説明

螺旋状歯付きロープ

【課題】
本発明は、製造時において接着剤の塗りムラ等の問題が生じることがなく、第一ロープと第二ロープとの接着強度が高い螺旋状歯付きロープを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の螺旋状歯付きロープは、第一芯材に第一樹脂を被覆してなる第一ロープと、第二芯材に第二樹脂を被覆してなる第二ロープとからなり、上記第一ロープの外周に上記第二ロープが螺旋状に巻回されている螺旋状歯付きロープであって、上記第一樹脂及び上記第二樹脂のうちの少なくとも一方には、上記第一樹脂の昇温特性と上記第二樹脂の昇温特性とを異ならしめるように赤外線反射率調整材が含まれており、上記第一ロープと上記第二ロープとが溶着していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋状歯付きロープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンターにおけるキャリッジやスキャナー等の可動部材を高精度かつ静音に移動させるために螺旋状歯付きロープが使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、芯材のワイヤロープに第一樹脂からなる被覆を設けたロープ本体の外周に、芯材に第二樹脂からなる被覆を設けた線状体を巻き付けた螺旋状歯付きロープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−239347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の螺旋状歯付きロープは、ロープ本体(第一樹脂)と線状体(第二樹脂)とをイソシアネート系接着剤によって接着しているため、接着剤の塗布ムラが発生するなどした場合には接着強度が低くなることがあり、使用時に線条体がロープ本体から脱落するおそれがある。
【0006】
また、螺旋状歯付きロープには、線状体により形成された螺旋状の突起部の形状がしっかりと保持されており、線条体と歯車の溝部とが確実に噛み合うことが要求される。
上記突起部の形状が保持されていない場合には、線条体と歯車の溝部とが噛み合いにくくなり、歯飛びが発生するおそれがあるからである。
【0007】
さらには、第一樹脂及び第二樹脂が耐久性に優れることも要求される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ロープ本体の第一樹脂と線条体の第二樹脂とに各々の樹脂の昇温特性を異ならしめるように赤外線反射率調整材を配合し、ロープ本体と線条体とを溶着した構成とすることにより、接着剤を使用せずともロープ本体と線条体との接着強度が高く、線状体により形成された螺旋状の突起部の形状がしっかりと保持されており歯飛びが少なく、かつ、耐久性が高い螺旋状歯付きロープとすることができることを見出し、本発明の螺旋状歯付きロープを完成させた。
【0009】
即ち、本発明の螺旋状歯付きロープは、第一芯材に第一樹脂を被覆してなる第一ロープと、第二芯材に第二樹脂を被覆してなる第二ロープとからなり、上記第一ロープの外周に上記第二ロープが螺旋状に巻回されている螺旋状歯付きロープであって、上記第一樹脂及び上記第二樹脂のうちの少なくとも一方には、上記第一樹脂の昇温特性と上記第二樹脂の昇温特性とを異ならしめるように赤外線反射率調整材が含まれており、上記第一ロープと上記第二ロープとが溶着していることを特徴とする。
【0010】
本発明の螺旋状歯付きロープの構成及び効果について、以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る螺旋状歯付きロープの使用状態を示す部分正面図であり、図2は、図1に示す螺旋状歯付きロープの横断面図である。
なお、図1では、第一ロープの一部と第二ロープの一部とをそれぞれ切り欠いて示している。
また、図2では、第二ロープの形状が断面楕円状であるが、これは断面略円形状の第二ロープが第一ロープの外周に螺旋状に巻回されているためである。
【0012】
図1及び図2に示す本発明の螺旋状歯付きロープ1は、第一芯材3に第一樹脂4を被覆してなる第一ロープ2と、第二芯材6に第二樹脂7を被覆してなる第二ロープ5とからなる。
また、第一ロープ2の外周には、第二ロープ5が螺旋状に巻回されている。
【0013】
第一樹脂4及び第二樹脂7のうちの少なくとも一方には、第一樹脂4の昇温特性と第二樹脂7の昇温特性とを異ならしめるように赤外線反射率調整材が含まれている。
そして、第一ロープ2と第二ロープ5とは、溶着している。
【0014】
本発明の螺旋状歯付きロープ1は、第一ロープ2と第二ロープ5とが溶着しており接着剤を使用していないので、製造時において接着剤の塗りムラ等の問題が生じることがなく、第一ロープ2と第二ロープ5との接着強度が高い。
【0015】
また、係る構成を有する本発明の螺旋状歯付きロープ1を製造する場合には、赤外線反射率調整材の配合により第一樹脂4及び第二樹脂7の昇温特性が互いに異なっているので、昇温特性のより高い樹脂を昇温特性のより低い樹脂よりも優先的に溶融させることにより第一ロープ2と第二ロープ5とを溶着させることができる。
即ち、溶着処理時には、第一樹脂4及び第二樹脂7がともに多く溶融するような高い温度まで昇温する必要はなく、昇温特性のより高い樹脂が多く溶融し、昇温特性のより低い樹脂があまり溶融しない低い温度まで昇温するだけで、多く溶融した方の樹脂により第一ロープ2と第二ロープ5とを充分に溶着させることができる。
それゆえ、製造された螺旋状歯付きロープ1では、溶着処理時の熱による第一樹脂4及び第二樹脂7の変形が溶着に必要な程度に抑えられており、図1及び図2に示すように、第一ロープ2及び第二ロープ5の外形が所望の形状に保持されている。
そのため、螺旋状歯付きロープ1の使用時には、第一ロープ2の外周に螺旋状に巻回された第二ロープ5により形成された突起部が歯車Hの溝部に確実に噛み合い、モータ等の駆動力を確実に伝達することができる。
即ち、本発明の螺旋状歯付きロープ1は、歯飛びが少ない。
また、第一樹脂4及び第二樹脂7の熱劣化が少なく、耐久性に優れる。
【0016】
本発明の螺旋状歯付きロープにおいて、上記第一樹脂には、赤外線反射率調整材Aが含まれており、上記第二樹脂には、赤外線反射率調整材Bが含まれており、上記赤外線反射率調整材Aの赤外線反射率と、上記赤外線反射率調整材Bの赤外線反射率とが異なっていることが望ましい。
【0017】
本発明の螺旋状歯付きロープにおいて、上記赤外線反射率調整材Bの赤外線反射率は、上記赤外線反射率調整材Aの赤外線反射率よりも高いことが望ましい。
【0018】
本発明の螺旋状歯付きロープにおいて、上記赤外線反射率調整材は、複合酸化物系顔料、酸化チタン系顔料及びカーボンブラック系顔料からなる群から選択される少なくとも一種の顔料からなることが望ましい。
【0019】
本発明の螺旋状歯付きロープにおいて、上記第一樹脂と上記第二樹脂とは、同じ種類の樹脂材料からなることが望ましい。
【0020】
本発明の螺旋状歯付きロープにおいて、上記第一樹脂及び上記第二樹脂は、熱可塑性樹脂からなることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る螺旋状歯付きロープの使用状態を示す部分正面図である。
【図2】図1に示す螺旋状歯付きロープの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
本発明に係る第一実施形態の螺旋状歯付きロープについて、図面を参照しながら以下に説明する。
本実施形態の螺旋状歯付きロープは、上述した本発明の螺旋状歯付きロープと同様の構成を有しているため、以下の説明では、図1及び図2を参照しながら説明する。
なお、本発明の螺旋状歯付きロープに係る説明と重複する事項については、説明を省略することもある。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施形態の螺旋状歯付きロープ1は、第一芯材3に第一樹脂4を被覆してなる第一ロープ2と、第二芯材6に第二樹脂7を被覆してなる第二ロープ5とからなり、第一ロープ2の外周には、第二ロープ5が螺旋状に巻回されている。
【0024】
第一ロープ2の構成について、以下に詳述する。
第一ロープ2は、断面円形状の棒状体である。
【0025】
第一芯材3は、素線を7本撚合した芯ストランド9の外周に、同じく7本撚りの6本の側ストランド8を撚合した「7×7複撚り構成」のワイヤロープから形成されている。
なお、芯ストランド9又は側ストランド8を形成している素線の本数は、7本に限定されず、例えば、2〜12本であってもよい。また、側ストランド8の本数は、6本に限定されず、例えば、2〜12本であってもよい。
【0026】
第一芯材3を形成している素線の材質としては、ステンレス、Ni−Ti合金等の超弾性合金、タングステン等が挙げられる。
上記ステンレスとしては、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス及び析出硬化ステンレス等のステンレスが挙げられる。
これらのなかでは、ステンレスであることが望ましく、オーステナイト系ステンレスであることがより望ましい。
【0027】
第一芯材3の外周を略均一な厚さで被覆している第一樹脂4は、熱可塑性樹脂から形成されていることが望ましく、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂及びポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂材料から形成されていることがより望ましく、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー及びポリウレタンエラストマーからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂材料から形成されていることがさらに望ましい。
【0028】
第二ロープ5は断面円形状の棒状体であり、その径は第一ロープ2の径と略同一である。なお、第二ロープの径と第一ロープの径とは異なっていてもよい。
【0029】
第二芯材6は、単一の素線から形成されている。
なお、第二芯材は、第一芯材と同様に、複数の素線を撚合してなるストランドであってもよい。
【0030】
第二芯材6を形成している素線の材質は、上述した第一芯材3と同様の材質であってもよい。
【0031】
第二芯材6の外周を略均一な厚さで被覆している第二樹脂7の材質は、上述した第一樹脂4と同様の材質であってもよい。
【0032】
また、第一樹脂4と第二樹脂7とは、同じ種類の樹脂材料から形成されていることが望ましい。
第一樹脂と第二樹脂とが同じ種類の樹脂材料から形成されている場合、溶着処理時には、赤外線反射率調整材の配合により昇温特性のより高い樹脂が先に溶融するので、第一ロープと第二ロープとは、ほぼ第一樹脂のみの溶融、又は、ほぼ第二樹脂のみの溶融によって互いに溶着されることとなる。
【0033】
第一ロープ2の外周に螺旋状に巻回された第二ロープ5のピッチは、歯車Hと噛み合うのであれば特に限定されない。
【0034】
第一樹脂4には赤外線反射率調整材Aが含まれており、第二樹脂7には赤外線反射率調整材Bが含まれており、赤外線反射率調整材Aの赤外線反射率と赤外線反射率調整材Bの赤外線反射率とが異なっている。
より具体的には、赤外線反射率調整材Bの赤外線反射率が、赤外線反射率調整材Aの赤外線反射率よりも高い。
そのため、第一樹脂4の昇温特性は、第二樹脂7の昇温特性よりも高く、外部から均一に熱を加えた場合には、第一樹脂4の方が第二樹脂7よりも昇温しやすく、溶融しやすい。
【0035】
上記赤外線反射率調整材としては、例えば、複合酸化物系顔料、酸化チタン系顔料、カーボンブラック系顔料、酸化鉄系顔料、焼成顔料、金属粉顔料、体質顔料等の白色又は有彩色の顔料や、ポリメチレン系、アズレニウム系、スクワリリウム系、チオビリリウム系、アントラキノン系、フタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系等の赤外線吸収性色素や、フタロシアニン系、アゾ系、アゾメチン系、アンスラキノン系、ペリノン・ペリレン系、インディゴ・チオインディゴ系、ジオキサンジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系等の赤外線反射性色素等が挙げられる。
これらの赤外線反射率調整材は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中では、赤外線反射率調整材が複合酸化物系顔料、酸化チタン系顔料及びカーボンブラック系顔料からなる群から選択される少なくとも一種の顔料からなることがより望ましい。
【0036】
本実施形態においては、赤外線反射率調整材Bの赤外線反射率が赤外線反射率調整材Aの赤外線反射率よりも高くなるように、上記赤外線反射率調整材から任意の赤外線反射率調整材A及び赤外線反射率調整材Bを選択すればよく、例えば、赤外線反射率調整材Aとして、カーボンブラック系顔料を選択し、赤外線反射率調整材Bとして、酸化チタン系顔料を選択してもよい。
【0037】
第一ロープ2と第二ロープ5とは、螺旋状歯付きロープ1のロープ中心線10に対する「側ストランド8の撚り方向」と「第二ロープ5の第一ロープ2に対する巻き付け方向」とが相互に逆方向に設定されていることが望ましい。
【0038】
本実施形態の螺旋状歯付きロープの製造方法について、以下に説明する。
【0039】
(1)巻回工程
第一芯材に第一樹脂を被覆してなる第一ロープと、第二芯材に第二樹脂を被覆してなる第二ロープとを準備する。
なお、第一樹脂としては、赤外線反射率がより低い赤外線反射率調整材Aが含まれた樹脂材料を使用し、第二樹脂としては、赤外線反射率がより高い赤外線反射率調整材Bが含まれた樹脂材料を使用する。
そして、第一ロープの外周に、第二ロープを所定のピッチで螺旋状に巻回する。
【0040】
(2)溶着工程
次に、第一樹脂及び第二樹脂のうちで、昇温特性がより高い樹脂が優先的に溶融する温度で溶着処理を行う。具体的には、昇温しやすく溶融しやすい第一樹脂が多く溶融する温度で溶着処理を行えばよい。
溶着処理としては、例えば、一定の温度の雰囲気(加熱炉)中を通過させる処理や、第一ロープと第二ロープとの接触部位に赤外線を照射する処理等が挙げられる。
以上の工程を経ることにより、本実施形態の螺旋状歯付きロープを製造することができる。
【0041】
本実施形態の螺旋状歯付きロープの作用効果を以下に列挙する。
【0042】
(1)本実施形態の螺旋状歯付きロープは、第一ロープと第二ロープとが溶着しており接着剤を使用していないので、製造時において接着剤の塗りムラ等の問題が生じることがなく、第一ロープと第二ロープとの接着強度が高い。
【0043】
(2)赤外線反射率調整材の配合により第一樹脂及び第二樹脂の昇温特性が互いに異なっているので、溶着処理時には、昇温特性のより高い樹脂を昇温特性のより低い樹脂よりも優先的に溶融させることにより、多く溶融した方の樹脂で第一ロープと第二ロープとを充分に溶着させることができる。即ち、第一樹脂及び第二樹脂がともに多く溶融するような高い温度まで昇温して溶着処理を行わずともよい。
従って、製造された本実施形態の螺旋状歯付きロープでは、溶着処理時の熱による第一樹脂及び第二樹脂の変形が溶着に必要な程度に抑えられており、第一ロープ及び第二ロープの外形が所望の形状に保持されている。
そのため、第一ロープの外周に螺旋状に巻回された第二ロープにより形成された突起部が歯車の溝部に確実に噛み合い、モータ等の駆動力を確実に伝達することが可能であり、歯飛びが少ない。
また、より低い温度で溶着処理を行えばよいので、第一樹脂及び第二樹脂の熱劣化が少なく、耐久性に優れる。
【0044】
(3)第二樹脂には、赤外線反射率のより高い赤外線反射率調整材Bが含まれているので、溶着処理時には、第二樹脂が第一樹脂に比べて昇温しにくく、溶融しにくい。
ここで、赤外線反射率調整材が含まれていない従来の螺旋状歯付きロープを製造する場合において、加熱炉等を使用することにより外部から熱を加えると、螺旋状に巻回されており表面積のより大きい第二ロープを形成する第二樹脂が、直線状であり表面積のより小さい第一ロープを位置する第一樹脂よりも加熱されやすい。そのため、第二樹脂が第一樹脂よりも多く溶融することによって第一樹脂と第二樹脂とが凝集(一体化)し、第二ロープの形状が大きく変形してしまうことがある。そして、その結果、充分な大きさの突起部が形成されず、歯飛びを招くことがある。
しかしながら、本実施形態では、第二樹脂に赤外線反射率のより高い赤外線反射率調整材Bが含まれており、第二樹脂が昇温しにくいので、本来的に加熱されやすい第二樹脂の過度な溶融を抑えることができる。
それゆえ、第二ロープの変形を溶着に必要な最小限度に抑えて、歯飛びをより確実に防止することができる。
また、第一樹脂には、赤外線反射率のより低い赤外線反射率調整材Aが含まれているので、溶着処理時には、第一樹脂が第二樹脂に比べて昇温しやすく、溶融しやすい。そのため、第二樹脂が溶融しにくいものの、多く溶融した第一樹脂により第一ロープと第二ロープとを充分に溶着させることができる。
【0045】
(4)赤外線反射率調整材が、複合酸化物系顔料、酸化チタン系顔料及びカーボンブラック系顔料からなる群から選択される少なくとも一種の顔料からなる場合には、赤外線反射性又は赤外線吸収性により優れるので、上記(1)〜(3)の作用効果をより好適に享受することができる。
また、これらの顔料は耐熱性、耐久性、耐候性、耐薬品性等にも優れており、螺旋状歯付きロープにこれらの特性を付与することができる。
さらには、異なる色彩や光沢を有する顔料を組み合わせることにより、螺旋状歯付きロープに識別性を付与することができる。
【0046】
(5)第一樹脂と第二樹脂とが同じ種類の樹脂材料からなる場合には、第一樹脂と第二樹脂とで異なる種類の樹脂材料を使用した場合に比べて、第一ロープと第二ロープとの溶着強度がより優れる。
【0047】
(6)第一樹脂及び第二樹脂が熱可塑性樹脂からなる場合、これらの樹脂材料は、弾性及び摺動性に優れているので、螺旋状歯付きロープと歯車とが繰り返し噛み合わさっても、第一ロープ及び第二ロープがより破損しにくくなる。
また、これらの樹脂材料は、接着性にも優れているので、第一ロープと第二ロープとが確実に溶着され、歯車との噛み合いの際に第二ロープが第一ロープに対してよりズレにくくなる。
特に、第一樹脂及び第二樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂及びポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂材料からなる場合には、これらの効果を好適に享受することができるので望ましい。
さらには、第一樹脂及び第二樹脂が、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー及びポリウレタンエラストマーからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂材料から形成されている場合には、これらの効果をさらに好適に享受することができるのでより望ましい。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
直径0.45mの7×7複撚り構成のステンレス製ワイヤロープ芯材に、ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン株式会社製ハイトレル(登録商標)5577)を0.075mmの厚さで被覆した断面円形状の第一ロープを準備した。
別途、直径0.17mmのステンレス製芯材に上記ポリエステルエラストマーを0.215mmの厚さで被覆した断面円形状の第二ロープを準備した。
なお、第一ロープのポリエステルエラストマーとしては、赤外線反射率調整材Aとして、酸化チタン粉末を1.5重量%配合したものを使用した。
また、第二ロープのポリエステルエラストマーとしては、赤外線反射率調整材Bとして、複合酸化物系顔料(川村化学株式会社製、AG235)を1.5重量%配合したものを使用した。
【0049】
次に、第一ロープの外周に、第二ロープを3.048mmのピッチで螺旋状に巻回した。
【0050】
最後に、410℃、24秒、加熱炉中で溶着処理を行うことにより、実施例1の螺旋状歯付きロープを製造した。
【0051】
(比較例1)
第一ロープ及び第二ロープのポリエステルエラストマーに、赤外線反射率調整材を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして螺旋状歯付きロープを製造した。
【0052】
(比較例2)
第一ロープ及び第二ロープのポリエステルエラストマーに、ともにカーボンブラック粉末を1.5重量%配合したこと以外は、実施例1と同様にして螺旋状歯付きロープを製造した。
【0053】
(変形の評価)
実施例1の螺旋状歯付きロープを長手方向に対して垂直に切断して得た切断面を観察したところ、溶着部分では第一ロープのポリエステルエラストマーと第二ロープのポリエステルエラストマーとが充分に混ざり合っており、確実に溶着しているのを確認することができた。
また、第二ロープはほとんど変形しておらず、第二ロープにより形成された螺旋状の突起部の形状がしっかりと保持されていた。
それゆえ、実施例1の螺旋状歯付きロープを歯車と噛み合わせた場合には、第二ロープと歯車の溝部とが確実に噛み合い、歯飛びが発生しにくいと推測される。
さらには、比較的低い溶着温度で短時間の溶着処理を行うだけで第一ロープと第二ロープとが充分に溶着されたため、ポリエステルエラストマーの熱劣化を低く抑えることができた。
従って、実施例1の螺旋状歯付きロープは、ポリエステルエラストマーの耐久性に優れるものと推測される。
【0054】
比較例1の螺旋状歯付きロープでは、溶着処理の条件が同じ(410℃、24秒)である実施例1の螺旋状歯付きロープと比較すると、溶着部分で第一ロープのポリエステルエラストマーと第二ロープのポリエステルエラストマーとが充分に混ざり合っておらず、溶着の程度が低いと考えられた。
なお、比較例1の螺旋状歯付きロープで溶着強度を高めるためには、溶着温度をより高くするか、溶着処理の時間をより長くすることが考えられるが、その場合にはポリエステルエラストマーの熱劣化が生じやすくなり、耐久性が低くなると推測される。
【0055】
比較例2の螺旋状歯付きロープでは、第一ロープ及び第二ロープのポリエステルエラストマーがともに溶融しすぎて凝集化(一体化)しており、第一ロープに第二ロープが巻回されることにより形成されるはずの螺旋状の突起部の形状がしっかりと保持されていなかった。
従って、比較例2の螺旋状歯付きロープを歯車と噛み合わせた場合には、第二ロープと歯車の溝部とが噛み合いにくく、歯飛びが発生する可能性があると推測される。
【0056】
(その他の実施形態)
本発明の螺旋状歯付きロープにおいて、第一樹脂及び第二樹脂にそれぞれ赤外線反射率調整材が含まれている場合、上述したように、第二樹脂が本来的に昇温しやすい条件で溶着処理する際には、第一樹脂の昇温特性が第二樹脂の昇温特性よりも高くなるように赤外線反射率調整材を配合することが望ましい。
しかしながら、第一樹脂及び第二樹脂の種類の相違や、溶着処理の条件の相違等により、内側に位置する第一樹脂が本来的に昇温しやすい条件で溶着処理する際には、第二樹脂の昇温特性が第一樹脂の昇温特性よりも高くなるように赤外線反射率調整材を配合してもよい。
また、第一樹脂の昇温特性と第二樹脂の昇温特性とが異なるように、第一樹脂のみに赤外線反射率調整材を配合してもよいし、第二樹脂のみに赤外線反射率調整材を配合してもよい。
いずれの場合であっても、本発明の作用効果を好適に享受することができる。
【0057】
本発明に係る螺旋状歯付きロープは、例えば、下記製造方法により製造してもよい。
即ち、本発明の螺旋状歯付きロープの製造方法は、第一芯材に第一樹脂を被覆してなる第一ロープの外周に、第二芯材に第二樹脂を被覆してなる第二ロープを螺旋状に巻回することによりロープ前駆体を作製する巻回工程と、
上記ロープ前駆体を加熱することにより溶着処理を行う溶着工程とを含む螺旋状歯付きロープの製造方法であって、
上記巻回工程では、上記第一ロープ及び上記第二ロープとして、上記第一樹脂及び上記第二樹脂のうちの少なくとも一方に上記第一樹脂の昇温特性と上記第二樹脂の昇温特性とを異ならしめるように赤外線反射率調整材が含まれている第一ロープ及び第二ロープを使用し、
上記溶着工程では、上記第一樹脂及び上記第二樹脂のうちで、昇温特性がより高い樹脂が溶融する温度で上記溶着処理を行うことを特徴とする。
本発明の螺旋状歯付きロープの製造方法では、上述した本発明の螺旋状歯付きロープを簡便に製造することができる。
なお、上記各部材の構成については、上述した実施形態で述べた構成と同様であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 螺旋状歯付きロープ
2 第一ロープ
3 第一芯材
4 第一樹脂
5 第二ロープ
6 第二芯材
7 第二樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一芯材に第一樹脂を被覆してなる第一ロープと、
第二芯材に第二樹脂を被覆してなる第二ロープとからなり、
前記第一ロープの外周に前記第二ロープが螺旋状に巻回されている螺旋状歯付きロープであって、
前記第一樹脂及び前記第二樹脂のうちの少なくとも一方には、前記第一樹脂の昇温特性と前記第二樹脂の昇温特性とを異ならしめるように赤外線反射率調整材が含まれており、
前記第一ロープと前記第二ロープとが溶着していることを特徴とする螺旋状歯付きロープ。
【請求項2】
前記第一樹脂には、赤外線反射率調整材Aが含まれており、
前記第二樹脂には、赤外線反射率調整材Bが含まれており、
前記赤外線反射率調整材Aの赤外線反射率と、前記赤外線反射率調整材Bの赤外線反射率とが異なっている請求項1に記載の螺旋状歯付きロープ。
【請求項3】
前記赤外線反射率調整材Bの赤外線反射率は、前記赤外線反射率調整材Aの赤外線反射率よりも高い請求項2に記載の螺旋状歯付きロープ。
【請求項4】
前記赤外線反射率調整材は、複合酸化物系顔料、酸化チタン系顔料及びカーボンブラック系顔料からなる群から選択される少なくとも一種の顔料からなる請求項1〜3のいずれかに記載の螺旋状歯付きロープ。
【請求項5】
前記第一樹脂と前記第二樹脂とは、同じ種類の樹脂材料からなる請求項1〜4のいずれかに記載の螺旋状歯付きロープ。
【請求項6】
前記第一樹脂及び前記第二樹脂は、熱可塑性樹脂からなる請求項1〜5のいずれかに記載の螺旋状歯付きロープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−241881(P2012−241881A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115936(P2011−115936)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】