説明

蛍光表示管および蛍光表示管の製造方法

【課題】既存の真空排気設備を使用して端部に排気孔を設けた蛍光表示管を製造する。
【解決手段】プレートガラス4−1の長さL1をフロントガラス4−2の長さL2よりもL3だけ長くする(フロントガラス4−2の長さL2をプレートガラス4−1の長さL1よりもL3だけ短くする)。排気孔10は、プレートガラス4−1のフロントガラス4−2との対面領域S1中、スペーサガラス4−3との接着部の近傍に設ける。排気ヘッド300のヘッド面をOリング301を介してプレートガラス4−1に密着させ、排気孔10を排気通路としてプレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面空間4−4内の真空排気を行う。不要となったプレートガラス4−1の非対面領域S3は、排気孔10を排気孔栓11で塞いだ後に、切除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空排気された外囲器内にカソード電極と、グリッド電極と、蛍光体が塗布されたアノード電極とを収容した蛍光表示管および蛍光表示管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の蛍光表示管の概略構成を示す一部破断側断面図である。同図において、1はカソード電極、2はグリッド電極、3はアノード電極であり、これらは外囲器4内に収容されている。外囲器4は、プレートガラス4−1と、フロントガラス4−2と、スペーサガラス4−3とから構成され、スペーサガラス4−3を介してプレートガラス4−1とフロントガラス4−2とを対面させ、このプレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面領域の周囲をスペーサガラス4−3を介しフリットガラスによって接着している。
【0003】
プレートガラス4−1の基板面には、配線層5が形成されており、配線層5の上に絶縁層6が形成され、絶縁層6の上にアノード電極3が形成されている。アノード電極3はスルーホール7を通して配線層5に接続されている。また、アノード電極3の上面には蛍光体8が塗布されている。カソード電極1は、電子放出材料が塗布されたフィラメントであり、その両端がフレーム9−1,9−2によってサポートされている。
【0004】
プレートガラス4−1には、外囲器4の厚み方向に排気孔10が形成されており、この排気孔10を排気通路として外囲器4内の真空排気を行った後、プレートガラス4−1の外面に臨む排気孔10の出口を排気孔栓(金属板)11によって塞いでいる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
この蛍光表示管100において、グリッド電極2はカソード電極1から電子を引き出す。カソード電極1から引き出された電子はグリッド電極2を通過し、アノード電極3により加速され、アノード電極3に塗布された蛍光体8に衝突する。この蛍光体8への電子の衝突によって発光が起こる。
【0006】
図6はこの蛍光表示管100を製造する際の真空排気工程を説明する図である。外囲器4内の真空排気を行う場合、プレートガラス4−1の外面に臨む排気孔10に対して、真空排気設備の排気ヘッド300をセットする。すなわち、排気ヘッド300の中央部に排気孔10が位置するようにして、排気ヘッド300のヘッド面をOリング301を介してプレートガラス4−1に密着させる。この状態で、シリンダ302を作動させて、排気孔10を排気通路として外囲器4内(プレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面空間内)の真空排気を行う。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−284742号公報
【特許文献2】特開昭63−207033号公報
【特許文献3】特開2002−25480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の蛍光表示管100では、カソード電極1をサポートしているフレーム9−1よりも内側、すなわちアノード電極3の形成領域側に排気孔10を設けているため、次のような問題があった。
【0009】
(1)歩留まりへの影響
排気孔10を形成する際にプレートガラス4−1に生じたマイクロクラックやガラス粉などにより、配線層5などの形成過程で断線などの不良が発生する割合が高くなり、歩留まりが悪くなる。
(2)設計上の制約
プレートガラス4−1における配線層5の設計に際し、排気孔10の周囲を避けなければならず、高精細表示(配線の高密度化)が進められる中で配線引き回しの障害となる。
(3)絶縁層透過型の蛍光表示管での表示品位の低下
絶縁層透過型の蛍光表示管では、絶縁層6を透明とし、プレートガラス4−1の下側から絶縁層6をバックライト(透過光)で照らし、表示の変化に特徴を持たせる(例えば、特許文献3参照)。この場合、図5にS0として絶縁層透過型とした場合の透過光の照射領域を示すように、排気孔10を塞ぐ金属製の排気孔栓11によって透過光が遮られ、その影が表示面に現れ、表示品位が低下する。
【0010】
なお、図7に示すように、排気孔10をプレートガラス4−1の端部4−1a、すなわちカソード電極1をサポートしているフレーム9−1よりも外側(スペーサガラス4−3との接着部の近傍)に設ければ、この端部4−1aはアノード電極3の形成領域とはされないので、上述した従来の問題を一挙に解決することができる。
【0011】
しかし、この場合、排気ヘッド300のOリング301がプレートガラス4−1からはみ出し、排気作業を行うことができなくなる。Oリング301の径を小さくしたり、Oリング301の形状を真円から楕円にするなどすれば、排気ヘッド300の形状などを変更せずに対応可能な場合もある。しかし、対応できない場合が多く、Oリング301の径や形状で対応できる場合も含めて真空排気設備の変更が必要であり、既存の真空排気設備をそのまま利用することはできない。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、プレートガラスのアノード電極の形成領域側に排気孔を設けることによって生じていた従来の問題を一挙に解決することができる蛍光表示管を提供することにある。
また、既存の真空排気設備を使用して、端部に排気孔が形成された蛍光表示管を製造することができる蛍光表示管の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、第1発明(請求項1に係る発明)は、真空排気された外囲器内に少なくともカソード電極と蛍光体が塗布されたアノード電極とを収容した蛍光表示管において、外囲器を構成するプレートガラスおよびフロントガラスの何れか一方の端部に封止された排気孔を設けたものである。この発明によれば、プレートガラスの端部、あるいはフロントガラスの端部に排気孔が設けられる。これにより、プレートガラスのアノード電極の形成領域側に排気孔を設けることによって生じていた従来の問題が一挙に解決される。
【0014】
〔排気孔をプレートガラスの端部に設けた場合〕
プレートガラスの端部は、アノード電極の形成領域とはされないので、配線層などは形成されない。このため、プレートガラスの端部に排気孔を形成する際にマイクロクラックやガラス粉などが生じても、これが配線層などの形成過程での不良の発生要因となる虞れはない。また、配線引き回しの障害がなくなり、設計上の制約が緩和される。また、絶縁層透過型の蛍光表示管では、透過光の照射領域に排気孔栓が入らないようにして、表示面に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0015】
〔排気孔をフロントガラスの端部に設けた場合〕
プレートガラスには排気孔が設けられない。このため、プレートガラスにはマイクロクラックやガラス粉などが生じず、配線層などの形成過程での不良の発生率が小さくなる。また、配線引き回しの障害がなくなり、設計上の制約が緩和される。また、絶縁層透過型の蛍光表示管では、プレートガラスから排気孔栓がなくなるため、排気孔栓の影が表示面に現れることはない。
【0016】
第2発明(請求項2に係る発明)は、真空排気された外囲器内に少なくともカソード電極と蛍光体が塗布されたアノード電極とを収容した蛍光表示管の製造方法において、アノード電極が形成されたプレートガラスとこのプレートガラスよりもその長さが短いフロントガラスとをカソード電極およびグリッド電極を挟んで対面させ、プレートガラスとフロントガラスとの対面領域の周囲をスペーサガラスを介して接着する工程と、フロントガラスに対するプレートガラスの対面領域と非対面領域との境界部の対面領域側に位置するように排気孔を形成する工程と、排気孔を排気通路としてプレートガラスとフロントガラスとの対面空間内の真空排気を行う工程と、プレートガラスとフロントガラスとの対面空間内の真空排気を行った後に排気孔を封止する工程と、排気孔を封止した後にプレートガラスのフロントガラスとの非対面領域を切除する工程とを設けたものである。
【0017】
この発明によれば、プレートガラスのフロントガラスとの対面領域と非対面領域との境界部の対面領域側に形成された排気孔を排気通路として、プレートガラスとフロントガラスとの対面空間内の真空排気が行われる。この場合、プレートガラスのフロントガラスとの対面領域だけではなく、この対面領域につながるプレートガラスのフロントガラスとの非対面領域を排気ヘッドのOリングを密着させるための領域として利用できるので、Oリングの径や形状を変えることなく、既存の真空排気設備を使用して、プレートガラスとフロントガラスとの対面空間内(外囲器内)の真空排気を行うことが可能となる。不要となったプレートガラスのフロントガラスとの非対面領域は、排気孔を塞いた後に、切除される。
【0018】
第3発明(請求項3に係る発明)は、真空排気された外囲器内に少なくともカソード電極と蛍光体が塗布されたアノード電極とを収容した蛍光表示管の製造方法において、アノード電極が形成されたプレートガラスとこのプレートガラスよりもその長さが長いフロントガラスとをカソード電極およびグリッド電極を挟んで対面させ、プレートガラスとフロントガラスとの対面領域の周囲をスペーサガラスを介して接着する工程と、プレートガラスに対するフロントガラスの対面領域と非対面領域との境界部の対面領域側に位置するように排気孔を形成する工程と、排気孔を排気通路としてプレートガラスとフロントガラスとの対面空間内の真空排気を行う工程と、プレートガラスとフロントガラスとの対面空間内の真空排気を行った後に排気孔を封止する工程と、排気孔を封止した後にフロントガラスのプレートガラスとの非対面領域を切除する工程とを設けたものである。
【0019】
この発明によれば、フロントガラスのプレートガラスとの対面領域と非対面領域との境界部の対面領域側に形成された排気孔を排気通路として、プレートガラスとフロントガラスとの対面空間内の真空排気が行われる。この場合、フロントガラスのプレートガラスとの対面領域だけではなく、この対面領域につながるフロントガラスのプレートガラスとの非対面領域を排気ヘッドのOリングを密着させるための領域として利用できるので、Oリングの径や形状を変えることなく、既存の真空排気設備を使用して、プレートガラスとフロントガラスとの対面空間内(外囲器内)の真空排気を行うことが可能となる。不要となったフロントガラスのプレートガラスとの非対面領域は、排気孔を封止した後に、切除される。
【発明の効果】
【0020】
第1発明の蛍光表示管によれば、外囲器を構成するプレートガラスおよびフロントガラスの何れか一方の端部に真空排気を行うための排気孔を設けたので、プレートガラスのアノード電極の形成領域側に排気孔を設けることによって生じていた、(1)歩留まりへの影響、(2)設計上の制約、(3)絶縁層透過型の蛍光表示管での表示品位の低下などの各種の問題を一挙に解決することができるようになる。
【0021】
また、第2発明の蛍光表示管の製造方法によれば、プレートガラスのフロントガラスとの対面領域と非対面領域を排気ヘッドのOリングを密着させるための領域として利用することにより、また、第3発明の蛍光表示管の製造方法によれば、フロントガラスのプレートガラスとの対面領域と非対面領域を排気ヘッドのOリングを密着させるための領域として利用することにより、Oリングの径や形状を変えることなく、既存の真空排気設備を利用して、端部に排気孔が形成された蛍光表示管を製造することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係る蛍光表示管の第1の実施の形態(実施の形態1)の概略構成を示す一部破断側断面図である。同図において、図5と同一符号は図5を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示す。
【0023】
この蛍光表示管200において、外囲器4’は、従来の外囲器4と同様に、プレートガラス4−1と、フロントガラス4−2と、スペーサガラス4−3とから構成され、スペーサガラス4−3を介してプレートガラス4−1とフロントガラス4−2とを対面させ、このプレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面領域の周囲をスペーサガラス4−3を介しフリットガラスによって接着している。
【0024】
プレートガラス4−1の基板面には、配線層5が形成されており、配線層5の上に絶縁層6が形成され、絶縁層6の上にアノード電極3が形成されている。アノード電極3はスルーホール7を通して配線層5に接続されている。また、アノード電極3の上面には蛍光体8が塗布されている。カソード電極1はその両端がフレーム9−1,9−2によってサポートされている。
【0025】
この蛍光表示管200において、外囲器4’内と連通する排気孔10は、プレートガラス4−1の端部4−1a、すなわちカソード電極1をサポートしているフレーム9−1よりも外側(スペーサガラス4−3との接着部の近傍)に設けられている。そして、この排気孔10を排気通路として外囲器4’内の真空排気を行った後、プレートガラス4−1の外面に臨む排気孔10の出口を排気孔栓(金属板)11で塞いでいる。この蛍光表示管200では、プレートガラス4−1の端部4−1aに排気孔10を設けることによって、従来の蛍光表示管100において生じていた問題を一挙に解決している。
【0026】
(1)歩留まりへの影響
プレートガラス4−1の端部4−1aは、アノード電極3の形成領域とはされないので、配線層5などは形成されない。このため、プレートガラス4−1の端部4−1aに排気孔10を形成する際にマイクロクラックやガラス粉などが生じても、これが配線層5などの形成過程での不良の発生要因となる虞れはない。
【0027】
(2)設計上の制約
従来の蛍光表示管100では、排気孔10をフレーム9−1よりも内側(アノード電極3の形成領域側)に設けていたので、配線層5の設計に際し、排気孔10の周囲を避けなければならず、高精細表示(配線の高密度化)が進められる中で配線引き回しの障害となるという問題があった。これに対し、本実施の形態では、アノード電極3の形成領域とされないプレートガラス4−1の端部4−1aに排気孔10を設けるので、配線引き回しの障害がなくなり、設計上の制約が緩和される。
【0028】
(3)絶縁層透過型の蛍光表示管での表示品位の低下
絶縁層透過型の蛍光表示管では、絶縁層6を透明とし、プレートガラス4−1の下側から絶縁層6をバックライト(透過光)で照らし、表示の変化に特徴を持たせる。この場合、排気孔10がフレーム9−1よりも内側(アノード電極3の形成領域側)に設けられていると、この排気孔10を塞ぐ金属製の排気孔栓11によって透過光が遮られ、その影が表示面に現れて、表示品位が低下する。これに対し、本実施の形態では、プレートガラス4−1の端部4−1aに排気孔10を形成しているので、透過光の照射領域S0に排気孔栓11が入らず、表示面に影響を及ぼすことがない。
【0029】
〔製造方法〕
図3にこの蛍光表示管200の製造工程の一部を抜粋して示す。図3(a)は真空排気行程を説明する図である。この蛍光表示管200を製造する場合、プレートガラス4−1とフロントガラス4−2とは、その長さを異ならせる。この例では、プレートガラス4−1の長さL1をフロントガラス4−2の長さL2よりもL3だけ長くする。換言すれば、フロントガラス4−2の長さL2をプレートガラス4−1の長さL1よりもL3だけ短くする。なお、プレートガラス4−1の幅(図3(a)における紙面奥行き方向の寸法)は、フロントガラス4−2の幅とほゞ等しくする。
【0030】
図3(a)に示した真空排気行程では、この工程に至るまでの間に、プレートガラス4−1への排気孔10、配線層5,絶縁層6,アノード電極3の形成、アノード電極3への蛍光体8の塗布が行われている。また、プレートガラス4−1とフロントガラス4−2とをカソード電極1およびグリッド電極2を挟んで対面させ、プレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面領域S1,S2の周囲をスペーサガラス4−3を介して接着している。なお、排気孔10は、プレートガラス4−1のフロントガラス4−2との対面領域S1とこの対面領域S1につながるフロントガラス4−2との非対面領域S3との境界部の対面領域S1側に形成されている。すなわち、排気孔10は、プレートガラス4−1のフロントガラス4−2との対面領域S1中、スペーサガラス4−3との接着部の近傍に設けられている。
【0031】
この真空排気行程では、排気孔10を排気通路として、プレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面空間4−4内の真空排気を行う。この場合、プレートガラス4−1の外面に臨む排気孔10に対して、真空排気設備の排気ヘッド300をセットする。すなわち、排気ヘッド300の中央部に排気孔10が位置するようにして、排気ヘッド300のヘッド面をOリング301を介してプレートガラス4−1に密着させる。この状態で、シリンダ302を作動させて、排気孔10を排気通路としてプレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面空間4−4内の真空排気を行う。
【0032】
この真空排気行程では、プレートガラス4−1のフロントガラス4−2との対面領域S1だけではなく、プレートガラス4−1のフロントガラス4−2との非対面領域S3も排気ヘッド300のOリング301を密着させるための領域として利用している。これにより、Oリング301がプレートガラス4−1からはみ出すことがなく、Oリング301の径や形状を変えることなく、既存の真空排気設備を使用して、プレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面空間4−4内の真空排気を行うことができている。
【0033】
不要となったプレートガラス4−1のフロントガラス4−2との非対面領域S3は、排気孔10を排気孔栓11で塞いだ後に(図3(b))、スクライブなどで切除する。なお、プレートガラス4−1のフロントガラス4−2との非対面領域S3の長さL3は、既存の真空排気設備におけるOリング301の径に合わせ、このOリング301がはみ出ないような寸法に設定すればよいことは言うまでもない。但し、この非対面領域S3の長さL3があまり短いと、切除に際する折り取りなどの作業が困難になる場合も考えられる。このような点に注意し、非対面領域S3の長さL3を適切に定める。
【0034】
〔実施の形態2〕
図2はこの発明に係る蛍光表示管の第2の実施の形態(実施の形態2)の概略構成を示す一部破断側断面図である。この蛍光表示管201では、排気孔10をプレートガラス4−1ではなく、フロントガラス4−2の端部4−2aに設けることによって、従来の蛍光表示管100において生じていた問題を一挙に解決している。
【0035】
(1)歩留まりへの影響
この蛍光表示管201では、フロントガラス4−2に排気孔10が設けられ、プレートガラス4−1には排気孔10が設けられない。このため、プレートガラス4−1にマイクロクラックやガラス粉などは生じず、配線層5などの形成過程での不良の発生率が小さくなる。
(2)設計上の制約
フロントガラス4−2側に排気孔10を形成するので、プレートガラス4−1での配線引き回しの障害がなくなり、設計上の制約が緩和される。
(3)絶縁層透過型の蛍光表示管での表示品位の低下
プレートガラス4−1から排気孔10がなくなり、この排気孔10を塞ぐ排気孔栓11もなくなるので、排気孔栓11の影が表示面に現れるということはない。
【0036】
(4)その他
排気孔10がフロントガラス4−2の端部4−2aに位置するので、この排気孔10を塞ぐ排気孔栓11が表示の邪魔となることもない。また、フロントガラス4−2は、プレートガラス4−1と比較して熱工程が少ないので、排気孔10の周囲に生じる歪みが小さく、加圧強度が高くなる。
【0037】
〔製造方法〕
図4にこの蛍光表示管201の製造工程の一部を抜粋して示す。図4(a)は真空排気行程を示す図である。この蛍光表示管201を製造する場合、プレートガラス4−1とフロントガラス4−2とは、その長さを異ならせる。この例では、フロントガラス4−2の長さL2をプレートガラス4−1の長さL1よりもL4だけ長くする。換言すれば、プレートガラス4−1の長さL1をフロントガラス4−2の長さL2よりもL4だけ短くする。なお、フロントガラス4−2の幅(図4(a)における紙面奥行き方向の寸法)は、プレートガラス4−1の幅とほゞ等しくする。
【0038】
図4(a)に示した真空排気行程では、この工程に至るまでの間に、プレートガラス4−1への配線層5,絶縁層6,アノード電極3の形成、アノード電極3への蛍光体8の塗布、フロントガラス4−2への排気孔10の形成が行われている。また、プレートガラス4−1とフロントガラス4−2とをカソード電極1およびグリッド電極2を挟んで対面させ、プレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面領域S1,S2の周囲をスペーサガラス4−3を介して接着している。なお、排気孔10は、フロントガラス4−2のプレートガラス4−1との対面領域S2とこの対面領域につながるプレートガラス4−1との非対面領域S4との境界部の対面領域S2側に形成されている。すなわち、排気孔10は、フロントガラス4−2のプレートガラス4−1との対面領域S2中、スペーサガラス4−3との接着部の近傍に設けられている。
【0039】
この真空排気行程では、排気孔10を排気通路として、プレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面空間4−4内の真空排気を行う。この場合、プレートガラス4−1の外面に臨む排気孔10に対して、真空排気設備の排気ヘッド300をセットする。すなわち、排気ヘッド300の中央部に排気孔10が位置するようにして、排気ヘッド300のヘッド面をOリング301を介してフロントガラス4−2に密着させる。この状態で、シリンダ302を作動させて、排気孔10を排気通路としてプレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面空間4−4内の真空排気を行う。
【0040】
この真空排気行程では、フロントガラス4−2のプレートガラス4−1との対面領域S2だけではなく、フロントガラス4−2のプレートガラス4−1との非対面領域S4も排気ヘッド300のOリング301を密着させるための領域として利用している。これにより、Oリング301がフロントガラス4−2からはみ出すことがなく、Oリング301の径や形状を変えることなく、既存の真空排気設備を使用して、プレートガラス4−1とフロントガラス4−2との対面空間4−4内の真空排気を行うことができている。
【0041】
不要となったフロントガラス4−2のプレートガラス4−1との非対面領域S4は、排気孔10を排気孔栓11で塞いだ後に(図4(b))、スクライブなどで切除する。なお、フロントガラス4−2のプレートガラス4−1との非対面領域S4の長さL4は、既存の真空排気設備における排気ヘッド300のOリング301の径に合わせ、このOリング301がはみ出ないような寸法に設定すればよいことは言うまでもない。但し、この非対面領域S4の長さL4があまり短いと、切除に際する折り取りなどの作業が困難になる場合も考えられる。このような点に注意し、非対面領域S4の長さL4を適切に定める。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る蛍光表示管の第1の実施の形態(実施の形態1)の概略構成を示す一部破断側断面図である。
【図2】本発明に係る蛍光表示管の第2の実施の形態(実施の形態2)の概略構成を示す一部破断側断面図である。
【図3】実施の形態1の蛍光表示管の製造工程の一部を抜粋して示す図である。
【図4】実施の形態2の蛍光表示管の製造工程の一部を抜粋して示す図である。
【図5】従来の蛍光表示管の概略構成を示す一部破断側断面図である。
【図6】従来の蛍光表示管を製造する際の真空排気工程を説明する図である。
【図7】プレートガラスの端部)に排気孔を設けるようにした場合の真空排気行程での問題点を説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
1…カソード電極、2…グリッド電極、3…アノード電極、4’…外囲器、4−1…プレートガラス、4−2…フロントガラス、4−1a…プレートガラスの端部、4−2a…フロントガラスの端部、S1,S2…対向領域、S3,S4…非対向領域、4−3…スペーサガラス、4−4…対面空間、5…配線層、6…絶縁層、7…スルーホール、8…蛍光体、9−1,9−2…フレーム、10…排気孔、11…排気孔栓、200,201…蛍光表示管、300…排気ヘッド、301…Oリング、302…シリンダ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気された外囲器内に少なくともカソード電極と蛍光体が塗布されたアノード電極とを収容した蛍光表示管において、
前記外囲器は、
前記アノード電極が形成されたプレートガラスと、
このプレートガラスと離間して対向配置されたフロントガラスとを有し、
前記プレートガラスおよび前記フロントガラスの何れか一方の端部に封止された排気孔が設けられていることを特徴とする蛍光表示管。
【請求項2】
真空排気された外囲器内に少なくともカソード電極と蛍光体が塗布されたアノード電極とを収容した蛍光表示管の製造方法において、
前記アノード電極が形成されたプレートガラスとこのプレートガラスよりもその長さが短いフロントガラスとを前記カソード電極を挟んで対面させ、前記プレートガラスと前記フロントガラスとの対面領域の周囲をスペーサガラスを介して接着する工程と、
前記フロントガラスに対する前記プレートガラスの対面領域と非対面領域との境界部の対面領域側に位置するように排気孔を形成する工程と、
前記排気孔を排気通路として前記プレートガラスと前記フロントガラスとの対面空間内の真空排気を行う工程と、
前記プレートガラスと前記フロントガラスとの対面空間内の真空排気を行った後に前記排気孔を封止する工程と、
前記排気孔を封止した後に前記プレートガラスの前記フロントガラスとの非対面領域を切除する工程と
を備えたことを特徴とする蛍光表示管の製造方法。
【請求項3】
真空排気された外囲器内に少なくともカソード電極と蛍光体が塗布されたアノード電極とを収容した蛍光表示管の製造方法において、
前記アノード電極が形成されたプレートガラスとこのプレートガラスよりもその長さが長いフロントガラスとを前記カソード電極を挟んで対面させ、前記プレートガラスと前記フロントガラスとの対面領域の周囲をスペーサガラスを介して接着する工程と、
前記プレートガラスに対する前記フロントガラスの対面領域と非対面領域との境界部の対面領域側に位置するように排気孔を形成する工程と、
前記排気孔を排気通路として前記プレートガラスと前記フロントガラスとの対面空間内の真空排気を行う工程と、
前記プレートガラスと前記フロントガラスとの対面空間内の真空排気を行った後に前記排気孔を封止する工程と、
前記排気孔を封止した後に前記フロントガラスの前記プレートガラスとの非対面領域を切除する工程と
を備えたことを特徴とする蛍光表示管の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−12430(P2006−12430A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183381(P2004−183381)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000117940)ノリタケ伊勢電子株式会社 (38)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】