説明

血液凝固を阻害する抗体及びその使用方法

本発明は、生の(未変性の)ヒトTFに高い親和性と特異性で結合することによって優れた抗凝固活性を提供する抗体を含んでいる。本発明の抗体は、インビトロでの血液凝固を効果的に阻害することができる。本発明の抗体は、それのみで、又はTF:VIIa複合体中に存在して、第X因子又は第IX因子がTF又は当該複合体に結合することを妨げるよう、未変性のヒトTFと結合することが可能であり、そうすることによって血液凝固を低下させるものである。本発明の好ましい抗体は、未変性のヒトTFに対して優位なエピトープの配座に特異的に結合する。当該エピトープは非常に強い抗体結合部位を有する。TFに結合するヒト型抗体及びその断片も又提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国特許出願USSN08/814,806(現、米国特許第5,986,065号)の分割出願である、米国特許出願第09/293,854号(1999年4月16日出願)に関連する、米国特許仮出願第06/343,306号(2001年10月29日出願)の優先権を主張して出願された、米国特許出願第09/990,586号(2001年11月21日出願)の優先権を主張するものである。
米国特許出願第09/990,586号、第60/343,306号、第09/293,854号及び米国特許第5,986,065号の記載は、それぞれ参照として本明細書に取り込まれる。
【0002】
本発明は、ヒト組織因子の新規な抗体、並びに血液凝固、脈管形成、腫瘍転移及び炎症等の組織因子に関連する作用を阻害するための抗体の使用方法に関する。特に、生の(未変性の)ヒト組織因子と高親和性で特異的に結合し、血液凝固第X因子又は血液凝固第IX因子の結合及び活性化を阻害する新規な抗体に関する。本発明の抗体は多様な用途、特にインビボでの血液凝固を低下させるために有用である。
【背景技術】
【0003】
血液凝固作用は、失血を最小限にすることによって、ホメオスタシスの維持に貢献している。通常、血液凝固には、血管損傷、血小板凝集、凝固因子の活性化、及び線溶系の阻害が必要とされている。血液凝固因子は、血管損傷から血液凝固の生成に至るまでのカスケード全体に作用する(一般的には、L.Stryer,Biochemistry,3rd Ed,W.H.Freeman Co.,New York;およびA.G.Dilman et al.,The Pharmacological Basis of Therapeutics,8th Edition,McGraw Hill Inc.,New York,pp.1311-1331を参照)。
血液凝固第X因子(FX)が活性化して活性化血液凝固第X因子(FXa)(又は、血液凝固第IX因子(FIX)が活性化して活性化血液凝固第IX因子(FIXa))になることが、血液凝固のプロセスにおける臨界的な段階であることが知られている。通常、FX(又はFIX)は、「組織因子(TF)」を含有している触媒的な活性複合体に結合することによって、FXa(又はFIXa)に転換される。TFは制御可能に発現している細胞膜タンパク質であって、血液凝固第VII/VIIa因子に結合して触媒的な活性を有する複合体(TF:FVIIa)を形成する。血液凝固はFXaが介在するプロトロンビンの活性化によって引き起こされる。TFを不活化して、TF:FVIIa複合体を最適に形成できない変性された(non-native)形態にすることによって、血液の凝固を最小限にすることができる。FXa(又はFIXa)の生成による血液凝固系のカスケードの過剰な活性化が、再狭窄を含む種々の血栓症の要因と考えられている。
【0004】
血栓症は、心臓手術(例えば、血管形成)、腹胸手術、動脈手術、末梢血管バイパス移植、治療用機器(例えば、ステントやカテーテル)の装着、又は動脈血管内膜切除等の侵襲的な医療処置により誘発されることがある。さらに、血栓症は、脳梗塞、肺動脈塞栓症(例えば、塞栓形成を伴う心房細胞の繊維状組織の形成)、冠動脈疾患又は急性冠症候群(例えば、不安定狭心症又は心筋梗塞)、アテローム性動脈硬化又はその他の血栓性閉塞疾患、深部静脈血栓症及び播種性血管内凝固症候群等の種々の血栓塞栓性疾患や凝固障害を伴うことがある。体外循環を伴う処置(例えば、心肺バイパス手術)や腎臓透析以外に、特に輸血や体液のサンプリングといった体液操作も結果的に好ましくない血栓形成のおそれがある。
【0005】
抗血栓剤は、血栓症に関連する血栓の形成を緩和したり、防止するために頻繁に使用されている。クマリン誘導体(例えば、ワルファリン、クーマディン又はジクマロール)、荷電ポリマー(例えば、ヘパリン、低分子ヘパリン、ヒルジン、ヒルログ(hirulog))又は抗血小板薬(例えば、レオプロ、インテグリリン、アグレスタット、プラビックス、チクリド、又はアスピリン)の1種以上を含む適当な抗血栓剤又はそれらの混合物を投与することによって、血栓の形成を最小限にするか又は排除できる場合が多い。例えば、上述のGilman et al.,R.J.Beigering et al.,Ann.Hemathol.,72:177(1996);J.D.Willerson,Circulation,94:866(1996)を参照されたい。
しかし乍ら、抗血栓剤の使用は、出血、再閉塞、白血塊症状(white clot syndrome)、刺激性過敏(irritation)、出産異常、血小板減少症や肝不全等の副作用をしばしば引き起こす。特に、抗血栓剤の長期にわたる投与は、生命を脅かす病に至る危険性を増加させる(例えば、上述のGilman et al.,を参照)。
【0006】
また、抗血小板活性を持つある種の抗体が、多様な血栓を緩和するために使用されている。例えば、レオプロ(ReoPro(登録商標))は、血管形成、心筋梗塞、不安定狭心症や冠動脈狭窄症等によって引き起こされる様々な血栓塞栓性障害を緩和するために、一般的に投与される抗体製剤である。さらに、レオプロ(ReoPro(登録商標))は、心筋梗塞と狭心症(アンギナ)の危険性を低減する予防薬としても使用することができる(J.T.Willerson,Circulation,94:866(1996);M.L.Simmons et al.,Circulation,89:596(1994)を参照)。
【0007】
また、抗血栓抗体も知られている。特に、ある種のTFに結合する抗体が、おそらく触媒的な活性TF:FVIIa複合体の会合を阻害することによって、血液凝固を阻害するのではないかとの報告がある。(例えば、Jeske et al.,SEM in THROM.and HEMO,22:213(1996);Ragni et al.,Circulation,93:1913(1996);欧州特許番号0 420 937 B1号;W.Ruf et al.,Throm.Haemosp.,66:529(1991);M.M.Fiorie et al.,Blood,8:3127(1992)を参照)。
しかしながら、現状のTFに結合する抗体には、抗血栓剤としての適性を否定する程の重大な欠点がある。例えば、現状のTFに結合する抗体は、抗血栓活性を最適にするに十分な結合親和性を有さない。従って血栓症の多くの症状に於いては、不十分な結合親和性を補って血栓の形成を最小限に抑えるために、許容量を上回るような高レベルでの抗体の投与が必要となっている。
それ故、高い親和性及び選択性で未変性のヒトTFと結合する抗血栓剤を得て、好ましくない血液凝固及び血栓の形成を阻害することが望まれている。さらに、第X因子(又は第IX因子)がTF:FVIIa複合体に結合するのを阻害する抗血栓性の抗体を得ることが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、未変性の(native)ヒト組織因子(TF)に高い親和性と特異性で結合して優れた抗血栓活性を有する抗体を見出した。本発明の抗体は、インビボで効果的に血液凝固を阻害することができる。本発明の抗体は、単独で若しくはTF:FVIIa複合体中に存在して、未変性のヒトTFと結合することができ、第X因子(又は第IX因子)がTF又はその複合体に結合するのを効果的に阻害して、血液凝固を減少させることができる。
【0009】
本発明における好ましい抗体はモノクローナル抗体であり、未変性のヒトTFの優位なエピトープの配座に特異的に結合するが、このエピトープは非常に強い抗体結合部位を有する。実際、従来の抗血栓抗体に比べ、本発明の好ましい抗体は少なくとも5倍、通常少なくとも10倍の結合親和力で未変性のヒトTFに結合する。さらに、本発明の好ましい抗体は、生の(未変性の(ネイティブの))ヒトTFに対して選択的であり、非ネイティブまたは変性されたTFには十分に結合しない。H36.D2.B7(ハイブリドーマATCC寄託番号HB-12255より分泌されるもので、しばしばH36と称される)は本発明において特に好ましい抗体である。
【0010】
本発明における好ましい抗体はTFと結合して、FX(又はFIX)がTF:FVIIa複合体に効果的に結合せず、それによってFX(又はFIX)がその活性型(FXa又はFIXa)に効果的に転換されないようにするものである。本発明における好ましい抗体は、FX(又はFIX)がTF分子に結合または接近することを効果的に阻害又はブロックすることで、TFの機能を阻害することができる。例えば、以下の実施例3の結果を参照されたい。
本発明の好ましい抗体は、TFと第VIIa因子との相互作用若しくは結合をあまり強くに阻害するものでないし、FX又はFIX以外の物質に対してのTF:FVIIa複合体の活性をあまり阻害するものではない。例えば、以下の実施例4の結果を参照されたい。
【0011】
また、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸を提供するものである。H36.D2.B7の可変領域の核酸とアミノ酸の配列(配列番号1乃至4)は、図1A及び図1Bに示されている。
好ましい実施態様において、本発明は血液凝固及び血栓の形成を阻害する方法、若しくはヒトTFのレベルを低下させる方法を提供するものである。
一般的に、本発明の抗体は、上記の血液凝固、炎症、ガンの脈管形成及び転移並びに他の疾患を含む、TF又はTF:FVIIa複合体に結合するFX(又はFIX)に介在される殆どすべての生物学的応答を調節する上で有効であろう。
【0012】
本発明の抗体は、様々な血栓症を和らげるのに、特に外科手術後の血管再狭窄(restenosis)を防止若しくは阻害するのに、又は動脈や心臓の手術(血管形成など)などの侵襲的な医療処置後に引き起こされるその他の血栓症を緩和するのに、非常に有効である。本発明の抗体はまた、これらに限定はされないが、冠動脈疾患、急性冠症候群(例えば、不安定狭心症又は心筋梗塞)及びアテローム性動脈硬化を含む外科的処置を要しない心血管の状況での血液凝固に起因する血栓性閉塞を減じるため、又は効果的に排除するためにも用いられる。また、本発明の抗体は、治療用器具の使用(例えば、カテーテル、ステントあるいはその他の医療機器)によって生じる血液凝固を減少させ、又は効果的に排除するためにも用いられる。本発明における好ましい抗体は、多くの抗血栓剤、抗血小板剤及び血栓溶解剤と併用される。それ故、血液凝固の阻害を促進又は延長するためのカクテル(多剤併用)投与が可能となる。
【0013】
本発明の抗体は、哺乳動物、特にヒトの体外循環における抗凝血薬としても用いられる。この方法では、心肺バイパス手術、臓器移植手術、あるいはその他の長時間にわたる手術に於いて行われる体外循環の前、またはその間に、血液凝固を阻害するのに十分な量で、本発明の抗体を一種または複数種、当該哺乳動物に投与することからなる。
【0014】
本発明の抗体は、特にストレポキナーゼ(strepokinase)、組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)、ウロキナーゼなどの血栓との相互作用を目的とした医薬の担体としても用いられる。同様に、本発明の抗体は、適切な毒素(toxin)を抗体に結合(conjugate)させることによって細胞障害剤としても用いられる。
本発明の抗体の抱合体(conjugates)はまた、本発明の抗体の有効量を哺乳動物に投与することにより、哺乳動物、特にヒトの組織因子のレベルを低下させるためにも用いられる。当該抱合体は、細胞毒(cytotoxic agent)又はエフェクター分子と強く結合して、補体結合能及び抗体依存性の細胞が介在する細胞障害性を有する。そして、この抗体の抱合体が、組織因子を発現している細胞と接触することにより、哺乳動物に於ける組織因子のレベルを低下させる。
【0015】
本発明の抗体は、未変性のヒトTFのインビボ画像診断を含むインビボ診断法にも用いられる。
また、本発明の抗体は、体液(例えば、血漿や血清など)又は組織(例えば、生検サンプルなど)を含む生物サンプルに於ける未変性のTFを検出するためのインビトロ分析法にも用いられる。より具体的には、生物サンプル内の未変性のTFの存在、好ましくはその量を検出するために、競合的又は非競合的な測定原理に基づく種々の均一系及び不均一系のイムノアッセイ(免疫測定法)が用いられる。
本発明に於けるこのような分析法は、患者が血液凝固や血栓を有しているか、あるいはその可能性があるか、を測定するのに非常に有効である。つまり、血液凝固は、通常、単核白血球、マクロファージ及び脈管構造の内側の内皮細胞といった細胞の表面にTFが発現している結果として起こるものであると言える。したがって、本発明における分析法を用いて体液サンプル中のTFを検出することで、血液凝固の有無を示すことができる。
【0016】
本発明の抗体は、実質的に純粋な未変性のTF、特に未変性のヒトTFを生物サンプルから調製するためにも用いられる。本発明の抗体はまた、未変性のTFを発現している細胞を検出及び精製するのにも用いられる。
本発明の抗体は、例えば、生物サンプル中における未変性のTFを検出、より好ましくはその量を測定する等の診断用のキットの一部としても用いることができる。
本発明は更に、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成するヒト型抗体を提供する。好ましい態様に於いては、血液凝固第X因子又は第IX因子が当該複合体に結合するのが顕著に阻害されている。好ましくは、このヒト型抗体は少なくとも1個のネズミ類(murine)の相補性決定領域(CDR)を、好ましくは1個、2個、3個又は4個のネズミ類(murine)のCDRを含む。更に、当該ヒトTFに結合するヒト型抗体の断片も提供される。
【0017】
もう一つの態様に於いて、本発明は、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成する、ヒト型抗体又はその断片の有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物に於ける血液凝固を阻害する方法を提供する。この方法に用いられる好ましい抗体は、血液凝固第X因子又は第IX因子が複合体に結合するのを顕著に低下させる。好ましい方法は更に、抗体とTF又は抗体とTF:FVIIa複合体との間に血液凝固を阻害する特異的な複合体を形成することを含む。
本発明はまた、ネズミ類(murine)の相補性決定領域(CDR)を少なくとも一つ含んで成る、ヒト型抗体又はその断片の有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物に於ける血液凝固を阻害する方法を提供する。この方法に用いられる好ましいヒト型抗体は、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成する。好ましくは、第X因子又は第IX因子が当該複合体に結合すること、又は当該複合体に結合する若しくはしている第X因子又は第IX因子を顕著に減じられる。好ましい方法は更に、この抗体とTFが血液凝固を阻害する特異的な複合体を形成することを包含している。
本発明に於けるその他の態様は以下に記述される。
(発明の詳細な説明)
【0018】
前述したように、本発明の好ましい抗体は未変性のヒトTFに実質的な親和性を示す。特に本発明の好ましい抗体は、表面プラズモン解析(特に後述する実施例1の手順に従ったBIAcore解析)によって測定されるように、少なくとも約1x10の未変性のヒトTFに会合定数(K,M−1)を示し、より好ましくは表面プラズモン解析によって測定されるように、少なくとも約5x10であり、さらにより好ましくは表面プラズモン共鳴解析によって測定されるように、少なくとも約1x1010の未変性のヒトTFにK (K,M−1)を示す。このような本発明の抗体の実質的な結合親和性は、かなり低い結合親和性しか有さない従来の抗体とは明確な対照を示す。
この点において、本発明の抗体の効果的な濃度は、極めて低い濃度で使用することができ、例えば、抗体の比較的低濃度での使用により、以下に述べる実施例3に記載されるようにインビトロのアッセイにおいて、所望のTF機能の阻害(例えば、少なくとも約95、98又は99パーセントの阻害)を達成することができる。
【0019】
好ましい抗体は、未変性のヒトTFに非常に特異的でもあり、変性された(non-native)TFには実質的に結合しない。 好ましい抗体は、変性されたTF又は他の免疫学的に無関係な分子には実質的に結合せず、それは例えば標準的なドットブロットアッセイによって測定される(例えば、このようなドットブロットアッセイにより、変性されたTFへ結合しないこと又は本質的に結合しないことが視覚的に検出される。)。ここで述べる“変性されたTF”とは、TFが変性されるようカオトロピック剤で処置された天然の又は組み換えのヒトTFを意味する。典型的なカオトロピック剤としては、界面活性剤(例えばSDS)、ジチオトレイトール又はβ−メルカプトエタノールと結合した尿素;グアニジン塩酸塩等である。H36、H36.D2又はH36.D2.B7抗体は、実質的にはこのような変性されたTFに結合しない。例えば、以下に述べるドットブロットアッセイの実施例8の結果を参照されたい。
【0020】
前述したように、本発明の好ましい抗体はまた、FX(又はFIX)がTF:FVIIa複合体に効果的に結合しないように、TFに結合せず、そのためFX(又はFIX)はその活性体(FXa又はFIXa)に効果的に変換されない。特に、本発明の好ましい抗体は、TF:VIIa複合体によってFX活性を強く阻害するであろう。例えば、少なくとも約50%の阻害、より好ましくは少なくとも約80%、又はさらにより好ましくは少なくとも約90%又は95%の阻害であり、低TF濃度、例えば約1.0nM TFより低く、又は約0.20nM又は0.10nM TFよりも低く、本発明の抗体の存在下(すなわち、実験例)及び非存在下(すなわち、対照例)の両方においてFX(又はFIX)をTF:FVIIa複合体と接触させ、当該実験例及び対照例におけるFXからFXaへの(又はFIXからFIXaへの)転換率の差(パーセント)を測定することを含む、後述する実施例3のような標準インビトロ結合アッセイによって測定される。
【0021】
本発明の抗体は、ここに開示される方法やアッセイで使用される場合には、好ましくは実質的に純粋である。“実質的に純粋”である抗体とは、天然に含まれている成分から分離された抗体又はタンパク質を意味する。例えば、標準的な免疫親和性又はプロテインA親和性による精製技術を使用することにより、抗原やプロテインAレジンとして未変性のTFを用いてハイブリドーマ培養から本発明の抗体を精製することができる。同様に、本発明の抗体を用いて標準的な免疫親和性による精製技術で未変性のTFを本質的に純粋な状態で得ることができる。特に、全タンパク質の少なくとも50%(サンプル中の全タンパク質に対する重量%)が本発明の抗体又はタンパク質であるときは、抗体又はタンパク質は実質的に純粋であるとされる。好ましくは、当該抗体又はタンパク質は少なくとも全タンパク質の60重量%であり、より好ましくは少なくとも75重量%であり、さらにより好ましくは少なくとも90重量%であり、もっとも好ましくは全物質の少なくとも98重量%である。純度は、SDS(PAGE)ゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィー(例えば、親和性クロマトグラフィー)又はHPLC解析のような公知の方法で容易に評価できる。
【0022】
本発明の好ましい抗体(H36.D2.B7)の核酸配列(配列番号1及び3)及びアミノ酸配列(配列番号2及び4)は、図1A及び1Bで示される。配列番号1及び2はそれぞれ軽鎖可変領域の核酸配列及びアミノ酸配列であり、配列番号3及び4はそれぞれ重鎖可変領域の核酸配列及びアミノ酸配列であり、これらの配列における下線部分は超可変領域(CDRs又は相補性決定領域)である。
【0023】
さらに本発明の好ましい抗体は、図1A及び1Bに示される軽鎖又は重鎖のどちらか一方又は両方と実質的に相同なアミノ酸配列を有するであろう。さらに好ましくは、好ましい抗体は、配列番号2及び/又は4に少なくとも約70%の相同性(アミノ酸配列の相同性)、より好ましくは配列番号2及び/又は4に約80%以上の相同性、さらにより好ましくは配列番号2及び/又は4に約85、90又は95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0024】
本発明の好ましい抗体は、配列番号2及び4の超可変領域(図1A及び1Bにおいて二重線で示される)に非常に高い相同性のアミノ酸配列を有するであろう。特に本発明の好ましい抗体は、H36.D2.B7の軽鎖可変領域の対応する1、2又は3つの超可変領域(図1Aにおいて下線で示される超可変領域であり、以下の配列:1)LASQTID(配列番号5);2)AATNLAD(配列番号6);及び3)QQVYSSPFT(配列番号7))と非常に高い相同性(少なくとも90%又は95%のアミノ酸配列の相同性)を有するか又は相同である軽鎖可変領域の1、2又は3つの超可変領域を有するであろう。
【0025】
特に本発明の好ましい抗体は、また、H36.D2.B7の重鎖可変領域の対応する1、2又は3つの超可変領域(図1Bにおいて下線で示される超可変領域であり、以下の配列:1)TDYNVY(配列番号8);2)YIDPYNGITIYDQNFKG(配列番号9);及び3)DVTTALDF(配列番号10))と非常に高い相同性(少なくとも90%又は95%のアミノ酸配列の相同性)を有するか又は相同である重鎖可変領域の1、2又は3つの超可変領域を有するであろう。
【0026】
本発明の核酸は、好ましくは、37℃の0.8M生理食塩水/0.08Mクエン酸ナトリウム(SSC)バッファーの20%のホルムアミドからなるハイブリダイゼーションバッファーを使用し、37℃でSSCバッファーで1回洗浄したときに、ハイブリダイズした結合が残る適度にストリンジェントな条件下(これを、”通常のストリンジェント”条件下という。)で、配列番号:1及び/又は配列番号:3の配列に結合するのに十分な長さ(好ましくは少なくとも約100、200又は250塩基対)である。
【0027】
より好ましくは、本発明の核酸(好ましくは少なくとも約100、200又は250塩基対)は、42℃の0.9M生理食塩水/0.09Mクエン酸ナトリウム(SSC)バッファーの20%のホルムアミドからなるハイブリダイゼーションバッファーを使用し、42℃でSSCバッファーで2回洗浄したときに、ハイブリダイズした結合が残る高ストリンジェントな条件下(これを、“高ストリンジェント”条件下という。)で、配列番号1及び/又は配列番号3の配列に結合するであろう。
本発明の核酸は好ましくは少なくとも20塩基対、より好ましくは少なくとも約50塩基対を含み、さらにより好ましくは少なくとも約100、200、250又は300塩基対を有する。
一般に本発明の好ましい核酸は、ここで開示されるような好適な結合親和性や他の特性を示す本発明の抗体を発現するであろう。
【0028】
本発明の好ましい核酸は、また、図1A及び1Bで示される軽鎖又は重鎖のどちらか一方又は両方に実質的に相同な配列を有するであろう。さらに好ましくは、好ましい核酸は、配列番号1及び/又は3に少なくとも約70%の相同性(ヌクレオチド配列の相同性)、より好ましくは配列番号1及び/又は3に約80%以上の相同性、さらにより好ましくは配列番号1及び/又は3に約85、90又は95%以上の相同性を有する配列を含むであろう。
【0029】
本発明の特に好ましい核酸は、配列番号1及び3の超可変領域(図1A及び1Bにおいて下線で示される)に配列の非常に高い相同性を有するであろう。特に好ましい核酸は、
抗体の軽鎖の可変領域をコードし、超可変領域をコードする1、2又は3つの配列を有し、H36.D2.B7の対応する超可変領域をコードする、1、2又は3つの配列(図1Aにおいて下線で示される超可変領域であり、以下の配列:1)CTGGCAAGTCAGACCATTGAT(配列番号11);2)GCTGCCACCAACTTGGCAGAT(配列番号12);及び3)CAACAAGTTTACAGTTCTCCATTCACGT(配列番号13))と非常に高い相同性(少なくとも90%又は95%のヌクレオチド配列の同一性)を有するか又は相同の配列である。
【0030】
特に好ましい核酸は、また、抗体の重鎖の可変領域をコードし、超可変領域をコードする1、2又は3つの配列を有し、H36.D2.B7の対応する超可変領域をコードする、1、2又は3つの配列(図1Bにおいて下線で示される超可変領域であり、以下の配列:1)ACTGACTACAACGTGTAC(配列番号14);2)TATATTGATCCTTACAATGGTATTACTATCTACGACCAGAACTTCAAGGGC(配列番号15);及び3)GATGTGACTACGGCCCTTGACTTC(配列番号16))と非常に高い相同性(少なくとも90%又は95%の配列の同一性)を有するか又は相同の配列である。
【0031】
本発明の核酸は、単離されたものであり、特定の画分に存在する全核酸の重量の通常は少なくとも約0.5%、好ましくは少なくとも約2%、より好ましくは少なくとも約5%含有されている。部分的に精製された核酸としては、特定の画分に存在する全核酸の重量の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約60%含有されている。精製された核酸は、特定の画分に存在する全核酸の重量の少なくとも約80%、好ましくは約90%、より好ましくは約95%含有されている。
【0032】
本発明の抗体は、公知の技術で作成することができ、未変性のTF、典型的には未変性のヒトTF、好ましくは精製された組み換えヒト組織因子(rhTF)の精製サンプルから製造できる。組み換えヒト組織因子すなわち“rhTF”の断片(243アミノ酸から成り、細胞内領域を欠損している)は、本発明の抗体を製造ために特に好ましい。この抗体はまた、変性されたTFによっては提示されない未変性のTFの1個以上のエピトープ部位を含む免疫原性ペプチドから製造することができる。ここで述べる“未変性のTF”とは、このようなrhTFを含み、このようなTFサンプルを含む。前述したように、モノクローナル抗体が一般に好ましいが、ポリクローナル抗体もまた使用することができる。
【0033】
より好ましくは、抗体は、未変性のヒトTFの精製サンプル、又は前述した免疫原性ペプチドを単独又は担体との複合物で用いて、哺乳動物を免疫することにより製造することができる。好ましい哺乳動物は、一般的な実験動物、例えばヒツジ、ヤギ、ウサギ、モルモット、ラット及びマウスである。ラット及びマウス、特にマウスは、モノクローナル抗体を得るのに好ましい。抗原は、例えば皮下、腹腔、静脈、筋肉又は皮内注射のような多くのあらゆる適切な方法により哺乳動物に投与することができる。免疫を与えるのに最適な間隔、投与等は、比較的広い範囲にわたって変化させることができ、この開示に基づいて経験的に決定することができる。一般的な手順は、数ケ月にわたって数回、抗原を注射をすることを含む。抗体は、標準の技術によって免疫された動物の血清から集められ、未変性のヒトTFに特異的な抗体を見つけるためスクリーニングされる。モノクローナル抗体は、抗体産生細胞を用いて、ハイブリドーマ細胞を形成するための標準的な細胞融合技術によって製造される。G. Kohler, et al., Nature, 256:456 (1975) を参照されたい。一般的には、ハイブリッド細胞を作る骨髄腫細胞のような不死細胞で抗体産生細胞を融合することを含む。あるいは、モノクローナル抗体は、Huse, et al., Science, 256:1275(1989)の方法によって細胞から製造することができる。
【0034】
マウスを腹腔内投与で免疫する一つの適切なプロトコルは、精製rhTF複合体を含む組成物で約2〜7ヶ月の期間にわたり処理することである。脾臓細胞を免疫されたたマウスから摘出する。脾臓細胞を切除する前に免疫されたマウスの血清を用いて、rhTFに特異的な抗体を滴定でアッセイする。切除されたマウスの脾臓細胞を、例えばヒポキサンチン−グアニン ホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損(HGPRT)やチミジンキナーゼ欠損(TK)のようなマーカーを有するリンパ系細胞株と均一化又は不均一化(好ましくは均一化)して、融合する。リンパ系細胞株としては、好ましくは骨髄腫細胞が使用される。骨髄腫細胞及び脾臓細胞は、例えば骨髄腫細胞と脾臓細胞の割合が1対4で混合される。細胞はポリエチレングリコール(PEG)方法によって融合されることができる。前記G. Kohler, et al., Natureを参照されたい。このようなクローンのハイブリドーマは、例えば、RPMI-1640の培地で培養する。G.E. More, et al., Journal of American Medical Association, 199:549(1967)を参照されたい。融合された後に、培養されたハイブリドーマは、精製rhTFに特異的に結合する抗体の分泌を、放射免疫測定や酵素免疫測定等によりスクリーニングされ、例えば、精製rhTFに結合するが、変性されたTFには結合しない抗体が選定される。好ましくは、ELISAがスクリーニングに使用される。このようなスクリーニングにおいて陽性を示すハイブリドーマをさらに増殖させ、限界希釈法によってクローン化される。さらにスクリーニングは、ヒト体液サンプルにおいてだけでなく溶液においてもrhTFに結合できる抗体を選定するために行われる。単離された抗体はさらに、親和性クロマトグラフィーを含むあらゆる適切な免疫学的技術によって精製することができる。特に好ましいH36.D2.B7抗体を形成するハイブリドーマ菌株は、ブタペスト条約に従って、メリーランド州 10852 ロックヴィル パークローン・ドライブ 12301所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託されている。ハイブリドーマ菌株は、1997年1月8日にATCCに寄託され、寄託番号はATCC HB−12255である。
【0035】
ヒトの治療の用途としては、キメラ抗体誘導体、例えばヒトでない動物の可変領域とヒトの定常領域を組み合わせる抗体分子を形成し、それにより対応する非キメラ抗体よりも被検人体において抗原性の低い抗体を与えることが望ましい。このようなキメラ抗体の様々なタイプは、例えば、ヒト可変領域キメラは、可変領域、可変領域の一部、特に抗体結合ドメインの保存領域がヒト由来のものであり、超可変領域のみがヒト由来でない部分として製造される。ヒト化されたキメラ抗体及びその製法については、S.L. Morrison, Science, 229:1202-1207(1985); Oi et al., Bio Techiques, 4:214(1986); Teng et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:7308-7312(1983); Kozbor et al., Immunology Today, 4:7279(9183); Olsson et al., Meth. Enzymol., 9-3-16(1982) も参照されたい。さらに、トランスジェニックマウスを使用することができる。例えば、種々のヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスを作り、これを未変性のヒトTFで免疫する。このような免疫されたトランスジェニックマウスから採取された脾臓を、前述の未変性のヒトTFと特異的に反応するヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作るのに使用することができる。N. Lonberg et al., Nature, 368:856-859(1994); L.L. Green et al., Nature Genet., 7:13-21(1994); S.L. Morrison, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81:6851-6855(1994)を参照されたい。
【0036】
本発明の抗体をコードする核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(後述の実施例1に記載のプライマーを参照されたい)によっても製造することができる。一般には、Sambrook et al., Molecular Cloning (2d ed. 1989)を参照されたい。このような核酸はまた、公知の方法、例えばリン酸トリエステル化方法(IRL Press (M.J. Gait, ed., 1984) オリゴヌクレオチド合成参照)、又は市販の自動オリゴヌクレオチドシンセサイザーを使用することによって合成されることができる。このようにして製造された本発明の核酸は、公知の技術により、本発明の抗体を発現させるために使用することができる。例えば、本発明の抗体をコードする核酸は、公知の方法、例えば、その構築物をベクターに挿入するために制限酵素を用いてベクターを切断し、次いで制限酵素を用いて結合させることにより、適切なベクターに挿入される。挿入された核酸配列を含有するベクターを、制御可能なプロモーター配列に適宜連結させて、発現のために宿主細胞に導入する。一般的には、前述のSambrook et al., を参照されたい。好適なベクターの選択は、クローニングのプロトコルに基づいて経験的に選択される。例えば、ベクターは互換性があり、使用される宿主細胞に適切なレプリコン(replicon)を有するものが使用される。さらに、ベクターは、挿入された核酸配列を収容できなければならない。好適な宿主細胞は、広範囲の真核細胞又は大腸菌等のような原核細胞を含んでよい。
【0037】
本発明の抗体の分子量は、使用目的や、抗体が医薬品レベル又は検出可能なレベル、抱合化又は組み換えにより融合される毒素などを含有しているか等の様々な要因によって変化するであろう。また、分子量は、性質や、翻訳後の抗体の何らかの修飾(例えばグルコシル化)の程度によっても変化するであろう。このような修飾とは、糖鎖の無い抗体を産生する大腸菌や糖鎖を有する抗体を産生する哺乳類の細胞を用いて発現させるために使用される宿主細胞の有する機能によるものである。一般に本発明の抗体は、約20〜150kDaの範囲の分子量を有するであろう。このような分子量は、SDS−PAGEゲル電気泳動のような分子量による分離の後にタンパク質の染色やウエスタンブロット解析により測定される。
【0038】
“本発明の抗体”や他の同様な用語は、未変性のTFに結合する免疫学的に活性な断片だけでなく全免疫グロブリンを包含している。免疫グロブリン及びその免疫学的に活性な断片は、抗体結合部位(すなわち、未変性のヒトTFを認識することができ、かつ未変性のヒトTFに特異的に結合することができる抗体に特異的に結合されるエピトープ)を含む。抗体フラグメントとしては、例えば、免疫グロブリンのジスルフィド結合を切断することにより誘導される“半分子”であり単鎖免疫グロブリンであるFab,F(v),Fab’,F(ab’) フラグメント、又は他の好適な抗体結合フラグメントである(例えば、Bird et al., Science, pp.242-424(1988); Huston et al., PNAS, (USA), 85:5879(1988); Webber et al., Mol. Immunol., 32:249(1955)参照)。抗体やその免疫学的に活性な断片は動物のもの(例えば、マウスやラットのような齧歯類)、キメラ型(Morrison et al., PNAS, 81:6851(1984); Jones et al., Nature, pp. 321, 522(1986)参照)であってもよい。本発明の単鎖の抗体は好ましい。
【0039】
同様に、“本発明の核酸”とは、前記した本発明の抗体を提供するための発現し得る核酸配列を包含している。
【0040】
前述したように、本発明の抗体は好ましくはヒトのような霊長類の哺乳動物に投与することができ、典型的には、1以上の医薬的に許容できる無毒の担体、例えば滅菌水や生理食塩水、ポリエチレングリコールのようなグリコール、植物油などを含む組成物として投与され、TFが介在する凝固活性に帰因する血栓閉塞疾患を予防又は緩和する。特に、生物学的適合を有する、生物分解性ラクチドポリマー、ラクチドグリコリドコポリマー又はポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンコポリマーは、ここに記載される抗体を含む組成物の遊離を調節する有用な賦形剤である。他の潜在的に有用な投与システムはエチレンビニルアセテートコポリマー粒子、浸透ポンプ(osmotic pumps)、及び移植可能な注入システム及びリポソームを含む。一般的に、本発明の抗凝固組成物は溶液又は懸濁液の形状(又は溶液又は懸濁液にもどすことができる凍結乾燥製剤)で、約0.01%〜10%(w/w)の本発明の抗体、好ましくは約0.01%〜5%の抗体を含むのが好ましい。抗体は、組成物における単独の活性成分として、又は1以上の他の抗凝固剤(例えば、ヘパリン、ヒルジン又はヒルログ、クマリン、ワルファリン)、抗血小板物質(例えば、アスピリン、プラビックス(Plavix)、チクリッド(Ticlid)、レオプロ(ReoPro)、インテグリリン(Integrilin)又はアグレスタット(Aggrestat))、又は血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ)を含む混合製剤として投与することができる。さらに、本発明の抗体は、所望の抗凝固活性を高め増長するために1以上の適当な抗凝固剤、抗血小板又は血栓溶解剤の投与の前後に投与することができる。
【0041】
前述したように、本発明の抗体は、医療器具、例えばカテーテル、ステント等の侵襲性のデバイスに生じる潜在的な血液凝固を少なくするために使用することができる。一つの好ましい方法において、これらの器具は、体液との接触する前に、本発明の抗体で処理される(例えば、1mg/ml生理食塩水溶液として)。その代わりに、あるいはそれに加えて、本発明の抗体は血液凝固を最小限にするのに十分な量で体液と混合することができる。
【0042】
本発明の治療用の抗凝固剤組成物は、特に溶液の状態で、腸管外又は静脈内投与における使用に適している。このような組成物は、単位投与で簡便にく投与することができ、公知の医薬技術の方法に従って製造することができる。Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co.,Easton PA,(1980)を参照されたい。“単位投与”は、ヒトのような霊長類への単位投薬量として適している物理的に分離された単位で使用される本発明の治療用組成物を意味しており、それぞれの単位は、適当な希釈剤又は担体と混合されて所望の治療効果を奏するように予め計算された量の活性物質を含有している。単位投与は、治療される血栓症のタイプや重症度、抗体を利用する対象の血液凝固システムの能力、所望のFX(又はFIX)活性化の阻害又は中和の程度などの様々な要因によって決定される。一般に、投与される抗体の正確な量は、医師の判断によって決められるが、単位投与は、一般に投与の方法によって決まり、1日につき10ng/kg体重から50mg/kg体重の範囲、より一般的には1日につき100ng/kg体重から約10mg/kg体重の範囲でる。追加免疫剤の最初の投与に好適な処方は様々であるが、最初の投与に続いて1時間以上の間隔でその後の注射剤や他の投与が繰り返されることが一般的である。あるいは、血中濃度が少なくとも約10nMから10μMの抗体の濃度を維持するために連続的又は断続的な静脈内注射が行われてもよい。
【0043】
場合によっては、望ましい生物学的、化学的又は物理学的性質を与えるために、本発明の抗体を修飾することが好ましい。さらには、薬物、例えばフィブリン溶解活性を与えるt−PA、ストレプトキナーゼ、又はウロキナーゼのようなフィブリン薬剤へ、又はフィブリン結合ドメインのようなターゲティング剤と、抗体との抱合体(すなわち、共有結合による)を形成させることも有用となる。このような複合体は、例えばSPDP、カルボジミド等のヘテロ二官能性タンパク質架橋剤のような架橋分子の使用などのいくつかの方法、又は組み換え法によって行われ得る。
【0044】
フィブリン溶解剤のような薬物に加え、本発明の抗体は、例えば植物又は細菌由来のもの、例えばジフテリア毒素(すなわち、DT)、志賀毒素、アブリン、コレラ毒素、リシン、サポリン、プセウドモナス体外毒素(PE)、ヤマゴボウ抗ウィルスプロテイン、又はゲルオニンのような毒素と抱合化することもできる。生物学的に、このような毒素の活性断片は公知であり、例えばDT A鎖及びリシン A鎖を含む。毒素は、ホスホリパーセ(例えばホスホリパーゼC)のような細胞表面で活性を有する物質であってもよい。他の例としては、毒素は、例えばビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトリキサート、アドリアマイシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、又はシスプラチンのような化学療法剤であってもよく、又は毒素は、例えばヨウ素−131、イットリウム−90、レニウム−188又はビスマス−212のような放射性核種であってもよい(一般には、Moskaug et al., J. Biol. Chem., 264:15709(1989); I. Pastan et al., Cell, 47:641(1986); Pastan et al., Recombinant Toxins as Novel Therapeutic Agents, Ann. Rev. Biochem., 61:331(1992); Chimeric Toxins Olsnes and Phil, Pharmac. Ther., 25:355(1982); PCT出願公開番号WO94/29350;PCT出願公開番号WO94/04689;及び米国特許第5,620,939号を参照されたい)。また前述したように、毒素に加え、本発明の抗体は、哺乳動物への投与により補体結合能及び抗体依存細胞媒介性細胞毒性を与えるエフェクター分子(例えば、IgG1又はIgG3)と抱合化することができる。
【0045】
このような抗体−細胞毒性や抗体−エフェクター分子の抱合体は、その治療に有効な量を、癌細胞、免疫系細胞又はTFを発現できる内皮を有する又は有すると推定されている哺乳動物、好ましくはヒトのような霊長類に投与することができる。このような癌細胞、免疫系細胞や内皮の例は、乳及び肺の悪性腫瘍、単球及び血管内皮を含む。
【0046】
本発明の抗体はまた、前述したものに加え、他の様々な薬剤、例えば薬物、酵素、ホルモン、放射性核種を結合できるキレート剤、及び病気の診断や治療に有用な他のタンパク質やポリペプチドとも抱合化することができる。診断目的に関しては、本発明の抗体は、検出用にラベル化するか又せずに使用することができる。例えば、種々のラベル、例えば放射性核性、フッ素、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害剤、例えばハプテンのようなリガンド等をこの抗体を検出するためのラベルとして好適に使用される。
【0047】
診断方法では、インビボでの画像診断も提供される[例えば、A.K. Abbas, Cellular and Molecular Immunology, pg.328 (W.B. Saunders Co.1991)参照]。ほとんどのインビボ画像用途では、本発明の抗体は、例えば125I、32P、99Tc又は他の検出タグで検出用にラベルされ、続いて哺乳動物、特にヒトに、抗体を所望の標的と接触させるに十分な予め決定された時間に投与することができる。その対象物を、抗体の結合を検出するためにシンチグラフカメラ解析のような公知の方法で走査する。その解析は、ここで具体的に開示されるような多くの血栓症の診断や治療において有用となる。その方法は、心臓外科、特に血管形成、又は血栓の望ましくない形成が起こりうる外科的処置に関して使用される時、血栓の成長や動きを視覚化し、特に有用である。
【0048】
本発明の抗体は、また実質的に純粋(例えば、少なくとも約90%純度、好ましくは少なくとも約96又は97%純度)な未変性のTF、特に生物学的サンプルから採取される未変性のヒトTFを調製するために使用できる。例えば、未変性のTFは、既述されているように得られ(例えば、L.V.M. Rao et al., Thrombosis Res., 56:109(1989)を参照)、カップリング反応混合物を形成する抗体を含有する固体支持体と溶液を混合することによって精製される。固体支持体としては、例えば、マイクロタイタープレートのようなプレート壁を含み、またポリスチレン、ポリ塩化ビニル、Sephadex(商標登録)(ファーマシアファインケミカルズ)のような架橋デキストラン、アガロース、ポリスチレンビーズ(アボットラボラトリーズ)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、架橋形ポリアクリルアミド、ニトロセルロース又はナイロン等からなるか又はこれらを含んでいる支持体も含む。このTFは、標準的な免疫技術に従って実質的に純粋な形態で固体支持体から分離することができる。一般には前述のHallow and Lane 及び前述のAusubel et al.を参照されたい。
【0049】
前述したように、本発明の抗体は、生物学的サンプルにおいて未変性のヒトTF、特に血栓と関連した未変性のTFを検出するために使用することができる。生物学的サンプルとしては、例えば、血漿、血清、唾液、尿、大便、膣液、胆汁、リンパ液、眼水、脳脊髄液、細胞培地及び組織、特に心臓組織のような血管組織などが含まれる。サンプルは、例えば次に記載のものと関連する血栓症、好ましくは再狭窄を患っている疑いのある又は患っている哺乳動物から適切に選ぶことができる;経皮的経管的冠状動脈介入のような侵襲的処置、心肺バイパス外科、動脈内膜切除、末梢血管バイパス移植片、再建又は形成外科、関節置換術;心臓病、例えば心筋梗塞、心筋症、心臓弁膜症、安定狭心症、不安定狭心症、又は塞栓形成と関連した心房細動;播種性血管内凝固症候群を含む凝固障害、深部静脈血栓症、ステントやカテーテルのような医療器具の展開;ショック(例えば敗血症性ショックシンドローム)、血管損傷、肝臓病、脳出血、熱射病、悪性腫瘍(例えば膵臓、卵巣又は小肺細胞癌)、狼蒼、子癇、血管周囲閉塞症、及び腎臓病。
【0050】
このようなアッセイでは、本発明の抗体は好適な原子又は分子、例えば放射性ヨード、トリチウム、ビオチン、又は例えばβ−ガラクトシダーゼ若しくはセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼのような酵素に結合して抗イディオタイプ抗体のような検出可能な生成物を生成することができる試薬、又は蛍光タグ(例えば、フルオレセイン又はローダミン)を、公知の方法に従って検出用にラベル化することができる。生物学的サンプルを検出用のラベル化された抗体と接触させた後、反応を起こしていないあらゆる抗体を、生物学的サンプルから分離し、ラベル(又は生成物)を、抗体キャプチャーアッセイ、抗体サンドウィッチアッセイ、RIA、ELISA、免疫沈降、免疫吸収等の従来の免疫学的方法によって検出することができる(前述のHarlow and Lane; 前述のAusubel et al.)。適切な対照サンプルにおいて検出されるよりも多く存在するラベル(又は生成物)は、当該生物学的サンプルに、未変性のTFの存在、特に血栓の存在を示すことになる。例えば、本発明の抗体は、検出用にラベル化して検出することができ、好ましくは未変性のTFの量を、抗体キャプチャーアッセイ、ELISA、抗体サンドウィッチアッセイ、RIA、免疫沈降、免疫吸着等の標準的な免疫技術に従って計測することができる。ある場合では、特に組織が使用される時、免疫学的技術は、タンパク質構造を実質的に維持することが知られている試薬(例えば、稀ホルムアルデヒド)で組織を固定することを包含している。一般には、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, (1989); Harlow and Lane in Antibodies: A Laboratory Manual, CSH Publications, NY (1988)を参照されたい。
【0051】
本発明の抗体はまた、ある種の悪性細胞だけでなく、繊維芽細胞、脳細胞、免疫細胞(例えば単球)、上皮を含む未変性のTFを発現する細胞を検出し精製するために使用することができる。細胞を検出し精製する好ましい方法は従来の免疫学的方法(例えばFACSのようなフローサイトメトリー法や免役パニング)を含む。未変性のTFを発現する細胞の実質的に純粋な集団は、臨床及び研究目的、例えばTFに結合する抗体をスクリーニングするための培養細胞のような細胞の株化に有用である。
【0052】
本発明はまた、テストサンプル、特に血液、血漿等の体液、又は前述した組織 において未変性のTF、特に未変性のヒトTFの検出用試験及び診断キットを提供する。診断用キットはELISAフォーマットのようなあらゆる免疫学的に許容しうるフォーマットにおいて使され、生物学的サンプルにおける未変性のTFの存在や量を検出することができる。
【0053】
また、上記で述べたように、本発明はヒト組織因子に特異的に結合し、結合複合体を形成するヒト型抗体に関する。組織因子は天然のものでも組み換えによるもの(rHTF)でもよい。好ましくは、複合体に結合する第X因子又は第IX因子が阻害される。本発明の好ましい態様において、ヒト型抗体はhTFに対し、約1nM以下、好ましくは約0.5nM以下、より好ましくは約0.01nMから約0.4nMの親和性定数(K)を有する。ヒト型抗体に対する親和性定数の決定に関しての詳細は実施例11を参照されたい。「特異結合」という言葉は、このヒト型抗体がTFと共に検出可能な結合複合体を形成するが、その他の抗原とは結合しないで、当該複合体がRIA、ウェスタンブロット、及びELISA等の標準的な免疫学的方法により測定されることを意味する。
【0054】
さらに、本発明のヒト型抗体のその他の特徴として、標準プロトロンビン(PT)凝固アッセイで測定される血液凝固にかかる時間を、少なくとも約5秒間延長する能力があげられる。好ましい態様において、アッセイにおけるヒト型抗体の量は約5nMから約75nM、より好ましくは約10nMから50nMである。例えば、下記の実施例11(ヒト型抗体による標準PT凝固アッセイの方法を記載)を参照されたい。
【0055】
本発明におけるその他の好ましいヒト型抗体は、組織因子好ましくはヒトTFに対してATCCに寄託された受託番号HB−12255のH36.D2.B7から得られた抗体とほぼ同じかそれ以上の結合特異性を有する。同様に、TFに対して、ATCCに寄託された受託番号HB−12255のH36.D2.B7から得られた抗体とほぼ同じかそれ以上の結合親和性を有するヒト型抗体も好ましい。結合特異性及び結合親和性を測定する方法は、当業者に公知であり、例えば以下に記載する特異的アッセイなどがあげられる。
【0056】
さらに本発明におけるヒト型抗体は、ネズミの相補性決定領域(CDR)を少なくとも1つ含有する。当然ながら、免疫グロビンの軽鎖及び重鎖は、特定の構造上の類似点を共有する。例えば、両方とも比較的配列が保存されている4つのフレームワーク領域(FR1−4)を有する。各々のFR1−4(FR1、FR2、FR3、FR4)は、それぞれ3つのCDR、すなわちCDR1、CDR2、CDR3に共有結合している。一般に、4つのFRは主にベータシート構造からなり、相互に連結したCDRはベータシート構造の一部に結合、あるいは一部を形成しているループを形成すると考えられている。多くのCDRは、隣接するFRの近くにあり、反対側の軽鎖又は重鎖の対応するCDRと共に抗原結合部位の形成を助けている。種々のCDR及びFRが開示されている。例えば、「Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest US Dept. of Health and Human Services, US Government Printing Office (1987)」を参照されたい。
さらに、「EP−A−0239400」及び「米国特許番号5,985,279」(FRではなく、CDRが異なる種に由来する変異した抗体(altered antibodies)の調製方法が記載されている。)も参照されたい。
【0057】
「ヒト型」という言葉は、ヒトフレームワーク領域と、通常ラット又はマウスなどの齧歯類の動物の免疫グロビンに由来するCDRを少なくとも1つ含有する免疫グロビンを意味する。CDRを提供する動物の免疫グロビンは「ドナー」と呼ばれ、ヒトの免疫グロビンは「アクセプター」と呼ばれる。例えば、これらの免疫グロブリンの定常領域には、特定のTF結合フラグメントは、必ずしも存在する必要はない。もし存在する場合には、好ましい定常領域はヒトの免疫グロブリンの定常領域と実質的に同一又は相同、即ちアミノ酸配列の少なくとも約90%が相同であり、好ましくは、少なくとも約95%又はそれ以上が相同である。従って、ヒト型の免疫グロブリンにおいて、CDRを除いたほとんど全ての部分が、対応する天然のヒトの免疫グロブリンの配列と実質的に相同である。
【0058】
「ヒト型抗体」という言葉は、ヒト型の軽鎖及びヒト型の重鎖の免疫グロブリンを含有する抗体を意味する。これらの抗体の製造方法及び使用方法は、すでに上記に記載されている。また、「S.L. Morrison,(上記記載)」、「Oi et al.,(上記記載)」、「Teng et al.,(上記記載)」、「Kozbor et al.,(上記記載)」、「Olsson et al.,(上記記載)」、及び既に引用されたその他の文献も参照されたい。
【0059】
例えば、ヒト型抗体の具体例としては、1)アミノ酸配列のそれぞれ少なくとも約90%好ましくは少なくとも95%が、対応するヒトフレームワーク(FRs)と相同である軽鎖及び重鎖のフレームワーク(FRs)を含有し、2)マウス由来のCDRを少なくとも1つ含有し、好ましくは全てのCDRがマウス由来であり、3)少なくとも約90%好ましくは少なくとも95%が、対応するヒトの免疫グロブリンの定常領域と相同である免疫グロビン定常領域を含有するものがあげられる。ドナー抗体は、得られたヒト型抗体がCDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合すると予想されるため、「ヒト型」の過程において「ヒト型になる」と考えられる。
【0060】
さらに、本明細書に記載されているヒト型抗体は、アミノ酸配列中の1つ又は2つ以上のアミノ酸が保存的に置換されていてもよく、それは連続的であっても非連続的であってもよい。例えば、このような置換は一般に抗原への結合又はその他の免疫グロブリン機能に対し、実質的にほとんど影響を与えないか、全く影響を与えない。複数形を含む「保存的な置換」という言葉は、gly←→ala、val←→ile←→leu、asp←→glu、asn←→gln、ser←→thr、lys←→arg、及びphe←→tyrの組み合わせを包含している。
【0061】
さらに、ヒト型抗体は、少なくとも1つの未変性のヒト免疫グロブリン配列の対応する可変領域に対し、アミノ酸配列の少なくとも70%が相同(例えば約73%から75%の相同性)である可変領域を有する。さらに、本発明のヒト型抗体は、少なくとも1つのヒト抗体に対し、抗体全体の少なくとも90%が相同である。
【0062】
本発明のより具体的なヒト型抗体としては、各フレームワーク(FR)1、2、3、4が、図12A(配列番号 )に示される軽鎖FR配列、好ましくは図12Aにおいて「LC−09」に示される配列に対して、少なくとも約90%のアミノ酸配列の相同、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上が相同であるものがあげられる。より好ましくは、図14A又は図15A(配列番号 )に示される配列に対して、少なくとも約90%のアミノ酸配列が相同、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上の配列が相同である軽鎖の定常領域を含有するヒト型抗体があげられる。
【0063】
さらに具体的なヒト型抗体としては、各フレームワーク(FR)1、2、3、4が、図13A(配列番号 )に示される重鎖配列、好ましくは図13Aにおいて「HC−08」に示される配列に対して、少なくとも約90%のアミノ酸配列が相同、好ましくは約95%又はそれ以上が相同であるものがあげられる。その他のヒト型抗体は、図14B又は図15B(配列番号 )に示される配列に対して、少なくとも約90%のアミノ酸配列が相同、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上が相同である重鎖の定常領域を有する。
ある特定の態様において、ヒト型抗体はIgG1(hOAT)又はIgG4(hFAT)のアイソタイプを有する。実施例9を参照されたい。
【0064】
また本発明は、本明細書に記載されているヒト型抗体の機能的なフラグメントを提供する。好ましいフラグメントは約1nM以下、好ましくは約0.5nM以下、より好ましくは約0.01nMから約0.4nMの親和性定数(K)で、TFに特異的に結合する。特に好ましいものとして、抗原結合性のFab、Fab’、F(ab)フラグメントがあげられる。
【0065】
上記で述べたように、本発明は、ネズミの相補決定領域(CDR)、例えばCDR1、CDR2、CDR3を少なくとも1つ含有するヒト型抗体に関する。好ましい態様において、抗体はヒト組織因子(TF)に特異的に結合し複合体を形成する。特に、TF又はTF:VIIaに結合する第X因子及び第IX因子、及び、TF:FVIIaによる活性化が阻害される。上記で述べたように、好ましいCDR(軽鎖及び重鎖の)は、齧歯類の動物特にマウスに由来するものである。
本発明のヒト型抗体のある態様において、抗体はさらに、ヒトフレームワーク(FR)領域を少なくとも1つ含有する。好ましくは、全てのFR領域(軽鎖及び重鎖の)がヒト由来のものである。
【0066】
より好ましい態様において、重鎖超可変領域の第1番目のCDR(CDR1)は、図13B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列に対し少なくとも90%が相同であり、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上が相同である。また、重鎖超可変領域の第2番目のCDR(CDR2)は、図13C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列に対し少なくとも90%が相同であり、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上が相同である。同様に好ましくは、重鎖超可変領域の第3番目のCDR(CDR3)は、図13D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列に対し少なくとも90%が相同であり、より好ましくは約95%又はそれ以上が相同である。
2つの核酸の配列の相同性は、解析及び/又はBLAST及びFASTA等の従来のコンピューターソフトウェアの使用によって測定することができる。
【0067】
本発明のその他の態様において、軽鎖超可変領域の第1番目のCDR(CDR1)は、図12B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列に対し少なくとも90%が相同であり、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上が相同である。また、軽鎖超可変領域の第2番目のCDR(CDR2)は、図12C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列に対し少なくとも90%が相同であり、好ましくは約95%又はそれ以上が相同である。好ましくは、軽鎖超可変領域の第3番目のCDR(CDR3)は、図12D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列に対し少なくとも90%が相同であり、より好ましくは約95%又はそれ以上が相同である。
【0068】
本発明のその他のヒト型抗体は、図13A(配列番号 )において「FR1 HC−08」に示されるアミノ酸配列に対し、少なくとも90%が相同であり、好ましくは約95%又はそれ以上が相同である重鎖超可変領域の第1番目のフレームワーク(FR1)を含有する。ある態様において、FR1は以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを含有する:E1→Q、Q5→V、P9→G、L11→V、V12→K、Q19→R、T24→A。好ましくは、FR1はこれらの置換のうち2、3、4、5、又は6個の置換を有し、これらすべてのアミノ酸が置換されることは種々の用途において好ましい。
【0069】
さらに、本発明のヒト型抗体は、図13A(配列番号 )において「FR2 HC−08」に示される配列に対し、少なくとも90%が相同であり、好ましくは約95%又はそれ以上が相同である重鎖超可変領域の第2番目のフレームワーク(FR2)を含有する。ある態様において、FR2は以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有する:41H→P、44S→G。好ましくは、FR2これらの両方のアミノ酸置換を有する。
【0070】
本発明はまた、図13A(配列番号 )において「FR3 HC−08」に示される配列に対し、少なくとも90%が相同であり、好ましくは約95%又はそれ以上が相同である重鎖超可変領域の第3番目のフレームワーク(FR3)を有するヒト型抗体に関する。ある態様において、FR3は以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有する:76S→T、77T→S、80F→Y、82H→E、84N→S、87T→R、89D→E、91S→T。好ましくは、FR3はこれらのアミノ酸置換のうち2、3、4、5、又は6個の置換を有し、一般にこれら7個すべてのアミノ酸が置換されていることが好ましい。
【0071】
また、図13A(配列番号 )において「FR4 HC−08」に示されるアミノ酸配列に対し、少なくとも90%が相同であり、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上が相同である重鎖超可変領域の第4番目のフレームワーク(FR4)を有するヒト型抗体に関する。好ましくは、FR4は以下のアミノ酸置換を有する:113L→V。
本発明のその他のヒト型抗体は、図12A(配列番号 )における「FR1 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対し、少なくとも約90%が相同であり、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上が相同である軽鎖超可変領域の第1番目のフレームワーク(FR1)を有する。ある態様において、FR1は以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有する:11Q→L、15L→V、17E→D、18→R。好ましいFR1はこれらのアミノ酸置換のうち2又は3個の置換を有し、一般にこれら4個すべてのアミノ酸が置換されていることが好ましい。
【0072】
また、本発明は、図12A(配列番号 )において「FR2 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対し、少なくとも約90%が相同であり、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上が相同である軽鎖超可変領域の第2番目のフレームワーク(FR2)を有するヒト型抗体に関する。好ましいFR2は以下のアミノ酸置換を有する:37Q→L。
本発明はまた、図12A(配列番号 )において「FR3 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対し、少なくとも約90%が相同であり、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上が相同である軽鎖超可変領域の第3番目のフレームワーク(FR3)を有するヒト型抗体を包含する。ある態様において、FR3は以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有する:70K→D、74K→T、80A→P、84A→V、85N→T。好ましくは、FR3はこれらのアミノ酸置換のうち2、3、又は4個の置換を有し、一般にこれら5個すべてが置換されていることが好ましい。
【0073】
本発明のその他のヒト型抗体は、図12A(配列番号 )において「FR4 LC−09」に示される配列に対し、少なくとも約90%が相同であり、好ましくは少なくとも約95%又はそれ以上が相同である軽鎖超可変領域の第4番目のフレームワーク(FR4)を有する。ある態様において、FR4は以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つ、好ましくは全ての置換を有する:100A→Q、106L→I。
本発明はまた、前述のヒト型抗体におけるヒトTFへの結合フラグメントに関する。これらのフラグメントの例としてFab、Fab’及びF(ab)があげられる。
【0074】
ある特定の態様において、本発明は、齧歯類、一般にマウスの相補決定領域(CDR)を少なくとも1つ含有するヒト型抗体であることを特徴とする。好ましくは、その抗体は、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合し複合体を形成する。この複合体において、TF又はTF/VIIaに結合する第X因子と第IX因子、及び、TF/VIIaによる活性化が阻害される。また、好ましくは、重鎖のヒト型抗体は、以下の構成要素のうち少なくとも1つ、より好ましくはすべてを含有する:
a)図13B(配列番号 )に示されるCDR1アミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第1番目のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号 )に示されるCDR2アミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第2番目のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号 )に示されるCDR3アミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第3番目のCDR(CDR3)、
d)図13A(配列番号 )において「FR1 HC−08」に示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第1番目のフレームワーク(FR1)、
e)図13A(配列番号 )において「FR2 HC−08」に示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第2番目のフレームワーク(FR2)、
f)図13A(配列番号 )において「FR3 HC−08」に示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第3番目のフレームワーク(FR3)、
g)図13A(配列番号 )において「FR4 HC−08」に示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第4番目のフレームワーク(FR4)。
【0075】
ある特定の態様において、軽鎖のヒト型抗体は同様に、以下の構成要素のうち少なくとも1つ、より好ましくはすべてを含有する:
h)図12B(配列番号 )に示されるCDR1アミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第1番目のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号 )に示されるCDR2アミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第2番目のCDR(CDR2)、
j)図12C(配列番号 )に示されるCDR3アミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第3番目のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号 )において「FR1 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第1番目のフレームワーク(FR1)、
l)図12A(配列番号 )において「FR2 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第2番目のフレームワーク(FR2)、
m)図12A(配列番号 )において「FR3 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第3番目のフレームワーク(FR3)、
n)図12A(配列番号 )において「FR4 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%が相同である第4番目のフレームワーク(FR4)。
好ましくは、ヒト型抗体はさらに、図14A(配列番号 )又は図15A(配列番号 )の軽鎖定常配列を含有する。同様に好ましくは、抗体は図14B(配列番号 )又は図15B(配列番号 )の重鎖定常領域を含有する。
【0076】
また、本発明は以下の構成要素のうち少なくとも1つ、より好ましくはすべてを含有する重鎖のヒト型抗体に関する:
a)図13B(配列番号 )に示されるCDR1アミノ酸配列と相同である第1番目のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号 )に示されるCDR2アミノ酸配列と相同である第2番目のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号 )に示されるCDR3アミノ酸配列と相同である第3番目のCDR(CDR3)、
d)図13A(配列番号 )において「FR1 HC−08」に示されるアミノ酸配列と相同である第1番目のフレームワーク(FR1)、
e)図13A(配列番号 )において「FR2 HC−08」に示されるアミノ酸配列と相同である第2番目のフレームワーク(FR2)、
f)図13A(配列番号 )において「FR3 HC−08」に示されるアミノ酸配列と相同である第3番目のフレームワーク(FR3)、
g)図13A(配列番号 )において「FR4 HC−08」に示されるアミノ酸配列と相同である第4番目のフレームワーク(FR4)。
【0077】
ある態様において、軽鎖のヒト型抗体はさらに、以下の構成要素のうち少なくとも1つ、より好ましくはすべてを含有する:
h)図12B(配列番号 )に示されるCDR1アミノ酸配列と相同である第1番目のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号 )に示されるCDR2アミノ酸配列と相同である第2番目のCDR(CDR2)、
j)図12D(配列番号 )に示されるCDR3アミノ酸配列と相同である第3番目のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号 )において「FR1 LC−09」に示されるアミノ酸配列と相同である第1番目のフレームワーク(FR1)、
l)図12A(配列番号 )において「FR2 LC−09」に示されるアミノ酸配列と相同である第2番目のフレームワーク(FR2)、
m)図12A(配列番号 )において「FR3 LC−09」に示されるアミノ酸配列と相同である第3番目のフレームワーク(FR3)、
n)図12A(配列番号 )において「FR4 LC−09」に示されるアミノ酸配列と相同である第4番目のフレームワーク(FR4)。
好ましくは、ヒト型抗体はさらに、図14A(配列番号 )又は図15A(配列番号 )の軽鎖定常配列を含有する。同様に好ましくは、抗体は図14B(配列番号 )又は図15B(配列番号 )の重鎖定常領域を含有する。
【0078】
本発明のヒト型抗体は、抗体全体の形態の他に種々の適した形態で存在してもよい。例えば、Fv、Fab,F(ab’)、及び、二官能性のハイブリッド抗体(例えばLanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17, 105 (1987))、及び単鎖(例えばHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 5879-5883 (1988)、及びBird et al., Science 242, 423-426 (1988)これらの文献は、参照することにより本明細書に取り込まれる)などがあげられる。また、Hood et al., Immunology, Benjamin, N.Y.,2.sup.nd ed.(1984), Harlow and Lane, Antibodies. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988) and Hunkapiller and Hood, Nature, 323, 15-16 (1986)(これらの文献は参照することにより本明細書に取り込まれる)も参照されたい。
【0079】
複数形を含む「キメラ抗体」及びこれに関連する言葉は、軽鎖及び重鎖の遺伝子が、異なる種に属する免疫グロブリンの遺伝子のセグメントから、一般に遺伝子操作により構築された抗体を意味する。例えば、マウスモノクローナル抗体の遺伝子の可変(V)部分は、γγ等のヒトの定常(C)部分に結合することができる。したがって、一般的な治療用キメラ抗体は、V(可変部分)又はマウス抗体の抗原結合ドメイン、及び、C(定常部分)又はヒト若しくはその他の哺乳類の抗体のエフェクタードメインからなるハイブリッド蛋白質である。特に好ましいキメラ抗体は、本明細書に記載されているcH36マウス−ヒトキメラである。
【0080】
本発明のヒト型抗体はポリクローナルでもモノクローナルでもよく、必要に応じてIgG1又はIgG4のアイソタイプを有する。
本明細書に記載されているヒト型抗体は、上記ですでに参照したストラテジー又はそれらを組み合わせることによって製造することができる。例えば、S.L.Morrison,(上記記載);Oi et al.,(上記記載);Teng et al.,(上記記載);Kozbor et al.,(上記記載);Olsson et al.,(上記記載);及び先に引用されたその他の文献を参照されたい。
【0081】
1つの方法として、4つの一般的なステップにより抗体をヒト型にすることができる。まず、軽鎖及び重鎖のマウス抗体のアミノ酸配列をcH36マウス−ヒトキメラ抗体から得た。2番目に、ヒト抗体のどのフレームワーク領域が「ベストフィット」するか、すなわち対応するマウスのフレームワークのアミノ酸配列に最も近いものを決定することにより、cH36抗体をヒト型にした。3番目に、該当する軽鎖及び重鎖のFR配列をヒト型にし、4番目に、ヒト型の軽鎖又は重鎖(又は、ヒト型の軽鎖及び重鎖、以下に記載されるメガベクター参照)をコードする単離された核酸で形質転換し、発現させる。
【0082】
例えば、ヒト型の免疫グロブリンにおけるフレームワークの限られた数のアミノ酸を、アクセプターではなくドナー側のアミノ酸と同じになるように選択した。この方法の利点の1つは、ヒト型の免疫グロビン鎖を有する抗体の親和性を強めることである。米国特許番号5,985,279、米国特許番号5,693,762、及び、EP−A0239400(ヒト型抗体の製造に関する一般的な方法を開示している。)も参照されたい。
【0083】
より詳細には、「ベストフィット」法はキメラ抗組織因子抗体cH36のヒト型に適用され、特に好ましい方法である。この方法は、図1A及び1B(配列番号2及び4)に示されるネズミの軽鎖及び重鎖の可変配列を使って、ネズミの可変ドメインに最も一致するヒト抗体における可変ドメインの配列について入手できるすべての蛋白質データベースが検索(「比較」)された。Kabat et al.,(上記記載)を参照されたい。BLAST、FASTA及び関連プログラムなどの容易に入手できる多くのコンピュータープログラムを使用して、このステップを実施することができる。軽鎖及び重鎖のフレームワーク1、2、3、4は、抗原結合のためにCDRを正しい位置に保つことが広く認識されているため、特に興味深い。検索の結果得られたのは、主として、照会したマウス配列に最も一致した配列のリスト、各配列に対する相同性の割合、対応するネズミの配列に対する一連の各ヒト配列であった。この分析は軽鎖及び重鎖においてそれぞれ実施された。
【0084】
「ベストフィット」法によると、ミスマッチのアミノ酸の数は、照会したマウスのフレームワークの配列とデータベース上の対応するヒトのフレームワークの配列の間が最も少なくなる。多くの場合、適したヒトのフレームワーク領域は、以下に示すアイデンティティー基準に基づいて選択される。軽鎖におけるネズミのFR1のアミノ酸配列は対応するヒトのFR1に対し少なくとも約80%が相同であり、ネズミのFR2は対応するヒトのFR2に対し少なくとも約90%が相同であり、ネズミのFR3はヒトのFR3に対し少なくとも約90%が相同であり、ネズミのFR4は対応するヒトのFR4に対し少なくとも約75%が相同である。また、重鎖におけるネズミのFR1のアミノ酸配列は対応するヒトのFR1に対し少なくとも約80%が相同であり、ネズミのFR2はヒトのFR2に対し少なくとも約85%が相同であり、ネズミのFR3は対応するヒトのFR3に対し少なくとも約70%が相同であり、ネズミのFR4は対応するヒトのFR4に対し少なくとも約90%が相同であるように選択される。特に、同様のヒトのフレームワーク配列の候補を同定する際は、保存的なアミノ酸置換が好まれる。これらの要因を検討した結果、得られたヒトのフレームワークがキメラcH36抗体のヒト型を示す基準となることが分かった。
また可能であれば、「ベストフィット」法により、軽鎖及び重鎖におけるすべてのヒトフレームワークが、同じヒト抗体クローンに由来することが好ましい。
【0085】
目的のヒトのフレームワークが決定されたら、組み換えポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により、軽鎖及び重鎖において目的のアミノ酸置換が行われる。一般に、変異させる必要が無い部分を含有するマウスの可変ドメインフレームワークが、変異のためのオリゴヌクレオチドとして調製され、使用された。種々の長さのオリゴヌクレオチドが使用される。組み換えPCR及び関連方法に関する一般的な開示についてはWO92/07075を参照されたい。
一般に、通常のPCRはクローニングに使用され、クローニング又は診断用エンドヌクレアーゼ部位を導入し、また、可変領域の端にあるアミノ酸を置換させる。PCRに基づく(PCRベースの)変異は、複数のアミノ酸を同時に置換させるために、特にこれらのアミノ酸が可変領域の中央にある場合に使われる。特定部位の変異は同時に1つ又は2つのアミノ酸置換を導入するために行われる。各ステップの後、部分的にヒト型であるクローンが配列化され(sequenced)、その後、これらの可変領域の一部が発現ベクターにクローンされた。この操作のより詳しい方法は実施例に記載されている。
【0086】
上記の「ベストフィット」法によりキメラcH36抗体をヒト型にし、フレームワーク及び/又はCDRをコードする変異した核酸を、軽鎖又は重鎖の定常領域をコードする適当なDNAに結合させた。その後、この構成を発現ベクターにクローンし、宿主細胞、好ましくは哺乳類細胞に形質転換した。これらのステップは、公知の組み換え及び細胞培養技術により行った。したがって、本発明のヒト型抗体は以下の一般的な方法により作製できる:
(a)発現宿主に適したレプリコン、及び、少なくとも、「ベストフィット」法により作製されたヒト型のフレームワーク領域1−4、及びcH36抗体によるネズミのCDR1−3を有する、Ig重鎖又は軽鎖の可変ドメインをコードするDNA配列に、制御可能に結合した適当なプロモーターを有する第1の発現ベクターの調製、
(b)少なくとも、上記の「ベストフィット」法により作製された相補的なヒト型のフレームワーク領域1−4、及びcH36抗体によるネズミのCDR1−3を有する、それぞれ相補的なIg軽鎖又は重鎖の可変ドメインをコードするDNA配列に、制御可能に結合した適当なプロモーターを有する第2の複製可能な発現ベクターの調製、
(c)第1の又は両方の調製されたベクターを、細胞株にトランスフェクトし、
(d)トランスフェクトされた細胞株を培養し、変異した抗体を作製する。
好ましくは、ステップ(a)及び(b)のDNA配列は、ヒト抗体鎖における適当な定常ドメインをコードする。適当なアイソタイプとしては、例えばIgG1及びIgG4があげられる。
【0087】
また、本発明の適当なヒト型抗体は、少なくとも、「ベストフィット」法により作製されたヒト型のフレームワーク領域1−4、及びcH36抗体によるネズミのCDR1−3を有し、Ig重鎖又は軽鎖の可変ドメインをコードするDNA配列に制御可能に結合した適当なプロモーターを有する単一の複製可能な「メガ」ベクターを調製ことによっても製造される。好ましくは、メガベクターはさらに、少なくとも上記の「ベストフィット」法により作製された相補的なヒト型のフレームワーク領域1−4、及びcH36抗体によるネズミのCDR1−3を有する、それぞれ相補的なIg軽鎖又は重鎖の可変ドメインをコードするDNA配列に実施可能に結合した適当なプロモーターを有する。通常、メガベクターの使用は、単一ベクターからのヒト型抗体の発現が必要である本発明の態様に適する。
【0088】
本発明のヒト型抗体及びその断片を作り上げるのに、適している方法がある。ひとつの態様において、少なくとも一つ、好ましくは以下の全てのステップが含まれているのが望ましい。
a)げっ歯類、好ましくはマウスの抗体の軽鎖のフレームワークと、収集された対応するヒト抗体のフレームワークのアミノ酸配列を比較する、
b)収集されたヒトのフレームワークの配列の中から、対応するげっ歯類の軽鎖のフレームワークのアミノ酸配列の相同性が最大となる(即ち、少なくとも約70%の配列の相同性を有する)ものを選択する、
c)げっ歯類の軽鎖のフレームワークをコードするDNAの断片を、ステップb)で選択されたヒトのフレームワークと実質的に相同(即ち、少なくとも約95%の相同性がある)のアミノ酸配列を有するヒト化された軽鎖フレームワークをコードするように変異を起こさせる、
d)ステップb)で選択された対応するそれぞれのヒト化フレームワークが、好ましくは同じ又は異なったヒト抗体である、ヒト化軽鎖フレームワークをコードするそれぞれの配列に基づく複数個のDNA配列を製造するために、げっ歯類の軽鎖のそれぞれのフレームワークについて、その数だけステップa)〜c)を繰り返す、
e)げっ歯類の抗体の少なくとも軽鎖の可変領域をコードしている第一のベクターに、ステップd)で製造されたヒト化フレームワークの配列をコードしているDNA配列を結合する、そして
f)結合されたベクターをヒト化抗体を製造するのに十分な条件下で、適した宿主に導入する。この方法で使用される好ましい軽鎖のフレームワークは、本明細書に開示されている特異的なマウスのもの及びヒト化された軽鎖フレームワークを含有している。
【0089】
他の態様において、ヒト型抗体を製造するための次の方法は、さらに少なくとも一つ、好ましくは以下の全てのステップが含まれているのが望ましい。
g)げっ歯類の重鎖のフレームワークと、収集された対応するヒト抗体のフレームワークのアミノ酸配列を比較する、
h)収集されたヒトのフレームワークの配列の中から、対応するげっ歯類の重鎖のフレームワークのアミノ酸配列の相同性が最大となる(即ち、少なくとも約70%の配列の相同性を有する)ものを選択する、
i)げっ歯類の重鎖フレームワークをコードするDNAの断片を、ステップb)で選択されたヒトのフレームワークと実質的に相同(即ち、少なくとも約95%の相同性がある)のアミノ酸配列を有するヒト化重鎖フレームワークをコードするように変異を起こさせる、
j)ヒト化重鎖フレームワークをコードするそれぞれの配列に基づいて、複数個のDNA配列を製造するために、ステップg)〜i)を、それぞれのげっ歯類の重鎖のフレームワークについて、その数だけ繰り返す。好ましくは、ステップh)で選択された対応するヒト化フレームワークのそれぞれは、同じ又は異なったヒト抗体である。この方法で使用される重鎖フレームワークの配列は、本明細書に開示されている特異的なネズミのもの及びヒト化重鎖フレームワークを画乳している。
【0090】
さらには、ヒト型抗体を製造するより詳しい方法は、げっ歯類の抗体の少なくとも重鎖の可変領域をコードする第二のベクターに、ステップj)で製造されたヒト化フレームワークの配列をコードするDNA配列を結合する方法である。そして、これらの結合された第一及び第二のベクターをヒト型抗体を製造するのに十分な条件下で、宿主に導入する。
【0091】
先に述べたとおり、本発明のヒト型抗体を発現させるのは、単一のベクターによる方法が好ましい。当該ベクターは、場合によっては「メガ」ベクターとすることもできる。ひとつの態様において、少なくともげっ歯類の抗体の重鎖の可変領域及び軽鎖の可変領域をコードする第一のベクターに、ステップj)で製造されたヒト化フレームワークの配列をコードするDNA配列を結合し、そしてさらに結合された第一のベクターを、ヒト型抗体を製造するのに十分な条件下で、宿主に導入する。
【0092】
「結合する(assembling)」又は「結合した(assembled)」という語句は、従属するヒト化フレームワークをコードするDNA配列をベクターに導入するための標準的な組み換え技術の使用を意味する。そのような結合は、以下の手法の一つあるいはそれらの組合せにより行うことができるが、これらに限定されるものではない。ひとつのフレームワークに変異を繰り返して(iterative changes)導入すること。フラグメントを切断し、結合すること(制限酵素及びリガーゼの使用による)。又は、合成法によりDNAを合成すること。一般的には、上記のHarlow及びLane、Ausubel et al.を参照。
【0093】
前述のヒト型抗体を製造する方法は、条件を満たしているほとんど全ての変異誘発法によって実施可能である。特に、前記のステップc)及びi)の片方あるいは両方のステップにおいては、部位に直結した変異誘発法(site directed mutagenesis)又は標準的なPCR法によって、げっ歯類のフレームワーク中の所望の部位のアミノ酸を適切なヒトアミノ酸に置換することができる。一般的に、修飾された(ヒト化された)フレームワークの配列は、データベースから選択されたヒトのフレームワークに対応している。
【0094】
ヒト型抗体は、前述のS.L.Morrison, Oi et al., Teng et al., Kozbor et al. Olsson et al.その他の文献において開示されている、適切な組換え発現法により製造可能である。
例えば、本発明の核酸は、本明細書にて開示されているヒト型抗体又はその断片の重鎖又は軽鎖の少なくとも一つをコードするものである。一般的に、核酸は、単離された核酸を含む組換えDNAベクターである。一般に、DNAベクターは、ヒト型化された免疫グロブリンのコーディング配列に制御可能に結合している、天然由来の又は異種プロモーター領域を含む発現制御ポリヌクレオチド配列をさらに含有している。好ましくは、発現制御配列は、宿主真核細胞に核酸を導入又は感染可能なベクター内の真核プロモーターシステムであるが、原核細胞の宿主のための制御配列もまた使用可能である。ひとたびベクターが適した宿主に組み込まれると、宿主は当該ヌクレオチド配列がハイレベルで発現できる条件に維持される。そして、必要であれば、次いでL鎖、H鎖、L鎖/H鎖二量体、もしくは完全な抗体、結合フラグメント、又はその他の免疫グロブリン型を採取し、精製する。
【0095】
最終的に所望のヒト型抗体を発現することが可能な本発明の核酸配列は、多種多様な手法によってのみならず、多種多様なポリヌクレオチド(ゲノム、又はcDNA、RNA、合成オリゴヌクレオチド、その他)、及びコンポーネント(即ちV、J、D及びC領域)から調製される。ゲノムの適切な部位に合成配列を結合させることは現在もっとも一般的な製造方法である。しかしcDNA配列もまた利用できる。詳しくは、例えば前述のS.L.Morrison, Oi et al., Teng et al., Koabor et al., Olsson et al.;欧州特許出願公開番号0239400、及びRiechmann, L. et al., Nature, 332,323-327(1988)及びそれらに引用されている文献を参照されたい。
【0096】
他の態様において、DNA発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞を検出可能にするために、一つあるいは二つ以上の選択マーカー、例えば、テトラサイクリン、アンピシリン、又はネオマイシンを含有している(詳しくは本明細書に援用されている米国特許番号第4,704,362号参照)。大腸菌は、本発明のポリヌクレオチドをクローニングするのに特に有用な原核細胞の宿主の一種である。使用に適しているその他の微生物の宿主は、枯草菌等のバシラス菌科、サルモネラ菌、セラチア等のその他腸内細菌科、放線菌(例えばストレプトマイセス類)、イースト菌(例えばサッカロミセス類)、又はカビ(例えばアスペルギルス類)等の種々のシュードモナス菌類、及びその他の微生物を含むが、これに限定されるものではない。これら原核生物の宿主においては、一般的に宿主と相性がよい発現制御配列を含む発現ベクターを調製することができる(例えばプロモーター及び複製起点)。さらには、種々の既知のプロモーターが多数存在する。例えばラクトースプロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、ベータ−ラクタマーゼプロモーターシステム、又はファージ・ラムダのプロモーターシステム等である。プロモーターは一般的に発現を制御し、随意的にオペレーター配列を伴うことがある、そして複写及び翻訳を完了するためのリボソーム結合部位配列などを持つ。イースト菌等のその他の微生物もまた発現のために使用されることがある。サッカロミセスは、発現制御配列を持つベクター、例えば3−ホスホグリセレートキナーゼ又はその他の糖分解酵素を含むプロモーター、並びに複製起点、ターミネーション配列及びその他の所望のものを持つベクターにおいて、好ましい宿主である。植物(例えばアラビドプシス、ニコチニア等)及び植物細胞もまた本発明の抗体を発現させ、製造するのに使用することができる。
【0097】
前記した微生物に基づくシステムに加えて、哺乳類の組織細胞培養もまた本発明のポリペプチドを発現させ、製造するのに使用することができる(詳しくはWinnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, N.Y.,N.Y.(1987)を参照のこと。)。
多くの場合、真核細胞が一般的に好まれるが、主としてはCHO細胞株、多種のCOS細胞株、NSO細胞、BK細胞、HeLa細胞、好ましくは骨髄腫細胞株など、又はハイブリドーマの形質転換B細胞などが挙げられる。これらの細胞についての発現ベクターは、複製起点、プロモーター及びエンハンサー(詳しくはQueen et al., Immunol Rev.89, 46-68(1986)を参照)といった発現制御配列、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位といった必要な処理情報部位、及び転写ターミネータ配列を含有することができる。好ましい発現制御配列は、イムノグロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、サイトメガロウイルス、その他同種のもの由来のプロモーターなどが挙げられる。
【0098】
本発明における好ましいDNAベクターは、以下に示す配列が操作可能に結合した(operatively linked)配列を包含している。抗生物質に対する耐性マーカー、例えばアンピシリン耐性、F1起点及びH鎖(HC)又はL鎖(LC)の可変領域。その可変領域は、HC可変領域、ヒトIgG1又はIgG4の定常領域、第一ポリA部位、SV40プロモーター、ネオマイシン耐性などの抗生物質耐性マーカー、第二ポリA部位、アイトメガロウイルス(cytomegelovirus)(CMV)プロモーター/エンハンサー、及び適したリーダー配列などの配列が操作可能に結合した配列を含有するHC発現用(ベクター)に挿入することができる。
更に好ましいDNAベクターは、適したヒトカッパー定常領域に操作可能に結合しているげっ歯類(例えば、マウス)のカッパーイントロンに操作可能に結合しているLC可変領域、及びネオマイシン耐性などの抗生物質耐性マーカーを含有している。
【0099】
既に述べられているとおり、本発明のヒト型抗体を単一の核酸により発現させることは、多くの場合極めて有効である。好ましいDNAベクターは、本明細書中に「メガ」ベクターとして記載され、SV40プロモーター、ネオマイシン等の抗生物質に対する耐性マーカー、第一ポリA部位、第一CMVプロモーター/エンハンサー、LC可変領域、げっ歯類(例えば、マウス)カッパーイントロン、ヒトカッパーエクソン、第二ポリA部位、第二CMVプロモーター/エンハンサー、HC可変配列、及びヒトIgG1又はIgG4のH鎖定常領域などが機能的に結合しているものである。そのようなメガベクターの具体例としては、後述の実施例に記載されているヒト型抗TFIgG1抗体の発現ベクターが挙げられる。図11も参照のこと。
【0100】
pSUN36(ヒト型抗TF抗体IgG1−HC発現ベクター)、pSUN37(ヒト型抗TF抗体IgG4−HC発現ベクター)、及びpSUN38(ヒト型抗TF抗体−LC発現ベクター)の3種のベクターは、10801 ユニバーシティーブルバード、マナッサス、ヴァージニア州 20110−2209のアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に、ブダペスト条約に基づく寄託がなされており、受託番号はそれぞれPTA−3727(pSUN36)、PTA−3728(pSUN37)、及びPTA−3729(pSUN38)である。
【0101】
本明細書で開示されているヒト型抗体又はその断片を製造するのに、種々の適した宿主細胞が使用可能である。ひとつの態様においては、1)ヒト型抗体又はその断片のL鎖をコードする第一の発現ベクターとヒト型抗体又はその断片のH鎖をコードする第二の発現ベクター、又は2)ヒト型抗体又はその断片のL鎖及びH鎖を共にコードする単一の発現ベクターのいずれかで、宿主細胞を形質転換すること、宿主細胞をそれぞれの鎖が発現する培養条件に維持すること、及びヒト型抗体又はその断片を単離することを包含している。
【0102】
例えば、ヒト型抗体を製造するために核酸を導入する細胞株の例としては、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞株、BK細胞株、又はNSO細胞株などが挙げられる。更に、許容される細胞株としては、骨髄腫、ハイブリドーマ、トリオーマ又はクアドローマ細胞株などの好ましくはリンパ由来の不死化細胞株が挙げられる。この細胞株としては、エプステイン−バール(Epstein-Barr)等のウイルスによる形質転換により不死化されたB細胞などの正常なリンパ細胞を包含することもまた可能である。CHO細胞を使用して種々のタンパク質を発現させる方法が報告されている。Urlaub et al., Proc, Natl. Acad. Sci. U.S.A., 77, 4216-4220(1980)、及びWO87/04462を参照のこと。後述の実施例にあるNSO細胞を使用する方法もまた好ましい。
ヒト型抗体の製造に使用される好ましい細胞株としては不死化細胞株であるが、それ以外の好ましい細胞株、例えばバクテリア細胞、植物細胞、昆虫細胞又は酵母菌もまた代替として使用可能である。特に大腸菌由来の細菌の菌株が使用可能であると考えられる。
【0103】
適切な細胞から発現された、本発明の、抗体全体、その二量体、L鎖若しくはH鎖のそれぞれ鎖、又は他の免疫グロブリンの形態、例えば、ヒト型抗体の断片は、標準的な方法で回収され、精製することができる。そのような方法としては、硫安沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動など(一般的にScopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y.(1982)を参照のこと)が挙げられるが、それらに限定されるものではない。本発明の実質的に純粋な抗体及びその断片は、少なくとも90〜95%のホモジェニティー(等質性)(homogeneity)、医学的な利用では一般的には好ましくは98〜99%のホモジェニティーであることを特色とする。所望される程度に同質化され、又は部分的に精製されたヒト型抗体は、治療に、又はアッセー法、免疫蛍光染色法など(一般的にImmunological Methods, Vols I and II, Lefkovits and Pernis, eds., Academic Press, New York, N.Y. (1979・1981) を参照のこと)の開発や、実施のために使用することができる。
【0104】
本発明のヒト化型体を精製する好ましい方法としては、従来のアフィニティー及びイオン交換クロマトグラフィーなどが挙げられ、好ましくは組換えプロテインAセファロース(ヒトIgGFcと高い親和性を有する)を使用する方法が挙げられる。フラクションに含有されている抗体を集め、さらにイオン交換クロマトグラフィー、好ましくはQセファロースにかけられる。タンパク質ピークを含む抗体を集め、適した溶液又はPBS等の緩衝液で透析する。
【0105】
本発明のヒト型抗体及びその断片は、標準的方法の一つあるいは組み合わせにより、その機能を試験することができる。好ましい試験方法としては、TFの機能の抑制を検査する方法である。好ましい方法は、本明細書中において「標準プロトロンビン時間」アッセー又は関連の用語で記載されている。標準プロトロンビン時間(PT)アッセーは、一般的には下記の少なくとも一つ、好ましくは全てのステップを含んでいる。
a)TF及びVIIa因子を結合させ、結合複合体を作る、
b)Xa因子(又はIXa因子)が生成する条件下で、前記複合体をX因子(又はIX因子)と接触させる、
c)好ましくはVa因子及び脂質の存在下で、Xa因子とプロトロンビンを接触させトロンビンを生成させる。
標準PTアッセーを実施するのに必要なTFは、イノビン(Innovin)という市販品を用いるのが好ましい。血液因子は、Ci−Trol凝固調整剤(Ci-Trol Coagulation Control)という名称のヒト血小板製剤を用いるのが好ましい。
本明細書中のヒト型抗体及びその断片は、アッセーにより簡単に試験可能である。精製した抗体又はその断片のアリコート、好ましくは約200nM〜約2000nM程度のアrコートが、ステップa)の前に添加されるのが好ましいが、アッセイの他の段階で添加されるのが好ましいとされる応用例もある。一般的には、このヒト型抗体又はその断片は、TFを添加した後のCi−Trol凝固調整剤に添加される。
【0106】
IgG、Fab、Fab’、F(ab) 、及び単鎖の抗体(ヒト型抗体の抗原結合性の可変領域を含有している。)の全てを含むヒト型抗体及びその断片が極めて好ましく、少なくとも約1nM〜約20nM程度の濃度、好ましくは約5nM〜約15nM、より好ましくは約10nMの濃度で、標準アッセーにおいて血液の凝固時間を少なくとも5秒以上延長させる。標準的な試験対照は、抗体又はその断片を添加しないで行う標準PTアッセーである。更に好ましい本発明の抗体及びその断片は、TF依存性の凝固を、対照と比較して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%又はそれ以上の阻害する。この標準PTアッセーの具体例は実施例に記載されている。
【0107】
本発明の抗凝固剤組成物については前記してきたが、ヒト型抗体及びその断片を含有する他の組成物も、本発明の範囲に包含される。例えば、抗体及びその断片は、単独又は二つ以上を組合せて使用することにより、望ましい結果を達成することができる場合がある。抗体及びその断片は、他の抗体と組み合わせて使用することができるが、そのような他の抗体としては、その病気に対応する細胞の他のマーカーと反応する抗体、特にヒトモノクローナル抗体が好ましい。
【0108】
本発明の抗体及びその断片の重要な使用法が、前記において幅広く説明されている。例えば、生体サンプル中の未変性のTFの検出のための用途、TFを発現する細胞の検出又は精製のための用途、そしてヒトの患者の望まない血液凝固といった病状の治療や予防のための使用である。実際には、ヒト型抗体は、アスピリン、クマジン(coumadin)、ヘパリン、ヒルジン(hirudin)、又はヒルログ(hirulog)などの抗凝固剤と組み合わせて、別々に投与される組成物として使用することができる。また、抗血小板剤(例えばレオプロ、インテグリリン、アグレスタット、プラビックス、及び/又はティクリッド)、及び/又は血栓溶解剤(例えば組織プラスミノゲン活性化因子、ストレポキナーゼ、及びウロキナーゼ)などとともに一緒に投与することもある。
【0109】
ヒト型抗体及びその断片の1種又は2種以上を含有する本明細書中に開示されている治療用の抗凝固剤組成物の他の態様は、その組成物は、抗体の溶液、又は許容される担体、好ましくは水性の担体に溶解したこれらの混合物を含有するものである。水性の担体としては、水、緩衝水溶液、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどの種々の水溶性の担体が挙げられる。これらの溶液は、無菌でかつ粒子状物質を含まないのが好ましい。これらの組成物は通常の減菌方法で無菌化することができる。組成物は生理的条件に近づけるため、pH調節剤及び緩衝剤、無毒化剤(toxicity adjustment agents)等の製薬的又は薬学的に許容される補助物質を含有することができる。補助物質としては、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの処方物中の抗体の濃度は、広範囲であることが可能であり、例えば、重量で0.5%未満、通常は少なくとも1%以下〜15%又は20%の範囲で、主に液量、粘性等に基づき具体的な投与方法とともに選択される。一般的に前述のRemington's Pharmaceutical Scienceを参照のこと。
【0110】
本発明の治療用の抗凝固剤組成物は、必要に応じて、保存のために凍結乾燥し、使用の際に適した担体を用いて戻すことも可能である。この方法は、従来の免疫性グロブリンにおいて効果的であるとされている。あらゆる適した凍結乾燥法及び再生法を用いることができる。凍結乾燥及び再生、抗体の活性を損失させ、その損失の程度は抗体の種類により大きく異なる(例えば、従来の免疫性グロブリンにおいて、IgM抗体はIgG抗体より活性の損失量が大きい)ことが、当業者には広く知られており、使用レベルに応じて調整されている。
【0111】
予防的な薬剤の投与として、未だ発病に至っていない患者に対し、病気に対する抵抗力を高めるために抗凝固剤組成物を投与することは有用である。その投与量は「予防的有効投与量」として定義される。この使用法においては、その詳細な量は患者の健康状態及び一般免疫レベルに左右されるが、一般的には、1回の投与量として0.1〜25mg、特に患者あたり0.5〜2.5mgの範囲が挙げられる。好ましい予防的使用法としては、侵襲的な医療処置によって引き起こされる望ましくない血液凝固の予防が挙げられる。
【0112】
前記してきたように、本発明は、本発明の抗体又はその断片を含有するキットにも関する。ひとつの態様においては、このヒト型抗体又はその断片は、TF抗原に対して、又はその検出のために使用することができる。従って、例えば、1つ又はそれ以上の抗体、その断片、又は単鎖の抗体が、通常容器の中で凍結乾燥された状態で供給される。そのような抗体、断片、又は単鎖の抗体が、前述してきたラベル(標識)又は毒素と抱合化され、又は全く抱合化されずに、トリス、ホスフェート、炭酸塩などの緩衝液;安定剤、生物破壊剤(biocides)、血清アルブミン等の不活性タンパク質と共にキット中に含まれる。一般的に、これらの物質は活性抗体の量に対して5重量%未満存在し、通常では全体で抗体濃度に対し0.001重量%未満存在する。活性有効成分を希釈するために、不活性増量剤または賦形剤を含むことがしばしば望ましく、組成物全体に対して、賦形剤は1〜99重量%存在することができる。アッセーにおいてキメラ抗体と結合が可能な第二の抗体を用いる場合、この抗体は別々のバイアルに存在する。第二の抗体は一般的に標識化され、前記した抗体の処方と類似の態様で処方される。また、キットは、一般に使用に関する説明書一式を含む。
【0113】
前記してきたように、本発明は哺乳類、好ましくはヒトなどの霊長類に対する、血液凝固を阻害する種々の方法を提供する。
例えば、ひとつの態様として、この方法は、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成する本発明のヒト型抗体又はその断片の、少なくとも1つ、好ましくは1、2、又は3つの治療上の有効量を投与することからなる。通常では、X因子又はIX因子が、TF又はTF:FVIIaと結合し、TF又はTF:FVIIaによる活性化が抑制される。ほとんどの様態において、この方法には、さらに抗体とTFとの間に特異的な複合体を形成し、血液凝固を抑制することが含まれる。
【0114】
また、本発明のヒト型抗体又はその断片の治療上の有効量を哺乳類へ投与することからなる哺乳類の血液凝固を抑制する方法も提供される。標準的な抗体及び断片は特異的にヒト組織因子(TF)と結合し複合体を形成する。さらに、TF又はTF:FVIIaに結合しているX因子又はIX因子、及びTF:FVIIaによるそれらの活性化が抑制される。多くの様態において、この方法はさらに抗体とTFとの間に特異的な複合体を形成し、血液凝固を抑制することを含む。
【0115】
より詳細な態様としては、ヒト型抗体又はその断片の治療上の有効量を哺乳類に投与することにより哺乳類の血液凝固を抑制する方法を提供する。一般に、抗体及びその断片は、特異的にヒト組織因子(TF)と結合し複合体を形成する。そして、さらにTF又はTF:FVIIaに結合しているX因子又はIX因子、及びTF:FVIIaによる活性化が抑制される。ヒト型抗体又は断片は、H鎖において、少なくとも1つ、好ましくは下記の事項の全てを含んでいる:
a)図13B(配列番号 )で示されるCDR1アミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第一のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号 )で示されるCDR2アミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第二のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号 )で示されるCDR3アミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第三のCDR(CDR3)、
d)「FR1 HC−08」として図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第一のフレームワーク(FR1)、
e)「FR2 HC−08」として図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第二のフレームワーク(FR2)、
f)「FR3 HC−08」として図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第三のフレームワーク(FR3)、
g)「FR4 HC−08」として図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第四のフレームワーク(FR4)。
【0116】
より詳細な発明の様態では、ヒト型抗体はL鎖において、少なくとも一つ、好ましくは下記の事項の全てを含んでいる:
h)図12B(配列番号 )で示されるCDR1アミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第一のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号 )で示されるCDR2アミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第二のCDR(CDR2)、
j)図12D(配列番号 )で示されるCDR3アミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第三のCDR(CDR3)、
k)「FR1 LC−09」として図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第一のフレームワーク(FR1)、
l)「FR2 LC−09」として図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第二のフレームワーク(FR2)、
m)「FR3 LC−09」として図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第三のフレームワーク(FR3)、
n)「FR4 LC−09」として図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性である第四のフレームワーク(FR4)、
o)図14A(配列識別番号 )又は図15A(配列識別番号 )で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性であるL鎖定常領域、および
p)図14B(配列識別番号 )又は図15B(配列識別番号 )で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも95%の相同性であるH鎖定常領域。
【0117】
前記のより詳細な本発明の様態では、ヒト型抗体又はその断片は、H鎖において、少なくとも一つ、好ましくは下記の事項の全てを含んでいる:
a)図13B(配列番号 )で示されるCDR1アミノ酸配列に対して、相同である第一のCDR(CDR1)
b)図13C(配列番号 )で示されるCDR2アミノ酸配列に対して、相同である第二のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号 )で示されるCDR3アミノ酸配列に対して、相同である第三のCDR(CDR3)、
d)図13A(配列番号 )の「FR1 HC−08」に示されるアミノ酸配列に対して、相同である第一のフレームワーク(FR1)、
e)図13A(配列番号 )の「FR2 HC−08」に示されるアミノ酸配列に対して、相同である第二のフレームワーク(FR2)、
f)図13A(配列番号 )の「FR3 HC−08」に示されるアミノ酸配列に対して、相同である第三のフレームワーク(FR3)、
g)図13A(配列番号 )の「FR4 HC−08」に示されるアミノ酸配列に対して、相同である第四のフレームワーク(FR4)。
そして、L鎖においては:
h)図12B(配列番号 )で示されるCDR1アミノ酸配列に対して、相同である第一のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号 )で示されるCDR2アミノ酸配列に対して、相同である第二のCDR(CDR2)、
j)図12D(配列番号 )で示されるCDR3アミノ酸配列に対して、相同である第三のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号 )の「FR1 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対して、相同である第一のフレームワーク(FR1)、
l)図12A(配列番号 )の「FR2 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対して、相同である第二のフレームワーク(FR2)、
m)図12A(配列番号 )の「FR3 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対して、相同である第三のフレームワーク(FR3)、
n)図12A(配列番号 )の「FR4 LC−09」に示されるアミノ酸配列に対して、相同である第四のフレームワーク(FR4)、
o)図14A(配列識別番号 )又は図15A(配列識別番号 )で示されるアミノ酸配列に対して、相同であるL鎖定常領域、および
p)図14B(配列識別番号 )又は図15B(配列識別番号 )で示されるアミノ酸配列に対して、相同であるH鎖定常領域。
【0118】
本発明は、生体サンプルにおける組織因子(TF)の種々の検出方法をも提供するものである。一つの様態では、この方法は、複合体を形成し、生体サンプル内のTFを明示することが可能な複合体を検出するために、本明細書に記載のヒト型抗体又はその断片を生体サンプルに接触させる方法を包含している。
本明細書に記載されている全ての文献は、参照として本明細書に全て取り込まれる。
【0119】
以下に示される実施例は、本発明を説明するためのものであり、これに限定されるものではない。
以下の実施例において、抗体H36及びH36.D2について説明する。
これらの抗体は、H36.D2.B7と同一の抗体であるが、H36はマザー・クローン由来であり、H36.D2は一次クローンより得られ、一方でH36.D2.B7は二次クローンから得られる。これら3種のクローンは、組織因子阻害能又はその他の物理的特性において差異は認められていない。一般的な用法として、H36は、これらいずれかのクローン、又は抗体を産生する関連の細胞株によって製造された抗TF抗体を示すものとしてよく用いられる。
【実施例1】
【0120】
抗rhTFモノクローナル抗体の調製及びクローニング
rhTFに対するモノクローナル抗体は以下のように調製された。
A.免疫化と追加免疫
5匹の雌のBALB/cマウスを、それぞれ脂質化され、精製された10μgのrhTFで免疫化した。マウスはまず、ハンター()のタイターマックス(Hunter's Titermax)アジュバンドで腹腔内に感作された。最終的に追加免疫が0.85%のNacl溶液として3回投与された。追加免疫は最初の感作から2ヶ月、5.5ヶ月及び6.5ヶ月後に行われ、最初の追加免疫が皮下に投与された以外は全て腹膜内に投与された。最後の追加免疫は細胞融合の3日前に、20μgが投与された。
【0121】
B.マウス脾臓リンパ球とマウス骨髄腫細胞との融合
rhTFで免役化されたBALB/cマウスの脾臓からのリンパ球を、PEG1500を用いて、X63‐Ag8.653マウスの骨髄腫細胞に融合させた。PEGにさらした後、細胞を熱不活化ウシ胎仔血清中において、37℃で1時間培養した。次いで融合した細胞をRPMI1640で再懸濁させ、10%の二酸化炭素中、37℃で一晩培養した。翌日、その細胞をRPMI1640を用いプレートに取り、マクロファージ培養物の上清を加えた。
【0122】
C.ELISA発色
ELISAアッセイ用のプレートを、炭酸塩の緩衝液中の100μLの組み換え型組織因子(0.25μg/ml)で被覆した。全ての行程は室温にて行った。プレートをBSAでブロックし、洗浄した後テストサンプル及びコントロールを加えた。ヤギの抗マウスHRP抱合体(Jackson ImmunoResearch Laboratories社)でプレートを培養し、次いでABTSペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard and Perry Laboratories社)を用いて抗原と抗体の結合を検出した。吸収度は405nmの波長で、自動プレートリーダーで読み出された。
【0123】
D.rhTFハイブリドーマ細胞株の安定化
細胞融合の2週間後、特定のrhTFELISA法によるハイブリドーマコロニーのスクリーニングを開始した。新たなコロニーのスクリーニングを3週間継続した。連続した抗体製造のために陽性クローンを1週間から2週間ごとに検証した。
【0124】
E.第1次および第2次クローニング
限界希釈クローニング法を、陽性の安定したハイブリドーマのそれぞれについて行い、第1次クローンを得た。細胞を解凍し、短時間培養した。次に10細胞/ウエルから0.1細胞/ウエルに希釈した。第一次クローンを、抗rhTFELISA法により検証した。5つから6つの陽性クローンに増幅し、凍結した。
前述のようにして、抗rhTF抗体の第2次クローンであるH36.D2.B7を、第一次クローンであるH36.D2.より得、調製して、液体窒素中で保存した。第一次クローンにおける、4つの異なる希釈度、5細胞/ウエル,2細胞/ウエル,1細胞/ウエル,0.5細胞/ウエルを、96穴のマイクロタイター板に用意し、第二次クローニングを開始した。
細胞を、次の添加剤を含むIMDM組織培地で希釈する:
20%ウシ胎仔血清(FBS),2mM L-グルタミン、ペニシリン100単位/ml,ストレプトマイシン100μg/ml,1%GMS−S,0.075%NaHCO。抗rhTF抗体を分泌するクローンを検出するために、0.2細胞/ウエルのマイクロタイター板の5つのそれぞれのウエルの上澄液を培養2週間後に取り出し、上述のELISA法により、抗rhTF抗体の存在を試験した。5つのすべてのクローンは、ELISA法において陽性を示し、H36.D2.B7は最大の抗体産生を示した。5つのすべてのクローンは、次の添加剤を含むRPMI培地に置き、増殖させた:
10%FBS,2mM L-グルタミン、ペニシリン100単位/ml,ストレプトマイシン100μg/ml、1%GMS−S,0.075%NaHCO3、及び、オキサル酢酸0.013mg/ml。H36.D2.B7を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーで、細胞培養の上澄液より精製し、FXの活性アッセイによりTF:VIIaの阻害能を試験した。H36.D2.B7がH36.D2抗体と同じ程度の阻害活性を持つという結果を得た。すべての細胞を、液体窒素で保存した。
【0125】
F.H36.D2.B7から全RNAの分離
2.7x10個のH36.D2.B7ハイブリドーマ細胞から269μgの全RNAを分離した。全RNAの分離は、Qiagen RNeasy Midi Kits に記載されている手順に従い行った。RNAサンプルは、−20℃にて保管した。
【0126】
G. H36.D2.B7遺伝子の可変領域のクローニングとcDNAの合成
前記で得た全RNA5μgを含有し、重鎖(HC)用のリバース(back)プライマーJS300(全プライマーを下記に示す。)、軽鎖(LC)用のOKA57、RNase阻害剤、dNTP類、DTT 及び、superscript IIの逆転写酵素を含有する反応混合物を調製し、42℃で1時間インキュベートして、第一番目のcDNAのストランド得た。この反応管を65℃で15分間インキュベートして、転写を停止させた。冷却後、5単位のRNase Hを加え、37℃で20分間反応させた。cDNAサンプルを−70℃で保存した。
【0127】
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を別に行い、前記した方法により得たcDNAから、H36.D2.B7の、即ち抗-rhTFの重鎖及び軽鎖の可変領域のクローンを調製した(重鎖及び軽鎖の可変領域における核酸及びアミノ酸配列を図1A及び1Bに示す)。PCRを3ラウンド行った。第一ラウンド:PCRを、重鎖(HC)用に、フォーワードプライマーにJS002を、リバースプライマーにJS300を用いて、96℃、53℃及び72℃の35サイクルで行った。軽鎖(LC)用にフォーワードプライマーにJS009を、リバースプライマーにOKA57を用い、96℃、63℃及び72℃で35サイクルで行った。第二ラウンド:pMC−18を重鎖のフォーワードプライマーとして、pMC−15を軽鎖のフォーワードプライマーとして用いることを除き、第一ラウンドと同様に、重鎖及び軽鎖の両方に対し、PCRを行った。第三ラウンド:重鎖(HC)用にH36HCF及び、H36HCRプライマーを用い、96℃、60−65℃、及び72℃で30サイクルのPCRを行った。また、軽鎖(LC)については、H36LCF及び、H36LCRプライマーを用い、96℃、58℃及び72℃で30サイクルのPCRを行った。
【0128】
以下のプライマーは、H36.D2.B7の重鎖及び軽鎖の可変領域のクローニングに用いたプライマーである。

OKA57:
5’−GCACCTCCAGATGTTAACTGCTC−3’(SEQ ID NO:17)
JS300:
5’−GAARTAVCCCTTGACCAGGC−3’(SEQ ID NO:18)
JS009:
5’−GGAGGCGGCGGTTCTGACATTGTGMTGWCMCARTC−3’(SEQ ID NO:19)
JS002:
5’−ATTTCAGGCCCAGCCGGCCATGGCCGARGTYCARCTKCARCARYC−3’
(SEQ ID NO:20)
pMC−15:
5’−CCCGGGCCACCATGKCCCCWRCTCAGYTYCTKG−3’(SEQ ID NO:21)
pMC−18:
5’−CCCGGGCCACCATGGRATGSAGCTGKGTMATSCTC−3’(SEQ ID NO:22)
H36HCF:
5’−ATATACTCGCGACAGCTACAGGTGTCCACTCCGAGATCCAGCTGCAGCAGTC−3’(SEQ ID NO:23)
H36HCR:
5’−GACCTGAATTCTAAGGAGACTGTGAGAGTGG−3’(SEQ ID NO:24)
H36LCF:
5’−TTAATTGATATCCAGATGACCCAGTCTCC−3’(SEQ ID NO:25)
H36LCR:
TAATCGTTCGAAAAGTGTACTTACGTTTCAGCTCCAGCTTGGTCC(SEQ ID NO:26)

上記配列番号17から26において、KはG又はTであり;MはA又はCであり;RはA又はGであり;SはC又はGであり;VはA,C又はGであり;WはA又はTであり;YはC又はTである。
【実施例2】
【0129】
実施例2−本発明の抗体における結合活性
前記の実施例1により調製した本発明の抗体を使用する。rhTF分子は大腸菌で発現させ、標準的な方法に従い、免疫アフィニティクロマトグラフィにより精製した(Harlow and Lane, supra, Ausubel et al. supra 参照)。
抗体の会合定数(K)及び解離定数(K)は、ELIZA法(酵素免疫測定法)及び表面プラスモン共鳴(i.e., BIA Core)分析法により測定した(参照 Harlow and Lane, supra; Ausubel et al. supra; Altschuh et al., Biochem., 31:6298(1992);及び、Pharmacia Biosensor社のBIA core法)。BIA core分析は、業者のインストラクションに従い、rhTFをバイオセンサーチップに固定した。それぞれの抗体における定数は、4種類の抗体濃度(0.125nM、0.25nM、0.5nM、及び1nM)により測定した。
たんぱく質の濃度は、標準としてウシ血清アルブミンと市販の染料試薬(Bio−Rad社)を用い、標準的アッセイ(M.M. Bradfor, Anal. Biochem., 72:248(1976))により測定した。
図2は、それぞれの抗TF抗体の会合定数および解離定数を示す。抗体H36は、いずれの抗TF抗体の実験においても、最も高い会合速度(K=3.1X1010−1)及び、最も低い解離速度(K=3.2X10−11M)を示した。
【実施例3】
【0130】
実施例3 FXaに特異的な基質のアッセイ
一般に、以下の実験においては、50mM Tris HCl、pH7.5中のホスファチジルコリン(0.07mg/ml)及びホスファチジルセリン(0.03mg/ml)を70/30w/wの割合の混合物で、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液で37℃で30分間で脂質付加して得られたrhTFを使用して行った。TF:VIIa複合体のストック溶液は、5nMの脂質付加したrhTF、及び5nMのFVIIaを37℃で30分間インキュベートして調製された。そのTF:VIIa混合物を分割したサンプルとし(aliquoted)、必要な時まで−70℃で保存した。精製されたヒト第VII、VIIa因子及びFXは、エンザイムリサーチラボラトリ社(Enzyme Research Laboratories, Inc. )より入手した。次に示すバッファーを全てのFXa及びFVIIaアッセイに用いた:25mM Hepes−NaOH,5mM CaCl,150mM NaCl,0.1%BSA,pH7.5。
【0131】
モノクローナル抗体の、TF:VIIaを介するFXからFXaへの活性化の阻害能をスクリーニングした。FXの活性化を2つの非連続的なステップで測定した。即ち、第1のステップ(FXの活性化)で、FXのFXaへの転換をCa+2 の存在下でアッセイした。第2のステップ(FXa活性のアッセイ)では、FXの活性化をEDTAにより停止させ、FXaに特異的な色素原の基質(S−2222)を用いてFXaの生成を測定した。S−2222及びS−2288(下記参照)の色素原は、クロモジェニックス(Pharmacia Heper Inc.により配給)より入手した。1.5mlのマイクロフュージ管で、抗thTF抗体でプレインキュベートしたもの、又は対照としての緩衝液中の0.08nMのTF:VIIaとインキュベートして反応させることにより、FXを活性化した。次いで、この反応物を、37℃で30分間インキュベートし、30nMのFXを加え、更に37℃で10分間インキュベートした。FXa活性を、96穴マイクロタイタープレートを用いて測定した。第1ステップから採取した20μLのサンプルに、等量のEDTA(500mM)をそれぞれのウェルに混合し、次いで0.144mlのバッファーの及び5mMのS−2222基質0.016mlを加えた。反応物を、37℃で更に15分〜30分インキュベートした。0.05mLの50%の酢酸で反応を停止させ、その後それぞれの反応物の405nmの吸光度が記録した。TF:FVIIaの阻害活性は、試験サンプル(抗体を含む)及びその対照サンプル(抗体を含まない)におけるOD405nm値から計算した。別の実験においては、競合的結合を測定する為に、抗hTF抗体、TF:FVIIa及びFXを、それぞれ同時に添加した。H36.D2MAbs(太字で表示)が、試験された抗rHTFMabsよりも大幅(95%)に、FXに対するVIIa活性を阻害することが、図3に示されている。
【実施例4】
【0132】
実施例4 FVIIaに特異的な基質のアッセイ
モノクローナル抗体を、FVIIaに特異的なアッセイにより更にスクリーニングした。このアッセイでは、はじめに5nMの脂質付加したrhTFを、96穴マイクロタイタープレートで、バッファー(対照)若しくは50nMの抗体(試験)で、37℃で30分間インキュベートし、次いで5nMの精製したヒトFVIIa(V=0.192ml)を混合し、37℃で30分間インキュベートした。次いで、FVIIaに対して特異的な基質であるS−2288の20mMのストック溶液8μLをそれぞれのウエルに加えた(最終的な濃度は0.8mMであった。)。次いで、反応物を37℃で1時間インキュベートした。そして、0.06mlの50%の酢酸で反応を停止させた後、405nmの吸光度を測定した。TF:VIIa活性の阻害率(%)を、試験サンプル及び対象サンプルのOD405nm値からそれぞれ計算した。
抗体をTF(FVIIaを加える前に)とプレインキュベートしたとき、または、FVIIa(抗体を加える前に)とプレインキュベートしたTFを添加したときには、H36抗体はS−2288の基質に対して有意なTF:FVIIa活性の阻害を示さなかったことが、図4に示されている。このことは、H36がTFとFVIIa間の相互作用(結合)を妨害しないということ、及びH36が、ペプチドの基質に対するTF:FVIIa活性をも阻害しないということを示している。
【実施例5】
【0133】
実施例5 プロトロンビン時間(PT)アッセイ
石灰化した血漿は、トロンプラスチン(TF)を添加した後数秒で凝固する。この現象は、プロトロンビン時間(PT)と呼ばれている。PTの延長は、一般的に抗凝固活性の有用な指標である(例えばGilman et a. supra 参照)。
市販されているヒトの血漿( Baxter Diagnostics Inc.から入手可能のCi−Trol Control, Level I)を用いる標準的な方法により、H36.D2抗体のPTに影響を及ぼす能力を検討した。凝固反応を開始させるにあたり、Ca+2 の存在下で、脂質付加されたrhTFを添加した。凝固時間は自動凝固タイマー(MLA Electra 800)で記録した。0.2mlの脂質付加したrhTF(0.1%BSA、14.6mM CCl、0.07mg/mlのホスファチジルコリン、及び0.03mg/mlのホスファチジルセリンを含むpH7.5の50mMのTris−HCLのバッファー中)をプラスチック製の二つ穴キュベットに注入して、PTアッセイを開始した。キュベットは、それぞれ、0.01mlのバッファー(対照サンプル)もしくは、抗体(試験サンプル)のどちらかで1〜2分間プレインキュベートされた血清を0.1ml含有していた。TFが介在する凝固のH36.D2抗体による阻害は、log凝固時間に対してlog(TF)をプロットした標準TF曲線を用いて算出された。
図5は、H36.D2抗体が、人の血漿中においてTFによって引き起こされる凝固を、大幅に阻害することを表わしている。H36.D2抗体がPT時間を著しく伸ばしたということは、抗体がTFによって引き起こされる凝固に対する有効な阻害剤であることを示している(約99パーセントまで阻害した)。
【実施例6】
【0134】
実施例6 FX及び36.D2抗体は、TF:VIIa複合体との結合に競合する。
競合実験を、TF:VIIa、FX及びH36.D2抗体の間で行った。図6Aは、前もって形成されたTF:VIIa複合体(0.08nM)を、H36.D2モノクローナル抗体を0.02nM、0.04nM,0.08nM及び0.16mMそれぞれを含むバッファーで、37℃で30分間プレインキュベートした実験の結果を表している。次いで、FX(30nM)をTF:FVIIa及びH36.D2抗体の混合物に加え、そしてその混合物を更に37℃で10分間インキュベートした。FX活性化を前記のように前もってEDTAで停止させた。そのように製造されたFXaを、上記の実施例3に記載してあるFXaに特異的なアッセイにより検出した。
H36.D2抗体、前もって形成されたTF:VIIa、及びFXを、FX活性化アッセイを同時に開始するために添加する以外は、上記の方法に準じて行った実験結果を、図6Bに示す。
図6A及び6Bに示されるデータセットは、H36.D2抗体及びFXが前もって形成されたTF:VIIa複合体との結合に競合することを示している。
【実施例7】
【0135】
実施例7 細胞培養におけるTF活性の阻害
J−82は、ヒトの膀胱の癌細胞株で(ATCCより入手可能)、そこには細胞表面蛋白質として未変性のヒトTFが豊富に発現している。FVIIの存在下にマイクロタイタープレートにてJ−82FX活性化アッセイを行い、細胞表面上に有る未変性のTFにFXが結合することを、H36.D2抗体が防ぐことができるか否かを調べた(D.S.Fair et al., J.Biol, Chem., 262:11692(1987))。それぞれのウェルに、2×10 の細胞を加え、それに50ngのFVIIと、バッファー(対照サンプル)又は抗TF抗体(試験サンプル)とを加えて、2時間37℃でインキュベートした。その後、それぞれのウエルは丁寧にバッファーで洗浄され、0.3mlのFX(0.05mg/ml)を室温で30分間で、それぞれのウエルに加えた。未変性のTFへの競合的な結合を判定するため、FXと同時に抗体が加えられる場合もあった。その後、0.05mlを分取し、0.025mlの100mMのEDTAの入っている96穴マイクロタイタープレートの新しいウェルに加えた。FXa活性は、上記の実施例3に記載されているようにFXaに特異的なアッセイにより測定された。J−82細胞の表面上のTF活性の阻害は、抗体の存在下(試験サンプル)及び非存在下(対照サンプル)でOD405nmにより算出された。
図7は、H36.D2抗体がJ−82細胞膜上に発現した未変性のTFに結合し、TFが介在するFXの活性化を阻害したことを示している。これらの結果、細胞表面にある未変性のTFへの結合に、抗体がFXと競合することを示している。下記の実施例8によるデータいよってもそうであるが、この結果も、H36.D2抗体が細胞膜上の未変性TFのエピトープの立体配座に結合することを表している。
【実施例8】
【0136】
実施例8 H36.D2抗体の未変性のrhTHへの特異的結合
未変性の又は変性されたrhTFへのH36.D2の結合の評価を、簡略化されたドットブロットアッセイにより行った。具体的には、rhTHを、以下の三種のバッファーにそれぞれ30μg/mlまで希釈した:pH8.0の10mMのTris HCl;8Mの尿素を含むpH8.0の10mMのTris HCl、;8Mの尿素及び5mMのジチオスレイトールを含むpH8.0の10mM Tris HClである。これらのトリスバッファー中でのインキュベーションは、rhTHを未変性の形態のままで維持するが、一方、8Mの尿素及び5nMジチオスレイトールの処置は、変性した(非ネイティブの)rhTHを生成させる。それぞれのサンプルを、24時間室温でインキュベートした。インキュベーション後、ミニポア イムノビロン(Millipore Immobilon)膜(7×7cm四方)をあらかじめメタノールで濡らし、20%のメタノールを含むpH10.4の25mMトリスで処理した。膜を空気乾燥した後、それぞれのサンプル(30μg/ml)から約0.5μl、1μl及び2μlを膜に塗布し、空気乾燥した。5%(w/v)のスキムミルク及び5%(v/v)NP−40を含むPBSにより膜をブロッキングした後、その膜をH36.D2抗体を用いてプローブし、その後、ペルオキシダーゼ抱合体ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.より入手した)でインキュベートした。そのECLウェスタンブロッティング試薬で、製品(Amersham)のインストラクションに従ってインキュベートした後、膜をビニールのフィルム(サランラップ)で包み、何度かX線フィルムにさらした。
【0137】
図8Aは、トリスバッファーの存在下、又は8Mの尿素(1及び2列目)を含むトリスバッファーの存在下、未変性のTFの立体配座のエピトープに、H36.D2モノクローナル抗体が結合することを示している。オートラジオグラムを40秒間露光した。しかし、未変性のTFを8Mの尿素及び5mMのDTTで変性した時、H36.D2の結合は、明らかに減少し、又は無くなっていた(3列目)。図8Bは、過剰のオートラジオグラムの露光による、非ネイティブの(例えば変性した)rhTFへのH36.D2抗体の残留した結合を示す。超過時間は約120秒間であった。8Mの尿素のみでの処置は、2つのTF中のジスルフィド結合が減少しないため、おそらく未変性のrhTFの一部が変性しているだけとなった。後のブロッティングプロセスで尿素が取り除かれた場合、一部のみ変性したTFが元の天然型(native)のコンフォメーションに再び折りたたまれるという可能性もある。これらの結果はまた、変性されたTFに結合しない本発明の好ましい抗体と、立体配座のエピトープに選択的に結合せず、変性したTFにも結合する既に報告された抗体(図18において、ウェスタンブロット分析でSDSにより変性したTFへの結合を表している米国特許第5,437,864参照)との違いを明らかに表すものである。
【実施例9】
【0138】
抗組織因子抗体のヒト化
前記してきた実施例は、H36.D2と呼ばれる特定のネズミの抗体(前記したように、時にはH36とも称される。)を、どのように調製し、使用するか記載したものである。この実施例は、上記した抗体のヒト化されたものを、どのように調製し、使用するかを示す。ヒト化されたH36抗体は、ヒトの抗マウス抗体(HAMA;human anti-mouse antibody)免疫反応の起こる可能性を最小化するのに役立つ等、様々な用途がある。これらの及び他の好ましくない反応は、ヒトへの治療に応用するのにH36抗体を使用するにあたって問題を引き起こす。
【0139】
A.抗組織因子抗体のキメラ(cH36)の調製
前記したH36抗体は、IgG2aネズミ抗体である。臨床的発展のために、まずH36を、マウス−ヒトキメラ抗体に改造した。このために、H36抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子をクローニングした(米国特許第5,986,065号参照)。重鎖の可変領域を、ヒトIgG4定常領域(Fc)に融合し、軽鎖の可変領域をヒトκ軽鎖定常領域に融合した。この結果生じたIgG4κキメラ抗体はSunol−cH36と命名された。慢性疾患を持つ患者でのH36もしくはcH36の多様な使用にとっては、あらゆるヒト抗マウス抗体免疫反応を減少もしく消失させるような完全にヒト化されたcH36が好ましい。cH36のヒト化を以下に記載する。
【0140】
B.cH36抗体のヒト化
抗組織因子抗体のキメラcH36のヒト化は「ベストフィット」法を用いて成し遂げられた。この方法は、多数のヒトIgGの既知のアミノ酸配列が公的なデータベースで利用可能である事実を十分に利用するものである。cH36のマウス重鎖及び軽鎖の可変領域の個々のフレームワークを、Kabatデータベース(http://immuno.bme.nwu.eduを参照)にあるそれと対応するヒトのフレームワークと比較する。ヒト化に望ましいヒトIgGフレームワークを選択するために以下の基準が用いる:(1)ミスマッチアミノ酸の数はできる限り低く保つ、(2)「バーニヤ(vernier)」区域(この区域のアミノ酸はCDR構造を調整し、抗原にフィットするようにうまく合わせる、Foote J. and Winter G.、J. of Mol. Bio.、224(2)、pp.487-499、1992年を参照)の中のアミノ酸は変えないでおく、(3)保存アミノ酸の置換は類似した候補を評価するときに行う。この比較のために使用されるマッチングプログラムはimmuno.bme.nwu.eduにあるKabatのホームページ(Johnson G, Wu T.、“Kabat database and its application: Future directions.”Nucleic Acids Res.、29、pp.205-206、2001年)で見つけることができる。このプログラムは、Kabatデータベースにあるマウスの配列とヒトの配列の間の相同領域を見つけて整列する。この独特なベストフィット法を用いることにより、標的IgGのヒト化された軽鎖又は重鎖の可変領域が、少なくとも一つそして多くて4つのヒトIgG分子に由来する全部で4つのフレームワーク領域を持つであろうと予測される。
【0141】
(1)ヒトIgGκ軽鎖の可変領域フレームワークの選択
cH36軽鎖のそれぞれのフレームワークのアミノ酸配列を、KabatデータベースにあるヒトIgGκ軽鎖可変領域での対応するフレームワーク領域のアミノ酸配列と比較した。ベストフィットフレームワーク領域が上記の3つの基準に従って選択した。
KabatデータベースでのID No.005191を有するヒトIgGκ軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、cH36軽鎖のフレームワーク領域1(FR1)をヒト化するために選択された。KabatデータベースでのID No.019308を有するヒトIgGκ軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、cH36軽鎖のフレームワーク領域2(FR2)をヒト化するために選択された。KabatデータベースID No.005191を有するヒトIgGκ軽鎖可変領域のアミノ酸配列に一致させるために、cH36軽鎖FR1に次の変異(18番目のQがLに、15番目のLがVに、17番目のEがDに、18番目のSがRとなる変異)を導入した。KabatデータベースID No.019308を有するヒトIgGκ軽鎖可変領域のアミノ酸配列に一致させるために、cH36軽鎖FR2に一つの変異(37番目のQがLとなる変異)を導入した(配列情報は表1Aを参照)。
KabatデータベースID No.038233を有するヒトIgGκ軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、cH36軽鎖FR3をヒト化するために選択した。KabatデータベースID No.004733を有するヒトIgGκ軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、cH36軽鎖FR4をヒト化するために選択した。KabatデータベースID No.038233を有するヒトIgGκ軽鎖可変領域のアミノ酸配列に一致させるために、cH36軽鎖FR3に次の変異(70番目のKがDに、74番目のKがTに、80番目のAがPに、84番目のVがAに、85番目のNがTとなる変異)を導入した。KabatデータベースID No.004733を有するヒトIgGκ軽鎖可変領域のアミノ酸配列に一致させるために、cH36軽鎖FR4に二つの変異(100番目のAがQに、106番目のLがIとなる変異)を導入した(配列情報は表1Bを参照)。
【0142】
(2)ヒトIgG重鎖可変領域フレームワークの選択
cH36重鎖のそれぞれのフレームワークのアミノ酸配列を、KabatデータベースにあるのヒトIgG重鎖可変領域での対応するフレームワーク領域のアミノ酸配列と比較した。ベストフィットフレームワーク領域が上記の3つの基準に従って選択した。
KabatデータベースでのID No.000042を有するヒトIgG重鎖可変領域のアミノ酸配列を、cH36重鎖のフレームワーク領域1(FR1)をヒト化するために選択した。KabatデータベースでのID No.023960を有するヒトIgG重鎖可変領域のアミノ酸配列を、cH36重鎖のFR2をヒト化するために選択した。KabatデータベースID No.000042を有するヒトIgG重鎖可変領域のアミノ酸配列に一致させるために、cH36重鎖FR1に次の変異(1番目のEがQに、5番目のQがVに、9番目のPがGに、11番目のLがVに、12番目のVがKに、19番目のQがRに、24番目のTがAとなる変異)を導入した。KabatデータベースID No.023960を有するヒトIgG重鎖可変領域のアミノ酸配列に一致させるために、cH36重鎖FR2に2つの変異(41番目のHがPに、44番目のSがGとなる変異)を導入した(配列情報は表2Aを参照)。
KabatデータベースID No.037010を有するヒトIgG重鎖可変領域のアミノ酸配列を、cH36重鎖FR3をヒト化するために選択した。KabatデータベースID No.000049を有するヒトIgG重鎖可変領域のアミノ酸配列を、cH36重鎖FR4をヒト化するために選択した。KabatデータベースID No.037010を有するヒトIgG重鎖可変領域のアミノ酸配列に一致させるために、cH36重鎖FR3に次の変異(76番目のSがTに、77番目のTがSに、80番目のFがYに、82番目のHがEに、84番目のNがSに、87番目のTがRに、89番目のDがEに、91番目のSがTとなる変異)を導入した。KabatデータベースID No.000049を有するヒトIgG重鎖可変領域のアミノ酸配列に一致させるために、cH36重鎖FR4に一つの変異(113番目のLがVとなる変異)を導入した(配列情報は表2Bを参照)。
【0143】
表1A及び表1B:cH36とヒトの軽鎖(LC)フレームワーク配列(FR)の比較
【0144】
【表1】

【0145】
表2A及び表2B:cH36とヒトの重鎖(HC)フレームワーク(FR)配列の比較
【0146】
【表2】

【0147】
望ましいヒトフレームワークの決定がされれば、軽鎖と重鎖の両方で望ましいアミノ酸置換をするために、次の3つの技法が用いられる。(1)クローニングサイト又は分析用エンドヌクレアーゼサイトを導入する目的、及び、可変領域の末端に位置するアミノ酸残基を変更する目的で、クローニングに通常PCRを使用した。(2)一度に複数のアミノ酸残基を変更するため、特にこれらの残基が可変領域の中間部にあるときに、PCRに基づいた変異誘発を使用した。(3)一度に一つ又は2つのアミノ酸置換を導入するために、部位特異的突然変異誘発(site-directed mutagenesis)を使用した。部位特異的突然変異誘発(site-directed mutagenesis)は、ストラテジーン社の「QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit」(カタログ#200518)に記載されたプロトコルに従って行われた。
【0148】
それぞれの段階の後、部分的にヒト化されたクローンがシークエンスされ、そののちこれらの可変領域の幾つかが発現ベクターにクローンニングされた。プラスミドtKMC180が軽鎖変異体を発現するために使用され、pJRS355又はpLAM356ベクターが、それぞれIgG1又はIgG4として軽鎖変異体を発現するために用いられた。そののち、これらのクローンのいくつかが結合され、ELISAで発現レベルを決定するために、COS細胞で一過性に発現させた。
【0149】
最終的に完全にヒト化された形態の抗TF重鎖及び軽鎖可変領域は、ここでしばしば「メガベクター」と呼ばれるものにクローンニングされ、IgGを発現させるためにCHO及びNSO細胞に導入された。そののち、解析に十分な量のヒト化抗TF抗体を生産するために、定常細胞株が用いられた。この結果生じたヒト化変異体は(CDR配列を考慮しない場合)、100%ヒトを起源とするものである。ヒト化IgG4κ変異体はhFAT(humanized IgG Four Anti-Tissue Factor antibody;ヒト化IgG4抗組織因子抗体)と命名され、IgG1κ変異体は、hOAT(humanized IgG One Anti-Tissue Factor antibody)と命名された。これらの完全にヒト化されたcH36の変異体は、血栓症、ガン、炎症性疾患などの慢性症状の治療を目的とするものである。
【0150】
C.抗TF抗体重鎖のヒト化
1.プラスミドpJAIgG4TF.A8(キメラH36の発現ベクター)をテンプレートとして用い、プライマーTFHC1s2とTFHC1as2を用いることにより、抗TFモノクローナル抗体cH36の重鎖(HC)可変領域のPCR増幅と、pGem T-easyへのクローニングを行った。プライマーTFHC1s2は、開始コドンの上流にBsiW1サイトが導入され、フレームワーク(FR)1の一番目のアミノ酸EをQに変更した。プライマーTFHC1asは、フレームワーク4(FR4)の113番目のアミノ酸LをVに変更した。この段階でコンストラクトHC01を得た。
【0151】
2.前記したコンストラクト(HC01)と次の4つのプライマーを用いたPCRベースの変異誘発によって、コンストラクトHC02を構築した。上流側のPCRにプライマーTFHC1s2とTFHC7asを使用した。下流側のPCRにプライマーTFHC7sとTFHC1as2を使用した。上流側と下流側のPCR産物をテンプレートとして使用し、プライマーTFHC1s2とTFHC1as2を用いたオーバーラップPCRによりHC02を調製した。プライマーTFHC7sとTFHC7asの使用により、フレームワーク3(FR3)の二つのアミノ酸変化(31番目のHがPに、44番目のS→Gとなる変化)導入された。
【0152】
3.HC02をテンプレートとして使用し、次の4つのプライマーを用いたPCRベースの変異誘発によって、コンストラクトHC03を構築した。上流側のPCRにプライマーTFHC1s2とTFHC5as2を使用した。下流側のPCRにプライマーTFHC5sとTFHC1as2を使用した。上流側と下流側のPCR産物をテンプレートとして使用し、プライマーTFHC1s2とTFHC1as2を用いたPCRによりHC03を調製した。プライマーTFHC5sとTFHC5as2の使用により、フレームワーク2(FR2)の3つのアミノ酸変化(87番目のTがRに、89番目のDがEに、そして91番目のSがTとなる変化)が導入された。BglIIサイトも87位に導入された。
【0153】
4.プライマーTFHC2s及びTFHC3as、並びにテンプレートとしてpGEM中のHC03を使用してPCRによる増幅を行った。TFHC2sはpGemのクローニングサイトの上流に位置する。TFHC3asはフレームワーク3に位置し、FR3中の2つのアミノ酸変化(82番目のHがEに、84番目のNがSとなる変化)を導入する。結果として生じたPCRバンドはpGemにクローンニングされ、そののち適切なサイズのインサートがBsiW1とBglIIによって切り出された。この断片をHC03にサブクローニングし、HC04を調製した。
【0154】
5.テンプレートとしてのHC04と、次のプライマーを使用したPCRベースの変異誘発により、HC05を構築した。上流側のPCRに、プライマーTFHC1s2とTFHC6asを使用した。下流側のPCRに、プライマーTFHC6sとTFHC1as2を使用した。上流側と下流側のPCR産物をテンプレートとして使用し、プライマーTFHC1s2とTFHC1as2を用いた変異誘発PCRによって、HC05を調製した。この段階で、FR3に次のアミノ酸変化(76番目のSがTに、77番目のTがSに、そして80番目のFがYとなる変化)が導入された。
【0155】
6.HC05をテンプレートとして使用し、次の4つのプライマーを用いたPCRベースの変異誘発により、HC06を構築した。上流側のPCRに、TFHC2sとTFHC2as2を使用した。下流側のPCRに、プライマーTFHC3s2とTFHC1as2を使用した。TFHC2as2を使用した増幅によりFR1に一つのアミノ酸変化(9番目のPがGとなる変化)が導入された。プライマーTFHC3s2によって、19番目のQがRに、24番目のTがAに変化した。上流及び下流のPCR産物をテンプレートとして使用し、プライマーTFHC1s2及びTFHC1as2を用いたPCRにより、HC06を調製した。
【0156】
7.FR1の2位でのIからMへのポイントミューテーションは、HC06の構築の際に同時に導入された。HC06をテンプレートとして使用し、TFHC1s3及びTFHC1as2をプライマーとして使用したPCRによる増幅により、この誤った置換を訂正し、また、FR1に一つのアミノ酸変化(5番目のQがVとなる変化)を導入した。この結果生じたコンストラクトがHC07であった。
【0157】
8.テンプレートとしてHC07と次のプライマーを使用したPCRベースの変異誘発により、コンストラクトHC08を構築した。TFHC2s及びTFHC2as3が上流側のPCR産物のために使用された。下流側のPCR産物は既にTFHC1s3とTFHC1as2を用いて増幅されている(ステップ7を参照)。プライマーTFHC2as3を使用することにより、FR1での二つのアミノ酸の置換(11番目のLがVに、そして12番目のVがKとなる変化)が導入された。自発的なポイントミューテンションにより、CDR2の64位のFがLへ変化していた。さらにスクリーニング及びシークエンスすることによって、CDR2の64位に正しい配列Fを有するコンストラクトHC08R1を調製した。
【0158】
9.二つのコンストラクトHC11及びHC12を、HC07から部位特異的突然変異誘発(site-directed mutagenesis)によって構築した。FR1に3つのアミノ変異(9番目のGがPに、11番目のLがVに、そして、12番目のVがKとなる変異)を含むHC11をつくるために、二つの相補的プライマーTFHC8sP及びTFHC8asPが、HC07をテンプレートにして使用された。そののち、HC11がメチル化され、次の回の部位特異的突然変異誘発(site-directed mutagenesis)のためにカラムで精製された。テンプレートとしてHC11と、相補的プライマーTFHC9sL及びTFHC0asLを使用したPCRにより、FR1の11番目のVがLに変異したHC12を調製した。
【0159】
10.テンプレートとしてのHC12、並びに相補的プライマーTFHC10sK及びTFHC10asKを使用したPCRを行うことにより、HC12からコンストラクトHC09が誘導された。HC09は、一つのアミノ酸変異(FR1の12番目のKがVとなる変異)を有する。
【0160】
11.コンストラクトHC10がHC09から調製された。テンプレートとしてHC09、並びに相補的プライマーLV−1及びLV−2を使用したPCRにより、FR1の11番目のLがVに変異したHC10を調製した。
【0161】
それぞれの変異段階の後、部分的にヒト化もしくは完全にヒト化されたクローンがシークエンスされ、これらの可変領域のいくつかが、後に発現ベクターにクローンニングされた。pJRS355もしくはpLAM356ベクターを、ヒトIgG1もしくはIgG4と融合した軽鎖変異体を発現させるために使用した。
【0162】
図13Aはステップ1〜11を要約しており、FR1〜4に導入されたアミノ酸の変化の増分を表している。HC08を除き、他の全ての重鎖変異体及びcH36はCDR2の64位にFを有する。HC08は64位にFからLの変異を有する。図13B〜Dは重鎖のCDR配列を表す。
【0163】
重鎖のヒト化に使用されるプライマー
TFHC1s2
5' TTTCGTACGTCTTGTCCCAGATCCAGCTGCAGCAGTC 3'
TFHC1as2
5' AGCGAATTCTGAGGAGACTGTGACAGTGGTGCCTTGGCCCCAG 3'
TFHC7s
5' GTGAGGCAGAGCCCTGGAAAGGGCCTTGAGTGGATTGG 3'
TFHC7as
5' CCAATCCACTCAAGGCCCTTTCCAGGGCTCTGCCTCAC 3'
TFHC5s
5' GCATCTCAACAGCCTGAGATCTGAAGACACTGCAGTTTATTTCTGTG 3'
TFHC5as2
5' CTGCAGTGTCTTCAGATCTCAGGCTGTTGAGATGCATGAAGGC 3'
TFHC3as
5' GTCTTCAGATCTCAGGCTGCTGAGCTCCATGAAGGCTGTGGTG 3'
TFHC2s
5' TACGACTCACTATAGGGCGAATTGG 3'
TFHC6s
5' CTGTTGACAAGTCTACCAGCACAGCCTACATGGAGCTCAGCAG 3'
TFHC6as
5' CTGCTGAGCTCCATGTAGGCTGTGCTGGTAGACTTGTCAACAG 3'
TFHC2as2
5' GCACTGAAGCCCCAGGCTTCACCAGCTCACCTCCAGACTGCTGCAGC 3'
TFHC3s2
5' CTGGGGCTTCAGTGCGGGTATCCTGCAAGGCTTCTGGTTACTCATTCAC 3'
TFHC1s3
5' TCGTACGTCTTGTCCCAGATCCAGCTGGTGCAGTCTGGAGGTGAGC 3'
TFHC2as3
5' GCACTGAAGCCCCAGGCTTCTTCACCTCACCTCCAGACTGCACC 3'
TFHC9sL
5' GCAGTCTGGACCTGAGCTGAAGAAGCCTGGGG 3'
TFHC9asL
5' CCCCAGGCTTCTTCAGCTCAGGTCCAGACTGC 3'
TFHC8sP
5' GCTGGTGCAGTCTGGACCTGAGGTGAAGAAGCC 3'
TFHC8asP
5' GGCTTCTTCACCTCAGGTCCAGACTGCACCAGC 3'
TFHC10sK
5' GCAGTCTGGACCTGAGCTGGTGAAGCCTGGGGCTTC 3'
TFHC10asK
5' GAAGCCCCAGGCTTCACCAGCTCAGGTCCAGACTGC 3'
LV−1
5' CAGTCTGGACCTGAGGTGGTGAAGCCTGGG 3'
LV−2
5' CCCAGGCTTCACCACCTCAGGTCCAGACTG 3'
【0164】
D.抗TF抗体軽鎖のヒト化
1.テンプレートとしてプラスミドpJAIgG4TF.A8(キメラH36の発現ベクター)、並びにプライマーTFLC1s2.1及びTFLC1as2を使用したPCRによる増幅を行った。このステップで、コード領域の上流にクローニングサイトAgeIが導入された。また、FR4の106番目のLがIになる変異が導入された。このステップによりコンストラクトLC03が調製された。
【0165】
2.相補的プライマーTFLC5s及びTFLC5as、並びにテンプレートとしてLC03を使用して、部位特異的変異誘発を行った。このステップにより、FR2の37番目のQがLとなる変異が導入され、分析の目的でPstIサイトが付け加えられた。この新しいコンストラクトはLC04と命名される。
【0166】
3.テンプレートとしてLC04並びにプライマーTFHC2s及びTFLC2as1を使用して、PCRによる増幅を行った。このステップにより、ステップ6で使用されるフラグメントAが生成された。このステップでは、FR1の11番目のQがLへ、15番目のLがVになる変異が導入された。
【0167】
4.テンプレートとしてLC04、並びにプライマーTFLC1s2.1及びTFLC1asRを用いてPCRによる増幅を行った。このステップにより、LC可変領域の末端にKpnIサイトが導入された。このPCRフラグメントをpGEMへクローンニングすることにより、ステップ6で使用されるpGEM04Kが調製された。
【0168】
5.テンプレートとしてLC04、並びにプライマーTFLC2s及びTFLC4asを使用してPCRによる増幅を行った。このステップにより、ステップ6で使用されるフラグメントCが生成された。このステップで3つの変異(FR1の17番目のEがDに、18番目のSがRに、そしてFR4の100番目のAがQとなる変異)が導入された。
【0169】
6.テンプレートとしてフラグメントA及びフラグメントB、並びにプライマーTFHC2s及びTFLC4asを使用したPCRベースの突然変異誘発によりフラグメントDを調製した。フラグメントDをpGEM04Kにクローンニングすることにより、コンストラクトLC04を構築した。
【0170】
7.テンプレートとしてpGEM04K、並びにプライマーTFLC1s2.1及びTFLC4asを使用して、PCRによる増幅を行った。このステップにより、のちにpGEM04KにクローニングされるフラグメントHが生成した。これにより、FR4の100番目のAがQとなる変異が導入され、このコンストラクトはLC06と命名される。
【0171】
8.テンプレートとしてLC06、並びにプライマーTFLC1s2.1及びTFLC3asを使用して、PCRによる増幅を行った。このステップにより、ステップ10で使用されるフラグメントIが生成された。これにより、FR3の70番目のKがDとなる変異及び74番目のKがTとなる変異が導入された。
【0172】
9.テンプレートとしてLC06、並びにプライマーTFLC3s2及びTFLC4asを使用して、PCRによる増殖を行った。このステップにより、ステップ10で使用されるフラグメントFが生成された。これによりFR3で80番目のAがPとなる変異が導入された。
【0173】
10.テンプレートとしてフラグメントI及びフラグメントF、並びにプライマーTFLC1s2.1及びTFLC4asを使用したPCRにより、フラグメントJを調製した。pGEMへのフラグメントJのクローニングによりコンストラクトLC07を調製した。
【0174】
11.相補的プライマーTFLC08sds及びTFLC08sdsa、並びにテンプレートとしてLC07を使用することにより、部位特異的変異誘発がもたらされた。このステップにより、FR3の84番目のVがAに、85番目のNがTとなる変異が導入された。このコンストラクトはLC08と命名される。
【0175】
12.11番目のQがLに、15番目のLがVに、17番目のEがDに、18番目のSがRに、そして37番目のQがLとなる変異を有するLC05から、AgeIからEcoO109Iまでの断片を得て、LC08にクローニングした。これによりコンストラクトLC09を構築した。
【0176】
13.テンプレートとしてLC09、並びに相補的プライマーLC105及びLC103を使用して、部位特異的突然変異誘発がもたらされた。このステップにより、85番目のTがNとなる変異がFR3に導入され、コンストラクトLC10を構築した。
【0177】
14.テンプレートとしてLC10、並びに相補的プライマーLC115及びLC113を使用して、部位特異的突然変異がもたらされた。このステップによりFR3の70番目のDがKとなる変異が導入された。これによりコンストラクトLC11を構築した。
【0178】
15.テンプレートとしてLC11、並びに相補的プライマーLC125a及びLC123aを使用して、部位特異的変異誘発がもたらされた。このステップによりFR2の42番目のKがQとなる変異が導入された。これによりコンストラクトLC12を構築した。
それぞれの変異ステップの後、部分的にヒト化又は完全にヒト化された軽鎖のクローンがシークエンスされ、これらの可変領域のいくつかが、後に発現ベクターtKMC180にクローニングされた。
図12Aは、ステップ1〜15を要約しており、軽鎖のFR1〜4に導入されたアミノ酸の変化の増分を表している。図12B〜Dは軽鎖CDRの配列を表している。
【0179】
軽鎖のヒト化に使用されるオリゴヌクレオチドプライマー
TFLC1as2:
5' TTCGAAAAGTGTACTTACGTTTGATCTCCAGCTTGGTCCCAG 3'
TFLC1s2.1:
5' ACCGGTGATATCCAGATGACCCAGTCTCC 3'
TFLC5s:
5' GGTTAGCATGGTATCTGCAGAAACCAGGG 3'
TFLC5as:
5' CCCTGGTTTCTGCAGATACCATGCTAACC 3'
TFHC2s:
5' TACGACTCACTATAGGGCGAATTGG 3'
TFLC2as1:
5' CCACAGATGCAGACAGGGAGGCAGGAGACTG 3'
TFLC1asR:
5' TTCGAAAAGTGTACTTACGTTTGATCTCCAGCTTGGTACCAGCACCGAACG 3'
TFLC2s:
5' CCTGTCTGCATCTGTGGGAGATAGGGTCACCATCACATGC 3'
TFLC4as:
5' GATCTCCAGCTTGGTACCCTGACCGAACGTGAATGG 3'
TFLC3as:
5' GTAGGCTGCTGATCGTGAAAGAAAAGTCTGTGCCAGATCC 3'
TFLC3s2:
5' CACGATCAGCAGCCTACAGCCTGAAGATTTTGTAAATTATTACTGTC 3'
TFLC08sds:
5' GCAGCCTACAGCCTGAAGATTTTGCAACTTATTACTGTCAACAAG 3'
TFLC08sdsa:
5' CTTGTTGACAGTAATAAGTTGCAAAATCTTCAGGCTGTAGGCTGC 3'
LC105:
5' CAGCAGCCTACAGCCTGAAGATTTTGCAAATTATTACTGTCAAC 3'
LC103:
5' GTTGACAGTAATAATTTGCAAAATCTTCAGGCTGTAGGCTGCTG 3'
LC115:
5' CAGTGGATCTGGCACAAAGTTTTCTTTCACGATCAGCAGC 3'
LC113:
5' GCTGCTGATCGTGAAAGAAAACTTTGTGCCAGATCCACTG 3'
LC125a:
5' CTGCAGAAACCAGGGCAATCTCCTCAGCTCCTG 3'
LC123a:
5' CAGGAGCTGAGGAGATTGCCCTGGTTTCTGCAG 3'
【0180】
図14は、軽鎖(図14A)及び重鎖(図14B)のhOAT(human cH36-IgG1)定常領域の配列を示す。図15は、軽鎖(図15A)及び重鎖(図15B)のhFAT(humanized cH36-IgG4)定常領域の配列を示す。それぞれの図において、フレームワーク4(FR4)可変領域の最後のアミノ酸残基が、hOAT及びhFATの定常領域の最初のアミノ酸残基と結合している。
【実施例10】
【0181】
ヒト化抗TF抗体の発現及び精製
部分的にヒト化されもしくは完全にヒト化された軽鎖及び重鎖のクローンを、発現ベクターにクローニングした。ヒトκ鎖に融合した軽鎖変異体を発現させるために、プラスミドtKMC180(図10A−Bを参照)を使用し、ヒトのIgG1もしくはIgG4のFcと融合した重鎖変異体を発現させるために、pJRS355(図9A−Bを参照)もしくはpLAM356(図9C−Dを参照)ベクターを使用した。そののち、重鎖及び軽鎖クローンのいくつかの組み合わせをCOS細胞に共に導入した。IgGの総生産とTFに対する結合について、COS細胞で一過性に発現させたIgGをELISAで分析した。
【0182】
最後の完全にヒト化された抗TF重鎖及び軽鎖可変領域(HC08とLC09の組み合わせ)を、スノールのメガ発現ベクター(Sunol's Mega expression vector、pSUN34、図11参照)にクローニングし、IgG発現のためにCHO細胞及びNSO細胞に導入した。IgG4κもしくはIgG1κであるヒト化された抗TF抗体を生産する定常化した導入細胞がクローン化された。そののち、分析に十分な量のヒト化抗TF抗体を生産するために、選抜された定常細胞株が使用された。この結果生じたヒト化変異体は95%近くヒトを起源とするものであった(CDR配列を考慮しない)。ヒト化されたIgG4κ変異体はhFAT(humanized IgG Four Anti-Tissue Factor antibody)と命名され、IgG1κ変異体はhOAT(humanized IgG One Anti-Tissue Factor antibody)と命名された。これらの完全にヒト化されたcH36の変異体は、ガン及び炎症性疾患のような慢性症状の治療を目的とするものである。
【0183】
hOAT(HC08とLC09の組み合わせ)を発現するNSO細胞株の一つ(OAT−NSO−P10A7)を解凍し、15mlのチューブの中で、10%FBSを添加した10mlのIMDM培地中に懸濁し、遠心分離を行った。細胞ペレットを10mlの新鮮な培地の中で再懸濁し、T25フラスコに注いで、5%COのもと37℃でインキュベートした。中空繊維バイオリアクターへの植え付けに充分な数の細胞を準備するために、総数で6×10を得るまで細胞を増殖させた。バイオリアクターは、製造元の使用説明書に従って準備をした。採取した細胞をペレット化して、35%FBSを含むIMDM60ml中に再懸濁し、バイオリアクターの毛管外空間へ注入した。グルコースと乳酸塩の濃度を毎日モニターし、採取したものを遠心分離してプールしておいた。採取されたものについて、ELISA分析により抗TF抗体の濃度を試験した。抗TF抗体(hOAT)を含むプールされたサンプルをそののち精製し、以下に記載するように分析した。
【0184】
A.rプロテインAのセファロースファーストフロークロマトグラフィー
組換え型ヒト化抗TFモノクローナル抗体は、2つの軽鎖及び2つの重鎖からなる。軽鎖はマウスの可変領域(変更されていないか、もしくは、上記のようにヒト化されているもの)とヒトκドメインを含んでいるのに対し、重鎖は、マウスの可変領域(変更されていないか、もしくは、上記のようにヒト化されているもの)と、ヒトIgG1若しくはIgG4のFcドメインとの融合体である。ヒトIgGのFc領域は、プロテインA又は組換え型プロテインA(rプロテインA)に対する高い親和性を有することが十分に確立されている。
ヒト化抗TF抗体(hOAT)を含む採取されたプールを、1MのTris−HCl(pH8.0)をサンプル1mlあたり0.08ml加えることにより、pH8.0±0.1に調整した。そののち、低タンパク結合性0.22ミクロンフィルター(例えば、ポリエーテルスルホン膜付きのナルジーン滅菌ディスポーザブル組織培養フィルターユニット、Nalge Nunc International、カタログNo.167−0020)でサンプルを濾過した。サンプル添加の後、媒体のタンパク質(media proteins)などの結合しない物質を取り除くために、rプロテインAカラム(Pharmacia製)を5倍量の20mM Tris−HCl(PH8.0)で洗浄した。採取した培地は高濃度のウシ血清を含んでいるので、カラムからウシIgGを取り除くために、段階的pH勾配による洗浄を行った。段階的pH勾配は、バッファーA(100mM酢酸ナトリウム)中のバッファーB(100mM酢酸)の比率を増すことにより行われた。典型的なpHの段階的洗浄は、20%、40%そして60%のバッファーBを用いるものである。100%のバッファーBでカラムを抽出して、A280に基づいて画分を収集した。プールされた画分は、1Mのトリス塩基を加えることによりpH8.5に調整された。
【0185】
B.Qセファロースファーストフロークロマトグラフィー
陰イオン交換クロマトグラフィーは、その電荷によりタンパク質を分離するのにとても効率的である。抽出されpHを調整されたrプロテインAカラムからのサンプルを2倍量の水で希釈し、pHを確認して8.5に調整した。そののちサンプルを、20mMのTris−HCl(pH8.5)で平衡化した5ml(1.6cm×2.5cm)のQセファロースファーストフロー(Q Sepharose Fast Flow)にロードし、そのカラムを(1)5倍量の20mM Tris−HCl、(2)4倍量の20mM Tris−HCl(pH8.5であり100mMのNaClを含む)で洗浄した。そののち、500mMのNaClを含むpH8.5の20mM Tris−HClの数倍量で、IgGタンパク質を抽出した。タンパク質のピークをプールし、超濾過装置を用いてバッファーをPBSに交換した。
同様の形質転換、細胞培養及び精製方法を用いて、hFATも産生され、精製された。
【実施例11】
【0186】
ヒト化抗TF抗体の特性
A.ヒト化抗TF抗体によるTF機能の阻害
抗TF抗体の重要な特性の一つは、組織因子に由来する血液凝固を阻害する能力である。標準的なPT分析により、精製されたhOAT及びhFATのTF活性を阻害する能力を測定した。PT分析は、組織因子による血液凝固時間を測定するために広く用いられている。この分析の原理は、組織因子(TF)が血漿中でVIIa因子と複合体を形成することである。この複合体は、そののちXからFXaまでの因子を活性化する;FXaはその後、Va因子及びリン脂質の存在下にプロトロンビンをトロンビンに変換する。トロンビンは、最終的に血餅を形成させる。標準的なPT分析では、脂質が付加されたTFが血漿に添加されて血液凝固が始まり、その凝固がOrganon Teknika Coag-A-Mate Coagulation Analyzerもしくはそれと同等な装置によって記録される。
【0187】
抗TF抗体、H36は独特な機構によりヒトTF活性を阻害する。X及びIX因子がTF−VIIa複合体に結合するのを妨害して、TF−VIIa複合体によるFX及びFIXの活性化を阻害することになるように、H36はTF(遊離体もしくはVIIa因子との複合体)と結合する(米国特許第5,986,065号参照)。PTテストにおいて、抗TF抗体が加えられたヒト血漿での凝固時間が延長されたことから、このTFによる凝固が阻害されたことが明らかに示された。凝固時間はTFの活性量に関係するものである。連続的に希釈されたTFでのPT凝固時間の測定から、TF標準曲線がつくられる。TF標準曲線のデータから、抗TF抗体によるTF活性の阻害が定量された。
【0188】
試薬:イノビン(Innovin、カタログNo.68100-392)及びCi−Trol凝固コントロール、レベルI(カタログNo.68100-336)をVWRから入手した。脂質付加された組み換え型ヒトTFを、実施例3に記載したように製造した。
【0189】
方法:PTテストは、凝固分析装置を用いて37℃で実施した。0.01mlのバッファー(50mM Tris−HCl、pH7.5、0.1%BSA)、又は抗TF抗体を含む0.1mlのヒト血漿(Ci−Trolコントロール、レベルI)中に、脂質付加された組み換え型ヒト組織因子(例えば、イノビン)を0.2ml添加することにより、PT反応が開始された。
【0190】
1.使用説明書に従って、1瓶のイノビンに精製水を加える。試薬を37℃まで温める。試薬は4〜8℃で保存すれば数日間安定である。
2.Ci−Trolのそれぞれの瓶に1mlの精製水を加える。これを混ぜて溶解させる。一瓶よりも多く使用する場合には、それらを一つの容器(例えば、10mlの試験チューブ)で一緒にする。1mlのCi−Trolで5回分析することができる(各分析で2×0.1ml=0.2ml使用する)。Ci−Trolは氷上で保存でき、2、3時間は保存可能である。
3.抗TF抗体のストックから、50mM Tris−HCl、pH7.5、0.1%BSA、で、抗TF抗体の連続希釈(200nMから1600nMまで)を作成した。
4.0.1mlのCi−Trolの入った二つのウェルのキュベットのそれぞれのウェルに、50mM Tris−HCl、pH7.5、0.1%BSAを10μl、又は、希釈抗TF抗体10μlを加える。0.1mlのチップをつけたピペットを使用して、それぞれのウェルを混合する。抗TF抗体(もしくはバッファー)を血漿(Ci−Trol)に混ぜた後、0.2mlのイノビンを加えたことによる凝固時間を10分以内で測定する。
【0191】
表3は、cH36、hOAT及びhFATのPT凝固時間に対する効果をまとめたものである。表4のデータと比較して、cH36、hFAT及びhOATはTF機能を非常に強力に阻害することが示された。12.9nM以上のタンパク濃度では、全ての抗体が約95%の阻害を成し遂げた。表3の結果はまた、上記に記載した方法により抗TF抗体であるcH36をヒト化することは、cH36の阻害活性に大きな効果を及ぼさないことを示している。なぜなら、hFAT及びhOATは、TFによる血液凝固を阻害する能力がcH36に見られるものと非常に似ていたからである。
【0192】
表3.キメラ(cH36)並びに(ヒト化された)抗TF抗体(hFAT及びhOAT)のプロトロンビン時間に対する効果
【0193】
【表3】

【0194】
表中の全ての分析は同じ100%のTF活性(濃度)のサンプルを使用している。
【0195】
表4.凝固時間と組織因子活性比(濃度)
【0196】
【表4】

【0197】
B.親和定数の定量
CM5センサーチップに組換え型ヒト組織因子が共有結合で固定された表面プラズモン共鳴装置(surface plasmon resonance; Pharmacia Biosensor製のBIAcore)により、TFに対するヒト化抗TF抗体の親和性を定量化した。親和定数は、BiAcoreコンピューターソフトウェアにより、抗TFモノクローナル抗体の4つの濃度(0.125nM、0.25nM、0.5nM及び1nM)から計算された平均データである。表5の結果から、抗TF抗体であるcH36を上記の方法によりヒト化することは、TFに対するcH36の親和性に大きな影響を与えないことが示される。なぜなら、cH36とhFATの両方はTFに対して同じ親和性を有するからである。
【0198】
表5.抗TF抗体の見かけ上の親和定数と分離定数
【0199】
【表5】

【0200】
本発明は、その好ましい具体例に関して詳細に記載されている。しかしながら、当業者が本発明の開示を考慮して、本発明の趣旨及び範囲内で修正や改良を行うことは歓迎されることである。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】図1Aおよび図1Bは、H36.D2.B7の軽鎖および重鎖の可変領域における核酸(配列番号1及び配列番号3)とアミノ酸(配列番号2及び配列番号4)の配列を示す。超可変領域(CDR即ち相補性決定領域)を下線で示す(一重下線は核酸配列、二重下線はアミノ酸配列を示す)ものである。および重鎖の
【図2】図2は、ELISAやBIACore分析によって測定された、抗組織因子抗体の会合定数(K)と解離定数(K)を示すものである。
【図3】図3は、抗組織因子抗体と共にプレインキュベートしたTF:FVIIa複合体が介在するFXの活性化の阻害を示すものである。
【図4】図4は、FVIIaに特異的な色素原の基質S−2288に対するTF:FVIIa複合体の活性化が、抗組織因子抗体によって阻害されていることを示すものである。
【図5】図5は、TF初期凝固アッセイにおけるプロトロンビン時間(PT)を延長させるためのH36抗体の能力を示す図である。
【図6】図6Aおよび図6Bは、FXa形成と、H36抗体及びrHTFのモル比との関係をグラフで示したものであり、図6Aでは、H36がFX添加前にFT:FVIIa複合体と共にプレインキュベートされており、図6Bでは、H36、TF:FVIIa複合体及びFXが同時に添加されている。
【図7】図7は、J−82細胞活性分析法におけるH36抗体によるTF:FVIIa複合体の活性化の阻害を示すものである。
【図8】図8A及び図8Bは、H36抗体がrhTF上のエピトープの立体配座中に結合するブロティングをドットで示す。レーン1は、ネイティブrHTF、レーン2は、8Mの尿素で処理したネイティブrHTF、レーン3は、8Mの尿素と5mMのDTTで処理したネイティブrHTFを示す。図8Aでは、ブロットを約40秒間露光した、一方図8Bでは、ブロットを120秒間露光した。
【図9A−9B】図9A及び図9Bは、ヒトIgG1−cH36の重鎖可変領域のクローニングベクター及び発現ベクターを示す図面である。重鎖のクローニングベクター(図9A)及び重鎖の発現ベクター(図9B)。
【図9C−9D】図9C及び図9Dは、ヒトIgG4−cH36の重鎖可変領域のクローニングベクター及び発現ベクターを示す図面である。重鎖のクローニングベクター(図9C)及び重鎖の発現ベクター(図9D)。
【図10】図10A及び図10Bは、cH36の軽鎖可変領域のクローニングベクター及び発現ベクターを示す。軽鎖のクローニングベクター(図10A)及び軽鎖の発現ベクター(図10B)。
【図11】図11は、ヒト型の抗−TFIgG1抗体の発現ベクター(pSUN34)のプラスミドマップを示す。
【図12】図12A乃至図12Dは、部分的及び完全にヒト型化された軽鎖(LC)可変領域を示す。軽鎖のCDRの配列及びcH36の配列が図12B乃至図12Dに示されている。配列「LC−09」は完全なヒト型の軽鎖(LC)フレームワーク領域を示す代表的な配列である。
【図13】図13A乃至図13Dは、部分的及び完全にヒト型化された重鎖(HC)可変領域を示す。cH36及びHC−08の重鎖CDRの配列が図13B乃至図13Dに示されている。配列「HC−08」は完全なヒト型の重鎖(HC)フレームワーク領域である。
【図14】図14A及び図14Bは、ヒト型IgG1抗組織因子抗体(hOAT)(IgG1)の定常領域を示す。
【図15】図15A及び図15Bは、ヒト型IgG4抗組織因子抗体(hFAT)(IgG4)の定常領域を示す。
【図1−A】

【図1−B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、そして当該複合体は血液凝固第X因子又は第IX因子と結合して、TF:VIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害するヒト型抗体。
【請求項2】
組織因子(TF)に対する解離定数(K)が約0.5nM未満を示す請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項3】
抗体が、抗体濃度15nM未満での標準プロトロンビン(PT)凝固アッセイによって測定される血液凝固時間を少なくとも約5秒増加させることを、更に特徴とする請求項1又は2に記載のヒト型抗体。
【請求項4】
抗体が、ATCC寄託番号HB−12255として寄託された細胞株H36.D2.B7から得られる抗体に殆ど等しいかより高いTFに対する結合特異性を有する、請求項1又は2に記載のヒト型抗体。
【請求項5】
抗体が、ATCC寄託番号HB−12255として寄託された細胞株H36.D2.B7から得られる抗体に殆ど等しいかより高いTFに対する結合親和性を有する、請求項1又は2に記載のヒト型抗体。
【請求項6】
抗体が、少なくとも一つのネズミ(murine)の完全な相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1又は2に記載のヒト型抗体。
【請求項7】
抗体が、少なくとも一つの完全なヒト型フレームワーク(FR)領域を含む、請求項1又は6に記載のヒト型抗体。
【請求項8】
抗体が、ヒトの抗体に対して少なくとも約90%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項9】
ヒト型抗体の可変領域が、ヒトの抗体の可変領域に対して少なくとも約70%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項10】
フレームワーク1、2、3及び4の各々が図12A(配列番号 )に示される軽鎖FR配列に少なくとも約95%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項11】
抗体が、図14A又は図15A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列にそれぞれ少なくとも約95%の相同性を示す軽鎖の定常領域を含む、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項12】
フレームワーク1、2、3及び4の各々が図13A(配列番号 )に示される重鎖FR配列に少なくとも約95%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項13】
抗体が更に、図14B又は図15B(配列番号 )に示される配列に少なくとも約95%の相同性を示すアミノ酸配列を有する重鎖の定常領域を含む、請求項12に記載のヒト型抗体。
【請求項14】
抗体が、IgG1(hOAT)又はIgG4(hFAT)のアイソタイプを有する、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項15】
ヒトTFに結合する請求項1に記載のヒト型抗体の断片。
【請求項16】
断片が、Fab、Fab’、又はF(ab)である請求項15に記載のヒトTFに結合するヒト型抗体の断片。
【請求項17】
少なくとも一つのマウスの完全な相補性決定領域(CDR)を含み、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、更に、第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合して、TF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害するヒト型抗体。
【請求項18】
すべてのCDR(軽鎖及び重鎖とも)が、マウスのものである請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項19】
抗体が更に、少なくとも一つのヒトのフレームワーク(FR)領域を含む請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項20】
すべてのFR(軽鎖及び重鎖とも)のアミノ酸配列が、ヒトのものであるか又はヒトのアミノ酸配列の2個以内のアミノ酸が置換されたものである、請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項21】
重鎖の超可変領域の1番目のCDR(CDR1)が、図13B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す、請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項22】
重鎖の超可変領域の2番目のCDR(CDR2)が、図13C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す、請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項23】
重鎖の超可変領域の3番目のCDR(CDR3)が、図13D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項24】
軽鎖の超可変領域の1番目のCDR(CDR1)が、図12B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項25】
軽鎖の超可変領域の2番目のCDR(CDR2)が、図12C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項26】
軽鎖の超可変領域の3番目のCDR(CDR3)が、図12D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項27】
重鎖の超可変領域の一つ目のフレームワーク(FR1)が、図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項28】
FR1に於いて、次のアミノ酸の改変:
1番目のEがQ;5番目のQがV;9番目のPがG;11番目のLがV;12番目のVがK;19番目のQがR及び24番目のTがAへの改変;
のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項27に記載のヒト型抗体。
【請求項29】
重鎖の超可変領域の2番目のフレームワーク(FR2)が、図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項30】
FR2に於いて、41番目のHがPに及び44番目のSがGとなるアミノ酸改変のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項29に記載のヒト型抗体。
【請求項31】
重鎖の超可変領域の3番目のフレームワーク(FR3)が、図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す、請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項32】
FR3に於いて、次のアミノ酸の改変:
76番目のSがT;77番目のTがS;80番目のFがY;82番目のHがE;84番目のNがS;87番目のTがR;89番目のDがE及び91番目のSがTへの改変;
のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項31に記載のヒト型抗体。
【請求項33】
重鎖の超可変領域の4番目のフレームワーク(FR4)が、図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項34】
FR4に於いて、113番目のLがVへのアミノ酸の改変を有する、請求項33に記載のヒト型抗体。
【請求項35】
軽鎖の超可変領域の1番目のフレームワーク(FR1)が、図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項36】
FR1に於いて、次のアミノ酸の改変:
11番目のQがL;15番目のLがV;17番目のEがD及び18番目のSがRへの改変;
のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項35に記載のヒト型抗体。
【請求項37】
軽鎖の超可変領域の2番目のフレームワーク(FR2)が、図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項38】
FR2に於いて、37番目のQがLへのアミノ酸の改変を有する請求項37に記載のヒト型抗体。
【請求項39】
軽鎖の超可変領域の3番目のフレームワーク(FR3)が、図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項40】
FR3に於いて、次のアミノ酸の改変:
70番目のKがD;74番目のKがT;80番目のAがP、84番目のAがV及び85番目のNがTへの改変;
のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項39に記載のヒト型抗体。
【請求項41】
軽鎖の超可変領域の第4番目のフレームワーク(FR4)が、図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す、請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項42】
FR4に於いて、100番目のAがQ及び106番目のLがIへのアミノ酸改変のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項41に記載のヒト型抗体。
【請求項43】
ヒトTFに結合する請求項17に記載のヒト型抗体の断片。
【請求項44】
断片が、Fab、Fab’、又はF(ab)である請求項43に記載のヒトTFに結合するヒト型抗体の断片。
【請求項45】
少なくとも一つのマウスの完全な相補性決定領域(CDR)を含み、抗体がヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成するヒト型抗体であり、更に第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合して、TF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害するヒト型抗体であって、抗体が重鎖に、
a)図13B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のCDR(CDR3)、
d)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のFR(FR1)、
e)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のFR(FR2)、
f)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のFR(FR3)、及び、
g)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す4番目のFR(FR4)、
を含むヒト型抗体。
【請求項46】
抗体が、更にその軽鎖に、
h)図12B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のCDR(CDR2)、
j)図12C(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のFR(FR1)、
l)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のFR(FR2)、
m)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のFR(FR3)、及び、
n)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す4番目のFR(FR4)、
を含む請求項45に記載の抗体。
【請求項47】
図14A(配列番号 )又は図15A(配列番号 )に示される軽鎖の定常領域を更に含んでいる、請求項45に記載の抗体。
【請求項48】
図14B(配列番号 )又は図15B(配列番号 )に示される重鎖の定常領域を更に含んでいる、請求項45に記載の抗体。
【請求項49】
ヒトTFに結合する請求項45に記載のヒト型抗体の断片。
【請求項50】
断片が、Fab、Fab’、又はF(ab)である請求項45に記載のヒトTFに結合するヒト型抗体の断片。
【請求項51】
抗体が、重鎖に、
a)図13B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列と相同である1番目のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列と相同である2番目のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列と相同である3番目のCDR(CDR3)、
d)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である1番目のFR(FR1)、
e)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である2番目のFR(FR2)、
f)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である3番目のFR(FR3)、及び、
g)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である4番目のFR(FR4)、並びに、
軽鎖に、
h)図12B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列と相同である1番目のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列と相同である2番目のCDR(CDR2)、
j)図12D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列と相同である3番目のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である1番目のFR(FR1)、
l)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である2番目のFR(FR2)、
m)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である3番目のFR(FR3)、及び、
n)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である4番目のFR(FR4)、
を含んでいるヒト型抗体。
【請求項52】
図14A(配列番号 )又は図15A(配列番号 )に示される軽鎖の定常領域を更に含んでいる請求項51に記載の抗体。
【請求項53】
図14B(配列番号 )又は図15B(配列番号 )に示される重鎖の定常領域を更に含んでいる請求項51に記載の抗体。
【請求項54】
抗体がIgG1又はIgG4のアイソタイプを有する、請求項51に記載のヒト型抗体。
【請求項55】
ヒトTFに結合する請求項4に記載のヒト型抗体の断片。
【請求項56】
断片が、Fab、Fab’、又はF(ab)である、請求項55に記載のヒトTFに結合するヒト型抗体の断片。
【請求項57】
抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項58】
請求項1に記載の抗体の超可変領域を含んでいる1本鎖の抗体。
【請求項59】
請求項1に記載のヒト型抗体の少なくとも一つの重鎖又は軽鎖をコードする単離された核酸。
【請求項60】
請求項59に記載の単離された核酸を含む組換えベクター。
【請求項61】
請求項60に記載の組換えベクターむ宿主細胞。
【請求項62】
請求項1に記載のヒト型抗体、及び少なくとも一つの薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項63】
哺乳動物に於ける血液凝固を阻害する方法であって、その方法が、請求項1に記載のヒト型抗体又はその断片;即ち、
ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合してTF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害するヒト型抗体又はその断片;
の有効量を哺乳動物に投与することを含み、その方法が更に、抗体とTFの間に血液凝固を阻害する特定の複合体を形成することを含む、
血液凝固を阻害する方法。
【請求項64】
哺乳動物に於ける血液凝固を阻害する方法であって、その方法が有効量の請求項7に記載のヒト型抗体又はその断片を哺乳動物に投与することを含み、その抗体又は断片は、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、更に第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合して、TF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害し、その方法が更に、抗体とTFの間に血液凝固を阻害する特定の複合体を形成することを含む、血液凝固を阻害する方法。
【請求項65】
哺乳動物に於ける血液凝固を阻害する方法であって、その方法が有効量の請求項7に記載のヒト型抗体又はその断片を哺乳動物に投与することを含み、その抗体又は断片は、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、更に第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合してTF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害する方法であって、その抗体又は断片が重鎖に、
a)図13B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のCDR(CDR3)、
d)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のFR(FR1)、
e)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のFR(FR2)、
f)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のFR(FR3)、及び、
g)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す4番目のFR(FR4)、
並びに、 その軽鎖に、
h)図12B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のCDR(CDR2)、
j)図12D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のFR(FR1)、
l)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のFR(FR2)、
m)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のFR(FR3)、
n)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す4番目のFR(FR4)、
o)図14A(配列番号 )又は図15A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す軽鎖の定常領域、及び
p)図14B(配列番号 )又は図15B(配列番号 )に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す重鎖の定常領域、
を含む血液凝固を阻害する方法。
【請求項66】
哺乳動物に於ける血液凝固を阻害する方法であって、その方法が有効量の請求項7に記載のヒト型抗体又はその断片をを哺乳動物に投与することを含み、その抗体又は断片は、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、更に第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合してTF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害する方法であって、その抗体又は断片が重鎖に、
a)図13B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列と相同である1番目のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列と相同である2番目のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列と相同である3番目のCDR(CDR3)、
d)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である1番目のFR(FR1)、
e)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である2番目のFR(FR2)、
f)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である3番目のFR(FR3)、及び、
g)図13A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である4番目のFR(FR4)、
並びに、その軽鎖に、
h)図12B(配列番号 )に示されるCDR1のアミノ酸配列と相同である1番目のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号 )に示されるCDR2のアミノ酸配列と相同である2番目のCDR(CDR2)、
j)図12D(配列番号 )に示されるCDR3のアミノ酸配列と相同である3番目のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である1番目のFR(FR1)、
l)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である2番目のFR(FR2)、
m)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である3番目のFR(FR3)、
n)図12A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である4番目のFR(FR4)、
o)図14A(配列番号 )又は図15A(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である軽鎖の定常領域、及び
p)図14B(配列番号 )又は図15B(配列番号 )に示されるアミノ酸配列と相同である重鎖の定常領域、
を含む血液凝固を阻害する方法。
【請求項67】
複合体を形成する条件下で請求項1に記載の抗体に生物サンプルを接触させ、生物サンプル中のTFの存在を示す複合体を検出することからなる、生物サンプル中の組織因子(TF)を検出する方法。
【請求項68】
1)ヒト型抗体の軽鎖又はその断片をコードする一つ目の発現ベクター及びヒト型抗体の重鎖又はその断片をコードする二つ目の発現ベクター、又は
2)ヒト型抗体の軽鎖及び重鎖又はその断片の両方をコードする単独の発現ベクター、
によって宿主細胞を形質転換し、当該宿主細胞を軽鎖及び重鎖の各々が発現する生育条件下に維持して、
ヒト型抗体及びその断片を単離することからなる請求項1に記載のヒト型抗体を製造する方法。
【請求項69】
a)齧歯類の軽鎖のフレームワークのアミノ酸配列を、対応するヒトの抗体のフレームワークについての一群の配列と比較すること、
b)対応する齧歯類の軽鎖のフレームワークと最もアミノ酸配列の相同性が高いヒトのフレームワークの配列を選別すること、
c)齧歯類の軽鎖のフレームワークをコードするDNAセグメントを、工程b)で選別されたヒトのフレームワークの配列と実質的に相同であるアミノ酸配列を有するヒト型の軽鎖のフレームワークをコードするように、変異させること、
d)各々の配列がヒト型の軽鎖のフレームワークをコードする複数のDNA配列を構築するために、齧歯類の各々の軽鎖のフレームワークについて前記の工程a)から工程c)を繰り返すこと、なお、ここに於いて、工程b)で選択された各々の対応するヒトのフレームワークの配列は同じか又は異なったヒトの抗体由来のものであってもよい、
e)工程d)で構築されたヒト型のフレームワークの配列をコードするDNA配列を、少なくとも齧歯類の抗体の軽鎖の可変領域をコードする一つ目のベクターに組み込むこと、及び
f)組み込まれたベクターをヒト型抗体を産生するのに十分な条件下で、宿主に導入すること、
を含むヒト型抗体を製造する方法。
【請求項70】
g)齧歯類の重鎖のフレームワークのアミノ酸配列を、対応するヒトの抗体のフレームワークにつての一群の配列と比較すること、
h)対応する齧歯類の重鎖のフレームワークと最もアミノ酸配列の相同性が高いヒトのフレームワークの配列を選別すること、
i)齧歯類の重鎖のフレームワークをコードするDNAセグメントを、工程h)で選別されたヒトのフレームワークの配列と実質的に相同であるアミノ酸配列を有するヒト型の重鎖のフレームワークをコードするように、変異させること、及び
j)各々の配列がヒト型の重鎖のフレームワークをコードする複数のDNA配列を構築するために、齧歯類の各々の重鎖のフレームワークについて前期の工程g)から工程i)をくり返すこと、なお、ここに於いて、工程h)で選択された各々の対応するヒトのフレームワークの配列は同じか又は異なったヒトの抗体由来のものであってもよい、
を更に含むことからなる、請求項69に記載のヒト型抗体を製造する方法。
【請求項71】
工程j)で構築されたヒト型フレームワーク配列をコードするDNA配列を、少なくとも齧歯類の抗体の重鎖の可変領域をコードする二つ目のベクターに組み込むこと;及び、
組み込まれた一つ目及び二つ目のベクターを宿主へ導入し、ヒト型抗体を産生するのに十分な条件下にすることからなる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
工程j)で産生されたヒト型フレームワーク配列をコードするDNA配列を、少なくとも齧歯類の抗体の軽鎖の可変領域をコードする一つ目のベクターに組み込むこと;及び、
組み込まれた一つ目のベクターを宿主に導入し、ヒト型抗体を産生するのに十分な条件下にすることからなる請求項70に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、そして当該複合体は血液凝固第X因子又は第IX因子と結合して、TF:VIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害するヒト型抗体。
【請求項2】
組織因子(TF)に対する解離定数(K)が約0.5nM未満を示す請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項3】
抗体が、抗体濃度15nM未満での標準プロトロンビン(PT)凝固アッセイによって測定される血液凝固時間を少なくとも約5秒増加させることを、更に特徴とする請求項1又は2に記載のヒト型抗体。
【請求項4】
抗体が、ATCC寄託番号HB−12255として寄託された細胞株H36.D2.B7から得られる抗体に殆ど等しいかより高いTFに対する結合特異性を有する、請求項1又は2に記載のヒト型抗体。
【請求項5】
抗体が、ATCC寄託番号HB−12255として寄託された細胞株H36.D2.B7から得られる抗体に殆ど等しいかより高いTFに対する結合親和性を有する、請求項1又は2に記載のヒト型抗体。
【請求項6】
抗体が、少なくとも一つのネズミ(murine)の完全な相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1又は2に記載のヒト型抗体。
【請求項7】
抗体が、少なくとも一つの完全なヒト型フレームワーク(FR)領域を含む、請求項1又は6に記載のヒト型抗体。
【請求項8】
抗体が、ヒトの抗体に対して少なくとも約90%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項9】
ヒト型抗体の可変領域が、ヒトの抗体の可変領域に対して少なくとも約70%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項10】
フレームワーク1、2、3及び4の各々が図12A(配列番号5乃至48)に示される軽鎖FR配列に少なくとも約95%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項11】
抗体が、図14A又は図15A(配列番号114又は116)に示されるアミノ酸配列にそれぞれ少なくとも約95%の相同性を示す軽鎖の定常領域を含む、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項12】
フレームワーク1、2、3及び4の各々が図13A(配列番号52乃至107)に示される重鎖FR配列に少なくとも約95%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項13】
抗体が更に、図14B又は図15B(配列番号115又は117)に示される配列に少なくとも約95%の相同性を示すアミノ酸配列を有する重鎖の定常領域を含む、請求項12に記載のヒト型抗体。
【請求項14】
抗体が、IgG1(hOAT)又はIgG4(hFAT)のアイソタイプを有する、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項15】
ヒトTFに結合する請求項1に記載のヒト型抗体の断片。
【請求項16】
断片が、Fab、Fab’、又はF(ab)である請求項15に記載のヒトTFに結合するヒト型抗体の断片。
【請求項17】
少なくとも一つのマウスの完全な相補性決定領域(CDR)を含み、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、更に、第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合して、TF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害するヒト型抗体。
【請求項18】
すべてのCDR(軽鎖及び重鎖とも)が、マウスのものである請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項19】
抗体が更に、少なくとも一つのヒトのフレームワーク(FR)領域を含む請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項20】
すべてのFR(軽鎖及び重鎖とも)のアミノ酸配列が、ヒトのものであるか又はヒトのアミノ酸配列の2個以内のアミノ酸が置換されたものである、請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項21】
重鎖の超可変領域の1番目のCDR(CDR1)が、図13B(配列番号108及び109)に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す、請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項22】
重鎖の超可変領域の2番目のCDR(CDR2)が、図13C(配列番号110及び111)に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す、請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項23】
重鎖の超可変領域の3番目のCDR(CDR3)が、図13D(配列番号112及び113)に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項24】
軽鎖の超可変領域の1番目のCDR(CDR1)が、図12B(配列番号49)に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項25】
軽鎖の超可変領域の2番目のCDR(CDR2)が、図12C(配列番号50)に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項26】
軽鎖の超可変領域の3番目のCDR(CDR3)が、図12D(配列番号51)に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項17に記載のヒト型抗体。
【請求項27】
重鎖の超可変領域の一つ目のフレームワーク(FR1)が、図13A(配列番号52乃至107)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項28】
FR1に於いて、次のアミノ酸の改変:
1番目のEがQ;5番目のQがV;9番目のPがG;11番目のLがV;12番目のVがK;19番目のQがR及び24番目のTがAへの改変;
のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項27に記載のヒト型抗体。
【請求項29】
重鎖の超可変領域の2番目のフレームワーク(FR2)が、図13A(配列番号66乃至79)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項30】
FR2に於いて、41番目のHがPに及び44番目のSがGとなるアミノ酸改変のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項29に記載のヒト型抗体。
【請求項31】
重鎖の超可変領域の3番目のフレームワーク(FR3)が、図13A(配列番号80乃至93)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す、請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項32】
FR3に於いて、次のアミノ酸の改変:
76番目のSがT;77番目のTがS;80番目のFがY;82番目のHがE;84番目のNがS;87番目のTがR;89番目のDがE及び91番目のSがTへの改変;
のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項31に記載のヒト型抗体。
【請求項33】
重鎖の超可変領域の4番目のフレームワーク(FR4)が、図13A(配列番号94乃至107)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項34】
FR4に於いて、113番目のLがVへのアミノ酸の改変を有する、請求項33に記載のヒト型抗体。
【請求項35】
軽鎖の超可変領域の1番目のフレームワーク(FR1)が、図12A(配列番号5乃至15)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項36】
FR1に於いて、次のアミノ酸の改変:
11番目のQがL;15番目のLがV;17番目のEがD及び18番目のSがRへの改変;
のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項35に記載のヒト型抗体。
【請求項37】
軽鎖の超可変領域の2番目のフレームワーク(FR2)が、図12A(配列番号16乃至26)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項38】
FR2に於いて、37番目のQがLへのアミノ酸の改変を有する請求項37に記載のヒト型抗体。
【請求項39】
軽鎖の超可変領域の3番目のフレームワーク(FR3)が、図12A(配列番号27乃至37)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項40】
FR3に於いて、次のアミノ酸の改変:
70番目のKがD;74番目のKがT;80番目のAがP、84番目のAがV及び85番目のNがTへの改変;
のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項39に記載のヒト型抗体。
【請求項41】
軽鎖の超可変領域の第4番目のフレームワーク(FR4)が、図12A(配列番号38乃至48)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す、請求項19に記載のヒト型抗体。
【請求項42】
FR4に於いて、100番目のAがQ及び106番目のLがIへのアミノ酸改変のうち、少なくとも一つのアミノ酸の改変を有する請求項41に記載のヒト型抗体。
【請求項43】
ヒトTFに結合する請求項17に記載のヒト型抗体の断片。
【請求項44】
断片が、Fab、Fab’、又はF(ab)である請求項43に記載のヒトTFに結合するヒト型抗体の断片。
【請求項45】
少なくとも一つのマウスの完全な相補性決定領域(CDR)を含み、抗体がヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成するヒト型抗体であり、更に第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合して、TF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害するヒト型抗体であって、抗体が重鎖に、
a)図13B(配列番号108及び109)に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号110及び111)に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号112及び113)に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のCDR(CDR3)、
d)図12A(配列番号5乃至15)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のFR(FR1)、
e)図12A(配列番号16乃至26)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のFR(FR2)、
f)図12A(配列番号27乃至37)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のFR(FR3)、及び、
g)図12A(配列番号38乃至48)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す4番目のFR(FR4)、
を含むヒト型抗体。
【請求項46】
抗体が、更にその軽鎖に、
h)図12B(配列番号49)に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号50)に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のCDR(CDR2)、
j)図12C(配列番号50)に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号5乃至15)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のFR(FR1)、
l)図12A(配列番号16乃至26)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のFR(FR2)、
m)図12A(配列番号27乃至37)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のFR(FR3)、及び、
n)図12A(配列番号38乃至48)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す4番目のFR(FR4)、
を含む請求項45に記載の抗体。
【請求項47】
図14A(配列番号114)又は図15A(配列番号116)に示される軽鎖の定常領域を更に含んでいる、請求項45に記載の抗体。
【請求項48】
図14B(配列番号115)又は図15B(配列番号117)に示される重鎖の定常領域を更に含んでいる、請求項45に記載の抗体。
【請求項49】
ヒトTFに結合する請求項45に記載のヒト型抗体の断片。
【請求項50】
断片が、Fab、Fab’、又はF(ab)である請求項45に記載のヒトTFに結合するヒト型抗体の断片。
【請求項51】
抗体が、重鎖に、
a)図13B(配列番号108及び109)に示されるCDR1のアミノ酸配列と相同である1番目のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号110及び111)に示されるCDR2のアミノ酸配列と相同である2番目のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号112及び113)に示されるCDR3のアミノ酸配列と相同である3番目のCDR(CDR3)、
d)図13A(配列番号52乃至65)に示されるアミノ酸配列と相同である1番目のFR(FR1)、
e)図13A(配列番号66乃至79)に示されるアミノ酸配列と相同である2番目のFR(FR2)、
f)図13A(配列番号80乃至93)に示されるアミノ酸配列と相同である3番目のFR(FR3)、及び、
g)図13A(配列番号94乃至107)に示されるアミノ酸配列と相同である4番目のFR(FR4)、並びに、
軽鎖に、
h)図12B(配列番号49)に示されるCDR1のアミノ酸配列と相同である1番目のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号50)に示されるCDR2のアミノ酸配列と相同である2番目のCDR(CDR2)、
j)図12D(配列番号51)に示されるCDR3のアミノ酸配列と相同である3番目のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号5乃至51)に示されるアミノ酸配列と相同である1番目のFR(FR1)、
l)図12A(配列番号16乃至26)に示されるアミノ酸配列と相同である2番目のFR(FR2)、
m)図12A(配列番号27乃至37)に示されるアミノ酸配列と相同である3番目のFR(FR3)、及び、
n)図12A(配列番号38乃至48)に示されるアミノ酸配列と相同である4番目のFR(FR4)、
を含んでいるヒト型抗体。
【請求項52】
図14A(配列番号114)又は図15A(配列番号116)に示される軽鎖の定常領域を更に含んでいる請求項51に記載の抗体。
【請求項53】
図14B(配列番号115)又は図15B(配列番号117)に示される重鎖の定常領域を更に含んでいる請求項51に記載の抗体。
【請求項54】
抗体がIgG1又はIgG4のアイソタイプを有する、請求項51に記載のヒト型抗体。
【請求項55】
ヒトTFに結合する請求項4に記載のヒト型抗体の断片。
【請求項56】
断片が、Fab、Fab’、又はF(ab)である、請求項55に記載のヒトTFに結合するヒト型抗体の断片。
【請求項57】
抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1に記載のヒト型抗体。
【請求項58】
請求項1に記載の抗体の超可変領域を含んでいる1本鎖の抗体。
【請求項59】
請求項1に記載のヒト型抗体の少なくとも一つの重鎖又は軽鎖をコードする単離された核酸。
【請求項60】
請求項59に記載の単離された核酸を含む組換えベクター。
【請求項61】
請求項60に記載の組換えベクターむ宿主細胞。
【請求項62】
請求項1に記載のヒト型抗体、及び少なくとも一つの薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項63】
哺乳動物に於ける血液凝固を阻害する方法であって、その方法が、請求項1に記載のヒト型抗体又はその断片;即ち、
ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合してTF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害するヒト型抗体又はその断片;
の有効量を哺乳動物に投与することを含み、その方法が更に、抗体とTFの間に血液凝固を阻害する特定の複合体を形成することを含む、
血液凝固を阻害する方法。
【請求項64】
哺乳動物に於ける血液凝固を阻害する方法であって、その方法が有効量の請求項7に記載のヒト型抗体又はその断片を哺乳動物に投与することを含み、その抗体又は断片は、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、更に第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合して、TF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害し、その方法が更に、抗体とTFの間に血液凝固を阻害する特定の複合体を形成することを含む、血液凝固を阻害する方法。
【請求項65】
哺乳動物に於ける血液凝固を阻害する方法であって、その方法が有効量の請求項7に記載のヒト型抗体又はその断片を哺乳動物に投与することを含み、その抗体又は断片は、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、更に第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合してTF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害する方法であって、その抗体又は断片が重鎖に、
a)図13B(配列番号108及び109)に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号110及び111)に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号112及び113)に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のCDR(CDR3)、
d)図13A(配列番号52乃至65)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のFR(FR1)、
e)図13A(配列番号66乃至79)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のFR(FR2)、
f)図13A(配列番号80乃至93)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のFR(FR3)、及び、
g)図13A(配列番号94乃至107)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す4番目のFR(FR4)、
並びに、 その軽鎖に、
h)図12B(配列番号49)に示されるCDR1のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号50)に示されるCDR2のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のCDR(CDR2)、
j)図12D(配列番号51)に示されるCDR3のアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号5乃至15)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す1番目のFR(FR1)、
l)図12A(配列番号16乃至26)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す2番目のFR(FR2)、
m)図12A(配列番号27乃至37)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す3番目のFR(FR3)、
n)図12A(配列番号38乃至48)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す4番目のFR(FR4)、
o)図14A(配列番号114)又は図15A(配列番号116)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す軽鎖の定常領域、及び
p)図14B(配列番号115)又は図15B(配列番号117)に示されるアミノ酸配列に少なくとも95%の相同性を示す重鎖の定常領域、
を含む血液凝固を阻害する方法。
【請求項66】
哺乳動物に於ける血液凝固を阻害する方法であって、その方法が有効量の請求項7に記載のヒト型抗体又はその断片をを哺乳動物に投与することを含み、その抗体又は断片は、ヒト組織因子(TF)に特異的に結合して複合体を形成し、更に第X因子又は第IX因子がTF又はTF:FVIIaに結合してTF:FVIIaによる第X因子又は第IX因子の活性化を阻害する方法であって、その抗体又は断片が重鎖に、
a)図13B(配列番号108及び109)に示されるCDR1のアミノ酸配列と相同である1番目のCDR(CDR1)、
b)図13C(配列番号110及び111)に示されるCDR2のアミノ酸配列と相同である2番目のCDR(CDR2)、
c)図13D(配列番号112及び113)に示されるCDR3のアミノ酸配列と相同である3番目のCDR(CDR3)、
d)図13A(配列番号52乃至65)に示されるアミノ酸配列と相同である1番目のFR(FR1)、
e)図13A(配列番号66乃至79)に示されるアミノ酸配列と相同である2番目のFR(FR2)、
f)図13A(配列番号80乃至93)に示されるアミノ酸配列と相同である3番目のFR(FR3)、及び、
g)図13A(配列番号94乃至107)に示されるアミノ酸配列と相同である4番目のFR(FR4)、
並びに、その軽鎖に、
h)図12B(配列番号49)に示されるCDR1のアミノ酸配列と相同である1番目のCDR(CDR1)、
i)図12C(配列番号50)に示されるCDR2のアミノ酸配列と相同である2番目のCDR(CDR2)、
j)図12D(配列番号51)に示されるCDR3のアミノ酸配列と相同である3番目のCDR(CDR3)、
k)図12A(配列番号5乃至15)に示されるアミノ酸配列と相同である1番目のFR(FR1)、
l)図12A(配列番号16乃至26)に示されるアミノ酸配列と相同である2番目のFR(FR2)、
m)図12A(配列番号27乃至37)に示されるアミノ酸配列と相同である3番目のFR(FR3)、
n)図12A(配列番号38乃至48)に示されるアミノ酸配列と相同である4番目のFR(FR4)、
o)図14A(配列番号114)又は図15A(配列番号116)に示されるアミノ酸配列と相同である軽鎖の定常領域、及び
p)図14B(配列番号115)又は図15B(配列番号117)に示されるアミノ酸配列と相同である重鎖の定常領域、
を含む血液凝固を阻害する方法。
【請求項67】
複合体を形成する条件下で請求項1に記載の抗体に生物サンプルを接触させ、生物サンプル中のTFの存在を示す複合体を検出することからなる、生物サンプル中の組織因子(TF)を検出する方法。
【請求項68】
1)ヒト型抗体の軽鎖又はその断片をコードする一つ目の発現ベクター及びヒト型抗体の重鎖又はその断片をコードする二つ目の発現ベクター、又は
2)ヒト型抗体の軽鎖及び重鎖又はその断片の両方をコードする単独の発現ベクター、
によって宿主細胞を形質転換し、当該宿主細胞を軽鎖及び重鎖の各々が発現する生育条件下に維持して、
ヒト型抗体及びその断片を単離することからなる請求項1に記載のヒト型抗体を製造する方法。
【請求項69】
a)齧歯類の軽鎖のフレームワークのアミノ酸配列を、対応するヒトの抗体のフレームワークについての一群の配列と比較すること、
b)対応する齧歯類の軽鎖のフレームワークと最もアミノ酸配列の相同性が高いヒトのフレームワークの配列を選別すること、
c)齧歯類の軽鎖のフレームワークをコードするDNAセグメントを、工程b)で選別されたヒトのフレームワークの配列と実質的に相同であるアミノ酸配列を有するヒト型の軽鎖のフレームワークをコードするように、変異させること、
d)各々の配列がヒト型の軽鎖のフレームワークをコードする複数のDNA配列を構築するために、齧歯類の各々の軽鎖のフレームワークについて前記の工程a)から工程c)を繰り返すこと、なお、ここに於いて、工程b)で選択された各々の対応するヒトのフレームワークの配列は同じか又は異なったヒトの抗体由来のものであってもよい、
e)工程d)で構築されたヒト型のフレームワークの配列をコードするDNA配列を、少なくとも齧歯類の抗体の軽鎖の可変領域をコードする一つ目のベクターに組み込むこと、及び
f)組み込まれたベクターをヒト型抗体を産生するのに十分な条件下で、宿主に導入すること、
を含むヒト型抗体を製造する方法。
【請求項70】
g)齧歯類の重鎖のフレームワークのアミノ酸配列を、対応するヒトの抗体のフレームワークにつての一群の配列と比較すること、
h)対応する齧歯類の重鎖のフレームワークと最もアミノ酸配列の相同性が高いヒトのフレームワークの配列を選別すること、
i)齧歯類の重鎖のフレームワークをコードするDNAセグメントを、工程h)で選別されたヒトのフレームワークの配列と実質的に相同であるアミノ酸配列を有するヒト型の重鎖のフレームワークをコードするように、変異させること、及び
j)各々の配列がヒト型の重鎖のフレームワークをコードする複数のDNA配列を構築するために、齧歯類の各々の重鎖のフレームワークについて前期の工程g)から工程i)をくり返すこと、なお、ここに於いて、工程h)で選択された各々の対応するヒトのフレームワークの配列は同じか又は異なったヒトの抗体由来のものであってもよい、
を更に含むことからなる、請求項69に記載のヒト型抗体を製造する方法。
【請求項71】
工程j)で構築されたヒト型フレームワーク配列をコードするDNA配列を、少なくとも齧歯類の抗体の重鎖の可変領域をコードする二つ目のベクターに組み込むこと;及び、
組み込まれた一つ目及び二つ目のベクターを宿主へ導入し、ヒト型抗体を産生するのに十分な条件下にすることからなる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
工程j)で産生されたヒト型フレームワーク配列をコードするDNA配列を、少なくとも齧歯類の抗体の軽鎖の可変領域をコードする一つ目のベクターに組み込むこと;及び、
組み込まれた一つ目のベクターを宿主に導入し、ヒト型抗体を産生するのに十分な条件下にすることからなる請求項70に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−A】
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【図6−B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A−9B】
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【図9C−9D】
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【図10A−10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−503541(P2006−503541A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−540192(P2003−540192)
【出願日】平成14年10月29日(2002.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2002/034727
【国際公開番号】WO2003/037911
【国際公開日】平成15年5月8日(2003.5.8)
【出願人】(500206386)スノル・モレキュラー・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】