血圧測定装置
【課題】適切な加圧目標を取得する。
【解決手段】所定部位に装着されるカフ内のカフ圧を加圧または減圧することにより調整するための圧調整部と、調整されるカフ圧を検出するための圧力検出部112と、圧力検出部112によって検出されるカフ圧から血圧を算出することにより、血圧測定するための制御部と、を備える。制御部は、カフ圧の加圧過程において、血圧測定におけるカフ圧変動から独立した被測定者の生体の特徴に関連した情報を用いて、血圧測定の目標圧力を取得するための目標取得部と、加圧過程において検出されるカフ圧が目標圧力に達した後のカフ圧の減圧過程において、圧力検出部112により検出されるカフ圧を用いて被測定者の血圧を算出するための算出部と、を含む。
【解決手段】所定部位に装着されるカフ内のカフ圧を加圧または減圧することにより調整するための圧調整部と、調整されるカフ圧を検出するための圧力検出部112と、圧力検出部112によって検出されるカフ圧から血圧を算出することにより、血圧測定するための制御部と、を備える。制御部は、カフ圧の加圧過程において、血圧測定におけるカフ圧変動から独立した被測定者の生体の特徴に関連した情報を用いて、血圧測定の目標圧力を取得するための目標取得部と、加圧過程において検出されるカフ圧が目標圧力に達した後のカフ圧の減圧過程において、圧力検出部112により検出されるカフ圧を用いて被測定者の血圧を算出するための算出部と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、血圧測定装置に関し、特に、加圧目標を取得する機能を備える血圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は循環器系疾患のリスクを解析するための指標の一つである。血圧に基づいてリスク解析を行うことは、たとえば脳卒中、心不全、心筋梗塞などの心血管系の疾患の予防に有効である。
【0003】
従来は医療機関で測定される血圧(随時血圧)により診断が行われていた。しかしながら近年の研究により、家庭で測定する血圧(家庭血圧)が随時血圧より循環器系疾患の診断に有用であることが判明してきた。それに伴い、国内では、家庭で使用する血圧計が3000万台以上普及している。
【0004】
家庭向けの血圧計の多くがオシロメトリック法またはマイクロホン法による血圧測定方法を採用する。オシロメトリック法による血圧測定では、カフを上腕などの測定部位に巻付け、カフの内圧(カフ圧)を収縮期血圧より所定圧(たとえば30mmHg)だけ高く加圧し、その後、徐々にまたは段階的にカフ圧を減圧していく。この減圧過程における動脈の容積変化をカフ圧に重畳した圧変化(圧脈波振幅)として検出し、この圧脈波振幅の変化より収縮期血圧および拡張期血圧が決定される。なお、減圧過程によらず、カフ圧の加圧中に発生する圧脈波振幅を検出して血圧を測定することも可能である。
【0005】
一方、マイクロホン法は、オシロメトリック法と同様にカフを上腕などの測定部位に巻付け、カフ圧を収縮血圧より所定圧だけ高く加圧する。その後、徐々にカフ圧を減圧していく過程で動脈より発生するコロトコフ音をカフ内に設けたマイクロホンにより検出し、コロトコフ音が発生した時点に検出されるカフ圧を収縮期血圧、コロトコフ音が減弱または消滅した時点で検出されるカフ圧を拡張期血圧として決定する。
【0006】
これらの血圧測定方法において正確に血圧を測定するためには、減圧を開始する前に収縮期血圧に比べて十分に高い目標値まで加圧する必要がある(たとえば収縮期血圧+30mmHg)。この目標値の決定方法として、加圧中に収縮期血圧を推定し、最適な加圧目標値を決定する手順が提案されている(特許文献1:特開2001−70263号公報)。しかしながら、被測定者毎に適切な目標値(収縮期血圧)を推定することは困難であった。
【0007】
適切な加圧目標値が取得できない場合には、加圧が不十分となる。この様な加圧が不十分であるケースに対しては、脈波情報から加圧不足を判定し異常として終了処理、もしくは再度加圧を行う方法が提案されている(特許文献2:特開2006−288628号公報、特許文献3:特開平5−111468号公報)。また、スイッチ操作により加圧目標値を設定する方法も提案されている(特許文献4:特開2006−288627号公報)。
【0008】
しかしながら、いずれの方法においても、加圧不足となる被測定者に関しては、再測定または再加圧が必要となり、測定が煩わしい、測定に時間がかかるなどという課題が残されていた。
【0009】
また、前回の測定によって取得した収縮期血圧から加圧目標値を決定する方法も提案されている(特許文献5:特開2006−102266号公報)が、この方法であっても、血圧変動の大きい被測定者に対しては正確に加圧目標値を決定することができない。
【0010】
また、加圧不足ではなく、過剰に加圧するケースに対処するために、加圧終了後から脈波が検出されるまでの期間に急速排気を行う血圧測定装置(特許文献6:特開平3−289935号公報)が提案されている。したがって、過剰に加圧されるケースでは測定部位が加圧されている期間を短縮できるが、被測定者毎に適切な目標値(収縮期血圧)を推定することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001-70263号公報
【特許文献2】特開2006−288628号公報
【特許文献3】特開平5−111468号公報
【特許文献4】特開2006−288627号公報
【特許文献5】特開2006−102266号公報
【特許文献6】特開平3−289935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえに、この発明の目的は、適切な加圧目標を取得することができる血圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、被測定者の所定部位に装着されるカフと、カフ内のカフ圧を加圧または減圧することにより調整するための圧調整部と、調整されるカフ圧を検出するための圧力検出部と、圧力検出部によって検出されるカフ圧から血圧を算出することにより、血圧測定するための制御部と、を備える。
【0014】
制御部は、カフ圧の加圧過程において、血圧測定におけるカフ圧変動から独立した被測定者の生体の特徴に関連した情報を用いて、血圧測定の目標圧力を取得するための目標取得部と、加圧過程において検出されるカフ圧が目標圧力に達した後のカフ圧の減圧過程において、圧力検出部により検出されるカフ圧を用いて被測定者の血圧を算出するための算出部と、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被測定者について適切な加圧目標を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る血圧測定装置の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る血圧測定装置のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る血圧測定装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るメモリに格納された測定データを説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るカフの巻付け強度のパラメータ値を決定するために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る測定部位周囲長のパラメータ値を決定するために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る血圧測定の処理フローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係るオシロメトリック法に従う血圧の決定手順を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る加圧不足判定処理のフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘ユル’巻きの場合)のグラフである。
【図11】本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘適切’巻きの場合)のグラフである。
【図12】本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘キツ’巻きの場合)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては同一または対応する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰返さない。
【0018】
(外観および構成)
本発明の実施の形態に係る血圧測定装置1の外観および構成について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る血圧測定装置1の外観斜視図である。図1を参照して、血圧測定装置1は、本体部10と、被測定者の手首に巻き付け可能なカフ20とを備える。本体部10はカフ20に取り付けられている。本体部10の表面には、たとえば液晶等により構成される表示部40と、ユーザ(被測定者)が指示を血圧測定装置1に与えらるために操作されて、当該操作を受付ける操作部41とが配置されている。操作部41は、複数のスイッチを含む。
【0020】
なお、本実施の形態において、カフ20は、被測定者の手首に装着されるものとして説明する。しかしながら、カフ20が装着される部位(測定部位)は、手首に限定されるものではなく、たとえば、上腕であってもよい。
【0021】
また、本実施の形態における血圧測定装置1は、図1に示されるように、本体部10がカフ20に取り付けられた形態を例に説明する。しかしながら、上腕式の血圧計で採用されているような、本体部10とカフ20とがエアチューブ(図2においてエアチューブ31)によって接続される形態のものであってもよい。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態に係る血圧測定装置1のハードウェア構成を表わすブロック図である。図2を参照して、血圧測定装置1のカフ20は、空気袋21を含む。
【0023】
空気袋21は、エアチューブ31を介して、エア系30に接続される。本体部10は、上述の表示部40および操作部41に加え、エア系30と、各部を集中的に制御し、各種演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)100と、CPU100に所定の動作をさせるプログラムや各種データを記憶するためのメモリ部42と、測定された血圧を記憶するための不揮発性メモリ(たとえばフラッシュメモリ)43と、CPU100に電力を供給するための電源44と、計時動作を行なう計時部45と、着脱可能な記録媒体132からプログラムやデータの読出しおよび書込みをするためのインターフェイス部46とを含む。
【0024】
操作部41は、電源をONまたはOFFするための操作を受付ける電源スイッチ41Aと、測定開始の操作を受付けるための測定スイッチ41Bと、測定停止の指示の操作を受付けるための停止スイッチ41Cと、フラッシュメモリ43に格納された血圧などの情報を読出し表示部40に表示させる操作を受付けるためのメモリスイッチ41Dと、血圧測定装置1のユーザ(被測定者)を選択的に指定する操作を受付けるための使用者選択スイッチ41Eとを有する。
【0025】
本実施の形態では、血圧測定装置1は複数の被測定者により共用されることから、使用者選択スイッチ41Eを備えるが、共用されない場合には使用者選択スイッチ41Eは省略されてよい。また、測定スイッチ41Bを、電源スイッチ41Aと兼用してもよい。その場合には、測定スイッチ41Bは省略することができる。
【0026】
エア系30は、空気袋21内の圧力(以下、カフ圧という)を検出するための圧力センサ32と、カフ圧を加圧するために、空気袋21に空気を供給するためのポンプ51と、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される弁52とを含む。
【0027】
本体部10は、エア系30に関連して、発振回路33と、ポンプ駆動回路53と、弁駆動回路54とをさらに含む。
【0028】
圧力センサ32は、静電容量形の圧力センサであり、カフ圧により容量値が変化する。発振回路33は、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号(以下、圧力信号という)をCPU100に出力する。CPU100は、発振回路33から得られる信号を圧力に変換し圧力を検知する。ポンプ駆動回路53は、CPU100から与えられる制御信号に基づいてポンプ51を制御する。弁駆動回路54はCPU100から与えられる制御信号に基づいて弁52の開閉を制御する。
【0029】
なお、カフ20には空気袋21が含まれることとしたが、カフ20に供給される流体は空気に限定されるものではなく、たとえば液体やゲルであってもよい。あるいは、流体に限定されるものではなく、マイクロビーズなどの均一な微粒子であってもよい。
【0030】
(機能構成)
図3は、本発明の実施の形態に係る血圧測定装置1の機能構成を示す機能ブロック図である。図3を参照して、CPU100は、発振回路33からの出力信号を入力する脈波検出部118および圧力検出部112と、血圧測定に係る各種パラメータを取得するパラメータ取得部113と、血圧測定に際しての加圧目標を取得する加圧目標値取得部114と、ポンプ駆動回路53と弁駆動回路54とに制御信号を出力する加圧制御部115および減圧制御部116と、血圧値を決定する血圧決定部117と、フラッシュメモリ43のデータを読み書き(アクセス)するためのメモリ処理部119と、表示部40の表示を制御する表示制御部120と、を備える。
【0031】
加圧制御部115および減圧制御部116は、カフ圧を調整するために、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54に制御信号を送信する。具体的には、カフ圧を加圧し、またカフ圧を減圧するための制御信号を出力する。本実施の形態では、カフ圧を一定速度で減圧する過程において、血圧決定部117による血圧導出処理が行なわれる。脈波検出部118は、発振回路33からの圧力信号に重畳される脈波信号を検出する。圧力検出部112は、発振回路33からの圧力信号を圧力値に変換し、出力する。
【0032】
パラメータ取得部113は、血圧変動から独立した情報であって且つ被測定者の生体の特徴に係る情報(以下、生体情報という)から、加圧目標値を取得するためのパラメータを取得する機能を有する。パラメータ取得部113は、加圧不足判定部401と、収縮期血圧を推定するための推定部402とを有する。
【0033】
加圧目標値取得部114は、パラメータ取得部113が取得したパラメータを用いて血圧測定時の加圧目標値を取得する。
【0034】
血圧決定部117は、血圧測定時に圧力検出部112から入力する圧力値と、脈波検出部118から入力する脈波信号などを用いて血圧(収縮期血圧および拡張期血圧)、ならびに脈拍数を算出する。脈拍数は、脈波信号を用いて公知の手順に従って算出される。
【0035】
(測定データの格納例)
図4は、本発明の実施の形態に係るメモリに格納された測定データを説明する図である。血圧値を含む測定データは、フラッシュメモリ4のテーブル431に格納されて、血圧測定装置1の各部は、メモリ処理部119を介してテーブル431のデータをアクセス(読み書き)する。
【0036】
テーブル431には、血圧測定毎に、被測定者を識別するIDデータと、測定日時421、カフ巻付け強度422、推定収縮期血圧423、測定部位周囲長424、脈波振幅最大値425、加圧不足情報426および血圧値・脈拍数427が対応付けて格納される。
【0037】
IDデータは、使用者選択スイッチ41Eの操作に従う識別子を指す。測定日時421は、血圧測定時に、より典型的には血圧測定終了時に計時部45から受理した計時データに基づく日時を指す。カフ巻付け強度422は、測定部位に対するカフ20の巻付けの強度に従うパラメータを指す。推定収縮期血圧423は、血圧測定開始後の圧力信号に基づき、推定部402により推定された収縮期血圧ESYSを指す。測定部位周囲長は、カフが巻付けられている測定部位の周囲長に従うパラメータを指す。脈波振幅最大値425は、カフ圧を加圧中に脈波検出部118により検出される脈波の最大振幅を指す。加圧不足情報426は、血圧測定のための加圧が十分であったか否かの別を示し、加圧が十分であれば“OK”、不十分であれば“Err”が設定される。血圧値・脈拍数427は、血圧測定時に血圧決定部117により取得された血圧(収縮期血圧SYSおよび拡張期血圧DIA)値および脈拍数PLSを指す。
【0038】
上述のカフ巻付け強度422、測定部位周囲長424、脈波振幅最大値425および加圧不足情報426は、後述するようにパラメータ取得部113により取得される。
【0039】
ここでは、これらデータをテーブル形式で格納することにより各データを対応付けているが、フラッシュメモリ43において対応付けが特定できれば、格納形式はテーブルに限定されない。
【0040】
(パラメータのテーブル)
図5は、本発明の実施の形態に係るカフ20の巻付け強度のパラメータ値を決定するために参照されるテーブルの一例を示す図である。図6は、本発明の実施の形態に係る測定部位周囲長のパラメータ値を決定するために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【0041】
これらテーブルのデータは、実験により予め取得された値を指す。これらテーブルのデータは、メモリ処理部119により参照(読出し)される。
【0042】
図5を参照してテーブル432には、カフ圧を所定圧力だけ加圧するのに要する時間と、対応のパラメータdTaの値からなる異なる複数個のレコードが格納される。また、図6を参照してテーブル433には、カフ圧を所定圧力だけ加圧するのに要する時間と、対応のパラメータdTwの値からなる異なる複数個のレコードが格納される。なお、パラメータdTaおよびdTwの詳細は後述する。
【0043】
(処理フローチャート)
図7は、本発明の実施の形態に係る血圧測定の処理フローチャートである。図7を参照して、血圧測定の処理について説明する。被測定者は、測定部位にカフ20を巻付けた状態で、測定スイッチ41Bを操作すると想定する。
【0044】
なお、テーブル431には各被測定者について、十分な件数分の測定データが格納されていると想定する。また、カフ200の空気袋21からは空気が十分に排気されていると想定する。
【0045】
被測定者は、電源スイッチ41Aを操作し、続いて使用者選択スイッチ41Eを操作する(ステップST1)。これにより、電源ONの指示と、被測定者のIDがCPU100に出力される。CPU100は、電源ONの指示に応答して電源44を、各部に電力を供給するように制御する。また、CPU100は、フラッシュメモリ43の作業用領域を初期化し、圧力センサの0mmHg調整を行う(ステップST2)。
【0046】
初期化後には、パラメータ取得部113は、血圧測定の加圧目標値を決定するためのパラメータを取得する。
【0047】
具体的には、パラメータ取得部113は、ステップST1で被測定者が入力したIDに対応する所定個数(例えば、現在から7日前までの1週間分)の測定データを読出す(ステップST3)。そして、各測定データについて、当該測定データの推定収縮期血圧ESYSと収縮期血圧SYSの差を算出して、算出した各測定データについての差の平均値を算出する(ステップST4)。続いて、算出した平均値から(式1)を用いて加圧目標値を決定するためのオフセット値βを計算する(ステップST5)。このとき、(式2)を用いて、オフセット値βではなく加圧目標値に対する比例定数に相当する係数αを算出してもよい。式中の変数AβとAαは比例定数を指し、変数BβとBαはオフセット値を指し、変数Nはデータ個数を指す。
【0048】
【数1】
【0049】
【数2】
【0050】
なお、オフセット値βまたは係数αを計算するためのパラメータとしては、推定収縮期血圧ESYSと収縮期血圧SYSの差を用いたが、これに限定されず、他の値を用いてもよい。他の値を用いる方法については後述する。
【0051】
次に、被測定者は、カフ20を測定部位に巻付け、測定スイッチ41Bを操作することにより、CPU100は測定開始指示を入力する(ステップST6)。測定開始指示に応答して、加圧制御部115はポンプ駆動回路53および弁駆動回路54に制御信号を出力する。これにより、弁52は閉じて、ポンプ51によってカフ圧の加圧が開始し、カフ圧は所定速度で加圧される(ステップST7)。
【0052】
この加圧過程において、パラメータ取得部113はパラメータdTwとdTaの値を取得し、推定部402は推定収縮期血圧ESYSを取得する(ステップST8)。取得されたパラメータdTwとdTaの値、および推定収縮期血圧ESYSは、対応付けてテーブル431に格納される。この取得手順の詳細は後述する。
【0053】
加圧目標値取得部114は、パラメータ取得部113から推定収縮期血圧ESYSを入力し、推定収縮期血圧ESYSと、ステップST5で算出されたオフセット値βとを用いて、(式3)に従って加圧目標値Tpcを算出する(ステップST9)。加圧目標値Tpcは、加圧制御部115と減圧制御部116に出力される。
【0054】
加圧目標値Tpcは、オフセット値βではなく(式2)で算出された係数αと、推定収縮期血圧ESYSとを用いて、(式4)に従って算出されてもよい。なお、これら式中の30mmHgは、オシロメトリック法よる正確な血圧測定のために、推定収縮期血圧ESYSよりも十分に高い圧力まで加圧するために必要とされる値であるが、この値に限定されるものではない。
【0055】
【数3】
【0056】
【数4】
【0057】
圧力検出部112は、入力する圧力信号に基づきカフ圧を検出し、検出結果を、加圧制御部115、減圧制御部116、パラメータ取得部113、血圧決定部117に出力する。加圧制御部115と減圧制御部116は、圧力検出部112からのカフ圧の値と、加圧目標値取得部114からの加圧目標値Tpcを入力する。入力した両値を比較し、比較結果に基づき(カフ圧≧加圧目標値)の条件が成立しないと判定されると(ステップST10でNO)、処理はステップST7に移行し、ポンプ51によりカフ圧を加圧する。このように、ステップST7〜ステップST10からなるループ処理により、(カフ圧≧加圧目標値)の条件が成立すると判定されるまでカフ圧の加圧が継続する。
【0058】
なお、加圧目標値Tpcが既に算出されている、すなわちパラメータdTwとdTaの値、および推定収縮期血圧ESYSが取得されている場合には、このループ処理におけるステップST8では、これら値の取得は省略される。
【0059】
一方、(カフ圧≧加圧目標値)の条件が成立すると判定すると(ステップST10でYES)、制御信号を出力する。制御信号によってポンプ51は停止し、その後、弁52が徐々に開く。これにより、カフ圧の加圧過程は終了し、減圧過程に移行する。
【0060】
減圧過程では、血圧および脈拍数の測定がされる。具体的には、減圧過程において脈波検出部118は、カフ圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分(圧脈波という)を抽出し、血圧決定部117は抽出した振動成分から所定の演算により血圧値(収縮期血圧SYS、拡張期血圧DIA)と、脈拍数を算出する(ステップST12)。
【0061】
また、減圧過程において、加圧不足判定部401は、脈波検出部118から脈波信号を入力し、入力した脈波信号に基づき加圧不足であるか否かを判定する。判定結果は、加圧不足情報426としてテーブル431に格納される(ステップST13)。
【0062】
CPU100は、血圧値が決定されたか否かを判定する(ステップST16)。未だ決定していないと判定すると(ステップST16でNO)、処理を、ステップST12に戻し、減圧過程を継続する。これにより、血圧値が決定したと判定されるまでステップST12〜ST16の処理が繰返されて、減圧過程が継続する。
【0063】
一方、血圧値が決定したと判定されると(ステップST16でYES)、減圧制御部116は制御信号を出力する。これにより、弁52は完全に開放される。したがって、カフ20の空気袋21内の空気は全て排気される。
【0064】
算出された血圧値および脈拍数は、血圧決定部117から表示制御部120に出力される。したがって、血圧値および脈拍数は表示部40に表示される(ステップST17)。
【0065】
また、算出された血圧値および脈拍数は、血圧決定部117からメモリ処理部119に出力される。これにより、血圧値および脈拍数は、テーブル431に格納されている推定収縮期血圧ESYSを含む各種パラメータの値(今回の測定のステップST8で算出された値)と対応付けて、テーブル431に格納される(ステップST18)。これにより、一連の処理は終了する。
【0066】
(血圧決定の手順)
図8は、オシロメトリック法に従う血圧の決定手順を説明するための図である。オシロメトリック法に従う血圧の決定手順は公知の手順であるので、ここでは簡単に説明する。
【0067】
オシロメトリック法は、カフ圧上に重畳する脈波を捕捉し、この振幅変化を基に血圧を算出する方法である。振幅変化は、図8に示すように、カフ圧が収縮期血圧に対して十分に高い時には小さく、その後、カフ圧を減圧するに従って増大し、カフ圧が拡張期血圧と等しくなる直前(ほぼ、カフ圧=平均血圧とされる)で最大となる。つまり、脈波極大点P点となる。その後、振幅は減少していく。この振幅変化を基に血圧を算出する。
【0068】
血圧決定部117は、図8で示すように、圧力検出部112から入力するカフ圧変化に伴う脈波振幅の変化(包絡線)をフラッシュメモリ43の所定領域を用いて生成する。この包絡線は、カフ圧がほぼ平均血圧と等しくなった点で最大となり(P点)、その圧力点から離れるに伴い振幅が減少する。血圧を算出するには、カフ圧が収縮期血圧・拡張期血圧と等しくなる点(S点・D点)を検出する必要がある。この2点は「脈波振幅が最大振幅値の相対比と等しい点」として決定される。カフ圧は加圧目標値まで加圧され、その後除々に減圧されるから、S点、P点、D点の順に通過することとなる。従って、血圧決定部117はS点およびD点を検出して収縮期血圧および拡張期血圧を取得したとき、ステップST16において、血圧決定と判定される。
【0069】
(収縮期血圧の推定)
推定部402は、脈波検出部118からの出力に基づき収縮期血圧を推定する。
【0070】
具体的には、脈波検出部118は、カフ圧に重畳した振動成分である脈波信号を抽出して出力する。脈波検出部118は、ハイパスフィルタ機能を有し、当該ハイパスフィスタ機能を用いてカフ圧から各脈波を抽出して出力する。
【0071】
推定部402は、脈波検出部118から脈波を入力し、入力した脈波について起点・終点を一拍毎に検出し、脈波振幅を算出する。そして、加圧過程で入力する脈波のうち、最大振幅をもつものを特定し、その振幅値に基づき収縮期血圧を算出する。これにより、推定収縮期血圧が取得される。特定された最大振幅の値は、テーブル431に脈波振幅最大値425として格納される。
【0072】
次に、パラメータ取得部113による他の種類のパラメータの取得手順について説明する。
【0073】
上述した加圧目標の取得に用いるオフセット値βと係数αは、推定収縮期血圧ESYSと収縮期血圧SYSの差の平均を用いて算出したが(ステップST9)、収縮期血圧を用いた算出方法に限定されない。例えば、以下のように、加圧不足の判定結果、カフ20の測定部位に対する巻付け強度のパラメータ、およびカフ20が巻付けられる測定部位の周囲長に係るパラメータを用いてもよい。以下、これらパラメータ値の取得と、加圧目標値の算出式について説明する。
【0074】
(加圧不足パラメータの取得と算出式)
加圧不足判定部401は、減圧過程に移行する前に、測定部位が十分に加圧されたか否かを判定する(図7のステップST13)。
【0075】
図9は、本発明の実施の形態に係る加圧不足判定処理のフローチャートである。図9を参照して、加圧不足判定部401は、カフ圧の減圧過程に移行した後に、脈波検出部118から入力する一拍目の脈波の振幅と、加圧中に捕捉した最大脈波振幅とを比較して加圧不足の判定を行う。まず、カフ加圧不足検出のためのしきい値THを算出する(ステップST31)。しきい値THは、加圧中の最大脈波振幅に、係数Kを乗ずることによって算出する。つまり、TH=(加圧中最大脈波振幅)×K1×K2に従って算出する。
【0076】
加圧目標値まで加圧した場合であっても、測定部位の肉質(硬い、柔らかい)によって加圧不足である自体が生じることもある。したがって、加圧不足判定の結果は、測定部位の生体の特徴(肉質など)を表わす指標として捉えることができる。
【0077】
ここで、係数K1は脈波検出部118のハイパスフィルタの特性などに依存する係数であり、予め定められた値を指す。また、係数K2は、減圧過程において収縮期血圧SYSを算出するための脈波振幅の相対比(図8で説明した相対比に等しい)を指す。
【0078】
加圧中の最大脈波振幅値は、上述したように推定部402により取得された脈波振幅最大値425をテーブル431から読出すことにより取得される。
【0079】
加圧不足判定部401は、加圧過程が終了し減圧開始直後の脈波振幅の振幅値(ここでは第1拍目の脈波振幅値AMP(1)としている)を検出し、一拍目の脈波振幅値AMP(1)としきい値THとを比較する。比較結果に基づき(AMP(1)<TH)の条件式が成立すると判定すると(ステップST32でYES)、加圧十分(最高血圧検出のためのデータあり)と判定され(ステップST33)、判定結果がテーブル431に加圧不足情報426として格納される(ステップST35)。その後、処理を元の処理に戻す。
【0080】
一方、比較結果に基づき(AMP(1)<TH)の条件式が成立しないと判定すると(ステップST32でNO)、加圧不足であると判定される。判定結果がテーブル431に加圧不足情報426として格納される(ステップST35)。その後、処理を元の処理に戻す。
【0081】
このように加圧不足判定部401は、減圧開始直後の一拍目の脈波振幅がしきい値より大きければ、加圧がS点(図8参照)に対応するカフ圧より低い、即ち正確な血圧測定のための加圧が不足していると判定する。
【0082】
上述のように取得された加圧不足判定の結果を用いて、加圧目標値取得部114は、(式5)と(式6)に従って、オフセット値βと係数αを算出する。算出されたオフセット値βを用いて(式3)に従って加圧目標値Tpcを算出し、または係数αを用いて(式4)に従って加圧目標値Tpcを算出する。ここで、変数Infは加圧不足判定結果を表す変数であり、加圧不足時は“1”が、加圧十分時は“0”がセットされる。
【0083】
(式5)と(式6)では、所定期間(例えば1週間)での合計が多いほど、すなわち右辺の第2項の値が大きいほど、オフセット値βおよび係数αの値が大きくなるように変数AβとAαの値、および変数BβとBαの値を調整すればよい。
【0084】
【数5】
【0085】
【数6】
【0086】
(巻付け強度と周囲長パラメータの取得)
パラメータ取得部113は、カフ20が巻付けされる測定部位に対するカフ巻付け強度422を取得し、腕周情報として測定部位周囲長424を取得する。
【0087】
具体的には、カフ圧を20〜30mmHg変化させるのに要する時間を用いて測定部位周囲長424のパラメータdTwを取得する。つまり、当該時間に基づきテーブル433を検索して対応するパラメータdTwの値を読出す。また、カフ圧を0〜20mmHg変化させるのに要する時間を用いてカフ巻付け強度422のパラメータdTaを取得する。つまり、当該時間に基づきテーブル432を検索して対応するパラメータdTaの値を読出す。
【0088】
ここで、巻付け強度と腕周長について説明する。図10は、本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘ユル’巻きの場合)のグラフである。図11は、本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘適切’巻きの場合)のグラフである。図12は、本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘キツ’巻きの場合)のグラフである。
【0089】
図10〜図12には、血圧測定装置1を用いて多くの被験者からサンプリングしたデータに基づき検出した特性を示す。測定部位に対するカフ20による与圧は血圧測定のための適正レベルである‘適切’巻きの状態であることが要求される。‘適切’巻きは、測定部位の腕周長に対して巻付けられたカフ20の内径(測定部位である手首断面の径)による円周の長さにほぼ等しい状態を指す。腕周長に対して円周の長さが短い場合にはカフ20が測定部位にきつめに巻かれて測定部位に対する与圧は適性レベルよりも高めである‘キツ’巻きの状態となる。逆に、長い場合にはカフ20が測定部位にゆるく巻かれて測定部位に対する与圧は適性レベルよりも低い‘ユル’巻きの状態となる。
【0090】
このような‘キツ’巻きおよび‘ユル’巻きの状態で血圧測定した場合には、測定部位の動脈に対して適切な加圧をすることができない。したがって、‘適切’巻付けられた状態で血圧測定することが要求される。
【0091】
(巻付け強度の推定の原理)
測定部位に被測定者が手動で巻付けたカフ20のカフ圧と、カフ20内へ供給する流体(本実施の形態では、空気)の容積変化に基づき、カフ圧が、圧力P2から圧力P3になるまでに必要な空気は、流体容積ΔV23であるとする。加圧過程でポンプ51が一定回転数の下で流体容積ΔV23の空気を供給するのに要する加圧時間は、一定時間(ここでは、時刻V2〜時刻V3の時間V23)となる。しかしながら、時間V23は、測定部位に対するカフの巻付け強度によって、すなわち巻付けられた状態のカフ20の容量に依存して変化する。
【0092】
たとえば、周囲長が異なる測定部位に対して、同程度の巻付け強度でカフ20を巻付けた場合、図10〜図12のように、周囲長が短い(細腕)ほど時間V23は小さくなり、周囲長が長い(太腕)ほどV23は大きくなる。
【0093】
パラメータ取得部113は、加圧開始後、検出されるカフ圧に基づき、カフ圧が0mmHg(圧力P2)から20mmHg(圧力P3)まで変化するのに要した時間を計時部45によって計測する。そして、計測した時間に基づきテーブル432を検索することにより、対応するパラメータdTaの値を取得する。
【0094】
同様にして、周囲長がほぼ同じである測定部位に対して、異なる巻付け強度でカフ20を巻付けた場合、図10〜図12のように、巻付け強度が“キツイ”ほど時間V23は小さくなり、“ユルイ”ほど時間V23は大きくなる。
【0095】
パラメータ取得部113は、加圧開始後、検出されるカフ圧に基づき、カフ圧が20mmHg(圧力P2)から30mmHg(圧力P3)まで変化するのに要した時間を計時部45によって計測する。そして、計測した時間に基づきテーブル433を検索することにより、対応するパラメータdTwの値を取得する。
【0096】
パラメータdTwは、測定部位周囲長や測定部位肉質と相関があり、周囲長が大きい、肉質が柔らかい場合には値が小さく、また、パラメータdTaはカフ巻きつけ強度が“ユルイ”ほど小さい値となる。取得したパラメータdTwおよびdTaは、テーブル431に測定部位周囲長424およびカフ巻付け強度422として格納される。
【0097】
なお、パラメータdTwは、加圧過程で取得する脈波振幅値に基づき算出してもよい。これは、測定部位周囲長は、脈波振幅値と相関することが知られているからである。
【0098】
このように被測定者の生体の特徴に関する情報から、加圧目標値を算出するためのパラメータを取得することができる。
【0099】
パラメータ取得部113は、テーブル431から読出したパラメータdTwおよびdTaを用いて、(式7)〜(式10)に従って、オフセット値βと係数αを算出する。算出したオフセット値βまたは係数αを用いて、(式3)と(式4)に従って加圧目標値Tpcを算出する。
【0100】
【数7】
【0101】
【数8】
【0102】
【数9】
【0103】
【数10】
【0104】
なお、測定部位周囲長が長い、測定部位の肉質が柔らかい、カフ20の巻きつけ強度が“ユルイ”場合は、測定部位に対する圧迫力が不足し、推定収縮期血圧ESYSが高く算出される傾向がある。このとき比例定数AとオフセットBは、オフセット値βと係数αが大きくなるように設定し、その逆の場合は、オフセット値βと係数αが小さくなるように設定すればよい。
【0105】
(脈波振幅最大値を用いた算出)
加圧過程で検出される脈波振幅最大値425は測定部位周囲長や測定部位肉質と相関があり、周囲長が大きい、肉質が柔らかい場合には値が小さく検出され、その逆の場合には値が大きく検出される。
【0106】
パラメータ取得部113は、テーブル431から読出した脈波振幅最大値425を用いて、(式11)と(式12)に従ってオフセット値βと係数αを算出する。
【0107】
【数11】
【0108】
【数12】
【0109】
(動脈硬化指標を用いたパラメータの取得)
加圧目標値Tpcを算出するために用いるオフセット値βと係数αは、動脈硬化指標を用いてもよい。動脈硬化指標を用いる場合には、動脈硬化が進んでいるほどオフセット値βと係数αを小さくするように算出する。算出式を(式13)と(式14)に示す。
【0110】
これは動脈容積変化は、加圧過程と減圧過程において血管弾性に起因したヒステリシスを持つため、通常、推定収縮期血圧ESYSは低く算出されるからである。動脈硬化が進むと血管弾性が失われるためヒステリシスは小さくなり推定収縮期血圧ESYSと収縮期血圧SYSとは一致するようになる。したがって、上述した推定収縮期血圧ESYSと収縮期血圧SYSとの差((式1)と(式2)を参照)は、被測定者の動脈硬化指標を表すと言える。
【0111】
【数13】
【0112】
【数14】
【0113】
上述の手順では、加圧目標値を導出するために用いるオフセット値βと係数αは、1種類のパラメータを用いて算出したが、(式15)と(式16)のように2種類以上を組合わせて算出してもよい。
【0114】
【数15】
【0115】
【数16】
【0116】
なお、オフセット値βと係数αを算出するためのパラメータは、テーブル431から読出した情報ではなく、血圧測定装置1の外部装置から入力された測定部周囲長(例えば、メジャーで測定した長さ)、測定部位肉質、動脈硬化指標(たとえば、PWM値)などを用いて算出してもよい。
【0117】
本実施の形態によれば、自動で加圧目標値まで加圧を行う血圧測定装置1において、測定中に取得した、もしくは外部から入力された被測定者の生体の特徴に関する情報、より特定的には被測定者の固有の血圧変動から独立した生体の特徴に関する情報から、加圧目標値を算出するためのパラメータを取得することができる。
【0118】
(変形例)
本実施の形態における血圧測定装置1が行なう上述した血圧測定の方法は、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CPU100に付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(compact disk read only memory)、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体132にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、CPU100がアクセス可能なハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、血圧測定装置1をネットワークに接続することも可能であり、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0119】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされてCPU100により読出されて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0120】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0121】
1 血圧測定装置、112 圧力検出部、113 パラメータ取得部、114 加圧目標値取得部、115 加圧制御部、116 減圧制御部、117 血圧決定部、118 脈波検出部、119 メモリ処理部、120 表示制御部、132 記録媒体、401 加圧不足判定部、402 推定部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、血圧測定装置に関し、特に、加圧目標を取得する機能を備える血圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は循環器系疾患のリスクを解析するための指標の一つである。血圧に基づいてリスク解析を行うことは、たとえば脳卒中、心不全、心筋梗塞などの心血管系の疾患の予防に有効である。
【0003】
従来は医療機関で測定される血圧(随時血圧)により診断が行われていた。しかしながら近年の研究により、家庭で測定する血圧(家庭血圧)が随時血圧より循環器系疾患の診断に有用であることが判明してきた。それに伴い、国内では、家庭で使用する血圧計が3000万台以上普及している。
【0004】
家庭向けの血圧計の多くがオシロメトリック法またはマイクロホン法による血圧測定方法を採用する。オシロメトリック法による血圧測定では、カフを上腕などの測定部位に巻付け、カフの内圧(カフ圧)を収縮期血圧より所定圧(たとえば30mmHg)だけ高く加圧し、その後、徐々にまたは段階的にカフ圧を減圧していく。この減圧過程における動脈の容積変化をカフ圧に重畳した圧変化(圧脈波振幅)として検出し、この圧脈波振幅の変化より収縮期血圧および拡張期血圧が決定される。なお、減圧過程によらず、カフ圧の加圧中に発生する圧脈波振幅を検出して血圧を測定することも可能である。
【0005】
一方、マイクロホン法は、オシロメトリック法と同様にカフを上腕などの測定部位に巻付け、カフ圧を収縮血圧より所定圧だけ高く加圧する。その後、徐々にカフ圧を減圧していく過程で動脈より発生するコロトコフ音をカフ内に設けたマイクロホンにより検出し、コロトコフ音が発生した時点に検出されるカフ圧を収縮期血圧、コロトコフ音が減弱または消滅した時点で検出されるカフ圧を拡張期血圧として決定する。
【0006】
これらの血圧測定方法において正確に血圧を測定するためには、減圧を開始する前に収縮期血圧に比べて十分に高い目標値まで加圧する必要がある(たとえば収縮期血圧+30mmHg)。この目標値の決定方法として、加圧中に収縮期血圧を推定し、最適な加圧目標値を決定する手順が提案されている(特許文献1:特開2001−70263号公報)。しかしながら、被測定者毎に適切な目標値(収縮期血圧)を推定することは困難であった。
【0007】
適切な加圧目標値が取得できない場合には、加圧が不十分となる。この様な加圧が不十分であるケースに対しては、脈波情報から加圧不足を判定し異常として終了処理、もしくは再度加圧を行う方法が提案されている(特許文献2:特開2006−288628号公報、特許文献3:特開平5−111468号公報)。また、スイッチ操作により加圧目標値を設定する方法も提案されている(特許文献4:特開2006−288627号公報)。
【0008】
しかしながら、いずれの方法においても、加圧不足となる被測定者に関しては、再測定または再加圧が必要となり、測定が煩わしい、測定に時間がかかるなどという課題が残されていた。
【0009】
また、前回の測定によって取得した収縮期血圧から加圧目標値を決定する方法も提案されている(特許文献5:特開2006−102266号公報)が、この方法であっても、血圧変動の大きい被測定者に対しては正確に加圧目標値を決定することができない。
【0010】
また、加圧不足ではなく、過剰に加圧するケースに対処するために、加圧終了後から脈波が検出されるまでの期間に急速排気を行う血圧測定装置(特許文献6:特開平3−289935号公報)が提案されている。したがって、過剰に加圧されるケースでは測定部位が加圧されている期間を短縮できるが、被測定者毎に適切な目標値(収縮期血圧)を推定することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001-70263号公報
【特許文献2】特開2006−288628号公報
【特許文献3】特開平5−111468号公報
【特許文献4】特開2006−288627号公報
【特許文献5】特開2006−102266号公報
【特許文献6】特開平3−289935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえに、この発明の目的は、適切な加圧目標を取得することができる血圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、被測定者の所定部位に装着されるカフと、カフ内のカフ圧を加圧または減圧することにより調整するための圧調整部と、調整されるカフ圧を検出するための圧力検出部と、圧力検出部によって検出されるカフ圧から血圧を算出することにより、血圧測定するための制御部と、を備える。
【0014】
制御部は、カフ圧の加圧過程において、血圧測定におけるカフ圧変動から独立した被測定者の生体の特徴に関連した情報を用いて、血圧測定の目標圧力を取得するための目標取得部と、加圧過程において検出されるカフ圧が目標圧力に達した後のカフ圧の減圧過程において、圧力検出部により検出されるカフ圧を用いて被測定者の血圧を算出するための算出部と、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被測定者について適切な加圧目標を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る血圧測定装置の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る血圧測定装置のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る血圧測定装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るメモリに格納された測定データを説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るカフの巻付け強度のパラメータ値を決定するために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る測定部位周囲長のパラメータ値を決定するために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る血圧測定の処理フローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係るオシロメトリック法に従う血圧の決定手順を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る加圧不足判定処理のフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘ユル’巻きの場合)のグラフである。
【図11】本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘適切’巻きの場合)のグラフである。
【図12】本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘キツ’巻きの場合)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては同一または対応する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰返さない。
【0018】
(外観および構成)
本発明の実施の形態に係る血圧測定装置1の外観および構成について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る血圧測定装置1の外観斜視図である。図1を参照して、血圧測定装置1は、本体部10と、被測定者の手首に巻き付け可能なカフ20とを備える。本体部10はカフ20に取り付けられている。本体部10の表面には、たとえば液晶等により構成される表示部40と、ユーザ(被測定者)が指示を血圧測定装置1に与えらるために操作されて、当該操作を受付ける操作部41とが配置されている。操作部41は、複数のスイッチを含む。
【0020】
なお、本実施の形態において、カフ20は、被測定者の手首に装着されるものとして説明する。しかしながら、カフ20が装着される部位(測定部位)は、手首に限定されるものではなく、たとえば、上腕であってもよい。
【0021】
また、本実施の形態における血圧測定装置1は、図1に示されるように、本体部10がカフ20に取り付けられた形態を例に説明する。しかしながら、上腕式の血圧計で採用されているような、本体部10とカフ20とがエアチューブ(図2においてエアチューブ31)によって接続される形態のものであってもよい。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態に係る血圧測定装置1のハードウェア構成を表わすブロック図である。図2を参照して、血圧測定装置1のカフ20は、空気袋21を含む。
【0023】
空気袋21は、エアチューブ31を介して、エア系30に接続される。本体部10は、上述の表示部40および操作部41に加え、エア系30と、各部を集中的に制御し、各種演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)100と、CPU100に所定の動作をさせるプログラムや各種データを記憶するためのメモリ部42と、測定された血圧を記憶するための不揮発性メモリ(たとえばフラッシュメモリ)43と、CPU100に電力を供給するための電源44と、計時動作を行なう計時部45と、着脱可能な記録媒体132からプログラムやデータの読出しおよび書込みをするためのインターフェイス部46とを含む。
【0024】
操作部41は、電源をONまたはOFFするための操作を受付ける電源スイッチ41Aと、測定開始の操作を受付けるための測定スイッチ41Bと、測定停止の指示の操作を受付けるための停止スイッチ41Cと、フラッシュメモリ43に格納された血圧などの情報を読出し表示部40に表示させる操作を受付けるためのメモリスイッチ41Dと、血圧測定装置1のユーザ(被測定者)を選択的に指定する操作を受付けるための使用者選択スイッチ41Eとを有する。
【0025】
本実施の形態では、血圧測定装置1は複数の被測定者により共用されることから、使用者選択スイッチ41Eを備えるが、共用されない場合には使用者選択スイッチ41Eは省略されてよい。また、測定スイッチ41Bを、電源スイッチ41Aと兼用してもよい。その場合には、測定スイッチ41Bは省略することができる。
【0026】
エア系30は、空気袋21内の圧力(以下、カフ圧という)を検出するための圧力センサ32と、カフ圧を加圧するために、空気袋21に空気を供給するためのポンプ51と、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される弁52とを含む。
【0027】
本体部10は、エア系30に関連して、発振回路33と、ポンプ駆動回路53と、弁駆動回路54とをさらに含む。
【0028】
圧力センサ32は、静電容量形の圧力センサであり、カフ圧により容量値が変化する。発振回路33は、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号(以下、圧力信号という)をCPU100に出力する。CPU100は、発振回路33から得られる信号を圧力に変換し圧力を検知する。ポンプ駆動回路53は、CPU100から与えられる制御信号に基づいてポンプ51を制御する。弁駆動回路54はCPU100から与えられる制御信号に基づいて弁52の開閉を制御する。
【0029】
なお、カフ20には空気袋21が含まれることとしたが、カフ20に供給される流体は空気に限定されるものではなく、たとえば液体やゲルであってもよい。あるいは、流体に限定されるものではなく、マイクロビーズなどの均一な微粒子であってもよい。
【0030】
(機能構成)
図3は、本発明の実施の形態に係る血圧測定装置1の機能構成を示す機能ブロック図である。図3を参照して、CPU100は、発振回路33からの出力信号を入力する脈波検出部118および圧力検出部112と、血圧測定に係る各種パラメータを取得するパラメータ取得部113と、血圧測定に際しての加圧目標を取得する加圧目標値取得部114と、ポンプ駆動回路53と弁駆動回路54とに制御信号を出力する加圧制御部115および減圧制御部116と、血圧値を決定する血圧決定部117と、フラッシュメモリ43のデータを読み書き(アクセス)するためのメモリ処理部119と、表示部40の表示を制御する表示制御部120と、を備える。
【0031】
加圧制御部115および減圧制御部116は、カフ圧を調整するために、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54に制御信号を送信する。具体的には、カフ圧を加圧し、またカフ圧を減圧するための制御信号を出力する。本実施の形態では、カフ圧を一定速度で減圧する過程において、血圧決定部117による血圧導出処理が行なわれる。脈波検出部118は、発振回路33からの圧力信号に重畳される脈波信号を検出する。圧力検出部112は、発振回路33からの圧力信号を圧力値に変換し、出力する。
【0032】
パラメータ取得部113は、血圧変動から独立した情報であって且つ被測定者の生体の特徴に係る情報(以下、生体情報という)から、加圧目標値を取得するためのパラメータを取得する機能を有する。パラメータ取得部113は、加圧不足判定部401と、収縮期血圧を推定するための推定部402とを有する。
【0033】
加圧目標値取得部114は、パラメータ取得部113が取得したパラメータを用いて血圧測定時の加圧目標値を取得する。
【0034】
血圧決定部117は、血圧測定時に圧力検出部112から入力する圧力値と、脈波検出部118から入力する脈波信号などを用いて血圧(収縮期血圧および拡張期血圧)、ならびに脈拍数を算出する。脈拍数は、脈波信号を用いて公知の手順に従って算出される。
【0035】
(測定データの格納例)
図4は、本発明の実施の形態に係るメモリに格納された測定データを説明する図である。血圧値を含む測定データは、フラッシュメモリ4のテーブル431に格納されて、血圧測定装置1の各部は、メモリ処理部119を介してテーブル431のデータをアクセス(読み書き)する。
【0036】
テーブル431には、血圧測定毎に、被測定者を識別するIDデータと、測定日時421、カフ巻付け強度422、推定収縮期血圧423、測定部位周囲長424、脈波振幅最大値425、加圧不足情報426および血圧値・脈拍数427が対応付けて格納される。
【0037】
IDデータは、使用者選択スイッチ41Eの操作に従う識別子を指す。測定日時421は、血圧測定時に、より典型的には血圧測定終了時に計時部45から受理した計時データに基づく日時を指す。カフ巻付け強度422は、測定部位に対するカフ20の巻付けの強度に従うパラメータを指す。推定収縮期血圧423は、血圧測定開始後の圧力信号に基づき、推定部402により推定された収縮期血圧ESYSを指す。測定部位周囲長は、カフが巻付けられている測定部位の周囲長に従うパラメータを指す。脈波振幅最大値425は、カフ圧を加圧中に脈波検出部118により検出される脈波の最大振幅を指す。加圧不足情報426は、血圧測定のための加圧が十分であったか否かの別を示し、加圧が十分であれば“OK”、不十分であれば“Err”が設定される。血圧値・脈拍数427は、血圧測定時に血圧決定部117により取得された血圧(収縮期血圧SYSおよび拡張期血圧DIA)値および脈拍数PLSを指す。
【0038】
上述のカフ巻付け強度422、測定部位周囲長424、脈波振幅最大値425および加圧不足情報426は、後述するようにパラメータ取得部113により取得される。
【0039】
ここでは、これらデータをテーブル形式で格納することにより各データを対応付けているが、フラッシュメモリ43において対応付けが特定できれば、格納形式はテーブルに限定されない。
【0040】
(パラメータのテーブル)
図5は、本発明の実施の形態に係るカフ20の巻付け強度のパラメータ値を決定するために参照されるテーブルの一例を示す図である。図6は、本発明の実施の形態に係る測定部位周囲長のパラメータ値を決定するために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【0041】
これらテーブルのデータは、実験により予め取得された値を指す。これらテーブルのデータは、メモリ処理部119により参照(読出し)される。
【0042】
図5を参照してテーブル432には、カフ圧を所定圧力だけ加圧するのに要する時間と、対応のパラメータdTaの値からなる異なる複数個のレコードが格納される。また、図6を参照してテーブル433には、カフ圧を所定圧力だけ加圧するのに要する時間と、対応のパラメータdTwの値からなる異なる複数個のレコードが格納される。なお、パラメータdTaおよびdTwの詳細は後述する。
【0043】
(処理フローチャート)
図7は、本発明の実施の形態に係る血圧測定の処理フローチャートである。図7を参照して、血圧測定の処理について説明する。被測定者は、測定部位にカフ20を巻付けた状態で、測定スイッチ41Bを操作すると想定する。
【0044】
なお、テーブル431には各被測定者について、十分な件数分の測定データが格納されていると想定する。また、カフ200の空気袋21からは空気が十分に排気されていると想定する。
【0045】
被測定者は、電源スイッチ41Aを操作し、続いて使用者選択スイッチ41Eを操作する(ステップST1)。これにより、電源ONの指示と、被測定者のIDがCPU100に出力される。CPU100は、電源ONの指示に応答して電源44を、各部に電力を供給するように制御する。また、CPU100は、フラッシュメモリ43の作業用領域を初期化し、圧力センサの0mmHg調整を行う(ステップST2)。
【0046】
初期化後には、パラメータ取得部113は、血圧測定の加圧目標値を決定するためのパラメータを取得する。
【0047】
具体的には、パラメータ取得部113は、ステップST1で被測定者が入力したIDに対応する所定個数(例えば、現在から7日前までの1週間分)の測定データを読出す(ステップST3)。そして、各測定データについて、当該測定データの推定収縮期血圧ESYSと収縮期血圧SYSの差を算出して、算出した各測定データについての差の平均値を算出する(ステップST4)。続いて、算出した平均値から(式1)を用いて加圧目標値を決定するためのオフセット値βを計算する(ステップST5)。このとき、(式2)を用いて、オフセット値βではなく加圧目標値に対する比例定数に相当する係数αを算出してもよい。式中の変数AβとAαは比例定数を指し、変数BβとBαはオフセット値を指し、変数Nはデータ個数を指す。
【0048】
【数1】
【0049】
【数2】
【0050】
なお、オフセット値βまたは係数αを計算するためのパラメータとしては、推定収縮期血圧ESYSと収縮期血圧SYSの差を用いたが、これに限定されず、他の値を用いてもよい。他の値を用いる方法については後述する。
【0051】
次に、被測定者は、カフ20を測定部位に巻付け、測定スイッチ41Bを操作することにより、CPU100は測定開始指示を入力する(ステップST6)。測定開始指示に応答して、加圧制御部115はポンプ駆動回路53および弁駆動回路54に制御信号を出力する。これにより、弁52は閉じて、ポンプ51によってカフ圧の加圧が開始し、カフ圧は所定速度で加圧される(ステップST7)。
【0052】
この加圧過程において、パラメータ取得部113はパラメータdTwとdTaの値を取得し、推定部402は推定収縮期血圧ESYSを取得する(ステップST8)。取得されたパラメータdTwとdTaの値、および推定収縮期血圧ESYSは、対応付けてテーブル431に格納される。この取得手順の詳細は後述する。
【0053】
加圧目標値取得部114は、パラメータ取得部113から推定収縮期血圧ESYSを入力し、推定収縮期血圧ESYSと、ステップST5で算出されたオフセット値βとを用いて、(式3)に従って加圧目標値Tpcを算出する(ステップST9)。加圧目標値Tpcは、加圧制御部115と減圧制御部116に出力される。
【0054】
加圧目標値Tpcは、オフセット値βではなく(式2)で算出された係数αと、推定収縮期血圧ESYSとを用いて、(式4)に従って算出されてもよい。なお、これら式中の30mmHgは、オシロメトリック法よる正確な血圧測定のために、推定収縮期血圧ESYSよりも十分に高い圧力まで加圧するために必要とされる値であるが、この値に限定されるものではない。
【0055】
【数3】
【0056】
【数4】
【0057】
圧力検出部112は、入力する圧力信号に基づきカフ圧を検出し、検出結果を、加圧制御部115、減圧制御部116、パラメータ取得部113、血圧決定部117に出力する。加圧制御部115と減圧制御部116は、圧力検出部112からのカフ圧の値と、加圧目標値取得部114からの加圧目標値Tpcを入力する。入力した両値を比較し、比較結果に基づき(カフ圧≧加圧目標値)の条件が成立しないと判定されると(ステップST10でNO)、処理はステップST7に移行し、ポンプ51によりカフ圧を加圧する。このように、ステップST7〜ステップST10からなるループ処理により、(カフ圧≧加圧目標値)の条件が成立すると判定されるまでカフ圧の加圧が継続する。
【0058】
なお、加圧目標値Tpcが既に算出されている、すなわちパラメータdTwとdTaの値、および推定収縮期血圧ESYSが取得されている場合には、このループ処理におけるステップST8では、これら値の取得は省略される。
【0059】
一方、(カフ圧≧加圧目標値)の条件が成立すると判定すると(ステップST10でYES)、制御信号を出力する。制御信号によってポンプ51は停止し、その後、弁52が徐々に開く。これにより、カフ圧の加圧過程は終了し、減圧過程に移行する。
【0060】
減圧過程では、血圧および脈拍数の測定がされる。具体的には、減圧過程において脈波検出部118は、カフ圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分(圧脈波という)を抽出し、血圧決定部117は抽出した振動成分から所定の演算により血圧値(収縮期血圧SYS、拡張期血圧DIA)と、脈拍数を算出する(ステップST12)。
【0061】
また、減圧過程において、加圧不足判定部401は、脈波検出部118から脈波信号を入力し、入力した脈波信号に基づき加圧不足であるか否かを判定する。判定結果は、加圧不足情報426としてテーブル431に格納される(ステップST13)。
【0062】
CPU100は、血圧値が決定されたか否かを判定する(ステップST16)。未だ決定していないと判定すると(ステップST16でNO)、処理を、ステップST12に戻し、減圧過程を継続する。これにより、血圧値が決定したと判定されるまでステップST12〜ST16の処理が繰返されて、減圧過程が継続する。
【0063】
一方、血圧値が決定したと判定されると(ステップST16でYES)、減圧制御部116は制御信号を出力する。これにより、弁52は完全に開放される。したがって、カフ20の空気袋21内の空気は全て排気される。
【0064】
算出された血圧値および脈拍数は、血圧決定部117から表示制御部120に出力される。したがって、血圧値および脈拍数は表示部40に表示される(ステップST17)。
【0065】
また、算出された血圧値および脈拍数は、血圧決定部117からメモリ処理部119に出力される。これにより、血圧値および脈拍数は、テーブル431に格納されている推定収縮期血圧ESYSを含む各種パラメータの値(今回の測定のステップST8で算出された値)と対応付けて、テーブル431に格納される(ステップST18)。これにより、一連の処理は終了する。
【0066】
(血圧決定の手順)
図8は、オシロメトリック法に従う血圧の決定手順を説明するための図である。オシロメトリック法に従う血圧の決定手順は公知の手順であるので、ここでは簡単に説明する。
【0067】
オシロメトリック法は、カフ圧上に重畳する脈波を捕捉し、この振幅変化を基に血圧を算出する方法である。振幅変化は、図8に示すように、カフ圧が収縮期血圧に対して十分に高い時には小さく、その後、カフ圧を減圧するに従って増大し、カフ圧が拡張期血圧と等しくなる直前(ほぼ、カフ圧=平均血圧とされる)で最大となる。つまり、脈波極大点P点となる。その後、振幅は減少していく。この振幅変化を基に血圧を算出する。
【0068】
血圧決定部117は、図8で示すように、圧力検出部112から入力するカフ圧変化に伴う脈波振幅の変化(包絡線)をフラッシュメモリ43の所定領域を用いて生成する。この包絡線は、カフ圧がほぼ平均血圧と等しくなった点で最大となり(P点)、その圧力点から離れるに伴い振幅が減少する。血圧を算出するには、カフ圧が収縮期血圧・拡張期血圧と等しくなる点(S点・D点)を検出する必要がある。この2点は「脈波振幅が最大振幅値の相対比と等しい点」として決定される。カフ圧は加圧目標値まで加圧され、その後除々に減圧されるから、S点、P点、D点の順に通過することとなる。従って、血圧決定部117はS点およびD点を検出して収縮期血圧および拡張期血圧を取得したとき、ステップST16において、血圧決定と判定される。
【0069】
(収縮期血圧の推定)
推定部402は、脈波検出部118からの出力に基づき収縮期血圧を推定する。
【0070】
具体的には、脈波検出部118は、カフ圧に重畳した振動成分である脈波信号を抽出して出力する。脈波検出部118は、ハイパスフィルタ機能を有し、当該ハイパスフィスタ機能を用いてカフ圧から各脈波を抽出して出力する。
【0071】
推定部402は、脈波検出部118から脈波を入力し、入力した脈波について起点・終点を一拍毎に検出し、脈波振幅を算出する。そして、加圧過程で入力する脈波のうち、最大振幅をもつものを特定し、その振幅値に基づき収縮期血圧を算出する。これにより、推定収縮期血圧が取得される。特定された最大振幅の値は、テーブル431に脈波振幅最大値425として格納される。
【0072】
次に、パラメータ取得部113による他の種類のパラメータの取得手順について説明する。
【0073】
上述した加圧目標の取得に用いるオフセット値βと係数αは、推定収縮期血圧ESYSと収縮期血圧SYSの差の平均を用いて算出したが(ステップST9)、収縮期血圧を用いた算出方法に限定されない。例えば、以下のように、加圧不足の判定結果、カフ20の測定部位に対する巻付け強度のパラメータ、およびカフ20が巻付けられる測定部位の周囲長に係るパラメータを用いてもよい。以下、これらパラメータ値の取得と、加圧目標値の算出式について説明する。
【0074】
(加圧不足パラメータの取得と算出式)
加圧不足判定部401は、減圧過程に移行する前に、測定部位が十分に加圧されたか否かを判定する(図7のステップST13)。
【0075】
図9は、本発明の実施の形態に係る加圧不足判定処理のフローチャートである。図9を参照して、加圧不足判定部401は、カフ圧の減圧過程に移行した後に、脈波検出部118から入力する一拍目の脈波の振幅と、加圧中に捕捉した最大脈波振幅とを比較して加圧不足の判定を行う。まず、カフ加圧不足検出のためのしきい値THを算出する(ステップST31)。しきい値THは、加圧中の最大脈波振幅に、係数Kを乗ずることによって算出する。つまり、TH=(加圧中最大脈波振幅)×K1×K2に従って算出する。
【0076】
加圧目標値まで加圧した場合であっても、測定部位の肉質(硬い、柔らかい)によって加圧不足である自体が生じることもある。したがって、加圧不足判定の結果は、測定部位の生体の特徴(肉質など)を表わす指標として捉えることができる。
【0077】
ここで、係数K1は脈波検出部118のハイパスフィルタの特性などに依存する係数であり、予め定められた値を指す。また、係数K2は、減圧過程において収縮期血圧SYSを算出するための脈波振幅の相対比(図8で説明した相対比に等しい)を指す。
【0078】
加圧中の最大脈波振幅値は、上述したように推定部402により取得された脈波振幅最大値425をテーブル431から読出すことにより取得される。
【0079】
加圧不足判定部401は、加圧過程が終了し減圧開始直後の脈波振幅の振幅値(ここでは第1拍目の脈波振幅値AMP(1)としている)を検出し、一拍目の脈波振幅値AMP(1)としきい値THとを比較する。比較結果に基づき(AMP(1)<TH)の条件式が成立すると判定すると(ステップST32でYES)、加圧十分(最高血圧検出のためのデータあり)と判定され(ステップST33)、判定結果がテーブル431に加圧不足情報426として格納される(ステップST35)。その後、処理を元の処理に戻す。
【0080】
一方、比較結果に基づき(AMP(1)<TH)の条件式が成立しないと判定すると(ステップST32でNO)、加圧不足であると判定される。判定結果がテーブル431に加圧不足情報426として格納される(ステップST35)。その後、処理を元の処理に戻す。
【0081】
このように加圧不足判定部401は、減圧開始直後の一拍目の脈波振幅がしきい値より大きければ、加圧がS点(図8参照)に対応するカフ圧より低い、即ち正確な血圧測定のための加圧が不足していると判定する。
【0082】
上述のように取得された加圧不足判定の結果を用いて、加圧目標値取得部114は、(式5)と(式6)に従って、オフセット値βと係数αを算出する。算出されたオフセット値βを用いて(式3)に従って加圧目標値Tpcを算出し、または係数αを用いて(式4)に従って加圧目標値Tpcを算出する。ここで、変数Infは加圧不足判定結果を表す変数であり、加圧不足時は“1”が、加圧十分時は“0”がセットされる。
【0083】
(式5)と(式6)では、所定期間(例えば1週間)での合計が多いほど、すなわち右辺の第2項の値が大きいほど、オフセット値βおよび係数αの値が大きくなるように変数AβとAαの値、および変数BβとBαの値を調整すればよい。
【0084】
【数5】
【0085】
【数6】
【0086】
(巻付け強度と周囲長パラメータの取得)
パラメータ取得部113は、カフ20が巻付けされる測定部位に対するカフ巻付け強度422を取得し、腕周情報として測定部位周囲長424を取得する。
【0087】
具体的には、カフ圧を20〜30mmHg変化させるのに要する時間を用いて測定部位周囲長424のパラメータdTwを取得する。つまり、当該時間に基づきテーブル433を検索して対応するパラメータdTwの値を読出す。また、カフ圧を0〜20mmHg変化させるのに要する時間を用いてカフ巻付け強度422のパラメータdTaを取得する。つまり、当該時間に基づきテーブル432を検索して対応するパラメータdTaの値を読出す。
【0088】
ここで、巻付け強度と腕周長について説明する。図10は、本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘ユル’巻きの場合)のグラフである。図11は、本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘適切’巻きの場合)のグラフである。図12は、本発明の実施の形態に係る圧力−加圧時間特性(‘キツ’巻きの場合)のグラフである。
【0089】
図10〜図12には、血圧測定装置1を用いて多くの被験者からサンプリングしたデータに基づき検出した特性を示す。測定部位に対するカフ20による与圧は血圧測定のための適正レベルである‘適切’巻きの状態であることが要求される。‘適切’巻きは、測定部位の腕周長に対して巻付けられたカフ20の内径(測定部位である手首断面の径)による円周の長さにほぼ等しい状態を指す。腕周長に対して円周の長さが短い場合にはカフ20が測定部位にきつめに巻かれて測定部位に対する与圧は適性レベルよりも高めである‘キツ’巻きの状態となる。逆に、長い場合にはカフ20が測定部位にゆるく巻かれて測定部位に対する与圧は適性レベルよりも低い‘ユル’巻きの状態となる。
【0090】
このような‘キツ’巻きおよび‘ユル’巻きの状態で血圧測定した場合には、測定部位の動脈に対して適切な加圧をすることができない。したがって、‘適切’巻付けられた状態で血圧測定することが要求される。
【0091】
(巻付け強度の推定の原理)
測定部位に被測定者が手動で巻付けたカフ20のカフ圧と、カフ20内へ供給する流体(本実施の形態では、空気)の容積変化に基づき、カフ圧が、圧力P2から圧力P3になるまでに必要な空気は、流体容積ΔV23であるとする。加圧過程でポンプ51が一定回転数の下で流体容積ΔV23の空気を供給するのに要する加圧時間は、一定時間(ここでは、時刻V2〜時刻V3の時間V23)となる。しかしながら、時間V23は、測定部位に対するカフの巻付け強度によって、すなわち巻付けられた状態のカフ20の容量に依存して変化する。
【0092】
たとえば、周囲長が異なる測定部位に対して、同程度の巻付け強度でカフ20を巻付けた場合、図10〜図12のように、周囲長が短い(細腕)ほど時間V23は小さくなり、周囲長が長い(太腕)ほどV23は大きくなる。
【0093】
パラメータ取得部113は、加圧開始後、検出されるカフ圧に基づき、カフ圧が0mmHg(圧力P2)から20mmHg(圧力P3)まで変化するのに要した時間を計時部45によって計測する。そして、計測した時間に基づきテーブル432を検索することにより、対応するパラメータdTaの値を取得する。
【0094】
同様にして、周囲長がほぼ同じである測定部位に対して、異なる巻付け強度でカフ20を巻付けた場合、図10〜図12のように、巻付け強度が“キツイ”ほど時間V23は小さくなり、“ユルイ”ほど時間V23は大きくなる。
【0095】
パラメータ取得部113は、加圧開始後、検出されるカフ圧に基づき、カフ圧が20mmHg(圧力P2)から30mmHg(圧力P3)まで変化するのに要した時間を計時部45によって計測する。そして、計測した時間に基づきテーブル433を検索することにより、対応するパラメータdTwの値を取得する。
【0096】
パラメータdTwは、測定部位周囲長や測定部位肉質と相関があり、周囲長が大きい、肉質が柔らかい場合には値が小さく、また、パラメータdTaはカフ巻きつけ強度が“ユルイ”ほど小さい値となる。取得したパラメータdTwおよびdTaは、テーブル431に測定部位周囲長424およびカフ巻付け強度422として格納される。
【0097】
なお、パラメータdTwは、加圧過程で取得する脈波振幅値に基づき算出してもよい。これは、測定部位周囲長は、脈波振幅値と相関することが知られているからである。
【0098】
このように被測定者の生体の特徴に関する情報から、加圧目標値を算出するためのパラメータを取得することができる。
【0099】
パラメータ取得部113は、テーブル431から読出したパラメータdTwおよびdTaを用いて、(式7)〜(式10)に従って、オフセット値βと係数αを算出する。算出したオフセット値βまたは係数αを用いて、(式3)と(式4)に従って加圧目標値Tpcを算出する。
【0100】
【数7】
【0101】
【数8】
【0102】
【数9】
【0103】
【数10】
【0104】
なお、測定部位周囲長が長い、測定部位の肉質が柔らかい、カフ20の巻きつけ強度が“ユルイ”場合は、測定部位に対する圧迫力が不足し、推定収縮期血圧ESYSが高く算出される傾向がある。このとき比例定数AとオフセットBは、オフセット値βと係数αが大きくなるように設定し、その逆の場合は、オフセット値βと係数αが小さくなるように設定すればよい。
【0105】
(脈波振幅最大値を用いた算出)
加圧過程で検出される脈波振幅最大値425は測定部位周囲長や測定部位肉質と相関があり、周囲長が大きい、肉質が柔らかい場合には値が小さく検出され、その逆の場合には値が大きく検出される。
【0106】
パラメータ取得部113は、テーブル431から読出した脈波振幅最大値425を用いて、(式11)と(式12)に従ってオフセット値βと係数αを算出する。
【0107】
【数11】
【0108】
【数12】
【0109】
(動脈硬化指標を用いたパラメータの取得)
加圧目標値Tpcを算出するために用いるオフセット値βと係数αは、動脈硬化指標を用いてもよい。動脈硬化指標を用いる場合には、動脈硬化が進んでいるほどオフセット値βと係数αを小さくするように算出する。算出式を(式13)と(式14)に示す。
【0110】
これは動脈容積変化は、加圧過程と減圧過程において血管弾性に起因したヒステリシスを持つため、通常、推定収縮期血圧ESYSは低く算出されるからである。動脈硬化が進むと血管弾性が失われるためヒステリシスは小さくなり推定収縮期血圧ESYSと収縮期血圧SYSとは一致するようになる。したがって、上述した推定収縮期血圧ESYSと収縮期血圧SYSとの差((式1)と(式2)を参照)は、被測定者の動脈硬化指標を表すと言える。
【0111】
【数13】
【0112】
【数14】
【0113】
上述の手順では、加圧目標値を導出するために用いるオフセット値βと係数αは、1種類のパラメータを用いて算出したが、(式15)と(式16)のように2種類以上を組合わせて算出してもよい。
【0114】
【数15】
【0115】
【数16】
【0116】
なお、オフセット値βと係数αを算出するためのパラメータは、テーブル431から読出した情報ではなく、血圧測定装置1の外部装置から入力された測定部周囲長(例えば、メジャーで測定した長さ)、測定部位肉質、動脈硬化指標(たとえば、PWM値)などを用いて算出してもよい。
【0117】
本実施の形態によれば、自動で加圧目標値まで加圧を行う血圧測定装置1において、測定中に取得した、もしくは外部から入力された被測定者の生体の特徴に関する情報、より特定的には被測定者の固有の血圧変動から独立した生体の特徴に関する情報から、加圧目標値を算出するためのパラメータを取得することができる。
【0118】
(変形例)
本実施の形態における血圧測定装置1が行なう上述した血圧測定の方法は、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CPU100に付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(compact disk read only memory)、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体132にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、CPU100がアクセス可能なハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、血圧測定装置1をネットワークに接続することも可能であり、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0119】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされてCPU100により読出されて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0120】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0121】
1 血圧測定装置、112 圧力検出部、113 パラメータ取得部、114 加圧目標値取得部、115 加圧制御部、116 減圧制御部、117 血圧決定部、118 脈波検出部、119 メモリ処理部、120 表示制御部、132 記録媒体、401 加圧不足判定部、402 推定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の所定部位に装着されるカフと、
前記カフ内のカフ圧を加圧または減圧することにより調整するための圧調整部と、
調整されるカフ圧を検出するための圧力検出部と、
前記圧力検出部によって検出されるカフ圧から血圧を算出することにより、血圧測定するための制御部と、を備え、
前記制御部は、
カフ圧の加圧過程において、前記血圧測定におけるカフ圧変動から独立した被測定者の生体の特徴に関連した情報を用いて、前記血圧測定の目標圧力を取得するための目標取得部と、
前記加圧過程において検出されるカフ圧が前記目標圧力に達した後の前記カフ圧の減圧過程において、前記圧力検出部により検出されるカフ圧を用いて前記被測定者の血圧を算出するための算出部と、を含む、血圧測定装置。
【請求項2】
前記生体の特徴に関連した情報は、動脈硬化度を表わす動脈硬化指標を含む、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記血圧測定において、その後の血圧測定のために前記生体の特徴に関連した情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された前記生体の特徴に関連した情報を格納する格納部と、をさらに備える、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記血圧は、収縮期血圧を含み、
前記情報取得部は、
前記加圧過程において収縮期血圧を推定するための手段を、含み、
前記推定された収縮期血圧と、前記減圧過程において前記算出部により算出される収縮期血圧との差を、前記動脈硬化指標として取得する、請求項3に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記カフ圧から動脈の容積変動に従う脈波振幅を取得する手段を、さらに備え、
前記情報取得部は、
前記過圧過程におけるカフ圧の加圧が血圧測定のための所定圧力を指示する否かを、前記減圧過程で取得される脈波振幅を用いて判定するための加圧判定手段を、含み、
前記生体の特徴に関連した情報は、前記加圧判定手段の判定結果データを含む、請求項3または4のいずれかに記載の血圧測定装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、
前記過圧過程において、カフ圧を所定量上昇させるのに要する時間を計測し、計測した時間を用いて前記生体の特徴に関連した情報を取得する、請求項3から5のいずれかに記載の血圧測定装置。
【請求項7】
前記生体の特徴は、所定部位の生体の肉質の柔らかさ指す、請求項5または6に記載の血圧測定装置。
【請求項8】
前記カフは所定部位に巻付けられることにより装着されて、
前記生体の特徴は、所定部位の前記カフが巻付けられる周囲長を指す、請求項6または7に記載の血圧測定装置。
【請求項9】
前記目標取得部は、
前記生体の特徴に関連した情報を用いて、前記目標圧力を算出するためのパラメータを取得する、請求項1から8のいずれかに記載の血圧測定装置。
【請求項1】
被測定者の所定部位に装着されるカフと、
前記カフ内のカフ圧を加圧または減圧することにより調整するための圧調整部と、
調整されるカフ圧を検出するための圧力検出部と、
前記圧力検出部によって検出されるカフ圧から血圧を算出することにより、血圧測定するための制御部と、を備え、
前記制御部は、
カフ圧の加圧過程において、前記血圧測定におけるカフ圧変動から独立した被測定者の生体の特徴に関連した情報を用いて、前記血圧測定の目標圧力を取得するための目標取得部と、
前記加圧過程において検出されるカフ圧が前記目標圧力に達した後の前記カフ圧の減圧過程において、前記圧力検出部により検出されるカフ圧を用いて前記被測定者の血圧を算出するための算出部と、を含む、血圧測定装置。
【請求項2】
前記生体の特徴に関連した情報は、動脈硬化度を表わす動脈硬化指標を含む、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記血圧測定において、その後の血圧測定のために前記生体の特徴に関連した情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された前記生体の特徴に関連した情報を格納する格納部と、をさらに備える、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記血圧は、収縮期血圧を含み、
前記情報取得部は、
前記加圧過程において収縮期血圧を推定するための手段を、含み、
前記推定された収縮期血圧と、前記減圧過程において前記算出部により算出される収縮期血圧との差を、前記動脈硬化指標として取得する、請求項3に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記カフ圧から動脈の容積変動に従う脈波振幅を取得する手段を、さらに備え、
前記情報取得部は、
前記過圧過程におけるカフ圧の加圧が血圧測定のための所定圧力を指示する否かを、前記減圧過程で取得される脈波振幅を用いて判定するための加圧判定手段を、含み、
前記生体の特徴に関連した情報は、前記加圧判定手段の判定結果データを含む、請求項3または4のいずれかに記載の血圧測定装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、
前記過圧過程において、カフ圧を所定量上昇させるのに要する時間を計測し、計測した時間を用いて前記生体の特徴に関連した情報を取得する、請求項3から5のいずれかに記載の血圧測定装置。
【請求項7】
前記生体の特徴は、所定部位の生体の肉質の柔らかさ指す、請求項5または6に記載の血圧測定装置。
【請求項8】
前記カフは所定部位に巻付けられることにより装着されて、
前記生体の特徴は、所定部位の前記カフが巻付けられる周囲長を指す、請求項6または7に記載の血圧測定装置。
【請求項9】
前記目標取得部は、
前記生体の特徴に関連した情報を用いて、前記目標圧力を算出するためのパラメータを取得する、請求項1から8のいずれかに記載の血圧測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−196322(P2012−196322A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62586(P2011−62586)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
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