説明

血圧制御に関する新たな蛋白質

【課題】カリウムリサイクル機構を担うカリウムチャネル及びイオン輸送体を機能的に発現させる上で重要な機能を果たしている新たな蛋白質及びそれをコードする遺伝子(ポリヌクレオチド)を提供し、この蛋白質を利用するカリウムチャネル及びイオン輸送体の発現制御法及び各種のスクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】血圧制御に関する新たな蛋白質、特に、MAGI1のスプライシングバリアントであって、腎遠位尿細管の基底膜側(血管側)に発現する蛋白質(AY595891)及び腎遠位尿細管の管腔側に発現する蛋白質(AY595892)、それらをコードするDNA、これら蛋白質の発現量を指標として用いることからなる、カリウムの排出及び/又はナトリウム再吸収を調節または制御し得る血圧制御因子のスクリーニング方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧制御に関する新たな蛋白質、特に、MAGI1のスプライシングバリアントであって、腎遠位尿細管の基底膜側(血管側)に発現する蛋白質(AY595891)及び腎遠位尿細管の管腔側に発現する蛋白質(AY595892)、それらをコードするDNA、これら蛋白質の発現量を指標として用いることからなる、カリウムの排出及び/又はナトリウム再吸収を調節または制御し得る血圧制御因子のスクリーニング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は血管抵抗と循環血漿量により規定されることが判明している。通常では生体が適切に血管抵抗と循環血漿量を制御していることにより、血圧は正常範囲内に保たれていると考えられる。この制御機構が機能しないため、(1)血管抵抗が亢進、または(2)循環血漿量が増大、していることが、高血圧症の原因と推定される。特に近年、高血圧症の病態には、循環血漿量増大状態が多大な寄与をすることが再確認されている(Cell, 104:545-556, 2001)。従来の高血圧の治療薬は(1)血管抵抗亢進抑制作用を有する薬物が主体であり、(2)循環血漿量減少作用を有する薬物は利尿薬だけであるが、利尿薬は低カリウム血症を初めとする電解質異常を副作用として生じやすいため、循環血漿量が充分に制御出来ていないことが多い。このことが、現有の降圧薬に対して抵抗性を示す高血圧症の原因と考えられる。
【0003】
循環血漿量は腎臓の遠位尿細管におけるナトリウムイオンの再吸収過程で最終的に制御される。この再吸収過程はナトリウムポンプを駆動力としている。ナトリウムポンプはナトリウムイオンのくみ出しに伴いカリウムイオンを組み入れるため、ナトリウムポンプの機能維持にはカリウムイオンをくみ出す機構が不可欠である。カリウムチャネルを介したカリウムリサイクル機構が、このカリウムイオンのくみ出し機構を担っていることが解明されている。
【0004】
既に、受容体及びチャネル等の膜蛋白、並びに細胞内シグナルを、神経シナプス後肥後部における電子密度の高いpostsynaptic density (PSD) と呼ばれる構造のような、細胞の適切な場所に発現・集積させるにあたって碇の役目を果たすMAGUK(Membrane Associated Guanylate Kinases)のファミリーに属するMAGI1(MAGUK with Inverted domain structure)が知られている。MAGI1には、図1に示した陰影部分の変異体(エクソン15のみ含む変異体、エクソン17のみ含む変異体、エクソン15及び17共に含む変異体)(Experimental Cell Research 275: 155-170, 2002)とカルボシキル末端側の変異体(エクソン23のみ含む変異体、エクソン23の途中までとエクソン24及び25を含む変異体、エクソン23の途中までとエクソン25を含む変異体)(Experimental Cell Research 275: 155-170, 2002、Journal of Biological Chemistry 272:31589-5-597, 1997)が既に報告されていた(図1中の既報の配列参照)。
【0005】
これら既報の変異体に対しては、MAGUKファミリーに属するSSCAMとMAGI1を共に認識する抗体によりその分布が調べられ、腎臓では主に糸球体(腎臓の濾過装置)に分布することが報告されていた(Journal of American Society of Nephrology 12:667-677, 2001、Molecular and Cellular Biology 23: 4267-4282, 2003)。また、この抗体が上皮細胞系ではタイトジャンクションに発現する蛋白を認識したため、MAGI1は上皮細胞系のタイトジャンクションに発現すると推定されていた(Oncogene 18:7810-7815, 1999、Journal of Biological Chemistry 277:30183-30190, 2002)。
【非特許文献1】Experimental Cell Research 275: 155-170, 2002
【非特許文献2】Journal of Biological Chemistry 272:31589-5-597, 1997
【非特許文献3】Journal of American Society of Nephrology 12:667-677
【非特許文献4】Molecular and Cellular Biology 23: 4267-4282, 2003
【非特許文献5】Oncogene 18:7810-7815, 1999
【非特許文献6】Journal of Biological Chemistry 277:30183-30190, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、カリウムリサイクル機構を担うカリウムチャネル及びイオン輸送体を機能的に発現させる上で重要な機能を果たしている新たな蛋白質及びそれをコードする遺伝子(ポリヌクレオチド)を提供し、この蛋白質を利用するカリウムチャネル及びイオン輸送体の発現制御法及び各種のスクリーニング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、MAGI1の新たなスプライシングバリアント(変異体)を発見し、更に、このMAGI1変異体を特異的に認識する抗体を作製することにより、MAGI1は腎臓の糸球体や尿細管細胞(上皮細胞に属する)のタイトジャンクションに発現しているのではなく、遠位尿細管細胞の管腔側と血管側に発現していることを解明し、この蛋白質を介したカリウムチャネルの発現制御法を見出した。本発明はこれらの新たな知見に基づき完成されたものである。
【0008】
即ち、本発明は以下の各態様に係るものである。
1.MAGI1のスプライシングバリアントであって、腎遠位尿細管の基底膜側(血管側)に発現する蛋白質。
2.MAGI1のスプライシングバリアントであって、MAGI1のゲノム塩基配列におけるエクソン1の途中からエクソン4の途中までがスプライシングアウトされ、エクソン7を含み、更に、エクソン9におけるスプライシングアウトが見られない蛋白質。
3.以下の(a)又は(b)のポリペプチド:(a)配列番号:2に示されるアミノ酸配列から成るポリペプチド;又は(b)(a)のアミノ酸配列において、一つ又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、若しくはアミノ酸配列に対する少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列から成り、(a)のポリペプチドと実質的に同等の活性を有するポリペプチド。
4.態様1若しくは2記載の蛋白質又は態様3記載のポリペプチドをコードするDNA。
5.以下の(a)又は(b)のDNAである、態様4記載のDNA:(a)配列番号:1に示される塩基配列を含むDNA;(b)(a)の塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、(a)のDNAがコードするポリペプチドと実質的に同等の活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
6.cDNAである、態様4又は5記載のDNA。
7.MAGI1のスプライシングバリアントであって、腎遠位尿細管において管腔側に特異的に発現する蛋白質。
8.MAGI1のスプライシングバリアントであって、MAGI1のゲノム塩基配列におけるエクソン7を含み、更に、エクソン9におけるスプライシングアウトが見られない蛋白質。
9.以下の(a)又は(b)のポリペプチド:(a)配列番号:4に示されるアミノ酸配列から成るポリペプチド;又は(b)(a)のアミノ酸配列において、一つ又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、若しくはアミノ酸配列に対する少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列から成り、(a)のポリペプチドと実質的に同等の活性を有するポリペプチド。
10.態様7若しくは8記載の蛋白質又は態様9記載のポリペプチドをコードするDNA。
11.以下の(a)又は(b)のDNAである、態様10記載のDNA:(a)配列番号:3に示される塩基配列を含むDNA;(b)(a)の塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、(a)のDNAがコードするポリペプチドと実質的に同等の活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
12.cDNAである、態様10又は11記載のDNA。
13.態様4〜6及び態様10〜12のいずれか一項に記載のDNAを含む発現ベクター。
14.態様13記載の発現ベクターが導入された形質転換体。
15.態様1〜3及び態様7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質又はポリペプチドと特異的に反応する抗体。
16.態様1〜3及び態様7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現量を指標として用いることからなる、カリウムの排出及び/又はナトリウム再吸収を調節または制御し得る血圧制御因子のスクリーニング方法。
17.請求16に記載のスクリーニング方法であって、
(a) 被検物質の存在下に態様14記載の形質転換体を培養する工程、
(b)該形質転換体における態様1〜3及び態様7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現量を測定する工程、及び
(c)発現量を増加又は減少させる化合物を選択する工程、を含む方法。
18.工程(b)において、態様15記載の抗体を使用して態様1〜3及び態様7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現量を測定する、態様17記載のスクリーニング方法。
19.工程(b)において、態様1〜3及び態様7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドに結合された標識物質を測定する、態様17記載のスクリーニング方法。
20.更にカリウムチャンネルを構成する蛋白質を共発現された態様14記載の形質転換体を用いて、該カリウムチャンネル活性を測定することにより、態様1〜3及び態様7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現量を測定する、態様17記載のスクリーニング方法。
21.工程(b)において、態様1〜3及び態様7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドをコードするmRNA量を測定する、態様17記載のスクリーニング方法。
22.態様16〜21のいずれか一項に記載のスクリーニング方法に用いるスクリーニングキット。
23.態様1〜3のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を増加させる物質、及び/又は態様7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を減少させる物質を有効成分とする、カリウム排泄抑制組成物。
24.態様1〜3のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を減少させる物質、及び/又は態様7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を減少させる物質を有効成分とする、ナトリウム再吸収抑制組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、カリウムチャネルを機能的に発現させる上で重要な機能を果たしている新たな蛋白質及びそれをコードする遺伝子(ポリヌクレオチド)が提供される。更に、これらを利用する各種のスクリーニング方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の蛋白質はその配列から膜蛋白を細胞の適切な場所に発現させるにあたって碇の役目を果たすMAGUK(Membrane Associated Guanylate Kinases)のファミリーに属するMAGI1(MAGUK with Inverted domain structure)のスプライス変異体である。その代表的な例として、米国National Institutes of Health(NIH)のNational Center for Biotechnology Information (NCBI) のGenBankにおいて登録番号:AY598951(配列番号1及び2)及びAY598952(配列番号3及び4)で登録された配列を有する蛋白質を挙げることが出来る。
【0011】
データベース(Rn4 WGA2218 3)上に登録されているMAGIのゲノム情報に基づき、AY598951/AY598952は23個のエクソンにより構成されると推定される(図1参照)。AY598951/AY598952共に図の陰影(グレー)部に示される既報のスプライス部分に加え、従来公知のMAGI1には含まれていない黒色部で示される新たなスプライス部分を含むMAGIの新たな変異体である。エクソン7は本発明で新たにエクソンであることが判明した部分であり、エクソン9が既報の配列では黒色部がスプライスアウトされているが、AY598951/AY598952ではスプライスアウトされていない。更にAY598951では、エクソン1の途中(エクソン1における第64番目の塩基)からエクソン4の途中(エクソン4における第100番目の塩基)までがエクソンの中でスプライスアウトされる新たなスプライス変異体である。
【0012】
本明細書の実施例に記載されているように、これら従来公知の変異体と本発明の蛋白質であるAY598951/AY598952を含むMAGI1の変異体を共通して認識する抗体は遠位尿細管及びその他の尿細管(ヘンレのループの細い部分と皮質部・髄質部集合尿細管)細胞の管腔側と基底膜側に共に発現を認め、これら従来公知の変異体とAY598952を含むMAGI1の変異体を共通して認識するがAY598951を認識しない抗体が遠位尿細管及びその他の尿細管細胞の管腔側にのみ発現を認めた。即ち、AY598951は他の変異体とは異なり、遠位尿細管細胞の基底膜側に特異的に発現する可能性を有する新たな変異体であった。
【0013】
本明細書の実施例で示されるように、AY598951は臓器分布で腎臓に特異的に発現しており、更に、特異的抗体による腎臓内での発現分布から、腎臓では腎遠位尿細管の基底膜側に特異的に発現していることが解明した。このことから、AY598951はナトリウム輸送に関与する蛋白の中で、ナトリウムポンプ(Na-K ATPase)やカリウムチャネルKir4.1/Kir5.1の尿細管細胞での基底膜側への発現において碇の役割を果たすことにより、機能的発現量を制御していると推定される。言い換えるならば、AY598951は腎尿細管基底膜側に機能的局在を示す輸送体の基底膜側への特異的発現における碇の役割により発現量を調節する機能を有し、これにより、AY598951は血中のカリウムバランスと循環血漿量の調節を行う因子として働いていると考えられる。
【0014】
一方で、AY598952は臓器分布では脳・心臓を含めた各種臓器に発現しているが、腎臓では、本明細書の実施例で示したように、特異的抗体による腎臓内での発現分布から、腎遠位尿細管の管腔側に特異的に発現していることが解明した。このことから、AY598952はナトリウム輸送に関与する蛋白の中で、ナトリウム・クロライド共輸送体(TSC)やカリウムチャネルKir1.1の尿細管細胞での管腔側への発現において碇の役割を果たすことにより、機能的発現量を制御していると推定される。言い換えるならば、AY598952は腎尿細管管腔側に機能的局在を示す輸送体の管腔側への特異的発現における碇の役割により発現量を調節するものと考えられる。
【0015】
従来公知のMAGI1が上皮細胞である尿細管のタイトジャンクションに発現していることから、細胞の極性の維持機構に関与するのに対して、本発明の蛋白質であるMAGI1の新たなスプライシングバリアントは尿細管細胞の管腔側又は基底膜側に発現しているので、ナトリウム輸送に関与する膜蛋白群を含めた膜蛋白群の発現制御に関与するものと考えられる。
【0016】
本発明の蛋白質には、配列番号:2又は配列番号:4に示されるアミノ酸配列に対する少なくとも80%、好ましくは、少なくとも98.5%、より好ましくは、少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列から成る蛋白質も含まれる。
【0017】
本明細書において、「相同性」とは、ポリペプチド配列(あるいはアミノ酸配列)又はポリヌクレオチド配列(あるいは塩基配列)における2本の鎖の間で該鎖を構成している各アミノ酸残基同志又は各塩基同志の互いの適合関係において同一であると決定できるようなものの量(数)を意味し、二つのポリペプチド配列又は二つのポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味するものである。相同性は容易に算出できる。二つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列間の相同性を測定する方法は数多く知られており、「相同性」(「同一性」とも言われる)なる用語は、当業者には周知である (例えば、Lesk, A. M. (Ed.), Computational Molecular Biology, Oxford University Press, New York, (1988);Smith, D. W. (Ed.), Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Academic Press, New York, (1993); Grifin, A. M. & Grifin, H. G. (Ed.), Computer Analysis of Sequence Data: Part I, Human Press, New Jersey, (1994);von Heinje, G., Sequence Analysis in Molecular Biology, Academic Press,New York, (1987); Gribskov, M. & Devereux, J. (Ed.), Sequence Analysis Primer, M-Stockton Press, New York, (1991) 等) 。二つの配列の相同性を測定するのに用いる一般的な方法には、Martin, J. Bishop (Ed.), Guide to Huge Computers, Academic Press, San Diego, (1994);Carillo, H. & Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988) 等に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。相同性を測定するための好ましい方法としては、試験する二つの配列間の最も大きな適合関係部分を得るように設計したものが挙げられる。このような方法は、コンピュータープログラムとして組み立てられているものが挙げられる。二つの配列間の相同性を測定するための好ましいコンピュータープログラム法としては、GCG プログラムパッケージ (Devereux, J. et al., Nucleic Acids Research, 12(1): 387 (1984)) 、BLASTP、BLASTN、FASTA (Atschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215: 403 (1990)) 等が挙げられるが、これらに限定されるものでなく、当該分野で公知の方法を使用することができる。
【0018】
本明細書において、「実質的に同等の活性」とは、蛋白質の生理的活性、生物学的活性及び物理化学的活性等の各種活性が実質的に同等又は同質であることを意味する。このような活性の具体例として、例えば、既に記載したような、ナトリウムポンプ(Na-K ATPase)やカリウムチャネルKir4.1/Kir5.1の尿細管細胞での基底膜側での発現における碇又は発現調節の活性・機能、ナトリウム・クロライド共輸送体(TSC)やカリウムチャネルKir1.1の尿細管細胞での管腔側での発現における碇又は発現調節の活性・機能、又は、ナトリウム輸送に関与する膜蛋白群を含めた膜蛋白群の発現制御活性・機能を挙げることが出来る。
【0019】
本発明の蛋白質(又は、ポリペプチド)及びそれをコードするDNAは当業者であれば、本明細書の記載及び当該技術分野における公知技術に基き容易に調製することが可能である。例えば、実施例に記載されているように、ラット等の適当な哺乳動物の腎臓から作成されたcDNAライブラリーをテンプレートとして用いるRT−PCR、及び、その他のNASBA(Nucleic acid sequence based amplification)法、TMA(Transcription-mediated amplification)法及びSDA(Strand Displacement Amplification)法等の当業者に公知の任意DNA増幅技術を用いることにより、cDNAとして容易に得ることが可能である。尚、RT−PCR等に使用するプラーマーの塩基配列は、既に公知のMAGI1のゲノム配列又は各種変異体の塩基配列に基き適宜設計・選択することが出来る。
【0020】
更に、こうして取得された本発明蛋白質をコードするDNAを適当な発現ベクターに組込み、該発現ベクターで適当な宿主を形質転換させ、該形質転換体を適当な培養条件で培養することにより、本発明の蛋白質を産生させることが出来る。
【0021】
本発明の蛋白質(又は、ポリペプチド)及びそれをコードするDNAの由来に特に制限はなく、代表的な例としては、ヒト、ラット及びマウスのような哺乳動物の組織に由来するものを挙げることが出来る。
【0022】
或いは、上記DNAは当業者に周知の方法により上記cDNAライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。更に、該DNAに、当業者に公知の部位特異的突然変異誘発に基づき、市販のミューテーションシステム等を用いて塩基変異を導入して調製することも可能である。
【0023】
又、上記DNAは、公知の方法(例えば、Carruthers(1982)Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 47:411-418;Adams(1983)J. Am. Chem. Soc. 105:661; Belousov(1997)Nucleic Acid Res. 25:3440-3444; Frenkel(1995)Free Radic. Biol. Med. 19:373-380; Blommers(1994)Biochemistry 33:7886-7896; Narang(1979)Meth. Enzymol. 68:90; Brown(1979)Meth. Enzymol. 68:109; Beaucage(1981)Tetra. Lett. 22:1859; 米国特許第4,458,066号)に記載されているような周知の化学合成技術により、in vitroにおいて合成することもできる。また、本発明のポリヌクレオチドを適当な制限酵素で切断する等の方法によって作製することもできる。
【0024】
本明細書において、DNAのハイブリダイズにおける「ストリンジェント(stringent)な条件」は、塩濃度、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)、温度、及びその他公知の条件の適当な組み合わせによって定義される。すなわち、塩濃度を減じるか、有機溶媒濃度を増加させるか、またはハイブリダイゼーション温度を上昇させるかによってストリンジェンシー(stringency)は増加する。更に、ハイブリダイゼーション後の洗浄の条件もストリンジェンシーに影響する。この洗浄条件もまた、塩濃度と温度によって定義され、塩濃度の減少と温度の上昇によって洗浄のストリンジェンシーは増加する。
【0025】
従って、「ストリンジェントな条件」とは、各塩基配列間の相同性の程度が、例えば、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上であるような、高い相同性を有する塩基配列間のみで、特異的にハイブリッドが形成されるような条件を意味する。具体的には、例えば、温度60℃〜68℃において、ナトリウム濃度150〜900mM、好ましくは600〜900mM、pH 6〜8であるような条件を挙げることが出来る。ストリンジェントな条件の一具体例としては、5 x SSC (750 mM NaCl、75 mM クエン酸三ナトリウム)、1% SDS、5 x デンハルト溶液50% ホルムアルデヒド、及び42℃の条件でハイブリダイゼーションを行い、0.1 x SSC (15 mM NaCl、1.5 mM クエン酸三ナトリウム)、0.1% SDS、及び55℃の条件で洗浄を行うものである。
【0026】
ハイブリダイゼーションは、例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0027】
当業者に周知の任意の方法に従い、本発明の蛋白質をコードするDNAを、プラスミドベクター、ファージベクター、及び各種の混成ベクター等の適当な組換え用DNAに挿入し、こうして得られた発現ベクターを用いて各種の細胞を形質転換することができる。この組換え用DNAは、当業者に公知の通常の組換えDNA手法によって取り扱うことが可能な任意のベクターである。これらのベクターは、その導入すべき宿主細胞に依存して適当に選択することが出来る。該ベクターは、宿主細胞の中に導入され、本発明の蛋白質を一過性で発現したり、或いは、宿主細胞のゲノムの中にその全体あるいはその一部がゲノム中の1箇所以上に組込まれることができる。このようなベクターとして、当業者に公知の各種の市販のベクターを使用することが出来る。
【0028】
本発明の発現ベクターには、典型的には、当業者に公知の、構成的発現プロモーター又は各種の誘導型発現プローター等の各種プロモーター、エンハンサー及びサイレンサー等の各種調節配列、リボソーム結合部位、シグナル配列、および翻訳開始配列等の各種要素ならびにその他の外来性あるいは内在性タンパク質をコードする遺伝子、各種薬剤耐性遺伝子、栄養要求性を相補する遺伝子等を任意に含むことができる。
【0029】
本発明において蛋白質をコードするDNAを含むベクターによって形質転換される宿主細胞として、原核微生物、真核微生物、植物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞等を用いることができる。たとえば、原核微生物の例としてはエシェリヒア属、バチルス属、又は、ストレプトマイセス・グリセウス若しくはストレプトコッカス・セリカラー等のストレプトマイセス属を宿主とすることができる。真核生物としては、サッカロミセス属及びピヒア属等の酵母、アスペルギルス・オリゼ及びアスペルギルス・ソーエ等のアスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属、メタリチウム属、モナスカス属、アクレモニウム属、及びムコール属等の糸状菌、並びに、トリコデルマ属等の担子菌などから選択することができる。昆虫細胞としてはキイロショウジョウバエ、カイコ等の細胞を用いることができる。
【0030】
但し、本発明のスクリーニング方法等に用いる場合には、腎尿細管由来の培養細胞、例えば、MDCK細胞を宿主として使用することが好適である。更に、チャネル活性をAY598951/AY598952の発現量のマーカーとして用いる為に、カリウムチャネルを本発明の蛋白質と共発現するような形質転換体を作成することが出来る。
【0031】
本発明のDNAを含む発現ベクター(組換え用DNA)は、例えば、塩化カルシウム法、プロトプラスト‐PEG法、エレクトロポレーション法、Tiプラスミド法、パーティクルガン法、バキュロウィルス法などの公知の任意の方法によって宿主細胞へと導入でき、形質転換体を作成することができる。更に、複数種の組換えDNAを用いるコトランスフェクション法によっても可能である。
【0032】
上記発現ベクターの代わりに、PCR増幅等により取得される本発明の蛋白質をコードする遺伝子を含む適当なDNA断片自体を用いて本発明の形質転換体を得ることも可能である。そのような場合には、かかるDNA断片に加えてさらに適当な緩衝液及びその他の助剤を任意に含む溶液等の組成物として形質転換に使用することができる。
【0033】
本発明の蛋白質を発現する転換体を該蛋白質の生産に好ましい条件で培養して該蛋白質を発現させ、その宿主細胞および/または培地から回収することにより製造することができる。宿主細胞の培養に用いる培地は、当業者に公知である任意の培地の中から、使用する発現ベクターの構成(プロモーターの種類等)及び宿主の種類等に応じて適当なものを適宜選択することができる。
【0034】
宿主細胞により産生された本発明の蛋白質は、当業者に公知の任意の手段の適当な組み合わせ、例えば、遠心または濾過による培地と細胞の分離、および硫酸アンモニウムの様な塩による培地のタンパク質成分の沈殿、及びこれに続く疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、又はその他のクロマトグラフィーの使用により培地から回収することができる。或いは、本発明の蛋白質は化学合成法により製造することも可能である。
【0035】
既に記載したように、従来の利尿薬の副作用として低カリウム血症を起こしやすいことがある。これは、利尿薬使用により尿中へのカリウム排泄が亢進するためであると考えられる。このことから尿中へのカリウム排泄を抑制する物質を併用することにより、副作用を予防しながらの利尿薬の投与が可能になると推定される。この為には、基底膜側に発現しているカリウムチャネルKir4.1/Kir5.1の発現量を増やすこと、及び/又は、管腔側に発現しているカリウムチャネルKir1.1の発現量を減らすことで、尿中へのカリウム排泄を抑制することが可能である。
【0036】
既に記載したように、本発明の蛋白質であるMAGI1の新たなスプライシングバリアントは尿細管細胞の管腔側又は基底膜側に発現しているので、ナトリウム輸送に関与する膜蛋白群を含めた膜蛋白群の発現制御に関与するものと考えられる。従って、AY598951又はAY598952のような本発明の蛋白質の発現量を介して、上記のようなカリウムチャネルの発現量を制御出来うることが考えられる。更に、本発明の蛋白質はナトリウムの再吸収過程に関与する様々な輸送体の機能発現に関与している可能性も考えられる。このことから、AY598951/AY598952のような本発明の蛋白質の発現を抑制する物質により、ナトリウムの再吸収過程を抑制することにより、血圧を下げることが可能である。この際に従来の利尿薬と異なり、カリウムチャネルの発現量を制御することにより、低カリウム血症を誘発せずにナトリウムの再吸収過程を抑制出来る可能性がある。
【0037】
従って、本発明の蛋白質若しくはポリペプチドの発現量を指標として用いることによって、カリウムの排出及び/又はナトリウム再吸収を調節または制御し得る血圧制御因子のスクリーニングをすることが可能である。
【0038】
本発明の蛋白質若しくはポリペプチドの発現量は当業者に公知の任意の方法・手段で測定することが出来る。具体的には、例えば、被検物質の存在下に本発明の蛋白質を産生する形質転換体を培養し、産生された該蛋白質の量を直接測定するか、又は、それをコードするmRNAの量を測定することができる。尚、発現量の測定は必ずしも定量的である必要はなく、具体的な測定法・手段に応じて、目視などによる定性的又は半定量的な判定であっても本発明の効果は十分に得ることが出来る。
【0039】
本発明蛋白質の発現量は、例えば、本発明蛋白質と特異的に反応する本発明の抗体を用いた免疫染色及びEIA等の各種の免疫学的特異反応を利用する方法、エドマン法を用いた気相シークエンサー等ペプチドのアミノ酸配列分析法、更には、MALDI−TOF/MS及びESI Q−TOF/MS法等に代表される質量分析によって検出することが出来る。従って、このような抗体は血圧制御因子のスクリーニング用試薬としての用途を有する。
【0040】
本発明の抗体は、本発明蛋白質若しくはその適当な部分ポリペプチド(ペプチド断片)又はそれらの各種誘導体又は複合体等を抗原物質又は免疫原として用いて、当業者に公知の適当な方法で調製することが可能である。例えば、ポリクローナル抗体の場合には、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ニワトリ等の適当な動物に投与し、その抗血清から調製することが可能である。或いは、モノクローナル抗体作成法(「単クローン抗体」、長宗香明、寺田弘共著、廣川書店、1990年; "Monoclonal Antibody" James W. Goding, third edition, Academic Press, 1996)等に記載の公知の細胞融合を用いる方法でモノクローナル抗体として調製することも可能である。
【0041】
尚、上記の本発明の抗体は、その元来の抗体活性を失わない限り、遺伝子工学(DNA組換え技術)により、例えば、Fab、F(ab')2、Fv断片等の完全な抗体由来の各種誘導体を含む、当業者に公知の様々な形態に改変された誘導体、組換え体又はフラグメントであっても良い。
【0042】
更に、当業者に公知の遺伝子工学的手法により、本発明の蛋白質をコードする遺伝子に標識物質をコードするレポーター遺伝子を結合させて、これらの融合蛋白質を発現させ、この標識蛋白質を測定することにより、本発明の蛋白質の発現量を測定することも可能である。このような標識物質の例としては、発現した蛋白質の検出に使用する物質として当業者に公知の任意の蛋白質を使用することが出来る。このような物質の代表例として、オワンクラゲ由来のGFP(Green fluorescent protein)、YFP(Yellow fluorescent protein)、RFP(Red fluorescent protein)及びBFP(Blue fluorescent protein)のような緑、黄色、赤、青等の可視光域の多彩な色彩で自家蛍光を発する蛋白質、又は、経時に色彩が変化する蛋白質を挙げること出来る。更には、赤外光域や紫外光域の蛍光を発する蛋白質を使用することも可能である。
【0043】
また、標識蛋白質として特定の抗原性を持つ蛋白質を用い、その抗原性を認識する蛍光抗体を用いれば、核に蛍光を持たせることが可能となる。更に、標識蛋白質としてルシフェラーゼのような酵素蛋白質を用い、その酵素蛋白質の働きにより、蛍光を発する物質が産生されるような基質を用いることも出来る。
【0044】
更に、カリウムチャネルを本発明の蛋白質と共発現するような形質転換体を作成し、このような形質転換体におけるチャネル活性を本発明蛋白質の発現量のマーカーとして用いることで、オートパッチクランプ法(ナニオン社)を用い、大規模なスクリーニングが可能となる。
【0045】
本発明のスクリーニング方法において、本発明の蛋白質の発現量は、それをコードするmRNAの量により測定することも可能である。
【0046】
このようなmRNAの測定は、本明細書中の実施例に記載された該蛋白質をコードする遺伝子(DNA)の塩基配列に基づき適宜設計したプライマーを使用したRT−PCR法等の各種定量的PCR法、並びにマイクロアレイ(DNAチップ)法等の当業者に公知の方法で行うことが出来る。
【0047】
本発明のスクリーニング方法に使用されるキットは、本発明蛋白質の具体的な測定原理等に応じて、適当な構成をとることが出来る。該キットは、例えば、本発明の蛋白質を特異的に認識する抗体から成る試薬、又は、上記のmRNAの測定の為の、上記遺伝子の増幅用プライマー及びハイブリダイゼーション用のプローブを含むことが出来る。これらは、その用途に応じて、適当な長さ、例えば、10〜100個の連続した塩基配列から成る。
【0048】
以上のキットに構成要素として含まれる、各種のプライマー、プローブ、又は、抗体は、当業者に公知の任意の放射性物質、蛍光物質、色素等の適当な標識物質によって標識されていても良い。更に、上記キットには、その構成・使用目的などに応じて、当業者に公知の他の要素又は成分、例えば、各種試薬、酵素、緩衝液、反応プレート(容器)等が含まれる。
【0049】
更に、本発明は、上記のようなスクリーニング方法で同定された因子を有効成分とする医薬組成物にも係るものである。
【0050】
例えば、腎遠位尿細管の基底膜側に特異的に発現しているAY598951に代表される本発明の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を増加させる物質、及び/又は、腎遠位尿細管の管腔側に特異的に発現しているAY598952に代表される本発明の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を減少させる物質は、優れたカリウム排泄抑制作用を有するものと考えられる。更に、このような本発明蛋白質若しくはポリペプチドの発現を減少させる物質は、優れたナトリウム再吸収抑制作用を有するものと考えられる。
【0051】
本発明の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を減少させる物質の典型例として、例えば、これらをコードする遺伝子のDNAに対するアンチセンスDNA又はRNA、siRNAのような遺伝子のmRNAの機能を阻害する物質、或いは、該蛋白質若しくはポリペプチドに対するドミナントネガティブ分子を挙げることが出来る。これらは本明細書に記載された塩基配列等の情報に基づき、当業者であれば、適宜、調製することができる。
【0052】
特に、AY598951に代表される本発明の蛋白質は腎遠位尿細管に特異的に発現していることを解明しており、これらの発現を増加させる物質、スクリーニングにより特定した物質は腎尿細管に特異的に作用する物質である可能性が高い。一方で、AY598952に代表される本発明の蛋白質は他の臓器にも発現しているが、尿中排泄型の物質であれば、血中に比較し尿中の物質の濃度が高くなることが推定される。このような物質を選択することにより、他臓器には影響しない濃度で投与しても、腎尿細管でのみ特異的に作用させることが可能である。
【0053】
尚、従来公知のMAGI1の変異体は本発明の蛋白質とは異なる配列を有し、尿細管を含む上皮細胞のタイトジャンクションと糸球体で発現していると報告されている。従って、このような従来公知の変異体の腎臓における発現部位は本発明の蛋白質とは異なり、高血圧に関与する輸送体群の発現とは全く関係が無く、その発現を制御出来ない。このため公知の変異体を用いて同様なスクリーニングを実施しても高血圧に関する物質を選択することは出来ないと推定される。
【0054】
更に、例えば、ナトリウム・クロライド共輸送体及びカリウムチャンネルは中枢神経系で発現していることが多く、これらに直接作用する物質は副作用が強く薬剤として適当でないと考えられる。更に、ナトリウムポンプ及びカリウムチャンネルに直接作用する薬剤は作用が強すぎて治療薬としては不適当である。これに対して、本発明方法でスクリーニングされる物質、特に、腎遠位尿細管に特異的に発現しているAY598951に代表される本発明の蛋白質の発現を増加させる物質には、このような欠点はなく、副作用の少ない薬剤として使用することができるものと考えられる。
【0055】
上記の医薬組成物には、各種の有効成分と組合せて、薬学上許容できる、当業者に公知の任意の医薬キャリア−又は希釈剤等のその他の成分を含むことが出来る。
【0056】
本発明の有効成分の薬学的な有効量及び投与方法又は投与手段は、有効成分の種類、病状の重さ、治療方針、患者の年齢、体重、性別、全般的な健康状態、及び患者の(遺伝的)人種的背景に応じて、当業者が適宜選択することができる。例えば、該有効成分の投与量は0.1〜100mg/日/成人、より一般的には1〜10mg/日/成人である。
【0057】
本発明の医薬組成物は投与方法・投与経路等に応じて当業者に公知の任意の形状とすることが出来る。それらは適当な方法で投与することが出来る。例えば、形状としては、液体状、粉末状、及びコロイド状等があり、上記のキャリア−又は希釈剤を伴った形で、静脈内、腹腔内、皮下に注射するか、又は、経口投与等が挙げられる。
【0058】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例の記載によって何ら限定して解釈されるものではない。又、特に記載のない場合には、以下の実施例は、当該技術分野における常法及び当業者に公知の標準的な方法、例えば、Sambrook and Maniatis, in Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等に記載されている遺伝子工学及び分子生物学的技術に従い実施した。又、本明細書中に参考文献などとして引用された文献の記載内容は本明細書の開示内容の一部を構成するものである。
【実施例1】
【0059】
AY598951/AY598952をコードするcDNAの単離
RNAはTrizol液(Gibco-BRL社)を用いたグアニジンチオシアネート法によりラット全腎より抽出した。抽出したRNAからpolyAカラム(Amersham Biosciences社)を用いてmRNAを精製した。精製したmRNAからSuperScriptIIリバーストランスクリプターゼを用いてcDNAを作製した。作製したcDNAををテンプレートとしてプライマーセット1(5’-ATGTCGAAAGTGATCCAGAAG-3’(配列番号5)、5’-TCATGGAGTCATGCCAGG-3’ (配列番号6))を用いてLATaqポリメレース(宝酒造社)を用いてホットスタートPCR法にて増幅した(95度20秒、60度4分を1サイクルとして20サイクル実施)。増幅されたPCR産物をTAクローニングベクター(Topo-XL;Invitrogen社)にライゲートした。GenemeMDTM DCT-Quick start kitを用いて、自動シークエンサー(モデルCEQTM 2000XL;Beckman Coulter社)にてシークエンスを確認した。AY598951は1016アミノ酸をコードする3051塩基配列(配列番号1及び2)、AY598952は1255アミノ酸をコードする3768塩基配列(配列番号3及び4)であった。両配列は米国National Institutes of Health(NIH)のNational Center for Biotechnology Information(NCBI)のGenBankに2004年4月14日に登録し、各々AY598951/AY598952の登録番号を取得している。尚、これらの配列はNCBIのウェブサイトにおいて電気通信回線(インターネット)を通じて2005年6月30日付けで公開された。
【0060】
この結果、図に示すようにAY598951/AY598952はMAGI1のスプライス変異体であることが判明した(図1参照)。MAGI1はデータベース上25個のエクソンから構成される蛋白で、AY598952はエクソン1から23で構成される配列を有する変異体、AY598951はエクソン1から14とエクソン16から23で構成されエクソン1途中から4の途中までがスプライスアウトされる配列を有する変異体であることが明らかとなった(図1参照)。更に、AY598951/AY598952のcDNAをpCDNA3ベクター(Invitrogen社)に組み入れることにより、AY598951/AY598952蛋白の発現ベクターを作製した。
【実施例2】
【0061】
AY598951/AY598952をコードするcDNAの組織分布
AY598951/AY598952の各組織における分布をRT-PCR法にて確認した。BD MTC Multiple Tissue cDNA Panel (Rat MTC Panel 1)(Clontech社)をテンプレートとして用い、プライマーセット2(5’-ATGTCGAAAGTGATCCAGAAG-3’(配列番号7)、5’-CCGAGGGTCTAACCATGATG-3’ (配列番号8))を用いてrTaqポリメレース(宝酒造社)を用いてPCR法(95℃20秒、55℃4分、72℃1分30秒を1サイクルとして35サイクル実施)にて発現を確認した。この結果、AY598952型の変異体は調べた全ての組織に発現し、AY598951型の変異体は腎臓にのみ特異的に発現することが解明された(図2参照)。
【実施例3】
【0062】
抗体の調製と腎臓免疫染色
AY598952のN末端部の特異的ペプチド(AY598952の17-37番目のアミノ酸配列:CTVKRGPQGELGVTVLGGAE)に対する抗体とAY598951/AY598952に共通する特異的ペプチド(AY598952の250-268番目のアミノ酸配列:SFTADSGDQDEPTLQEATL)に対する抗体を作製した。特異的ペプチドの作製とウサギに対する免疫はオペロンバイオテクノロジー社に委託した。免疫されたウサギ抗血清のAY598951/AY598952に対する特異的認識を、AY598951/AY598952蛋白を用いてウェスタンブロット法にて確認した。ウェスタンブロット法に用いたAY598951/AY598952蛋白は、既報(Tanemoto M, Kittaka N, Inanobe A, Kurachi Y. J Physiol. 525:587-92. 2000)に従い、発現ベクターを用いて培養細胞HEK293T細胞に発現させて作製した。AY598951/AY598952に対する特異的な認識を認めた抗血清を用いて、AY598951/AY598952に対する特異的抗体を各々の特異的ペプチドを用いてアフィニティー精製した(精製はオペロンバイオテクノロジー社に委託)。精製した各特異的抗体のAY598951/AY598952に対する特異的認識をウェスタンブロット法にて確認した(図3参照)。
【0063】
4%パラフォルムアルデヒドで固定したラット腎臓スライスを最終濃度0.1 mg/mlに希釈した抗体で染色した後、FITCラベルした抗ウサギIgG抗体(DAKO社)にて検出した。この結果、AY598951/AY598952に共通する特異的ペプチドを認識する抗体では腎尿細管の管腔側と基底膜側が染色され(図4a参照)、AY598952の特異的ペプチドを認識する抗体では腎遠位尿細管の管腔側のみが染色された(図4b参照)。このことから、AY598951以外のMAGI1の変異体(AY598952を含む)は腎尿細管の管腔側に局在し、AY598951は腎遠位尿細管の基底膜側に局在することが推定された。
【実施例4】
【0064】
AY598951による腎遠位尿細管カリウムチャネルの発現調節
AY598951のcDNAをpGEX-5X-3ベクター(Amersham Biosciences社)にインフレームで組み入れることにより、AY598951のN末端部にグルタチオンSトランスフェラーゼを接合した蛋白の発現ベクターを作製した。この蛋白を既報(Tanemoto M, Fujita A, Higashi K, Kurachi Y. Neuron. 34:387-97. 2002)に従い精製し、グルタチオンセファロース4Bを用いて、腎遠位尿細管に発現するカリウムチャネルKir4.1に対するプルダウンアッセイを施行した。カリウムチャネルKir4.1の蛋白は、既報(Tanemoto M, Kittaka N, Inanobe A, Kurachi Y. J Physiol. 525:587-92. 2000)に従い発現ベクターを用いて培養細胞HEK293T細胞に発現させて作製した。この結果、AY598951はカリウムチャネルKir4.1のC末端のPDZ-binding motifと相互作用することが明らかとなった(図5参照)。
【0065】
カリウムチャネルKir4.1のC末端のPDZ-binding motifは、腎遠位尿細管カリウムチャネルの基底膜側への機能的発現を規定する領域であり、この領域を認識する腎遠位尿細管基底膜側のアンカー蛋白が腎遠位尿細管基底膜側へカリウムチャネルの機能的発現量を制御することを解明している(Tanemoto M, Abe T, Ito S. J Am Soc Nephrol 16:2608-14, 2005)。AY598951/AY598952を含むMAGI1ファミリーはアンカー蛋白に属する蛋白であり、AY598951はカリウムチャネルKir4.1のC末端のPDZ-binding motifと相互作用することからAY598951の基底膜側への発現量が、腎遠位尿細管基底膜側でのカリウムチャネル機能的発現量を制御している可能性が明らかとなった。
【実施例5】
【0066】
培養細胞系を用いたAY598951/AY598952蛋白発現の解析
AY598951/AY598952のcDNAをpEGFP-C1ベクター(Clontech社)にインフレームで組み入れることにより、AY598951/AY598952蛋白のN末端部に緑色蛍光蛋白(GFP)を接合した蛋白の発現ベクターを作製した。作製した。作製したGFP接合AY598951/AY598952発現ベクターを腎尿細管由来の培養細胞であるMDCK細胞に一過性に発現させた。MDCK細胞への発現は既報(Tanemoto M, Abe T, Ito S. J Am Soc Nephrol 16:2608-14, 2005)に従って行った。発現に用いる発現ベクターのトランスフェクションには、12mm径のMillicell-PCF(Millipore社)における一回のトランスフェクションにあたり、作製したベクター0.5μgとLipofectAmine2000(Invitrogen社)1.0μlを使用した。細胞での蛍光観察はトランスフェクション後48-72時間後に実施した。図6に示すように、特別な刺激を与えない状況下では、GFP接合AY598951蛋白は主にMDCK細胞の細胞質に発現し、GFP接合AY598952蛋白は主にMDCK細胞の細胞膜上に発現した。
【0067】
AY598951/AY598952は尿細管において、細胞内外からの修飾刺激により細胞内での局在を変化させ、この局在変化が膜蛋白の機能発現を制御していることが予想される。GFP接合AY598951/AY598952のMDCK細胞において、細胞内局在を変化させる刺激(例えば、ステロイドホルモン)は未解明であるが、修飾状況によりMDCK細胞内での発現局在が変化することは、細胞内局在を変化させる刺激を解明した他のGFP接合蛋白において確認している(カリウムチャネルKir4.1の場合を図7に示す)。GFP接合AY598951/AY598952のMDCK細胞での細胞内局在を変化させる刺激が、尿細管におけるAY598951/AY598952局在を変化させる刺激であることが推定される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のスクリーニング方法で同定される血圧制御因子を使用することにより、従来の降圧治療において、問題となった血清電解質の異常を呈することなく、循環血漿量を制御することが可能となる。この際に従来の利尿薬と異なり、本発明の蛋白質の発現量を制御することによりカリウムイオンの出納を人為的に制御する。その結果、低カリウム血症を誘発せずにナトリウムの再吸収過程を抑制し、血圧を下げることが可能となる優れた医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、AY598951/AY598952が属するMAGI1の推定ゲノム構造とそのエクソン部分から形成される変異体を示す。本発明により解明された新たなスプライス変異部(領域)を黒で、既報のスプライス領域を陰影(グレー)で示す。
【図2】図2は、ラット組織におけるAY598951/AY598952の分布を示すRT-PCRの結果を示す電気泳動の写真である。各レーンは、1.脳 2.心臓 3.肺 4.肝臓 5.脾臓 6.腎臓 7.骨格筋 における発現を表す。上の白いバンドがAY598952の、下の白いバンドがAY598951の発現を各々を示す。
【図3】図3は、本件で作製した特異的抗体のAY598951/AY598952に対する特異的認識を示す写真である。各レーンは、1.ネガティブコントロール 2.AY598951 3.AY598952をロードしたレーンを表し、黒いバンドが各抗体により認識された蛋白を表す。向かって左のパネルはAY598951/AY598952を共通に認識する特異的抗体、右のパネルはAY598951を認識するがAY598952を認識しない特異的抗体、によるウエスタンブロットの結果を示す。左パネルではAY598951/AY598952ともに黒いバンドを認めるが、右パネルではAY598952でのみ黒いバンドを認める。
【図4】図4は、本件で作製した特異的行程によるラット腎組織を用いた免疫染色の結果を示す写真である。図4aはAY598951/AY598952を共通に認識する特異的抗体、図4bはAY598951を認識するがAY598952を認識しない特異的抗体による染色結果を示す。染色された部分は白く表されている。
【図5】図5は、AY598951によるカリウムチャネルKir4.1に対するプルダウンアッセイの結果を示す写真である。各レーンは、1.野生型カリウムチャネルKir4.1 2.C末端のPDZ-binding motifを欠損したカリウムチャネルKir4.1 に対するプルダウンアッセイの結果を示す。黒いバンドがAY598951と結合し得たチャネル蛋白を表す。
【図6】図6は、非刺激下のMDCK細胞におけるGFP接合AY598951/AY598952蛋白の細胞内局在を示す写真である。局在部位は白く表されている。左パネルはGFP接合AY598951蛋白の細胞内局在を、右パネルはGFP接合AY598952蛋白の細胞内局在を各々示す。
【図7】図7は、修飾状況の違いによるMDCK細胞内でのGFP接合蛋白の局在変化例を示す写真である。局在部位は白く表されている。左パネルはリン酸化されていないカリウムチャネル蛋白の細胞内局在を、右パネルはリン酸化されているカリウムチャネル蛋白の細胞内局在を各々示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MAGI1のスプライシングバリアントであって、腎遠位尿細管の基底膜側(血管側)に発現する蛋白質。
【請求項2】
MAGI1のスプライシングバリアントであって、MAGI1のゲノム塩基配列におけるエクソン1の途中からエクソン4の途中までがスプライシングアウトされ、エクソン7を含み、更に、エクソン9におけるスプライシングアウトが見られない蛋白質。
【請求項3】
以下の(a)又は(b)のポリペプチド:(a)配列番号:2に示されるアミノ酸配列から成るポリペプチド;又は(b)(a)のアミノ酸配列において、一つ又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、若しくはアミノ酸配列に対する少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列から成り、(a)のポリペプチドと実質的に同等の活性を有するポリペプチド。
【請求項4】
請求項1若しくは2記載の蛋白質又は請求項3記載のポリペプチドをコードするDNA。
【請求項5】
以下の(a)又は(b)のDNAである、請求項4記載のDNA:(a)配列番号:1に示される塩基配列を含むDNA;(b)(a)の塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、(a)のDNAがコードするポリペプチドと実質的に同等の活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
【請求項6】
cDNAである、請求項4又は5記載のDNA。
【請求項7】
MAGI1のスプライシングバリアントであって、腎遠位尿細管において管腔側に特異的に発現する蛋白質。
【請求項8】
MAGI1のスプライシングバリアントであって、MAGI1のゲノム塩基配列におけるエクソン7を含み、更に、エクソン9におけるスプライシングアウトが見られない蛋白質。
【請求項9】
以下の(a)又は(b)のポリペプチド:(a)配列番号:4に示されるアミノ酸配列から成るポリペプチド;又は(b)(a)のアミノ酸配列において、一つ又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、若しくはアミノ酸配列に対する少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列から成り、(a)のポリペプチドと実質的に同等の活性を有するポリペプチド。
【請求項10】
請求項7若しくは8記載の蛋白質又は請求項9記載のポリペプチドをコードするDNA。
【請求項11】
以下の(a)又は(b)のDNAである、請求項10記載のDNA:(a)配列番号:3に示される塩基配列を含むDNA;(b)(a)の塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、(a)のDNAがコードするポリペプチドと実質的に同等の活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
【請求項12】
cDNAである、請求項10又は11記載のDNA。
【請求項13】
請求項4〜6及び請求項10〜12のいずれか一項に記載のDNAを含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項13記載の発現ベクターが導入された形質転換体。
【請求項15】
請求項1〜3及び請求項7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質又はポリペプチドと特異的に反応する抗体。
【請求項16】
請求項1〜3及び請求項7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現量を指標として用いることからなる、カリウムの排出及び/又はナトリウム再吸収を調節または制御し得る血圧制御因子のスクリーニング方法。
【請求項17】
請求16に記載のスクリーニング方法であって、
(a) 被検物質の存在下に請求項14記載の形質転換体を培養する工程、
(b)該形質転換体における請求項1〜3及び請求項7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現量を測定する工程、及び
(c)発現量を増加又は減少させる化合物を選択する工程、を含む方法。
【請求項18】
工程(b)において、請求項15記載の抗体を使用して請求項1〜3及び請求項7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現量を測定する、請求項17記載のスクリーニング方法。
【請求項19】
工程(b)において、請求項1〜3及び請求項7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドに結合された標識物質を測定する、請求項17記載のスクリーニング方法。
【請求項20】
更にカリウムチャンネルを構成する蛋白質を共発現された請求項14記載の形質転換体を用いて、該カリウムチャンネル活性を測定することにより、請求項1〜3及び請求項7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現量を測定する、請求項17記載のスクリーニング方法。
【請求項21】
工程(b)において、請求項1〜3及び請求項7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドをコードするmRNA量を測定する、請求項17記載のスクリーニング方法。
【請求項22】
請求項16〜21のいずれか一項に記載のスクリーニング方法に用いるスクリーニングキット。
【請求項23】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を増加させる物質、及び/又は請求項7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を減少させる物質を有効成分とする、カリウム排泄抑制組成物。
【請求項24】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を減少させる物質、及び/又は請求項7〜9のいずれか一項に記載の蛋白質若しくはポリペプチドの発現を減少させる物質を有効成分とする、ナトリウム再吸収抑制組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−167011(P2007−167011A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371148(P2005−371148)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年(2005年)6月30日 ホームページアドレス「http://www/ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=nucleotide&val=51242300」にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年(2005年)6月30日 ホームページアドレス「http://www/ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=nucleotide&val=51242302」にて発表
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】