血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法
【課題】血圧の上昇時および下降時の血圧をより正確に測定すること。
【解決手段】血圧下降時制御目標値を決定する場合は、加減圧部でカフ圧を加圧させながら容積検出部で検出された動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の動脈容積信号の平均値が、血圧下降時制御目標値として決定され(ステップST4)、血圧下降時に、容積検出部で検出される動脈容積信号で示される容積が、決定された制御目標値に一致するように、カフの圧力が調整され(ステップST6)、血圧下降時に容積が制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときのカフ圧が、血圧下降時の血圧として抽出される(ステップST7,ステップST8)。血圧上昇時制御目標値を用いて同様に(ステップST10〜ステップST12)、または、血圧下降時制御目標値を用いて抽出した血圧を補正して、血圧上昇時の血圧を抽出する。
【解決手段】血圧下降時制御目標値を決定する場合は、加減圧部でカフ圧を加圧させながら容積検出部で検出された動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の動脈容積信号の平均値が、血圧下降時制御目標値として決定され(ステップST4)、血圧下降時に、容積検出部で検出される動脈容積信号で示される容積が、決定された制御目標値に一致するように、カフの圧力が調整され(ステップST6)、血圧下降時に容積が制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときのカフ圧が、血圧下降時の血圧として抽出される(ステップST7,ステップST8)。血圧上昇時制御目標値を用いて同様に(ステップST10〜ステップST12)、または、血圧下降時制御目標値を用いて抽出した血圧を補正して、血圧上昇時の血圧を抽出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法に関し、特に、容積補償法を用いて血圧を測定する血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は循環器疾患を解析する指標の一つであり、血圧に基づいてリスク解析を行うことは、たとえば脳卒中や心不全や心筋梗塞などの心血管系の疾患の予防に有効である。特に、早朝に血圧が上昇する早朝高血圧は、心臓病や脳卒中などに関係している。
【0003】
さらに、早朝高血圧の中でも、モーニングサージと呼ばれる起床後1時間から1時間半ぐらいの間に急激に血圧が上昇する症状は、脳卒中との因果関係があることが判明している。そこで、時間(生活習慣)と血圧変化の相互関係を把握することが、心血管系の疾患のリスク解析に有用である。従って、長期間にわたり、連続的に血圧測定することが必要となってきている。
【0004】
また、手術中・手術後の患者の監視、および、降圧薬治療時の薬効確認等においては、1心拍ごとに連続的に血圧を測定し、血圧変化を監視することが非常に重要である。
【0005】
容積補償法による血圧測定は次のようにして行う。光電センサなどにより測定部位の動脈容積を検出し、動脈内圧(血圧)による動脈容積の変化を常に一定の動脈容積(制御目標値V0)に保たれるよう、測定部位に巻き付けたカフ内の圧力(カフ圧)により制御する。このとき、血圧とカフ圧は平衡状態になるため、カフ圧を計測することで、連続的に血圧(血圧波形)を測定することが可能である。正確な血圧測定のためには、前記制御目標値V0を正確に決定する必要がある。
【0006】
従来の容積補償法を利用した血圧測定では制御目標値V0を次のようにして決定していた。図12は、動脈の力学的特性を示すグラフである。この図は、横軸に血圧とカフ圧の差(動脈内外圧差Ptr)を、縦軸に動脈容積をプロットしたものである。
【0007】
制御目標値V0は、図12に示すように、血圧とカフ圧が平衡した点(図中のPtr=0の点)での動脈容積である。図12に示すように、Ptr=0の点では動脈の力学的コンプライアンスが最大となる。そのため、この点での血圧変動による動脈容積の変化が最大となる。そこで、カフ圧を徐々に加圧しながら動脈容積および動脈容積変化を検出し、動脈容積変化が最大となった点での1心拍の動脈容積の平均値を制御目標値V0として決定していた(特許文献1参照)。
【0008】
ところが、動脈の力学的特性は、図13(非特許文献1のFig.2より引用)に示すように血圧の増加方向と減少方向で異なっている、つまり、ヒステリシスがある(非特許文献1参照)。
【0009】
図14の血圧波形において、血圧の増加・減少を動脈内外圧差Ptrに置き換えると、カフ圧を一定とした場合、血圧が増加するとき(拡張期血圧から収縮期血圧へ変化するとき)はPtrが増加する方向に、逆に血圧が減少するとき(収縮期血圧から拡張期血圧へ変化するとき)はPtrが減少する方向になる。
【0010】
一方、カフ圧の増加・減少を動脈内外圧差Ptrに置き換えると、血圧を一定とした場合、カフ圧が減少するとき(減圧されるとき)はPtrが増加する方向へ、逆にカフ圧が増加するとき(加圧されるとき)はPtrが減少する方向へになる。すなわち、血圧の増加(拡張期血圧から収縮期血圧への変化)はカフ圧減圧に、血圧の減少(収縮期血圧から拡張期血圧への変化)はカフ圧加圧に等価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平1−31370号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】K.Yamakoshi,H.Shimazu,M.Shibata,A.Kamiya,"New oscillometric method for indirect measurement of systolic and mean arterial pressure in the human finger. Part 1: model experiment",Medical & Biological Engineering & Computing,1982,20,p.307-313
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このことより、図15に示すように、従来の制御目標値V0の決定方法では、血圧の減少(収縮期血圧から拡張期血圧への変化)における動脈容積の変化に対する制御目標値となっており、血圧の増加(拡張期血圧から収縮期血圧への変化)における動脈容積の変化に対しては過大な値となっていた。そのため、収縮期血圧が正確に測定できないという課題があった。また、この力学的特性のヒステリシスは測定部位の動脈周囲の生体組織にも存在しているため、その影響が重畳していることは当然のことである。
【0014】
この発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、その目的の1つは、血圧の上昇時および下降時の血圧をより正確に測定することが可能な血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するために、この発明のある局面によれば、血圧測定装置は、容積補償法に従い血圧を測定するための装置であって、血圧の測定部位に装着された場合に内部の液体または気体の圧力で前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有し、前記制御部は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が所定の制御目標値と一致するように、前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号に基づいて、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整する圧力制御手段と、前記圧力制御手段による調整の結果、前記容積が前記所定の制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧として抽出する抽出手段とを含む。
【0016】
前記制御部は、さらに、血圧下降時または血圧上昇時の前記所定の制御目標値を決定する手段であって、血圧下降時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する一方、血圧上昇時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定する第1の制御目標値決定手段を含む。
【0017】
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する。
【0018】
前記抽出手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧上昇時の血圧として抽出する。
【0019】
好ましくは、前記制御部は、さらに、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定する一方、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧上昇時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する第2の制御目標値決定手段を含む。
【0020】
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時の制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する。
【0021】
前記抽出手段は、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧上昇時の血圧として抽出する。
【0022】
さらに好ましくは、前記制御部は、さらに、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、増加を開始する立上がり点と、減少を開始する立下がり点とを検出する変化点検出手段を含む。
【0023】
前記圧力制御手段は、前記変化点検出手段によって前記立上がり点が検出されてから前記立下がり点が検出されるまでの立上がり時は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧上昇時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する一方、前記立下がり点が検出されてから前記立上がり点が検出されるまでの立下がり時は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧下降時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する。
【0024】
また好ましくは、前記圧力制御手段は、第1の期間は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧上昇時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する一方、前記第1の期間と異なる第2の期間は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧下降時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する。
【0025】
好ましくは、前記制御部は、さらに、前記第1の制御目標値決定手段によって前記血圧下降時制御目標値または前記血圧上昇時制御目標値が決定されたときに前記圧力検出部で検出される第1のカフ圧を特定する第1のカフ圧特定手段と、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときに前記圧力検出部で検出される第2のカフ圧を特定する一方、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧上昇時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときになるときに前記圧力検出部で検出される第2のカフ圧を特定する第2のカフ圧特定手段と、前記第1のカフ圧特定手段によって特定された前記第1のカフ圧と、前記第2のカフ圧特定手段によって特定された前記第2のカフ圧との差を補正値として算出する補正値算出手段とを含む。
【0026】
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値および前記血圧上昇時制御目標値のいずれであっても、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する。
【0027】
前記抽出手段は、さらに、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を前記補正値算出手段によって算出された前記補正値で補正した値を、血圧上昇時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を前記補正値算出手段によって算出された前記補正値で補正した値を、血圧下降時の血圧として抽出する。
【0028】
この発明の他の局面によれば、血圧測定装置を制御する制御方法は、容積補償法に従い血圧を測定するための血圧測定装置の制御方法である。血圧測定装置は、血圧の測定部位に装着された場合に内部の液体または気体の圧力で前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有する。
【0029】
血圧測定装置の制御方法は、前記制御部が、血圧下降時または血圧上昇時の制御目標値を決定するステップであって、血圧下降時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する一方、血圧上昇時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定するステップと、決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、決定された前記血圧下降時制御目標値または前記血圧上昇時制御目標値と一致するように、前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号に基づいて、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整するステップと、決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記容積が前記血圧下降時制御目標値と一致すると判断するための条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記容積が前記血圧上昇時制御目標値と一致すると判断するための条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧上昇時の血圧として抽出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0030】
この発明に従えば、血圧測定装置によって、血圧下降時制御目標値を決定する場合は、加減圧部でカフ圧を加圧させながら容積検出部で検出された動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の動脈容積信号の平均値が、血圧下降時制御目標値として決定される一方、血圧上昇時制御目標値を決定する場合は、加減圧部でカフ圧を減圧させながら容積検出部で検出された動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の動脈容積信号の平均値が、血圧上昇時制御目標値として決定され、決定されたのが血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、血圧上昇時制御目標値である場合は血圧上昇時に、容積検出部で検出される動脈容積信号で示される容積が、決定された制御目標値に一致するように、カフの圧力が調整され、決定されたのが血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に容積が制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときのカフ圧が、血圧下降時の血圧として抽出される一方、血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に所定の条件を満たしたときのカフ圧が、血圧上昇時の血圧として抽出される。
【0031】
このため、血圧測定装置によって、加圧時に決定された制御目標値で血圧下降時の血圧が測定され、減圧時に決定された制御目標値で血圧上昇時の血圧が測定される。その結果、動脈およびその周辺の生体組織の力学的ヒステリシスの影響を少なくすることができるため、血圧の上昇時および下降時の血圧をより正確に測定することが可能な血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子血圧計の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子血圧計における血圧測定のためのカフ圧を制御する概念を表わした図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子血圧計のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における血圧測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態における制御目標値検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態において制御目標値を決定する方法を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の実施の形態における制御目標値決定時および血圧測定時のカフ圧および動脈容積信号の変化を示すグラフである。
【図8】本発明の第1の実施の形態の変形例における血圧測定処理の一部の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態における血圧測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施の形態における制御目標値検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施の形態の変形例における血圧測定処理の一部の流れを示すフローチャートである。
【図12】動脈の力学的特性を示すグラフである。
【図13】動脈のヒステリシスを示すグラフである。
【図14】血圧波形を示す図である。
【図15】ヒステリシスを考慮した動脈の力学的特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0034】
本実施の形態に係る電子血圧計1は、容積補償法により連続的に血圧を測定する。電子血圧計1は、生体外からカフにより動脈に外圧を加え、生体外圧すなわちカフ圧と動脈内圧すなわち血圧とが常時平衡するように、決定した最適なサーボゲインを用いてサーボ制御する。つまり、電子血圧計1は、動脈壁が無負荷状態に維持されるようにカフ圧を微調整し、そのとき(無負荷状態)のカフ圧を測定することにより、最低血圧および最高血圧、または、連続的に血圧を測定する。
【0035】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1の外観斜視図である。図1を参照して、電子血圧計1は、本体部10と、被測定者の四肢に巻き付け可能なカフ20とを備える。本体部10はカフ20に取り付けられている。本体部10の表面には、たとえば液晶等により構成される表示部40と、ユーザ(被測定者)からの指示を受付けるための操作部41とが配置されている。操作部41は、複数のスイッチを含む。
【0036】
本実施の形態において、「四肢」とは、上肢および下肢を表わす。つまり、四肢は、手首から腕の付け根までの部位と、足首から足の付け根までの部位とを含む。以下の説明においては、カフ20は、被測定者の手首に装着されるものとする。
【0037】
なお、本実施の形態における電子血圧計1は、図1に示されるように、本体部10がカフ20に取り付けられた形態を例に説明するが、上腕式の血圧計で採用されているような、本体部10とカフ20とがエアチューブ(後述の図3においてエアチューブ31)によって接続される形態のものであってもよい。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1における血圧測定のためのカフ圧を制御する概念を表わした図である。図2には、カフ20が、被測定者の手首200に装着された様子が示される。
【0039】
図2を参照して、本体部10には、ポンプ51および排気弁(以下、単に「弁」という)52を含むカフ圧の調整機構が配置される。
【0040】
ポンプ51、弁52、および、空気袋21内の圧力(カフ圧)を検出するための圧力センサ32を含むエア系30は、エアチューブ31を介して、カフ20に内包される空気袋21と接続される。
【0041】
空気袋21の内側には発光素子71と受光素子72とが所定の間隔に配置される。本実施の形態では、カフ20の装着状態における手首200の周に沿って発光素子71と受光素子72とが並べられるが、このような配置例に限定されるものではない。
【0042】
また、カフ20には空気袋21が含まれることとしたが、カフ20に供給される流体は空気に限定されるものではなく、たとえば液体やゲルであってもよい。あるいは、流体に限定されるものではなく、マイクロビーズなどの均一な微粒子であってもよい。
【0043】
図3は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1のハードウェア構成を表わすブロック図である。図3を参照して、電子血圧計1のカフ20は、空気袋21と、動脈容積センサ70とを含む。
【0044】
動脈容積センサ70は、被測定者の血圧測定部位の動脈の容積を検出するためのセンサであり、上述した発光素子71(たとえば、発光ダイオード)と、受光素子72(たとえば、フォトトランジスタ)とを有する光電センサによって構成される。発光素子71は、動脈に対して光を照射し、受光素子72は、発光素子71によって照射された光の動脈の透過光または反射光を受光する。
【0045】
なお、動脈容積センサ70は、動脈の容積が検出できるものであればよく、インピーダンスセンサ(インピーダンスプレスチモグラフ)により動脈の容積を検出するものであってもよい。その場合、発光素子71および受光素子72に代えて、動脈を含む部位のインピーダンスを検出するための複数の電極(電流印加用の電極対、および、電圧検知用の電極対)が含まれる。
【0046】
本体部10は、上述の表示部40および操作部41に加え、各部を集中的に制御し、各種の演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)100と、CPU100に所定の動作をさせるプログラムや各種データを記憶するためのメモリ部42と、測定された血圧データを記憶するための不揮発性メモリ、たとえば、フラッシュメモリ43と、CPU100を介し各部に電力を供給するための電源44、および現在時間を計時して計時データをCPU100に出力するタイマ45とを含む。
【0047】
操作部41は、電源をONまたはOFFするための指示の入力を受付ける電源スイッチ41Aと、測定開始の指示を受付けるための測定スイッチ41Bと、測定停止の指示を受付けるための停止スイッチ41Cと、フラッシュメモリ43に記録された血圧などの情報を読出す指示を受付けるためのメモリスイッチ41Dと、被測定者を識別するためのID(Identification)情報を入力するために操作されるIDスイッチ41Eを有する。
【0048】
本体部10は、さらに、上述したエア系30と、カフ圧の調整機構50と、発振回路33と、発光素子駆動回路73と、動脈容積検出回路74とを含む。
【0049】
調整機構50は、ポンプ51および弁52の他、ポンプ駆動回路53と弁駆動回路54とを有する。
【0050】
ポンプ51は、カフ圧を加圧するために、空気袋21に空気を供給する。弁52は、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される。ポンプ駆動回路53は、ポンプ51の駆動をCPU100から与えられる制御信号に基づいて制御する。弁駆動回路54は弁52の開閉制御をCPU100から与えられる制御信号に基づいて行なう。
【0051】
発光素子駆動回路73は、CPU100からの指令信号に応じて、発光素子71の発光量を制御する。
【0052】
動脈容積検出回路74は、発光素子71の発する光であって、血管を流れる血液(赤血球)に含まれるヘモグロビンの吸収帯の光の、受光素子72に到達する透過光量または反射光量に基づく容積脈波信号(動脈容積信号PGdc)、および、容積脈波信号をHPF(High-pass filter)回路で処理することにより得られる容積脈波信号の交流成分の動脈容積変化信号PGacを、CPU100に出力する。たとえば、HPF回路のフィルタ定数を0.6Hzとして、0.6Hzを超える信号は交流成分とする。
【0053】
圧力センサ32は、静電容量型の圧力センサでありカフ圧により容量値が変化する。発振回路33は、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号をCPU100に出力する。CPU100は、発振回路33から得られる信号を圧力に変換し圧力を検知する。
【0054】
図4は、本発明の第1の実施の形態における血圧測定処理の流れを示すフローチャートである。図4を参照して、まず、CPU100は、電源スイッチ41Aが押下される操作の入力を待つ(ステップST1)。
【0055】
電源スイッチ41Aが押下されると、CPU100は、初期化処理を行なう(ステップST2)。具体的には、CPU100は、初期化処理として、メモリ部42のこの処理に用いられるメモリ領域を初期化し、空気袋21の空気を排気し、圧力センサ32の0mmHg補正を行なう。
【0056】
次に、CPU100は、測定スイッチ41Bが押下される操作の入力を待つ(ステップST3)。測定スイッチ41Bが押下されると、CPU100は、制御目標値検出処理を実行する(ステップST4)。
【0057】
図5は、本発明の第1の実施の形態における制御目標値検出処理の流れを示すフローチャートである。図5を参照して、まず、CPU100は、メモリ部42に記憶される、動脈容積変化信号の最大値PGacmax’およびカフ圧値Pc0’を初期化する(ステップST101)。なお、以下の処理において動脈容積変化信号の最大値PGacmax’およびカフ圧値Pc0’は、随時更新されるものであるので、最終的に確定するまでの値は仮の値である。
【0058】
次に、CPU100は、弁駆動回路54を制御して弁52を閉鎖し(ステップST102)、ポンプ駆動回路53を制御してポンプ51を駆動することで、カフ圧を加圧する(ステップST103)。カフ圧を加圧する段階において、CPU100は、動脈容積検出回路74からの信号(動脈容積信号PGdc,動脈容積変化信号PGac)を検出する(ステップST104)。
【0059】
次に、CPU100は、ステップST104で検出された動脈容積変化信号PGacの1心拍周期の振幅が、カフ圧の加圧を開始してからこれまでの動脈容積変化信号PGacの振幅の最大値PGacmax’より大きいか否かを判断する(ステップST105)。大きいと判断した場合、CPU100は、そのときの振幅の値で最大値PGacmax’を更新し、そのときのカフ圧Pc0’も更新する(ステップST106)。
【0060】
CPU100は、カフ圧が所定圧に達したか否かを判断する(ステップST107)。所定圧は、被測定者の最高血圧より十分に高い圧力であって、たとえば、200mmHgである。所定圧に達していないと判断した場合、CPU100は、ステップST103に処理を戻し、ステップST106までの処理を繰返す。
【0061】
カフ圧が所定圧に達したと判断した場合、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’を確定し、最大値PGacmax’となったときの1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値を加圧時の制御目標値V0infとして算出し、そのときのカフ圧Pc0’を制御初期カフ圧Pc0として確定する(ステップST108)。
【0062】
図6は、本発明の実施の形態において制御目標値を決定する方法を説明するためのグラフである。図6を参照して、カフ圧を加圧していくと、2本のグラフのうち上のグラフに沿って、動脈内圧Pa(つまり血圧)とカフ圧Pcとの差、および、1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値で示される動脈容積Vが、減少する。そして、カフ圧Pcが動脈内圧Paと等しくなったときに、動脈容積VがV0infになるとともに、動脈の力学的コンプライアンスが最大となり、血圧変動による動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となる。
【0063】
カフ圧に対して血圧つまり動脈内圧Paが減少するときは、動脈内圧Paに対してカフ圧が増加するときと同じように考えることができる。つまり、V0infを、血圧減少時の制御目標値とすることができる。血圧減少時には、この制御目標値V0infを用いて動脈容積一定制御が収束するごと(たとえば、動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となるごと)にカフ圧Pcを被測定者の血圧として測定することができる。
【0064】
図5に戻って、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’を初期化する(ステップST109)。次いで、CPU100は、弁駆動回路54を制御して弁52の開閉を徐々に調整して、カフ圧を減圧する(ステップST110)。カフ圧を減圧する段階において、CPU100は、動脈容積検出回路74からの信号(動脈容積信号PGdc,動脈容積変化信号PGac)を検出する(ステップST111)。
【0065】
次に、CPU100は、ステップST111で検出された動脈容積変化信号PGacの1心拍周期の振幅が、カフ圧の減圧を開始してからこれまでの動脈容積変化信号PGacの振幅の最大値PGacmax’より大きいか否かを判断する(ステップST112)。大きいと判断した場合、CPU100は、そのときの振幅の値で最大値PGacmax’を更新する(ステップST113)。
【0066】
CPU100は、カフ圧が所定圧に達したか否かを判断する(ステップST114)。所定圧は、被測定者の最低血圧より十分に低い圧力であって、たとえば、30mmHgである。所定圧に達していないと判断した場合、CPU100は、ステップST110に処理を戻し、ステップST113までの処理を繰返す。
【0067】
カフ圧が所定圧に達したと判断した場合、CPU100は、カフの空気を排気するよう弁駆動回路54を制御して弁52を開く(ステップST115)。
【0068】
そして、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’を確定し、最大値PGacmax’となったときの1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値を加圧時の制御目標値V0defとして算出する(ステップST116)。その後、CPU100は、実行する処理をこの処理の呼出元の処理に戻す。
【0069】
図6を再度参照して、カフ圧を減圧していくと、2本のグラフのうち下のグラフに沿って、動脈内圧Pa(つまり血圧)とカフ圧Pcとの差、および、1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値で示される動脈容積Vが、増加する。そして、カフ圧Pcが動脈内圧Paと等しくなったときに、動脈容積VがV0defになるとともに、動脈の力学的コンプライアンスが最大となり、血圧変動による動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となる。
【0070】
カフ圧に対して血圧つまり動脈内圧Paが増加するときは、動脈内圧Paに対してカフ圧が減少するときと同じように考えることができる。つまり、V0defを、血圧増加時の制御目標値とすることができる。血圧増加時には、この制御目標値V0defを用いて動脈容積一定制御が収束するごと(たとえば、動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となるごと)にカフ圧Pcを被測定者の血圧として測定することができる。
【0071】
図7は、本発明の実施の形態における制御目標値決定時および血圧測定時のカフ圧および動脈容積信号の変化を示すグラフである。図7を参照して、図5のステップST103からステップST108までの処理が実行されるとき(電源がオン状態にされてから約35秒まで)は、カフ圧Pcが30mmHg付近から130mmHg付近まで加圧される。これに応じて、動脈容積信号PGdcの値も、心拍周期に合わせて振動しながら増加する。
【0072】
そして、動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるとき、つまり、動脈容積信号PGdcの振幅も最大となるときの1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値が、血圧減少時の制御目標値V0infとして算出される。
【0073】
また、図5のステップST110からステップST116までの処理が実行されるとき(電源がオン状態にされて約35秒経過したときから約70秒まで)は、カフ圧Pcが130mmHg付近から30mmHg付近まで減圧される。これに応じて、動脈容積信号PGdcの値も、心拍周期に合わせて振動しながら減少する。
【0074】
そして、動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるとき、つまり、動脈容積信号PGdcの振幅も最大となるときの1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値が、血圧増加時の制御目標値V0defとして算出される。
【0075】
図4に戻って、CPU100は、カフ圧を図5のステップST108で確定された制御初期カフ圧Pc0に設定する(ステップST5)。
【0076】
CPU100は、動脈容積一定制御として、動脈容積信号PGdcの値が血圧減少時の制御目標値V0infと一致するように、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54を制御してカフ圧Pcを変更させる(ステップST6)。
【0077】
所定時間(たとえば、10msec)動脈容積一定制御を行なった後、動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったか否かを判断する(ステップST7)。所定の閾値以下となったと判断した場合、動脈容積一定制御が収束したということであるので、CPU100は、そのときのカフ圧Pcが1心拍内での最低値であれば、被測定者の最低血圧として決定して、決定した最低血圧値を表示部40に表示させる(ステップST8)。決定した最低血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。
【0078】
そして、CPU100は、血圧の測定が開始されてから所定期間(たとえば、40秒)経過したか否かを判断する(ステップST9)。経過していないと判断した場合、CPU100は、実行する処理をステップST6の処理に戻す。また、CPU100は、血圧の測定を開始してから所定期間に測定した最低血圧値の平均値を、最終的な最低血圧値として表示部40に表示させる。
【0079】
一方、血圧の測定が開始されてから所定期間経過したと判断した場合、CPU100は、実行する処理をステップST10の処理に進める。CPU100は、動脈容積一定制御として、動脈容積信号PGdcの値が血圧増加時の制御目標値V0defと一致するように、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54を制御してカフ圧Pcを変更させる(ステップST10)。
【0080】
所定時間(たとえば、10msec)動脈容積一定制御を行なった後、動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったか否かを判断する(ステップST11)。所定の閾値以下となった場合、動脈容積一定制御が収束したということであるので、CPU100は、そのときのカフ圧Pcが1心拍内での最高値であれば、被測定者の最高血圧として決定して、決定した最高血圧値を表示部40に表示させる(ステップST12)。決定した最高血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。
【0081】
そして、CPU100は、停止スイッチ41Cが操作されることによって停止信号が入力された(オン状態となった)か否かを判断する(ステップST13)。停止信号が入力されていない(オフ状態である)と判断した場合、CPU100は、実行する処理をステップST6の処理に戻す。また、CPU100は、血圧の測定が開始されてから所定期間が経過した後に測定した最高血圧値の平均値を、最終的な最高血圧値として表示部40に表示させる。
【0082】
一方、停止信号が入力された(オン状態となった)と判断した場合、CPU100は、CPU100は、カフの空気を排気するよう弁駆動回路54を制御して弁52を開く(ステップST14)。その後、CPU100は、この血圧測定処理を終了し、電子血圧計1の電源をオフ状態にする。
【0083】
図7を再度参照して、図4のステップST6からステップST9までの処理が実行されるとき(電源がオン状態にされて約80秒経過したときから約120秒まで)は、血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれる。このため、最低血圧側が真の最低血圧に近い値として測定されている。
【0084】
また、図4のステップST10からステップST13までの処理が実行されるとき(電源がオン状態にされて約120秒以降は、血圧増加時の制御目標値V0defが用いられて動脈容積一定制御が行なわれる。このため、最高血圧側が真の最高血圧に近い値として測定されている。
【0085】
このように、第1の実施の形態の電子血圧計1によって、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、血圧減少時の血圧のうち最低血圧が測定され、カフ圧の減圧時に決定された血圧増加時の制御目標値V0defが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、血圧増加時の血圧のうち最高血圧が測定される。その結果、動脈およびその周辺の生体組織の力学的ヒステリシスの影響を少なくすることができるため、血圧の増加時および減少時の血圧をより正確に測定することができる。
【0086】
また、第1の期間(たとえば、血圧の測定が開始されたから所定期間)は、血圧減少時の血圧のうち最低血圧が測定され、第1の期間と異なる第2の期間(たとえば、所定期間の後の期間)は、血圧増加時の血圧のうち最高血圧が測定されるようにする。その結果、さらに正確に最低血圧および最高血圧を測定することができる。
【0087】
[第1の実施の形態の変形例]
第1の実施の形態においては、最低血圧および最高血圧を測定する場合について説明した。第1の実施の形態の変形例においては、連続的に血圧を測定する場合について説明する。第1の実施の形態と変形例とは、図4のステップST6からステップST13までの処理が異なる。このため、第1の実施の形態の変形例の説明としては、異なる処理について説明し、重複する説明は繰返さない。
【0088】
図8は、本発明の第1の実施の形態の変形例における血圧測定処理の一部の流れを示すフローチャートである。図8を参照して、図4で説明したステップST5の後、CPU100は、動脈容積信号PGdcの立下がり点が検出されてから立上がり点が検出されるまでの血圧下降中であるか否かを判断する(ステップST21)。
【0089】
血圧下降中であると判断した場合、CPU100は、図4のステップST6およびステップST7と同様の処理を実行する。一方、血圧下降中でないと判断した、つまり、血圧上昇中である場合、図4のステップST10およびステップST11と同様の処理を実行する。
【0090】
ステップST6またはステップST10の動脈容積一定制御によって、それぞれ、ステップST7またはステップST11で動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったと判断した場合、CPU100は、そのときのカフ圧Pcを、被測定者の血圧として決定して、決定した血圧値を表示部40に表示させる(ステップST22)。決定した血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。次に、CPU100は、図4のステップST13と同様の処理を実行する。
【0091】
このように、第1の実施の形態の変形例の電子血圧計1によって、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、血圧減少時の血圧が測定され、カフ圧の減圧時に決定された血圧増加時の制御目標値V0defが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、血圧増加時の血圧が測定される。その結果、動脈およびその周辺の生体組織の力学的ヒステリシスの影響を少なくすることができるため、血圧の増加時および減少時の血圧をより正確に測定することができる。
【0092】
また、動脈容積信号PGdcの立下がり点および立上がり点が検出されるようにして、立上がり点が検出されてから立下がり点が検出されるまでは、血圧増加時とされ、血圧増加時の血圧が測定され、立下がり点が検出されてから立上がり点が検出されるまでは、血圧減少時とされ、血圧減少時の血圧が測定される。その結果、より正確に制御目標値を切替えることができるので、血圧の増加時および減少時の血圧をさらに正確に測定することができる。
【0093】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて血圧減少時の血圧が測定され、カフ圧の減圧時に決定された血圧増加時の制御目標値V0defが用いられて血圧増加時の血圧が測定されるようにした。
【0094】
第2の実施の形態においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて測定された血圧を、血圧減少時は、そのまま被測定者の血圧とし、血圧増加時については、カフ圧の加圧時に制御目標値V0infが決定されたときのカフ圧とカフ圧の減圧時に動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるときのカフ圧との差で補正して被測定者の血圧とする。
【0095】
図9は、本発明の第2の実施の形態における血圧測定処理の流れを示すフローチャートである。図9を参照して、第2の実施の形態における血圧測定処理は、図4で説明した第1の実施の形態における血圧測定処理のステップST4およびステップST10からステップST12までを、それぞれ、ステップST4’およびステップST15からステップST17までに変更したものである。このため、ここでは変更箇所について説明し、重複する説明は繰返さない。
【0096】
ステップST3で測定スイッチ41Bが押下されると、CPU100は、制御目標値検出処理を実行する(ステップST4’)。
【0097】
図10は、本発明の第2の実施の形態における制御目標値検出処理の流れを示すフローチャートである。図5を参照して、第2の実施の形態における血圧測定処理は、図5で説明した第1の実施の形態における血圧測定処理のステップS109、ステップST113およびステップST116を、それぞれ、ステップS109’、ステップST113’およびステップST117に変更したものである。このため、ここでは変更箇所について説明し、重複する説明は繰返さない。
【0098】
ステップS108の後、ステップST101と同様、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’ およびカフ圧値Pc0’を初期化する(ステップST109’)。
【0099】
ステップST112で動脈容積変化信号PGacの1心拍周期の振幅が、カフ圧の減圧を開始してからこれまでの動脈容積変化信号PGacの振幅の最大値PGacmax’より大きいと判断した場合、CPU100は、そのときの振幅の値で最大値PGacmax’を更新し、そのときのカフ圧Pc0’も更新する(ステップST113’)。
【0100】
ステップST115の後、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’を確定し、減圧時に最大値PGacmax’となったときのカフ圧Pc0’を確定し、ステップST106で確定された加圧時に動脈容積変化信号の振幅が最大となったときのカフ圧Pc0と減圧時のカフ圧Pc0’との差を、補正値として算出する(ステップST117)。
【0101】
図9に戻って、最低血圧の測定が開始されてから所定期間経過したと判断した場合、CPU100は、ステップST6と同様、動脈容積一定制御として、動脈容積信号PGdcの値が血圧減少時の制御目標値V0infと一致するように、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54を制御してカフ圧Pcを変更させる(ステップST15)。
【0102】
所定時間(たとえば、10msec)動脈容積一定制御を行なった後、動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったか否かを判断する(ステップST16)。所定の閾値以下となったと判断した場合、動脈容積一定制御が収束したということであるので、CPU100は、そのときのカフ圧Pcが1心拍内での最高値であれば、その最高値に、図10のステップST117で算出された補正値を加算したものを、被測定者の最高血圧として決定して、決定した最高血圧値を表示部40に表示させる(ステップST17)。決定した最高血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。
【0103】
その後、CPU100は、図4のステップST13およびステップST14と同様の処理を実行する(ステップST13、ステップST14)。また、CPU100は、血圧の測定が開始されてから所定期間が経過した後に測定した最高血圧値の平均値を、最終的な最高血圧値として表示部40に表示させる。
【0104】
このように、第2の実施の形態の電子血圧計1によって、血圧減少時においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、測定された血圧減少時の血圧のうち最低血圧が、そのまま被測定者の最低血圧とされ、血圧増加時においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、測定された血圧増加時の血圧のうち最高血圧が、カフ圧の加圧時に制御目標値V0infが決定されたときのカフ圧とカフ圧の減圧時に動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるときのカフ圧との差で補正されて、被測定者の最高血圧とされる。その結果、動脈およびその周辺の生体組織の力学的ヒステリシスの影響を少なくすることができるため、血圧の増加時および減少時の血圧をより正確に測定することができる。
【0105】
また、第1の期間(たとえば、血圧の測定が開始されたから所定期間)は、血圧減少時の血圧のうち最低血圧が測定され、第1の期間と異なる第2の期間(たとえば、所定期間の後の期間)は、血圧増加時の血圧のうち最高血圧が測定されるようにする。その結果、さらに正確に最低血圧および最高血圧を測定することができる。
【0106】
[第2の実施の形態の変形例]
第2の実施の形態においては、最低血圧および最高血圧を測定する場合について説明した。第2の実施の形態の変形例においては、連続的に血圧を測定する場合について説明する。第2の実施の形態と変形例とは、図9のステップST6からステップST13までの処理が異なる。このため、第2の実施の形態の変形例の説明としては、異なる処理について説明し、重複する説明は繰返さない。
【0107】
図11は、本発明の第2の実施の形態の変形例における血圧測定処理の一部の流れを示すフローチャートである。図11を参照して、図9で説明したステップST5の後、CPU100は、図9のステップST6およびステップST7と同様の処理を実行する。
【0108】
ステップST7で動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったと判断した場合、CPU100は、動脈容積信号PGdcの立下がり点が検出されてから立上がり点が検出されるまでの血圧下降中であるか否かを判断する(ステップST23)。
【0109】
血圧下降中であると判断した場合、CPU100は、そのときのカフ圧Pcを、被測定者の血圧として決定して、決定した血圧値を表示部40に表示させる(ステップST24)。決定した血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。その後、実行する処理をステップST13の処理に進める。
【0110】
一方、血圧下降中でないと判断した場合、つまり、血圧上昇中である場合、CPU100は、そのときのカフ圧Pcに、図10のステップST117で算出された補正値を加算したものを、被測定者の血圧として決定して、決定した血圧値を表示部40に表示させる(ステップST25)。決定した血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。その後、実行する処理をステップST13の処理に進める。ステップST13では、図4のステップST13と同様の処理を実行する。
【0111】
このように、第2の実施の形態の変形例の電子血圧計1によって、血圧減少時においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、測定された血圧減少時の血圧が、そのまま被測定者の血圧とされ、血圧増加時においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、測定された血圧増加時の血圧が、カフ圧の加圧時に制御目標値V0infが決定されたときのカフ圧とカフ圧の減圧時に動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるときのカフ圧との差で補正されて、被測定者の血圧とされる。その結果、動脈およびその周辺の生体組織の力学的ヒステリシスの影響を少なくすることができるため、血圧の増加時および減少時の血圧をより正確に測定することができる。
【0112】
また、動脈容積信号PGdcの立下がり点および立上がり点が検出されるようにして、立上がり点が検出されてから立下がり点が検出されるまでは、血圧増加時とされ、血圧増加時の血圧が測定され、立下がり点が検出されてから立上がり点が検出されるまでは、血圧減少時とされ、血圧減少時の血圧が測定される。その結果、より正確に制御目標値を切替えることができるので、血圧の増加時および減少時の血圧をさらに正確に測定することができる。
【0113】
次に、上述した実施の形態の変形例について説明する。
(1) 前述した第2の実施の形態およびその変形例においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて測定された血圧を、血圧減少時は、そのまま被測定者の血圧とし、血圧増加時については、カフ圧の加圧時に制御目標値V0infが決定されたときのカフ圧とカフ圧の減圧時に動脈容積変化信号の振幅が最大となるときのカフ圧との差で補正して被測定者の血圧とした。
【0114】
しかし、これに限定されず、カフ圧の減圧時に決定された血圧増加時の制御目標値V0defが用いられて測定された血圧を、血圧増加時は、そのまま被測定者の血圧とし、血圧減少時については、カフ圧の減圧時に制御目標値V0defが決定されたときのカフ圧とカフ圧の加圧時に動脈容積変化信号の振幅が最大となるときのカフ圧との差で補正して被測定者の血圧とするようにしてもよい。
【0115】
(2) 今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
1 電子血圧計、10 本体部、20 カフ、21 空気袋、30 エア系、31 エアチューブ、32 圧力センサ、33 発振回路、40 表示部、41 操作部、41A
電源スイッチ、41B 測定スイッチ、41C 停止スイッチ、41D メモリスイッチ、41E IDスイッチ、42 メモリ部、43 フラッシュメモリ、44 電源、45 タイマ、50 調整機構、51 ポンプ、52 弁、53 ポンプ駆動回路、54 弁駆動回路、70 動脈容積センサ、71 発光素子、72 受光素子、73 発光素子駆動回路、74 動脈容積検出回路、100 CPU。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法に関し、特に、容積補償法を用いて血圧を測定する血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は循環器疾患を解析する指標の一つであり、血圧に基づいてリスク解析を行うことは、たとえば脳卒中や心不全や心筋梗塞などの心血管系の疾患の予防に有効である。特に、早朝に血圧が上昇する早朝高血圧は、心臓病や脳卒中などに関係している。
【0003】
さらに、早朝高血圧の中でも、モーニングサージと呼ばれる起床後1時間から1時間半ぐらいの間に急激に血圧が上昇する症状は、脳卒中との因果関係があることが判明している。そこで、時間(生活習慣)と血圧変化の相互関係を把握することが、心血管系の疾患のリスク解析に有用である。従って、長期間にわたり、連続的に血圧測定することが必要となってきている。
【0004】
また、手術中・手術後の患者の監視、および、降圧薬治療時の薬効確認等においては、1心拍ごとに連続的に血圧を測定し、血圧変化を監視することが非常に重要である。
【0005】
容積補償法による血圧測定は次のようにして行う。光電センサなどにより測定部位の動脈容積を検出し、動脈内圧(血圧)による動脈容積の変化を常に一定の動脈容積(制御目標値V0)に保たれるよう、測定部位に巻き付けたカフ内の圧力(カフ圧)により制御する。このとき、血圧とカフ圧は平衡状態になるため、カフ圧を計測することで、連続的に血圧(血圧波形)を測定することが可能である。正確な血圧測定のためには、前記制御目標値V0を正確に決定する必要がある。
【0006】
従来の容積補償法を利用した血圧測定では制御目標値V0を次のようにして決定していた。図12は、動脈の力学的特性を示すグラフである。この図は、横軸に血圧とカフ圧の差(動脈内外圧差Ptr)を、縦軸に動脈容積をプロットしたものである。
【0007】
制御目標値V0は、図12に示すように、血圧とカフ圧が平衡した点(図中のPtr=0の点)での動脈容積である。図12に示すように、Ptr=0の点では動脈の力学的コンプライアンスが最大となる。そのため、この点での血圧変動による動脈容積の変化が最大となる。そこで、カフ圧を徐々に加圧しながら動脈容積および動脈容積変化を検出し、動脈容積変化が最大となった点での1心拍の動脈容積の平均値を制御目標値V0として決定していた(特許文献1参照)。
【0008】
ところが、動脈の力学的特性は、図13(非特許文献1のFig.2より引用)に示すように血圧の増加方向と減少方向で異なっている、つまり、ヒステリシスがある(非特許文献1参照)。
【0009】
図14の血圧波形において、血圧の増加・減少を動脈内外圧差Ptrに置き換えると、カフ圧を一定とした場合、血圧が増加するとき(拡張期血圧から収縮期血圧へ変化するとき)はPtrが増加する方向に、逆に血圧が減少するとき(収縮期血圧から拡張期血圧へ変化するとき)はPtrが減少する方向になる。
【0010】
一方、カフ圧の増加・減少を動脈内外圧差Ptrに置き換えると、血圧を一定とした場合、カフ圧が減少するとき(減圧されるとき)はPtrが増加する方向へ、逆にカフ圧が増加するとき(加圧されるとき)はPtrが減少する方向へになる。すなわち、血圧の増加(拡張期血圧から収縮期血圧への変化)はカフ圧減圧に、血圧の減少(収縮期血圧から拡張期血圧への変化)はカフ圧加圧に等価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平1−31370号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】K.Yamakoshi,H.Shimazu,M.Shibata,A.Kamiya,"New oscillometric method for indirect measurement of systolic and mean arterial pressure in the human finger. Part 1: model experiment",Medical & Biological Engineering & Computing,1982,20,p.307-313
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このことより、図15に示すように、従来の制御目標値V0の決定方法では、血圧の減少(収縮期血圧から拡張期血圧への変化)における動脈容積の変化に対する制御目標値となっており、血圧の増加(拡張期血圧から収縮期血圧への変化)における動脈容積の変化に対しては過大な値となっていた。そのため、収縮期血圧が正確に測定できないという課題があった。また、この力学的特性のヒステリシスは測定部位の動脈周囲の生体組織にも存在しているため、その影響が重畳していることは当然のことである。
【0014】
この発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、その目的の1つは、血圧の上昇時および下降時の血圧をより正確に測定することが可能な血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するために、この発明のある局面によれば、血圧測定装置は、容積補償法に従い血圧を測定するための装置であって、血圧の測定部位に装着された場合に内部の液体または気体の圧力で前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有し、前記制御部は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が所定の制御目標値と一致するように、前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号に基づいて、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整する圧力制御手段と、前記圧力制御手段による調整の結果、前記容積が前記所定の制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧として抽出する抽出手段とを含む。
【0016】
前記制御部は、さらに、血圧下降時または血圧上昇時の前記所定の制御目標値を決定する手段であって、血圧下降時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する一方、血圧上昇時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定する第1の制御目標値決定手段を含む。
【0017】
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する。
【0018】
前記抽出手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧上昇時の血圧として抽出する。
【0019】
好ましくは、前記制御部は、さらに、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定する一方、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧上昇時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する第2の制御目標値決定手段を含む。
【0020】
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時の制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する。
【0021】
前記抽出手段は、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧上昇時の血圧として抽出する。
【0022】
さらに好ましくは、前記制御部は、さらに、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、増加を開始する立上がり点と、減少を開始する立下がり点とを検出する変化点検出手段を含む。
【0023】
前記圧力制御手段は、前記変化点検出手段によって前記立上がり点が検出されてから前記立下がり点が検出されるまでの立上がり時は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧上昇時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する一方、前記立下がり点が検出されてから前記立上がり点が検出されるまでの立下がり時は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧下降時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する。
【0024】
また好ましくは、前記圧力制御手段は、第1の期間は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧上昇時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する一方、前記第1の期間と異なる第2の期間は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧下降時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する。
【0025】
好ましくは、前記制御部は、さらに、前記第1の制御目標値決定手段によって前記血圧下降時制御目標値または前記血圧上昇時制御目標値が決定されたときに前記圧力検出部で検出される第1のカフ圧を特定する第1のカフ圧特定手段と、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときに前記圧力検出部で検出される第2のカフ圧を特定する一方、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧上昇時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときになるときに前記圧力検出部で検出される第2のカフ圧を特定する第2のカフ圧特定手段と、前記第1のカフ圧特定手段によって特定された前記第1のカフ圧と、前記第2のカフ圧特定手段によって特定された前記第2のカフ圧との差を補正値として算出する補正値算出手段とを含む。
【0026】
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値および前記血圧上昇時制御目標値のいずれであっても、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する。
【0027】
前記抽出手段は、さらに、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を前記補正値算出手段によって算出された前記補正値で補正した値を、血圧上昇時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を前記補正値算出手段によって算出された前記補正値で補正した値を、血圧下降時の血圧として抽出する。
【0028】
この発明の他の局面によれば、血圧測定装置を制御する制御方法は、容積補償法に従い血圧を測定するための血圧測定装置の制御方法である。血圧測定装置は、血圧の測定部位に装着された場合に内部の液体または気体の圧力で前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有する。
【0029】
血圧測定装置の制御方法は、前記制御部が、血圧下降時または血圧上昇時の制御目標値を決定するステップであって、血圧下降時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する一方、血圧上昇時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定するステップと、決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、決定された前記血圧下降時制御目標値または前記血圧上昇時制御目標値と一致するように、前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号に基づいて、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整するステップと、決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記容積が前記血圧下降時制御目標値と一致すると判断するための条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記容積が前記血圧上昇時制御目標値と一致すると判断するための条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧上昇時の血圧として抽出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0030】
この発明に従えば、血圧測定装置によって、血圧下降時制御目標値を決定する場合は、加減圧部でカフ圧を加圧させながら容積検出部で検出された動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の動脈容積信号の平均値が、血圧下降時制御目標値として決定される一方、血圧上昇時制御目標値を決定する場合は、加減圧部でカフ圧を減圧させながら容積検出部で検出された動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の動脈容積信号の平均値が、血圧上昇時制御目標値として決定され、決定されたのが血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、血圧上昇時制御目標値である場合は血圧上昇時に、容積検出部で検出される動脈容積信号で示される容積が、決定された制御目標値に一致するように、カフの圧力が調整され、決定されたのが血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に容積が制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときのカフ圧が、血圧下降時の血圧として抽出される一方、血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に所定の条件を満たしたときのカフ圧が、血圧上昇時の血圧として抽出される。
【0031】
このため、血圧測定装置によって、加圧時に決定された制御目標値で血圧下降時の血圧が測定され、減圧時に決定された制御目標値で血圧上昇時の血圧が測定される。その結果、動脈およびその周辺の生体組織の力学的ヒステリシスの影響を少なくすることができるため、血圧の上昇時および下降時の血圧をより正確に測定することが可能な血圧測定装置、および、血圧測定装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子血圧計の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子血圧計における血圧測定のためのカフ圧を制御する概念を表わした図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子血圧計のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における血圧測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態における制御目標値検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態において制御目標値を決定する方法を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の実施の形態における制御目標値決定時および血圧測定時のカフ圧および動脈容積信号の変化を示すグラフである。
【図8】本発明の第1の実施の形態の変形例における血圧測定処理の一部の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態における血圧測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施の形態における制御目標値検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施の形態の変形例における血圧測定処理の一部の流れを示すフローチャートである。
【図12】動脈の力学的特性を示すグラフである。
【図13】動脈のヒステリシスを示すグラフである。
【図14】血圧波形を示す図である。
【図15】ヒステリシスを考慮した動脈の力学的特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0034】
本実施の形態に係る電子血圧計1は、容積補償法により連続的に血圧を測定する。電子血圧計1は、生体外からカフにより動脈に外圧を加え、生体外圧すなわちカフ圧と動脈内圧すなわち血圧とが常時平衡するように、決定した最適なサーボゲインを用いてサーボ制御する。つまり、電子血圧計1は、動脈壁が無負荷状態に維持されるようにカフ圧を微調整し、そのとき(無負荷状態)のカフ圧を測定することにより、最低血圧および最高血圧、または、連続的に血圧を測定する。
【0035】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1の外観斜視図である。図1を参照して、電子血圧計1は、本体部10と、被測定者の四肢に巻き付け可能なカフ20とを備える。本体部10はカフ20に取り付けられている。本体部10の表面には、たとえば液晶等により構成される表示部40と、ユーザ(被測定者)からの指示を受付けるための操作部41とが配置されている。操作部41は、複数のスイッチを含む。
【0036】
本実施の形態において、「四肢」とは、上肢および下肢を表わす。つまり、四肢は、手首から腕の付け根までの部位と、足首から足の付け根までの部位とを含む。以下の説明においては、カフ20は、被測定者の手首に装着されるものとする。
【0037】
なお、本実施の形態における電子血圧計1は、図1に示されるように、本体部10がカフ20に取り付けられた形態を例に説明するが、上腕式の血圧計で採用されているような、本体部10とカフ20とがエアチューブ(後述の図3においてエアチューブ31)によって接続される形態のものであってもよい。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1における血圧測定のためのカフ圧を制御する概念を表わした図である。図2には、カフ20が、被測定者の手首200に装着された様子が示される。
【0039】
図2を参照して、本体部10には、ポンプ51および排気弁(以下、単に「弁」という)52を含むカフ圧の調整機構が配置される。
【0040】
ポンプ51、弁52、および、空気袋21内の圧力(カフ圧)を検出するための圧力センサ32を含むエア系30は、エアチューブ31を介して、カフ20に内包される空気袋21と接続される。
【0041】
空気袋21の内側には発光素子71と受光素子72とが所定の間隔に配置される。本実施の形態では、カフ20の装着状態における手首200の周に沿って発光素子71と受光素子72とが並べられるが、このような配置例に限定されるものではない。
【0042】
また、カフ20には空気袋21が含まれることとしたが、カフ20に供給される流体は空気に限定されるものではなく、たとえば液体やゲルであってもよい。あるいは、流体に限定されるものではなく、マイクロビーズなどの均一な微粒子であってもよい。
【0043】
図3は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1のハードウェア構成を表わすブロック図である。図3を参照して、電子血圧計1のカフ20は、空気袋21と、動脈容積センサ70とを含む。
【0044】
動脈容積センサ70は、被測定者の血圧測定部位の動脈の容積を検出するためのセンサであり、上述した発光素子71(たとえば、発光ダイオード)と、受光素子72(たとえば、フォトトランジスタ)とを有する光電センサによって構成される。発光素子71は、動脈に対して光を照射し、受光素子72は、発光素子71によって照射された光の動脈の透過光または反射光を受光する。
【0045】
なお、動脈容積センサ70は、動脈の容積が検出できるものであればよく、インピーダンスセンサ(インピーダンスプレスチモグラフ)により動脈の容積を検出するものであってもよい。その場合、発光素子71および受光素子72に代えて、動脈を含む部位のインピーダンスを検出するための複数の電極(電流印加用の電極対、および、電圧検知用の電極対)が含まれる。
【0046】
本体部10は、上述の表示部40および操作部41に加え、各部を集中的に制御し、各種の演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)100と、CPU100に所定の動作をさせるプログラムや各種データを記憶するためのメモリ部42と、測定された血圧データを記憶するための不揮発性メモリ、たとえば、フラッシュメモリ43と、CPU100を介し各部に電力を供給するための電源44、および現在時間を計時して計時データをCPU100に出力するタイマ45とを含む。
【0047】
操作部41は、電源をONまたはOFFするための指示の入力を受付ける電源スイッチ41Aと、測定開始の指示を受付けるための測定スイッチ41Bと、測定停止の指示を受付けるための停止スイッチ41Cと、フラッシュメモリ43に記録された血圧などの情報を読出す指示を受付けるためのメモリスイッチ41Dと、被測定者を識別するためのID(Identification)情報を入力するために操作されるIDスイッチ41Eを有する。
【0048】
本体部10は、さらに、上述したエア系30と、カフ圧の調整機構50と、発振回路33と、発光素子駆動回路73と、動脈容積検出回路74とを含む。
【0049】
調整機構50は、ポンプ51および弁52の他、ポンプ駆動回路53と弁駆動回路54とを有する。
【0050】
ポンプ51は、カフ圧を加圧するために、空気袋21に空気を供給する。弁52は、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される。ポンプ駆動回路53は、ポンプ51の駆動をCPU100から与えられる制御信号に基づいて制御する。弁駆動回路54は弁52の開閉制御をCPU100から与えられる制御信号に基づいて行なう。
【0051】
発光素子駆動回路73は、CPU100からの指令信号に応じて、発光素子71の発光量を制御する。
【0052】
動脈容積検出回路74は、発光素子71の発する光であって、血管を流れる血液(赤血球)に含まれるヘモグロビンの吸収帯の光の、受光素子72に到達する透過光量または反射光量に基づく容積脈波信号(動脈容積信号PGdc)、および、容積脈波信号をHPF(High-pass filter)回路で処理することにより得られる容積脈波信号の交流成分の動脈容積変化信号PGacを、CPU100に出力する。たとえば、HPF回路のフィルタ定数を0.6Hzとして、0.6Hzを超える信号は交流成分とする。
【0053】
圧力センサ32は、静電容量型の圧力センサでありカフ圧により容量値が変化する。発振回路33は、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号をCPU100に出力する。CPU100は、発振回路33から得られる信号を圧力に変換し圧力を検知する。
【0054】
図4は、本発明の第1の実施の形態における血圧測定処理の流れを示すフローチャートである。図4を参照して、まず、CPU100は、電源スイッチ41Aが押下される操作の入力を待つ(ステップST1)。
【0055】
電源スイッチ41Aが押下されると、CPU100は、初期化処理を行なう(ステップST2)。具体的には、CPU100は、初期化処理として、メモリ部42のこの処理に用いられるメモリ領域を初期化し、空気袋21の空気を排気し、圧力センサ32の0mmHg補正を行なう。
【0056】
次に、CPU100は、測定スイッチ41Bが押下される操作の入力を待つ(ステップST3)。測定スイッチ41Bが押下されると、CPU100は、制御目標値検出処理を実行する(ステップST4)。
【0057】
図5は、本発明の第1の実施の形態における制御目標値検出処理の流れを示すフローチャートである。図5を参照して、まず、CPU100は、メモリ部42に記憶される、動脈容積変化信号の最大値PGacmax’およびカフ圧値Pc0’を初期化する(ステップST101)。なお、以下の処理において動脈容積変化信号の最大値PGacmax’およびカフ圧値Pc0’は、随時更新されるものであるので、最終的に確定するまでの値は仮の値である。
【0058】
次に、CPU100は、弁駆動回路54を制御して弁52を閉鎖し(ステップST102)、ポンプ駆動回路53を制御してポンプ51を駆動することで、カフ圧を加圧する(ステップST103)。カフ圧を加圧する段階において、CPU100は、動脈容積検出回路74からの信号(動脈容積信号PGdc,動脈容積変化信号PGac)を検出する(ステップST104)。
【0059】
次に、CPU100は、ステップST104で検出された動脈容積変化信号PGacの1心拍周期の振幅が、カフ圧の加圧を開始してからこれまでの動脈容積変化信号PGacの振幅の最大値PGacmax’より大きいか否かを判断する(ステップST105)。大きいと判断した場合、CPU100は、そのときの振幅の値で最大値PGacmax’を更新し、そのときのカフ圧Pc0’も更新する(ステップST106)。
【0060】
CPU100は、カフ圧が所定圧に達したか否かを判断する(ステップST107)。所定圧は、被測定者の最高血圧より十分に高い圧力であって、たとえば、200mmHgである。所定圧に達していないと判断した場合、CPU100は、ステップST103に処理を戻し、ステップST106までの処理を繰返す。
【0061】
カフ圧が所定圧に達したと判断した場合、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’を確定し、最大値PGacmax’となったときの1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値を加圧時の制御目標値V0infとして算出し、そのときのカフ圧Pc0’を制御初期カフ圧Pc0として確定する(ステップST108)。
【0062】
図6は、本発明の実施の形態において制御目標値を決定する方法を説明するためのグラフである。図6を参照して、カフ圧を加圧していくと、2本のグラフのうち上のグラフに沿って、動脈内圧Pa(つまり血圧)とカフ圧Pcとの差、および、1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値で示される動脈容積Vが、減少する。そして、カフ圧Pcが動脈内圧Paと等しくなったときに、動脈容積VがV0infになるとともに、動脈の力学的コンプライアンスが最大となり、血圧変動による動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となる。
【0063】
カフ圧に対して血圧つまり動脈内圧Paが減少するときは、動脈内圧Paに対してカフ圧が増加するときと同じように考えることができる。つまり、V0infを、血圧減少時の制御目標値とすることができる。血圧減少時には、この制御目標値V0infを用いて動脈容積一定制御が収束するごと(たとえば、動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となるごと)にカフ圧Pcを被測定者の血圧として測定することができる。
【0064】
図5に戻って、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’を初期化する(ステップST109)。次いで、CPU100は、弁駆動回路54を制御して弁52の開閉を徐々に調整して、カフ圧を減圧する(ステップST110)。カフ圧を減圧する段階において、CPU100は、動脈容積検出回路74からの信号(動脈容積信号PGdc,動脈容積変化信号PGac)を検出する(ステップST111)。
【0065】
次に、CPU100は、ステップST111で検出された動脈容積変化信号PGacの1心拍周期の振幅が、カフ圧の減圧を開始してからこれまでの動脈容積変化信号PGacの振幅の最大値PGacmax’より大きいか否かを判断する(ステップST112)。大きいと判断した場合、CPU100は、そのときの振幅の値で最大値PGacmax’を更新する(ステップST113)。
【0066】
CPU100は、カフ圧が所定圧に達したか否かを判断する(ステップST114)。所定圧は、被測定者の最低血圧より十分に低い圧力であって、たとえば、30mmHgである。所定圧に達していないと判断した場合、CPU100は、ステップST110に処理を戻し、ステップST113までの処理を繰返す。
【0067】
カフ圧が所定圧に達したと判断した場合、CPU100は、カフの空気を排気するよう弁駆動回路54を制御して弁52を開く(ステップST115)。
【0068】
そして、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’を確定し、最大値PGacmax’となったときの1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値を加圧時の制御目標値V0defとして算出する(ステップST116)。その後、CPU100は、実行する処理をこの処理の呼出元の処理に戻す。
【0069】
図6を再度参照して、カフ圧を減圧していくと、2本のグラフのうち下のグラフに沿って、動脈内圧Pa(つまり血圧)とカフ圧Pcとの差、および、1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値で示される動脈容積Vが、増加する。そして、カフ圧Pcが動脈内圧Paと等しくなったときに、動脈容積VがV0defになるとともに、動脈の力学的コンプライアンスが最大となり、血圧変動による動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となる。
【0070】
カフ圧に対して血圧つまり動脈内圧Paが増加するときは、動脈内圧Paに対してカフ圧が減少するときと同じように考えることができる。つまり、V0defを、血圧増加時の制御目標値とすることができる。血圧増加時には、この制御目標値V0defを用いて動脈容積一定制御が収束するごと(たとえば、動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となるごと)にカフ圧Pcを被測定者の血圧として測定することができる。
【0071】
図7は、本発明の実施の形態における制御目標値決定時および血圧測定時のカフ圧および動脈容積信号の変化を示すグラフである。図7を参照して、図5のステップST103からステップST108までの処理が実行されるとき(電源がオン状態にされてから約35秒まで)は、カフ圧Pcが30mmHg付近から130mmHg付近まで加圧される。これに応じて、動脈容積信号PGdcの値も、心拍周期に合わせて振動しながら増加する。
【0072】
そして、動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるとき、つまり、動脈容積信号PGdcの振幅も最大となるときの1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値が、血圧減少時の制御目標値V0infとして算出される。
【0073】
また、図5のステップST110からステップST116までの処理が実行されるとき(電源がオン状態にされて約35秒経過したときから約70秒まで)は、カフ圧Pcが130mmHg付近から30mmHg付近まで減圧される。これに応じて、動脈容積信号PGdcの値も、心拍周期に合わせて振動しながら減少する。
【0074】
そして、動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるとき、つまり、動脈容積信号PGdcの振幅も最大となるときの1心拍周期の動脈容積信号PGdcの平均値が、血圧増加時の制御目標値V0defとして算出される。
【0075】
図4に戻って、CPU100は、カフ圧を図5のステップST108で確定された制御初期カフ圧Pc0に設定する(ステップST5)。
【0076】
CPU100は、動脈容積一定制御として、動脈容積信号PGdcの値が血圧減少時の制御目標値V0infと一致するように、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54を制御してカフ圧Pcを変更させる(ステップST6)。
【0077】
所定時間(たとえば、10msec)動脈容積一定制御を行なった後、動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったか否かを判断する(ステップST7)。所定の閾値以下となったと判断した場合、動脈容積一定制御が収束したということであるので、CPU100は、そのときのカフ圧Pcが1心拍内での最低値であれば、被測定者の最低血圧として決定して、決定した最低血圧値を表示部40に表示させる(ステップST8)。決定した最低血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。
【0078】
そして、CPU100は、血圧の測定が開始されてから所定期間(たとえば、40秒)経過したか否かを判断する(ステップST9)。経過していないと判断した場合、CPU100は、実行する処理をステップST6の処理に戻す。また、CPU100は、血圧の測定を開始してから所定期間に測定した最低血圧値の平均値を、最終的な最低血圧値として表示部40に表示させる。
【0079】
一方、血圧の測定が開始されてから所定期間経過したと判断した場合、CPU100は、実行する処理をステップST10の処理に進める。CPU100は、動脈容積一定制御として、動脈容積信号PGdcの値が血圧増加時の制御目標値V0defと一致するように、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54を制御してカフ圧Pcを変更させる(ステップST10)。
【0080】
所定時間(たとえば、10msec)動脈容積一定制御を行なった後、動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったか否かを判断する(ステップST11)。所定の閾値以下となった場合、動脈容積一定制御が収束したということであるので、CPU100は、そのときのカフ圧Pcが1心拍内での最高値であれば、被測定者の最高血圧として決定して、決定した最高血圧値を表示部40に表示させる(ステップST12)。決定した最高血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。
【0081】
そして、CPU100は、停止スイッチ41Cが操作されることによって停止信号が入力された(オン状態となった)か否かを判断する(ステップST13)。停止信号が入力されていない(オフ状態である)と判断した場合、CPU100は、実行する処理をステップST6の処理に戻す。また、CPU100は、血圧の測定が開始されてから所定期間が経過した後に測定した最高血圧値の平均値を、最終的な最高血圧値として表示部40に表示させる。
【0082】
一方、停止信号が入力された(オン状態となった)と判断した場合、CPU100は、CPU100は、カフの空気を排気するよう弁駆動回路54を制御して弁52を開く(ステップST14)。その後、CPU100は、この血圧測定処理を終了し、電子血圧計1の電源をオフ状態にする。
【0083】
図7を再度参照して、図4のステップST6からステップST9までの処理が実行されるとき(電源がオン状態にされて約80秒経過したときから約120秒まで)は、血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれる。このため、最低血圧側が真の最低血圧に近い値として測定されている。
【0084】
また、図4のステップST10からステップST13までの処理が実行されるとき(電源がオン状態にされて約120秒以降は、血圧増加時の制御目標値V0defが用いられて動脈容積一定制御が行なわれる。このため、最高血圧側が真の最高血圧に近い値として測定されている。
【0085】
このように、第1の実施の形態の電子血圧計1によって、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、血圧減少時の血圧のうち最低血圧が測定され、カフ圧の減圧時に決定された血圧増加時の制御目標値V0defが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、血圧増加時の血圧のうち最高血圧が測定される。その結果、動脈およびその周辺の生体組織の力学的ヒステリシスの影響を少なくすることができるため、血圧の増加時および減少時の血圧をより正確に測定することができる。
【0086】
また、第1の期間(たとえば、血圧の測定が開始されたから所定期間)は、血圧減少時の血圧のうち最低血圧が測定され、第1の期間と異なる第2の期間(たとえば、所定期間の後の期間)は、血圧増加時の血圧のうち最高血圧が測定されるようにする。その結果、さらに正確に最低血圧および最高血圧を測定することができる。
【0087】
[第1の実施の形態の変形例]
第1の実施の形態においては、最低血圧および最高血圧を測定する場合について説明した。第1の実施の形態の変形例においては、連続的に血圧を測定する場合について説明する。第1の実施の形態と変形例とは、図4のステップST6からステップST13までの処理が異なる。このため、第1の実施の形態の変形例の説明としては、異なる処理について説明し、重複する説明は繰返さない。
【0088】
図8は、本発明の第1の実施の形態の変形例における血圧測定処理の一部の流れを示すフローチャートである。図8を参照して、図4で説明したステップST5の後、CPU100は、動脈容積信号PGdcの立下がり点が検出されてから立上がり点が検出されるまでの血圧下降中であるか否かを判断する(ステップST21)。
【0089】
血圧下降中であると判断した場合、CPU100は、図4のステップST6およびステップST7と同様の処理を実行する。一方、血圧下降中でないと判断した、つまり、血圧上昇中である場合、図4のステップST10およびステップST11と同様の処理を実行する。
【0090】
ステップST6またはステップST10の動脈容積一定制御によって、それぞれ、ステップST7またはステップST11で動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったと判断した場合、CPU100は、そのときのカフ圧Pcを、被測定者の血圧として決定して、決定した血圧値を表示部40に表示させる(ステップST22)。決定した血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。次に、CPU100は、図4のステップST13と同様の処理を実行する。
【0091】
このように、第1の実施の形態の変形例の電子血圧計1によって、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、血圧減少時の血圧が測定され、カフ圧の減圧時に決定された血圧増加時の制御目標値V0defが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、血圧増加時の血圧が測定される。その結果、動脈およびその周辺の生体組織の力学的ヒステリシスの影響を少なくすることができるため、血圧の増加時および減少時の血圧をより正確に測定することができる。
【0092】
また、動脈容積信号PGdcの立下がり点および立上がり点が検出されるようにして、立上がり点が検出されてから立下がり点が検出されるまでは、血圧増加時とされ、血圧増加時の血圧が測定され、立下がり点が検出されてから立上がり点が検出されるまでは、血圧減少時とされ、血圧減少時の血圧が測定される。その結果、より正確に制御目標値を切替えることができるので、血圧の増加時および減少時の血圧をさらに正確に測定することができる。
【0093】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて血圧減少時の血圧が測定され、カフ圧の減圧時に決定された血圧増加時の制御目標値V0defが用いられて血圧増加時の血圧が測定されるようにした。
【0094】
第2の実施の形態においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて測定された血圧を、血圧減少時は、そのまま被測定者の血圧とし、血圧増加時については、カフ圧の加圧時に制御目標値V0infが決定されたときのカフ圧とカフ圧の減圧時に動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるときのカフ圧との差で補正して被測定者の血圧とする。
【0095】
図9は、本発明の第2の実施の形態における血圧測定処理の流れを示すフローチャートである。図9を参照して、第2の実施の形態における血圧測定処理は、図4で説明した第1の実施の形態における血圧測定処理のステップST4およびステップST10からステップST12までを、それぞれ、ステップST4’およびステップST15からステップST17までに変更したものである。このため、ここでは変更箇所について説明し、重複する説明は繰返さない。
【0096】
ステップST3で測定スイッチ41Bが押下されると、CPU100は、制御目標値検出処理を実行する(ステップST4’)。
【0097】
図10は、本発明の第2の実施の形態における制御目標値検出処理の流れを示すフローチャートである。図5を参照して、第2の実施の形態における血圧測定処理は、図5で説明した第1の実施の形態における血圧測定処理のステップS109、ステップST113およびステップST116を、それぞれ、ステップS109’、ステップST113’およびステップST117に変更したものである。このため、ここでは変更箇所について説明し、重複する説明は繰返さない。
【0098】
ステップS108の後、ステップST101と同様、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’ およびカフ圧値Pc0’を初期化する(ステップST109’)。
【0099】
ステップST112で動脈容積変化信号PGacの1心拍周期の振幅が、カフ圧の減圧を開始してからこれまでの動脈容積変化信号PGacの振幅の最大値PGacmax’より大きいと判断した場合、CPU100は、そのときの振幅の値で最大値PGacmax’を更新し、そのときのカフ圧Pc0’も更新する(ステップST113’)。
【0100】
ステップST115の後、CPU100は、動脈容積変化信号の振幅の最大値PGacmax’を確定し、減圧時に最大値PGacmax’となったときのカフ圧Pc0’を確定し、ステップST106で確定された加圧時に動脈容積変化信号の振幅が最大となったときのカフ圧Pc0と減圧時のカフ圧Pc0’との差を、補正値として算出する(ステップST117)。
【0101】
図9に戻って、最低血圧の測定が開始されてから所定期間経過したと判断した場合、CPU100は、ステップST6と同様、動脈容積一定制御として、動脈容積信号PGdcの値が血圧減少時の制御目標値V0infと一致するように、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54を制御してカフ圧Pcを変更させる(ステップST15)。
【0102】
所定時間(たとえば、10msec)動脈容積一定制御を行なった後、動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったか否かを判断する(ステップST16)。所定の閾値以下となったと判断した場合、動脈容積一定制御が収束したということであるので、CPU100は、そのときのカフ圧Pcが1心拍内での最高値であれば、その最高値に、図10のステップST117で算出された補正値を加算したものを、被測定者の最高血圧として決定して、決定した最高血圧値を表示部40に表示させる(ステップST17)。決定した最高血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。
【0103】
その後、CPU100は、図4のステップST13およびステップST14と同様の処理を実行する(ステップST13、ステップST14)。また、CPU100は、血圧の測定が開始されてから所定期間が経過した後に測定した最高血圧値の平均値を、最終的な最高血圧値として表示部40に表示させる。
【0104】
このように、第2の実施の形態の電子血圧計1によって、血圧減少時においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、測定された血圧減少時の血圧のうち最低血圧が、そのまま被測定者の最低血圧とされ、血圧増加時においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、測定された血圧増加時の血圧のうち最高血圧が、カフ圧の加圧時に制御目標値V0infが決定されたときのカフ圧とカフ圧の減圧時に動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるときのカフ圧との差で補正されて、被測定者の最高血圧とされる。その結果、動脈およびその周辺の生体組織の力学的ヒステリシスの影響を少なくすることができるため、血圧の増加時および減少時の血圧をより正確に測定することができる。
【0105】
また、第1の期間(たとえば、血圧の測定が開始されたから所定期間)は、血圧減少時の血圧のうち最低血圧が測定され、第1の期間と異なる第2の期間(たとえば、所定期間の後の期間)は、血圧増加時の血圧のうち最高血圧が測定されるようにする。その結果、さらに正確に最低血圧および最高血圧を測定することができる。
【0106】
[第2の実施の形態の変形例]
第2の実施の形態においては、最低血圧および最高血圧を測定する場合について説明した。第2の実施の形態の変形例においては、連続的に血圧を測定する場合について説明する。第2の実施の形態と変形例とは、図9のステップST6からステップST13までの処理が異なる。このため、第2の実施の形態の変形例の説明としては、異なる処理について説明し、重複する説明は繰返さない。
【0107】
図11は、本発明の第2の実施の形態の変形例における血圧測定処理の一部の流れを示すフローチャートである。図11を参照して、図9で説明したステップST5の後、CPU100は、図9のステップST6およびステップST7と同様の処理を実行する。
【0108】
ステップST7で動脈容積変化信号PGacの振幅が所定の閾値以下となったと判断した場合、CPU100は、動脈容積信号PGdcの立下がり点が検出されてから立上がり点が検出されるまでの血圧下降中であるか否かを判断する(ステップST23)。
【0109】
血圧下降中であると判断した場合、CPU100は、そのときのカフ圧Pcを、被測定者の血圧として決定して、決定した血圧値を表示部40に表示させる(ステップST24)。決定した血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。その後、実行する処理をステップST13の処理に進める。
【0110】
一方、血圧下降中でないと判断した場合、つまり、血圧上昇中である場合、CPU100は、そのときのカフ圧Pcに、図10のステップST117で算出された補正値を加算したものを、被測定者の血圧として決定して、決定した血圧値を表示部40に表示させる(ステップST25)。決定した血圧値は、フラッシュメモリ43に記憶されるようにしてもよい。その後、実行する処理をステップST13の処理に進める。ステップST13では、図4のステップST13と同様の処理を実行する。
【0111】
このように、第2の実施の形態の変形例の電子血圧計1によって、血圧減少時においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、測定された血圧減少時の血圧が、そのまま被測定者の血圧とされ、血圧増加時においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて動脈容積一定制御が行なわれ、測定された血圧増加時の血圧が、カフ圧の加圧時に制御目標値V0infが決定されたときのカフ圧とカフ圧の減圧時に動脈容積変化信号PGacの振幅が最大となるときのカフ圧との差で補正されて、被測定者の血圧とされる。その結果、動脈およびその周辺の生体組織の力学的ヒステリシスの影響を少なくすることができるため、血圧の増加時および減少時の血圧をより正確に測定することができる。
【0112】
また、動脈容積信号PGdcの立下がり点および立上がり点が検出されるようにして、立上がり点が検出されてから立下がり点が検出されるまでは、血圧増加時とされ、血圧増加時の血圧が測定され、立下がり点が検出されてから立上がり点が検出されるまでは、血圧減少時とされ、血圧減少時の血圧が測定される。その結果、より正確に制御目標値を切替えることができるので、血圧の増加時および減少時の血圧をさらに正確に測定することができる。
【0113】
次に、上述した実施の形態の変形例について説明する。
(1) 前述した第2の実施の形態およびその変形例においては、カフ圧の加圧時に決定された血圧減少時の制御目標値V0infが用いられて測定された血圧を、血圧減少時は、そのまま被測定者の血圧とし、血圧増加時については、カフ圧の加圧時に制御目標値V0infが決定されたときのカフ圧とカフ圧の減圧時に動脈容積変化信号の振幅が最大となるときのカフ圧との差で補正して被測定者の血圧とした。
【0114】
しかし、これに限定されず、カフ圧の減圧時に決定された血圧増加時の制御目標値V0defが用いられて測定された血圧を、血圧増加時は、そのまま被測定者の血圧とし、血圧減少時については、カフ圧の減圧時に制御目標値V0defが決定されたときのカフ圧とカフ圧の加圧時に動脈容積変化信号の振幅が最大となるときのカフ圧との差で補正して被測定者の血圧とするようにしてもよい。
【0115】
(2) 今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
1 電子血圧計、10 本体部、20 カフ、21 空気袋、30 エア系、31 エアチューブ、32 圧力センサ、33 発振回路、40 表示部、41 操作部、41A
電源スイッチ、41B 測定スイッチ、41C 停止スイッチ、41D メモリスイッチ、41E IDスイッチ、42 メモリ部、43 フラッシュメモリ、44 電源、45 タイマ、50 調整機構、51 ポンプ、52 弁、53 ポンプ駆動回路、54 弁駆動回路、70 動脈容積センサ、71 発光素子、72 受光素子、73 発光素子駆動回路、74 動脈容積検出回路、100 CPU。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧の測定部位に装着された場合に内部の液体または気体の圧力で前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有し、前記制御部は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が所定の制御目標値と一致するように、前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号に基づいて、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整する圧力制御手段と、前記圧力制御手段による調整の結果、前記容積が前記所定の制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧として抽出する抽出手段とを含む、容積補償法に従い血圧を測定するための血圧測定装置であって、
前記制御部は、さらに、
血圧下降時または血圧上昇時の前記所定の制御目標値を決定する手段であって、血圧下降時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する一方、血圧上昇時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定する第1の制御目標値決定手段を含み、
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整し、
前記抽出手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧上昇時の血圧として抽出する、血圧測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、
前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定する一方、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧上昇時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する第2の制御目標値決定手段を含み、
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時の制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整し、
前記抽出手段は、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧上昇時の血圧として抽出する、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、
前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、増加を開始する立上がり点と、減少を開始する立下がり点とを検出する変化点検出手段を含み、
前記圧力制御手段は、前記変化点検出手段によって前記立上がり点が検出されてから前記立下がり点が検出されるまでの立上がり時は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧上昇時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する一方、前記立下がり点が検出されてから前記立上がり点が検出されるまでの立下がり時は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧下降時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記圧力制御手段は、第1の期間は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧上昇時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する一方、前記第1の期間と異なる第2の期間は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧下降時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、
前記第1の制御目標値決定手段によって前記血圧下降時制御目標値または前記血圧上昇時制御目標値が決定されたときに前記圧力検出部で検出される第1のカフ圧を特定する第1のカフ圧特定手段と、
前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときに前記圧力検出部で検出される第2のカフ圧を特定する一方、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧上昇時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときになるときに前記圧力検出部で検出される第2のカフ圧を特定する第2のカフ圧特定手段と、
前記第1のカフ圧特定手段によって特定された前記第1のカフ圧と、前記第2のカフ圧特定手段によって特定された前記第2のカフ圧との差を補正値として算出する補正値算出手段とを含み、
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値および前記血圧上昇時制御目標値のいずれであっても、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整し、
前記抽出手段は、さらに、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を前記補正値算出手段によって算出された前記補正値で補正した値を、血圧上昇時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を前記補正値算出手段によって算出された前記補正値で補正した値を、血圧下降時の血圧として抽出する、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項6】
血圧の測定部位に装着された場合に内部の液体または気体の圧力で前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有し、容積補償法に従い血圧を測定するための血圧測定装置を制御する制御方法であって、
前記制御部が、
血圧下降時または血圧上昇時の制御目標値を決定するステップであって、血圧下降時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する一方、血圧上昇時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定するステップと、
決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、決定された前記血圧下降時制御目標値または前記血圧上昇時制御目標値と一致するように、前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号に基づいて、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整するステップと、
決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記容積が前記血圧下降時制御目標値と一致すると判断するための条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記容積が前記血圧上昇時制御目標値と一致すると判断するための条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧上昇時の血圧として抽出するステップとを含む、血圧測定装置の制御方法。
【請求項1】
血圧の測定部位に装着された場合に内部の液体または気体の圧力で前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有し、前記制御部は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が所定の制御目標値と一致するように、前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号に基づいて、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整する圧力制御手段と、前記圧力制御手段による調整の結果、前記容積が前記所定の制御目標値と一致すると判断するための所定の条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧として抽出する抽出手段とを含む、容積補償法に従い血圧を測定するための血圧測定装置であって、
前記制御部は、さらに、
血圧下降時または血圧上昇時の前記所定の制御目標値を決定する手段であって、血圧下降時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する一方、血圧上昇時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定する第1の制御目標値決定手段を含み、
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整し、
前記抽出手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧上昇時の血圧として抽出する、血圧測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、
前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定する一方、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧上昇時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する第2の制御目標値決定手段を含み、
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時の制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整し、
前記抽出手段は、前記第1の制御目標値決定手段または前記第2の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を、血圧上昇時の血圧として抽出する、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、
前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、増加を開始する立上がり点と、減少を開始する立下がり点とを検出する変化点検出手段を含み、
前記圧力制御手段は、前記変化点検出手段によって前記立上がり点が検出されてから前記立下がり点が検出されるまでの立上がり時は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧上昇時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する一方、前記立下がり点が検出されてから前記立上がり点が検出されるまでの立下がり時は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧下降時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記圧力制御手段は、第1の期間は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧上昇時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する一方、前記第1の期間と異なる第2の期間は、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記血圧下降時制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整する、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、
前記第1の制御目標値決定手段によって前記血圧下降時制御目標値または前記血圧上昇時制御目標値が決定されたときに前記圧力検出部で検出される第1のカフ圧を特定する第1のカフ圧特定手段と、
前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときに前記圧力検出部で検出される第2のカフ圧を特定する一方、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されるのが前記血圧上昇時制御目標値である場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときになるときに前記圧力検出部で検出される第2のカフ圧を特定する第2のカフ圧特定手段と、
前記第1のカフ圧特定手段によって特定された前記第1のカフ圧と、前記第2のカフ圧特定手段によって特定された前記第2のカフ圧との差を補正値として算出する補正値算出手段とを含み、
前記圧力制御手段は、前記第1の制御目標値決定手段によって前記所定の制御目標値として決定されたのが前記血圧下降時制御目標値および前記血圧上昇時制御目標値のいずれであっても、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、前記第1の制御目標値決定手段によって決定された前記所定の制御目標値に一致するように、前記カフの圧力を調整し、
前記抽出手段は、さらに、前記第1の制御目標値決定手段によって決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を前記補正値算出手段によって算出された前記補正値で補正した値を、血圧上昇時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記所定の条件を満たしたときの前記カフ圧を前記補正値算出手段によって算出された前記補正値で補正した値を、血圧下降時の血圧として抽出する、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項6】
血圧の測定部位に装着された場合に内部の液体または気体の圧力で前記測定部位の動脈を圧迫するカフと、前記カフの内部の圧力を加圧および減圧するための加減圧部と、前記カフの内部の圧力であるカフ圧を検出するための圧力検出部と、単位長当りの前記動脈の容積を示す動脈容積信号を検出するための容積検出部と、制御部とを有し、容積補償法に従い血圧を測定するための血圧測定装置を制御する制御方法であって、
前記制御部が、
血圧下降時または血圧上昇時の制御目標値を決定するステップであって、血圧下降時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を加圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧下降時制御目標値として決定する一方、血圧上昇時制御目標値を決定する場合は、前記加減圧部で前記カフ圧を減圧させながら前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号の交流成分である動脈容積変化信号の振幅が最大になるときの1拍分の前記動脈容積信号の平均値を、前記血圧上昇時制御目標値として決定するステップと、
決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は血圧下降時に、前記血圧上昇時制御目標値である場合は血圧上昇時に、前記容積検出部で検出される前記動脈容積信号で示される前記容積が、決定された前記血圧下降時制御目標値または前記血圧上昇時制御目標値と一致するように、前記容積検出部で検出された前記動脈容積信号に基づいて、前記加減圧部を制御して前記カフの圧力を調整するステップと、
決定されたのが前記血圧下降時制御目標値である場合は、血圧下降時に前記容積が前記血圧下降時制御目標値と一致すると判断するための条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧下降時の血圧として抽出する一方、前記血圧上昇時制御目標値である場合は、血圧上昇時に前記容積が前記血圧上昇時制御目標値と一致すると判断するための条件を満たしたときの前記圧力検出部で検出された前記カフ圧を、被測定者の血圧上昇時の血圧として抽出するステップとを含む、血圧測定装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−206296(P2011−206296A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77393(P2010−77393)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
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