説明

融雪路盤構造物および融雪路盤の施工方法

【課題】融雪路盤の耐久性の向上と、維持管理コストの低減等を改善する。
【解決手段】地面に敷設され、ヒータが具備された融雪可能な融雪路盤構造物において、前,後,左,右のいずれかの端面10aに結線部9aを設け、かつ該結線部9aと電気接続されている前記ヒータとしての電熱線9を内部に埋設してなる中強度コンクリートプレキャスト版4Aを平面状に複数枚敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A同士の前記結線部9a,9aを互いに電気的に連結するとともに、該隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A同士を着脱可能にできるコッター式継手装置6で機械的に連結して一体化したコンクリート基盤4にて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は融雪路盤構造物および融雪路盤の施工方法に関するものであり、特に、融雪用ヒータとしての電熱線を内蔵した融雪路盤構造物および融雪路盤の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷地において、道路や鉄道路線等の路盤(地面)に融雪パネルを設置して路面上の雪を融かし、該路面の凍結を防止するようにした技術は知られている。
【0003】
路面の凍結を防止する技術として、従来は路面上に地下水撒布や凍結防止剤を撒布することが行われていた。しかしながら、地下水撒布による方法では、地下水の枯渇による地盤沈下の影響が懸念される。また、凍結防止剤の撒布は、周辺の動植物へ与える影響等もあり、最近ではヒータを内蔵した融雪路盤の採用が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電熱線を用いた融雪装置が記載されている。この融雪装置は、電熱線を内蔵させた融雪パネルを平面状に、該融雪パネル同士の電熱線を互いに結線して敷き並べ、該融雪パネルで道路を形成した構造になっており、融雪パネルで作られた道路上を直接に人や車両が歩行または走行するようになっている。
【特許文献1】特開2001−193008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の発明は、平面状に敷き並べられた融雪パネルの上を、直接に人や車両が歩行または走行するようになっているため、寒冷地において車両にチェーンやスパイクタイヤが使用されると、通行車両による轍や磨り減りが発生して路面が削られるため、電熱線が露出するおそれがある。電熱線が露出すると、車両などにより巻き上げられて断線を引き起こすことがあり、その都度、破損した融雪パネルを交換しなければならないので、補修コストが高くなることから、ほとんどが軽交通区間の車道や歩道用に使用されている。
【0006】
また、低強度で、融雪パネル間に頑丈な連結金具等が使用されていないので、融雪パネル同士の電熱線を結線している部分が外れ易く、しかるときは、通電が遮断して電熱線が発熱しないなど、信頼性の面での問題もあった。
【0007】
ここで、此種の融雪路盤構造物は、雪氷期間で降雪センサ等が作動してから、1時間程度で道路の表面温度が融雪可能な温度(例えば、ヒータ近傍温度で5〜6℃)に上昇するように、非降雪時においても、常にある一定の温度(例えば、ヒータ近傍温度で3.9℃)を保つように通電している。この余熱時間(プレヒーティング)は、通常は全運転時間の3分の2を占めており、また余熱時の放熱量も多くて非効率的である。
【0008】
したがって、余熱時には余熱温度を低く抑え、降雪時には融雪可能温度になるまでの時間を早めることを要望されている。そこで、融雪路盤の耐久性の向上と、維持管理コストの低減等を改善するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、地面に敷設され、ヒータが具備された融雪可能な融雪路盤構造物において、前,後,左,右のいずれかの端面に結線部を設け、かつ該結線部と電気接続されている前記ヒータとしての電熱線を内部に埋設してなる中強度コンクリートプレキャスト版を平面状に複数枚敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結するとともに、該隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を着脱可能にできる継手装置で機械的にかつ強固に連結して一体化したコンクリート基盤にて構成したことを特徴とする融雪路盤構造物を提供する。
【0010】
この構成によれば、平面状に敷き並べられた隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結した状態で、該中強度コンクリートプレキャスト版同士を継手装置により機械的にかつ強固に固定するので、中強度コンクリートプレキャスト版間が簡単に動くことはなく、これに伴って結線部間の連結を確実に保持することができる。また、中強度コンクリートプレキャスト版同士は着脱可能な継手装置で緊締されていることから、取替え作業や他への転用が容易である。
【0011】
請求項2記載の発明は、地面に敷設され、ヒータが具備された融雪可能な融雪路盤構造物において、前,後,左,右のいずれかの端面に結線部を設け、かつ該結線部と電気接続されている前記ヒータとしての電熱線を内部に埋設してなる中強度コンクリートプレキャスト版を平面状に複数枚敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結するとともに、該隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を着脱可能にできる継手装置で機械的にかつ強固に連結して一体化したコンクリート基盤と、該コンクリート基盤の上面を舗装した表面舗装材とで構成したことを特徴とする融雪路盤構造物を提供する。
【0012】
この構成によれば、平面状に敷き並べられた隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結した状態で、該中強度コンクリートプレキャスト版同士を継手装置により機械的にかつ強固に固定するので、中強度コンクリートプレキャスト版間が簡単に動くことはなく、これに伴って結線部間の連結を確実に保持することができる。また、中強度コンクリートプレキャスト版同士は着脱可能な継手装置で緊締されていることから、取替え作業や他への転用が容易である。さらに、コンクリート基盤の上面を舗装した表面舗装材が、通行車両による轍や磨り減りで削られたら、その段階で表面舗装材の舗装をやり直せば、中強度コンクリートプレキャスト版内の電熱線が損傷するのを防ぐことができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、上記中強度コンクリートプレキャスト版は上記電熱線を挟んで上層部分と下層部分とからなり、上層部分を下層部分よりも高い熱伝導率を有するコンクリート複合材で形成したことを特徴とする請求項1または2記載の融雪路盤構造物を提供する。
【0014】
この構成によれば、中強度コンクリートプレキャスト版における上層部分の熱伝導率を高めて、熱伝導性を良くしてあるので、融雪を必要とするときに、電熱線への時間当たりの供給電力量を増加させて加熱すると、電熱線の加熱状態が路面温度に短時間で反映される。これにより、余熱温度を低く抑えていても、融雪を必要とするときには、路面温度を融雪に必要な温度まで、直ちに上昇させることができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、地面に敷設され、ヒータが具備された融雪可能な融雪路盤の施工方法において、上面端部および前,後,左,右のいずれかの端面に受け金具の一部を露出させて設けるとともに、前記端面に結線部を設け、かつ該結線部と電気的に接続されている前記ヒータとしての電熱線を内部に埋設させてなる複数の中強度コンクリートプレキャスト版を平面状に敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結するとともに前記受け金具を対峙させ、該対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具を挿入して、前記隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を機械的に連結してコンクリート基盤を形成してなることを特徴とする融雪路盤の施工方法を提供する。
【0016】
この構成によれば、平面状に敷き並べられた隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結した状態で、該中強度コンクリートプレキャスト版同士を対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具を挿入して、機械的にかつ強固に固定するので、中強度コンクリートプレキャスト版間が簡単に動くことはなく、これに伴って結線部間の連結を確実に保持することができる。また、中強度コンクリートプレキャスト版同士は、相互の受け金具に着脱可能な差し込み金具で緊締されていることから、取り替え作業や他への転用が容易である。
【0017】
請求項5記載の発明は、地面に敷設され、ヒータが具備された融雪可能な融雪路盤の施工方法において、上面端部および前,後,左,右のいずれかの端面に受け金具の一部を露出させて設けるとともに、前記端面に結線部を設け、かつ該結線部と電気的に接続されている前記ヒータとしての電熱線を内部に埋設させてなる複数の中強度コンクリートプレキャスト版を平面状に敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結するとともに前記受け金具を対峙させ、該対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具を挿入して、前記隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を機械的に連結してコンクリート基盤を形成した後に、該コンクリート基盤の上面に表面舗装材を施してなることを特徴とする融雪路盤の施工方法を提供する。
【0018】
この構成によれば、平面状に敷き並べられた隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結した状態で、該中強度コンクリートプレキャスト版同士を対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具を挿入して、機械的にかつ強固に固定するので、中強度コンクリートプレキャスト版間が簡単に動くことはなく、これに伴って結線部間の連結を確実に保持することができる。また、中強度コンクリートプレキャスト版同士は、相互の受け金具に着脱可能な差し込み金具で緊締されていることから、取替え作業や他への転用が容易である。さらに、コンクリート基盤の上面を舗装した表面舗装材が、通行車両による轍や磨り減りで削られたら、その段階で表面舗装材の舗装をやり直せば、中強度コンクリートプレキャスト版内の電熱線が損傷するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明は、平面状に敷き並べられた隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を継手装置により機械的にかつ強固に固定できるので、中強度コンクリートプレキャスト版間に上下方向の段差や水平方向のずれが生じない。したがって、結線部間の連結が確実に保持されて、結線部の損傷を防止することができる。これにより、耐久性の向上と、維持管理コストの低減が図られる。また、歩道用に限ることなく、重車両等が走行する一般道路にも適用可能で、利用範囲の拡大を図ることができる。
【0020】
請求項2記載の発明は、平面状に敷き並べられた隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を継手装置により機械的にかつ強固に固定できるので、中強度コンクリートプレキャスト版間に上下方向の段差や水平方向のずれが生じない。したがって、結線部間の連結が確実に保持されて、結線部の損傷を防止することができる。これにより、耐久性の向上と、維持管理コストの低減が図られる。また、歩道用に限ることなく、重車両等が走行する一般道路にも適用可能で、利用範囲の拡大を図ることができる。さらに、コンクリート基盤の上面を表面舗装材で舗装したので、通行車両による轍や磨り減りにより表面舗装材が削られたときは、表面舗装材の舗装のみをやり直すことにより簡単に補修することができ、中強度コンクリートプレキャスト版の再敷設は行わなくても良いため、補修が安価にできる。
【0021】
請求項3記載の発明は、中強度コンクリートプレキャスト版における上層部分の熱伝導率を高めてあり、電熱線の加熱状態が路面温度に短時間で反映されるため、余熱温度を低く抑えていても、融雪を必要とするときには、路面温度を融雪に必要な温度まで、直ちに上昇させることができる。したがって、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、さらに維持管理コストを低減させることができる。
【0022】
請求項4記載の発明は、平面状に敷き並べられた隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具を挿入して、機械的にかつ強固に固定できるので、中強度コンクリートプレキャスト版間に上下方向の段差や水平方向のずれが生じない。したがって、結線部間の連結が確実に保持されて、結線部の損傷を防止することができる。これにより、耐久性の向上と、維持管理コストの低減が図られる。また、歩道用に限ることなく、重車両等が走行する一般道路にも適用可能で、利用範囲の拡大を図ることができる。
【0023】
請求項5記載の発明は、平面状に敷き並べられた隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具を挿入して、機械的にかつ強固に固定できるので、中強度コンクリートプレキャスト版間に上下方向の段差や水平方向のずれが生じない。したがって、結線部間の連結が確実に保持されて、結線部の損傷を防止することができる。これにより、耐久性の向上と、維持管理コストの低減が図られる。また、歩道用に限ることなく、重車両等が走行する一般道路にも適用可能で、利用範囲の拡大を図ることができる。さらに、コンクリート基盤の上面を表面舗装材で舗装したので、通行車両による轍や磨り減りにより表面舗装材が削られたときは、表面舗装材の舗装のみをやり直すことにより簡単に補修することができ、中強度コンクリートプレキャスト版の再敷設は行わなくても良いため、補修が安価にできる。
【0024】
かくして、融雪用ヒータとしての電熱線を内蔵した融雪路盤構造物および融雪路盤の施工方法において、余熱時には余熱温度を低く抑え、降雪時には融雪可能温度になるまでの時間を早めることが可能となり、耐久性の向上と維持管理コストの低減を図ることができる。また、歩道用に限定されずに、重車両等が走行する一般道路にも適用可能で、利用範囲の拡大を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る融雪路盤構造物および融雪路盤の施工方法について、好適な実施例をあげて説明する。融雪路盤の耐久性の向上と、維持管理コストの低減等を改善するという目的を達成するために、地面に敷設され、ヒータが具備された融雪可能な融雪路盤構造物において、前,後,左,右のいずれかの端面に結線部を設け、かつ該結線部と電気接続されている前記ヒータとしての電熱線を内部に埋設してなる中強度コンクリートプレキャスト版を平面状に複数枚敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結するとともに、該隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を着脱可能にできる継手装置で機械的にかつ強固に連結して一体化したコンクリート基盤にて構成したことにより実現した。
【実施例】
【0026】
図1は本発明に係る融雪路盤の施工方法を用いて作られた融雪路盤構造物の一部破断斜視図で、図2は前記融雪路盤構造物の断面図である。図1および図2において、融雪路盤構造物1は、路盤(地面)2上に、厚さが約30ミリの断熱系グラウト材3と、厚さが約200ミリのコンクリート基盤4と、厚さが約75ミリの表面舗装材5を順に積層し、道路として形成されている。
【0027】
前記断熱系グラウト材3は、後述する中強度コンクリートプレキャスト版4Aに埋設されている電熱線9で暖められた該中強度コンクリートプレキャスト版4Aの伝熱が路盤2側に逃げるのを遮断する断熱材の役目をなすもので、断熱系グラウト材3に代えて発泡ウレタン系の断熱材を使用する場合等もある。
【0028】
前記コンクリート基盤4は、横幅が約1900ミリ、縦幅が6250ミリの長方形をした中強度コンクリートプレキャスト版4Aを、平面状に複数枚敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A…との間を継手装置で連結されている。該継手装置としては、例えば図示したようなコッター式継手装置6を使用する。後述するように、コッター式継手装置6は、中強度コンクリートプレキャスト版4A側にそれぞれインサートされた受け金具であるC型継手金具6aと、対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具であるH型金具6bとで構成される。前記中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A…は、前記コッター式継手装置6により機械的にかつ強固に連結されて、連続した一枚の基盤として形成されている。
【0029】
前記中強度コンクリートプレキャスト版4Aは、現場または工場において、成形型(図示せず)内に、鉄筋7,7を配置するとともに、所定量の生コンを流し込んで約160ミリの下層部8aを形成し、さらに下層部8上にヒータとしての電熱線9を敷設した後、該電熱線9の上から所定量の生コンを流し込み、電熱線9の上に約40ミリの上層部8bを形成することにより、該電熱線9をコンクリート内に埋設して一体化されたものである。このように、電熱線9を、中強度コンクリートプレキャスト版4Aと一体化することにより、電熱線9の敷設時における耐熱性や耐圧性が不要となり、加えて耐久性も向上してコスト削減に寄与する。
【0030】
また、中強度コンクリートプレキャスト版4Aの成形時、図1に示すように、該中強度コンクリートプレキャスト版4Aの前,後、左,右の各端面10aには、隣接し合う中強度コンクリートプレキャスト版4A,4Aの電熱線9,9との間を電気接続するための結線部(コネクタ)9aを、必要とする箇所に、必要とする数だけ、一部を露出させて設けている。一方、該中強度コンクリートプレキャスト版4Aの上面10bにおける前,後、左,右の各端部には、上記コッター式継手装置6のC型継手金具6aを、必要とする箇所に、必要とする数だけ、隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版4a同士で対峙させて設けている。
【0031】
中強度コンクリートプレキャスト版4Aの下層部8aおよび上層部8bは、自動車等の通行を可能にする一般道路に適用できるように、20〜50N(ニュートン)/cm2の強度を有する。また、上層部8bは、成形時に、熱伝導率が2W/m2 ℃以上となるような材料を練り込み、下層部8aよりも熱伝導性を高めている。
【0032】
前記表面舗装材5は、コンクリート基盤4の上面に舗装されたアスファルト材であり、防水処理層5aと、基層(マスチック舗装)5bと表層(高機能舗装)5cを、中強度コンクリートプレキャスト版4Aの上面10bに順次舗装して形成される。なお、コンクリート基盤4の上面に表面舗装材5を舗装せず、中強度コンクリートプレキャスト版4Aの上面10bを露出させた状態で融雪路盤としてもよい。この構成とした場合は、前記表面舗装材5がないため、電熱線9と道路の表面との距離が短縮されて熱の伝動効率が向上し、道路の融雪をより一層効率的に行うことができる。
【0033】
次に、図3により、中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A同士を結合するコッター式継手装置6について、さらに説明する。前述したように、コッター式継手装置6は、中強度コンクリートプレキャスト版4A側にそれぞれインサートされたC型継手金具6aと、対峙したC型継手金具6a,6aが相互に亘って形成する平面視H形状の開口部へ着脱可能なH型金具6bとで構成されている。コッター式継手装置6自体は、市販されている汎用品である。
【0034】
図4および図5に示すように、前記C型継手金具6aは、C型継手金具6a,6a同士が対峙し合う箇所に、スリット11を形成してなる1対のカムリップ12,12を設けて、断面C形に形成された溝穴13を有し、該溝穴13の底面部14の中心に、ねじ穴15を上下方向に穿設している。また、C型継手金具6aの側面には、該側面から直角に外側へ延びるアンカー16を一体に設けている。
【0035】
そして、このC型継手金具6aは、中強度コンクリートプレキャスト版4Aの成形時に、スリット11が中強度コンクリートプレキャスト版4Aの端面10aに開口して一部が該端面10aに露出するとともに、溝穴13が上面10bに開口して一部が露出するようにし、かつ残りの部分を中強度コンクリートプレキャスト版4A内に埋設させて、該中強度コンクリートプレキャスト版4Aの所定の箇所に複数個設けられる。
【0036】
一方、図6および図7に示すように、前記H型金具6bは、前記C型継手金具6a,6a同士を対峙させた状態で、相互に亘って平面視H形状の開口部が形成される前記溝穴13,13の内部にスリット11を通って挿入可能なフランジ部17,17を左右両側に設けて、断面H形に形成されている。また、各フランジ部17の中心には、前記溝穴13のねじ穴15に対応して、ボルト挿入孔18が形成されている。
【0037】
そして、中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A同士をコッター式継手装置6で連結する場合は、まず、路盤2上に断熱系グラウト材3を敷き、その上に、中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A同士を平面状に敷き並べるとともに、結線部9a,9aを互いに連結して結線させ、電熱線9,9同士を電気接続する。次いで、図3に示すように、中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A同士の対峙している前記C型継手金具6a,6aの溝穴13,13に、該中強度コンクリートプレキャスト版4Aの上側からH型金具6bのフランジ部17,17をそれぞれ挿入させ、中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A同士をH型金具6bで連結する。
【0038】
また、H型金具6bの上側からボルト19を、ボルト挿入孔18を通ってC型継手金具6aのねじ穴15にネジ止めし、該ボルト19によりC型継手金具6aとH型金具6bとの間を締結する。この締結作業を、各コッター式継手装置6の部分について行うと、中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A同士を強固に機械的に連結することができる。
【0039】
なお、補修の必要等により、中強度コンクリートプレキャスト版4Aを交換する場合は、組立時とは逆手順での作業を行うことにより、交換を必要とする箇所の中強度コンクリートプレキャスト版4Aを取り外した後、別の中強度コンクリートプレキャスト版4Aを新たに取り付けることができる。
【0040】
このようにして所定数の中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A…を順に敷き並べるとコンクリート基盤4が形成され、さらにコンクリート基盤4上に表面舗装材5による舗装が施されると所定の融雪路盤構造物1が形成される。
【0041】
なお、この融雪路盤構造物1では、道路のヒータ近傍温度が5〜6℃になるように電熱線9の温度を制御する。そのために、道路上等に路面温度センサ、路面水分センサ等を設けておくとともに、予め電熱線9に電流を流して余熱(プレヒーティング)を与えておき、前記センサにより雪が降ってきたことを検出したら、電熱線9への時間当たりの供給電力量を増加させて加熱して道路のヒータ近傍温度が5〜6℃になるようにする。
【0042】
したがって、本実施の形態のように構成された融雪路盤構造物1では、平面状に敷き並べられた隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A同士の電熱線9,9における結線部9a,9aを電気的に連結した状態で、中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A同士をコッター式継手装置6により機械的に強固に固定するので、中強度コンクリートプレキャスト版4A,4A間が簡単に動くことはなく、結線部9a,9a間の連結も確実に保持することができる。これにより、耐久性が得られるので、歩道用だけでなしに重量物の車両等が走る一般道路にも適用が可能になる。
【0043】
また、通行車両による轍や流動が発生して表面舗装材5が削られたら、表面舗装材5が削られた段階で該表面舗装材5の舗装をやり直せば、中強度コンクリートプレキャスト版4A内の電熱線9が損傷するのを防ぐことができる。しかも、中強度コンクリートプレキャスト版4Aの再敷設を行う必要がないので、補修が安価にでき、維持管理費等の低減が可能になる。さらに、コンポジット舗装の場合では、ワダチや流動が減少して走行環境が改善される。
【0044】
さらに、コンクリート基盤4上を直接に路面として供用される場合は、中強度コンクリートプレキャスト版4Aにおける上層部8bの熱伝導性を良くしてあるので、融雪を必要とするときに、電熱線9への供給熱量を増加させる(加熱設定温度を上げる)と、該電熱線9の加熱状態が路面温度に直ぐに反映される。これにより、余熱温度を、従来ではヒータ近傍温度で3.9℃程度必要としていたのを、3.5℃程度まで低く抑えても、融雪を必要とするときには、道路の路面温度を融雪に必要な温度(ヒータ近傍温度で5〜6℃)まで、直ぐに上昇させることができるので、省電力化に寄与し、維持管理費等の低減が可能になる。また、安定した雪氷(路面)管理が可能になる。
【0045】
その他、中強度コンクリートプレキャスト版化で、ストックも可能となり、緊急的な対応も可能になる。さらには、凍結防止剤の撒布がなくなり、周辺の動植物へ与える影響を抑えることができる。
【0046】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
例えば、上記実施例の形態では、C型継手金具とH型金具とでなるコッター式継手装置を開示したが、中強度コンクリートプレキャスト版同士を強固に連結できるものであれば、それ以外のコッター式継手装置を使用してもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る融雪路盤構造物の一部破断斜視図。
【図2】本発明に係る融雪路盤構造物の断面図。
【図3】コッター式継手装置の一部破断図。
【図4】C型継手金具の平面図。
【図5】C型継手金具の側面図。
【図6】H型金具の平面図。
【図7】H型金具の側面図。
【符号の説明】
【0048】
1 融雪路盤構造物
2 路盤(地面)
3 断熱系グラウト材
4 コンクリート基盤
4A 中強度コンクリートプレキャスト版
5 表面舗装材
5a 防水処理層
5b 基層
5c 表層
6 コッター式継手装置
6a C型継手金具
6b H型金具
7 鉄筋
8a 下層部
8b 上層部
9 電熱線
9a 結線部(コネクタ)
10a 端面
10b 上面
11 スリット
12 カムリップ
13 溝穴
14 底部
15 ねじ穴
16 アンカー
17 フランジ部
18 ボルト挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に敷設され、ヒータが具備された融雪可能な融雪路盤構造物において、
前,後,左,右のいずれかの端面に結線部を設け、かつ該結線部と電気接続されている前記ヒータとしての電熱線を内部に埋設してなる中強度コンクリートプレキャスト版を平面状に複数枚敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結するとともに、該隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を着脱可能にできる継手装置で機械的にかつ強固に連結して一体化したコンクリート基盤にて構成したことを特徴とする融雪路盤構造物。
【請求項2】
地面に敷設され、ヒータが具備された融雪可能な融雪路盤構造物において、
前,後,左,右のいずれかの端面に結線部を設け、かつ該結線部と電気接続されている前記ヒータとしての電熱線を内部に埋設してなる中強度コンクリートプレキャスト版を平面状に複数枚敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結するとともに、該隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を着脱可能にできる継手装置で機械的にかつ強固に連結して一体化したコンクリート基盤と、
該コンクリート基盤の上面を舗装した表面舗装材とで構成したことを特徴とする融雪路盤構造物。
【請求項3】
上記中強度コンクリートプレキャスト版は上記電熱線を挟んで上層部分と下層部分とからなり、上層部分を下層部分よりも高い熱伝導率を有するコンクリート複合材で形成したことを特徴とする請求項1または2記載の融雪路盤構造物。
【請求項4】
地面に敷設され、ヒータが具備された融雪可能な融雪路盤の施工方法において、
上面端部および前,後,左,右のいずれかの端面に受け金具の一部を露出させて設けるとともに、前記端面に結線部を設け、かつ該結線部と電気的に接続されている前記ヒータとしての電熱線を内部に埋設させてなる複数の中強度コンクリートプレキャスト版を平面状に敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結するとともに前記受け金具を対峙させ、該対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具を挿入して、前記隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を機械的にかつ強固に連結してコンクリート基盤を形成してなることを特徴とする融雪路盤の施工方法。
【請求項5】
地面に敷設され、ヒータが具備された融雪可能な融雪路盤の施工方法において、
上面端部および前,後,左,右のいずれかの端面に受け金具の一部を露出させて設けるとともに、前記端面に結線部を設け、かつ該結線部と電気的に接続されている前記ヒータとしての電熱線を内部に埋設させてなる複数の中強度コンクリートプレキャスト版を平面状に敷き並べ、これら隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士の前記結線部を互いに電気的に連結するとともに前記受け金具を対峙させ、該対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具を挿入して、前記隣り合う中強度コンクリートプレキャスト版同士を機械的にかつ強固に連結してコンクリート基盤を形成した後に、該コンクリート基盤の上面に表面舗装材を施してなることを特徴とする融雪路盤の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−291607(P2008−291607A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141006(P2007−141006)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(592179067)株式会社ガイアートT・K (25)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】