説明

蛍光体及びその製造方法、並びにランプ

【課題】発光特性及び汎用性に優れ、安価に安定した発光が得られる蛍光体及びそれを用いたランプを提供する。
【解決手段】ガーネット構造を主体とする蛍光体にV族元素を添加してなる。好ましくは、前記蛍光体が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAl12)を母体成分とし、さらに付活剤を含有した、ガーネット構造を有する蛍光体を含むものとされている。また、光源としてLEDを備え、上述の蛍光体によって前記LEDの出射光を吸収し、波長変換するランプとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光励起が可能な蛍光体に関し、特に、光源からの第1次の発光波長を変換して、第2次の発光波長として発光するための蛍光体及びその製造方法、並びにランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)と蛍光体とが組み合わせられた、小型であり、高輝度且つ長寿命のランプが提案されている。また、このようなランプは、LEDを用いることによって省電力化が可能となり、例えば、ディスプレー、バックライト光源、信号機、及び各種インジケータ等、種々の幅広い用途に使用されている。
【0003】
上述のようなLEDと蛍光灯とが組み合わされたランプは、光源であるLEDの第1次の発光波長が1種類であっても、1種類又は複数種類の蛍光体を用いてLEDの発光波長を変換し、第2次の発光波長とすることにより、任意の色調のランプを得ることができるというものである。
これにより、安定した発光が得られるランプが安価に得られ、上述のような幅広い用途に使用されている。
【0004】
上述のような、LEDを光源としたランプに用いられる蛍光体として、母体成分がイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG=YAl12)であり、付活材にセリウム(Ce)を含有した、ガーネット構造を有する蛍光体(YAG:Ce=YAl12:Ce)が広く知られている。
このような、ガーネット構造を有するYAG:Ce蛍光体は、温度特性に優れ、広い励起波長を持つとともに光波長の変換効率が高く、特に460nm付近の青色域において効率良く励起することから、青色LED励起によって黄色発光する白色ランプ用として用いられている他、LEDを用いたランプに広く用いられている。
【0005】
LEDから出射される第1次の発光波長を、YAG:Ce蛍光体で波長変換して第2次の発光波長とすることにより、発光色を任意の色調とするランプとして、例えば特許文献1に記載のものがある。
【特許文献1】特許第3065258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のYAG:Ce蛍光体を用いたランプでは、上記構成により、LEDの出射光を効率良く波長変換して任意の色調としている。
しかしながら、特許文献1に記載の蛍光体を用いたランプでは、第2次の発光強度が充分には得られず、また、発光波長(励起波長)を任意の帯域に変更する場合には、YAG:Ce蛍光体の成分組成の一部を置換する必要がある。
このため、発光強度を向上させるとともに、発光波長を容易に変更できる蛍光体の開発が強く求められていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、発光特性及び汎用性に優れ、安定した発光特性が安価な構成で得られる蛍光体及びその製造方法、並びにランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、以下の各発明を含んでいる。
すなわち、
(1) ガーネット構造を主体とする蛍光体に、V族元素を添加したことを特徴とする蛍光体、
(2) 前記蛍光体が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAl12)を母体成分とし、さらに付活剤を含有した、ガーネット構造を有する蛍光体を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
(3) 前記V族元素の含有量が、50mole%以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の蛍光体、
(4) 前記V族元素の含有量が、25mole%以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の蛍光体、
(5) 前記V族元素がPであり、燐化合物の状態で添加されてなることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の蛍光体、
(6) Y化合物と、Al化合物と、Ce化合物と、V族元素の化合物とを混合して焼成し、ガーネット構造を主体とする蛍光体とすることを特徴とする蛍光体の製造方法、
(7) Y酸化物と、Al酸化物と、Ce酸化物を所定の組成比になるように配合し、更に、燐化合物を添加して焼成することを特徴とする上記(6)に記載の蛍光体の製造方法、
(8) Y酸化物としてYを、Al酸化物としてAlを、Ce酸化物としてCeOを、燐化合物としてHPOを用いることを特徴とする上記(7)に記載の蛍光体の製造方法、
(9) 不活性ガス中で焼成することを特徴とする上記(6)〜(8)の何れか1項に記載の蛍光体の製造方法、
(10) 上記(6)〜(9)に記載の製造方法で得られる蛍光体、
(11) 光源としてLEDを備え、上記(1)〜(5)及び(10)の何れか1項に記載の蛍光体を備え、該蛍光体によって前記LEDの出射光を吸収し、波長変換することを特徴とするランプ、
(12) 光源としてLEDを備え、上記(1)〜(5)及び(10)の何れか1項に記載の蛍光体を備え、該蛍光体によって前記LEDの出射光を吸収し、白色光を発光することを特徴とするランプ、
の各発明である。
【0009】
本発明の蛍光体は、上記(1)〜(5)に記載の構成により、発光強度及び発光波長を変化させることができる。また、V族元素の種類及び含有量により、発光強度及び発光波長が変化するので、所望する蛍光体特性に合わせて添加元素及び添加量を変えることにより、任意の特性を有する蛍光体が得られる。
また、本発明の蛍光体の製造方法は、上記(6)〜(9)に記載の構成により、所望する蛍光体特性に合わせて添加元素及び添加量を変えることで、任意の特性を有する、上記(10)に記載の蛍光体が得られる。
また、本発明の蛍光体を用いたランプは、上記(11)及び(12)に記載の構成により、第1次の光源であるLEDの発光波長を蛍光体で変換して第2次の発光波長とすることで、任意の色調で発光する、発光強度の大きい波長変換型のランプが得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蛍光体及びその製造方法によれば、上記構成及び作用により、蛍光体の第2次の発光波長を任意の色調の波長とすることができるとともに、発光強度を向上させることができる。
これにより、LEDからの第1次の発光波長が同一波長であっても、1種類又は複数種類の蛍光体材料をそれぞれ用いることで、出力が高く発光特性に優れた光を任意の色調で得ることができる。
従って、高輝度且つ長寿命であるとともに、小型で汎用性に優れたランプが安価な構成で得られる。
本発明の蛍光体を用いたランプは、汎用性に優れていることから、ディスプレー、液晶バックライト、白色LED、照明用LED等、幅広い用途に用いることが可能となり、特に白色のLEDランプとして用いた場合に高い効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の蛍光体及びそれを用いたランプの実施形態について説明する。
【0012】
[蛍光体]
本発明の蛍光体は、ガーネット構造を主体とする蛍光体にV族元素を添加して概略構成される。
本発明の蛍光体は、例えば、光源となるLED等の発光素子上に層形成され、光源励起で任意の色調で発光させることができるとともに、その発光強度を高めることができるというものである。
以下、本発明の蛍光体の成分組成について詳述する。
【0013】
「付活剤」
本発明の好ましい実施形態における蛍光体は、ガーネット構造を主体とする前記蛍光体が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG=YAl12)を母体成分とし、付活剤として、例えばセリウム(Ce)等を含有した、ガーネット構造を有する蛍光体を含んでなる。
本実施形態の蛍光体は、Ceが付活剤として含有されていることにより、発光効率が高められている。
なお、蛍光体に含有される付活剤は、Ceには限定されず、適宜選択して用いることができる。
【0014】
図4のグラフに示すように、Ceの含有量を増してゆくに従って、蛍光体の発光波長が高波長となる。このため、図3のグラフに示す発光強度が低下しない範囲でCeの添加量を調整し、所望の発光波長を得ることが好ましい。
本発明の蛍光体を、蛍光体を発光素子上に層形成して配することにより、発光強度を高めながら、所望の発光波長を得ることができる。
【0015】
「V族元素」
本発明の蛍光体では、YAG:Ce等のガーネット構造を主体とする蛍光体にV族元素を添加する。
本発明の蛍光体に添加されるV族元素は、N、P、As、Sb、Biの群から選択される、少なくとも1種以上からなり、ガーネット構造を主体とする蛍光体に上記V族元素を添加することにより、発光強度が顕著に向上する。
また、蛍光体に添加するV族元素の種類及び量により、発光強度及び発光波長が変化する。添加するV族元素及び該V族元素の添加量を、所望する蛍光体特性に合わせて適宜設定することにより、任意の特性を有する蛍光体を得ることができる。
【0016】
本発明の蛍光体は、V族元素の含有量が、50mole%以下であることが好ましく、25mole%以下であることがより好ましい。
蛍光体に含有されるV族元素の含有量を上記範囲とすることにより、発光強度及び発光特性をより効率的に向上させることができる。
V族元素の含有量が50mole%を越えると、上述の作用が得られにくくなる。
【0017】
また、本発明の蛍光体では、上記V族元素がP(燐)であることが好ましく、また、蛍光体に含有されるPは、燐化合物の状態で添加されることが好ましい。
燐化合物としては、例えば、HPO等の燐酸化合物等が挙げられ、適宜選択して添加することができる。
蛍光体に含有されるV族元素をPとすることにより、発光強度がより一層向上する。
【0018】
[製造方法]
本発明の蛍光体の製造方法は、Y化合物と、Al化合物と、Ce化合物と、V族元素の化合物とを混合して焼成し、ガーネット構造を主体とする蛍光体を得る方法として概略構成される。
また、本発明の蛍光体の製造方法は、Y酸化物と、Al酸化物と、Ce酸化物を所定の組成比になるように配合し、更に、燐化合物を添加して焼成する方法とすることができる。
【0019】
本発明の蛍光体を製造する場合、例えば、原料としてY、Al、CeOの各々を用いて、YAl12:Ceとなるように配合し、これに、V族元素として燐化合物であるHPO等を、所望する発光強度及び波長が得られる量で添加する。
そして、所定の温度及び時間で焼成することにより、本発明の蛍光体を得ることができる。
【0020】
本発明の蛍光体を製造する際、添加するV族元素としてPを用い、HPOを添加する場合、図1のグラフに示すように、該HPOの添加濃度を高くするのに従って発光強度が向上する。また、図2のグラフに示すように、HPOの添加濃度の変化に伴う、蛍光体の発光波長の大きな変化は無い。
このため、蛍光体へのHPOの添加濃度は、発光強度に影響を受けず、所望する発光強度が得られる添加濃度を適宜選択することができる。
本発明の蛍光体は、HPOの添加によってPを含有することにより、高い発光強度及び発光特性が得られる。
【0021】
また、本発明の蛍光体を製造する際、付活剤としてCeを用い、CeOを添加する場合、上述したように、発光強度が低下しない範囲でCeの添加量を調整し、所望の発光波長が得られる添加濃度を適宜選択することができる。
【0022】
本発明の蛍光体を上記条件によって焼成する際の雰囲気は、H、Ar等の不活性ガス、N等の雰囲気とすることができ、適宜採用することができるが、Ar等の不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましい。
Ar等の不活性ガス雰囲気中で焼成することにより、蛍光体の発光強度をより向上させることができる(図1を参照)。
【0023】
[ランプ]
本発明の好ましい実施形態におけるランプは、光源としてLEDを備え、上述した本発明の蛍光体を備えて概略構成され、前記蛍光体によって前記LEDの出射光を吸収し、波長変換する。
【0024】
本発明のランプは、光源としてLEDを備え、該LEDからの第1次の発光波長が、本発明の蛍光体を用いて第2次の発光波長に変換されることにより、出射光が任意の色調の波長となるとともに、発光強度が顕著に向上する。
【0025】
本発明のランプに光源として用いられるLEDとしては、発光波長が(☆250nmから600nm)に発光可能なものであれば特に限定されず、例えばZnSeやIII族窒化物半導体等が使用できる。
III族窒化物半導体は、InαAlβGa1−αーβN( 但し、0≦α、0≦β、α+β≦1)で表されるものである。この中で、効率の点から窒化ガリウム系化合物半導体が好ましく用いられる。このような窒化ガリウム系化合物半導体は、MOCVD法やHVPE法等により、発光素子として基板上に形成される。
窒化ガリウム系化合物半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造、あるいはダブルヘテロ構造のものが挙げられる。また、半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を、量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や、多重量子井戸構造とすることもできる。
【0026】
本発明の蛍光体をLED上に設けてランプとする場合、少なくとも1種以上の蛍光体を単層又は複数層として層状に積層配置しても良いし、複数の蛍光体を単一の層内に混合して配置した構成としても良い。
LED上に蛍光体を設ける形態としては、LEDの表面を被覆するコーティング部材に蛍光体を混合する形態、LEDのモールド部材に蛍光体を混合する形態、或いはモールド部材に被せる被覆体に蛍光体を混合する形態、更にはLEDランプの投光側前方に蛍光体を混合した透光可能なプレートを配置する形態等が挙げられる。
また、蛍光体を設ける形態としては、LED上のモールド部材に少なくとも1種以上の蛍光体を添加した構成としても良い。更に、1種以上の蛍光体からなる蛍光体層を、発光素子の外側に設けた構成としても良い。
LEDの外側に蛍光体を設ける形態としては、LEDのモールド部材の外側表面に、蛍光体を層状に塗布する形態、或いは蛍光体をゴム、樹脂、エラストマー、低融点ガラス等に分散させた成形体(例えばキャップ状)を作製し、これを発光素子に被覆する形態、又は前記成形体を平板状に加工し、これをLEDの前方に配置する形態等が挙げられる。
蛍光体を樹脂に混ぜる場合には、樹脂に対する蛍光体の仕込み比として、例えば、質量%で、0.001%から50%の範囲とすることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。最適な仕込み比は、蛍光体の効率、粒径、比重、樹脂の粘性等によって異なり、これらに応じて仕込み比を決定するのが一般的である。
【0027】
以上説明したように、本発明の蛍光体及びそれを用いたランプによれば、上述した構成及び作用により、蛍光体の第2次の発光波長を任意の色調の波長とすることができるとともに、発光強度を向上させることができる。これにより、LEDからの第1次の発光波長が同一波長であっても、1種類又は複数種類の蛍光体材料をそれぞれ用いることで、出力が高く発光特性に優れた光を任意の色調で得ることができる。
従って、高輝度且つ長寿命であるとともに、小型で汎用性に優れたランプが安価な構成で得られる。
【0028】
なお、本発明の蛍光体及びそれを用いたランプは、特に460nm付近の青色域において効率良く励起させることができるため、青色LEDを光源として用い、青色LED励起によって蛍光体が黄色発光して白色光が得られるLEDランプに用いた場合に、上述の優れた効果が一層顕著なものになる。
また、本発明のランプは、汎用性に優れていることから、ディスプレー、液晶バックライト、白色LED、照明用LED等、幅広い用途に用いることが可能となる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を示して本発明の蛍光体及びそれを用いたランプを具体的に説明するが、本発明の蛍光体及びそれを用いたランプは、以下の実施例の内容に限定されるものでは無い。
【0030】
[実施例1]
図1及び図2は、Y、Al、CeOの各々を、Y2.91Ce0.09Al12となるように配合し、これに、5族元素としてHPOを用い、添加量と焼成雰囲気を変えて合成した蛍光体の、最大発光ピーク高さの相対強度(発光強度)、及び最大発光ピーク高さの波長(発光波長)を示すグラフである。
【0031】
図1及び図2に示すデータの焼成雰囲気としては、「Ar」及び「N」はほぼ100%のガスを用い、「H」は4%の水素と96%の窒素の混合ガスを用い、「大気」は大気雰囲気で焼成した。
【0032】
比較用の蛍光体は、化成オプト社製TYPE:KX692Bとした。
この蛍光体は、一般的に入手可能な参照用蛍光体として用いられている同社のTYPE:P46−Y3に対して120〜130%の発光強度を持つ、入手可能な蛍光体としては最も発光強度の大きい蛍光体であり、本実施例では、この蛍光体(TYPE:KX692B)の発光強度を100%とした時の相対強度を示している。
【0033】
図1のグラフに、HPO添加量と発光強度との関係を示す。
この関係より、HPOの添加量が増加すると発光強度は大きくなり、前記比較用の蛍光体に対して120%以上の発光強度が得られることがわかる。また、不活性ガス雰囲気(Ar,N)で焼成した場合に、その効果が大きい事がわかる。
【0034】
図1のグラフに示すように、本例では、蛍光体に添加するHPOの量が、mole%で1〜5%の範囲の濃度になる量とされている。図1に示す結果より、本発明の蛍光体は、PとしてHPOを添加することにより、発光強度が向上するとともに、蛍光体の焼成雰囲気を、不活性ガスのAr雰囲気中とすることにより、発光強度がより一層向上することが明らかである。
【0035】
図2のグラフに、HPO添加量と発光波長との関係を示す。
この関係より、本発明の蛍光体は、HPOの添加に関わらず、発光波長の変化は小さく、非常に使用しやすい蛍光体であることがわかる。
【0036】
図2のグラフに示すように、本例の蛍光体の発光波長は、HPO添加量がmole%で1〜5%の範囲である場合、HPOの添加量に大きく影響されることが無い。このため、所望する発光波長に関わらず、HPOの添加量を決定することができる。
従って、本発明の蛍光体では、高い発光強度を所望する場合には、HPO添加量を上記範囲内で増量することにより、発光波長に大きな影響を与えること無く、蛍光体の発光強度を向上できることが明らかである。
【0037】
[実施例2]
図3及び図4は、Y,Al、CeOの各々を、Y(3−x)CeAl12となるように配合し、これに、5族元素としてHPOを用い、3mole%と一定量添加し、CeO濃度x(mole%)を変化させ、焼成雰囲気を変えて合成した蛍光体の、最大発光ピーク高さの相対強度(発光強度)と最大発光ピーク高さの波長(発光波長)を示すグラフである。
【0038】
図3及び図4に示すデータの焼成雰囲気としては、「N」はほぼ100%のガスを用い、「H」は4%の水素と96%の窒素の混合ガスを用いた。
【0039】
比較用の蛍光体は、実施例1と同様、化成オプト社製TYPE:KX692Bとした。
【0040】
図3のグラフに、蛍光体にHPOを添加した状態での、CeO(Ce)濃度と発光強度との関係を示す。
この関係より、HPOを添加した状態において、Ce濃度に応じて発光強度が大きくなり、N雰囲気では、前記比較用の蛍光体に対して120%以上の発光強度が得られることがわかる。
【0041】
図3のグラフに示すように、本例の蛍光体は、蛍光体に付活剤として添加するCeOの量が、mole%で0.5〜5%のCe濃度になる量とされている。図3に示す結果より、本発明の蛍光体の発光強度が向上していることが明らかである。また、N及びH雰囲気中ともに、上記範囲のCe濃度における発光強度が100%以上であり、Ce濃度が上記範囲である場合に、高い発光強度が得られることが明らかである。
【0042】
図4のグラフに、蛍光体にHPOを添加した状態での、CeO(Ce)濃度と発光波長との関係を示す。
この関係より、HPOを添加した状態において、Ce濃度に応じて発光波長が大きく変化し、この変化は、一般的に知られているGdの置換効果より大きい事がわかる。この関係より、用途に合わせてCeO濃度を選択すれば、発光強度と発光波長のバランスが取れた蛍光体の作製が可能になり、非常に使いやすい蛍光体であることが明らかである。
【0043】
図4のグラフに示すように、本例では、蛍光体に含有されるCe濃度が、mole%で0.5〜5%の範囲である場合、発光波長がほぼCe濃度に応じて変動している。図4に示す結果より、本発明の蛍光体は、CeO添加量の設定によって所望する発光波長が得られ、特に蛍光体の焼成をN雰囲気中で行なった場合には、Ce濃度と発光波長とがほぼ比例関係となることが明らかである。
また、上述した図3のグラフに示すように、Ce濃度が上記範囲である場合の発光強度は100%以上であることから、CeO添加量が上記Ce濃度の範囲となる量であれば、高い発光強度が得られることが明らかである。
これらの結果より、Ce等の付活剤を含有してなる本発明の蛍光体は、高い発光強度を有しながら、所望の発光波長を容易に得られることが明らかである。
【0044】
[実施例3]
図5は、Y,Al、CeOの各々を、Y2.91Ce0.09Al12となるように配合し、これに、5族元素である各種P(燐)化合物を添加し、焼成雰囲気を変えて合成した場合の、蛍光体原料合成時に添加したPの濃度と、蛍光体が合成された後の蛍光体中のPの濃度との関係を示すグラフである。
図5において、A,B,C,Dは、各々、P化合物の種類と焼成雰囲気を変えて実施した例である
【0045】
図5のグラフに示す関係より、蛍光体原料合成時に添加したPの濃度と、蛍光体が合成された後の蛍光体中のPの濃度は、ある程度相関があるものの、P源の化合物の種類、合成温度、合成雰囲気等の条件によって変化することがわかる。
従って、適正なP濃度は、これらの条件と、所望する蛍光体の特性によって適宜選択し、決定する必要があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の蛍光体及びそれを用いたランプは、ディスプレー、バックライト光源、信号機、及び各種インジケータ等、種々の幅広い用途に使用することができ、産業上の利用価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の蛍光体の一例を説明する図であり、実施例1におけるHPOの添加量と発光強度との関係を示したグラフである。
【図2】本発明の蛍光体の一例を説明する図であり、実施例1におけるHPOの添加量と発光波長との関係を示したグラフである。
【図3】本発明の蛍光体の一例を説明する図であり、実施例2において、HPO濃度を3mole%に固定した場合の、Ce濃度と発光強度との関係を示したグラフである。
【図4】本発明の蛍光体の一例を説明する図であり、実施例2において、HPO濃度を3mole%に固定した場合の、Ce濃度と発光波長との関係を示したグラフである。
【図5】本発明の蛍光体の一例を説明する図であり、実施例3において、蛍光体合成時のP濃度と、蛍光体合成後のP濃度との関係を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーネット構造を主体とする蛍光体に、V族元素を添加したことを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
前記蛍光体が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAl12)を母体成分とし、さらに付活剤を含有した、ガーネット構造を有する蛍光体を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記V族元素の含有量が、50mole%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記V族元素の含有量が、25mole%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項5】
前記V族元素がPであり、燐化合物の状態で添加されてなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の蛍光体。
【請求項6】
Y化合物と、Al化合物と、Ce化合物と、V族元素の化合物とを混合して焼成し、ガーネット構造を主体とする蛍光体とすることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項7】
Y酸化物と、Al酸化物と、Ce酸化物を所定の組成比になるように配合し、更に、燐化合物を添加して焼成することを特徴とする請求項6に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項8】
Y酸化物としてYを、Al酸化物としてAlを、Ce酸化物としてCeOを、燐化合物としてHPOを用いることを特徴とする請求項7に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項9】
不活性ガス中で焼成することを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項10】
請求項6〜9の何れか1項に記載の製造方法によって得られる蛍光体。
【請求項11】
光源としてLEDを備え、請求項1〜5及び請求項10の何れか1項に記載の蛍光体を備え、該蛍光体によって前記LEDの出射光を吸収し、波長変換することを特徴とするランプ。
【請求項12】
光源としてLEDを備え、請求項1〜5及び請求項10の何れか1項に記載の蛍光体を備え、該蛍光体によって前記LEDの出射光を吸収し、白色光を発光することを特徴とするランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−197608(P2007−197608A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19323(P2006−19323)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】