説明

蛍光体の製造方法、蛍光体含有組成物、発光装置、並びに画像表示装置及び照明装置

【課題】高輝度の発光を示し、使用時の劣化の少ない蛍光体を安全に効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】付活元素M1、2価の金属元素M2、及び4価の金属元素M4を含む窒化物又は酸窒化物蛍光体の製造にあたり、原料として、付活元素M1及び2価の金属元素M2を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを使用し、該原料を窒素元素を含有する雰囲気中で加熱する蛍光体の製造方法。高輝度の発光を示し、使用時の劣化の少ない、蛍光体を安全に効率よく提供することが可能になる。特に、蛍光体製造時の昇温速度を遅くしたり、原料合金の量を少なくしたりする必要がないため、生産性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体の製造方法と、その蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置、並びにその発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、蛍光灯、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、白色発光ダイオード(LED)などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、可視光線、電子線などの高いエネルギーを有する励起源により励起されて、紫外線、可視光線、赤外線を発する。
【0003】
近年、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ホウ酸塩蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体などの蛍光体に代わり、三元系以上の窒化物について多くの新規物質が合成されている。特に最近、多元系窒化物や酸窒化物において、高輝度の発光を示し、使用時の劣化が少ないという優れた特性を有する蛍光体として、例えば、Eu2+イオンを付活したCa−α−サイアロンやLi−α−サイアロン、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si:Ce、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Sr,Ca,Mg)AlSiN:Eu、(Sr,Ca,Mg)AlSiN:Ce等が開発されている。
【0004】
このような多元系の窒化物や酸窒化物(以下、「(酸)窒化物」と称する場合がある。)の蛍光体は、蛍光体を構成する各金属元素の窒化物や酸化物等の原料粉末を所定の割合に混合し、原料混合粉末を窒素ガスやアンモニアガス中で焼成する、所謂、固相法により製造されている。
【0005】
しかし、固相法の場合、使用される原料粉末の反応性が低いことから、焼成時の原料混合粉末の間の固相反応を促進するために、圧縮成形した状態で焼成するので、蛍光体は非常に硬い焼結体の状態で製造される。従って、得られた焼結体を蛍光体の使用目的に適した微粉末状態まで粉砕する必要がある。ところが、硬い焼結体からなる蛍光体をジョークラッシャーやボールミルなどを使用して粉砕すると、蛍光体の結晶母体中に多数の欠陥が発生し、蛍光体の発光強度を著しく低下させる可能性があった。
【0006】
また、圧縮成形せずに粉末状態で焼成する方法も試みられているが、この場合には、低温での焼成では原料粉末間での固相反応が促進せず、目的の蛍光体が生成しないため、1800℃以上の高温で蛍光体を合成する必要があるが、この様な高温での焼成時には窒化物原料からの窒素の脱離を伴う分解反応が起こる可能性がある。また、分解反応を抑制するためには5気圧以上の窒素ガス雰囲気下で焼成する必要があり、高い焼成エネルギーが必要とされるだけでなく、非常に高価な高温高圧焼成炉が必要となり、蛍光体の製造コストを上昇させる原因となっている。
【0007】
さらに、アルカリ土類金属を含有する蛍光体の場合は、原料として、窒化カルシウム(Ca)、窒化ストロンチウム(Sr)等の2価の金属窒化物が用いられるが、一般に2価の金属窒化物は水分含有雰囲気下で不安定であり、大気中の水分と反応して加水分解して水酸化物を生成しやすいため、水酸化物を多く含んでいる。このように水酸化物を多く含んだ2価の金属窒化物を原料として用いると、得られる蛍光体中の酸素濃度が高くなり、蛍光体特性に悪影響を及ぼす可能性があった。また、窒化カルシウム及び窒化ストロンチウムは非常に活性が高く、水との接触で爆発的に燃焼するため、取り扱いには十分な注意が必要である。
【0008】
このようなことから、固相法に代わる新たな製造方法が求められており、近年、金属や合金を出発原料とした窒化物蛍光体の製造方法に関して、特許文献1や特許文献2等が報告されている。
【0009】
特許文献1には窒化アルミニウム系蛍光体の製造方法の一例が開示され、原料として、遷移元素、希土類元素、アルミニウム及びその合金が使用できる旨が記載されている。
しかし、実際に合金を原料として用いた実施例は記載されておらず、Al源としてAl金属を用いることを特徴としている。また、原料に着火し、瞬時に高温(3000K)まで上昇させる燃焼合成法を用いているため、付活元素を均一に分布させることができず、高特性の蛍光体を得ることは困難であると推測される。また、合金原料から得られるアルカリ土類元素を含む(酸)窒化物蛍光体や、更に珪素を含む(酸)窒化物蛍光体に関する記載は無い。
【0010】
特許文献2には、蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有する合金を作成し、合金粉を窒素含有雰囲気下で加熱して窒化する蛍光体の製造方法が開示されている。また、シリコンとアルカリ土類金属を含有する蛍光体の場合は、Siの融点がアルカリ土類金属の沸点と同程度に高いため、Si金属あるいはSiを含む母合金を先に融解させ、そこにアルカリ土類金属を添加して原料合金を作成することが好ましいことが記載されている。
しかし、特許文献2の方法では、原料合金粉を窒化する際に非常に大きい急激な発熱があるため、原料合金粉が融解して窒素の進入が阻害されて窒化が十分に進行しない可能性がある。また、融解した際にシリコンが分離する可能性があり、分離したシリコンは窒化が難しいため黒色化してしまい、所望の蛍光体が得られない可能性がある。さらに、原料合金粉の融解や急激な発熱を防止するために、窒化反応に伴う熱を放熱しながら徐々に合金粉表面を窒化することが好ましいことが記載されているが、このためには原料合金の融点前後の温度において昇温速度を遅くしたり、原料合金の量を少なくしたりする必要があるため、加熱時間が長時間になり、生産性が低下する可能性がある。
【特許文献1】特開2005−54182号公報
【特許文献2】国際公開パンフレットWO2007/135975
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来の固相法や合金を原料とする蛍光体の製造方法の問題点を解決し、高輝度の発光を示し、使用時の劣化の少ない蛍光体を安全に効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、この点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び4価の金属元素M4を含む(酸)窒化物蛍光体の製造方法において、原料として、付活元素M1及び2価の金属元素M2を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを使用することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の(1)〜(21)を要旨とするものである。
【0013】
(1) 付活元素M1、2価の金属元素M2、及び4価の金属元素M4を含む窒化物又は酸窒化物蛍光体の製造方法であって、原料として、付活元素M1及び2価の金属元素M2を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを使用し、該原料を窒素元素を含有する雰囲気中で加熱することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0014】
(2) 2価の金属元素M2が、少なくともアルカリ土類金属元素を含むことを特徴とする(1)に記載の蛍光体の製造方法。
【0015】
(3) 付活元素M1が、Cr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、4価の金属元素M4がSi、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の蛍光体の製造方法。
【0016】
(4) 窒化物又は酸窒化物蛍光体が、さらに3価の金属元素M3を含有することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
【0017】
(5) 3価の金属元素M3が、Al、Ga、In、及びScからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする(4)に記載の蛍光体の製造方法。
【0018】
(6) 原料として、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び3価の金属元素M3を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを用いることを特徴とする(4)又は(5)に記載の蛍光体の製造方法。
【0019】
(7) 原料として、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び3価の金属元素M3を含有する合金と、2価の金属元素M2及び4価の金属元素M4を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを用いることを特徴とする(4)又は(5)に記載の蛍光体の製造方法。
【0020】
(8) 原料として、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び4価の金属元素M4を含有する合金と、2価の金属元素M2及び3価の金属元素M3を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを用いることを特徴とする(4)又は(5)に記載の蛍光体の製造方法。
【0021】
(9) 合金の重量メジアン径D50が200μm以下であることを特徴とする(1)ないし(8)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
【0022】
(10) 4価の金属元素M4の窒化物として、重量メジアン径D50が100μm以下である粉末を用いることを特徴とする(1)ないし(9)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
【0023】
(11) 窒化物又は酸窒化物蛍光体が、下記一般式[1]で表される蛍光体であることを特徴とする(4)ないし(10)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
M1M2M3M4 [1]
(式中、M1は付活元素であり、M2は2価の金属元素であり、M3は3価の金属元素であり、M4は4価の金属元素であり、a、b、c、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5)
【0024】
(12) 4価の金属元素M4が、少なくともSiを含むことを特徴とする(1)ないし(11)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
【0025】
(13) 付活元素M1が、Eu及び/又はCeを含むことを特徴とする(1)ないし(12)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
【0026】
(14) 2価の金属元素M2の50モル%以上がCa及び/又はSrであり、3価の金属元素M3の50モル%以上がAlであり、4価の金属元素M4の50モル%以上がSiであることを特徴とする(11)ないし(13)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
【0027】
(15) (1)ないし(14)のいずれかに記載の方法により製造された蛍光体と、液状媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
【0028】
(16) 第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、該第2の発光体が、(1)ないし(14)のいずれかに記載の方法により製造された蛍光体の1種以上を、第1の蛍光体として含有することを特徴とする発光装置。
【0029】
(17) 前記第2の発光体が、前記第1の蛍光体とは発光ピーク波長の異なる蛍光体の1種以上を、第2の蛍光体として含有することを特徴とする(16)に記載の発光装置。
【0030】
(18) 前記第1の発光体が、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、500nm以上570nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体を含有することを特徴とする(17)に記載の発光装置。
【0031】
(19) 前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、500nm以上570nmの波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することを特徴とする(17)に記載の発光装置。
【0032】
(20) (16)ないし(19)のいずれかに記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
【0033】
(21) (16)ないし(19)のいずれかに記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
【発明の効果】
【0034】
本発明の蛍光体の製造方法によれば、高輝度の発光を示し、使用時の劣化の少ない、蛍光体を安全に効率よく提供することが可能になる。特に、蛍光体製造時の昇温速度を遅くしたり、原料合金の量を少なくしたりする必要がないため、生産性を向上させることができる。
【0035】
本発明の製造方法により、蛍光灯、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、白色発光ダイオード(LED)などに好適に使用される有用な蛍光体が工業的に有利に提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0037】
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0038】
また、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ba,Sr,Ca)Al:Eu」という組成式は、「BaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「CaAl:Eu」と、「Ba1−xSrAl:Eu」と、「Ba1−xCaAl:Eu」と、「Sr1−xCaAl:Eu」と、「Ba1−x−ySrCaAl:Eu」とを全て包括的に示しているものとする(但し、前記式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)。
【0039】
[蛍光体の組成]
本発明により製造される蛍光体(以下「本発明の蛍光体」と称す。)としては、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び4価の金属元素M4を含む(酸)窒化物蛍光体が挙げられる。
【0040】
付活元素M1としては、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体を構成する結晶母体に含有可能な各種の発光イオンを挙げることができるが、付活元素M1として、Cr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むことにより、発光特性の高い蛍光体を製造することが可能となり、好ましい。また、付活元素M1としてはMn、Ce、Pr及びEuの1種又は2種以上を含むことが好ましく、特にCe及び/又はEuを含むことが高輝度の蛍光体を得ることができるので更に好ましい。また、輝度を上げることや蓄光性を付与するなど様々な機能を持たせるために、付活元素M1としてはCe及び/又はEu以外に共付活元素を1種又は複数種含有させても良い。
【0041】
2価の金属元素M2としては、少なくともアルカリ土類金属元素を含むことが好ましく、具体的にはMg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むことが発光特性の高い蛍光体を得ることができるので好ましい。また、本発明の製造方法は、特にCaを含有する蛍光体に好適に用いることができる。
【0042】
4価の金属元素M4としては、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むことが発光特性の高い蛍光体を得ることができるので好ましい。また、本発明の製造方法は、特にSiを含有する蛍光体に好適に用いることができる。
【0043】
このような蛍光体の具体例としては、例えば、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si:Ce、(Ca,Sr,Ba)Si:Ce等が挙げられる。
【0044】
また、本発明の蛍光体としては、付活元素M1、2価の金属元素M2、4価の金属元素M4を含有し、さらに3価の金属元素M3を含有する(酸)窒化物蛍光体を挙げることもできる。
【0045】
3価の金属元素M3としては、Al、Ga、In、及びScからなる群から選ばれる1種以上の元素であることが発光特性の高い蛍光体を得ることができるので好ましい。
【0046】
本発明の蛍光体としては、下記一般式[1]で表される(酸)窒化物蛍光体が、高輝度で安定な蛍光体であるため、特に好ましい。
【0047】
M1M2M3M4 [1]
(但し、a、b、c、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5)
【0048】
上記一般式[1]において、付活元素M1としては、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体を構成する結晶母体に含有可能な各種の発光イオンを使用することができるが、Cr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素を使用すると、発光特性の高い蛍光体を製造することが可能となり、好ましい。また、付活元素M1としてはMn、Ce、Pr及びEuの1種又は2種以上を含むことが好ましく、特にCe及び/又はEuを含むことが高輝度の赤色発光を示す蛍光体を得ることができるので更に好ましい。また、輝度を上げることや蓄光性を付与するなど様々な機能を持たせるために、付活元素M1としてはCe及び/又はEu以外に共付活元素を1種又は複数種含有させても良い。
【0049】
付活元素M1以外の元素としては、各種の2価、3価、4価の金属元素が使用可能であるが、2価の金属元素M2がMg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素、3価の金属元素M3がAl、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素、4価の金属元素M4がSi、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素であることが、発光特性の高い蛍光体を得ることができるので好ましい。
【0050】
また、2価の金属元素M2の50モル%以上がCa及び/又はSrとなるように組成を調整すると発光特性の高い蛍光体が得られるので好ましい。特に、M2の80モル%以上をCa及び/又はSrとするのがより好ましく、M2の90モル%以上をCa及び/又はSrとするのが更に好ましく、M2の全てをCa及び/又はSrとするのが最も好ましい。
【0051】
また、3価の金属元素M3の50モル%以上がAlとなるように組成を調整すると発光特性の高い蛍光体が得られるので好ましい。特に、M3の80モル%以上をAlとするのが好ましく、M3の90モル%以上をAlとするのがより好ましく、M3の全てをAlとするのが最も好ましい。
【0052】
また、4価の金属元素M4の50モル%以上がSiとなるように組成を調整すると発光特性の高い蛍光体が得られるので好ましい。特に、M4の80モル%以上をSiとするのが好ましく、M4の90モル%以上をSiとするのがより好ましく、M4の全てをSiとするのが最も好ましい。
【0053】
特に、2価の金属元素M2の50モル%以上がCa及び/又はSrであり、かつ、3価の金属元素M3の50モル%以上がAlであり、かつ、4価の金属元素M4の50モル%以上がSiとなるようにすることにより、発光特性が特に高い蛍光体を製造することができるので好ましい。
【0054】
また、前記一般式[1]におけるa〜fの数値範囲の好適理由は次の通りである。
【0055】
aが0.00001より小さいと十分な発光強度が得られない傾向にあり、aが0.15より大きいと濃度消光が大きくなって発光強度が低くなる傾向にある。従って、aは0.00001≦a≦0.15の範囲となるように原料を混合する。同様の理由で、0.0001≦a≦0.1が好ましく、0.001≦a≦0.05がより好ましく、0.002≦a≦0.04がさらに好ましく、0.004≦a≦0.02とするのが最も好ましい。
【0056】
aとbの合計は、蛍光体の結晶母体中において付活元素M1が金属元素M2の原子位置を置換するので、1となるように原料混合組成を調整する。
【0057】
cが0.5より小さい場合も、cが1.5より大きい場合も、製造時に異相が生じ、前記蛍光体の収率が低くなる傾向にある。従って、cは0.5≦c≦1.5の範囲となるように原料を混合する。発光強度の観点からも0.5≦c≦1.5が好ましく、0.6≦c≦1.4がより好ましく、0.8≦c≦1.2が最も好ましい。
【0058】
dが0.5より小さい場合も、dが1.5より大きい場合も、製造時に異相が生じ、前記蛍光体の収率が低くなる傾向にある。従って、dは0.5≦d≦1.5の範囲となるように原料を混合する。また、発光強度の観点からも0.5≦d≦1.5が好ましく、0.6≦d≦1.4がより好ましく、0.8≦d≦1.2が最も好ましい。
【0059】
eは窒素の含有量を示す係数であり、e=2/3+c+4d/3=(2+3c+4d)/3となる。この式に0.5≦c≦1.5、0.5≦d≦1.5を代入すれば、eの範囲は1.84≦e≦4.17となる。しかしながら、前記一般式[1]で表される蛍光体組成において、窒素の含有量を示すeが2.5未満であると蛍光体の収率が低下する傾向にある。また、eが3.5を超えても蛍光体の収率が低下する傾向にある。従って、eは通常2.5≦e≦3.5である。
【0060】
前記一般式[1]で表される蛍光体中の酸素は、原料金属中の不純物として混入する場合、粉砕工程、窒化工程などの製造プロセス時に導入される場合などが考えられる。酸素の割合であるfは、蛍光体の発光特性低下が容認できる範囲で0≦f≦0.5が好ましい。
【0061】
本発明の蛍光体に含まれる酸素は、原料金属中の不純物として混入するもの、粉砕工程、窒化工程などの製造プロセス時に混入するものなどが考えられる。
酸素の含有量は蛍光体の発光特性低下が容認できる範囲で通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。
【0062】
尚、本発明の蛍光体組成の具体例としては、(Sr,Ca,Mg)AlSiN:Eu、(Sr,Ca,Mg)AlSiN:Ce、(Sr,Ca)Si:Eu、(Sr,Ca)Si:Ce等が挙げられる。
【0063】
[蛍光体の製造方法]
本発明の蛍光体の製造方法は、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び4価の金属元素M4を含む(酸)窒化物蛍光体を製造する際に、原料として、付活元素M1及び2価の金属元素M2を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを使用し、該原料を窒素元素を含有する雰囲気中で加熱することを特徴とする。
【0064】
また、付活元素M1、2価の金属元素M2、3価の金属元素M3、及び4価の金属元素M4を含む(酸)窒化物蛍光体を製造する際に、原料として、下記(i)〜(iii)のいずれかを用い、該原料を窒素元素を含有する雰囲気中で加熱することを特徴とする。
(i) 付活元素M1、2価の金属元素M2、及び3価の金属元素M3を含有する合金
と、4価の金属元素M4の窒化物との組み合わせ
(ii) 付活元素M1、2価の金属元素M2、及び3価の金属元素M3を含有する合金
と、2価の金属元素M2及び4価の金属元素M4を含有する合金と、4価の金属元
素M4の窒化物との組み合わせ
(iii) 付活元素M1、2価の金属元素M2、及び4価の金属元素M4を含有する合金
と、2価の金属元素M2及び3価の金属元素M3を含有する合金と、4価の金属元
素M4の窒化物との組み合わせ
【0065】
以下、本発明の一実施態様である、前記一般式[1]で表される蛍光体の製造方法について具体的に説明するが、本発明の蛍光体の製造方法で製造される蛍光体は、前記一般式[1]で表される蛍光体に限定されるものではない。
【0066】
前記一般式[1]で表される蛍光体は、付活元素M1、2価の金属元素M2、3価の金属元素M3、及び4価の金属元素M4を含む(酸)窒化物蛍光体であるので、上記(i)〜(iii)の原料を用いて製造することができる。
【0067】
上記原料(i)〜(iii)において用いられる4価の金属元素M4の窒化物としては、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、又はHfの窒化物や、これらの混合物を用いることができる。窒素は3価の元素であるので、具体的には(Si,Ge,Sn,Ti,Zr,Hf)が用いられ、好ましくは(Si,Ge)、特に好ましくはSiが用いられる。
【0068】
上記原料(i)で用いられる、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び3価の金属元素M3を含有する合金としては、(M1M2)M3が挙げられ、好ましくは、((Ce,Eu)(Mg,Ca,Sr,Ba,Zn))(Al,Ga,In,Sc)が挙げられ、特に好ましくは、(EuCa)Al、(Eu(Ca,Sr))Al、(CeCa)Al、(Ce(Ca,Sr))Alが挙げられる(ここで、a、b、cはそれぞれ前記一般式[1]におけると同義である)。
【0069】
原料(i)として用いる合金(M1M2)M3、及びM4の窒化物の使用割合は、使用する原料中に含まれるM1、M2、M3、M4の合計量が、それぞれ前記一般式[1]を満たすような割合で用いることが好ましい。ただし、前記一般式[1]における組成と全く同じでなくても、±5%程度は異なっていてもよい。
【0070】
上記原料(ii)で用いられる2種類の合金、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び3価の金属元素M3を含有する合金と、2価の金属元素M2及び4価の金属元素M4を含有する合金としては、好ましくはM32c(M1M2)とM22bM4が挙げられる。
【0071】
M32c(M1M2)としては、好ましくは、(Al,Ga,In,Sc)2c((Ce,Eu)(Mg,Ca,Sr,Ba,Zn))が挙げられ、特に好ましくは、Al2c(EuCa)、Al2c(Eu(Ca,Sr))、Al2c(CeCa)、Al2c(Ce(Ca,Sr))が挙げられる(ここで、a、b、cはそれぞれ前記一般式[1]におけると同義である)。
【0072】
また、M22bM4としては、好ましくは、(Mg,Ca,Sr,Ba,Zn)2b(Si,Ge,Sn,Ti,Zr,Hf)が挙げられ、特に好ましくは(Ca,Sr)2b(Si,Ge)、Ca2b(Si,Ge)、Ca2bSiが挙げられる(ここで、b、dはそれぞれ前記一般式[1]におけると同義である)。
【0073】
原料(ii)として用いる合金M32c(M1M2)及びM22bM4、並びにM4の窒化物の使用割合は、使用する原料中に含まれるM1、M2、M3、M4の合計量が、それぞれ前記一般式[1]を満たすような割合で用いることが好ましい。ただし、前記一般式[1]における組成と全く同じでなくても、±5%程度は異なっていてもよい。
【0074】
上記原料(iii)で用いられる2種類の合金、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び4価の金属元素M4を含有する合金と、2価の金属元素M2及び3価の金属元素M3を含有する合金としては、(M1M2M4とM2M32cが挙げられる。
【0075】
(M1M2M4としては、好ましくは、((Ce,Eu)(Mg,Ca,Sr,Ba,Zn)(Si,Ge,Sn,Ti,Zr,Hf)が挙げられ、特に好ましくは、(Eu(Ca,Sr)Si、(Ce(Ca,Sr)Si、(EuCaSi、(CeCaSiが挙げられる(ここで、a、b、dはそれぞれ前記一般式[1]におけると同義である)。
【0076】
また、M2M32cとしては、好ましくは、(Mg,Ca,Sr,Ba,Zn)(Al,Ga,In,Sc)2cが挙げられ、特に好ましくは、(Ca,Sr)Al2c、CaAl2cが挙げられる(ここで、b、cはそれぞれ前記一般式[1]におけると同義である)。
【0077】
原料(iii)として用いる合金(M1M2M4及びM2M32c、並びにM4の窒化物の使用割合は、使用する原料中に含まれるM1、M2、M3、M4の合計量が、それぞれ前記一般式[1]を満たすような割合で用いることが好ましい。ただし、前記一般式[1]における組成と全く同じでなくても、±5%程度は異なっていてもよい。
【0078】
例えば、前記一般式[1]で表される蛍光体がCaAlSiN:Euの場合(即ち、(Ca,Eu)AlSiNの場合)は、以下のような原料及び割合(モル比)とすることが好ましい。
原料(i)の場合⇒ (Eu,Ca)Al:Si=1:1/3
原料(ii)の場合⇒Al(Eu,Ca):CaSi:Si
=1/2:1/4:1/4
原料(iii)の場合⇒(Eu,Ca)Si:CaAl:Si
=1/4:1/2:1/4
【0079】
原料として使用する合金としては、塊状、粉末状等任意の形状のものを用いることができるが、反応性が高いことから、粉末状のものを用いることが好ましい。
【0080】
原料として使用する合金粉末の重量メジアン径D50は、合金粉末を構成する金属元素の活性度によって適切な粒径を選択すればよいが、通常の場合、200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、特に好ましくは60μm以下、また、0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1μm以上である。
ただし、原料として使用する合金粉末がSrを含有する場合は、雰囲気ガスとの反応性が高いため、合金粉末の重量メジアン径D50の下限は、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは13μm以上とすることが望ましい。
原料合金粉末の粒径が前述の重量メジアン径D50の範囲よりも小さいと、窒化等の反応時の発熱速度が大きくなり、反応の制御が困難となるおそれがある。一方で前述の重量メジアン径D50の範囲よりも大きいと、合金粒子内部での窒化等の反応が不十分となるおそれがある。
【0081】
また、合金粉末中に含まれる、粒径10μm以下の合金粒子の割合は80重量%以下であることが好ましく、粒径45μm以上の合金粒子の割合は40重量%以下であることが好ましい。
【0082】
また、原料合金粉末のQDの値は、特に制限はないが、通常0.59以下である。ここで、QDとは、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDの値が小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
【0083】
一方、原料として用いる4価の金属元素M4の窒化物としても、通常、粉末状のものを用いることが好ましい。
【0084】
M4窒化物粉末の重量メジアン径D50は、他の合金原料との混合や反応に支障がない限り、特に制限は無いが、通常100μm以下、特に好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。また、原料M4窒化物の重量メジアン径D50は0.01μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上である。
【0085】
{原料合金の製造}
前記した原料合金は、原料となる金属やその合金を混合し、これを融解させて合金化することにより製造することが出来る。
原料合金の製造には、本発明の蛍光体に含まれる元素に対応した金属、当該金属を含む合金などを用いることができる。また、本発明の蛍光体が含む元素に対応した原料は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。ただし、原料の中でも、付活元素M1の原料として使用するEu原料やCe原料としては、Eu金属やCe金属を使用することが好ましい。これは原料の入手が容易であるからである。
【0086】
〈原料合金製造用金属の純度〉
原料合金の製造に使用する金属の純度は、合成される蛍光体の発光特性の点から、付活元素M1の金属原料としては不純物が、通常1モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.1%以下まで精製された金属を使用することが好ましい。上述の如く、付活元素M1としてEuを使用する場合には、Eu原料としてEu金属を使用することが好ましい。付活元素M1以外の元素の原料としては、2価、3価、4価の各種金属等を使用するが、同様の理由から、いずれも含有される不純物濃度は0.1モル%以下が好ましく、0.01モル%以下の高純度の金属原料を使用することが発光特性の高い蛍光体を製造できる点で好ましい。
【0087】
〈原料合金製造用金属の形状〉
原料合金製造用金属の形状に制限は無いが、通常、直径数mmから数十mmの粒状又は塊状のものが用いられる。
2価の金属元素M2としてアルカリ土類金属元素を用いる場合、その原料としては、粒状、塊状など形状は問わないが、原料の化学的性質に応じて適切な形状を選択するのが好ましい。例えば、Caは粒状、塊状のいずれでも大気中で安定であり、使用可能であるが、Srは化学的により活性であるため、塊状の原料を用いることが好ましい。
【0088】
〈原料合金製造用金属の融解〉
原料合金製造用金属の融解法については、特に制限はないが、通常、抵抗加熱法、電子ビーム法、アーク融解法、高周波誘導加熱法(以下、「高周波融解法」と称する場合がある。)等を用いることができる。また、これらの方法の2種以上を組み合わせて行うこともできる。中でも、アーク融解法、高周波融解法が好ましく、高周波融解法が特に好ましい。
【0089】
本発明において、原料合金製造用金属の融解順序には特に制限はないが、通常、量が多いもの、もしくは、融点が高いものを先に融解させることが好ましい。
【0090】
融解時に用いることのできる坩堝の材質としては、アルミナ、マグネシア、カルシア、黒鉛、モリブデン等が挙げられる。
原料合金製造用金属の融解時の雰囲気は、不活性雰囲気が好ましく、中でもアルゴン雰囲気が好ましい。この際、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、圧力は、通常、1×10Pa以上、1×10Pa以下が好ましく、安全性の面から、大気圧以下で行うことが望ましい。
【0091】
なお、融解時に揮発や坩堝材質との反応等により損失する金属元素については、必要に応じて、予め過剰に秤量し添加してもよい。
【0092】
〈溶湯の鋳造〉
原料合金製造用金属の融解により原料合金が得られる。この原料合金は通常は合金溶湯として得られるが、この合金溶湯から直接蛍光体を製造するには技術的課題が多く存在する。そのため、この合金溶湯を金型に注入して成型する鋳造工程を経て、凝固体(以下適宜、「合金塊」という)を得ることが好ましい。
【0093】
ただし、この鋳造工程において溶融金属の冷却速度によって偏析が生じ、溶融状態で均一組成であったものが組成分布に偏りが生じることもある。従って、冷却速度はできるだけ速いことが望ましい。また、金型は銅などの熱伝導性のよい材料を使用することが好ましく、熱が放散しやすい形状であることが好ましい。また、必要に応じて水冷などの手段により金型を冷却する工夫をすることも好ましい。
【0094】
このような工夫により、例えば厚さに対して底面積の大きい金型を用い、溶湯を金型へ注湯後、できるだけ早く凝固させることが好ましい。
【0095】
また、合金の組成によって偏析の程度は異なるので必要な分析手段、例えばICP発光分光分析法などによって、得られた凝固体の数箇所より試料を採取して組成分析を行い、偏析の防止に必要な冷却速度を定めることが好ましい。
【0096】
なお、鋳造時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気が好ましく、中でもアルゴン雰囲気が好ましい。この際、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0097】
〈合金塊の粉砕〉
加熱による窒化工程に先立ち、原料合金は、所望の粒径の粉末状にすることが好ましい。そこで、鋳造工程で得られた合金塊は、次いで粉砕することにより、所望の粒径、粒度分布を有する原料合金粉末(以下、単に「合金粉末」と称する場合がある。)とすることが好ましい(粉砕工程)。
合金塊の粉砕方法に特に制限はないが、例えば、乾式法や、エチレングリコール、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いる湿式法で行うことが可能である。
【0098】
以下、乾式法を例に詳しく説明する。
この粉砕工程は、必要に応じて、粗粉砕工程、中粉砕工程、微粉砕工程等の複数の工程に分けてもよい。この場合、全粉砕工程を同じ装置を用いて粉砕することもできるが、工程によって使用する装置を変えてもよい。
【0099】
ここで、粗粉砕工程とは、合金粉末のおおよそ90重量%が粒径1cm以下になるように粉砕する工程であり、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、クラッシングロール、インパクトクラッシャーなどの粉砕装置を使用することができる。中粉砕工程とは、合金粉末のおおよそ90重量%が粒径1mm以下になるように粉砕する工程であり、コーンクラッシャー、クラッシングロール、ハンマーミル、ディスクミルなどの粉砕装置を使用することができる。微粉砕工程とは、合金粉末が後述する重量メジアン径になるように粉砕する工程であり、ボールミル、チューブミル、ロッドミル、ローラーミル、スタンプミル、エッジランナー、振動ミル、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。
【0100】
中でも、不純物の混入を防止する観点から、最終の粉砕工程においては、ジェットミルを使用することが好ましい。ジェットミルを用いるためには、粒径2mm以下程度になるまで予め合金塊を粉砕しておくことが好ましい。ジェットミルでは、主に、ノズル元圧から大気圧に噴射される流体の膨張エネルギーを利用して粒子の粉砕を行うため、粉砕圧力により粒径を制御すること、不純物の混入を防止することが可能である。粉砕圧力は、装置によっても異なるが、通常、ゲージ圧で0.01MPa以上、2MPa以下の範囲であり、中でも、0.05MPa以上、0.4MPa未満が好ましく、0.1MPa以上、0.3MPa以下がさらに好ましい。ゲージ圧が低すぎると得られる粒子の粒径が大きすぎる可能性があり、高すぎると得られる粒子の粒径が小さすぎる可能性がある。
【0101】
また、合金塊の量が少ない場合は、乳鉢を用いて粉砕しても構わない。
【0102】
さらに、いずれの場合も粉砕工程中に鉄等の不純物の混入が起こらないよう、粉砕機の材質と被粉砕物の関係を適切に選択する必要がある。例えば、接粉部は、セラミックライニングが施されていることが好ましく、セラミックの中でも、アルミナ、窒化ケイ素、タングステンカーバイド、ジルコニア等でライニングが施されていることが好ましい。
【0103】
また、合金粉末の酸化を防ぐため、粉砕工程は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの気体のうち1種単独雰囲気又は2種以上の混合雰囲気を用いることができる。中でも、経済性の観点から窒素雰囲気が特に好ましい。
【0104】
さらに、雰囲気中の酸素濃度は合金粉末の酸化が防止できる限り制限はないが、通常10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。また、酸素濃度の下限としては、通常、10ppm程度である。特定の範囲の酸素濃度とすることによって、粉砕中に合金の表面に酸化被膜が形成され、安定化すると考えられる。しかし、酸素濃度が5体積%より高い雰囲気中で粉砕工程を行う場合、粉砕中に粉塵が爆発する可能性があるため、粉塵を生じさせないような設備を設けることが好ましい。
なお、粉砕工程中に合金粉末の温度が上がらないように必要に応じて冷却してもよい。
【0105】
〈合金粉末の分級〉
上述したようにして得られた合金粉末は、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフターなどの網目を使用した篩い分け装置;エアセパレータ等の慣性分級装置;サイクロン等の遠心分離機などを使用して、前述の所望の重量メジアン径D50及び粒度分布に調整(分級工程)してから、これ以降の工程に供することが好ましい。
なお、粒度分布の調整においては、粗粒子を分級し、粉砕機にリサイクルすることが好ましく、分級及び/又はリサイクルが連続的であることがさらに好ましい。
【0106】
この分級工程についても、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの1種単独雰囲気又は2種以上の混合雰囲気が用いられ、経済性の観点から窒素雰囲気が特に好ましい。また、粉砕工程におけると同様の理由から、不活性ガス雰囲気中の酸素濃度は10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。
【0107】
{原料粉の混合工程}
本発明の蛍光体は、前述の原料合金粉末及びM4窒化物を窒化することにより製造することができるが、窒化の前に、原料合金粉末及びM4窒化物粉末を混合することが好ましい。混合する際に使用する混合機としては、水平円筒型混合機、二重円錐型混合機、V型ブレンダー、リボン型ブレンダー、パドル型ブレンダー、円錐型スクリュー、高速流動型混合機等を用いることができる。また、乳鉢と乳棒を用いて混合してもよい。
【0108】
混合は、原料合金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類には特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウム等の気体のうち1種のみ又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合してもよい。
【0109】
また、混合時の不活性ガス雰囲気中の酸素濃度は原料合金の酸化が防止できる限り制限はないが、通常10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。また、酸素濃度の下限としては、通常、10ppm程度である。特定の範囲の酸素濃度とすることによって、混合中に合金の表面に酸化被膜が形成され、安定化すると考えられる。酸素濃度が5体積%より高い雰囲気中で混合工程を行う場合、混合中に粉塵が爆発する可能性があるため、粉塵を生じさせないような設備を設けることが好ましい。
【0110】
{原料の窒化}
本発明の蛍光体は、前述の原料合金及びM4窒化物を、窒素元素を含有する雰囲気中で加熱して、窒化することにより製造することができる。
【0111】
例えば、まず、原料合金粉末及びM4窒化物粉末を、ルツボ、或いはトレイに充填する。ここで使用するルツボ或いはトレイの材質としては、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、タングステン等が挙げられるが、窒化ホウ素が耐食性に優れることから好ましい。
この合金粉末を充填したルツボ或いはトレイを、雰囲気制御が可能な加熱炉に納めた後、窒素を含むガスを流通して系内を十分にこの窒素含有ガスで置換する。必要に応じて、系内を真空排気した後、窒素含有ガスを流通しても良い。
【0112】
窒化処理の際に使用する窒素含有ガスとしては、窒素を含むガス、例えば窒素、アンモニア、或いは窒素と水素の混合気体等が挙げられる。系内の酸素濃度は製造される蛍光体の酸素含有量に影響し、余り高い含有量となると高い発光が得られなくなるため、窒化処理雰囲気中の酸素濃度は、低いほど好ましく、通常1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下とする。また、必要に応じて、炭素、モリブデン等の酸素ゲッターを系内加熱部分に入れて、酸素濃度を低下させても良い。
【0113】
窒化処理は、窒素含有ガスを充填した状態或いは流通させた状態で加熱することにより行うが、その圧力は大気圧よりも減圧、大気圧或いは加圧の何れの状態でも良い。窒素含有ガスの圧力は少なくともゲージ圧で、通常0.0001MPa以上であり、0.01MPa以上が好ましく、0.05MPa以上が特に好ましい。大気圧未満にすると加熱炉の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入して特性の高い蛍光体を得ることができないおそれがある。窒素含有ガスの圧力は少なくともゲージ圧で、100MPa以下が好ましく、10MPa以下が好ましく、5MPa以下が特に好ましいが、安全性の観点からは1MPa以下が最も好ましい。
【0114】
また、Srを含有する原料合金を用いる場合は、窒素含有ガスの圧力は少なくともゲージ圧で、1MPa以上が好ましく、10MPa以上、200MPa以下が最も好ましい。
【0115】
原料を窒化処理する際の加熱温度は、通常800℃以上、好ましくは1000℃以上、更に好ましくは1200℃以上で、通常2200℃以下、好ましくは2100℃以下、更に好ましくは2000℃以下の温度とする。加熱温度が800℃より低いと、窒化処理に要する時間が非常に長くなり好ましくない。一方、加熱温度が2200℃より高いと、生成する窒化物が揮発或いは分解し、得られる蛍光体の化学組成がずれて、特性の高い蛍光体が得られず、また、再現性も悪いものとなるおそれがある。
【0116】
窒化処理時の加熱時間(最高温度での保持時間)は、原料と窒素との反応に必要な時間で良いが、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは60分以上とする。加熱時間が1分より短いと窒化反応が完了せず特性の高い蛍光体が得られない。加熱時間の上限は生産効率の面から決定され、通常24時間以下である。
【0117】
また、窒化処理時の昇温速度は限定されず、生産性等の観点から、適宜選択すればよく、従来法のように原料合金の融点前後において、特にゆっくりと昇温する必要はない。昇温速度は、通常10℃/時間以上、好ましくは100℃/時間以上、より好ましくは200℃/時間以上であり、また、通常、1000℃/時間以下、好ましくは900℃/時間以下である。原料合金の融点前後の温度範囲においても、200℃/時間以上の昇温速度とすることができる。
【0118】
なお、窒化処理に当たり、上記原料にさらに、予め製造しておいた目的とする蛍光体、例えば前記一般式[1]で表される蛍光体を、種晶として添加して窒化処理を行なってもよい。
この場合、種晶の重量メジアン径D50は、他の原料との混合に支障がない限り、特に制限は無いが、他の原料と混合しやすいことが好ましく、例えば、原料合金粉末やM4窒化物粉末と同程度であることが好ましい。通常、種晶の重量メジアン径D50は200μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下であり、また、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上である。
【0119】
種晶の原料全体(種晶を除く)に対する混合割合は、通常、1重量%〜50重量%とすることが好ましい。これにより、窒化処理時の単位体積当たりの発熱速度が抑えられ、この結果、発生した熱により原料の溶融や分相、あるいは窒化物の分解が起こり、得られる蛍光体の特性が低下するという現象を抑制することができる。また、結晶粒の成長を促進する効果もある。
【0120】
また、窒化処理工程においては、良好な結晶を成長させる観点から、反応系にフラックスを共存させてもよい。
【0121】
{再加熱処理}
上述の原料の窒化処理で得られた(酸)窒化物蛍光体は、高い発光を得ることを目的として、必要に応じて、再度、加熱処理することにより粒子成長させても良い(再加熱処理)。
【0122】
再加熱処理する場合の加熱条件としては、好ましくは1200℃以上、2200℃以下とする。この温度が1200℃未満では再加熱しても粒子成長させる効果が少ない。一方、2200℃を超える温度で加熱すると、無駄な加熱エネルギーを消費してしまうだけでなく、蛍光体の分解が起こり、雰囲気ガスの一部となる窒素の圧力を非常に高くしないと目的の蛍光体を製造できない。同様の理由で、再加熱処理温度は1300℃以上が好ましく、1400℃以上が更に好ましく、1500℃以上が最も好ましい。また、2100℃以下が好ましく、2000℃以下が更に好ましく、1900℃以下が最も好ましい。
【0123】
再加熱処理する際の雰囲気は、基本的には窒素含有ガス等の不活性雰囲気又は還元性雰囲気とする。雰囲気中の酸素濃度は、通常1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下とする。酸素濃度が1000ppmを超えるような酸素含有ガス中や大気中など酸化雰囲気下で再加熱処理すると、蛍光体が酸化されてしまい、目的の蛍光体を得ることができない。ただし、0.1ppm〜10ppm程度の微量酸素を含有する雰囲気とすることで比較的低温での蛍光体の合成が可能となるので好ましい。
【0124】
再加熱処理時の圧力は、大気中の酸素の混入を防ぐためには大気圧以上の圧力とするのが好ましい。大気圧未満の圧力とすると、窒化処理時の加熱工程と同様に、加熱炉の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入して特性の高い蛍光体を得ることができないおそれがある。
【0125】
再加熱処理時の加熱時間(最高温度での保持時間)は、通常1分間以上、100時間以下とする。保持時間が短すぎると粒子成長が十分に進まず、また、保持時間が長すぎる場合には、無駄な加熱エネルギーが消費されるだけではなく、蛍光体の表面から窒素が脱離して発光特性が低下する傾向がある。同様の理由により、保持時間は10分間以上とするのが好ましく、30分間以上とするのがより好ましく、24時間以下とするのが好ましく、12時間以下とするのがより好ましい。
【0126】
{その他の工程}
本発明の蛍光体の製造方法においては、任意の時機において、上記以外の工程、例えば粉砕工程、分級工程、洗浄工程、乾燥工程、表面処理工程、その他の後処理工程を有していても良い。
【0127】
〈粉砕工程〉
粉砕工程では、窒化処理中の粒子成長、焼結などにより凝集している蛍光体に機械的な力を加え、粉砕する。例えば、ジェットミルなどの気流による粉砕や、ボールミル、ビーズミル等のメディアによる粉砕などの方法が使用できる。
【0128】
〈分級工程〉
必要に応じて粉砕して得られた蛍光体の粉末は、分級工程を行なうことにより所望の粒度分布に調整できる。分級には、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフター等の網目を使用した篩い分け装置、エアセパレータ、水簸装置等の慣性分級装置や、サイクロン等の遠心分級機を使用することができる。
【0129】
〈洗浄工程〉
洗浄工程では、蛍光体を、中性又は酸性の溶液(以下、「洗浄媒」と称する場合がある。)を用いて洗浄する。なお、洗浄工程を前述の粉砕工程後に行うと、蛍光体の特性が向上する傾向にあり、好ましい。
ここで用いる中性の溶液としては、脱塩水又は蒸留水を用いることが好ましい。酸性の溶液としては、塩酸、硫酸などの鉱酸の1種又は2種以上を希釈した水溶液が使用できる。酸水溶液の酸の濃度は、通常0.1mol/l以上、5mol/l以下が好ましい。酸性の水溶液を用いると、蛍光体の溶解イオン量の低減効率の点で好ましいが、この洗浄に用いる酸水溶液の酸濃度が高すぎると蛍光体表面を溶解する場合があり、低すぎると酸を用いた効果が十分に得られない場合がある。
また、洗浄媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いて洗浄を行なってもよい。
【0130】
また、洗浄工程は複数回行なっても良い。複数回の洗浄工程を行なう場合、水による洗浄と酸性の溶液による洗浄とを組み合わせて行なっても良いが、その場合、蛍光体への酸の付着を防止するために、酸性の溶液で洗浄した後、水による洗浄を行なうようにすることが好ましい。また、水による洗浄後、酸性の溶液で洗浄し、その後、水による洗浄を行なってもよい。
【0131】
また、複数回の洗浄工程を行なう場合、洗浄工程の間に前述の粉砕工程や分級工程を行なっても良い。
【0132】
〈乾燥工程〉
上記洗浄後は、蛍光体を付着水分がなくなるまで乾燥させて、使用に供するとよい。具体的な操作の例を挙げると、洗浄を終了した蛍光体スラリーを遠心分離機等で脱水し、得られた脱水ケーキを乾燥用トレイに充填すればよい。その後、100℃〜200℃の温度範囲で含水量が0.1重量%以下となるまで乾燥する。得られた乾燥ケーキを篩等に通し、軽く解砕して蛍光体を得る。
【0133】
〈表面処理工程〉
また、得られた蛍光体に対して表面処理を施しても良い。表面処理としては、例えば、シリカ、アルミナ、リン酸カルシウム等の微粒子を蛍光体の表面に薄層として付着させる処理が挙げられる。これにより、蛍光体の粉体特性(凝集状態、溶液中での分散性や沈降挙動等)を改善することができる。
【0134】
〈その他の後処理工程〉
また、加熱処理後の後処理については、公知の蛍光体、例えば、ブラウン管、プラズマディスプレイパネル、蛍光ランプ、蛍光表示管、X線増感紙等に用いられる蛍光体に関して一般的に知られている技術を利用することができ、目的、用途等に応じて適宜選択して適用することができる。
【0135】
[蛍光体の特性]
<発光色>
本発明の蛍光体の発光色は、化学組成等を調整することにより、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色等、所望の発光色とすることができる。
【0136】
<発光スペクトル>
例えば、M1がEuである前記一般式[1]で表される蛍光体は、橙色ないし赤色発光蛍光体としての用途に鑑みて、発光スペクトルを測定した場合に、以下の特徴を有することが好ましい。
【0137】
まず、M1がEuである前記一般式[1]で表される蛍光体(以下「本発明の蛍光体[1]と称すことがある)は、波長465nmの光で励起した場合における発光スペクトルにおけるピーク波長λp(nm)が、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲の蛍光を発するものであることが好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると黄味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると暗赤味を帯びる傾向があり、何れも橙色ないし赤色光としての特性が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0138】
また、本発明の蛍光体[1]は、波長465nmの光で励起した場合における発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅(full width at half maximum。以下適宜「FWHM」と略称する。)が、通常50nmより大きく、中でも70nm以上、また、通常150nm未満、中でも120nm以下であることが好ましい。この半値幅FWHMが狭過ぎると発光強度が低下する場合があり、広過ぎると色純度が低下する場合がある。
【0139】
なお、本発明の蛍光体[1]をピーク波長465nmの光で励起するには、例えば、GaN系発光ダイオードを用いることができる。また、本発明の蛍光体[1]の発光スペクトルの測定は、例えば、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)等を用いて行うことができる。発光ピーク波長、及び発光ピークの半値幅は、得られる発光スペクトルから算出することができる。
【0140】
本発明の蛍光体[1]の励起スペクトルに制限は無いが、例えば発光波長650nmにおける励起スペクトルとしては、通常250nm以上、好ましくは300nm以上、また、通常600nm以下、好ましくは550nm以下の波長範囲の光で励起されて可視光を発する。
本発明の蛍光体[1]は、このように広範な波長範囲の光を吸収することができるため、従来の蛍光体よりも高い輝度で発光できるものと推察される。
本発明の蛍光体[1]の前記の励起スペクトルは、例えば、発光スペクトルの測定方法の項で挙げたのと同様の測定装置を用いて測定することができる。
【0141】
<重量メジアン径D50
本発明の蛍光体は、その重量メジアン径D50が、通常3μm以上、中でも5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常30μm以下、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下である。重量メジアン径D50が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
また、同様の理由で、本発明の蛍光体は、粒径100μm以上の粗大粒子の含有率はできるだけ小さいことが好ましく、粒径50μm以上の粗大粒子の含有率ができるだけ小さいことが更に好ましく、これらの含有量が実質ゼロであることが好ましい。
なお、本発明における蛍光体の重量メジアン径D50は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定することができる。
【0142】
<温度特性>
本発明の蛍光体は、温度特性にも優れるものである。具体的には、波長455nmにピークを有する光を照射した場合における25℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値に対する150℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値の割合が、通常55%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
また、通常の蛍光体は温度上昇と共に発光強度が低下するので、該割合が100%を超えることは考えられにくいが、何らかの理由により100%を超えることがあっても良い。ただし150%を超えるようであれば、温度変化により色ずれを起こす傾向となる。
【0143】
本発明の蛍光体は、上記発光ピーク強度に関してだけでなく、輝度の点からも温度特性に優れたものである。具体的には、波長455nmにピークを有する光を照射した場合の25℃での輝度に対する150℃での輝度の割合も、通常55%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0144】
<その他>
本発明の蛍光体は、その内部量子効率が高いほど好ましい。その値は、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。内部量子効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
本発明の蛍光体は、その吸収効率も高いほど好ましい。その値は通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。吸収効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0145】
[蛍光体の用途]
本発明の蛍光体は、高輝度であり、演色性が高いという特性を生かして、各種の発光装置に好適に用いることができる。例えば、本発明の蛍光体が、橙色ないし赤色蛍光体である場合、緑色蛍光体、青色蛍光体等を組み合わせれば、高演色性の白色発光装置を実現することができる。こうして得られた発光装置を、画像表示装置の発光部(特に液晶用バックライトなど)や照明装置として使用することができる。
【0146】
[蛍光体含有組成物]
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。
【0147】
本発明の蛍光体含有組成物は、本発明の製造方法により得られた蛍光体を1種又は2種以上含有するものである。更に、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の本発明の製造方法により得られた蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。蛍光体を2種以上含有させる場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択することができる。
【0148】
本発明の蛍光体含有組成物に使用される液体媒体としては、該蛍光体の性能を目的の範囲で損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じないものであれば、任意の無機系材料及び/又は有機系材料が使用できる。
【0149】
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、又はこれらを組み合わせた無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
【0150】
有機系材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0151】
これらの中で特に照明など大出力の発光装置に蛍光体を用いる場合には、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用することが好ましい。
【0152】
珪素含有化合物とは、分子中に珪素原子を有する化合物をいい、例えば、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
【0153】
上記シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば下記式で表される化合物及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
(RSiO1/2(RSiO2/2
(RSiO3/2(SiO4/2
上記式において、RからRは同じであっても異なってもよく、有機官能基、水酸基、水素原子からなる群から選択される。また、M、D、T及びQは、各々0以上1未満の数であり、且つ、M+D+T+Q=1を満足する数である。
【0154】
該シリコーン系材料は、半導体発光素子の封止に用いる場合、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる。
【0155】
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン系材料)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン系材料)、紫外線硬化タイプが好適である。
【0156】
本発明の蛍光体含有組成物中の蛍光体及び液体媒体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、液体媒体については、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。また、蛍光体については、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは25重量%以下である。液体媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で液体媒体及び蛍光体を用いることが望ましい。一方、液体媒体が少な過ぎると流動性がなく、取り扱い難くなる可能性がある。
【0157】
液体媒体は、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液体媒体は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用する場合は、当該珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、バインダーである液体媒体全量に対して通常25重量%以下、好ましくは10重量%以下とすることが望ましい。
【0158】
なお、本発明の蛍光体含有組成物には、その用途等に応じて、その他の成分を適宜含有することができる。その他の成分としては、拡散剤、増粘剤、増量剤、干渉剤、紫外線防止剤等が挙げられる。具体的には、アエロジル等のシリカ系微粉、アルミナ粉等が挙げられる。その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0159】
本発明の蛍光体含有組成物によれば、本発明の蛍光体を所望の位置に容易に固定することができる。例えば、本発明の蛍光体含有組成物を発光装置の製造に用いる場合、本発明の蛍光体含有組成物を所望の位置に成形し、液体媒体を硬化させれば、当該液体媒体で本発明の蛍光体を封止することができ、所望の位置に本発明の蛍光体を容易に固定することが可能となる。
【0160】
[発光装置]
次に、本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置(以下、適宜「発光装置」という)は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体として、前述の本発明の製造方法によって得られた本発明の蛍光体の1種以上を、第1の蛍光体として含有するものである。
【0161】
例えば、M1がEuである前記一般式[1]で表される蛍光体[1]は、前述の如く、励起光源からの光の照射下において、橙色ないし赤色に発光する蛍光体であり、本発明の発光装置に好適である。本発明の発光装置には、本発明の蛍光体のいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有してもよい。
【0162】
本発明の発光装置は、具体的には、第1の発光体として後述するような励起光源を用い、第2の発光体として使用する蛍光体の種類や使用割合を調整し、公知の装置構成を任意にとることにより、任意の色に発光する発光装置を製造することができる。
例えば、青色光を発する励起光源と緑色の蛍光を発する蛍光体(緑色蛍光体)と橙色ないし赤色の蛍光を発する蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体)とを組み合わせれば、白色発光装置を製造することができる。この場合の発光色は、使用する蛍光体の発光波長を調整することにより、好みの発光色にすることができるが、例えば、いわゆる擬似白色(例えば、青色発光ダイオード(以下適宜、発光ダイオードを「LED」という)と黄色の蛍光を発する蛍光体(黄色蛍光体)を組み合わせた発光装置の発光色)の発光スペクトルと類似した発光スペクトルを得ることもできる。更に、この白色発光装置に赤色蛍光体を組み合わせれば、赤色の演色性に極めて優れた発光装置や電球色(暖かみのある白色)に発光する発光装置を実現することができる。また、近紫外光を発する励起光源に、青色の蛍光を発する蛍光体(青色蛍光体)、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を組み合わせても、白色発光装置を製造することができる。
【0163】
ここで、該白色発光装置の白色とは、JIS Z 8701により規定された、(黄みの)白、(緑みの)白、(青みの)白、(紫みの)白及び白の全てを含む意であり、このうち好ましくは白である。
【0164】
またさらに、必要に応じて、黄色蛍光体、青色蛍光体、橙色ないし赤色蛍光体、他種の緑色蛍光体等を組み合わせて、蛍光体の種類や使用割合を調整し、任意の色に発光する発光装置を製造することもできる。
【0165】
なお、発光装置の発光スペクトルは、気温25±1℃に保たれた室内において、オーシャン オプティクス社製の色・照度測定ソフトウェア及びUSB2000シリーズ分光器(積分球仕様)を用いて20mA通電して測定を行なうことができる。この発光スペクトルの380nm〜780nmの波長領域のデータから、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標として色度値(x,y,z)を算出できる。この場合、x+y+z=1の関係式が成立する。本明細書においては、前記XYZ表色系をXY表色系と称している場合があり、通常(x,y)で表記している。
【0166】
{発光装置の構成(発光体)}
<第1の発光体>
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。
【0167】
第1の発光体の発光波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体を使用することが特に好ましい。
【0168】
第1の発光体の発光ピーク波長の具体的数値としては、通常200nm以上が望ましい。このうち、近紫外光を励起光として用いる場合には、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上が望ましく、また、通常420nm以下のピーク発光波長を有する発光体(近紫外発光体)を使用することが望ましい。また、青色光を励起光として用いる場合には、通常420nm以上、好ましくは430nm以上が望ましく、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下のピーク発光波長を有する発光体(青色発光体)を使用することが望ましい。何れも、発光装置の色純度の観点からである。
【0169】
第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的にはLEDや半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode。以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。その他、第1の発光体として使用できる発光体としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。但し、第1の発光体として使用できるものは本明細書に例示されるものに限られない。
【0170】
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記本発明の蛍光体[1]と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でもInGaN発光層を有するものは発光強度が非常に強いので特に好ましく、GaN系LEDにおいては、それらの仲でもInGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので特に好ましい。
【0171】
なお、上記においてx+yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0172】
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率が更に高いため、より好ましい。
なお、第1の発光体は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0173】
<第2の発光体>
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として少なくとも前述の本発明の蛍光体を含有するとともに、その用途等に応じて適宜、後述する第2の蛍光体(赤ないし橙色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等)を含有する。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止材料中に分散させて構成される。
【0174】
上記第2の発光体中に用いられる、本発明の蛍光体以外の蛍光体の組成には特に制限はない。その例を挙げると、結晶母体となる、Y23、YVO4、Zn2SiO4、Y3Al512、Sr2SiO4等に代表される金属酸化物、Sr2Si58等に代表される金属窒化物、Ca5(PO43Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、Y22S、La22S等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。
【0175】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa24、SrS、ZnS等の硫化物;Y22S等の酸硫化物;(Y,Gd)3Al512、YAlO3、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119、(Ba,Sr,Mg)O・Al23、BaAl2Si28、SrAl24、Sr4Al1425、Y3Al512等のアルミン酸塩;Y2SiO5、Zn2SiO4等の珪酸塩;SnO2、Y23等の酸化物;GdMgB510、(Y,Gd)BO3等の硼酸塩;Ca10(PO46(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2等のハロリン酸塩;Sr227、(La,Ce)PO4等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0176】
但し、上記の結晶母体、付活元素及び共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0177】
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
【0178】
(第1の蛍光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、第1の蛍光体として、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、第1の蛍光体としては、本発明の蛍光体以外にも、本発明の蛍光体と同色の蛍光を発する蛍光体(同色併用蛍光体)を用いてもよい。例えば、本発明の蛍光体が赤色蛍光体である場合、第1の蛍光体として、本発明の蛍光体とともに他種の橙色ないし赤色蛍光体を併用することができる。
【0179】
(第2の蛍光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を1種以上含有していてもよい。この第2の蛍光体は、第1の蛍光体とは発光ピーク波長が異なる蛍光体である。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。
【0180】
例えば、第1の蛍光体が緑色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等の緑色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
また、第1の蛍光体が青色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体等の青色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
また、第1の蛍光体が黄色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体等の黄色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
また、第1の蛍光体が橙色ないし赤色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体等の橙色ないし赤色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
【0181】
本発明の発光装置に使用される第2の蛍光体の重量メジアン径は、通常10μm以上、中でも12μm以上、また、通常30μm以下、中でも25μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
【0182】
〈橙色ないし赤色蛍光体〉
第2の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体を使用する場合、当該橙色ないし赤色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0183】
このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユーロピウム賦活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表されるユーロピウム賦活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
【0184】
更に、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種類の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本発明において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0185】
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)22S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O4:Eu、Y23:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Mg)2SiO4:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW28:Eu、LiW28:Eu,Sm、Eu229、Eu229:Nb、Eu229:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO3:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、Ca28(SiO462:Eu、LiY9(SiO462:Eu、(Sr,Ba,Ca)3SiO5:Eu、Sr2BaSiO5:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)3Al512:Ce、(Tb,Gd)3Al512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu等のEu付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、Ba3MgSi28:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)3(Zn,Mg)Si28:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)23:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)22S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY24:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa24:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP27:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)227:Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)2WO6:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)xSiyz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表わす。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO46(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1-x-yScxCey2(Ca,Mg)1-r(Mg,Zn)2+rSiz-qGeq12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0186】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0187】
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)22S:Eu又はEu錯体を含むことが好ましく、より好ましくは(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)S:Eu又は(La,Y)22S:Eu、もしくはEu(ジベンゾイルメタン)3・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体又はカルボン酸系Eu錯体を含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O)3:Eu又は(La,Y)22S:Euが特に好ましい。
【0188】
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)3SiO5:Euが好ましい。
【0189】
以上例示した橙色ないし赤色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0190】
<緑色蛍光体>
第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nmより大きく、中でも510nm以上、さらには515nm以上であることが好ましく、また、通常570nm以下、中でも540nm以下、さらには535nm以下の波長範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長が短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する可能性がある。
【0191】
該緑色蛍光体の具体例を挙げると、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si222:Euで表わされるEu付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体等が挙げられる。
【0192】
また、その他の緑色蛍光体としては、Sr4Al1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu、(Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si27:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)9(Sc,Y,Lu,Gd)2(Si,Ge)624:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Y2SiO5:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr227−Sr225:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si38−2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、Y3Al512:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca28(SiO462:Tb、La3Ga5SiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga24:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y3(Al,Ga)512:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、Ca3Sc2Si312:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si312:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc24:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)22S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO3:Ce,Tb、Na2Gd227:Ce,Tb、(Ba,Sr)2(Ca,Mg,Zn)B26:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、Ca8Mg(SiO44Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)24:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO44Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、M3Si694:Eu、M3Si6122:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0193】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
【0194】
以上例示した緑色蛍光体は、いずれか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0195】
<青色蛍光体>
第2の蛍光体として青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、更に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0196】
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Euで表わされるEu付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)5(PO43(Cl,F):Euで表わされるEu付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)259Cl:Euで表わされるEu付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al24:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al1425:Euで表わされるEu付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0197】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr227:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al24:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm、BaAl813:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa24:Ce、CaGa24:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu、(Ba,Sr,Ca)5(PO43(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAl2Si28:Eu、(Sr,Ba)3MgSi28:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr227:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、Y2SiO5:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO4等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO5:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO46・nB23:Eu、2SrO・0.84P25・0.16B23:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si38・2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、SrSi9Al19ON31:Eu、EuSi9Al19ON31等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、La1-xCexAl(Si6-zAlz)(N10-zz)(ここで、x、及びyは、それぞれ0≦x≦1、0≦z≦6を満たす数である。)、La1-x-yCexCayAl(Si6-zAlz)(N10-zz)(ここで、x、y、及びzは、それぞれ、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦6を満たす数である。)等のCe付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0198】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラリゾン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
【0199】
以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46(Cl,F)2:Eu又は(Ba,Ca,Mg,Sr)2SiO4:Euを含むことが好ましく、(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46(Cl,F)2:Eu又は(Ba,Ca,Sr)3MgSi28:Euを含むことがより好ましく、BaMgAl1017:Eu、Sr10(PO46(Cl,F)2:Eu又はBa3MgSi28:Euを含むことがより好ましい。また、このうち照明用途及びディスプレイ用途としては(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu又は(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Euが特に好ましい。
【0200】
以上例示した青色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0201】
<黄色蛍光体>
第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0202】
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE3512:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)やMa3b2c312:Ce(ここで、Maは2価の金属元素、Mbは3価の金属元素、Mcは4価の金属元素を表わす。)等で表わされるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE2d4:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mdは、Si、及び/又はGeを表わす。)等で表わされるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSi(N,O)3:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)等のCaAlSiN3構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0203】
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa24:Eu、(Ca,Sr)Ga24:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al)24:Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のsialon構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体、(M1-A-BEuMn2(BO31-p(PO4pX(但し、Mは、Ca、Sr、及びBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Xは、F、Cl、及びBrからなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。A、B、及びpは、各々、0.001≦A≦0.3、0≦B≦0.3、0≦p≦0.2を満たす数を表す。)等のEu付活又はEu,Mn共付活ハロゲン化ホウ酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0204】
また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine
FF (Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine (Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G (Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
【0205】
以上例示した黄色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0206】
<第2の蛍光体の選択>
上記第2の蛍光体としては、1種類の蛍光体を単独で使用してもよく、2種以上の蛍光体を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体と第2の蛍光体との比率も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。従って、第2の蛍光体の使用量、並びに、第2の蛍光体として用いる蛍光体の組み合わせ及びその比率等は、発光装置の用途等に応じて任意に設定すればよい。
【0207】
本発明の発光装置において、以上説明した第2の蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体、黄色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体等)の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明の蛍光体が赤色蛍光体であって、本発明の発光装置を赤色発光の発光装置として構成する場合には、第1の蛍光体(本発明の赤色蛍光体)のみを使用すればよく、第2の蛍光体の使用は通常は不要である。
【0208】
一方、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、第1の発光体と、第1の蛍光体(本発明の蛍光体)と、第2の蛍光体を適切に組み合わせればよい。具体的に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合における、第1の発光体と、第1の蛍光体と、第2の蛍光体との好ましい組み合わせの例としては、例えば、第1の蛍光体(本発明の蛍光体)が橙色ないし赤色発光である場合、以下の(1)〜(2)の組み合わせが挙げられる。
【0209】
(1) 第1の発光体として、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有する青色発光体(青色LED等)を使用し、第1の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として、500nm以上570nmの波長範囲に発光ピークを有する緑色蛍光体を使用する。この場合、緑色蛍光体としては、(Ba,Sr)Si12:Eu、(Ba,Sr)SiO:Eu、CaScSi12:Ce、CaSc:Ce、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Eu、及びβ−(Si,Al)12(O,N)16:Euからなる群より選ばれる1種又は2種以上の緑色蛍光体が好ましい。
【0210】
(2) 第1の発光体として、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有する近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有する青色蛍光体、及び、500nm以上570nmの波長範囲に発光ピークを有する緑色蛍光体を併用する。この場合、青色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu及び(Mg,Ca,Sr,Ba)5(PO43(Cl,F):Euからなる群より選ばれる1種又は2種以上の青色蛍光体が好ましい。緑色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu,Mn、β−(Si,Al)12(O,N)16:Eu、(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu、及び(Ba,Sr)Si12:Euからなる群より選ばれる1種又は2種以上の緑色蛍光体が好ましい。また、橙色ないし赤色蛍光体(本発明の蛍光体等)としては、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu及びLa22S:Euからなる群より選ばれる1種又は2種以上の橙色ないし赤色蛍光体が好ましい。中でも、近紫外LEDと、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Euと、緑色蛍光体として(Ba,Sr)SiO:Eu、β−(Si,Al)12(O,N)16:Eu、又は(Ba,Sr)Si12:Euと、赤色蛍光体として(Sr,Ca)AlSiN3:Euとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0211】
また、本発明の蛍光体は、他の蛍光体と混合(ここで、混合とは、必ずしも蛍光体同士が混ざり合っている必要はなく、異種の蛍光体が組み合わされていることを意味する。)して用いることができる。特に、上記に記載の組み合わせで蛍光体を混合すると、好ましい蛍光体混合物が得られる。なお、混合する蛍光体の種類やその割合に特に制限はない。
【0212】
<封止材料>
本発明の発光装置において、上記第1及び/又は第2の蛍光体は、通常、封止材料である液体媒体に分散させて用いられる。
該液体媒体としては、前述の[本発明の蛍光体含有組成物]の項で記載したのと同様のものが挙げられる。
【0213】
また、該液体媒体は、封止部材の屈折率を調整するために、高い屈折率を有する金属酸化物となり得る金属元素を含有させることができる。高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素の例としては、Si、Al、Zr、Ti、Y、Nb、B等が挙げられる。これらの金属元素は単独で使用されてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されてもよい。
【0214】
このような金属元素の存在形態は、封止部材の透明度を損なわなければ特に限定されず、例えば、メタロキサン結合として均一なガラス層を形成していてもよく、封止部材中に粒子状で存在していてもよい。粒子状で存在している場合、その粒子内部の構造はアモルファス状であっても結晶構造であってもよいが、高屈折率を与えるためには結晶構造であることが好ましい。また、その粒子径は、封止部材の透明度を損なわないために、通常は、半導体発光素子の発光波長以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。例えばシリコーン系材料に、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ニオブ等の粒子を混合することにより、上記の金属元素を封止部材中に粒子状で存在させることができる。
【0215】
また、上記液体媒体としては、更に、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等公知の添加剤を含有していてもよい。
なお、これらの添加剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0216】
{発光装置の構成(その他)}
本発明の発光装置は、上述の第1の発光体及び第2の発光体を備えていれば、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の第1の発光体及び第2の発光体を配置してなる。この際、第1の発光体の発光によって第2の発光体が励起されて(即ち、第1及び第2の蛍光体が励起されて)発光を生じ、且つ、この第1の発光体の発光及び/又は第2の発光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、第1の蛍光体と第2の蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、第1の蛍光体を含有する層の上に第2の蛍光体を含有する層が積層する等、蛍光体の発色毎に別々の層に蛍光体を含有するようにしてもよい。
【0217】
また、本発明の発光装置では、上述の励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム以外の部材を用いてもよい。その例としては、前述の封止材料が挙げられる。該封止材料は、発光装置において、蛍光体(第2の発光体)を分散させる目的以外にも、励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム間を接着する目的で用いたりすることができる。
【0218】
{発光装置の実施形態}
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0219】
本発明の発光装置の一例における、励起光源となる第1の発光体と、蛍光体を有する蛍光体含有部として構成された第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図1に示す。図1中の符号1は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号2は励起光源(第1の発光体)としての面発光型GaN系LD、符号3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とそれぞれ別個に作製し、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させてもよいし、LD(2)の発光面上に蛍光体含有部(第2の発光体)を製膜(成型)させてもよい。これらの結果、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とを接触した状態とすることができる。
【0220】
このような装置構成をとった場合には、励起光源(第1の発光体)からの光が蛍光体含有部(第2の発光体)の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0221】
図2(a)は、一般的に砲弾型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。該発光装置(4)において、符号5はマウントリード、符号6はインナーリード、符号7は励起光源(第1の発光体)、符号8は蛍光体含有樹脂部、符号9は導電性ワイヤ、符号10はモールド部材をそれぞれ指す。
【0222】
また、図2(b)は、表面実装型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。図中、符号22は励起光源(第1の発光体)、符号23は蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部、符号24はフレーム、符号25は導電性ワイヤ、符号26及び符号27は電極をそれぞれ指す。
【0223】
{発光装置の用途}
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、色再現範囲が広く、且つ、演色性も高いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
【0224】
[照明装置]
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、図3に示されるような、前述の発光装置(4)を組み込んだ面発光照明装置(11)を挙げることができる。
【0225】
図3は、本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。この図3に示すように、該面発光照明装置は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース(12)の底面に、多数の発光装置(13)(前述の発光装置(4)に相当)を、その外側に発光装置(13)の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置し、保持ケース(12)の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板(14)を発光の均一化のために固定してなる。
【0226】
そして、面発光照明装置(11)を駆動して、発光装置(13)の励起光源(第1の発光体)に電圧を印加することにより光を発光させ、その発光の一部を、蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板(14)を透過して、図面上方に出射され、保持ケース(12)の拡散板(14)面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【0227】
[画像表示装置]
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限は無いが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
【実施例】
【0228】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
後述の各実施例及び各比較例において、各種の評価は以下の手法で行った。
【0229】
<発光ピーク波長、相対発光ピーク強度、及び相対輝度>
蛍光分光光度計で蛍光体の波長465nmの励起光による発光スペクトルを測定し、発光ピーク波長を読み取った。
また、相対発光ピーク強度は、後述の参考例1で得られた蛍光体の発光ピーク強度を基準(100%)とした相対値で表した。
また、JIS Z8724に準拠して算出したXYZ表色系における刺激値Yから、後述の参考例1で得られた蛍光体の刺激値Yの値を100%とした相対輝度を算出した。なお、輝度は、励起青色光をカットして測定した。
【0230】
<化学組成>
ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry;以下「ICP法」と称する場合がある。)により、ジョバイボン社製ICP化学分析装置「JY 38S」を使用して分析した。
NとOは全窒素酸素分析計(LECO社製)により分析した。
【0231】
また、以下において、合金の原料に用いた金属単体の純度は、Caが99.5%、Alが99.999%、Euが99%、Siが99.9999%であり、いずれも不純物濃度1モル%以下の高純度品である。
【0232】
[実施例1]
金属元素組成比がCa:Al:Eu=0.992:1:0.008になるように各原料金属を秤量し、アークメルター装置を用いてアルゴン雰囲気で原料金属を溶解して、凝固させ、金属元素組成比がCa:Al:Eu=0.992:1:0.008である合金塊を得た。
次に、この合金塊を窒素雰囲気中でアルミナ製乳鉢を用いて粉砕した後、100μm目開きの篩でふるい、篩下を合金粉原料として用いた。この合金粉原料の重量メジアン径D50は100μm以下であった。
次に、組成比がCa:Al:Eu:Si=0.992:1:0.008:1となるように上記合金粉原料と窒化珪素(Si)(宇部興産(株)製「SN−E10」)を秤量し、窒素雰囲気下で混合して、原料混合粉を得た。用いた窒化珪素の重量メジアン径D50は、0.5μmであった。
この原料混合粉を窒化ホウ素製坩堝(内径60mm、高さ28mm)に30g充填した。その時の充填層高は25mmであった。
【0233】
この混合混合粉を充填した坩堝を黒鉛発熱体を具備する雰囲気焼成炉中にセットした。
雰囲気焼成炉内を窒素で置換した後、窒素を大気圧で流通させながら、300℃/時間の昇温速度で1750℃まで加熱した。更に、1750℃で6時間保持した後、加熱電源を切り、室温まで自然冷却した。
【0234】
得られた蛍光体中に生成している結晶相を粉末X線回折法で同定した結果、CaAlSiN:Euの斜方晶系の結晶が生成した。この結果を図4に示した。
また、この蛍光体の組成分析結果及び発光特性の測定結果を表1に示した。
【0235】
[実施例2]
金属元素組成比がCa:Al:Eu=0.984:2:0.016になるように各原料金属を秤量し、アークメルター装置を用いてアルゴン雰囲気で原料金属を溶解して、凝固させ、金属元素組成比がCa:Al:Eu=0.984:2:0.016である合金を得た。
また、金属元素組成比がCa:Si=2:1になるように各原料金属を秤量し、アークメルター装置を用いてアルゴン雰囲気で原料金属を溶解して、凝固させ、金属元素組成比がCa:Si=2:1である合金を得た。
次に、この2種類の合金をそれぞれ窒素雰囲気中でアルミナ製乳鉢を用いて粉砕した後、100μm目開きの篩でふるい、篩下を合金粉原料として用いた。この合金粉原料の重量メジアン径D50はいずれも100μm以下であった。
組成比がCa:Al:Eu:Si=0.992:1:0.008:1となるように2種類の混合合金粉原料と窒化珪素(宇部興産(株)製「SN−E10」)を秤量し、窒素雰囲気で混合して、原料混合粉を得た。
この原料混合粉を窒化ホウ素製坩堝(内径60mm、高さ28mm)に30g充填した。その時の充填層高は25mmであった。
【0236】
この混合混合粉を充填した坩堝を黒鉛発熱体を具備する雰囲気焼成炉中にセットし、実施例1と同様の方法で加熱処理をして蛍光体を得た。
【0237】
得られた蛍光体を実施例1と同様の方法で生成相の確認、組成分析および発光特性測定を実施した。この蛍光体の結晶相は実施例1と同様に、少量のAlNを含有するCaAlSiN:Euの斜方晶系の結晶相であった。粉末X線回折測定結果を図5に、組成分析結果及び発光特性測定結果を表1に示した。
【0238】
[比較例1]
金属元素組成比がCa:Al:Si:Eu=0.992:1:1:0.008となるように、各金属を秤量し、アークメルター装置を用いてアルゴン雰囲気で原料金属を溶解して、凝固させ、金属元素組成比がCa:Al:Si:Eu=0.992:1:1:0.008である合金を得た。次に、この合金を窒素雰囲気中でアルミナ製乳鉢を用いて粉砕した後、50μm目開きの篩でふるい、篩下を合金粉原料として用いた。
この合金粉原料を窒化ホウ素製坩堝(内径60mm、高さ28mm)へ15g(充填層高;8mm)充填して、黒鉛発熱体を具備する雰囲気焼成炉中にセットした。この雰囲気焼成炉内を窒素で置換した後、窒素を大気圧で流通させながら、200℃/時間の昇温速度で800℃まで加熱し、800℃から1050℃までを10℃/時間で昇温し、続いて1600℃までを200℃/時間で昇温した。更に、1600℃で5時間保持した後、加熱電源を切り、室温まで自然冷却した。次いで、1750℃までを900℃/時間で昇温し、更に1750℃で3時間保持した後、加熱電源を切り、室温まで自然冷却した。
【0239】
得られた蛍光体について実施例1と同様の方法で結晶相の確認、組成分析および発光特性測定を実施した。結晶相は実施例1と同様に、少量のAlNを含有するCaAlSiN:Euの斜方晶系の結晶相であった。組成分析結果及び発光特性測定結果を表1に示した。
【0240】
[比較例2]
比較例1と同様にして製造した合金粉原料を窒化ホウ素製坩堝(内径60mm、高さ28mm)へ15g充填(充填層高;8mm)して、黒鉛発熱体を具備する雰囲気焼成炉中にセットした。この雰囲気焼成炉内を窒素で置換した後、窒素を大気圧で流通させながら、300℃/時間の昇温速度で1600℃まで加熱した。更に、1600℃で10時間保持した後、加熱電源を切り、室温まで自然冷却した。
得られたものは、ぼほ全体が黒色の塊であり、蛍光体とはならなかった。
【0241】
[比較例3]
比較例1と同様にして製造した合金粉原料を窒化ホウ素製坩堝(内径60mm、高さ28mm)へ30g充填(充填層高;16mm)して、黒鉛発熱体を具備する雰囲気焼成炉中にセットした。雰囲気焼成炉内を窒素で置換した後、窒素を大気圧で流通させながら、200℃/時間の昇温速度で850℃まで加熱し、850℃から1000℃までを10℃/時間で昇温し、続いて1600℃までを200℃/時間で昇温した。更に、1600℃で10時間保持した後、加熱電源を切り、室温まで自然冷却した。
得られたものは、ぼほ全体が黒色の塊であり、蛍光体とはならなかった。
【0242】
[参考例1]
金属元素組成比がCa:Al:Si:Eu=0.992:1:1:0.008となるように、粉末状窒化カルシウム、粉末状窒化アルミニウム、粉末状窒化珪素及び粉末状窒化ユーロピウムを窒素雰囲気中で秤量し、混合機を用いて混合した。
この混合粉を窒化ホウ素製坩堝(内径60mm、高さ28mm)へ30g充填(充填層高;25mm)して、黒鉛発熱体を具備する雰囲気焼成炉中にセットした。雰囲気焼成炉内を窒素で置換した後、圧力1MPaまで窒素を充填した後、300℃/時間の昇温速度で1800℃まで加熱した。更に、1800℃で2時間保持した。その後、加熱電源を切り、室温まで自然冷却した。加熱及び冷却中の炉内の窒素圧力は1MPaを保つように、自動的に排気或いは給気した。
得られた蛍光体を実施例1と同様の方法で生成相の確認、組成分析及び発光特性測定を実施した。結晶相は実施例1と同様に、少量のAlNを含有するCaAlSiN:Euの斜方晶系の結晶相であった。組成分析結果及び発光特性測定結果を表1に示した。
【0243】
【表1】

【0244】
比較例1と比較例2の結果から明らかなように、従来の合金を原料とする方法は、昇温速度を速くすると蛍光体を得ることができない。
また、比較例1と比較例3の結果から明らかなように、従来の合金を原料とする方法は、昇温速度を遅くしても、窒化処理に供する原料の量が多いと蛍光体を得ることができない。
これに対して、本発明の製造方法によれば、従来の合金を原料とする方法よりも、蛍光体を大量に且つ短時間で製造することができる。
【0245】
[実施例3]
図2(b)に示すような発光装置を作製した。この発光装置の作製は以下の手順により行なった。なお、実施例3の各構成要素のうち、図2(b)に対応する構成要素が描かれているものについては、適宜その符号をカッコ書きにて示す。
第1の発光体(22)としては、青色発光ダイオード(以下適宜「LED」と略する。)であるCree社の460MBを用いた。これは、ドミナント波長455nm〜460nmに発光する。この青色LED(22)を、フレーム(24)の凹部の底の電極(27)に、接着剤として銀ペーストを用いてダイボンディングした。この際、青色LED(22)で発生する熱の放熱性を考慮して、接着剤である銀ペーストは薄く均一に塗布した。その後、150℃で2時間加熱し、銀ペーストを硬化させた後、青色LED(22)の電極とフレーム(24)の電極(26)とをワイヤボンディングした。ワイヤ(25)としては、直径25μmの金線を用いた。
【0246】
実施例1で得られた赤色発光蛍光体(重量メジアン径D50=18μm)及び発光ピーク波長が528nmである緑色発光蛍光体Ba1.39Sr0.46Eu0.15SiO(重量メジアン径D50=13μm)とを重量比で23:77の割合で混合した蛍光体混合物と、付加重合型シリコーン樹脂(信越化学社製SCR1011)と、増粘剤(トクヤマ社製レオロシールQS−30)を、重量比で1:10:0.1の割合で混合して蛍光体含有組成物を作製した。得られた蛍光体含有組成物を、上述のフレーム(24)のカップ形状の凹部に注入し、加熱して硬化させ、蛍光体含有部(23)を形成して、発光装置を製造した。
【0247】
得られた発光装置を、その青色LED(22)に室温で20mAの電流を通電して駆動したところ、白色に発光した。その色度値をJIS Z8701に準拠して測定したところ、(x,y)=(0.340,0.335)であった。
【0248】
[実施例4]
実施例3において、実施例1で得られた赤色発光蛍光体の代わりに、実施例2で得られた赤色発光蛍光体(重量メジアン径D50=12μm)を用いたこと以外は、実施例3と同様の手順により発光装置を作製した。
得られた発光装置を、実施例3と同様の条件で発光させたところ、白色に発光した。その色度点を測定したところ、(x,y)=(0.327,0.335)であった。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】本発明の発光装置の一実施例を示す模式的斜視図である。
【図2】図2(a)は、本発明の砲弾型発光装置の一実施例を示す模式的断面図であり、図2(b)は、本発明の表面実装型発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の照明装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図4】実施例1で得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図5】実施例2で得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0250】
1 蛍光体含有部(第2の発光体)
2 励起光源(第1の発光体)(LD)
3 基板
4 発光装置
5 マウントリード
6 インナーリード
7 励起光源(第1の発光体)
8 蛍光体含有樹脂部
9 導電性ワイヤ
10 モールド部材
11 面発光照明装置
12 保持ケース
13 発光装置
14 拡散板
22 励起光源(第1の発光体)(LED)
23 蛍光体含有部(第2の発光体)
24 フレーム
25 導電性ワイヤ
26 電極
27 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付活元素M1、2価の金属元素M2、及び4価の金属元素M4を含む窒化物又は酸窒化物蛍光体の製造方法であって、原料として、付活元素M1及び2価の金属元素M2を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを使用し、該原料を窒素元素を含有する雰囲気中で加熱することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項2】
2価の金属元素M2が、少なくともアルカリ土類金属元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項3】
付活元素M1が、Cr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、4価の金属元素M4がSi、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項4】
窒化物又は酸窒化物蛍光体が、さらに3価の金属元素M3を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項5】
3価の金属元素M3が、Al、Ga、In、及びScからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項4に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項6】
原料として、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び3価の金属元素M3を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項7】
原料として、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び3価の金属元素M3を含有する合金と、2価の金属元素M2及び4価の金属元素M4を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項8】
原料として、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び4価の金属元素M4を含有する合金と、2価の金属元素M2及び3価の金属元素M3を含有する合金と、4価の金属元素M4の窒化物とを用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項9】
合金の重量メジアン径D50が200μm以下であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項10】
4価の金属元素M4の窒化物として、重量メジアン径D50が100μm以下である粉末を用いることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項11】
窒化物又は酸窒化物蛍光体が、下記一般式[1]で表される蛍光体であることを特徴とする請求項4ないし10のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
M1M2M3M4 [1]
(式中、M1は付活元素であり、M2は2価の金属元素であり、M3は3価の金属元素であり、M4は4価の金属元素であり、a、b、c、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5)
【請求項12】
4価の金属元素M4が、少なくともSiを含むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項13】
付活元素M1が、Eu及び/又はCeを含むことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項14】
2価の金属元素M2の50モル%以上がCa及び/又はSrであり、3価の金属元素M3の50モル%以上がAlであり、4価の金属元素M4の50モル%以上がSiであることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法により製造された蛍光体と、液状媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
【請求項16】
第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、該第2の発光体が、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法により製造された蛍光体の1種以上を、第1の蛍光体として含有することを特徴とする発光装置。
【請求項17】
前記第2の発光体が、前記第1の蛍光体とは発光ピーク波長の異なる蛍光体の1種以上を、第2の蛍光体として含有することを特徴とする請求項16に記載の発光装置。
【請求項18】
前記第1の発光体が、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、500nm以上570nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体を含有することを特徴とする請求項17に記載の発光装置。
【請求項19】
前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、500nm以上570nmの波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することを特徴とする請求項17に記載の発光装置。
【請求項20】
請求項16ないし19のいずれか1項に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項21】
請求項16ないし19のいずれか1項に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−221317(P2009−221317A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66096(P2008−66096)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】