説明

薬物の制御放出用の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置

(a)生体適合性ポリマーと、(b)抗炎症薬、鎮痛薬、麻酔薬および鎮痙薬から選択される少なくとも1種の治療薬とを含む、植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置を提供する。該医療装置は、植え込み若しくは挿入に際し痛み若しくは不快感を伴う部位への植え込み若しくは挿入に適合している。多くの実施形態において、治療薬は、i)ケトロラックおよびその医薬的に許容可能な塩類(例えばケトロラックトロメタミン)と、(ii)4−ジエチルアミノ−2−ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレートおよびその医薬的に許容可能な塩類(例えば塩化オキシブチニン)の少なくとも1種から選択される。係る医療装置の植え込み若しくは挿入に伴う痛み若しくは不快感を軽減する、植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置の使用も提供する。該使用は、装置に沿った微生物の増加を軽減することができる。植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置の製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して医療装置に関し、より詳細には植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療薬の身体への送達のための医療装置が数多く開発されている。いくつかの送達戦略に従って、治療薬が植え込み可能または挿入可能な医療装置に付随するポリマーマトリクス内に備えられている。この医療装置が患者の体内の所望部位に留置されると、治療薬がポリマーマトリクスから放出される。
【0003】
熱可塑化処理技術を含む、様々な技術が、治療薬を身体に送達する医療装置の製造に用いられている。しかし、治療薬の多くは、これらの技術に付随する処理条件下で不安定である。したがって、治療薬、特に安定性の低い治療薬が実質的に劣化しない処理技術が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
治療薬を含むことなく患者の体内に埋め込むまたは挿入するための医療装置も数多く開発されている。遺憾ながら、これらの医療装置の多くは、患者の体内に留置した後、通常ある程度の不快感または疼痛を患者に生じさせる。具体例として、例えば尿管狭窄症および他の症例で尿管閉塞が起こりそうな場合、尿管内視鏡検査、内視鏡下尿管切開、内視鏡下下腎盂切開に引き続いて、上部尿路(例えば、腎臓から膀胱まで)での廃液を容易にするためにEVA製の尿管ステントが幅広く使用されている。しかし、これらのステントは多くの場合挿入後に膀胱およびわき腹領域での疼痛および不快感を伴う。現在、疼痛および不快感を軽減する方法は患者に薬剤を経口投与することだけである。これまでに最も処方されている経口薬はオピオイド鎮痛薬であるが、規制薬物であり患者が乱用する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面に従って、(a)生体適合性ポリマーと、(b)抗炎症薬、鎮痛薬、麻酔薬および鎮痙薬から選択される少なくとも1種の治療薬とを含む、植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置が提供される。該医療装置は、植え込み若しくは挿入に際し痛み若しくは不快感を伴う部位への植え込み若しくは挿入に適合している。
【0006】
多くの実施態様において、該治療薬は、(i)ケトロラックおよびその医薬的に許容可能な塩(例えばケトロラックトロメタミン)と、(ii)4−ジエチルアミノ−2−ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレートおよびその医薬的に許容可能な塩(例えば塩化オキシブチニン)との、少なくとも1種から選択されるであろう。
【0007】
医療装置は、1種または複数種の任意の薬剤を含むこともでき;それらには、1種または複数種の放射線不透過剤たとえばビスマスサブカーボネート(オキシ炭酸ビスマス)(例えば可視性を増大するため)、及び1種または複数種の抗菌薬たとえばトリクロサン(例えば該装置に沿った微生物の増加を軽減するため)が含まれる。
【0008】
本発明の植え込み可能または挿入可能な医療装置は、様々な放出プロファイルを備えることができる。例えば、植え込み若しくは挿入後、1日、2日、4日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、1年および2年から選択される期間で、装置中の合計治療薬に対して5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%および99%から選択される治療薬累積放出量を得ることができる。
【0009】
本発明の医療装置において、様々な生体適合性ポリマーが使用され得る。例えば、生体適合性ポリマーは、なかんずく、ポリエーテルブロックアミド類、熱可塑性ポリウレタン類、エチレンビニルアセテートおよび/またはポリオクテナマーから選択され得る。
【0010】
本発明の多くの実施態様にしたがって、該医療装置は、次のものからなる1種または複数種のポリマーマトリクス領域を含むであろう:(a)1種または複数種の生体適合性ポリマー、(b)1種または複数種の治療薬、任意に(c)1種または複数種の放射線不透過剤および/または任意に(d)1種または複数種の抗菌薬。
【0011】
例えば、一実施態様において、該医療装置は、生体適合性ポリマー、治療薬および放射線不透過剤を含むポリマーマトリクス領域を含む。他の実施態様において、該医療装置は、(a)第1の生体適合性ポリマーおよび治療薬を含む第1のポリマーマトリクス領域と、(b)第2の生体適合性ポリマーおよび放射線不透過剤を含む第2のポリマーマトリクス領域とを含み;該第1および第2の生体適合性ポリマーは同一でも異なっていてもよい。
【0012】
1種または複数種のポリマーマトリクス領域に加えて、医療装置は、様々な他の領域、例えば、ヒドロゲル層および/またはバリアー(障壁)層を含むことができる。
【0013】
本発明の他の局面は、本明細書に開示される植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置の使用に係る。一般に、これらの使用は、かかる装置の植え込み若しくは挿入に伴う痛み若しくは不快感を軽減することからなる。さらに、使用は、例えば、該装置に沿った微生物の増加を軽減することからなる。
【0014】
本発明のさらに他の局面は、本明細書に開示される植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置を製造する方法に関する。
【0015】
本発明の様々な実施態様に従って、ポリマーマトリクス製造の方法が提供され、該方法は:(a)生体適合性ポリマーと治療薬を含む組合せを提供すること;及び(b)該組合せからポリマーマトリクスを形成することを含む。
【0016】
いくつかの実施態様においては、ポリマーマトリクスの形成は、熱可塑化工程たとえば押出し工程を含む。一般に、本発明の様々な工程は、治療薬の実質的な分解が回避されるような条件の下でおこなわれることが好ましい。例えば熱可塑化技術が使用される場合、(a)生体適合性ポリマーの軟化温度より高く、(b)治療薬の融点より低く、且つ(c)治療薬の実質的な分解が回避されるのに充分低い、温度で、マトリクスを処理することが有効である。多くの実施態様において、せん断を制御して治療薬の実質的な分解を回避することも望ましい。
【0017】
具体例として、エチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体、ケトロラックトロメタミンおよびオキシ炭酸ビスマスを含む押出しマトリクスは、ケトロラックトロメタミンの分解レベルが2%未満となるような、低い温度およびせん断の条件下で形成され得る。
【0018】
本発明の他の実施態様において、ポリマーマトリクスの形成は、溶液による形成工程、例えば溶液塗布工程を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一つの利点は、植え込み若しくは挿入に際し局所的な痛み若しくは不快感の軽減が可能な、植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置を提供できることである。
【0020】
本発明の他の利点は、これまでは許容できない治療薬の分解を引き起こしていた、熱可塑化処理技術を用いて熱に敏感な治療薬を処理できることである。
【0021】
本発明のこれらおよび他の実施態様および利点は、以下の詳細な説明と請求項により、当業者に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
一局面において、本発明は、(a)生体適合性ポリマーと、(b)抗炎症薬、鎮痛薬、局所麻酔薬および鎮痙薬から選択されるの治療薬とを含む、植え込み可能または挿入可能な医療装置に係る。医療装置は、植え込み後または挿入後に患者(例えば人間等の哺乳類の患者)が痛みまたは不快感の症状を経験することの多い種類のものである。
【0023】
本発明の他の局面は、(植え込みまたは挿入されて、例えば排液等を容易にするといった治療的便益に加えて)植え込み後または挿入後の不快感や疼痛を軽減する、係る植え込み可能または挿入可能な医療装置の使用を指向している。いくつかの実施形態において、この医療装置は抗微生物増殖および/または抗バイオフィルム形成にも使用される。
【0024】
具体例として、尿管ステント、例えば、エチレン−酢酸ビニル(EVA)系尿管ステントは、様々な処置(尿管狭窄症のためおよび他の症例で尿管閉塞が起こりそうな場合の尿管内視鏡検査、内視鏡下尿管切開、内視鏡下下腎盂切開)の後に上部尿路(例えば、腎臓から膀胱まで)での廃液を容易にするために泌尿器科で幅広く使用されている。しかし、上記のように、このようなステントは挿入後に痛みおよび不快感を伴うことが多い。痛みおよび不快感を軽減する方法は患者に薬剤を経口投与することだけであるが、この薬剤は患者が乱用する恐れがあるオピオイド鎮痛薬であることが多い。さらに、部位特異的効果を意図して薬剤を局所投与する場合には、同じ薬剤を同じ治療目的で経口投与する場合に比べてはるかに低い用量である必要がある。部位特異的送達における低用量の利点は、よくみられる同じ薬剤が全身に広がり所望しない効果あるいは毒性の副作用を招来するのを回避できることである。
【0025】
本発明の様々な実施態様において、異なる取り組みがおこなわれており、植え込み可能または挿入可能な医療装置の存在に伴う痛みおよび不快感が全身的ではなく局所的に対処される。それらの実施態様においては、抗炎症薬、鎮痛薬、麻酔薬および鎮痙薬から選択される治療薬が、医療装置が植え込みまたは挿入されると治療薬が患者の体内に放出されるように、医療装置内に配置されている。多くの場合、長期間の放出プロファイルを有する医療装置が好ましい。「長期間の放出プロファイル」とは、いくつかの実施形態における植え込みまたは挿入後に、治療に有効な量の治療薬が1日、2日、4日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月、1年、および2年に渡って放出され続ける放出プロファイルのことである。
【0026】
本発明に関して使用される医療装置は、本質的に植え込み可能または挿入可能な如何なる医療装置からも選択することができる。植え込み可能な医療装置の例には、ステント類、ステントグラフト類、ステントカバー類、カテーテル類、静脈アクセス装置類、大静脈ファイバー類、腹膜アクセス装置類、注入可能物類/膨張性薬剤類、縫合糸類、外科用メッシュ類、経皮的内視鏡下胃切開術で用いられる腸内給餌装置類、補てつジョイント類、接合可能な靭帯類および腱類が含まれる。
【0027】
本発明を実施するためのカテーテル類には、尿管カテーテル類および血管カテーテル類が含まれる。
【0028】
本発明を実施するためのステント類には、胆道ステント類、尿道ステント類、尿路ステント類、気道ステント類、冠状動脈ステント類、胃腸ステント類、および食道ステント類が含まれる。カテーテル類は如何なる形状や構造のものでもよい。ステント類は、尿道または胆道の管腔を通し流動または排液させるのに特に有用な、中空管状構造を含むことができる。ステント類は、コイル状または繊維やファイバーを組み紐状やメッシュ状に織った形状、または、例えば、結合可能な部分がメッシュ状に結合しているものでもよい。このように、ステント類は連続壁状構造または非連続メッシュ状壁構造を有することができる。
【0029】
本発明を実施するためのステントカバー類は、ステントを覆うように配置するのに適合した管状またはさや状の構造からなることができ、該ステントは例えば編んだり織ったり組まれたりしたメッシュからなることができる。ステントは、金属材料および非金属材料ならびに形状記憶材料を含む、かかる目的に有用な如何なる材料で作られていてもよい。有用な金属材料には、限定はされないが、ニッケル−チタニウム合金等の形状記憶合金類、例えば、ニチノール(登録商標)およびエルジロイ(登録商標)、ならびに、限定はされないが、ステンレススチール、タンタル、ニッケル−クロム、またはコバルト−クロムを含む他の金属材料が含まれる。
【0030】
本発明の多くの実施態様において、対象の治療薬はポリマーマトリクスから放出される。「ポリマーマトリクス」という用語は、生体適合性ポリマーと、少なくとも1種の添加物、例えば1種または複数種の治療薬、とりわけ、1種または複数種の放射線不透過剤、1種または複数種の顔料および/または1種または複数種の抗菌薬、を含む領域を表わす。ポリマーマトリクスは、植え込み可能または挿入可能な医療装置の全体を構成することができ、あるいは医療装置の一部分または領域だけに相当することができる。
【0031】
医療装置中に一種類のポリマーマトリクス領域だけが備えられている場合には、そのポリマーマトリクス領域は、好ましくは、治療薬、並びに任意の添加剤、たとえば放射線不透過剤、顔料、抗菌薬、熱可塑化剤、潤滑剤などを含むであろう。他の実施態様において、医療装置は2種またはそれ以上の異なるポリマーマトリクス領域からなる。医療装置中に2種またはそれ以上の異なるポリマーマトリクス領域が存在する場合には、治療薬および任意の添加物がポリマーマトリクス領域の1種だけに存在する必要はない。例えば、治療薬が第1のポリマーマトリクス領域に存在することができ、1種または複数種の任意の添加物は第1のポリマーマトリクス領域とは異なる第2のポリマーマトリクス領域に存在することができる。
【0032】
理論に拘束されることを意図するものではないが、治療薬は、少なくとも一部は、非生分解性ポリマーマトリクス領域から放出されるポリマーマトリクスが生理学的流体を吸収するまたは生理学的流体に接触するメカニズムにより、非生分解性ポリマーマトリクス領域から放出されるものと考えられる。係るポリマーマトリクスにおいては、治療薬はある程度、ポリマーマトリクスを通り外表面および/またはポリマーマトリクス中に拡散している生理学的流体に拡散することができる。治療薬は、次いで生理学的流体内に溶解する。ポリマーマトリクス領域中またはポリマーマトリクス領域の近傍に濃度勾配が生じ、次に溶液中の治療薬が拡散により周囲の生理学的流体および局所組織に放出されると考えられる。ポリマーマトリクスが生分解性の場合にも、同様な拡散−溶解−拡散プロセスが起こり得る。しかし、生分解性ポリマーマトリクス中では、医療装置が植え込まれたまたは挿入された生理学的環境への接触により、治療薬を含む生分解性ポリマーマトリクスが生分解されるにしたがい、治療薬は放出され得る。このように、溶解−拡散プロセスおよびポリマーマトリクスの生分解により、生分解性ポリマー中で治療薬は放出され得る。
【0033】
一般に、本発明に関して使用される治療薬は、医薬的に許容可能な如何なる治療薬であってもよい。本明細書において使用される「医薬的に許容可能な」薬剤とは、植え込み可能または挿入可能な医療装置の中または上に取り込まれる、ヒトおよび動物用に米国の食品医薬品局または農務省が認可したまたは認可する見込みの薬剤を意味する。上述のように、好ましい治療薬には、抗炎症薬、鎮痛薬、局所麻酔薬、鎮痙薬、およびそれらの組合せが含まれる。
【0034】
抗炎症薬にはステロイド抗炎症薬と非ステロイド抗炎症薬が含まれる。非ステロイド抗炎症薬のとしては、エンフェナム酸、エトフェナメート、フルフェナム酸、イソニキシン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフラム酸、タルニフラメート、トロフェナメート、およびトルフェナム酸等のアミノ芳香族カルボン酸誘導体;アセメタシン、アルクロフェナク、アンフェナク、ブフェキサマク、シンメタシン、クロピラク、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、フェルビナク、フェノクロフェナク、フェノクロラク、フェノクロズ酸、フェンチアザク、グルカメタシン、イブフェナク、インドメタシン、イソフェゾラク、イソケパク、ロナゾラク、メチアジン酸、オキサメタシン、プログルメタシン、スリンダク、チアラミド、トルメチン、およびゾメピラク等の芳香族酢酸誘導体;ブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェン、およびケンブシン等の芳香族酪酸誘導体;クリダナク、ケトロラク、およびチノリジン等の芳香族カルボン酸;アミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシン酸、カルプロフェン、フェノプロフェン、フロノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、イブプロキサン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキサプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピケトプロフェン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プロチジン酸、スプロフェン、およびチアプロフェン酸等の芳香族プロピオン酸誘導体;ジフェナミゾールおよびエピリゾール等のピラゾール;アパゾン、ベンツピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、モラゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピフェナゾン、ラミフェナゾン、サキシブゾン、およびチアゾリノブタゾン等のピラゾロン;アセタミノザロール、アスピリン、ベニリレート、臭素化サリゲニン、アセチルサリチル酸カルシウム、ジフルニザール、エテルサレート、フェンドザール、ゲンチシ酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸イミダゾール、アセチルサリチル酸リジン、メサラミン、サリチル酸モルフォリン、サリチル酸1−ナフチル、オルサラジン、パルサルミド、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サルアセトアミド、o−酢酸サリチルアミン、サリチル硫酸、サルサレート、およびサルファサラジン等のサリチル酸およびその誘導体;ドロキシカム、イソキシカム、ピロキシカム、およびテノキシカム等のチアジンカルボキサミド;s−アセタミドカプロン酸、s−アデノシルメチオニン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、アルニクセトリン、ベンダザック、ベンジダミン、ブコローム、ジフェンピラミド、ジタゾール、エモルファゾン、グアイアズレン、ナブルネトン、ニメスリド、オルゴテイン、オギザセプロール、パラニリン、ペリソザール、ピフォキメ、プロクアゾン、プロキサゾール、およびテニダップ等のその他;および医薬的に許容可能なそれらの塩が挙げられる。
【0035】
ステロイド抗炎症薬(グルココルチコイド)としては、2l−アセトコソピレフネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレデニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クリコルトロン、クロプレドノール、コルチコステイオン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エニキソロン、フルアザコート、フルオシノニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フロペロロン、酢酸フロプレドニジン、フロプレドニゾロン、フロランデリノリド、プロピオン酸フロチカゾン、フォルモコータル、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプロドノール、マジプレドン、メドリゾン、メプリヂニゾン、メチルプレドニゾロン、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドゾロン、2,5−ジエチルアミノ酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、リモキソロン、チキソコータル、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトノド、トリアムシノロンヘキサセトニド、および医薬的に許容可能なそれらの塩が挙げられる。
【0036】
鎮痛薬にはオピオイド鎮痛薬と非オピオイド鎮痛薬が含まれる。オピオイド鎮痛薬には、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフォリン、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタジン、コデイン、コデインメチルブロミド、リン酸コデイン、硫酸コデイン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジヒドロコデイン、酢酸ジヒドロコデインエノール、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、酪酸ジオキサフェニル、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアジメチルチアムブテン、エチルモルフォリン、エトニタジン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、塩酸メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロヒネ、ナルブヒネ、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェオペリジン、ピミニジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラン、プロポキシフェン、ルミフェンタニル、サフェンタニル、チリジン、および医薬的に許容可能なそれらの塩が含まれる。
【0037】
非オピオイド鎮痛薬には、アセクロフェナク、アセトアミノフェン、アセトアミノザロール、アセトアニリド、アセチルサリチルサリチル酸、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、アリキシプリン、ビスアセチルサリチル酸アルミニウム、アミノクロロテノキサジン、2−アミノ−4−ピコリン、アミノプロピロン、アミノピリン、サリチル酸アンモニウム、アムトルメチングアシル、アンチピリン、サリチル酸アンチピリン、アントラフェニン、アパゾン、アスピリン、ベノリレート、ベノキサプロフェン、ベンツピペリロン、ベンツダミノ、ベルモプロフェン、ブロフェナク、p−ブロモアセトアニリド、5−ブロモサリチル酸アセテート、ブセチン、ブフェキサマク、ブマジゾン、ブタセチン、アセチルサリチル酸カルシウム、カルバマゼピン、カルビフェン、カルサラン、クロロアラニチピリン、クロロテニキサジン、サリチル酸コリン、シンコフェン、シラマドール、クロメタシン、クルプロパミド、クロテサミド、デキソザダロール、ジフェナミゾール、ジフルニサル、アセチルサリチル酸ジヒドロキシアルミニウム、ジピロセチル、ジピロン、エモルファゾン、エンフェナム酸、エピリゾール、エテルサレート、エテンザミド、エチキサジン、エトドラク、フェルビナク、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フラフェナム酸、フルオレゾン、フルピリチン、フルプロカゾン、フルロビプロフェン、フォスフォザール、ゲンチジン酸、グラフェニン、イブフェナク、サリチル酸イミダゾール、インドメタシン、インドプロフェン、イソフェゾラク、イソラドール、イソニキン、ケトプロフェン、ケトロラック、p−ラクトフェネチド、レフェタミン、ロキソプロフェン、アセチルサリチル酸リジン、アセチルサリチル酸マグネシウム、メトトリメプタジン、メトフォリン、ミロプロフェン、モラゾン、サリチル酸モルフォリン、ナプロキセン、ネフォパン、ニフェナゾン、5’−ニトロ−2’−プロポキシアセトアニリド、パラサルミド、ペリゾキサール、フェナセチン、塩酸フェナゾピリジン、フェノコル、フェノピラゾン、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、フェニラミドール、ピペブゾン、ピペリロン、プロジリジン、プロパセタモール、プロピルフェナゾン、プロキサゾール、サリチル酸キニン、ラミフェナゾン、メチル硫酸リマゾリウム、サラセタミド、サリシン、サリチルアミド、o−酢酸サリチルアミド、サリチル硫酸、サルサレート、サルベリン、シメトリド、サリチル酸ナトリウム、スルファミピリン、サプロフェン、タルニフルマート、テノキシカン、テロフェナメート、テトラドリン、チノリジン、トルフェナム酸、トルプロニン、トラマドール、ビモノール、ケンブシン、ゾメピラク、および医薬的に許容可能なそれらの塩が含まれる。
【0038】
局所麻酔薬には、アムカイン、アモラノン、塩酸アミロカイン、ベニキネート、ベンゾカイン、ベチキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタベン、ブタニリカイン、ブテタアミン、ブトキシカイン、カルチカイン、塩酸クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチルカイン、塩酸ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、塩酸ジペラドン、ジクロニン、エコゴニジン、エコゴニン、エチルクロライド、β−オイカイン、オイプロシン、フェナルコミン、フォモカイン、塩酸ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、p−アミノ安息香酸イソブチル、メシル酸ロイシノカイン、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メペリルカイン、メタブトキシカイン、メチルクロライド、ミルテカイン、ナクパイン、オクタカイン、オルソカイン、オキセタザイン、パレトロキシカイン、塩酸フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、塩酸プロポキシカイン、シュードコカイン、ピロロカイン、ロパバカイン、サリチルアルコール、塩酸テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、および医薬的に許容可能なそれらの塩が含まれる。
【0039】
鎮痙薬には、アリベンドール、アンブセタミド、アミノプロマジン、アポアトロピン、メチル硫酸ベボニウム、ビエタミベリン、ブタベリン、臭化ブトロピン、臭化n−ブチルスコポラミン、カロベリン、臭化シメトロピン、シナメドリン、クレボピライド、臭化水素酸コニイン、塩酸コニイン、ヨウ化シクロニン、ジフェルネリン、ジイソプロポミン、酪酸ジオキサフェニル、臭化ジポニン、ドロフェニン、臭化エメプロニン、エタベリン、フェクレミン、フェノベリン、フェンピペラン、臭化フェンピベリン、臭化フェントニン、フラボキセート、フロプロピオン、グルコン酸、グアイアクタミン、ヒドラミトラジン、ハイメクロモン、レイオピロール、メベベリン、モキサベリン、ナフィベリン、オクタミルアミン、オクタベリン、塩化オキシブチニン、ペンタピペリド、塩酸フェナマシド、フェロログルシノール、臭化ピナベリン、ピペリラート、塩酸ピポキソラン、プラミベリン、臭化プリフィン、プロペリジン、プロピバン、プロピロマジン、プロザピン、ラセフェミン、ロシベリン、スパスモリトール、ヨウ化スチロニン、スロトロポニウム、ヨウ化チーモニン、臭化チキンズ、チロプラミド、トレピブトン、トリクロミル、トリフォリウム、トリメブチン、n,n−1−トリメチル−3,3−ジフェニル−プロピルアミン、トロペンジル、塩化トロスピン、臭化キセニルトロピン、および医薬的に許容可能なそれらの塩が含まれる。
【0040】
本発明の実施において、特に好適な2つの治療薬は、(a)ケトロラックおよびその医薬的に許容可能な塩類(例えば、そのトロメタミン塩、商品名トラドール(登録商標)として販売されている)と、(b)4−ジエチルアミノ−2−ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレートおよびその医薬的に許容可能な塩類(例えば、4−ジエチルアミノ−2−ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレート塩酸塩、塩化オキシブチニンとしても知られ、商品名ディトロパン(登録商標)として販売されている)である。
【0041】
ポリマーマトリクス中に存在する治療薬の量は、医療装置の留置に伴う痛みや不快感の軽減に有効な量である。典型的に、ポリマーマトリクス中に存在する治療薬の量はポリマーマトリクスの重量を基準として、約0.1%〜約40%の範囲である(その範囲には、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、ならびに、これらの任意の2点間の範囲、例えば0.1〜10%、10〜20%および20〜30%等が含まれる)。塩化オキシブチニンとケトロラックトロメタミンを使用する場合、典型的には2〜20%の範囲であり、より典型的には5〜15%の範囲である。
【0042】
ポリマーマトリクス中に存在する治療薬の量は、とりわけ、使用する治療薬の効力、医療装置が植え込まれる期間、ならびにポリマーマトリクスまたは障壁層が治療薬を植え込まれた医療装置の環境に放出する速度に依存する。したがって、長期間の植え込みを予定している医療装置は治療薬の量が多い必要がある。同様に、治療薬を早い速度で放出するポリマーマトリクスは治療薬の量が多い必要がある。当業者ならば、所望の効果を達成できる治療薬の好適な量を容易に決めることができる。
【0043】
本発明の医療装置はまた、その構造内に、任意の添加剤を含むことができ、それらには放射線不透過剤類、顔料類、抗菌薬類、ならびにその他の添加剤、たとえば可塑化剤および押出し潤滑剤が含まれる。
【0044】
このように、いくつかの実施態様においては、本医療装置はさらに放射線不透過剤を含むが、他の実施形態においては含まない。例えば、放射線不透過剤は、任意のポリマーマトリクス領域中に存在していてもよく、或いは医療装置全体に均一に分布してもよい。
【0045】
放射線不透過剤により、挿入中および植え込まれている間に医療装置の位置が容易にわかる。放射線不透過剤は、典型的にはX線スキャンにより機能する。X線を散乱する医療装置の位置は、X線写真上で検知できる。本発明の医療装置に有用な放射線不透過剤には、オキシ炭酸ビスマス、ビスマスオキシクロリド、三酸化ビスマス、硫酸ビスマス、タングステン酸ビスマス、およびそれらの混合物等のビスマス塩が含まれ、典型的にはビスマス塩が好適に使用される。ポリマーマトリクス中に存在する場合、典型的には、放射線不透過剤は約10%〜約40%の範囲の量で存在する(その範囲には、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、ならびにこれらの任意の2つの値の間の範囲、例えば、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%等が含まれ、より典型的には15〜30%であり、さらに典型的には20〜25%である)。当業者ならば、所望の可視性を達成できる放射線不透過剤の適当な量を容易に決めることができる。
【0046】
放射線不透過剤としてオキシ炭酸ビスマスを使用する場合、オキシ炭酸ビスマスが混合される材料によっては、オキシ炭酸ビスマスの含有量を上げると柔らかくなったりあるいは堅くなることがある。
【0047】
本発明のいくつかの実施態様においては、医療装置がさらに抗菌薬を含むが、他の実施例においては含まない。本明細書において「抗菌薬」という用語は、微生物、特に細菌、カビ、イースト菌を殺すおよび/または増殖および/または生育を阻害する物質を表わす。したがって、抗菌薬には、殺菌薬および静菌薬、ならびに殺菌的特性と静菌的特性の両方を有する薬剤が含まれる。本発明において、抗菌薬は、植え込まれた医療装置の表面上や周囲の微生物を殺すおよび/または増殖および/または生育を阻害し、したがって、バイオフィルムの形成を阻害する場合もある。
【0048】
抗菌薬は、医薬的に許容可能な抗菌薬ならいずれであってもよい。好ましい抗菌薬には、トリクロサン、クロルヘキシジン、ニトロフラゾン、塩化ベンザルコニウム、銀塩、および、リファンピン、ゲンタマイシン、およびミノサイクリン等の抗生物質、およびそれらの組合せが含まれる。抗菌薬は1〜30重量%の範囲の量で含まれ得る(その範囲には、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、ならびにこれらの任意の2点間の範囲、例えば、1〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%等が含まれる)。具体例として、抗菌薬としてトリクロサンを使用する場合、典型的には、10〜30%の範囲で存在し、より典型的には5〜15%の範囲で存在する。
【0049】
治療薬と同様に、構造中に存在する任意の抗菌薬の量は、とりわけ、使用する抗菌薬の効力、医療装置が植え込まれる期間、ならびに抗菌薬を植え込まれた医療装置の環境に放出する速度に依存する。したがって、長期間の植え込みを予定している医療装置は一般的に抗菌薬の量が多い必要がある。同様に、抗菌薬が早い速度で放出されるなら、抗菌薬の量が多い必要がある。当業者ならば、所望の効果を達成できる抗菌薬の好適な量を容易に決めることができる。
【0050】
これに関連して、上記の治療薬のいくつかは微生物への抵抗性を提供する上で有用であることが知られている。例えば、非ステロイド抗炎症薬類(NSAIDs)、例えば、サリチル酸、その塩およびその誘導体は、微生物付着/バイオフィルム形成の阻害薬であると記述されている。「微生物付着/バイオフィルム形成の阻害薬」とは、微生物の表面への付着および/または微生物の形成能力すなわち表面へのバイオフィルムの増加を阻害する物質のことである。さらに詳しい情報は上記の米国特許出願第10/071,840号中に見出され得る。
【0051】
本発明のいくつかの実施態様においては、本発明の医療装置は顔料をさらに含むが、他の実施態様においては含まない。顔料には、タイプや色に関係なく、二酸化チタン、フタロシアニン有機顔料類、キナクリドン有機顔料類、カーボンブラック、酸化鉄類、およびウルトラマリーン類を含む、生体適合性で医薬的に許容可能ないかなる色材もが含まれる。顔料が存在する場合、典型的には、顔料は0.001%〜5%の範囲で含まれ、さらに典型的には0.01%〜1%の範囲で含まれる。
【0052】
本発明の植え込み可能または挿入可能な医療装置において使用されるポリマー領域は、植え込み可能または挿入可能な医療装置における使用に適した生体適合性ポリマーならいかなるものでも含むことができる。生体適合性ポリマーは、実質的に非生分解性でも生分解性でもよい。
【0053】
本明細書において「生体適合性」ポリマーという用語は、人体に対して実質的に毒性ではなく、人体組織中で炎症または他の副作用を明確に引き起こさない材料を示す。生体適合性ポリマーには、植え込み可能または挿入可能な医療装置の中または上に取り込まれる、ヒトおよび動物用に米国の食品医薬品局または農務省が認可したまたは認可する見込みのポリマーならいかなるものでも含まれる。実質的に非生分解性の生体適合性ポリマーには、熱可塑性高分子材料および弾性高分子材料が含まれる。ポリエチレン(例えば、メタロセン触媒で重合したポリエチレン)、ポリプロピレン、およびポリブチレン等のポリオレフィン類;ポリオレフィン共重合体類、例えば、エチレンビニルアセテート(EVA)共重合体、いくつかの酸基が亜鉛イオンまたはナトリウムイオンのいずれかで中性化することが可能な(一般にイオノマーとして知られる)場合のエチレン−メタクリル酸共重合体およびエチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン性共重合体;ポリスチレン等のビニル芳香族重合体;スチレン−イソブチレン共重合体およびブタジエン−スチレン共重合体等のビニル芳香族共重合体;ポリアセタール;ポリビニルクロライド(PVC)等のクロロ重合体;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフルオロ重合体;ポリエチレンテトラフタレート(PET)等のポリエステル;ポリエステル−エーテル;ナイロン6およびナイロン6,6等のポリアミド;ポリエーテル;ポリエーテルブロックアミド(PEBA)等のポリアミド−エーテル;ポリオクテナマー;熱可塑性ポリウレタン(TPU);弾性ポリウレタンおよびポリウレタン共重合体等の弾性体(ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、脂肪族系、芳香族系のブロック共重合体およびランダム共重合体ならびにそれらの混合物で、市販のポリウレタン共重合体の例には、カルボタン(登録商標)、テコフレックス(登録商標)、テコタン(登録商標)、テコフィリック(登録商標)、テコプラスト(登録商標)、ペレタン(登録商標)、クロノタン(登録商標)、およびクロノフレックス(登録商標)が含まれる);シリコーン;ポリカーボネート;および混合物および上記のブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体のいずれもが、本発明の医療装置における使用に有用な非生分解性の生体適合性ポリマーの非限定的な例である。
【0054】
なかでも特に好ましい非生分解性ポリマーは、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、環状ポリオクテナマーと直鎖状ポリオクテナマーの混合物である、デグッサ社(パルシパニ、ニュージャージー州)のベルテナマー(登録商標)等のポリオクテナマー、ポリオレフィン、エチレンビニルアセテート(EVA)共重合体を含むエチレン性共重合体およびエチレンとアクリル酸またはメタクリル酸の共重合体;熱可塑性ポリウレタン(TPU)およびポリウレタン共重合体;メタロセン触媒で重合したポリエチレン(mPE)、mPE共重合体、イオノマー、および混合物およびこれらの共重合体;ビニル芳香族重合体および共重合体である。なかでも好ましいビニル芳香族共重合体には、ポリイソブチレンとポリスチレンまたはポリメチルスチレンの共重合体が含まれ、より好ましくは、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンの三ブロック共重合体である。これらのポリマーは、例えば、米国特許第5,741,331号、米国特許第4,946,899号および米国特許出願第20020107330号に記載されており、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
エチレンビニルアセテート(EVA)が特に好ましい非生分解性の生体適合性ポリマーである。その例には、約5%〜約40%のビニルアセテート含有量を有するEVAポリマーが含まれる(その範囲には、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、ならびにこれらの任意の2点間の範囲、例えば5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%等が含まれ、典型的には10〜30%である)。EVAの含有量を増やすと材料は柔らかくなるが、EVAの含有量を減らすと典型的に堅くなる。
【0056】
特に好ましい生分解性ポリマーには、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA);ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカルバメート)(PGA/PTMC)、ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)(PLA/PCL)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGA/PCL)等のポリ乳酸、ポリグリコール酸およびこれらの共重合体および混合物;ポリエチレンオキシド(PEO),ポリジオキサノン(PDS)、ポリプロピレンフマレート、ポリ(エチルグルタメート−co−グルタミン酸)、ポリ(ターシャルブチロキシ−カルボニルメチルグルタメート)、ポリ(カルボナート−エステル)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトン−co−ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチラート(PHBT)およびポリヒドロキシブチラートの共重合体、ポリ(ホスファーゼン)、ポリ(ホスフェートエステル)、ポリ(アミノ酸)およびポリ(ヒドロキシブチラート)、ポリデプシペプチド、マレイン酸無水物共重合体、ポリホスファーゼン、ポリイミノカーボネート、ポリ[(97.5%ジメチル−トリメチレンカーボネート)−co−(2.5%トリメチレンカーボネート)]、シアノアクリレート、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸、キトサン、およびレジネラートセルロース等のポリサッカライド、ゼラチンおよびコラーゲン等のプロテイン、これらの混合物および共重合体が含まれる。
【0057】
本発明の医療装置は、2層以上の多層構造を含むことができる。例えば、医療装置は上記のように1種または複数種のポリマーマトリクス領域を含むことができる。さらに、医療装置は、医療装置が所望の物理的特性を有するように、2種以上の生体適合性ポリマーの組合せを有することができる。医療装置は1種または複数種の障壁領域も有することができる。
【0058】
本発明の多層構造は障壁層を有する必要がない。例えば、本発明にしたがう医療装置は、生体適合性ポリマー、治療薬、および放射線不透過剤を含む第1のポリマーマトリクス層と、第1のポリマーマトリクス層の外表面上にあって潤滑性を提供する第2の層とを含む二層構造を有することができる。係る潤滑層は、例えば、医療装置の挿入、植え込みおよび/または回収を容易にするために望ましい。本発明の1つの実施形態にしたがう、このタイプの医療装置の簡略化された概略を図1に示す。植え込み可能または挿入可能な医療装置100は環状ポリマーマトリクス領域102を有し、環状ポリマーマトリクス領域102は、生体適合性ポリマー(例えば、EVA)、治療薬(例えば、ケトロラックトロメタミンまたは塩化オキシブチニン)、および放射線不透過剤(例えば、オキシ炭酸ビスマス)を含む。この医療装置100は、環状ポリマーマトリクス領域102の外表面を少なくとも部分的に覆う潤滑層104(例えば、ヒドロゲル層)も有している。
【0059】
他の例として、本発明にしたがう医療装置は、生体適合性ポリマー、放射線不透過剤、および治療薬を含む第1の層、第1の層の外表面上にあって潤滑層として機能する第2の層、および第2の層の外表面上にあって潤滑性を付与する第3の層を含む三層構造を有することができる。本発明の1つの実施態様にしたがう、このタイプの医療装置の簡略化された概略を図2に示す。図2を参照すると、植え込み可能または挿入可能な医療装置100は環状ポリマーマトリクス領域102を有し、環状ポリマーマトリクス領域102は、生体適合性ポリマー(例えば、EVA)、治療薬(例えば、ケトロラックトロメタミンまたは塩化オキシブチニン)、および放射線不透過剤(例えば、オキシ炭酸ビスマス)を含む。この医療装置100は、環状ポリマーマトリクス領域102の外表面を少なくとも部分的に覆うポリマー障壁層106(例えば、EVA障壁層)も有している。この医療装置100はさらに、ポリマー障壁層106の外表面を少なくとも部分的に覆う潤滑層104(例えば、ヒドロゲル層)を有している。
【0060】
他の例として、本発明にしたがう医療装置は、生体適合性ポリマーおよび放射線不透過剤を含む第1の層、第1の層の外表面上にあって生体適合性ポリマーおよび治療薬を含む第2の層、および第2の層の外表面上にあって潤滑性を付与する第3の層を含む三層構造を有することができる。本発明の一実施形態にしたがう、このタイプの医療装置の簡略化された概略を図3に示す。図3を参照すると、植え込み可能または挿入可能な医療装置100は環状放射線不透過領域108を有し、環状放射線不透過領域108は、生体適合性ポリマー(例えば、EVA)および放射線不透過剤(例えば、オキシ炭酸ビスマス)を含む。環状放射線不透過領域108上にある環状ポリマーマトリクス領域102は、生体適合性ポリマー(例えば、EVA)および治療薬(例えば、ケトロラックトロメタミンまたは塩化オキシブチニン)をさらに含む。この医療装置100は、環状ポリマーマトリクス領域102の外表面を少なくとも部分的に覆う潤滑層104(例えば、ヒドロゲル層)も有している。
【0061】
他の例として、本発明にしたがう医療装置は、(a)第1の治療薬および第1の生体適合性ポリマーを含む第1の領域と、(b)第2の治療薬および第2の生体適合性ポリマーを含む第2の領域とを含む構造を有することができる。例えば、(a)第1の治療薬が第2の治療薬と異なり、(b)第1の生体適合性ポリマーが第2の生体適合性ポリマーと異なり、あるいは(c)第1の治療薬が第2の治療薬と異なりかつ第1の生体適合性ポリマーが第2の生体適合性ポリマーと異なるため、各領域が異なってもよい。本発明の一実施形態にしたがう、このタイプの医療装置の簡略化された概略を図4に示す。図4を参照すると、植え込み可能または挿入可能な医療装置100は第1の環状環状ポリマーマトリクス部102aを有し、第1の環状環状ポリマーマトリクス部102aは、比較的柔らかいマトリクス領域、治療薬、および放射線不透過剤を含む。この医療装置100はさらに、第2の環状環状ポリマーマトリクス部102bを有し、第2の環状環状ポリマーマトリクス部102bは、比較的堅いマトリクス領域、治療薬、および放射線不透過剤を含む。このタイプの医療装置は、例えば、中断層同時押出し(ILC)を含む、様々な押出し技術を用いて形成することができる。例えば、米国特許第5,622,665号および米国特許第6,508,805号に記載されている押し出し工程を参照されたい。これらは参照により、本明細書に組み込まれる。ILCプロセスにより、比較的柔らかい(硬度値が低い)ポリマー部102aは比較的堅い(硬度値が高い)ポリマー部102bに移行する。これらの領域の移行の概略を点線で図4に示す。
【0062】
上記より、本発明の医療装置が有することのできる領域に関しては、例えば、領域の種類(例えば、マトリクス領域、障壁領域、潤滑領域等)、これらの領域の数、これらの領域の形状、装置内でのこれらの領域の分布、これらの領域の組成等、無数の可能性が存在することが明らかである。具体例として、(a)多くの領域(例えば、層、部等)を装置の一部のみに設けることができ、(b)異なるポリマーを装置の異なる領域に配置することができ(例えば、装置の半径方向の異なる層に異なるポリマーを配置する、またはステントの長さ方向の異なる場所に異なるポリマーを配置する)、(c)異なる治療薬を装置の異なる領域に配置することができ(例えば、装置の半径方向の異なる層に異なる治療薬を配置する、またはステントの長さ方向の異なる場所に異なる治療薬を配置する)、(d)異なる治療薬濃度を装置の異なる領域に配置することができ(例えば、装置の半径方向の異なる層に異なる治療薬濃度を配置する、またはステントの長さ方向の異なる場所に異なる治療薬濃度を配置する)等が可能である。
【0063】
多層構造を有する本発明にしたがう医療装置は、単層の装置に比べていくつかの利点を提供することができる。例えば、近接層からの治療薬の放出速度を制御できるように障壁層を設けることができる。しかし、本発明の医療装置が多領域構造に限定されず、例えば、単領域構造の、生体適合性ポリマー、治療薬、および任意の放射線不透過剤を含む環状管も本発明の範囲にあることを理解すべきである。
【0064】
特定の治療薬(または任意の特定の抗菌薬)の放出特性は、一般に、その治療薬(または任意の抗菌薬)が特定のポリマーマトリクスから拡散できる能力に依存する。異なる組成のポリマーマトリクスは典型的に異なる放出特性を示す。これにより、例えば、(1)生体適合性ポリマーの量と種類、(2)治療薬(または任意の抗菌薬)の量と種類、および(3)放射線不透過剤、顔料、その他を含む、付加的添加物の量と種類を変えることにより、放出特性を変えることができる。比較的早い放出を示す組成もあれば、遅い放出プロファイルの組成もある。特定の用途に合わせて、ポリマーマトリクスに含まれる材料さらにその相対的量を好適に選択することにより、治療薬(または任意の抗菌薬)の装置からの放出プロファイルを最適化することができる。
【0065】
潤滑層を使用する場合、潤滑層には1種または複数種のヒドロゲルが含まれることが好ましい。ヒドロゲルは、典型的には、大量(ヒドロゲル自体の重量の何倍にも達する量)の水または他の極性分子を吸収できる親水性高分子材料である。ヒドロゲルは、植え込み可能または挿入可能な医療装置の塗布用または医療装置自体の構造材料として、例えば、米国特許第6,316,522号、第6,216,630号、第6,184,266号、第6,176,849号、第6,096,108号、第6,060,534号、第5,702,754号、第5,693,034号、および第5,304,121号に開示されており、それぞれの特許は参照により本明細書に組み込まれるが、いずれもボストン・サイエンティフィック社またはサイメド・ライフ・システム社の製品を使用していた。ヒドロゲルは、合成品でも天然品でもそれらの混合物であってもよく、生分解されることも実質的に非生分解性であることもでき、所望の目的のために様々な方法で改質または改変してヒドロゲルをより好適なものにすることができる。例えば、ヒドロゲルは、例えば、高分子構造と共有結合している官能基と反応する多官能架橋剤を用いて化学的に架橋させて改質することができる。ヒドロゲルを、例えば、多価金属イオンを用いてイオン的に架橋させることもできる。ヒドロゲルは化学的におよびイオン的に架橋することもできる。ヒドロゲルポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、ポリアルキレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレン)オキシド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニル芳香族、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリエチレンアミン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルスルホン酸、ポリアミド、ポリ(L−リジン)、親水性ポリウレタン、マレイン酸無水物ポリマー、タンパク質、コラーゲン、セルロースポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、改質デキストラン、アルギネート、アルギン酸、ペクチン酸、ヒアルロン酸、キチン、プルラン、ゼラチン、ゲラン、キサンタン、カルボキシルメチルスターチ、硫酸コンドロイチン、グアル、スターチ、およびそれらの共重合体、混合物、誘導体が挙げられる。親水性塗布に好適なものには、例えば、ボストン・サイエンティフィック社、ナティック、マサチューセッツ州からヒドロプラス(商標)で商標登録され入手でき、米国特許第5,091,205号に記載されているポリアクリル酸が含まれる。前記特許は参照により本明細書に組み込まれる。他の好適なヒドロゲルは、同様にボストン・サイエンティフィック社、ナティック、マサチューセッツ州から入手できるヒドロパス(商標)である。
【0066】
障壁層を使用する場合、障壁層には高分子材料が含まれることが好ましい。ポリマーマトリクスに関して本明細書で上記した非生分解性ポリマーおよび生分解性ポリマーのいずれもが障壁層を形成できる。好ましい障壁層ポリマーには、EVA,PEBA,TPU,ポリオクテナマーおよびそれらの混合物が含まれる。
【0067】
障壁層とその下のポリマーマトリクス領域は、同一または異なる高分子材料を含むことができる。高分子材料が異なると、一般に、治療薬の拡散速度または放出速度が異なる。したがって、治療薬が拡散するためにより浸透しやすいポリマーマトリクス領域からの治療薬の放出速度を制御できるように、より浸透しにくい障壁層が設けられ得る。例えば、EVA共重合体をポリマーマトリクスとして使用する場合、ビニルアセテート含有量が高い他のEVA共重合体を障壁層の形成に有用に用いることができる。EVA共重合体のビニルアセテート含有量が高いことは、治療薬の浸透性が下がり、ビニルアセテート含有量が低い場合に比べて治療薬の放出速度が下がるため、障壁層として有用である。障壁層のビニルアセテート含有量が高く、相対的に剛性が高いすなわち堅いことは、ビニルアセテート含有量が低いものを下層のポリマーマトリクス領域に用いること、柔軟性を上げることができる添加物、例えばオキシ炭酸ビスマスを下層のポリマーマトリクス領域に添加すること等により幾分軽減することができる。
【0068】
さらに、障壁層(または他の層)に上記補助的添加物を用いる場合には、例えば、放射線不透過剤、抗菌薬、顔料等を障壁層または他の層に用いることができる。
【0069】
このように、本発明にしたがう医療装置は、例えば、単一/多数の層/領域の構造を有することができ、単一または複数のポリマーマトリクス領域を有することができ、障壁領域がなくても単一または複数の障壁領域を有してもよく、潤滑領域がなくても単一または複数の潤滑領域を有してもよく、他の領域についても同様である。さらに、ポリマーマトリクス領域も障壁領域も潤滑領域も図示したように環状である必要はない。
【0070】
本発明の他の局面にしたがい、植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置を製造する方法が提供され;該方法は、(a)1種または複数種の生体適合性ポリマー、1種または複数種の治療薬、および任意に1種または複数種の放射線不透過剤および/または抗菌薬を供給すること;及び(b)1種または複数種の生体適合性ポリマー、1種または複数種の治療薬、および任意の材料を処理することによって、医療装置の少なくとも一部を形成することを含む。
【0071】
これに関して、上記の塩化オキシブチニンおよびケトロラックトロマタミンを含め、多くの治療薬が高温および/または機械的せん断歪の条件下で実質的に分解しやすいことに注意すべきである。「実質的に分解」するとは、(治療薬の当初の重量に基づき)治療薬重量の10%超が処理中に分解することを意味する。したがって、本発明の様々な実施態様は治療薬の実質的分解を回避する処理条件を指向している。本発明にしたがうプロセス中に、いかなる治療薬の分解も7%、5%、3%、または2%未満であることが好ましく、より好ましくは1%未満である。
【0072】
生体適合性ポリマー、治療薬、および、任意の材料から医療装置の少なくとも一部を形成するには、溶液処理技術および熱可塑化処理技術を含め、様々な技術を使用できる。
【0073】
溶液処理技術を用いる場合には、典型的に、1種または複数種の溶剤種から選択される溶剤系が用いられる。一般に、この溶剤系は、少なくとも対象の一成分、例えば、生体適合性ポリマーおよび/または治療薬に対する良溶媒である。溶剤系を構成する特定の溶剤種は、乾燥速度および表面張力を含めた、他の特性に基づいて選択することもできる。
【0074】
好ましい溶液処理技術には、溶剤キャスティング技術、スピンコート技術、ウェブ塗布技術、溶剤スプレイ技術、ディッピング技術、エアー懸濁(例えば、流体化塗布)、インクジェット技術、および静電技術を含む、機械的懸濁を介する塗布を含む技術が含まれる。良好であれば、上記のような技術を繰り返してまたは組み合わせて使用し、放出領域を所望の厚さで形成する。
【0075】
多くの実施態様において、溶剤および生体適合性ポリマーを含む溶液が、医療装置または医療装置の一部を形成するために、医療装置の基板または型等の他の枠に塗布される。このようにして、障壁層、潤滑層、その他を含め、ポリマー領域を形成することができる。所望の場合には、溶液はさらに、1種または複数種の以下のものを、溶解した状態または懸濁した状態で、含むことができる:治療薬、および他の任意の添加剤、たとえば放射線不透過剤、顔料、抗菌薬等。こうして、溶剤の除去後に、三成分を含むポリマーマトリクス領域が得られる。
【0076】
他の実施態様においては、溶剤と溶解または懸濁した治療薬を含む溶液が、溶液処理技術および熱可塑化処理技術を含め、様々な技術を用いて治療薬を取り込むために既に形成されているポリマー領域に塗布される。
【0077】
本発明の医療装置または医療装置の一部を形成するための熱可塑化処理技術には、成形技術(例えば射出成形、回転成形など)、押出し技術(例えば押出し、同軸押出し、多層押出し、多穴押出しなど)、および鋳造が含まれる。
【0078】
本発明にしたがう熱可塑化処理は、典型的には、生体適合性ポリマーと1種または複数種の以下のものを、1段階またはそれ以上の段階で、混合または配合することからなる:治療薬、および放射線不透過剤、顔料、抗菌薬など。得られた混合物は、次いで植え込み可能または挿入可能な医療装置にまたはその一部に成形される。混合および成形操作は、以下で詳述するように、このような目的に適していると当分野で知られている従来型装置のいずれを用いても実施できる。以下の記述においては、治療薬、放射線不透過剤、抗菌薬、顔料、その他は、場合により、「添加物」または「剤」と呼ばれる。
【0079】
熱可塑化処理中に、例えば、処理に伴う高温および/または機械的せん断歪のために、治療薬が分解する可能性がある。例えば、塩化オキシブチニンとケトロラックトロメタミンの本発明の実施に特に好適な2つの治療薬は、通常の熱可塑化処理条件下では実質的に分解しやすい。したがって、治療薬の実質的な分解を防止できる、修正条件下で処理することが好ましい。熱可塑化処理中にいくぶんかの分解が不可避であることは知られているが、一般に分解は10%に限定されている。治療薬の分解は7%、5%、3%、または2%未満であることが好ましく、より好ましくは1%未満である。治療薬の実質的分解を回避するために、処理中に制御できる処理条件は、温度、印加されるシェア速度、印加されるシェア応力、治療薬を含む混合物の滞留時間、高分子材料と治療薬を混合するのに用いる技術である。
【0080】
生体適合性ポリマーと治療薬および付加的添加物を実質的に均一な混合物とするための混合および配合は、高分子材料と添加物の混合に従来から使われており当分野で知られている装置のいずれを用いても実施できる。
【0081】
熱可塑性材料が用いられる場合には、生体適合性ポリマーを加熱することによりポリマー溶融物が形成され、それは様々な添加物と混合されて混合物を形成することができる。これを行なう一般的な方法は、生体適合性ポリマーと添加物の混合物に機械的せん断を加えることである。このやり方で、生体適合性ポリマーと添加物を混合する装置には、単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー、高速ミキサー、ロスケトルなどが含まれる。
【0082】
所望であれば(例えば、とりわけ、治療薬の実質的な分解を防止するために)、最終的熱可塑性混合と成形プロセスの前に、生体適合性ポリマーと様々な添加物を事前混合することができる。
【0083】
例えば、好ましい実施態様においては、生体適合性ポリマーが、治療薬が存在すれば実質的に分解されるような温度および機械的せん断の条件下で、放射線不透過剤と事前混合される。こうして事前に混合された材料は、次いで低い温度および機械的せん断の条件下で、治療薬と混合され、得られた混合物が医療装置または医療装置の一部に成形される。
【0084】
逆に、他の実施態様においては、低い温度および機械的せん断の条件下で、生体適合性ポリマーと治療薬が事前混合される。こうして事前に混合された材料は、次いで同じく低い温度および機械的せん断の条件下で放射線不透過剤と混合され、得られた混合物が医療装置または医療装置の一部に成形される。
【0085】
或る種の添加剤たとえばえばオキシ炭酸ビスマスのような放射線不透過剤の存在が、熱可塑化処理の間に、これらの添加剤の不存在下での同様の機械的せん断および温度の条件下で起こるよりも、実質的に高い程度の治療薬の分解をもたらすことが、本発明者により見出された。理論に拘束されることを意図するものではないが、通常の熱可塑化処理条件下でも固形のままである、これらの添加物が存在すると、せん断および/または温度が局所的に上昇し、治療薬の分解を増大させると考えられる。しかし、これらの添加剤が、治療薬を加える前に生体適合性ポリマーと事前混合されるか、またはこれらの添加物を加える前に、治療薬が生体適合性ポリマーと事前混合されるときは、分解率は実質的に低下され得る。治療薬を加えると、以後の熱可塑化処理は、典型的には、できるだけ低い、温度および機械的せん断の条件下でおこなわれる。
【0086】
生体適合性ポリマーと添加物の混合物を得るのに用いられる条件は、例えば、使用される特定の生体適合性ポリマーおよび添加物、ならびに使用される混合装置の種類を含む、多くの要素に依存するであろう。
【0087】
例として、異なる生体適合性ポリマーは、典型的には、異なる温度で軟化して、混合を容易にするであろう。例えば、EVAポリマー、放射線不透過剤(例えばオキシ炭酸ビスマス)、および熱および/または機械的せん断で分解しやすい治療薬(例えば、ケトロラックトロメタミンおよび/または塩化オキシブチニン)からなるポリマーマトリクス領域が形成される場合は、EVAと放射線不透過剤を、EVAの通常の処理温度である、約170〜180℃で事前混合することが好ましい。この目的には二軸押出機が好ましいが、他の装置も使用できる。次いで、治療薬が事前混合物に加えられ、EVA組成物用に典型的な条件よりも実質的に低い温度および機械的せん断の条件下で熱可塑化処理がおこなわれる。例えば、押出機を使用する場合は、シリンダー温度、押出し容積を制御しせん断を限定することによって、治療薬の実質的な分解を防止する。例えば、治療薬と事前混合物とは、二軸押出機を用い、かなり低い温度(例えば、100〜105℃)およびかなり低い押出し容積(例えば、フル出力の30%減、押出し容積;200cc/分に相当)で混合/配合することができる。治療薬の融点または融点より高い温度で処理すると、治療薬が実質的に分解するため、上記処理温度はケトロラックトロメタミンおよび塩化オキシブチニンの融点より充分低いことがわかる。さらに、ある実施形態においては、処理温度が、治療薬および存在する場合の抗菌薬も含め、組成内のすべての生活性物質の融点より低くなることがわかる。配合後、得られた生成物は、同様に低い温度および機械的せん断の条件下で、所望の形状に成形される。例えば、この目的には単軸押出機を使用することができ、かなり低い温度(例えば、105〜110℃)およびかなり低い押出し容積(例えば、フル容量の40%減、押出し容積;100cc/分未満に相当)で操作され得る。
【0088】
生体適合性ポリマーと添加物のいくつかの組合せにおいて、他の場合より低温で処理できることがわかる。例えば、100〜110℃は、EVA共重合体、オキシ炭酸ビスマス等の放射線不透過剤、およびケトロラックトロメタミンまたは塩化オキシブチニン等の治療薬の処理温度としては相対的に低い温度である。しかし、約55℃で融解するトリクロサン等の抗菌薬を加えることにより、トリクロサンがEVAの可塑化剤として働いて低温、例えば、約80℃〜約90℃での処理を容易にする。
【0089】
他の実施態様においては、生体適合性ポリマーと1種または複数種の添加物が非熱可塑技術を用いて事前混合される。例えば、生体適合性ポリマーは、1種または複数種の溶剤を含む溶剤系に溶解することができる。いかなる所望の薬剤(例えば、放射線不透過剤、治療薬、または放射線不透過剤と治療薬の双方)でも溶剤系に溶解または分散することができる。次に得られた溶液/分散液から溶剤が除去されて固形材料が形成される。得られた固形材料は、所望の場合には、熱可塑化処理(例えば、押出し)に備えて造粒することができる。
【0090】
他の例として、治療薬は溶剤系に溶解または分散することができ、その溶液/分散液は既にあるポリマー領域(既にあるポリマー領域は、溶液技術および熱可塑化技術を含め様々な技術を用いて形成され、放射線不透過剤および/または顔料を含む様々な添加物を含むことができる)に塗布され、治療薬がポリマー領域内に吸収される。上記と同様に、得られた固形材料は、所望の場合には、次の処理に備えて造粒することができる。
【0091】
押出し処理は、本発明を実施するための熱可塑化処理の内で好ましいものの一つである。例えば、上記のように、生体適合性ポリマー、治療薬、および放射線不透過剤を含む、環状ポリマーマトリクスを押出すだけで医療装置または医療装置の一部を形成することができる。
【0092】
共軸押出しは、多領域構造体(例えば、1種または複数種のポリマーマトリクス領域、および、各層がポリマーマトリクス領域を少なくとも部分的に覆っている、1種または複数種の障壁層を含む構造体)の製造に使用できる成形プロセスの一つである。多領域構造体は、他の処理技術および成形技術、たとえば共射出技術または順次射出成形技術、によっても形成できる。
【0093】
多領域が設けられると、上記の処理を含む様々な処理が様々な組合せで可能になる。例えば、押出しコーティング処理により、既に設けられたポリマーマトリクス領域上に障壁層を押出すことができる。この処理は、ポリマーマトリクスと障壁層が実質的に同時に形成される共押出しとは異なる。他の例として、障壁層の溶液または分散液を既に設けられたポリマーマトリクス領域の表面上に塗布し、引き続き溶剤または液状分散剤を例えば蒸散で除去することにより、障壁層がポリマーマトリクス上に形成される。障壁層の溶液または分散液は、上記の技術のいずれか、例えば、浸漬またはスプレイ法を用いて既に設けられたポリマーマトリクスの表面に接触させることにより塗布される。当然ながら、これらの付加的成形処理法の使用は、障壁層のポリマーマトリクス上への塗布だけに限定されない。例えば、同様な方法により、付加的ポリマーマトリクス領域または潤滑層も既に設けられたポリマーマトリクス上に形成することができる。
【0094】
様々な押出しの実施態様を含む、本発明の多くの実施態様において、熱可塑化処理装置から出てくる製品(例えば、押出し機から出てくる、環状または管状)は冷却される。冷却処理としては、空気冷却および/または冷却浴への浸漬が挙げられる。好ましい実施形態においては、水浴が押出された製品を冷却するのに用いられる。しかし、水溶性治療薬たとえばケトロラックトロメタミンまたは塩化オキシブチニンが使用される場合には、治療薬が不必要に浴内に失われるのを回避するため、浸漬時間は最小限に保持されるべきである。浴から出した後、室温または加熱した空気ジェットを用いて直ちに水や水蒸気を除去すれば、治療薬が医療装置の表面で再結晶したまま保存され、植え込みまたは挿入の際に高用量が放出されるのを制御または最小化することができる。
【0095】
医療装置が完成すると、典型的には、滅菌され梱包される。植え込み可能または挿入可能な医療装置は、一般に、エチレンオキシドまたは放射線に曝露することにより滅菌される。医療装置を形成する際と同様に装置を滅菌する際にも、治療薬が不必要に分解されず、水蒸気に長時間さらされないように注意しなければならない。
【0096】
例えば、医療装置にケトロラックトロメタミンが含まれている場合、エチレンオキシドによる滅菌は、治療薬が熱、水蒸気に曝され、化学物質を吸収するため、あまり望ましくないことがわかっている。一方、放射線による滅菌も治療薬を分解させる恐れのあることがわかっている。しかし、例えば、(a)比較的エネルギーの低い放射線、例えば電子線を使用する、および(b)医療装置の水蒸気、酸素、光への曝露を最小限にする、ことにより分解を許容できるレベルに保つことができる。
【0097】
好ましい実施態様において、本医療装置は、減圧にされている、または不活性ガス(窒素および/またはアルゴンその他の貴ガス)が封入されている、フォイルパウチに収められ、続いて該パウチは電子線照射にさらされる。
【0098】
以下、実施例で本発明をさらに説明するが、本発明は実施例に限定されない。上記の説明に矛盾することなく、本発明の範囲を逸脱することなく、実施例で説明される実施形態を様々に変更できることは、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0099】
(a)エルバックス(登録商標)460(デュポン社から購入でき、ビニルアセテート含量が18重量%のエチレン−ビニルアセテート共重合体)のそれぞれ65.75重量%および52.75重量%、(b)放射線不透過剤としてのオキシ炭酸ビスマスの26重量%、(c)非ステロイド抗炎症剤としてのケトロラックトロメタミン(スペクトラム・ケミカルズ・アンド・ラボラトリ・プロダクツ社から購入できる)のそれぞれ8重量%および21重量%、および(d)青色顔料の0.25重量%を含む混合物から、単層マトリクスポリマー構造が形成される。
【0100】
オキシ炭酸ビスマス、EVA共重合体、および青色顔料が、例えばハーケ社の2軸押出機を用いて350°F(177℃)で事前混合される。
【0101】
次にケトロラックが事前混合物と混合され、得られた混合物が、ハーケ社の2軸押出機を用いて、低いせん断速度(フル出力の30%未満)で、215°F(102℃)で配合される。約6〜8インチの長さの押出しロッドを用いて(より典型的である押出し長6〜8フィートを用いずに)冷水浴に押出し、次いで空気乾燥させる。配合された樹脂中の分解生成物の合計量は0.3%未満(W/W,仕込まれた薬の合計量基準)である。
【0102】
次に配合樹脂を、デイビス・スタンダード社の1インチ単軸押出機を用いて225°Fで6Fr.管に押し出す。スクリューの回転速度を16rpm未満に保つことでせん断速度を制御する。取り出し率は約18フィート/分である。上記のように、押出された管を短時間水冷し、次に空気で冷却する。この押出し工程で引き起こされた分解の合計量は0.2%以下である。
【0103】
フロースルーモデルが人体条件を模するのに用いられて、ケトロラックトロメタミンの放出プロファイルを決定する。それぞれ8%および21%のケトロラックトロメタミンを含む、上記の長さ50cmの管状サンプルが、該モデルに搭載された。以下の条件が用いられた:(a)放出媒体:次の表1にリストされた成分を含む、人工尿(正常なpH:〜6.5)、(b)流速:0.50mL/分、(c)温度:37℃、および(d)サンプル数:N=3。
【0104】
液状サンプルを集め、HPLCを用いて測定し、治療薬の濃度を決定する。その結果は図5、6および7に示され;これらの図は、それぞれ、時間の関数として、1日当たりの放出量、累積放出量および人工尿中の濃度を示す。
【0105】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の実施態様に係る、身体に植え込みまたは挿入される環状医療装置の簡略化された概略図である。
【図2】本発明の他の実施態様に係る、身体に植え込みまたは挿入される環状医療装置の簡略化された概略図である。
【図3】本発明のさらに他の実施態様に係る、身体に植え込みまたは挿入される環状医療装置の簡略化された概略図である。
【図5】本発明の実施態様に係る、人工尿中37℃でのケトロラックの推定1日放出量を時間の関数としてプロットした図である。
【図6】本発明の実施態様に係る、人工尿中37℃でのケトロラックの推定in vitro累積放出量を時間の関数としてプロットした図である。
【図7】本発明の実施態様に係る、37℃での人工尿中のケトロラックの濃度を時間の関数としてプロットした図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)生体適合性ポリマーと、(b)抗炎症薬、鎮痛薬、麻酔薬および鎮痙薬から選択される少なくとも1種の治療薬とを含み、植え込み若しくは挿入に際し痛み若しくは不快感を伴う部位への植え込み若しくは挿入に適合している、植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項2】
前記医療装置が抗菌薬を含まない、請求項1の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項3】
放射線不透過剤をさらに含む、請求項1の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項4】
前記医療装置が尿管ステントである、請求項1の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項5】
植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置の使用であって、前記使用は、前記植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置の植え込みな若しくは挿入に伴う痛み若しくは不快感を軽減することからなり、前記植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置が、(a)生体適合性ポリマーと、(b)抗炎症薬、鎮痛薬、麻酔薬、鎮痙薬および放射線不透過剤から選択される少なくとも1種の治療薬とを含む、使用。
【請求項6】
植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置が、放射線不透過剤をさらに含む、請求項5の使用。
【請求項7】
前記医療装置が尿管ステントである、請求項5の使用。
【請求項8】
前記使用が、該装置に沿った微生物の増加をさらに軽減することからなり、該装置が抗菌薬をさらに含む、請求項5の使用。
【請求項9】
(a)生体適合性ポリマーと、(b)(i)ケトロラックおよびその医薬的に許容可能な塩類、(ii)4−ジエチルアミノ−2−ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレートおよびその医薬的に許容可能な塩類から選択される少なくとも1種の治療薬とを含み、植え込み若しくは挿入に際し痛み若しくは不快感を伴う部位への植え込み若しくは挿入に適合している、植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項10】
前記治療薬がケトロラックトロメタミンである、請求項9の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項11】
前記治療薬が塩化オキシブチニンである、請求項9の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項12】
前記部位への植え込み若しくは挿入後の1日、2日、4日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、1年および2年から選択される期間における、治療薬の累積放出量が、装置中の合計治療薬に対して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%および99%から選択される量である、請求項9の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項13】
前記医療装置が尿管ステントである、請求項9の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項14】
前記生体適合性ポリマーが、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)およびポリオクテナマーから選択される1種または複数種である、請求項9の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項15】
前記生体適合性ポリマーがエチレン−ビニルアセテート(EVA)共重合体である、請求項9の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項16】
前記医療装置が、前記生体適合性ポリマーおよび前記治療薬を含むポリマーマトリクス領域を含む、請求項9の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項17】
放射線不透過剤をさらに含む、請求項9の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項18】
前記医療装置が、前記生体適合性ポリマー、前記治療薬および前記放射線不透過剤を含むポリマーマトリクス領域を含む、請求項17の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項19】
前記放射線不透過剤がビスマスサブカーボネートである、請求項17の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項20】
前記医療装置が、(a)第1の生体適合性ポリマーおよび前記治療薬を含む第1のポリマーマトリクス領域と、(b)第2の生体適合性ポリマーおよび前記放射線不透過剤を含む第2のポリマーマトリクス領域とを含み、前記第1の生体適合性ポリマーおよび第2の生体適合性ポリマーとが同一でも異なっていてよい、請求項18の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項21】
前記マトリクス領域が5〜20%の治療薬を含む、請求項18の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項22】
前記治療薬がケトロラックトロメタミンである、請求項18の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項23】
前記治療薬が塩化オキシブチニンである、請求項18の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項24】
前記マトリクス領域が15〜30%の放射線不透過剤を含む、請求項18の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項25】
前記生体適合性ポリマーが熱可塑性ポリマーである、請求項16の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項26】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン−ビニルアセテート(EVA)共重合体である、請求項25の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項27】
前記生体適合性ポリマーが弾性ポリマーである、請求項16の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項28】
障壁層をさらに含む、請求項16の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項29】
抗菌薬をさらに含む、請求項9の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項30】
抗菌薬をさらに含む、請求項18の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項31】
ヒドロゲルをさらに含む、請求項18の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項32】
前記マトリクスが押出し成形されたマトリクスである、請求項18の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項33】
前記押出し成形されたマトリクスがエチレン−ビニルアセテート(EVA)共重合体、ケトロラックトロメタミンおよびビスマスサブカーボネートを含む、請求項32の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項34】
ケトロラックトロメタミンの分解レベルが2%未満である、請求項33の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置。
【請求項35】
前記生体適合性ポリマーと前記治療薬を含む組合せを提供するステップ;および
前記組合せから前記ポリマーマトリクスを形成するステップ
を含む、請求項16の植え込み可能な若しくは挿入可能な医療装置を製造する方法。
【請求項36】
前記ポリマーマトリクスを形成するステップが熱可塑化工程を含む、請求項35の方法。
【請求項37】
前記熱可塑化工程が押出し工程である、請求項36の方法。
【請求項38】
前記熱可塑化工程が、(a)生体適合性ポリマーの軟化温度より高く、(b)治療薬の融点より低く、且つ(c)前記治療薬の実質的な分解を回避するのに充分低い、温度でおこなわれる、請求項36の方法。
【請求項39】
さらに機械的せん断が制御されて前記実質的な分解を回避する、請求項38の方法。
【請求項40】
前記ポリマーマトリクスを形成するステップが溶液形成工程を含む、請求項35の方法。
【請求項41】
前記溶液形成工程が溶液塗布工程である、請求項40の方法。
【請求項42】
前記組合せが、放射線不透過剤をさらに含む、請求項35の方法。
【請求項43】
前記ポリマーマトリクスを形成するステップが、(a)前記生体適合性ポリマーおよび前記放射線不透過剤を含む最初のブレンド品を形成すること;(b)前記最初のブレンド品と前記治療薬とを組み合わせること;及び(c)前記ポリマーマトリクスを形成することを含む、請求項42の方法。
【請求項44】
前記最初のブレンド品が熱可塑化工程により形成される、請求項43の方法。
【請求項45】
前記最初のブレンド品が押出し工程により形成される、請求項43の方法。
【請求項46】
前記ポリマーマトリクスがさらなる熱可塑化工程を用いて形成される、請求項44の方法。
【請求項47】
前記さらなる熱可塑化工程が、前記治療薬の実質的な分解が回避される条件下でおこなわれる、請求項46の方法。
【請求項48】
前記さらなる熱可塑化工程が、前記治療薬の分解が2%未満である条件下でおこなわれる、請求項46の方法。
【請求項49】
前記最初のブレンド品が溶液工程を用いて形成され、前記ポリマーマトリクスが熱可塑化工程を用いて形成される、請求項43の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−514557(P2006−514557A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−524281(P2004−524281)
【出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/024131
【国際公開番号】WO2004/011055
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(505307954)ボストン サイエンティフィック リミティッド (9)
【Fターム(参考)】