説明

蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路

【課題】入力電圧の変動に影響されることなく、安定した出力電圧を得ることができ、しかも、従来回路に比して、装置のコンパクト化および効率の大幅な向上を図りうる蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路を得る。
【解決手段】1次巻線3を有して入力側に形成された入力側閉回路51と、2次巻線4を有して出力側に形成された出力側閉回路52とを具備し、1次巻線3と2次巻線4とが結合用コンデンサ5により接続されてなり、入力直流電圧を出力側閉回路52において所望の直流電圧へ変換出力可能に構成されてなるSEPIC回路を用いたコンバータ回路であって、2次巻線4に設けられた第1及び第3の電圧出力用タップ6a,6cには蛍光表示管のフィラメント電圧が、第2の電圧出力用タップ6bには、そのカットオフ電圧が、それぞれ得られるよう構成されたものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光表示管を駆動するために、入力された直流電圧を所望の出力用直流電圧に変換する蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、蛍光表示管を駆動するDC−DCコンバータ回路としては、例えば、いわゆるフライバックトランスを用いたものが知られている。すなわち、1次側に設けられたスイッチングトランジスタのオン時にフライバックトランスに蓄積したエネルギを、このスイッチングトランジスタのオフ時に放出させることで、トランスの2次側に所望する電圧が得られるように構成された回路であり、例えば、下記特許文献1(特に第4、5頁、図1)等に開示されている。
【0003】
このようなDC−DCコンバータ回路としては、その他に、2個のスイッチングトランジスタを、出力トランスと組み合わせることで自励発振が行われるようにし、その発振により出力トランスの2次側に所望の電圧を得ることができるように構成されたロイヤー回路を用いたもの等が広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−278762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、上記フライバック回路を用いたものにおいては、蛍光表示管のフィラメント等に印加するための交流電圧を出力し得るようにしているが、この交流出力電圧は入力電圧の変動に比例して変動してしまい、さらにトランスサイズが大きくなりやすく、動作効率を余り高くできないという課題がある。
【0006】
一方、上記ロイヤー回路を用いたものにおいては、正弦波発振を用いるために、比較的ノイズが少ないという利点があるものの、入力電圧の変動に比例した出力変動を阻止することができず、また、動作効率も低いという課題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、入力電圧の変動に影響されることなく、安定した出力電圧を得ることができ、しかも、従来回路に比して、装置のコンパクト化および効率の大幅な向上を図り得る蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路は、
入力側に形成された、第1の巻線を有する入力側閉回路と、出力側に形成された、第2の巻線を有する出力側閉回路と、これら2つの巻線を接続するコンデンサとを備え、入力された直流電圧を前記出力側閉回路において所望の直流電圧に変換して出力するセピック(SEPIC)回路を備えてなる蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路であって、
前記第2の巻線に電圧出力用のタップを設け、該タップから交流電圧が出力可能に構成されてなることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記電圧出力用のタップは、蛍光表示管のフィラメント電圧としての交流電圧を得る2つのタップと、その2つのタップの中間に位置する中間タップにより構成され、この中間タップは、前記フィラメント電圧に対するカットオフ電圧としての直流電圧が得られる巻線位置に設けられたものであることが好ましい。
【0010】
さらに、この場合において、前記第2の巻線は、その一方の端部がダイオードを介して電解コンデンサの正極に接続され、前記電解コンデンサの正極においては直流電圧が出力可能とされる一方、前記第2の巻線の他方の端部がグランドに接続され、前記中間タップの巻線位置は、前記グランドに接続された端部を基準として定められたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路では、入力された直流電圧を、第1の巻線と第2の巻線をコンデンサで接続してなるSEPIC回路を構成する出力側閉回路において蛍光表示管の駆動回路などに送出する所望の直流電圧に変換して出力するようにしており、また、出力側の第2の巻線には交流電圧出力用のタップを設け、該タップから蛍光表示管のフィラメントに送出される交流電圧を出力可能に構成している。このように、SEPIC回路を用いて構成することで、入力電圧の変動に影響されることなく、安定した交流電圧出力を得ることができ、しかも、従来回路に比して、装置のコンパクト化および動作効率の大幅な向上を図ることができる。
【0012】
すなわち、本発明の蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路によれば、従来回路に比して構成部品を増やすことなく、蛍光表示管駆動回路用の直流電圧のみならず蛍光表示管のフィラメント用の交流電圧を安定して得ることができ、動作効率も大幅に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路の回路構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路は、例えば、蛍光表示管を駆動するためのDC−DCコンバータ回路であって、制御用IC1と、スイッチングトランジスタ2と、第1の巻線(本実施形態においては1次巻線:以下1次巻線と称する)3及び第2の巻線(本実施形態においては2次巻線:以下2次巻線と称する)4と、結合用コンデンサ5と、電圧出力用タップ部6a〜cとを主たる構成要素として構成されてなるもので、いわゆるSEPIC(Single Ended Primary Inductance Converter)回路を基本とした構成となっている。
【0015】
ここで、SEPIC回路とは、一般に、トランスの1次巻線(3)と2次巻線(4)の間に結合用コンデンサ(5)が接続されており、このコンデンサによって1次巻線と2次巻線の各電流が連続となり、例えばフライバック回路などと比べてノイズ成分を小さくするように構成されたものである。
【0016】
また、上記制御用IC(図1においては「CONT−IC」と表記)1は、スイッチングトランジスタ2のオン・オフを制御する駆動制御信号を出力するよう構成されてなるもので、その構成、基本的な動作は、従来から用いられているものと同一のものである。
【0017】
上述のスイッチングトランジスタ2のオン・オフを制御する駆動制御信号は、具体的には、いわゆるPWM信号であり、そのデューティは、制御用IC1に予め設定された時定数によって所望の値に設定されたものとなっている。かかるPWM信号は、制御用IC1の駆動制御信号出力端子(図1においては「Scont」と表記)から出力されるようになっている。
【0018】
本発明の実施の形態において、スイッチングトランジスタ2には、nチャンネルMOSトランジスタが用いられており、そのゲートが上述の制御用IC1の駆動制御信号出力端子Scontに接続されたものとなっている。なお、スイッチングトランジスタ2に用いられる半導体素子は、勿論、nチャンネルMOSトランジスタに限定される必要はなく、他の種類のスイッチング素子を用いても良い。
【0019】
そして、スイッチングトランジスタ2のドレインは、1次巻線3の巻き終り端3bに接続されるとともに、結合用コンデンサ5の一端に接続される一方、そのソースは、グランドに接続されたものとなっている。
【0020】
また、1次巻線3の巻き始め端(図1において、1次巻線3の上端位置であって、黒丸印が記された箇所)3aは、外部から直流電圧が印加される直流電圧入力端子21に接続されている。
上述の1次巻線3およびスイッチングトランジスタ2によって、SEPIC回路における入力側の閉回路(以下「入力側閉回路」と称する)51が形成されるものとなっている。
【0021】
一方、結合用コンデンサ5の他端は、後述するように2次巻線4の所定の位置に接続されている。
【0022】
本発明の実施の形態における2次巻線4は、巻き始め端(図1において、2次巻線4の下端位置であって、黒丸印が記された箇所)4aと巻き終り端4bとの間に、3つの電圧出力用タップ6a〜6cを備えたものとなっている。
【0023】
すなわち、ここで、2次巻線4の全体の巻数をnとし、その巻き始め端4aを基準とした場合の、第1の電圧出力用タップ6aにおける巻数をn1、第2の電圧出力用タップ6bにおける巻数をn2、第3の電圧出力用タップ6cにおける巻数をn3とすれば、第1乃至第3の電圧出力用タップ6a〜6cは、n>n3>n2>n1の関係となる巻線位置に、それぞれ設けられたものとなっている。特に、本発明の実施の形態においては、第2の電圧出力用タップ6bが、第1及び第3の電圧出力用タップ6a,6cの丁度、中間点となる巻線位置に設定されている。すなわち、換言すれば、第1乃至第3の電圧出力用タップ6a〜6cは、n2=(n3−n1)/2+n1の関係が成立するように設定されたものとなっている。これは、良く知られているように、もれ発光を防止することを目的として、いわゆるセンタータップとして機能する電圧出力用タップ6bからカットオフ電圧を得るためである。なお、第1乃至第3の電圧出力用タップ6a〜6cの、より具体的な配設位置については、後述する。
【0024】
かかる2次巻線4の巻き始め端4aはグランドに接続され、その巻き終り端4bは第1のダイオード7のアノードに接続されている。
ここで、上記結合用コンデンサ5の他端が接続される2次巻線4の所定の位置は、SEPIC回路において、原則として、2次巻線4のグランドに接続された端部、すなわち、本発明の実施の形態においては巻き始め端4aと、結合用コンデンサ5の他端が接続された所定の位置との間の巻数が、1次巻線3の総巻数と同一となるように設定されたものとなっている。
【0025】
第1のダイオード7のカソードとグランドとの間には、電解コンデンサ9が接続され、その一方、該カソードと電解コンデンサ9の正極との接続点には、直流電圧出力端子22が接続されており、その直流電圧(Vout)が、例えば蛍光表示管(VDF)の駆動回路に出力可能となっている。
【0026】
なお、上述の2次巻線4、第1のダイオード7、電解コンデンサ9によって、SEPIC回路における出力側の閉回路(以下「出力側閉回路」と称する)52が形成されるものとなっている。
【0027】
さらに、第1のダイオード7のカソードとグランドとの間には、カソード側からツェナー用抵抗器11とツェナーダイオード12が直列的に接続されて設けられている。すなわち、第1のダイオード7のカソードにツェナー用抵抗器11の一端が接続され、ツェナー用抵抗器11の他端には、ツェナーダイオード12のカソードが接続され、ツェナーダイオード12のアノードは、グランドに接続されたものとなっている。
【0028】
一方、2次巻線4の第1の電圧出力用タップ6aと第3の電圧出力用タップ6cとの間には、抵抗器13が接続されており、この第1及び第3の電圧出力用タップ6a,6c間で、交流電圧(Vf)が得られるようになっている。本発明の実施の形態においては、この第1及び第3の電圧出力用タップ6a,6c間で得られた交流電圧が、先に述べたように蛍光表示管(図示せず)のフィラメント用の電圧(Vf)とされている。
【0029】
本発明の実施の形態においては、2次巻線4の結合用コンデンサ5の他端と2次巻線4の巻終り端4bの間の部分は、1次巻線3に対していわゆる巻上げ(オートトランス)として機能するものであり、これにより、フィラメント電圧とは別系の昇圧を図ることが可能との効果を奏することができる。
【0030】
また、第2の電圧出力用タップ6bと2次巻線4との間には第2のダイオード8が配されており、この第2のダイオード8のアノードが2次巻線4側、そのカソードが第2の電圧出力用タップ6b側となるように第2のダイオード8の向きが設定されるとともに、上記第2の電圧出力用タップ6bは、ツェナーダイオード12のカソードに接続されたものとなっている。
【0031】
これにより、第2の電圧出力用タップ6bで得られる電圧は、ツェナーダイオード12により定電圧化され、かかる電圧は、蛍光表示管(図示せず)のフィラメント電圧のいわゆるカットオフ電圧として用いられるようになっている。
【0032】
かかる第1乃至第3の電圧出力用タップ6a〜6cは、本発明の実施の形態においては、第2の電圧出力用タップ6bで得られる電圧が、2次巻線4の巻き始め端4aを基準として、所望の電圧が得られる巻線位置に設定されるものとなっている。
【0033】
なお、本発明の実施の形態においては、ツェナーダイオード12により第2の電圧出力用タップ6bで得られる電圧が、例えば+5Vとなるように構成されたものとなっている。
【0034】
上述したように、本実施形態の蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路においては、直流電圧入力端子21に所定の直流電圧が印加され、制御IC1によりスイッチングトランジスタ2がオン・オフ操作されることで、直流電圧出力端子22には、所望の大きさの直流電圧が得られ、さらに、2次巻線4に設けられた第1及び第3の電圧出力用タップ6a,6cによって、蛍光表示管(図示せず)のフィラメント電圧が得られるとともに、第1及び第3の電圧出力用タップ6a,6cの間のセンタータップとなる第2の電圧出力用タップ6bにてカットオフ電圧としての直流電圧が得られるものとなっている。
【0035】
本発明の実施の形態における蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路は、かかる構成により、従来のフライバックコンバータ等に比して動作効率の良いものとなっている。
【0036】
なお、上記実施形態において説明した部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々変更することができるものである。
例えば、第2の電圧出力用タップ6bで得られる電圧は+5Vに限られるものではなく、ツェナーダイオード12の定格値を調整する等して、その他の所望の電圧に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
蛍光表示管の駆動に必要な直流電圧のみならず、フィラメントに印加する交流電圧を同時に得ることができるよう構成されており、蛍光表示管の電圧供給に適する。
【符号の説明】
【0038】
1 制御用IC
2 スイッチングトランジスタ
3 1次巻線
3a、4a 巻き始め端
3b、4b 巻き終わり端
4 2次巻線
5 結合用コンデンサ
6a〜c 電圧出力用タップ
7、8 ダイオード
9 電解コンデンサ
11 ツェナーダイオード抵抗器
12 ツェナーダイオード
21 直流電圧入力端子
22 直流電圧出力端子
51 入力側閉回路
52 出力側閉回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側に形成された、第1の巻線を有する入力側閉回路と、出力側に形成された、第2の巻線を有する出力側閉回路と、これら2つの巻線を接続するコンデンサとを備え、入力された直流電圧を前記出力側閉回路において所望の直流電圧に変換して出力するセピック(SEPIC)回路を備えてなる蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路であって、
前記第2の巻線に電圧出力用のタップを設け、該タップから交流電圧が出力可能に構成されてなることを特徴とする蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路。
【請求項2】
前記電圧出力用のタップは、蛍光表示管のフィラメント電圧としての交流電圧を得る2つのタップと、その2つのタップの中間に位置する中間タップにより構成され、この中間タップは、前記フィラメント電圧に対するカットオフ電圧としての直流電圧が得られる巻線位置に設けられたものであることを特徴とする請求項1記載の蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路。
【請求項3】
前記第2の巻線は、その一方の端部がダイオードを介して電解コンデンサの正極に接続され、前記電解コンデンサの正極においては直流電圧が出力可能とされる一方、前記第2の巻線の他方の端部がグランドに接続され、前記中間タップの巻線位置は、前記グランドに接続された端部を基準として定められたものであることを特徴とする請求項2記載の蛍光表示管用DC−DCコンバータ回路。


【図1】
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【公開番号】特開2012−3013(P2012−3013A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137462(P2010−137462)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】