説明

薬理学的に活性な薬剤としてのチエノピリジン

本発明は、癌、喘息、関節炎、糖尿病及び炎症の治療のための化合物及びその医薬的に許容できる塩並びにチエノピリジンの合成方法及びTNF-α活性の阻害方法を提供する。式(I)の化合物を提供する。
【化1】


(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、薬理学的に活性な薬剤として有用な新規のチエノピリジン及びその医薬的に許容できる塩、並びにそのプロドラッグに関する。本発明は、該化合物の合成方法をも提供し、かつ該化合物及び/又はそれらの塩の新しい及び/又は改良された抗炎症、抗関節炎、抗癌、抗糖尿病及びアデノシド(adenoside)拮抗活性に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ベンゼン/チオフェン核は、生物学的等価性の最も卓越した例の1つを表す。チオフェン成分の特有の配置は、薬物設計において有望な研究領域であり、選択の可能性のある領域であり、かつその親油性のため、ベンゼンの使用より優れていると考えられる。
ケトン又はアルデヒド、シアノアセタート及び元素イオウの多成分縮合からの多置換チオフェンの合成は、最初は1961年にGewaldらによって公表された。いくつかの特許が、チオフェンの合成及び分散染料としての技術的な重要性並びにそれらの合成繊維に関する適用について記載している。チオフェン由来の染料は、チオフェン環の固有特性としての色を深める効果等の多くの利点を有する。その小さい分子構造も良い染料能力をもたらす。染料及び導電性ポリマーとしてのそれらの工業用途の域を越えて、高度置換チオフェンは医薬産業における広範な可能性を示している。
上記以外に、鎮痛薬、抗炎症薬、抗癌薬及びCNS活性薬としてチオフェンのいくつかの誘導体が報告されている。これらの分子の基本的枠組みは種々の天然物に存在するのみならず、種々の生物学的標的において広範な阻害特性を示したチエノピリジン、チエノピリミジン、ピリドチエノピリミジン、イミダゾチエノピリミジンのようなより複雑な構造のための出発原料としても役立つ。チオフェンの産業上の利用可能性に加えて、自動コンビナトリアル合成の分野で大きな関心が高まっている。チオフェン調製のためのGewald合成法は非常に効率的であり、現代的方法に匹敵する。
6つの可能なチエノピリジン系(チエノ(x,y-z)ピリジン)が2つの群、すなわちキノリンの類似体とイソキノリンの類似体である群に分類される。最近、π電子過剰環とπ電子不足環が一緒に縮合している系の挙動の理論的関心のため、チエノピリジンについての関心が増加してきた。薬理学的に活性な物質の探索が、ベンゼン環がチオフェン核と置き換わっている種々のキノリン及びイソキノリンの類似体の合成をもたらした。それらのベンゼン対応物とは異なり、チエノピリジンは自然界に広く存在しない。[c]縮合系は、[b]縮合している系より塩基性が強い。
本発明は、抗炎症、抗関節炎及び細胞障害及び抗糖尿病活性のための新しい縮合チエノピリジン誘導体の合成及び生物学的細胞障害性スクリーニングを取り扱う。いくつかのチエノキノリンがアセチルコリンエステラーゼ阻害薬として報告されているが、我々が知っている限りでは、チエノピリジンベースの抗炎症薬、抗関節炎薬及び抗癌薬及び抗糖尿病薬を開発するための医薬化学の取り組みは為されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(本発明の目的)
本発明の主目的は、新しい及び/又は改良された治療活性を有する新規のチエノピリジン化合物を提供することである。
とりわけ、抗炎症活性、抗糖尿病活性、抗癌活性、抗関節炎活性及びアデノシド拮抗活性を有する新規のエノピリジン化合物を提供することが本発明のさらなる目的である。
炎症、糖尿病、癌、関節炎、及び喘息の治療用のチエノピリジンベースの薬剤を提供することが本発明の別の目的である。
炎症、糖尿病、癌、関節炎、及び喘息の治療に有用なチエノピリジン化合物又はその塩の合成方法を提供することが本発明の別の目的である。
本発明のさらに別の目的は、チエノピリジン若しくはその塩、又はそのプロドラッグを用いてTNF-α活性を阻害する方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、炎症、関節炎、癌、喘息及び糖尿病の診断、予防及び/又は治療に有用な新規のチエノピリジン及び/又はその塩、及び/又はそのプロドラッグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の記載)
本発明の上記及び他の目的は、下記式I
【0005】
【化1】

式I
【0006】
(式中、nは1、2、3又は4であり;R1及びR2は、CH3、アルキル及びアリールから成る群より独立に選択され;又はR1+R2が、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロアルキル、及び2より多くの炭素鎖のアルキルから選択され;Rは、アミン、置換アミン、アミノ酸、スルホンアミド、スルホニルアルキル、アルキル又はシクロアルキル、アリール、ヒドロキサマート、及びアミノヘテロ環成分から成る群より選択され;ここで、該ヘテロ環成分は、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ベンズイミダゾール、キナゾリン、キノリン、チオフェン、チエノピリミジン、チエノピリジン、インドール、ピロールアクリジン、及びベンゾフランから選択される)
の新規のチエノピリジン化合物及びその医薬的に許容できる塩又は誘導体を提供することによって達成される。
所望により、ヘテロ環成分が、-H、-(C1-C3)アルキル、-O(C1-C3)アルキル、F、-CF3、-NH2、-N(CH3)、-N(CH3)2、-SH、-SCH3、-SCH2CH3及びそのいずれかの組合せから選択される置換基を有してよい。
【0007】
さらなる実施形態では、本発明は、一般式Iの化合物(それらの立体異性形、多形、酸付加塩、塩基付加塩、及びそのプロドラッグを含めて)の異性体をも提供する。
さらに別の実施形態では、酸付加塩が、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、ナプテレン(napthelene)-2-安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、b-ヒドロキシ酪酸塩、ブチン-1-4-二酸塩、ヘキシン-1-4-二酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フメル酸塩(fumerate)、グリコール酸塩(glycollate)、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-ブロモフェニルスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩などから成る群より選択される。好ましい塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩及びシュウ酸塩である。
【0008】
本発明のさらなる実施形態では、塩基付加塩が、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、アルミニウム、アンモニウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム等から成る群より選択される無機塩基、又はN-N'-ジベンジルエテリンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、エテレンジアミン、N-メチルグルカミン、トリエチルアミン、ジメチルアミン、プロカイン塩などから成る群より選択される有機塩基から形成され、またアルギナート等のアミノ酸の塩である。
本発明のさらなる実施形態では、プロドラッグは、式Iの化合物と糖成分との適切なスペーサーによる連結によって形成された当該化合物、又は親酸と適切なアルコールの反応によって得られたアルキルエステル、又は親酸性化合物と適切なアミンの反応によって得られたアミドから選択される。
本発明の別の実施形態では、アリールとして、フェニル、ビフェニル、ベンジル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル及びインデニルが挙げられる。
さらに別の実施形態では、へテロ環が、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、インドール、ピロール等から成る群より選択される。
本発明の別の実施形態では、へテロ環が、O、S及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子を芳香環内に有する。
【0009】
本発明のさらなる実施形態では、一般式Iの化合物が、下記化合物
2,3-ジメチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]チエノ[3,2-e]ピリジン-4-アミン
2,3-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロチエノ[2,3-b]キノリン-4-アミン
2,3,7-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロチエノ[2,3-b]キノリン-4-アミン
2,3-ジメチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[b]チエノ[3,2-e]ピリジン-4-アミン
2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロペンタ[e]ピリジン-10-アミン
1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-11-アミン
8-メチル-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-11- アミン
2,3,4,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロヘプタ[e]ピリジン-12-アミン
1,2,3,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-9-アミン
2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-10-アミン
7-メチル-2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-10-アミン
1,2,3,6,7,8,9,10-オクタヒドロシクロヘプタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-11-アミン
2,3,6,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-シクロオクタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-12-アミン
1,2,3,6,7,8,9,10-オクタヒドロシクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロペンタ[e]ピリジン-11-アミン
2,3,4,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-12-アミン
から成る群より選択される。
【0010】
本発明は、式Iの化合物の合成方法であって、最初に前駆体2-アミノ-3-シアノチオフェンを合成する工程、次に式Iの対応生成物を得るのに適した条件下で環状ケトンと反応させる工程を含む方法をも提供する。
本発明の一実施形態では、本方法は、塩化亜鉛の存在下で反応を行なって複合体を形成し、生成化合物を次に塩基で処理して塩化亜鉛複合体から遊離させた後、その沈殿物を分離して精製する工程を含む。
本発明の別の実施形態では、チオフェンと環状ケトンを1:2のモル比で反応させる。
本発明の別の実施形態では、上記プロセスで使用する塩基がNaOHである。
本発明の別の実施形態では、イオウ、メラノニトリル及びそれぞれのケトンをアルコールの存在下で撹拌しながら反応させることによって2-アミノ-3-シアノチオフェンを調製する。
本発明のさらに別の実施形態では、2-アミノ-3-シアノチオフェンの表題化合物への変換を還流下で加熱することによって行なう。
本発明のさらに別の実施形態では、式Iの化合物を、ニート(neat)又は適切な不活性溶媒中で等モル量又は過剰の酸と反応させて、対応する酸付加塩を形成する。
本発明のさらに別の実施形態では、前記酸を、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸、脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸及びヒドロキシアルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸から成る群より選択する。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態では、式Iの化合物を、不活性な適切な溶媒又はニート溶媒中で等モル又は過剰量の塩基と反応させて、対応する塩基付加塩を形成する。
本発明のさらに別の実施形態では、前記塩基を、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、アルミニウム、アンモニウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム、N-N'-ジベンジルエテリンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、エテレンジアミン、N-メチルグルカミン、トリエチルアミン、ジメチルアミン、及びプロカイン、及びアミノ酸から選択してそれぞれの塩基付加塩を得る。
本発明の別の実施形態では、該化合物のメタノール溶液に乾燥酸性ガスを送ることによって式1の化合物の酸付加塩を形成する。
本発明の別の実施形態では、式(I)の化合物のプロドラッグが、適切なスペーサーを加えて式(I)の化合物を糖成分と連結することによって得られるか、又は親酸性化合物と適切なアルコールの反応によって調製されたアルキルエステル、又は親酸化合物と適切なアミンの反応によって調製されたアミドである。
本発明の実施形態では、医薬組成物が、下記式I
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、nは1、2、3又は4であり、
R1及びR2は、CH3、アルキル及びアリールから成る群より独立に選択され;又はR1+R2が、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロアルキル、及び2より多い炭素鎖のアルキルから選択され;
Rは、アミン、置換アミン、アミノ酸、スルホンアミド、スルホニルアルキル、アルキル又はシクロアルキル、アリール、ヒドロキサマート、アミノヘテロ環成分から成る群より選択され;
ここで、前記ヘテロ環成分は、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ベンズイミダゾール、キナゾリン、キノリン、チオフェン、チエノピリミジン、チエノピリジン、アクリジン、インドール、ピロール及びベンゾフランから選択される)
及びその医薬的に許容できる塩及び誘導体と、
糖尿病、癌、関節炎又は炎症の治療用の通常の活性薬とを含む。
本発明のさらに別の実施形態では、医薬組成物が、式Iの化合物又はその塩形若しくはエステル形又はプロドラッグ形と、1種以上の医薬的に許容できる賦形剤とを含む。
本発明のさらに別の実施形態では、医薬組成物は、式Iの化合物と、糖尿病、癌、関節炎又は炎症の治療用の通常の活性薬とを含む。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態では、医薬組成物が追加の活性薬を含み、この追加の活性薬が、アルキル化薬、代謝拮抗薬、抗生物質、免疫調節薬、ヌクレオチド誘導体、サイクリン依存性キナーゼ阻害薬、インターフェロン様薬及びヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(histone deacytalase inhibitor)から成る群より選択される。
医薬組成物が追加の活性薬を含む本発明のさらに別の実施形態では、追加の活性薬が、COX-II阻害薬、例えばニムセリド、セロコキシブ、エトロコキシブ、及びバルジコキシブから成る群より選択される。
医薬組成物が追加の活性薬を含む本発明のさらに別の実施形態では、追加の活性薬が、スルホニル尿素、ビグアナイド(Biguanide)、メグリチニド(Meglitinide)、グリタゾン(Glitazone)、及びα-グルコシダーゼ阻害薬から成る群より選択される。
医薬組成物が医薬的に許容できる賦形剤を含む本発明のさらに別の実施形態では、医薬的に許容できる賦形剤が医薬的に許容できる担体又は希釈剤から成る群より選択される。
医薬組成物が担体又は希釈剤を含む本発明のさらに別の実施形態では、担体又は希釈剤が、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエトキシル化ヒマシ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ゼラチン、ラクトース、スクロース、シクロデキストリン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、寒天、ケイ酸、脂肪酸、脂肪酸アミン、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ポリオキシエチレン、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリジンから成る群より選択される。
本発明は、治療的に有効な量の下記式(I):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、n=1、2、3、4;
R1=R2=CH3、アルキル、アリール又はR1+R2=-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-;
R=アミン、置換アミン、アミノ酸、スルホンアミド、スルホニルアルキル、アルキル又はシクロアルキル、アリール、ヒドロキサマート、アミノヘテロ環成分。該ヘテロ環成分は、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール及びピリジン、ベンズイミダゾール、キナゾリン、キノリン、チオフェン、チエノピリミジン、チエノピリジン、アクリジン、インドール、ピロール、ベンゾフランから選択され得るが、それらに限定されない。これらのヘテロ環成分は、-H、-(C1-C3)アルキル、-O(C1-C3)アルキル、F、-CF3、-NH2、-N(CH3)、-N(CH3)2、-SH、-SCH3、-SCH2CH3及びその組合せから選択される置換基を有してよい。)
の化合物、又はその医薬的に許容できる塩若しくは誘導体を投与することによって、対象の癌、糖尿病、関節炎及び炎症を治療する方法又はそれと関連する疾患を予防する方法をも提供する。
【0017】
本発明は、癌、炎症、糖尿病及び関節炎の治療におけるこれらの化合物の使用方法をも提供する。例えば、本方法は、皮膚癌、結腸癌、肺癌、特に、限定するものではないが、ホルモン依存性癌の治療を包含する。
本発明は、治療が必要な対象に、治療的に有効な量の本発明の化合物、又はその誘導体若しくは医薬塩を投与する工程を含む。これらの化合物を、より良い効力のための併用療法における他の標準薬物と共に使用することができる。癌、炎症、糖尿病及び関節炎を発症する疑いのある対象の癌、炎症、糖尿病及び関節炎の予防方法であって、治療的に有効な量の本発明の化合物、又はその誘導体若しくは医薬塩を投与する工程を含む方法をも提供する。
他の実施形態では、本発明は、医薬的に許容できる量の式Iの化合物又はその立体異性体、塩、多形、エステル、及びプロドラッグを含めたいずれかの誘導体を、医薬的に許容できる担体と共に含む医薬組成物を包含する。
別の実施形態では、本発明は、癌、糖尿病、関節炎、炎症の治療用の他の既知活性薬と共に併用療法で用いる場合の式Iの化合物の使用を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】カラゲナン誘発炎症モデルを示し、記号「#」は、10mg/kgの用量でインドメタシンと比較したときにp>0.05で統計的有意性がないことを表し、記号「a」は、10mg/kgの用量での化合物及び標準物質インドメタシン間の有意な差異(p<0.01)を示し、平均±S.E.M,(n=3)として値を表してある。
【図2】カラゲナン誘発炎症モデルを示し、記号「#」は、10mg/kgの用量でインドメタシンと比較したときにp>0.05で統計的有意性がないことを表し、記号「a」は、10mg/kgの用量で標準物質インドメタシンと比較したときの有意な差異(p<0.01)を示し、平均±S.E.M,(n=3)として値を表してある。
【図3】カラゲナン誘発足浮腫−用量反応研究を示し、記号「#」は、10mg/kgの用量でインドメタシンと比較したときにp>0.05で統計的有意性がないことを表し、記号「a」は、10mg/kgの用量で標準物質インドメタシンと比較したときの有意な差異(p<0.01)を示し、平均±S.E.M,(n=6)として値を表してある。
【図4】デキストラン誘発足浮腫−用量反応研究を示し、記号「#」は、10mg/kgの用量でインドメタシンと比較したときに統計的有意性差異がない(p>0.05)ことを表し、記号「a」は、10mg/kgの用量でインドメタシンと比較したときの有意な差異(p<0.01)を示し、平均±S.E.M,(n=6)として値を表してある。
【図5】アラキドン酸誘発足浮腫モデル−用量反応研究を示し、記号「#」は、10mg/kgの用量でインドメタシンと比較したときに統計的有意な差異がない(p>0.05)ことを表し、記号「a」及び「b」は、10mg/kgの用量で標準薬物インドメタシンと比較したときの有意な差異(p<0.01及びp<0.05)を示し、平均±S.E.M,(n=6)として値を表してある。
【図6】コットンペレット(Cotton pellet)肉芽腫−湿重量を示し、グラフは、100mg/kgの用量の化合物BN-4、BN-14、BN-16について肉芽腫組織重量を示し、記号「#」は、10mg/kgの用量でインドメタシンと比較したときにp>0.05で統計的有意性差異がないことを表し、平均±S.E.M,(n=6)として値を表してある。
【図7】コットンペレット肉芽腫−乾燥重量を示し、グラフは、100mg/kgの用量の化合物BN-4、BN-14、BN-16について肉芽腫組織重量を示し、記号「#」は、10mg/kgの用量でインドメタシンと比較したときにp>0.05で統計的有意性差異がないことを表し、平均±S.E.M,(n=6)として値を表してある。
【図8】TNF-αアッセイを示し、マウスマクロファージ株化細胞からのTNF-αの産生に及ぼすBN-4、BN-14、BN-16の阻害効果が分かり、平均±S.E.M.として値を表してあり、「*」は、LPSコントロールと比較した有意な統計的差異(p<0.01)を表す。
【図9】IL-1βアッセイを示し、マウスマクロファージ株化細胞からのIL-1βの産生に及ぼすBN-4、BN-14、BN-16の阻害効果が分かり、平均±S.E.M.として値を表してあり、記号「*」は、LPSコントロールと比較したときの有意な統計的差異を表し、「#」は、LPSコントロールと比較して統計的差異がないことを示す。
【図10】マクロファージ株化細胞内のニトライトオキシド推定を示し、マウスマクロファージ株化細胞からの一酸化窒素の産生に及ぼすBN-4、BN-14、BN-16の阻害効果が分かり、記号「*」は、LPSコントロールと比較した有意な統計的差異を表し、平均±S.E.M.として値を表してある。
【図11】ニトライト測定−SNP法を示し、SNP法における一酸化窒素の産生に及ぼすBN-4、BN-14、BN-16の阻害効果が分かり、記号「*」は、コントロールと比較した有意な統計的差異を表す。
【図12】試験化合物のFCA誘発関節炎研究における終了日の体重増加を示し、「*」は、正常コントロールと比較したときの有意な差異P<0.01を示し、「#」は、正常コントロールと比較したときに統計的差異がないことを示す(p>0.05)。
【図13】FCA誘発関節炎研究について異なる時間間隔でのチエノピリジン誘導体の関節炎指数を示す。
【図14】ラットの完全フロイントアジュバント誘発関節炎モデルに及ぼすチエノピリジン誘導体の効果を示し、グラフは、100mg/kgの用量の化合物BN-4、BN-14、BN-16についての足容積を示し、平均±S.E.M,(n=6)として値を表してああり、「*」は、ラットの関節炎コントロール群と比較したときのP>0.01を表し、「a」は、2.5mg/kgの用量で関節炎コントロール群と比較したときの有意な統計的差異を表し、「#」は、関節炎コントロールと比較したときの有意な統計的差異(p<0.05)を表す。
【図15】ラットの完全フロイントアジュバント誘発関節炎モデルに及ぼすチエノピリジン誘導体の効果を示し、グラフは、100mg/kgの用量の化合物BN-4、BN-14、BN-16について、21日目のWBC指数を示し、平均±S.E.M,(n=6)として値を表してああり、「**」は、関節炎コントロール群と比較したときに統計的差異がないことを示し、「*」は、関節炎コントロール群と比較したときの統計的差異を表す。
【図16】ラットの足組織内のIL-1β推定の標準グラフを示す。
【図17】ラットの足組織内のTNF-α推定の標準グラフを示す。
【図18】足組織内のIL-1β推定−FCA研究を示し、FCA誘発関節炎研究での21日目の関節炎ラットの足組織内のIL-1β発現に及ぼすチエノピリジン誘導体BN-4、BN-14、BN-16の効果を示し、各群6匹の動物について平均±S.E.M.として結果を示してあり、「*」は、関節炎コントロールラット及び正常コントロールラットと比較したときのP<0.05を表す。
【図19】足組織内TNFαの推定−FCA研究を示し、FCA誘発関節炎研究での関節炎ラットの後足内のTNF-αの濃度に及ぼす化合物BN-4、BN-14、BN-16による治療効果を示し、各群6匹の動物について平均±S.E.M.として結果を示してあり、「*」は、関節炎コントロールラットと比較したときのP<0.01を表す。
【図20】FCA誘発及びコラーゲン誘発の両関節炎モデルについてラットの血清中IL-1βの標準グラフを示す。
【図21】FCA誘発関節炎研究における関節炎ラットの血清中IL-1βの発現に及ぼすチエノピリジン誘導体BN-4、BN-14、BN-16の効果を示し、各群6匹の動物について平均±S.E.M.として結果を示してあり、「*」は、関節炎コントロールと比較したときのP<0.01を表す。
【図22】酵母α-グルコシダーゼ阻害アッセイに及ぼす種々のチエノピリジン誘導体の効果を示し、「*」は、アカルボース(1.25mg/ml)と比較したときに有意な差異がないことを示し(p>0.05)、「a」は、標準物質(アカルボース5mg/ml)と比較した有意な差異を示す(p<0.01)。
【図23】酵母α-グルコシダーゼ阻害アッセイに及ぼす種々のチエノピリジン誘導体の効果を示し、「*」は、標準物質と比較したときに有意な差異がなく(p>0.05)、かつ化合物BN-14が5mg/mlの用量で標準物質アカルボースに匹敵することを示し、「a」は、標準物質(アカルボース)と比較した有意な差異を示す(p<0.01)。
【図24】哺乳動物α-グルコシダーゼ阻害アッセイに及ぼす種々のチエノピリジン誘導体の効果を示し、「a」は、標準物質(アカルボース5及び2.5mg/ml)と比較した有意な差異を示す(p<0.01)。
【図25】哺乳動物α-グルコシダーゼ阻害アッセイに及ぼす種々のチエノピリジン誘導体の効果を示し、「#」は、標準物質アカルボース(2.5mg/ml)と比較して有意な差異がないこ示し(p>0.05)、「a」は、アカルボース(2.5及び5mg/ml)と比較したときのp<0.01の有意な差異を示し、「b」は、アカルボース(2.5mg/ml)と比較したp<0.05の有意な差異を示す。
【図26】α-アミラーゼ阻害に関連するマルトース標準物質の標準グラフを示す。
【図27】α-アミラーゼ阻害アッセイに及ぼす種々の合成化合物の効果を示し、グラフは、アッセイの反応終了後のマルトース放出量を示し、「#」は、コントロールのマルトース放出と比較したときにp>0.05で有意性がないことを示し、「*」は、コントロールのマルトース放出と比較した有意な差異を示し、「a」は、コントロールのマルトース放出と比較したp<0.01の有意な差異を示すが、試験化合物(BN-18)ではマルトース放出がコントロールより多かった。
【図28】α-アミラーゼ阻害アッセイに及ぼす種々の合成化合物の効果を示し、グラフは、アッセイの反応終了後のマルトース放出量を示し、「#」は、コントロールのマルトース放出と比較したときにp>0.05で有意性がないことを示し、「*」は、コントロールのマルトース放出と比較した有意な差異を示す。
【図29】ウィスターラットのデンプン負荷モデルに及ぼす合成化合物BN-13、BN-14、BN-15、及びBN-17の効果を示し、異なる時点のグルコースレベルの上昇百分率を示し、「*」は、糖尿病コントロールと比較したときのp<0.01の統計的有意な差異を示し、平均±S.E,n=6として値を表してある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、縮合チエノピリジン誘導体の形の、可能性のある新しい小分子TNF-α阻害薬、α-グルコシダーゼ阻害薬及びα-アミラーゼ阻害薬並びに当該化合物の使用方法を提供する。本発明は、チエノピリジンのみならず、塩、エステル及び誘導体並びに関連化合物をも包含する。縮合チエノピリジンは下記構造
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、n=1、2、3、4;
R1=R2=CH3又はR1+R2=2より多い炭素鎖のアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロアルキル、アリール;
R=アミン、置換アミン、アミノ酸、スルホンアミド、スルホニルアルキル、アルキル又はシクロアルキル、アリール、ヒドロキサマート、アミノヘテロ環成分。ヘテロ環成分は、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール及びピリジン、ベンズイミダゾール、キナゾリン、キノリン、チオフェン、チエノピリミジン、チエノピリジン、アクリジン、ベンゾフラン、インドール及びピロールから選択され得るが、それらに限定される。これらのヘテロ環成分は、-H、-(C1-C3)アルキル、-O(C1-C3)アルキル、F、-CF3、-NH2、-N(CH3)、-N(CH3)2、-SH、-SCH3、-SCH2CH3及びその組合せから選択される置換基を有してよい)、
又はその医薬的に許容できる塩若しくは誘導体
を有する。
【0022】
用語アリールは、単独で又は例えばアルキルアリール、ハロアリール又はハロアルキルアリールのように他の用語と組み合わせて使用され、フェニル、ビフェニル及びベンジル等の芳香環のみならず、縮合アリール基、例えばナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル及びインデニル等を包含する。用語「へテロ環」は、芳香環内にO、N又はSのような1つ以上のヘテロ原子を有するアリールを包含する。へテロ環の例として、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、インドール、ピロール等が挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「立体異性体」は、同一結合で結合している同一原子で構成されているが、相互転換できない異なる三次元構造を有する化合物を指す。安定した三次元構造をコンフィギュレーションと称する。本明細書で使用する場合、用語「エナンチオマー」は、分子を相互に重ね合わせることができない2つの立体異性体を指す。用語「キラル中心」は、4つの異なる基が結合している炭素原子を指す。用語「ジアステレオ異性体」は、エナンチオマーでない立体異性体を指す。1つだけのキラル中心に異なるコンフィギュレーションを有する2つのジアステレオ異性体を本明細書では「エピマー」と称する。用語「ラセミ体」、「ラセミ混合物」又は「ラセミ修飾」は、エナンチオマーの等量混合物を指す。さらに、「幾何異性体」は、二重結合を含み、二重結合を形成している原子に直接付着している4つの原子が全て平面内にあり、かつ二重結合の回りの回転が妨げられる化合物に関する。各炭素原子に付着している2つの基は、カーン・インゴルド・プレローグ(Cahn-Ingold-Prelog)システムによって順位付けされ;「Z異性体」は、二重結合の同じ側に2つのより高い順位の基がある当該異性体を指す。「E異性体」は、二重結合の反対側に2つのより高い順位の基がある当該異性体を指す。
【0023】
さらに、当業者は、式(I)の化合物に立体異性体が存在することを認識するであろう。従って本発明は、式(I)の光学異性体及び幾何異性体を含め、全ての可能性のある立体異性体を包含する。本発明はさらに、ラセミ化合物、又はそのラセミ混合物のみならず、光学活性な異性体をも包含する。式(I)の化合物が単一のエナンチオマーとして望ましい場合、最終生成物の分割によるか或いは光学的に純粋な出発原料又は何らかの便利な中間体からの立体特異的合成によって得られ、さらに化合物の全ての互変異性体を包含する意図である。所望化合物を同定及び選択するためのこれらの用語及び方法は技術上周知であり、例えば、ジアステレオ異性体は、物理的分離方法、例えば分別結晶法及びクロマトグラフ技術によって分離され、エナンチオマーは、ジアステレオマー塩の光学活性酸若しくは塩基による選択的結晶法又はキラルクロマトグラフィーによって相互に分離され得る。適切な立体化学的に純粋な出発原料から合成的に、又は立体選択的反応によって、純粋な立体異性体を調製することもできる。
【0024】
本発明の化合物は、種々多様な有機酸及び無機酸並びに有機塩基及び無機塩基と医薬的に許容できる酸付加塩又は塩基付加塩を形成し、かつ医薬化学で使用されることが多い生理学的に許容できる塩を包含し、このような塩もこの発明の一部である。該塩を形成するために使用する典型的な無機酸として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸などが挙げられる。有機酸脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸及びヒドロキシアルカン二酸、芳香族酸、脂肪族酸及び芳香族スルホン酸から誘導される塩も使用し得る。従って、このような医薬的に許容できる塩として、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン-2-安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、b-ヒドロキシ酪酸塩、ブチン-1-4-二酸、ヘキシン-1-4-二酸、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩b、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、リン酸、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-ブロモフェニルスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩などが挙げられる。好ましい塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩及びシュウ酸塩である。
【0025】
医薬的に許容できる付加塩を形成するために使用する典型的塩基は無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、アルミニウム、アンモニウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム等であろう。さらに、有機塩基を利用して、例えばN-N'-ジベンジルエテリンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、エテレンジアミン、N-メチルグルカミン、トリエチルアミン、ジメチルアミン、プロカイン塩などを形成することができる。アルギナート等のアミノ酸の塩も包含される。
医薬的に許容できる酸又は塩基塩は、典型的に式(I)の化合物を、ニート(neat)又は適切な不活性溶媒中で等モル若しくは過剰量の酸又は塩基と反応させることによって形成される。形成された塩を既知の方法でさらに処理及び精製する。化合物のメタノール溶液に乾燥酸性ガスを送ることによって塩を形成することもできる。
本発明の化合物はプロドラッグ形であってよい。プロドラッグは一般的に、活性薬物を放出するため体内で自発的又は酵素的変換を必要とし、かつ親薬物分子を超える改良された薬物動態学的特性を有する、親薬物分子の薬理学的に不活性な誘導体である。従って、一般式(I)の化合物のプロドラッグは、化学的又は代謝的に切断可能な基を有し、かつ生理的条件下で容易に化学変化を受けてインビボで式(I)の化合物をもたらす。プロドラッグには、適切なスペーサーを加えた式(I)の化合物と糖成分との複合体、親酸性化合物と適切なアルコールの反応によって調製されたアルキルエステル、又は親酸化合物と適切なアミンの反応によって調製されたアミドがある。
【0026】
「治療する」とは、癌又は癌と関係がある症状若しくは作用の重症度を治癒させ、寛解させ又は変更することを意味する。用語「治療する」、「治療」及び「療法」は、本明細書で使用する場合、根治的、予防的(prophylactic)、及び予防的(preventive)療法を意味する。
「予防する」又は「予防」は、上記疾患の発生を防止するか又は組成物の投与に引き続いて疾患の重症度を変更することを意味する。これは、臨床的に明らかな望まれない徴候の発生を完全に予防するか又はリスクのある個体における望まれない自己免疫疾患の前臨床的に明らかな段階の発生を予防する。この定義によって、悪性細胞の転移の予防又は悪性細胞の進行を静止若しくは逆転させることをも包含する意図である。これは、前癌及び癌を発症するリスクのある当該個体の予防的治療を包含する。
用語「治療的に有効」及び「薬理学的に有効」は、各薬剤単独の治療にわたって疾患の重症度及び発症頻度の改善の目標を達成するであろう各薬剤の量を認定する意図である。さらに代替療法に伴う副作用を回避する。
治療の目的のための用語「対象」には、TNF-α、α-グルコシダーゼ及びα-アミラーゼに関与する疾患を有するいずれのヒト又は動物対象も含まれる。予防方法では、対象はいずれのヒト又は動物対象でもあり、好ましくは上述した疾患を発症するリスクのあるヒト対象である。対象は、発癌性物質への曝露、望まれない急速な細胞増殖によって特徴づけられる障害に遺伝的にかかりやすい炎症状態などに起因するリスクがあり得る。ヒトの治療に有用であるのみならず、本発明の化合物は哺乳動物の獣医学的治療にも有用である。哺乳動物にはコンパニオン・アニマル及び家畜が含まれ、例えば、限定するものではないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、及びブタが挙げられる。好ましくは、対象はヒトを意味する。
【0027】
式(I)の化合物の投与経路は、経口、皮下、筋肉内、局所若しくは静脈内又は治療すべき器官若しくは組織若しくは部位に治療的に有効な量の活性薬を送達するいずれかの経路による。当然のことながら、言及した異なる疾患を治療するためには異なる薬用量が必要である。さらに抗体結合(antibody conjugation)、pH感受性ポリマーインプラントのような当該分野で既知の新規技術で発明の化合物を標的部位又は腫瘍に送達し得る。好ましい投与経路は経口である。
「医薬的に有効な用量」は、疾患状態の治療及び/又は予防の枠内に治療関連効果を有する医薬化合物又は組成物の量を意味する。薬用量は、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、疾患の重症度、投与の経路と頻度、使用する化合物の効力、増殖部位、並びに投与する化合物の薬物動態学的特性、使用する化合物の副作用と毒物学的作用及び本発明の化合物と他の薬剤との相互作用などの種々の因子によっても左右される。一般的に全身投与ではなく局所投与される化合物の用量及び治療ではなく予防のための方が低いであろう。治療する医師及び獣医が必要と判断した頻度と期間だけ該治療を施してよい。当業者は、投与すべき化合物の投与計画又は治療的に有効な量を各対象について最適化する必要があることを認めるであろう。化合物の典型的な1日の用量は、無毒の薬用量レベル約1mg〜約800mg/日の化合物を含む。好ましい1日の用量は一般的に約1mg〜200mg/日である。最も好ましい用量範囲は1mg、2mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、90mg及び100mgを構成し得る。本発明の化合物又は組成物(追加の薬剤との併用を含め)を単回用量で投与してよく、或いは1日2、3、又は4回以上に分割した個々の用量で1日の総薬用量を投与してよい。同様に、1週間1回又は月1回の用量で化合物又は組成物(併用を含め)を投与するように治療を適応させることができる。
【0028】
用語「〜と併用」とは、式(I)の化合物を1種以上の他の医薬と同時又は逐次投与することを意味し、同時は共投与を指す。この場合、投与する前に併用の個別成分を混合して単一組成物を形成することができ、或いは患者に同時に投与することができる。本発明の併用成分を最初に投与するかに関係なく、個別成分を逐次的、すなわち次々に投与することもできる。経時的又は間欠的に交互に投与するか、或いは規則的であってもなくてもよい間隔で投与を停止及び再開する投与形式を利用することができる。二成分の投与経路及び部位が異なってよいと指摘される。投与間の時間間隔は重要ではなく、当業者が規定することができる。
併用療法の追加薬剤の例は、併用薬物化学療法による癌又は他の腫瘍症の治療のために選択できる、市場、臨床試験、又は前臨床評価で利用可能な多数の他の抗腫瘍薬である。これらの薬剤は、いくつかの主要カテゴリー、すなわちアルキル化薬、代謝拮抗薬、抗生物質、免疫調節薬、ヌクレオチド誘導体、サイクリン依存性キナーゼ阻害薬、インターフェロン様薬及びヒストン脱アセチル化酵素阻害薬に分類される。
併用療法に好ましい他の薬剤は、COX-II阻害薬であり、該カテーテルの化合物の例として、ニムセリド、セロコキシブ、エトロコキシブ、バルジコキシブ等が挙げられる。併用療法に好ましい他の薬剤は、スルホニル尿素、ビグアナイド、メグリチニド、グリタゾン、及びα-グルコシダーゼ阻害薬である。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、本発明の少なくとも1種の化合物と、医薬的に許容できる担体又は希釈剤とを含む組成物をさらに提供する。これらの医薬組成物は、従来技術で調製され得る。本発明の典型的組成物は、担体若しくは希釈剤であるか又は担体で希釈されていてよい医薬的に許容できる賦形剤を伴い、或いは担体に封入されて、カプセル剤、サシェ剤(sachet)、錠剤、エアロゾル、溶液、懸濁液、注射剤又は他の組成物の形態であり得る。併用製品の製造では、医薬組成物調製のための従来技術を使用し得る。例えば、通常、活性化合物を担体若しくは希釈剤と混合するか又は担体若しくは希釈剤で希釈し、或いは担体又は希釈剤中に封入して、注射剤、カプセル剤、サシェ剤、錠剤、エアロゾル、溶液、懸濁液又は他の組成物の形態にしてよい。他の担体が希釈剤として役立つ場合、それは、活性化合物のビヒクル、賦形剤、又は媒体として作用する固体、半固体、又は液体材料であってよい。
適切な担体又は希釈剤のいくつかの例は、限定するものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエトキシル化ヒマシ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ゼラチン、ラクトース、スクロース、シクロデキストリン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、寒天、ケイ酸、脂肪酸、脂肪酸アミン、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ポリオキシエチレン、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリジンである。
錠剤及びカプセル剤は最も有利な経口単位剤形に相当し、この場合、明らかに固体医薬担体を利用する。便利な経口投与用のエリキシル剤又は溶液として化合物を処方することもできる。例えば静脈内、筋肉内、及び皮下による非経口投与に適した溶液として活性化合物を処方することもできる。さらに、担体又は希釈剤が技術上周知のいずれの徐放材料、例えばグリセリルモノステアラート又はグリセリルジステアラートをも含んでよい。一実施形態では、活性化合物をマイクロカプセル化送達システムなどの制御放出製剤に組み入れる。本発明の化合物をリポソーム又はナノ粒子送達システム内で投与することもできる。活性成分のみを好ましくはできる限り長期間にわたって特定の生理学的場所で放出するように組成物を構成することができる。
【0030】
さらに詳細には、本発明は、式(I)の範囲内に入る化合物に関し、限定するものではないが、下記化合物又はそれらの医薬的に許容できる塩を包含する。
2,3-ジメチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]チエノ[3,2-e]ピリジン-4-アミン(BN-1)
2,3-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロチエノ[2,3-b]キノリン-4-アミン(BN-2)
2,3,7-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロチエノ[2,3-b]キノリン-4-アミン(BN-3)
2,3-ジメチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[b]チエノ[3,2-e]ピリジン-4-アミン(BN-4)
2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロペンタ[e]ピリジン-10-アミン(BN-5)
1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-11-アミン(BN-6)
8-メチル-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-11-アミン(BN-7)
2,3,4,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロヘプタ[e]ピリジン-12-アミン(BN-8)
1,2,3,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-9-アミン(BN-13)
2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-10-アミン(BN-14)
7-メチル-2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-10-アミン(BN-15)
1,2,3,6,7,8,9,10-オクタヒドロシクロヘプタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン -11-アミン(BN-16)
2,3,6,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-シクロオクタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-12-アミン(BN-17)
1,2,3,6,7,8,9,10-オクタヒドロシクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロペンタ[e]ピリジン-11-アミン(BN-18)
2,3,4,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-12-アミン(BN-19)。
我々は、式(I)で示されるチエノピリジンのライブラリーを設計した。下記スキーム1に概要を示す手順のように標的化合物の合成を行なった。
【0031】
【化5】

スキーム1
【0032】
下記化合物をスキーム1から合成した。


【0033】
所望化合物をスキーム1から以下のプロトコルで調製した。
Gewald手順を利用して第1工程の化合物又は出発原料を調製した。イオウ(0.01モル)、メラノニトリル(0.01モル)及びそれぞれのケトン(0.01モル)を15mlのエタノールと共に丸底フラスコに入れた。混合物を5分間撹拌し、50℃で撹拌しながら10〜15分間でゆっくりモルフォリン(0.012モル)を添加した。その後、反応混合物を室温で5時間撹拌し、一晩冷蔵庫内で放置した。減圧下でろ過によって結晶を収集し、冷アルコールで洗浄し、アルコールによって再結晶させた(Gewald, K.; Schinke, E.; Bottcher, H Chem. Ber. 99: 94-100, 1966)。ここで述べるようにマイクロ波を用いてこれらの化合物を調製することもできる。イオウ(0.01モルs)、メラノニトリル(0.01モル)、それぞれのケトン(0.01モル)及びモルフォリン(0.012モル)を塩基性アルミナ(0.02モル)と共に封管の中に入れた。管をマイクロ波エネルギーで160ワットにて10分間照射した。管を冷却し、酢酸エチルを用いて化合物を抽出した。カラムクロマトグラフィーを実施することによって純粋生成物を調製した(Huang, W and Li, J, Synthetic Comm. 35: 1351-1357, 2005)。
表題化合物のため、4,5-置換2-アミノ-3-シアノチオフェン(Ia-d)(0.0065モル)を環状ケトン(0.013モル)に1:2比にて丸底フラスコ内で塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で5時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%水酸化ナトリウム水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離された沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いて生成物をカラムに通すことによって精製した(Ikuo, K.; Kijino, A.; Imai, A.; Yasumura, M.; (Hodogaya Chemical Co., Ltd., Japan), JKXXAF JP 04134083 (1992)。
上記合成方法は説明の目的のためである。どちらの前駆体2-アミノ-3-シアノチオフェンの実際の合成も他の従来技術で行なってよい。同様に、2-アミノ-3-シアノチオフェンの表題化合物への実際の変換も従来技術を利用して行なってもよい。
【0034】
(腫瘍壊死因子)
腫瘍壊死因子は炎症及び急性期反応に関与するポリペプチドサイトカインである。TNF-αは関節リウマチ又はクローン病のヒトに大量に存在する。市販の生物学的薬剤エタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)によるTNF-αの直接阻害は、関節リウマチの治療に有意な進歩をもたらし、有効な療法としてこの炎症誘発性サイトカインの細胞外阻害を確証した。しかし、相当なインセンティブにもかかわらず、TNF-αの類似の小分子阻害薬の実行可能な先例が報告されていない。該薬物は、製造、患者の利便性、投与、及びコンプライアンスの利点が付随すれば、TNF-α媒介疾患の治療で大きな進歩を示すであろう。免疫系は多くの場合、アレルギー反応と一部のミオパチーの両方のような、炎症性障害と関係があり、多くの免疫系障害は異常な炎症をもたらす。炎症プロセスに病原学的起源のある非免疫疾患には、癌、アテローム性動脈硬化症及び虚血性心疾患があると考えられ、TNF-αを阻害することによって制御できる。
自己免疫障害は、免疫系が正常な体組織を破壊するときに発症する。普通は、免疫系は「自己」組織を「非自己」組織から区別することができる。ある免疫系細胞(リンパ球)が「自己」組織細胞に対して感作されると、これらの細胞は通常他のリンパ球によって制御される。この制御プロセスが乱されるか又は正常な体組織がもはや「自己」として認識されないように変化すると、自己免疫障害が発生する。80を超えるタイプの自己免疫疾患があり、ヒトは複数の自己免疫障害を経験し得る。自己免疫(自己免疫関連)障害の例として、とりわけ、関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、乾癬及びクローン病が挙げられる。
免疫応答の一部として、体は自然にタンパク質TNF-αを産生して、感染又は他の侵入者と闘うための白血球を動員する。この応答が一時的に患部で炎症を引き起こす。炎症状態のヒトは自然にはTNF-αを除去できず、ますます白血球を患部に動かすこととなる。TNF-αが蓄積し続けると、過剰な炎症を引き起こし、痛み及び組織損傷につながる。
【0035】
(α-グルコシダーゼ及びα-アミラーゼ)
現在、糖尿病の管理のために利用可能なスルホニル尿素、ビグアナイド、メグリチニド、グリタゾン、及びα-グルコシダーゼ阻害薬のような多くの薬理学的物質がある。
糖尿病を治療するための他の治療アプローチは、食後高血糖を低減させることである。これは、消化管内のα-グルコシダーゼ及びα-アミラーゼ等の炭水化物加水分解酵素の阻害を介してグルコースの吸収を遅らせることによって行なわれる。これらの酵素の阻害薬は、炭水化物の消化を遅延させ、全体的な炭水化物の消化時間を延長し、グルコース吸収の速度の低下をもたらし、結果として食後血漿グルコース上昇を鈍らせる。
グルコシダーゼは、炭水化物の消化プロセスにおけるα-グリコシド結合の触媒切断に関与し、該切断は単糖類の数、切断部位の位置、及び基質中のヒドロキシル基のコンフィギュレーションによって決まる特異性がある。α-及びβ-グルコシダーゼは最も広範に研究されており、切断部位に末端グルコースを含むグリコシド結合の加水分解を触媒することが分かっている。2つの一般的グルコシダーゼのうち、α-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)が医薬研究団体の特別な関心を引いた。その触媒活性の阻害がグルコース吸収の遅延及び食後血糖値の低減につながることが示されたからである。このことは、有効なα-グルコシダーゼ阻害薬が糖尿病及び肥満の治療の臨床用化学療法薬として役立ち得ることを示唆している。炭水化物基質を消化するときの触媒の役割もα-グルコシダーゼを、癌ウイルス感染及び肝炎などの他の炭水化物媒介疾患の治療標的にする。
炭水化物の遅い消化と吸収が食後血漿グルコース上昇を低減させる。アカルボースもグルカゴン様ペプチド(GLP)-1の分泌を増やすことが分かっているが、食後高血糖の低減に対するこの効果の相対的寄与は未知である。アカルボースもミグリトールも食後高血糖を低減するのに同様に有効である。一般に、この分類の薬物はHbA1cを約0.5%下げる。多くの患者は、鼓腸、腹痛、及び下痢のためこれらの薬剤を許容しない。
アカルボース、すなわち2型糖尿病の治療用に認可されたα-グルコシダーゼ阻害薬の最初のメンバーの発見以来、最近は広範な様式で概説されているように、種々のα-グルコシダーゼ阻害薬が発見されている。これらには、遷移状態類似体(Lille et al.,2002)、新しく同定された合成化合物及び様々な種から単離された天然物が含まれる。現在の研究プロジェクトは、α-グルコシダーゼ及びα-アミラーゼの阻害による抗糖尿病活性についてチエノピリジン誘導体を評価するためのものである。
【0036】
(炭水化物の意義)
炭水化物は、非常に重要な分類の生体分子である。炭水化物は体内で種々の機能を有する。一般的に、グルコースは細胞に対する燃料として役立ち、その段階的酸化がATPを産生し、これが細胞機能に必要なエネルギーをもたらし、多糖類(グルカゴン)様デンプン及びグリコーゲンは貯蓄燃料として役立つ。
多糖類及びオリゴ糖類は情報担体である:それらは、一部のタンパク質の宛先標識として並びに特有の細胞-細胞相互作用及び細胞と細胞該マトリックスとの間の相互作用の媒介物質として役立つ。特有の炭水化物含有分子は、それらの多くの役割のいくつかを挙げると、細胞-細胞認識及び接着、発生中の細胞遊走、血液凝固、免疫応答、及び創傷治癒において作用する。これらのほとんどの場合、情報を含む炭水化物がタンパク質又は脂質に共有結合して、生物学的に活性な分子である複合糖質(glycoconjugate)を形成する。
【0037】
食事性炭水化物:食品中に存在する炭水化物成分を以下のことによって特徴づけできる:(i)植物学的起源、複合食品の場合は使用成分の混合物によって決定されるそれらの化学的同一性;(ii)植物学的起源に加えて、食品製造中及び食品調製中の加工度によって決定される食品マトリックス。総合して、食品のこれらの物理化学的特性が大いに食事性炭水化物の胃腸管の取扱い及び利用を決定する。
食事性炭水化物の化学的同一性は、糖のタイプ、糖間の連鎖及び重合度によって定義され、これが内在性消化酵素が該炭水化物を加水分解できるかどうかの化学的レベル及びそれらがどんな形で代謝に参加するかを決定する。
デンプン:デンプンは主要な食事性炭水化物である。植物内では、デンプンはデンプン顆粒の形で存在し、その比較的小さいサイズのため、製粉を相対的に無傷で生き延びる。これは、生粉調製における植物細胞壁構造の破壊にもかかわらず、デンプン顆粒によって消化酵素の接近がまだ制限されることを意味する。
デンプン顆粒の結晶構造の形は、それらの消化性の重要な決定因子であり、植物学的起源によって決定される。ジャガイモ及びオオバコ(及びグリーンバナナ)のデンプン顆粒は、膵臓アミラーゼに耐性であり、マメ科植物の消化性は中間であり、穀類デンプン顆粒は典型的に消化されやすい。アミロースはデンプン顆粒でも食品加工後でも分散し難い二次構造を形成する傾向があるので、アミロース:アミロペクチンの比はデンプンの消化性に影響を及ぼし得る。しかし、ほとんどの食品では、アミロース:アミロペクチンの影響は、食品加工の大きい影響のため影が薄い。非常に高アミロースのデンプンは例外であり、分散し難く、小腸内での消化を制限することがある。
水の存在下で加熱すると、デンプン顆粒が破壊してゼラチン化して膵臓アミラーゼにとって容易に利用できる形になるが、冷却はこのプロセスを逆転させず、一部のデンプン、特に高アミロースデンプンは、消化しにくい形に逆行し得る。水の非存在下での加熱はゼラチン化をもたらさず、一部のビスケットのように、一部のタイプの乾燥焼き食品ではデンプン顆粒は無傷のままであり、従って該製品のデンプンはゆっくり消化される。
【0038】
炭水化物及び血糖作用:血糖に最大の影響を及ぼす、食事の主成分は炭水化物である。食品中で見られる炭水化物の量とタイプ又は起源の両方が、食後血糖値に影響する。消費された炭水化物の総量が血糖反応の強力な予測因子である。所定食品の固有の種々の因子が血糖に影響を及ぼし得る。該因子としては、食品の物理的形、成熟度、加工度、デンプンのタイプ、調製の様式及び時間、熱又は水分の量が挙げられる。外的な可変因子、例えばタンパク質と脂肪の共消化(coingestion)、食前摂取、空腹時血糖値、及びインスリンレベルも、特有の炭水化物含有食品が血糖に及ぼす効果を変えるであろう。
食後血糖反応:食後の血糖濃度は、血流中のグルコース出現及び血液循環からのそのクリアランスの速度によって決まる。グルコース消失の速度は、インスリン分泌及び標的組織に及ぼすその作用によって大いに影響を受ける。
吸収後状態(朝起床状態)では、血糖は正常かつ安定しており、組織の要求に合わせて主に肝臓による内因性グルコースの一定産生に由来している。朝食後、血液循環にグルコースの新しいフラックスが生じ、腸が輸送し、肝臓及び肝臓外組織が正常な炭水化物耐性を維持する。非糖尿病個体では、肝臓がグルコース取込みを増やし、かつ内因性グルコース産生を抑制することによって、食後高血糖を最小限にする。グルコース摂取量の30パーセントが肝臓によって除去され、その残りが末梢血液循環に到達する。食後の内因性グルコース産生の抑制が、20〜30gのグルコースが全身の血液循環に入るのを阻止することができる。
【0039】
食後高血糖とその臨床的意義:食後高血糖は、内皮細胞機能不全、炎症反応及び酸化ストレスを誘発する高血糖性スパイク(spike)によって特徴づけられ、これらはアテローム性動脈硬化症の進行及び心血管イベントの発生につながり得る。
食後高血糖の病態生理は、酸化ストレスを誘発する高血糖性スパイクによって特徴づけられ、可溶性終末糖化産物(advanced glycation end product)(AGE)及び脂質過酸化産物と共に上流キナーゼの重要な活性化因子として作用し、内皮細胞機能不全及び炎症遺伝子の発現をもたらす。
最近の証拠から症候性心疾患のある3人のうちほぼ2人の患者が異常なグルコース恒常性を有することが示唆されている。有意な数のこれらの患者は、空腹時血糖値によってではなく、むしろ食後又は経口糖負荷試験中の高血糖の存在によって検出される。食後高血糖は、ヘモグロビンA1c(HbA1c)及び空腹時血糖値によって評価された良い糖尿病コントロールの状況でさえ起こることが多い。2型糖尿病の初期段階では、空腹時血糖及びHbA1cが正常範囲内のときでさえ、食後高血糖が心筋梗塞又は脳卒中等の大血管合併症及び微小血管合併症を引き起こす。新興データは、耐糖能障害でさえアテローム性動脈硬化症及び心血管イベントの進行の素因になり得ることを示唆している。空腹時高血糖がなくても食後高血糖が独立して心血管イベントの発生を予測するという証拠がある。
【0040】
(食後高血糖(PPHG)のコントロール)
空腹時及び食後血漿グルコース濃度は、異なる病理学的機構に起因するが、相互に関係がある。食後高血糖の結果として患者が寝るときの血漿グルコースレベルが高いほど、朝の空腹時血糖値上昇が高いであろう。同様に、朝の空腹時血糖値上昇が高いほど、日中に食後血糖値上昇が高いであろ。従って、食後高血糖が持続する場合、主に空腹時高血糖を標的にする手技は、空腹時血漿グルコースレベルの正常化及び良好なHbA1cレベルの達成に成功しないであろう。逆に、空腹時高血糖が持続する場合、主に食後高血糖を標的にする介入は良好なHbA1cレベルを達成し損なうであろう。にもかかわらず、正常又は正常に近い空腹時血漿グルコースレベルを有するがHbA1cレベルが高い患者には、食後高血糖を標的にする手技は、初期選択として非常に検討に値するであろう。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでなく、説明を目的としている。
特に断らない限り、化学薬品は市販されており、さらに精製せずに受け取ったまま使用した。全ての加熱反応は、Radleys Discovery Technologiesの12プレース反応ステーションで実施した。薄層クロマトグラフィーはプレコートシリカゲルF254(Merck)で行なった。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル60-120メッシュ(Merck)を用いて行なった。開いたガラスキャピラリー内でPolmon融点装置を用いて融点を決定し、補正しなかった。Perkin-Elmer赤外分光光度計にてKBRペレット内で赤外スペクトルを記録した。質量スペクトルはVG-7070H質量分析計で得た。1H NMRスペクトルはBruker Avance NMR分光計でCDCL3(δ7.26)又はDMSO-d6(δ2.49)中で300MHzにて記録した。
実施例1:2,3-ジメチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]チエノ[3,2-e]ピリジン-4-アミン(BN-1)
【0042】
【化6】

【0043】
4,5-ジメチル-2-アミノ-3-シアノチオフェン(0.0065モル)をシクロペンタノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で5時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%NaOH水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.3g(90.9%);mp:231℃, IR (KBr): 3505 cm-1 (NH2), 1H NMR (CDCl3, ppm): δ2.12-2.20 (m, 2H, CH2), 2.4 (s, 3H, CH3), 2.5 (s, 3H, CH3), 2.68-2.76(t, 2H, CH2), 2.95-3.05(t, 2H, CH2), 4.38 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能), MS (ESIMS): m/z 219 [M++1] 100%, 元素分析:C12H14N2Sの計算値:C, 66.02; H, 6.46; N, 12.83。実測値:C, 66.32; H, 6.72; N, 12.66%。
実施例2:2,3-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロチエノ[2,3-b]キノリン-4-アミン(BN-2)
【0044】
【化7】

【0045】
4,5-ジメチル-2-アミノ-3-シアノチオフェン(0.0065モル)をシクロヘキサノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で5時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%NaOH水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率:1.45g(95.01%), mp:210℃; IR (KBr): 3504 cm-1 (NH2), 1H NMR (CDCl3, ppm): δ1.82-1.90 (m, 4H, 2CH2), 2.4 (s, 3H, CH3), 2.45-2.47(s, 2H, CH2), 2.5 (s, 3H, CH3), 2.95-3.15(t, 2H, CH2), 4.4 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 233 [M++1] 100%; 元素分析:C13H16N2Sの計算値:C, 67.20; H, 6.94; N, 12.06。実測値:C, 67.43; H, 6.78; N, 11.88%。
実施例3:2,3,7-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロチエノ[2,3-b]キノリン-4-アミン(BN-3)
【0046】
【化8】

【0047】
4,5-ジメチル-2-アミノ-3-シアノチオフェン(0.0065モル)を3-メチルシクロヘキサノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%NaOH水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.52g(93.94%); mp: 220℃;IR (KBr): 3502 cm-1(NH2); 1H NMR (CDCl3, ppm): δ1.44-1.55 (m, 3H, CH3), 1.95-2.05(m, 2H, CH2), 2.4 (s, 3H, CH3), 2.5 (s, 3H, CH3), 2.55-2.60(m, 5H, 2CH2,CH), 4.25(s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 247 [M++1] 100%; 元素分析:C14H18N2Sの計算値:C, 68.25; H, 7.36; N, 11.37。実測値:C, 68.08; H, 7.20; N, 11.62%。
実施例4:2,3-ジメチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[b]チエノ[3,2-e]ピリジン-4-アミン(BN-4)
【0048】
【化9】

【0049】
4,5-ジメチル-2-アミノ-3-シアノチオフェン(0.0065モル)をシクロヘプタノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%水酸化ナトリウム水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.55g(95.79%); mp: 247.5℃; IR (KBr): 3507 cm-1 (NH2); 1H NMR (CDCl3): δ1.70-1.75(m, 4H, 2CH2), 1.82-1.90(m, 2H, CH2), 2.4 (s, 3H, CH3), 2.5 (s, 3H, CH3), 2.62-2.68(t, 2H, CH2), 2.95-3.02 (t, 2H, CH2), 4.5(s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 247 [M]+; 元素分析:C14H18N2Sの計算値:C, 68.25; H, 7.36; N, 11.37。実測値:C, 68.50; H, 7.20; N, 11.54%。
実施例5:2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロペンタ[e]ピリジン-10-アミン(BN-5)
【0050】
【化10】

【0051】
2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)をシクロペンタノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%水酸化ナトリウム水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.25 g(91.24%); mp: 221℃;IR (KBr): 3504 cm-1 (NH2); 1H NMR (CDCl3, ppm): δ1.85-1.98 (m, 4H, 2CH2), 2.12-2.22 (m, 2H, CH2), 2.70-2.85 (m, 4H, 2CH2), 2.96-3.08 (m, 4H, 2CH2), 4.35 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 245 [M++1] 100%; 元素分析:C14H16N2Sの計算値:C, 68.81; H, 6.60; N, 11.46。実測値:C, 68.56; H, 6.43; N, 11.30%。
実施例6:1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-11-アミン(BN-6)
【0052】
【化11】

【0053】
2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)をシクロヘキサノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%水酸化ナトリウム水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.35 g(93.16%); mp: 218.7℃;IR (KBr) : 3507 (NH2), 3325, 3189, 2910, 2832cm-1; 1H NMR (CDCl3, ppm): δ1.84-1.92 (m, 8H, 4CH2), 2.42-2.50 (m, 2H, CH2), 2.82- 2.92(m, 4H, 2CH2), 2.98-3.05 (t, 2H, CH2) 4.44 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS):m/z 249 [M++1] 100%; 元素分析:C15H18N2Sの計算値:C, 69.73; H, 7.02; N, 10.84。実測値:C, 69.91; H, 6.80; N, 10.59%。
実施例7:8-メチル-1, 2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-11-アミン(BN-7)
【0054】
【化12】

【0055】
2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)を3-メチルシクロヘキサノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40% NaOH水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.40 g(91.62%); mp: 207℃;IR (KBr): 3503 cm-1 (NH2); 1H NMR (CDCl3, ppm): δ 1.50-1.55 (m, 3H, CH3), 1.84-1.92 (m, 8H, 4CH2), 1.95-2.05(m, 2H, CH2), 2.45-2.60(m, 5H, 2CH2,CH), 4.44 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能);MS (ESIMS): m/z 273 [M++1] 100%; 元素分析:C16H20N2Sの計算値:C, 70.55; H, 7.40; N, 10.28。実測値:C, 70.25; H, 7.66; N, 10.11%。
実施例8:2,3,4,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロヘプタ[e]ピリジン-12-アミン(BN-8)
【0056】
【化13】

【0057】
2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)をシクロヘプタノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%水酸化ナトリウム水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.45 g(95.39%); mp: 228℃;IR (KBr): 3509 cm-1 (NH2); 1H NMR (CDCl3, ppm): δ1.70-1.76 (4H, m, 2CH2), 1.84-1.95(m, 6H, 3CH2), 2.60-2.65 (t, 2H, CH2), 2.78- 2.85 (t, 2H, CH2), 2.98-3.08 (m, 4H, 2CH2) 4.48 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 273 [M++1] 100%; 元素分析:C16H20N2Sの計算値:C, 70.55; H, 7.40; N, 10.28。実測値:C, 70.35; H, 7.65; N, 10.45%。
実施例9:1,2,3,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-9-アミン(BN-13)
【0058】
【化14】

【0059】
2-アミノ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)をシクロペンタノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%水酸化ナトリウム水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.15 g(82.02%); mp: 245℃;IR (KBr): 3504 cm-1 (NH2), 1H NMR (CDCl3, ppm): δ2.1-2.18 (2H, m, CH2), 2.42-2.48(m, 2H, CH2), 2.69-2.72 (t, 2H, CH2), 2.90- 2.92 (m, 4H, 2CH2), 3.02-3.04 (m, 2H, CH2) 4.18 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 233 [M++1] 100%; 元素分析:C13H14N2Sの計算値:C, 67.79; H, 6.13; N, 12.16;実測値:C, 68.05; H, 7.31; N, 11.91%。
実施例10:2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-10-アミン(BN-14)
【0060】
【化15】

【0061】
2-アミノ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)をシクロヘキサノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40% NaOH水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.30 g(87.42%), mp: 242℃;IR (KBr): 3510(NH2), 3322, 3175, 2910, 2819cm-1; 1H NMR (CDCl3): δ1.85-1.94(m, 4H, 2CH2), 2.44-2.55(m, 4H, 2CH2), 2.84-2.92 (t, 2H, CH2), 2.93- 3.02 (m, 2H, CH2), 3.04-3.12 (m, 2H, CH2), 4.28 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 245[M]+; 元素分析:C14H16N2Sの計算値:C, 68.81; H, 6.60; N, 11.46。実測値:C, 68.65; H, 6.83; N, 11.62%。
実施例11:7-メチル-2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-10-アミン(BN-15)
【0062】
【化16】

【0063】
2-アミノ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)を3-メチルシクロヘキサノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40% NaOH水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.20g(76.28%); mp: 263.2℃;IR (KBr): 3504(NH2), 3308, 3127, 2910, 2819cm-1, 1H NMR (CDCl3): δ1.44-1.55(m, 3H, CH3), 1.95-2.05(m, 2H, CH2), 2.45-2.60(m, 5H, 2CH2,CH), 3.0-3.12(m, 6H, 3CH2), 4.25 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 259[M]+;元素分析:C15H18N2Sの計算値:C, 69.73; H, 7.02; N, 10.84。実測値:C, 69.90; H, 7.28; N, 10.54%。
実施例12:1,2,3,6,7,8,9,10-オクタヒドロシクロヘプタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-11-アミン(BN-16)
【0064】
【化17】

【0065】
2-アミノ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)をシクロヘプタノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%NaOH水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.35g(85.82%); mp: 244.6℃;IR (KBr): 3507(NH2), 3308, 3125, 2908, 2819cm-1; 1H NMR (CDCl3): δ1.70-1.75(m, 2H, CH2), 1.80-1.92(t, 2H, CH2), 2.15-2.20(t, 2H, CH2), 2.48-2.55(t, 2H, CH2), 2.62-2.68(t, 2H, CH2), 2.95-3.05(m, 4H, 2CH2), 3.08-3.15(m, 2H, CH2), 4.30 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 259[M]+; 元素分析:C15H18N2Sの計算値:C, 69.73; H, 7.02; N, 10.84。実測値:C, 69.91; H, 7.24; N, 10.59%。
実施例13:2,3,6,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-シクロオクタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-12-アミン(BN-17)
【0066】
【化18】

【0067】
2-アミノ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)をシクロオクタノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%NaOH水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させ、分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.50g(90.44%); mp: 256℃;IR (KBr): 3509 cm-1 (NH2); 1H NMR (CDCl3+DMSO-d6, ppm): δ1.70-1.74 (m, 2H, CH2), 1.80-1.92(m, 4H, 2CH2), 2.15-2.20(t, 2H, CH2), 2.48-2.55(t, 2H, CH2), 2.62-2.68 (t, 2H, CH2), 2.95-3.05(m, 4H, 2CH2), 3.08-3.15(m, 2H, CH2), 4.38 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 273[M++1] 100%; 元素分析:C16H20N2Sの計算値:C, 70.55; H, 7.40; N, 10.28;実測値:C, 70.75; H, 7.24; N, 10.53%。
実施例14:1,2,3,6,7,8,9,10-オクタヒドロシクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロペンタ[e]ピリジン-11-アミン(BN-18)
【0068】
【化19】

【0069】
2-アミノ-5,6,7,8-テトラヒドロ-4H-シクロヘプタ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)をシクロペンタノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%NaOH水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.20g(89.35%); mp: 255℃;IR (KBr): 3509cm-1 (NH2), 1H NMR (CDCl3, ppm): δ 1.70-1.75(m, 2H, CH2), 1.80-1.90(t, 2H, CH2), 2.15-2.20(t, 2H, CH2), 2.45-2.55(t, 2H, CH2), 2.62-2.68(t, 2H, CH2), 2.95-3.02 (m, 4H, 2CH2), 3.08-3.15(m, 2H, CH2), 4.30 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 259[M++1] 100% ; 元素分析:C15H18N2Sの計算値:C, 69.73; H, 7.02; N, 10.84;実測値:C, 69.48; H, 7.24; N, 11.02%。
実施例15:2,3,4,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-12-アミン(BN-19)
【0070】
【化20】

【0071】
2-アミノ-5,6,7,8-テトラヒドロ-4H-シクロヘプタ[b]チオフェン-3-カルボニトリル(0.0065モル)をシクロヘキサノン(0.013モル)に1:2比で無水塩化亜鉛(0.0065モル)と共に加え、反応混合物を還流下で6時間加熱した。混合物を冷却し、50mlの40%NaOH水溶液に加えて塩化亜鉛複合体から生成物を遊離させた。分離した沈殿物を真空ろ過で収集し、移動相としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いてカラムに通して精製した。
収率(%):1.35 g(95.74%); mp: 238℃;IR (KBr): 3509cm-1 (NH2), 1H NMR (CDCl3, ppm): δ1.84-1.92 (m, 8H, 4CH2), 2.42-2.50 (m, 4H, 2CH2), 2.82- 2.92(m, 4H, 2CH2), 2.98-3.05 (t, 2H, CH2) 4.25 (s, 2H, NH2, D2O 交換可能); MS (ESIMS): m/z 273[M++1] 100%; 元素分析:C16H20N2Sの計算値:C, 70.55; H, 7.40; N, 10.28;実測値:C, 70.39; H, 7.63; N, 10.46%。
【0072】
実施例16:抗炎症活性
試験動物:
150〜180gの雄性白皮症ウィスターラットを実験に用いた。ポリプロピレンケージ内で標準実験室条件(12:24℃で12時間の明/暗サイクル)下にてラットを維持した。ラットに市販のラット食餌(Pet Care, Bangalore)及び水を適宜与え、6つの群に分けた。IICTの動物実験委員会(Animal Ethical Committee)の許可を得た後に実験を行なった。研究開始前7日間全ての動物を隔離して実験室条件に気候順応させた。この期間中、総体的な健康及び試験に対する適合性について動物を観察した。
方法:
(カラゲナン誘発足浮腫モデル)
Winterら(1963)及びDiwanら(1989)の方法を利用してウィスターラットで試験化合物の抗炎症活性を評価した。雄性ウィスターラットを研究に用いた。動物を一晩絶食させ、それぞれ3匹から成るコントロール群、標準群及び種々の試験群に分けた。試験群では経口経路で100mg/kgの用量にて種々の試験化合物を動物に投与した。標準群の動物は経口経路で10mg/kgの用量にてインドメタシンを受けた。1%のアカシアガム懸濁液として全ての試験化合物及び標準化合物を投与した。コントロール群のラットは、薬物なしのビヒクル溶液を受けた。試験薬物投与1時間後、全ての群のラットの右後足の足底下部に0.1mlの1%カラゲナンで誘発した。全群についてカラゲナンの投与前にデジタル足容積測定装置(plethysmometer)(Ugo Basile, Italy)を用いて全ラットのゼロ時間足容積を測定した。カラゲナンの誘発3時間後に足容積を再び測定した。コントロール群の平均足容積と比較することによって、処置群の各ラットの足容積の阻害パーセントを計算し、各試験の足容積の平均(±SE)阻害パーセントとして表した。予備研究で良い活性を示した化合物を上記手順を用いて用量反応研究のために評価した。
BN-1〜BN-19から出発する合成化合物を、急性モデル、カラゲナン誘発ラット足浮腫モデルでそれらの抗炎症性について評価した。該系列のこれらの化合物のいくつかは、コントロール群と比べて有意に(p<0.01及びp<0.05)足膨潤を減少させた(表1)。これらの化合物のうち、BN-4、BN-14及びBN-16が100mg/kgの用量で活性が高いことが分かった。予備結果に基づいてこれらの化合物を用量反応研究のために評価した。カラゲナン誘発浮腫は一般的に急性炎症のための実験動物モデルとして使用され、かつそれは二相性であり、その第1相はヒスタミンと5-ヒドロキシトリプタミンの放出後にキニンの放出によって媒介され、それから後の相でプロスタグランジンによって媒介されると考えられる(Vinegar, 1969)。カラゲナン誘発後足浮腫は急性炎症の標準実験モデルであり、それは抗炎症薬を試験するための選択のフロゲスティック(phlogestic)因子である。さらにこの動物モデルは高度の再現性を示す(Winter et al., 1962)。カラゲナン誘発足浮腫モデルでは、前記3つの化合物が用量依存様式で良い抗炎症の可能性を示した。最大効果は、200mg/Kgの用量でそれぞれBN-4、BN-14及びB-16(53.2%、56.45%及び57.53%)について観察された。活性は、図2に示すように、10mg/kg用量で標準薬物インドメタシンに匹敵する(p>0.05)。予備結果に基づいて全化合物の中から化合物BN-4、BN-14及びBN-16をさらなる抗炎症モデル用に選択した。
【0073】

【0074】
表1は、ウィスターラットのカラゲナン誘発炎症モデルについての足容積の増加百分率及び種々のチエノピリジン誘導体の阻害百分率を示す。記号「*」及び「#」は、それぞれのコントロールと比較したときのp<0.01及びp<0.05を表す。図1、2及び3にもデータを示す。
【0075】
表2:カラゲナン誘発足浮腫モデル−用量反応研究:

【0076】
表2は、デキストラン誘発モデルで異なる用量における足容積及び阻害百分率を示す。記号「*」は、それぞれのコントロールと比較したときの統計的有意性差異(p<0.01)を示す。平均±S.E.M,(n=6)として値を表してある。
【0077】
実施例17:デキストラン誘発ラット足浮腫モデル:
Winterら(1963)及びDiwanら(1989)の方法を利用して試験化合物の抗炎症活性をウィスターラットで評価した。一晩絶食させたラットを異なる試験群及び標準群に分けた。各群は6匹の動物を含む。デキストラン誘発1時間前にアカシアガム懸濁液として試験化合物を経口投与した。標準群の動物はインドメタシンを10mg/kgの用量で受けた。1時間後に足底下経路でデキストランを右後足に注入した。デキストランの投与前に全群について足容積測定装置(Ugo Basile, Italy)を用いてゼロ時間足容積を測定した。デキストランの誘発3時間後に再び足容積を測定した。処置群の各ラットについてコントロール群の平均足容積と比較することによって足容積の阻害パーセントを計算し、各試験群について足容積の平均(±SE)阻害パーセントを表した。
化合物BN-4、BN-14及びBN-16は、用量依存様式で抗炎症潜在力を示す。100及び200mg/kgの用量での試験化合物の経口投与は足容積を有意に抑制した(p<0.01)。化合物は、デキストラン誘発足浮腫モデルにおける200mg/Kgの用量での標準薬物インドメタシンと比較したときに同等の抗炎症潜在力を示した(p>0.05)。デキストラン誘発足炎症は、マクロファージからのヒスタミンとセロトニンの両放出によって媒介される。デキストラン誘発流体蓄積はほとんどタンパク質及び好中球を含まないが、一方でカラゲナンは、多数の好中球を含むタンパク質リッチ滲出を誘発する(Kumar et al., 1995)。
【0078】
表3:デキストラン誘発足浮腫−用量反応研究

【0079】
表3はデキストラン誘発モデルにおける異なる用量での足容積及び阻害百分率を示す。「*」は、それぞれのコントロールと比較したときの統計的有意性差異(p<0.01)を表す。記号「a」は、コントロールと比較した有意な差異(p<0.05)を示す。平均±S.E.M,(n=6)として値を表してある。
【0080】
実施例18:
アラキドン酸誘発足浮腫:
Dimartinoら(1987)及びLaura seguraら(1998)の方法に従ってラットにアラキドン酸で足浮腫を生じさせた。体重130〜150gのウィスターラットを6匹の動物群に分けた(n=6)。0.2Mカルボナート緩衝液中0.5%のアラキドン酸の体積0.1mlをラットの右後足の足底側に注入した。アラキドン酸注入前及び1時間後に足容積測定装置を用いて足容積を測定した。得られた結果を、ビヒクルのみを受けたコントロール群から得られた結果と比較した。
BN-4、BN-14及びBN-16は、調べた種々の用量で膨潤百分率を有意に減少させた(p<0.01及びp<0.05)。このモデルでは200mg/kgの用量で化合物が強い抗炎症潜在力を示し(44.92%、41.37%、45.63%)、活性は3mg/kgの用量のデキサメタゾンに匹敵する。アラキドン酸誘発ラット足浮腫モデルでは、アラキドン酸誘導体、特にロイコトリエンが重要な役割を有し、COX阻害薬は低い活性を示すか又は活性を示さないことが知られている(Dimatrino.et.al; 1987)。それらはアラキドン酸誘発モデルで良い抗炎症潜在力を有するので、5-リポキシゲナーゼ経路をも阻害していたと考えられる。アラキドン酸シクロオキシゲナーゼとアラキドン酸リポキシゲナーゼの二重阻害薬は、選択的シクロオキシゲナーゼ阻害薬より差次的な抗炎症作用を示すという仮説がある(Higgs et al., 1979; Higgs et al.1981)。それ以来リポキシゲナーゼ産物は、抗炎症反応及びシクロオキシゲナーゼ産物の重要な媒介物であると考えられている(Smith et al., 1980)。BW755C(Higgs et al., 1979)及びチメガジン(Timegadine)(Ahnfelt-Ronne., 1980;, Ahnfelt-Ronne., 1982)は、アラキドン酸代謝の二重阻害薬であると報告されている。実際にBW755Cは、ラットカラゲナンスポンジモデルの白血球遊走の減少においてインドメタシンと異なる効果を示す(Higgs et al., 1979; Higgs et al., 1983)。加えて、プロスタグランジン合成の弱い阻害を示すリポキシゲナーゼ阻害薬でもあるベノキサプロフェン(Benaxoprofen)は(Cashin et al., 1977)、関節炎ラットで骨損傷を抑制する際に無毒用量で多くのNSAIDSより高い効果をもたらすことが分かっている。該化合物はカラゲナン及びアラキドン酸モデルで活性を示していたので、これらの化合物がCOX及びLOXの両経路で作用していると仮定できる。
【0081】
表4:アラキドン酸誘発足浮腫モデル

【0082】
表4はデキストラン誘発モデルにおける異なる用量での足容積及び阻害百分率を示す。「*」は、それぞれのコントロールと比較したときの統計的有意性差異(p<0.01)を表す。記号「#」は、コントロールと比較した有意な差異(p<0.05)を示す。平均±S.E.M,(n=6)として値を表してある。
【0083】
実施例19:コットンペレット肉芽腫−亜急性モデル:
体重180〜220gのウィスターラットをエーテルで麻酔した。D'Arcyら(1960)に従ってラットの背中の皮膚を剪毛し、70%アルコールで消毒した。腰部に切り込みを作った。刃先の鈍い鉗子を用いて皮下トンネルを形成し、滅菌コットンペレットを肩甲部の両側に置いた。標準的な20mgのコットンペレットを秤量し、研究用に滅菌した。ラットをそれぞれ6匹の動物群に分けた。7日間連続して毎日それぞれ100mg/Kg及び5mg/kgの用量で標準物質(インドメタシン)及び試験化合物(BB-4、BN-14、及びBN-16)を投与した。8日目に全群のラットを麻酔用エーテルで屠殺した。ペレットを除去し、一晩37℃でインキュベーションを維持した。次に一定重量に達するまでペレットを60℃で乾燥させた。屠殺後にもペレットの湿重量を記録した。コントロール群及び他の処置群のペレットの平均重量を計算した。全試験群について肉芽腫重量の変化パーセントを計算してコントロール群と比較した。
BN-4、BN-14及びBN-16を亜急性モデル、コットンペレット肉芽腫で抗炎症活性について化合物評価した。この方法は、慢性炎症の漏出性、滲出性及び増殖性成分を評価するために広く利用されており、確立した慢性炎症反応の典型的特徴である。研究の7日目に移植コットンペレットを除去し、秤量して一晩オーブン内で維持した。全群について乾燥後に乾燥重量を記録した。湿潤及び乾燥の両肉芽腫重量は、コントロール群に比べて有意に減少した(図6及び7)。
コントロールと比較したとき、コットンペレット肉芽腫は試験化合物及びインドメタシンによってそれぞれ100mg/Kg及び5mg/Kgの用量で有意に阻害された(p<0.05)。コットンペレット肉芽腫の阻害は、標準物質インドメタシンに匹敵し、試験化合物と標準物質の間には有意な差異がなかった(P>0.05)。このモデルは、圧縮コットンペレットの皮下移植によってウィスターラットに誘発される異物肉芽腫に基づいている。数日後、流体浸潤に沿って組織学的巨細胞及び未分化結合組織を観察することができる。ペレットによって吸収された流体は肉芽腫の湿重量に大いに影響を与え、乾燥重量は形成された顆粒化組織の量とよく相関する(Spector W.G., 1979; Swingle K F., Shideeman F.E., 1972)。慢性炎症では単球浸潤並びに線維芽細胞の増殖及び滲出が起こる(Hosseinzadeh et al., 2000)。小血管又は肉芽腫の増殖によってこの増殖が蔓延してくる(Hosseinzadeh et al., 2000)。非ステロイド性抗炎症薬は肉芽腫のサイズを小さくする。これは顆粒球浸潤/炎症を阻害し、コラーゲンの生成を阻止し、かつムコ多糖(Lonac et al., 1996, Suleyman et al., 1999)線維を抑制することによる細胞反応に起因する。研究期間中、ラットに異常な症状及び死亡率は観察されなかった。
表5:コットンペレット肉芽腫研究に及ぼすチエノピリジン誘導体の効果
コットンペレット肉芽腫研究に及ぼすチエノピリジン誘導体の効果。表は、100mg/kgの用量の化合物についてコットンペレット重量及び阻害パーセントを示す。「*」は、インドメタシン群に比べて統計的な差異がないことを示す。平均±S.E.M,(n=6)として値を表してある。
【0084】
実施例20:潰瘍発生アッセイ:

【0085】
Cashinら(1979)の方法を利用した。実験前18時間は動物に食物を控えさせた。絶食動物(n=4)は化合物BN-4、BN-14及びBN-16をアカシアガム懸濁液として経口経路で100、200mg/kgの用量で受けた。インドメタシンコントロール動物は、該薬物を30mg/kgの用量で受けた。6時間後、ラットを殺し、胃を除去して小弯に沿って開いた。開いた胃を生理食塩水で洗浄し、潰瘍形成について観察した。粘膜表面上の病変を任意の尺度:0=病原なし;0.5=充血;1=1又は2つの病変;2=重症病変;3=非常に重症な病変;4=粘膜全体の病変に従って点数化した(Bani et al.,2000)。18時間の絶食後の試験化合物の経口投与は、全てのラットで200mg/kgの用量で潰瘍を形成させなかった(表6)。しかし、インドメタシン群の動物は胃の部分に重症の潰瘍形成を示す。さらに重要なことに、NSAIDSの一般的な副作用である胃潰瘍が化合物処置ラット群の胃内では全く存在しなかった。ロイコトリエン(leukotrine)産生増大はNSAIDSによるシクロオキシゲナーゼ阻害に由来する胃腸の損傷の発生に影響を与え(Rainsford et al., 1993; Gyomber et al., 1996)、かつ全ての化合物はシクロオキシゲナーゼ阻害(カラゲナン誘発足浮腫モデル)と共に5-LOX阻害(アラキドン酸誘発足浮腫モデル)に強力なな阻害作用を示したので、化合物の胃潰瘍なしで済ます効果の一部は、5-LOX阻害に対する化合物の効果に起因し得る。
【0086】
表6. 潰瘍発生活性

【0087】
表6は、異なる用量の化合物BN-4、BN-14及びBN-16について潰瘍指数を示す。粘膜表面上の病変を任意の尺度:0=病原なし;0.5=充血;1=1又は2つの病変;2=重症病変;3=非常に重症な病変;4=粘膜全体の病変;に従って点数化した。
実施例21:インビトロTNF-α及びNOの推定:
細胞培養及び処置:The RAW 264.7(マウスマクロファージ、細胞科学の国立センター)細胞をプラスチックのT-25培養フラスコ内で、37℃にて5%のCO2及び85%の相対湿度下、フェノール赤なしで10%熱活性化血清(57℃で30分間加熱)、100μg/mlのペニシリン、200μg/mlのストレプトマイシン、2mmolのL-グルタミン、1%の抗菌/抗真菌溶液(GIBCO/SRL)で補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で成長させた。2〜3日後にトリプシンEDTA溶液で細胞をトリプシン処理することによって細胞を培養フラスコから除去した。標準的なトリパンブルー色素排除法を用いて細胞数及び生死判別を行なった。12のウェルプレート内で同一培地を用いて各ウェル1ml当たり1×105個の細胞に細胞濃度を調整した。24時間のインキュベーション後、培地を各ウェルから除去し、異なる濃度(50μg、25μg、12.5μg)の合成化合物BN-4、BN-14及びBN-16を10μg/mlのLPSと共に含む新鮮な培地と交換し、正常コントロール(PBS)及びポジティブコントロール(Dexa, Roli)としてLPS(10μg/ml)を加えた。6時間でTNF-αの推定のため及び24時間後に一酸化窒素の推定のため、それぞれ各ウェルから200μlの培地を収集した。培地を除去した後に残った接着細胞を選択濃度における化合物の細胞毒性を決定するためのMTDアッセイに供した。
亜硝酸塩の測定:一酸化窒素濃度の決定のため、一酸化窒素の安定した変換産物である亜硝酸イオン(NO2-)をGriess試薬(Chi et, al., 2001)を用いて測定した。24時間のインキュベーション後、細胞培養プレートの各ウェルから体積100μlの上清を96ウェルマイクロプレートに移してから同等体積のGriess試薬(1%のスルファニルアミド、0.1%のN-(1-ナフチルエチレンジアミン塩酸塩、2.5%のH3PO4)を室温で上清に加えた。10分後に570nmでの吸光度をマルチ検出マイクロプレートリーダーで決定した。標準曲線を用いて一酸化窒素濃度を計算した。
TNF-αの測定:R&D Systemsによって供給されたELISAキットでTNF-αをアッセイした。PBS中0.8μg/mlのヤギ抗マウスTNF-αの体積100μlをコートして室温で一晩インキュベートした。プレートをPBS/0.05%Tween20で3回洗浄し、PBS中1%のBSAを室温で2時間添加して遮断した。プレートを再び同一緩衝液で3回洗浄し、異なる濃度の100μlのサンプルと標準物質(組換えマウスTNF-αとPBS中1%のBSA)を三通り添加してRTで2時間インキュベートした。洗浄後、HRPに抱合されたヤギ抗マウスTNF-αを100μl加えてRTで2時間インキュベートした。次に100μlのTMB基質(トリメチルベンジジンとH2O2)を全てのウェルに加えた。20分後、停止溶液を全てのウェルに添加し、450nmで光学密度を測定した。回帰分析によって標準曲線からTNF-α濃度を計算した。
【0088】
一酸化窒素阻害アッセイ−ニトロプルシド(Nitroprosside)ナトリウム法:
この手順は、生理的PHでニトロプルシドナトリウム水溶液が自然に一酸化窒素を生成し、これが酸素と相互作用して、Griessを用いて推定できる亜硝酸イオンを生じさせる方法に基づく。この実験ではリン酸緩衝食塩水(pH 7.4)中にニトロプルシドナトリウム(20mM)を含む反応混合物を、種々濃度の合成化合物がある場合と無い場合で可視多染性光源(25Wタングステンランプ)下で25℃にて30分間インキュベートした(Marcocci et al., 1994)。反応混合物を等量のGriess試薬(5%リン酸中の1%スルファニルアミド及び水中0.1%のナフチルエチレンジアミン二塩酸塩)(Green et al., 1982)と混合して570nmで吸光度を測定した。試験化合物(BN-4、BN-14、BN-16)及び標準物質による亜硫酸イオン形成の阻害をコントロールに関して計算した。
作用機序を決定するため、TNF-α及びIL-1b及び一酸化窒素を含むインビトロ抗炎症法のため全試験化合物をスクリーニングした。3つの試験化合物は全て種々の濃度(50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml)でマクロファージ株化細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を抑制した。化合物BN-4、BN-14、BN-16はTNF-αで良い阻害を示し、種々の濃度で標準物質デキサメタゾン及びロリプラムと比較した場合に有意な統計的差異はなかった(p>0.05)。しかしBN-4は12.5μg/mlの濃度では阻害を示さなかった。TNF-αは多面発現性サイトカインであり、急性及び慢性の両炎症で重要な役割を果たす(Holtzmann et al., 2002)。いくつかの起炎物質(inflammagen)はTNF-αの合成を誘発する能力を有する。炎症のいくつかの小分子媒介物質の形成はTNF-αに関連しており、かつ決定的に炎症を制御する媒介物質の範囲に寄与する。TNF-αは、好中球及びリンパ球の内皮細胞への接着を促進することによって炎症細胞の浸潤を促す(Dinarello, 1997)。TNF-αが特異的に遮断されると、炎症の重症度が低減する。
【0089】
マクロファージ株化細胞からのNOの放出に及ぼすチエノピリジン誘導体の効果:
化合物BN-4、BN-14、BN-16は、LPS処置したコントロールサンプルに比し、種々の濃度の試験化合物の添加24時間後にマウスマクロファージ培養株化細胞からのNOの放出を有意に(p<0.01)抑制した(図10)。NOは非常によく脂肪に溶解するフリーラジカルであり、多くの乱雑な役割を有する。炎症中にNO合成が増幅される。いくつかの研究は、炎症がNOレベルと相関することを実証している(Miller and Grisham, 1995)。ROS(反応性酸素種(Reactive Oxygen Species))及びRNS(反応性窒素種(Reactive Nitrogen species))は、突然変異を発生させ、DNA損傷を引き起こす(Salgo, Bermudez; Squadrito, & Pryor, 1995)。マウスマクロファージは、インターロイキン-1β、インターフェロン-γ又はエンドトキシン(LPS)等のサイトカインによって刺激されて大量のNOをインビトロで産生し得る。サイトカイン及びエンドトキシンがNO及びその代謝物、特にペルオキシナイトライトの過剰産生を誘発することが分かったので(Bloguh & Zafirioy, 1985)、細胞のNO放出の定量は興味深い。両方とも主に炎症障害と関係がある多くの病的条件に寄与すると思われる(Clancy & Abramson, 1995)。従って、マウスマクロファージ様株化細胞、例えばRAW 264.7及びJ744は、iNO系に関するインビトロ研究の遂行に適した細胞モデルである。LPS処置したマクロファージ中のNOレベルを決定するために用いたGriessアッセイが、抗炎症の可能性がある合成化合物のバイオガイド(bio-guided)分画に適した方法であることが分かった。
ニトロプルシドナトリウム法に及ぼすチエノピリジン誘導体の清掃効果:
Greiss試薬で判定されるように、化合物BN-4、BN-14、BN-16は、ニトロプルシドナトリウム法で有意にNO放出を阻害した(図11)。NO2、N2O4、N3O4及びNO2のような安定なNO産物は反応性(rective)であり、多くの細胞成分の構造的及び機能的挙動を変えることに関与する。リン酸緩衝食塩水中のニトロプルシドナトリウム溶液を25℃で2時間インキュベーションすると、線形ティルネ(tirne)依存性ニトライトが産生されることとなり、これは試験合成化合物によって低減される。近年、NOが宿主の防御機構の一部として作用することが明白になってきた。NOは、感染及び炎症中に免疫学的刺激作用を介して非常に大量に生成され、ウイルス及び侵襲性生物に対して細胞障害活性又は細胞分裂停止活性を示す(ref)。しかしながら、このようなNOの増加は、宿主細胞に対して有害作用をも有するので、組織傷害を引き起こす(ref)。例えば、虚血再灌流中に産生された過剰のNOは、02のように、毒性ラジカルとして作用し、かつ腎(rrenol)機能障害を引き起こす(ref)。抗感染及び抗炎症反応は、炎症誘発性媒介物質、例えばプロスタグランジンの反応性酸素種及びNOの形成の阻害を通じて達成される。
【0090】
実施例22:抗癌活性:
A431(皮膚癌)、Colo-205(結腸癌)、A549(肺癌)株化細胞は細胞科学国立センター(National Center for Cell science)(NCCS), Pune, Indiaから得た。DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)、MTT[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド]、トリプシン、EDTAは、Sigma Chemicals CO(st.Louis, MO)から購入し、ウシ胎仔血清はArrow labsから購入し、96ウェル平底組織培養プレートはTarsonから購入した。
A431、Colo-205、A549株化細胞を、10%ウシ胎仔血清、100μg/mlのペニシリン、200μg/mlのストレプトマイシン、2mMのL-グルタミンで補充したDMEM培地内で接着細胞として育て、5%CO2の加湿雰囲気内で培養を維持した。DMSO中で試験分子について10mg/mlの原液を調製した。原液から無菌水で種々の希釈を行なって必要な濃度を得た。10%FBSで補充したDMEM100μl中、各ウェル当たり1×104個の細胞(細胞数はトリパンブルー色素排除法によって決定)の密度でA431、Colo-205、A549株化細胞を播種した。播種12時間後、上記培地を、10%FBSで補充した新鮮なDMEMと交換した。次に、上記原液から10μlのサンプルを三通りの各ウェルに加えて、100、50、25、10μg/ウェルの最終濃度を得た。上記細胞を37℃と5%CO2で48時間インキュベートした。48時間のインキュベーション後に上記培地をFBSなしの新鮮な100μlのDMEMと交換し、これに10μlのMTT(5mgを1mlのPBSに溶解)を加えて37℃と5%CO2で3時間インキュベートした。3時間のインキュベーション後、上記培地をマルチチャネルピペットで除去してから200μlのDMSOを各ウェルに加えて37℃で15分間インキュベートした。最後に、分光光度計(Spectra Max, Molecular devices)を用いてプレートを570nmで解読した。異なる株化細胞を用いたMTTアッセイの結果を下表に示す。
実施例23:急性毒性研究及び抗関節炎活性
完全フロイントアジュバント(Difco)、インドメタシンはSigma Aldrich, USAから購入した。R & D Bio SystemsのTNF-α及びIL-1βキットを使用した。
【0091】

【0092】
試験動物:150〜180グラムの雄性白皮症ウィスターラットを使用した。ラットをポリプロピレンケージ内で標準的な実験室条件下(12:12時間の明/暗サイクル、24℃)にて維持し、市販のラット食餌(Pet Care, Bangalore)及び水を自由に与えた。ラットをそれぞれ6匹の6群に分けた。IICTの動物実験委員会の許可を得た後に実験を行なった。研究開始前7日間全ての動物を隔離して実験室条件に気候順応させた。この期間中、総体的な健康及び試験に対する適合性について動物を観察した。
【0093】
(急性経口毒性)
一連のチエノピリジン誘導体では、試験した全てのモデルで化合物BN-4、BN-14及びBN-16が良い抗炎症潜在力を示す。これらの結果に基づいて、慢性関節炎スクリーニングに進む前に急性経口毒性によって安全性について化合物を評価した。OECD(420)が採用した固定用量法によってOECDガイドラインに従って急性経口毒性研究を行なった。研究は、小数の動物を用いた予備観測を含めて、毒性についての用量効果関係を引き出し、かつ主研究のための用量選択に関する情報を提供した。
予備観測研究では、各性別の単一動物に投与した種々の用量効果を逐次様式で調べた。観測研究は一般的に最小致死量の推定などの用量−毒性関係に関する情報をもたらす。主研究では、試験品を5匹の雄性動物と5匹の雌性動物の群に固定用量(5、50、500及び2000mg/Kg)の1つを投与する。用量は観測研究から導かれる。用量は、死亡率をもたらすと予測される用量の直下である。選択した用量レベルで明白な毒性が見られなければ、次のさらに高い用量レベルで該物質を再試験すべきである。初期用量レベルで動物が死亡するか又は重度の毒性反応が動物福祉の理由のため研究から動物を除去する必要がある場合、次のさらに低い用量レベルで該物質を再試験する。観測研究と主研究の両方のデータを考慮して、最大耐量の決定に関する判断を下すことができた。
観測研究:動物を一晩絶食させた。絶食期間後、動物を秤量し、経口経路で試験品を投与した。試験物質を投与した後、さらに3時間食物を控えさせた。観測研究では、種々の用量の効果を各性別の単一動物で調べた。投与は逐次的であり、少なくとも24時間後に次の動物に投与した。連続して24時間まで、その後7日まで、毒性の兆候及び症状について全動物を慎重に観察した。観測研究は、試験品の5、50、500及び2000mg/kgの連続用量で行なった。選択した初期用量が重度の毒性を引き起こさない場合、次のさらに高い用量を選択した。この観測研究では、明白な毒性を引き起こすが、死亡しない用量を同定した。用量の増大は2000mg/kgまで続けた。各用量群で観察された毒性の兆候及び症状を表にした。
試験化合物を毒性について試験した。アカシアガム懸濁液を用いて懸濁液を作ることによって単一用量として一晩の絶食後に化合物を投与した。1週間毒性症状について動物を観察した。次に研究を14日間続けて毒性と死亡率を観察した。化合物BN-4及びBN-16は、研究全体を通して、用量5、50、500、及び2000mg/kgで如何なる毒性症状及び死亡率をも示さない。観測研究に基づき、当該化合物のラット及びマウスでの主研究のため用量2000mg/kgを選択した。化合物BN-14は、ラットでは2000及び1250mg/kgの用量で毒性であり、マウスでは2000mg/kgの用量で毒性だった。ラット及びマウスでの主研究のためそれぞれ最大用量1060mg/kg及び1250mg/kgを選択した。
【0094】
チエノピリジン誘導体の急性経口毒性(ラットの観測研究)

【0095】
チエノピリジン誘導体の急性経口毒性(ラットの観測研究)

【0096】
チエノピリジン誘導体の急性経口毒性(ラットの観測研究)

【0097】
チエノピリジン誘導体の急性経口毒性(ラットの観測研究)

【0098】
チエノピリジン誘導体の急性経口毒性(ラットの観測研究)

【0099】
チエノピリジン誘導体の急性経口毒性(ラットの観測研究)

【0100】
(主研究)
この研究では各種の少なくとも10匹の動物(5匹の雄と5匹の雌)を用量レベルに対して使用した。動物を一晩絶食させて試験品を1%のアカシアガム懸濁液として経口投与した。この研究で用いる用量は、4つのレベル5mg/kg、50mg/kg、500mg/kg及び2000mg/kg、すなわち観測研究で明白な毒性もたらしたが死には至らなかった用量の1つから選択される。皮膚及び毛皮、目、粘膜、呼吸器系、循環器系、並びに自律神経系及び中枢神経系の変化を含めたケージサイド観察とは別に、毒性の以下の兆候及び症状について動物を観察した。動物を各種で14日間毒性症状について観察し、所見を表にする。「0」日及び終了日に、様々な生化学的及び血液学的パラメーターを観察した。主研究中、餌の消費量及び体重増加のような身体パラメーターをも記録した。5匹の雄と雌を選んで化合物について毒性研究を行なった。化合物BN-4、BN-16は2000mg/kgの用量で安全であることが分かり、如何なる毒性症状をも示さなかった。BN-14は、ラットでは用量1060mg/kg、またマウスでは1250mg/kgの用量では毒性でなかった。研究中、ラットでもマウスでも異常な挙動は観察されなかった。主研究においてラットとマウスの全群(BN-4、BN-14、及びBN-16)で有意な変化は観察されなかった。研究中、身体パラメーターの体重を測定し、全化合物群の動物で体重の均一な増加が観察された。血液学的及び生化学的パラメーターは、ラット及びマウスの0日と比較した場合、十分正常範囲内だった。上記観察に基づき、合成化合物は2000mg/kgまで安全だった。最大耐量は、ラットとマウスの両方でBN-4及びBN-16については2000mg/kg超えであることが分かった。化合物BN-14は、ラットでは用量2000、1250mg/kg、またマウスでは2000mg/kgで毒性症状を示した。BN-14の最大耐量は、ラットでは1060mg/kg、マウスでは1250mg/kgであることが分かった。
【0101】
チエノピリジン誘導体の急性経口毒性(ラットの主研究)

【0102】
チエノピリジン誘導体の急性経口毒性(ラットの主研究)

【0103】
(両FCA誘発関節炎研究におけるチエノピリジンの抗関節炎効果)
完全フロイントアジュバント(FCA)誘発関節炎は、治療薬を試験するため関節リウマチの病原を研究するのに広く使用されているモデルである(Mizushima et al.,1972)。
関節炎の誘発:完全フロイントアジュバント(FCA)を注射して関節炎を誘発した。必要量のFCAを秤量してパラフィン油(DIFCO Laboratories)で懸濁液を調製し、右後足の足底部に0.5mg/ラットの用量で投与した。7日後、全動物の後足にブースター注射を与えた。
実験デザイン:動物を各6匹の6群に分け、以下のように命名した:
群I−正常コントロール;群II−関節炎コントロール;群III−合成化合物BN-4を投与した関節炎ラット;群IV−化合物BN-14を投与した関節炎ラット;群V−BN-16を投与した関節炎ラット;群VI−標準薬物インドメタシンを投与した関節炎ラット。試験化合物及びインドメタシンは、アジュバント注射と同じ日にそれぞれ100及び2.5mg/kgの用量で始めた。試験及びインドメタシン用量をFCA誘発モデルでは21日まで、またコラーゲン誘発モデルでは24日まで続けた。研究期間中、足容積を5日目、12日目、18日目及び21日目に測定し、動物の体重も様々な時間間隔で記録した。各時点で足容積の阻害百分率をコントロール群の平均足容積に対して計算した。FCAモデルでは、動物を21日目に頸椎脱臼によって屠殺した。動物を屠殺する前に、血液を収集して総白血球数、TNF-α及びIL-1βの推定に用いた。
アジュバント関節炎の臨床評価:14日目、18日目及び21日目に関節炎並びに関節周囲組織の紅斑及び炎症の病変の外観についてラットを検査した。関節炎の点数化尺度は以下のとおりである:
0=変化なし
1=軽い炎症
2=軽い膨潤及び足の紅斑
3=ひどい膨潤及び足の紅斑
4=ひどい変形及び足を使えない。
各ラットの関節炎スコアは、両後足のスコアの合計であり、各ラットについて最大スコアは8だった。
体重指標:関節炎研究中、体重の変化を利用して疾患の過程及び抗炎症薬療法に対する反応をも評価した(Winder et al., 1969)。関節炎の発生率及び重症度が増すにつれて、実験期間の経過中ラットの体重の変化も減少した。ラットの全試験群は体重の有意な増加(p<0.01)を獲得し、その増加は正常コントロール群に匹敵する。FCA関節炎研究においてラットの関節炎群では体重の有意な減少が観察された。
【0104】
体重指標−FCA研究

【0105】
関節炎点数化:14日目、17日目及び21日目に関節炎点数化を行なった。任意の尺度を用いて、種々の群について点数化を行ない、関節炎コントロール群とそれぞれの時間間隔で比較した。研究の17日目及び21日目には全試験化合物BN-4、BN-14及びBN-16について関節炎の点数が有意に減少した(P<0.05;P<0.01)。疾患の進行は、一方又は両方の足首関節の浮腫及び紅斑の増加後、中足骨及び指節間の関節の関与によって示唆された。赤く膨潤した足といった完全に発達した関節炎は、炎症開始後8〜10日だった。関節炎コントロール群の臨床スコアは、FCAの免疫化後約14日に達した。
足容積の測定:関節炎研究において、足の膨潤は、炎症の度合及び薬物の治療効力を評価する主要因子の1つである(Begum and Sadique.,1988)。ラットは炎症細胞の影響、関節軟骨のびらん及び骨破壊によって複数の関節で慢性膨潤を発症するので、本研究では関節炎を誘発するためにラットを選択した。それはヒトの関節リウマチ疾患に密接な類似性を有する(Singh and Majumdar.,1996)。足の膨潤の定量は、炎症の度合及び薬物の治療効力を評価するための明らかに単純で感度が高く、迅速な手順である。慢性炎症は、マクロファージの蓄積、サイトカイン(TNF-α、IL-1β)、GM-CSF、インターフェロン及び血小板増殖分化因子(Platelet Growth Differentiation Factor)(PGDF)のような炎症媒介物質の放出に関与する。これらの媒介物質は、重度の身体障害につながり得る疼痛、骨及び軟骨の破壊の原因である(Laurence, 1996)。
健康なウィスターラットを研究用に選択した。アジュバント注射が、注射された足の進行性膨潤をもたらし、時間とともに日21まで増大した。完全フロイントアジュバント誘発関節炎のこの予防モデルでは、全ての関節炎ラットへのBN-4、BN-14及びBN-16による処置が有効であり、かつ研究で使用した標準薬物に匹敵することが分かった。BN-4及びインドメタシンは5日目に足容積を有意に減少させた(p<0.05)。関節炎コントロール群と比較した場合、BN-14及びBN-16は、5日目に有意な減少を示さなかった。BN-4、BN-14及びBN-16化合物は12日目に足容積の有意な阻害を示した(p<0.01)。全ての3つの化合物は、関節炎コントロールと比較した場合、18日目に足容積の有意な阻害を示した(p<0.01)。コントロール群に基づいて抗関節炎活性を計算し、阻害パーセントとして表した。BN4、BN14及びBN16の抗関節炎活性は、12日目、18日目及び21日目に標準物質インドメタシンに匹敵した(P>0.05)。FCAモデルではBN-4、BN-14、BN-16は有意に(p<0.01)足の膨潤を減少させ、予防モデルで動物が関節炎を発症するのを防止した。全ての3つの化合物は異なる時間間隔で有意な阻害を示し、活性は標準物質インドメタシンに匹敵する。
FCA誘発関節炎に及ぼす合成化合物BN-4、BN-14、及びBN-16の効果:表は、異なる時間間隔での足容積と阻害百分率を示す。「#」は、インドメタシン群と比較したときの有意な差異を示し(P<0.05);「*」は、インドメタシン群と比較したときに有意な統計的差異がないことを示す(p>0.05)。各群6匹の動物について平均±S.E.M.として結果を示してある。
【0106】

【0107】
(FCA誘発モデル)
(終了日の総WBC数)
関節炎研究では、ラットの全ての群について研究の終了日に総WBC数を測定した。白血球は体の免疫系の主成分である。WBC数が暗示するものとしては感染及び炎症疾患がある(Maria et al., 1983)。関節炎条件では、炎症反応としてのIL-1βの放出のためWBC数の軽度〜中程度の増加がある。IL-1βは、顆粒球とマクロファージコロニー刺激因子の両方の産生を増やす。本研究では、ラットの関節炎群で総WBC数が増加したが、一方でラットの試験群では、FCA及びコラーゲン誘発モデルの両方で総WBC数が有意に抑制された(p<0.05;p<0.01)。標準薬物インドメタシンは両モデルでWBC数の有意な(p>0.05)減少を示さなかった。アジュバント関節炎の発症は、免疫学的機能、特に遅延型過敏反応に関与すると考えられていた(Swingle, 1974; Chang, 1984; Mohr and Wild.1976)。免疫抑制薬、シクロホスファミド及びアザトプリンは、ラットアジュバント関節炎の予防レジメでのみ有効であると報告され(Swingle, 1974; Walz et al., 1971; Pepper et al., 1971)、免疫媒介物質(金塩及びD-ペニシラミン)も活性であるが、それらの効果は治療計画又は薬物投与量に依存する。しかし、合成化合物の免疫調節性研究は実施しなかった。様々な群の総WBC数は以下のとおりである;正常コントロール(13.03±3.25)、関節炎コントロール(25.90±1.30)、BN-4(18.53±1.36)、BN-14(19.70±0.66)、BN-16(17.3±1.63)及びインドメタシン(20.67±0.59)。コラーゲン誘発研究では細胞カウンターを用いて総WBC数を分析し、総数は以下のとおりである;正常コントロール(11.95±2.26)、関節炎コントロール(18.88±0.53)、BN-4(13.57±0.63)、BN-14(14.88±2.64)、BN-16(15.70±1.28)及びインドメタシン(19.70±2.23)。
【0108】
(ラット足組織−FCAモデルにおけるTNF-α及びIL-1βの発現に及ぼすチエノピリジン誘導体の効果)
炎症誘発性サイトカインTNF-α及びIL-1βは、動物モデル及びヒトの関節炎発症の病態生理で重要な役割を果たすことが分かっている(ref)。関節炎の関節内でのこれらのサイトカインの作用は多様のようであり、接着分子及び化学誘引物質分子の発現並びに白血球の流入及び活性化の促進が包含される。
FCA誘発研究では、終了日に足組織を収集し、全群についてELISA法でTNF-α及びIL-1βレベルを推定した。ラットの関節炎群では、正常コントロール群と比較したときサイトカインレベルが有意に増加していた。足組織のサイトカインの測定は、化合物BN-4、BN-14、及びBN-16が、関節炎コントロールと比較したときIL-1β、TNF-αレベルの有意な(P<0.05)阻害を示すことを明らかにした。足組織内のTNF-αはIL-1βよりさらに有意に(p<0.01)抑制された。
ビヒクルで処置したCIAラットの炎症プロセスは炎症誘発性サイトカインTNF-α及びIL-1βの全身レベルの実質的な増加を示した;一方でチエノピリジン誘導体BN-4、BN-14及びBN-16は予防処置における100mg/kg/日の用量で該レベルを抑制した。これらの炎症誘発性サイトカインは局所又は全身の炎症プロセスを伝播し、かつそれぞれ細胞外マトリックスの分解及び骨のびらんに決定的に寄与するメタロプロテイナーゼ(MMP)及び破骨細胞の生合成及び分泌を誘発するのを助けると考えられる(Burger et al.,1998; Gravallese and Goldring,2000; Smolen and Steiner,2003)。コラーゲン誘発研究では、サイトカインレベルを研究の24日目に決定した。ビヒクルコントロールに比し、化合物はIL-1βのレベルを有意に減少させた。足組織内では化合物BN-4、BN-14は足組織内のTNF-αとIL-1βの両方でより有意な阻害(p<0.01)を示したが、一方でBN-16及びインドメタシンは中程度の阻害を示した(p<0.05)。
【0109】
ラット足組織−FCAモデルのTNF-α及びIL-1β

【0110】
(血清中のサイトカインの推定)
終了日に血液サンプルを収集し、FCA及びコラーゲン誘発研究のTNF-αとIL-1βの両レベルの推定のために使用した。ELISAキットを用いて両パラメーターを決定した。研究した2つのモデルにおけるラットの血清サンプルではTNF-αの発現は非常に少ないのでTNF-αを定量できなかったが、一方で血清中のIL-1βの発現は良かった。経口投与による合成化合物の毎日の処置は、関節炎コントロール群と比較したとき、血清IL-1βレベルを下げるのに有効だった(P<0.01)。コラーゲン研究では、関節炎コントロール群と比較したとき化合物BN-4及びBN-16は血清中のレベルをより有意に(p<0.01)減少させ、BN-14、インドメタシンは、中程度の阻害を示した(p<0.05)。
【0111】
ラット血清中のIL-1β−FCA誘発関節炎

【0112】
(アデノシン拮抗活性)
以前の実験結果でチエノピリジンは強力な細胞障害性及び抗炎症性薬物として立証された。細胞障害性MTTアッセイでは、これらの分子の活性はアデノシン受容体の関与による可能性がある。さらに、これらの成分の気管支拡張活性を見い出すため、及びそれらの作用におけるアデノシン受容体の関与を見い出すため、アレルギーマウスモデルにおいて非観血的及び観血的アデノシン媒介気管支収縮及び肺炎症を引き起こした。
国立栄養研究所(National Institute of Nutrition)から6〜8週齢の特有の病原のない雄性マウスを得た。ブタクサのない食餌で動物を維持した。この研究で用いた全ての実験プロトコルは動物実験委員会によって認可されたプロトコルに従った。Fanら(2002)によって記載された改変手順に従って感作を行なった。マウスを日1及び日6にブタクサアレルゲン(200μg/200μlの注射用水)のi.p.注射で感作した。非感作コントロール動物は、同体積の注射用水のみを受けた。感作10日後、マウスをプレキシガラス(plexiglas)のチャンバーに入れ、3日間朝と夕の2回0.5%ブタクサ又はコントロールとして0.9%食塩水を20分間で抗原投与した。次にマウスをそれぞれ6匹の動物から成る種々の群に分割した。感作なしのコントロールを含む群;感作群及び標準物質群と共に試験分子の群に分けた。ブタクサによる最後の抗原投与の24時間後、アカシア懸濁液として試験分子及びテオフィリン(100mg/kg(体重))の経口用量をマウスに与えた。経口用量の投与2時間後、マウスにアデノシン溶液(24mg/ml)で抗原投与した。動物にペントバルビタールナトリウム(0.1mlの200mg/ml ip)で麻酔をかけた後、キモグラフを用いて呼吸の変動を記録した。次に、マウスを屠殺し、気管をカニューレ処置して気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid)を収集した。気管カニューレを介して1mlのリン酸緩衝食塩水を肺にポンピングし、サンプルを収集することによってこれを行なった。BAL液の分析を行なって細胞の差異を得た。BAL液を室温で6分間1500rpmで遠心分離させた。上清を除去した後、BAL細胞を1mlのリン酸緩衝食塩水に再懸濁させた。次に血球計数器チャンバー内で手作業にて総細胞を数えた。標準形態判断基準に従って少なくとも300の細胞の白血球百分率(differential count)を作成し、結果を下表に載せた。
【0113】

【0114】
(抗糖尿病活性)
化学薬品:α-グルコシダーゼ[(EC 3.2.1.20)I型:パン酵母由来]、ラット腸アセトン粉末(粗製腸α-グルコシダーゼ源として)、α-アミラーゼ[EC 3.2.1.1)VIB型:ブタ膵臓由来]、p-ニトロフェニルα-D-グルコピラノシド、3,5-ジニトロサリチル酸、可溶性ジャガイモデンプン及び1-デオキシノジリマイシン(deoxyrojirimycine)は、Sigma Chemical Co., St Louis, MO, USAから購入した。分析グレードの他の化学薬品は現地製造業者から購入した。
実験動物:本研究では両性別のウィスターラットを用いた。研究で使うために選択した動物は均一の年齢と体重の動物だった。最小40匹のラットから最終的に20匹のラットを選択した。それらの体重は150〜180gmの範囲だった。獣医が動物の健康状態を確認した。動物をそれぞれ6匹のラットを含むコントロール群、試験群及び標準物質(アカルボース)群に分けた。研究開始前の少なくとも2週間動物を気候順応させた。NIN, HYDERABAD, India製のペレット食餌及び飲料水(自由に)を動物に与えた。
統計分析:一元配置分散分析(one-way ANNOVA)後、Dunnetの多重比較手順を実施することによって、インビボ実験の結果を評価した。0.05のp値で有意性を評価した。
化合物の調製:合成化合物の必要量を秤量してアカシアガムで懸濁液(2%)を作製した。経口経路で試験化合物を全ラットに投与した。アカシアガム懸濁液でアカルボース懸濁液をも調製して経口経路で与えた。
インビトロα-グルコシダーゼ阻害アッセイ:報告された方法(Babu et al., 2004; Mc Dougall et al., 2005)のように、酵母及び腸α-グルコシダーゼの阻害活性を判定した。生理食塩水中のラット腸アセトン粉末(100%w/v)を適切に超音波処理し、遠心分離後に上清を粗製腸α-グルコシダーゼ源として使用した。要するに、20μlの試験サンプル(100mg/ml DMSO溶液)を96-ウェルマイクロプレート内で100μlの100mMリン酸緩衝液(pH 6.8)で再構成し、50μlの酵母α-グルコシダーゼ(0.76μ/ml 同緩衝液中)又は粗製腸α-グルコシダーゼと5分間インキュベートした後に50μlの基質(5mM、同緩衝液で調製したp-ニトロフェニル-α-D-グルコシダーゼ)を加えた。基質とのインキュベーション5分後、分光光度的に(Spectra Mas Plus 384, Molecular Device corporation, Sunnyvale, CA, USA)p-ニトロフェノール(nitrophenyol)の遊離を405nmで測定し、試験サンプル用の個々のブランク(基質を50μlの緩衝液と交換した)を調製してバックグラウンド吸収を補正し。コントロールサンプルは、試験サンプルの代わりに20μlのDMSOを含有した。(A-B/A)×100(式中、Aは試験サンプルなしのコントロールの吸光度を表し、Bは試験サンプル存在下の吸光度を表す)として酵素阻害百分率を計算した。腸α-グルコシダーゼアッセイ及びIC50値(50%の酵素活性を阻害するために必要な濃度)の計算の場合、少なくとも(10mg/ml)DMSOを考慮して濃度依存性酵素阻害を調査し;全ての試験を二通り行なった。平均阻害値から対数回帰分析を適用してIC50値を計算した。
【0115】
これらの化合物を抗糖尿病活性についてスクリーニングするためには酵母及び哺乳動物(ラット腸)の両α-グルコシダーゼモデルを使用した。この系列の2つの化合物、BN-2及びBN-14は、α-グルコシダーゼ酵素阻害活性について用量依存様式で強力な有意な阻害活性(p>0.05;p>0.01)を示した(表6並びに図1及び2)。BN-2及びBN-14はそれぞれ1.25及び5mg/mlの用量で標準物質アカルボースに匹敵する。系列のうちの5つ、BN-5、BN-6、BN-13、BN-15、BN18及びBN-19は酵母α-グルコシダーゼ酵素に対して中程度の阻害活性を示した(p<0.05)。哺乳動物α-グルコシダーゼについては、以下の化合物、BN-13、BN-14、BN-15及びBN-17が有意な阻害活性(p<0.01)を示した(図3及び図4)。系列の5つ、BN-2、BN-3、BN-4、BN-7及びBN-18は哺乳動物α-グルコシダーゼ酵素に対して中程度の阻害活性を示した。化合物BN-13、BN-14、BN-15及びBN-17は、α-グルコシダーゼ阻害アッセイにおいて異なる濃度5、2.5、1.25、0.62、0.31、0.15、0.07、0.03mg/mlで濃度依存性減少を示した。このように、試験した最高濃度5mg/mlが最大阻害効果76.13%、58.37%、88.87%、75.39%を示した。
【0116】
インビトロα-グルコシダーゼ阻害アッセイ

【0117】
哺乳動物α-グルコシダーゼ阻害活性(用量反応研究)

【0118】
表は、哺乳動物α-グルコシダーゼ阻害アッセイについてのチエノピリジン誘導体の用量反応研究を示す。平均±S.Eとして値を示してある。
【0119】
酵母α-グルコシダーゼ阻害アッセイ−用量反応研究

【0120】
表は、酵母α-グルコシダーゼ阻害アッセイについてのチエノピリジン誘導体の用量反応研究を示す。平均±S.Eとして値を示してある。
【0121】
α-アミラーゼ阻害アッセイ:Aliら(2006)のアッセイ法を採用し、一続きのマイクロプレート解読法に従って改変した。要するに、2mLのエッペンドルフ(Eppendorf)管中6.7mMの塩化ナトリウムを含む160μLの20mMリン酸緩衝液(pH 6.9)で40μLの試験サンプル(10mg/mL DMSO)を再構成し、200μLのブタ膵臓α-アミラーゼ(4U/mL;氷冷蒸留水で調製)と5分間インキュベートした。400μLの可溶性ジャガイモデンプン溶液(0.5%w/v、20mMリン酸緩衝液中、pH 6.9)を添加して反応を開始させた。インキュベーション後ちょうど3分で400μLのDNS発色試薬(1.0gの3,5-ジニトロサリチル酸、30gのナトリウムカリウムタルトラート及び20mLの2N NaOHを蒸留水中で最終体積100mLに)を添加した。閉管を10分間水浴(85〜90℃)に入れて発色させ、その後冷却した。50μLの反応混合物を96-ウェルマイクロプレート内で175μLの蒸留水で希釈した。上述したように、分光光度的に540nmで混合物の吸光度を測定することによって、α-アミラーゼ活性を決定した。個々のブランクを調製して試験サンプルによるバックグラウンド吸収について補正した。この場合、基質の添加前にDNS溶液を管に加えた。酵素活性の阻害百分率を上述したように計算した。このアッセイでは全ての試験を二通り行なった。
【0122】
チエノピリジン誘導体をブタα-アミラーゼ阻害活性についてスクリーニングした。このモデルで強力な阻害活性を示す化合物もあった。全ての化合物について反応中に放出されたマルトースの量をマルトース標準グラフを用いて決定した。個々の化合物のマルトース濃度に基づいて試験化合物の阻害百分率を計算した。α-アミラーゼは、デンプン及び関連多糖類のα-1,4-グリコシド結合の加水分解を触媒し、食後高血糖(PPHG)抑制の標的にもされている。この系列の化合物中、BN-8、BN-17、BN-15、BN-13及びBN-2は、α-アミラーゼに対して強力な阻害活性を示した。化合物BN-2、BN-6及びBN-16は、α-アミラーゼ内で中程度の阻害を示した。反応中に放出されたマルトースの量に基づいてアミラーゼ阻害百分率を計算した。化合物BN-8、BN-17、BN-15、BN-13は、それらのそれぞれのコントロールと比較したときに有意な低量のマルトース濃度を遊離させた(p<0.01)。マルトース放出の有意な減少は、炭水化物の消化の原因であるアミラーゼ酵素の阻害の良い指標である。α-アミラーゼとグルコシダーゼの両阻害薬活性を有する化合物は腸内で炭水化物の消化に関与する主酵素を両方阻害するので、抗糖尿病薬としてさらに有用であ
【0123】

【0124】
表は、インビトロ研究で10mg/mlの濃度のチエノピリジン誘導体のα-アミラーゼ阻害百分率を示す。
デンプンモデルによる抗糖尿病活性:Raoら,2009;Tiwariらの方法を利用した。動物を一晩(12時間)絶食させた。試験群及び標準物質群に投与する前に全ての動物について基礎血糖値を推定した。これを「0」分示度と名付けた。試験化合物及びアカルボースをそれぞれ100mg/kg(体重)及び10mg/kg(体重)の用量で試験群及び標準物質群のラットに経口投与した。試験化合物の投与後、全3群の動物はデンプン水溶液(2gm/kg(体重))を受けた。全3群でデンプンの投与後30、60、90及び120分に血糖値をモニターした。各時点でコントロール群に対して血糖値の上昇百分率を計算した。結果を表に示す。
インビトロ実験の結果に基づいて、デンプン負荷モデルについてのインビボ抗糖尿病活性用に4つの化合物を選択した(BN-13、BN-14、BN-15、及びBN-17)。これらの化合物は、インビトロモデルの哺乳動物α-グルコシダーゼ及びα-アミラーゼの両阻害活性について良い活性を示した。表に示すように、30分毎に血糖値を推定して糖尿病コントロールと比較した。各時点でそれぞれのコントロールを用いてグルコース濃度の上昇パーセントを計算した。用量100mg/kgの4つ全ての試験化合物の経口投与は、糖尿病コントロールに比し、全ての時間間隔で血糖値の上昇百分率の有意な低減(p<0.01)を示した。研究した全ての化合物のうち、BN-13は最大の阻害活性を示し、10mg/kgの用量で標準薬物アカルボースにほぼ匹敵する。小腸の上皮内に存在するα-グルコシダーゼを阻害するアカルボース様薬物は、食後高血糖を低減させることが実証されており(Sigma & Chakrabarthi,2004)、またNIDDM患者のインスリン分泌を促すことなくグルコース代謝障害を改善する(Carrascosa et al.,2001)。従ってこれらの化合物は、食後高血糖の治療用薬物の探索におけるリード化合物として役立ち得る。これらの薬物は、単に2型糖尿病と診断された人々及び血糖値が糖尿病にとって重大とみなされるレベルよりわずかに高いだけの人々に最も有用である。これらの薬物は、スルホニル尿素薬物又はメトホルミンを摂取しており、血糖値を安全範囲内にコントロールするために追加の治療が必要な人々にも有用である。これらの化合物はデンプン負荷試験で炭水化物の吸収を妨害し、遅延させることができたので、チエノピリジン誘導体は、動物モデルの食後高血糖を低減させることによる2型糖尿病の治療に有望であると思われる。
【0125】
抗糖尿病活性−デンプン負荷モデル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iで示されるチエノピリジン化合物又はその医薬的に許容できる塩又は誘導体。
【化1】

式I
(式中、nは1、2、3又は4であり、
R1及びR2は、CH3、アルキル及びアリールから成る群より独立に選択され;又は
R1+R2が、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロアルキル、及び2より多くの炭素鎖のアルキルから選択され;
Rは、アミン、置換アミン、アミノ酸、スルホンアミド、スルホニルアルキル、アルキル又はシクロアルキル、アリール、ヒドロキサマート、及びアミノヘテロ環成分から成る群より選択され;
ここで、前記ヘテロ環成分は、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ベンズイミダゾール、キナゾリン、キノリン、チオフェン、チエノピリミジン、チエノピリジン、アクリジン、インドール、ピロール及びベンゾフランから選択される。)
【請求項2】
前記環が置換された環であり、該置換基が、-H、-(C1-C3)アルキル、-O(C1-C3)アルキル、F、-CF3、-NH2、-N(CH3)、-N(CH3)2、-SH、-SCH3、-SCH2CH3及びそのいずれかの組合せから選択される、請求項1に記載のチエノピリジン化合物。
【請求項3】
一般式Iの化合物の立体異性形、多形、酸付加塩、塩基付加塩、及びそのプロドラッグを含めた一般式Iの化合物の選ばれた異性体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記酸付加塩が、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、ナプテレン-2-安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、b-ヒドロキシ酪酸塩、ブチン-1-4-二酸塩、ヘキシン-1-4-二酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フメル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-ブロモフェニルスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、及び酒石酸塩から成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記酸付加塩が、塩酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩及びシュウ酸塩から成る群より選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
前記塩基付加塩が、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、アルミニウム、アンモニウム、バリウム、亜鉛、及びマグネシウムから成る群より選択される無機塩基から形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
前記塩基付加塩が、有機塩基から得られた塩を含む群から選択され、前記有機塩基が、N-N'-ジベンジルエテリンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、エテレンジアミン、N-メチルグルカミン、トリエチルアミン、ジメチルアミン、及びプロカインから成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記塩が、アルギナート等のアミン塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
前記プロドラッグが、式Iの化合物と糖成分との適切なスペーサーによる連結によって得られた群、及び親酸と適切なアルコールの反応によって得られたアルキルエステル、又は親酸性化合物と適切なアミンの反応によって得られたアミドから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
前記アリールが、フェニル、ビフェニル、ベンジル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル及びインデニルから選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
前記へテロ環が、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、インドール、及びピロールから成る群より選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
前記へテロ環が、O、S及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子を芳香環内に有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
該化合物が、2,3-ジメチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]チエノ[3,2-e]ピリジン-4-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
該化合物が、2,3-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロチエノ[2,3-b]キノリン-4-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
該化合物が、2,3,7-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロチエノ[2,3-b]キノリン-4-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
該化合物が、2,3-ジメチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[b]チエノ[3,2-e]ピリジン-4-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
該化合物が、2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロペンタ[e]ピリジン-10-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
該化合物が、1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-11-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
該化合物が、8-メチル-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-11-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
該化合物が、2,3,4,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-ベンゾ[4,5] チエノ[2,3-b]シクロヘプタ[e]ピリジン-12-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
該化合物が、1,2,3,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-9-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
該化合物が、2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-10-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
該化合物が、7-メチル-2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-10-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
該化合物が、1,2,3,6,7,8,9,10-オクタヒドロシクロヘプタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-11-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
該化合物が、2,3,6,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-シクロオクタ[b]シクロペンタ[4,5]チエノ[3,2-e]ピリジン-12-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
該化合物が、1,2,3,6,7,8,9,10-オクタヒドロシクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-b]シクロペンタ[e]ピリジン-11-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
該化合物が、2,3,4,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-1H-シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-b]キノリン-12-アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
R1及びR2が両方とも-CH3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項29】
R1及びR2が独立にアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
R1+R2が、-(CH2)4-、-(CH2)3-、-(CH2)5-から成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項31】
nが1、2又は3である、請求項1又は28に記載の化合物。
【請求項32】
nが1、2又は3である、請求項1又は30に記載の化合物。
【請求項33】
RがNH2である、請求項1〜32のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
一般式Iの化合物の調製方法であって、下記工程、
(a)2-アミノ-3-シアノチオフェンを合成する工程;
(b)前記2-アミノ-3-シアノチオフェンを環状ケトンと、下記式I、
【化2】

式I
(式中、nは1、2、3又は4であり、
R1及びR2は、CH3、アルキル及びアリールから成る群より独立に選択され;又は
R1+R2が、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロアルキル、及び2より多くの炭素鎖のアルキルから選択され;
Rは、アミン、置換アミン、アミノ酸、スルホンアミド、スルホニルアルキル、アルキル又はシクロアルキル、アリール、ヒドロキサマート、及びアミノヘテロ環成分から成る群より選択され;
ここで、前記ヘテロ環成分は、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ベンズイミダゾール、キナゾリン、キノリン、チオフェン、チエノピリミジン、チエノピリジン、アクリジン、ピロール、インドール及びベンゾフランから選択される)
で示される対応生成物又はその医薬的に許容できる塩又は誘導体を得るのに適した条件下で反応させる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
前記環状ケトンとの反応を、塩化亜鉛複合体の形成後、塩基で処理して前記複合体から生成物を沈殿させた後、分離及び精製、並びに所望により、所望のエステル、又は塩形への変換によって行なう、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記塩化亜鉛との反応を、複合体を形成するのに適した時間、還流下で加熱することによって行なう、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記チオフェンと環状ケトンを1:2のモル比で反応させる、請求項34〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記塩基がNaOHである、請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
イオウ、メラノニトリル及び対応するケトンをアルコールの存在下で撹拌しながら反応させることによって、前記2-アミノ-3-シアノチオフェンを調製する、請求項34〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
式Iの化合物を、ニート又は適切な不活性溶媒中で等モル量又は過剰の酸と反応させて、対応する酸付加塩を形成する、請求項34〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記酸を、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸、脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸及びヒドロキシアルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸から成る群より選択する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
式Iの化合物を、不活性な適切な溶媒又はニート溶媒中で等モル又は過剰量の塩基と反応させて、対応する塩基付加塩を形成する、請求項34〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記塩基を、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、アルミニウム、アンモニウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム、N-N'-ジベンジルエテリンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、エテレンジアミン、N-メチルグルカミン、トリエチルアミン、ジメチルアミン、及びプロカイン、及びアミノ酸から選択して、それぞれの塩基付加塩を得る、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物のメタノール溶液に乾燥酸性ガスを送ることによって前記塩を形成する、請求項34〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記プロドラッグが、適切なスペーサーを加えて式(I)の化合物を糖成分と連結することによって得られ、又は親酸性化合物と適切なアルコールの反応によって調製されたアルキルエステル、又は親酸化合物と適切なアミンの反応によって調製されたアミドである、請求項34〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
式Iの化合物又はその塩若しくはエステル若しくはプロドラッグ形と、1種以上の医薬的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項47】
下記式I
【化3】

(式中、nは1、2、3又は4であり、
R1及びR2は、CH3、アルキル及びアリールから成る群より独立に選択され;又は
R1+R2が、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロアルキル、及び2より多くの炭素鎖のアルキルから選択され;
Rは、アミン、置換アミン、アミノ酸、スルホンアミド、スルホニルアルキル、アルキル又はシクロアルキル、アリール、ヒドロキサマート、及びアミノヘテロ環成分から成る群より選択され;
ここで、前記ヘテロ環成分は、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ベンズイミダゾール、キナゾリン、キノリン、チオフェン、チエノピリミジン、チエノピリジン、アクリジン、インドール、ピロール及びベンゾフランから選択される)
の化合物
及びその医薬的に許容できる塩又は誘導体と、
糖尿病、癌、関節炎又は炎症の治療用の通常の活性薬とを含む、医薬組成物。
【請求項48】
前記追加の活性薬が、アルキル化薬、代謝拮抗薬、抗生物質、免疫調節薬、ヌクレオチド誘導体、サイクリン依存性キナーゼ阻害薬、インターフェロン様薬及びヒストン脱アセチル化酵素阻害薬から成る群より選択される、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記追加の活性薬が、COX-II阻害薬、例えばニムセリド、セロコキシブ、エトロコキシブ、及びバルジコキシブから成る群より選択される、請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
前記追加の活性薬が、スルホニル尿素、ビグアナイド、メグリチニド、グリタゾン、及びα-グルコシダーゼ阻害薬から成る群より選択される、請求項47に記載の組成物。
【請求項51】
前記医薬的に許容できる賦形剤が、医薬的に許容できる担体又は希釈剤から成る群より選択される、請求項46〜50のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
前記担体又は希釈剤が、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエトキシル化ヒマシ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ゼラチン、ラクトース、スクロース、シクロデキストリン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、寒天、ケイ酸、脂肪酸、脂肪酸アミン、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ポリオキシエチレン、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリジンから成る群より選択される、請求項51に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2012−514594(P2012−514594A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544117(P2011−544117)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000005
【国際公開番号】WO2010/076813
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508176500)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (27)
【出願人】(511163665)パンジャブ ユニヴァーシティー (1)
【出願人】(511163676)カカティヤ ユニヴァーシティー (1)
【Fターム(参考)】