いている。上記薬学的に活性な因子に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインは、約3アミノ酸から約50アミノ酸を有するアミノ酸配列を含むペプチドを含み、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する。
【0005】
本発明に従う別の実施形態は、以下の式の組成物を含む:
−J−X−P;
ここでXは、(i)約5アミノ酸〜約50アミノ酸を含み;(ii)上記ペプチドのN末端から最初の5アミノ酸から最初の10アミノ酸内の範囲において連続するアミノ酸を含む配列内に、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基から構成されるドメインもしくはモチーフを含み;(iii)骨に対して結合特異性を有し;そして(iv)配列Gly−Ile−Alaによって特徴づけられるコラーゲン由来細胞結合ドメインを欠いている、ペプチドを含む。
【0006】
Jは存在しないか、またはリンカーである。
【0007】
は存在しないか、または約3アミノ酸から約50アミノ酸を有するアミノ酸配列を含み、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含む。
【0008】
Pは存在しないか、またはXおよびPのうちのいずれか1つ以上が存在しない場合に、Xが配列番号1〜45のうちのいずれか1つの配列を有するアミノ酸配列を含むペプチド、または配列番号1〜45のうちのいずれか1つの配列と95%同一性を有するアミノ酸配列を含む薬学的に活性な因子を含む。
【0009】
別の実施形態は、骨向性ペプチドを含む。上記骨向性ペプチドは、5個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列内に、Phe、Try、およびTyrのうちの1種以上を含む、3個以上の芳香族アミノ酸残基を含み、ここで上記骨向性ペプチドは、骨に対して結合特異性を有し、配列Gly−Ile−Alaによって特徴づけられるコラーゲンを結合するための配列を含まない。
【0010】
別の実施形態は、薬学的に活性な因子を骨もしくは骨インプラントに送達するための送達系を含み、上記送達系は、第1の骨に結合する結合ドメインであって、ここで上記第1の結合ドメインは、配列番号1〜45を有するペプチドのうちの1つ以上を含む、第1の骨に結合する結合ドメインを含むペプチドを含み、上記ペプチドは、薬学的に活性な因子に結合する第2の結合ドメインを含み、そして上記送達系は、上記ペプチドを、骨もしくは骨を含むインプラントに接触させるための接触器系を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
多くの実施形態は、本特許出願において記載され、そして例示目的でのみ示される。上記記載される実施形態は、いかなる意味でも限定しないし、限定するとは意図されない。ここで開示される発明は、上記開示から容易に明らかであるように、多くの実施形態に広く適用可能である。当業者は、開示される発明が種々の改変および変更(例えば、構造的改変および化学的改変)とともに実施され得ることを認識している。上記開示される発明の特定の特徴は、1つ以上の特定の実施形態および/もしくは図面を参照して記載され得るが、このような特徴が、別段明記されなければ、記載されるものを参照して、1つ以上の特定の実施形態もしくは図面における使用に制限されないことが理解されるべきである。
【0012】
本開示は、全ての実施形態の文字通りの記載でもなく、全ての実施形態に存在するはずである本発明の特徴の列挙でもない。
【0013】
標題(本願の第1頁目の始めに示される)も要約書(本願の終わりに示される)も、上記開示される発明の範囲と同様に、いかなる様式においても限定すると解釈されるべきではない。
【0014】
本発明の事項は、骨に対して結合特異性を有する1種以上のペプチド(「骨向性ペプチド」ともいわれる)を使用して、骨を標的とするための方法および組成物を含む。いくつかの実施形態に関して、上記結合特異性は、骨で見いだされるI型コラーゲンに対するものである。これらペプチドのうちの1種以上は、それだけで骨に結合し得、そして骨誘導、骨伝導、および/もしくは骨生成のうちの1種以上を促進することにおいて、薬学的に活性な因子として働き得ると予測される。さらに、いくつかのペプチドの実施形態は、1種以上の薬学的に受容可能な薬剤に連結され、上記1種以上の薬学的に活性な因子を骨に送達しかつ局在化するために、本発明のコーティング組成物の実施形態を形成する。
【0015】
一実施形態において、コーティング組成物は、ペプチドを含む。いくつかの実施形態について、コーティング組成物は骨に適用され、上記骨の表面にコーティングを形成する。他の実施形態に関して、コーティング組成物は、骨インプラントに適用される。上記コーティングされた骨表面もしくはインプラント表面は、内因的に生成された薬学的に活性な因子(例えば、上記コーティングされた骨もしくはコーティングされた骨インプラントを受けている個体によって生成されるもの)の付着を補充および/もしくは促進する。上記コーティング組成物の実施形態は、骨誘導、骨伝導、および/もしくは骨生成のうちの1種以上を促進する。
【0016】
本発明の事項はまた、構造および機能を共有するペプチドのファミリーを含む。上記ペプチドは、Phe、Trp、Tyrのうちの1種以上を含む大きな芳香族アミノ酸残基が豊富なアミノ酸配列を含む。上記ペプチドは、骨に対して結合特異性を有する。ペプチドのこのファミリーは、コラーゲン配列細胞結合ドメイン(例えば、Gly−Ile−Ala)を欠いており、このことは、米国特許第6,818,620号においてさらに記載されている。ペプチドのこのファミリーは、上記ペプチドのアミノ酸配列の5個の連続するアミノ酸を含む配列内に3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基を含む、それ自体の特有のドメイン(骨結合もしくは骨向性に寄与する)によって、特徴づけられる。これらペプチドをコードするヌクレオチド配列およびベクターはまた、本発明のこの実施形態において含まれる。それらのアミノ酸配列とともに、上記ファミリー内のペプチドの実施形態のリストは、表1に例示される。
【0017】
【表1−1】

【0018】
【表1−2】

本発明の別の実施形態は、式Iの組成物を含む:
−J−X−P。
【0019】
は、いくつかの実施形態については、約5〜約50アミノ酸、他の実施形態については、約10アミノ酸〜約25アミノ酸、および他の実施形態については、約10アミノ酸〜約15アミノ酸のアミノ酸配列を含むペプチドである。上記ペプチドは、大きな芳香族アミノ酸残基(Phe、Trp、Tyrのうちの1種以上)が豊富である。いくつかの実施形態については、上記ペプチドは、上記ペプチドのアミノ酸配列のN末端から最初の10個の連続するアミノ酸を含む配列内に、3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基のドメインもしくはモチーフを含む。上記ペプチドの実施形態は、骨に対して結合特異性を有し;配列Gly−Ile−Alaによって特徴づけられるコラーゲン配列細胞結合ドメインを欠いている。
【0020】
Jは存在しないか、またはリンカーである。
【0021】
は存在しないか、またはいくつかの実施形態については、いくつかの実施形態については、約3アミノ酸から約50アミノ酸、他の実施形態については、約10アミノ酸から約25アミノ酸、および他の実施形態については、約10アミノ酸から約15アミノ酸を有するアミノ酸配列を含むペプチドである。Xの実施形態は、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する。
【0022】
Pは存在しないか、または薬学的に活性な因子である。
【0023】
Jが存在せずかつXが存在する実施形態において、Xは、Xに共有結合される。JおよびXが存在しない実施形態において、Pは、Xに共有結合されているか、またはXに非共有的に結合されているかのいずれかであり得る。XおよびPが存在する実施形態において、Pは、Xに非共有的に結合されている。一実施形態において、Xは、配列番号1〜45から選択されるアミノ酸配列、または配列番号1〜45とは1〜3個のアミノ酸だけ異なりかつ骨に対して結合特異性を保持している配列を含む。
【0024】
本発明の他の実施形態は、ペプチドおよび/もしくは組成物実施形態で骨の表面をコーティングするための方法を包含し、その結果、骨誘導、骨伝導、および/もしくは骨生成のうちの1種以上が、上記ペプチドおよび/もしくは組成物で処置されていない骨と比較して、増強される。ペプチドおよび/もしくは組成物実施形態を組み込んでいる骨を製造するための方法もまた、含まれる。
【0025】
本明細書に記載される実施形態は、骨に対して結合特異性を有するペプチドを含む。実施形態はまた、ペプチド実施形態を含むコーティング組成物を含む。実施形態はまた、骨のためのコーティング、骨をコーティングするための方法の実施形態、およびこれら組成物でコーティングされた骨を含む。
【0026】
本明細書に記載される実施形態は、骨誘導、骨伝導、および/もしくは骨生成のうちの1つ以上を促進することにおいて、1種以上の薬学的に活性な因子を骨に送達、局在化、補充、および/もしくは支持することのうちの1つ以上を行い得る送達系の実施形態を含む。このような送達系実施形態は、例えば、疾患もしくは望ましい結果が骨形成を増強する状態において有用である。
【0027】
(定義)
本明細書に記載される実施形態の生物学的分子に関する種々の用語は、本明細書および特許請求の範囲全体を通して使用される。これら用語は、以下を含む。
【0028】
用語「骨」とは、本明細書において使用される場合、自家移植骨、同種異系移植骨、異種移植骨、皮質骨、海綿骨質、連続骨(continuous bone)、鉱物質を失った骨、不連続骨(discontinuous bone)、切断した骨片(cut bone piece)、骨小片(bone chip)、粒状骨、骨の環(bone ring)、挽いた骨、石化した骨、鉱物質を失った骨マトリクス、I型コラーゲンを含む骨置換物、I型コラーゲンを含む骨複合材、I型コラーゲンを含む骨インプラント、骨構造と代表的には関連する形態にあるか、または骨成長の支持のためのマトリクス中のI型コラーゲン線維(後者は、骨伝導性である)、ならびにこれらの組み合わせを含む1種以上の物質をいう。骨は、任意の適切な形態(例えば、固体、粉末、ペースト、充填剤、結合剤、ゲル、スポンジ、インプラント、移植片、骨セメント(例えば、鉱物質を失った骨マトリクスおよび/もしくは無機的な骨(inorganic bone)で浸漬された骨セメント)、およびこれらの組み合わせとして含む)において存在し得る。好ましいタイプもしくは骨の組成物は、好ましい骨のタイプもしくは組成物以外の骨のタイプもしくは組成物を除外して、本発明に従って使用され得る。
【0029】
用語「実施形態(an embodiment, embodiment, embodiments)」、上記実施形態、その実施形態(the embodiment, the embodiments)」、「1つ以上の実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態(one embodiment)」などは、別段明記されなければ、「1つ以上の(しかし全てではない)開示される実施形態」を意味する。
【0030】
用語「本発明(the invention)」および「本発明(the present invention)」などは、「本発明の1つ以上の実施形態」を意味する。
【0031】
実施形態を記載する際の「別の実施形態」への言及は、別段明記されなければ、その言及される実施形態が相互に別の実施形態(例えば、その言及される実施形態の前に記載されている実施形態)とともに排除されることを意味しない。
【0032】
用語「含む(including, comprising)」およびそのバリエーションは、別段明記されなければ、「〜を含むが、これらに限定されない、〜が挙げられるが、これらに限定されない」を意味する。
【0033】
用語「1つの(a, an)」および「上記、その、この(the)」とは、別段明記されない限り、「1つ以上」を意味する。
【0034】
用語「本明細書において」とは、別段明記されなければ、「参考として援用され得る何らかを含めて、本明細書において」を意味する。
【0035】
語句「〜のうちの少なくとも1つ」とは、このような語句が複数のものを修飾する(例えば、ものの列挙されたリスト)場合、別段明記されなければ、それらのもののうちの1種以上の任意の組み合わせを意味する。
【0036】
用語「有効量」とは、本明細書において使用される場合、(a)コーティングを形成することにおいて骨の少なくとも一方の表面に上記コーティング組成物の結合を媒介する;および(b)薬学的に活性な因子の付着を促進するに十分なコーティング組成物実施形態の量をいう。
【0037】
用語「個体」とは、本明細書において使用される場合、ヒトもしくは動物のいずれかをいう。
【0038】
用語「薬学的に活性な因子」とは、本明細書において使用される場合、増殖因子、細胞、治療用薬物、ホルモン、ビタミン、および前述のいずれかをコードする核酸実施形態を含む群内の1種以上の因子をいう。骨形成に関与するホルモンとしては、上皮小体ホルモン、すなわち、PTH(例えば、PTH1〜PTH34が挙げられる)、および成長ホルモンが挙げられるが、これらに限定されない。骨の疾患もしくは障害の処置もしくは予防において有用な治療用薬物としては、化学療法剤(例えば、メトトレキサート、シクロホスファミド、タキソール、アドリアマイシン、もしくは他の抗新生物薬剤)、抗微生物剤(例えば、抗真菌剤、および/もしくは抗菌剤);抗生物質、抗炎症剤、ステロイド性もしくは非ステロイド性の、グルココルチコステロイド、ならびに遺伝子制御をもたらし得る核酸分子(例えば、DNA、アンチセンスRNA、干渉RNA(例えば、RNAi、siRNA)および他のRNA分子もしくはRNAフラグメント(例えば、マイクロ−RNA))が挙げられるが、これらに限定されない。骨形成または骨の疾患もしくは障害の予防において有用なビタミンは、ビタミンD、およびビタミンD誘導体(例えば、1,25−ジヒドロキシビタミンD3、1α−ヒドロキシビタミンD2)、ビタミンA、ビタミンC、およびビタミンK(例えば、ビタミンK2)が挙げられ得るが、これらに限定されない。好ましい薬学的に活性な因子は、上記好ましい薬学的に活性な因子以外の薬学的に活性な因子を除いて、本発明に従って使用され得る。
【0039】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本明細書および特許請求の範囲のために本明細書において使用される場合、本発明に従う化合物もしくは組成物の投与および/もしくは適用のための適切な支持媒体であるキャリア媒体をいう。薬学的に受容可能なキャリアとしては、添加されるペプチドもしくはコーティング組成物実施形態が挙げられる。
【0040】
用語「細胞」とは、本明細書において使用される場合、本明細書に記載される本発明の実施形態において有用な1種以上の細胞もしくは細胞タイプをいい、幹細胞、軟骨細胞、骨細胞前駆幹細胞、間葉系幹細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨膜幹細胞(periosteal stem cell)、骨髄内皮細胞(bone marrow endothelial cell)、間質細胞、脂肪組織前駆細胞、およびこれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0041】
用語「増殖因子」とは、本明細書において使用される場合、記載される実施形態において有用な1種以上の増殖因子もしくはサイトカインをいい、骨形成タンパク質、すなわち、BMP(BMPのファミリー(例えば、BMP−2、BMP−2A、BMP−2B、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−16、BMP−17、およびBMP−18)を含む)、トランスホーミング増殖因子β(すなわち、TGF−β)、トランスホーミング増殖因子α(すなわち、TGF−α)、血管内皮細胞増殖因子(すなわち、VEGF)(その改変体を含む)、上皮増殖因子(すなわち、EGF)、線維芽細胞増殖因子(例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子、酸性線維芽細胞増殖因子、FGF−1〜FGF−23)、上皮増殖因子(すなわち、EGF)、インスリン様増殖因子(IもしくはII)、インターロイキン−I、インターフェロン、腫瘍壊死因子、神経増殖因子、ニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(すなわち、PDGF)、ヘパリン結合増殖因子(すなわち、HBGF)、肝細胞増殖因子(hepatocytic growth factor)、ケラチノサイト増殖因子、マクロファージコロニー刺激因子、増殖および分化因子(例えば、GDF4〜GDF8)、それらの異性体、それらの生物学的に活性なアナログ、ならびにこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。代表的には、生物学的アナログは、上記アナログが由来した上記ペプチド増殖因子のアミノ酸配列と比較して、上記アミノ酸の約1%〜約25%が置換されたアミノ酸配列を有する。50アミノ酸の長さ以下のペプチドについては、代表的には、その生物学的に活性なアナログは、上記アナログが由来した上記ペプチドのアミノ酸配列と比較して、1〜10アミノ酸の変化を有する。
【0042】
用語「結合するために十分な時間」とは、本明細書に記載される結合ドメインの特異的結合に十分な時間的持続をいう。
【0043】
用語「特異的に結合する」または「結合特異性」などの本明細書において使用される用語は、あるペプチドが、ある標的分子もしくは「標的表面物質」以外の別の分子もしくは表面物質よりも、上記標的表面物質を結合するように選択された標的分子に対してより大きい結合親和性を有する能力をいうために、交換可能に使用される。例えば、結合特異性は、非特異的吸着に帰する他の基質の不均一な集団におけるよりも大きな所定の基質対する親和性である。例えば、ペプチドは、そのペプチドが、骨において見いだされない別の生物学的成分への結合と比較して、または骨の置換マトリクス(例えば、βリン酸三カルシウム(beta tricalcium phosphate)を含む物質)として使用される材料と比較して、骨の成分(例えば、I型コラーゲン)を含む骨への優先的な結合を示す場合に、骨に対して結合特異性を有する。この優先的な結合は、特定のコンホメーション、構造、および/もしくは上記ペプチドに対するかもしくは上記ペプチド内の電荷ならびに/または上記ペプチドが結合特異性を有する材料の存在に依存する。
【0044】
用語「骨誘導性」とは、ある基質が骨増殖を誘導する能力をいう。より具体的には、骨誘導は、骨増殖に必須の細胞タイプの、生物学的に媒介される増加および分化である。
【0045】
用語「骨伝導性」とは、ある基質が骨増殖を支援もしくは行う能力をいう。
【0046】
用語「骨生成」とは、骨形成の(例えば、骨芽細胞活性による)プロセスをいう。
【0047】
用語「ペプチド」とは、本明細書において使用され、約3アミノ酸長以上約100アミノ酸残基長以下のアミノ酸鎖をいい、ここで上記アミノ酸鎖は、然に存在するアミノ酸、合成アミノ酸、遺伝的にコードされたアミノ酸、非遺伝的にコードされたアミノ酸、およびこれらの組み合わせを含む;しかし、抗体は、本明細書における「ペプチド」の範囲および定義から具体的に排除される。いくつかの実施形態について、上記ペプチドは、7アミノ酸以上約50アミノ酸以下の長さの連続配列を有する結合ドメインおよび上記ペプチドのマルチマーを含む;すなわち、1個より多いペプチドを、当該分野で公知の方法を使用して分枝状ポリマーリンカーに連結する。いくつかの実施形態についてのペプチドは、より大きな分子の化学合成、組換え発現、生化学的もしくは酵素的フラグメント化、より大きな分子の化学的切断、前述の組み合わせによって生成されるか、または一般に、当該分野の任意の他の方法によって作製され、そしていくつかの実施形態については、単離される。用語「単離される」とは、上記ペプチドが、上記ペプチド自体の完全な構造の一部にならなかった成分を実質的に含まないことを意味する。単離されたペプチドは、組換え技術によって生成される場合に培養物質もしくは培養培地を実質的に含まないか、または生化学的プロセスもしくは化学的プロセスを使用して化学的に合成もしくは生成される場合に、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。好ましいペプチドは、上記好ましいペプチド以外のペプチドを除外して、本発明に従って使用され得る。
【0048】
用語「リンカー」とは、本明細書において使用される場合、少なくとも2つの異なる分子を連結する(例えば、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに連結する)ための分子架橋として作用する化合物もしくは部分をいう。従って、例えば、上記リンカーの一方の部分は、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに結合し、そして上記リンカーのもう一方の部分は、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに結合する。いくつかの実施形態について、2つのペプチドは、段階的様式において上記リンカーに連結されてもよいし、上記リンカーに同時に連結されて、本明細書に記載されるコーティング組成物実施形態を形成してもよい。上記リンカーが分子架橋としてその目的を満たし得、コーティング組成物中の各ペプチドの結合特異性が実質的に保持される限りにおいて、上記リンカーについての特定のサイズも、内容の制限もない。
【0049】
用語「コーティング組成物」とは、本明細書において使用される場合、式Iを含む組成物をいう:
−J−X−P(これは、上記で記載されている)。
【0050】
上記コーティング組成物が、骨に対して結合特異性を有するペプチドX(これは、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドXに連結される)を含むいくつかの実施形態について、上記ペプチドは、各々が、上記ペプチドが結合特異性を有するそれぞれの分子に結合するように、そのそれぞれの機能を保持する様式において、物理的に、化学的に、合成によって、もしくは生物学的に一緒に連結される。この連結は、骨に対して結合特異性を有する2つ以上のペプチド、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する2つ以上のペプチド、およびこれらの組み合わせを有するマルチマー分子を形成することを包含する。例えば、ペプチド化学の従来の試薬および方法を使用して、2つのペプチドは、一実施形態においては、上記ペプチドの各々が側鎖アミン(例えば、リジンのεアミン)を有する場合、側鎖から側鎖への結合、側鎖からN末端への結合(例えば、一方のペプチドのN末端アミンを、他方のペプチドの側鎖アミンと連結すること)、側鎖からC末端への結合(例えば、一方のペプチドのC末端化学部分(いくつかの実施形態についてはカルボキシル)と、他方のペプチドの側鎖アミンとを連結すること)、N末端からN末端への結合、N末端からC末端への結合、C末端からC末端への結合、またはこれらの組み合わせを介して連結され得る。合成発現もしくは組換え発現において、骨に対して結合特異性を有するペプチドは、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドへと、両方のペプチドが単一のペプチドとして合成もしくは発現することによって、直接連結する。2つ以上のペプチドの連結は、コーティング組成物を形成するために、いくつかの実施形態についてはリンカーを介する。
【0051】
コーティング組成物実施形態は、コーティングされるべき骨の表面への上記コーティング組成物の結合を媒介するのに有効な量において、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含む。従って、上記組成物は、薬学的に活性な因子を骨に標的化させかつそこに局在させることを提供する。一実施形態において、上記コーティング組成物は、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドおよび薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含み、ここで上記骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドおよび上記薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドは、一緒に連結される。別の実施形態において、上記コーティング組成物は、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチド、および薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含み、ここで上記骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドおよび上記薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドは、一緒に連結され、そして上記薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドは、上記ペプチドが結合特異性を有する薬学的に活性な因子に結合される。一実施形態において、リンカーは、上記骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドおよび上記薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを連結するために使用される。
【0052】
上記骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドは、いくつかの実施形態については、骨に対して結合特異性を有する1つ以上のペプチドを含む。一実施形態については、上記ペプチドは、1つのアミノ酸配列(例えば、配列番号43)を含むか、または複数分枝リンカーによって連結される実施形態において、2つ以上のペプチドを含み得る。他の実施形態において、各ペプチドは、(a)同じアミノ酸配列(例えば、配列番号39)、または(b)2つ以上のアミノ酸配列(例えば、一方のペプチドは配列番号41のアミノ酸配列を含み、もう一方のペプチドは、配列番号42、もしくは他の配列番号のアミノ酸配列を含む)のいずれかを含む、組成物の別個の成分である。上記薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドは、いくつかの実施形態については、薬学的に活性な因子の単一のタイプに対して結合特異性を有するペプチド(例えば、細胞に対して結合特異性を有するペプチド)を含むか、または(a)例えば、DBMに対して同じ結合特異性;例えば、配列番号91のアミノ酸配列を含むペプチド、および配列番号118、もしくは他の配列番号のアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは(b)異なる結合特異性を有する2つ以上のアミノ酸配列(例えば、増殖因子に対して結合特異性を有する一方のペプチドおよびホルモン、もしくは他の機能に対して結合特異性を有するもう一方のペプチド)のいずれかを含む2つ以上のペプチドを含む。
【0053】
本明細書に記載される実施形態において使用さらえるリンカーは、化学的鎖、化合物(例えば、試薬など)を含む。上記リンカーとしては、ホモ二官能性リンカーおよびヘテロ二官能性リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロ二官能性リンカーは、第1の反応性官能基もしくは第1の分子を特異的に連結する化学的部分を有する一方の末端、および第2の分子に特異的に連結する第2の反応性官能基を有する反対側の末端を含む。種々の二官能性もしくは多官能性試薬、ホモ官能性およびヘテロ官能性の両方(例えば、Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.,のカタログに記載されるもの)、アミノ酸リンカー(代表的には、3〜15アミノ酸の間の、ならびにしばしば、アミノ酸(例えば、グリシン、および/もしくはセリン)を含む短いペプチド)、およびポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)は、本明細書に記載される実施形態に関して、リンカーとして使用され得る。一実施形態において、代表的なペプチドリンカーは、結合ドメインに連結されるように、複数の反応性部位を含む(例えば、ポリリジン、ポリオルニチン、ポリシステイン、ポリグルタミン酸およびポリアスパラギン酸)か、または実質的に不活性なペプチドリンカー(例えば、ポリグリシン(lipolyglycine)、ポリセリン、ポリプロリン、ポリアラニン、およびアラニル、セリニル、プロリニル、もしくはグリシニルアミノ酸残基を含む他のオリゴペプチド)を含む。アミノ酸リンカーが選択されるいくつかの実施形態において、上記コーティング組成物は、骨に対して結合特異性を有するペプチド、リンカー、および薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含む単一の連続したペプチドへと合成され得る。従って、上記リンカーの結合は、上記単一の連続したペプチドの結合を介する。
【0054】
適切なポリマーリンカーは、合成ポリマーもしくは天然ポリマーを含む。代表的な合成ポリマーとしては、ポリエーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)「PEG」、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸 PLAおよびポリグリコール酸 PGA)、ポリアミン、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリウレタン、ポリメタクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート);PMMA、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリヘキサン酸、可撓性のキレート化剤(例えば、EDTA、EGTA、および約20ダルトン〜約1,000キロダルトンの分子量を有する他の合成ポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な天然ポリマーとしては、ヒアルロン酸、アルギネート、コンドロイチン硫酸、フィブリノゲン、フィブロネクチン、アルブミン、コラーゲン、カルモジュリン、およびいくつかの実施形態については、構成モノマーについて約200ダルトン〜約20,000キロダルトンの分子量を有する他の天然ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーリンカーとしては、ジブロックポリマー、マルチブロックコポリマー、コームポリマー、スターポリマー、デンドリマー(dendritic polymer)もしくは分枝ポリマー、ハイブリッド直線デンドリマー、リジンから構成される分枝鎖、もしくはランダムコポリマーが挙げられる。リンカーとしてはまた、メルカプト(アミド)カルボン酸、アクリルアミドカルボン酸、アクリルアミド−アミドトリエチレングリコール酸、7−アミノ安息香酸、およびこれらの誘導体が挙げられる。リンカーはまた、いくつかの実施形態について、銅触媒アジド−アルキンシクロ付加(cycloaddition)(例えば、「クリック化学(click chemistry)」もしくは任意の他の従来の方法を利用する。リンカーとしては、切断され得るリンカー、および他の分子部分に対してもしくは架橋目的でそれ自体に対して反応性にされ得るリンカーが挙げられる。
【0055】
連結されるべき分子、および連結が行われる条件のような要因に依存して、上記リンカーは、生物学的機能、安定性、特定の化学的パラメーターおよび/もしくは温度パラメーター、ならびに十分な立体選択性もしくは大きさの保存のような特性を最適化するための長さおよび組成において変動する。例えば、上記リンカーは、コーティング組成物が、上記目的に対して適切な親和性で、上記組成物が本明細書に記載される実施形態に従う特異性を有する骨に十分に結合する能力にも、コーティング組成物が、上記目的に対して適切な親和性で、上記組成物が特異性を有する薬学的に活性な因子に十分に結合する能力にも、顕著に干渉するべきではない。リンカーは、本明細書に記載される上記コーティング組成物の実施形態の効果を増強もしくは補完する活性を有する1つ以上の分子を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、特定の表面、物質もしくは組成物に対して特異的に結合するペプチドは、適切なコントロール(例えば、異なる物質もしくは表面、またはこのような比較のために代表的に使用されるタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン))に結合するペプチドよりも、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、またはそれ以上のパーセンテージで結合する。結合特異性は、シグナル(例えば、蛍光、もしくは比色(これは、骨以外もしくはI型コラーゲンマトリクス以外のペプチドおよび物質と比較して、ペプチドと骨との間の結合の相対量を表す))が定量されるアッセイによって測定され得る。一実施形態において、ペプチドは、10μM以下、およびいくつかの実施形態については、1μM未満のEC50によって測定される場合に、相対的結合親和性によって特徴づけられる結合特異性を有する。上記EC50は、当該分野で公知の任意の数の方法を使用して(例えば、上記ペプチドの濃度が既知量の基質(これに対して上記ペプチドが結合特異性を有する)で力価測定される結合アッセイから濃度応用曲線を作成することによって)、測定され得る。この場合、上記EC50は、上記アッセイにおいて上記ペプチドについて認められる最大結合の50%を生じるペプチドの濃度を表す。
【0057】
本明細書に記載される実施形態において使用可能なペプチドは、L型アミノ酸、D型アミノ酸、もしくはこれらの組み合わせを含む。代表的な遺伝的にコードされないアミノ酸としては、2−アミノアジピン酸;3−アミノアジピン酸;β−アミノプロピオン酸;2−アミノ酪酸;4−アミノ酪酸(ピペリジン酸(piperidinic acid));6−アミノカプロン酸;2−アミノヘプタン酸;2−アミノイソ酪酸;3−アミノイソ酪酸;2−アミノピメリン酸;2,4−ジアミノ酪酸;デスモシン;2,2’−ジアミノピメリン酸;2,3−ジアミノプロピオン酸;N−エチルグリシン;N−エチルアスパラギン;ヒドロキシリジン;アロ−ヒドロキシリジン;3−ヒドロキシプロリン;4−ヒドロキシプロリン;イソデスモシン;アロ−イソロイシン;N−メチルグリシン(サルコシン);N−メチルイソロイシン;N−メチルバリン;ノルバリン;ノルロイシン;オルニチン;および3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン(「DOPA」)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的異な誘導体化アミノ酸としては、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されて、アミンヒドロクロリド、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基もしくはホルミル基を形成したものが挙げられる。遊離カルボキシル基は、誘導体化されて、塩、メチルエステルおよびエチルエステルまたは他のタイプのエステルもしくはヒドラジドを形成し得る。遊離ヒドロキシル基は、誘導体化されて、O−アシルもしくはO−アルキル誘導体を形成し得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、誘導体化して、N−im−ベンジルヒスチジンを形成し得る。一実施形態において、コーティング組成物は、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含み、N末端アミノ酸、C末端アミノ酸、もしくはこれらの組み合わせを有し、ここでこのようなアミノ酸は、骨に対する上記ペプチドの結合活性、結合相互作用の強さを増強する遺伝的にコードされていないアミノ酸である。このようなアミノ酸は、固相合成および/もしくは液相合成についての従来の方法によって、ペプチドへと組み込まれ得る。例えば、一実施形態において、約1個〜約3個のDOPAの残基、ヒドロキシ−アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、もしくはこれらの組み合わせのうちの1種以上)が、合成の間にペプチドのアミノ酸配列の末端アミノ酸として付加され、ここで上記ペプチドは、上記コーティング組成物と、上記コーティングされるべき少なくとも1つの骨表面との間の静電的相互作用もしくはイオン性相互作用を介した結合相互作用の強度を増強するために、本明細書に記載のコーティング組成物の実施形態において使用される。
【0058】
本明細書に記載されるペプチドの実施形態は、化学的部分の付加、またはアミノ酸の置換、挿入、および欠失による改変を含み、ここでこのような改変は、その用途において特定の利点を提供する。従って、本明細書中で使用可能なペプチドは、種々の形態のペプチド誘導体(例えば、アミド、タンパク質との結合体、環状(cyclone)ペプチド、重合化ペプチド、保存的置換された改変体、アナログ、フラグメント、化学的改変されたペプチド、およびペプチド模倣物が挙げられる)のうちのいずれかを含む。本明細書に記載される実施形態に従うペプチドのファミリーの望ましい結合特徴を有する任意のペプチド誘導体が、使用され得る。例えば、合成ペプチドのN末端アミノ酸に付加されて、上記ペプチドのアミノ末端の化学的反応性をブロックする化学基は、N末端基を含む。ペプチドのアミノ末端を保護するためのこのようなN末端基としては、低級アルカノイル基、アシル基、スルホニル基、およびカルバメート形成基が挙げられるが、これらに限定されない。使用可能なN末端基としては、アセチル、Fmoc、およびBocが挙げられ得る。合成ペプチドのC末端アミノ酸に付加されて、上記ペプチドのカルボキシ末端の化学的反応性をブロックする化学基は、C末端基を含む。ペプチドのカルボキシ末端を保護するためのこのようなC末端基としては、エステルもしくはアミド基が挙げられる。ペプチドの末端改変は、しばしば、プロテイナーゼ消化に対する感受性を減少させて、従って、プロテアーゼが存在し得る生物学的流体の存在下でペプチドの半減期を長期化するために有用である。必要に応じて、本明細書に記載される場合、ペプチドは、上記ペプチドをリンカー分子に連結するのを促進するために、反応性官能基(例えば、フッ素、臭素、もしくはヨウ素)のような1個以上の化学基を含むように改変された1個以上のアミノ酸を含む。使用可能なペプチドはまた、上記ペプチド結合のうちの1個以上が、carba bond(CH−CH)、depsi bond(CO−O)、ヒドロキシエチレン結合(CHOH−CH)、ケトメチレン結合(CO−CH)、メチレン−オキシ結合(CH−O)、還元型結合(reduced bond)(CH−NH)、チオメチレン結合(CH−S)、N−改変結合(−NRCO−)、およびチオペプチド結合(CS−NH)が挙げられるが、これらに限定されない偽ペプチド(pseudopeptide)結合によって置換され得るペプチドを含む。
【0059】
コーティング組成物もしくは本明細書に記載される実施形態に従って上記コーティング組成物を使用するための方法において使用可能なペプチドはまた、表1および本明細書の配列番号1〜45に開示される例示的ペプチドの実施形態の配列に対して、上記本来の例示的ペプチドの結合特性が、実質的に保持される限りにおいて、残基の1もしくは数個の置換、付加および/もしくは欠失を有するペプチドを含む。従って、実施形態は、本明細書に開示される例示的ペプチドの長さに依存して、約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、もしくは10個のアミノ酸だけ、本明細書に開示される例示的配列とは異なり、そして本明細書で開示される例示的配列と、少なくとも70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性を共有するペプチドを含む。配列同一性は、手動で計算されてもよいし、数学的アルゴリズム(例えば、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA)または当該分野で公知の他のプログラムもしくは方法のコンピューター実行を使用して計算されてもよい。これらのプログラムを使用するアラインメントは、デフォルトパラメーターを使用して行われ得る。
【0060】
本明細書に開示される例示的ペプチドの配列に対して実質的に同一なアミノ酸配列を有するペプチドは、上記例示的なペプチドの配列中のあるアミノ酸残基を、機能的に類似のアミノ酸残基で置換する(「保存的置換」)結果として1もしくは数個の異なるアミノ酸残基を有し得る;ただし、保存的置換を含むペプチドは、上記保存的置換を含まない例示的ペプチドの結合特異性を実質的に保持している。保存的置換の例としては、1個の非極性(疎水性)残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニン)の代わりにもう1個のものを使用すること;1個の芳香族残基(例えば、トリプトファン、チロシン、もしくはフェニルアラニン)の代わりにもう1個のものを使用すること;1個の極性(親水性)残基の代わりにもう1個のものを使用すること(例えば、アルギニンとリジンの間で、グルタミンとアスパラギンとの間で、スレオニンとセリンとの間で);1個の塩基性残基(例えば、リジン、アルギニンもしくはヒスチジン)の代わりにもう1個のものを使用すること;または1個の酸性残基(例えば、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸)の代わりにもう1個のものを使用することが挙げられる。
【0061】
なお別の実施形態において、結合ドメインは、カルボキシル末端および/もしくはアミノ末端におけるさらなるアミノ酸(本明細書において記載される結合ドメインとして、上記ペプチドの主な活性を維持する一方の末端もしくは両方の末端のそれぞれにおいて約1個〜約20個のさらなるアミノ酸の範囲に及ぶ)とともに、これに対して少なくとも70%の同一性、およびいくつかの実施形態については、これに対して少なくとも95%の同一性を有するペプチドを含む。従って、非限定的な例として、配列番号1〜45として示されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つのペプチドは、本明細書に提供されるように、結合特異性とともに骨を結合する活性を有し;そして上記ペプチドが骨を結合することによって結合ドメインとして機能する基本的かつ新規な特徴に対する本質的な変化を構成する任意の特徴を有しない。
【0062】
薬学的に受容可能なキャリアの例としては、水溶液、水性もしくは非水性の溶媒、懸濁物、エマルジョン、ゲル、ペーストなどが挙げられる。適切な薬学的に受容可能なキャリアは、1種以上の物質を含み、これらとしては、水、緩衝化水、医学的に浸透性のビヒクル、生理食塩水、0.3% グリシン、水性アルコール、等張性水性緩衝液が挙げられるが、これらに限定されず;さらに、1種以上の物質(例えば、水溶性ポリマー、グリセロール、ポリエチレングリコール、グリセリン、油、塩(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびアンモニウム)、ホスホネート、炭酸エステル、脂肪酸、サッカリド、ポリサッカリド、糖タンパク質(増強された安定性のために)、賦形剤、ならびに保存剤および/もしくは半減期を増大させるか、または上記組成物の製造および分布に必要かつ適した安定化剤)を含み得る。
【0063】
本発明の実施形態は、骨に対して結合特異性を有するペプチド、骨に対して特異性を有するペプチドの実施形態を含むコーティング組成物、骨をコーティング組成物でコーティングするための方法の実施形態、および骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含むコーティング組成物でコーティングされた骨を含む。一実施形態において、上記コーティング組成物は、骨に対して結合特異性を有する1種以上のペプチドを含み、いくつかの実施形態については、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む。例示的ペプチドは、配列番号1〜45からなる群より選択されるアミノ酸を含むペプチドを含む。別の実施形態において、上記コーティング組成物は、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含み、上記ペプチドは、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに連結されている。別の実施形態において、上記コーティング組成物は、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含み、上記少なくとも1つのペプチドは、薬学的に活性な因子がそれに結合された、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに連結されている。いくつかのコーティング組成物の実施形態は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む。上記コーティング組成物は、コーティング組成物の実施形態でコーティングされていない骨と比較して、上記コーティングされた骨が骨誘導性、骨伝導性、および骨生成性のうちの1つ以上である能力を促進するのに有効な量において、骨に適用される。本発明の実施形態は、以下の実施例において例示されるのであって、限定されることは意図しない。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
この実施例において例示されるのは、本発明の結合ドメインの実施形態を有するペプチドを生成するために、ファージディスプレイ技術を利用するための種々の方法の実施形態である。特に、上記ペプチドは、それぞれ、骨に対して結合特異性および薬学的に活性な因子に対して結合特異性を含む。
【0065】
ファージディスプレイ技術は、本明細書に記載される組成物の実施形態において結合ドメインとして使用するためのさらなるペプチドを同定するために使用可能である。一般に、ファージディスプレイを使用して、多様なペプチドのライブラリーが、標的基質に対して示される。上記基質に対して特異的に結合するペプチドは、結合ドメインとして使用するために選択され得る。選択の複数の連続的ラウンド(「パニング」といわれる)が、使用され得る。種々のライブラリーおよびパニング法のうちのいずれか1つが、本明細書に記載されるコーティング組成物の実施形態において有用である結合ドメインを同定するために使用され得る。パニング法としては、例えば、液相スクリーニング、固相スクリーニング、もしくは細胞ベースのスクリーニングが挙げられる。一旦候補結合ドメインが同定されると、その配列の指向性もしくはランダムな変異誘発が、上記結合ドメインの特異性およびアビディティーのうちの1つ以上を含む結合特性を最適化するために使用される。
【0066】
A.種々の異なるファージディスプレイライブラリーを、選択された標的基質に結合するペプチドについてスクリーニングした。特に、本発明の実施形態において有用な結合ドメインを見いだすために選択された基質を、スクリーニングした。この基質を、上記選択された基質に依存して、容器(例えば、96ウェルマイクロタイタープレートのウェル)もしくは遠心管に結合させたか、もしくは入れた。上記容器の表面上の非特異的結合部位を、1%〜10%の範囲のウシ血清アルブミン(「BSA」)を含む緩衝液でブロックした。次いで、上記容器を、TweenTM 20を含む緩衝化塩類を含む緩衝液(「緩衝液−T」)で5回洗浄した。各ライブラリーを、緩衝液−T中で希釈し、総容積100μl中1010pfu/mlの濃度で添加した。50rpmで振盪しながら室温で1〜3時間インキュベートした後、結合しなかったファージを、緩衝液−Tで複数回洗浄することによって除去した。結合したファージを、増殖培地中のE.coli細胞に感染させるために使用した。上記細胞およびファージ含有培地を、200rpmの振盪機において37℃で一晩インキュベートすることによって培養した。ファージ含有上清を、培養物を遠心分離した後に培養物から回収した。第2回および第3回の選択を、投入物として、第1回から増幅したファージを使用して、第1回の選択のものと類似の様式で行った。選択した基質に対して特異的に結合するファージを検出するために、酵素結合イムノソルベント(ELISA型)アッセイを、検出因子(detector)分子に結合させた抗ファージ抗体を使用して行い、続いて、このアッセイにおいて結合した検出因子分子の量の検出および定量を行った。次いで、上記選択した基質に対して特異的に結合するファージに由来するペプチドをコードするDNA配列を、決定した。例えば、上記ペプチドをコードする配列は、ファージゲノム中で挿入物として位置し、配列決定されて、上記ファージ表面にディスプレイされた対応するアミノ酸配列を生じ得る。
【0067】
特定の例示的な例として、いくつかの異なるファージライブラリーを使用するファージ選択を行うために、鉱物質を失った骨マトリクス(「DBM」)を骨基質として使用した。50mgのDBMに、1mlの緩衝液−Tを添加し、続いて、1時間混合した。次いで、この混合物を遠心分離し、この緩衝液を、遠心管から吸引した。各管に、900μlの、10% ウシ血清アルブミン含有トリス緩衝化生理食塩水を添加し、上記管を混合して、上記DBMを再懸濁した。次いで、上記管を、室温で回転させながら、30分間インキュベートした。各管に、100μlの選択されるべきファージライブラリーを添加し、次いで、上記管を、回転させながら室温で1時間インキュベートした。次いで、上記管を遠心分離して、上記DBMをペレットにし、そしてその上清を吸引した。次いで、結合したファージを含む上記DBMを、緩衝液−Tで4回洗浄した。次いで、結合したファージを含む上記DBMを、増殖培地中の、1mlの対数増殖期E.coliと混合し、37℃で30分間インキュベートした。次いで、上記DBMを、上記管中に沈澱させ、次いで、ファージ感染細胞を含む培地を取り出し、新しい管に入れた。上記感染細胞の連続希釈を、次の回の選択への投入物に対するファージ力価を決定するために行った。第2回、第3回および第4回の選択を、次の回のための投入物として前回から増幅したファージおよび20mg DBMを含む懸濁液を使用して、第1回のものと類似の様式で行った。
【0068】
個々のファージを、ELISA形式でそれらの結合特異性について分析した。マイクロタイターウェルおよびそこに含まれるDBMのブロッキングを、1% BSAを含む緩衝液との1時間のインキュベーションを用いて行った。各マイクロタイターウェルに、ファージ含有上清および1% BSAを含む緩衝液を添加した。1時間の結合反応の後に、各ウェル中の上記DBMを、緩衝液−Tで3回洗浄した。DBMに対して特異的に結合したファージを検出するために、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させた抗M13ファージ抗体を使用し、続いて、色素生成剤3,3,5,5’テトラメチルベンジジンを添加して、650nmで読み取りを測定して、従来のELISAを行った。上記ファージの相対結合強度はまた、ELISAにおけるDBMへの結合について、上記ファージの連続希釈物を試験することによって、測定され得る。DBMを特異的に結合したペプチドをコードするDNA配列を、決定した。上記ペプチド挿入物をコードする配列は、上記ファージゲノム中に配置され、翻訳されて、上記ファージ表面にディスプレイされた対応するアミノ酸配列を生じた。
【0069】
(B.結合ドメインの特徴付けおよび合成)
結合特異性の尺度としても使用される骨への上記ペプチドの相対結合強度を、DBMによって表されるように、骨への結合について、上記ペプチドの連続希釈物を試験することによって測定した。各ペプチド配列についての濃度範囲にわたって観察された絶対値をプロットすると、EC50を決定し得る、上記ペプチドの、その標的基質への結合曲線を生じた。上記スクリーニングおよび選択の目的は、約10μM以下、およびいくつかの実施形態については、ナノモル範囲の(<1μM)のEC50で、結合特異性をもって、上記選択した基質に結合する1種以上のペプチドを同定することであった。従って、一実施形態において、結合ドメインは、約10μM以下、およびより好ましくは、ナノモル範囲(<1μM)のEC50で、選択された標的(例えば、DBM)に対する結合特異性を示すペプチドを含む。
【0070】
具体例として、DBMは、1ウェルあたり3mg当量(equivalent)の濃度で、マイクロタイタープレート中に入れられ、次いで、上記ウェルを、1% BSAを含有する緩衝液で、室温で1時間ブロックした。次いで、上記1% BSAを含む緩衝液を、各ウェルから吸引し、ビオチン化ペプチドの連続希釈物を、上記ウェルに添加した。上記マイクロタイタープレートを、プレート振盪機上で、室温で1時間インキュベートした。次いで、上記DBMを沈澱させ、次いで、上記緩衝液を上記ウェルから吸引した。上記DBMを緩衝液−Tで3回洗浄し、次いで、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼを添加した。上記マイクロタイタープレートを、プレート振盪機上で、室温で1時間インキュベートした。次いで、上記DBMを沈澱させ、次いで、上記緩衝液を上記ウェルから吸引した。上記DBMを緩衝液−Tで3回洗浄し、pNPP(p−ニトロフェニルホスフェート)を使用して、上記アッセイ系を発色させ、その吸光度を、405nmで記録した。骨に対するペプチドの相対親和性(結合特異性、EC50)の推定は、上記アッセイにおける最大シグナルの2分の1を与えるペプチド濃度を決定することによって行われ得る。
【0071】
ペプチドは、ペプチド合成のための任意の方法(固相合成、液相合成、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)によって合成され得る。例えば、本明細書に記載される実施形態において有用な結合ドメインを含むペプチドを、標準的な固相合成技術を使用して、標準的FMOCペプチド化学を使用して、ペプチド合成機で合成した。全ての残基を連結した後、同時の切断および側鎖の脱保護を、従来の方法および試薬を使用して行った。樹脂から切断した後、上記ペプチドを沈澱させ、その沈殿物を凍結乾燥した。次いで、上記ペプチドを、逆相高速液体クロマトグラフィーを使用して精製し;そしてペプチド同一性を、質量分析で確認した。
【0072】
(実施例2)
本明細書の実施例1において記載される方法論を使用して、骨に対して結合特異性を有する例示的ペプチドを開発した。ペプチドの実施形態の列挙を、表2に示す。代表的には、ディスプレイされたペプチドに隣接しているこのようなファージアミノ酸は、上記ペプチドの結合特異性に顕著な寄与を有さないが、本明細書に記載されるペプチドの実施形態は、それらのアミノ酸配列において、N末端において、およびC末端において(例えば、それぞれ、SおよびSR;例えば、表3を参照のこと)上記ペプチドに隣接しているこのようなファージアミノ酸を含み得る。
【0073】
【表2−1】

【0074】
【表2−2】

実施例1は、骨へのペプチドの相対結合強度を決定するための方法を例示する。表3に示されるように、配列番号5、9、14、24、30、および37として示されるアミノ酸配列を含む6つのペプチドを、グリシン、セリン、およびリジンを含むアミノリンカーを含むように合成して、骨に対する相対結合強度を決定するためのこれらペプチドのビオチン化を促進した。ビオチン分子を、C末端のリジンに連結した。ヒト起源のDBMによって表されるような骨に対するEC50(μM)として表される相対結合強度はまた、表3に示される。上記EC50値は、ウサギ起源のDBMを使用したものと同じもしくは実質的に類似していたことが注意される。
【0075】
【表3】

表2および3に示されるように、ペプチドの実施形態は、以下を含む:
(a)約10μM以下のEC50によって、およびいくつかの実施形態については、ナノモル範囲で(<1μM)特徴づけられるような骨に対して結合特異性;(b)約10アミノ酸〜約25アミノ酸、およびいくつかの実施形態については、約10アミノ酸〜約15アミノ酸;(c)大きい芳香族アミノ酸残基(Phe、Trp、Tyrのうちの1つ以上)が豊富なアミノ酸配列、およびいくつかの実施形態については、上記ペプチドのN末端から最初の10個の連続するアミノ酸を含む配列内にある3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基から構成されるドメインもしくはモチーフを含む;および(d)配列Gly−Ile−Alaによって特徴づけられるコラーゲン配列細胞−結合ドメインを欠いている。
【0076】
実施例1に例示される方法論を使用して、表3に示されるペプチドをまた、鉱物質を失った皮質骨および海綿骨に対する相対結合強度、骨に対する結合特異性のさらなる証拠について試験した。種々のアッセイを比較することから、および表4に例示されるように、鉱物質を失った皮質骨(「DCB」)もしくは海綿骨(「CNB」)を使用した場合に得られたEC50値は、鉱物質を失った骨マトリクス(「DBM」)を使用した場合に得られたEC50値に類似しており、各々骨を表す。
【0077】
【表4】

これらの例示的ペプチド配列が本明細書で開示される一方で、当業者は、これら配列によって付与される結合特性が、その配列を含むアミノ酸のいくつかのみに帰する可能性があることを認識する。その点で、結合の証拠は、大きな芳香族アミノ酸残基(Phe、Trp、Tyrのうちの1個以上)の濃度、およびいくつかの実施形態については、(そのN末端から数えて)最初の10アミノ酸を含む配列内の3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基から構成されるドメインもしくはモチーフは、骨に対する上記ペプチドの結合特異性に顕著に寄与することを示唆する。いくつかの実施形態については、上記ペプチドのN末端から最初の8アミノ酸、およびいくつかの実施形態については、最初の5連続アミノ酸は、骨に対する上記ペプチドの結合特異性に顕著に寄与する。いくつかの実施形態については、6連続アミノ酸は、N末端の半分において(例えば、10〜20個のアミノ酸を含む上記ペプチドのアミノ酸配列のN末端からC末端に向かって最初の50%以内)、以下に示されるように、骨に対する上記ペプチドの結合特異性に顕著に寄与する。例えば、配列番号41および42として表3に同定されるアミノ酸配列を含むペプチドの実施形態を考える。これらのペプチドは、それぞれ、以下のモチーフによって特徴づけられ得る:
[ _ _ _ _] ←N末端の半分
| ←ペプチドのN末端
配列番号46 ZXXXXXXXZ;
配列番号47 XXXXXXXX;
ここでZはF(フェニルアラニン)、W(トリプトファン)、もしくはY(チロシン)であり;そしてXは、任意のアミノ酸である。
【0078】
例示的ペプチドの実施形態は、骨誘導性デバイスとして一般に使用されてきたコラーゲン足場(例えば、I型コラーゲンの架橋マトリクス)に対する結合特異性についての結合アッセイにおいて試験される場合の、結合特異性を示した。これらの結果および他のデータは、上記ペプチドのアミノ酸配列のN末端半分において5連続アミノ酸〜8連続アミノ酸の間を含む配列内に3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基を含むドメインもしくはモチーフを含むペプチドの実施形態が、骨自体または骨伝導特性を有する足場の文脈において、I型コラーゲンを優先的に結合するようであるということを意味する。
【0079】
(実施例3)
この実施例は、コーティング組成物を形成することにおいて、骨に対して結合特異性を有するペプチドに連結され得る、薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する結合ドメインを含むペプチドを示す。
【0080】
一実施形態において、上記薬学的に活性な因子は、増殖因子である。1つの増殖因子は、1種以上の骨形成タンパク質(BMP)(骨増殖におけるそれらの役割について最も知られているトランスホーミング増殖因子−βファミリーの別個のサブセット)から選択される。BMPは、間葉性幹細胞の移動、骨伝導性マトリクスの沈着、骨前駆細胞の増殖、および骨生成細胞への前駆細胞の分化を含む新たな骨形成をもたらすという事象のカスケードを誘導する。多くの研究が、インプラントの骨誘導、骨伝導、および骨生成のうちの1つ以上を促進するために、骨インプラント上もしくはその付近のBMPの使用に指向されてきた;しかし、未解決なままである重大な課題のうちの1つは、BMPをインプラントの部位上もしくはその付近にどのようにして配置するかである。従って、1つのコーティング組成物の実施形態は、BMPに対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに連結された、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含む。このようなコーティング組成物は、BMPに対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに結合されたBMPをさらに含み得る。
【0081】
上記BMP結合ペプチドは、それらそれぞれの結合モチーフ(「モチーフ1」および「モチーフ2」)によって区別される、ペプチドの2つのファミリー内に入り、表5および6は、コーティング組成物において、BMPに対して結合特異性を有するペプチドを含む結合ドメインとして使用され得るいくつかの例示的ペプチドを示す。いくつかの実施形態において、大文字で示される配列のその部分のみ、すなわち、「ss」および「sr」を含むBMPに対して結合特異性を有するペプチドを含む例示的結合ドメインは、ディスプレイされたペプチドを結合するファージ配列起源のアミノ酸である。
【0082】
BMPに対して結合特異性を有するペプチドのモチーフ1(配列番号48):Z−X−X−Phe−X−B−Leu;ここでZ=Trp、Phe、もしくはTyr;X=任意のアミノ酸;「B」=Ser、Thr、Ala、もしくはGly。配列番号91は、コンセンサス配列を含むことに注意すること。
【0083】
【表5−1】

【表5−2】

BMPに対して結合特異性を有するペプチドのモチーフ2(配列番号92):
(LeuもしくはVal)−X−Phe−Pro−Leu−(LysもしくはArg)−Gly。配列番号118はコンセンサス配列を含むことに注意すること。
【0084】
【表6−1】

【表6−2】

例示的ペプチドを、これら例示的ペプチドがELISA形式アッセイにおいて、BMPファミリーのメンバーに対する特異性で結合する能力について試験した。例えば、配列番号91として示される配列のようなアミノ酸配列を含むペプチドは、BMP2、BMP4、BMP5、BMP7、およびBMP14に対して結合特異性を示した;一方で、配列番号58、93、および118のうちのいずれか1つのようなアミノ酸配列を含むペプチドは、BMP2、BMP4、BMP7、およびBMP14に対して結合特異性を示した。さらに、表面に固定された場合、これらペプチドは、BMP2を添加した流体(血漿および骨髄吸引物の各々)からBMP2を抽出する能力を示した。ペプチドの存在は、BMP2活性を阻害しない。例えば、C2C12筋原細胞の、骨芽細胞へのBMP2媒介性分化転換(transdifferentiation);およびBMP−2で処理した場合に、C2C12筋芽細胞におけるアルカリホスファターゼ活性を誘導した。
【0085】
別の実施形態において、上記薬学的に活性な因子は、細胞を含む。コーティング組成物の実施形態は、細胞に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに連結した、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含む。このようなコーティング組成物は、上記細胞に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに結合した細胞をさらに含み得る。例えば、Xが任意のアミノ酸(配列番号119)であるRGDXペプチドは、幹細胞、間葉性幹細胞、および骨芽細胞を結合すると記載されてきた。ALPSTSSQMPQL(配列番号120)の配列を有するペプチドは、幹細胞に結合すると記載されてきた。さらなる例において、SSSCQHVSLLRPSAALGPDNCSR(配列番号121)のアミノ酸配列を含むペプチドは、ヒト脂肪由来幹細胞に対する結合特異性を有し、このような細胞は、骨修復もしくは置換における骨形成能力および有用性を有する。
【0086】
別の実施形態において、上記薬学的に活性な因子は、ビタミンを含む。従って、コーティング組成物の実施形態は、ビタミン(およびいくつかの実施形態については、ビタミンD)に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに連結された、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含む。このようなコーティング組成物は、上記ビタミンに対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに結合したビタミンをさらに含み得る。例えば、ヒトビタミンD結合タンパク質に由来し、そしてLERGRDYEKNKVCKEFSHLGKDDFEDF(配列番号122)のアミノ酸配列を有するペプチドは、ビタミンDステロールに結合することが分かった。
【0087】
別の実施形態において、上記薬学的に活性な因子は、治療薬物を含む。従って、コーティング組成物の実施形態は、治療薬物に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに連結した、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含む。このようなコーティング組成物は、上記治療薬物に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに結合した治療薬物をさらに含み得る。例えば、パクリタキセル(商品名、タキソール(登録商標))に結合するペプチドについてスクリーニングするためにファージディスプレイを使用する結果として、HTPHPDASIQGV(配列番号123)のアミノ酸配列を有するペプチドであった。上記薬学的に活性な因子が治療薬物を含む別の実施形態において、上記治療薬物は、抗菌剤を含む。従って、コーティング組成物の実施形態は、抗菌剤を含む治療薬物に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに連結された、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含む。このようなコーティング組成物は、上記治療薬物に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに結合した治療薬物をさらに含み得る。例えば、バンコマイシンおよびバンコマイシンアナログは、D−Ala−D−Ala(2つのD−アラニン残基)で終わる細菌細胞壁ペプチドに結合することが分かった。バンコマイシンに結合する細菌細胞壁ペプチドを模倣するペプチドは、Lys−Ala−Ala(L−Lys−D−Ala−D−Ala)のアミノ酸配列を含む。
【0088】
別の実施形態において、上記薬学的に活性な因子は、ホルモンを含む。従って、コーティング組成物の実施形態は、ホルモンに対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに連結された、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドを含む。このようなコーティング組成物は、上記ホルモンに対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに結合したホルモンをさらに含み得る。例えば、VMNV(配列番号124)のコアアミノ酸配列を有するペプチドは、ヒト成長ホルモンに結合することが分かった。
【0089】
別の実施形態において、上記薬学的に活性な因子は、核酸分子、そしていくつかの実施形態については、増殖因子、治療薬物、ホルモンもしくはビタミンをコードする核酸分子を含む。従って、コーティング組成物の実施形態は、核酸分子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに連結された、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドの実施形態を含む。このようなコーティング組成物は、上記核酸分子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドに結合した核酸分子をさらに含み得る。例えば、AEDG(配列番号125)のアミノ酸配列を有するペプチドは、[ポリ(dA−dT):ポリ(dA−dT)]を含む二本鎖DNAと複合体を形成する。
【0090】
本明細書に記載されるこれらの方法を使用して、コーティング組成物の実施形態を形成することにおいて、例えば、骨に対して結合特異性を有するペプチドを含む結合ドメインは、いくつかの実施形態については、選択された薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含む結合ドメインに連結される。結合ドメインへリンカー分子を連結するための選択の方法(method of preference)は、各分子上に存在する反応性の基に従って変動する。先に本明細書に記載されるように、従来の方法を使用して、2つの結合ドメインは、第1の結合ドメイン、3個以上のアミノ酸(例えば、グリシンおよびセリンのうちの1つ以上を含む)を含むリンカー、および第2の結合ドメインを含む単一の連続するペプチドを合成することによって、コーティング組成物の実施形態を形成するためにリンカーによって連結され得る。用語「第1の」および「第2の」は、説明を容易にする目的で使用されるに過ぎず、合成の順序を制限すると解釈されることを意図しない。言い換えると、上記第1の結合ドメインは、選択された薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含み得、そして上記第2の結合ドメインは、骨に対して結合特異性を有するペプチドを含み得る;または第1の結合ドメインは、骨に対して結合特異性を有するペプチドを含み得、そして第2の結合ドメインは、選択された薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含む。
【0091】
(実施例4)
この実施例において、以下を含む方法の実施形態が例示される:(a)コーティングされた骨インプラントを製造するための方法;(b)薬学的に活性な因子をそのコーティングされる骨の表面に送達すること、そのコーティングされる骨の表面に薬学的に活性な因子を局在させること、そのコーティングされた骨の表面に薬学的に活性な因子を補充すること、およびこれらの組み合わせを含む群から選択されるプロセスによって、骨の表面をコーティングするための方法;(c)骨に適用される場合に、薬学的に活性な因子をそのコーティングされる骨の表面に送達すること、そのコーティングされる骨の表面に薬学的に活性な因子を局在させること、そのコーティングされた骨の表面に薬学的に活性な因子を補充すること、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される利益を提供するコーティング組成物を含む、骨のための送達系;(d)骨誘導、骨伝導、骨生成、およびこれらの組み合わせを含む群から選択されるプロセスを促進するための方法(ここでこの方法は、コーティング組成物の実施形態で骨の表面をコーティングする工程を包含する)。
【0092】
上記方法および送達系の実施形態は、骨の少なくとも1つの表面と、有効量のコーティング組成物の実施形態とを、上記表面上にコーティングを生成するに適した条件下で接触させる工程を包含する。上記コーティング組成物は、骨に対して結合特異性を有するペプチドを含む少なくとも1つの結合ドメイン;骨に対して結合特異性を有するペプチドを含む少なくとも1つの結合ドメイン、および薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含む少なくとも1つの結合ドメインを含む群から選択されるコーティング組成物を含み、ここで上記骨に対して結合特異性を有するペプチドを含む少なくとも1つの結合ドメインおよび上記薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含む少なくとも1つの結合ドメインは、一緒に連結される;一実施形態において、リンカー介して連結される;およびこれらの組み合わせで連結される。上記骨に対して結合特異性を有するペプチドを含む少なくとも1つの結合ドメインは、複数分枝したリンカーによって連結される2つ以上のペプチド(一実施形態については、同じアミノ酸配列(例えば、配列番号40)を含む)を含み得るか、または2つ以上のペプチド(各々は、異なるアミノ酸配列を含み、例えば、一方のペプチドは、配列番号41のアミノ酸配列を含み、もう一方のペプチドは、配列番号42のアミノ酸配列を含む)を含み得る。
【0093】
上記薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含む少なくとも1つの結合ドメインは、2つ以上のペプチドのような単一のタイプ(各々は、薬学的に活性な因子(例えば、細胞)の単一のタイプに対して結合特異性を有する)を含むか、または2つ以上のペプチドのような複数のタイプを含み得る。各タイプは、一方のタイプとは異なるもう一方の薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチド;例えば、細胞を含む薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する第1のペプチド、増殖因子に対して結合特異性を有する第2のペプチド、または第1の増殖因子に対して結合特異性を有する第1のペプチドおよび第2の増殖因子に対して結合特異性を有する第2のペプチドを含む。
【0094】
これらの方法において、コーティング組成物をコーティングされるべき骨の少なくとも1つの表面と接触させる場合、(a)上記薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドが、上記ペプチドが結合特異性(例えば、外因性の起源の薬学的に活性な因子の、ペプチドによる捕捉)を有する薬学的に活性な因子に結合される;または(b)例えば、上記コーティング組成物でコーティングされる骨が移植される場合、上記薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドが、上記ペプチドが結合特異性を有する上記薬学的に活性な因子にまだ結合されていない。後者に関しては、コーティングのさらなる工程において、次いで、上記コーティングされた骨は、上記少なくとも1つのペプチドが結合特異性を有する十分な量の薬学的に活性な因子と、インビトロもしくはインビボで、上記薬学的に活性な因子が上記少なくとも1つのペプチドに結合するように適した条件下で接触させられる。一実施例において、コーティングされた骨は、自家またはドナー由来であるか、同種異系もしくは異種である薬学的に活性な因子、細胞および/もしくは増殖因子とインビトロで接触させられ得、上記薬学的に活性な因子は、上記骨のコーティングされた表面を含むペプチドに結合され得、その後、上記骨は、移植される。別の実施例において、コーティングされた骨は移植され得、ここでインビボで、上記コーティングされた骨は、薬学的に活性な因子(例えば、上記コーティングされた骨を受け入れる固体によって内因的に生成される細胞および/もしくは増殖因子)と接触させられて結合される。1種以上の薬学的に活性な因子をコーティングされた骨に結合させることによって、骨誘導、骨伝導、および骨生成のうちの1つ以上を刺激できる可能性が促進される。
【0095】
従来のプロセスは、上記コーティング組成物の実施形態は、上記コーティング組成物と、骨の1つ以上の表面とを接触させることによって、コーティングされるべき骨の上記1つ以上の表面に適用するために使用され得る。コーティングされるべき骨の処方に依存して、使用可能なプロセスとしては、混合、浸漬、塗布、噴霧、および蒸着が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、上記コーティング組成物を含む溶液もしくは懸濁物は、コーティングされるべき骨の表面をコーティングする液滴を作り出す噴霧デバイスのスプレーノズルを介して適用され得る。上記コーティングされた骨は、乾燥させられ、そしていくつかの実施形態については、その後、水もしくは等張性緩衝液の溶液中で洗浄して、過剰なコーティング組成物を除去し、続いて滅菌することによって、使用前にさらに処理され得る。あるいは、上記コーティング組成物の実施形態および医療用デバイスの実施形態は、コーティングのプロセスの前に各々滅菌され得、そして無菌条件下でそのプロセスが行われる。
【0096】
コーティング組成物の実施形態を、コーティングされるべき骨の1つ以上の表面に適用するための別のプロセスは、上記コーティングされるべき骨の表面を、into 骨をコーティングするに有効な量のコーティング組成物を含む液体、溶液もしくは懸濁物(水性もしくは溶媒)の中に浸漬する工程を包含する。例えば、上記表面は、上記コーティング組成物の実施形態を含むバスに浸漬もしくは浸される。上記コーティング組成物を適用するために適した条件は、コーティングされるべき表面を、上記コーティング組成物を含む液体と、約5分〜約12時間の範囲で適切な時間にわたって接触させた状態のままにすることを包含する。別の実施形態において、時間は、15分〜60分の範囲に及んだ。適切な温度は、いくつかの実施形態については、他の実施形態については、10℃〜約50℃の範囲に及び;室温から37℃の範囲に及んだ。次いで、使用に必要な場合、洗浄もしくは滅菌によって、上記コーティングされた骨をさらに処理した。
【0097】
上記コーティング組成物を、コーティングされるべき骨に適用するための別のプロセスの実施形態は、上記コーティング組成物の実施形態を風乾する工程もしくは凍結乾燥する工程を介して、上記コーティング組成物の実施形態を乾燥粉末に処方する工程を包含し、次いで、これを、上記骨と混合して、固体、粉末、ペースト、充填剤、結合剤、ゲル、スポンジ、インプラント、移植片およびこれらの組み合わせを含む骨処方物を生成した。しかし、コーティング組成物の実施形態を骨に適用するためのこれらの例示的プロセスは、他のコーティングおよび安定化の方法が使用され得るので、限定的ではない。さらに、方法の実施形態において、上記コーティング組成物を含むコーティングは、例えば、風乾する工程によって安定化され得る。しかし、これらの処理は限定的ではなく、他のコーティングおよび安定化の方法が使用され得る。適切なコーティングおよび安定化の方法は、例えば、上記コーティング組成物の実施形態でコーティングされるべき骨の少なくとも1つの表面が、上記コーティングする工程の前に、以下のうちの1つ以上を増強するように前処理され得る:コーティングされるべき骨に対して結合特異性を有するペプチドの結合;および上記コーティングの密度および均一性、を含む。例えば、このような前処理は、骨に対して結合特異性を有するペプチドの結合を増強することにおいて、親水性相互作用もしくは上記骨表面と上記ペプチドのアミノ酸との間の分子接着を増強することによって、上記コーティングされるべき骨の表面を、エッチングもしくは酸処理する工程を包含し得る。
【0098】
(実施例5)
薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドの実施形態に連結された;そしてこのペプチドに結合した薬学的に活性な因子をさらに含み得る、骨に対して結合特異性を有する少なくとも1つのペプチドの実施形態を含む組成物の実施形態の例が示される。この実施例は、本明細書で開示される骨に対して結合特異性を有するペプチドの実施形態を使用する、いくつかの組成物の実施形態を含み、各々の組成物は、式I:
−J−X−P
を含み、ここで
は、(i)約5アミノ酸〜約50アミノ酸を含み、他の実施形態については、約10アミノ酸〜約25 アミノ酸を含み、そして他の実施形態については、約10アミノ酸〜約15アミノ酸を含むペプチド;(ii)上記ペプチドのN末端から最初の10連続アミノ酸を含む配列内で、そしていくつかの実施形態については、最初の8アミノ酸内で、そして他の実施形態については、上記ペプチドのアミノ酸配列のN末端から最初の5アミノ酸内で、3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基(Phe、Trp、Tyrのうちの1つ以上)を含むドメインもしくはモチーフを含むペプチド;(iii)骨に対して結合特異性を有するペプチド;ならびに(iv)配列Gly−Ile−Alaによって特徴づけられる細胞−結合ドメインを有するコラーゲン由来配列を欠いているペプチドであり;
Jは、リンカーを含み;
は、(i)約3アミノ酸〜約50アミノ酸、およびいくつかの実施形態については、約10アミノ酸〜約25アミノ酸、およびいくつかの実施形態については、約10アミノ酸〜約15アミノ酸を有するアミノ酸配列を含むペプチド;ならびに(ii)薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含み;そして
Pは存在しないか、または薬学的に活性な因子を含む。
【0099】
従来のペプチド合成法を使用して、組成物の実施形態を合成した。上記組成物の実施形態は、配列番号133〜136の組成物および対応する配列番号137〜140を含むアミノ酸配列から構成される。配列番号137〜140は、そのC末端において余分のリンカー配列を含み、このリンカー配列に対して、本明細書に記載される結合実験のためにビオチンを連結した。配列番号141および142を含む、本発明の組成物もまた、合成した。表7に示されるように、下線を付したアミノ酸配列は、上記示されたXおよびXのアミノ酸配列を含み、そしてJは、下線を付した配列を結合する下線を付していないアミノ酸配列によって表される。
【0100】
【表7】

結合特異性の尺度としても使用される、上記組成物の、骨に対する相対結合強度の実施形態を、実施例1のB節に記載されるように、上記組成物の連続希釈物を、骨への結合について試験することによって測定した。各組成物の濃度範囲にわたって認められる吸光度をプロットしたところ、骨に対する上記組成物の結合曲線およびおよその解離定数を得た。骨に対して結合特異性を有するペプチド(これから上記組成物が作製される)と類似して、上記組成物の実施形態の1つの特性は、上記組成物が、約10μM以下、およびいくつかの実施形態については、ナノモル範囲(<1μM)のEC50によって測定される場合のような結合特異性で、骨に結合することである。本明細書の実施例1Bに概説される方法を使用して、配列番号137、138、139、140、141および142に示されるアミノ酸配列(表7を参照のこと)を含む4つの例示的組成物の実施形態の相対結合強度をアッセイし、そして骨に対する相対結合強度の測定を容易にするためにビオチン化されたC末端アミノ酸リンカーを含むように合成した。DBMによって示され、EC50(μM単位)として表される骨に対する組成物の実施形態の相対結合強度は、表8に示される。
【0101】
【表8】

表8に示されるように、組成物の実施形態は、ナノモル範囲(<1μM)の骨に対する結合特異性を示す。
【0102】
本明細書に記載される組成物の実施形態は、骨に対して結合特異性を有するペプチドを介して骨に結合したが、薬学的に活性な因子もまた結合する能力を有する。この実施例において、上記薬学的に活性な因子は増殖因子であり、より具体的には、BMP−2である。結合アッセイを、ELISAを使用して行った;そして薬学的に活性な因子の濃度範囲にわたって認められた、得られた吸光度によって、EC50を計算するために使用した上記組成物の結合曲線およびおよその解離定数を得た。上記組成物がない適切なコントロールを、上記アッセイに含めた。
【0103】
具体的例として、DBMを、3mg当量/ウェルの濃度でマイクロタイタープレートに入れ、次いで、このウェルおよびDBMを、1% BSAを含む緩衝液で1時間、室温でブロッキングした。次いで、上記1% BSAを含む緩衝液を各ウェルから吸引し、10μMのそれぞれの組成物の実施形態を含む100μlの緩衝液を、ウェルの各々に添加した。上記マイクロタイタープレートを、プレート振盪機上で、室温において1時間インキュベートした。次いで、上記DBMを沈澱させ、次いで、上記緩衝液を、上記ウェルから吸引した。上記DBMを緩衝液−Tで3回洗浄し、次いで、BMP−2の連続希釈物を、100μlの緩衝液中でウェルに添加した。次いで、上記マイクロタイタープレートを、プレート振盪機上で、室温において1時間インキュベートした。次いで、上記組成物が結合したDBMを沈澱させ、次いで、緩衝液を上記ウェルから吸引した。上記DBM−組成物組み合わせを、緩衝液−Tで3回洗浄した。市販のマウス抗BMP−2抗体を、1% BSAを含む緩衝液中で1:1000希釈し、そして1ウェルあたり100μlを添加した。上記プレートを、プレート振盪機上で、室温において30分間インキュベートし、次いで、洗浄工程を反復した。アルカリホスファターゼで標識した市販の抗マウス抗体を、1% BSAを含む緩衝液中で1:1000希釈し、そして1ウェルあたり100μlを添加した。上記プレートを、プレート振盪機上で、室温において30分間インキュベートし、次いで、洗浄工程を反復した。200μlの基質pNPPを各ウェルに添加し、上記プレートを、プレート振盪機上で、室温においてインキュベートして、上記アッセイ系を発色させた。100μlの溶液を各ウェルから取り出し、新たなマイクロタイタープレートのそれぞれのウェルに添加し、次いで、これを、分光光度計で読み取って、405nmの吸光度を記録した。薬学的に活性な因子に対する組成物の上記相対親和性、結合特異性、EC50の推定を、上記アッセイにおける最大シグナルの半分を提供するペプチドの濃度を決定することによって行い得る。
【0104】
表9は、配列番号133、134、135、および136に示され、そしてそれぞれ、対応する配列番号137、138、139および140によって表される、ならびに配列番号141および142で示されるアミノ酸配列を含む6つの例示的組成物のEC50(nM単位)として表される結果を示す。各組成物を、最初に、骨に結合させ、次いで、BMP−2によって表される薬学的に活性な因子への結合についてアッセイした。
【0105】
【表9】

従って、表9の結果は、上記組成物の実施形態が、Xを介して骨に結合した場合に、上記組成物が、薬学的に活性な因子に、Xを介してナノモル範囲のEC50で特異的に結合する能力が予測外にも維持されることを実証する。(a)Xに連結されたXから構成される組成物;(b)Xに連結されかつXに結合したPを含むXから構成される組成物;(c)Xに連結されたXを含む組成物によってコーティングされた骨;および(d)Xに連結されたXを含みかつXに結合したPを含む組成物によってコーティングされた骨もまた、示す。
【0106】
(実施例6)
骨に対して結合特異性を有する結合ドメインを含むペプチドの実施形態のアミノ酸配列に基づいて、本明細書に記載されるようなペプチドもしくはその改変体をコードするポリヌクレオチド、核酸分子は、合成もしくは構築され得、このようなペプチドは、培養および/もしくはインビボ生成におけるような製造方法として、インビボでこのようなポリヌクレオチドを導入することによって、組換えDNA技術によって生成され得る。例えば、1つより多いポリヌクレオチド配列が、ペプチドの実施形態をコードし得、そしてこのようなポリヌクレオチドは、上記ペプチドのアミノ酸をコードすることが公知のトリプレットコドン、第3の塩基縮重、および無細胞発現系もしくは宿主細胞によって使用されるトリプレットコドン使用法の選択(代表的には、原核生物細胞もしくは真核生物細胞(例えば、E.coliのような細菌細胞;酵母細胞;哺乳動物細胞;トリ細胞;両生類細胞;植物細胞;魚類細胞;および昆虫細胞);発現が望まれるインビトロもしくはインビボで位置しているか否かに基づいて、合成され得る。
【0107】
例示の目的のみであって限定ではなく、配列番号5、13、37、30、41、43、および4のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである配列番号126〜132が提供される。コドン使用法が、一般に、骨に対して結合特異性を有するペプチドの実施形態をコードするポリヌクレオチドに適用される。従って、例えば、配列番号5に関連して、配列番号126を使用して、当業者は、配列番号5に示されるアミノ酸配列の改変体をコードするポリヌクレオチドを容易に構築し得るか、または配列番号6として示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を推測し得る。本発明に従う一実施形態において、骨に対して結合特異性を有するペプチドのアミノ酸配列(例えば、配列番号5)をコードするポリヌクレオチドは、上記アミノ酸配列(例えば、配列番号5、または例えば、配列番号5のようなアミノ酸配列と少なくとも95%同一性、および他の実施形態については、少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列)からなるペプチドをコードする核酸分子を含むが、ただし、上記コードされたペプチドは、骨に対する結合特異性を実質的に保持している。
【0108】
1つの例示的実施形態は、本発明の実施形態に従う用途;および骨に対して結合特異性を有するペプチドの組換え生成のためのその用途のために、骨に対して結合特異性を有するペプチドを含む結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを含む。一例において、上記ポリヌクレオチドは、ペプチドもしくはポリペプチドを生成するために当該分野で公知の無細胞発現系に添加され得る。別の例において、上記ポリヌクレオチドは、上記ペプチドが細菌宿主細胞において生成される場合に、上記ペプチドの精製を補助する他のアミノ酸配列との融合タンパク質として;または表面−結合ドメインに組換え連結されて生成されるように、原核生物発現ベクターに配置され得る。例えば、発現されることが所望されるペプチドとの融合タンパク質の一部として、発現のために使用される原核生物細胞の細胞質において見いだされる封入体における生成を容易にし、そして/またはこのような配列を含む融合タンパク質の精製を補助する配列が存在する。封入体は、当該分野で変性剤を含むことが公知の方法、および分画(例えば、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなど)によって、他の原核生物細胞成分から分離され得る。別の例において、発現の際に、遺伝子産物がまた、従来の方法を使用して上記遺伝子産物の精製において利用され得る複数の末端ヒスチジン残基「Hisタグ」を含むように、タンパク質もしくはペプチドとして発現されることが望ましい目的の核酸配列が挿入される市販のベクターが存在する。
【0109】
骨に対して結合特異性を有するペプチドを含む結合ドメインをコードする核酸配列は、プラスミド、もしくはプラスミド以外のベクターを含む核酸分子に挿入され得るか、またはその一部になり得る;そして他の発現系が使用され得、これらとしては、バクテリオファージベクター、もしくはコスミドDNAで形質転換された細菌;酵母ベクター含有酵母;真菌ベクターを含む真菌;バキュロウイルスのようなウイルスに感染した昆虫細胞株;およびプラスミドもしくはウイルス発現ベクターが導入されている(例えば、トランスフェクトもしくはエレクトロポレーションされている)か、または組換えウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、およびレトロウイルス)に感染している、哺乳動物細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。上記ペプチドの首尾良い発現は、上記ペプチドのコード配列を含む上記組換え核酸分子、もしくはベクター自体のいずれかが、発現のために使用される特定の宿主細胞系と適合性かつその宿主細胞系によって認識される転写および翻訳のための必須の制御エレメントを含むことを要する。
【0110】
分子生物学の分野で公知の方法(上記に記載の方法を含む)を使用して、種々のプロモーターおよびエンハンサーが、上記ペプチドの発現を増大させるためのコード配列を含む上記ベクターもしくは上記組換え核酸分子に組み込まれ得、ただし、その増大される上記ペプチドの発現は、上記使用される特定の宿主細胞系と適合性(例えば、非毒性)である。上記プロモーターの選択は、使用される発現系に依存する。プロモーターは、強度(すなわち、転写を促進する能力)において変動する。一般に、クローニングされた遺伝子を発現する目的で、高レベルの上記遺伝子の転写および遺伝子産物への発現を得るために、強いプロモーターを使用することは、望ましい。例えば、高レベルの転写がE.coliを含む宿主細胞形で認められた当該分野で公知の細菌、ファージ、もしくはプラスミドのプロモーターとしては、lacプロモーター、trpプロモーター、T7プロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、P.sub.RおよびP.sub.Lプロモーター、lacUV5、ompF、bla、Ippなどが挙げられ、上記合成ペプチドをコードする挿入ヌクレオチド配列の転写を提供するために使用され得る。哺乳動物発現系のための発現ベクターで一般に使用される哺乳動物プロモーターは、哺乳動物ウイルス遺伝子由来のプロモーターである。例としては、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびCMVプロモーターが挙げられる。
【0111】
上記ペプチドの発現が上記宿主細胞によって致死的もしくは有害であり得る場合、上記宿主細胞株および発現ベクターは、上記プロモーターの作用が、具体的に誘導されるまで阻害されるように選択され得る。例えば、特定のオペロンにおいて、特定の誘導因子の付加は、上記挿入DNAの効率的な転写に必須である(例えば、上記lacオペロンは、ラクトースもしくはイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(「IPTG」)の付加によって誘導され;trpオペロンは、トリプトファンが増殖培地中に存在しない場合に誘導され;そしてテトラサイクリンは、tet感受性プロモーターを有する哺乳動物発現ベクターにおいて使用され得る)。従って、上記ペプチドの発現は、形質転換されたかもしくはトランスフェクトされた細胞を、上記コード配列からの発現を制御する上記プロモーターが誘導されないような条件下で培養することによって制御され得るか、上記細胞が上記増殖培地中で所望の密度に達した場合に、上記プロモーターは、上記コード配列からの発現のために誘導され得る。効率的な遺伝子転写もしくはメッセージ翻訳のための他の制御エレメントは、当該分野で周知であり、エンハンサー、転写もしくは翻訳開始シグナル、転写終結およびポリアデニル化配列などが挙げられる。
【0112】
本発明の特定の実施形態の前述の説明は、例示目的でのみ詳細に記載されてきた。説明および例示に鑑みて、当業者は、現在の知識を適用することによって、本発明の基本的概念から逸脱することなく種々の適用のために、本発明を容易に改変および/もしくは適合させ得る;従って、このような改変および/もしくは適合は、添付の特許請求の範囲の意味および範囲内であることが意図される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物であって、
骨に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、および薬学的に活性な因子に結合する少なくとも1つの結合ドメインを含み、ここで該骨に結合する少なくとも1つの結合ドメインは、該薬学的に活性な因子に結合する少なくとも1つの結合ドメインに連結され、そして
該1つの骨に結合する結合ドメインは、ペプチドを含み、該ペプチドは、(i)約5アミノ酸〜約50アミノ酸を含み;(ii)該ペプチドのN末端から最初の5アミノ酸から最初の10アミノ酸内の範囲において連続するアミノ酸を含む配列内に、3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基から構成されるドメインもしくはモチーフをさらに含み;(iii)骨に対して結合特異性を有し;そして(iv)配列Gly−Ile−Alaによって特徴づけられるコラーゲン結合ドメインを欠いており;そして
該薬学的に活性な因子に結合する少なくとも1つの結合ドメインは、約3アミノ酸〜約50アミノ酸を有するアミノ酸配列を含みかつ薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含む、
コーティング組成物。
【請求項2】
前記薬学的に活性な因子に結合する結合ドメインを、前記骨に結合する結合ドメインに連結するリンカーをさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記骨に結合する結合ドメインは、配列番号1〜45のアミノ酸配列を有するペプチドのうちの1種以上を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記骨に結合する結合ドメインは、ZZXZZXXXXXXXZを含み、ここでZはF、W、もしくはYであり、Xは任意のアミノ酸である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記骨に結合する結合ドメインは、ZXXZZZXXXXXXを含み、ここでZはF、W、もしくはYであり、Xは任意のアミノ酸である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記薬学的に活性な因子に結合する結合ドメインは、配列番号48〜125のアミノ酸配列を有するペプチドのうちの1種以上を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有する前記結合ドメインに結合される薬学的に活性な因子をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
骨に結合されるコーティングを含む組成物であって、該組成物は、式:
−J−X−P;
を有し、
ここでXは、(i)約5アミノ酸〜約50アミノ酸を含み;(ii)該ペプチドのN末端から最初の5アミノ酸から最初の10アミノ酸内の範囲において連続するアミノ酸を含む配列内に、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基から構成されるドメインもしくはモチーフを含み;(iii)骨に対して結合特異性を有し;そして(iv)配列Gly−Ile−Alaによって特徴づけられるコラーゲン結合ドメインを欠いている、ペプチドを含み;
Jは存在しないか、またはリンカーであり;
は存在しないか、または約3アミノ酸から約50アミノ酸を有するアミノ酸配列を含みかつ薬学的に活性な因子に対して結合特異性を有するペプチドを含み;そして
Pは存在しないか、または薬学的に活性な因子を含み;
ここでXおよびPのうちのいずれか1つ以上が存在しない場合、Xは、配列番号1〜47のうちのいずれか1つの配列を有するアミノ酸配列、または配列番号1〜45のうちのいずれか1つの配列と95%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドを含む、
組成物。
【請求項9】
前記リンカーは存在し、ホモ二官能性もしくはヘテロ二官能性である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記リンカーは存在し、合成ポリマーもしくは天然ポリマーである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
骨に結合するペプチドは、配列番号1〜45のアミノ酸配列を有するペプチド、もしくは配列番号1〜45のうちのいずれか1つの配列と95%同一性を有するアミノ酸配列のうちの1つ以上を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
骨に結合するペプチドは、ZZXZZXXXXXXXZを含み、ここでZはF、W、もしくはYであり、Xは任意のアミノ酸である、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
骨に結合するペプチドは、ZXXZZZXXXXXXを含み、ここでZはF、W、もしくはYであり、Xは任意のアミノ酸である、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
薬学的に活性な因子に結合するペプチドは、配列番号48〜125のアミノ酸配列を有するペプチドのうちの1種以上を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
前記薬学的に活性な因子に結合するペプチドに結合された薬学的に活性な因子をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
骨誘導、骨伝導および骨生成のうちの1つ以上を増強するための方法であって、該方法は、骨もしくは骨インプラントに、請求項1に記載のコーティング組成物を適用する工程を包含する、方法。
【請求項17】
骨誘導、骨伝導および骨生成のうちの1種以上を増強するための方法であって、該方法は、骨もしくは骨インプラントに、請求項8に記載の組成物を適用する工程を包含する、方法。
【請求項18】
骨向性ペプチドであって、該ペプチドは、約5〜約50アミノ酸を含み;該ペプチドのアミノ酸配列のN末端側の半分において5個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列内に、Phe、Try、およびTyrのうちの1種以上を含む3個以上の芳香族アミノ酸残基を含み;骨に対して結合特異性を含み;ならびにコラーゲンを結合するためのGly−Ile−Alaからなる配列が存在しない、ペプチド。
【請求項19】
前記ペプチドは、N末端基、C末端基、保存的置換、もしくはその組み合わせを含む1種以上の改変を含む、請求項18に記載の骨向性ペプチド。
【請求項20】
前記アミノ酸配列は、配列番号1〜45のうちの1つ、または配列番号1〜45のうちのいずれか1つの配列と95%同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の骨向性ペプチド。
【請求項21】
配列番号1〜45のアミノ酸配列を有するペプチドの群内のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項22】
配列番号1〜45のアミノ酸配列を有するペプチドの群内のペプチドをコードする核酸分子を含む、ベクター。
【請求項23】
骨に薬学的に活性な因子を送達するための送達系であって、該送達系は、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインから構成される組成物、ならびに該組成物を骨に適用するための接触器系を含み;ここで該第1の結合ドメインは、(i)約5アミノ酸から約50アミノ酸を含み、(ii)該ペプチドのN末端から最初の5アミノ酸から最初の10アミノ酸内の範囲において連続するアミノ酸を含む配列内に、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、3個以上の大きな芳香族アミノ酸残基から構成されるドメインもしくはモチーフを含み、そして(iii)骨に対して結合特異性を有するペプチドを含み;そして該第2の結合ドメインは、薬学的に活性な因子に結合するペプチドを含む、送達系。
【請求項24】
骨は、骨インプラントを含む、請求項23に記載の送達系。
【請求項25】
前記第2の結合ドメインはBMPに結合されている、請求項23に記載の送達系。
【請求項26】
前記第2の結合ドメインは細胞に結合されている、請求項23に記載の送達系。
【請求項27】
前記第2の結合ドメインはビタミンに結合されている、請求項23に記載の送達系。
【請求項28】
前記第2の結合ドメインは治療薬物に結合されている、請求項23に記載の送達系。
【請求項29】
前記第2の結合ドメインはホルモンに結合されている、請求項23に記載の送達系。
【請求項30】
前記第2の結合ドメインは核酸分子に結合されている、請求項23に記載の送達系。
【請求項31】
前記接触器系は、骨表面もしくは骨インプラント表面を液体に浸すための組成物を含む液体を含む、請求項23に記載の送達系。
【請求項32】
前記接触器系は、骨表面もしくは骨インプラント表面を接触させるための、固体、粉末、ペースト、充填剤、結合剤、ゲル、スポンジ、インプラント、移植片およびこれらの組み合わせを作製するための組成物を含む乾燥粉末を含む、請求項23に記載の送達系。
【請求項33】
請求項1に記載のコーティング組成物を適用した骨。
【請求項34】
請求項7に記載のコーティング組成物を適用した骨。
【請求項35】
請求項8に記載の組成物を適用した骨。
【請求項36】
請求項15に記載の組成物を適用した骨。
【請求項37】
請求項18に記載の骨向性ペプチドを適用した骨。
【請求項38】
骨インプラントを含む、請求項33に記載の骨。
【請求項39】
骨インプラントを含む、請求項34に記載の骨。
【請求項40】
骨インプラントを含む、請求項35に記載の骨。
【請求項41】
骨インプラントを含む、請求項36に記載の骨。
【請求項42】
骨インプラントを含む、請求項37に記載の骨。

【公表番号】特表2011−500104(P2011−500104A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506438(P2010−506438)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/061200
【国際公開番号】WO2008/134329
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(508207398)アフィナジー, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】