蛍光像取得方法、蛍光像取得装置及び蛍光像取得プログラム
【課題】ターゲットに標識されるべき蛍光体の退色を早めず、かつ生体試料の負担を過大にさせることもなく合焦し得るようにする。
【解決手段】生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射し、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる。その後、対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光に代えて、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射し、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得する。
【解決手段】生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射し、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる。その後、対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光に代えて、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射し、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光像取得方法、蛍光像取得装置及び蛍光像取得プログラムに関し、例えば組織切片を観察する分野に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
病理学分野で用いられる生体試料は、一般に、スライドガラス等の支持体に固定され、所定の染色を施すことにより標本として作成される。
【0003】
病理診断では、組織切片に対してHE(Hematoxylin-Eosin)染色を施した標本又は塗沫細胞に対してパパニコロウ染色を施した標本を用いて、形態学の観点から悪性腫瘍の有無が1次的に判断される。また、悪性腫瘍又は悪性腫瘍に疑わしい部分が発見された場合、組織切片又は塗沫細胞に対して蛍光染色を施した標本を用いて、分子生物学の観点から悪性腫瘍の有無、種類又は進行度などが2次的に判断される。
【0004】
このような標本はその保管期間が長期間となると、生体試料の劣化や退色等が生じ、顕微鏡での生体試料の視認性が悪くなるものである。また標本は、作成された病院等の施設以外の施設で診断されることもあるが、該生体サンプルの受け渡しは一般に郵送とされ、一定の時間を要するものである。
【0005】
このような実情等に鑑み、生体試料を画像データとして保存する装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
ところで、生体試料全体を所定の倍率で拡大した像を得る場合、該像の全体を撮像面に結像することは困難であるため、一般には、生体試料を分割し、それら部位の拡大像を連結するといった手法が用いられる。この手法では、分割対象の試料部位ごとにステージを移動させて焦点を合わせる工程が必須となるため、それら部位の拡大像を連結するまでの期間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−222801公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、蛍光染色が施された試料部位の拡大像を連結する場合、当該連結するまでの期間が長くなることに起因して、ターゲットに標識されるべき蛍光体の退色が早まるのみならず生体試料に対する負担が過大となってしまう。
【0009】
一方、蛍光染色が施された試料は、未励起状態では無色透明であるため像として写らず、該像のコントラストに基づいて合焦させることが困難となる。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ターゲットに標識されるべき蛍光体の退色を早めず、かつ生体試料の負担を過大にさせることもなく合焦し得る蛍光像取得方法、蛍光像取得装置及び蛍光像取得プログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明は、蛍光像取得方法であって、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する照射ステップと、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる合焦ステップと、当該光に代えて、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する照射光変更ステップと、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得する取得ステップとを有する。
【0012】
また本発明は、蛍光像取得装置であって、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する第1の光源と、ターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する第2の光源と、生体サンプルの一部が撮像面に結像される程度の倍率となる対物レンズと、第1の光源を駆動させて、対物レンズを介して撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる合焦手段と、第1の光源の駆動を停止するとともに、第2の光源を駆動させて、対物レンズを介して撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得する取得手段とを有する。
【0013】
さらに本発明は、蛍光像取得プログラムであって、コンピュータに対して、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射すること、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせること、当該光に代えて、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射すること、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得することを実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、合焦対象暗視野像として取得するときには、ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体の励起光をサンプル部位に照射し、記録対象の暗視野像として取得するときには、ターゲットに標識されるべき蛍光体の励起光をサンプル部位に照射する。
【0015】
このため、ターゲットに標識されるべき蛍光体を発光させることなく、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体のサンプル部位での像を用いて合焦することができる。この結果、本発明は、ターゲットに標識されるべき蛍光体の退色を早めず、かつ生体試料の負担を過大にさせることもなく合焦することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】生体サンプル像取得装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】蛍光像を概略的に示す図である。
【図3】データ処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】明視野撮像モードを実行するCPUの機能的構成を示すブロック図である。
【図5】明視野全体像を示す写真である。
【図6】生体サンプルに対する撮像範囲の割り当ての説明に供する概略図である。
【図7】暗視野撮像モードを実行するCPUの機能的構成を示すブロック図である。
【図8】対照マーカーの暗視野部位像を示す写真である。
【図9】合焦対象として用いるべき像の一部の具体例を示す概略図である。
【図10】対照マーカー及び蛍光マーカの暗視野部位像を示す写真である。
【図11】暗視野像取得処理手順を示すフローチャートである。
【図12】他の実施の形態における対照励起光源の配置(1)を概略的に示す図である。
【図13】他の実施の形態における対照励起光源の配置(2)を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態について説明する。なお、説明は以下の順序とする。
<1.実施の形態>
[1−1.生体サンプル像取得装置の構成]
[1−2.顕微鏡の構成]
[1−3.データ処理部の構成]
[1−4.明視野撮像モードの具体的処理内容]
[1−5.暗視野撮像モードの具体的処理内容]
[1−6.暗視野撮像モードにおける像取得処理手順]
[1−7.効果等]
<2.他の実施の形態>
【0018】
<1.実施の形態>
[1−1.生体サンプル像取得装置の構成]
図1において、本一実施の形態による生体サンプル像取得装置1を示す。この生体サンプル像取得装置1は、顕微鏡10と、データ処理部20とを含む構成とされる。
【0019】
[1−2.顕微鏡の構成]
顕微鏡10は、ガラス板等のスライドSGが配される面(以下、これをスライド配置面とも呼ぶ)に対して平行方向及び直交方向(x軸、y軸及びz軸方向)にそれぞれ移動可能なステージ(以下、これを可動ステージとも呼ぶ)31を有する。このスライド配置面にはスライドホルダー32が設けられる。
【0020】
スライドホルダー32は、スライドSGがセットされる場合、セット場所として指定される位置(以下、これをスライドセット位置とも呼ぶ)に移動される。スライドセット位置では、スライド収容器(図示せず)に収容されるスライドSGが、スライドセット機構(図示せず)によって取り出されスライドホルダー32にセットされる。
【0021】
スライド収容器(図示せず)に収容されるスライドSGには、血液等の結合組織、上皮組織又はそれらの双方の組織などの組織切片又は塗抹細胞が、生体サンプルSPLとして所定の固定手法により固定され、必要に応じて染色される。
【0022】
この染色には、HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色、ギムザ染色又はパパニコロウ染色等に代表される一般染色のみならず、FISH(Fluorescence In-Situ Hybridization)や酵素抗体法等の蛍光染色が含まれる。
【0023】
蛍光染色では、一般に、プローブに付される蛍光標識体(以下、これを蛍光マーカーとも呼ぶ)のほかに、該プローブの蛍光マーカーと対比させるべき蛍光標識体(以下、これを対照マーカーとも呼ぶ)が用いられる。
【0024】
対照マーカーは、蛍光マーカーにおける励起波長とは異なる励起波長とされる。例えば、おおよそ365[nm]の励起波長でなり、DAPI(4’,6-diamidino-2-pheylindole)が慣用される。DAPIでは、細胞核が、蛍光マーカーのターゲットと対比すべきターゲット(以下、これを対照ターゲットとも呼ぶ)とされる。
【0025】
生体サンプルSPLが撮像される場合、鏡検場所として指定される位置(以下、これを鏡検位置とも呼ぶ)にスライドホルダー32が移動される。この場合、明視野撮像モード又は暗視野撮像モードが実行される。
【0026】
明視野撮像モードの場合、明視野光源41から、生体サンプルSPLに対する照明光が照射される。この照明光は、反射ミラー42により折り曲げられ、明視野フィルタ43を介して可視光帯域の光として、鏡検位置にある生体サンプルSPLに照射され、対物レンズ44に到達する。
【0027】
対物レンズ44は、生体サンプルSPL全体が含まれる像(以下、これを明視野全体像とも呼ぶ)として結像される程度の低倍率、若しくは、生体サンプルSPLにおける一部分の像(以下、これを明視野部位像とも呼ぶ)として結像される程度の高倍率とされる。
【0028】
顕微鏡10は、照明光を通して得られる生体サンプルSPLの像を、対物レンズ44と結像レンズ45とでそれぞれ拡大し、明視野全体像又は明視野部位像として撮像素子46の撮像面に結像する。
【0029】
このように顕微鏡10は、明視野撮像モードでは、生体サンプルSPLにおける全体又は部位の明視野像(明視野全体像又は明視野部位像)を取得することができるようになされている。
【0030】
なお、図1では、対物レンズ44と結像レンズ45との光路間にダイクロイックミラー54、エミッションフィルタ55が存在する。しかし明視野撮像モードの場合、明視野フィルタ43から入射される可視光帯域の光がこれらフィルタに吸収あるいは反射されないように、該ダイクロイックミラー54及びエミッションフィルタ55は、当該光路以外の位置に退避される。
【0031】
一方、暗視野撮像モードの場合、励起光源51から、プローブの蛍光マーカー及び対照マーカーの双方を励起する光(以下、これを励起光とも呼ぶ)が照射される。励起光が照射される際の対物レンズ44は、生体サンプルSPLにおける一部分の蛍光像(以下、これを暗視野部位像とも呼ぶ)として結像される程度の高倍率とされる。
【0032】
励起光源51から照射される励起光は、コリメータレンズ52によって平行光線とされ、エキサイトフィルター53によって励起光以外の光が除かれる。エキサイトフィルター53を透過する励起光は、ダイクロイックミラー54を反射し、対物レンズ44によって鏡検位置に集光される。
【0033】
鏡検位置に配される生体サンプルSPLのターゲット及び対比ターゲットにプローブが結合する場合、該プローブに付される蛍光マーカー及び対照マーカーが励起光により発光する。この発光は、対物レンズ44を介してダイクロイックミラー54を透過し、エミッションフィルタ55によって蛍光体の発光以外の光が吸収され、結像レンズ45に到達する。
【0034】
顕微鏡10は、この蛍光マーカー及び対照マーカーの発光を通して得られる像を、対物レンズ44と結像レンズ45とでそれぞれ拡大し、暗視野部位像として撮像素子46の撮像面に結像する。
【0035】
このように顕微鏡10は、暗視野撮像モードでは、サンプル部位の蛍光像(暗視野部位像)を取得することができるようになされている。
【0036】
なお、図1では、エキサイトフィルター53とダイクロイックミラー54との光路間にはダイクロイックミラー63が存在するが、該ダイクロイックミラー63ではエキサイトフィルター53を透過する励起光は透過される。
【0037】
ここで、生体サンプルSPLの蛍光像(暗視野部位像)を図2に一例として示す。この図2は、abbott社のHER−2DNAプローブキットのPathVysionと呼ばれる試薬を用いて、FISH法により乳腺組織を染色したものである。
【0038】
図2における矢印がさす部分は蛍光マーカーであり、具体的にはHER2蛋白質をコードするHER2/neu遺伝子に対するプローブに付される蛍光マーカーである。また図2における網状の密集部分は対照マーカーであり、HE染色における組織の外形とおおよそ一致する外形となる。
【0039】
ちなみに上記試薬には、HER2/neu遺伝子に対するプローブのほかに、17番染色体のセントロメア領域のアルファサテライトDNA配列に対するプローブの蛍光マーカーも含まれるが、便宜上、図2では省略されている。
【0040】
かかる構成に加えてこの顕微鏡10は、蛍光マーカーに対して未励起状態であり、対照マーカーを励起状態とする励起光(以下、これを対照専用励起光とも呼ぶ)を照射する光源(以下、これを対照励起光源とも呼ぶ)61を有する。
【0041】
この対照専用励起光は、生体サンプルSPLに対する暗視野部位像を取得する場合、その合焦過程において対照励起光源61から照射される。
【0042】
対照励起光源61から照射される対照専用励起光は、コリメータレンズ62によって平行光線とされ、ダイクロイックミラー63及びダイクロイックミラー54をそれぞれ反射し、対物レンズ44によって鏡検位置に集光される。
【0043】
鏡検位置に配される生体サンプルSPLの対比ターゲットにプローブが結合する場合、該プローブに付される対照マーカーが、対照専用励起光により発光する。この発光は、対物レンズ44を介してダイクロイックミラー54を透過し、エミッションフィルタ55によって蛍光体の発光以外の光が吸収され、結像レンズ45に到達する。
【0044】
顕微鏡10は、この対照マーカーの発光を通して得られる像を、対物レンズ44と結像レンズ45とでそれぞれ拡大し、暗視野部位像として撮像素子46の撮像面に結像する。
【0045】
データ処理部20は、この暗視野部位像を用いて、対応するサンプル部位に焦点が合うよう可動ステージ31を制御する。またデータ処理部20は、サンプル部位に焦点が合った場合、対照励起光源61に代えて励起光源51から励起光を照射させ、該励起光によって得られる暗視野部位像を保存する。
【0046】
このように生体サンプル像取得装置1は、対照専用励起光によって得られる暗視野部位像を合焦対象の暗視野部位像とし、励起光によって得られる暗視野部位像を保存対象の暗視野部位像として取得するようになされている。
【0047】
[1−3.データ処理部の構成]
次に、データ処理部20の構成について説明する。このデータ処理部20は、図3に示すように、制御を司るCPU(Central Processing Unit)71に対して各種ハードウェアを接続することにより構成される。
【0048】
具体的にはROM(Read Only Memory)72、CPU71のワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)73、ユーザの操作に応じた命令を入力する操作入力部74、インターフェイス部75、表示部76及び記憶部77がバス78を介して接続される。
【0049】
ROM72には、各種の処理を実行するためのプログラムが格納される。インターフェイス部75は、顕微鏡10(可動ステージ31、光源41,51,61、撮像素子46、対物レンズ44とエミッションフィルタ55の駆動系)と接続される。
【0050】
表示部76には、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ又はプラズマディスプレイ等が適用される。また記憶部77には、HD(Hard Disk)に代表される磁気ディスクもしくは半導体メモリ又は光ディスク等が適用される。USB(Universal Serial Bus)メモリやCF(Compact Flash)メモリ等のように可搬型メモリが適用されてもよい。
【0051】
CPU71は、ROM72に格納される複数のプログラムのうち、操作入力部74から与えられる命令に対応するプログラムをRAM73に展開し、該展開したプログラムにしたがって、表示部76及び記憶部77を適宜制御する。
【0052】
またCPU71は、展開したプログラムにしたがって、インターフェイス部75を介して顕微鏡10の各部を適宜制御するようになされている。
【0053】
[1−4.明視野撮像モードの具体的処理内容]
CPU71は、明視野撮像モードの実行命令を操作入力部24から受けた場合、当該撮像モードに対応するプログラムをRAM23に展開する。
【0054】
この場合、CPU71は、明視野撮像モードに対応するプログラムにしたがって、図4に示すように、スライドセット制御部81、明視野像取得部82及びデータ記録部83として機能する。
【0055】
スライドセット制御部81は、撮像モードに実行命令を受けた場合、明視野像取得部82又はスライドを交換すべき通知を受けた場合、可動ステージ31を駆動してスライドセット位置にスライドホルダー32を位置させる。
【0056】
またスライドセット制御部81は、スライドセット位置にスライドホルダー32を位置させた場合、所定の待機期間を経過した後に再駆動し、該スライドセット位置から鏡検位置にスライドホルダー32を位置させる。待機期間では、図1を用いて上述したように、スライド収容器に収容されるスライドSGが、スライドセット機構によってスライドホルダー32にセットされる。
【0057】
明視野像取得部82は、例えばスライドホルダー32が鏡検位置に位置された時点を契機として、ダイクロイックミラー54と結像レンズ45との間における光軸上に低倍率の対物レンズ44を配置させるとともに、明視野光源41を駆動させる。
【0058】
そして明視野取得部82は、撮像素子46に結像される明視野全体像のコントラストに基づいて生体サンプルSPLに焦点を合わせて、例えば図5に示すような明視野全体像を取得する。
【0059】
明視野像取得部82は、明視野全体像を取得した場合、光路上の所定位置に配置されている低倍率の対物レンズ44に代えて、高倍率とされる所定の対物レンズ44を光路上の所定位置に配置させる。
【0060】
そして明視野像取得部82は、明視野全体像から生体サンプルSPLの輪郭を検出する。この輪郭の検出には、例えば、生体サンプルSPLと他の領域とを区別する2値化処理を施した後に、生体サンプルSPLの外形を抽出する抽出処理を施す手法が適用される。
【0061】
明視野像取得部82は、明視野全体像における生体サンプルSPLの輪郭を検出すると、部位像を撮像すべき範囲(以下、これを撮像範囲とも呼ぶ)の大きさを決定し、図6に示すように、該撮像範囲ARを生体サンプルSPLに対して割り当てる。
【0062】
撮像範囲ARは、少なくとも対物レンズ44の倍率と、撮像素子46における撮像面のサイズとに基づいて決定され、生体サンプルSPLの輪郭の一部を含む又は輪郭内に含まれることを条件として割り当てられる。なお、この図6では、撮像範囲ARが重ならない態様となっているが、隣接する領域の一部が重なる態様であってもよい。
【0063】
明視野像取得部82は、明視野全体像における生体サンプルSPLに対して撮像範囲ARを割り当てると、生体サンプルSPLの各部位が撮像範囲ARとなるよう可動ステージ31を順次移動させて、当該撮像範囲ARにおける各部位での明視野部位像を取得する。
【0064】
そして明視野像取得部82は、各明視野部位像を連結することにより、当該連結像(以下、これを明視野部位連結像とも呼ぶ)を生成する。このとき明視野像取得部82は、スライドセット制御部81に対してスライドを交換すべき旨を通知するようになされている。
【0065】
データ記録部83は、明視野像取得部82によって明視野部位連結像が生成された場合、その生成過程で取得された明視野部位像及び明視野全体像と、該明視野部位連結像とに関するデータ(以下、これを明視野像データとも呼ぶ)を生成し、これを記憶部77に記録する。
【0066】
このときデータ記録部83は、明視野像取得部82が明視野全体像における生体サンプルSPLに対して割り当てた撮像範囲ARに関するデータ(以下、これを撮像範囲割当データとも呼ぶ)を生成し、これを明視野像データに関連付ける。
【0067】
さらにデータ記録部83は、この明視野像データに対して、生体サンプルSPLに関するデータ(以下、これをサンプルデータとも呼ぶ)も関連付けるようになされている。
【0068】
このサンプルデータは、例えば、生体サンプルSPLの採取者名、採取者性別、採取者年齢及び採取日付等といった情報である。また付加情報は、操作入力部74からの入力又はスライドガラスSGに付されたバーコードを読み取る読取部によって得られる。
【0069】
[1−5.暗視野撮像モードの具体的処理内容]
CPU71は、暗視野撮像モードの実行命令を操作入力部24から受けた場合、当該撮像モードに対応するプログラムをRAM23に展開する。
【0070】
この場合、CPU71は、暗視野撮像モードに対応するプログラムにしたがって、図4との対応部分に同一符号を付した図7に示すように、スライドセット制御部81、暗視野像取得部92及びデータ記録部93として機能する。
【0071】
暗視野像取得部92は、例えばスライドホルダー32が鏡検位置に位置された時点を契機として、ダイクロイックミラー54と結像レンズ45との間における光軸上に高倍率の対物レンズ44を配置させる。
【0072】
また暗視野像取得部92は、このときスライドホルダー32に配される生体サンプルSPLに関するサンプルデータを取得し、該サンプルデータに示される例えば採取者名及び採取日付と一致するサンプルデータを記憶部77から探索する。
【0073】
暗視野像取得部92は、記憶部77からサンプルデータが検出されない場合、その旨を例えば表示部76を介して通知する。
【0074】
一方、暗視野像取得部92は、記憶部77からサンプルデータが検出された場合、そのサンプルデータに関連付けられる撮像範囲割当データを記憶部77から読み出す。そして暗視野像取得部92は、現段階でスライドホルダー32に配される生体サンプルSPLに対して、明視野撮像モードでの生体サンプルSPLに対する割り当て状態と同じように、撮像範囲AR(図6)を割り当てる。
【0075】
したがって、生体サンプルSPLにおける蛍光体が未励起状態であっても、スライドホルダー32に固定されるスライドSDのうち生体サンプルSPL部分だけが、割当対象として正確に割り当てられる。
【0076】
暗視野像取得部92は、生体サンプルSPLに対して撮像範囲ARを割り当てると、その撮像範囲ARが割り当てられた各サンプル部位を所定の順序で取得対象として決定し、当該取得対象としたサンプル部位の像(暗視野部位像)を取得する。
【0077】
ここで、取得対象として決定した一のサンプル部位の像(暗視野部位像)の取得手法を具体的に説明する。すなわち、暗視野像取得部92は、生体サンプルSPLのうち、取得対象のサンプル部位が撮像範囲となるよう可動ステージ31をx軸又はy軸方向へ移動させた後、対照励起光源61を駆動して生体サンプルSPLに対照専用励起光を照射させる。
【0078】
この結果、撮像素子46には、対照専用励起光によって励起される対照マーカーのうち、取得対象のサンプル部位における対照マーカーの暗視野像(暗視野部位像)が結像される。なお、対照マーカーの暗視野部位像を図8に示す。
【0079】
暗視野像取得部92は、撮像素子46から、この暗視野部位像の一部を取得し、その一部のコントラストに基づいて取得対象のサンプル部位に対する焦点を合わせる。したがって、暗視野部位像全体のコントラストに基づいて合焦する場合に比べると合焦期間の高速化が図られる。
【0080】
なお、合焦対象として用いるべき暗視野部位像の一部は、例えば、図9(A)示すように所定間隔ラインごととしてもよく、図9(B)示すように中心画素及びその周囲の画素としてもよい。
【0081】
暗視野像取得部92は、取得対象のサンプル部位に対する合焦が終了すると、対照励起光源61に対する駆動を停止するとともに、励起光源51を駆動させる。この結果、撮像素子46には、対照励起光によって励起される対照マーカー及び蛍光マーカーのうち、例えば図10に示すように、取得対象のサンプル部位における対照マーカー及び蛍光マーカーの暗視野像(暗視野部位像)が結像される。
【0082】
暗視野像取得部92は、撮像素子46から、この暗視野部位像の全体を記録対象の暗視野部位像として取得する。
【0083】
このように暗視野像取得部92では、上述の取得手法によって、各サンプル部位に対する記録対象の暗視野部位像が所定の順序で取得される。
【0084】
暗視野像取得部92は、各サンプル部位に対する記録対象の暗視野部位像を取得した場合、これら暗視野部位像を連結することにより、当該連結像(以下、これを暗視野部位連結像とも呼ぶ)を生成する。なお、このとき暗視野像取得部92は、スライドセット制御部81に対してスライドを交換すべき旨を通知する。
【0085】
データ記録部93は、暗視野像取得部92によって各サンプル部位に対する記録対象の暗視野部位像が取得された場合、その生成過程で取得された暗視野部位像と、該暗視野部位連結像とに関するデータ(以下、これを暗視野像データとも呼ぶ)を生成する。
【0086】
そしてデータ記録部93は、この暗視野像データを、該暗視野像データの生成過程で暗視野像取得部92によって読み出された撮像範囲割当データが関連付けられている明野像データに関連付けた状態で記憶部77に記録する。
【0087】
[1−6.暗視野撮像モードにおける暗視野像取得処理手順]
次に、暗視野像取得処理手順を、図11に示すフローチャートを用いて説明する。
【0088】
CPU71は、撮像モードに実行命令を受けると、この暗視野像取得処理手順を開始し、ステップSP1に進んで、スライドセット位置にスライドホルダー32を位置させ、次のステップSP2に進む。
【0089】
CPU71は、ステップSP2では、所定の待機期間を経過後、スライドセット位置から鏡検位置にスライドホルダー32を位置させ、次のステップSP3に進む。CPU71は、ステップSP3では、ダイクロイックミラー54と結像レンズ45との間における光軸上に高倍率の対物レンズ44を配置させ、ステップSP4に進む。
【0090】
CPU71は、ステップSP4では、スライドホルダー32に配される生体サンプルSPLに対して、明視野撮像モードでの生体サンプルSPLに対する割り当て状態と同じように、撮像範囲AR(図6)を割り当て、ステップSP5に進む。
【0091】
CPU71は、ステップSP5では、撮像範囲ARが割り当てられたサンプル部位のうち、一のサンプル部位を取得対象として決定し、次のステップSP6に進む。CPU71は、ステップSP6では、対照励起光源61を駆動させ、取得対象のサンプル部位における対照マーカーの暗視野像(暗視野部位像)における一部のコントラストに基づいて、該取得対象のサンプル部位に焦点を合わせて、ステップSP7に進む。
【0092】
CPU71は、ステップSP7では、対照励起光源61の駆動を停止させるとともに励起光源51を駆動し、ステップSP8に進む。CPU71は、ステップSP8では、取得対象のサンプル部位における対照マーカー及び蛍光マーカーの暗視野像を記録対象の暗視野部位像として取得し、ステップSP9に進む。
【0093】
CPU71は、ステップSP9では、励起光源51の駆動を停止させ、次のステップSP10に進む。CPU71は、ステップSP10では、撮像範囲ARを割り当てた全てのサンプル部位の暗視野部位像を取得したか否かを判定し、未取得となるサンプル部位が残っている場合、ステップSP5に戻る。
【0094】
一方、全てのサンプル部位の暗視野部位像を取得した場合、CPU71は、次のステップSP11に進んで、これら暗視野部位像を連結して暗視野部位連結像を生成し、ステップSP12に進む。
【0095】
CPU71は、ステップSP12では、ステップSP11で取得した暗視野部位連結像と、当該連結像の連結元である暗視野部位像とに関する暗視野像データを生成し、これを対応する明視野像データに関連付けて記憶部77に記憶した後、ステップSP13に進む。
【0096】
CPU71は、ステップSP13では、スライド収容器にスライドガラスSGが残っているか否かを判定し、残っている場合には、ステップSP1に戻って上述の処理を繰り返す。一方、CPU71は、スライド収容器におけるスライドガラスSGが未収用である場合には、この暗視野像取得処理手順を終了する。
【0097】
[1−7.効果等]
以上の構成において、この生体サンプル像取得装置1は、暗視野部位像を取得する場合、対照励起光源61を駆動し、取得対象のサンプル部位に対して対照専用励起光を照射する。そして生体サンプル像取得装置1は、対照専用励起光によって励起されるサンプル部位での対照マーカーの暗視野像におけるコントラストに基づいて、該生体サンプル部位に焦点を合わせる。
【0098】
また生体サンプル像取得装置1は、取得対象のサンプル部位の合焦が終了すると、対照励起光源61に代えて励起光源51を駆動し、取得対象のサンプル部位に対して励起光を照射する。そして生体サンプル像取得装置1は、励起光によって励起されるサンプル部位での蛍光マーカー及び対照マーカーの暗視野像を、記録対象とすべき暗視野部位像として取得する。
【0099】
対照マーカーは、細胞核をターゲットとするため、特定の遺伝子をターゲットとする蛍光マーカーに比べて生体サンプルSPLに占める量が格段に多く、生体サンプルをおぼろげながらも全体的に示す光を呈するものとなる。
【0100】
したがって生体サンプル像取得装置1は、蛍光マーカーを発光させることなく生体サンプルSPLにおける各サンプル部位に対して高精度で合焦することができ、この結果、記録対象とすべき各サンプル部位の暗視野部位像をそれぞれ取得することができる。
【0101】
ところで、励起光源51には、一般に、水銀ランプ、キセノンランプ又はメタルハライドランプが適用される。これらランプにおける波長のスペクトルが定まっていることもあり、エキサイトフィルター53,エミッションフィルタ55の透過率は、対照マーカーよりも蛍光マーカーが明るく観察されるよう調整されている。
【0102】
このため、励起光源51を用いて対照マーカーを観察しようとする場合には、蛍光マーカーを観察するときに比べて励起光源51での照射強度を強くする必要がある。したがってこの場合には、蛍光マーカー及び対照マーカー双方の退色が早まるのみならず生体サンプルSPLに対する負担が過大となってしまう。
【0103】
一方、励起光源51から照射される励起光のうち、対照マーカーだけ励起させる光のみをフィルタにより抽出する場合には、暗視野部位像に焦点を合わせるときと、暗視野部位像を取得するときとにおいてフィルタの交換が必須となる。したがってこの場合には、フィルタ数の増加により大型化する。またこの場合には、暗視野部位像の取得期間が従来よりも長期化することになるため現実的ではない。
【0104】
これに対し生体サンプル像取得装置1は、対照励起光源61から対照専用励起光を照射するものである。このためこの生体サンプル像取得装置1では、蛍光マーカー及び対照マーカー双方の退色を必要以上に早めることなく、励起光源51を用いて対照マーカーを観察する場合に比べて暗視野部位像をより高速に取得することができる。
【0105】
以上の構成によれば、対照専用励起光により励起される対照マーカーの暗視野像を用いて合焦するようにしたことにより、ターゲットに標識されるべき蛍光体の退色を早めず、かつ生体試料の負担を過大にさせることもなく合焦し得る生体サンプル像取得装置1が実現できる。
【0106】
<2.他の実施の形態>
上述の実施の形態では、生体サンプルSPLに対して、対物レンズ44に対向するサンプル面に対照専用励起光が照射された。しかしながら、対物レンズ44に対向するサンプル面に対して逆側のサンプル面に対照専用励起光を照射する態様が適用されてもよい。
【0107】
一例として図1との対応部分に同一符号を付した図12に示す。この図12の例では、暗視野撮像モードの場合、明視野光源41が配される所定の光源位置に、該明視野光源41に代えて対照励起光源61が配される。また光源位置と、反射ミラー42との間の光路上にコリメートレンズ62が配され、該光路上から明視野フィルタ43が退避される。対照励起光源61から照射される対照専用励起光は、コリメートレンズ62により平行光線とされ、反射ミラー42を介して、対物レンズ44に対向するサンプル面に対して逆側のサンプル面に導かれる。この図12の例は、図1の場合に比べてダイクロイックミラー63を省略できる。
【0108】
別例として図1との対応部分に同一符号を付した図13に示す。この図13の例では、対物レンズ44に対向するサンプル面に対して逆側のサンプル面に対して斜めから対照専用励起光が直接的に照射されるよう対照励起光源61と、コリメートレンズ62とが配される。この図13の例も、図12の例と同様に、図1の場合に比べてダイクロイックミラー63を省略できる。また図13の例は、図12の例のようにフィルタやレンズの移動を要することなく、生体サンプルSPLに対して直接的に対照専用励起光を照射可能な点で有用である。
【0109】
上述の実施の形態では、サンプル部位に対する合焦対象として、対照マーカーの暗視野部位像の一部(図8)が用いられた。この一部は、撮像範囲ARが割り当てられたサンプル部位それぞれに対して固定とされたが可変とするようにしてもよい。
【0110】
一般に、生体サンプルSPL(特に組織片)では、細胞が均一に存在するのではなく、細胞が密集する部分と、散在する部分とが存在する。密集部分では、真にターゲットとされる蛍光マーカーの存在確立が散在部分に比べて高いものであり、該密集部分に対応する対照マーカーの暗視野部位像の輝度は大きくなる。つまり、対照マーカーの暗視野部位像の密集部分が、着目すべき部分(合焦に用いるべき部分)となる。
【0111】
そこで、取得対象とされるサンプル部位での対照マーカーの暗視野部位像を撮像素子46から最初に読み出すときには、該暗視野部位像全体を読み出し、読み出した暗視野部位像全体から合焦に用いるべき一部を決定する。
【0112】
この決定手法は、例えば16×16画素又は8×8画素等のように暗視野部位像よりも小さい探索範囲での密集度が高い順序で、合焦に用いるべき所定数の部分を決定する。密集度は、例えば、探索範囲のうち閾値以上の輝度を呈する画素の数や、探索範囲における輝度ヒストグラムの尖度(直線性)を適用することができる。
【0113】
なお、輝度ヒストグラムは、探索範囲における輝度値の分布を、画素を度数としたものであるが、当該分布の広がりを表す分散を「1」として正規化するほうが好ましい。これは、撮像範囲ARが割り当てられた各サンプル部位の暗視野部位像それぞれを同じ尺度とすることができるからである。
【0114】
このようにすれば、撮像範囲ARが割り当てられたサンプル部位それぞれにおいて、蛍光マーカーの存在確立が高い部位で合焦が可能となる。
【0115】
上述の実施の形態では、対照マーカーとして、細胞核を対照とするDAPIが用いられた。しかしながら対照マーカーはこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、細胞組織(又はその細胞組織に特有となる分子)を対照とする対照マーカーが適用されてもよく、細胞質(又はその細胞質に特有となる分子)を対照とする対照マーカーが適用されてもよい。もちろんこれら例示以外を対照とする対照マーカーが適用されてもよい。
【0116】
なお、対照マーカーは上述の実施の形態では1種類であったが、2以上の種類を用いるようにしてもよい。このようにする場合、対照マーカーごとに専用となる励起光源を設ける、あるいは、ターゲットの蛍光体には未励起状態であるが各対照マーカーそれぞれを励起する1つの励起光源を設ければ、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0117】
また上述の実施の形態では、生体サンプルSPLにおけるターゲットとして遺伝子が適用された。しかしながら生体サンプルSPLにおけるターゲットはこの実施の形態に限定されるものではない。たとえば、細胞膜チャンネルなどの蛋白分子、糖蛋白分子又は糖鎖分子など、種々の分子をターゲットとしてこの実施の形態を適用することができる。
【0118】
また上述の実施の形態における合焦は、固定とされる対物レンズ44の光軸方向に可動ステージ31をZ軸方向(光軸方向)に移動させた。しかしながらこの実施の形態に代えて、可動ステージ31を固定とし、その可動ステージ31に対してZ軸方向(光軸方向)に対物レンズ44を移動させる形態が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、遺伝子実験、医薬の創製又は患者の経過観察などのバイオ産業上において利用することができる。
【符号の説明】
【0120】
1……生体サンプル像取得装置、10……顕微鏡、20……データ処理部、31……可動ステージ、32……スライドホルダー、41……明視野光源、42……反射ミラー、43……明視野フィルタ、44……対物レンズ、45……結像レンズ、46……撮像素子、51……励起光源、52,62……コリメータレンズ、53……エキサイトフィルター、54,63……ダイクロイックミラー、55……エミッションフィルタ、61……対照励起光源、71……CPU、72……ROM、73……RAM、74……操作入力部、75……インターフェイス、76……表示部、77……記憶部、81……スライドセット制御部、82……明視野像取得部、83,93……データ記録部、92……暗視野像取得部、SG……スライドガラス、SPL……生体サンプル。
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光像取得方法、蛍光像取得装置及び蛍光像取得プログラムに関し、例えば組織切片を観察する分野に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
病理学分野で用いられる生体試料は、一般に、スライドガラス等の支持体に固定され、所定の染色を施すことにより標本として作成される。
【0003】
病理診断では、組織切片に対してHE(Hematoxylin-Eosin)染色を施した標本又は塗沫細胞に対してパパニコロウ染色を施した標本を用いて、形態学の観点から悪性腫瘍の有無が1次的に判断される。また、悪性腫瘍又は悪性腫瘍に疑わしい部分が発見された場合、組織切片又は塗沫細胞に対して蛍光染色を施した標本を用いて、分子生物学の観点から悪性腫瘍の有無、種類又は進行度などが2次的に判断される。
【0004】
このような標本はその保管期間が長期間となると、生体試料の劣化や退色等が生じ、顕微鏡での生体試料の視認性が悪くなるものである。また標本は、作成された病院等の施設以外の施設で診断されることもあるが、該生体サンプルの受け渡しは一般に郵送とされ、一定の時間を要するものである。
【0005】
このような実情等に鑑み、生体試料を画像データとして保存する装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
ところで、生体試料全体を所定の倍率で拡大した像を得る場合、該像の全体を撮像面に結像することは困難であるため、一般には、生体試料を分割し、それら部位の拡大像を連結するといった手法が用いられる。この手法では、分割対象の試料部位ごとにステージを移動させて焦点を合わせる工程が必須となるため、それら部位の拡大像を連結するまでの期間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−222801公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、蛍光染色が施された試料部位の拡大像を連結する場合、当該連結するまでの期間が長くなることに起因して、ターゲットに標識されるべき蛍光体の退色が早まるのみならず生体試料に対する負担が過大となってしまう。
【0009】
一方、蛍光染色が施された試料は、未励起状態では無色透明であるため像として写らず、該像のコントラストに基づいて合焦させることが困難となる。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ターゲットに標識されるべき蛍光体の退色を早めず、かつ生体試料の負担を過大にさせることもなく合焦し得る蛍光像取得方法、蛍光像取得装置及び蛍光像取得プログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明は、蛍光像取得方法であって、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する照射ステップと、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる合焦ステップと、当該光に代えて、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する照射光変更ステップと、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得する取得ステップとを有する。
【0012】
また本発明は、蛍光像取得装置であって、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する第1の光源と、ターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する第2の光源と、生体サンプルの一部が撮像面に結像される程度の倍率となる対物レンズと、第1の光源を駆動させて、対物レンズを介して撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる合焦手段と、第1の光源の駆動を停止するとともに、第2の光源を駆動させて、対物レンズを介して撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得する取得手段とを有する。
【0013】
さらに本発明は、蛍光像取得プログラムであって、コンピュータに対して、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射すること、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせること、当該光に代えて、生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射すること、撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得することを実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、合焦対象暗視野像として取得するときには、ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体の励起光をサンプル部位に照射し、記録対象の暗視野像として取得するときには、ターゲットに標識されるべき蛍光体の励起光をサンプル部位に照射する。
【0015】
このため、ターゲットに標識されるべき蛍光体を発光させることなく、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体のサンプル部位での像を用いて合焦することができる。この結果、本発明は、ターゲットに標識されるべき蛍光体の退色を早めず、かつ生体試料の負担を過大にさせることもなく合焦することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】生体サンプル像取得装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】蛍光像を概略的に示す図である。
【図3】データ処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】明視野撮像モードを実行するCPUの機能的構成を示すブロック図である。
【図5】明視野全体像を示す写真である。
【図6】生体サンプルに対する撮像範囲の割り当ての説明に供する概略図である。
【図7】暗視野撮像モードを実行するCPUの機能的構成を示すブロック図である。
【図8】対照マーカーの暗視野部位像を示す写真である。
【図9】合焦対象として用いるべき像の一部の具体例を示す概略図である。
【図10】対照マーカー及び蛍光マーカの暗視野部位像を示す写真である。
【図11】暗視野像取得処理手順を示すフローチャートである。
【図12】他の実施の形態における対照励起光源の配置(1)を概略的に示す図である。
【図13】他の実施の形態における対照励起光源の配置(2)を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態について説明する。なお、説明は以下の順序とする。
<1.実施の形態>
[1−1.生体サンプル像取得装置の構成]
[1−2.顕微鏡の構成]
[1−3.データ処理部の構成]
[1−4.明視野撮像モードの具体的処理内容]
[1−5.暗視野撮像モードの具体的処理内容]
[1−6.暗視野撮像モードにおける像取得処理手順]
[1−7.効果等]
<2.他の実施の形態>
【0018】
<1.実施の形態>
[1−1.生体サンプル像取得装置の構成]
図1において、本一実施の形態による生体サンプル像取得装置1を示す。この生体サンプル像取得装置1は、顕微鏡10と、データ処理部20とを含む構成とされる。
【0019】
[1−2.顕微鏡の構成]
顕微鏡10は、ガラス板等のスライドSGが配される面(以下、これをスライド配置面とも呼ぶ)に対して平行方向及び直交方向(x軸、y軸及びz軸方向)にそれぞれ移動可能なステージ(以下、これを可動ステージとも呼ぶ)31を有する。このスライド配置面にはスライドホルダー32が設けられる。
【0020】
スライドホルダー32は、スライドSGがセットされる場合、セット場所として指定される位置(以下、これをスライドセット位置とも呼ぶ)に移動される。スライドセット位置では、スライド収容器(図示せず)に収容されるスライドSGが、スライドセット機構(図示せず)によって取り出されスライドホルダー32にセットされる。
【0021】
スライド収容器(図示せず)に収容されるスライドSGには、血液等の結合組織、上皮組織又はそれらの双方の組織などの組織切片又は塗抹細胞が、生体サンプルSPLとして所定の固定手法により固定され、必要に応じて染色される。
【0022】
この染色には、HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色、ギムザ染色又はパパニコロウ染色等に代表される一般染色のみならず、FISH(Fluorescence In-Situ Hybridization)や酵素抗体法等の蛍光染色が含まれる。
【0023】
蛍光染色では、一般に、プローブに付される蛍光標識体(以下、これを蛍光マーカーとも呼ぶ)のほかに、該プローブの蛍光マーカーと対比させるべき蛍光標識体(以下、これを対照マーカーとも呼ぶ)が用いられる。
【0024】
対照マーカーは、蛍光マーカーにおける励起波長とは異なる励起波長とされる。例えば、おおよそ365[nm]の励起波長でなり、DAPI(4’,6-diamidino-2-pheylindole)が慣用される。DAPIでは、細胞核が、蛍光マーカーのターゲットと対比すべきターゲット(以下、これを対照ターゲットとも呼ぶ)とされる。
【0025】
生体サンプルSPLが撮像される場合、鏡検場所として指定される位置(以下、これを鏡検位置とも呼ぶ)にスライドホルダー32が移動される。この場合、明視野撮像モード又は暗視野撮像モードが実行される。
【0026】
明視野撮像モードの場合、明視野光源41から、生体サンプルSPLに対する照明光が照射される。この照明光は、反射ミラー42により折り曲げられ、明視野フィルタ43を介して可視光帯域の光として、鏡検位置にある生体サンプルSPLに照射され、対物レンズ44に到達する。
【0027】
対物レンズ44は、生体サンプルSPL全体が含まれる像(以下、これを明視野全体像とも呼ぶ)として結像される程度の低倍率、若しくは、生体サンプルSPLにおける一部分の像(以下、これを明視野部位像とも呼ぶ)として結像される程度の高倍率とされる。
【0028】
顕微鏡10は、照明光を通して得られる生体サンプルSPLの像を、対物レンズ44と結像レンズ45とでそれぞれ拡大し、明視野全体像又は明視野部位像として撮像素子46の撮像面に結像する。
【0029】
このように顕微鏡10は、明視野撮像モードでは、生体サンプルSPLにおける全体又は部位の明視野像(明視野全体像又は明視野部位像)を取得することができるようになされている。
【0030】
なお、図1では、対物レンズ44と結像レンズ45との光路間にダイクロイックミラー54、エミッションフィルタ55が存在する。しかし明視野撮像モードの場合、明視野フィルタ43から入射される可視光帯域の光がこれらフィルタに吸収あるいは反射されないように、該ダイクロイックミラー54及びエミッションフィルタ55は、当該光路以外の位置に退避される。
【0031】
一方、暗視野撮像モードの場合、励起光源51から、プローブの蛍光マーカー及び対照マーカーの双方を励起する光(以下、これを励起光とも呼ぶ)が照射される。励起光が照射される際の対物レンズ44は、生体サンプルSPLにおける一部分の蛍光像(以下、これを暗視野部位像とも呼ぶ)として結像される程度の高倍率とされる。
【0032】
励起光源51から照射される励起光は、コリメータレンズ52によって平行光線とされ、エキサイトフィルター53によって励起光以外の光が除かれる。エキサイトフィルター53を透過する励起光は、ダイクロイックミラー54を反射し、対物レンズ44によって鏡検位置に集光される。
【0033】
鏡検位置に配される生体サンプルSPLのターゲット及び対比ターゲットにプローブが結合する場合、該プローブに付される蛍光マーカー及び対照マーカーが励起光により発光する。この発光は、対物レンズ44を介してダイクロイックミラー54を透過し、エミッションフィルタ55によって蛍光体の発光以外の光が吸収され、結像レンズ45に到達する。
【0034】
顕微鏡10は、この蛍光マーカー及び対照マーカーの発光を通して得られる像を、対物レンズ44と結像レンズ45とでそれぞれ拡大し、暗視野部位像として撮像素子46の撮像面に結像する。
【0035】
このように顕微鏡10は、暗視野撮像モードでは、サンプル部位の蛍光像(暗視野部位像)を取得することができるようになされている。
【0036】
なお、図1では、エキサイトフィルター53とダイクロイックミラー54との光路間にはダイクロイックミラー63が存在するが、該ダイクロイックミラー63ではエキサイトフィルター53を透過する励起光は透過される。
【0037】
ここで、生体サンプルSPLの蛍光像(暗視野部位像)を図2に一例として示す。この図2は、abbott社のHER−2DNAプローブキットのPathVysionと呼ばれる試薬を用いて、FISH法により乳腺組織を染色したものである。
【0038】
図2における矢印がさす部分は蛍光マーカーであり、具体的にはHER2蛋白質をコードするHER2/neu遺伝子に対するプローブに付される蛍光マーカーである。また図2における網状の密集部分は対照マーカーであり、HE染色における組織の外形とおおよそ一致する外形となる。
【0039】
ちなみに上記試薬には、HER2/neu遺伝子に対するプローブのほかに、17番染色体のセントロメア領域のアルファサテライトDNA配列に対するプローブの蛍光マーカーも含まれるが、便宜上、図2では省略されている。
【0040】
かかる構成に加えてこの顕微鏡10は、蛍光マーカーに対して未励起状態であり、対照マーカーを励起状態とする励起光(以下、これを対照専用励起光とも呼ぶ)を照射する光源(以下、これを対照励起光源とも呼ぶ)61を有する。
【0041】
この対照専用励起光は、生体サンプルSPLに対する暗視野部位像を取得する場合、その合焦過程において対照励起光源61から照射される。
【0042】
対照励起光源61から照射される対照専用励起光は、コリメータレンズ62によって平行光線とされ、ダイクロイックミラー63及びダイクロイックミラー54をそれぞれ反射し、対物レンズ44によって鏡検位置に集光される。
【0043】
鏡検位置に配される生体サンプルSPLの対比ターゲットにプローブが結合する場合、該プローブに付される対照マーカーが、対照専用励起光により発光する。この発光は、対物レンズ44を介してダイクロイックミラー54を透過し、エミッションフィルタ55によって蛍光体の発光以外の光が吸収され、結像レンズ45に到達する。
【0044】
顕微鏡10は、この対照マーカーの発光を通して得られる像を、対物レンズ44と結像レンズ45とでそれぞれ拡大し、暗視野部位像として撮像素子46の撮像面に結像する。
【0045】
データ処理部20は、この暗視野部位像を用いて、対応するサンプル部位に焦点が合うよう可動ステージ31を制御する。またデータ処理部20は、サンプル部位に焦点が合った場合、対照励起光源61に代えて励起光源51から励起光を照射させ、該励起光によって得られる暗視野部位像を保存する。
【0046】
このように生体サンプル像取得装置1は、対照専用励起光によって得られる暗視野部位像を合焦対象の暗視野部位像とし、励起光によって得られる暗視野部位像を保存対象の暗視野部位像として取得するようになされている。
【0047】
[1−3.データ処理部の構成]
次に、データ処理部20の構成について説明する。このデータ処理部20は、図3に示すように、制御を司るCPU(Central Processing Unit)71に対して各種ハードウェアを接続することにより構成される。
【0048】
具体的にはROM(Read Only Memory)72、CPU71のワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)73、ユーザの操作に応じた命令を入力する操作入力部74、インターフェイス部75、表示部76及び記憶部77がバス78を介して接続される。
【0049】
ROM72には、各種の処理を実行するためのプログラムが格納される。インターフェイス部75は、顕微鏡10(可動ステージ31、光源41,51,61、撮像素子46、対物レンズ44とエミッションフィルタ55の駆動系)と接続される。
【0050】
表示部76には、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ又はプラズマディスプレイ等が適用される。また記憶部77には、HD(Hard Disk)に代表される磁気ディスクもしくは半導体メモリ又は光ディスク等が適用される。USB(Universal Serial Bus)メモリやCF(Compact Flash)メモリ等のように可搬型メモリが適用されてもよい。
【0051】
CPU71は、ROM72に格納される複数のプログラムのうち、操作入力部74から与えられる命令に対応するプログラムをRAM73に展開し、該展開したプログラムにしたがって、表示部76及び記憶部77を適宜制御する。
【0052】
またCPU71は、展開したプログラムにしたがって、インターフェイス部75を介して顕微鏡10の各部を適宜制御するようになされている。
【0053】
[1−4.明視野撮像モードの具体的処理内容]
CPU71は、明視野撮像モードの実行命令を操作入力部24から受けた場合、当該撮像モードに対応するプログラムをRAM23に展開する。
【0054】
この場合、CPU71は、明視野撮像モードに対応するプログラムにしたがって、図4に示すように、スライドセット制御部81、明視野像取得部82及びデータ記録部83として機能する。
【0055】
スライドセット制御部81は、撮像モードに実行命令を受けた場合、明視野像取得部82又はスライドを交換すべき通知を受けた場合、可動ステージ31を駆動してスライドセット位置にスライドホルダー32を位置させる。
【0056】
またスライドセット制御部81は、スライドセット位置にスライドホルダー32を位置させた場合、所定の待機期間を経過した後に再駆動し、該スライドセット位置から鏡検位置にスライドホルダー32を位置させる。待機期間では、図1を用いて上述したように、スライド収容器に収容されるスライドSGが、スライドセット機構によってスライドホルダー32にセットされる。
【0057】
明視野像取得部82は、例えばスライドホルダー32が鏡検位置に位置された時点を契機として、ダイクロイックミラー54と結像レンズ45との間における光軸上に低倍率の対物レンズ44を配置させるとともに、明視野光源41を駆動させる。
【0058】
そして明視野取得部82は、撮像素子46に結像される明視野全体像のコントラストに基づいて生体サンプルSPLに焦点を合わせて、例えば図5に示すような明視野全体像を取得する。
【0059】
明視野像取得部82は、明視野全体像を取得した場合、光路上の所定位置に配置されている低倍率の対物レンズ44に代えて、高倍率とされる所定の対物レンズ44を光路上の所定位置に配置させる。
【0060】
そして明視野像取得部82は、明視野全体像から生体サンプルSPLの輪郭を検出する。この輪郭の検出には、例えば、生体サンプルSPLと他の領域とを区別する2値化処理を施した後に、生体サンプルSPLの外形を抽出する抽出処理を施す手法が適用される。
【0061】
明視野像取得部82は、明視野全体像における生体サンプルSPLの輪郭を検出すると、部位像を撮像すべき範囲(以下、これを撮像範囲とも呼ぶ)の大きさを決定し、図6に示すように、該撮像範囲ARを生体サンプルSPLに対して割り当てる。
【0062】
撮像範囲ARは、少なくとも対物レンズ44の倍率と、撮像素子46における撮像面のサイズとに基づいて決定され、生体サンプルSPLの輪郭の一部を含む又は輪郭内に含まれることを条件として割り当てられる。なお、この図6では、撮像範囲ARが重ならない態様となっているが、隣接する領域の一部が重なる態様であってもよい。
【0063】
明視野像取得部82は、明視野全体像における生体サンプルSPLに対して撮像範囲ARを割り当てると、生体サンプルSPLの各部位が撮像範囲ARとなるよう可動ステージ31を順次移動させて、当該撮像範囲ARにおける各部位での明視野部位像を取得する。
【0064】
そして明視野像取得部82は、各明視野部位像を連結することにより、当該連結像(以下、これを明視野部位連結像とも呼ぶ)を生成する。このとき明視野像取得部82は、スライドセット制御部81に対してスライドを交換すべき旨を通知するようになされている。
【0065】
データ記録部83は、明視野像取得部82によって明視野部位連結像が生成された場合、その生成過程で取得された明視野部位像及び明視野全体像と、該明視野部位連結像とに関するデータ(以下、これを明視野像データとも呼ぶ)を生成し、これを記憶部77に記録する。
【0066】
このときデータ記録部83は、明視野像取得部82が明視野全体像における生体サンプルSPLに対して割り当てた撮像範囲ARに関するデータ(以下、これを撮像範囲割当データとも呼ぶ)を生成し、これを明視野像データに関連付ける。
【0067】
さらにデータ記録部83は、この明視野像データに対して、生体サンプルSPLに関するデータ(以下、これをサンプルデータとも呼ぶ)も関連付けるようになされている。
【0068】
このサンプルデータは、例えば、生体サンプルSPLの採取者名、採取者性別、採取者年齢及び採取日付等といった情報である。また付加情報は、操作入力部74からの入力又はスライドガラスSGに付されたバーコードを読み取る読取部によって得られる。
【0069】
[1−5.暗視野撮像モードの具体的処理内容]
CPU71は、暗視野撮像モードの実行命令を操作入力部24から受けた場合、当該撮像モードに対応するプログラムをRAM23に展開する。
【0070】
この場合、CPU71は、暗視野撮像モードに対応するプログラムにしたがって、図4との対応部分に同一符号を付した図7に示すように、スライドセット制御部81、暗視野像取得部92及びデータ記録部93として機能する。
【0071】
暗視野像取得部92は、例えばスライドホルダー32が鏡検位置に位置された時点を契機として、ダイクロイックミラー54と結像レンズ45との間における光軸上に高倍率の対物レンズ44を配置させる。
【0072】
また暗視野像取得部92は、このときスライドホルダー32に配される生体サンプルSPLに関するサンプルデータを取得し、該サンプルデータに示される例えば採取者名及び採取日付と一致するサンプルデータを記憶部77から探索する。
【0073】
暗視野像取得部92は、記憶部77からサンプルデータが検出されない場合、その旨を例えば表示部76を介して通知する。
【0074】
一方、暗視野像取得部92は、記憶部77からサンプルデータが検出された場合、そのサンプルデータに関連付けられる撮像範囲割当データを記憶部77から読み出す。そして暗視野像取得部92は、現段階でスライドホルダー32に配される生体サンプルSPLに対して、明視野撮像モードでの生体サンプルSPLに対する割り当て状態と同じように、撮像範囲AR(図6)を割り当てる。
【0075】
したがって、生体サンプルSPLにおける蛍光体が未励起状態であっても、スライドホルダー32に固定されるスライドSDのうち生体サンプルSPL部分だけが、割当対象として正確に割り当てられる。
【0076】
暗視野像取得部92は、生体サンプルSPLに対して撮像範囲ARを割り当てると、その撮像範囲ARが割り当てられた各サンプル部位を所定の順序で取得対象として決定し、当該取得対象としたサンプル部位の像(暗視野部位像)を取得する。
【0077】
ここで、取得対象として決定した一のサンプル部位の像(暗視野部位像)の取得手法を具体的に説明する。すなわち、暗視野像取得部92は、生体サンプルSPLのうち、取得対象のサンプル部位が撮像範囲となるよう可動ステージ31をx軸又はy軸方向へ移動させた後、対照励起光源61を駆動して生体サンプルSPLに対照専用励起光を照射させる。
【0078】
この結果、撮像素子46には、対照専用励起光によって励起される対照マーカーのうち、取得対象のサンプル部位における対照マーカーの暗視野像(暗視野部位像)が結像される。なお、対照マーカーの暗視野部位像を図8に示す。
【0079】
暗視野像取得部92は、撮像素子46から、この暗視野部位像の一部を取得し、その一部のコントラストに基づいて取得対象のサンプル部位に対する焦点を合わせる。したがって、暗視野部位像全体のコントラストに基づいて合焦する場合に比べると合焦期間の高速化が図られる。
【0080】
なお、合焦対象として用いるべき暗視野部位像の一部は、例えば、図9(A)示すように所定間隔ラインごととしてもよく、図9(B)示すように中心画素及びその周囲の画素としてもよい。
【0081】
暗視野像取得部92は、取得対象のサンプル部位に対する合焦が終了すると、対照励起光源61に対する駆動を停止するとともに、励起光源51を駆動させる。この結果、撮像素子46には、対照励起光によって励起される対照マーカー及び蛍光マーカーのうち、例えば図10に示すように、取得対象のサンプル部位における対照マーカー及び蛍光マーカーの暗視野像(暗視野部位像)が結像される。
【0082】
暗視野像取得部92は、撮像素子46から、この暗視野部位像の全体を記録対象の暗視野部位像として取得する。
【0083】
このように暗視野像取得部92では、上述の取得手法によって、各サンプル部位に対する記録対象の暗視野部位像が所定の順序で取得される。
【0084】
暗視野像取得部92は、各サンプル部位に対する記録対象の暗視野部位像を取得した場合、これら暗視野部位像を連結することにより、当該連結像(以下、これを暗視野部位連結像とも呼ぶ)を生成する。なお、このとき暗視野像取得部92は、スライドセット制御部81に対してスライドを交換すべき旨を通知する。
【0085】
データ記録部93は、暗視野像取得部92によって各サンプル部位に対する記録対象の暗視野部位像が取得された場合、その生成過程で取得された暗視野部位像と、該暗視野部位連結像とに関するデータ(以下、これを暗視野像データとも呼ぶ)を生成する。
【0086】
そしてデータ記録部93は、この暗視野像データを、該暗視野像データの生成過程で暗視野像取得部92によって読み出された撮像範囲割当データが関連付けられている明野像データに関連付けた状態で記憶部77に記録する。
【0087】
[1−6.暗視野撮像モードにおける暗視野像取得処理手順]
次に、暗視野像取得処理手順を、図11に示すフローチャートを用いて説明する。
【0088】
CPU71は、撮像モードに実行命令を受けると、この暗視野像取得処理手順を開始し、ステップSP1に進んで、スライドセット位置にスライドホルダー32を位置させ、次のステップSP2に進む。
【0089】
CPU71は、ステップSP2では、所定の待機期間を経過後、スライドセット位置から鏡検位置にスライドホルダー32を位置させ、次のステップSP3に進む。CPU71は、ステップSP3では、ダイクロイックミラー54と結像レンズ45との間における光軸上に高倍率の対物レンズ44を配置させ、ステップSP4に進む。
【0090】
CPU71は、ステップSP4では、スライドホルダー32に配される生体サンプルSPLに対して、明視野撮像モードでの生体サンプルSPLに対する割り当て状態と同じように、撮像範囲AR(図6)を割り当て、ステップSP5に進む。
【0091】
CPU71は、ステップSP5では、撮像範囲ARが割り当てられたサンプル部位のうち、一のサンプル部位を取得対象として決定し、次のステップSP6に進む。CPU71は、ステップSP6では、対照励起光源61を駆動させ、取得対象のサンプル部位における対照マーカーの暗視野像(暗視野部位像)における一部のコントラストに基づいて、該取得対象のサンプル部位に焦点を合わせて、ステップSP7に進む。
【0092】
CPU71は、ステップSP7では、対照励起光源61の駆動を停止させるとともに励起光源51を駆動し、ステップSP8に進む。CPU71は、ステップSP8では、取得対象のサンプル部位における対照マーカー及び蛍光マーカーの暗視野像を記録対象の暗視野部位像として取得し、ステップSP9に進む。
【0093】
CPU71は、ステップSP9では、励起光源51の駆動を停止させ、次のステップSP10に進む。CPU71は、ステップSP10では、撮像範囲ARを割り当てた全てのサンプル部位の暗視野部位像を取得したか否かを判定し、未取得となるサンプル部位が残っている場合、ステップSP5に戻る。
【0094】
一方、全てのサンプル部位の暗視野部位像を取得した場合、CPU71は、次のステップSP11に進んで、これら暗視野部位像を連結して暗視野部位連結像を生成し、ステップSP12に進む。
【0095】
CPU71は、ステップSP12では、ステップSP11で取得した暗視野部位連結像と、当該連結像の連結元である暗視野部位像とに関する暗視野像データを生成し、これを対応する明視野像データに関連付けて記憶部77に記憶した後、ステップSP13に進む。
【0096】
CPU71は、ステップSP13では、スライド収容器にスライドガラスSGが残っているか否かを判定し、残っている場合には、ステップSP1に戻って上述の処理を繰り返す。一方、CPU71は、スライド収容器におけるスライドガラスSGが未収用である場合には、この暗視野像取得処理手順を終了する。
【0097】
[1−7.効果等]
以上の構成において、この生体サンプル像取得装置1は、暗視野部位像を取得する場合、対照励起光源61を駆動し、取得対象のサンプル部位に対して対照専用励起光を照射する。そして生体サンプル像取得装置1は、対照専用励起光によって励起されるサンプル部位での対照マーカーの暗視野像におけるコントラストに基づいて、該生体サンプル部位に焦点を合わせる。
【0098】
また生体サンプル像取得装置1は、取得対象のサンプル部位の合焦が終了すると、対照励起光源61に代えて励起光源51を駆動し、取得対象のサンプル部位に対して励起光を照射する。そして生体サンプル像取得装置1は、励起光によって励起されるサンプル部位での蛍光マーカー及び対照マーカーの暗視野像を、記録対象とすべき暗視野部位像として取得する。
【0099】
対照マーカーは、細胞核をターゲットとするため、特定の遺伝子をターゲットとする蛍光マーカーに比べて生体サンプルSPLに占める量が格段に多く、生体サンプルをおぼろげながらも全体的に示す光を呈するものとなる。
【0100】
したがって生体サンプル像取得装置1は、蛍光マーカーを発光させることなく生体サンプルSPLにおける各サンプル部位に対して高精度で合焦することができ、この結果、記録対象とすべき各サンプル部位の暗視野部位像をそれぞれ取得することができる。
【0101】
ところで、励起光源51には、一般に、水銀ランプ、キセノンランプ又はメタルハライドランプが適用される。これらランプにおける波長のスペクトルが定まっていることもあり、エキサイトフィルター53,エミッションフィルタ55の透過率は、対照マーカーよりも蛍光マーカーが明るく観察されるよう調整されている。
【0102】
このため、励起光源51を用いて対照マーカーを観察しようとする場合には、蛍光マーカーを観察するときに比べて励起光源51での照射強度を強くする必要がある。したがってこの場合には、蛍光マーカー及び対照マーカー双方の退色が早まるのみならず生体サンプルSPLに対する負担が過大となってしまう。
【0103】
一方、励起光源51から照射される励起光のうち、対照マーカーだけ励起させる光のみをフィルタにより抽出する場合には、暗視野部位像に焦点を合わせるときと、暗視野部位像を取得するときとにおいてフィルタの交換が必須となる。したがってこの場合には、フィルタ数の増加により大型化する。またこの場合には、暗視野部位像の取得期間が従来よりも長期化することになるため現実的ではない。
【0104】
これに対し生体サンプル像取得装置1は、対照励起光源61から対照専用励起光を照射するものである。このためこの生体サンプル像取得装置1では、蛍光マーカー及び対照マーカー双方の退色を必要以上に早めることなく、励起光源51を用いて対照マーカーを観察する場合に比べて暗視野部位像をより高速に取得することができる。
【0105】
以上の構成によれば、対照専用励起光により励起される対照マーカーの暗視野像を用いて合焦するようにしたことにより、ターゲットに標識されるべき蛍光体の退色を早めず、かつ生体試料の負担を過大にさせることもなく合焦し得る生体サンプル像取得装置1が実現できる。
【0106】
<2.他の実施の形態>
上述の実施の形態では、生体サンプルSPLに対して、対物レンズ44に対向するサンプル面に対照専用励起光が照射された。しかしながら、対物レンズ44に対向するサンプル面に対して逆側のサンプル面に対照専用励起光を照射する態様が適用されてもよい。
【0107】
一例として図1との対応部分に同一符号を付した図12に示す。この図12の例では、暗視野撮像モードの場合、明視野光源41が配される所定の光源位置に、該明視野光源41に代えて対照励起光源61が配される。また光源位置と、反射ミラー42との間の光路上にコリメートレンズ62が配され、該光路上から明視野フィルタ43が退避される。対照励起光源61から照射される対照専用励起光は、コリメートレンズ62により平行光線とされ、反射ミラー42を介して、対物レンズ44に対向するサンプル面に対して逆側のサンプル面に導かれる。この図12の例は、図1の場合に比べてダイクロイックミラー63を省略できる。
【0108】
別例として図1との対応部分に同一符号を付した図13に示す。この図13の例では、対物レンズ44に対向するサンプル面に対して逆側のサンプル面に対して斜めから対照専用励起光が直接的に照射されるよう対照励起光源61と、コリメートレンズ62とが配される。この図13の例も、図12の例と同様に、図1の場合に比べてダイクロイックミラー63を省略できる。また図13の例は、図12の例のようにフィルタやレンズの移動を要することなく、生体サンプルSPLに対して直接的に対照専用励起光を照射可能な点で有用である。
【0109】
上述の実施の形態では、サンプル部位に対する合焦対象として、対照マーカーの暗視野部位像の一部(図8)が用いられた。この一部は、撮像範囲ARが割り当てられたサンプル部位それぞれに対して固定とされたが可変とするようにしてもよい。
【0110】
一般に、生体サンプルSPL(特に組織片)では、細胞が均一に存在するのではなく、細胞が密集する部分と、散在する部分とが存在する。密集部分では、真にターゲットとされる蛍光マーカーの存在確立が散在部分に比べて高いものであり、該密集部分に対応する対照マーカーの暗視野部位像の輝度は大きくなる。つまり、対照マーカーの暗視野部位像の密集部分が、着目すべき部分(合焦に用いるべき部分)となる。
【0111】
そこで、取得対象とされるサンプル部位での対照マーカーの暗視野部位像を撮像素子46から最初に読み出すときには、該暗視野部位像全体を読み出し、読み出した暗視野部位像全体から合焦に用いるべき一部を決定する。
【0112】
この決定手法は、例えば16×16画素又は8×8画素等のように暗視野部位像よりも小さい探索範囲での密集度が高い順序で、合焦に用いるべき所定数の部分を決定する。密集度は、例えば、探索範囲のうち閾値以上の輝度を呈する画素の数や、探索範囲における輝度ヒストグラムの尖度(直線性)を適用することができる。
【0113】
なお、輝度ヒストグラムは、探索範囲における輝度値の分布を、画素を度数としたものであるが、当該分布の広がりを表す分散を「1」として正規化するほうが好ましい。これは、撮像範囲ARが割り当てられた各サンプル部位の暗視野部位像それぞれを同じ尺度とすることができるからである。
【0114】
このようにすれば、撮像範囲ARが割り当てられたサンプル部位それぞれにおいて、蛍光マーカーの存在確立が高い部位で合焦が可能となる。
【0115】
上述の実施の形態では、対照マーカーとして、細胞核を対照とするDAPIが用いられた。しかしながら対照マーカーはこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、細胞組織(又はその細胞組織に特有となる分子)を対照とする対照マーカーが適用されてもよく、細胞質(又はその細胞質に特有となる分子)を対照とする対照マーカーが適用されてもよい。もちろんこれら例示以外を対照とする対照マーカーが適用されてもよい。
【0116】
なお、対照マーカーは上述の実施の形態では1種類であったが、2以上の種類を用いるようにしてもよい。このようにする場合、対照マーカーごとに専用となる励起光源を設ける、あるいは、ターゲットの蛍光体には未励起状態であるが各対照マーカーそれぞれを励起する1つの励起光源を設ければ、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0117】
また上述の実施の形態では、生体サンプルSPLにおけるターゲットとして遺伝子が適用された。しかしながら生体サンプルSPLにおけるターゲットはこの実施の形態に限定されるものではない。たとえば、細胞膜チャンネルなどの蛋白分子、糖蛋白分子又は糖鎖分子など、種々の分子をターゲットとしてこの実施の形態を適用することができる。
【0118】
また上述の実施の形態における合焦は、固定とされる対物レンズ44の光軸方向に可動ステージ31をZ軸方向(光軸方向)に移動させた。しかしながらこの実施の形態に代えて、可動ステージ31を固定とし、その可動ステージ31に対してZ軸方向(光軸方向)に対物レンズ44を移動させる形態が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、遺伝子実験、医薬の創製又は患者の経過観察などのバイオ産業上において利用することができる。
【符号の説明】
【0120】
1……生体サンプル像取得装置、10……顕微鏡、20……データ処理部、31……可動ステージ、32……スライドホルダー、41……明視野光源、42……反射ミラー、43……明視野フィルタ、44……対物レンズ、45……結像レンズ、46……撮像素子、51……励起光源、52,62……コリメータレンズ、53……エキサイトフィルター、54,63……ダイクロイックミラー、55……エミッションフィルタ、61……対照励起光源、71……CPU、72……ROM、73……RAM、74……操作入力部、75……インターフェイス、76……表示部、77……記憶部、81……スライドセット制御部、82……明視野像取得部、83,93……データ記録部、92……暗視野像取得部、SG……スライドガラス、SPL……生体サンプル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する照射ステップと、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる合焦ステップと、
上記光に代えて、上記生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する照射光変更ステップと、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得する取得ステップと
を有する蛍光像取得方法。
【請求項2】
上記生体サンプルは組織片でなり、
上記組織片の組織と同組織でなり、該組織片とは異なる他組織片の全体の明視野像を取得する取得ステップと、
上記明視野像を用いて、上記組織片に対する撮像範囲を割り当てる割当ステップと
を有し、
上記撮像範囲が割り当てられた各組織片部位それぞれに、上記合焦ステップ、上記照射光変更ステップ及び上記取得ステップがある
請求項1に記載の蛍光像取得方法。
【請求項3】
上記合焦ステップでは、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の一部の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる
請求項1又は請求項2に記載の蛍光像取得方法。
【請求項4】
上記生体サンプルに対する撮像範囲を割り当てる割当ステップを有し、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像の一部は、上記撮像範囲が割り当てられた生体サンプル部位ごとに可変される
請求項1に記載の蛍光像取得方法。
【請求項5】
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像の一部は、該像よりも小さい探索範囲での密集度に基づいて決定される
請求項4に記載の蛍光像取得方法。
【請求項6】
生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する第1の光源と、
上記ターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する第2の光源と、
上記生体サンプルの一部が撮像面に結像される程度の倍率となる対物レンズと、
上記第1の光源を駆動させて、上記対物レンズを介して撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる合焦手段と、
上記第1の光源の駆動を停止するとともに、上記第2の光源を駆動させて、上記対物レンズを介して撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得する取得手段と
を有する蛍光像取得装置。
【請求項7】
コンピュータに対して、
生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射すること、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせること、
上記光に代えて、上記生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射すること、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得すること
を実行させる蛍光像取得プログラム。
【請求項1】
生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する照射ステップと、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる合焦ステップと、
上記光に代えて、上記生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する照射光変更ステップと、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得する取得ステップと
を有する蛍光像取得方法。
【請求項2】
上記生体サンプルは組織片でなり、
上記組織片の組織と同組織でなり、該組織片とは異なる他組織片の全体の明視野像を取得する取得ステップと、
上記明視野像を用いて、上記組織片に対する撮像範囲を割り当てる割当ステップと
を有し、
上記撮像範囲が割り当てられた各組織片部位それぞれに、上記合焦ステップ、上記照射光変更ステップ及び上記取得ステップがある
請求項1に記載の蛍光像取得方法。
【請求項3】
上記合焦ステップでは、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の一部の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる
請求項1又は請求項2に記載の蛍光像取得方法。
【請求項4】
上記生体サンプルに対する撮像範囲を割り当てる割当ステップを有し、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像の一部は、上記撮像範囲が割り当てられた生体サンプル部位ごとに可変される
請求項1に記載の蛍光像取得方法。
【請求項5】
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像の一部は、該像よりも小さい探索範囲での密集度に基づいて決定される
請求項4に記載の蛍光像取得方法。
【請求項6】
生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する第1の光源と、
上記ターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射する第2の光源と、
上記生体サンプルの一部が撮像面に結像される程度の倍率となる対物レンズと、
上記第1の光源を駆動させて、上記対物レンズを介して撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせる合焦手段と、
上記第1の光源の駆動を停止するとともに、上記第2の光源を駆動させて、上記対物レンズを介して撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得する取得手段と
を有する蛍光像取得装置。
【請求項7】
コンピュータに対して、
生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体に対して未励起状態であり、該ターゲットよりも占有量の高い対照に標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射すること、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像を用いて、該生体サンプル部位に対して焦点を合わせること、
上記光に代えて、上記生体サンプルのターゲットに標識されるべき蛍光体を励起状態とする光を照射すること、
上記撮像面に結像される生体サンプル部位の像を、記録対象とすべき暗視野像として取得すること
を実行させる蛍光像取得プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図8】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図8】
【図10】
【公開番号】特開2011−53361(P2011−53361A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200890(P2009−200890)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.COMPACTFLASH
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.COMPACTFLASH
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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