説明

血液凝固因子を有するタンパク質分解によって切断可能な融合タンパク質

本発明は、凝固因子が半減期を延長したポリペプチドに融合しており、両者がタンパク質分解によって切断可能なリンカーペプチドによって連結された治療用融合タンパク質に関する。このようなリンカーが切断されると、半減期を延長したポリペプチドによって引き起こされるあらゆる活性を弱める立体障害から凝固因子が開放され、それによって、凝固関連の分析で試験すると高いモル比活性度を有する融合タンパク質の生成が可能になる。さらに、このようなリンカーは切断可能であるということによって、ペプチドリンカーのタンパク質分解的切断後に不活性化および/または除去の速度を、それに対応するアミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーで連結された治療用融合タンパク質と比較して強化することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
本発明は、それらの改変されていない元の治療用ポリペプチドと比較して高い半減期を有する改変された治療用融合タンパク質の分野に関する。本発明は、具体的には、タンパク質分解によって切断可能なリンカーペプチドによって連結された、半減期を延長したポリペプチド(HLEP)に融合した凝固因子に関する。このようなリンカーが切断されると、HLEPによって引き起こされるあらゆる活性を弱める立体障害から治療用ポリペプチドが放出され、それによって、凝固因子の高いモル比活性度を保持する融合タンパク質の生成が可能になる。治療用融合タンパク質が酵素原である場合、対応するプロテアーゼに晒された際に、インビボでのそれらの活性化と実質的に同時に治療用ポリペプチドを放出するようなリンカーが特に好ましい。本発明のその他の形態は、凝固因子が活性化されて、ペプチドリンカーが、凝固に関連する様式でタンパク質分解によって切断されると、それに対応する切断可能なリンカーを有さない融合タンパク質と比較してより速い所定の凝固因子の不活性化速度を示すこと、および/または、凝固因子が活性化されて、ペプチドリンカーが、凝固に関連する様式でタンパク質分解によって切断されると、それに対応する切断可能なリンカーを有さない融合タンパク質と比較してより速い所定の凝固因子の除去速度を示すことである。
【0002】
本発明の概念は、ヒトビタミンK依存性ポリペプチドの第IX因子、第VII因子および第VIIa因子によって具体的に実証されるが、このような概念はまた、その他の凝固因子にも応用することができる。切断可能なリンカーペプチドで治療用ポリペプチドに連結されていればどのような半減期を延長したポリペプチド(HLEP)でもよいが、好ましいHLEPは、アルブミンまたは免疫グロブリン、または、それらから誘導されたフラグメント、例えば抗原結合ドメインを含まないFcフラグメントである。本発明はまた、切断可能な介在ペプチドリンカーをコードするオリゴヌクレオチドで連結された、ヒト血清アルブミンのようなHLEPをコードするcDNAに遺伝学的に融合した治療用ポリペプチドおよびそれらの誘導体をコードするcDNA配列に関する。このようなコードされた誘導体は、それらの切断不可能な等価物と比較して、増加した改善された半減期、および、高いモル比活性度を示す。本発明はまた、このようなcDNA配列を含む組換え発現ベクター、このような組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞、未改変であるが改善された半減期を有する野生型治療用ポリペプチドに匹敵する生物活性を有する組換えポリペプチドおよび誘導体に関する。本発明はまた、このような組換えタンパク質、および、それらの誘導体の製造方法に関する。本発明はまた、インビボでの半減期を高めるのに有用な、このような改変されたDNA配列を含むヒトの遺伝子治療に使用するためのトランスファーベクターも包含する。
【背景技術】
【0003】
数種の組換え治療用ポリペプチドが、ヒトにおける治療および予防的な用途で市販されている。患者は、一般的に、組換えの活性成分の特異的な作用機序によって利益を得るが、それらの費用がかかり複雑な製造工程のために、それらの利用可能性が限定されるという不利益を被ることが多い。このような状況は、このような生成物の必要な用量または投与頻度を低減させることによって改善することができる。投与頻度を減らせば、患者にとっての利便性を改善することができ、従って、治療をより受け入れやすくすることができる。投与後のインビボでの半減期を高める目的を達成するためのいくつかの解決法が説明されている。近年提唱されている解決法としては、融合タンパク質の形成が挙げられ、特に短いインビボでの半減期を有するポリペプチドの場合、HLEPに融合させることによって有意に半減期を高めることができる。
【0004】
Ballance等(WO01/79271)は、ヒト血清アルブミンに融合させると、インビボでの機能的な半減期を高め、貯蔵寿命を延長すると予想される多数の様々な治療用ポリペプチドの融合ポリペプチドを説明している。可能性のある融合のパートナーの長い一覧が説明されているが、これらのポリペプチドのほとんど全てに関して、それぞれのアルブミン融合タンパク質が実際に生物活性を保持し、改善された特性を有するという実験データを示していない。実施例として示されている治療用ポリペプチドの一覧のなかでも特に、第IX因子、および、第FVII/FVIIa因子が挙げられている。また、アルブミンとFIXまたはFVII/FVIIaとの間にペプチドリンカーが存在するFIXおよびFVII/FVIIaの融合体も説明されている。しかしながら、切断可能なリンカーペプチドの使用は示唆されていない。
【0005】
Sheffield等(Sheffield W.P.等(2004),Br.J.Haematol.126:565〜573)は、マウスのFIX、8個のアミノ酸からなるリンカー(GPG4TM)、マウスのアルブミン、および、22個のアミノ酸からなるペプチドタグで構成されているマウス第IX因子アルブミン融合タンパク質、さらに加えて、ヒト第IX因子、7個のアミノ酸からなるリンカー(G6V)、および、ヒトアルブミンで構成されているヒト第IX因子アルブミン融合タンパク質を記載している。1段階のFIX依存性の凝固分析を用いたところ、マウスのFIX−アルブミン融合タンパク質(MFUST)、および、ヒトFIX−アルブミン融合タンパク質(HFUS)のモル比活性度は、それらの融合していない等価物の比活性度よりも少なくとも2〜3倍低く、この作用は少なくとも部分的に、FXIaによるより遅いタンパク質分解による活性化プロセスによるものである。Sheffieldは、FIXとアルブミンとの間の切断可能なリンカーを使用していないし、または、それらの使用を示唆もしていない。
【0006】
数種の特許出願では、治療用ポリペプチドのインビボでの半減期を延長させるための、治療用ポリペプチドの免疫グロブリンの定常領域への融合が説明されている。WO2002/04598、WO2003/059935、WO2004/081053、WO2004/101740、および、WO2005/001025には、治療用ポリペプチド部分に関する実施例としてFIXが記載されている。また後者の2つの特許出願は、免疫グロブリンの定常領域に融合したFVII/FVIIaも説明しており、融合タンパク質のホモ二量体は、単量体/二量体からなる融合タンパク質と比較して低い凝固活性を有することを見出している。ここでも、切断可能なリンカーペプチドの使用は示唆されていない。
【0007】
WO91/09125において、血液凝固カスケードのプロテアーゼによって切断することができるリンカーで連結した融合タンパク質が開示されているが、この融合タンパク質は、線維素溶解性または抗血栓性のタンパク質を含むものに限定される。
【0008】
WO03/068934において、少なくとも1つの第一の構成分子、少なくとも1つのリンカー、および、少なくとも1つの第二の分子で構成されるキメラ分子が説明されており、ここにおいて上記リンカーは、第一の構成分子と第二の構成分子との間に天然に存在しないリンケージおよび切断部位を生産する酵素切断部位を含み、さらにこの切断部位でキメラ分子が切断されると、構成分子のうち少なくとも一方が機能的に活性になる。切断するためのプロテアーゼは、トロンビンのような凝固因子であり得る。その他のたくさんのものなかでも特に説明されている構成分子は、FIX、および、FVIIaである。しかしながら、本発明の治療用融合タンパク質は開示されていないし、さらに、開示された本発明の治療用融合タンパク質の改善された特性、例えば、切断可能なリンカーを有さない治療用タンパク質と比較して高いモル比活性度、高い不活性化および/または除去速度も開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
長い半減期を有する凝固因子が、医療的に非常に必要である。従来技術において、凝固因子を半減期を延長したポリペプチドに融合させることによって、この目的が達成されることが示されている。しかしながら、凝固中に、酵素原のタンパク質分解的切断(例えばFIX)、または、すでにタンパク質分解によって第二のポリペプチドに「予め」活性化された因子との接触(例えば、FVIIaの組織因子への結合)のいずれかによって一度凝固因子が活性化されると、FVIIaのような野生型の凝固因子に関するケースですでに報告されているように、それにより血栓性合併症が生じるために、凝固因子は、現在活性化された凝固因子の長い半減期を維持するには不適切になり(Aledort L.M.,J Thromb Haemost 2(10):1700〜1708(2004))、活性化された因子が高い半減期を有するかどうかにさらに高い相関が生じるものと予想される。従って、本発明の目的の1つは、活性化後、または、補因子が利用可能性になった後でも、未改変の凝固因子の半減期に匹敵する半減期を有する、寿命が長い凝固因子を提供することである。
【0010】
従来技術で説明されているような、さらに実施例6および7でも示されているような半減期を延長したポリペプチドへ凝固因子を融合させると、一般的に、融合した凝固因子のモル比活性度が低くなるという問題が生じる。本発明のその他の形態は、それに対応する切断可能なリンカーを有さない治療用融合タンパク質と比較して、延長された半減期を有し、高いモル比活性度を示す凝固因子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って本発明は:
a)凝固因子、その変異体または誘導体、
b)アルブミン(それらの変異体および誘導体を含む)、アルブミンファミリーのポリペプチド(それらの変異体および誘導体を含む)、および、免疫グロブリン(それらの変異体および誘導体を含む)からなる群より選択された半減期を延長したポリペプチド、および、
c)凝固因子と半減期を延長したポリペプチドとを連結するペプチドリンカー、
含む治療用融合タンパク質に関し;
ここにおいて該ペプチドリンカーは、凝固に関与するプロテアーゼによって切断することができるか、または、凝固酵素によって活性化することができ、および、該治療用融合タンパク質は、アミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーで連結された各治療用融合タンパク質と比較して:
i)少なくとも1種の凝固関連の分析において、高いモル比活性度、および/または
ii)凝固に関連する様式で該ペプチドリンカーがタンパク質分解によって切断された後の、活性化された凝固因子の高い不活性化速度、および/または
iii)凝固に関連する様式で該ペプチドリンカーがタンパク質分解によって切断された後の、活性化された凝固因子の高い除去速度、
を示す。
【0012】
このような切断可能なリンカーのために、凝固に関連する様式でペプチドリンカーを切断した後に、凝固因子の挙動が天然型の融合していない因子の挙動によりいっそう近くなり、さらに、潜在的なプロトロンビンの作用による活性因子の延長された半減期を示さなくなる。
【0013】
本発明の意味において、凝固に関連する様式でのタンパク質分解的切断とは、少なくとも1種の凝固因子または凝固補因子の活性化の結果として起こるあらゆるタンパク質分解的切断のことである。
【0014】
用語「凝固に関連する様式でペプチドリンカーがタンパク質分解によって切断された後に活性化された凝固因子」は、本発明の意味において、凝固因子が、リンカーペプチドのタンパク質分解的切断とほぼ平行して活性化されるか、または、リンカーペプチドのタンパク質分解的切断の前に凝固因子がすでに活性化されているかのいずれかを意味する。活性化は、例えば、凝固因子のタンパク質分解的切断によって生じるものでもよいし、または、補因子に結合することによって生じるものでもよい。
【0015】
本発明のさらなる形態は:
a)凝固因子、その変異体または誘導体、
b)アルブミン(それらの変異体および誘導体を含む)、アルブミンファミリーのポリペプチド(それらの変異体および誘導体を含む)、および、免疫グロブリン(それらの変異体および誘導体を含む)からなる群より選択された半減期を延長したポリペプチド、および、
c)凝固因子と半減期を延長したポリペプチドとを連結するペプチドリンカー、
含む治療用融合タンパク質を提供することであり;
ここにおいて該ペプチドリンカーは、凝固に関与するプロテアーゼによって切断することができるか、または、凝固酵素によって活性化することができ、および、該治療用融合タンパク質は、アミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーで連結された各治療用融合タンパク質と比較して:
i)少なくとも1種の凝固関連の分析において、高いモル比活性度、および/または
ii)凝固に関連する様式で該ペプチドリンカーがタンパク質分解によって切断された後の、活性化された凝固因子の高い不活性化速度、および/または
iii)凝固に関連する様式で該ペプチドリンカーがタンパク質分解によって切断された後の、活性化された凝固因子の高い除去速度、
を有し、さらに、未改変の凝固因子のインビボでの回復と比較して強化されたインビボでの回復、
を示す。
【0016】
好ましくは、未改変の凝固因子と比較して、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは40%またはそれ以上に強化されたインビボでの回復を示す治療用融合タンパク質である。
【0017】
好ましい凝固因子は、ビタミンK依存性凝固因子、ならびに、それらのフラグメントおよび変異体である。さらにより好ましくは、FVIIaおよびFIX、ならびに、それらのフラグメントおよび変異体である。
【0018】
好ましいHLEPは、アルブミン、および、それらのフラグメントまたは変異体、並びに、免疫グロブリン(それらのフラグメントおよび変異体を含む)である。
【0019】
その他の好ましい実施態様において、リンカー領域は、発現された融合タンパク質の新抗原性の特性(ヒトタンパク質中には存在しない治療用抗原に含まれるペプチドが出現することによって、潜在的に免疫原性の新規のエピトープが形成されること)の危険が低減されると予想される、投与しようとする治療用ポリペプチドまたはそれらの変異体の配列を含む。さらにこのような治療用タンパク質が酵素原である(例えば、タンパク質分解による活性化を必要とする)ような場合においても、ペプチドリンカー切断の速度は、酵素原の凝固に関連する活性化の速度をよりいっそう密接に反映すると予想される。従って、このような好ましい実施態様において、酵素原およびそれに相当するリンカーが活性化され、それぞれ匹敵する速度で切断される。この理由のために、本発明はまた、具体的には、酵素原とHLEPとの融合タンパク質にも関し、ここにおいて関連するプロテアーゼによるリンカー切断の速度は、酵素原活性化の速度の3倍と遅延せず、最も好ましくは2倍と遅延しない。
【0020】
さらなる実施態様において、リンカーペプチドは、1種より多くのプロテアーゼのための切断部位を含む。これは、異なるプロテアーゼでも同じ位置で切断することができるリンカーペプチド、または、2種またはそれ以上の異なる切断部位を提供するリンカーペプチドのいずれかによって達成できる。これは、酵素活性を達成するために、治療用融合タンパク質をタンパク質分解的切断によって活性化しなければならない場合、および、この活性化工程に異なるプロテアーゼが寄与する可能性がある場合において有利な環境となることがある。これは、例えば、FIXが活性化されると、FXIaまたはFVIIa/組織因子(TF)のいずれかによって達成することができる場合である。
【0021】
本発明の好ましい実施態様は、リンカーがプロテアーゼによって切断され、凝固因子を活性化することができる治療用融合タンパク質であり、それによって、リンカー切断が、凝固が起こる部位における凝固因子の活性化に確実に関連付けられるようになる。
【0022】
本発明に係るその他の好ましい治療用融合タンパク質は、リンカーが、治療用融合タンパク質の一部である凝固因子によって切断することができる治療用融合タンパク質であり、このような場合、このような凝固因子が一度活性化されると、融合タンパク質の切断も、凝固に関する事象と確実に関連するようになる。
【0023】
本発明に係るその他の好ましい治療用融合タンパク質は、リンカーが、そのものが治療用融合タンパク質の一部である凝固因子の活性によって直接的または間接的に活性化されるプロテアーゼによって切断することができる治療用融合タンパク質であり、このような場合、融合タンパク質の切断も、凝固に関する事象と確実に関連するようになる。
【0024】
最も好ましい治療用融合タンパク質の1つのクラスは、リンカーが、FXIaおよび/またはFVIIa/TFによって切断することができ、凝固因子がFIXである治療用融合タンパク質である。
【0025】
本発明の要点は、ビタミンK依存性ポリペプチド第IX因子、切断可能なリンカー、および、HLEPとしてアルブミン、加えて、それに対応するcDNA配列によって具体的に実証される。本発明はまた、タンパク質分解によって活性化することができる、または、その他の酵素原またはポリペプチドの活性化に関与するその他のあらゆる凝固因子をコードするcDNA配列に関する。これらのcDNAは、ヒト血清アルブミンまたはその他のHLEPをコードするcDNA配列に遺伝学的に融合しており、介在する切断可能なペプチドリンカーをコードするオリゴヌクレオチドで連結されている。発現された治療用融合タンパク質は、それらの切断不可能な等価物と比較して高いモル比活性度を示す。本発明はまた、このような融合したcDNA配列を含む組換え発現ベクター、このような組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞、未改変の野生型治療用ポリペプチドにほぼ匹敵する生物活性を有するが、改善されたインビボでの半減期を有する組換え治療用融合タンパク質および誘導体に関する。本発明はまた、このような組換えポリペプチド、および、それらの誘導体の製造方法に関する。本発明はまた、インビボでの生成物レベルを高めるのに有用な、このような改変されたDNA配列を含むヒトの遺伝子治療に使用するためのトランスファーベクターも包含する。
【0026】
本発明に係る好ましい治療用融合タンパク質は、少なくとも1種の凝固関連の分析において、モル比活性度を有する治療用融合タンパク質であり、具体的には、切断可能なリンカーを有さない治療用融合タンパク質の場合の活性と比較して少なくとも25%高いモル比活性度を有する治療用融合タンパク質である。より好ましくは、利用可能な様々な凝固関連の分析のうち少なくとも1種において、モル比活性度が少なくとも50%高い治療用融合タンパク質であり、さらにより好ましくは、モル比活性度が少なくとも100%高い治療用融合タンパク質である。
【0027】
本発明のさらなる好ましい実施態様は、凝固因子と半減期を延長したポリペプチドとを連結するペプチドリンカーを切断した後の活性化された凝固因子の不活性化速度が、それに相当する切断可能なリンカーを有さない治療用融合タンパク質における活性化された凝固因子の不活性化速度と比較して少なくとも10%高い治療用融合タンパク質である。より好ましくは、不活性化速度が少なくとも25%高い治療用融合タンパク質であり、さらにより好ましくは、不活性化速度が少なくとも50%高い治療用融合タンパク質である。
【0028】
本発明のさらなる好ましい実施態様は、凝固因子と半減期を延長したポリペプチドとを連結するペプチドリンカーを切断した後の凝固因子の除去速度が、それに相当する切断可能なリンカーを有さない治療用融合タンパク質における凝固因子の除去速度と比較して少なくとも10%高い治療用融合タンパク質である。より好ましくは、除去速度が少なくとも25%高い治療用融合タンパク質であり、さらにより好ましくは、除去速度が少なくとも50%高い治療用融合タンパク質である。
【0029】
発明の詳細な説明
ビタミンK依存性ポリペプチド
ビタミンK依存性ポリペプチドは、治療用ポリペプチドの1つの群として、肝臓で補因子としてビタミンKを用いて酵素的にγ−カルボキシル化されるポリペプチドである。このようなビタミンK依存性ポリペプチドは、例えば、第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインS、GAS6、および、プロテインZである。
【0030】
ヒトFIX
ヒトFIXは、ビタミンK依存性ポリペプチド群の1メンバーとして、57kDaの分子量を有する単鎖糖タンパク質であり、これは、肝細胞によって、415個のアミノ酸からなる不活性な酵素原として血流に分泌される。これは、ポリペプチドのN末端のGla−ドメインに局在している12個のγ−カルボキシ−グルタミン酸残基を含む。Gla残基は、それらの生合成のためにビタミンKを必要とする。Glaドメインに続いて、2種の上皮増殖因子ドメイン、活性化ペプチド、および、トリプシン型セリンプロテアーゼドメインがある。FIXのさらなる翻訳後修飾としては、水酸化(Asp64)、N−(Asn157およびAsn167)、加えてO型の糖付加(Ser53、Ser61、Thr159、Thr169、および、Thr172)、硫酸化(Tyr155)、および、リン酸化(Ser158)が挙げられる。
【0031】
FIXは、Arg145〜Ala146、および、Arg180〜Val181での活性化ペプチドのタンパク質分解によってその活性型である第IXa因子に変換され、それにより、2種のポリペプチド鎖、N末端軽鎖(18kDa)、および、C末端重鎖(28kDa)の形成が起こるが、これらは、1個のジスルフィド架橋によって結合される。第IX因子の活性化による切断は、インビトロで、例えば第XIa因子、または、第VIIa因子/TFによって達成できる。第IX因子は、ヒト血漿中に5〜10μg/mlの濃度で存在する。ヒトにおける第IX因子の末梢血漿における半減期は、約15〜18時間であることが見出された(White GC等.1997.Recombinant factor IX.Thromb Haemost.78:261〜265;Ewenstein BM等.2002.Pharmacokinetic analysis of plasma−derived and recombinant F IX concentrates in previously treated patients with moderate or severe hemophilia B.Transfusion 42:190〜197)。
【0032】
血友病Bは、第IX因子が機能しないか、または、失われることによって引き起こされるものであり、これは、血漿由来の第IX因子の濃縮物、または、第IX因子の組換え型で治療される。血友病B患者は、自然出血を回避するために第IX因子の予防的な投与を少なくとも2週に1度受けることが多いため、適用された第IX因子製品の半減期を長くすることによって投与間のインターバルを長くすることが望ましい。血漿中半減期の改善は、患者に有意な利点をもたらすと予想される。これまで血漿中半減期が改善された第IX因子の医薬配合物は市販されていないし、インビボでの長い半減期を有し、さらに、凝固関連の分析においてほとんど不変のモル比活性度を有するFIX変異体を示す何らのデータも公開されていない。従って、インビボでより長い機能的な半減期を有する第IX因子の形態を開発する医療上多大な必要性がそれでもなお存在する。
【0033】
第VII因子および第VIIa因子
FVIIは、50kDaの分子量を有する単鎖糖タンパク質であり、これは、肝細胞によって、406個のアミノ酸からなる不活性な酵素原として血流に分泌される。FVIIは、Arg152〜Ile153における単一のペプチド結合のタンパク質分解によってその活性型である第VIIa因子に変換され、それにより、2種のポリペプチド鎖、N末端軽鎖(24kDa)、および、C末端重鎖(28kDa)の形成が起こるが、これらは、1個のジスルフィド架橋によって結合される。その他のビタミンK依存性凝固因子とは異なり、活性化ペプチドは、活性化中に切断されない。第VII因子の活性化による切断は、インビトロにおいて、例えば、第Xa因子、第IXa因子、第VIIa因子、第XIIa因子、第7因子活性化プロテアーゼ(FSAP)、および、トロンビンによって達成できる。Mollerup等.(Biotechnol.Bioeng.(1995)48:501〜505)は、いくつかの切断は、Arg290および/またはArg315で重鎖でも起こることを報告している。
【0034】
第VII因子は、血漿中に500ng/mlの濃度で存在する。活性化された第VIIa因子としては、約1%または5ng/mlの第VII因子が存在する。第VII因子の末梢血漿における半減期は、約4時間であり、第VIIa因子の末梢血漿における半減期は約2時間であることがわかっている。
【0035】
超生理学的な濃度の第VIIa因子を投与することによって、第VIIIa因子および第IXa因子への必要性が回避され止血を達成することができる。第VII因子に関するcDNAのクローニング(US4,784,950)は、活性化された第VII因子を製薬として開発することを可能にしている。第VIIa因子の投与は、1988年に初めて成功している。その後継続的に、第VIIa因子に関する指標の数が徐々に増えてきており、これは、第VIIa因子が出血を止めることができる万能な止血剤になる可能性を示している(Erhardtsen,2002)。しかしながら、約2時間という第VIIa因子の短い末梢における半減期、および、インビボでの低い回復は、その適用を制限している。従って、改善された半減期を有するが、その一方で凝固開始後のモル比活性度、不活性化速度、および/または、除去速度をほとんど犠牲にしない第VIIa因子の形態を開発する医療上多大な必要性がそれでもなお存在する。
【0036】
治療用融合タンパク質
「治療用融合タンパク質」とは、本発明の意味において、ヒトまたは動物に投与されると、予防または治療効果を引き起こすことができる、半減期を延長したポリペプチドに融合した凝固因子のことである。これらの治療用融合タンパク質は、静脈内、筋肉内、経口、外用、非経口またはその他の経路によってヒトまたは動物に投与することができる。包含される治療用融合タンパク質の特定のクラス、すなわち本発明の実施例に記載されているタンパク質のクラスは、例えばアルブミンおよび免疫グロブリン、ならびにそれらのフラグメントまたは誘導体のような半減期を延長したポリペプチドに連結した、例えばビタミンK依存性ポリペプチドのような凝固因子である。「治療用融合タンパク質」という表現は、「融合タンパク質」と交換可能に用いられる。
【0037】
半減期を延長したポリペプチド(HLEP)
半減期を延長したポリペプチド(HLEP)の例として、アルブミン、アルブミンファミリーのメンバー、および、免疫グロブリン、並びに、それらのフラグメントまたは誘導体が上述されている。用語「ヒト血清アルブミン」(HSA)および「ヒトアルブミン」(HA)は、本願において交換可能に用いられる。用語「アルブミン」および「血清アルブミン」は広範であり、ヒト血清アルブミン(およびそれらのフラグメントおよび変異体)、加えてその他の種由来のアルブミン(およびそれらのフラグメントおよび変異体)を包含する。
【0038】
本明細書で用いられる「アルブミン」は、集合的に、アルブミンの1種またはそれ以上の機能的な活性(例えば生物活性)を有するアルブミンのポリペプチドもしくはアミノ酸配列、または、アルブミンのフラグメントもしくは変異体を意味する。具体的に言えば、「アルブミン」は、ヒトアルブミン、または、それらのフラグメントを意味し、特に、本明細書の配列番号1で示されるようなヒトアルブミンの成熟型またはその他の脊椎動物由来のアルブミンもしくはそのフラグメント、または、これらの分子の類似体もしくは変異体またはそれらのフラグメントを意味する。
【0039】
アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、上述のようなHA配列の全長を含んでもよいし、または、治療活性を安定化すること、または、治療活性を長くすることが可能な1種またはそれ以上のそれらのフラグメントを含んでいてもよい。このようなフラグメントは、長さが10個またはそれより多くのアミノ酸で構成であってもよいし、または、HA配列由来の約15、20、25、30、50個またはそれより多くの隣接したアミノ酸を含んでいてもよいし、または、HAの特定のドメインの一部または全部を含んでいてもよい。
【0040】
本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、正常なHAの、天然または人工のいずれかの変異体であってもよい。また本発明の融合タンパク質の治療用ポリペプチド部分は、本明細書において説明されているような対応する治療用ポリペプチドの変異体であってもよい。用語「変異体」は、挿入、欠失および置換を含み、これらは、保存的または非保存的のいずれでもよいし、天然または人工のいずれでもよいが、このような変化によって、治療用ポリペプチドの治療活性を付与する活性部位または活性ドメインは実質的に変更されないこととする。
【0041】
具体的には、本発明のアルブミン融合タンパク質は、ヒトアルブミン、および、ヒトアルブミンのフラグメントの天然に存在する多型変異体を含んでいてもよい。このようなアルブミンは、あらゆる脊椎動物から誘導することができ、特にあらゆる哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、または、ブタから誘導することができる。非哺乳動物のアルブミンとしては、これらに限定されないが、雌鶏、および、サケが挙げられる。アルブミンが連結されたポリペプチドのアルブミン部分は、治療用ポリペプチド部分とは異なる動物由来でもよい。
【0042】
一般的に言えば、アルブミンフラグメントまたは変異体は、少なくとも10個、好ましくは少なくとも40個、最も好ましくは70個より多いアミノ酸の長さを有すると予想される。アルブミン変異体は、好ましくは、少なくとも1つのアルブミンのドメイン全体、または、前記ドメインのフラグメント、例えばドメイン1(配列番号1のアミノ酸1〜194)、2(配列番号1のアミノ酸195〜387)、3(配列番号1のアミノ酸388〜585)、1+2(配列番号1の1〜387)、2+3(配列番号1の195〜585)、または、1+3(配列番号1のアミノ酸1〜194+配列番号1のアミノ酸388〜585)からなるものでもよいし、またあるいは、それらを含むものでもよい。各ドメインそのものは、残基Lys106〜Glu119、Glu292〜Val315、および、Glu492〜Ala511を含むフレキシブルなサブドメイン間のリンカー領域を介して、2つの相同サブドメイン、すなわち1〜105、120〜194、195〜291、316〜387、388〜491、および、512〜585で構成されている。
【0043】
本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、HAまたはそれらの保存的な改変体の少なくとも1つのサブドメインもしくはドメインを含んでもよい。
【0044】
治療用融合タンパク質の血漿中半減期が、融合していない凝固因子と比較して少なくとも25%延長されるのであれば、あらゆるアルブミンのフラグメントおよび変異体が凝固因子の融合パートナーとして本発明に包含される。
【0045】
アルブミンの他にも、アルファ−フェトプロテイン、アルブミンファミリーのその他のメンバーが特許請求され、結合した治療用ポリペプチドのインビボでの半減期を延長することができる(WO2005/024044)。進化的に関連する血清輸送タンパク質であるアルブミンのタンパク質ファミリーは、アルブミン、アルファ−フェトプロテイン(AFP;BeattieおよびDugaiczyk 1982.Gene 20:415〜422)、アファミン(afamin)(AFM;Lichenstein等.1994.J.Biol.Chem.269:18149〜18154)、および、ビタミンD結合タンパク質(DBP;CookeおよびDavid 1985.J.Clin.Invest.76:2420〜2424)からなる。それらの遺伝子は、ヒト、マウスおよびラットにおいて同じ染色体領域にマッピングされる構造的および機能的な類似性を有する多重遺伝子クラスターを示す。アルブミンファミリーメンバーの構造的な類似性は、HLEPとしてのそれらの有用性を示唆している。従って、本発明のその他の目的は、このようなアルブミンファミリーメンバー、それらのフラグメントおよび変異体を、HLEPとして使用することである。用語「変異体」は、挿入、欠失および置換を含み、これらは、望ましい機能が示されるのであれば保存的または非保存的のいずれでもよい。
【0046】
アルブミンファミリーメンバーは、タンパク質AFP、AFM、および、DBPそれぞれのタンパク質の全長を含んでもよいし、または、治療活性を安定化することができる、または、治療活性を長くすることができる1種またはそれ以上のそれらのフラグメントを含んでいてもよい。このようなフラグメントは、10個またはそれ以上のアミノ酸長さを有していてもよいし、または、それぞれのタンパク質配列の約15、20、25、30、50個またはそれより以上の隣接したアミノ酸を含んでいてもよいし、または、HLEPフラグメントが、融合していない凝固因子と比較して少なくとも25%の半減期の延長を提供するのであれば、それぞれのタンパク質の特定のドメインの一部または全部を含んでいてもよい。本発明の治療用融合タンパク質のアルブミンファミリーメンバーは、AFP、AFM、および、DBPの天然に存在する多型変異体を含んでいてもよい。
【0047】
また、HLEPフラグメントが、融合していない凝固因子と比較して少なくとも25%の半減期の延長を提供するのであれば、IgGおよびIgGフラグメントをHLEPとして用いてもよい。治療用ポリペプチド部分は、融合タンパク質の高いモル比活性度を可能にする切断可能なリンカーを介して、IgGまたはIgGフラグメントに連結される。第VII/VIIa因子、および、第IX因子IgG融合分子に関する例は、例えば、WO2005/001025(参照によりその全体を本発明に加入させる)で確認できる。これは、すなわち、2つの第VII因子(第VIIa因子)分子と2つのFc分子とで構成されるホモ二量体、および、1つの第FVII(FVIIa)分子および2つのFc分子で構成される単量体/二量体ハイブリッドを開示しており、この単量体/二量体は、ホモ二量体よりも約4倍大きい凝固活性を示す。本発明のリンカー配列は、例えばFXIa、FXaまたはFIXaのような凝固カスケードのプロテアーゼによって切断されると第FVII(FVIIa)分子を放出し、それにより、コンストラクトの凝固活性、および、特に上記ホモ二量体の凝固活を、上記単量体/二量体に匹敵する活性レベルに、または、それよりもさらに高いレベルに高めることができる。配列番号93に、切断可能なリンカーを含むFIX−Fc融合タンパク質の代表例を示す。表3aおよび3bで示されるような切断可能なリンカーは、このケースに応用することもできる。
【0048】
本発明は、具体的には、凝固因子またはそれらのフラグメントもしくは変異体を、HLEPまたはそれらのフラグメントもしくは変異体のNまたはC末端に連結させることを含む融合タンパク質に関し、このようなタンパク質において、介在する切断可能なペプチドリンカーは、治療用ポリペプチドとHLEPとの間に導入されることによって、形成された融合タンパク質が、HLEPと連結していない凝固因子と比較してインビボで長い半減期を有するようになり、さらに、融合タンパク質が、利用可能な様々な凝固関連の分析のうち少なくとも1種において、それに対応する切断不可能なリンカーを含む融合タンパク質と比較して少なくとも25%高いモル比活性度を有するようになる。
【0049】
本願で用いられている「凝固因子」は、これらに限定されないが、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、フォン−ウィルブランド因子、第V因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、第I因子、第II因子(プロトロンビン)、プロテインC、プロテインS、GAS6、または、プロテインZ、加えてそれらの活性型からなるポリペプチドが挙げられる。さらに、有用な治療用ポリペプチドは、野生型ポリペプチドである場合もあり、または、突然変異を含むもの場合もある。糖付加またはその他の翻訳後修飾の程度および位置は、選択された宿主細胞、および、宿主細胞の環境の性質に応じて様々であってよい。特定のアミノ酸配列に言及される場合、このような配列の翻訳後修飾は、本願に包含される。
【0050】
上記の定義内の「凝固因子」は、あらゆる天然の多型を含む天然のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。また「凝固因子」は、実質的にポリペプチドがそれぞれの治療用ポリペプチドの活性を保持しているのであれば、わずかに改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも含み、例えば、末端のアミノ酸の欠失または付加を含む改変されたN末端またはC末端を有するポリペプチドが挙げられる。包含される変異体は、野生型の配列とは1またはそれ以上のアミノ酸残基において異なる。このような差の例としては、Nおよび/またはC末端における1個またはそれ以上のアミノ酸残基(例えば、好ましくは1〜30個のアミノ酸残基)のトランケーション、または、Nおよび/またはC末端における1個またはそれ以上の追加の残基の付加、加えて、保存的アミノ酸置換、すなわち類似の特徴を有するアミノ酸グループ(例えば(1)小さいアミノ酸、(2)酸性アミノ酸、(3)極性アミノ酸、(4)塩基性アミノ酸、(5)疎水性アミノ酸、および、(6)芳香族アミノ酸)内で行われる置換が挙げられる。以下の表に、このような保存的置換の例を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
本発明の融合タンパク質のインビボでの半減期は、通常は終末における半減期またはβ半減期として決定され、これらは一般的に、融合していないポリペプチドのインビボでの半減期よりも少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、および、より好ましくは100%よりも長い。
【0053】
本発明の融合タンパク質は、それに対応する切断可能なリンカーを有さない融合タンパク質と比較して、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%高いモル比活性度を有する。
【0054】
これに関して、モル比活性度(または、本明細書において具体的に考慮されているように、凝固に関連するモル比活性度)は、対象の治療用ポリペプチドまたは治療用融合タンパク質の1モル(または、例えば1ナノモル)当たりの示された活性と定義される。モル比活性度を計算することによって、研究されるポリペプチドの異なる分子量または光学密度の影響を受けない異なるコンストラクトの活性を直接的に比較することが可能になる。モル比活性度は、以下の表2でFIXおよびFIX−HSA融合タンパク質について例示されているようにして計算してもよい。
【0055】
【表2】

【0056】
凝固に関連するモル比活性度を決定するために、凝固プロセスに関連する酵素活性または補因子活性を決定することによるあらゆる分析が使用可能である。
【0057】
従って、「凝固関連の分析」は、本発明の意味において、凝固プロセスに関連する酵素活性または補因子活性を決定するあらゆる分析か、または、固有の、または、固有でない凝固カスケードのいずれかが活性化されているのかを決定することができるあらゆる分析のことである。従って「凝固関連の」分析は、直接的な凝固分析でもよく、例えば、aPTT、PT、または、トロンビン生成分析が挙げられる。しかしながら、例えば、特定の凝固因子に適用される発色分析のようなその他の分析も含まれる。このような分析または対応する試薬の例としては、パトロムチン(Pathromtin(R))SL(aPTT分析,デイド・ベーリング(Dade Behring))、または、対応する凝固因子が欠乏した血漿(デイド・ベーリング)と共に、トロンボレル(Thromborel(R))S(プロトロンビン時間の分析,デイド・ベーリング)、例えば凝固因子が欠乏した血漿を用いたトロンビン生成分析キット(テクノクローン(Technoclone),トロンビンスコープ(Thrombinoscope))、発色分析、例えばバイオフェン(Biophen)の第IX因子(ハイフェン・バイオメド(Hyphen BioMed))、スタクロット(Staclot(R))FVIIa−rTF(ロシュ・ダイアグノスティックス社(Roche Diagnostics GmbH))、コーテスト(Coatest(R))第VIII因子:C/4(クロモジェニックス(Chromogenix))、または、その他のものが挙げられる。
【0058】
本発明の目的のために、上記の分析、または、等価な凝固関連の分析のいずれか1種において増加がみられれば、モル比活性度の増加が示されるとみなされる。例えば、25%の増加は、上記分析または等価な分析のいずれかにおいて25%の増加がみられたことを意味する。
【0059】
治療用融合タンパク質が本発明の範囲内に入るかどうかを決定するために、これらのタンパク質のモル比活性度を比較するための標準は、それぞれの凝固因子とそれぞれのHLEPとがアミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーで連結されているコンストラクトである。
【0060】
FIXの場合、aPTT分析が、凝固活性の決定に用いられることが多い。このような凝固分析(aPTT分析)は、実施例5でより詳細に説明されている。しかしながら、その他の凝固関連の分析または分析原理も、FIXに関するモル比活性度を決定するのに適用することができる。
【0061】
組換え治療用ポリペプチド薬物は一般的に費用がかかるものであり、全ての国々にとってこのような薬物に基づいた多大な費用を要する治療を行う余裕があるわけではない。このような薬物のインビボでの回復を増加させることによって、これらの製品をより安価に使用できるようにし、より多くの患者がそれらによって利益を得るようにすることができる。本発明の融合タンパク質の場合、インビボでの回復の増加も望ましい利点となり得る。「インビボでの回復」は、本発明の意味において、製品投与の直後に血液または血漿中に見出される製品の量を意味する。従って、インビボでの回復を検出するためには、一般的に、製品投与の数分(例えば、5または15分)後の血漿の含量が決定される。
【0062】
活性化されていない凝固因子に関して、高いインビボでの回復および長い半減期を示すことが望ましいが、プロトロンビンの危険性を回避するために、それらを活性化した後、またはそれらの補因子を活性化した後に、凝固因子の半減期を制限することが有利である。従って、凝固プロセスが開始した後に、活性な凝固因子の半減期は、再度減少すると予
想される。これは、凝固に関連する様式で不活性化を強化すること、または、凝固因子を除去することのいずれかによって達成することができる。
【0063】
本発明に係る不活性化は、例えば、凝固因子とそれに対応する凝固因子の阻害剤との複合体形成によって、または、例えばFVIIIおよびFVの場合において知られているようなさらなるタンパク質分解的切断によって引き起こされる可能性がある治療用ポリペプチドの活性の減少を意味する。
【0064】
活性化された治療用融合タンパク質の不活性化速度は、例えば、阻害剤との反応によって、または、タンパク質分解による不活性化によって活性が減少する速度と定義される。不活性化速度は、活性化された凝固因子のモル比活性度を、生理学的な量のこの凝固因子の阻害剤の存在下で時間に対して追跡することによって測定することもできる。あるいは、不活性化速度は、活性化された製品を動物に投与して、その後、活性および抗原分析を用いて血漿サンプルを適切な時間枠で試験することによって決定してもよい。
【0065】
治療用融合タンパク質に関して、これらのタンパク質が本発明の範囲内であるかどうかの決定が必要な場合、これらの治療用タンパク質の不活性化速度を比較するための標準は、それぞれの凝固因子とそれぞれのHLEPとがアミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーを介して連結しているコンストラクトである。
【0066】
活性化された治療用融合タンパク質の除去速度は、ヒトまたは動物の循環系からポリペプチドが除去される速度と定義される。除去速度は、静脈内投与後の活性化された治療用融合タンパク質の薬物動態を測定することによって決定してもよい。循環系からの直接の除去による除去は、抗原分析を用いて決定することができる。加えて、特定の除去および不活性化速度は、活性分析を用いて決定することができる。
【0067】
治療用融合タンパク質に関して、これらのタンパク質が本発明の範囲内であるかどうかの決定が必要な場合、これらのタンパク質の除去速度を比較するための標準は、それぞれの凝固因子とそれぞれのHLEPとがアミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーを介して連結しているコンストラクトである。
【0068】
本発明によれば、治療用ポリペプチド部分は、切断可能なペプチドリンカーを介してHLEP部分と結合する。このようなリンカーは非免疫原性であると予想され、プロテアーゼによって切断できる程十分にフレキシブルであると予想される。融合タンパク質が酵素原である場合、このようなリンカーの切断は、融合タンパク質内の治療用ポリペプチドの活性化と同程度に迅速に行われると予想される。
【0069】
切断可能なリンカーは、好ましくは、以下から誘導された配列を含む:
a)治療用ポリペプチドの活性化中にタンパク質分解によって切断されるタンパク質分解的切断部位を含む場合、それ自身が投与される治療用ポリペプチド、
b)この治療用ポリペプチドの基質ポリペプチド、または、
c)治療用ポリペプチドの直接的または間接的な関与によって活性化または形成された、プロテアーゼによって切断される基質ポリペプチド。
【0070】
より好ましい実施態様において、リンカー領域は、発現された融合タンパク質の新抗原性の特性の危険を減少させると予想される、適用しようとする治療用ポリペプチドの配列を含む。また、治療用タンパク質が酵素原である場合(例えば、タンパク質分解によって活性化される必要がある場合)において、ペプチドリンカーの切断速度は、酵素原の凝固に関連する活性化速度の影響をより強く受けると予想される。
【0071】
その他の好ましい実施態様において、治療用ポリペプチドは、FIX酵素原であり、HLEPは、アルブミンである。この場合において、リンカー配列は、FIXの活性化領域の配列、FXまたはFVIIのようなFIXのいずれかの基質の切断領域、または、FIXaがその活性化に関与するプロテアーゼによって切断されるあらゆる基質ポリペプチドの切断領域から誘導されたものいずれかである。
【0072】
特に好ましい実施態様において、リンカーペプチドは、FIXそれ自身から誘導される。その他の好ましい実施態様において、リンカーペプチドは、FXまたはFVIIから誘導される。その他の好ましい実施態様において、リンカー配列は、FXIaまたはFVIIa/TFによって切断することができる2つの切断配列、2つのFIXの生理的に適切な活性化因子を含む。
【0073】
治療用ポリペプチド、切断可能なリンカー、および、HLEPの典型的な組み合わせとしては、これらに限定されないが、表3aおよび3bで列挙したコンストラクトが挙げられる:
【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
FIX活性化ペプチドのN末端領域から誘導されたリンカーの場合において、天然の多型T148−A148に従って、その配列は、この位置にTの代わりにAを含むことができる。
【0077】
【表5】

【0078】
また、表3aおよび3bに記載のリンカーを切断するプロテアーゼまたはプロテアーゼ群によって、または、上記で定義されたタイプのプロテアーゼによってなお切断可能なリンカーであれば、説明されているリンカーの変異体およびフラグメントも本発明に包含される。用語「変異体」は、挿入、欠失および置換を含み、保存的または非保存的のいずれでもよい。
【0079】
上述の切断配列、および、それらの変異体のその他の組み合わせも、本発明に含まれるものとする。
【0080】
その他の実施態様において、ペプチドリンカーの翻訳後修飾パターンを変化させるアミノ酸置換が含まれる。これらは、例えば、グリコシル化、硫酸化またはリン酸化されるアミノ酸の置換であり得る。
【0081】
本発明のその他の実施態様において、治療用ポリペプチドとHLEP部分との間のペプチドリンカーは、翻訳後修飾を付加するためのコンセンサス部位を含む。好ましくは、このような修飾は、糖付加部位からなる。より好ましくは、このような修飾は、Asn−X−Ser/Thr構造の少なくとも1つのN−糖付加部位からなっており、ここにおいてXは、プロリン以外のあらゆるアミノ酸を意味する。さらにより好ましくは、このようなN−糖付加部位は、ペプチドリンカーのアミノおよび/またはカルボキシ末端の近傍に挿入され、このようにして、治療用ポリペプチド部分がペプチドリンカーに移行した配列、または、ペプチドリンカーがアルブミン部分の配列に移行した配列において発生する可能性があるネオエピトープを保護することができる。
【0082】
図1:インビトロでの、FXIa:融合タンパク質が約1:500のモル比での、FIX−アルブミン融合タンパク質のFXIaでの37℃における活性化である。切断不可能なリンカーを有する1つの融合タンパク質(1478/797)、および、切断可能なリンカーを有する2つの融合タンパク質(1088/797、および、1089/797)を用いた。サンプルを還元条件下でSDS−PAGEによって解析し、続いてクーマシーブルーで染色した。
図2:活性化されていない融合タンパク質と比較した、切断可能なリンカーを有する、および、それらを有さない、活性化されたrecFIXおよびFIX−アルブミン融合タンパク質の薬物動態である。
図3:活性化されたrecFIXまたはFIX−アルブミン融合タンパク質のATによる不活性化である。120分後に、非活性化部分のトロンボプラスチン時間の分析を用いて残留したFIX活性を決定した。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】インビトロでの、FXIa:融合タンパク質が約1:500のモル比での、FIX−アルブミン融合タンパク質のFXIaでの37℃における活性化である。
【図2】活性化されていない融合タンパク質と比較した、切断可能なリンカーを有する、および、それらを有さない、活性化されたrecFIXおよびFIX−アルブミン融合タンパク質の薬物動態である。
【図3】活性化されたrecFIXまたはFIX−アルブミン融合タンパク質のATによる不活性化である。
【実施例】
【0084】
実施例1:FIXおよびFIX−アルブミン融合タンパク質をコードするcDNAの生成
第IX因子のコード配列を、PCRで、ヒト肝臓cDNAライブラリー(ProQuest,インビトロジェン(Invitrogen))から、プライマーWe1403およびWe1404(配列番号5および6)を用いて増幅した。プライマーWe1405およびWe1406(配列番号7および8)を用いた2回目のPCRサイクルの後に、得られたフラグメントを、pCR4TOPO(インビトロジェン)にクローニングした。続いて、FIXのcDNAを、EcoRIフラグメントとして、予め内部のXhoI部位を除去したpIRESpuro3(BDバイオサイエンス(BD Biosciences))のEcoRI部位に移した。得られたプラスミドをpFIX−496と名付け、これを第IX因子野生型用の発現ベクターとした。
【0085】
アルブミン融合コンストラクトを生成するために、FIXのcDNAをPCRで、停止コドンを欠失させてその代わりにXhoI部位を導入したプライマーWe2610およびWe2611(配列番号9および10)を用いて標準条件下で再度増幅した。得られたFIXフラグメントを制限エンドヌクレアーゼEcoRIおよびXhoIで消化し、以下で説明するようにして、EcoRI/BamH1で消化したpIRESpuro3に、1種のXhoI/BamH1で消化したリンカーフラグメントと共にライゲーションした。
【0086】
内部の切断部位を有さない2種の異なるグリシン/セリンリンカーフラグメントを作製した:オリゴヌクレオチドWe2148およびWe2150(配列番号11および12)を、等モル濃度(10pmol)で、標準的なPCR条件下でアニールし、充填して、2分間のPCRプロトコールを用いて増幅した。初回の94℃での変性、それに続いて、94℃で15秒の変性、55℃で15秒のアニーリング、および、72℃で15秒の伸長を7サイクル、および、仕上げに72℃で5分間の伸長工程を行った。オリゴヌクレオチドWe2156、および、We2157(配列番号13および14)を用いて同じ手法を行った。得られたリンカーフラグメントを、制限エンドヌクレアーゼXhoIおよびBamH1で消化し、上記で説明したライゲーション反応で別々に使用した。このようにして得られたプラスミドは、FIXに関するコード配列、および、グリシン/セリンリンカーのC末端の伸長を含む。
【0087】
FIXの活性化部位から誘導された2種の異なる切断可能なリンカーフラグメントを作製した:オリゴヌクレオチドWe2335およびWe2336(配列番号15および16)は、FIX軽鎖/活性化ペプチドの境界領域の活性化された切断部位を含み、これらをアニールし、充填し、上述のようにして増幅した。得られたリンカーフラグメントを制限エンドヌクレアーゼXhoIおよびBamH1で消化し、上記で説明したライゲーション反応で使用した。このようにして得られたプラスミドは、FIXに関するコード配列、および、切断可能なFIX配列(配列番号2のアミノ酸136〜154)のC末端の伸長を含む。それに続く、オリゴヌクレオチドWe2636およびWe2637(配列番号17および18)を用いた市販の変異誘発キット(クイックチェンジ(QuickChange)XL部位特異的変異誘発キット,ストラタジーン(Stratagene))での、部位特異的変異誘発反応において、XhoI部位を欠失させた。
【0088】
FIXから誘導された第二の切断可能なリンカーフラグメントを生成するために、リンカー構築用のオリゴヌクレオチドWe2337およびWe2338(配列番号19および20)を用いて同じ手法を行った。得られたリンカーフラグメントを制限エンドヌクレアーゼXhoIおよびBamH1で消化し、上記で説明したライゲーション反応で使用した。このようにして得られたプラスミドは、FIXに関するコード配列、および、FIX活性化ペプチド/重鎖の境界領域(配列番号2のアミノ酸173〜186)の活性化された切断部位から誘導された切断可能なFIX配列のC末端の伸長を含む。上述のようにXhoI部位を欠失させるために、オリゴヌクレオチドWe2638およびWe2639(配列番号21および22)を用いた。
【0089】
次のクローニング工程で、上記で生成したプラスミドをBamH1で消化し、成熟ヒトアルブミンのcDNAを含むBamH1フラグメントを挿入した。このフラグメントを、アルブミンのcDNA配列でのPCRによって、プライマーWe1862およびWe1902(配列番号23および24)を用いて、標準条件下で生成させた。
【0090】
切断不可能なグリシン/セリンリンカーを有する最終的なプラスミドを、それぞれpFIX−980(配列番号30)、および、pFIX−986(配列番号31)と名付けた。FIX配列から誘導された切断可能なリンカーを有する最終的なプラスミドを、それぞれpFIX−1088(配列番号40)、および、pFIX−1089(配列番号49)と名付けた。以下で、それらのリンカー配列、および、C末端のFIX、および、N末端のアルブミン配列を概説する。リンカー内のタンパク質分解的切断部位は、矢印で示し、FIXから誘導されたリンカー配列は、下線で示した。
【0091】
【化1】

【0092】
CHO細胞中で発現させるために、FIXアルブミン融合タンパク質に関するコード配列を、それぞれベクターpIRESneo3(BDバイオサイエンス)、または、pcDNA3.1(インビトロジェン)に移した。
【0093】
FIXを発現する細胞中でのプロペプチドの効率的なプロセシングのためには、大量のフューリンの共発現が必要である(Wasley LC等.1993.PACE/Furin can process the vitamin K−dependent pro−factor IX precursor within the secretory pathway.J.Biol.Chem.268:8458〜8465)。フューリンを、プライマーWe1791およびWe1792(配列番号25および26)を用いて肝臓のcDNAライブラリー(アンビオン(Ambion))から増幅した。プライマーWe1808およびWe1809(配列番号27および28)を用いた2回目のPCRサイクルによって、カルボキシ末端膜貫通ドメイン(TM)が欠失しており、停止コドンが導入されたフューリンフラグメントが得られた;このフラグメントを、pCR4TOPO(インビトロジェン)にクローニングした。続いて、フューリン(TMcDNAを、EcoRI/NotIフラグメントとして、予め内部のXhoI部位を欠失させたpIRESpuro3(BDバイオサイエンス)のEcoRI/NotI部位に移した。得られたプラスミドをpFu−797と名付けた。このプラスミドを、全てのFIXコンストラクトで、1:5(pFu−797:pFIX−xxx)のモル比でコトランスフェクションした。pFu−797によってコードされた分泌されたフューリンのアミノ酸配列は、配列番号29として示される。
【0094】
実施例2:FIXおよびFIX−アルブミン融合タンパク質のトランスフェクションおよび発現
プラスミドをE.coliのTOP10(インビトロジェン)中で増殖させ、標準的なプロトコール(キアゲン(Qiagen))を用いて精製した。HEK−293細胞をリポフェクトアミン2000試薬(インビトロジェン)を用いてトランスフェクションし、無血清培地(インビトロジェン293エキスプレス(Express))中で、50ng/mlのビタミンK、および、4μg/mlのピューロマイシンの存在下で増殖させた。トランスフェクションした細胞群をT−フラスコを介してローラーボトルまたは小規模の発酵槽に散布し、そこから上清を精製するために回収した。
【0095】
あるいは、CHOK1またはDG44細胞(インビトロジェン)をリポフェクトアミン2000試薬(インビトロジェン)を用いてトランスフェクションし、無血清培地(インビトロジェンCD−CHO)中で、50ng/mlのビタミンK、および、500〜750ng/mlのゲネチシンの存在下で増殖させた。高発現のクローンを選択し、T−フラスコを介してローラーボトルまたは小規模の発酵槽に散布し、そこから上清を精製するために回収した。
【0096】
実施例3:FIXおよびFIX−アルブミン融合タンパク質の精製
FIXまたはFIXアルブミン融合タンパク質を含む細胞培養の回収物を、50mMのトリス×HCl/100mMのNaCl緩衝液(pH8.0)で予め平衡化したQ−セファロースFFカラムに適用した。その後、カラムを200mMのNaClを含む平衡緩衝液で洗浄した。結合したFIXまたはFIX融合タンパク質の溶出を、基剤として50mMのトリス×HCl/200mMのNaCl緩衝液(pH8.0)を用いた塩の濃度勾配によって達成した。溶出液を、ヒドロキシルアパタイト樹脂でのカラムクロマトグラフィーによってさらに精製した。この目的のために、Q−セファロースFFカラムの溶出液を、50mMのトリス×HCl/100mMのNaCl緩衝液(pH7.2)で平衡化したヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーカラムにローディングした。カラムを同じ緩衝液で洗浄し、pH7.2でのリン酸カリウムの濃度勾配を用いてFIXまたはFIX−HSAを溶出させた。溶出液を透析して塩濃度を低くし、生化学解析、加えて薬物動態学的なパラメーターの決定に用いた。実施例5で説明されているようにしてFIX抗原および活性を決定した。
【0097】
実施例4:FIXおよびFIX−アルブミン融合タンパク質の代替の精製スキーム
実施例3で説明されているように、FIXまたはFIXアルブミン融合タンパク質を含む細胞培養の回収物を、Q−セファロースFFでのクロマトグラフィーで精製した。Q−セファロースの溶出液を、ヘパリン−フラクトゲル(Fractogel)カラムでのクロマトグラフィーによってさらに精製した。この目的のために、50mMのトリス×HCl、50mMのNaCl(pH8.0)緩衝液(EP)を用いてヘパリン−フラクトゲルカラムを平衡化し、Q−セファロースFF溶出液を適用して、このカラムを75mMのNaClを含む平衡緩衝液で洗浄した。FIXまたはFIXアルブミン融合タンパク質をそれぞれ、300mMのNaClに調節したEPを用いて溶出させた。
【0098】
ヘパリン−フラクトゲル溶出液を、実施例3で説明されているようにヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーカラムでのクロマトグラフィーによってさらに精製した。精製したそれぞれのFIX、FIXアルブミン融合タンパク質の濃縮物に、実施例5に従ってFIX活性および抗原決定を行い、さらなるインビトロでおよびインビボでの調査で特徴付けた。
【0099】
実施例5:FIX活性および抗原の決定
FIX活性を、市販のaPTT試薬(パトロムチンSLおよびFIX欠乏血漿,デイド・ベーリング)を用いて凝固(clotting)または凝固(coagulation)活性(FIX:C)として決定した。世界保健機構の国際的なFIX濃縮物標準(WHO International FIXconcentrate Standard)(96/854)を較正した内部二次標準(substandard)を参照として用いた。
【0100】
FIX抗原(FIX:Ag)を、当業者既知の標準的なプロトコールに従ってELISAによって決定した。簡単に言えば、マイクロタイタープレートを、100μL/ウェルのキャプチャー抗体(FIXのELISA用の1:200の一対の抗体であるセダレーン(Cedarlane),ただしその他の適切な抗体源も適用可能)と周囲温度で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液B(シグマ(Sigma)P3563)で3回洗浄した後、各ウェルを、ブロッキング緩衝液C(シグマP3688)200μLと周囲温度で1時間インキュベートした。さらに3回の緩衝液Bでの洗浄工程の後、緩衝液Bでの試験サンプルの連続希釈液、加えて、緩衝液Bでの二次標準(SHP)の連続希釈液(1ウェル当たりの量:100μL)を周囲温度で2時間インキュベートした。緩衝液Bで3回洗浄工程を行った後、緩衝液B中の検出抗体(FIXのELISA用の一対の抗体であるペルオキシダーゼで標識されたセダレーン)の1:200希釈液100μLを各ウェルに添加し、周囲温度でさらに2時間インキュベートした。緩衝液Bで3回洗浄工程を行った後、基質溶液(TMB,デイド・ベーリング,OUVF)を1ウェルあたり100μLで添加し、暗所で、周囲温度で30分間インキュベートした。希釈していない停止溶液(デイド・ベーリング,OSFA)100μLを添加してサンプルを適切なマイクロプレートリーダーを450nmの波長で読み取るために準備した。次に試験サンプルの濃度を、参照として標準ヒト血漿を用いた標準曲線によって計算した。
【0101】
実施例6:細胞培養上清中の様々なFIX−アルブミン融合タンパク質のFIX−活性/FIX−抗原の比率の比較
異なるリンカーペプチドを含むFIX−アルブミン融合タンパク質をコードするDNAコンストラクトでトランスフェクションされたHEK細胞の細胞培養上清を、上述のようなFIX活性および抗原試験で処理した(実施例5を参照)。FIX:CのFIX:Agに対する比率を計算したところ、異なるコンストラクトのモル比活性度に正比例する尺度が示された。
【0102】
表4に示した結果によれば、切断可能なリンカーをFIX−HSA分子に導入すると、活性/抗原の比率において増加がみられたことが示される。またそれによれば、切断可能なリンカーペプチドは、明らかに高い活性/抗原の比率が提供されるように、2個より多いアミノ酸の長さを有するべきであるということも示される。
【0103】
【表6】

【0104】
実施例7:ラットまたはウサギにおけるモル比活性度、インビボでの終末半減期、および、インビボでの回復に関するFIXおよびFIX−アルブミン融合タンパク質の比較
精製した組換え野生型FIX(rFIX496/797)、および、FIX−アルブミン融合タンパク質(rFIX980/797、rFIX986/797、rFIX−1088/797、および、rFIX1089/797)を上述のような凝固分析でFIX活性に関して試験した。平行して、タンパク質濃度の尺度として、280および320nmでの光学密度の差を決定した(OD280〜320)。OD280〜320での活性の比率を計算し、モル光学密度に基づいてモル比活性度を計算した。以下の表5に結果を要約する。
【0105】
【表7】

【0106】
表5にまとめた結果を考察すると、驚くべきことに、本発明に従って生成した2種のコンストラクトは、切断不可能なリンカーを有する融合タンパク質と比較して極めて高いモル比活性度を示す。加えて、これらのコンストラクトのモル比活性度は、野生型rFIXと比較してわずかしか減少しなかった。
【0107】
第XIa因子(FXIa)によるタンパク質分解的切断反応のインビトロでの調査から、切断可能なリンカーを含むFIX−アルブミン融合タンパク質(例えばコンストラクト番号1088/797、または、1089/797)が活性化さると、平行して、リンカーが切断されてアルブミン部分の放出が起こることが確認された(図1)。切断不可能なリンカーを有する融合タンパク質は、それに相当するアルブミン部分の放出を示さなかった。
【0108】
FVIIaの場合において、組織因子の存在下でプロテアーゼで切断したところ、切断可能なリンカーを含むFIX−アルブミン融合タンパク質1088/797または1089/797も、FIX活性化ペプチドの放出と平行してアルブミン部分の放出を示した(データ示さず)。
【0109】
1モル当たりの凝固活性の決定に加えて、上述のポリペプチド番号496/797、980/797、986/797、1088/797および1089/797を、麻酔したCD/ルイスラット(物質1種あたり6匹のラット)、および/または、ウサギ(物質1種あたり4匹のウサギ)に50IU/kg体重の用量で静脈内投与した。試験物質投与前に血液サンプルを採取し、さらに試験物質投与の5分後から開始して適切なインターバルで採取した。その後FIX抗原含量をヒト第IX因子に特異的なELISA分析で定量した(上記を参照)。それぞれの群の平均値を用いて、インビボでの5分後の回復を計算した。式t1/2=ln2/k(式中kは、一様目盛で対数目盛および時間にFIX:Agレベルをプロットして得られた回帰線の傾きである)に従って、除去のベータ相のタイムポイント(終末半減期)を用いて各タンパク質の半減期を計算した。
【0110】
表6に、計算したインビボでの半減期を要約する。ラット、加えてウサギにおいて、FIX−アルブミン融合タンパク質のインビボでの半減期は、社内で製造された融合していない野生型組換えFIXと比較して、または、市販の組換えFIX製品であるBeneFIX(R)と比較して有意に高いことが確認された。BeneFIX(R)と比較したアルブミン融合タンパク質のインビボでの半減期は、用いられた動物種またはコンストラクトに応じて約200〜400%長かった(表6)。
【0111】
インビボでの回復を評価するために、静脈内投与後(t=5分間)のそれらの最大濃度で血漿1mLごとに測定されたFIX抗原レベルを測定したところ、適用された生成物の1kg当たりの量と相関を示した。あるいは、輸注後5分に決定された抗原レベル(IU/mL)と、100%回復した場合に予想される理論上の生成物レベル(1kg当たりの適用した生成物を、推定の血漿体積40mL/kgで割った値)とを比較することによってパーセンテージを計算した。FIX−アルブミン融合タンパク質のインビボでの回復(IVR)は、rFIX(496/797)、または、BeneFIX(R)のインビトロでの回復よりも有意に高かった(表7)。
【0112】
【表8】

【0113】
【表9】

【0114】
実施例8:インビトロでの、切断可能なリンカーを有する/有さないFIXアルブミン融合タンパク質(1088/797および980/797)の活性化、および、ラットにおける薬物動態の決定
FIX−アルブミン融合タンパク質およびrecFIXを、市販の第XIa因子(コルディア(Kordia))を用いてインビトロで活性化した。簡単に言えば、同一なモル量のFIXまたはFIX−アルブミン融合タンパク質(3.0×10-6mol/L)を、pH6.8に緩衝化したFXIa(1.9×10-8mol/L)、および、CaCl2(1,5mmol/L)を含む溶液中で、37℃で活性化した。SDS−PAGEにより示された通り完全に活性化させた後に、FXIaの量に基づいて5倍の過剰なモル量のC1−阻害剤(ベリナートP(Berinert P))を添加することによって反応を止めた。薬物動態学的な調査を開始するまでサンプルを−70℃より低温で凍結保存した。
【0115】
活性化されたFIXおよびFIX−アルブミン融合タンパク質の薬物動態学的な調査を実施例7で説明されているようにしてラットで行い、その結果を活性化されていない融合タンパク質に関する薬物動態学的な結果と比較した。
【0116】
活性化された融合タンパク質は、活性化されていない分子と比較して有意に減少した半減期、加えて、AUCを示したことがわかった(図2)。活性化すると、切断可能なリンカーを有するFIX−融合タンパク質(1088/797)は、活性化されたrecFIX(BeneFIX)に極めて類似した薬物動態学的な挙動を示したが、それに対して活性化された切断不可能なリンカーを有する融合タンパク質(980/797)は、切断可能なリンカーを有する活性化された融合タンパク質1088/797と比較して、より長い初期の半減期、加えて終末半減期を示した。従って、この結果から、切断可能なリンカーは、活性化後に凝固因子の除去を高めることが明らかに示され、従って、延長された半減期を有する、トロンボゲンを形成する可能性がある活性化された融合タンパク質の蓄積が回避される。
【0117】
実施例9:アンチトロンビンIII(AT)によって活性化された凝固因子の不活性化速度に関して、切断可能なリンカーを有する/有さないFIX−アルブミン融合タンパク質の比較
切断可能なリンカーを含む(1088/797)、および、含まない(980/797)FIX融合タンパク質を、実施例8で説明されているようにFXIaとインキュベートすることによって活性化した。活性化された因子を、ATと120分間インキュベートし、残留したFIXa活性を、SchnitgerおよびGrossに従って、手動式のFIX凝固分析方法を用いて活性化せずに(naPTT、以下を参照)決定した。コントロールサンプルとして、同量のATの存在下で活性化されたFIX−アルブミン融合タンパク質を用いた(ただしインキュベートせず)。
【0118】
活性化されていない部分トロンボプラスチン時間の分析(naPTT)の補助によって、デイド・ベーリング製のFIXが欠乏した血漿を用いてFIX活性を決定した。His、Gly、スクロースおよびトゥイーン(Tween)80を含む緩衝液(pH6.8)でサンプルを予め希釈した。全体の決定は、SchnitgerおよびGrossに従って血液凝固測定装置を用いて行われた。FIXが欠乏した血漿0.1ml、サンプル0.1ml、および、0.1%リン脂質0.1ml(ローヌ・プーラン−ナッターマン(Rhone−Poulenc−Nattermann),1%HSAが補足されたイミダゾール緩衝液で予め1:3に希釈した)の混合物を37℃で2分間インキュベートした。0.025mol/lのCaCl2溶液0.1mlを添加することによって凝固反応を開始させ、凝固時間を決定した。
【0119】
図3は、それに相当する不活性化実験の結果を示す。切断可能なリンカーを有する融合タンパク質(1088/797)の場合において、凝固時間が210秒から540秒に増加(2.57倍)したことから、ATによるFIXa活性の不活性化プロセスが促進されたことが実証され、それに対して、切断不可能なリンカーを有する融合タンパク質(980/797)では196秒から411秒しか増加を示しさなかった(2.10倍)。恐らく、切断不可能なリンカーを有する融合タンパク質の場合、アルブミン残基は、AT依存性の不活性化プロセスに空間配置的に影響を与えるが、それに対して切断可能なリンカーを有する融合タンパク質の場合では、アルブミン残基は切断されて、ATによる不活性化が促進されると予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用融合タンパク質であって
a)凝固因子、その変異体または誘導体、
b)アルブミン(それらの変異体および誘導体を含む)、アルブミンファミリーのポリペプチド(それらの変異体および誘導体を含む)、および、抗原結合ドメインを有さない免疫グロブリン(それらの変異体および誘導体を含む)からなる群より選択された半減期を延長したポリペプチド、および、
c)凝固因子と半減期を延長したポリペプチドとを連結するペプチドリンカー、
を含み、
ここにおいて該ペプチドリンカーは、凝固に関与するプロテアーゼによって切断することができるか、または、凝固酵素によって活性化され、さらに、そのような場合において、少なくとも1種の凝固関連の分析において、該治療用融合タンパク質は、アミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーで連結された各治療用融合タンパク質と比較して、高いモル比活性度を有する、上記タンパク質。
【請求項2】
治療用融合タンパク質であって、
a)凝固因子、その変異体または誘導体、
b)アルブミン(それらの変異体および誘導体を含む)、アルブミンファミリーのポリペプチド(それらの変異体および誘導体を含む)、および、抗原結合ドメインを有さない免疫グロブリン(それらの変異体および誘導体を含む)からなる群より選択された半減期を延長したポリペプチド、および、
c)凝固因子と半減期を延長したポリペプチドとを連結するペプチドリンカー、
を含み、
ここにおいて該ペプチドリンカーは、凝固に関与するプロテアーゼによって切断することができるか、または、凝固酵素によって活性化され、さらに、そのような場合において、該治療用融合タンパク質は、アミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーで連結された各治療用融合タンパク質と比較して、凝固に関連する様式で該ペプチドリンカーがタンパク質分解によって切断された後に、活性化された凝固因子の高い不活性化速度を示す、上記タンパク質。
【請求項3】
治療用融合タンパク質であって、
a)凝固因子、その変異体または誘導体、
b)アルブミン(それらの変異体および誘導体を含む)、アルブミンファミリーのポリペプチド(それらの変異体および誘導体を含む)、および、抗原結合ドメインを有さない免疫グロブリン(それらの変異体および誘導体を含む)からなる群より選択された半減期を延長したポリペプチド、および、
c)凝固因子と半減期を延長したポリペプチドとを連結するペプチドリンカー、
を含み、
ここにおいて該ペプチドリンカーは、凝固に関与するプロテアーゼによって切断することができるか、または、凝固酵素によって活性化され、さらに、そのような場合において、該治療用融合タンパク質は、アミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーで連結された各治療用融合タンパク質と比較して、凝固に関連する様式で該ペプチドリンカーがタンパク質分解によって切断された後に、活性化された凝固因子の高い除去速度を示す、上記タンパク質。
【請求項4】
融合タンパク質は、半減期を延長したポリペプチドに融合していない各凝固因子のインビボでの回復と比較して、より高いインビボでの回復を示す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項5】
融合タンパク質は、半減期を延長したポリペプチドに融合していない各凝固因子の血漿半減期と比較して、長い血漿半減期を示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項6】
凝固因子は、ビタミンK依存性凝固因子である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項7】
凝固因子は、FVIIa、または、FIXである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項8】
半減期を延長したポリペプチドは、抗原結合ドメインを含まない免疫グロブリン、または、それらのフラグメントもしくは誘導体である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項9】
リンカーは、FXIa、および/または、FVIIa/TFによって切断することができる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項10】
利用可能な様々な凝固関連の分析のうち少なくとも1種において、治療用融合タンパク質の凝固に関連するモル比活性度は、アミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーで連結された治療用融合タンパク質の場合の活性と比較して少なくとも25%高い、請求項1〜9のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項11】
凝固因子と半減期を延長したポリペプチドとを連結するペプチドリンカーを切断した後の該凝固因子の不活性化速度は、それに相当するアミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーで連結された治療用融合タンパク質における凝固因子の不活性化速度と比較して少なくとも10%高い、請求項1〜10のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項12】
凝固因子と半減期を延長したポリペプチドとを連結するペプチドリンカーを切断した後の該凝固因子の除去速度は、それに相当するアミノ酸配列GGGGGGVを有する切断不可能なリンカーで連結された治療用融合タンパク質における凝固因子の除去速度と比較して少なくとも10%高い、請求項1〜11のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項13】
リンカーは、凝固因子を活性化するプロテアーゼまたはプロテアーゼ群によって切断することができる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項14】
プロテアーゼまたはプロテアーゼ群によるリンカー切断の速度は、凝固因子の活性化の速度の3倍を超えて遅延しない、請求項13に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項15】
リンカーは、凝固因子の関与によって活性化されるプロテアーゼまたはプロテアーゼ群によって切断することができる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項16】
リンカーは、FXIaおよび/またはFVIIa/TFによって切断することができ、凝固因子は、FIXである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項17】
リンカーは、FXaおよび/またはFVIIa/TFによって切断することができ、凝固因子は、FVIIaである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項18】
リンカーは、表3aおよび3bの群より選択された配列を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項19】
医薬物質として使用するための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸を含むプラスミドまたはベクター。
【請求項22】
発現ベクターである、請求項21に記載のプラスミドまたはベクター。
【請求項23】
ベクターは、ヒトの遺伝子治療に使用するためのトランスファーベクターである、請求項22に記載のプラスミドまたはベクター。
【請求項24】
請求項20に記載のポリヌクレオチド、または、請求項21〜23のいずれか一項に記載のプラスミドまたはベクターを含む宿主細胞。
【請求項25】
請求項24に記載の宿主細胞を、治療用融合タンパク質が発現されるような条件下で培養することを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質の製造方法。
【請求項26】
宿主細胞または培地から治療用融合タンパク質を回収することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質、請求項20に記載のポリヌクレオチド、または、請求項21〜23のいずれか一項に記載のプラスミドまたはベクターを含む医薬組成物。
【請求項28】
血液凝固障害を治療または予防するための医薬品を製造するための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質、請求項20に記載のポリヌクレオチド、請求項21〜23のいずれか一項に記載のプラスミドまたはベクター、または、請求項24に記載の宿主細胞の使用。
【請求項29】
血液凝固障害は、血友病Bである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
血液凝固障害は、FVIIおよび/またはFVllaの欠乏症である、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
血液凝固障害は、血友病Aである、請求項28に記載の使用。
【請求項32】
治療は、ヒトの遺伝子治療を含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
凝血促進性の特性を有する医薬品を製造するための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の治療用融合タンパク質、請求項20に記載のポリヌクレオチド、請求項21〜23のいずれか一項に記載のプラスミドまたはベクター、または、請求項23に記載の宿主細胞の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−539391(P2009−539391A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514703(P2009−514703)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005246
【国際公開番号】WO2007/144173
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(597070264)ツェー・エス・エル・ベーリング・ゲー・エム・ベー・ハー (32)
【Fターム(参考)】