説明

蛍光標識スフィンゴシン

本発明は、標識スフィンゴシンの使用による、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性を測定する方法(アッセイ)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスフィンゴ脂質経路に包含されるスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼのような酵素の活性を測定するための方法(アッセイ)に使用するための、標識スフィンゴシン、例えば蛍光標識スフィンゴシンに関する。
【0002】
スフィンゴシン−1−ホスフェート(SPP)は、細胞内および細胞外作用の両方を有する重要なシグナル伝達分子である(例えばBaumruker T. et al., Semin. Immunol. 2002, 14, 57-63参照)。SPPは、スフィンゴシン(SP)から、スフィンゴシンキナーゼ(SPHK)により、ホスフェート源、例えばアデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)の存在下、形成される。SPおよびSPPの両方の機能および細胞下局在の試験のために、例えば、SP/SPP比の決定による、SPHKの生物活性の決定が必須である。2位のアミノ基でアシル化されているスフィンゴシンは、セラミドキナーゼにより認識され、そしてホスフェート源、例えばアデノシン三リン酸(ATP)またはグアノシン三リン酸(GTP)の存在下、これらのスフィンゴシンはリン酸化される。
【0003】
我々は、容易に行うことができ、かつ効率的であり得る、サンプル中の、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼまたは脂質ホスフェートホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性を測定する方法を驚くべきことに発見した。
【0004】
一つの局面において、本発明は、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスフェートホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性がサンプルに存在するかしないかを測定するための、または該活性の程度を測定するための、標識スフィンゴシンまたは標識スフィンゴシンホスフェートの使用を提供する。
【0005】
他の局面において、本発明は、
a. 適当な培養培地に含まれる生存細胞を、酵素産物が形成できるように予定された時間標識スフィンゴシンと接触させ、
b. 工程a.で形成された酵素産物を分離し、そして
c. 形成された酵素産物の量を測定する
工程を含む、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスフェートホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性がサンプルに存在するかしないかを測定するための、または該活性の程度を測定するための方法を提供する。
【0006】
工程b.で形成された酵素産物の分離は、適当に、例えば工程a.で得られた混合物に、水性緩衝液と、水と組み合わせて2相を形成できる有機溶媒を添加し、例えば抽出後、このようにして得た相を分離することにより、行うことができる。
【0007】
スフィンゴシンキナーゼ、スフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスフェートホスファターゼから成る群から選択される酵素を取り込む能力を有する全ての細胞系を本発明の方法で使用できる。好ましくはヒト細胞、例えばヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のような、例えばヒト内皮細胞である。
【0008】
細胞を、適当な培地、例えばヒト細胞、例えばHUVECを含むヒト内皮細胞の培養に適した培地中の生存細胞として使用する。
記載の細胞ベースのアッセイで使用する標識スフィンゴシンは、本明細書に記載の通りの式Iの化合物である。
【0009】
スフィンゴシンキナーゼ活性の測定のために、使用する標識スフィンゴシンはSP、すなわち非リン酸化スフィンゴシンであり、一方、スフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび/または脂質ホスフェートホスファターゼ活性の測定のために、使用する標識スフィンゴシンはSPP、すなわち1−ホスフェート−スフィンゴシンである。
【0010】
さらなる局面において、本発明は、
A. 標識非リン酸化スフィンゴシンと
−ホスフェート源、および
−所望によりスフィンゴシンキナーゼを含むサンプルを、
酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
B. 工程A.の混合物に水性緩衝液と、水と組み合わせて2相を形成できる有機溶媒を添加し、
C. 工程B.で得られた相を分離し、
D. 工程C.で得られた水性相中の酵素産物の量を測定する
工程を含む、スフィンゴシンキナーゼの活性がサンプルに存在するかしないかを測定するための、または該活性の程度を測定するための方法を提供する。
【0011】
本明細書で使用するスフィンゴシンは、天然に存在するスフィンゴシンおよびスフィンゴシンホスフェート、ならびに化学的に修飾され、かつ天然スフィンゴシンまたはスフィンゴシンホスフェートと化学的に異なるが、まだスフィンゴシンキナーゼ、または、各々スフィンゴシンホスフェートホスファターゼまたは脂質ホスフェートホスファターゼから成る群から選択される酵素により基質として認識される、スフィンゴシンおよびスフィンゴシンホスフェートを含む。
【0012】
化学的に修飾されたスフィンゴシンおよびスフィンゴシンホスフェートは、例えば酵素反応速度または溶解度のような様々なパラメータに関して最適化でき、そしてSP、SPPおよびSPHKの研究における価値のあるツールであり得、そして、慣用のまたは本明細書に記載の方法に従い、例えば、準じて製造できる。
【0013】
本発明の方法で有用な標識スフィンゴシンは、例えば式
【化1】

〔式中、
はHまたは(C1−4)アルキルであり、
はH、OHまたはオキソ、例えばHまたはOHであり、
XはHまたは(HO)POであり、
A−D、E−GおよびL−Mは、互いに独立してCH−CH、CH=CH、C≡C、
例えば、式
【化2】

の基を含むCH−フェニル、フェニル−CH、CH−CH−フェニル;
CH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、NH−CH、N((C1−4)アルキル)−CH、O−CH、CH−O、
例えば、式
【化3】

の基を含むフェニル−O、O−フェニル、CH−フェニル−O;
O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、SO−NH、N((C1−4)アルキル)−SOの基であるか、またはA−D、E−GおよびL−Mの中の一つの基が存在せず、
mは、0〜12から選択される数字であり、
nは、0〜12から選択される数字であり、
m+nは、0〜14から選択される数字であり、
基DYEは、式Iの化合物において物理的手段により選択的に検出可能な基である。
ただし、E−GおよびL−Mの少なくとも一方は、CH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、CH−O、フェニル−O、O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、N((C1−4)アルキル)−SOから成る群から選択される。〕
の化合物を含む。
【0014】
他の局面において、本発明は、式
【化4】

〔式中、
はHまたは(C1−4)アルキルであり、
はH、OHまたはオキソ、例えばHまたはOHであり、
XはHまたは(HO)POであり、
A−D、E−GおよびL−Mは、互いに独立して
CH−CH、CH=CH、C≡C、
例えば、式
【化5】

の基を含むCH−フェニル、フェニル−CH、CH−CH−フェニル;
CH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、NH−CH、N((C1−4)アルキル)−CH、O−CH、CH−O、
例えば、式
【化6】

の基を含むフェニル−O、O−フェニル、CH−フェニル−O;
O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、SO−NH、N((C1−4)アルキル)−SOの基であるか、またはA−D、E−GおよびL−Mの中の一つの基が存在せず、
mは、0〜12から選択される数字であり、
nは、0〜12から選択される数字であり、
そしてm+nは、0〜14から選択される数字であり、
基DYEは、式Iの化合物において物理的手段により選択的に検出可能な基である。
ただし、
−E−GおよびL−Mの少なくとも一方はCH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、CH−O、フェニル−O、O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、N((C1−4)アルキル)−SOから成る群から選択され、そして
−式
【化7】

(式中、Xは上記で定義の通りである)
の化合物を除く。〕
の化合物を提供する。
【0015】
本発明の方法において、好ましくは
−スフィンゴシンキナーゼ活性の測定のために、使用する標識スフィンゴシンは、XがHである式Iの化合物であり、
−スフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび/または脂質ホスフェートホスファターゼ活性の測定のために、使用する標識スフィンゴシンは、Xが(HO)POである式Iの化合物である。
【0016】
本明細書で他に定義しない限り、
−アシルはアルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロシクリルカルボニルを含み、
−アルキルは(C1−4)アルキルを含み、
−シクロアルキルは(C3−8)シクロアルキルを含み、
−アリールは(C6−18)アリール、例えばフェニル、ナフチルを含み、
−ヘテロシクリルは、5または6環員と、N、S、Oから成る群から選択される1個から4個のヘテロ原子を有するヘテロ環式環(系)を含む。
【0017】
本発明の方法で使用する標識スフィンゴシンは、物理的手段により選択的に検出可能な基、例えば蛍光基、例えば蛍光色素に由来する基で標識された基のような、蛍光手段により選択的に検出可能な基で標識されたスフィンゴシンを含む。例えば基DYEは、例えばピレニル、ダンシル、ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾリル(=NBD)、Cy5基、bodipy基、例えばピレニル、ダンシル、ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾリル(=NBD)を含む、慣用の通りの蛍光基のような蛍光基を含む。基DYEは、好ましくは
−ピレニル、
−ダンシル、
−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾリル(=NBD−イル)である。
【0018】
他の局面において、本発明は、R、R、X、A−D、m、E−G、n、L−Mが上記で定義の通りであり、そして基DYEがピレニルまたはダンシルである、
式Iの化合物を提供する。
【0019】
基DYEは、式Iの化合物中で化学的に結合しており、その化学構造を物理的手段で選択的に検出し得る基を有する分子に由来する。該選択的検出性は、式Iの化合物において残る。例えば、蛍光基を含む分子が、式Iの化合物に化学的に結合し、その化学構造において蛍光基を有する分子に揺らし、その蛍光基はその蛍光特性を式Iの化合物において保持する。
【0020】
ピレンは、式
【化8】

の化合物であり、ピレン−2−イルは式
【化9】

の基である。
【0021】
ダンシルは式
【化10】

の基である。
【0022】
NBDは、式
【化11】

の基であり;ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルは式
【化12】

の基である。
【0023】
bodipyフルオロフォアの基本化学構造は、式
【化13】

のものである。
【0024】
Cy5は、式
【化14】

のシアニン−5.18分子を含む。
【0025】
ピレニル、ダンシル、ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾリル(=NBD)、Cy5基およびbodipy基は、上記の通りの対応する基本化学構造を有する蛍光基を含み、また、該構造の化学的修飾を有する蛍光基も含む。
【0026】
他の局面において、本発明は
−式
【化15】

の化合物
−式
【化16】

の化合物
−式
【化17】

の化合物
〔式中、R、R、X、A−D、E−G、L−M、m、nおよび基DYEは上記で定義の通りである。ただし、
−E−GおよびL−Mの少なくとも一方はCH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、CH−O、フェニル−O、O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、N((C1−4)アルキル)−SOから成る群から選択され、そして
−式
【化18】

(式中、Xは上記で定義の通りである)
の化合物を除く。〕
を提供する。
【0027】
他の局面において、本発明は、
−式
【化19】

の化合物
−式
【化20】

〔式中、
、R、X、E−G、L−M、n、mおよび基DYEは上記で定義の通りである。
ただし、E−GおよびL−Mの少なくとも一方はCH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、CH−O、フェニル−O、O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、N((C1−4)アルキル)−SOから成る群から選択される。〕
を提供する。
【0028】
式Iの化合物は、式I、I、I、IおよびIの化合物を含む。
本発明のスフィンゴシンは、式Iの化合物(例えばおよび式IP1およびIP2の化合物)を含む。
【0029】
式Iの化合物の好ましい局面において
−RはHまたはメチルであり、
−RはHまたはOHであり、
−XはHまたは(HO)POであり、
−A−Dは存在し、CH=CH、CO−NH、O−CHまたは式
【化21】

の基であるか;またはA−Dは存在せず、
−E−GはO−CO、CH−CH、NH−CO、または式
【化22】

の基であり;
−L−MはCH−CH、CH−NH、O−CH、O−CO、NH−CO、NH−SOであり、
−mは、0〜12、例えば0〜10から選択される数字であり、
−nは、0〜12、例えば0〜8から選択される数字であり、
−m+nは、0〜14、例えば0〜11から選択される数字であり、
基DYEは、ピレニル、ダンシルおよびニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−イルから成る群から選択される基である。
【0030】
ただし、
−E−GおよびL−Mの少なくとも一方は、CH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、CH−O、フェニル−O、O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、N((C1−4)アルキル)−SOから成る群から選択され、そして
−式
【化23】

(式中、Xは上記で定義の通りである)
の化合物を除く。
【0031】
さらなる局面において、本発明は、
がHであり、
がHまたはOHであり、
XがHまたは(HO)PO、例えばHであり、
A−Dが存在し、かつCH=CH、CO−NHまたはO−CHであるか、またはA−Dが存在せず、
E−GがCH−CH、O−CO、NH−COまたは式
【化24】

の基であり、
L−MがCH−CH、O−CO、NH−CO、O−CHまたはNH−SOであり、
mが0〜10から選択される数字であり、
nが0〜7から選択される数字であり、
m+nが0〜10から選択される数字であり、そして
基DYEがピレニルである;
ただし、L−MがCH−CHであるとき、E−GはO−COまたはNH−COである、
式Iの化合物を提供する。
【0032】
さらなる局面において本発明は、
がHまたはメチルであり、
がHまたはOHであり、
XがHまたは(HO)PO、例えばHであり、
A−DがCH=CHまたはO−CHであり、
E−GがCH−CHであり、
L−MがCH−NHであり、
mが0〜7から選択される数字であり、
nが0であり、
m+nが5〜10から選択される数字、例えば7であり、そして
基DYEがダンシルである、
式Iの化合物を提供する。
【0033】
さらなる局面において本発明は、
がHまたはメチルであり、
がHまたはOHであり、
XがHまたは(HO)POであり、
A−DがCH=CH、CO−NH、O−CHまたは式
【化25】

の基であり、
E−GがCH−CHであり、
L−MがCH−NHであり、
mが3、4、5、7または8の数字であり、
nが0または1から選択される数字であり、
m+nが3〜8から選択される数字であり、そして
基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−イルである、
式Iの化合物を提供する。
【0034】
他の局面において、本発明は、特記されない限りXがHであり、そして
−RがHであり、RがOHであり、A−DがCH=CHであり、mが3であり、E−GがO−COであり、nが1であり、L−MがCH−CHであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−RがHであり、RがOHであり、A−DがCH=CHであり、mが3であり、E−GがO−COであり、nが3であり、L−MがCH−CHであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−RがHであり、RがOHであり、A−DがCH=CHであり、mが3であり、E−GがO−COであり、nが7であり、L−MがCH−CHであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−RがHであり、RがOHであり、A−DがCH=CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが8であり、L−MがO−COであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−RがHであり、RがOHであり、A−DがCH=CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが8であり、L−MがNH−COであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−RがHであり、RがOHであり、A−DがCH=CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが8であり、L−MがNH−SOであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
【0035】
−RがHであり、RがOHであり、A−DがCH=CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが7であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがダンシルであるか、
−RおよびRがHであり、A−DがCO−NHであり、mが6であり、E−GがO−COであり、nが1であり、L−MがCH−CHであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−RおよびRがHであり、A−DがCO−NHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが8であり、L−MがNH−COであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−RおよびRがHであり、A−DがCO−NHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが8であり、L−MがNH−SOであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−RおよびRがHであり、A−DがCO−NHであり、mが10であり、E−GがNH−COであり、nが1であり、L−MがCH−CHであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−RおよびRがHであり、A−DがCO−NHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが7であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルであるか、
−Rがメチルであり、RがHであり、A−Dが存在せず、E−Gが式
【化26】

の基であり、mおよびnが0であり、L−MがO−CHであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
【0036】
−RおよびRがHであり、A−DがO−CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが7であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルであるか、
−Rがメチルであり、RがHであり、A−DがO−CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが7であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルであるか、
−Rがメチルであり、RがHであり、A−DがO−CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが7であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがダンシルであるか、
−Rがメチルであり、RがHであり、A−DがO−CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが8であり、L−MがNH−COであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−RおよびRがHであり、A−DがO−CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが8であり、L−MがNH−COであり、そして基DYEがピレン−2−イルであるか、
−Rがメチルであり、RがHであり、A−Dが式
【化27】

の基であり、E−GがCH−CHであり、m+nが5であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルであるか、
【0037】
−Rがメチルであり、RがHであり、A−Dが式
【化28】

の基であり、E−GがCH−CHであり、m+nが8であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルであるか、
−Rがメチルであり、RがHであり、A−Dが式
【化29】

の基であり、E−GがCH−CHであり、m+nが3であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルであるか、
−Rがメチルであり、RがHであり、Xが(OH)POであり、A−Dが式
【化30】

の基であり、E−GがCH−CHであり、m+nが8であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルであるか、
−RおよびRがHであり、Xが(OH)POであり、A−DがO−CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが7であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルであるか、
−RがHであり、RがOHであり、A−DがCH=CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが7であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルであるか、
−RがHであり、RがOHであり、Xが(OH)PO、A−DがCH=CHであり、E−GがCH−CHであり、m+nが7であり、L−MがCH−NHであり、そして基DYEがニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−7−イルである
式Iの化合物を提供する。
【0038】
本発明により提供される化合物は、以後“本発明の(に従う)化合物(群)”と呼ぶ。式Iの化合物は、式I、I、I、IおよびIの化合物を含む。標識スフィンゴシン、例えば本発明の化合物は、全ての形の、例えば遊離形、塩の形の、溶媒和物のおよび、所望により存在するとき溶媒和物の形である塩の形の化合物を含む。
【0039】
他の局面において、本発明は、R、R、X、A−D、m、E−G、n、L−Mおよび基DYEが上記で定義の通りであり、両方のただし書きを伴う、塩の形の式Iの化合物を提供する。
【0040】
標識スフィンゴシン、例えば本発明の化合物の塩は、金属塩および酸付加塩を含む。金属塩は、例えばアルカリまたはアルカリ土類塩;例えばカリウム、ナトリウム;式Iの化合物と酸、例えばフマル酸水素、フマル酸、ナフタリン−1,5−スルホン酸、塩酸、二塩塩素酸(deuterochloric acid)との塩を含む、酸付加塩;好ましくは塩酸を含む。
【0041】
遊離形の本発明の化合物は、対応する塩の化形の化合物に変換でき;そして逆も可能である。遊離形または塩の形のおよび溶媒和物形の本発明の化合物は、遊離形または非溶媒和形の塩の形の対応する化合物に変換でき;そして逆も可能である。
【0042】
本発明の化合物は、異性体およびそれらの混合物;例えば光学異性体、ジアステレオ異性体、cis/trans配座異性体の形で存在し得る。本発明の化合物は、例えば不斉炭素原子を含み得、故にエナンチオマーまたはジアステレオ異性体およびそれらの混合物、例えばラセミ体の形で存在し得る。全ての不斉炭素原子は(R)−、(S)−または(R,S)−立体配置、好ましくは(R)−または(S)−立体配置で存在し得る。例えば、本発明の化合物において、Rが結合している炭素原子およびRが結合している炭素原子(Rが水素以外であるとき)は、両方とも不斉炭素原子である;不斉炭素原子に結合している基は、(R)−、(S)−または(R,S)−立体配置であり得る。例えば本発明の化合物は二重結合を含み得、このような二重結合の水素原子または基は、故にcis−またはtrans−コンホメーションであり得る。
【0043】
異性体混合物は、純粋異性体を得るのに適当な、慣用法に、例えば従って、例えば準じて分離し得る。本発明は、全ての異性体形および全ての異性体混合物の本発明の化合物を含む。
【0044】
本発明はまた、互変体が存在できるとき、式Iの化合物の互変体も含む。
【0045】
式I、I、I、IC、およびIの化合物において、各々の単独で定義の置換基が、例えば、定義の他の置換基と無関係に、好ましい置換基であり得る。
【0046】
本発明により提供される方法におけるホスフェート源は、自然環境に存在するホスフェート源、例えばATPまたはGTP、好ましくはATPを含む。
【0047】
本発明により提供される工程a.からc.、または、AからDを各々含む方法におけるサンプルは、スフィンゴシンキナーゼまたはスフィンゴシンホスフェートホスファターゼの活性を測定したいと望む全てのサンプルを含み、例えばインビボおよびインビトロ研究由来のサンプル、例えば、例えば細胞融解物、組織を含む細胞を含むサンプル、または酵母、哺乳類、動物、鳥類、魚類および植物由来の漿液;インビトロサンプル、例えば比較理由のためにキナーゼ活性を含まない、適当な純度の試験サンプルを含む。スフィンゴシンホスフェートホスファターゼの測定のために、インビボサンプルを使用する。このようなサンプルの準備は慣用の方法に、例えば、従って、例えば準じて行い得る。
【0048】
酵素活性がサンプルに存在しないとき、本発明の方法を使用したとき、活性は検出されないであろう。キナーゼ/ホスファターゼ活性がサンプルに包含されるとき、活性の程度を、本発明の方法に使用により測定できる。
【0049】
本発明の方法におけるスフィンゴシンキナーゼ活性は、全てのスフィンゴシンキナーゼ、例えばスフィンゴシンキナーゼ−1およびスフィンゴシンキナーゼ−2の活性を含む。本発明の方法におけるスフィンゴシンホスフェートホスファターゼ活性は、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスフェートホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に包含される全てのスフィンゴシンホスファターゼを含む。
【0050】
本発明により提供される方法において酵素産物の形成に必要な時間は研究において望まれる結果に依存する。このような時間は各個々のサンプルについての試験サンプルで予め決定し得る。
【0051】
本発明により提供される方法における形成される酵素産物は、スフィンゴシン(shingosine)キナーゼの場合、リン酸化蛍光標識スフィンゴシン、例えば式Iの化合物(式中、残基は上記で定義の通りであり、対応するスフィンゴシンの1位のヒドロキシ基はリン酸化されており、すなわち1位のヒドロキシ基は(HO)PO−O−基で置換されている)のような、酵素的、標識産物を含むホスフェートであるか;またはスフィンゴシンホスフェートホスファターゼ(uehosphatase)の場合、酵素的標識非リン酸化産物、例えば式Iの化合物(式中、残基は上記で定義の通りであり、対応するスフィンゴシンの1位のヒドロキシ基は遊離であり、非リン酸化である)である。
【0052】
本発明により提供される方法において水との組み合わせで2相を形成できる有機溶媒は
−水との組み合わせで2相を形成でき、そして
−該有機溶媒および水の混合物中の非反応標識スフィンゴシンを溶解できる。
【0053】
このような有機溶媒は、例えばハロゲン化炭化水素、例えばCHCl、CHCl、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル;炭化水素、例えばn−ブタン、n−ペンタン;酢酸アルキル、例えば酢酸(C2−5)アルキル、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルを含み、例えば、本明細書に具体的に記載したような個々の有機溶媒の、例えば混合物を含む。
【0054】
本発明により提供される方法における水性緩衝液は、形成した酵素産物が、上記の有機溶媒と水性緩衝液の混合物の水性相に溶解できるpH、例えば約8.5のような例えば7.0〜10のpHを有する緩衝液であり、例えばKHPO含有緩衝液を含む。このような水性緩衝液は既知であるか、または慣用の通り得ることができる。
【0055】
本発明により提供される方法において形成された2相の分離は、適当な慣用の方法に、例えば、従って、例えば準じて、例えば工程b、または工程B.で各々得られた水性相の、有機溶媒での抽出および各々工程cまたは工程C.で得れた相の分離により行うことができる。
【0056】
本発明により提供される方法において形成される酵素産物の量は適当に、慣用の方法に、例えば、従って、例えば準じて、例えば適当な波長の蛍光手段により、例えば相分離互に得た水性相で測定できる。
【0057】
本発明の方法は、スフィンゴ脂質経路に包含されるスフィンゴシンキナーゼまたはホスファターゼの活性を調節する薬剤の同定に有用であり得る。
【0058】
他の局面において、本発明は、
a. 標識非リン酸化スフィンゴシンと
−ホスフェート源、および
−スフィンゴシンキナーゼを、
a1. 候補化合物の非存在下、および
a2. 候補化合物の存在下、
酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
b. 工程a1および工程a2の混合物に水性緩衝液と、水と組み合わせて2相を形成できる有機溶媒を添加し、
c. 工程a1.およびa2.で形成された酵素産物を、非反応標識スフィンゴシンから、例えば本発明の方法において定義された通りの工程b.およびc.に従い分離し、
d. 工程a1.および工程a2で得られた酵素産物の量を、例えば蛍光手段により検出し、そして工程a1.および工程a2.の酵素産物の量に差があるか否かを測定し、
e. 工程dで決定した通りにスフィンゴシンキナーゼの活性を調節する薬剤を選択する
工程を含む、スフィンゴシンキナーゼの活性を調節する薬剤を同定する方法を提供する。
【0059】
他の局面において、本発明は、
A. 標識リン酸化スフィンゴシンと、適当な培地に含まれる生存細胞を、
A1. 候補化合物の非存在下、および
A2. 候補化合物の存在下、
酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
B. 工程A1.およびA2.で形成された酵素産物を、非反応標識リン酸化スフィンゴシンから分離し、
C. 工程A1.および工程A2で得られた酵素産物の量を検出し、そして工程A1.および工程A2.の酵素産物の量に差があるか否かを測定し、
D. 工程Cて決定した通りにスフィンゴ脂質経路に関与するホスファターゼの活性を調節する薬剤を選択する
工程を含む、スフィンゴ脂質経路に関与するホスファターゼの活性を調節する薬剤を選択する方法を提供する。
【0060】
本発明で提供される方法により同定される薬剤をまた“本発明の薬剤”と呼ぶ。
【0061】
標識された、例えば蛍光標識された、スフィンゴシンを使用する本発明により提供される方法は、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスフェートホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性の測定のための、およびスフィンゴシンキナーゼの活性を介在する(影響を与える)薬学的に活性な化合物のスクリーニングにおいて有用なツールであり得る。例えばスフィンゴ脂質ホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスファターゼのようなスフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴ脂質キナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素活性のアッセイのための適当な試験系は、実施例に記載する。本発明により提供される方法をハイスループットスクリーニング(HTS)で行い得ることは利点である。
【0062】
候補化合物は、例えばスフィンゴ脂質ホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスフェートホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴ脂質キナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素における効果が未知の化合物化合物(ライブラリー)を含む。化合物(ライブラリー)は、例えばオリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、模倣物、小分子、例えば低分子量化合物(LMW)を含む。
【0063】
本発明の薬剤は、例えばスフィンゴ脂質ホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴ脂質キナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性に対する効果が、本発明により提供される方法において測定される候補化合物である。このような薬剤は、キナーゼ/ホスファターゼの活性を減少または増加し得る。本発明の薬剤は、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、模倣物、小分子、例えば低分子量化合物(LMW)を含む。
【0064】
他の局面において、本発明は、主成分としての標識スフィンゴシン、例えば蛍光標識スフィンゴシン、例えば式Iの(例えばまたは式IP1またはIP2の)化合物のような、本発明の化合物、および指示、例えば、本発明の方法の一つで定義の通りの工程a.からc.および/または工程A.からD.を行うための詳細を含む、該キットを使用するための指示書を含む、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスフェートホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性を測定するためのキットを提供する。
【0065】
このようなキットは、さらに試験すべきサンプルの適当な環境を含む、実質的成分を含む。
このようなキットは、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスフェートホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性を介在する薬剤の同定に有用であり得る。
【0066】
本発明のキットにおいて、キナーゼの活性の測定のために、標識非リン酸化スフィンゴシンを使用し、スフィンゴ脂質経路に関与するホスファターゼの活性の測定のために、標識1−リン酸化スフィンゴシンを使用する。
【0067】
他の局面において、本発明は、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスフェートホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性を介在する薬剤の同定に使用するための上記のキットを提供し、例えば該キットは、さらに、実質的成分として、例えば、試験すべきサンプル中の候補化合物の抗頬を決定するための適当な手段および指示を含み得る。
【0068】
さらに、我々は、驚くべきことに、本発明により提供される方法におけるスフィンゴシンキナーゼ−1−またはスフィンゴシンキナーゼ−2のホスフェート変換速度が、おそらく本発明のスフィンゴシン使用により、異なり得ることを発見した。本発明により提供される方法において、故に、サンプル中にスフィンゴシンキナーゼ−1−またはスフィンゴシンキナーゼ−2のいずれが存在するか(またはスフィンゴシンキナーゼ活性がないか)区別することが可能であり得る。
【0069】
他の局面において、本発明は、
α.
α1. 標識非リン酸化スフィンゴシンと、所望によりスフィンゴシンキナーゼ−1−活性もしくはスフィンゴシンキナーゼ−2−活性または両方を含むか、またはスフィンゴシンキナーゼ活性を含まないサンプル、およびホスフェート源、
α2. 標識非リン酸化スフィンゴシンと、定義された量のスフィンゴシンキナーゼ−1−活性を含むサンプル、およびホスフェート源、
α3. 標識非リン酸化スフィンゴシンと、定義された量のスフィンゴシンキナーゼ−2−活性を含むサンプル、およびホスフェート源、
を酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
β. 工程α1.、α2.およびα3.で形成された酵素産物を、標識スフィンゴシンの非反応化合物から、例えば本発明により提供される方法において定義の通りの工程b.およびc.に従い分離し、そして
γ. 工程α1.、α2.およびα3におけるホスフェート変換速度を、測定し、かつ比較する
工程を含む、サンプル中にスフィンゴシンキナーゼ−1−活性またはスフィンゴシンキナーゼ−2−活性または両方があるか、またはスフィンゴシンキナーゼ活性が存在しないかを測定する方法を提供する。
【0070】
さらなる局面において本発明は、
i. 式Iの非リン酸化化合物とホスフェート源および
i1. スフィンゴシンキナーゼ−1、
i2. スフィンゴシンキナーゼ−2を、
−試験化合物の非存在下、および
−試験化合物の存在下
酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
ii. 非反応の式Iの非リン酸化化合物を、工程i1.およびi2.で形成された酵素産物から、例えば請求項1、工程b.およびc.に従い分離し、そして
iii. 工程i1.およびi2.におけるホスフェート変換速度を測定し、かつ比較する
工程を含む、試験化合物がスフィンゴシンキナーゼ−1および/またはスフィンゴシンキナーゼ−2の活性を介在できるか否かを区別する方法を提供する。
【0071】
ホスフェート変換速度の測定および比較により、試験化合物が、例えばスフィンゴシンキナーゼ−1またはスフィンゴシンキナーゼ−2、または両方の活性のいずれを、かつどの程度介在できるか同定することが可能となり得る。
【0072】
試験化合物は、本明細書で記載の候補化合物、キナーゼ活性を介在できることが既知であであることが既知の化合物および本発明の薬剤を含む。
【0073】
本発明により提供される方法において、比較試験サンプルを、同じ条件下(例えばスフィンゴシンキナーゼ活性を含まない)、並行して行う。
【0074】
他の局面において、本発明は、
a1. 式
【化31】

(式中、R、R、X、A−D、E−G、L−M、nおよびmは上記で定義の通りであり、そしてYは、式
DYE−Z III
の脱離基Zを置換するのに好適な基である)
の化合物と、式III(式中、基DYEは上記で定義の通りであり、例えばDYE−Zは、式IIの化合物の基Yの置換に好適な脱離基であり、官能基は所望により保護されている)の化合物を反応させるか、または
a2. 式
【化32】

(式中、R、R、X、A−D、E−G、L−M、nおよびmは上記で定義の通りであり、そしてWは脱離基であり、かつ官能基は所望により保護されている)
の化合物と、式
DYE−U V
(式中、DYEは上記で定義の通りであり、Uは脱離基Wの置換に好適な基であり、例えばDYE−Uは、脱離基Wの置換に好適な基であり、かつ官能基は所望により保護されている)
の化合物を反応させ、官能基が所望により保護されている式Iの化合物を得るか、または
b. 式
【化33】

(式中、R、R、X、A−Dおよびmが上記で定義の通りであり、E−G'は上記で定義のE−Gの意味を有するが、ただし、E−GのGがG'で置換されており、G'はアミノ、(C1−4)アルキルアミノヒドロキシ、カルボキシル、反応性カルボキシル誘導体、例えばカルボン酸ハロゲニド、アミドであるか;またはSOHであり、そして、官能基は所望により保護されている)
の化合物と、式
【化34】

(式中、L、MおよびDYEは上記で定義の通りであり、そしてG''は、式Iの化合物におけるE−Gを得るためにG'と反応させるのに好適な基であり、ここで、E−Gは上記で定義の通りである)
の化合物と反応させ、
c. 所望により、得られた保護されている式Iの化合物を脱保護し、そして
d. 反応混合物から式Iの化合物を単離する
工程を含む、式Iの(例えばまたは式IP1またはIP2の)化合物の製造法を提供する。
【0075】
このようにして得た式Iの化合物を、例えば別の式Iの化合物に変換してよく、または遊離形で得た式Iの化合物を式Iの化合物の塩に変換してよく、この逆も可能である。
【0076】
工程a1.、a2.およびb.における反応は求核性置換反応であり、適当に慣用の方法に、例えば、従って、例えば準じて、または本明細書に記載の通りに行い得る。
【0077】
式II、III、IV、V、VIおよびVIIの化合物は、式Iの化合物の製造における中間体(出発物質)である。本明細書に記載の全ての化合物、例えば本発明の化合物および式II、III、IV、V、VIおよびVIIの中間体は、適当な慣用の方法に、例えば、従って、例えば準じて、例えばまたは本明細書に特記のように製造できる。
【0078】
式IVの化合物のような中間体の典型的な製造法は、例えば、下記反応スキーム1に従って、例えば準じて行い得る:
【化35】

【0079】
中間体の製造のための、例えば式VIの製造のための他の典型的な方法は、下記反応スキーム2に従って、例えば準じて行い得る。反応スキーム2において、式Iの化合物の製造もまた示す:
【化36】

【0080】
中間体の他の典型的な製造法は、下記反応スキーム3Aまたは3Bに従って、例えば準じて行い得る。
【化37】

【化38】

【0081】
スキーム1、スキーム2およびスキーム3Aおよび3Bにおいて、また適当な保護基技術を例示する;例えばDYEにおける官能基をさらに保護し得る。
【0082】
他の局面において、本発明は、本発明の、例えば蛍光標識された、標識スフィンゴシンのハイスループットアッセイにおける使用を提供する。
【0083】
他の局面において、本発明は、例えば、ハイスループットアッセイにおいて、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される、酵素の活性を介在する薬剤の同定のための、本発明の蛍光標識スフィンゴシンの使用を提供する。
【0084】
他の局面において、本発明は、薬剤がスフィンゴシンキナーゼ、スフィンゴシンキナーゼ−1、またはスフィンゴシンキナーゼ−2、または両方を介在できるかを測定するための、本発明の化合物の使用を提供する。
【0085】
本発明の方法により提供される薬剤は、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性を介在でき、故に、薬理学的活性を示し得て、医薬として有用であり得る。本発明の方法により提供される薬剤は、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素により介在される障害に対する治療効果を示し得る。
【0086】
他の局面において、本発明は、例えば、医薬として使用するための、例えばスフィンゴシンホスフェートホスファターゼおよび脂質ホスファターゼのような、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性を調節、例えば、阻害または増強できる薬剤(該薬剤は本発明の方法により同定される)を提供する。
【0087】
このような障害は、スフィンゴ脂質経路に関与するSP、SPP、SPHKまたはホスファターゼの生物学的機能が役割を有する疾患を含む。このような障害は、例えば自己免疫性障害および炎症性障害、アレルギー性障害および癌を含む。アレルギー性障害は、例えばアレルギー性喘息、接触性アレルギー、薬物アレルギー、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎またはアレルギー性鼻炎のような季節的アレルギーを含む。
【0088】
自己免疫が関連するおよび炎症性である障害は、例えばI型糖尿病、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化症または全身性エリテマトーデスを含む。
【0089】
処置のためのために、本発明の薬剤は、1種またはそれ以上の、好ましくは1種の本発明の薬剤、例えば、2種またはそれ以上の本発明の薬剤の組み合わせを含む。
【0090】
さらなる局面において、本発明は、活性成分としての本発明の薬剤を、少なくとも1種の薬学的賦形剤と共に含む、医薬組成物に関する。
【0091】
他の局面において、本発明は、アレルギー性喘息、接触性アレルギー、薬物アレルギー、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎または季節性アレルギー、例えばアレルギー性鼻炎;I型糖尿病、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化症、全身性エリテマトーデス、癌のような、自己免疫性障害および炎症性障害、アレルギー性障害および癌を含む、スフィンゴ脂質経路に関与するSP、SPP、SPHKまたはホスファターゼの生物学的機能が役割を有する障害の処置用医薬、例えば医薬組成物の製造のための、本発明の薬剤の使用を提供する。
【0092】
処置は処置および予防を含む。
このような処置のために、適当な適当な投与量は、例えば、用いる本発明の薬剤の化学的性質および薬物動態データ、個々の宿主、投与の形態および処置する状態の性質および重症度に依存して、変化するであろう。しかしながら、一般に、大型哺乳類、例えばヒトにおいて十分な結果を得るために、指示される一日量は、約0.01gから約2.0gの本発明の薬剤;例えば0.5g〜1.0gであり、簡便には、例えば、1日4回までの分割投与量で投与する。
【0093】
本発明の薬剤は、全ての慣用の経路により、例えば経鼻、バッカル、直腸、経口投与を含む、例えば経腸的に;例えば静脈内、筋肉内、皮下投与を含む、非経腸的に;または例えば経皮、鼻腔内、気管支内投与を含む、局所的に;例えばコーティングまたは非コーティング錠剤、カプセル、注射可能溶液または懸濁液の形で、例えばアンプル、バイアルの形で、クリーム、ゲル、ペースト、吸入用粉末、泡状物、チンキ、リップスティック、ドロップ、スプレーの形で、または坐薬の形で投与できる。
【0094】
本発明の薬剤は、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩または金属塩の形で;または遊離形の形で;所望により溶媒和物の形で投与できる。塩形および所望により溶媒和物形の本発明の薬剤は、遊離形(所望により溶媒和物である)の本発明の薬剤と同程度の活性を示す。
【0095】
本発明の薬剤は、本発明に従う医薬的処置に、単独で、または1種もしくはそれ以上の薬学的活性剤と組み合わせで使用できる。
【0096】
組み合わせは、2種またはそれ以上の薬学活性剤が同じ製剤中にある固定された組み合わせ;別々の製剤の2種またはそれ以上の薬学活性剤が同じ包装物で、例えば、併用のための指示書と共に販売されているキット;および薬学活性剤が別々に包装されているが、同時のまたは連続投与のための指示が与えられる自由な組み合わせを含む。
【0097】
他の局面において、本発明は、本発明の薬剤を、少なくとも1種の薬学的賦形剤、例えば増量剤、結合剤、崩壊剤、流動調節剤、滑剤、糖および甘味剤、芳香剤、防腐剤、安定化剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整用塩および/または緩衝剤を含む、例えば適当な担体および/または希釈剤と共に含む、医薬組成物を提供する。
【0098】
他の局面において、本発明は、さらに別の薬学的活性剤を含む、本発明の医薬組成物を提供する。
【0099】
このような医薬組成物は慣用の方法に従って、例えば準じて、例えば混合、造粒、コーティング、溶解または凍結乾燥法により製造できる。単位投与形は、例えば、約0.5mgから約2000mg、例えば1mgから約500mg、例えば0.00625mg/kgから約12.5mg/kgを含み得る。
【0100】
他の局面において、本発明は、
a. 標識スフィンゴシンと
−ホスフェート源、および
−スフィンゴシンキナーゼを含み得るサンプルを、
酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
b. 工程a.の混合物に水性緩衝液と、水と組み合わせて2相を形成できる有機溶媒を添加し、
c.工程b.で得られた相を、例えば抽出後に分離し、そして
d. 工程c.で得られた水性相中の酵素産物の量を測定する;
工程を含み、
例えばここで、標識スフィンゴシンが、式
【化39】

〔式中、
1P1はHまたは(C1−4)アルキル、例えばメチルであり、R2P1はH、OHまたはオキソであり、
、D、E、G、LおよびMは互いに独立してCHであり、そしてさらに
、D、E、G、LおよびMは互いに独立してO、CO、NH、N((C1−4)アルキル)、例えばN(CH)、SOまたはCHである。ただし、基A−D、E−Gおよび/またはL−Mにおいて構成要素AおよびD、EおよびGおよび/またはLおよびMが同一であるものを化合物を除く。または
およびD、EおよびGおよび/またはLおよびMは、一体となって基CH=CHであり、そしてLおよびMは、一体となって、さらに基HC≡CHであり、
xは、0〜12から選択される数字であり、
yは、0〜12から選択される数字である。
ただし、x+yは3〜14から選択される数字である。そして
基DYEは物理的手段により式IP1の化合物において選択的に検出できる基である。〕
である、サンプル中のスフィンゴシンキナーゼの活性を測定する方法を提供する。
【0101】
セラミドの機能および細胞下局在を調査するために、およびスフィンゴ脂質経路にまた関与するセラミドキナーゼの阻害剤を同定するために、セラミドキナーゼの生物活性の測定は必須であり得る。このような評価のために、本発明の標識スフィンゴシン(ここで、標識スフィンゴシンは非リン酸化である)由来である、標識セラミドのような標識セラミドを使用し得る。
【0102】
他の局面において、本発明は;
例えば
a. 適当な培養培地に含まれる生存細胞を、酵素産物が形成できるように予定された時間、式I(式中、残基は上記で定義の通りであり、そしてXがHであり、上記で定義の両方のただし書きを伴う式Iのスフィンゴシンである)の標識スフィンゴシン由来である標識セラミドと接触させ、
b. 工程a.で形成された酵素産物を分離し、そして
c. 形成された酵素産物の量を測定する
ことによる、スフィンゴ脂質経路に関与するセラミドキナーゼの活性が、サンプルに存在するか否か測定するための、または該活性の程度を測定するための、標識セラミド〔ここで、該セラミドは、残基は上記で定義の通りであり、そしてXがHであり、上記で定義の両方のただし書きを伴う式Iのスフィンゴシンであり、例えば該標識セラミドは、式I(式中、残基は上記で定義の通りであり、そしてXがHであり、上記で定義の両方のただし書きを伴う式Iのスフィンゴシンである)の標識スフィンゴシンをこのようなスフィンゴ脂質経路の出発物質として使用するとき、スフィンゴ脂質経路の間に形成され得る〕の使用を提供する。
【0103】
このような方法はまた、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼまたはホスファターゼを介在する薬剤の同定について本明細書に記載した通りの工程を含むが、スフィンゴシンキナーゼまたはホスファターゼの代わりにセラミドキナーゼを使用し、本発明の標識スフィンゴシンの代わりに、式I(式中、残基は上記で定義の通りであり、そしてXがHである)の標識スフィンゴシン由来の標識セラミド〔例えば、該標識セラミドは、式I(式中、残基は上記で定義の通りであり、そしてXがHであり、上記で定義の両方のただし書きを伴う式Iのスフィンゴシンである)の標識スフィンゴシンをこのようなスフィンゴ脂質経路の出発物質として使用するとき、スフィンゴ脂質経路の間に形成され得る〕を使用する、スフィンゴ脂質経路に関与するセラミドキナーゼを介在する薬剤を同定するための方法において有用である。
【0104】
本発明に従う生存細胞における酵素活性の測定方法は、サンプルにおいて生存細胞を使用し、例えば、そのサンプル中にスフィンゴ脂質経路が発生するとき、また、単独のサンプル中の、スフィンゴシンキナーゼ活性およびホスファターゼ活性、例えば、およびセラミドキナーゼ活性の測定にも使用し得る。
【0105】
図面の記載:
図1は、HUVECを
a)標識スフィンゴシン(NBD−Sph)とインキュベートし、キナーゼ活性の分散パターンを測定する
b)標識スフィンゴシン−1ホスフェートとインキュベートし、ホスファターゼの分散パターンを測定する
ときの、スフィンゴイド塩基中間体の濃度測定の結果として分散パターンを示す。
代謝産物は、スフィンゴシン(Sph)、スフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)、セラミド(Cer)およびスフィンゴミエリン(SM)である。
【0106】
図2は、SPHK−1阻害剤存在下の実施例24の標識スフィンゴシンの、細胞内変換を示す。
【0107】
図3は、実施例24の標識スフィンゴシンが、適当な細胞と接触させたとき、SPHK−1よりもSPHK−2でより効率的にリン酸化されることを示す。
レーン1:細胞をコントロールベクターのみでトランスフェクトした場合のパターン、
レーン2:細胞がSPHK−1を過剰発現する場合のパターン
レーン3:細胞がSPHK−2を過剰発現する場合のパターン。
【0108】
下記の実施例において全ての温度は摂氏(℃)であり、未補正である。
【0109】
下記略語を使用する:
【表1】

【0110】
実施例A
ピレン−1−カルボン酸(E)−(13R,14S)−14−アミノ−13,15−ジヒドロキシ−ペンタデク−11−エニル)エステル
508mgの(S)−4−[(E)−(R)−1−ヒドロキシ−13−(ピレン−1−カルボニルオキシ)−トリデク−2−エニル]−2,2−ジメチル−オキサゾリジン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルの15mlのCHCl溶液を1mlのTFAで処理し、RTで一晩撹拌する。得られた混合物から溶媒を蒸発させ、蒸発残渣を分取RP−クロマトグラフィーに付し、ピレン−1−カルボン酸(E)−(13R,14S)−14−アミノ−13,15−ジヒドロキシ−ペンタデク−11−エニルエステルを得る。
【0111】
出発物質の製造
A1. (S)−4−[(E)−(R)−1−ヒドロキシ−13−(ピレン−1−カルボニルオキシ)−トリデク−2−エニル]−2,2−ジメチル−オキサゾリジン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル
580mgの(S)−4−[(E)−(R)−1−(2−クロロ−アセトキシ)−13−(ピレン−1−カルボニルオキシ)−トリデク−2−エニル]−2,2−ジメチル−オキサゾリジン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルの15mlのMeOHおよび2mlのCHCl中の溶液を、5mlの水性NHOH(28%w/w)で処理し、RTで5時間撹拌する。得られた反応混合物から溶媒を蒸発させ、得られた蒸発残渣を1N 水性HClとEtAcに分配する。得られた有機層を塩水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を蒸発させる。(S)−4−[(E)−(R)−1−ヒドロキシ−13−(ピレン−1−カルボニルオキシ)−トリデク−2−エニル]−2,2−ジメチル−オキサゾリジン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルを得る。
【0112】
A2. (S)−4−[(E)−(R)−1−(2−クロロ−アセトキシ)−13−(ピレン−1−カルボニルオキシ)−トリデク−2−エニル]−2,2−ジメチル−オキサゾリジン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル
540mgの(S)−4−[(E)−(R)−1−(2−クロロ−アセトキシ)−13−ヒドロキシ−トリデク−2−エニル]−2,2−ジメチル−オキサゾリジン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(Kozikowski et al., Tetrahedron Lett. 1996, 37, 3279-3282の記載に準じて製造)の10mlの乾燥CHCl溶液を271mgのピレン−1−カルボン酸、422.4mgの1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル−カルボジイミドHClおよび269.3mgのDMAPで処理し、4時間、RTで撹拌する。得られた反応混合物をEtAcと1N 水性HClに分配する。得られた有機層を飽和水性NaHCO溶液および塩水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を蒸発させる。(S)−4−[(E)−(R)−1−(2−クロロ−アセトキシ)−13−(ピレン−1−カルボニルオキシ)−トリデク−2−エニル]−2,2−ジメチル−オキサゾリジン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルを得る。
【0113】
実施例B
4−ヒドロキシ−3−メチル−N−[10−(ピレン−1−スルホニルアミノ)−デシル]ブチルアミド
4−ヒドロキシ−3−メチル−N−[10−(−1−スルホニルアミノ)−デシル]ブチルアミドを、O,N−保護(R)−3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸および1,10−ジアミノデカンの縮合により製造する。得られた25mgの縮合産物を乾燥CHClに溶解し、21μlのEtN、触媒量のDMAPおよび15mgの1−ピレンスルホニルクロライドで処理する。得られた混合物を、一晩、RTで遮光しながら撹拌する。得られた混合物をHOで洗浄し、乾燥させ、溶媒を蒸発させる。得られた蒸発残渣を遮光しながら濾過紙、得られた濾過残渣をMeOH/HCl溶液に溶解し、30分、RTに静置する。得られた混合物から溶媒を蒸発させ、4−ヒドロキシ−3−メチル−N−[10−(ピレン−1−スルホニルアミノ)−デシル]ブチルアミドを塩酸塩の形で得る。
【0114】
実施例AまたはBに記載の方法に準じるが、適当な出発物質を使用して、下記表1および2に記載の通りの実施例1〜13の化合物を得る。H−NMRデータ(CDCl、400MHz、他に記載がない限り)(またはエレクトロスプレーMSデータ)も表1および2に示す。
【0115】
実施例1から7

【化40】

〔式中、m、E−G、L−M、n、mおよびDYEは表1に定義の通りである。〕
の化合物:
【0116】
【表2】


【表3】

【0117】
実施例8から12

【化41】

〔式中、E−G、L−M、m、nおよびDYEは表2に定義の通りである。〕
の化合物:
【0118】
【表4】


【表5】

【0119】
実施例13

【化42】

〔式中、DYEはPである。〕
の化合物。
1H-NMR(CDCl3/d6-DMSO):選択した特徴的シグナル、δ 8.31(d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.05 -8.25(m, 7H), 8.03(t, J = 8.6 Hz, 1H), 7.16(d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.02(d, J = 8.6 Hz, 2H), 5.73(s, 2H), 3.67(dd, J = 12.2 + 18.1 Hz, 2H), 2.65(dd, J = 6.7 + 10.6 Hz, 2H), 1.94 -2.0(m, 2H), 1.36(s, 3H).
【0120】
実施例14
(S)−2−アミノ−3−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−プロパン−1−オール

【化43】

〔式中、DYEはNである。〕
の化合物。
139mgの{(S)−1−ヒドロキシメチル−2−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステルのTFA/HO溶液を、RTで2.5時間撹拌する。溶媒を蒸発させ、得られた蒸発残渣を精製する。(S)−2−アミノ−3−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−プロパン−1−オールをトリフルオロ酢酸塩の形で得る。
1H-NMR(DMSO-d6, 400 MHz)δ: 9.55(bs;1H), 8.50(d;1H), 7.80(bs;3H), 6.40(d;1H), 5.20(bs;1H), 3.60-3.30(m;8H), 3.22(m;1H), 1.65(m;2H), 1.49(m;2H), 1.40 -1.15(m;14H).
【0121】
実施例C
出発物質の製造
C1.:{(S)−1−ヒドロキシメチル−2−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル
114mgの[(S)−2−(11−アミノ−ウンデシルオキシ)−1−ヒドロキシメチル−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの6mlのTHFの溶液を、76mgの7−クロロ−4−ニトロ−ベンゾフラザンで処理し、16時間、RTで撹拌する。得られた反応混合物をEtAcで希釈し、HO、1N HCl、飽和水性NaHCOおよび塩水で抽出する。得られた混合物から溶媒を蒸発させ、得られた蒸発残渣を精製する。{(S)−1−ヒドロキシメチル−2−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステルを得る。エレクトロスプレーMS:564.34(MNa+)。
【0122】
C2.:[(S)−2−(11−アミノ−ウンデシルオキシ)−1−ヒドロキシメチル−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
アルゴン雰囲気下、445mgの[(S)−2−(11−ジベンジルアミノ−ウンデシルオキシ)−1−ヒドロキシメチル−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの18mlのMeOH溶液を233mgのギ酸アンモニウムおよび10%Pd炭(57mg)で処理し、70°(還流)で2時間撹拌する。得られた混合物をRTに冷却し、触媒を濾過により除去し、得られた濾液を濃縮する。得られた濃縮残渣をEtAcに再溶解し、飽和水性NaHCOおよび塩水で抽出する。得られた混合物から溶媒を蒸発させ、[(S)−2−(11−アミノ−ウンデシルオキシ)−1−ヒドロキシメチル−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを得る。エレクトロスプレーMS:561.3(MH+)。
【0123】
C3.:[(S)−2−(11−ジベンジルアミノ−ウンデシルオキシ)−1−ヒドロキシメチル−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
1.42gのジベンジル−{11−[(R)−2−(トリチル−アミノ)−3−トリチルオキシ−プロポキシ]−ウンデシル}−アミンのTFA/HO溶液を、1.62mlのトリイソプロピルシランで処理し、16時間、RTで撹拌する。得られた混合物から溶媒を蒸発させ、MeOHを添加し、得られた沈殿を濾過により除去し、得られた濾過残渣を濃縮する。得られた濃縮残渣をジエチルエーテルに再溶解し、得られた混合物を1N NaOHで抽出し、得られた有機相から溶媒を蒸発させ、得られた蒸発残渣を精製する。397mgの保護されていないアミノアルコールを289mgのジ−tert.ブチルジカーボネートの5mlのCHCl溶液と反応させる。[(S)−2−(11−ジベンジルアミノ−ウンデシルオキシ)−1−ヒドロキシメチル−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを得る。エレクトロスプレーMS:541.35(MH+)、563.4(mNa+)。
【0124】
C4.:ジベンジル−{11−[(R)−2−(トリチル−アミノ)−3−トリチルオキシ−プロポキシ]−ウンデシル}−アミン
アルゴン雰囲気下、1210mgのKH(パラフィン中20%懸濁液)の14mlのトルエン中の懸濁液を4°に冷却し、1394mgの(R)−2−(トリチル−アミノ)−3−トリチルオキシ−プロパノールを滴下して処理する。得られた混合物を30分、RTでおよび5分、45°で処理し、4°に冷却する。得られた混合物を1354mgのメタンスルホン酸11−ジベンジルアミノ−ウンデシルエステルの6mlのトルエンで処理し、得られた混合物を16時間、50°で撹拌する。得られた混合物をRTに冷却し、EtAcを添加する。得られた有機相を水性飽和NaHCOおよび塩水で抽出し、乾燥させ、濃縮する。ジベンジル−{11−[(R)−2−(トリチル−アミノ)−3−トリチルオキシ−プロポキシ]−ウンデシル}−アミンを得る。エレクトロスプレーMS:925.54(MH+)
例えばBartel, M.;Rattay, B.;Nuhn, P. “Synthesis of enantiomerically pure, sn-1 modified sn-2-deoxy-2-amido-glycero-3-phospholipids” Chemistry and Physics of Lipids(2000), 107(1), 121-129参照。
【0125】
C5.:メタンスルホン酸11−ジベンジルアミノ−ウンデシルエステル
500mgの11−アミノ−ウンデカノール、738mgのKCOおよび698μlのベンジルブロマイドの5mlのDMF中の懸濁液を、16時間、RTで激しく撹拌する。得られた混合物から溶媒を蒸発させ、得られた蒸発残渣をCHClとHOに分配し、得られた有機層を乾燥させ、濃縮して11−ジベンジルアミノ−ウンデカノールを得る。655mgの11−ジベンジルアミノ−ウンデカノールを252μlのメタンスルホニルクロライドのCHCl溶液で、452μlのEtN存在下、RTで処理する。メタンスルホン酸11−ジベンジルアミノ−ウンデシルエステルを得る。エレクトロスプレーMS:446.3(MH+)。
【0126】
実施例14に準じるが、適切に保護された出発物質を使用して、下記表3および表4に記載の通りの実施例15〜21の化合物を得る。得られた化合物のH−NMRデータも表3および表4に示す。
【0127】
実施例15から18

【化44】

〔式中、E−G、L−M、m、nおよびDYEEX15は表3に定義の通りであり、Rは実施例18ではHであり、実施例15〜17ではRはCHである。〕
の化合物:
【0128】
【表6】

【0129】
実施例19から21

【化45】

〔式中、m+nは表4に定義の通りであり、DYEはNである。〕
の化合物。
【0130】
【表7】

【0131】
実施例22
リン酸モノ−((R)−2−アミノ−2−メチル−4−{4−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−フェニル}−ブチル)エステル

【化46】

〔式中、DYEはNである。〕
の化合物。
175mgの[(R)−1−(ジ−tert−ブトキシ−ホスホリルオキシメチル)−3−(4−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−フェニル)−1−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの、10%HO含有TFA溶液を、RTで2時間撹拌する。得られた混合物から溶媒を蒸発させ、得られた蒸発残渣にMeOHを添加し、得られた沈殿を回収する。リン酸モノ−((R)−2−アミノ−2−メチル−4−{4−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−フェニル}−ブチル)エステルを得る。
1H-NMR(CD3OD + 1滴DCL, 500 MHz): δ= 8.51(d;1H), 7.13(d;2H), 6.81(d;2H), 6.34(d;1H), 4.09/ 4.01(ABX system, 2H), 3.91(t;2H), 3.54(bs;2H), 2.63(m;2H), 2.04-1.87(m;2H), 1.81-1.69(m;2H), 1.50 -1.29(m;14H), 1.41(s;3H).
【0132】
実施例D
出発物質
[(R)−1−(ジ−tert−ブトキシ−ホスホリルオキシメチル)−3−(4−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−フェニル)−1−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
200mgの[(R)−3−(4−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−フェニル)−1−ヒドロキシメチル−1−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(実施例20参照)および69mgの1H−テトラゾールの乾燥THF溶液を189μlのジ−tert−ブチルジエチルホスホロアミデイトで処理する。得られた混合物を105分、RTで撹拌し、0.33mlのHO中のHの水性30%溶液を滴下し、撹拌を1時間続ける。得られた混合物を水性飽和NaとEtAcに分配する。得られた有機層を1N HCl、飽和NaHCOおよび塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮する。[(R)−1−(ジ−tert−ブトキシ−ホスホリルオキシメチル)−3−(4−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−フェニル)−1−メチル−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを得る。エレクトロスプレーMS:842.49(MNa+)。
【0133】
実施例23
リン酸モノ−{(R)−2−アミノ−3−[11−(7−ニトロ−ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾル−4−イルアミノ)−ウンデシルオキシ]−プロピル}エステル)を実施例22の記載に準じるが、実施例14の化合物を出発物質と使用する。
1H-NMR(CD3OD + 1滴DCL, 400 MHz): δ= 8.57(d;1H), 8.35(bs;1H), 6.44(d;1H), 4.22(m;2H), 3.75-3.50(m;7H), 1.77(m;2H), 1.57(m;2H), 1.50-1.23(m;14H).
【0134】
上記の方法に準じるが、適当な出発物質を使用して、下記実施例24および25の化合物を得る;
【0135】
実施例24

【化47】

の化合物
1H-NMR(CD3OD, 400 MHz): 8.43(d, J = 9 Hz;1H), 6.25(d, J = 9 Hz;1H), 5.74(dt, J = 15, 7 Hz;1H), 5.36(dd, J = 15, 7 Hz;1H), 4.18(dd, J = 6, 7 Hz;1H);3.69(dd, 4, 12 Hz;1H);3.56(dd, 8, 12 Hz;1H);3.44(bs;2H), 3.12-3.03(m;1H), 2.00-1.95(m;2H), 1.72-1.64(m;2H);1.40-1.25(m;14H)。エレクトロスプレーMS:436.2(M+H)+、C21H33N5O5、計算値435.2)。
【0136】
実施例25

【化48】

の化合物
1H-NMR(CD3OD, 400 MHz): 8.53(d, 1H), 6.34(d, 1H), 5.85(dt;1H), 5.46(dd;1H), 4.31-4.26(m;1H), 4.16-3.98(m, 2H), 3.57-3.46(m;2H), 3.40-3.35(m;1H), 2.12-2.05(m;2H), 1.81-1.74(m;2H);1.50-1.27(m;14H).
【0137】
試験実施例1
スフィンゴシンキナーゼ活性の蛍光アッセイ
アッセイ原理:
我々は、下記反応スキーム4に従い、スフィンゴシンキナーゼが、ATPの存在下、蛍光標識スフィンゴシンである化合物COMPA(実施例23の化合物)リン酸化し、対応するリン酸化化合物COMPA−P(実施例24の化合物)を得ることを確認。
【0138】
【化49】

ここで、残基は上記で定義の通りであり、そしてRが、ATPの存在下、実施例24の化合物がスフィンゴシンキナーゼにより実施例25の化合物にリン酸化されるように、Hである。COMPAおよびCOMPBは、液−液抽出により分離する。水性相中での式COMPA−Pの化合物の酵素活性の指標としての蛍光は定量的である。詳しくは:
【0139】
スフィンゴシンキナーゼを、総容量100μlで、式COMPAの化合物(20μM、DMSO中の貯蔵溶液から添加)およびATP(1mM)と、15mM MgCl、0.005%Triton X−100、10mM KClを含む50mM Hepes緩衝液、pH7.4中、30分、30°でインキュベートし、得られた混合物に100μl 1M リン酸カリウム緩衝液、pH8.5、続いて250μl CHCl/MeOH 2:1を添加する。得られた混合物を短く撹拌し、相を遠心により分離する(2分、15,000×g)。上水性層(典型的に100μl)のアリコートを取り、白色96ウェルポリスチレンマイクロプレート(Packard, Meriden, CT)に入れ、続いて等量のDMFを添加する。蛍光強度を、485nmの励起および538nmの放出でプレートリーダーで測定する。スフィンゴシンキナーゼを含まない反応混合物はブランクとして働く。蛍光強度から、式COMPA−Pの化合物の濃度を同じ溶媒系中の適当な秤量曲線を使用して計算する。これらの濃度はまた酵素の反応速度(ホスフェート変換速度)の計算にも使用する。本アッセイは、精製タンパク質のスフィンゴシンキナーゼ活性の測定にまたは細胞の融解物もしくは組織のホモジネートにおける活性の測定に適している。
【0140】
試験実施例2
試験系
蛍光標識スフィンゴシンとスフィンゴシンキナーゼの反応
a)リン酸化反応の実施
リン酸化反応を、本質的に下記の通り行う。ヒトPHK−1または−2を過剰発現する組み換えHEK−293細胞の細胞質フラクションを、総容量100μlでSP誘導体(20μM;DMSO中の貯蔵溶液から添加)、1mMのATP、および2μCi [γ−32P]ATPと、15mM MgCl、0.005%Triton X−100、10mM KCl、10mM NaFおよび1.5mM セミカルバジド含有50mM Hepes緩衝液(pH7.4)中で30°でインキュベートする。2時間までの様々な異なるインキュベーション時間の後、脂質を抽出し、TLC−プレート(Merck)で分離する。TLCをシリカプレートで、BuOH/酢酸/HO 3:1:1またはCHCl/MeOH/HO/NHOH(28%)200:150:29:1のいずれかを移動相として使用して行う。これらの系において、スフィンゴシンおよび実施例4の化合物は同時に移動する。ピレン−標識SPPおよびスフィンゴミエリン(SM)と代謝物の同一性は、標準としての市販のトリチウム標識SPPおよびSMと同時の移動により確率される。
【0141】
放射標識SPP誘導体を、Molecular Dynamics Storm PhosphorImager(Sunnyvale, CA)を使用して可視化および定量する。リン酸化の速度を計算し、蛍光標識スフィンゴシンについて、スフィンゴシンの速度(その速度は、SPHK−1および−2について各々41および25nmol/分/mgである)に対する値として報告する。
【0142】
b)スフィンゴシンキナーゼ−1(SPHK−1)とスフィンゴシンキナーゼ−2(SPHK−2)のリン酸化速度の差異
蛍光標識した実施例1−7のスフィンゴシンを、ヒト組み換えSPHK−1およびSPHK−2の基質として使用し、それら全て、[γ−32P]ATPおよび該キナーゼとのインキュベーションによる、放射標識ホスフェートの取り込みにより可視化されるように、リン酸化誘導体に変換される。リン酸化の速度(ホスフェート変換速度)を測定し、天然基質スフィンゴシン(=SP)(これは1の値と見なす)に対して表Aに要約する。
【0143】
【表8】

【0144】
SPHK−1、最短の主鎖を有する実施例1のピレン−標識誘導体を使用すると、SPよりも効率が約20倍低く、対応するホスフェートに変換される。鎖長を2個のCH基(実施例2)により伸ばすと、リン酸化速度が2倍に増加し、一方、4個のCH基の添加によるさらなる主鎖伸張(実施例3)は、SPHK−1による基質ターンオーバーの低下をもたらした(SPと比較して約40倍少ない)。実施例4の化合物について、天然SPと比較してほぼ同等なSPHK−1によるリン酸化が観察される。SPHK−2を使用すると、実施例1〜4の化合物の相対的リン酸化速度はSPHK−1の使用より速いが、基質有効性の順位は両方の酵素で同じである。
【0145】
実施例4の化合物中のエステル官能性は、代謝に不安定であるはずであり(短時間インビトロリン酸化実験では分解は観察されていないが)、そして、従って、アミドで置換し得る(実施例5)。これは、SPHK−1および−2の各々について、2倍および3倍しかリン酸化効果を減少しない。エステルのスルホンアミドリンカー(実施例6)への鉛管は、SPHK−2よりもSPHK−1で耐性が低く(実施例4の化合物よりも、ホスフェート変換速度が約20倍低い)、この実施例6のリン酸化化合物はSPとほぼ同程度の有効性である。これらの結果は、SPHK−1対SPHK−2の基質特異性のはっきりした差異を示す。
【0146】
試験実施例3
ヒト内皮細胞における蛍光標識スフィンゴシンの取り込み、細胞下分布および代謝の測定
ヒト内皮細胞(HUVEC)における取り込み、細胞下分布および代謝(ホスフェートへの変換)を測定するために、実施例4のピレン標識スフィンゴシンを使用する。蛍光標識化合物は、添加5分以内に細胞に急速に取り込まれ、小胞体およびゴルジ体への優勢な分布を15−30分のインキュベーション後に示す。さらに、化合物は細胞内で薄層クロマトグラフィーにより示されるように、4種の産物に変換される。主代謝物はスフィンゴシン−1−ホスフェート(SPP)と、少ない産物はスフィンゴミエリン(SM)およびセラミド(Cer)と同時に移動する。HUVECにおける化合物の代謝的変換のパターンは、[H]−スフィンゴシンと同様である。
【0147】
試験実施例4
スフィンゴシン−1−ホスフェート(SPP)およびスフィンゴシン−1−ホスフェート(SPP)ホスファターゼ活性の測定のための細胞ベースのアッセイ
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、37°および5%COで、EGMTM−2培地(Clonetics;内皮細胞培地)中で培養する。細胞を5回までの継代で実験に使用し、6ウェルプレートに80−90%コンフルエンシーで播種し、一晩増殖させる。細胞を、各々、5μMの標識したXが(HO)POである式Iの化合物、または、標識したXがHである式Iの化合物と0,5時間、1時間および3時間インキュベートする。適当なインキュベーション時間の後に得たインキュベーション残渣を抽出し、得られた液体抽出残渣を溶媒系としてBuOH/AcOH/HOを使用するTLCに付す。図1に示す通りのスフィンゴイド塩基代謝物が観察される。
【0148】
試験実施例5
スフィンゴシンキナーゼ1阻害剤存在下の生存細胞における標識スフィンゴシン変換
試験実施例4に記載の通りのHUVECを、10μMおよび30μMのスフィンゴシンキナーゼ1阻害剤と1時間インキュベートする。標識した、XがHである式Iの化合物を添加し、インキュベーションを30分行う。得られたインキュベーション残渣から脂質を抽出し、BuOH/AcOH/HO 3:1:1を溶媒系として使用するTLCで分離する。得られたTLCプレートをCCDカメラを使用してスキャンし、脂質産物の密度をソフトウェアAlphaImage 2200を使用して測定する。
阻害曲線は図2に示す。
【0149】
試験実施例6
スフィンゴシンキナーゼタイプ1および2(SPHK−1およびSPHK−2)で一過性にトランスフェクトしたHUVEC細胞中の標識スフィンゴシンのスフィンゴ脂質ターンオーバー
試験実施例4に記載の通りのHUVECを6ウェルプレートに50%コンフルエンシーで播種し、一晩増殖させる。得られた増殖細胞を、エンプティーベクター(ClontechのGFPベクター)単独ならびにSPHK−1およびSPHK−2をコードするGFP標識発現構築物を含むLipofectamine Plus試薬使用してトランスフェクトする。トランスフェクションを20時間行う。得られたトランスフェクトした細胞に、標識されたXが(HO)POである式Iの化合物を2μMで添加し、各々0.5時間、1時間および3時間インキュベートする。脂質を抽出し、得られた抽出残渣を、溶媒系としてBuOH/AcOH/HO 3:1:1を使用するTLCに付す。得られたTLCプレートをCCDカメラを使用してスキャンし、得られた脂質産物をAlphaImage 2200を使用して測定する(図3参照)。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】HUVECをa)標識スフィンゴシン(NBD−Sph)とインキュベートし、キナーゼ活性の分散パターンを測定するb)標識スフィンゴシン−1ホスフェートとインキュベートし、ホスファターゼの分散パターンを測定するときの、スフィンゴイド塩基中間体の濃度測定の結果として分散パターンを示す。 代謝産物は、スフィンゴシン(Sph)、スフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)、セラミド(Cer)およびスフィンゴミエリン(SM)である。
【図2】SPHK−1阻害剤存在下の実施例24の標識スフィンゴシンの、細胞内変換を示す。
【図3】実施例24の標識スフィンゴシンが、適当な細胞と接触させたとき、SPHK−1よりもSPHK−2でより効率的にリン酸化されることを示す。 レーン1:細胞をコントロールベクターのみでトランスフェクトした場合のパターン、 レーン2:細胞がSPHK−1を過剰発現する場合のパターン レーン3:細胞がSPHK−2を過剰発現する場合のパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性がサンプルに存在するかしないかを測定するための、または該活性の程度を測定するための、標識スフィンゴシンの使用。
【請求項2】
a. 適当な培養培地に含まれる生存細胞を、酵素産物が形成できるように予定された時間標識スフィンゴシンと接触させ、
b. 工程a.で形成された酵素産物を分離し、そして
c. 形成された酵素産物の量を測定する
工程を含む、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性がサンプルに存在するかしないかを測定するための、または該活性の程度を測定するための方法。
【請求項3】
A. 標識非リン酸化スフィンゴシンと
−所望によりスフィンゴシンキナーゼを含むサンプル、および
−ホスフェート源を、
酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
B. 工程A.の混合物に水性緩衝液と、水と組み合わせて2相を形成できる有機溶媒を添加し、
C. 工程B.で得られた相を分離し、
D. 工程C.で得られた水性相中の酵素産物の量を測定する
工程を含む、スフィンゴシンキナーゼの活性がサンプルに存在するかしないかを測定するための、または該活性の程度を測定するための方法。
【請求項4】
a. 標識非リン酸化スフィンゴシンと
−ホスフェート源、および
−スフィンゴシンキナーゼを、
a1. 候補化合物の非存在下、および
a2. 候補化合物の存在下、
酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
b. 工程a1および工程a2の混合物に水性緩衝液と、水と組み合わせて2相を形成できる有機溶媒の混合物を添加し、
c. 工程a1.およびa2.で形成された酵素産物を、非反応標識スフィンゴシンから、例えば請求項1、工程b.およびc.に従い分離し、
d. 工程a1.および工程a2で得られた酵素産物の量を検出し、そして工程a1.および工程a2.の酵素産物の量に差があるか否かを測定し、
e. 工程dで決定した通りにスフィンゴシンキナーゼの活性を調節する薬剤を選択する
工程を含む、スフィンゴシンキナーゼの活性を調節する薬剤を同定する方法。
【請求項5】
A. 標識リン酸化スフィンゴシンと、適当な培地に含まれる生存細胞を、
A1. 候補化合物の非存在下、および
A2. 候補化合物の存在下、
酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
B. 工程A1.およびA2.で形成された酵素産物を、非反応標識リン酸化スフィンゴシンから分離し、
C. 工程A1.および工程A2で得られた酵素産物の量を検出し、そして工程A1.および工程A2.の酵素産物の量に差があるか否かを測定し、
D. 工程Cで決定した通りにスフィンゴ脂質経路に関与するホスファターゼの活性を調節する薬剤を選択する
工程を含む、スフィンゴ脂質経路に関与するホスファターゼの活性を調節する薬剤を選択する方法。
【請求項6】
α.
α1. 標識非リン酸化スフィンゴシンと、所望によりスフィンゴシンキナーゼ−1−活性もしくはスフィンゴシンキナーゼ−2−活性または両方を含むか、またはスフィンゴシンキナーゼ活性を含まないサンプル、およびホスフェート源、
α2. 標識非リン酸化スフィンゴシンと、定義された量のスフィンゴシンキナーゼ−1−活性を含むサンプル、およびホスフェート源、
α3. 標識非リン酸化スフィンゴシンと、定義された量のスフィンゴシンキナーゼ−2−活性を含むサンプル、およびホスフェート源、
を酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
β. 工程α1.、α2.およびα3.で形成された酵素産物を、標識スフィンゴシンの非反応化合物から、例えば請求項1、工程b.およびc.に従い分離し、そして
γ. 工程α1.、α2.およびα3におけるホスフェート変換速度を、測定し、かつ比較する
工程を含む、サンプル中にスフィンゴシンキナーゼ−1−活性またはスフィンゴシンキナーゼ−2−活性または両方があるか、またはスフィンゴシンキナーゼ活性が存在しないかを測定する方法。
【請求項7】
i. 式Iの非リン酸化化合物とホスフェート源および
i1. スフィンゴシンキナーゼ−1、
i2. スフィンゴシンキナーゼ−2を、
−試験化合物の非存在下、および
−試験化合物の存在下
酵素産物が形成できるように予定された時間接触させ、
ii. 非反応の式Iの非リン酸化化合物を、工程i1.およびi2.で形成された酵素産物から、例えば請求項1、工程b.およびc.に従い分離し、そして
iii. 工程i1.およびi2.におけるホスフェート変換速度を測定し、かつ比較する
工程を含む、試験化合物がスフィンゴシンキナーゼ−1および/またはスフィンゴシンキナーゼ−2の活性を介在できるか否かを区別する方法。
【請求項8】
主成分としての標識スフィンゴシンおよび該キットを使用するための指示書を含む、スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性の測定のためのキット。
【請求項9】
スフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性を介在する薬剤の同定に使用するための、請求項8記載のキット。
【請求項10】
標識スフィンゴシンが、式
【化1】

〔式中、
はHまたは(C1−4)アルキルであり、
はH、OHまたはオキソであり、
XはHまたは(HO)POであり、
A−D、E−GおよびL−Mは、互いに独立してCH−CH、CH=CH、C≡C、CH−フェニル、フェニル−CH、CH−CH−フェニル、CH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、NH−CH、N((C1−4)アルキル)−CH、O−CH、CH−O、フェニル−O、O−フェニル、CH−フェニル−O、O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、SO−NH、N((C1−4)アルキル)−SOの基であるか、またはA−D、E−GおよびL−Mの中の一つの基が存在せず、
mは、0〜12から選択される数字であり、
nは、0〜12から選択される数字であり、
そしてm+nは、0〜14から選択される数字であり、
基DYEは、式Iの化合物において物理的手段により選択的に検出可能な基である。
ただし、E−GおよびL−Mの少なくとも一方は、CH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、CH−O、フェニル−O、O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、N((C1−4)アルキル)−SOから成る群から選択される。〕
の化合物である、請求項1から7のいずれかに記載の使用、方法または請求項8もしくは9に記載のキット。
【請求項11】

【化2】

〔式中、
はHまたは(C1−4)アルキルであり、
はH、OHまたはオキソ、例えばHまたはOHであり、
XはHまたは(HO)POであり、
A−D、E−GおよびL−Mは、互いに独立してCH−CH、CH=CH、C≡C、CH−フェニル、フェニル−CH、CH−CH−フェニル、CH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、NH−CH、N((C1−4)アルキル)−CH、O−CH、CH−O、フェニル−O、O−フェニル、CH−フェニル−O、O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、SO−NH、N((C1−4)アルキル)−SOの基であるか、またはA−D、E−GおよびL−Mの中の一つの基が存在せず、
mは、0〜12から選択される数字であり、
nは、0〜12から選択される数字であり、
m+nは、0〜14から選択される数字であり、そして
基DYEは、式Iの化合物において物理的手段により選択的に検出可能な基である。
ただし
−E−GおよびL−Mの少なくとも一方はCH−NH、CH−N((C1−4)アルキル)、CH−O、フェニル−O、O−CO、CO−O、CO−NH、NH−CO、CO−N((C1−4)アルキル)、N(C1−4)アルキル)−CO、NH−SO、N((C1−4)アルキル)−SOから成る群から選択され、そして
−式
【化3】

(式中、Xは上記で定義の通りである)
の化合物を除く。〕
の化合物。
【請求項12】
請求項11に記載の式Iの蛍光標識スフィンゴシンの、例えばスフィンゴ脂質経路に関与するスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素の活性を調節する薬剤を同定するための、ハイスループットアッセイにおける使用。
【請求項13】
スフィンゴ脂質経路に包含されるスフィンゴシンキナーゼおよびホスファターゼから成る群から選択される酵素を介在できる薬剤であって、請求項4または5のいずれかに記載の方法により同定される、薬剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−507205(P2007−507205A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527377(P2006−527377)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010862
【国際公開番号】WO2005/030780
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】