説明

薬液供給方法及び薬液供給システム

【課題】薬液の補充開始時の過剰圧力変動を抑制してフィルタの濾過速度を制御し、濾過精度の維持を図れるようにすること。
【解決手段】薬液ポンプ50の一次側開閉弁V1及び二次側開閉弁V2の開閉動作及び薬液ポンプの給排動作により、薬液ボトル13より供給される薬液をフィルタ46にて濾過した後、吐出ノズル43より吐出する薬液供給システムにおいて、薬液ポンプの作動室53に連通する管路56に、圧力センサ59、フローメータ57及び電空レギュレータ58を備えると共に、電空レギュレータを制御する制御部60を備え、圧力センサは、薬液ポンプへの薬液の補充開始時に、一次側開閉弁を開放した際の作動室側の圧力を検出し、作動室から排気された排気流量をフローメータにより検出し、制御部は、検出された圧力と排気流量に基づいて、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように電空レギュレータを制御して排気圧を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液供給方法及び薬液供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、例えば半導体ウエハ等の基板の上にフォトレジストを塗布し、レジスト膜を所定の回路パターンに応じて露光し、現像処理することにより回路パターンを形成するフォトリソグラフィ工程が採用されている。フォトリソグラフィ工程には、通常、塗布・現像処理装置に露光装置を接続した処理システムが用いられる。
【0003】
一般に、フォトリソグラフィ工程では、鉛直軸回りに回転する基板の表面中心部に薬液であるレジスト液を吐出して、遠心力によって基板表面にレジスト膜を形成するスピンコート法が知られている。このスピンコート法において、所定量のレジスト液を基板表面に吐出させるために、定圧ポンプを用いた薬液供給方法(システム)が採用されている。
【0004】
従来、スピンコート法においては、レジスト液を収容する薬液タンクと薬液吐出ノズルとを接続する薬液管路に、可撓性部材にてポンプ室と仕切られた作動室内の圧力変化に伴うポンプ室の容積変化により薬液の吸引及び吐出を行う薬液ポンプと、この薬液ポンプの作動室に作動気体を供給する圧力調整可能な作動気体供給装置と、薬液管路における薬液ポンプの一次側と二次側にそれぞれ設けられる一次側開閉弁及び二次側開閉弁と、を備え、作動気体供給装置により供給される作動気体の圧力を検出し、その検出された圧力値と、例えば薬液の種類やその他の条件により都度設定される作動気体の圧力設定値を用い、圧力フィードバック制御して薬液の吐出流量を制御する薬液供給システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、この種の薬液供給システムにおいては、吐出されるレジスト液中に不純物は混入するのを防止するために、薬液管路における薬液ポンプの一次側にフィルタを介設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−110004号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、薬液ポンプの作動室に作動気体を供給する際の作動気体圧力を検出し、検出された作動気体の圧力値と都度設定される圧力設定値とに基づいて薬液の吐出流量を制御する技術であり、薬液ポンプに薬液を吸引すなわち薬液補充する際の作動気体の排気圧(排気流量)の制御については言及されていない。
【0008】
したがって、特許文献1に記載のものにおいては、薬液を吐出した後に、薬液ポンプのポンプ室に薬液を補充する際、一次側開閉弁を開放して作動室内の作動気体を排気すると、一次側開閉弁の前後に圧力差、すなわちポンプ室と作動室の間に差圧が生じ、補充開始時に過剰圧力変動すなわちオーバーシュートを起こす問題があった。この現象は薬液タンクの薬液の残量の変化にも起因する。このように薬液ポンプへの薬液補充開始時に生じるオーバーシュートは、一般の定量式ポンプを用いる液供給システムにおいても共通の問題である。
【0009】
上記のようにオーバーシュートが発生すると、薬液ポンプのポンプ室への薬液の補充流量が多くなると共に、流速が速くなり、これに伴ってフィルタの濾過速度も速くなり、薬液中の不純物や異物が濾過されずにフィルタを通過する懸念がある。フィルタを通過した不純物等を含む薬液が薬液ポンプを経て薬液吐出部に至る過程においてパーティクルが発生し、薬液吐出部から塗布面に吐出される懸念がある。特に、現状ではレジストの吐出量を少なくする傾向にあるため、少ないレジストの吐出量に応じてフィルタの濾過速度を厳密に規定する必要があり、上記オーバーシュートによる悪影響は否めない。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、薬液の補充開始時の過剰圧力変動を抑制してフィルタの濾過速度を制御し、濾過精度の維持を図れるようにした薬液供給方法及び薬液供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明の薬液供給方法は、薬液を収容する薬液タンクと薬液吐出部とを接続する薬液管路に、薬液を濾過するフィルタと、可撓性部材にてポンプ室と仕切られた作動室内の圧力変化に伴うポンプ室の容積変化により薬液の吸引及び吐出を行う薬液ポンプと、上記薬液管路における上記薬液ポンプの一次側と二次側にそれぞれ設けられる一次側開閉弁及び二次側開閉弁と、を備え、 上記一次側開閉弁及び二次側開閉弁の開閉動作及び上記薬液ポンプの給排動作により、上記薬液タンクより供給される薬液を上記フィルタにて濾過した後、上記薬液吐出部より吐出する薬液供給方法において、
上記薬液ポンプへの薬液の補充開始時に、上記一次側開閉弁を開放した際の上記作動室側の圧力を検出すると共に、上記作動室から排気された排気流量を検出し、 検出された上記圧力と排気流量に基づいて、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整する、ことを特徴とする(請求項1)。この場合、上記排気圧の調整を、上記作動室と減圧源とを接続する管路に介設された圧力調整機構によって行う方が好ましい(請求項2)。
【0012】
また、この発明の薬液供給方法において、上記検出された圧力に、上記薬液タンク及び該薬液タンク内の薬液の液面の位置により変動する圧力を加味して補正圧力を作成し、この補正圧力と上記排気流量に基づいて、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整する方が好ましい(請求項3)。
【0013】
また、この発明の薬液供給システムは、上記薬液供給方法を具現化するもので、薬液を収容する薬液タンクと薬液吐出部とを接続する薬液管路に、薬液を濾過するフィルタと、可撓性部材にてポンプ室と仕切られた作動室内の圧力変化に伴うポンプ室の容積変化により薬液の吸引及び吐出を行う薬液ポンプと、上記薬液管路における上記薬液ポンプの一次側と二次側にそれぞれ設けられる一次側開閉弁及び二次側開閉弁と、を備え、 上記一次側開閉弁及び二次側開閉弁の開閉動作及び上記薬液ポンプの給排動作により、上記薬液タンクより供給される薬液を上記フィルタにて濾過した後、上記薬液吐出部より吐出する薬液供給システムにおいて、 上記薬液ポンプの作動室に連通する管路に、上記作動室内の圧力を検出する圧力センサと、排気流量を検出する流量センサ及び排気圧を調整する圧力調整機構と、を備えると共に、上記圧力センサ及び流量センサにより検出された検出信号に基づいて上記圧力調整機構を制御する制御部を備え、 上記圧力センサは、上記薬液ポンプへの薬液の補充開始時に、上記一次側開閉弁を開放した際の上記作動室側の圧力を検出し、上記作動室から排気された排気流量を上記流量センサにより検出し、上記制御部は、検出された上記圧力と排気流量に基づいて、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように圧力調整機構を制御して排気圧を調整する、ことを特徴とする(請求項4)。
【0014】
この場合、上記管路は、上記薬液ポンプの作動室に接続する主管路と、この主管路から分岐され、減圧源に接続する排気管路と、加圧源に接続する加圧管路とからなり、上記主管路に上記流量センサを介設し、上記排気管路に介設される上記圧力調整機構と、上記加圧管路に介設される圧力調整機構と、を連成し、連成された上記圧力調整機構に上記圧力センサを設けると共に、圧力調整機構の排気圧の調整と加圧の調整を上記制御部にて制御可能に形成してなる方が好ましい(請求項5)。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、請求項3に記載の薬液供給方法を具現化するもので、上記制御部は、上記薬液タンク及び該薬液タンク内の薬液の液面の位置により変動する圧力を加味して補正圧力を作成し、この補正圧力と上記排気流量に基づいて、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整する、ことを特徴とする。
【0016】
(1)請求項1,2,4,5に記載の発明によれば、薬液ポンプへの薬液の補充開始時に、一次側開閉弁を開放した際の作動室側の圧力を検出すると共に、作動室から排気された排気流量を検出することで、作動室から排気(排出)される排気流量と圧力変化による流量から作動室及びポンプ室の容積変化を換算、すなわち薬液ポンプの容積変化量を換算して、薬液補充時の薬液の圧力の挙動を把握することができる。更に、検出された圧力と排気流量に基づいて、圧力調整機構の駆動圧を制御して、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整することにより、薬液補充速度を制御することができる。
【0017】
(2)請求項3,6に記載の発明によれば、薬液ポンプへの薬液の補充開始時に検出された圧力に、薬液タンク及び該薬液タンク内の薬液の液面の位置により変動する圧力を加味して補正圧力を作成し、この補正圧力と薬液ポンプの作動室から排気された排気流量に基づいて、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整することにより、薬液供給システムにおける複数回の薬液吐出による薬液ポンプの一次側圧力の経時的変化に対応して、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
(1)請求項1,2,4,5に記載の発明によれば、薬液ポンプへの薬液補充時に検出された圧力と排気流量に基づいて、圧力調整機構の駆動圧を制御して、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整することにより、薬液補充速度を制御することができるので、薬液補充開始時にフィルタの濾過速度を制御して濾過精度の維持を図ることができる。
【0019】
(2)請求項3,6に記載の発明によれば、薬液供給システムにおける複数回の薬液吐出による薬液ポンプの一次側圧力の経時的変化に対応して、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整することができるので、上記(1)に加えて更にフィルタの濾過精度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る薬液供給システムを適用した塗布・現像処理装置に露光装置を接続した処理システムの全体を示す概略平面図である。
【図2】上記処理システムの概略斜視図である。
【図3】上記処理システムの概略背面図である。
【図4】この発明に係る薬液供給システムの一例を示す概略構成図である。
【図5】この発明に係る薬液供給システムの要部を示す概略構成図である。
【図6】この発明に係る薬液供給システムにおける制御部を示すブロック図である。
【図7】この発明における薬液の補充と吐出動作を示すタイムチャートである。
【図8】薬液の1回目の補充時の流量と時間の関係を示すグラフ(a)及び2回目の補充時の流量と時間の関係を示すグラフ(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。ここでは、この発明に係る薬液供給システムを塗布・現像処理装置に露光処理装置を接続した処理システムに適用した場合について説明する。
【0022】
上記処理システムは、被処理基板である半導体ウエハW(以下にウエハWという)を複数枚例えば25枚を密閉収納するキャリア10を搬出入するためのキャリアステーション1と、このキャリアステーション1から取り出されたウエハWにレジスト塗布,現像処理等を施す処理部2と、ウエハWの表面を露光する露光装置4と、処理部2と露光装置4との間に接続されて、ウエハWの受け渡しを行うインターフェイス部3とを具備している。
【0023】
キャリアステーション1は、キャリア10を複数個並べて載置可能な載置部11と、この載置部11から見て前方の壁面に設けられる開閉部12と、開閉部12を介してキャリア10からウエハWを取り出すための受け渡し手段A1とが設けられている。
【0024】
また、キャリアステーション1の奥側には筐体20にて周囲を囲まれる処理部2が接続されており、この処理部2にはキャリアステーション1から見て左手手前側から順に加熱・冷却系のユニットを多段化した棚ユニットU1,U2,U3を配置し、右手に液処理ユニットU4,U5を配置する。棚ユニットU1,U2,U3の間に、各ユニット間のウエハWの受け渡しを行う主搬送手段A2,A3が棚ユニットU1,U2,U3と交互に配列して設けられている。また、主搬送手段A2,A3は、キャリアステーション1から見て前後方向に配置される棚ユニットU1,U2,U3側の一面部と、後述する例えば右側の液処理ユニットU4,U5側の一面部と、左側の一面をなす背面部とで構成される区画壁21により囲まれる空間内に置かれている。また、キャリアステーション1と処理部2との間、処理部2とインターフェイス部3との間には、各ユニットで用いられる処理液の温度調節装置や温湿度調節用のダクト等を備えた温湿度調節ユニット22が配置されている。
【0025】
インターフェイス部3は、処理部2と露光装置4との間に前後に設けられる第1の搬送室3A及び第2の搬送室3Bにて構成されており、それぞれに第1のウエハ搬送部30A及び第2のウエハ搬送部30Bが設けられている。
【0026】
棚ユニットU1,U2,U3は、液処理ユニットU4,U5にて行われる処理の前処理及び後処理を行うための各種ユニットを複数段例えば10段に積層した構成とされており、その組み合わせはウエハWを加熱(ベーク)する加熱ユニット(HP)、ウエハWを冷却する冷却ユニット(CPL)等が含まれる。また、液処理ユニットU4,U5は、例えば図2に示すように、レジストや現像液などの薬液収納部の上に反射防止膜を塗布するボトム反射防止膜塗布ユニット(BCT)23、塗布ユニット(COT)24、ウエハWに現像液を供給して現像処理する現像ユニット(DEV)25等を複数段例えば5段に積層して構成されている。この発明に係る薬液供給システムは塗布ユニット(COT)24に設けられている。
【0027】
また、図3に示すように、棚ユニットU1〜U3の下方側には、ケミカルユニットU7,U8が並列して設けられている。これらケミカルユニットU7,U8は、この発明に係る薬液供給システムに用いられる薬液タンクである薬液ボトル13を交換可能に載置する載置棚14を備えており、載置棚14が図示しない昇降機構によって昇降可能に形成されている。
【0028】
次に、上記の処理システムにおけるウエハWの流れについて簡単に説明する。先ず外部からウエハWの収納されたキャリア10が載置部11に載置されると、開閉部12と共にキャリア10の蓋体が外されて受け渡し手段A1によりウエハWが取り出される。そしてウエハWは棚ユニットU1の一段をなす受け渡しユニットを介して主搬送手段A2へと受け渡され、棚ユニットU1〜U3内の一つの棚にて、塗布処理の前処理として、反射防止膜の形成や冷却ユニットによる基板の温度調整などが行われる。
【0029】
その後、主搬送手段A2によりウエハWは塗布ユニット(COT)24内に搬入され、ウエハWの表面にレジスト膜が成膜される。レジスト膜が成膜されたウエハWは主搬送手段A2により外部に搬出され、加熱ユニットに搬入されて所定の温度でベーク処理がなされる。ベーク処理を終えたウエハWは、冷却ユニットにて冷却された後、棚ユニットU3の受け渡しユニットを経由してインターフェイス部3へと搬入され、このインターフェイス部3を介して露光装置4内に搬入される。なお、液浸露光用の保護膜をレジスト膜の上に塗布する場合には、上記冷却ユニットにて冷却された後、処理部2における図示しないユニットにて保護膜用の薬液の塗布が行われる。その後、ウエハWは露光装置4に搬入されて露光処理が行われる。
【0030】
露光処理を終えたウエハWは第2のウエハ搬送部30Bにより露光装置4から取り出され、棚ユニットU6の一段をなす加熱ユニット(PEB)に搬入される。その後、ウエハWは第1のウエハ搬送部30Aによって加熱ユニット(PEB)から搬出され、主搬送手段A3に受け渡される。そしてこの主搬送手段A3により現像ユニット25内に搬入される。現像ユニット25では、現像処理に兼用する洗浄処理装置により基板の現像が行われ、更に洗浄が行われる。その後、ウエハWは主搬送手段A3により現像ユニット25から搬出され、主搬送手段A2、受け渡し手段A1を経由して載置部11上の元のキャリア10へと戻される。
【0031】
次に、この発明に係る薬液供給システムについて、図4ないし図6を参照して説明する。ここでは、この発明に係る薬液供給システムを塗布ユニット(COT)24に適用した場合について説明する。
【0032】
塗布ユニット(COT)24は、ケーシング40内に、ウエハWを水平状態に保持すると共に、鉛直軸回りに回転するスピンチャック41と、このスピンチャック41及びウエハWの外周とそれらの下方を包囲するカップ42と、スピンチャック41により保持されるウエハWの表面に薬液であるレジスト液を吐出(供給)する薬液吐出ノズル43(以下に吐出ノズル43という)と、を備えている。
【0033】
吐出ノズル43は供給管路44を介して薬液ボトル13に接続されており、供給管路44には、薬液ボトル13側から順に、薬液ボトル13から導かれた薬液すなわちレジスト液を一時貯留するリザーバタンク45と、レジスト液中の不純物を濾過するフィルタ46と、フィルタ46を通過したレジスト液を一時貯留するトラップタンク47と、このトラップタンク47側に一次側開閉弁V1を配設し、吐出ノズル43側に二次側開閉弁V2を配設して接続される薬液ポンプ50と、が介設されている。
【0034】
なお、薬液ボトル13とリザーバタンク45との間には開閉弁V3が介設され、リザーバタンク45の上部に接続される廃液管路45aには廃液用開閉弁V4が介設されている。また、フィルタ46の上部には開閉弁V5を介設した気泡排出管路46aが接続され、トラップタンク47の上部には開閉弁V6を介設した廃液管路47aが接続されている。また、薬液ポンプ50と吐出ノズル43との間にはエアオペレーション弁VAとサックバック弁VSが介設されている。
【0035】
上記薬液ポンプ50は、図5に示すように、可撓性部材であるダイアフラム51にてポンプ室52と作動室53に仕切られており、ポンプ室52には、一次側開閉弁V1を介して薬液ボトル13側に接続する一次側連通路52aと、二次側開閉弁V2を介して吐出ノズル43側に接続する二次側連通路52bが設けられている。また、作動室53には、この作動室53に連通する給排路53aが設けられており、この給排路53aに給排切換弁VCを介してエアー加圧源54(以下に加圧源54という)と減圧源55に選択的に連通する管路56が接続されている。この場合、管路56は、作動室53に接続する主管路56aと、この主管路56aから分岐され、減圧源55に接続する排気管路56bと、加圧源54に接続する加圧管路56cとで形成されている。主管路56aには流量センサであるフローメータ57が介設され、排気管路56に介設される排気圧を調整する圧力調整機構と、加圧管路56に介設される加圧すなわちエアー圧を調整する圧力調整機構とが連成圧力調整機構58にて形成されている。この場合、連成圧力調整機構58は、排気管路56と加圧管路56とを選択的に接続する共通の連通ブロック58aと排気管路56又は加圧管路56の連通を遮断する2つの停止ブロック58b,58cと、連通ブロック58a、停止ブロック58b,58cを切換操作する電磁切換部58dを備える電空レギュレータにて形成されている。また、連成圧力調整機構58(以下に電空レギュレータ58という)には圧力センサ59が設けられており、圧力センサ59によって管路56が接続する作動室53内の圧力が検出される。
【0036】
上記のように構成される薬液ポンプ50の作動室53側に接続される作動エアーの給排部において、上記フローメータ57と圧力センサ59及び電空レギュレータ58は、それぞれ制御部60と電気的に接続されている。そして、フローメータ57によって検出された管路56内の排気流量と、圧力センサ59によって検出された管路56内の圧力が制御部60に伝達(入力)され、制御部60からの制御信号が電空レギュレータ58に伝達(出力)されるように形成されている。
【0037】
なお、電空レギュレータ58以外に、上記一次側開閉弁V1,二次側開閉弁V2,開閉弁V3〜V6,エアオペレーション弁VA,サックバック弁VS及び給排切換弁VCの開閉動作は制御部60により制御される。制御部60は、CPU(中央演算処理ユニット)、プログラム及びメモリ等により構成されるが、ここでは、この発明の要部である薬液供給システムに係る各機能をブロック化し構成要素として図6に基づいて説明する。
【0038】
図6に示すように、制御部60は、上記圧力センサ59で検出された薬液ポンプ50の作動室内の圧力データやフローメータ57で検出された管路56内の排気流量データ等を収集して記憶するデータ記憶部61と、薬液ポンプ50の一次側の変動液圧を記憶する供給側液圧記憶部62と、データ記憶部61及び供給側液圧記憶部62に記憶されデータを比較演算処理して例えば圧力センサ59で検出された圧力と、薬液ポンプ50の一次側の変動液圧とを加味した補正圧力を作成するデータ処理部63を備えている。また、制御部60は、上記データ記憶部61及び供給側液圧記憶部62に記憶されデータ及びデータ処理部63に基づいて電空レギュレータ58の排気圧及び供給圧のパラメータを変更するパラメータ変更部64と、変更後のパラメータを格納するパラメータ格納部65と、を備えている。
【0039】
なお、上記供給側液圧記憶部62に記憶される供給側液圧は、薬液ボトル13の設置位置(設置高さH1)や薬液ボトル13内の薬液例えばレジスト液の液面の高さH2等により変動する供給側液圧であって、薬液ボトル13の設置高さH1は、薬液ボトル13を処理システムのケミカルユニットU7,U8に設置する状態で予め認識することができる。また、薬液ボトル13内のレジスト液の液面の高さH2は、吐出ノズル43からレジスト液を吐出する量及び回数によって変動するが、新規の設置された薬液ボトル13内のレジスト液の量例えば3,800mlと、1回の吐出量例えば0.55mlと吐出回数により換算することができ、この換算された供給側液圧のデータが供給側液圧記憶部62に記憶される。なお、供給側液圧記憶部62には、供給側液圧の変動要素である薬液例えばレジスト液の種類や粘度等も記憶される。
【0040】
また、制御部60は、制御プログラム格納部66と、表示プログラム格納部67と、を備えており、制御プログラムに基づいて、電空レギュレータ58,一次側開閉弁V1,二次側開閉弁V2,開閉弁V3〜V6,エアオペレーション弁VA,サックバック弁VS及び給排切換弁VCが駆動制御され、また、表示プログラムからの信号が表示装置70に伝達されるようになっている。なお、図6中、符号BSはバスである。
【0041】
次に、上記のように構成される薬液供給システムの動作態様について図7及び図8を参照して説明する。薬液ポンプ50のポンプ室52内のレジスト液が空の状態において、1回目のレジスト液を補充するには、まず、制御部60からの制御信号を受けて一次側開閉弁V1が開き、二次側開閉弁V2が閉じると共に、給排切換弁VCが排気側に切り換わる。この状態で圧力センサ59によって薬液ポンプ50の作動室53内の圧力が検出され、検出された圧力の検出信号が制御部60に伝達(入力)される。次いで、電空レギュレータ58が減圧源55側に連通して、作動室53内のエアーを排気する。このとき、フローメータ57によって排気流量が検出され、検出された排気流量の検出信号が制御部60に伝達(入力)される。作動室53内のエアーが排気されると同時に、供給管路44からレジスト液がポンプ室52に流入し、ポンプ室52にレジスト液が補充される。
【0042】
ポンプ室52内へのレジスト液の補充が終了すると、一次側開閉弁V1が閉じると共に、給排切換弁VCが遮断位置に切り換わる。次に、二次側開閉弁V2が開き、給排切換弁VCが給気側に切り換えられた状態で、電空レギュレータ58を加圧側に連通して、作動室53内にエアーを供給し、ポンプ室52内のレジスト液を薬液ポンプ50から吐出し、吐出ノズル43よりウエハ表面に吐出して塗布処理が終了する。
【0043】
以後、上記と同様にして、2回目以降の薬液ポンプ50のポンプ室52内へのレジスト液の補充、吐出動作を繰り返して吐出ノズル43よりウエハ表面にレジスト液を吐出して塗布処理を行うことができる。
【0044】
上述した薬液供給システムの薬液ポンプ50へのレジスト液の補充開始時において、薬液ポンプ50の一次側開閉弁V1の前後の圧力差、すなわち薬液ポンプ50の一次側液圧と作動室53内のエアー圧に差圧が生じ、一次側液圧が作動室53内のエアー圧より大きいと、補充開始時の排気流量が多くなって過剰圧力変動すなわちオーバーシュートが生じる(図8(a)参照)。このオーバーシュートにより、ポンプ室52内へのレジスト液の流量が多くなると共に、流速が速くなり、これに伴ってフィルタ46を通過するレジスト液の濾過速度も速くなり、フィルタ46の機能を発揮できる濾過速度例えば0.3ml/secより濾過速度が速くなると、レジスト液中に含まれる不純物がフィルタ46を通過する問題がある。この問題は、薬液ポンプ50の一次側液圧と薬液ポンプ50の薬液補充時の作動室53内の圧力との差圧を少なくすことにより抑制できる。
【0045】
そこで、上記実施形態の薬液供給システムにおいては、上述したように、レジスト液の補充開始時に圧力センサ59によって作動室53内の圧力を検出すると共に、フローメータ57によって排気流量を検出し、検出された圧力と排気流量のデータを制御部60に伝達(入力)し、制御部60からの制御信号に基づいて、補充初期時における作動室53内の圧力を薬液ポンプ50の一次側液圧に等しくなるように電空レギュレータ58を制御している。
【0046】
この補充制御は、薬液ポンプ50の全容積は、ポンプ室52の容積と作動室53の容積の和であることから、補充時の作動室53内のエアーの排気流量と圧力変化により作動室53側の容積を換算ことにより、ポンプ室52内の容積を換算して、ポンプ室52内に補充されるレジスト液の挙動を把握することに基づくものである。
【0047】
以下に、補充制御について具体的に説明する。薬液ポンプ50の全容積は、ポンプ室52の容積と作動室53の容積の和であるから、薬液ポンプ50の全容積をV、ポンプ室52の容積をVLn、作動室53の容積をVAnとすると、V=VLn+VAn…(1)であり、(1)式より、VLn=V−VAn…(2)と表される。
【0048】
また、作動室53の容積変化はポンプ室52の容積変化と等しいことから、ポンプ室52の薬液の補充流量は、作動室53側のエアーの排気流量と圧力変化による作動室53側の流量により求めることができる。すなわち、補充液流量をQLnとし、作動室53の容積変化による排気流量をQAnとし、圧力変化による作動室53側の流量をQAn’とすると、
QLn=QAn−QAn’と表される。
【0049】
また、圧力変化による作動室53側の流量QAn’は、薬液ボトル13内の残量薬液(レジスト液)の液圧や薬液(レジスト液)の吐出回数等によって変化する薬液ポンプ50の一次側圧力の経時的に変化するもので、
QAn’=VAn-1×{(PAn-1)/101.325}/Δt…(3)と表され、
VAn=VAn-1−QLn×Δt…(4)と表される。
なお、定常域では、VAn>>QAn’である。
【0050】
上記(3),(4)式で示す圧力や流量の計算は、連続ではできないため、サンプリング周期で行っている。このサンプリング周期をΔtとおく。
よって、n番目の時間=(n−1番目の時間)+Δtとなる。
【0051】
なお、上式において、VAnはn番目の時間時点での作動室側(空圧側)の容積,VAn-1はn−1番目の時間時点での作動室側(空圧側)の容積,PAn-1はn−1番目の時間時点での作動室側(空圧側)の圧力である。
【0052】
上記より、補充時の作動室53内のエアーの排気流量と圧力変化により作動室53側の容積を換算ことにより、ポンプ室52内の容積を換算して、ポンプ室52内に補充されるレジスト液の挙動を把握することができる。このように、ポンプ室52内に補充されるレジスト液の挙動を把握することにより、オーバーシュートの挙動を把握し、検出された圧力と排気流量の検出データを制御部60のデータ記憶部61に入力した後、データ処理部63で予め供給側液圧記憶部62に記憶された供給側変動液圧と比較演算処理されて補正圧力を作成し、パラメータ変更部64で変更された補正圧力と排気流量の制御信号に基づいて、補充初期時における作動室53内の圧力を薬液ポンプ50の一次側液圧に等しくなるように電空レギュレータ58を制御している。この電空レギュレータ58の制御は、フィルタ46の濾過速度がフィルタ46の機能を損なわない範囲内の制御であればよく、図8(b)に示すように、レジスト液の基準流量QAに対して許容できる偏差を持った許容流量QBが得られる制御であればよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、予め薬液ボトル13の設置位置(設置高さH1)や薬液ボトル13内の薬液例えばレジスト液の液面の高さH2、薬液例えばレジスト液の種類、粘度等により変動する供給側液圧を制御部60の供給側液圧記憶部62に記憶されている。したがって、1回目の補充開始時においては、一次側液圧に対応して薬液ポンプ50の作動室53内の圧力を制御することにより、過剰圧力変動に伴うオーバーシュートを抑制することができる。
【0054】
2回目以降の薬液ポンプ50のレジスト液の補充開始時には、前回の補充開始時の作動室53内の圧力の検出及び排気流量の検出のデータと、供給側液圧記憶部62に記憶された変動する供給側液圧のデータとを加味して補正圧力を作成すると共に、逐次パラメータを変更して制御することができるので、更にフィルタ46の濾過精度の向上が図れる。
【0055】
なお、上記実施形態では、薬液ポンプ50の吸引・吐出動作によって薬液ボトル13内の薬液(レジスト液)を吐出ノズル43に供給し、吐出ノズル43より吐出する場合について説明したが、この発明に係る薬液供給方法(システム)は必ずしもこの場合に限定されるものではない。例えば、圧送用ガス供給源から供給される圧送用ガスを薬液ボトル13の液面に供給して、薬液ボトル13内の薬液(レジスト液)を吐出ノズル43に供給し、吐出ノズル43より吐出する場合にもこの発明に係る薬液供給方法(システム)を適用することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、この発明に係る薬液供給方法(システム)をレジストの塗布処理に適用した場合について説明したが、この発明に係る薬液供給方法(システム)はレジスト液以外の薬液の塗布処理や塗布処理以外の薬液を用いた液処理にも適用できる。
【符号の説明】
【0057】
13 薬液ボトル(薬液タンク)
43 吐出ノズル(薬液吐出部)
44 供給管路
46 フィルタ
50 薬液ポンプ
51 ダイアフラム(可撓性部材)
52 ポンプ室
53 作動室
54 加熱源
55 減圧源
56 管路
56a 主管路
56b 排気管路
56c 加圧管路
57 フローメータ(流量センサ)
58 電空レギュレータ(連成圧力調整機構)
59 圧力センサ
60 制御部
V1 一次側開閉弁
V2 二次側開閉弁
H1 薬液ボトルの設置高さ
H2 液面高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を収容する薬液タンクと薬液吐出部とを接続する薬液管路に、薬液を濾過するフィルタと、可撓性部材にてポンプ室と仕切られた作動室内の圧力変化に伴うポンプ室の容積変化により薬液の吸引及び吐出を行う薬液ポンプと、上記薬液管路における上記薬液ポンプの一次側と二次側にそれぞれ設けられる一次側開閉弁及び二次側開閉弁と、を備え、
上記一次側開閉弁及び二次側開閉弁の開閉動作及び上記薬液ポンプの給排動作により、上記薬液タンクより供給される薬液を上記フィルタにて濾過した後、上記薬液吐出部より吐出する薬液供給方法において、
上記薬液ポンプへの薬液の補充開始時に、上記一次側開閉弁を開放した際の上記作動室側の圧力を検出すると共に、上記作動室から排気された排気流量を検出し、
検出された上記圧力と排気流量に基づいて、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整する、ことを特徴とする薬液供給方法。
【請求項2】
請求項1に記載の薬液供給方法において、
上記排気圧の調整を、上記作動室と減圧源とを接続する管路に介設された圧力調整機構によって行う、ことを特徴とする薬液供給方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薬液供給方法において、
上記検出された圧力に、上記薬液タンク及び該薬液タンク内の薬液の液面の位置により変動する圧力を加味して補正圧力を作成し、この補正圧力と上記排気流量に基づいて、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整する、ことを特徴とする薬液供給方法。
【請求項4】
薬液を収容する薬液タンクと薬液吐出部とを接続する薬液管路に、薬液を濾過するフィルタと、可撓性部材にてポンプ室と仕切られた作動室内の圧力変化に伴うポンプ室の容積変化により薬液の吸引及び吐出を行う薬液ポンプと、上記薬液管路における上記薬液ポンプの一次側と二次側にそれぞれ設けられる一次側開閉弁及び二次側開閉弁と、を備え、
上記一次側開閉弁及び二次側開閉弁の開閉動作及び上記薬液ポンプの給排動作により、上記薬液タンクより供給される薬液を上記フィルタにて濾過した後、上記薬液吐出部より吐出する薬液供給システムにおいて、
上記薬液ポンプの作動室に連通する管路に、上記作動室内の圧力を検出する圧力センサと、排気流量を検出する流量センサ及び排気圧を調整する圧力調整機構と、を備えると共に、上記圧力センサ及び流量センサにより検出された検出信号に基づいて上記圧力調整機構を制御する制御部を備え、
上記圧力センサは、上記薬液ポンプへの薬液の補充開始時に、上記一次側開閉弁を開放した際の上記作動室側の圧力を検出し、上記作動室から排気された排気流量を上記流量センサにより検出し、上記制御部は、検出された上記圧力と排気流量に基づいて、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように圧力調整機構を制御して排気圧を調整する、ことを特徴とする薬液供給システム。
【請求項5】
請求項4に記載の薬液供給システムにおいて、
上記管路は、上記薬液ポンプの作動室に接続する主管路と、この主管路から分岐され、減圧源に接続する排気管路と、加圧源に接続する加圧管路とからなり、上記主管路に上記流量センサを介設し、上記排気管路に介設される上記圧力調整機構と、上記加圧管路に介設される圧力調整機構と、を連成し、連成された上記圧力調整機構に上記圧力センサを設けると共に、圧力調整機構の排気圧の調整と加圧の調整を上記制御部にて制御可能に形成してなる、ことを特徴とする薬液供給システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の薬液供給システムにおいて、
上記制御部は、上記薬液タンク及び該薬液タンク内の薬液の液面の位置により変動する圧力を加味して補正圧力を作成し、この補正圧力と上記排気流量に基づいて、薬液の補充開始時に過剰圧力変動を起こさせないように排気圧を調整する、ことを特徴とする薬液供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−151197(P2012−151197A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7457(P2011−7457)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】