説明

血液分離部材

【課題】遠心分離を必要とすることなく、血液から血漿もしくは血清を分離し得るだけでなく、測定成分の吸着による検査精度の低下が生じ難い、血液分離部材を提供する。
【解決手段】血液から血漿もしくは血清を分離するのに用いられる血液分離部材であって、表面に、ケン化度90%以下のポリビニルアルコールからなるコーティング層を有する、血液分離部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液から、血漿もしくは血清を分離するのに用いられる血液分離部材に関し、より詳細には、血球成分の通過を防止することにより、血液から血漿もしくは血清を分離することを可能とする血液分離部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液から血球成分を除去し、血漿もしくは血清を得るために、遠心分離法が広く用いられてきている。しかしながら、遠心分離法では、血液の凝固過程や分離後に上澄みの血漿もしくは血清を移し変える過程などにおいて煩雑な手間がかかっていた。また、検査結果を得るまでに時間がかかり、さらに大型でかつ高価な遠心分離機が必要であった。
【0003】
そこで、遠心分離を用いることなく、血液から血球成分を除去し、血漿もしくは血清を得ることを可能とする様々な分離膜が提案されている。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、直径0.05〜1μmの細孔を有し、外面開孔率40%以下、内面開孔率60%以上、膜厚が50〜200μmである中空繊維を用いて全血から血漿を分離採取する方法が提案されている。この中空繊維を用いることで、高い血漿分離速度で血漿を分離することができるとされている。
【0005】
他方、下記の特許文献2には、平均繊維径0.2〜5μm、及び密度0.1〜0.5g/cmのガラス繊維層を用いて全血から、血漿または血清を分離する方法が開示されている。
【0006】
一方、下記の特許文献3には、入口と出口とを有する容器内に高分子極細繊維集合体または多孔質ポリマーで構成される濾過材を装着した血漿または血清分離フィルタが開示されている。濾過材である高分子極細繊維集合体または多孔質ポリマーには、親水化するために、親水性ポリマーが固定されている。固定された親水性ポリマーは、濾過材中で血液を移動させ、血漿または血清を分離採取する間に膨潤し、フィルタを閉塞することによって、濾過を自動停止させる。ある所定量の血漿または血清を得た後、血球成分が到達するまでに濾過が自動的に停止するため、血球成分の混入を自動的に防ぐことができるとされている。
【特許文献1】特公平2−23831号公報
【特許文献2】特公平6−64054号公報
【特許文献3】特開平11−285607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、血漿成分を速やかに分離することができ、少量の検体を短時間で分析することができるが、高価な中空繊維を用いているため、コストが高くならざるを得なかった。
【0008】
特許文献2に記載の方法では、血液を血球成分と血漿または血清とに分離することができるが、濾過速度が低く、濾過時間を短くできなかった。圧力を加えることにより、濾過速度を高めることは可能であるが、溶血が生じたり、赤血球が漏れだしたりするおそれがあった。
【0009】
さらに、特許文献1や特許文献2に記載の血漿または血清分離方法では、分離後に長時間放置されると、溶血が起こり、赤血球内成分が血漿または血清に混入するおそれもあった。
【0010】
一方、特許文献3に記載の血清分離フィルタでは、血液を血球成分と血漿または血清とに分離採取する間に親水性ポリマーが膨潤し、フィルタを閉塞することによって、濾過が自動停止されるため、分離後に長時間放置された場合でも、溶血により赤血球内成分が血漿または血清に混入するおそれがない。
【0011】
ここでは、濾過材中で血液を移動させ、移動速度差により血液中の血球成分と血漿または血清とを分離している。他方、ヘマトクリットや粘度の異なる血液では、上記移動速度差が異なるので、場合によっては、分離途中でフィルタが閉塞することがあった。分離途中でフィルタが閉塞した場合、回収できる検体量が大幅に減少する。
【0012】
しかしながら、従来の上記分離膜などの血液分離部材を用いた場合、血液分離部材へ血液成分が吸着し、正確な測定結果を得られないことがあった。
【0013】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、遠心分離操作を必要とせず、血漿もしくは血清を容易に得ることができるだけでなく、血液中の微量測定成分の血液分離部材への吸着を抑制することができ、高精度に検査を行うことを可能とする血液分離部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る血液分離部材は、血液から血漿もしくは血清を分離するのに用いられる血液分離部材であって、表面に、ケン化度90%以下のポリビニルアルコールからなるコーティング層を有することを特徴とする。すなわち、本発明は、血液分離部材表面に上記特定のポリビニルアルコールコーティング層を設けたことを特徴とし、それによって血液中の微量測定成分の吸着が抑制される。
【0015】
好ましくは、上記ポリビニルアルコールのケン化度は65〜90%の範囲内とされる。65%未満では、ポリビニルアルコールが溶解するおそれがあり、90%を超えると、検査成分の吸着抑制効果が十分に得られない。
【0016】
また、好ましくは、ポリビニルアルコールの平均重合度は300以上であり、より好ましくは、300〜3500の範囲とされる。平均重合度が300未満の場合には、ポリビニルアルコールが溶解しやすくなり、検査結果に悪影響を与えるおそれがある。また、平均重合度が3500よりも大きいと、検査成分の吸着抑制効果が小さくなることがある。
【0017】
さらに好ましくは、上記平均重合度は2800以下とされ、それによって、微量測定成分の吸着をより効果的に防止することができる。
【0018】
本発明に係る血液分離部材は、上記のように、表面に特定の添加剤のポリビニルアルコールコーティング層を有することを特徴とし、血液分離部材の材料自体は特に限定されるものではない。従って、繊維集積体、多孔質体、及び血球の通過を禁止し得る孔や溝が形成されている膜もしくは成形体からなる群から選択した1種の材料が好適に用いられ、これらの材料表面に上記特定のポリビニルアルコールコーティング層が設けられることにより、本発明に従って、血液中の微量測定成分の吸着を効果的に抑制しつつ、血液から血漿もしくは血清を分離することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る血液分離部材によれば、表面がケン化度90%以下のポリビニルアルコールによりコーティングされているので、血液中の微量測定成分の血液分離部材への吸着を確実に抑制することができる。従って、遠心分離法を用いることなく、血液から血漿もしくは血清を分離することができるだけでなく、検査結果の測定精度を飛躍的に高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0021】
前述したように、本発明に係る血液分離部材の特徴は、表面にケン化度90%以下のポリビニルアルコールコーティング層を有することにある。従って、血液分離部材の基材自体は特に限定されるものではない。このような血液分離部材を構成する基材としては、例えば、繊維集積体、多孔質体、血球成分の通過を禁止し得る孔や溝が形成された膜もしくは成形体が挙げられる。繊維集積体としては、従来より汎用されている極細繊維の集積体などが挙げられる。また、上記多孔質体としては、焼結体や多孔質膜、多孔性粒子などが挙げられ、さらに連続気泡を有する発泡体なども、広い意味で上記多孔質体に含まれるものである。また、上記血球成分の通過を禁止する孔や溝が形成されている材料としてはこのような孔及び/または溝を有するフィルタなどが挙げられる。実質的に、血液分離部材の一方側に血液を供給した場合に、血球成分が該血液分離部材を通過せず、他方側に血漿もしくは血清を取り出すことができる限り、血液分離部材を構成する基材は特に限定されるものではない。
【0022】
また、血液分離部材を構成する基材は、内部に血球成分を捕捉することにより、血球成分と血漿もしくは血清を分離するものに限定されず、血球成分と血漿もしくは血清成分との移動速度差により両者を分離するものであってもよい。
【0023】
上記血液分離部材の基材は、その形態からは、非対称フィルタと対称フィルタとに分けることができる。非対称フィルタとは、血液が供給される流入側から、流出側にかけて孔径が小さくなる構造を有するフィルタを称するものとする。これ以外のフィルタを対称フィルタと総称することとする。
【0024】
上記対称フィルタとしては、平均孔径が1μm以上、10以下の範囲であるものが望ましい。より好ましくは、2μm以上、8μm以下である。平均孔径が1μmより小いと赤血球が溶血することがあり、10μmより大きくなると血漿もしくは血清から血球を分離し難くなるおそれがある。
【0025】
また、上記非対称フィルタとしては、平均孔径が0.01μm以上、10μm以下の範囲のものが好ましく、より好ましくは、0.1μm以上、6μm以下である。平均孔径が0.01μmより小いと、血球成分が目詰まりし、分離できなくなるおそれがあり、また溶血することがある。平均孔径が10μmより大きくなると、血球と血漿もしくは血清との分離精度が悪くなるおそれがある。
【0026】
上記血液分離部材が、繊維集積体からなる場合、その繊維の平均繊維径は0.5〜3.0μmの範囲にある極細繊維が集積されたものであることが好ましい。平均繊維径が0.5μmより小いと、血液を分離する際に溶血を起こし易くなる。平均繊維径が3.0μmよりも大きいと、血球と血漿もしくは血清とを分離するために、血液分離部材における繊維の密度を高める必要がある。また、使用する繊維の量が多くなり、コストが高くつくおそれがある。分離効果をより一層高めるには、平均繊維径は0.5〜2.5μmの範囲であることがより望ましい。
【0027】
上記血液分離部材は、一方側に血液を供給した場合に、他方側から血漿もしくは血清が血球成分から分離されて取り出されるように用いられる。従って、通常、血液分離部材は、筒状容器などの容器内に充填される。この場合、容器内に充填された血液分離部材の平均密度は、0.1〜0.5g/cmの範囲であることが好ましい。平均密度が0.1g/cmより低い場合には、分離を効果的に行い得ないことがあり、得られる血漿もしくは血清の量が少なくなるおそれがある。平均密度が0.5g/cmよりも高い場合には、赤血球への負荷が大きくなり、溶血が生じ易くなる。血液をより一層効率良く分離するには、上記平均密度は0.15〜0.40g/cmの範囲にあることが好ましい。
【0028】
なお、本発明に係る血液分離部材としては、上記対称フィルタ及び非対称フィルタを組み合わせたものであってもよい。
【0029】
本発明に係る血液分離部材は、上記のように、表面が、ケン化度90%以下のポリビニルアルコールでコーティングされていることにある。この場合、好ましくは、ケン化度は65%以上、90%以下である。65%以上、95%以下とすることにより、ポリビニルアルコールの溶解が生じ難く、検査成分の血液分離部材への吸着を確実に抑制することができ、高精度な検査結果を得ることができる。65%未満では、ポリビニルアルコールが溶解し、検査結果に悪影響を与える可能性があり、90%を超えると、検査成分の吸着抑制効果が小さくなる。
【0030】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は300以上が好ましく、より好ましくは、300以上、3500以下である。前述したように、平均重合度が300〜3500の範囲とすることにより、ポリビニルアルコールの溶解を抑制し、かつ検査成分の血液分離部材への吸着を確実に抑制することができる。
【0031】
上記ポリビニルアルコールをコーティングする方法は、特に限定されず、1)ポリビニルアルコールを溶解させた溶液に、血液分離部材を構成する上記部材を浸漬し、水分を除去し、乾燥する方法、2)予め容器などに血液分離部材となる基材をセットした状態でポリビニルアルコールの溶液を加圧により通液させる方法、3)予め容器などに上記基材をセットした状態でポリビニルアルコールを添加し、遠心分離により水分を除去し、乾燥する方法などが挙げられる。
もっとも、上記血液分離部材を製造するに際し、基材の表面にポリビニルアルコールをコーティングする方法はこれらに限定されるものではない。
【0032】
また、ポリビニルアルコールのコーティングは血液分離材全体に均一に塗布されていることが好ましい。不均一に塗布されると塗布量の多い部分では血液分離時に圧力が過剰に加わり溶血する場合があるからである。また、乾燥前にできるだけ水分を除去することが好ましい。過剰に水分が残っていると血液分離材の空隙部分に皮膜を形成し、血液の分離が正常に行われない場合があるからである。水分の除去に関しては各処理方法によって適性に設定されることが好ましい。
【0033】
ポリビニルアルコールのコーティング量としては血液分離材の表面積1mにつき、0.1〜30mgであることが好ましく、より好ましくは0.5〜20mgである。コーティング量が0.1mg未満の場合は検査成分の吸着抑制効果が小さくなり、30mg以上ではポリビニルアルコールが溶解し、検査結果に悪影響を与える可能性があるからである。
【0034】
上記血液分離部材は、前述したように、一方側に血液を供給した際に、他方側から血漿もしくは血清を血球成分から分離して取り出す用途に用いられるものであり、通常容器内に収容されて用いられる。このような容器としては、血液分離部材の一方側に血液を供給した際に、血液が、血液分離部材の側方をバイパスすることなく、血液分離部材内に入り込み、他方側から血漿もしくは血清を取り出すことを可能とする様々な容器を用いることができる。このような容器としては、特に限定されないが、例えば、円筒状などの筒状体が一般的に用いられる。すなわち、筒状体内において、血液分離部材を収容し、一方側に血液を流入させ、他方側から血漿もしくは血清を取り出すことができる。このような筒状体を用いた容器としての具体的な形状は特に限定されないが、例えば、図1に示すシリンジ状の血液分離容器1を例示することができる。血液分離容器1は、円筒状の容器本体2を有する。容器本体2の一端には、開口2aが設けられており、他端側は、出口側であり、開口2aよりも小径の孔2bを有する。容器本体2内に、本発明に従って構成された血液分離部材3が収容される。そして、血液分離部材3上に血液4を供給した状態でピストン5及び操作棒6を有する操作部材7を矢印の方向に押動することにより、血液から血漿もしくは血清が分離され得る。
【0035】
なお、血液分離容器は、図1に示した血液分離容器1に限定されず、例えば、メンブランフィルタを保持するホルダーのような形態であってもよい。すなわち、血液分離部材の形態に応じて、様々な血液分離容器を用いることができる。
【0036】
次に、具体的な実施例及び比較例を挙げ、本発明の効果を明らかにする。
【0037】
(実施例1)
平均繊維径1.8μmのポリエステル製繊維0.55gをケン化度71.5%、平均重合度500のポリビニルアルコールの0.5重量%水溶液に1時間浸漬した。次に、水分を除去した後、60℃のオーブンで一晩乾燥した。乾燥後の単位面積当たりのポリビニルアルコールのコーティング量は5.6mg/mであった。
【0038】
(実施例2)
平均繊維径1.8μmのポリエステル製繊維0.55gをケン化度80%、平均重合度500のポリビニルアルコールの0.5重量%水溶液に1時間浸漬した。次に、水分を除去した後、60℃のオーブンで一晩乾燥した。乾燥後の単位面積当たりのポリビニルアルコールのコーティング量は6.0mg/mであった。
【0039】
(実施例3)
平均繊維径1.8μmのポリエステル製繊維0.55gをケン化度88%、平均重合度1000のポリビニルアルコールの0.5重量%水溶液に1時間浸漬した。次に、水分を除去した後、60℃のオーブンで一晩乾燥した。乾燥後の単位面積当たりのポリビニルアルコールのコーティング量は7.0mg/mであった。
【0040】
(実施例4)
平均繊維径1.8μmのポリエステル製繊維0.55gをケン化度88%、平均重合度2800のポリビニルアルコールの0.5重量%水溶液に1時間浸漬した。次に、水分を除去した後、60℃のオーブンで一晩乾燥した。乾燥後の単位面積当たりのポリビニルアルコールのコーティング量は10.3mg/mであった。
【0041】
(実施例5)
平均繊維径1.8μmのポリエステル製繊維0.55gをケン化度71.5%、平均重合度500のポリビニルアルコールの0.05重量%水溶液に1時間浸漬した。次に、水分を除去した後、60℃のオーブンで一晩乾燥した。乾燥後の単位面積当たりのポリビニルアルコールのコーティング量は0.5mg/mであった。
【0042】
(実施例6)
平均繊維径1.8μmのポリエステル製繊維0.55gをケン化度71.5%、平均重合度500のポリビニルアルコールの1.5重量%水溶液に1時間浸漬した。次に、水分を除去した後、60℃のオーブンで一晩乾燥した。乾燥後の単位面積当たりのポリビニルアルコールのコーティング量は15.6mg/mであった。
【0043】
(比較例1)
平均繊維径1.8μmのポリエステル製繊維0.55gをケン化度98.5%、平均重合度500のポリビニルアルコールの0.5重量%水溶液に1時間浸漬した。次に、水分を除去した後、60℃のオーブンで一晩乾燥した。乾燥後の単位面積当たりのポリビニルアルコールのコーティング量は6.2mg/mであった。
【0044】
(比較例2)
平均繊維径1.8μmのポリエステル製繊維0.55gをケン化度40%、平均重合度600のポリビニルアルコールの0.5重量%水溶液に1時間浸漬した。次に、水分を除去した後、60℃のオーブンで一晩乾燥した。乾燥後の単位面積当たりのポリビニルアルコールのコーティング量は5.1mg/mであった。
【0045】
(比較例3)
平均繊維径1.8μmのポリエステル製繊維0.55gをケン化度71.5%、平均重合度500のポリビニルアルコールの0.005重量%水溶液に1時間浸漬した。次に、水分を除去した後、60℃のオーブンで一晩乾燥した。乾燥後の単位面積当たりのポリビニルアルコールのコーティング量は0.05mg/mであった。
【0046】
(比較例4)
平均繊維径1.8μmのポリエステル製繊維0.55gをケン化度71.5%、平均重合度500のポリビニルアルコールの3.0重量%水溶液に1時間浸漬した。次に、水分を除去した後、60℃のオーブンで一晩乾燥した。乾燥後の単位面積当たりのポリビニルアルコールのコーティング量は33.4mg/mであった。
【0047】
(評価実験)
実施例1〜6および比較例1〜4で調製した血液分離部材を図1に略図的に示した。ただし、直径12.5mmの円筒状容器本体2に充填し、充填密度0.27g/cmとなるように圧縮充填した。
【0048】
充填後、ボランティアから採血した血液にあらかじめ5単位/mlとなるようにヘパリンリチウムを添加し、その血液2.5mLを円筒状容器本体2に添加し、ピストンで加圧して血液を分離した。分離により得られた血清中の検体を測定した。測定に際しては、臨床検査項目として総蛋白、AST、ALT、総コレステロール、中性脂肪の測定を行った。対照には一般に使用されている生化学用の真空採血管インセパックII−Dを使用した。
【0049】
実施例1〜6及び比較例1〜4のいずれの試料においても血清を分離できたが、ケン化度の低い比較例2では明らかな溶血が認められた。
【0050】
また比較例1、3、4の試料においては、各検査項目についての対照の採血管を用いた場合の測定値に対して吸着の影響と考えられる低値化が認められたが、実施例1〜6については対照における測定値とほとんど差はなかった。
【0051】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の血液分離部材が収納されている血液分離容器の一例を示す模式的正面断面図。
【符号の説明】
【0053】
1…血液分離容器
2…容器本体
2a…開口
2b…孔
3…血液分離部材
4…血液
5…ピストン
6…操作棒
7…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から血漿もしくは血清を分離するのに用いられる血液分離部材であって、
表面に、ケン化度90%以下のポリビニルアルコールからなるコーティング層を有することを特徴とする、血液分離部材。
【請求項2】
前記ケン化度が、65〜90%の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の血液分離部材。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールの平均重合度が300以上である、請求項1または2に記載の血液分離部材。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコールの平均重合度が300〜3500の範囲にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液分離部材。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコールのコーティング量が血液分離材の表面積1m当たり、0.1〜30mgの範囲にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液分離部材。
【請求項6】
繊維集積体、多孔質体及び血球成分を通過させない溝もしくは孔が形成されている膜もしくは成形体からなる群から選択した1種の材料の表面に、前記ポリビニルアルコールからなるコーティング層が設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の血液分離部材。

【図1】
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【公開番号】特開2007−333578(P2007−333578A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166115(P2006−166115)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】