説明

薬理シャペロンを用いるファブリー病の治療方法

本発明は、α−ガラクトシダーゼAの特異的薬理シャペロンの投与後に、ファブリー病に関連する代理マーカーの改善が存在するか否かを判定することによる、ファブリー病患者の治療方法を提供する。この方法には、個体に対して有効量の1−デオキシガラクトノジリマイシンを投与するステップが含まれ、ここで1−デオキシガラクトノジリマイシンは、α−ガラクトシダーゼAの活性を増大させるために有効な量でα−ガラクトシダーゼAに結合している。本発明は同様に、患者に由来する細胞の細胞質染色パターンに対する効果を評価することによってα−ガラクトシダーゼAの特異的薬理シャペロンの投与後のファブリー病患者の治療応答を監視し増大させる方法であって、健常な個体に由来する細胞内の染色パターンに類似する細胞内の染色パターンの検出が、ファブリー病を患う個体が応答者であることの標示である方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体が参照により本明細書に援用されている2007年3月30日出願の米国仮特許出願第60/909,185号明細書に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、α−ガラクトシダーゼA活性を少なくとも3倍回復させること、そしてより詳細にはその活性を正常範囲内のレベルまで回復させることによりファブリー病を治療する方法を提供する。さらに本発明は、特異的代理マーカーの存在および/または数量の変化を評価することによりファブリー病を患う個体の特異的薬理シャペロンを用いた治療を監視するための方法を提供する。本発明は同様に、細胞内レベルで治療の効果を評価することによりファブリー病を患う個体の特異的薬理シャペロンを用いた治療を監視するための方法をも提供する。
【背景技術】
【0003】
ファブリー病は、スフィンゴ糖脂質類からの末端α−ガラクトシル残基の加水分解を担う酵素であるリソソームα−ガラクトシダーゼA(α−GalA)のX連鎖性遺伝的欠損によってひき起こされるスフィンゴ糖脂質(GSL)蓄積症である。酵素活性欠損の結果として、中性スフィンゴ糖脂質、主にグロボトリアオシルセラミド(セラミド・トリヘキソシド、CTH、GL−3)が血管内皮細胞中に漸進的に被着し、この身体条件を有する患者において腎不全と共に早期心筋梗塞および卒中がひき起こされる。この障害は、臨床所見によって、全身性血管障害を伴う古典的な形態、そして臨床所見が心臓組織に限定されている非定型的形態(atypical variant form)という2つのグループに分類される。
【0004】
疾病の頻度は、男性では約1:40,000と推定され、異なる民族集団において世界中で報告されている。古典型に罹患した男性において、臨床所見には角化血管膜(皮膚の小さい隆起した赤みがかった紫色の染み)、肢端感覚異常(手足の灼熱感)、発汗低下症(発汗能力の低下)および特徴的な角膜および水晶体混濁が含まれる(非特許文献1)。脂質蓄積は、動脈の循環を損ない心臓発作または卒中のリスクを増大させることになる可能性がある。心臓が肥大する可能性もあり、徐々に腎臓にも影響が及び得る。その他の症候としては、特に飲食後の発熱および胃腸障害が含まれる。一部の女性キャリヤが症候を示すこともある。
【0005】
罹患した男性の推定寿命は短くなり、心臓、脳および/または腎臓の血管疾患の結果として通常40歳代から50歳代で死亡する。これとは対照的に、より穏やかな「心臓型」を患う患者は、通常は正常なα−GalA活性の5〜15%を有し、左心室肥大または心筋症を呈する。古典型に罹患した者が重症となる場合であっても、これらの心臓型患者は、本質的に無症候状態にとどまる。最近になって、原因不明の左心室肥大型心筋症をもつ成人の男性患者の11%に心臓型が発見され、このことはファブリー病の頻度が以前に推定されたよりも高い可能性があることを示唆していた(非特許文献2)。
【0006】
α−GalA遺伝子はXq22にマッピングされ(非特許文献3)、全長cDNAおよびα−GalAをコードする全12−kbのゲノム配列が報告されてきた(非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6および非特許文献7)。ファブリー病の原因となる変異の顕著な遺伝的異質性が存在する(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10および非特許文献11)。今までに、小さい欠失および挿入そしてより大きな遺伝子再構成に加えて、さまざまなミスセンス、ナンセンスそしてスプライシング変異が報告されてきた。
【0007】
治療
ファブリー病の治療は主として、例えばFabrazyme(登録商標)(Genzyme,Inc.)およびReplagal(登録商標)(TKT,Inc.)として市販されている製品といった組換え型α−GalAを用いた酵素補充療法(ERT)によっている。ERTには、典型的には、対応する野生型タンパク質の精製形態の静脈内、皮下または筋内への輸液または長時間放出のための生体侵食性(bio−erodable)固体形態のタンパク質の移植が関与する。ERTに伴う主要な問題点の1つは、輸液されるタンパク質が急速に分解することから、治療的に有効なタンパク質量を達成しそれを維持することにある。その結果、ERTは高用量の輸液を何回も必要とし、その結果として費用と時間のかかるものとなる。
【0008】
ERTには、例えば正しく折畳まれたタンパク質の大規模生成、精製および蓄積、グリコシル化未変性タンパク質の獲得、一部の患者における抗タンパク質免疫応答の生成および、有意な中枢神経系の関与を有する疾病に影響を及ぼすのに充分な量でタンパク質が血液−脳障壁を横断できないことに伴う問題点などのさらなる欠点がいくつかある。
【0009】
機能タンパク質をコードする核酸配列を含む組換え型ベクターまたは機能タンパク質を発現する遺伝子操作されたヒト細胞を用いた遺伝子療法もまた、タンパク質補充の恩恵を受けるタンパク質欠損症およびその他の障害を治療する目的で使用されている。将来性はあるものの、この手法には同様に、分裂中の細胞に感染するかまたは形質導入する能力がベクターにないこと、標的遺伝子の発現が低いことそして遺伝子がひとたび送達された時点で発現が調節されること(例えば、数多くのウイルスベクターが、効能を得るために細胞が分裂中であることを必要としている)などの技術的な問題点による制限もある。
【0010】
タンパク質欠損症を治療するための第3の比較的最近の手法には、欠損している酵素タンパク質の天然の基質の合成を阻害して病状を改善させるための小分子阻害物質の使用が関与している。この「基質剥奪」手法は、リソソーム蓄積障害またはスフィンゴ糖脂質蓄積障害と呼ばれる約40の関連する酵素障害からなる一連の障害について、具体的に記述されてきた。これらの遺伝性疾患は、細胞内の糖脂質破壊の触媒として作用するリソソーム酵素の欠損により脂質の異常な蓄積が生じ、細胞の機能が破壊されることを特徴としている。治療用に提案されている小分子阻害物質は、糖脂質の合成に関与する酵素を阻害し、欠損酵素により分解される必要のある細胞糖脂質の量を削減するために特異的なものである。この手法もまた、糖脂質が生物学的機能に必要であり、余剰の剥奪が有害効果をひき起こすかもしれないという点において制限がある。具体的には、糖脂質は、脳により1つのニューロンから別のニューロンにシグナルを送るために使用される。糖脂質の数が過度に少ないかまたは過度に多い場合、シグナルを送るニューロンの能力は妨げられる。
【0011】
さらに、リソソーム蓄積症のゴーシェ病についての1つの基質阻害物質NB−DNJを用いた治療には、末梢神経障害および重症の胃腸影響を含めたヒトにおける数多くの有害事象が付随する。これらの効果は、治療上の有効用量ではない150mg/日という低用量でさえ出現する。以上のことから、米国および欧州におけるゴーシェ病の治療のためのNB−DNJの投与は、ERTが選択肢ではない軽度乃至は中等度のI型ゴーシェ病患者を含め成人に著しく限定されており、カナダでは療法として認可されていない(非特許文献12)
【0012】
特異的シャペロン戦略である第4の手法は、おそらくは小胞体(ER)またはその他の細胞タンパク質分解/排出システムにおいて、変異タンパク質を分解から救済する。以前の特許および刊行物では、誤って折畳まれたリソソーム酵素を含めた内因性酵素タンパク質をER品質管理機序により分解から救済するための治療戦略について記述されている。特定の実施形態においては、この戦略は、特定のリソソーム障害に結びつけられる欠陥あるリソソーム酵素に対して特異的に結合する小分子可逆的阻害物質を利用する。治療が不在の場合、変異酵素タンパク質はER内で誤って折畳まれ(非特許文献13)、最終製品に至るその成熟が遅延し、その後ER内で分解される。シャペロン戦略には、ER品質管理システムからの不当なまたは異常な分解または誤って折畳まれたタンパク質の細胞内蓄積を防止するための、変異タンパク質の正しい折畳みを促進する化合物の使用が関与する。これらの特異的シャペロンは、薬理シャペロン(または活性部位特異的シャペロン)と呼称される。
【0013】
シャペロン戦略は、全体が参照により本明細書に援用されているFanらに対する特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5中にあるように、リソソーム蓄積障害に関与する酵素について記述され例証されてきた。例えば、変異型ファブリー酵素α−ガラクトシダーゼA(α−GalA)の強力な競合阻害物質であるガラクトースの小分子誘導体、1−デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)は、中性pHでヒト変異型α−GalA(R301Q)の生体内安定性を有効に増大させ、R301QまたはQ279E変異でファブリー病患者から確立したリンパ芽球内の変異型酵素活性を45%以上増強した。さらに、変異型(R301Q)α−GalAを過剰発現する遺伝子導入マウスにDGJを経口投与すると、主要な器官内で酵素活性が実質的に上昇した(非特許文献14)。組織培養内のゴーシェ病患者の細胞からの酸性β−ガラクトシダーゼ(グルコセレブロシダーゼ;Gba)の類似したレスキューについては、Fanらに対する係属中の特許文献2中で記述されている別のイミノ糖、イソファゴミン(IFG)およびその誘導体を用い、かつ(共に2004年11月12日に出願された係属中の特許文献6および特許文献7に記述されている)Gbaに特異的なその他の化合物を用いて、記述されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,274,597号明細書
【特許文献2】米国特許第6,583,158号明細書
【特許文献3】米国特許第6,589,964号明細書
【特許文献4】米国特許第6,599,919号明細書
【特許文献5】米国特許第6,916,829号明細書
【特許文献6】米国特許出願第10/988,428号明細書
【特許文献7】米国特許出願第10/988,427号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th Edition 2001, Scriver et al., ed., pp. 3733-3774, McGraw-Hill, New York
【非特許文献2】Nakao et al., N. Engl. J. Med. 1995; 333: 288-293
【非特許文献3】Bishop et al., Am. J. Hum. Genet. 1985; 37: A144
【非特許文献4】Calhoun et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1985; 82: 7364-7368
【非特許文献5】Bishop et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1986; 83: 4859-4863
【非特許文献6】Tsuji et al., Eur. J. Biochem. 1987; 165: 275-280
【非特許文献7】Kornreich et al., Nucleic Acids Res. 1989; 17: 3301-3302
【非特許文献8】The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th Edition 2001, Scriver et al., ed., pp. 3733-3774, McGraw-Hill, New York
【非特許文献9】Eng et al., Am. J. Hum. Genet. 1993; 53: 1186-1197
【非特許文献10】Eng et al., Mol. Med. 1997; 3: 174-182
【非特許文献11】Davies et al., Eur. J. Hum. Genet. 1996; 4: 219-224
【非特許文献12】Weinreb et al., Am J. Hematology. 2005. 80: 223-29
【非特許文献13】Ishii et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 1996; 220: 812-815
【非特許文献14】Fan et al., Nature Med. 1999; 5: 112-115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
阻害物質であるシャペロンによる誤って折畳まれたタンパク質のレスキューの成功は、酵素阻害濃度が必要とされる基質剥奪手法とは対照的に、酵素を完全に阻害するのに必要なものよりも低い生体内での特異的阻害物質の濃度の達成によって左右される。有効であるシャペロンの低い用量は、同様に、基質阻害物質の使用を阻む有害な副作用の量および重症度も低減させる。しかしながら、今までのところ、ファブリー病の治療に対するこれらの手法についての臨床および前臨床試験は、有益ではあるにせよ改善が患者のα−GalA活性を正常レベルにすることはできない、ということを示唆している。その上、代理マーカー上または細胞内レベルで薬理シャペロンを用いるファブリー病の臨床治療効果は未知のままである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、DGJなどの特異的薬理シャペロンでのファブリー病患者の治療方法およびファブリー病に関連する代理マーカーの存在および/またはレベルの変化を評価することによるその治療に対する応答の監視方法を提供する。
【0018】
一実施形態において、本治療方法には、α−ガラクトシダーゼAの特異的薬理シャペロンの投与後に、ファブリー病に関連する代理マーカーの改善が存在するか否かを判定するステップが関与する。
【0019】
具体的な一実施形態においては、改善は、患者が応答者(responder)であることを示す。
【0020】
一実施形態において、代理マーカーは全身性代理マーカーである。特定の実施形態においては、マーカーは、細胞および組織内におけるリソソームα−ガラクトシダーゼA活性またはGL−3の蓄積である。別の実施形態において代理マーカーは、ファブリー患者由来の細胞内でERからリソソームへのα−ガラクトシダーゼAの異常輸送;エンドソーム経路を通した細胞脂質の異常輸送;ERまたは細胞質ゾルにおける誤って折畳まれた大量のα−ガラクトシダーゼAの存在;(ストレス関連マーカーの遺伝子および/またはタンパク質発現により判定した際の)α−ガラクトシダーゼAの毒性蓄積が起こす細胞ストレスの存在;エンドソームpHレベルの異常;細胞形態の異常;ユビキチン/プロテアソーム経路の抑制;およびユビキチン化タンパク質の量の増加から選択される細胞内代理マーカーである。
【0021】
具体的な一実施形態においては、薬理シャペロンはα−ガラクトシダーゼAの阻害物質である。別の実施形態においては、阻害物質は、1−デオキシガラクトノジリマイシンなどの可逆的競合阻害物質である。
【0022】
本発明は同様に、α−ガラクトシダーゼAの特異的薬理シャペロン投与後のファブリー病患者の治療応答を監視する方法をも提供している。この方法には、患者に由来する細胞の細胞質染色パターンに対する効果を評価するステップが含まれ、健常な個体に由来する細胞内の染色パターンに類似する細胞内の染色パターンの検出が、ファブリー病を患う個体が応答者であることの指標である。
【0023】
一実施形態においては、細胞質染色はリソソーム染色である。その他の実施形態においては、リソソーム染色はα−ガラクトシダーゼA、LAMP−1発現またはポリユビキチン化タンパク質の存在の検出である。
【0024】
具体的な一実施形態においては、特異的薬理シャペロンは、α−ガラクトシダーゼAの阻害物質である。別の実施形態においては、阻害物質は1−デオキシガラクトノジリマイシンなどの可逆的競合阻害物質である。
【0025】
本発明は同様に、必要としている個体の体内のα−ガラクトシダーゼAタンパク質の活性を増大させる方法をも提供している。この方法には、タンパク質に結合する有効量の特異的薬理シャペロンを、個体の体内のタンパク質の活性を少なくとも約50%だけ増大させるのに有効な量で個体に投与するステップが含まれる。
【0026】
特定の一実施形態においては、α−ガラクトシダーゼAタンパク質は野生型タンパク質である。別の実施形態においては、α−ガラクトシダーゼAタンパク質は酵素である。一実施形態においては、酵素はリソソーム酵素である。さらに別の実施形態では、リソソーム酵素は野生型α−ガラクトシダーゼAタンパク質である。
【0027】
本発明の一実施形態においては、薬理シャペロンはα−ガラクトシダーゼAの阻害物質である。別の実施形態においては、阻害物質は、1−デオキシガラクトノジリマイシンなどの可逆的競合阻害物質である。
【0028】
一実施形態においては、1−デオキシガラクトノジリマイシンは、タンパク質の活性を少なくとも約50%、好ましくは少なくとも2倍(約100%)、より好ましくは少なくとも約3倍〜5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、そしてさらに一層好ましくは少なくとも約15倍増大させるのに有効な量で投与される。
【0029】
本発明の一実施形態においては、個体は、野生型タンパク質に対してホモ接合性である。別の実施形態においては、個体は、野生型タンパク質に対してヘテロ接合性であり、タンパク質をコードするその他の対立遺伝子についての変異遺伝子型を有する。特定の実施形態においては、個体はファブリー病を患っている。
【0030】
本発明の別の実施形態においては、α−ガラクトシダーゼA活性は少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍〜5倍、より好ましくは少なくとも10倍増大する。具体的な一実施形態においては、α−ガラクトシダーゼA活性は、正常範囲内まで増大する。
【0031】
本発明は同様に、治療が必要な患者におけるファブリー病の治療方法において、個体に対し有効量の1−デオキシガラクトノジリマイシンを投与するステップを含み、1−デオキシガラクトノジリマイシンが、患者の体内のα−ガラクトシダーゼAの活性を少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも3倍〜5倍、より好ましくは少なくとも10倍増大させるのに有効な量でα−ガラクトシダーゼAに結合する方法をも提供している。具体的な一実施形態においては、α−ガラクトシダーゼA活性は、正常範囲内まで増大する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】健常なボランティアにおける、プラシーボ、1日2回50mgおよび1日2回150mgについての経時的なα−GalA酵素活性データを示す。
【図2】48週間にわたるDGJ投与の結果としてのファブリー病患者における白血球活性の平均的増加を示す。
【図3】12週間にわたるDGJを用いた治療の後の2人のファブリー病患者におけるGL−3レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、酵素活性レベルを少なくとも約3倍に増大させるかまたは前例のない正常レベルまで酵素活性レベルを増大させるための特異的薬理シャペロンの用量の設定法を提供する。具体的実施形態においては、特異的薬理シャペロンはα−GalAの可逆的競合阻害物質、好ましくはDGJである。
【0034】
さらに、本発明は、1−DGJなどのα−GalAの可逆的競合阻害物質である特異的薬理シャペロンを用いたファブリー病の治療に対する患者の応答を監視するための方法を提供する。特に、治療は、血管壁内の細胞および腎臓、心臓および皮膚細胞を含めた細胞内のグロボトリアオシルセラミド(GL−3)の細胞被着物;尿中GL−3レベル;白血球、血漿、皮膚、腎臓および心臓細胞中のα−GalA活性;そして尿中タンパク尿(urinary proteinuria)を含む(ただしこれらに限定されるわけではない)、ファブリー病に関連するマーカーについて生体試料を検定することによって監視される。付加的なマーカーとしては、角化血管腫、低発汗、チクチクする痛み、または末端部の灼熱感、胃腸障害、白内障またはその他の視力障害および聴力損失の存在が含まれる。
【0035】
さらに、変異型タンパク質の毒性蓄積に起因する細胞ストレスの緩和および変異型タンパク質の輸送などの細胞内疾病マーカーの評価も同様に想定されている。
【0036】
本発明は、一部には、ファブリー病治療向けのDGJの第I相および第II相試験から得た結果に基づいている。発見された事実の中には、療法の治療的効果の指標となるファブリー病の代理マーカーに関する変化の特定;α−GalA活性を増大させる投薬量範囲および投薬計画の特定;そして意外にも、白血球中で測定した場合に少なくとも2倍、より好ましくは3倍〜5倍そして一部のケースでは最高10倍そして15倍ものα−GalA活性の増大を達成するようにDGJ治療の用量設定を行えること、があった。さらに、白血球中で測定される通り、前例のない治療効果である正常範囲までα−GalA活性レベルを回復させるようにDGJの投与を用量設定することができた。
【0037】
定義
本明細書中で使用される用語は一般に、本発明に関しておよび各用語が使用される具体的状況の中で当該技術分野におけるその通常の意味を有する。一部の用語について、本発明の組成物および方法そしてその作製および使用方法を説明する上で実施者に対するさらなる指針を提供することを目的として、以下でまたは明細書の他の箇所で論述される。
【0038】
「ファブリー病」という用語は、リソソームα−ガラクトシダーゼ活性の欠損に起因するスフィンゴ糖脂質異化のX連鎖先天異常を意味する。この欠陥は、グロボトリアオシルセラミドおよび関連するスフィンゴ糖脂質の、心臓、腎臓、皮膚およびその他の組織内での蓄積をひき起こす。
【0039】
「非定型ファブリー病」という用語は、α−GalA欠損症の主として心臓での徴候、すなわち心臓特に左心室の有意な肥大につながる心筋細胞中の漸進的なグロボトリアオシルセラミドの蓄積を示す患者を意味する。
【0040】
「ファブリー病患者」とは、以下で定義されているような変異α−ガラクトシダーゼAに起因してファブリー病を患うと診断された個体を意味する。
【0041】
ヒトα−ガラクトシダーゼAとは、配列番号2に記されているアミノ配列を有するヒトGla遺伝子によってコードされた酵素を意味する。ヒトα−GalA酵素は429個のアミノ酸からなり、GenBank登録番号U78027にある。
【0042】
本明細書で使用される「変異型a−GalA」という用語は、酵素がER内で通常存在する条件下でその未変性立体構造を達成できなくする変異を有するa−GalAを意味する。この立体構造が達成できない場合、結果として酵素は、タンパク質輸送系内のその正常な経路を通してリソソームまで輸送されるのではなくむしろ分解させられる。この用語は同様に、酵素活性の減少またはより急速な代謝回転を結果としてもたらすその他のα−GalA変異をも包含する。
【0043】
ファブリー病に結びつけられる例示的なα−GalA変異としては、R301Q、L166V、A156V、G272SおよびM296Iが含まれる。
【0044】
本明細書中で使用される「特異的薬理シャペロン」(「SPC」)または「薬理シャペロン」という用語は、1つのタンパク質に特異的に結合し、(i)タンパク質の安定した分子立体構造の形成を増強する;(ii)ERから別の細胞位置好ましくは未変性細胞位置までの輸送を誘発する、すなわちタンパク質のER関連分解を防止する;(iii)誤って折畳まれたタンパク質の凝集を防止する;および/または(iv)タンパク質に対し少なくとも部分的な野生型機能および/または活性を回復させるまたは増強させる、という効果のうちの1つ以上を有する、小分子、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物などを含めたあらゆる分子を意味する。例えばα−GalAに対し特異的に結合する化合物とは、包括的一群の関係するまたは無関係の酵素ではなくα−GalAに結合しそれに対してシャペロン効果を及ぼす化合物を意味する。本発明においてはSPCは可逆的競合阻害物質であってよい。以下では、本発明が企図しているいくつかの特異的薬理シャペロンについて記述する:
【0045】
1−デオキシガラクトノジリマイシンとは、以下の構造を有する化合物を意味する。
【化1】

【0046】
この用語は、遊離塩基と任意の塩形態の両方を含む。DGJの塩酸塩は塩酸ミガラスタット(Miglustat)として知られている。
【0047】
α−GalAについてのさらにその他のSPCは、Fanらに対する米国特許第6,274,597号明細書、6,774,135号明細書および6,599,919号明細書の中で記述されており、α−3,4−ジ−エピ−ホモノジリマイシン、4−エピ−ファゴミン、およびα−アロ−ホモノジリマイシン、N−メチル−デオキシガラクトノジリマイシン、β−1−C−ブチル−デオキシガラクトノジリマイシン、およびα−ガラクト−ホモノジリマイシン、カリステジンA、カリステジンB、N−メチル−カリステジンA、およびN−メチル−カリステジンBを含む。
【0048】
ファブリー病の「代理マーカー」または「代理臨床マーカー」というのは、ファブリー病に関連する(ただし健常な個体には関連しない)かつ単独でまたはファブリー病のその他の異常なマーカーまたは症候と組合せた形でファブリー病の信頼性の高い指標であるバイオマーカーの異常な存在、レベルの増大、異常な不在またはレベルの低下を意味する。
【0049】
限定的な意味のない例として、ファブリー病の代理マーカーには、細胞(例えば線維芽細胞)および組織中のリソソームα−GalA活性の減少;GL−3の細胞被着;ホモシステインおよび血管細胞粘着分子−1(VCAM−1)の血漿濃度の増加;心臓肥大(特に左心室の)、弁閉鎖不全および不整脈を導く心筋細胞および弁膜線維芽細胞内部のGL−3蓄積;タンパク尿;CTH、ラクトシルセラミド、セラミドなどの脂質の尿濃度の増加およびグルコシルセラミドおよびスフィンゴミエリンの尿濃度の減少(Fuller et al., Clinical Chemistry. 2005; 51: 688-694);糸球体上皮細胞内の積層封入体(ゼブラ小体)の存在;腎不全;発汗低下(これは高熱不耐性をひき起こす);角化血管腫の存在;および高頻度感音難聴、進行性難聴、突発性難聴、または耳鳴りなどの聴覚異常が含まれる。神経症状には、一過性脳虚血発作(TIA)または卒中;肢端強皮症(末端部のヒリヒリ感またはチクチク感)として表われる神経因性疼痛が含まれる。
【0050】
ファブリー病の特徴的マーカーは、男性のヘミ接合体と女性のヘテロ接合体(キャリヤ)において、同じ有病率で発生するが、女性の方が典型的に罹患の重症度が低い。
【0051】
その他の代理マーカーは、細胞内レベルで存在し(「細胞内代理マーカー」)、ファブリー患者由来の細胞内におけるERからリソソームへのα−GalAの異常輸送;エンドソーム経路を通した脂質の異常輸送;ERまたは細胞質ゾルにおいて誤って折畳まれた大量のα−GalAの存在;(ストレス関連マーカーの遺伝子および/またはタンパク質発現により判定した際の)α−GalAの毒性蓄積が起こす細胞ストレスの存在;エンドソームpHレベルの異常;細胞形態の異常;ユビキチン/プロテアソーム経路の抑制;およびユビキチン化タンパク質の量の増加を含む。
【0052】
「代理マーカーの改善」というのは、SPCを用いた治療の後の、ファブリー病を患っておらずしかもその代理マーカーの異常な存在、不在または量の変化を説明するその他の疾病を患っていない健常な個体と比べてファブリー病において異常に存在するか、異常に不在であるかまたは増加した量もしくは減少した量で存在する1つ以上の臨床的代理マーカーの改善、削減または増大の効果を意味する。
【0053】
「応答者」というのは、1つ以上の代理マーカーの改善および/または疾病の進行の改善または逆転を示す、ファブリー病に関連する疾病および付随するα−GalA変異の診断を受けここで請求されている方法にしたがって治療され監視される個体のことである。
【0054】
さらに、個体が応答者であるか否かの決定は、SPCを用いた治療に応答した変異型α−GalAタンパク質の細胞内輸送などを評価することによって、細胞内レベルで行なうことができる。ERからリソソームまでの輸送の回復は、応答を示す。個体が応答者であるか否かを決定するために査定され得るその他の細胞内評価には、上述の細胞内代理マーカーの改善が含まれる。
【0055】
具体的な一実施形態においては、本発明は、患者由来の白血球の中で決定されるα−GalA活性の約3倍増加を達成するためのDGJを用いた治療方法を提供する。さらなる実施形態においては、本発明は、例えば白血球中で測定されるα−GalA活性の少なくとも5倍増加、またはα−GalA活性の10倍増加、そして具体的実施形態ではα−GalA活性の15倍増加を達成するためのDGJを用いた治療方法を提供する。本発明は最低限、α−GalA活性の少なくとも2倍増加を提供する。
【0056】
同様にして、本発明は、ファブリー病患者由来の白血球内でα−GalA活性の正常範囲内までの増大の達成を提供しており、その他の治療的戦略を用いては達成されたことがなく前臨床データが予想できなかったと思われる結果がこれにあてはまる。具体的な実施形態においては、「正常範囲」というのは、The Metabolic & Molecular Bases of Inherited Disease, 8th Edition McGraw Hill, 2001)からのデータの中に記載されている通りの活性範囲である。
【0057】
「治療上有効な用量」および「有効量」という用語は、治療応答を得るのに充分である特異的薬理シャペロンの量を意味する。治療応答とは、前述の症候および代理臨床マーカーのいずれかの改善を含め、療法に対する有効な応答としてユーザー(例えば臨床医)が認識するあらゆる応答であってよい。治療応答とは、前述の症候および代理臨床マーカーのいずれかの改善を含め、療法に対する有効な応答としてユーザー(例えば臨床医)が認識するあらゆる応答であってよい。したがって治療応答は、一般的に、上述のもののような疾患または障害の1つ以上の症候またはマーカーの改善である。
【0058】
「薬学的に許容できる」という語句は、生理学的に許容可能であり、ヒトに投与された場合に典型的には、望ましくない反応を生成しない分子的実体および組成物を意味する。好ましくは、本明細書で使用されている「薬学的に許容できる」という用語は、連邦または州政府の規制機関により承認されていることまたは、動物、より詳細にはヒトにおける使用のために米国薬局方またはその他の一般的に認知された薬局方の中に列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、化合物を投与する場合に用いられる希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを意味する。かかる薬学的担体は、水および油などの無菌の液体であり得る。特に注射用溶液用の担体として、好ましくは、水または水溶液食塩溶液およびデキストロースおよびグリセロール水溶液が利用される。適切な薬学的担体は、"Remington's Pharmaceutical Sciences" by E.W. Martin, 18th Editionの中で記述されている。
【0059】
「約」および「およそ」という用語は、一般に、測定の性質または精度から許容可能な程度の測定数量についての誤差を意味する。典型的には、例示的な誤差の程度は所与の値または値範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、そしてより好ましくは5%以内である。本明細書中で示されている数値的数量は、特に明記しないかぎり近似であり、これは、明示的に記載されていない場合に「約」または「およそ」という用語が暗示され得る、ということを意味している。
【0060】
製剤および投与
SPCを全身に送達するために、任意の適切な医薬製剤を使用してよい。一部の実施形態においては、SPCは、可逆的競合阻害物質である。一実施形態において、阻害物質はイミノ糖例えばDGJであり、これは単剤療法として、好ましくは経口剤形で投与される。この実施形態においては、投薬計画が、治療対象の個体の血漿中で安定した定常状態レベルの化合物を提供するものでなくてはならない。これは、分割用量または制御放出型製剤を毎日投与することによってか、または持続放出剤形を、頻度を少なくして投与することによって得ることができる。
【0061】
製剤
SPCは、例えば錠剤、カプセルまたは液体の形での経口投与または注射用無菌水溶液の形での投与を含めたあらゆる投与経路に適した形で投与可能である。一部の実施形態においては、SPCは阻害物質好ましくはDGJ糖などの可逆的競合阻害物質である。化合物を経口投与向けに調合する場合、錠剤またはカプセルは、結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容できる賦形剤を用いて従来の手段により調製可能である。錠剤は、当該技術分野において周知の方法によりコーティングされてよい。
【0062】
具体的な一実施形態においては、DGJ−HClは、ステアリン酸マグネシウム(植物性)およびデンプン1500(25mgのDGJ/カプセル)と共に粉末充填された硬ゼラチンカプセルとして投与される。
【0063】
経口投与のための液体調製物は、例えば溶液、シロップまたは懸濁液などの形をとっていてもよいし、または使用前に水または別の適切なビヒクルと共に構成するための乾燥製品としての体裁をとっていてもよい。このような液体調製物は、懸濁剤(例えば水、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用油);乳化剤(例えばレシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えばアーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコールまたは分留植物油);および防腐剤(例えばメチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの薬学的に許容できる添加剤を用いて、従来の手段によって調製されてよい。調製物は同様に、適宜、緩衝塩、着香料、着色剤および甘味料を含有していてよい。経口投与向けの調製物は、セラミド特異的グルコシルトランスフェラーゼ阻害物質の制御放出または持続放出を提供するように適切に調合され得る。
【0064】
もう1つの具体的な実施形態においては、100mgのDGJを経口水溶液(約240ml)の形で投与する。
【0065】
非経口/注射用途に適したSPCの医薬製剤には一般に、無菌水溶液または分散剤、そして無菌注射溶液または分散剤の即時調製用の無菌粉末が含まれる。全てのケースにおいて、形態は無菌でなくてはならず、注射針を容易に通過する程度に流動的でなくてはならない。それは、製造および貯蔵条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用を受けないように保存されていなくてはならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物および植物油を含む溶媒または分散媒質であり得る。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散の場合には所要粒径の維持そして界面活性剤の使用などによって維持可能である。微生物の作用の予防は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸などといったさまざまな抗細菌および抗真菌剤により得ることができる。数多くのケースにおいて、例えば糖または塩化ナトリウムなどの等張剤を含み入れることが合理的である。注射用組成物の長時間吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンといった吸収を遅延させる作用物質を組成物中に使用することによって得ることができる。
【0066】
無菌注射溶液は、必要に応じて以上で列挙したその他の成分のさまざまなものと共に適切な溶媒中に所要量でSPCを取込み、その後ろ過または最終滅菌を行なうことによって調製される。一般に、分散剤は、以上に列挙したその他の所要成分および基本的分散媒質を含有する無菌ビヒクル中にさまざまな滅菌済み活性成分を取込むことによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、事前に無菌ろ過した溶液から、活性成分に任意の付加的な所望の成分が加わった粉末を生成する真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0067】
上述の製剤は、1つまたは複数の賦形剤を含有し得る。製剤中に含み入れてよい薬学的に許容できる賦形剤は、緩衝液例えばクエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、および重炭酸塩緩衝液、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質例えば血清アルブミン、コラーゲンおよびゼラチン;塩例えばEDTAまたはEGTAおよび塩化ナトリウム;リポソーム;ポリビニルピロリドン;糖例えばデキストラン、マンニトール、ソルビトール、およびグリセロール;プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(例えばPEG−4000、PEG−6000);グリセロール、グリシンまたはその他のアミノ酸および脂質である。製剤と共に使用するための緩衝系としては、クエン酸塩、酢酸塩、重炭酸塩、およびリン酸塩緩衝液が含まれる。リン酸塩緩衝液が好ましい実施形態である。
【0068】
製剤は同様に非イオン洗浄剤も含有できる。好ましい非イオン洗浄剤にはポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトンX−100、トリトンX−114、ノニデットP−40、オクチルα−グルコシド、オクチルβ−グルコシド、ブリッジ35、プルロニックおよびトゥイーン20が含まれる。
【0069】
投与
SPCの投与経路は、(好ましくは)経口であるかまたは、静脈内、皮下、動脈内、腹腔内、眼内、筋内、口腔、直腸、膣内、眼窩内、脳内、皮内、頭蓋内、髄腔内、心室内、鞘内、嚢内、関節包内、肺内、鼻腔内、経粘膜、経皮、または吸入を介したものであってよい。
【0070】
SPCの上述の非経口製剤の投与は、調製物の定期的なボーラス注入によるものであってよく、または、体外容器(例えば静注用バッグ)または体内容器(例えば生体侵食性移植片)からの静脈内または腹腔内投与によって投与されてよい。例えば、各々参照により本明細書に援用されている米国特許第4,407,957号明細書および同第5,798,113号明細書を参照のこと。肺内送達の方法および器具は、例えば各々参照により本明細書に援用されている米国特許第5,654,007号明細書、同第5,780,014号明細書および同第5,814,607号明細書の中に記載されている。その他の有用な非経口送達系としては、エチレン酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な輸液系、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、針送達型注射、無針注射、ネブライザ、エアロゾル化装置、電気穿孔、および経皮パッチが含まれる。無針注射装置は、参照により本明細書に援用されている米国特許第5,879,327号明細書;同第5,520,639号明細書;同第5,846,233号明細書および同第5,704,911号明細書の中に記載されている。上述の製剤のいずれもこれらの方法を用いて投与可能である。
【0071】
さらに、詰め替え可能なペン型注射器および無針注射装置などの患者に便利なように設計されたさまざまな装置を本明細書中で論述されている本発明の製剤について使用してよい。
【0072】
投薬量
当業者であれば、本発明の方法において使用されている化合物の有効量は、日常的実験により判定され得るが、0.01〜100μMの間、好ましくは0.01〜10μMの間、最も好ましくは0.05〜1μMの間の血清レベルを得るための量になるものと予想される、ということを理解する。マウスにおける臨床試験および前臨床試験により、DGJの薬理学的効果(酵素活性の増強)が、およそ0.4μMの血漿濃度で見られるということが示唆されている。
【0073】
SPCの有効用量は1日体重1kgあたり0.5〜1000mgの間であると予想されている。SPCがDGJである具体的実施形態においては、用量は1日あたり約10〜600mg、より具体的には25〜300mg、より具体的には50〜150mg/日である。
【0074】
詳細な実施形態においては、DGJは、25mg1日2回、100mg1日2回または2501日2回で投与される。複数回用量第I相試験からのデータは、50mg1日2回の投薬で0.4μMのトラフ濃度が得られることを示している。ファブリー病患者についての第II相試験からのデータは、評価された最低用量(25mg1日2回)での酵素活性の増加を実証した。
【0075】
代理マーカーを用いたファブリー病治療の監視
本発明は同様に、特異的薬理シャペロンを用いたファブリー病患者の治療を監視する方法も提供している。具体的には、疾患の進行およびDGJでの治療に対するその応答を評価するためにさまざまな検定が利用される。特に、さまざまな全身および細胞内マーカーを検定することができる。本発明の監視態様は、さまざまな細胞物質の侵襲的測定および非侵襲的測定の両方を包含している。
【0076】
グロボトリアオシルセラミドの蓄積
ファブリー病に罹患したヒトの血漿および尿中のグロボトリアオシルセラミド(GBまたはGL−3)濃度を測定する方法が、Boscaro et al., Rapid Commun Mass Spectrom. 2002;16(16):1507-14の中に記載されている。この参考文献では、分析は、フローインジェクション分析−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法(FIA−ESI−MS/MS)を用いて実施される。
【0077】
ファブリー病患者の皮膚内に蓄積されたGL−3の免疫電子顕微鏡による検出が、Kanekura et al., Br J Dermatol. 2005;153(3):544-8の中に最近記載された。この方法は、GL−3のリソソーム蓄積を検出するのに充分な感度を示す。皮膚生検は、皮膚から試料層を取り出す「パンチ」装置を使用することによって採取することができる。
【0078】
腎生検は、超音波、X線またはCTスキャンによる誘導を用いて実施される。一部の状況下では、生検は、頸静脈の1つに生検カテーテルを通すことにより実施され、これは経頸静脈生検と呼ばれる。腎臓内、具体的には血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、メサンギウム細胞および間質細胞、有足細胞および遠位尿細管上皮細胞を含めた全ての腎細胞型におけるGL−3蓄積が、Thurburg et al., Kidney Int. 2002;62(6):1933-46.の中に記載されている。腎臓生検の超構造研究(電子顕微鏡)によって、全タイプの腎臓細胞の細胞質内の典型的封入体を明らかにすることができる(Sessa et al., J Inherit Metab Dis. 2001; 24 Suppl 2:66-70)。細胞は、35〜50Aの周期性を伴う明暗層の同心的薄層形成(「シマウマ」または「たまねぎの皮」の外観)によって特徴づけされる。
【0079】
腎臓機能は、確立した方法にしたがって糸球体ろ過速度(ml/分)を決定することによっておよび血清クレアチンレベルを査定することによって査定可能である。その他の腎臓査定としては、24時間のタンパク質排泄、尿中タンパク電気泳動、総タンパク量、微量アルブミン、尿中ベータ−2−マイクログロブリン力価が含まれる。GL−3堆積物およびタンパク尿の減少が、腎臓の健常性の直接的な測定値である。
【0080】
近年、大気圧光イオン化質量分析法(APPI−MS)が、直接注射および液体クロマトグラフィ(LC)との結合の両方の場合に、GL−3分子種の分析用として効率の良い方法であることが示された。この技術は、ファブリー病患者から単離した生体試料からの多数の種の検出を可能にした(Delobel et al., J Mass Spectrom. 2005 Nov 14; [Epub ahead of print][印刷前電子出版])。
【0081】
α−ガラクトシダーゼ活性
上述の通り、α−GalA活性の非侵襲的査定を、血液白血球中または培養された線維芽細胞中で測定することができる。かかる検定には典型的に、患者からの血液白血球の抽出、細胞の溶解そして4−メチルウンベリフェラルアルファD−ガラクトシドおよび/またはN−アセチルガラクトースアミンなどの酵素基質の添加時点での溶解物中の活性の決定が関与する(米国特許第6,274,597号明細書参照)。
【0082】
血液および血漿中のα−ガラクトシダーゼの濃度を決定するためのα−GalA活性およびタンパク質の測定用の2つの高感度免疫検定が、Fuller et al., Clin Chem. 2004;50(11):1979-85中に記載されている。
【0083】
本発明によると、α−GalA活性の少なくとも2倍増加、そして一部のケースではα−GalA活性の少なくとも3倍増加、少なくとも5倍、最高10倍までの増加、そして一部の実施形態では15倍増加を達成するように投薬量を設定することが可能である。これらの結果は、白血球で観察できる。
【0084】
別の実施形態においては、本発明は、ファブリー病患者におけるα−GalA活性の正常なレベルを達成するべくDGJの投薬量を設定することを提供している。
【0085】
心臓の評価
α−GalA活性の増加は、少なくとも心臓疾患患者のサブセットにおいて心臓疾患を監視するかまたは検出する役割を果たし得る。心臓細胞内のGL−3の評価は、心内膜心筋生検を通して達成できる。これは、心筋組織の小片を採取するために生検鉗子(端部に把持装置を備えた小さなカテーテル)を使用することが関与する侵襲的処置である。
【0086】
核周辺空胞内に存在するGL−3は、酸性染色液で陽性に染色される。さらに、生検の組織学的検査は、透過電子顕微鏡法を用いて心内膜の肥厚を確認し、心室質量を測定し、または肥大性心筋繊維の存在を判定することにより行なうことができる。
【0087】
さらに、総頸動脈および橈骨動脈の直径、内膜−中膜厚み(IMT)および伸展性が、高解像度エコートラッキングシステムおよび圧平眼圧測定を用いて査定された。Boutouyrie et al., Acta Paediatr Suppl. 2002;91(439):62-6。心筋細胞は同様に、GL−3の蓄積についても検査される。MRIまたはドップラー心エコー検査法を用いて、巨視的心臓形態を査定することができる。心臓機能は、例えば左心室駆出分画を決定することおよび心電図を用いることによって査定することができる。
【0088】
神経因性疼痛/末梢神経障害
末端部の疼痛は、患者に対して行なわれる主観テストを用いて査定できる。さらに、神経障害を評価するためには定量的官能検査(CASE試験)を使用することができる。CASE試験は、冷たさ、暖かさまたは振動の感覚を感じた時点で直ちにボタンを押すよう患者に求める生物物理学的技術である。これらの刺激は、手または足の皮膚に置かれた電極によって送達される。
【0089】
脳血管
卒中および高血圧に加えて、その他のファブリー関連の脳血管徴候および関連する症候としては、片側不全麻痺、めまい、複視;発作;脳底動脈虚血および動脈瘤;内耳迷路障害または脳内出血が含まれ得る。
【0090】
神経系
ファブリー病を患う男性および女性の患者には、有意な加齢に関連した大脳白質病巣(WML)を見出すことができる。神経学的効果の評価は、例えば定量的発汗刺激性軸索反射試験(QSART)を用いて査定できる。QSARTは、自律機能の日常的試験およびファブリー病において見られるような遠位細径線維神経障害における高感度試験である。
【0091】
発汗低下/発汗減少
ファブリー病患者における発汗障害および高熱不耐性は、選択的な末梢神経損傷または汗腺をとり囲む小血管内の細胞質内脂質被着に原因があるとされてきた。
【0092】
Hilz et al. (Acta Paediatr Suppl. 2002;91(439):38-42)は、ファブリー病患者における温度知覚、振動知覚、発汗刺激性およびエクリン汗腺機能、および四肢および表皮血流および血管反応性の障害を査定するための方法について記述した。これらの方法には、熱誘発試験、定量的発汗刺激性軸索反射試験(QSART)および静脈閉塞プレチスモグラフィが含まれる。QSARTは3つの部分を有し、安静時皮膚温、安静時汗出力および刺激された発汗量を測定する。測定は典型的には腕、脚またはその両方で行なわれる。小さなプラスチック製カップが皮膚上に置かれ、温度と皮膚下の汗の量が測定される。発汗を刺激するために、皮膚を通して汗腺まで電気的に化学物質が送達されるが、患者は暖かさしか感じない。神経および汗腺が正しく機能しているか否かを判定するべくデータを分析するのにコンピュータが使用される。
【0093】
さらに、涙液および唾液の減少も、約40%のファブリー病患者にみられる。
【0094】
温度不耐性
高熱不耐性に加えて、小血管壁、神経周囲細胞および無髄神経細胞または有髄神経細胞内に脂質が被着した結果、細径線維神経障害が起こるために低温および熱感受性が発生することが多い。
【0095】
眼内混濁
ファブリー病患者は、ほぼ例外なく、渦巻き状の角膜混濁、水晶体混濁および結膜と網膜の血管病変を示す。角膜混濁は、細隙灯顕微鏡検査を用いて見ることができる。ファブリー病患者には、(時としてプロペラ状に分布した)水晶体内のクリーム色の前嚢被着および(ファブリー白内障と呼ばれる)水晶体後面上の白っぽい粒状スポーク様被着といった2つのタイプの水晶体混濁が指摘されてきた。
【0096】
聴力損失
従来の聴力検査、鼓膜聴力検査、ABR聴力検査および耳音響放射を用いた蝸牛機能を評価するための非侵襲性方法が、Germain et al., BMC Med Genet. 2002;3(1):10)の中に記載されている。
【0097】
胃腸障害
胃腸症候は、腸間膜血管および自律神経節内のスフィンゴ糖脂質付着の結果発生し得る。症候には、食後鼓腸;腹部のけいれんおよび疼痛;早期満腹感;下痢;便秘;吐き気;嘔吐が含まれる。
【0098】
その他の代理マーカー
ファブリー病のその他のマーカーには、GL−3の蓄積に起因するリンパ浮腫(末端部の膨れ)が含まれる。さらに、ファブリー病患者には拡張期血圧の有意な減少が存在することが最近になって発見されており、これにより運動耐容の説明がつくかもしれない(Bierer et al., Respiration. 2005;72(5):504-11)。
【0099】
これらのマーカーは、治療前にそれらが異常であると識別された場合にのみ治療を監視するために使用可能であるということを理解すべきである。さらに、マーカーの異常な上昇が、ファブリー病の存在と相関関係づけされ、腎臓疾患またはその他の脳血管疾患などのその他の原因または合併症に起因しないということも認識されている。
【0100】
細胞内マーカーを検出するための分子生物学監視検定
特異的薬理シャペロンを用いたファブリー病の治療の監視は、上述の全身的または巨視的レベルに加えて細胞内レベルで行なうことができる。例えば、ゴルジ複合体への脂質のエンドソーム−リソソーム膜輸送の障害が、リソソーム蓄積症の特徴である(Sillence et al., J Lipid Res. 2002;43(11):1837-45)。したがって、ファブリー病治療の1つの監視方法は、標識された脂質(BODIPY−コレステロール)を有する患者由来の細胞に接触し、エンドソーム構造内でのその輸送を監視することにある。例えばエンドソーム構造内の病的蓄積は、その患者が治療にうまく応答していないことの指標であると考えられる。
【0101】
一例として、リソソームおよびエンドソーム内のpH範囲を測定するために、細胞により取り込まれるpH感応性蛍光プローブを使用することができる(すなわち、フルオレセインはpH5で赤色であり、5.5〜6.5で青色乃至緑色である)。リソソームの形態およびpHが、野生型細胞とシャペロン治療された患者および未治療の患者の細胞において比較される。この検定は、pH感受性を判定するために平板読取り装置検定と並行して実行できる。例えば、BODIPY−LacCerは、正常細胞中ではゴルジまで輸送されるが、脂質蓄積障害では細胞のリソソームに蓄積する。BODIPY−LacCerは、膜内の濃度に応じて緑色または赤色の蛍光を発し、リソソーム内の緑色/赤色比を用いて濃度変化を測定することができる。化合物で処理されたおよび未処理の生きた健常な細胞および患者の細胞がBODIPY−LacCerでインキュベートされ、FACSおよび/または共焦点顕微鏡で赤色/緑色比を測定することができ、共焦点顕微鏡を用いて染色パターン(リソソーム対ゴルジ)を決定することができる。
【0102】
輸送は、pH勾配に沿って細胞内で発生し(すなわちERのpH約7、ゴルジのpH約6.2〜7.0、トランスゴルジ網のpH約6.0、早期および後期エンドソームのpH約6.5、リソソームのpH約4.5)、ファブリー細胞などの輸送欠陥を有する細胞内では内腔およびエンドソームpHが分断される。したがって、輸送に対するpHのプラス効果に相関された場合、野生型細胞、SPC治療を受けた患者および未治療の患者の細胞におけるpH感受性を判定するための検定を用いて、ファブリー病患者における輸送の回復を監視することができる。患者の細胞のpH変化に対する感受性がさらに強い場合には、細胞pH感受性を低減させ、リソソームの形態または機能を回復させ、またより一般的には正常な輸送を回復させるSPCについてのスクリーニング検定を作り出すことが可能となる。
【0103】
さらに、輸送欠陥の軽減は、Lyso−Tracker(登録商標)などのリソソームマーカーでの欠損酵素(α−GalA)の同時局在化を判定することにより分子レベルで査定可能である。リソソーム内のα−GalAの局在化は、ERからリソソームまでの輸送が特異的薬理シャペロンを用いた治療により回復することの証拠である。簡単に言うと、正常な細胞およびSPCで治療されたおよび未治療の患者の細胞が酵素およびエンドソーム/リソソームマーカー(例えばRab7、Rab9、LAMP−1、LAMP−2、ジストロフィン関連タンパク質PAD)に対する一次抗体および蛍光タグ付けされた二次抗体と共に固定され染色される。酵素およびその他のエンドサイトーシス経路マーカーの濃度に起因する蛍光の量を定量化するためにFACSおよび/または共焦点顕微鏡が使用され、染色パターンの変化を判定するために共焦点顕微鏡を用いることができる。さらに、エンドグリコシダーゼH処理の組合わされたパルス−チェイス代謝標識などの従来の生化学方法。Endo Hは、ERグリコシル化を獲得した(高マンノースN−連結)、すなわちERに局在化されているタンパク質のみを分割し、ER外でゴルジまでそれを行ないゴルジ内で付加的なグリコシル化を獲得したタンパク質を分割しない。したがって、Endo H感受性α−GalAのレベルが高くなればなるほど、ER内のタンパク質の蓄積が増大する。α−GalAがゴルジ内へそれを行なった場合、全てのN連結糖が分割されることから、タンパク質がゴルジから退出したか否かを確認するためにグリコシダーゼPNGアーゼFを使用することができる。
【0104】
ERストレス。ファブリー病患者における誤って折畳まれたα−GalAなどのER細胞内の誤って折畳まれたタンパク質の毒性蓄積は、ERストレスをもたらすことが多い。これにより、細胞ホメオスタシスの分断を解消しようと試みる細胞ストレス応答が誘発されることになる。したがって、特異的薬理シャペロンでの治療の後の患者におけるERストレスのマーカーを測定することで、治療の効果を監視する別の方法が提供される。かかるマーカーには、BiP、IRE1、PERK/ATF4、ATF6、XBP1(X−box結合因子1)およびJNK(c−Jun N末端キナーゼ)を含む、折畳まれていないタンパク質の応答と結びつけられる遺伝子およびタンパク質が含まれる。ERストレスを査定するための1つの方法は、野生型細胞とファブリー病患者細胞との間と同様、SPC治療を受けた細胞と未治療の細胞との間の発現レベルを比較することにある。対照として、ERストレス誘発物質(例えばER内の折畳まれていないタンパク質のN−グリコシル化および蓄積の阻害ためのツニカマイシン、ラクタシスチンまたはH)およびストレス緩和剤(例えばタンパク質合成を阻害するためのシクロヘキサミド)を使用することができる。
【0105】
ERストレス応答を監視するために企図されている別の方法は、遺伝子チップ解析を介したものである。例えばさまざまなストレス遺伝子を伴う遺伝子チップを用いて、ERストレス応答のタイプ(早期、後期、アポトーシスなど)および発現レベルを測定することができる。一例として、HG−U95Aアレイを使用することができる(Affymetrix Inc.)。
【0106】
最後に、長期にわたるERストレスが、ER内の折畳まれていないタンパク質のレベルおよび結果としてのストレスレベルに応じて、アポトーシスおよび細胞死をもたらし得ることから、細胞は多少の差こそあれ、ツニカマイシンまたはプロテアソーム阻害物質などのERストレス誘発物質に対する感受性を有する。ストレス誘発物質に対する細胞の感受性が高くなればなるほど、観察されるアポトーシスまたは死細胞の数は多くなる。アポトーシスは、カスパーゼ3(アポトーシスの早期指標)について蛍光基質類似体、FACS、共焦点顕微鏡を使用して、かつ/または蛍光平板読取り装置(ハイスループット検定のためには96ウェルのフォーマット)を用いてアポトーシスまたは細胞死について陽性の細胞の百分率を決定すること(FACSおよび/または共焦点顕微鏡検査)を用いて測定でき、そうでなければ蛍光平板読取り装置で96ウェルのフォーマットでのタンパク質濃度との関係において蛍光強度を測定することができる。
【0107】
ER中の毒性タンパク質蓄積の結果としてもたらされる細胞ストレスに対する別の応答は、ユビキチン/プロテアソーム経路の抑制である。これにより、エンドサイトーシス経路は全体的に破壊される(Rocca et al., Molecular Biology of the Cell. 2001; 12: 1293-1301)。誤って折畳まれたタンパク質の蓄積は時として、ポリユビキチンの量の増加と相関される(Lowe et al., Neuropathol Appl Neurobiol. 1990; 16: 281-91)。
【0108】
プロテオソーム機能およびユビキチン化は、日常的検定を用いて査定できる。例えば、生きた動物における26Sプロテアソーム機能のイメージングによる評価が、生物発光イメージング用のユビキチン−ルシフェラーゼリポータにより達成された(Luker et al., Nature Medicine. 2003. 9, 969-973)。プロテアソーム単離のためのキットは、例えばCalbiochem(Cat.No.539176)から市販されている。ユビキチン化は、免疫組織化学または免疫蛍光を用いて、形態学的試験によって検査可能である。例えば、健常な細胞およびSPCで治療されたおよび未治療の患者の細胞を、ユビキチン化されたタンパク質に対する一次抗体と共に固定および染色することができ、FACSおよび/または共焦点顕微鏡検査による二次抗体の蛍光検出を用いて、ユビキチン化されたタンパク質レベルの変化を判定する。
【0109】
ユビキチン化されたタンパク質を検出するための別の検定は、AlphaScreen(商標)(Perkin−Elmer)である。このモデルでは、ビオチン−ユビキチン(bio−Ub)を用いて、GST−UbcH5a融合タンパク質のGST部分がユビキチン化される。ATPの存在下でのE1によるユビキチン活性化の後、bio−UbがUbcH5aに移送される。この反応において、UbcH5aはbio−Ubをそのタグ付けされたGST部分に移送するための担体として作用する。ビオチニル化されたユビキチン化された状態となったタンパク質は次に、抗−GSTアクセプタおよびストレプトアビジンにより捕捉される。ドナーはビーズを作り、結果としてシグナルを生成する。ユビキチン化が無い場合、いかなるシグナルも生成されない。
【0110】
最後に、ELISAサンドイッチ検定を用いて、変異型α−GalAを捕捉することができる。α−GalA(例えばウサギ)に対する一次抗体は表面に吸収され、酵素が、細胞溶解物または血清とのインキュベーション中に捕捉され、次に二次酵素結合検出を伴って、ユビキチン化タンパク質に対する抗体(例えばマウスまたはラット)を用いてユビキチン化酵素の量が検出かつ定量化される。あるいは、検定を用いて、細胞抽出物または血清中のマルチユビキチン化タンパク質の合計量を定量化することができると思われる。
【0111】
女性キャリヤ
一部の女性キャリヤは、無症候状態にとどまり、正常なα−GalA濃度を有する一方、一部は、特に年令が高くなるにつれて軽度乃至重度の疾病の臨床症候を示す。この可変性は、一部には、女性の胚の一部のまたは全ての細胞中の1個のX染色体の不活性化の結果であると考えられている。11人の女性キャリヤについての一試験において、タンパク尿、肢端感覚異常および角化血管腫が疾病の最も一般的な症候であることが発見された(Guffon, Journal of Medical Genetics. 2003; 40: e38)。一部の患者は、めまい、腹痛、うつ病、運動/高熱不耐性、冷えまたは発熱および発汗、衰弱およびうつ病を含めた症候を示した。弁膜症および重度の肥大性心筋症が、40歳代、50歳代または60歳代で発生し、患者のうち2人が、移植を要する末期的腎不全を示した。一人の女性は、内嚢視床卒中を有し、肺合併症(1人において慢性閉塞性気管支肺症および肺塞栓症)も2人の患者において記録された。
【0112】
以上のことから、本発明の方法は、女性キャリヤの治療を開始する場合にも利用可能である。
【0113】
併用療法
本発明の治療的監視は同様に、DGJおよびERTまたは遺伝子療法の組合せを用いた患者の治療の後にも適用可能である。このような併用療法は、同一所有者の米国特許出願公開第2004/0180419号明細書(出願番号第10/771,236号、および第2004/0219132号明細書(出願番号第10/781,356号)の中に記載されている。両方の出願共、その全体が参照により本明細書に援用されている。
【実施例】
【0114】
本発明は、以下で提示する実施例を用いて詳細に記述される。かかる実施例の使用は、例示にすぎず、本発明またはいずれかの例示された用語の範囲および意味を決して限定するものではない。同様にして、本発明は、本明細書中に記載されているいずれかの特定の好ましい実施形態に限定されるわけではない。実際、本明細書を読んだ時点で、当業者にとっては、本発明の数多くの修正および変形形態が明らかになる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の文言ならびに特許請求の範囲の権利対象である等価物の全範囲によってのみ限定されるものである。
【0115】
実施例:内因性酵素が欠損したバックグラウンド内でヒト変異型α−GalAを発現する遺伝子導入マウスに対するDGJの投与
α−GalAノックアウトバックグラウンド(TgM/KOマウス)内でヒト変異型α−GalA(R301Q)のみを発現する遺伝子導入マウスを確立し、評価した。この実施例は、α−GalAのミスフォールディングをひき起こすミスセンス変異に特異的である、ファブリー病用の薬理シャペロン療法を試験し評価するための生化学モデルとして役立つ。
【0116】
方法
マウス
ファブリーR301QTg/KOマウスは、ロバート・デスニック(Robert Desnick)博士から贈呈されたものである。雄のC57BL/6マウスを、Taconic Farms(Germantown, NY)から購入し、ケージ1個あたりマウス4匹の割合でステンレス製ケージの中に収容した。全ての試験は8週齢で行ない、IACUC指針を厳守して実施した。
【0117】
薬物投与
α−GalA検定用として、10匹の雄C57BL/6マウスからなる4つのグループに、28日間にわたり1日体重1kgあたり、0、1、10または100mgのIFG HClを飲料水に入れて投薬した。GL−3検定のためには、6〜7匹の雄R301QTg/KOマウスからなる2つのグループに、28日間にわたり経口で毎日0または30mg/kgのDGJ HClを投薬した。投薬後、指示された組織を採取し、以下に記載する通りに処理した。
【0118】
酵素活性検定
投薬の後、指示された組織を採取し、凍結させた。検定緩衝液中で約50mgの組織を均質化することによって、組織溶解物を調製した。2.5μLの溶解物を、17.5μLの検定緩衝液および50μLのそれぞれの基質溶液(以上の項で詳述されたものと同じ)と組合せた。その後反応混合物を1時間37℃でインキュベートした。その後、70μLの停止溶液(0.4Mのグリシン、pH10.8)を添加し、355nmの励起および460nmの発光でVictor平板読取り装置上で蛍光を読取った。溶解物中の酵素活性からバックグラウンドを減算し、MicroBCAタンパク質検定キット(Pierce)を用いてタンパク質濃度を正規化した。nモル/mgタンパク質/時として表現された絶対酵素活性への蛍光データの変換のために4−MU標準曲線を(以上の項で詳述されたものと同様に)実行するかまたはさらに未処置活性の%に正規化した。
【0119】
マウス組織からのGL−3分析
組織試料を、血液を除去するように洗浄し、秤量し、FastPrep(登録商標)系中で溶媒系と均質化した。ホモジネートを次に、C18カートリッジ上での固相抽出を用いて抽出した。溶離液を蒸発させ、LC/MS系への注入に先立ち再構成させた。9個のGL3イソ型を、ポジティブESI−MS/MSを用いて測定した。LC分離をZorbax C18カラム上で達成した。
【0120】
結果
酵素活性
雄のR301Q Tg/KOマウスに対し毎日DGJ HCl(30mg/kg;4週間)を経口強制投与することにより、心臓、腎臓、皮膚、肝臓および脾臓組織内で変異型GLA活性が有意な形で(p<0.05、t−検定対未処置)増大する(それぞれ、11±0.1、5.5±0.3、6.2±0.7、3±0.02および5±0.1倍;各組織についてn=6〜7匹のマウス)。データは2つの別々の測定を表わしている。2つの類似した実験を、DGJ HClの経口投与を受けた(飲料水中30mg/kg/日;4週間)雄および雌のR301Q Tg/KOマウスにおいて実施し、処置された全ての組織において変異型GLA活性の同等の増加が観察された。
【0121】
組織GL−3
雄のR301Q Tg/KOマウスに対して毎日DGJ HCl(30mg/kg;4週間)を経口強制投与することにより、皮膚および心臓内で、GL−3基質レベル(LC−MS/MSで測定)が有意な形で減少する。処置されたR301Q Tg/KOマウスの皮膚組織内にDGJ HClを毎日投与した後、GL−3レベルは11分の5まで有意に減少した(p<0.05;1グループあたりn=6〜7匹のマウス)。処置されたR301Q Tg/KOマウスの心臓組織内にDGJ HClを毎日投与した後、GL−3レベルは8分の5まで有意に減少した(p<0.01;1グループあたりn=6〜7匹のマウス)。腎臓組織中でもGL−3レベルを分析し、これは減少傾向を示したものの、統計的有意性には至らなかった。
【0122】
論述
上述の知見は、ファブリー病に罹患した主要組織内における薬理シャペロンでの治療に応答した、生体内基質クリアランスの最初の証拠であることから、有意義である。
【0123】
上述の通り、ファブリー病のための唯一承認された治療は、酵素補充療法である。最近になって、Fabrazyme(登録商標)(7年)(Askari et al.、予稿原稿提出済み)により長期間ERT療法を受けて死亡したファブリー病患者に由来する心臓、腎臓、脳(海馬傍回)、腸、副腎、大動脈、皮膚、肝臓および脾臓の中にGL−3が存続していることが実証された。この患者は、血管内皮細胞内にGL−3リソソーム封入を有していなかったが、全ての器官からの細胞の細胞膜および細胞質の中に、GL−3免疫反応性が観察された。腎臓の血管内皮細胞および線維芽細胞内には、GL−3がリソソームマーカー、ERマーカーおよび核マーカーと同時局在化し、これらのコンパートメントならびに細胞膜内における存在は、免疫金電子顕微鏡検査で確認された。7年間にわたりERTを受けた別のファブリー病患者に由来する培養された皮膚の線維芽細胞も類似した知見を示した。3人の罹患していない対照に由来する組織は、IHCおよびEMによってGL−3について一様に陰性であった。これらのデータは、薬理シャペロン療法が、ファブリー病患者における主要臓器内での基質のクリアランスに優れているかまたは比較的優れているということを示唆している。
【0124】
結論としては、ファブリー病における長年のERTの後でさえ、細胞および組織内にはかなりの量のGL−3免疫反応性が残存している。本発明者らは初めて、リソソーム外細胞領域内に蓄積されたグロボトリアオシルセラミドの存在を実証した。これらの知見は、疾病の機序を理解するために極めて重要であり、新規の特異的療法に対する応答を査定するためのグロボトリアオシルセラミドについての免疫染色の使用を示唆している。
【0125】
実施例2:安全性、耐容性および薬物動態を評価するための単回用量DGJの投与
この実施例は、健常なボランティアにおけるDGJの安全性、耐容性および薬物動態を評価するためのDGJの逐次漸増単回経口用量の無作為化された2重盲検プラセボ対照第I相試験について記述している。
【0126】
試験の設計および持続時間
この試験は、経口投与後のDGJの安全性、耐容性および薬物動態を評価するためのヒト初回投与、単一施設、第I相、無作為化、2重盲検、単一用量、プラセボ対照、逐次漸増用量試験であった。この試験では、連続するコホート間で最低1週間の安全性評価期間を設けて、用量上昇型投薬計画において、25、75、225および675mgのDGJまたはプラセボの経口単回用量投与を受けた8人の対象(6人が被験薬および2人がプラセボ)からなる4つのグループをテストした。次の用量レベル(すなわち次のグループ)への用量上昇は、先行する1つまたは複数のグループの安全性および耐容性の精査後に続行された。対象は、投薬の14時間前から投薬終了24時間後まで、治療施設内に収容された。食事を予定表により制御し、薬物投与後4時間は対象が自由に行動できるようにした。
【0127】
試験対象集団
対象は、一般社会人からなり、施設に収容されたことのない19才以上50才以下の年令の健常な非喫煙男性ボランティアであった。
【0128】
安全性および耐容性の査定
バイタルサイン、臨床検査パラメータ(血清化学、血液学および尿検査)、ECG、身体検査を評価することによっておよび治療期間中の有害事象を記録することによって安全性を判定した。
【0129】
薬物動態試料採取
投薬の前およびその後0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、5、6、8、10、12、16および24時間の時点でEDTAの入った血液収集試験管内に血液試料(各10mL)を収集した。血液試料を氷浴中で冷却し、可能なかぎり早く冷却下で遠心分離した。血漿試料を2つのアリコートに分割し、検定中20±10℃で保管した。試験の終了時に、全ての試料を分析のためMDS Pharma Services Analytical Laboratories(Lincoln)に移送した。以下の間隔にわたりDGJを分析するために各対象から完全な尿排出量を収集した:
・ −4〜0時間
・ 0〜4時間
・ 4〜8時間
・ 8〜12時間
・ 12〜24時間
【0130】
統計的分析
臨床検査評価、身体検査、有害事象、ECG監視およびバイタルサインの査定を含む安全性データを、治療グループおよび収集時点別にまとめた。定量的安全性データならびにベースラインとの差異について、記述統計データ(算術平均、標準偏差、中央値、最小および最大値)を計算した。定性的安全性データの分類のために、頻度計数値をコンパイルした。さらに、正常範囲外シフトを記載したシフト表を、臨床検査結果について提供した。身体検査の結果およびECGについても、正常−異常シフト表を提示した。
【0131】
MedDRA7.0バージョンディクショナリを用いて有害事象をコード化し、有害事象を報告している対象の数および報告された有害事象の数について治療別にまとめた。報告者用語(verbatim term)、コード化された用語(coded term)、治療グループ、重症度そして治療との関係を含めた対象別有害事象データリストを提供した。治療別に、併用薬および病歴を列挙した。
【0132】
記述統計データ(算術平均、標準偏差、変動係数、試料サイズ、最小値、最大値および中央値)を用いて、治療グループ別に薬物動態パラメータをまとめた。さらに、AUC0−t、AUCinfおよびCmaxについて幾何平均を計算した。
【0133】
結果
この試験中に、5人の対象(16%)が10件の治療関連有害事象(AE)を報告した。コホートB(75mg)内では2人の対象がAEを有し、コホートD(675mg)内では3人の対象がAEを有していた。コホートA(25mg)またはC(225mg)においては、どの対象もAEを示さなかった。用量レベルの増大に関係する傾向は全く観察されなかった。少なくとも10%の対象がAEを全く報告しなかった。
【0134】
AEは、5つの体組織、すなわち胃腸系(水様便)、筋骨格および結合組織(筋骨格剛性)、神経系(めまい、頭痛)、呼吸器、胸郭および縦隔系(咽頭痛)および皮膚および皮下系(発疹)において発生した。
【0135】
臨床検査において正常範囲からの偏差が投薬後に発生したが、いずれも臨床的に有意であるとは判断されなかった。試験全体を通して調査されたいずれのパラメータにも、臨床的に関連性ある平均データシフトは全く存在しなかった。いずれのバイタルサイン、ECGまたは身体検査パラメータにも、臨床的に関連性ある異常は全く発生しなかった。
【0136】
DGJは、用量が25mg以上675mg以下まで増加した場合でも、この健常な男性対象グループにとって安全でかつ充分な耐容性が示されるものと思われた。
【0137】
薬物動態評価
以下の表は、試験中に得られた薬物動態データをまとめている。
【0138】
【表1】

【0139】
DGJの薬物動態特性は全ての対象および全ての用量レベルにおいて充分に示された。平均して、全ての用量レベルについておよそ3時間でピーク濃度が発生した。全ての用量レベルにわたる平均半減期は、およそ3.0時間から4.6時間の範囲であった。DGJのAUCおよびCmaxは、用量を25mgから225mgまで増大させた場合に用量に比例して増加するように思われた。
【0140】
平均腎クリアランス値は、用量が25mgから675mgまで増大するにつれて5.90から7.66L/時までの範囲であった。尿中に排泄されたDGJの平均累積百分率は一般に、用量が25mgから75mgまで増大するにつれて増加し、225mgと675mgの用量レベルは同程度であった。
【0141】
実施例3:安全性、耐容性および薬物動態およびα−ガラクトシダーゼA酵素活性に対する影響を評価するための単回用量DGJの投与
この実施例は、健常なボランティアにおける安全性、耐容性、薬物動態およびα−ガラクトシダーゼA(α−GalA)酵素活性に対するDGJの影響を評価するためのDGJの1日2回の経口用量の無作為化された2重盲検プラセボ対照第Ib相試験について記述している。
【0142】
試験の設計および持続時間
この試験は、経口投与後の健常なボランティアにおけるDGJの経口投与後のDGJの安全性、耐容性、薬物動態およびα−GalA酵素活性に対する影響を評価するためのヒト初回投与、単一施設、第Ib相、無作為化、2重盲検、1日2回用量、プラセボ対照試験であった。この試験では、7日間の追訪を伴って連続7日間経口投与された、50または150mg1日2回の用量をDGJまたはプラセボを受けた8人の対象(6人が被験薬で2人がプラセボ)からなる2つのグループをテストした。対象は、投薬の14時間前から投薬終了24時間後まで、治療施設内に収容された。食事を予定表により制御し、薬物投与後4時間は対象が自由に行動できるようにした。
【0143】
薬物動態パラメータを1日目と7日目の血漿中DGJについて計算した。さらに、尿中に排泄された(投薬から12時間後)DGJの累積百分率を計算した。投薬開始前、そして試験開始後100時間、150時間そして336時間目にも、白血球(WBC)中のα−GalA活性を計算した。
【0144】
試験対象集団
対象は、一般社会人からなり、施設に収容されたことのない19才以上50才以下の年令の健常な非喫煙男性ボランティアであった。
【0145】
安全性および耐容性の査定
バイタルサイン、臨床検査パラメータ(血清化学、血液学および尿検査)、ECG、身体検査を評価することによっておよび治療期間中の有害事象を記録することによって安全性を判定した。
【0146】
薬物動態試料採取
投薬の前およびその後0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12時間の時点でEDTAの入った血液収集試験管内に血液試料(各10mL)を収集した。血液試料を氷浴中で冷却し、可能なかぎり早く冷却下で遠心分離した。血漿試料を2つのアリコートに分割し、検定中20±10℃で保管した。試験の終了時に、全ての試料を分析のためMDS Pharma Services Analytical Laboratories(Lincoln)に移送した。1日目と7日目にDGJ投与後の最初の12時間の腎クリアランスを判定するためにDGJを分析する目的で各対象から完全な尿排出量を収集した。
【0147】
WBCα−GalA酵素活性試料採取
投薬前およびその後100時間、150時間および336時間の時点で抽出されたEDTAおよびWBCを含有する血液収集試験管内に、血液試料(各10mL)を収集した。上述の通りに試料を処理し、Desnick, R.J. (ed) Enzyme therapy in genetic diseases. Vol 2. Alan R Liss, New York, pp 17-32.の中で記述されている通りに、WBCα−GalA酵素活性レベルを決定した。統計的分析。臨床検査評価、身体検査、有害事象、ECG監視およびバイタルサイン査定を含む安全性データを、治療グループおよび収集時点別にまとめた。定量的安全性データならびにベースラインとの差異について、記述統計データ(算術平均、標準偏差、中央値、最小および最大値)を計算した。定性的安全性データの分類のために、頻度計数値をコンパイルした。さらに、正常範囲外シフトを記載したシフト表を、臨床検査結果について提供した。身体検査の結果およびECGについても、正常−異常シフト表を提示した。
【0148】
MedDRA7.0バージョンディクショナリを用いて有害事象をコード化し、有害事象を報告している対象の数および報告された有害事象の数について治療別にまとめた。報告者用語、コード化された用語、治療グループ、重症度そして治療との関係を含めた対象別有害事象データリストを提供した。治療別に、併用薬および病歴を列挙した。
【0149】
記述統計データ(算術平均、標準偏差、変動係数、試料サイズ、最小値、最大値および中央値)を用いて、治療グループ別に薬物動態パラメータをまとめた。
【0150】
結果。プラセボで治療された対象はいずれもAEを有さず、50mg1日2回または150mg1日2回のDGJを受けたいかなる対象もAEを示さなかった。50mg1日2回および150mg1日2回で用量が投与された場合、健常な男性対象のこのグループにとって、DGJは安全で充分な耐容性があると思われた。
【0151】
臨床試験において正常範囲からの偏差が投薬後に発生したが、いずれも臨床的に有意であるとは判断されなかった。試験全体を通して調査されたいずれのパラメータにも、臨床的に関連性ある平均データシフトは全く存在しなかった。いずれのバイタルサイン、ECGまたは身体検査パラメータにも、臨床的に関連性ある異常は全く発生しなかった。
【0152】
薬物動態評価
以下の表は、試験中に得られた薬物動態データをまとめている。
【0153】
【表2】

【0154】
DGJの薬物動態特性は全ての対象および全ての用量レベルにおいて充分に示された。平均して、全ての用量レベルについておよそ3時間でピーク濃度が発生した。DGJのCmaxは、用量を50mgから150mgまで増大させた場合に用量に比例して増加した。
【0155】
平均除去半減期(t1/2)は、1日目の50mgと150mgの用量レベルにおいて同程度であった(2.5時間対2.4時間)。
【0156】
投薬後12時間の期間にわたって排泄されたDGJの平均百分率は、1日目でそれぞれ50mgおよび150mgの用量レベルで16%と42%であり、7日目にはそれぞれ48%と60%まで増大した。
【0157】
α−ガラクトシダーゼA(α−GalA)酵素活性
試験中に得たα−GalA酵素活性データは、図1に示されている。DGJは、50mg1日2回又は150mg1日2回の投薬量で対象におけるWBCα−GalA酵素活性を阻害しなかった。その上、DGJは、健常なボランティアにおけるWBCα−GalA活性増加の用量依存的傾向を作り出した。α−GalA酵素レベルは、プラセボ、50mg1日2回のDGJおよび150mg1日2回のDGJが投与された対象のWBCで測定した。プラセボは、WBCα−GalA酵素レベルに全く影響を及ぼさなかった。プラセボに応答した酵素レベルの変動は、臨床的に有意なものではなかった。50mg1日2回および150mg1日2回のDGJは共に、正規化されたWBCα−GalA酵素レベルを増加させた。50mg1日2回のDGJに応答して、WBCα−GalA酵素活性は、それぞれ投薬後100時間、150時間および336時間で投薬前レベルの120%、130%および145%まで増大した。150mg1日2回のDGJに応答して、WBCα−GalA酵素活性は、それぞれ投薬後100時間、150時間および336時間で、投薬前レベルの150%、185%および185%まで増大した。
【0158】
実施例4:ファブリー病患者に対するDGJの投与および治療応答の監視
この実施例は、α−Gal折畳み変異型を用いたファブリー病患者におけるDGJの無作為化盲検第II相試験および提案されている監視について記述している。
【0159】
登録患者
(遺伝子型によって確認された)α−GalA中の公知のミスセンス変異を有するファブリー病患者;最高6ヵ月間ERTを中止する意志のある、現在ERT(Fabrazyme(登録商標))を受けている患者;またはこれまでERT治療を受けたことのない新たに診断された患者。
【0160】
試験設計
2治療群設計を計画した。一方の治療群においては、適格な患者に対し、12週間(最高48週間まで延長)、1日おきに150mgのDGJ−HClを投与した。第2の治療群においては、25mg、100mgそして次に250mg1日2回の上昇用量を6週間にわたり投与し、その後、試験の残りの期間中1日50mgを投与した。
【0161】
監視
GL−3沈着物
ベースライン、3ヵ月および6ヵ月の時点で、皮膚、腎臓および心臓の生検を実施し、皮膚線維芽細胞、心筋細胞およびさまざまな腎細胞内のGL−3沈着物について評価する。GL−3のクリアランスが全ての細胞において観察されることが予想されている。従来のERTによる治療では心筋細胞または腎有足細胞または皮膚組織内のクリアランスは、示されなかった(ただし、ERT6ヵ月目および18ヵ月目での尿沈渣の変化は、酵素補充により腎組織内のスフィンゴ糖脂質の蓄積のクリアランスがあったことを示唆していた: Clin Chim Acta. 2005;360(1-2):103-7))。
【0162】
α−GalA活性
さらに、生検から得た分画された組織内および(ベースラインでおよび毎月収集される血液からの)血液白血球および血漿内で、α−GalA活性を査定する。DGJ治療は、白血球、線維芽細胞および血漿中で、ベースラインよりも約2倍〜約10倍、α−GalA活性を増大させるものと予想されている。同様に、ERT治療で実証されなかったα−GalA活性の増加が組織内で観察されることも予想されている。
【0163】
尿検査
α−GalAおよびGL−3についてベースラインおよび毎月、尿と尿沈渣を分析する。さらに、CTH、ラクトシルセラミド、セラミドなどのその他の脂質の異常な存在およびグルコシルセラミドおよびスフィンゴミエリンの異常な減少または不在も同様に評価される。
【0164】
腎疾患の状態を監視するためにアルブミン(タンパク尿)およびクレアチンを含めたタンパク質の存在についても、尿を分析する。DGJ治療はタンパク尿を減少させ、GL−3沈渣を減少させると予想されている。
【0165】
心臓解析
心臓形態(例えば左心室肥大)および心臓機能(例えばうっ血性心不全、虚血、梗塞、不整脈)を査定するために、上述の生検に加えて、ひずみ速度評価を伴うMRIおよび心エコー図を、ベースライン、3ヵ月目および6ヵ月目に実施する。その他の治療では、左心室肥大の直接的減少または左心室駆出の増大が実証されたことはない。(腎不全に関連する)高血圧が出血性脳卒中のリスクを増大し得ることから、高血圧も同様に評価した。
【0166】
あらゆる導通異常、不整脈、脚ブロックまたは頻脈または徐脈の改善を分析するため、ベースラインおよび診察毎に、心電図を実施する。以前の治療は、これらの症候を呈する患者において改善を示さなかった。
【0167】
腎臓解析
GL−3のクリアランスについて光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて、腎有足細胞を評価する。
【0168】
脳解析
虚血性卒中の原因となり得る虚血領域の削減について査定するため、ベースラインおよび試験の終了時点で、MRIおよびMRAを実施する。DGJによるGL−3集積の削減は、卒中の罹患率を低減させることが予想されている。補充酵素は、血液脳関門を横断できないことから、ERTで脳虚血の改善が達成されたことは全く無い。
【0169】
眼科
眼科検査は、白内障などの角膜および水晶体混濁の減少を査定するために実施される。
【0170】
神経因性疼痛
肢端感覚異常の減少を評価するために、ベースラインにおいておよび毎月の診察毎に患者に対し主観的な患者アンケート調査を行なう。これは、末梢神経細胞の微小血管系内のGL−3クリアランスの証拠であり得る。
【0171】
神経障害
末梢神経障害を評価するためには、定量的官能試験(CASE試験)を使用する。
【0172】
発汗減少
エクリン汗腺に連結されている小神経線維を査定する定量的発汗刺激性軸索反射試験(QSART)を用いて、汗腺を評価する。汗腺の改善は発汗増加と相関関係を有するはずであり、同様に、末梢神経細胞の微小血管系内のGL−3クリアランスの証拠でもあり得る。この分析は、ベースラインおよび3ヵ月目および6ヵ月目で実施される。
【0173】
結果
α−GalA活性
少なくとも12週間DGJで治療した最初の11人の患者から得られるデータは、DGJが、11人の患者のうちの10人においてファブリー病で欠損している酵素の活性の増加を導くということを示唆している(図2)。試験中、3人の患者は、試験全体を通して1日おきに150mgのDGJを受けた(図2では、白い正方形、三角形および菱形で表示されている)。試験中の8人の患者が、6週間にわたって25、100そして次に250mg1日2回の逐次漸増用量を受け、その後試験の残りの期間50mg/日を受けた(図2では、黒丸で表わされている)。表中の正常の百分率を計算する目的で、複数回用量第I相試験の15人の健常なボランティアの白血球中のα−GALのレベルの平均を使用し正常なα−GALのレベルを導出した。11人の患者は、10の異なる遺伝子変異を示し、ゼロから正常の30%までの範囲にあるα−GalAのベースラインレベルを有していた。
【0174】
GL−3レベル
腎臓のGL−3レベルは第三者専門機関によって電子顕微鏡検査法を用いて査定された(図3)。これまで2人の患者について入手されたデータは、12週間の治療の後1人の患者の腎臓の多数の細胞型においてGL−3の減少が見られることを示した(メサンギウム細胞および糸球体内皮および遠位尿細管の細胞)。2人目の患者は、24週間の治療後に同じ腎細胞型の中でGL−3レベルの減少を示したが、これらの減少は、患者のベースラインにおけるGL−3のレベルが比較的低いことから、それ単独で決定的なものではなかった。両方の患者共、間質毛細血管の細胞を含めたその他の腎細胞型の中のGL−3レベルの減少を示したが、これらの減少は有意なものではなかった。
【0175】
液体クロマトグラフィ質量分析法によって査定されるようなベースラインでのおよび治療後の尿および血漿GL−3レベルが、10人の患者について入手できた。大部分の患者は、治療の前後両方で正常かまたは正常に近い尿および血漿中GL−3レベルを有していた。ベースラインで高いレベルの尿または血漿中GL−3を有していたわずかな患者については、患者ごとの変動が大きいために、結果の解釈が困難であった。
【0176】
光学および電子顕微鏡法によって査定される通りのベースラインでのおよび治療後の皮膚GL−3レベルが、10人の患者について入手できた。7人の患者が、治療前後の両方において正常または正常に近い皮膚GL−3レベルを有していた。その他の3人の患者についての結果は、経時的な変動を伴って、一部の皮膚細胞型におけるGL−3の減少とその他の皮膚細胞型におけるGL−3の増加の証拠を示していたことから、解釈が困難であった。
【0177】
これらの試験における大部分の患者は、治療の前には正常または正常に近い心臓、腎臓および中枢神経系機能を有しており、12〜48週間の治療の後も臨床的に有意な変化は全く観察されなかった。
【0178】
より長い治療期間にわたる場合および/またはより重症であり治療前により高いGL−3蓄積を提示している患者の場合には、より顕著なGL−3の減少が明白になるものと予想される。
【0179】
論述
これらの結果は、シャペロン療法の有効性についての原理実証である。DGJは、α−GalAの活性を、従来の生体外および遺伝子導入動物試験から予測されたものに比べ罹患個体内で著しく高いレベルまで増大させることが示された。予想外に、6週間後に用量を最低用量(50mg/日)まで削減した場合でも酵素活性は高い状態にとどまっており、このことは、シャペロン療法の効能を実証している。
【0180】
重要なことに、シャペロンは小分子であることから、血液脳関門および腎臓などの器官をとり囲む関門などの内皮関門を容易に横断でき、結合組織に進入する。ERTでは、体外から投与された酵素がこれらの関門を貫通せず、したがって心臓内の心筋細胞、周皮細胞および血管平滑筋、腎有足細胞、周皮細胞、神経周膜または細動脈、組織球および線維芽細胞の筋層内のGL−3レベルに対しいかなる効果も及ぼさないことから、この事実はERTに比べて有意な改善である(Eng et al., Am J Hum Genet. 2001; 68(3): 711-722)。その上、上述した通り、近年になって、Fabrazyme(登録商標)での長期ERT療法(7年)を受けてきた死亡したファブリー病患者由来の心臓、腎臓、脳(海馬傍回)、腸、副腎、大動脈、皮膚、肝臓および脾臓内にGL−3が存続することが実証された(Askari et al.、予稿原稿提出済み)。
【0181】
本発明は、本明細書中に記載された具体的実施形態によってその範囲が限定されるものではない。実際、以上の記述および添付図面から当業者には、本明細書に記載されているものに加えて本発明のさまざまな修正が明らかになる。かかる修正は、添付の特許請求の範囲内に包含されるものである。
【0182】
本出願全体を通して特許、特許出願、公報、製品関連文書およびプロトコルが引用されているが、その開示は、あらゆる目的のために全体が本明細書に参照により援用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−ガラクトシダーゼAの特異的薬理シャペロンの投与後に、ファブリー病に関連する代理マーカーの改善が存在するか否かを判定するステップを含む、ファブリー病患者の治療方法。
【請求項2】
改善が患者が応答者であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
代理マーカーが全身性代理マーカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
マーカーが、細胞および組織内のリソソームα−ガラクトシダーゼA活性またはGL−3蓄積である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
代理マーカーが細胞内代理マーカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
細胞内代理マーカーが、ファブリー患者由来の細胞内におけるERからリソソームへのα−ガラクトシダーゼAの異常輸送;エンドソーム経路を通した細胞脂質の異常輸送;ERまたは細胞質ゾル内における誤って折畳まれた大量のα−ガラクトシダーゼAの存在;(ストレス関連マーカーの遺伝子および/またはタンパク質発現により判定した際の)α−ガラクトシダーゼAの毒性蓄積が起こす細胞ストレスの存在;エンドソームpHレベルの異常;細胞形態の異常;ユビキチン/プロテアソーム経路の抑制;およびユビキチン化タンパク質の量の増加からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
特異的薬理シャペロンがα−ガラクトシダーゼAの阻害物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
阻害物質が可逆的競合阻害物質である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
阻害物質が1−デオキシガラクトノジリマイシンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
α−ガラクトシダーゼAの特異的薬理シャペロン投与後のファブリー病患者の治療応答を監視する方法であって、患者に由来する細胞の細胞質染色パターンに対する効果を評価するステップを含み、健常な個体に由来する細胞内の染色パターンに類似する細胞内の染色パターンの検出が、ファブリー病を患う個体が応答者であることの標示である、方法。
【請求項11】
細胞質染色がリソソーム染色である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リソソーム染色がα−ガラクトシダーゼAの存在の検出である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
リソソーム染色がLAMP−1発現の検出である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細胞質染色がポリユビキチン化タンパク質の検出である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
特異的薬理シャペロンが、α−ガラクトシダーゼAの阻害物質である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
阻害物質が可逆的競合阻害物質である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
阻害物質が1−デオキシガラクトノジリマイシンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者が、女性のファブリー病キャリヤである、請求項1、2または11に記載の方法。
【請求項19】
必要としている個体の体内でα−ガラクトシダーゼAタンパク質の活性を増大させる方法において、タンパク質に結合する有効量の特異的薬理シャペロンを、個体の体内のタンパク質の活性を少なくとも約50%だけ増大させるのに有効な量で個体に投与するステップを含む方法。
【請求項20】
α−ガラクトシダーゼAタンパク質が野生型タンパク質である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
α−ガラクトシダーゼAタンパク質が酵素である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
酵素がリソソーム酵素である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
リソソーム酵素が野生型α−ガラクトシダーゼAタンパク質である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
特異的薬理シャペロンがα−ガラクトシダーゼAの阻害物質である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
阻害物質が可逆的競合阻害物質である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
阻害物質が1−デオキシガラクトノジリマイシンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1−デオキシガラクトノジリマイシンが、タンパク質の活性を少なくとも約50%増大させるのに有効な量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
1−デオキシガラクトノジリマイシンが、タンパク質の活性を少なくとも2倍(約100%)増大させるのに有効な量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
1−デオキシガラクトノジリマイシンが、タンパク質の活性を少なくとも約3倍増大させるのに有効な量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
1−デオキシガラクトノジリマイシンが、タンパク質の活性を少なくとも約10倍増大させるのに有効な量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
1−デオキシガラクトノジリマイシンが、タンパク質の活性を少なくとも約15倍増大させるのに有効な量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
個体が、野生型タンパク質に対してホモ接合性である、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
個体が、野生型タンパク質に対してヘテロ接合性であり、タンパク質をコードするその他の対立遺伝子についての変異遺伝子型を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
個体がファブリー病を患っている、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
α−ガラクトシダーゼA活性が少なくとも2倍増大する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
α−ガラクトシダーゼA活性が少なくとも3倍増大する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
α−ガラクトシダーゼA活性が少なくとも10倍増大する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
α−ガラクトシダーゼA活性が、正常範囲内まで増大する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
治療が必要な患者におけるファブリー病の治療方法であって、個体に対し有効量の1−デオキシガラクトノジリマイシンを投与するステップを含み、1−デオキシガラクトノジリマイシンが、患者の体内のα−ガラクトシダーゼAの活性を少なくとも約2倍増大させるのに有効な量でα−ガラクトシダーゼAに結合する、方法。
【請求項40】
α−ガラクトシダーゼAが少なくとも3倍増大する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
α−ガラクトシダーゼA活性が少なくとも10倍増大する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
α−ガラクトシダーゼA活性が、正常範囲内まで増大する、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
要治療患者におけるファブリー病の治療方法であって、個体に対し有効量の1−デオキシガラクトノジリマイシンを投与するステップを含み、1−デオキシガラクトノジリマイシンが組織グロボトリアオシルセラミドを削減する、方法。
【請求項44】
組織が皮膚、心臓または腎臓である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
グロボトリアオシルセラミド削減が少なくとも3分の2への削減である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
グロボトリアオシルセラミド削減が少なくとも2分の1への削減である、請求項43に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−523578(P2010−523578A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502218(P2010−502218)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/058668
【国際公開番号】WO2008/121826
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(507170099)アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】