説明

蛍光体

【課題】
より高い輝度を示す蛍光体層を得ることができる蛍光体を提供することにある。
【解決手段】
式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする蛍光体。
3(M11-xEux)O・mM2O・nM32 (1)
(ただし、式中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、M2はMgおよび/またはZnであり、M3はSiおよび/またはGeであり、mの値は0.9以上1.1以下の範囲であり、nの値は1.8以上2.2以下の範囲であり、かつxの値は0.00016以上0.003未満の範囲である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は発光素子に用いられている。発光素子としては、蛍光体の励起源が電子線である電子線励起発光素子(例えば、ブラウン管、フィールドエミッションディスプレイ、表面電界ディスプレイ等)、蛍光体の励起源が紫外線である紫外線励起発光素子(例えば、液晶ディスプレイ用バックライト、3波長型蛍光ランプ、高負荷蛍光ランプ等)、蛍光体の励起源が真空紫外線である真空紫外線励起発光素子(例えば、プラズマディスプレイパネル、希ガスランプ等)、蛍光体の励起源が青色LEDの発する光または紫外LEDの発する光である白色LED等が挙げられる。
本発明者らは、真空紫外線励起発光素子用の蛍光体として、式BaCa2MgSi28:Euで表される蛍光体を提案しており(特許文献1参照。)、その一実施態様として式Ba0.98Ca2Eu0.02MgSi28(3(Ba0.327Ca0.667Eu0.00667)O・MgO・2SiO2)で表される蛍光体を記載している。
【0003】
【特許文献1】特開2004−026922号公報(特許請求の範囲および段落[0019])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子の製造においては、蛍光体および有機物を主成分として含有する蛍光体ペーストを基板に塗布後、例えば300℃〜600℃の温度範囲で熱処理して、蛍光体層を得る工程がある。しかしながら、従来の蛍光体および有機物を主成分として含有する蛍光体ペーストを用いて得られる蛍光体層は、この蛍光体ペーストの熱処理の影響によるためか、輝度が十分ではないという問題があった。本発明の目的は、より高い輝度を示す蛍光体層を得ることができる蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、下記の蛍光体、ペースト、蛍光体層および発光素子を提供するものである。
<1>式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする蛍光体。
3(M11-xEux)O・mM2O・nM32 (1)
(ただし、式中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、M2はMgおよび/またはZnであり、M3はSiおよび/またはGeであり、mの値は0.9以上1.1以下の範囲であり、nの値は1.8以上2.2以下の範囲であり、かつxの値は0.00016以上0.003未満の範囲である。)
<2>M1がBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる2種以上の元素である前記の蛍光体。
<3>M2がMgである前記いずれかに記載の蛍光体。
<4>M3がSiである前記いずれかに記載の蛍光体。
<5>式(3)で表される化合物を含有することを特徴とする蛍光体。
(Ba3-a-b-3xSraCabEu3x)MgSi28 (3)
(ただし、式中aの値は1.5以上2.7以下の範囲であり、bの値は0以上0.4以下の範囲であり、xの値は0.00016以上0.003未満の範囲であり、a+b+3x<3である。)
<6>式(4)で表される化合物を含有することを特徴とする蛍光体。
(Ba3-a-3xSraEu3x)MgSi28 (4)
(ただし、式中aの値は1.5以上2.7以下の範囲であり、xの値は0.00016以上0.003未満の範囲である。)
<7>式(5)で表される化合物を含有することを特徴とする蛍光体。
(Sr3-c-3xCacEu3x)MgSi28 (5)
(ただし、式中cの値は0を超え0.9以下の範囲であり、xの値は0.00016以上0.003未満の範囲である。)
<8>さらにAl、Sc、Y、La、Gd、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、BiおよびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する前記いずれかに記載の蛍光体。
<9>前記いずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする蛍光体ペースト。
<10>前記の蛍光体ペーストを基板に塗布後、熱処理することにより得られる蛍光体層。
<11>前記<1>〜<8>のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする発光素子。
<12>前記<1>〜<8>のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする電子線励起発光素子。
<13>前記<1>〜<8>のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする紫外線励起発光素子。
<14>前記<1>〜<8>のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする真空紫外線励起発光素子。
<15>前記<1>〜<8>のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする白色LED。
【発明の効果】
【0007】
本発明の蛍光体はより高い輝度を示し、かつ本発明の蛍光体および有機物を主成分として含有する蛍光体ペーストを用いることによって得られる蛍光体層もより高い輝度を示し、さらに本発明の蛍光体を有する発光素子もより高い輝度を示すため、本発明の蛍光体は発光素子用に好適に使用される。また本発明の蛍光体は、プラズマディスプレイパネルおよび希ガスランプなどの真空紫外線励起発光素子用の蛍光体としてより好適に使用され、プラズマディスプレイパネル用の蛍光体として特に好適に使用される。また、本発明の蛍光体は液晶ディスプレイ用バックライト等の紫外線励起発光素子、フィールドエミッションディスプレイ等の電子線励起発光素子、白色LED等の発光素子にも適用できるため、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明について詳しく説明する。
本発明の蛍光体は、式(1)で示される化合物を含有する。
3(M11-xEux)O・mM2O・nM32 (1)
ただし式中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、M2はMgおよび/またはZnであり、M3はSiおよび/またはGeであって、mの値は0.9以上1.1以下の範囲であり、nの値は1.8以上2.2以下の範囲であり、かつxの値は0.00016以上0.003未満の範囲である。
なお、前記の式(1)で示される化合物は、式(2)で示される化合物としても表すことができる。
13(1-x)Eu3x2m3n3+m+2n (2)
【0009】
本発明の蛍光体は、式(1)において、xの値が0.00016以上0.003未満の範囲であるときより高い輝度を示し、かつ該蛍光体を有する蛍光体層もより高い輝度を示す。xの値は、好ましくは0.00033以上0.0027以下の範囲であり、より好ましくは0.0007以上0.002以下の範囲である。xの値が0.00016未満のときは、該蛍光体および該蛍光体を有する蛍光体層の輝度が低くなる傾向があるので好ましくなく、xの値が0.003を超えるときは、該蛍光体を有する蛍光体層の輝度が低くなる傾向があるので好ましくない。
また、本発明の蛍光体および該蛍光体を有する蛍光体層がさらに高い輝度を示すので、mの値は、0.93以上1.08以下が好ましく、0.96以上1.05以下がより好ましい。
また、本発明の蛍光体および該蛍光体を有する蛍光体層がさらに高い輝度を示すので、nの値は、1.9以上2.1以下が好ましく、1.95以上2.05以下がより好ましい。
【0010】
また、蛍光体がさらに高い輝度を示すので、式(1)において、M1がBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる2種以上の元素であることが好ましい。また、蛍光体がさらにより高い輝度を示すので、M1がBaおよびSr、またはBa、SrおよびCaであることがより好ましい。また、蛍光体がさらに高い輝度を示すので、式(1)において、M2がMgであることが好ましい。また、蛍光体がさらに高い輝度を示すので、また、式(1)において、M3がSiであることが好ましい。
【0011】
前記式(2)で示される化合物の中でも、式(3)で示される化合物を含有する蛍光体はさらに高い輝度を示すため好ましい。
(Ba3-a-b-3xSraCabEu3x)MgSi28 (3)
ただし、式中aの値は1.5以上2.7以下の範囲であり、bの値は0以上0.4以下の範囲であり、xの値は0.00016以上0.003未満の範囲であり、a+b+3x<3である。また、式(3)において、蛍光体がさらにより高い輝度を示すので、aの値は1.8以上2.6以下の範囲であることがより好ましく、蛍光体が特に高い輝度を示しかつ該蛍光体を有する蛍光体層も特に高い輝度を示すので、2.0以上2.5以下の範囲がさらに好ましい。また、式(3)において、蛍光体がさらにより高い輝度を示すので、bの値は0.03以上0.35以下の範囲であることが好ましく、蛍光体が特に高い輝度を示しかつ該蛍光体を有する蛍光体層も特に高い輝度を示すので、0.08以上0.25以下の範囲がさらに好ましい。また、式(3)において、蛍光体がさらにより高い輝度を示しかつ該蛍光体を有する蛍光体層もさらにより高い輝度を示すので、xの値は0.00033以上0.0027以下の範囲であることがより好ましく、蛍光体が特に高い輝度を示しかつ該蛍光体を有する蛍光体層も特に高い輝度を示すので、0.0007以上0.002以下の範囲がさらに好ましい。
【0012】
前記式(2)で示される化合物の中でも、式(4)で示される化合物を含有する蛍光体はさらに高い輝度を示すため好ましい。
(Ba3-a-3xSraEu3x)MgSi28 (4)
ただし、式中aの値は1.5以上2.7以下の範囲であり、xの値は0.00016以上0.003未満の範囲である。また、式(4)において、蛍光体がさらにより高い輝度を示すので、aの値は2.0以上2.65以下の範囲であることがより好ましく、蛍光体が特に高い輝度を示しかつ該蛍光体を有する蛍光体層も特に高い輝度を示すので、2.2以上2.6以下の範囲がより好ましい。また、式(4)において、蛍光体がさらにより高い輝度を示しかつ該蛍光体を有する蛍光体層もさらにより高い輝度を示すので、xの値は0.00033以上0.0027以下の範囲であることがより好ましく、蛍光体が特に高い輝度を示しかつ該蛍光体を有する蛍光体層も特に高い輝度を示すので、0.0007以上0.002以下の範囲がより好ましい。
【0013】
前記式(2)で示される化合物の中でも、式(5)で示される化合物を含有する蛍光体はさらに高い輝度を示すため好ましい。
(Sr3-c-3xCacEu3x)MgSi28 (5)
ただし、式中cの値は0を超え以上0.9以下の範囲であり、xの値は0.00016以上0.003未満の範囲である。また、式(5)において、蛍光体がさらにより高い輝度を示すので、cの値は0.03以上0.8以下の範囲であることがより好ましく、0.08以上0.6以下の範囲がさらに好ましい。また、式(5)において、蛍光体がさらにより高い輝度を示し、かつ該蛍光体を有する蛍光体層もさらにより高い輝度を示すので、xの値は0.00033以上0.0027以下の範囲であることがより好ましく、0.0007以上0.002以下の範囲がさらに好ましい。
【0014】
本発明の蛍光体は、さらにAl、Sc、Y、La、Gd、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、BiおよびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有してもよい。これらの元素の含有量は、蛍光体全重量に対して100ppm以上50000ppm以下であるとき、より高い輝度を示す場合がある。
【0015】
次に、本発明の蛍光体を製造する方法について説明する。
本発明の蛍光体は、例えば次のようにして製造することができる。本発明の蛍光体は、焼成により式(1)で示される化合物となる金属化合物混合物を焼成することによって製造することができる。すなわち対応する金属元素を含有する化合物を所定の組成となるように秤量し混合した後に得られた金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。例えば、好ましい組成の一つである式(Ba0.495Sr2.5Eu0.005)MgSi28で示される化合物は、BaCO3、SrCO3、MgO、SiO2、Eu23の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.495:2.5:1.0:2.0:0.005となるように秤量し、それらを混合して得られる金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。
【0016】
前記の金属元素を含有する化合物としてはバリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウム、アルミ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテニウム、ビスマスおよびマンガンの化合物で、例えば、酸化物を用いるか、または水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解および/または酸化して酸化物になりうるものを用いることができる。
【0017】
前記金属元素を含有する化合物の混合には、例えばボールミル、V型混合機、攪拌機等の通常工業的に用いられている装置を用いることができる。
【0018】
前記金属化合物混合物を、例えば900℃から1500℃の温度範囲にて通常は0.5時間以上100時間以下保持して焼成することにより本発明の蛍光体が得られる。
金属化合物混合物に水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解および/または酸化しうる化合物を使用した場合、400℃から1200℃の温度範囲で保持して仮焼を行い、酸化物としたり、結晶水を除去した後に、前記の焼成を行うことも可能である。仮焼を行う雰囲気は不活性ガス雰囲気、酸化性雰囲気もしくは還元性雰囲気のいずれでもよい。また仮焼後に粉砕することもできる。
【0019】
焼成時の雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気;空気、酸素、酸素含有窒素、酸素含有アルゴン等の酸化性雰囲気;水素を0.1から10体積%含有する水素含有窒素、水素を0.1から10体積%含有する水素含有アルゴン等の還元性雰囲気が好ましい。強い還元性の雰囲気で焼成する場合には適量の炭素を金属化合物混合物に含有させて焼成してもよい。
【0020】
また、上記の金属化合物としてフッ化物、塩化物等を用いることにより、生成する蛍光体の結晶性を高めることおよび/または平均粒径を大きくすることができる。生成する蛍光体の結晶性を高めることおよび/または平均粒径を大きくするために、適量のフラックスを添加してもよい。フラックスとしては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、NaHCO3、NH4Cl、NH4I、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、MgI2、CaI2、SrI2、BaI2などを挙げることができる。
【0021】
以上の方法により得られた蛍光体を、ボールミルやジェットミルなどを用いて粉砕することができ、粉砕と焼成を2回以上繰り返してもよい。得られた蛍光体は必要に応じて洗浄あるいは分級することもできる。
【0022】
次に、本発明の蛍光体を有する蛍光体ペーストについて説明する。
本発明の蛍光体ペーストは、本発明の蛍光体および有機物を主成分として含有し、該有機物としては、溶剤、バインダー等が挙げられる。本発明の蛍光体ペーストは、従来の発光素子の製造において使用されている蛍光体ペーストと同様に用いることができ、熱処理することにより蛍光体ペースト中の有機物を揮発、燃焼、分解等により除去し、本発明の蛍光体から実質的になる蛍光体層を得ることができる蛍光体ペーストである。
【0023】
本発明の蛍光体ペーストは、例えば、特開平10−255671号公報に開示されているような公知の方法により製造することができ、例えば、本発明の蛍光体とバインダーと溶剤とを、ボールミルや三本ロール等を用いて混合することにより、得ることができる。
【0024】
前記バインダーとしては、セルロース系樹脂(エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、変性セルロースなど)、アクリル系樹脂(アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシアクリレート、フェノキシメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレンアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの単量体のうちの少なくとも1種の重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0025】
また前記溶剤としては、例えば1価アルコールのうち高沸点のもの;エチレングリコールやグリセリンに代表されるジオールやトリオールなどの多価アルコール;アルコールをエーテル化および/またはエステル化した化合物(エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルアセテート)などが挙げられる。
【0026】
前記のようにして得られた蛍光体ペーストを、基板に塗布後、熱処理して得られる蛍光体層は高い輝度を示す。基板としては、材質はガラス基板、樹脂フィルム等であってもよく、また、形状は板状のもの、容器状のものであってもよく、さらにフレキシブルなものであってもよい。また、塗布の方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。また、熱処理の温度としては、通常、300℃〜600℃である。また、基板に塗布後、熱処理を行う前に、室温〜300℃の温度で乾燥を行ってもよい。
【0027】
ここで、本発明の蛍光体を有する発光素子の例として真空紫外線励起発光素子であるプラズマディスプレイパネルを挙げてその製造方法について説明する。プラズマディスプレイパネルの製造方法としては例えば、特開平10−195428号公報に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち、本発明の蛍光体が青色発光を示す場合は、緑色蛍光体、赤色蛍光体、本発明の青色蛍光体のそれぞれの蛍光体を、例えば、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコールからなるバインダーおよび溶剤と混合して蛍光体ペーストを調製する。背面基板の内面の、隔壁で仕切られアドレス電極を備えたストライプ状の基板表面と隔壁面に、蛍光体ペーストをスクリーン印刷などの方法によって塗布し、300〜600℃の温度範囲で熱処理し、それぞれの蛍光体層を得る。これに、蛍光体層と直交する方向の透明電極およびバス電極を備え、内面に誘電体層と保護層を設けた表面ガラス基板を重ねて接着する。内部を排気して低圧のXeやNe等の希ガスを封入し、放電空間を形成させることにより、プラズマディスプレイパネルを製造することができる。
【0028】
次に本発明の蛍光体を有する電子線励起発光素子の例として、フィールドエミッションディスプレイを挙げてその製造方法について説明する。フィールドエミッションディスプレイの製造方法としては例えば、特開2002−138279号公報に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち、本発明の蛍光体が青色発光を示す場合は、緑色蛍光体、赤色蛍光体、本発明の青色蛍光体のそれぞれの蛍光体を、それぞれ、例えば、ポリビニルアルコール水溶液などに分散して蛍光体ペーストを調製する。その蛍光体ペーストをガラス基板上に塗布後、熱処理することにより蛍光体層を得てフェイスプレートとする。そのフェイスプレートと多数の電子放出素子を有するリアプレートとを支持枠を介して組立てるとともに、これらの間隙を真空排気しつつ気密封止するなど通常の工程を経て、フィールドエミッションディスプレイを製造することができる。
【0029】
次に本発明の蛍光体を有する白色LEDの製造方法について説明する。白色LEDの製造方法としては例えば、特開平5−152609号公報および特開平7−99345号公報等に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち少なくとも本発明の蛍光体を含有する蛍光体を、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、シリコンゴムなどの透光性樹脂中に分散させ、その蛍光体を分散させた樹脂を青色LEDまたは紫外LEDを取り囲むように成形することにより、白色LEDを製造することができる。
【0030】
次に本発明の蛍光体を有する紫外線励起発光素子の例として、高負荷蛍光ランプ(ランプの管壁の単位面積当りの消費電力が大きな小型の蛍光ランプ)を挙げてその製造方法について説明する。高負荷蛍光ランプの製造方法としては例えば、特開平10−251636号公報に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち、本発明の蛍光体が青色発光を示す場合は、緑色蛍光体、赤色蛍光体、本発明の青色蛍光体のそれぞれの蛍光体を、例えば、ポリエチレンオキサイド水溶液などに分散して蛍光体ペーストを調製する。この蛍光体ペーストをガラス管内壁に塗布し、乾燥を行ったあと、300〜600℃の温度範囲で熱処理し、蛍光体層を得る。これに、フィラメントを装着したのち、排気など通常の工程を経て、低圧のAr、KrやNe等の希ガスおよび水銀を封入して口金を取り付けて放電空間を形成させることにより、高負荷蛍光ランプを製造することができる。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
蛍光体ペーストは、次のようにして調製した。蛍光体ペースト100重量部あたり、蛍光体粉末が33重量部、エチルセルロースが7重量部、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルとジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテートの混合物が60重量部となるように秤量し、十分に混練した。
【0033】
蛍光体層は、次のようにして得た。前記蛍光体ペーストをガラス基板上に塗布し、100℃で乾燥させた後、大気雰囲気中において500℃で30分間、熱処理して厚さ約20μmの蛍光体層を得た。
【0034】
発光輝度の測定は、次のようにして行った。蛍光体または蛍光体層が形成されたガラス基板を真空槽内に設置し、6.7Pa(5×10-2torr)以下の真空に保持し、146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて真空紫外線を照射することで行った。なお、輝度の測定は分光放射計(株式会社トプコン製SR−3)を用いて行った。
【0035】
また、蛍光体に含有される元素の含有量は、GD−MS分析装置(グロー放電質量分析装置、装置名VG9000、VG Elemental社製)を用いて求めた。
【0036】
比較例1
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.4999:2.5:1.0:2.0:0.0001となるように秤量し、乾式ボールミルで4時間混合後、得られた金属化合物混合物をアルミナボートを用いて窒素と水素との混合ガス(水素を2体積%含有)の還元雰囲気中において1200℃で2時間保持して焼成することにより、式(Ba0.4999Sr2.5Eu0.0001)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体1を得た。この蛍光体1について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光が観測され、このとき得られた輝度を100とした(以下、蛍光体および蛍光体層の輝度は、この蛍光体1の輝度を100とした相対輝度として示した。)。さらに、この蛍光体1について、蛍光体ペーストを作製し、ガラス基板に塗布後、熱処理することにより得られた蛍光体層について発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は81であった。得られた結果を表1に示した。
【0037】
実施例1
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.4995:2.5:1.0:2.0:0.0005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.4995Sr2.5Eu0.0005)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体2を得た。この蛍光体2について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は102であった。さらに、この蛍光体2について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は99であった。得られた結果を表1に示した。
【0038】
実施例2
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.499:2.5:1.0:2.0:0.001となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.499Sr2.5Eu0.001)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体3を得た。この蛍光体3について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は107であった。さらに、この蛍光体3について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は102であった。得られた結果を表1に示した。
【0039】
実施例3
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.497:2.5:1.0:2.0:0.003となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.497Sr2.5Eu0.003)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体4を得た。この蛍光体4について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は127であった。さらに、この蛍光体4について比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は117であった。得られた結果を表1に示した。また、蛍光体4全重量に対するClの含有量は、10ppm未満であった。
【0040】
実施例4
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.495:2.5:1.0:2.0:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.495Sr2.5Eu0.005)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体5を得た。この蛍光体5について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は136であった。さらに、この蛍光体5について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は106であった。得られた結果を表1に示した。
【0041】
実施例5
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.495:2.5:1.05:2.0:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.495Sr2.5Eu0.005)Mg1.05Si28.05で表される化合物を含有する蛍光体6を得た。この蛍光体6について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は121であった。さらに、この蛍光体6について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は98であった。得られた結果を表1に示した。
【0042】
実施例6
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.495:2.5:0.98:1.97:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.495Sr2.5Eu0.005)Mg0.98Si1.977.92で表される化合物を含有する蛍光体7を得た。この蛍光体7について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は138であった。さらに、この蛍光体7について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は101であった。得られた結果を表1に示した。
【0043】
実施例7
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.492:2.5:1.0:2.0:0.008となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.492Sr2.5Eu0.008)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体8を得た。この蛍光体8について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は138であった。さらに、この蛍光体8について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は97であった。得られた結果を表1に示した。
【0044】
比較例2
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.49:2.5:1.0:2.0:0.01となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.49Sr2.5Eu0.01)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体9を得た。この蛍光体9について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は139であった。さらに、この蛍光体9について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は89であった。得られた結果を表1に示した。
【0045】
比較例3
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.48:2.5:1.0:2.0:0.02となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.48Sr2.5Eu0.02)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体10を得た。この蛍光体10について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は144であった。さらに、この蛍光体10について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は87であった。得られた結果を表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1は、蛍光体1〜10の相対輝度、蛍光体1〜10からなる蛍光体層の相対輝度、輝度維持率(%)を示すものである(ただし輝度維持率(%)は、蛍光体層の相対輝度/蛍光体の相対輝度×100で計算された値である。)。本発明の蛍光体2〜8の場合は、比較例における蛍光体1、9および10の場合と比べ、蛍光体層が高い輝度を示すことがわかる。
【0048】
次に、式(1)におけるxの値を0.00167として、M1を変化させて、以下の蛍光体11〜20を得た。
実施例8
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社製:純度99.9%)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Ca:Mg:Si:Euのモル比が0.995:2.0:1.0:2.0:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.995Ca2Eu0.005)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体11を得た。この蛍光体11について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は105であった。さらに、この蛍光体11について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は83であった。得られた結果を表2に示した。
【0049】
実施例9
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.995:2.0:1.0:2.0:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.995Sr2Eu0.005)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体12を得た。この蛍光体12について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は129であった。比較例1より高い輝度を得た。さらに、この蛍光体12について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は104であった。得られた結果を表2に示した。
【0050】
実施例10
炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社製:純度99.9%)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をSr:Ca:Mg:Si:Euのモル比が2.895:0.1:1.0:2.0:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Sr2.895Ca0.1Eu0.005)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体13を得た。この蛍光体13について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は143であった。比較例1より高い輝度を得た。さらに、この蛍光体13について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は119であった。得られた結果を表2に示した。
【0051】
実施例11
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社製:純度99.9%)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Ca:Mg:Si:Euのモル比が2.895:0.1:1.0:2.0:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba2.895Ca0.1Eu0.005)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体14を得た。この蛍光体14について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は138であった。さらに、この蛍光体14について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は106であった。得られた結果を表2に示した。
【0052】
実施例12
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社製:純度99.9%)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Ca:Mg:Si:Euのモル比が0.395:2.5:0.1:1.0:2.0:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.395Sr2.5Ca0.1Eu0.005)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体15を得た。この蛍光体15について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は146であった。さらに、この蛍光体15について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は115であった。得られた結果を表2に示した。
【0053】
実施例13
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社製:純度99.9%)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Ca:Mg:Si:Euのモル比が0.295:2.5:0.2:1.0:2.0:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.295Sr2.5Ca0.2Eu0.005)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体16を得た。この蛍光体16について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は131であった。さらに、この蛍光体16について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は111であった。得られた結果を表2に示した。
【0054】
実施例14
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社製:純度99.9%)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Ca:Mg:Si:Euのモル比が0.495:2.1:0.4:1.0:2.0:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.495Sr2.1Ca0.4Eu0.005)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体17を得た。この蛍光体17について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は119であった。さらに、この蛍光体17について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は90であった。得られた結果を表2に示した。
【0055】
実施例15
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩化ストロンチウム六水和物(堺化学工業株式会社製:純度99.9%)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Euのモル比が0.495:2.5:1.0:2.0:0.005となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.495Sr2.5Eu0.005)MgSi28で表される化合物を含有する蛍光体18を得た。この蛍光体18について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は149であった。さらに、この蛍光体18について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は138であった。結果を表2に示した。また、蛍光体18全重量に対するClの含有量は、900ppmであった。
【0056】
実施例16
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)と酸化イットリウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Eu:Yのモル比が0.495:2.5:1.0:2.0:0.005:0.01となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.495Sr2.5Eu0.005)MgSi28で表される化合物を含有し、さらにYを含有する蛍光体19を得た。この蛍光体19について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は130であった。さらに、この蛍光体19について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は138であった。得られた結果を表2に示した。また、蛍光体19全重量に対するYの含有量は、1800ppmであった。
【0057】
実施例17
炭酸バリウム(日本化学工業株式会社製:純度99%以上)と炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:純度99%以上)と塩基性炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製:純度99%以上)と二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)と酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)と水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製:純度99%以上)の各原料をBa:Sr:Mg:Si:Eu:Alのモル比が0.495:2.5:1.0:2.0:0.005:0.02となるように秤量した以外は比較例1と同様の操作を行い、式(Ba0.495Sr2.5Eu0.005)MgSi28で表される化合物えを含有し、さらにAlを含有する蛍光体20を得た。この蛍光体20について、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は108であった。さらに、この蛍光体20について、比較例1と同様の操作によって蛍光体層を得、発光輝度の測定を行ったところ青色の発光を示し相対輝度は92であった。得られた結果を表2に示した。また、蛍光体20全重量に対するAlの含有量は、1100ppmであった。
【0058】
【表2】

【0059】
表2は、蛍光体11〜20の相対輝度、蛍光体11〜20からなる蛍光体層の相対輝度、輝度維持率(%)を示すものである(ただし輝度維持率(%)は、蛍光体層の相対輝度/蛍光体の相対輝度×100で計算された値である。)。本発明の蛍光体11〜20の場合は、比較例における前記の蛍光体1、9および10の場合と比べ、蛍光体層が高い輝度を示すことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】蛍光体1〜5および蛍光体8〜10の相対輝度の結果、および該蛍光体からなる蛍光体層の相対輝度の結果を用いて、これらの相対輝度を、式(1)におけるxの値に対してプロットした図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする蛍光体。
3(M11-xEux)O・mM2O・nM32 (1)
(ただし、式中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、M2はMgおよび/またはZnであり、M3はSiおよび/またはGeであり、mの値は0.9以上1.1以下の範囲であり、nの値は1.8以上2.2以下の範囲であり、かつxの値は0.00016以上0.003未満の範囲である。)
【請求項2】
1がBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる2種以上の元素である請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】
2がMgである請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
3がSiである請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項5】
式(3)で表される化合物を含有することを特徴とする蛍光体。
(Ba3-a-b-3xSraCabEu3x)MgSi28 (3)
(ただし、式中aの値は1.5以上2.7以下の範囲であり、bの値は0以上0.4以下の範囲であり、xの値は0.00016以上0.003未満の範囲であり、a+b+3x<3である。)
【請求項6】
式(4)で表される化合物を含有することを特徴とする蛍光体。
(Ba3-a-3xSraEu3x)MgSi28 (4)
(ただし、式中aの値は1.5以上2.7以下の範囲であり、xの値は0.00016以上0.003未満の範囲である。)
【請求項7】
式(5)で表される化合物を含有することを特徴とする蛍光体。
(Sr3-c-3xCacEu3x)MgSi28 (5)
(ただし、式中cの値は0を超え0.9以下の範囲であり、xの値は0.00016以上0.003未満の範囲である。)
【請求項8】
さらにAl、Sc、Y、La、Gd、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、BiおよびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする蛍光体ペースト。
【請求項10】
請求項9記載の蛍光体ペーストを基板に塗布後、熱処理することにより得られる蛍光体層。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする発光素子。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする電子線励起発光素子。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする紫外線励起発光素子。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする真空紫外線励起発光素子。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載の蛍光体を有することを特徴とする白色LED。

【図1】
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【公開番号】特開2006−312654(P2006−312654A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131384(P2005−131384)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】