説明

融雪用架空電線

【課題】 径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線から出っ張る線材がなく、金車を通すときに傷つくものがなく、かつ、熱の放散が小さく有効に融雪・融氷を行うことができる融雪用架空電線を提供する。
【解決手段】 送電用金属線(3)が径方向に層状に撚り合わせられた架空電線(1)であって、前記送電用金属線(3)とともに磁力線の変化に伴い発熱する磁性線材(4)が撚り合わされ、径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線(E)がほぼ円形を成すように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空電線、特に送電用の架空電線への着雪・着氷を融かすための融雪機能を備えた融雪用架空電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架空電線に雪が付着し、或いは融けた雪が氷結してこれが巨大化すると、架空電線に多大な荷重がかかり、架空電線の断線や鉄塔の倒壊事故に至ることがある。また、巨大化した雪又は氷の塊が架空電線から落下して家屋及びビニールハウスなどの線下構造物を破壊する事故を引き起こすことがある。そのため、多雪地帯においては架空電線への着雪・着氷を防止する対策が必要である。
そこで、架空電線への着雪・着氷防止策として、たとえば、架空電線の外周にリング形状や線材形状の磁性材料を装着し、送電線への通電によって生じる磁力線の変化によりその磁性材料中に発生する鉄損の発熱で着雪・着氷を防止し、また、着雪・着氷を融解する方法が創案されている。
【0003】
以下に示す特許文献1には、架空電線の外周面に磁性線材を螺旋状に巻回したものが示されている。
【特許文献1】特開平7−322457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の融雪用架空電線にあっては、架空電線の外周面に螺旋状に磁性線材を巻回しているため、架空電線の径方向の断面形状においてその最外周部を結んでできる外形線から出っ張って磁性線材が巻回されているため、送電線架線時に電線を懸吊して延線する際に使用する金車に、電線を通すときに、前記外形線から出っ張った磁性線材が傷つき易いという問題があった。すなわち、電線の断面形状における前記外形線よりも外側に出っ張っている磁性線材が下側になった状態で金車を通ると、電線の全荷重が磁性線材にかかってしまうためである。
また、特許文献1の融雪用架空電線にあっては、架空電線を金車に通すと螺旋状に巻回した磁性線材が位置ずれを起こすことに鑑み、これを防止するためにわざわざスペーサを融雪用架空電線の外周に設ける必要があった。
さらに、特許文献1の融雪用架空電線にあっては、発熱する磁性線材の大部分が外気に晒されているため、熱の放散が大きく必ずしも効果的に融雪・融氷を行えていないという問題もあった。
【0005】
磁性材料を用いる場合には、夏期の高潮流時においては磁性材料が発熱して電線の許容温度を超えてしまうという問題がある。そのため、夏期の高潮流時にその電線の許容温度を超えないようにしつつ、冬期における融雪機能を十分に発揮させることが重要となる。そして、架空電線の送電容量や融雪機能は、電線が架設される地域の気候(特に、気温や積雪量など)や送電量などに大きく左右される。また、磁性線材は鋼心や送電用金属線材よりも一般的に高価であるためできるだけ少ない本数で所定の性能(融雪機能、着雪防止機能など)を発揮させることが必要である。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、径方向の断面形状における磁性線材の配置を工夫し、前記外形線から出っ張る線材をなくすることで金車を通すときに傷つくことがなく、かつ、熱の放散が小さく有効に融雪・融氷を行うことができる融雪用架空電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の融雪用架空電線は、送電用金属線(3)が径方向に層状に撚り合わせられた架空電線(1)であって、前記送電用金属線(3)とともに磁力線の変化に伴い発熱する磁性線材(4)が撚り合わされ、径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線(E)がほぼ円形を成すように形成した、ことを特徴とする。
請求項2に記載の融雪用架空電線は、中心部に設けられた鋼心(2)と、該鋼心(2)の周囲に撚り合わされた送電用金属線(3)とを有した、ことを特徴とする。
請求項3に記載の融雪用架空電線は、前記磁性線材(4)を最外層部に位置するように撚り合わせた、ことを特徴とする。
請求項4に記載の融雪用架空電線は、中心部に設けられた鋼心(2)と、該鋼心(2)の周囲で径方向に層状に撚り合わせられた送電用金属線(3)とを有した、融雪用架空電線(1)であって、前記鋼心(2)とともに磁力線の変化に伴い発熱する磁性線材(4)が撚り合わされ、径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線(E)がほぼ円形を成すように形成した、ことを特徴とする。
請求項5に記載の融雪用架空電線は、前記鋼心(2)は、中心に配置された1本の鋼心(2a)と、該中心の鋼心(2a)を取り囲むように撚り合わせ状に設けられた複数の鋼心(2b)とから成り、前記中心の鋼心(2a)が磁性材料で形成された、ことを特徴とする。
請求項6に記載の融雪用架空電線は、中心部に設けられた鋼心(2)と、該鋼心(2)の周囲で径方向に層状に撚り合わせられた送電用金属線(3)とを有した、融雪用架空電線(1)であって、前記鋼心(2d)の全部が磁力線の変化に伴い発熱する磁性材料で形成され、径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線(E)がほぼ円形を成すように形成した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、磁性線材(4)を備え、融雪対策が施された融雪用架空電線(1)でありながら、径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線(E)が凸凹のない円形をしているので、円形をした前記外形線(E)から外側に出っ張る線材がなく、架空電線を金車に通過させる際に金車に引っ掛かる部分がなく作業をスムーズに行うことができ、また、金車に電線を通したときに一部の線材のみに荷重が集中することがないので、一部の線材のみが傷つくことがない。また、上記特許文献1にかかる発明のように、螺旋状に巻回した磁性線材の位置ずれを防止するために設けたスペーサなども不要とすることができる。
また、磁性線材(4)を送電用金属線(3)に撚り合わせているので、磁性線材(4)が外気に晒される部分が少なく、よって、磁性線材(4)の熱の放散が少ないため、送電用金属線(3)に効率よく熱伝導を行うことができ、融雪用架空電線(1)の外表面で効率よく着雪・着氷を防止することができるので、冬期に降雪量の多い地域に用いることができる。
なお、本発明の融雪用架空電線(1)は、同一本数の線材を有する電線と比較して、送電用金属線の本数が少なくなるので、夏期に送電量が極端に多くならない地域に適している。
【0009】
請求項2の発明によれば、鋼心(2)を設けたので、電線引張力に対する耐張力に優れた融雪用架空電線(1)にすることができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、融雪用架空電線(1A)の外周部に磁性線材(4A)が設けられているため、磁性線材(4A)を雪に直接接触させることができ、効率よく融雪機能を発揮することができる。なお、磁性線材(4)の一部が外気と接触しているが、磁性線材(4A)の外周面のほとんどは融雪用架空電線(1A)中に埋め込まれるようにして撚り合わされているため、熱の放散はごく僅かであり、有効に融雪機能を発揮する。
また、本発明の融雪用架空電線(1A)は、磁性線材(4A)が直接外気に触れており、僅かであるが外気に直接熱が奪われるため、極寒地ではないが降雪量が多い地域で、夏期は極端に送電量が多くならない地域に適している。
【0011】
請求項4の発明によれば、磁性線材(4B)を鋼心(2)とともに撚り合わせたので、一般に耐張力に優れる磁性線材(4B)も電線引張力に対抗する線材として機能し、よって、送電を担う送電用金属線(3)の本数を減らすことなく、かつ、融雪用架空電線(1B)としての電線引張力に対抗するための鋼心(2)の本数も実質的に減らすことなく、融雪機能を備えた融雪用架空電線(1B)を提供することができる。また、このような融雪用架空電線(1B)は、同一本数の線材を有する電線と比較しても送電用金属線の本数が少なくなることがないので、夏期に送電量が多くなる地域で、冬期はそこそこ降雪量がある地域に適している。
【0012】
請求項5の発明によれば、中心の1本の鋼心(2a)を磁性材料で構成したので、融雪用架空電線(1C)の全体に均等に熱伝達を行うことができ、融雪用架空電線(1C)の外表面において効率よく着雪・着氷を防止することができる。また、このような融雪用架空電線(1C)は、他の鋼心(鋼線材)に比較して高価な磁性線材の本数が少なく、かつ、鋼心(2a)の中心に磁性材料からなる線材を配置すれば、他の線材よりも長さを短くすることができるため、融雪機能を有する融雪用架空電線(1C)をさほど高価にならずに提供することができる。
また、本発明の融雪用架空電線(1C)は、同一本数の線材を有する電線と比較しても送電用金属線の本数が少なくなることがないので、夏期に送電量が多くなる地域で、冬期に多少の降雪量がある地域に適している。
【0013】
請求項6の発明によれば、送電容量及び引張強度を低下させることなく、発熱量をより多くすることができるため、夏期に送電量が多くなる地域で、特に極寒地などの融雪用架空電線(1D)に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線が円形の架空電線において、融雪作用を備えるという目的を、送電用金属線または鋼心に少なくとも1本以上の磁性線材を撚り合わせることにより実現した。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。図1及び図2は、本発明融雪用架空電線の実施例1を示すもので、図1は拡大した径方向の断面図で、図2は各線材を切断して示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、実施例1の融雪用架空電線1は、その中心部に設けられた鋼心2と、該鋼心2の外周側に撚り合わせ状に設けられた送電用金属線3と、該送電用金属線3とともに撚り合わされた磁性線材4とを有する。
鋼心2は、鋼線材から成り、図1に示すように、1本の鋼心2aの周囲に6本の鋼心2bが撚り合わせられて配置されている。
【0017】
送電用金属線3には、たとえば、アルミ合金線材が用いられ、上記6本の鋼心2の周囲に撚り合わされてなる複数本の送電用金属線3が径方向に層状に撚り合わされ、複数層(この実施例1にあっては2層)にわたって設けられている。
具体的には、6本の鋼心2の周囲に12本の1層目(内側層)の線材が撚り合わせられ、そのうちの10本が送電用金属線3で、2本が磁性線材4となっており、また、2層目(外側層)は1層目の線材の周囲に18本の送電用金属線3が撚り合わせられている。
これら1層目の送電用金属線3及び磁性線材4と2層目の送電用金属線3とは各層交互反対方向に同心円に撚り合わされている。
このように、構成された融雪用架空電線1は、径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線Eがほぼ円形に形成されており、したがって、前記外形線Eから外側に出っ張る線材は存在していない。
【0018】
磁性線材4には、たとえば、純鉄、Fe−Si系合金、Fe−Al系合金、Fe−Co系合金、Ni−Fe系合金などの磁性材料から成る線材が用いられている。
磁性線材4は、内側層の10本の送電用金属線3とともに撚り合わされており、融雪用架空電線1の中心を挟んで対向した位置に2本が配置されている。
なお、融雪用架空電線1には裸電線が用いられている。これは、各線材或いは全体を被覆すると電線自体の重量が増し、鉄塔間の間隔を狭くしなければならないためであり、この実施例1においても、鋼心2、送電用金属線3及び磁性線材4は裸電線が用いられている。
【0019】
しかして、この実施例1の融雪用架空電線1によれば、潮流時の送電用金属線3への通電によって生じる磁力線の変化によりその磁性線材4中に発生する鉄損で発熱が生じる。そして、磁性線材4は、最外周部(外側層)に位置する送電用金属線3より内側層の送電用金属線3に撚り合わせられているので、外気に直接触れる部分がなく、よって、磁性線材4で発熱した熱が外気へ直接放散されることがない。そのため、周囲の送電用金属線3に十分に熱が伝達され、その外表面で効率よく融雪機能を発揮し、融雪用架空電線1への着雪・着氷を防止することができる。
【0020】
また、このように融雪機能を備えた融雪用架空電線1でありながら、その径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線Eをほぼ円形に形成したので、金車を通すときに融雪用架空電線1が傷つくこともない。すなわち、特許文献1のように融雪用架空電線の外周面に螺旋状に磁性線材を巻回したものにあっては、金車を通すときに融雪用架空電線の下側に磁性線材が来たとき、金車の滑車と融雪用架空電線との間に磁性線材が挟まれた状態で磁性線材に融雪用架空電線の荷重が集中的にかかってしまい、磁性線材が傷つくという事故があったが、この実施例1にかかる融雪用架空電線1にあっては、一部の線材だけに荷重が集中的にかかることはなく、したがって、融雪用架空電線1が傷つくことはない。
さらに、この実施例1の融雪用架空電線1によれば、その中心部に鋼心2を配置したので、電線引張力に対抗する耐張力に優れ、鉄塔間の間隔を長くすることができる。
【0021】
なお、実施例1にかかる融雪用架空電線1は、同じ本数の線材を撚り線状にした電線に比べ、送電用金属線3の本数が2本少なく送電容量はやや劣るが、融雪機能を有するため多雪地帯で夏期に送電量が極端に多くならない地域に適している。
また、この実施例1において、鋼心2を設けた融雪用架空電線1について説明したが、本発明はこれに限らず、鋼心2を用いない融雪用架空電線にも適用することができる。但し、鋼心2を用いずに、送電用金属線3と磁性線材4とから成る融雪用架空電線にした場合、耐張力を有する硬銅撚り線、銅合金撚り線などに適用することができる。或いは、鉄塔間が短い箇所や電車の架線用のトロリ線などに適用することができる。
【実施例2】
【0022】
図3は、本発明融雪用架空電線の実施例2を示すものであり、拡大した径方向の断面図である。この実施例2にかかる融雪用架空電線1Aは、実施例1の融雪用架空電線1と比較して磁性線材4を撚り合わせた位置が相違するのみなので、その説明は相違点についてのみ行い、他の部分については図面の各部に前記実施例1にかかる融雪用架空電線1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付すことによりその説明を省略する。
【0023】
図3に示すように、実施例2の融雪用架空電線1Aは、磁性線材4Aが外側層の送電用金属線3に撚り合わされている。すなわち、2層ある送電用金属線3の外側層の18本の線材のうち、14本が送電用金属線3で、4本が磁性線材4Aとなっている。
【0024】
しかして、この実施例2の融雪用架空電線1Aによれば、実施例1の融雪用架空電線1と同様に、潮流時の送電用金属線3への通電によって磁性線材4Aが発熱して、着雪・着氷を防止することができ、かつ、融雪用架空電線1Aの前記外形線Eが円形であるので、融雪用架空電線1Aを金車に通したときであっても一部の線材に全体の荷重が集中的にかかることがなく、融雪用架空電線1Aが傷つくことがない。
しかも、この実施例2の融雪用架空電線1Aにあっては、最外層部の送電用金属線3とともに磁性線材4Aを撚り合わせたので、融雪用架空電線1Aに付着した雪は直ちに融雪される。すなわち、融雪用架空電線1Aの外周面に発熱する磁性線材4Aがあるため、融雪用架空電線1Aに積もった雪が発熱している磁性線材4Aに直接触れて融かされることになる。なお、磁性線材4Aはその外周面の一部が外気に触れるため、熱の放散が行われてしまうが、磁性線材4Aが融雪用架空電線1Aの前記外形線Eより内側であるため、磁性線材4Aの外周面の大部分が埋め込まれた状態となっており、したがって、熱の放散は少なく、接触する他の送電用金属線3に有効に熱伝達を行うことができ、着雪・着氷を防止することができる。
そして、実施例2にかかる融雪用架空電線1Aは、磁性線材4Aが直接外気に触れているため、僅かであるが外気に直接熱が奪われるため、極寒地ではないが、降雪量が多い地域に適している。なお、同一本数の線材を有する電線と比較して送電用金属線の本数が少なくなるので、夏期に送電量が極端に増加する地域には適していない。
【実施例3】
【0025】
図4は、本発明融雪用架空電線の実施例3を示すものであり、拡大した径方向の断面図である。この実施例3にかかる融雪用架空電線1Bは、実施例1の融雪用架空電線1と比較して磁性線材4を撚り合わせた位置が相違するのみなので、その説明は相違点についてのみ行い、他の部分については図面の各部に前記実施例1にかかる融雪用架空電線1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付すことによりその説明を省略する。
【0026】
図4に示すように、実施例3の融雪用架空電線1Bは、磁性線材4Bが鋼心2に撚り合わされている。すなわち、中心に位置した1本の鋼心2aの周囲に6本の線材が巻回され、この6本のうち、4本が鋼線材からなる鋼心2bで、2本が磁性線材4Bとなっている。
磁性線材4Bには、上記実施例1で示したとおり、純鉄、Fe−Si系合金、Fe−Al系合金、Fe−Co系合金、Ni−Fe系合金などの磁性材料から成る線材が用いられるが、とくに、Niを36wt%含有し残部Feからなる合金(36%Ni−Fe合金:インバー合金)を用いると、熱膨張特性が極めて小さいという性質を有するため、鋼心としても機能する。すなわち、熱変化により融雪用架空電線1Bが熱膨張したときでも、インバー合金がほとんど変化しないため、磁性線材4Bが鋼心2とともに融雪用架空電線1Bの自重による電線引張力を支えることができる。
【0027】
しかして、この実施例3の融雪用架空電線1Bによれば、実施例1の融雪用架空電線1と同様に、潮流時の送電用金属線3への通電によって磁性線材4Bが発熱して、着雪・着氷を防止することができ、かつ、融雪用架空電線1Bの前記外形線Eが円形であるので、融雪用架空電線1Bを金車に通したときであっても一部の線材に全体の荷重が掛かることがなく、融雪用架空電線1Bが傷つくこともない。
しかも、この実施例3の融雪用架空電線1Bにあっては、磁性線材4Bを鋼心2と撚り合わせたので、同一本数の線材を有する電線と比較して、その7本の鋼心のうち、2本を磁性線材4Bに置換した如き構造であり、送電用金属線3の本数を減らすことがないため、融雪用架空電線1Bとしての送電容量が少なくなることもなく、夏期に送電量が多くなる地域でも用いることができ、冬期には融雪機能を有するので多雪地帯でも用いることができる。
なお、この実施例3の融雪用架空電線1Bにあっては、磁性線材4Bに鋼心2としての機能も併せ持たせたので、融雪用架空電線1Bとしての引張強度が低下することもない。
【実施例4】
【0028】
図5は、本発明融雪用架空電線の実施例4を示すものであり、拡大した径方向の断面図である。この実施例4にかかる融雪用架空電線1Cは、実施例1の融雪用架空電線1と比較して磁性線材4を撚り合わせた位置が相違するのみなので、その説明は相違点についてのみ行い、他の部分については図面の各部に前記実施例1にかかる融雪用架空電線1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付すことによりその説明を省略する。
【0029】
図5に示すように、実施例4の融雪用架空電線1Cは、7本ある鋼心2のうち、中心に位置する鋼心2aが磁性材料で形成されている。この材質としては、上記実施例3で示したインバー合金(36%Ni−Fe合金)が好ましい。すなわち、熱変化により融雪用架空電線1Cが熱膨張したときでも、インバー合金はほとんど変化しないため、鋼心2aとともに融雪用架空電線1Cの電線引張力を支えることができる。なお、中心の鋼心2aの周囲に位置する他の鋼心2bは上記実施例1、2、3の鋼心2と同様に鋼線材で形成されている。
【0030】
しかして、この実施例4の融雪用架空電線1Cによれば、実施例1の融雪用架空電線1と同様に、潮流時の送電用金属線3への通電によって鋼心2aが発熱して、融雪用架空電線1Cをその中心部から発熱させることができ、融雪用架空電線1Cの全体に均等に熱伝達を行うことができ、融雪用架空電線1Cの外表面で効率よく着雪・着氷を防止することができる。
したがって、この実施例4の融雪用架空電線1Cは、同一本数の線材を有する電線と比較しても送電用金属線の本数が少なくなることがないので、夏期に送電量が多くなる地域で、冬期に降雪量がある地域に適している。
しかも、この実施例4の融雪用架空電線1Cにあっては、磁性線材4Cを鋼心2の中心に1本設けたので、他の鋼心(鋼線材)に比較して高価な磁性線材4Cが少なくて済み、かつ、鋼心2aの中心に磁性材料からなる線材を配置すれば、他の線材よりも長さを短くすることができるため、融雪機能を有する融雪用架空電線1Cをさほど高価にならずに提供することができる。
【実施例5】
【0031】
図6は、本発明融雪用架空電線の実施例5を示すものであり、拡大した径方向の断面図である。この実施例5にかかる融雪用架空電線1Dは、実施例1の融雪用架空電線1と比較して磁性線材4を撚り合わせた位置が相違するのみなので、その説明は相違点についてのみ行い、他の部分については図面の各部に前記実施例1にかかる融雪用架空電線1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付すことによりその説明を省略する。
【0032】
図6に示すように、実施例5の融雪用架空電線1Dは、7本の鋼心2dのすべてを磁性材料で形成したものである。この材質としては、上記実施例3で示したインバー合金(36%Ni−Fe合金)が好ましい。すなわち、熱変化により融雪用架空電線1Dが熱膨張したときでも、インバー合金がほとんど変化しないため、鋼心2dとして融雪用架空電線1Cの電線引張力を支えることができ、かつ、磁性線材として発熱させて着雪・着氷を有効に防止することができる。
また、この実施例5にかかる融雪用架空電線1Dは、上記実施例3、4にかかる融雪用架空電線1B、1Cと同様に、送電用金属線3の本数を減らすことがないため、融雪用架空電線1Dとしての送電容量が少なくなることもなく、かつ、引張強度が低下されることもない。
しかも、この実施例5にかかる融雪用架空電線1Dはその7本の鋼心2dが発熱するので上記実施例3、4等に比較して融雪機能又は着雪防止・着氷防止機能が大きく、よって、極寒地、降雪量の多い地域などにおいて適している。なお、同一本数の線材を有する電線と比較しても送電用金属線の本数が少なくなることがないので送電用量は同等であるが、発熱量が多いため、夏期に送電量が多くなる地域には適していない。
【0033】
このように本発明融雪用架空電線1、1A、1B、1C、1Dにあっては、その磁性線材4、4A、4Bなどの配置位置により発熱効率が相違するため、架設する地域により異なった融雪用架空電線1、1A、1B、1C、1Dを適宜選択することができる。
また、本発明融雪用架空電線1、1A、1B、1C、1Dにあっては、その径方向の断面形状における前記外形線Eが円形をしているため、従来の架空電線と同様に、風騒音防止用スパイラルロッド、相間スペーサ、ねじれ防止用ダンパーなどの架空電線に用いられる各種付属品を用いることができる。
なお、上記各実施例において説明した各線材(鋼心2、送電用金属線3、磁性線材4、4A、4B)の本数は、一例を示したものにすぎず、本発明はこれに限られるものでない。
また、上記各実施例にあっては、送電用金属線としてアルミ合金線材を用いたものについて説明したが、本発明はこれに限らず、銅線、銅合金線等を用いたものであっても良い。
さらに、本発明は、送電用金属線が径方向に層状に撚り合わせられた架空電線で、径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線がほぼ円形を成すように形成した構成であれば、上述した各実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されず、送電線と通信線の機能をあわせもった光ファイバ複合架空地線(OPGW)等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1における融雪用架空電線の拡大断面図である。
【図2】実施例1における融雪用架空電線の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図3】実施例2における融雪用架空電線の拡大断面図である。
【図4】実施例3における融雪用架空電線の拡大断面図である。
【図5】実施例4における融雪用架空電線の拡大断面図である。
【図6】実施例5における融雪用架空電線の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 融雪用架空電線
2 鋼心
2a 鋼心(中心)
2b 鋼心(他の鋼心)
3 送電用金属線
4 磁性線材
E 径方向の断面形状における外形線
1A 融雪用架空電線
4A 磁性線材
1B 融雪用架空電線
4B 磁性線材
1C 融雪用架空電線
4C 磁性線材
1D 融雪用架空電線
2d 鋼心(磁性材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電用金属線(3)が径方向に層状に撚り合わせられた架空電線(1)であって、
前記送電用金属線(3)とともに磁力線の変化に伴い発熱する磁性線材(4)が撚り合わされ、
径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線(E)がほぼ円形を成すように形成した、ことを特徴とする融雪用架空電線。
【請求項2】
中心部に設けられた鋼心(2)と、該鋼心(2)の周囲に撚り合わされた送電用金属線(3)とを有した、ことを特徴とする請求項1の融雪用架空電線。
【請求項3】
前記磁性線材(4)を最外層部に位置するように撚り合わせた、ことを特徴とする請求項1又は請求項2の融雪用架空電線。
【請求項4】
中心部に設けられた鋼心(2)と、該鋼心(2)の周囲で径方向に層状に撚り合わせられた送電用金属線(3)とを有した、融雪用架空電線(1)であって、
前記鋼心(2)とともに磁力線の変化に伴い発熱する磁性線材(4)が撚り合わされ、
径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線(E)がほぼ円形を成すように形成した、ことを特徴とする融雪用架空電線。
【請求項5】
前記鋼心(2)は、中心に配置された1本の鋼心(2a)と、該中心の鋼心(2a)を取り囲むように撚り合わせ状に設けられた複数の鋼心(2b)とから成り、
前記中心の鋼心(2a)が磁性材料で形成された、ことを特徴とする請求項4の融雪用架空電線。
【請求項6】
中心部に設けられた鋼心(2)と、該鋼心(2)の周囲で径方向に層状に撚り合わせられた送電用金属線(3)とを有した、融雪用架空電線(1)であって、
前記鋼心(2d)の全部が磁力線の変化に伴い発熱する磁性材料で形成され、
径方向の断面形状における全体の最外周部を結んでできる外形線(E)がほぼ円形を成すように形成した、ことを特徴とする融雪用架空電線。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−196375(P2006−196375A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8369(P2005−8369)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】