説明

蛍光測定装置

【課題】従来の蛍光顕微鏡等の蛍光測定装置では、発光ダイオードを照明用光源として有効に用い、且つ、励起波長の選択を行えるようにすることができない。
【解決手段】このような課題を解決するために、本発明では、蛍光物質を含ませた試料1側から観察用受光部2側に至る観察光学系3と、試料の蛍光物質を励起する照明光を発生させる照明光源を有する照明光学系8を設けた蛍光測定装置において、照明光源は、紫外線発光ダイオード7と、この紫外線発光ダイオードにより励起されて、試料に含ませた蛍光物質に対応した波長の蛍光を発光する蛍光物質を含ませた交換式の蛍光発光フィルター10とから構成した蛍光測定装置を提案している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光測定装置、特に、その照明光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光測定装置は、観察する物質に対応した蛍光物質を含ませた試料に照明光を照射し、照明光により励起されて生じた蛍光物質からの蛍光により観察を行う測定装置であり、透過型蛍光顕微鏡や落射型蛍光顕微鏡が例として挙げられる。
【0003】
蛍光測定装置の従来技術としては、例えば特許文献1や特許文献2が挙げられる。まず特許文献1は、抗原抗体反応させた試料に照明光学系により照明光源からの所定励起波長の励起光を入射し、この試料中に含まれた蛍光物質の蛍光を観察光学系において検出して、試料中に含まれた物質の同定及び定量を行う装置に関するもので、照明光学系は、光源と、光源から試料方向に向かって、順に、熱線吸収フィルター、励起波長選択フィルター、集光レンズを設けており、励起波長選択フィルターは、交換式としている。
【0004】
また特許文献2は、照明光源として発光ダイオードを用いた蛍光測定装置を示すもので、この蛍光測定装置では、紫外線発光ダイオードからの紫外線を直接的に試料に照射して蛍光測定を行っている。
【0005】
以上のような蛍光測定装置において使用される照明光源としては、上記特許文献1に示されるように、ハロゲンランプやキセノンランプ等の白色光源が良く用いられている。即ち、近年では、低消費電力や、小型化、そして冷光照明という利点から発光ダイオードも用いられるようになってきたが、波長と輝度の関係から、未だ、上述したようなランプが用いられることが多い。
【0006】
即ち、発光ダイオードは、その発光特性上、スペクトル幅が狭いので、試料に含ませた蛍光物質毎に対応させた励起波長を有する発光ダイオードを準備しなければならず、小型化が困難である。一方、現在販売されている製品においては、照明光源としての発光ダイオードを交換式とすることにより小型化を図っているものもあるが、これでは、対象とする励起波長毎に発光ダイオードが必要となることからコスト面で好ましくなく、また発光ダイオードは全ての波長域を網羅してはいないので、対応できない波長域があり、このような波長域ではランプを使用しなければならないので、煩雑である。
【0007】
一方、近年は、白色光源として、白色発光ダイオードが注目されているが、この白色発光ダイオードは、発光ダイオードチップ単体において白色光を発光するものではなく、赤色系、緑色系及び青色系の単色光を発光する3種類の発光ダイオードを用いて、これらを混色して白色を得る方式や、青色系又は紫外線を発光する発光ダイオードを用い、これに励起されて蛍光を発光する蛍光物質により緑色系や赤色系等の発光を行わせ、これらを混色して白色を得る方式等により、白色光を発光させるようにしている。
【0008】
しかしながら前者の混色方式は、3種類の発光ダイオードを混色しているだけなので、個々のスペクトル幅が狭いことから、混色したとしてもスペクトル幅は狭く、多種の蛍光物質に対応するのは困難である。また後者の混色方式では、広いスペクトル幅の白色光を得ることができるが、試料に含ませた蛍光物質に対応する励起波長を得るために特許文献1に示されるような励起波長選択フィルターを用いた場合には、輝度が弱くなりすぎてしまうので、このような励起波長選択フィルターを用いることは難しい。
【0009】
また蛍光測定装置において主として用いられる試料には、細胞やDNA等のように熱に弱いものも多いため、上述したようなランプの使用においては、多量に発生する熱を除去する手段や、励起光から熱線を除去する手段が必須となり、また輝度ムラや寿命の観点からも、発光ダイオードのような冷光照明手段を使用するという要望は非常に強い。
【0010】
しかしながら、従来、蛍光測定装置においては、上述した特許文献2に示されるように、紫外線発光ダイオードをそのまま用いることが行われていたり、また白色光源として発光ダイオードを用いることは想定されたとしても、発光ダイオードを、適切な波長範囲の光源として有効に利用することは行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2−195257号公報
【特許文献2】特開2001−27605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたもので、本発明が解決しようとする課題は、従来の、蛍光顕微鏡等の蛍光測定装置が、発光ダイオードを照明用光源として有効に用い、且つ、励起波長の選択を行えるようにすることができないということにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上述した課題を解決するために、蛍光物質を含ませた試料側から観察用受光部側に至る観察光学系と、試料の蛍光物質を励起する照明光を発生させる照明光源を有する照明光学系を設けた蛍光測定装置において、照明光源は、紫外線発光ダイオードと、この紫外線発光ダイオードにより励起されて、試料に含ませた蛍光物質に対応した波長の蛍光を発光する蛍光物質を含ませた交換式の蛍光発光フィルターとから構成した蛍光測定装置を提案する。
【0014】
また本発明では、上記の構成において、照明光学系には、蛍光発光フィルターの紫外線発光ダイオード側に熱線カットフィルターを設けた蛍光測定装置を提案する。
【0015】
また本発明では、上記の構成において、照明光学系には、蛍光発光フィルターの観察光学系側にバンドパスフィルターを設けた蛍光測定装置を提案する。
【0016】
そして本発明に係る蛍光測定装置は、透過型蛍光顕微鏡や落射型蛍光顕微鏡として構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蛍光測定装置では、それによる測定に際して、まず、試料に含ませた蛍光物質に対して、適切な波長の励起照明光を照射するために、蛍光発光フィルターは、上記試料に含ませた蛍光物質を励起するのに対応させた波長の蛍光を発光する蛍光物質を含ませたものに交換する。
【0018】
このため、紫外線発光ダイオードから照射される紫外線により蛍光発光フィルターに含ませた蛍光物質が蛍光を発して、これが試料の蛍光物質を励起することにより、効率的に蛍光を発光させて、ノイズの少ない良好な観察を行うことができる。
【0019】
紫外線発光ダイオードから照射される光線は、ランプと比較して含まれている熱線が大幅に少ないものの、全く含まれていないわけではないので、蛍光発光フィルターの紫外線発光ダイオード側に熱線カットフィルターを設ければ、試料への熱線の照射を実質的になくすことができるので、熱に非常に弱い試料に対しての蛍光測定を確実に行うことができる。
【0020】
一方、蛍光発光フィルターの観察光学系側にバンドパスフィルターを設ければ、試料に照射する励起光の波長の範囲を、試料に含ませた蛍光物質を励起するのに更に適切に調節することができるので、更に、効率的に蛍光を発光させて、ノイズの少ない良好な観察を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の蛍光測定装置を、落射型蛍光顕微鏡として構成した実施の形態を示す概念的系統説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1において、符号1は蛍光物質を含ませた試料、2はカメラや接眼光学系等の観察用受光部2であり、3は試料1側から観察用受光部2側に至る観察光学系を示すものであり、この実施の形態では、観察光学系3は、試料1側から観察用受光部2側へと順に、ダイクロイックミラー4,5及びバンドパスフィルター6を設けている。
【0023】
また符号7は適数の紫外線発光ダイオードであり、この発光ダイオード7からダイクロイックミラー4を経て試料1に至る照明光学系8が構成され、この照明光学系8は、紫外線発光ダイオード7からダイクロイックミラー4へと順に、熱線カットフィルター9、蛍光発光フィルター10及びバンドパスフィルター11が設けられている。
【0024】
蛍光発光フィルター10は、透光性の材質に、紫外線に励起されて発光する蛍光物質を含ませたもので、一つの蛍光発光フィルター10に含ませる蛍光物質は一種類又は複数種類とし、その種類を適宜変更することにより、蛍光発光の波長範囲を適宜に調節する。そして、この適宜に調節された波長範囲の異なる複数の蛍光発光フィルター10(10a,10b,…)を、予め複数構成して、それらを交換できるように構成している。
【0025】
以上の落射型蛍光顕微鏡において測定を行うに際しては、まず、試料1に含ませた蛍光物質に対して、適切な波長の励起照明光を照射するために、蛍光発光フィルター10は、上記試料1に含ませた蛍光物質を励起するのに対応させた波長の蛍光を発光する蛍光物質を含ませたもの、この場合、蛍光発光フィルター10aに交換する。
【0026】
このため、紫外線発光ダイオード7から照射される紫外線12により蛍光発光フィルター10aに含ませた蛍光物質が蛍光を発して、これが試料1の蛍光物質を励起することにより、効率的に蛍光を発光させることができ、こうして観察用受光部2において、ノイズの少ない良好な観察を行うことができる。
【0027】
紫外線発光ダイオード7から照射される光線は、上述したように従来の蛍光測定装置において白色光源として使用されるランプと比較して、含まれている熱線が大幅に少ないものの、全く含まれていないわけではなく、この実施の形態のように、蛍光発光フィルター10aの紫外線発光ダイオード7側に熱線カットフィルター9を設けることにより、試料1への熱線の照射を実質的になくすことができるので、熱に非常に弱い試料1に対しての蛍光測定を確実に行うことができる。
【0028】
また、この実施の形態では、蛍光発光フィルター10aの観察光学系3側にバンドパスフィルター11を設けているので、試料1に照射する励起光の波長の範囲を、試料1に含ませた蛍光物質を励起するのに更に適切に調節することができるので、更に、効率的に蛍光を発光させて、観察用受光部2において、ノイズのより少ない良好な観察を行うことができる。
【0029】
尚、本発明の他の実施の形態において、前記ダイクロイックミラー4に代えて、ダイクロイックプリズム、ハーフミラー、ビームスプリッター等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の蛍光測定装置は、透過型や落射型の蛍光顕微鏡に適用できる他、適宜の蛍光測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 試料
2 観察用受光部
3 観察光学系
4,5 ダイクロイックミラー
6,11 バンドパスフィルター
7 紫外線発光ダイオード
8 照明光学系
9 熱線カットフィルター
10(10a,10b) 蛍光発光フィルター
12 紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光物質を含ませた試料側から観察用受光部側に至る観察光学系と、試料の蛍光物質を励起する照明光を発生させる照明光源を有する照明光学系を設けた蛍光測定装置において、照明光源は、紫外線発光ダイオードと、この紫外線発光ダイオードにより励起されて、試料に含ませた蛍光物質に対応した波長の蛍光を発光する蛍光物質を含ませた交換式の蛍光発光フィルターとから構成したことを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項2】
照明光学系には、蛍光発光フィルターの紫外線発光ダイオード側に熱線カットフィルターを設けたことを特徴とする請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項3】
照明光学系には、蛍光発光フィルターの観察光学系側にバンドパスフィルターを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光測定装置。
【請求項4】
透過型蛍光顕微鏡である請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項5】
落射型蛍光顕微鏡である請求項1に記載の蛍光測定装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−247743(P2011−247743A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121184(P2010−121184)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000138200)株式会社モリテックス (120)
【Fターム(参考)】