説明

藻類の培養基質

【課題】 天然の有機珪酸を含有する珪藻や、窒素固定能を有する藍藻等の藻類を、水田中に、人工的に安価で効率的かつ大量に発生させることができる藻類の培養基質や、該培養基質を主成分とする稲作用珪酸質肥料、該培養基質を主成分とする牡蠣等の水産養殖水域に用いる水産養殖調整剤、該培養基質を主成分とする肥料・土壌改良剤を提供すること。
【解決手段】 産業廃棄物である、珪酸を多量に含んでいるフライアッシュ(Fly ash)、あるいはフライアッシュとカリ化合物の混合物に、キャンディダ(Candida)属及び/又はピキア(Pichia)属に属する酵母の群から選ばれる1種または2種以上を含む微生物製剤を藻類の培養基質とする。また、前記培養基質を主成分とする稲作用珪酸質肥料、水産養殖用調整剤、肥料・土壌改良剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライアッシュ(Fly ash)と微生物製剤とを含有する藻類の培養基質に関し、より具体的には、フライアッシュと、キャンディダ(Candida)属及び/又はピキア(Pichia)属に属する酵母の群から選ばれる1種または2種以上を含む微生物製剤とを含有する藻類の培養基質、該培養基質を水田に施用する稲作用珪酸質肥料、水産養殖場に施用する水産養殖用調整剤、畑に施用する肥料・土壌改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電気を安定して供給するため、石炭は他の化石燃料に比べ、供給の安定性や経済性に優れており石油代替エネルギーとして原子力に次ぐものとして位置づけられており、石炭火力発電設備は、平成14年度末で3,377万KWあり、平成19年度3,922万KW、平成24年度4,315万KWになるように計画されているといわれている。このように石炭火力発電設備が増加すると、発生するフライアッシュ(石炭灰)も増加し、全国のフライアッシュ(石炭灰)の発生量は平成14年度末の約920万トンが、平成19年度末には約1,000万トンに達するものと予測される。このように大量に発生するフライアッシュ(石炭灰)を資源として有効活用するため、研究開発が積極的に行われている。
【0003】
フライアッシュの有効利用としては、その化学的・物理的性質を活かして多くの分野で使用されており、セメント混合剤、道路材、建材の利用が多く、農水産用には、フライアッシュに含まれる難溶性のケイ酸を利用するために、苛性カリ、塩基性苦土を添加して焼成して用いられ、雨水による溶脱が少なく土壌に長く留まり、根を丈夫に育て病虫害の抵抗性も高い肥料として利用されている。
【0004】
フライアッシュなどの産業廃棄物にゼオライトやパーライト等、及び水溶性接着剤を含有する土壌の改良及び水分調節剤組成物(例えば、特許文献1参照)や、フライアッシュと、排泥土を処理して得られる固形粘土とを主原料とし、これに安定固化剤及びPH調整剤、植物の生育に適する微生物等を添加してなる人工土(例えば、特許文献2参照)や、木質を含む有機質の炭素源に水および窒素源を混合し、この混合物を大気中で発酵させて腐植化する堆肥の製造方法において、前記混合物に対し、さらにフライアッシュを添加混合する木質原料堆肥の製造方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−256266号公報
【特許文献2】特開平10−29848号公報
【特許文献3】特開2001−130991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の人工農法では、古株やワラを土の中にすき込み、土中での急速な分解によるメタンガスの発生が水田生物の生態系や地球温暖化に影響してきたが、自然耕ではワラは水中でゆっくり分解し、このワラをもとにたくさんの藻類が発生し、水田の微小生物、小動物の住みかとなり繁殖の場となっている。藻類は不耕起栽培を初めて数年もすると毎年厚さ数センチの状態でイネ株の間を埋め尽くすようになり、その量は何トンにもなる。この藻類が不耕起栽培田の莫大な生命量を支える酸素の供給源となっており、水田の溶存酸素量は、水田の生き物たちの生命量を決め、豊かな生物相の指標となっている。不耕起栽培田では藻類から始まる生命連鎖が種の多様性だけでなく生命量まで含めて、多くの生き物の命を育んでいるといわれている。水田の生態系にある藻類は、珪藻、藍藻、緑藻などあり、特に珪藻の成分は90%以上が有機珪酸であり、この有機珪酸はイネの出穂時期において重要な成分である。また、藍藻の繁殖により光合成による窒素の固定が大量にできることより、肥料効果をもたらす。
【0007】
本発明の課題は、天然の有機珪酸を含有する珪藻や、窒素固定能を有する藍藻等の藻類を、水田中に、人工的に安価で効率的かつ大量に発生させることができる藻類の培養基質や、該培養基質を主成分とする稲作用珪酸質肥料、該培養基質を主成分とする牡蠣等の水産養殖水域に用いる水産養殖調整剤、該培養基質を主成分とする肥料・土壌改良剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、産業廃棄物であるフライアッシュの主成分は珪酸であること、従来フライアッシュが土壌改良剤などにも利用されていることに注目し、また、フライアッシュのみでは不十分な効果しか奏さないことに鑑み、フライアッシュとこれと相乗的に作用するものについて多方面に亘り鋭意検討したところ、フライアッシュと、キャンディダ(Candida)属とピキア(Pichia)の複合微生物と組み合わせることにより、人工的に安価で効率的かつ大量に藻類を発生・繁殖させることができることを見い出した。また、フライアッシュにカリ肥料を混合したケイ酸質肥料に、キャンディダ(Candida)属とピキア(Pichia)の複合微生物を混合した肥料を穂肥として水稲に追肥したところ、登熟が進んでおり、穂の大きさも大きくなることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)ケイ酸含有物と、キャンディダ(Candida)属及び/又はピキア(Pichia)属に属する酵母の群から選ばれる1種または2種以上を含む微生物製剤とを含有することを特徴とする藻類の培養基質や、(2)ケイ酸含有物が、ケイ酸カリであることを特徴とする前記(1)記載の藻類の培養基質や、(3)ケイ酸含有物が、フライアッシュ(Fly ash)であることを特徴とする前記(1)記載の藻類の培養基質や、(4)ケイ酸含有物が、フライアッシュ(Fly ash)とカリ化合物との混合物であることを特徴とする前記(1)記載の藻類の培養基質や、(5)微生物製剤が、キャンディダ属とピキア属に属する酵母の群から選ばれる2種以上を含有する複合生菌剤であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載の藻類の培養基質や、(6)キャンディダ属に属する酵母が、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載の藻類の培養基質や、(7)ピキア属に属する酵母が、ピキア・メンブラナエファシエンス(P.membranaefacience)であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか記載の藻類の培養基質や、(8)微生物製剤が、米ぬか及び貝殻を含有する培養基質原料を発酵させた製剤であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか記載の培養基質や、(9)微生物製剤が、培養基質原料を混合した後殺菌し、粉砕し、加水し、種菌を添加する方法からなる仕込み工程、発酵、熟成、撹拌する方法からなる発酵工程、乾燥、粉砕、製品検査・選別方法からなる仕上げ工程、及び袋詰め方法からなる包装工程を経て製造される製剤であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか記載の藻類の培養基質や、(10)フライアッシュ100重量部に対し、0.3〜0.5重量部の微生物製剤を用いることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか記載の藻類の培養基質や、(11)藻類が、珪藻、藍藻、または緑藻であることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか記載の藻類の培養基質に関する。
【0010】
また本発明は、(12)前記(1)〜(11)のいずれか記載の藻類の培養基質を主成分とすることを特徴とする稲作用珪酸質肥料や、(13)前記(1)〜(11)のいずれか記載の藻類の培養基質を主成分とすることを特徴とする水産養殖用調整剤や、(14)水産養殖調整剤が牡蠣の養殖用であることを特徴とする前記(13)記載の水産養殖用調整剤や、(15)水産養殖調整剤が淡水魚の池養殖用であることを特徴とする前記(13)記載の水産養殖用調整剤や、(16)前記(1)〜(11)のいずれか記載の藻類の培養基質を含有することを特徴とする肥料・土壌改良剤に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、フライアッシュの本来の土壌や水中、生態系に及ぼす有害問題を解消すると共に、生態系の固有菌群のバランスの調整、特に好気性菌群の成長維持に機能し、良好な自然サイクルを促進せしめ、具体的には、本発明の藻類の培養基質を、水田等に施用することにより、完全な自然農法とはいかないまでもそれに近い藻類の発生を人工的に安価で効率的かつ大量に発生せしめて、イネ等の生育を良好にし、あるいは牡蠣等の水産養殖に良い影響をもたらし、かつ安価であり、環境に対し安全で、安定した培養基質を提供することができる。また、カリ肥料を併用すると、稲の収穫を大きく向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の藻類の培養基質としては、ケイ酸含有物と、キャンディダ(Candida)属及び/又はピキア(Pichia)属に属する酵母の群から選ばれる1種または2種以上を含む微生物製剤とを含有するものであれば特に制限されるものではなく、ケイ酸含有物としては、ケイ酸カリや、フライアッシュ(Fly ash)や、フライアッシュ(Fly ash)とカリ化合物との混合物を挙げることができるが、フライアッシュ(Fly ash)や、フライアッシュ(Fly ash)とKOなどのカリ化合物との混合物を好適に例示することができる。
【0013】
上記微生物製剤としては、キャンディダ(Candida)属とピキア(Pichia)属に属する2種以上の酵母、すなわちキャンディダ属に属する1種以上の酵母と、ピキア属に属する1種以上の酵母とを含有する複合生菌剤であることが好ましい。キャンディダ属に属する微生物には、カンジダ アルビカンス(C.albicans)、カンジダ リポリチカ(C.lipolytica)、カンジダ トロピカリス(C.tropicalis),カンジダ ユーティリス(C.utillis)を代表的なものとして挙げることができるが、その他、C.albicans var.stellatoidea, C.catenulata,Candida curvata, C. famata, C.glabrata, C.guilliermondii, C.humicola, C.intermedia, C. kefyr, C. krusei, C.loxderi, C. macedoniensis, C.magnoliae, C.maltosa, C. melinii, C. nitratophila, C.parapsilosis, C.pelliculosa, C.pintolopesii, C. pinus, C.pulcherrima, C.robusta, C.rugosa, C.zeylanoidesを挙げることができる。ピキア(Pichia)属に属する耐塩性酵母菌は、有胞子酵母(Endomycetaceae科)の一属で、細胞は卵円形ないし円筒形で多極性出芽増殖する。大部分の種類は仮性菌糸を形成し、真正菌糸はごく少数にみられる。胞子はハンゼヌラ(Hansenura)と同様に球形、山高帽子形、土星形を示す。含糖液の表面にしばしば皮膜を形成しない種類もあり、硝酸塩は資化しない。ピキア メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefacience)は代表的な種で、エタノールを消費し、糖の発酵性はないが、あってもグルコースをわずかに発酵するのみで、漬物液の表面に皮膜をつくる。その他、Pichia farinosa、Pichia fermentans、Pichia pinus、Pichia subpelliculosaを挙げることができる。
【0014】
本発明の微生物製剤には、その他の酵母を添加することもでき、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ヤポニカス(Saccharomyces japonicus)等を挙げることができる。さらに、本発明の微生物製剤に、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属等に属する細菌類を添加、使用することができる。例えば、バチルス属の微生物としては、バチルス・ズブチリス(B.subtilis)、バチルス・メガテリウム(B.megaterium)、バチルス・セレウス(B.cereus)などを、ラクトバチルス属の微生物としては、ラクトバチルス・アシドフィルス(L.acidophilus)、ラクトバチルス・プランタルム(L.plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・カセイ(L.casei)等などを、ストレプトコッカス属の微生物としては、ストレプトコッカス・フエカリス(St.faecalis)、ストレプトコッカス・ラクティス(St.lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(St.thermophilus)等を挙げることができる。その他、アスペルギルス属やリゾップス属に属する糸状菌や、硫黄バクテリア、マンガン還元バクテリア、マンガン酸化バクテリア、アンモニア酸化バクテリア、ニトロバクテリア、メタン酸化バクテリア、放線菌等を加えてもよい。
【0015】
フライアッシュは、通常の石炭火力発電所から発生する、フライアッシュとして排出されたものを用いることができる。
【0016】
本発明の対象とする、代表的藻類として珪藻、藍藻、または緑藻が挙げられる。珪藻は、細胞壁が二酸化ケイ素でできているのが特徴であり、単細胞だが、茎又は枝状の群体となることもある。細胞壁はほぼ同型の二つの部分からなり、箱本体と蓋のように両者が入れ子になっている。細胞壁にはセルロースもいくらか含まれるが、基本的には二酸化ケイ素でできているため、硬さがあり、精巧にほりこまれた溝模様がみられる。細胞質には葉緑体も含まれるが、黄色っぽい色素を含むため黄褐色に見える。珪藻の種類は8000種以上あり、そのほとんどは淡水池の中や、海洋の上層にいる。
【0017】
藍藻は、細菌と同様に核膜を持たないため、シアノバクテリアまたは青緑色細菌とも呼ばれ、光合成を行うことが藻類として分類される根拠となっている。細菌と同様にいたるところに生息している。水中や地上はもとより、70℃を越える温泉や、砂漠の岩の割れ目などの環境にもいる。このように多種類の種があり、空中窒素を固定して水田のような生息環境を肥沃にする種もある。
【0018】
本発明の微生物製剤を得るには、例えば、培養基質原料を混合した後殺菌し、粉砕し、加水し、キャンディダ属とピキア属に属する酵母等の種菌を添加する方法からなる仕込み工程、主発酵する発酵、それに続く熟成、撹拌する方法からなる発酵工程、乾燥、粉砕、製品検査・選別方法からなる仕上げ工程、及び袋詰め方法からなる包装工程を経て製造されることが好ましい。
【0019】
培養基質原料として、大豆粕、大豆胚芽、小麦フスマ、醤油粕、ポテトパルプ、こんにゃくトビ粉、卵殻、貝殻、骨粉、天然鉱石等を1種又は2種以上用いることができるが、米ぬかと貝殻(牡蠣ガラ)粉末とを、例えば重量基準で10:90〜90:10の割合、好ましくは40:60〜60:40の割合で混合して用いることが好ましい。前記培養基質原料を殺菌して用いることが雑菌等の混入を防ぐことができ好ましく、通常の殺菌方法、すなわち加圧水蒸気殺菌等の加熱殺菌を採用することができる。
【0020】
上記発酵工程は、温度20〜40℃、好ましくは、25〜32℃、pH4.0〜6.5、好ましくは、約pH5.0で、非通気下又は通気下1〜2ヶ月発酵させ、その後熟成を1〜3ヶ月行い、熟成の間、撹拌を1ヶ月1度の割合で行う。撹拌は、発酵槽内に付設された撹拌羽根等により行うことができる。発酵終了後、増殖した微生物を含む発酵物を乾燥、粉砕し、その後製品検査・選別し、例えば、20kg入り、500kg入りの袋詰めをし、包装して微生物製剤入りの包装物を得ることができる。
【0021】
本発明の藻類の培養基質としては、フライアッシュと上記微生物製剤とを、フライアッシュ1000kgに対し、微生物製剤3〜5kg(0.3〜0.5%)の割合で混合する。微生物製剤を0.3〜0.5%の割合で混合すると、フライアッシュと微生物製剤の両者がバランスよく作用し、結果的に藻類の培養基質としての効果を十分に発揮することができる。微生物製剤が0.3%重量未満の場合には藻類の発生に時間がかかりすぎる恐れがあり、また0.5重量%を越える場合には、コストアップとなる。本発明の藻類の培養基質は、フライアッシュのみでは土壌や水中、生態系に有害な作用を引き起こすが、この問題を解消することができ、生態系の固有菌群のバランスの調整役として、水田、畑などに施用することにより良い自然リサイクルを促進することができる。
【0022】
本発明の藻類の培養基質を水田に施用する稲作用珪酸質肥料として用いる場合は、稲の発育状態、稲の発育段階、気候の異変、水田自体の特性の違いにより、面積単位当たりの散布量は相違するが、通常、300〜500kg/ha散布する。稲作用珪酸質肥料として用いると、水田中の珪藻が大量に発生し、それに伴う有機珪酸の豊富化は出穂時期には有効に作用し、また、藍藻の繁殖により窒素の固定が大量にでき、稲の生育が良くなり、結局米の収穫につながる。
【0023】
本発明の藻類の培養基質を水産養殖用調整剤として、特に牡蠣の養殖に用いる場合、牡蠣の発育期に用いることが好ましい。通常300〜500kg/ha散布する。牡蠣のエサは天然の珪藻が主食であり、本発明を使用することにより、珪藻の大量繁殖をもたらし、牡蠣の成長を助ける。
【0024】
本発明の藻類の培養基質を肥料・土壌改良剤として用いる場合は、作物の種類、作物の発育状態、作物の発育段階、季節、畑地の特性等により散布量を決めることができる。通常300〜500kg/ha散布する。乾燥しやすい土壌には、地衣類の発生繁殖を促し、砂漠化を防止することができる。
【0025】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
(微生物製剤の製造方法)
米ぬか(水分10%)100重量部と貝殻(牡蠣粉末水分8%)100重量部を混合し、この混合物を加圧水蒸気殺菌し、粉砕した。この混合物200重量部に対し80重量部の水を加えた。ここへ、ピキア・メンブラナエファシエンスとカンジダ・アルビカンス(市販の酵母類メーカ或いは自社製よりの酵母を使用)との混合物280重量部添加した。1ヶ月半、35℃、pH6.0で静置発酵させた。その後、4ヶ月熟成し、その間1ヶ月に1度の割合で撹拌した。熟成後、乾燥室において生菌状態を保持する温度で乾燥し、粉砕して、微生物製剤180重量部を得た。
【実施例2】
【0027】
(藻類の培養基質)
火力発電所より排出されたフライアッシュ1000kgに、実施例1により得られた微生物製剤4kgを混合機により混合して、本発明の藻類の培養基質であるバイオフライアッシュ(Bio Flyash)(BFAと略称する場合がある)1404kgを得た。上記使用したフライアッシュの組成を表1に示す。
【0028】
【表1】

【実施例3】
【0029】
(植物プランクトン調査)
地下水に本発明のバイオフライアッシュ(BFA)を0.05kg/mに散布し14日間、28℃で培養した。また、比較例として無散布の地下水を同一の条件で実験した。両者の、黄色植物(門)珪藻(綱)4種と緑藻植物(門)緑藻&藍藻(綱)7種についてその増殖数を調査し、その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2より、本発明のバイオフライアッシュを添加したBFA培養水は、これを散布しない地下水と比べて顕著に珪藻、緑藻&藍藻の増殖していることが分る。なお、フライアッシュのみを使用すると、藻類の発芽は遅く、また共生菌(キャンディダとピキアなど)がないので、発芽が少なく、藻類の群生にまで至らない。
【実施例4】
【0032】
(稲作用珪酸質肥料)
水田用池に本発明のバイオフライアッシュ(BFA)を50kg/a散布し、比較例として地下水を散布した。散布時の状態を撮った写真を図1のAに示す。次にBFA散布12日後に撮った写真を図1のBに示す。写真図1のBの時の藻類を拡大して撮った写真を図1のCに示す。なお、フライアッシュのみを使用すると、水田の中に天然の数多い雑藻類がおり、珪藻、藍藻など善玉藻の優生群が発生しにくくなり、代わりに悪い藻が同時に大量に発生する。
【0033】
図1Aでは、田に水を張った状態であり、図1Bは、一面に緑色になっており、藻類が大量発生したことが分る。図1Cは、藻類の拡大したもので、藻類が生長したものであることが分る。
【実施例5】
【0034】
(水稲穂肥試験)
出穂前のひとめぼれ(無化学肥料・減農薬栽培(除草剤1回使用);60本/m)を以下の4区に分けて水稲穂肥試験を実施した。比較区及び試験区は肥料散布機で各肥料を穂肥として追肥し、約5週間後に調査した。調査結果の写真を図2及び図3に示す。
・ 穂肥無施用対照区
・ 微生物製剤単独施肥比較区(10a当たり1kg)
・ ケイ酸カリ単独施肥比較区(10a当たり20kg)
・ 微生物製剤・ケイ酸カリ混合施肥試験区(10a当たり1kg・20kg)
【0035】
上記ケイ酸カリ肥料は、実施例2のフライアッシュに水酸化亜カリウムとマグネシウム源を添加・混合して造粒したものを乾燥後、焼成後篩い分けしたもので、く溶性加里20%、可溶性珪酸30%、く溶性苦土4%、く溶性ホウ素0.1%、石炭5〜8%、鉄5〜8%を含んでいる。なお、微生物製剤・ケイ酸カリ混合肥料は施肥の4日前から混合していたものを用いた。
【0036】
図2から、1)穂肥無施用対照区(図2上段)に比べて、4)微生物製剤・ケイ酸カリ混合施肥試験区(図2下段)では、葉の数が多く、茎が太く、登熟が進んでおり、穂の大きさも3割ほど大きいことがわかる。また、図3の上段左は2)微生物製剤単独施肥比較区を示し、上段右は3)ケイ酸カリ単独施肥比較区を示す。図3の中段の左右及び下段右は生育状態を示し、共に左から順次、2)微生物製剤単独施肥比較区、3)ケイ酸カリ単独施肥比較区、4)微生物製剤・ケイ酸カリ混合施肥試験区、1)穂肥無施用対照区を示す。図3の下段の上左は4)微生物製剤・ケイ酸カリ混合施肥試験区を、上右は1)穂肥無施用対照区を示し、下段の下は4)微生物製剤・ケイ酸カリ混合施肥試験区の根の生育状態を示している。これらの写真から、4)微生物製剤・ケイ酸カリ混合施肥試験区では、1)穂肥無施用対照区ばかりでなく、2)微生物製剤単独施肥比較区や3)ケイ酸カリ単独施肥比較区に比べても、根がしっかりと太く、葉の数が多く、茎が太く、登熟が進んでおり、穂の大きさも大きいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のバイオフライアッシュ(BFA)による藻類の発生試験を示す図である。
【図2】本発明の微生物製剤・ケイ酸カリ混合施肥した試験区と、穂肥無施用の対照区の水稲穂肥試験の結果を示す図である。
【図3】本発明の微生物製剤・ケイ酸カリ混合施肥した試験区と、微生物製剤単独施肥の比較区と、ケイ酸カリ単独施肥の比較区と、穂肥無施用の対照区の水稲穂肥試験の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸含有物と、キャンディダ(Candida)属及び/又はピキア(Pichia)属に属する酵母の群から選ばれる1種または2種以上を含む微生物製剤とを含有することを特徴とする藻類の培養基質。
【請求項2】
ケイ酸含有物が、ケイ酸カリであることを特徴とする請求項1記載の藻類の培養基質。
【請求項3】
ケイ酸含有物が、フライアッシュ(Fly ash)であることを特徴とする請求項1記載の藻類の培養基質。
【請求項4】
ケイ酸含有物が、フライアッシュ(Fly ash)とカリ化合物との混合物であることを特徴とする請求項1記載の藻類の培養基質。
【請求項5】
微生物製剤が、キャンディダ属とピキア属に属する酵母の群から選ばれる2種以上を含有する複合生菌剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の藻類の培養基質。
【請求項6】
キャンディダ属に属する酵母が、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の藻類の培養基質。
【請求項7】
ピキア属に属する酵母が、ピキア・メンブラナエファシエンス(P.membranaefacience)
であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の藻類の培養基質。
【請求項8】
微生物製剤が、米ぬか及び貝殻を含有する培養基質原料を発酵させた製剤であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の培養基質。
【請求項9】
微生物製剤が、培養基質原料を混合した後殺菌し、粉砕し、加水し、種菌を添加する方法からなる仕込み工程、発酵、熟成、撹拌する方法からなる発酵工程、乾燥、粉砕、製品検査・選別方法からなる仕上げ工程、及び袋詰め方法からなる包装工程を経て製造される製剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の藻類の培養基質。
【請求項10】
フライアッシュ100重量部に対し、0.3〜0.5重量部の微生物製剤を用いることを特徴とする請求項3〜9のいずれか記載の藻類の培養基質。
【請求項11】
藻類が、珪藻、藍藻、または緑藻であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の藻類の培養基質。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか記載の藻類の培養基質を主成分とすることを特徴とする稲作用珪酸質肥料。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか記載の藻類の培養基質を主成分とすることを特徴とする水産養殖用調整剤。
【請求項14】
水産養殖調整剤が牡蠣の養殖用であることを特徴とする請求項13記載の水産養殖用調整剤。
【請求項15】
水産養殖調整剤が淡水魚の池養殖用であることを特徴とする請求項13記載の水産養殖用調整剤。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか記載の藻類の培養基質を含有することを特徴とする肥料・土壌改良剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−54027(P2007−54027A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265364(P2005−265364)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(505287335)
【出願人】(505287678)
【出願人】(505287357)
【Fターム(参考)】