血液循環を調整するための方法及び装置
【課題】哺乳類の四肢に対して正圧を加えることにより血流量を増大させ及び/又は哺乳類の温度を制御するための方法及び装置を提供する。
【解決手段】装置100は、四肢130に可能な限り近くなるように1つ以上の圧力印加ガスプレナム172を取り付けることにより拡張して加圧圧縮力を哺乳類の四肢に対してフレキシブルに加えることができる1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素110を含んでいる。可撓性の四肢装置は、独立に使用することができ、あるいは、1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素に対して配置される熱パッドと共に使用することができる。あるいは、1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素を熱パッドへと製作することができる。
【解決手段】装置100は、四肢130に可能な限り近くなるように1つ以上の圧力印加ガスプレナム172を取り付けることにより拡張して加圧圧縮力を哺乳類の四肢に対してフレキシブルに加えることができる1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素110を含んでいる。可撓性の四肢装置は、独立に使用することができ、あるいは、1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素に対して配置される熱パッドと共に使用することができる。あるいは、1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素を熱パッドへと製作することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、人間の四肢内の血流量を増大させ及び/又は身体深部の体温を調整して維持するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間などの恒温動物は、周囲環境の温度変化及び細胞代謝副生成物として解放される内部熱の変動にかかわらず、比較的一定の内部温度を維持しようとする。人間において、熱深部は、一般に、身体の重要臓器、例えば脳、腹部及び胸部内に保たれる幾つかの臓器を含んでいる。周辺組織、例えば、皮膚、脂肪、筋肉は、内臓中の深部体温から動物の表面の近環境温度までの範囲をとる温度勾配を維持することにより、熱深部と動物の外部環境との間の緩衝器としての機能を果たす。
【0003】
哺乳類の体温調整は、過度の資源支出を伴うことなく哺乳類の生存を可能にして安定した内部熱環境を生成するために、適応機構、例えば、断熱、呼吸熱保全、受動放熱などを必要とする。内部又は外部の断熱は、環境状態から身体深部への熱伝達を妨げるとともに、動物を寒さから守る。同様に、皮下断熱は、皮膚表面から身体深部への熱の伝達を遅らせる。周辺組織の断熱特性は、組織を通じた血流によって決定され、血流がないと、組織を通じた熱伝達が極僅かとなる。例えば、血流を欠き且つ血液かん流が悪いと、脂肪組織が良好な絶縁体となる。かん流が乏しい任意の組織は絶縁体となる場合がある。組織血液かん流は、局部的な熱伝達を決定するとともに、身体部位への熱の供給(あるいは、身体部位からの熱の除去)を可能にする。
【0004】
呼吸熱保全は、哺乳類の肺胞のガス交換面での循環血液と空気との間の熱交換、熱損失を防止する適応機能である。循環血液の全ては肺のガス交換面を通過する。
【0005】
熱は、循環系の範囲内で血流を介して熱深部から身体表面へと環境に向かって放散される。全身血液の分配は、局所的な組織代謝要求にしたがっている。全ての血液は心臓及び肺の室を通過する。休んでいる人間の心拍出量は約5L/分であり、これにより、全血液容量は、毎分1サイクルの回転率で循環する。哺乳類の血液容量及び心拍出量は、身体内の全ての組織を均一にかん流させるのに不十分である。特殊な脈管構造は、血流中での熱交換を促進させる。
【0006】
哺乳類では、2つのタイプの脈管構造、すなわち、栄養脈管部及び熱交換脈管部が見出される。これらの機能は互いに排他的である。すなわち、栄養脈管部は、皮膚全体にわたって均一に分布された壁が薄い小径の血管、例えば細動脈、毛細血管、小静脈を含んでおり、局所組織に対して栄養を供給するために緩慢な血流の流通を必要とする。熱交換脈管部は、壁の厚い大径の小静脈、例えば静脈叢、動静脈吻合(AVA;小動脈と静脈叢との間を繋ぐ血管)を含んでおり、熱放散を促進させるために多くの血液容量の流れを必要とする。人間において、人間の熱交換脈管部の静脈叢及びAVAは、主に、断熱されていない手の掌、足の裏、耳、顔の毛がない領域で見出される。
【0007】
恒温動物における温度調節系は、多くの要因(麻酔、外傷、環境、他)によって危険に晒されるとともに、様々な熱的な疾患及び疾病状態を引き起こす場合がある。全身麻酔の誘導時、例えば誘発低体温症は、麻酔薬によって引き起こされる体系的な血管拡張による深部から周辺への温度再分配に起因して起こる場合がある。熱的な疾患、例えば低体温及び高体温は、過酷な環境条件によって温度調節系が打ち負かされるときに起こる場合がある。AVAの収縮は、身体深部を環境から熱的に分離するが、AVAの拡張は、身体深部と環境との間の熱の自由な交換を促進させる。
【0008】
熱交換脈管構造を通じて流れる血流は極めて変わり易く、例えば、熱応力中又は高体温中の血流の高い容量は、全心拍出量の60%程度まで増大し得る。一方、低体温は、寒い環境に長い間さらされる結果であり、この場合、静脈叢及びAVAを通じて流れる血流は、ほぼゼロの全心拍出量となり得る。周辺血管の血管収縮は、血流を四肢へと制限して身体の熱深部から離れる熱伝達を減少させることにより更なる熱損失を防止するべく低体温下で起こる。しかしながら、血管収縮は、低体温状態を逆転させることをかなり難しくする。なぜなら、血管収縮は、身体表面から熱深部への熱の伝達を妨げるとともに、身体の表面に対して単に熱を加えることを難しくするからである。熱伝達に対するこの生理学的障害は、熱交換に対する血管収縮封鎖と称される。熱的疾患を妨害して補正するためには、熱交換脈管部の静脈叢及びAVAへの血流を調整する必要性がある。
【0009】
他の熱的疾患関連の病気、例えば静脈血栓塞栓症は、かなりの疾病率及び死亡率を引き起こし続ける。静脈血栓症及び肺塞栓(PE)に起因する入院は年間300000〜600000人に及ぶ。様々なタイプの外科手術及び外傷並びに神経障害に続いて、多くの患者は、深部静脈血栓症(DVT)を患う危険性があり、これは肺塞栓(PE)を来たし得る。PEは、通常、脚の深部静脈内の血栓によって生じる。この場合、血栓(凝血塊)片が断ち切れて肺へと移動する場合がある。入院の当初の理由にかかわらず、全国で入院中の百人に一人の患者はPEが原因で死亡する。整形外科手術、脊髄損傷、GI又はGU外科手術を受ける腰、脛骨、膝の骨折を患う患者は、特に、DVTを患う危険性が高い。したがって、DVTの予防が臨床的に重要である。
【0010】
血流の鈍化又は脚からの血液戻り系は、外科的切開の行為により引き起こされる酵素遊離及び移動の欠如(麻酔症)に起因して手術段階中に最も大きな効果を伴うDVT形成に関連付けられる主な要因となり得る。また、術後期間も心配の種である。一般に、移動性がないと、心臓への血液の戻りは遅くなり、また、個人の血管は、血管運動神経性緊張及び/又は血液を元の心臓へ圧送するための弱い筋肉の限られた収縮のみに依存している。1つの研究は、3〜4時間程度の短い時間の航空旅行がDVTを誘発し得ることを示している。
【0011】
医学的予防の現在の手法は、抗凝固治療及び/又は空気圧縮装置によって圧力を筋肉に対して加えるための機械的圧縮を含んでいる。抗凝固治療は、血液の凝固を防止して血管中の血栓を除去するために血液抗凝固薬を必要とし、これには、効果がでるまでに数日を要さなければならない。また、これらの薬は、出血性合併症の危険をもたらし、したがって、手術で誘発されるDVTを予防するために使用することができない。機械的に圧縮してふくらはぎ及び足の筋肉に対して連続的にプラスのメッセージ型圧力を直接に印加する連続空気圧縮装置(SCD)は、病院環境でごく普通に使用されるが、扱いにくく、使用が難しい。
【0012】
Grahnに対して発行され且つスタンフォード大学に対して譲渡された米国特許第5,683,438号は、身体部位内の血管を機械的に広げて低体温哺乳類の身体深部に対して熱伝達を行なうことにより熱交換に対する血管収縮封鎖を克服するための装置及び方法を開示している。開示された装置は、身体部位上にわたって配置される管状の長尺な硬いシェルスリーブ内に収容される流体で満たされた加熱パッドを備えている。減圧が加えられてスリーブ内で維持される。しかしながら、体温を調整するための殆どの装置は、熱伝達の最適化のため或いは加熱素子及び患者の身体表面を介して熱を均一に分配できるようにするために十分な熱及び適切な表面積を供給しない場合がある。また、装置は、患者のサイズの可変性に適合できない場合があり、あるいは、長い処置中に身体部位の移動性を与えない場合がある。
【0013】
したがって、熱交換部の静脈叢及びAVAに対する及びこれらを通じた血流を増大させ、それにより、血管収縮封鎖を減少させて、体温調整のための熱交換及び/又は鬱血、DVT形成、及び、PEにより引き起こされ得る死亡の防止を促進させるための装置及び方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【0014】
本発明の実施形態は、血流量を増大させ及び/又は体温を制御するための方法及び装置であって、哺乳類の内部の損傷した熱調整系に起因する熱的疾患、深部静脈血栓症、PE、及び、他の疾患を防止し及び/又は妨げるために体温を調整する際に使用できる方法及び装置を提供する。一実施形態では、体温を調整し且つ手、腕、脚、足又は脚のふくらはぎ等の哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を供給して四肢中の血流量を増大させるための可撓性の四肢装置が提供される。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、四肢に可能な限り近くなるように1つ以上の圧力印加ガスプレナムを取り付けることにより加圧圧縮力を哺乳類の四肢に対してフレキシブルに加えることができる可撓性の四肢装置が提供される。可撓性の四肢装置は、独立に使用することができ、あるいは、可撓性の四肢装置の本体に対して配置される熱パッドと共に使用することができる。
【0016】
本発明は、一般に、血流量を増大させて体温を制御するための装置であって、内部領域を取り囲む1つ以上の壁を有し、上記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが患者の部位上にわたって配置されるようになっているプレナムと、上記1つ以上の壁と患者の上記部位との間に配置される1つ以上の熱交換ユニットと、患者の上記部位に対して上記1つ以上の熱交換ユニットを押し付けて上記1つ以上の熱交換ユニットと患者の上記部位との間の熱接触を高めるために上記内部領域内の圧力を制御するようになっているポンプとを備える装置を提供する。
【0017】
本発明の実施形態は、更に、哺乳類の血流量を増大させて体温を制御するための装置であって、内部領域を取り囲む1つ以上の壁を有し、上記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが患者の部位上にわたって配置されるようになっているプレナムと、上記1つ以上の壁と患者の上記部位との間に配置される1つ以上の熱交換ユニットと、上記プレナムの上記内部領域と流体連通する第1の取付具と、上記1つ以上の熱交換ユニットのうちの1つに形成される流体プレナムと流体連通する第2の取付具とを有するマニホールドと、コントローラシステムとを備え、上記コントローラシステムは、上記第1の取付具と流体連通するときに上記内部領域内の圧力を制御するようになっている第1のポンプと、上記1つ以上の熱交換ユニットと流体連通するときに上記1つ以上の熱交換ユニットの温度を制御するようになっている熱交換流体を有する流体熱交換器と、上記プレナムの上記内部領域と流体連通する圧力センサと、哺乳類の体温を測定するようになっている温度センサと、上記温度センサ及び上記圧力センサから受けられる入力を使用して上記プレナムの上記内部領域の圧力及び熱交換流体の温度を制御するとともに、上記第1のポンプを制御するコントローラとを備える装置を提供する。
【0018】
本発明の実施形態は、更に、哺乳類の血流量を増大させて体温を制御する方法であって、内部領域を取り囲む1つ以上の壁を備えるプレナムアセンブリを哺乳類の四肢の一部を覆うように配置するステップと、四肢の上記部分の表面上に1つ以上の熱交換ユニットを配置するステップと、上記1つ以上の熱交換ユニットの温度を制御するステップと、上記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが上記1つ以上の熱交換ユニットのうちの少なくとも1つを四肢の表面に対して押し付けるように上記内部領域内の圧力を調整するステップとを備える方法を提供する。
【0019】
他の実施形態において、血流量を増大させて体温を制御するための装置は、1つ以上の圧力印加ガスプレナムと1つ以上の圧力ポートとが取り付けられた1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素を含んでいる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素は、哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を加えることができる。また、四肢の一部が1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素内で囲繞されるときに1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素をシールするためにシール要素も設けられている。
【0020】
更なる実施形態において、血流量を増大させて体温を制御するための装置は第1の本体要素と第2の本体要素とを含んでおり、これらの本体要素は、第1の本体要素と第2の本体要素とを互いに囲繞することによって1つの空間へと折り畳むことができる。また、装置は、哺乳類の四肢の一部が内部に挿入される1つの空間へと第1の本体要素及び第2の本体要素が折り畳まれて囲繞されるときに第1の本体要素及び第2の本体要素の端部から形成される開口部も含んでいる。この場合、第1の本体要素及び第2の本体要素によって形成される空間は、最小の第1の容積から、内部に四肢の一部を収容するための拡張された第2の容積へと拡張することができる。装置は、更に、1つ以上の圧力印加ガスプレナムと、第1の本体要素及び第2の本体要素に対して取り付けられる1つ以上の圧力ポートとを含んでいる。第1の本体要素及び第2の本体要素は、押し潰すことができる曲げ易い材料から形成されており、哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を加えることができる。また、四肢の一部が第1の本体要素及び第2の本体要素内で囲繞されるときに第1の本体要素及び第2の本体要素をシールするためにシール要素も設けられている。
【0021】
更に他の実施形態において、血流量を増大させて体温を制御するための装置は、1つ以上の流体チャンネルを囲繞する本体部を内部に有し且つ哺乳類の四肢の一部と接触するようになっている熱交換ユニットを含んでいる。この場合、1つ以上の熱交換ユニットの本体部は押し潰すことができる曲げ易い材料から構成される。また、装置は、圧力印加ガスプレナムと、それに取り付けられた1つ以上の圧力ポートとを含んでいる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素は、哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を加えることができる。また、四肢の一部が1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素内で囲繞されるときに1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素をシールするためにシール要素も設けられている。
【0022】
また、方法が提供されており、当該方法は、前述した1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素を有する1つ以上の装置を哺乳類の1つ以上の四肢に対して設けるステップと、装置の開口部に取り付けられたシール要素を使用して当該開口部の周囲で1つ以上の四肢の一部をシールするステップと、1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素に取り付けられた1つ以上の圧力ポート及び1つ以上の圧力印加ガスプレナムに対して正圧を加えるステップとを含んでいる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素は、哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を加えることができるとともに、1つ以上の装置を使用して1つ以上の四肢の血流量を増大させることができる。1つ以上の装置は、哺乳類の体温を調整するための流動媒体が内部で流れる1つ以上の熱交換ユニットを含んでいてもよい。また、1つ以上の装置は、電気的な熱交換ユニットを含んでいてもよい。
【0023】
また、哺乳類の血流量を増大させて体温を制御するための方法が提供される。本発明の1つ以上の実施形態によれば、本方法は、1つ以上の装置を哺乳類の1つ以上の四肢に対して設けるステップと、1つ以上の装置の開口部の一部に形成されるシール要素を使用して当該開口部の周囲で1つ以上の四肢の一部をシールするステップとを含んでいる。1つ以上の装置は、1つ以上の四肢の一部と接触するようになっている1つ以上の熱交換ユニットと、1つ以上の圧力印加ガスプレナム及び1つ以上の圧力ポートが取り付けられた1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素とを含んでいる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素は、哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を加えることができる。方法は、更に、1つ以上の圧力印加ガスプレナム内の正圧を調整するステップと、1つ以上の装置を使用して1つ以上の四肢の血流量を増大させるステップとを含んでいる。
【0024】
更なる実施形態において、血流量を増大させる方法は、哺乳類の1つ以上の四肢の温度を調整するステップと、可撓性の四肢装置の1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素に取り付けられた1つ以上の圧力印加ガスプレナムから供給される正圧又は圧縮に対して1つ以上の四肢を晒すステップとを含んでいる。
【0025】
その一部が添付図面に示されている実施形態を参照することにより、本発明の前述した特徴を詳しく理解できるように、先において簡単に要約した本発明の更に特定の説明について述べる。しかしながら、添付図面は、この発明の単なる典型的な実施形態を示すものであり、したがって、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではないことに留意すべきである。これは、本発明が他の等しく有効な実施形態を認め得るからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態は、哺乳類の四肢に対して正圧を加えることによって哺乳類の血流量を増大させるための方法及び装置を含んでいる。装置は、一般に、哺乳類の四肢に対して圧縮力を加えることができる1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素を含んでいる。一実施形態において、1つ以上の熱交換ユニットが1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素に取り付けられており、したがって、四肢の温度を制御できるように四肢の一部と接触するように構成されている。したがって、加熱された或いは冷却された流動媒体又は電気的な熱エネルギを1つ以上の熱交換ユニットに対して供給することにより、哺乳類の四肢の温度を調整することができる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素を加圧することにより、哺乳類の四肢の皮膚と接触する1つ以上の熱交換ユニットに作用する印加圧力に起因して、哺乳類の四肢と1つ以上の熱交換ユニットとの間の接触表面積を増大させることができる。圧力を加えることにより、十分な接触及び熱伝達(加熱又は冷却)が哺乳類の四肢に対してなされる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素間に位置される哺乳類の四肢に対する圧力の印加を制御することにより、皮膚かん流を改善することができる。四肢を取り囲む領域に対して加えられる圧力は、四肢の皮膚表面での血液かん流を増大させ且つ血液及び身体の残りの部分に対する熱伝達を高めるために調整される。哺乳類の四肢に対して加えられる圧力を約13.5mmHgに調整すると、血液かん流の所望の増加が得られると考えられる。なお、印加圧力を約40〜80mmHgを越えて増大させると、四肢中の血流量が減少する可能性があることに留意すべきである。
【0027】
四肢は、哺乳類の任意の種類の四肢、例えば、腕、手、前腕、肘を伴う前腕、手首を伴う手、肢、足、脚、ふくらはぎ、くるぶし、つま先など(動静脈吻合(AVA)の位置が特定された部分及び/又は血流量の増大が望ましいとき)になり得る。動脈と静脈とを接続する動静脈吻合(AVA)は、主に、手の掌と指、足の裏とつま先、頬及び耳などに位置される特殊な血管である。本明細書に記載された装置は、本明細書に記載される血流増大方法に適する脈管構造を有する他の四肢に使用するようになっていてもよいことは言うまでもない。哺乳類の四肢の温度を調整することは、哺乳類の体温を上昇、冷却及び/又は維持することを含んでいてもよい。哺乳類は、人間又は他の哺乳類であってもよい。特に、DVT、PE及び他の状態(例えば、特に浮腫、外傷性腫脹、静脈うっ滞性潰瘍、糖尿病性外傷、褥瘡性潰瘍)の危険性が高い人、整形外科患者、脊髄損傷患者は、本発明の利益を享受し得る。
【0028】
本発明の1つ以上の実施形態によれば、熱的疾患(例えば、低体温及び高体温など)に対応し、哺乳類の温度調節系が危険に晒されている(例えば、全身麻酔、局部麻酔、外傷、術後状態、又は、他の要因により)ときに哺乳類の四肢の温度を調整し、及び/又は、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓(PE)又は他の疾患を防止するための装置及び方法が提供される。本明細書に記載される装置及び方法は、付属肢を含んでいてもよい哺乳類の四肢における血流量を増大することができるように検査される。糖尿病を有する人間に対して行なわれた実験により、血流量を増大させるのに最適な圧力は約13〜14mmHgであるが、0〜100mmHgの間、より好ましくは3〜40mmHgの間、更に好ましくは5〜20mmHgの間にある圧力は血液かん流を増大できることが分かっている。約14mmHgの圧力と適切な熱とを組み合わせると、付属肢(この場合には、腕)の容積の1%/分の方法で、約4%/分のベースレベルから約8%/分の増大レベルへと血流量を増大させることができる。装置により皮膚に対して加えられる圧力は血流量を増大させるために使用することができ、これは、加圧又は膨張、付属肢のかなりの部分を取り囲むカフを含むがこれらに限定されない様々な方法によって達成できる。以下、幾つかの結果について説明する。
【0029】
一実施形態において、血液を増大させ且つ深部静脈血栓症(DVT)を防止するための装置は、装置の柔軟な(compliant:追従性のある)可撓性のある本体要素に取り付けられた1つ以上の圧力印加ガスプレナムに対して圧力を加えることにより哺乳類の四肢に対して設けられ、これにより、血流量が増大されるとともに、静脈血還流が促進され、哺乳類の四肢内の血栓が減少される。理論に縛られたくないが、装置の本体要素に対して正圧を加えることにより、哺乳類の四肢の皮膚に対して加えられる圧縮力が血流量を増大させる。また、圧縮力を加えることに関連して1つ以上の熱交換ユニットが使用されると、哺乳類の四肢と1つ以上の熱交換ユニットとの間の接触表面積が増大され、それにより、哺乳類の四肢の温度が調整されて、可能な限り多くの熱交換がなされ、哺乳類の四肢の血流量が増大し及び/又は静脈還流が増大する。特に、本発明は、体温を効率的に調整し及び/又は哺乳類の四肢に対して圧縮力を加えるための使いやすい非侵襲性の装置を提供し、特に、血流量を増大させ、静脈血還流を促進させ、静脈中の血栓を防止する。一実施形態において、装置は、哺乳類の1つの四肢の一部と装置内に収容される1つ以上の熱交換要素との間で熱を交換することにより哺乳類の身体の深部体温を調整するために使用される。
【0030】
図1は、哺乳類の四肢に対して熱を伝えることにより血流を増大させるために使用される装置100の一実施形態の斜視図である。図2Aは、装置100の一実施形態の分解斜視図である。装置100は、哺乳類の四肢、例えば、腕、手、前腕、肘を伴う前腕、手首を伴う手、肢、足、脚、ふくらはぎ、くるぶし、つま先など(患者の体温及び四肢の血流の向上された効率的な制御を行なうために、AVAの位置が特定された部分)に対して及び/又はこれらの四肢から熱を伝えるために使用される。一実施形態において、装置100は、哺乳類の四肢130を挿入できる空間150を形成している1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素(すなわち、以下の本体要素110)を含んでいる。装置100は、1つ以上の本体要素110一部分同士の間に形成された開口部112を含んでおり、これにより、その開口内に配置された四肢は、1つ以上のガスプレナム172A、172B及び/又は1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bの使用によって、圧縮力を受けることができ及び/又は加熱され或いは冷却されることができる。場合により、装置内に入れられた四肢130を固定するために、開口部112にはシール要素140が取り付けられる。
【0031】
本体要素110は、一般に、最小量の空間や体積を占めるように設計されており、これにより、本体要素を容易且つ都合良く折り畳み、保管し又は出荷することができる。本体要素110の材料は可撓性の材料から形成されており、これは、四肢の形状へと適合し且つ装置100に四肢の部分をしっかりと取り囲むように、曲げ易く且つ容易に押し潰すことができる。したがって、四肢130の表面と本体要素110との間で良好な接触が成される。本体要素110は、一般に、哺乳類の四肢の一部を内部に収容するために最小容積から拡張容積へと拡張させることができる。一般的には、装置100内に入れられた四肢130のそれぞれの及び全ての部分に対して加えられる圧力を均一に且つ等しく分配できる十分な可撓性の本体要素110を使用することが望ましい。一般に、本体要素110は1つ以上のガスプレナム172を備えており、これらのガスプレナム172は、当該プレナム間に配置された哺乳類の四肢に対して圧力を加える。本体要素110のガスプレナム172は1つ以上の流体ラインに接続されており、これらの流体ラインは、本体要素110におけるガスプレナム172にガス(例えば、空気)及び/又は液体を供給するか、及び/又はガスプレナム172からガス(例えば、空気)及び/又は液体が供給される。一実施形態では、図1に示されるように、流体供給ラインは、マニホールド114に備えられている流体供給ポート174、176に接続される。
【0032】
本体要素110は押し潰すことができる曲げやすい材料から構成されており、その材料は、特にウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル、ゴム、エラストマー、高分子材料、複合材料を含むがこれらに限定されない。例えば、本体要素110は、使い捨て式低コスト材料から形成することができる。押し潰すことができる曲げ易い材料は、任意の適した可撓性材料、例えば、ガス透過性の熱可塑性プラスチック、Consolidated Polymer Technologies, Inc.(フロリダ州、ラルゴ)が提供するC−FLEX(商標)などのエラストマー材料、GLS Corporation(イリノイ州のマックヘンリー)が提供するDynaFlex、Argotec(マサチューセッツ州のグリーンフィールド)から市販されている材料及び同様の特性を有する他のエラストマー材料を含んでいてもよい。一実施形態において、押し潰すことができる曲げ易い材料は耐熱性材料を含んでいる。また、本体要素110は、生体適合性材料又は低刺激性材料(したがって、哺乳類の皮膚と接触しても安全である)から形成することもでき、代替的に、本体要素は、内部に位置された四肢130を見ることができるようにする透明材料又は半透明材料から形成することができる。他の実施例として、本体要素110は、オートクレーブ又はエチレンオキシド滅菌によって殺菌されてもよい材料から形成されてもよい。これは、無菌状態が非常に重要な手術中に装置100が使用される場合に特に重要である。押し潰すことができる曲げ易い材料の厚さは、装置100が使用される際に加圧状態を維持できさえすれば、制限されない。一実施形態では、内部に収容される四肢130の部分の形状及びサイズに柔軟に適合するために、約1.5ミル〜約12ミルの厚さを有するウレタン材料を使用できる。一般に、押し潰すことができる曲げ易い材料の厚さは、それが四肢に実質的に適合し得る十分な柔軟性を有し且つ装置100が使用されている際に所望の加圧状態を維持できる限り、制限されない。
【0033】
本発明の実施形態は、本体要素110のガスプレナム172にガス及び/又は液体を供給することにより哺乳類の四肢の一部を加圧状態に晒し、それにより、空間150内に配置された四肢に圧力を供給して、四肢130の血流を増大させることができるようにする。本体要素110の1つ以上のガスプレナム172内の圧力は、約5mmHg〜約20mmHgの圧力レベルに調整することができ、それにより、四肢の部分に供給される圧力が血液かん流を高めることができる。
【0034】
場合により、1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bが本体要素110の1つ以上の部分に対して取り付けられ、これらの熱交換ユニットは、内部に受けられた四肢130の温度を増大、減少又は維持するために、加圧状態下で四肢130の一部と接触するようになっている。熱交換ユニット120A、120Bは、内部に受けられた四肢130に熱交換を行なうために、装置100内に取り外し不能に又は取り外し可能に配置することができる。幾つかの典型的な熱交換ユニット120A、120Bの実施形態が示されており、これらについては図3A、3Bと併せて更に説明する。
【0035】
加熱流体、加熱空気、冷却流体又は冷却空気などの熱交換流動媒体は、流体源161から1つ以上の流体供給ライン124A、124Bを介して熱交換ユニット120A、120B内へ供給することができるとともに、1つ以上の流体戻しライン122A、122Bを介して装置100から排出することができる。装置100内に位置される1つ以上の熱交換ユニットの温度は、個別に或いは組み合わせて使用される電気パッド、流体型熱交換装置、又は、任意の他の適した熱交換ユニットの使用によって制御されてもよい。熱エネルギは、加熱中に熱交換ユニットから四肢130へと伝えることができ、又は四肢130を冷却するプロセス中に四肢130から1つ以上の熱交換ユニットへと伝えることができる。例えば、熱交換ユニット120A、120Bは、例えば循環型の熱交換システムを使用することにより供給される加熱水を有する流体加熱パッドであってもよい。他の実施例として、熱交換ユニット120A、120Bは、四肢を加熱又は冷却するために使用される化学物質を内部に有するパッドであってもよい。代替的に、熱交換ユニット120A、120Bは、参照によって本明細書に組み入れられる2006年8月2日に出願された同時係属の米国仮特許出願第60/821,201号明細書に詳しく記載された電気パッドを含んでいてもよい。一般的には、患者の四肢と熱交換ユニットとの間で等しく均一な接触を確保することにより熱接触を最大にして四肢と熱交換ユニットとの間での熱交換を向上させるようにすることが望ましい。
【0036】
使用時、熱交換ユニット120A、120Bと四肢130との間の良好な接触は、四肢130と熱交換ユニット120A、120Bとの間の熱伝達を最大にするために重要である。本体要素110の1つ以上のガスプレナム172に対して流体を供給することにより、熱交換ユニット120A、120Bに対して、また、四肢に対しても圧縮力が及ぼされ、それにより、熱交換ユニット120A、120Bと四肢130との間の接触面積が増大される。したがって、四肢130の表面にわたって熱エネルギを効率的に且つ均一に分配することができる。そのため、本体要素110及び熱交換ユニット120A、120Bの材料は、四肢の形状に適合でき且つ四肢の一部をしっかりと取り囲んで良好な熱接触及び/又は物理接触を行なう可撓性材料から形成される。本体要素110の1つ以上のガスプレナム172に対して供給される圧力を制御するため、圧力検出装置(すなわち、圧力センサ162)を1つ以上の流体供給ポート174、176に対して接続することができる。
【0037】
一実施形態では、装置100に対する様々な外部部品間の接続を行なうため、マニホールド114が一部の本体要素110上に形成され又は配置されてもよい。流体供給ポート174、176、流体供給ラインポート177、流体供給ライン124A、124B及び/又は流体戻しライン122A、122Bは保護シースによって覆われてもよい。マニホールド114は、一般に流体供給ラインポート177及び1つ以上の流体供給ポート174、176を含んでおり、この流体供給ラインポート177及び流体供給ポート174、176は、装置100における様々な外部部品を装置100内の様々な部品に対して接続するために、様々な種類のチューブ及び/又はコネクタに対して接続される。マニホールド114の一実施形態が図7に示されており、急速(クイック式)着脱用接続金具を組み込んであいる。マニホールド114の位置は、ガス供給ライン及び流体ラインを一括して集めることによって本体要素110の任意の都合の良い部分の近傍に置くことができる。
【0038】
開口部112の一部にはシール要素140が形成されており、このシール要素140は、本体要素110と四肢130の一部との間にシールを形成するようになっている。シール要素140は、一般に、四肢130の一部のサイズにしたがって開口部をシールするように寸法付けられて使用される。シール要素140は、生体適合性があり(したがって、哺乳類の皮膚と接触しても安全で)且つ気密シールを形成できる材料から形成されてもよい。一実施形態では、シール要素140が開口部120に対して取り外し可能に取り付けられる。他の実施形態において、シール要素140は、使い捨て式のライナ又は挿入材料などの使い捨て式の材料からなる。例えば、シール要素140の材料は、特にヒドロゲル、粘着性シール材料、ポリウレタン、ウレタンであってもよい。材料の一例はヒドロゲルである。他の例は、Deerfield Urethane Inc.が提供しているPSシリーズ熱可塑性ポリウレタンである。使い捨て式シール材料は、様々な健康要件及び安全要件を満たすべく、それらが使用前に無菌状態であり及び/又は低刺激性であるように製造されて包装されてもよい。シール要素140は、シール要素140にわたる空気の交換を可能にするため、通気性部分を含んでいてもよく、及び/又は、透過膜材料から形成されてもよい。通気性材料の例はSecuron Manufacturing Ltd.又は3M Companyから市販されている。
【0039】
一実施形態において、シール要素140は、開口部112をシールするために哺乳類の四肢の一部を包み込むことができる。シール要素140の例としては、機械的な締結具又は他の締結ユニット(例えば、マジックテープ(Velcro fasteners))が挙げられる。一例としては、装置100にスナップ係合できる1つ以上の従来の嵌め合いリングが挙げられる。他の例としては、使用できる状態にあるときに取り外すことができる、3Mリムーバブルテープ等の取り外し可能なライナを有するテープの使用が挙げられる。一実施形態では、シール要素140が使い捨てシールである。他の実施形態では、使い捨てシール要素140が装置100に対して取り付けられ、1回の使用後に装置及びシール要素140が処分される。更なる他の実施形態では、シール要素140が装置100から取り外されてもよく、また、他のシール要素と共に装置が繰り返し使用されてもよい。
【0040】
一実施形態において、シール要素140は、0.5インチ〜6インチの範囲の幅、例えば四肢130の底部を覆うことができる十分大きい幅の取り外し可能な一片の接着テープを備えていてもよい。シール要素140が接着面と裏部とを備えていてもよい。シール要素140は、一般に、開口部112の縁部の周囲で端同士を上下に重ね合わせて巻く際に約0.5インチ以上、例えば約2インチの重なりが存在するように十分長い。重なりは、ユーザが四肢の周囲にシール要素140を非常にきつく巻きつけることを促さないことが好ましく、それにより、適度なシール力、例えば20mmHg未満のシール力を形成することが好ましい。シール要素140の材料は、哺乳類の四肢に取り付けるための取り外し可能な接着材料をある部分に備えるとともに、シール要素140を装置100に対して取り付けるためのより耐久性の接着剤を他の部分に備えていてもよい。取り外し可能な接着材料は、高い初期接着力及び低い接着除去力を有する任意の多種多様な市販の材料であってもよく、それにより、シール要素140は、髪の毛又は皮膚を引っ張らず、また、それが除去されるときに痛みを与えない。例えば、取り外し可能な接着剤は、使い捨て接着剤であってもよい。また、接着材料は、ガスを満たすためにそれが変形でき或いは撓むことができるように厚く且つ可鍛性を有していてもよい。水が高分子ゲル中で分散している接着剤、例えばヒドロゲルが一般に有効である。このような接着剤の一例は、一般に火傷や外傷を覆うために使用される薄い(5mm)通気性接着剤である、Tagadermブランドの3M接着剤(部品番号9841)である。他の例は、更に厚い(25mm)接着剤である3M部品番号MSX5764などの心電図(EKG)接着剤である。シール要素140は、真空漏れが無いように締め付けられなければならない。
【0041】
一実施形態において、シール要素140は、薄い弾性のない可撓性材料であってもよい裏地を有している。裏地は、接着剤を支持すると共に、ガスプレナムが加圧されるときに接着剤が開口部112から引き離されないようにする。また、裏地は、接着剤が四肢130の形状及び開口部120の形状の両方に適合できるようにする。更に、裏地は、接着剤が他の表面に付着することを防止する。最大で約10mmの厚さの市販のポリエチレンが裏地に使用されてもよい。約10mmよりも厚いポリエチレンは、自身が重なる能力及び隙間を埋める能力を制限する場合がある。また、裏地は、薄い弾性のない可撓性材料へと製作されてもよい任意のポリマーを含んでいてもよい。一実施形態において、シール要素140は、それを本体要素110及び四肢130に対して取り付けることができるように、2つの対向する接着面上に接着剤が配置された裏地を含む。例えば、3M EKG接着剤製品MSX 5764は、接着剤の複数の層間に支持的な裏地を有している。裏地の複数の層は、シール要素140のための支持を行なうために使用することもできる。
【0042】
装置の開口部112は、シール要素140が覆わなければならない寸法差を最小にするために、患者の四肢のサイズに近いことが好ましい。足のサイズなど、四肢寸法の範囲に対応する最も小さい開口部サイズが好ましい。シール要素140は、一般に、小柄な成人のサイズから大柄な成人の様々なサイズに至る四肢サイズに対応するように異なるサイズをなすことができる。例えば、更に幅広い範囲の足サイズに対応するために、複数の開口部サイズ、例えば小、中、大のサイズが使用されてもよい。
【0043】
代替的に、開口部112は、力を更に最小にして、シール要素140によるシールプロセスを更に簡単にするために、血流を妨げることなく四肢130のサイズ範囲内で収縮するようになっていてもよい。例えば、開口部112を四肢130に対して締め付けるために1本以上の紐が使用されてもよい。他の実施形態では、装置100の開口部112を取り囲み、四肢130の周囲で開口部112を固定するために、特に、外部バックル、マジックテープ(Velcro fasteners)及びストラップが使用されてもよい。
【0044】
また、本体要素110の1つ以上の部分が透明材料から形成されてもよく、それにより、装置の使用中に装置の機能及び四肢の状態が監視されてもよい。他の実施形態において、本体要素110は、装置110の中に組み立てられるべき二つ以上の本体部分に分けられて、マジックテープ(Velcro fasteners)やスナップなどの1つ以上の締結ユニット(例えば図9の装置900)により固定されてもよい。
【0045】
装置100は制御システム164を更に含み、制御システム164は、装置100の様々な部品に接続されるコントローラ160を収容しており、1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bに接続される1つ以上の流体ライン(例えば、流体供給ライン124A、124B、流体戻りライン122A、122B)に接続される流体源161と、1つ以上の圧力ポートに接続されるポンプ163及び圧力センサ162とを含む。一実施形態において、ポンプ163は、ガスプレナム172を加圧及び減圧するようになっている機械ポンプ又はガス源(例えば、ガスシリンダ)である。コントローラ160は装置100によって果たされるプロセス及び機能を調整するようになっていてもよく、特に、熱交換ユニット120A、120Bに対する流入・流出量を調整すること、熱交換ユニット120A、120Bの温度を調節すること、1つ以上の圧力センサ162を介して1つ以上のガスプレナム172内の圧力レベルを監視すること及び内部に受けられた四肢130の温度を監視することを含む。
【0046】
一実施形態において、本明細書に記載された装置は使用中センサを含んでいてもよく、この使用中センサは、1つ以上のガスプレナム172に接続される圧力センサ162又は圧力スイッチ(図示せず)を使用することにより、装置が使用中であることを示す。また、使用中センサ及び/又はコントローラ160は、装置が使用された回数を示してもよい。
【0047】
一実施形態において、制御システム164は、患者の温度制御を高めるために使用される。したがって、作動時、ポンプ163は、制御コントローラ160及び圧力センサ162と共に、1つ以上のガスプレナム172に流体を供給するようになっており、それにより、圧力を約3mmHg〜約20mmHgの範囲で印加して調整し、四肢の血液かん流を高めることができる。例えば、圧力を約10mmHg±2mmHgなどのプラス圧力レベルに調整することができる。一実施形態では、コントローラ160を使用して、熱交換ユニット120A、120Bの温度を流体源161を用いて制御するとともに、1つ以上のガスプレナム172内の圧力をポンプ163及び圧力センサ162を用いて制御し、それにより、四肢130に加えられる力及び温度を積極的に制御し、患者の温度制御及び血液潅流を高めることが望ましい。他の実施形態では、四肢130に対して連続的に圧縮力を加えて患者の身体にわたる血液の圧送を助けるために、制御システム164が使用されてもよい。
【0048】
図2Aは、上側本体要素110Aと下側本体要素110Bとに分割されて示される本体要素110を有する、図1に示される装置100の分解図であり、その両方とも押し潰すことができる曲げ易い材料から形成される。図示のように、各本体要素110A、110Bはガスプレナム172A、172Bをそれぞれ含んでいてもよい。流体供給ポート174、176は、ポンプ163(図1)を用いることにより空気、ガス等を本体要素110A、110B内へ供給するために、ガスプレナム172A、172Bに接続するようになっている。一実施形態において、本体要素110A、110Bは、シール領域140Bで互いに結合されて空間150を形成する、個別に形成された要素であり、空間150内には、通常の作動中に、四肢が配置される。本体要素110A、110B間のシール領域140Bで形成される結合は、RF溶接、熱シール、糊付け、ボンディング又は本体要素110を形成するために用いられる材料(例えば、ウレタン材料、ゴム、エラストマー材料、高分子材料、複合材料)を結合するべく使用される他の技術によって形成されてもよい。装置100を四肢上の所望の位置に保持するために、本体要素110A、110B上の適切な場所に1つ以上のシール要素140Aが設けられてもよい。
【0049】
一実施形態では、図2Bに示されるように、各ガスプレナム172A、172Bはそれぞれ、押し潰すことができる曲げ易い材料からなる2つの層(例えば、層231、232)を互いに結合するか、シールして複合要素230を形成することにより形成される。図2Bは、本発明の一実施形態に係るガスプレナム172A、172Bの一部の部分分解断面図である。形成されたガスプレナム172A、172Bはそれぞれ、結合されてシールされた層(例えば、層231、232)間に流体プレナム233が形成されており、この流体プレナム233により、ポンプ163によって供給される流体は、流体プレナム233内の空間に入ってこれを加圧することができる。層231及び層232は、ヒートシール、糊付け又は他の従来の柔軟層結合技術の使用によってシールすることができ(例えば、シール234)、それにより、囲繞されてシールされた流体プレナム233が形成される。その後、ヒートシール、糊付け又は他の従来の技術を使用してシール領域235で2つ以上の複合要素230を互いに結合し(図2Bの「A」参照)、それにより、四肢130を内部に配置できる空間150を形成することができる。使用時、ポンプ163は流体を供給するために用いられ、いずれかのガスプレナム172A、172Bに形成された流体プレナム233のうちの少なくとも一方を加圧するとともに、影響が及ぼされたガスプレナム中の層232を拡張させることにより、ガスプレナム172A,162B間に形成された空間150内に配置される哺乳類の四肢に対して圧力を加える。層231、232は、押し潰すことができる曲げ易い材料から構成されてもよく、特にウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル、ゴム、エラストマー、高分子材料、複合材料を含むがこれらに限定されない。ガスプレナムを形成するために使用される押し潰すことができる曲げ易い材料の厚さは、ガスプレナムが約1mmHg〜約15mmHgのレベルまで加圧されるときに加圧状態を維持できさえすれば制限されない。例えば、空間150内に配置された四肢130の部分の形状及びサイズに柔軟に適合するために、約0.5ミル〜約20ミルの厚さ(例えば、約1.5ミル〜約12ミル)を有するウレタン材料を使用することができる。
【0050】
一実施形態において、熱交換ユニット120A、120Bは、本体要素110A、110Bの少なくとも1つの表面又は側面上に取り外し可能に取り付けられる。熱交換ユニット120A、120Bの対向面は、空間150内に配置された四肢と熱交換を行なうために、哺乳類の四肢と効率的に且つ快適に接触するように設けられており設計されている。作動時、本体要素110A、110B、熱交換ユニット120A、120Bは、哺乳類の四肢の一部を空間150内に受けるように組み立てられる。一実施形態では、1つ以上の熱交換ユニットを装置内で予め組み立てることができる。他の実施形態では、1つ以上の熱交換ユニットを使用前に装置へと組み立てることができる。
【0051】
図3A〜3Bは、熱交換ユニット120A、120Bの一実施形態を示しており、この熱交換ユニットは、柔軟材料からなる2つの層を使用して形成され、縁部領域335において、RF溶接、熱シール、糊付け又は他の結合プロセスを使用することによりシールされて、シールされた熱交換本体346を形成する。図3Aは、本発明の一実施形態に係る熱交換ユニット120の一例を示している。熱交換体ユニット120は、熱交換本体346を含む。熱交換本体346の一方の面320は、本体要素110のガスプレナム172から及ぼされる加圧圧縮力を受けるために設けられている。熱交換本体346の他方の面310は、四肢の一部と接触するために設けられており、複数の熱接触ドーム348を含んでいる。
【0052】
熱交換本体346は、入口ポート344及び出口ポート343を有していてもよく、これらは、流体源161と流体連通しており、また、それぞれ流体戻しライン122及び流体供給ライン124と流体連通する。したがって、柔軟材料341の2つの層間に形成される領域は、流体源161から供給される熱流動媒体を受けた(矢印A1参照)後に排出する(矢印A3参照)ことができる流体プレナムとして使用される(図3B)。一実施形態では、入口ポート344に供給される流体と出口ポート343に供給される流体とを分離するため、したがって、熱交換流体が流体プレナムを通じて所望の経路を辿ることができるようにして熱伝達プロセスを最適化し及び/又は熱伝達プロセスの効率を高めるために、熱交換ユニット内に分離特徴部336が形成される。一例において、流体流路は矢印A1,A2及びA3を順次に辿る。分離特徴部336は、RF溶接、熱シール、糊付け、又は、柔軟材料341の2つの層を互いに結合するための他の結合プロセスによって、シールされた熱交換本体346に形成することができる。一実施形態において、熱交換ユニット120は、RF溶接又は熱シール技術によって形成されて組み立てられる。他の実施形態では、熱交換ユニット120が射出成形によって形成されて組み立てられてもよい。一実施形態において、図3A〜3Bに示される熱交換ユニット120は、曲げ易い材料から形成されており、特にウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ(塩化ビニル)、ゴム、エラストマー、高分子材料、複合材料を含むがこれらに限定されない。一実施形態では、熱交換ユニット120をRF溶接によって形成して組み立てることができる。他の実施形態では、熱交換ユニット120が射出成形によって形成されて組み立てられてもよい。漏れの無い可撓性の熱交換ユニットを提供するべく熱交換ユニットを設計して製造する可能な方法は多く存在する。
【0053】
一実施形態において、シールされた熱交換本体346には、柔軟材料341の層間に、RF溶接、熱シール、糊付け、又は、他の結合プロセスによって複数のドーム348が形成され、それにより、シールされた熱交換本体346の内部領域に熱交換流体が供給されるときに拡張しない構造が形成される。各熱接触ドーム348は、四肢と直接に接触される熱接触面347を含んでいる。熱接触面347の直径及びその形状又はサイズは変えることができ、それにより、熱接触面347の全体の総面積を最大まで増大することができる。熱交換ユニット120は、熱交換ユニット120の熱交換本体346を通じて熱流動媒体を循環させるために、熱流体源に接続された流体供給ライン124及び流体戻しライン122を更に含んでもよい。
【0054】
一実施形態において、熱接触ドーム348は、熱交換ユニット120における点又は領域であり、この場合には、熱交換ユニット120を通じた流路(例えば、矢印A2)に制約又は障害を形成するために、柔軟材料341の層が互いに結合又は溶接される。流路に障害物の配置を調整することにより、熱交換ユニット120を通じて流れる流体と患者の四肢との間の熱交換を高めることができると考えられる。一実施形態において、熱交換ユニット120を通じた流量は、四肢と接触する柔軟材料341と流れる流体との間での熱伝達を最大にするために、それが実質的に乱流となるように制御される。一例では、熱交換ユニット120内で乱流を得るために、毎分1リットルの43℃の水の流れが約0.060平方インチ(38.7mm2)の平均面積にわたって供給される。平均面積は、一般に、縁部領域335、分離特徴部336の間に形成される領域及び柔軟材料341の層間に形成される空間で測定される断面積である。この構成において、熱接触ドーム348は、実際には、柔軟材料341の層に形成される凹部であるが、熱接触ドーム348と患者の四肢との間に位置される柔軟材料341の領域間で十分な熱接触を得ることができると考えられる。柔軟材料341と患者の四肢との間で等しい均一な接触が形成されるようにして、熱交換ユニット120と患者の四肢との間で十分な熱交換が形成されるようにすることが望ましい。
【0055】
図3Bは、最適化された空間的関係を成して配置された複数の熱接触ドーム348を有する熱交換ユニット120の一例を示している。少なくとも3つの熱接触ドーム348間で形成される角度αを含むように熱接触ドーム34が配置されると最適な熱交換を得ることができることが分かった。角度αは、30°〜約75°の範囲に最適化することができ、好ましくは約45°である。一例において、各熱接触ドーム348間の最も近い隣接間隔は約8mm〜約9mmであり、また、縁部領域335と分離特徴部336との間の距離は約70mm〜約80mmである。
【0056】
一態様においては、装置100の作動中に最大の熱交換が起こるように熱交換ユニット120を設計することが望ましい。
【0057】
一実施形態において、熱接触ドーム348は、四肢に対する良好な熱接触及び物理接触を行なうために、個別の硬質材料、例えば金属、導電プラスチック、又は、他の類似の材料から形成される。熱接触ドーム348の材料は、高い熱伝導率、好ましくは熱交換本体346の材料よりもかなり高い熱伝導率を与える材料であってもよい。例えば、熱接触ドーム348は、アルミニウムから形成されてもよく、熱交換本体346に対して取り付けられてもよい。アルミニウムから形成されるドームは、プラスチック材料又はゴム材料よりも少なくとも400倍高い熱伝導率を与えるであろう。高導電材料からなる熱接触ドームを有する典型的な熱交換ユニットの一例は、参照により本明細書に組み入れられる2007年11月10日付けに出願された同一出願人による米国特許出願第11/870,780号(代理人整理番号#DYNA0007)明細書に更に記載されている。しかしながら、いくつかの場合において、内部流体流路を形成するために互いに結合される材料の2つ以上の層から製造される熱交換ユニットは、熱接触を殆ど行なわない不均一な表面又はでこぼこの表面をもたらし、それにより、最大熱伝達のために必要な表面積が減少される。また、例えばポリウレタンなどの熱交換本体346のための材料は、一般に、熱伝達にとって良好な導体でなくてもよい。したがって、熱交換本体346は、大きな総接触面積をもたらす平坦で均一な四肢への接触面を設けることができるように1つ以上の裏地シートによって覆われてもよい。また、熱交換ユニット120と四肢との間で高い熱伝導率を与えるために、裏地シートを熱伝導率が高い材料から形成することができる。例えば、裏地は、薄い金属シート、例えばアルミニウム(箔のような)シート又は他の金属シートから形成されてもよい。一般に、アルミニウム又は他の金属材料は、プラスチック又はゴムよりも高い熱伝導率、例えば少なくとも400倍高い熱伝導率を与え得る。
【0058】
代替的に、1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bは、電源に接続された1つ以上の電気ワイヤを有する電気パッドであってもよい。例えば、電源が低電圧DC電流電源であってもよい。また、1つ以上の熱交換ユニットは、温度を監視するための熱電対と、電気パッドの温度が安全レベルを通り過ぎるときに電力を自動的に遮断するためのサーモスイッチとを含んでいてもよい。
【0059】
本明細書に記載される本発明の実施形態に係る熱交換ユニットは、一般に、哺乳類の四肢の体温を暖め、冷やし、及び/又は、調整するために、増大した表面積を有する熱交換面を与える。熱交換ユニットは、様々な手段によって外肢の血流を調整するために使用できる。例えば、約0℃〜10℃の手に対して温度を加えると、ハンターや漁師が極寒中に素手で作業する間に凍傷にならないようにする「ハンティング反応」と呼ばれる現象に起因して平均血流量を増大させることができる。異なる個人は、手に加えられる寒さに対して異なる反応をし、また、いくつかの周知の実験室試験では、インド亜大陸出身の人の手に対して寒さを加えると、平均血流量が増大するが、典型的なエスキモー人では、ほぼ同じ処置を行なっても、平均血流量が増大しなかった。
【0060】
いくつかの場合において、暖かさの知覚は、血流量を高めるのに十分である。例えば、23℃(室温)のウォータパッドは、さもなければ暖かさを感じる正常温度の被検者の脚と密に接触すると、冷たく感じ、また、パッドの「COOLNESS(冷たさ)」は、ある程度まで脚の血流量を減少させ得る。しかしながら、同じ人の脚が長い期間にわたって5℃の冷たさに晒される場合、この同じ23℃(室温)のウォータパッドは相対的に暖かく感じ、それにより、実際には、同じ脚の血流量を増大させることができる。したがって、温度血流量関係は、感じられる暖かさ及び加えられる温度の両方によって決定される。深部体温を越える熱を加えても血流量を増大させることができる。本明細書中で説明される本発明の1つ以上の実施形態の1つの望ましい特徴は、患者の深部の体温を制御するプロセス中に患者によって感じられる暖かさの感覚及び患者の快適さが従来技術の構造よりも増大されることである。一実施形態において、快適さ及び暖かさの感覚の増大は、例えば患者の四肢を少なくとも部分的に囲繞するなどの隔離作用により、また、患者の四肢を温度制御された熱交換ユニットと密に接触して配置することにより作り出されると考えられる。
【0061】
また、熱交換ユニット120は、哺乳類の四肢の温度を監視して温度制御フィードバックを行なうために1つ以上の温度センサ及び熱電対を含んでいてもよい。例えば、深部体温を監視してコントローラ160に対して深部体温フィードバックを与えるために、哺乳類の他の身体部分、例えば外耳道などに対して鼓膜温度プローブが挿入されてもよい。
【0062】
図4Aは装置400の一例の斜視図である。図4B〜4Cは装置400の側面図である。装置400は、図4A〜4Cに示されるように、柔軟な1つ以上のガスプレナム172A、172B及び熱交換ユニット120A、120Bを展開させてそれらの間に形成される空間150内に哺乳類の四肢をより容易に位置させることができるように装置400の一方側だけが互いに結合されていることを除き、図1〜3Bに示される装置100と同様である。装置400は、哺乳類の四肢を内部に挿入できる空間150を設けるために、押し潰すことができる曲げ易い材料から形成される1つの本体要素110を含んでいる。本体要素110は、一般に、平坦であり、又は最小の空間や体積を占めており、それにより、装置400を都合良く折り畳み、保管し、又は出荷することができる。一実施形態において、本体要素110は、2つ以上のガスプレナム172A、172B間に形成されるシール領域140Bにおいて装置400の一方側を結合することにより形成することができる。
【0063】
装置400は、場合により、熱交換ユニット120A、120Bと、流体供給ライン124A、124Bと、流体戻しライン122A、122Bとを含んでいる。四肢が空間150内に配置されると、ガスプレナム172Aに取り付けられたシール要素140Aとガスプレナム172Bに取り付けられたシール要素140Aとを互いに一致させることにより装置をシールすることができる。流体供給ポート174、176、流体供給ライン124A、124B、流体戻しライン122A、122Bは、様々な流体源、ガス源及び/又はポンプを都合良く接続するために場合により、マニホールド114に対して接続することができる。
【0064】
図5Aは、四肢130(図5B参照)を受けるために「開放」位置にある本発明の一実施形態に係る他の装置500の部分断面斜視図である。図5Bは、内部に配置された四肢130の一部を囲繞するように構成される本発明の一実施形態に係る装置500を示している。装置500は、開口部112を形成して哺乳類の四肢130の一部を囲むように折り畳み及び/又はまくり上げて下ろすことができる本体要素510を含んでいる。本体要素510は、装置100の本体要素110と同じ材料から構成されてもよい。また、装置500は、1つ以上のガスプレナム172A、172Bと、内部に熱交換流動媒体を収容できる1つ以上の熱交換ユニット120A及び120B(図4Aには1つだけが示されている)とを更に含んでいてもよい。
【0065】
図5Bを参照すると、四肢130が装置500内で囲繞される際に形成される開口部112のサイズは、シール要素542を使用することによりシールされてもよい。シール要素の材料は、シール要素140と同じ材料であってもよい。
【0066】
作動時、装置500は、熱交換ユニット120A、120B及び四肢130を覆って囲繞するために、矢印Cの方向にしたがって展開されて折り畳まれる。図5Bは囲繞形態を成す装置500を示している。一実施形態では、四肢130を取り囲むプロセス中に、1つ以上の囲繞クリップ552によってガスプレナム172A、172Bの縁部550同士が互いに押し付けられ、内部に挿入される四肢130の部分のために開口部112を形成することができる。囲繞クリップ552を使用して縁部550を囲繞できる機構は、特に、ファスナ、ジッパ、スナップ、ヒドロゲルコーティングされたタブ、従来のテープ、ボタン、及び、フック/ループ型システムを含んでいてもよい。例えば、ガスプレナム172A、172Bの縁部550は、囲繞クリップ552によって縁部550をシールしてしっかりスナップ固定できるように補強されてもよい。また、マニホールド114を使用して、コントローラ160、流体源161、圧力センサ162及び/又はポンプ163に接続される様々な流体ライン及び圧力ラインを一緒に束ねることができる(図1)。
【0067】
図6Aは、折り畳まれることもなく、又は本体要素610によって囲繞されることもない典型的な下肢装置の斜視図である。より具体的には、図6Aは、伝熱を制御して人の足に対して圧力を加えることにより人間の体温を制御するために使用される装置600の一例の斜視図である。図6Bは、本発明の1つ以上の実施形態にしたがって折り畳まれ、囲繞され、シールされる典型的な下肢装置の斜視図である。装置600は、図6Aに示されるように平らに横たえて、丸め及び/又は展開することができる単一の本体要素610を含んでいてもよい。代替的に、装置600が複数の本体要素610を含んでいてもよい。装置600は、哺乳類の下肢を内部に収容するための開口部112を含んでいる。また、装置600は、複数のガスプレナム172A、172Bへと形成するための本体要素610も含んでいる。加圧圧縮力を四肢に対して加えるために、圧力印加ガスプレナム672内へガス又は空気を供給することができる。
【0068】
また、装置600は、熱交換流動媒体を内部に収容できる1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bを更に含んでいる。本体要素610及び熱交換ユニット120A、120Bは、哺乳類の四肢130の一部を囲繞するために例えば矢印Dの方向を通って折り畳むことができる。作動時、装置600は、ガスプレナム672A、672B及び熱交換ユニット120A、120Bの位置を固定し且つ四肢130のサイズにしたがって調整することにより折り畳まれる。ガスプレナム672A、672B及び熱交換ユニット120A、120B及び本体要素610は、本体要素610及び熱交換ユニット120A、120B上の1つ以上の位置に配置された1つ以上の囲繞クリップ652によって、適切に折り畳み、固定し、及び/又は、調整することができる。1つ以上の囲繞クリップ652は、例えば、脚が内部に位置される前又は後において、図6A及び6Bに示されるようにベルクロ型ファスナであってもよく、又は、他の適したクリップ、ファスナ、ジッパ、スナップ、タブ、トング、接着剤、ヒドロゲルコーティングされたタブ、従来のテープ、ボタン、閉塞カフス、フック/ループ型システムなどであってもよい。続いて、その後、四肢130が配置される開口部112(図6B参照)を形成するために、本体要素610をガスプレナム672A、672B及び熱交換ユニット120A、120B上にわたって位置させることができる。開口部112のサイズがシール要素640によってシールされてもよい(図6A)。
【0069】
図1〜3Bに示されるガスプレナム172A、172Bに類似するガスプレナム672A、672Bは、空気又はガスで満たされるべく拡張することができる。本体要素610は、本体要素110と同じ押し潰すことができる曲げ易い材料、例えば内部に位置される四肢130を見ることができるようにする透明材料又は半透明材料から構成されてもよい。本体要素610は、それが圧力印加ガスプレナム672A、672Bへと延ばせるように押し潰すことができ且つ曲げ易くてもよい。したがって、本体要素610及び熱交換ユニット120A、120Bの材料は、下肢の形状へと適合し且つ下肢の一部を強固に取り囲むために曲げ易く且つ容易に押し潰すことができる可撓性材料から形成される。熱交換ユニット120A、120B及び本体要素610のための材料は、熱交換ユニット120A、120Bと下肢との間の表面接触を高めるために押し潰すことができる曲げ易い材料から構成される。材料は、加圧圧縮力下で拡張又は圧縮を維持してもよい。したがって、下肢の表面と熱交換ユニット120A、120Bとの間及び/又は本体要素610との間で良好な表面接触が成され、四肢を装置600内に受けるための空間150が最小限に抑えられる。
【0070】
また、汎用ポート625(図6B)は、様々な流体ポート及び圧力ポートを一緒に束ねるために使用することができるとともに、コントローラ160、流体源161、圧力センサ162及び/又はポンプ163に対して接続することができる。輸送を容易にし且つ接続を容易にするために、1つ以上のチューブ、ライン及びポートを一緒に束ねて、熱調節流体源、真空ポンプ、及び/又は、制御ユニット(図示せず)に接続するためのマニホールド114に対して接続することができる。図6A及び6Bに示されるように、マニホールドは、足のつま先部分の近傍に位置されるのが都合良い。
【0071】
図6Bを参照すると、一実施形態において、本体要素610及び/又は熱交換ユニット120A、120Bは、装置600の使用中に四肢130の動きを許容する1つ以上の解放領域623を含んでいる。熱交換ユニット120A、120Bにおける解放領域623の配置は、四肢130の所望の領域のみへ熱を伝えることができるように意図的に位置されてもよい。特定の四肢の特定の領域との熱交換が不快になり得ることが分かっている。例えば、足の踵領域に対して熱を供給することが一部の被検者にとって不快な経験となり得ることが分かっており、したがって、図6Bに示されるように、解放領域623を踵に形成するために熱交換ユニット120A、120Bの踵領域が除去されている。一実施形態では、プロセスが不快になるのを取り除き或いは防止するために、踵領域の近傍にある熱交換ユニット120A、120Bの熱伝達部が除去される。
【0072】
ガスプレナム672A、672Bを形成するために使用される押し潰すことができる曲げ易い材料の厚さは、ガスプレナム672A、672Bに約1psi〜約15psiの圧力レベルで流体が満たされるときにそれが加圧状態を維持できる限り、制限されない。ガスプレナム672A、672Bの厚さは、装置600が使用されるときにそれが加圧状態を維持できさえすれば制限されず、例えば、内部に収容される四肢130の部分の形状及びサイズに柔軟にに適合するために、(約1.5ミル〜約12ミルなどの)約0.5ミル〜約20ミルの厚さを使用できる。一例では、内部に収容される四肢130の部分の形状及びサイズに柔軟に適合するために、約1.5ミル〜約12ミルの厚さを有するウレタン材料を使用できる。
【0073】
熱交換ユニット120A、120Bは、内部に受けられる四肢130のための熱交換を行なうために装置600内に取り外し不能に或いは取り外し可能に配置することができる。熱交換ユニット120A、120Bの一例が図3A〜3Bに示されている。加熱流体、加熱空気、冷却流体、又は、冷却空気などの熱交換流動媒体は、1つ以上の流体供給ライン及び1つ以上の流体戻しラインを介して、流体源(図示せず)から熱交換ユニット120A、120Bに供給し、及び熱交換ユニット120A、120Bを出ることができる。例えば、熱交換ユニット120A、120Bは、加熱水が流通供給される水加熱パッドであってもよい。代替的に、熱交換ユニットは、いずれも参照することにより本明細書に組み入れられる10/11/2007に出願された同一出願人による米国特許出願第11/870,780号(代理人整理番号#DYNA0007)明細書及び2006年8月2日に出願された米国仮特許出願第60/821,201号明細書に詳しく記載された電気パッドを含んでいてもよい。
【0074】
装置の様々な部品をシールし且つ下肢が開口部112を通じて空間150内に配置されるときに下肢に対して圧力を加えることができるように下肢の一部を固定するために、シール要素が使用されてもよい。シール要素640は、哺乳類の下肢の一部のサイズにしたがって開口部112をシールするために使用されてもよい。シール要素640は、シール要素140と同じ材料から形成されてもよく、開口部112に対して取り付けるか、又は取り外し可能に取り付けることができる。
【0075】
図6Cは他の典型的な下肢装置600の斜視図である。図6Dは、図6Cに示される装置600の分解斜視図である。装置600は、複数の圧力印加ガスプレナム672A、672Bを有する本体要素610A及び本体要素610Bを含んでいてもよい。本体要素610A,610Bは、一般に、平坦であるか、又は最小の空間や体積を占めており、それにより、装置600を容易に都合良く折り畳み、保管し、又は出荷することができる。
【0076】
一実施形態において、本体要素610A,610Bは、本体要素610A,610B間に形成される空間150内に取り付けられるか、又は位置される1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bも含んでいる。熱交換ユニット120A、120Bは、本体要素610A,610B上に位置されると、哺乳類の下肢に対して圧力を加えることができるように流体がガスプレナム672A、672B内へ供給される際に、下肢の一部(例えば、人間の足及びふくらはぎ)と接触するようになっている。熱交換ユニット120A、120Bは、ガスプレナム672A、672Bによって四肢に対して圧縮力が加えられる際に熱を効率的に交換できるように下肢の一部と直接に接触するための複数の熱接触ドーム648を含んでいる。下肢に対して加えられる圧縮力は、ガスプレナム672A、672B内に供給される流体の圧力レベルを変えることにより調整することができる。一般に、約5mmHg〜約25mmHgの圧力レベルを加えることができる。空間150内に受けられる下肢の温度は、熱交換ユニット120A、120B内へ供給される熱流体の温度を調整することにより増加、低減又は維持することができる。
【0077】
加熱流体、加熱空気、冷却流体、又は、冷却空気などの熱交換流動媒体は、1つ以上の流体供給ライン624A,624B及び1つ以上の流体戻しライン622A,622Bを介して流体源(図示せず)から熱交換ユニット120A、120Bに供給し、及び熱交換ユニット120A、120Bを出ることができる。マニホールド114は、マニホールド114上に位置された供給ライン630及び供給ライン632を用いて、1つ以上の流体供給ライン624A,624B及び1つ以上の流体戻しライン622A,622Bに対して接続されてもよい。マニホールドは、マニホールド114上の流体ポート177A,177Bを複数の供給ライン630、供給ライン632と熱交換ユニット120A、120Bの流体供給ライン624A,624B及び流体戻しライン622A,622Bとに対して取り付けて接続することができるように、内部流体チャンネルを含んでいてもよい。また、マニホールド114は、1つ以上のガスライン634,636を介して圧力印加ガスプレナム672A、672B内へガス又は空気を供給するために1つ以上のガス供給ラインに対して接続されていてもよい。
【0078】
装置の様々な部品をシールし且つ四肢が開口部112を通じて空間150内に配置されるときに四肢の一部を固定するために、複数の囲繞クリップ652が使用されてもよい。囲繞クリップ652は、例えば、下肢、足又は脚が内部に位置される前又は後において、ベルクロ型ファスナであってもよく、又は、他の適したクリップ、ファスナ、ジッパ、スナップ、タブ、トング、接着剤、ベルクロ、ボタン、閉塞カフス、フック/ループ型システムなどであってもよい。
【0079】
装置600の作動時、熱交換ユニット120A、120Bが下肢の少なくとも一部と接触できるように、本体要素610A,610B間に形成された空間150内に下肢が配置される。その後、所望の嵌め合いを成すように囲繞クリップ652を用いて本体要素610A,610Bを下肢の周囲に固定することができる。その後、ガスプレナム672A、672Bを加圧して、熱的に制御された熱交換ユニット120A、120Bを下肢の表面に対して押し付け、それにより、下肢と温度制御された熱交換ユニット120A、120Bとの熱交換を行なうことにより、患者の体温を制御することができる。装置600は、哺乳類の足、脚、肢などの異なるサイズへと延ばされてもよい。例えば、装置600は、1つ以上の熱交換ユニット120が取り付けられた1つ以上の本体要素610を含んでいてもよい。例えば、圧力印加ガスプレナムを有する上側本体要素が脚の足部に取り付けられ、圧力印加ガスプレナムを有する下側本体要素が脚の膝下又はその近傍のふくらはぎ部分に取り付けられる。代替的に、装置600の1つの本体要素を哺乳類の全脚部のために設けることができる。
【0080】
図7は、本発明の1つ以上の実施形態に係る装置700の内外の様々な部品に対して様々なガス、流体ラインを接続するために使用される1つ以上の取付具を有するマニホールド714の一例を示している。マニホールド714は、本体要素及び熱交換ユニットにおける1つ以上の開口部を通じて、装置の本体要素、ガスプレナム、熱交換ユニットに対して取り付けることができる。図7は、装置100,400〜600及び800〜1000に関連して本明細書中で説明される様々な部品を含む装置700を概略的に示す部分断面図であり、マニホールド714は、一般に、本明細書中で説明される任意の構造において有用である。一態様において、マニホールド14は、前述したマニホールド114,625の代わりに使用される。
【0081】
マニホールド714は、一般に、圧力ポート716、718などの1つ以上の流体ポート又は圧力ポートと、流体供給ライン724と、流体戻しライン722とを含んでおり、これらは、マニホールド本体715に対して接続するか、又は射出成形、熱積層(heat stacking)、接着剤又は他の製造方法を使用して一体的に形成することができる。したがって、熱交換ユニット、ガスプレナム、流体パッド、他の加熱部品、電気パッド、真空ライン、圧力検出ラインなどを接続するための接続点を形成するために急速接続型取付具又はコネクタを組み込むことができる。例えば、マニホールド714は、ミネソタ州のセントポールにあるColder Products CompanyのCPCに類似する急速接続タイプのコネクタなどのコネクタ730、732、734、736を含んでいてもよい。作動時、装置700内に形成される真空空間は、装置の外部の熱伝達流体及び/又は空気がプロセスの動作に影響を与えないように丈夫で気密なシールを必要とする。マニホールド714は、それが低コストであることから射出成形プラスチック材料から形成することができるか、又は任意の他の適した材料から形成することができる。シールは、一般に、ポンプ163を用いて装置700のガスプレナム172A、172B内が所望の圧力に達することができるように、マニホールド714(様々な1つ以上の流体ポート又は圧力ポート(例えば、参照符号716、718))と本体要素710(例えば、本体要素110、510に類似する)の間で形成される。本体要素710とマニホールド714の様々な部品との間で形成されるシールは、数例を挙げると、従来の接着剤、機械的な力、又は、Oリングを使用して作成することができる。
【0082】
図7に示されるように、マニホールド714は、流体供給ライン724を使用し、コネクタ732及び流体源161の流体供給ライン161Aと流体連通する1つ以上の流体供給取付具754及び従来のチューブ753を介して、図3A〜3Bに関連して説明した装置に類似する熱交換ユニット720A及び720Bの入口に接続されてもよい。熱交換ユニット720A,720Bの出口は、コネクタ730及び流体源161の戻し流体ライン161Bと流体連通する1つ以上の流体供給取付具752及び従来のチューブ755を介して流体戻しライン722に対して接続されている。
【0083】
一実施形態において、ガスプレナム172A、172Bの内部領域は、マニホールド714内に収容されたコネクタ734,736を含む圧力ポート716、718に接続されるポンプ163と、装置700の内部領域内に配置される取付具756,758とに対して接続されている。一実施形態において、装置700の本体要素内に形成されたガスプレナム172A、172Bは流体で周期的に満たされ、それにより、哺乳類の四肢の一部に対してベローズ状の動作及び/又は圧縮力を適時に加えることができる。
【0084】
装置700の作動中、手、前腕、足、脚、上肢、又は、下肢(図示せず)は、装置700の開口部712内に配置されて、1つ以上のガスプレナム172A、172Bと1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bとが取り付けられ且つマニホールド714が取り付けられた本体要素710内で囲繞される。代替的に、装置は、1つ以上の本体要素を折り畳んで丸めることによって組み立てられて1つ以上の囲繞クリップで囲繞される必要があってもよい。また、1つ以上の取り外し可能な熱交換ユニットは、装置内で予め組み立てられてもよく、四肢を装置内に配置する際に組み立てられてもよい。その後、内部領域713内に配置された四肢に対して装置を取り付けるために、シール要素740のシール部741が装置の開口部の周囲に巻き付けられる。
【0085】
一実施形態では、1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bに入る流体の温度を検出するために流体供給ライン161A内に流体検出アセンブリ760が配置されており、それにより、流体源161内に収容された加熱要素又は冷却要素をコントローラ160によって制御することができる。流体検出アセンブリ760は、一般に、本体762と、1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bに対して供給される流体と熱伝達状態にある1つ以上のセンサ761とを含んでいる。1つ以上のセンサ761は、サーミスタ、RTD、熱電対、又は、本体762及び流体供給ライン161Aを通じて流れる流体の温度を検出するために使用できる他の同様の装置であってもよい。一般的には、1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bに対して供給される流体の温度制御に対して環境が影響を与えないようにするために、1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bに対して可能な限り近接するように1つ以上のセンサ761を位置させることが望ましい。
【0086】
血流を増大させるプロセス及び哺乳類の体温制御の様々な態様を制御するため、コントローラ160は、処理シーケンスの全ての態様を制御するようになっている。一実施形態において、コントローラ160は、流体源161、ポンプ163、及び、装置700の全ての他の必要とされる要素を制御するようになっており、それにより、制御された圧力をガスプレナム172A、172Bによって四肢に対して供給できるとともに、制御された温度を1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bに対して供給して患者の体温を制御することができる。コントローラ160は、一般に、ユーザ及び/又は装置内の様々なセンサ(例えば、圧力センサ162、流体検出アセンブリ760)からの入力を受けるとともに、様々な入力及びコントローラのメモリに保持されるソフトウェア命令にしたがって部品を適切に制御するように構成されている。コントローラ160は、一般に、様々なプログラムを保持し、プログラムを処理し、必要なときにプログラムを実行するためにコントローラによって利用されるメモリ及びCPUを含んでいる。メモリは、CPUに接続されており、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フロッピディスク、ハードディスク、又は、任意の他の形態のデジタル記憶装置、局部記憶装置、リモート記憶装置など、容易に利用できるメモリのうちの1つ以上であってもよい。ソフトウェア命令及びデータは、CPUに命令するために、コード化してメモリ内に記憶させることができる。プロセッサを従来の様態でサポートするために、CPUには支援回路も接続されている。支援回路は、キャッシュ、電源、クロック回路、入力/出力回路、サブシステムなどを含んでおり、これらは当分野で周知である。コントローラ160によって読み取ることができるプログラム(又は、コンピュータ命令)は、どのタスクが装置内で実行できるのかを決定する。好ましくは、プログラムは、コントローラ160によって読み取ることができるソフトウェアであり、所定の規則及び入力データに基づいてプロセスを監視して制御するための命令を含んでいる。
【0087】
図8は、本発明の一実施形態に係る装置800の様々な部品に対して接続される制御システム864を有する制御アセンブリ801の一実施形態を示している。装置800及び制御システム864は、本明細書中で説明される装置(例えば、参照符号100、400〜1000)及び制御システム164と同様である。制御システム864は、一般に、装置800内で見出されるガスプレナムに対して供給される圧縮加圧力及び温度を調整するために必要とされる全ての電子機器及び機械部品を収容するコントローラ160を内部に有するコントローラモジュール860を含んでいる。この構成において、制御システム864は、一般に、例えば、ポンプ163、圧力センサ162、従来のチューブ824、流体源161、流量センサ852、流体検出アセンブリ760、及び、温度センサ810を含んでいる。温度センサ810は、一般に、血流量を増大させて患者の体温を制御するプロセスが行なわれている間に患者の体温を測定するために使用される装置である。患者の体温は、適切な従来の温度検出装置を使用して耳、口、皮膚上又は経直腸的に測定することができる。また、制御システム864は、特に、コントローラ160によって制御される、熱交換媒体ポンプ、ヒータ、クーラ、熱電対、加熱媒体ポンプ、真空及び温度のプロセス制御のための比例・積分・微分(PID)コントローラ、1つ以上の電源、ディスプレイパネル、アクチュエータ、コネクタ等を含んでいてもよい。制御システム864内の様々な要素の設定値及び電流読取値は、オペレータインタフェースを与えるディスプレイパネル(例えば、ライトディスプレイ、CRT)上に都合良く位置されてもよい。他の実施形態では、圧力制御装置及び温度制御装置が2つの異なるコントローラによって制御されてもよい。
【0088】
制御システム864は、温度センサや圧力センサなどの装置センサが故障し或いは接続が外れる場合に作動される装置停止機能を含む安全機能を与えてもよい。また、制御システム864は、装置の温度が正確に調整されない場合にアラーム回路又は警告信号を含んでいてもよい。ガスプレナム内の圧力が特定のレベルを超える場合にガスプレナムからガスを放出できるように、装置の圧力ループ内にリリーフバルブが設けられてもよい。
【0089】
一実施形態では、肢、脚、装置が取り付けられる他の四肢以外の哺乳類の部分の温度を測定するために温度プローブ862を設けることができる。他の実施形態では、深部体温読取値を供給するために、外耳道に対して温度センサ810として鼓膜を取り付けることができる。したがって、患者などの人間における基準温度を得ることができる。他のセンサは、患者の血流量、血圧及び心拍数を含んでいてもよい。これらのデータは、患者を正常な体温に維持して様々な熱的疾患から守る適切な患者の健康管理にとって重要である。装置内の皮膚の温度を測定して、身体部分が血管収縮状態又は血管拡張状態にあるかどうか又は皮膚の何の温度が2つの装置流体温度と比較されるのかを示すことができる。皮膚の温度は、熱電対、サーミスタ、熱流束及び他の測定装置のような異なる装置及び異なる手段によって測定することができる。また、血流量を測定してデータをコントローラ160に送ることもできる。
【0090】
図8に示されるように、装置800は、装置800内のガスプレナムに対して圧力を供給するために、ポート812及び圧力センサ戻しライン822を介してポンプ163(例えば、機械ポンプ)に対して接続することができる。圧力レベルを維持するとともに、ガスプレナム内の圧力レベルを正確に検出して読み取ることは重要である。より良い応答及び真空レベルのより正確な制御を行なうことができるように、マニホールド714(図7)内に圧力トランスデューサを配置することもできる。ポンプを制御する信号は、圧力トランスデューサから配線を通じてコントローラ160内の制御回路に送られる。データの更なるセット、例えばポンプによって四肢に対して加えられる圧力データは、評価を行うために圧力レベルを記録してデータをコントローラ160へ送るために、装置内に配置された一連の圧力センサによって測定することができる。その後、コントローラ160は、最高レベルの血流量を生成して必要に応じて身体の深部体温を高めるために、装置内の圧力及び温度のレベルを調整することができる。
【0091】
また、1つ以上の熱交換ユニット(例えば、図1における参照符号120A、120B)を内部に有する装置800は、熱交換媒体供給ライン842及び熱交換媒体戻しライン844を介して流体源161に接続されてもよい。また、熱交換媒体供給ライン842の内部を流れる熱交換媒体の流れは、流量センサ852及び/又は流体検出アセンブリ760によって監視して調整することができる。一実施形態において、流体源161は、内部に熱交換媒体861Cが存在する流体タンク861Aと、熱交換媒体861Cを装置800内に収容される1つ以上の熱交換ユニット(図示せず)に対して供給するために使用される機械ポンプ861Bと、ヒータアセンブリ861Fとを含んでいる。ヒータアセンブリ861Fは、加熱素子861Dと、加熱素子861D及び熱交換媒体861Cの温度を制御するために使用されるヒータコントローラ861Eとを含んでいてもよい。また、流体源のリザーバ内の流体レベルをオペレータに警告するために、低流体LEDが使用されてコントローラ160のフロントパネル上に表示されてもよい。流体レベルが低く且つより多くの流体が必要とされるときに信号を送るため、更なるセンサが流体リザーバに対して加えられる。更に、装置の手順又は単一の動作が完了する際に流体を流体パッドから戻す形態で従来の流体ポンプが作動できるようにする制御信号が存在してもよい。また、装置は、様々なチューブ及び流体ラインを通じて循環する加熱流体又は冷却流体のための温度センサを含んでいてもよい。また、本発明の熱交換ユニットは、哺乳類の四肢の温度を監視して温度制御フィードバックを行なうために、1つ以上の温度センサ及び熱電対を含んでいてもよい。
【0092】
本発明のこれらのライン及びポートは、コントローラ160に接続された同じ或いは異なる保護シース内に束ねられて、収容されて張力が解放されてもよい。また、ラインは、流体ライン、圧力ライン、電熱ライン、空気ラインなど、使用される各媒体毎に異なる囲繞体を用いて同じ又は異なるチューブセット内に収容されてもよい。
【0093】
一実施形態において、熱交換ユニットは、閉じられたループの構成で、熱交換媒体を供給する流体源161と結合される。例えば、熱交換ユニットは、閉じられた液体ループの構成で、コントローラモジュール860内に収容された流体源161内に収容される液体タンクと結合されてもよい。一実施形態において、流体源161内に収容された1つ以上の抵抗加熱素子(例えば、参照符号861D)及び/又は熱電装置は、タンク861A内に収容された熱交換媒体861Cを加熱し或いは冷却するために使用される。閉ループ構成は、一般に熱交換ユニットが熱交換媒体源から取り外される場合に起こる熱交換媒体の損失を最小限に抑えるため、オペレータのためのメンテナンス要件を減少させる。閉ループ構成によって、熱交換媒体源の汚染も最小限に抑えられる。水などの熱交換媒体の汚染は、熱交換媒体源に対して抗菌剤を加えることによって減少させることもできる。異なる実施形態において、熱交換媒体は液体又は気体であってもよい。実際には、熱交換媒体の流量は可能な限り高くなければならない。パッドを通じた流入温度及び流出温度が約1.0℃内でなければならないことが試験により分かった。また、特定の場合には、パッド流体温度が40℃を下回る場合には血流量が全く減少しないことが分かった。高い流量は良好な温度一貫性を可能にし、その結果、熱損失が少なくなり、良好な熱交換がなされる。熱交換ユニット及び熱交換媒体源を含む閉ループ構成では、システム全体の容積(例えば、0.75リットル)を用いると、多くの流量(例えば、毎分2リットル)が熱交換ユニットを通じて流れる(例えば、毎分0.35リットルの流量の2倍)。
【0094】
一実施形態において、流体源161内に収容される加熱素子861D及びヒータコントローラ861Eは、システム内の様々な部品に対する損傷及び/又は患者への負傷を防止するようになっている。この場合、危険な状態が制御アセンブリ801の使用中に起こらないようにするために、熱交換媒体861Cと熱を交換するために使用される加熱素子861Dには1つ以上の電圧又は電流制限装置が接続されている。一実施形態において、加熱素子861Dは、加熱素子861Dの温度が増大するにつれて加熱素子861Dの抵抗を減少させるプラス温度係数を有する材料を含んでいる。したがって、ヒータコントローラ861E内の電力供給素子及び加熱素子861Dの注意深い選択により、所望の加熱素子温度を達成できつつ装置に対する望ましくない損傷又は危険な状態が起こらないようにシステムを設計することができる。危険な状態は、ヒータコントローラ861Eによって供給される電圧又は電流を制限することにより加熱素子861Dによって生成される電力(例えば、電流×抵抗)制限に起因して加熱素子861Dによって達成できる最大温度を制限することより回避される。
【0095】
他の実施形態において、熱交換ユニット及び圧力供給ラインは、自動遮断機構を有する急速接続取付具などの作動取付具を使用してコントローラ160に対して接続されてもよい。自動遮断機構は、圧力供給ラインが外れると直ぐに圧力印加及び加熱媒体流れを中断させる。また、作動取付具によってオペレータが熱交換ユニットを交換できてもよい。また、装置の様々な使い捨て式の部品をそれぞれの使用後に取り外すことができるようにするため、様々な急速切断コネクタがコントローラ160に対して加えられてもよい。一般的には、温度制御プロセス及び/又は外科手術などの患者に対して実行される他の処置中に患者を自由に移動して位置決めすることができるように、必要に応じて装置800の1つ以上の部分を制御システム864の1つ以上の部品から分離できるようにすることが望ましい。前述したように、本明細書中で説明される1つ以上の実施形態の従来技術を超える1つの利点は、少なくとも単一の四肢の部分を使用して患者の深部の体温を調整できることである。
【0096】
前述した装置の実施形態は、哺乳類の1つ以上の四肢における血流量を増大させるとともに、熱的疾患を調整し及び/又は部静脈血栓症(CVT)を防止するために静脈内の血栓を減少させる方法を提供する。当該方法は、本発明の1つ以上の装置を哺乳類に対して与え、装置を使用して哺乳類の1つ以上の四肢の温度を調整することを含んでいる。その結果、哺乳類の四肢内の1つ以上の動静脈吻合(AVA)血管が拡張されて、AVA血管の収縮が減少され、それにより、1つ以上の四肢における血流量及び血液容量が増大されて、血流の血管壁接触時間が減少されるとともに、鬱血に起因する静脈内の血栓が減少される。四肢の任意の適した部分、好ましくは装置により血管拡張できる脈管構造を有する四肢は、装置内に配置されて装置内でシールされてもよい。患者の深部体温の効率的な制御は、高密度のAVAを有する四肢(例えば、手、足、腕)と熱を交換することによって向上させることができる。
【0097】
図1を参照すると、前述した装置100を使用するプロセスは、一般に、装置100の空間150内に四肢130を位置させることによって始まる。哺乳類の体温及び血流量を高めるプロセスが装置100に関連して説明されているが、この構成は本発明の範囲を限定しようとするものではない。なぜなら、本明細書に記載された任意の装置を用いてこのプロセスを実行できるからである。四肢130が装置100内で囲繞されると、流体供給ポート176に対して圧力が加えられ、それにより、1つ以上のガスプレナム内の圧力が増大され、1つ以上のガスプレナムによって供給される接触圧に四肢130が晒される。加えられた圧力は、例えば、(約10mmHg〜約14mmHgなどの)約0〜約25mmHgの範囲であってもよい。同時に又は連続して、温度制御された熱交換媒体が、装置100の空間150内に位置される1つ以上の熱交換ユニット120A、120B内へ導入される。流体源161から供給される流体の流量は一定であってもよく、また、流量は、熱交換ユニット120A、120B内で所望の温度を達成できるように維持しさえすれば良い。
【0098】
一実施形態において、コントローラ160は、例えば約30分であってもよい処置の継続時間にわたってガスプレナム内の圧力及び熱交換媒体を管理する。継続時間は、処置される四肢のサイズ及び四肢の温度に応じて更に長くてもよく、更に短くてもよい。プロセスは必要に応じて1回以上の回数、繰り返されてもよい。いくつかの場合では、処置の継続時間が周期的に繰り返されることにより、所定時間「ON」された後に所定時間「OFF」されてもよい。一例では、処置の継続時間が約1分以上であり、その後、約1分以上の期間にわたってOFFされ、これが5サイクル以上繰り返される。コントローラは、各処置期間後に処置を中止するように構成されている。制御ユニット上の「停止」ボタンを使用して、熱交換媒体供給及びガスプレナムに供給される圧力の両方をOFFにしてもよい。一態様において、コントローラ160は、下肢の拡張を監視して、再充満時間を所望のように調整できるように静脈再充満を決定するように設計される。一般に、四肢内で血液の移動を引き起こすためには、四肢に対して僅かな大きさの圧力、例えば約0mmHg〜約25mmHgの圧力だけを供給すれば済む。一実施形態では、血液の移動を引き起こすために約10mmHg〜約15mmHgの圧力が四肢に対して加えられる。一例では、約3mmHgの正圧を四肢に対して加えて熱交換ユニットとの間で良好な接触を形成することにより1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bが四肢と接触され、その後、30〜60秒間にわたって内部領域の圧力が約20mmHgまで増大されることにより、四肢に対する圧力が増大され、その結果、血液が圧送される。その後、四肢に対して加えられる圧力を低圧レベルと高圧レベルとの間で所望の回数にわたって周期的に変えることができる。周期圧力が低圧(例えば、0〜3mmHg)レベルまで降下すると、これにより、静脈再充満のための時間が与えられる。一実施形態では、次の圧力サイクルが実行される前に肢を完全に再充満させるために、患者の四肢の静脈再充満時間(VRT)を測定し、及び/又は、四肢に対する圧力の供給を制御することが望ましい。一実施形態において、コントローラ160は、患者の四肢のVRTに関する入力をユーザ又は1つ以上のセンサから受けるようになっており、それにより、コントローラ160は、圧力サイクル、熱交換ユニットの温度、及び/又は、処置の継続時間を制御して最適に管理することができる。
【0099】
本発明の実施形態は、熱交換装置に対して供給される熱交換媒体の温度を、哺乳類を火傷させることなく可能な限り高い温度まで高めることにより、血流量を増大させて哺乳類の体温を調整するために使用されてもよい。健康な患者において、付属肢上の細胞の燃焼は、細胞温度が約43摂氏温度(℃)を越える場合に起こり得るが、これは、晒している時間及び熱伝達率に伴って変わる場合がある。したがって、熱交換媒体の温度は、皮膚温度が43℃未満に維持されるように較正されることが好ましい。例えば、異なる人は、その年齢や健康状態等にしたがって、異なる温度範囲において異なる許容範囲レベルを有する。一般に、四肢を加熱するためには、熱交換媒体の温度、したがって熱交換ユニットの表面の温度を、約30℃〜約43℃の温度に制御することが望ましい。一実施形態において、熱交換媒体の温度、したがって熱交換ユニットの表面の温度は約37℃〜約40℃である。
【0100】
また、装置を使用して患者の体温を冷やすことができる。一般的には、患者の体温を維持することができ、あるいは、処置によってそれが必要とされる場合には、約33℃まで積極的に冷却することにより患者の深部体温を下げることができる。一般に、四肢を冷却するためには、熱交換媒体の温度、したがって熱交換ユニットの表面の温度を約0℃〜約30℃の温度に制御することが望ましい。一実施形態では、熱交換媒体の温度、したがって熱交換ユニットの表面の温度が約0℃〜約10℃である。
【0101】
その結果、患者の不快感を減らすために、コントローラは、異なる温度設定及び真空設定を伴って構成されてもよい。一実施形態において、1つの処置設定は「High」であり、これは最高温度設定及び最高圧力設定を含んでいる。「Medium」及び「Low」設定は、温度及び/又は圧力に関して次第に更に低い設定を有している。長い時間にわたって処置される患者又は更なる合併症の危険が高い患者は、「Low」設定で処置されてもよい。例えば、麻酔がかけられている患者に対する圧力の印加及び温度調整に関しては特別な注意が払われる。一実施形態において、高い温度は約42℃であり、中間の温度は約41℃であり、低い温度は40℃であり、一方、真空レベルは、全ての温度設定にわたって約10mmHgのままである。
【0102】
更なる態様において、装置は、身体の深部体温を約4℃/時〜約12℃/時の速度で上げるために、約5ワット〜約250ワットの電力を使用してもよい。印加される電力は約5ワット〜約80ワットであることが好ましいが、最大で約250ワットまでの電力が使用されてもよい。一方、身体全体を加熱する従来の対流加温ブランケットは約500ワットを使用する場合があり、これは、制御が困難であり、効率が低い。
【0103】
表1は、接触表面積に対する適切な印加電力(ワット)の典型を示している。一実施形態において、熱交換ユニット(例えば、参照符号120A、120B,220,320A,320B)と四肢上の皮膚との間の接触表面積は、約30平方インチ(例えば、0.019m2)〜約410平方インチ(例えば、0.264m2)である。他の実施形態において、熱交換ユニットと四肢の皮膚との間の接触表面積は約800平方インチ(例えば、0.516m2)未満である。一般的には、熱交換ユニットと四肢の皮膚との間の接触を最大にして熱伝達を高めることが望ましい。しかしながら、それは、四肢と熱交換ユニットとの間で最も効率的且つ制御された熱伝達を行なう四肢中で主に見出されるAVAの使用によるものである。
【表1】
【0104】
本明細書に記載される試験は、図1に示される装置と類似する装置を使用して実験室内で行なわれた。四肢の局所的な血液容量における1分当たりのパーセンテージ(%)増大が測定された。ボランティアの人の被検者が研究に参加した。「%面積」の横列は、プロセスを実行するために使用される熱交換ユニット(例えば、図1における参照符号120A、120B)により覆われる患者身体の面積のパーセンテージを示している。「面積 平方インチ」の横列は、熱交換ユニットによって覆われる実際の平方インチを示している。「ワット/平方インチ」、「ワット」及び「深部に対するワット」は、本明細書中で説明される典型的なバージョンの装置で使用される電力及び電力密度の例である。「1」〜「8」のラベルが付された縦列は、異なる熱交換ユニット及び装置構造を示している。
【0105】
一実施形態では、図9に示されるように、装置900は、コントローラ160と連通する流体源981を用いて、流体プレナム901内に形成される空間950内に配置される哺乳類の四肢に対して圧力を加えるために使用される。使用時、流体源981は、空間950内に配置された患者の体温を熱的に調整して四肢に対して圧力を加えるために、柔軟流体プレナム902A、902Bを介して熱交換流体を供給して再循環させるようになっている。四肢130に対して圧力を供給して四肢の温度を調整するために1つ以上の柔軟流体プレナム902A、902Bを使用すると、システムコスト及び複雑度を低減することができる。この構成において、流体源981は、一般に、四肢と柔軟流体プレナム902A、902Bとの間で効率的な熱伝達を作成するために所望の温度及び所望の圧力における柔軟流体プレナム902A、902Bを介して流体を供給するようになっている。それぞれの柔軟流体プレナムは、流体チューブ982及び流体源981に対して接続される1つ以上の内部領域(すなわち、ユニット内の内部シール領域)を含んでいてもよく、これにより、四肢130が装置900内に位置されるときに内部領域を流体で満たすことができる。
【0106】
流体プレナム901は、一般に、柔軟流体プレナム902A、902Bと、支持特徴部920A,920Bと、シール要素904とを含んでいる。一実施形態において、図9に示されるように、流体プレナム901の支持特徴部920A,920Bは、一端(すなわち、ヒンジ913)がヒンジ結合され且つ他端(すなわち、隙間905)がシール要素904(例えば、ジッパ、ベルクロファスナ)によって接続される2つの部品を成して形成される。一実施形態において、柔軟流体プレナム902A、902Bは、前述した熱交換ユニット(例えば、参照符号120A、120B)に関連して先に説明した材料と同じ材料から形成される。一実施形態において、支持特徴部920A,920Bは、硬質プラスチック、金属、複合材料又は他の構造的に望ましい材料から形成されており、それにより、柔軟流体プレナム902A、902Bによって患者の四肢に対して与えられる圧力負荷(例えば、参照符号「B」)を受けることができる十分な強度を有する。一実施形態においては、環境への熱損失を減らすために支持特徴部920A,920Bの外面を断熱することが望ましい。
【0107】
図10は、本発明の1つ以上の実施形態にしたがって内部に配置されてシールされる四肢130の温度を制御するために使用される装置1000の一例を示す側面図である。装置1000内で囲繞される四肢130は、例えば、図10に示されるような手及び前腕であってもよいが、この構成は本発明の範囲を限定しようとするものではない。この構成において、1つ以上の熱交換ユニット1020は、本体要素1010の内部領域1013内に位置される四肢130の所望の領域を加熱するように寸法付けられる。熱交換ユニット1020の温度は、図10に概略的に示されるコントローラ160及び流体源161を用いて調整することができる。四肢に対して加えられる圧力は、ガスプレナム(図示せず)に対して接続されるコントローラ160、ポンプ163、センサ162を用いて調整することができ、流体源161から供給される圧力は、1つ以上の熱交換ユニット1020に対して供給される温度調整された流体の流体圧力を制御することによって所望の大きさの圧力を患者の四肢に対して供給できるように制御することができる。図10には1つの熱交換ユニット1020だけが示されているが、この構成は本発明の範囲を限定しようとするものではなく、したがって、かん流を向上させるために四肢130の様々な部分の周囲に2つ以上の熱交換ユニット1020が位置されてもよい。図10を参照すると、様々な流体ポート及び圧力ポートを一緒にまとめてコントローラ160、流体源161、圧力センサ162、及び/又は、ポンプ163に対して接続するために汎用ポート1025を使用することができる。
【0108】
一実施形態では、図11に示されるように、装置680は、哺乳類の四肢130に対して圧力を加えるために使用される。この構成において、流体源681は、患者の体温を熱的に調整して四肢に対して圧力を加えるために、柔軟流体プレナム685を介して熱交換流体を供給して再循環させるようになっている。四肢130に対して圧力を供給して温度を調整するために1つの柔軟流体プレナム685を使用すると、システムコスト及び複雑度を低減することができる。この構成において、流体源681は、一般に、四肢と柔軟流体プレナム685との間で効率的な熱伝達を形成するために所望の温度及び所望の圧力で柔軟流体プレナム685に流体を供給するようになっている。それぞれの柔軟流体プレナム685は、流体チューブ682及び流体源681に対して接続される1つ以上の内部領域(すなわち、ユニット内の内部シール領域)を含んでいてもよく、これにより、四肢130が装置680内に位置されるときに内部領域を流体で満たすことができる。図11は、下肢に対する装置680の使用を示しているが、この構成は、本明細書に記載される本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0109】
一実施形態において、柔軟流体プレナム685は、十分な可撓性があるとともに、図11に示されるようにそれを四肢130の一部の周囲に巻き付けることができるように寸法付けられている。柔軟流体プレナム685の端部684,686は、流体源681から供給される流体によって四肢130に対して圧力が加えられるときに柔軟流体プレナム685の端部684,686を保持するように寸法付けられる1つ以上のシール要素683を使用して結合することができる。他の実施形態において、1つ以上のシール要素683は、ベルクロファスナ、ストラップ、又は、他の同様の装置である。
【0110】
一実施形態において、柔軟流体プレナム685は、特にウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル、ゴム、エラストマー、高分子材料、複合材料等を含むがこれらに限定されない曲げ易い材料から形成されている。一実施形態において、柔軟流体プレナム685は、互いにRF溶接され、結合され、又は熱シールされる柔軟材料からなる2つ以上のシートを使用して形成されて組み立てられる。他の実施形態において、柔軟流体プレナム685は、射出成形によって形成されて組み立てられてもよい。漏れない熱交換ユニットを提供するべく柔軟流体プレナム685を設計して製造する方法は多く存在する。
【0111】
一実施形態においては、圧力の大きさ及び圧力が加えられる時間間隔を調整することが望ましい。この実施形態において、柔軟流体プレナム685の内部領域内の圧力は、ベローズ状の動きを与えて様々な異なる圧縮圧力を四肢130に対して断続的に、連続的に或いは適時な態様で加えるべく、流体源681から供給される流体を使用して制御することができる。高レベルから低レベルへと圧力を変える周期的プロセスは、必要に応じて1回以上の回数繰り返されてもよい。幾つかの場合では、処置の継続時間は、所定期間にわたって高圧にし、その後、所定期間にわたってベースライン圧力にするべく周期的に繰り返されてもよい。一例において、処置の継続時間は、高圧で10秒以上、その後、ベースライン圧力で約60秒〜約120秒であり、これは5サイクル以上繰り返される。一実施形態において、高圧処置の継続時間は約10秒〜約5分であり、ベースライン圧処置の継続時間は約60秒〜約2分である。一実施形態において、高圧範囲は約20mmHg〜約60mmHgであり、ベースライン圧力は約0mmHg〜約15mmHgである。四肢130の一部に対して空気圧縮又は力を加えると、四肢内の血流量が増大され、静脈内における血栓及び鬱血が防止され、深部静脈血栓症が防止され得ると考えられる。ここで説明するベースライン圧力を加えた後に高圧を加えるという順序は、本明細書に記載される本発明の範囲を限定しようとするものではない。一実施形態において、印加されるベースライン圧力と印加される高圧との間の差は、約0mmHg〜約120mmHgの間で変化してもよい。他の実施形態において、印加されるベースライン圧力と印加される高圧との間の差は、約0.1mmHg〜約60mmHgの間で変化してもよい。一実施形態において、印加されるベースライン圧力と印加される高圧との間の差は、約0mmHg〜約45mmHgの間で変化してもよい。装置680内で見出される膨張可能なカフアセンブリ構造は、熱を四肢に対して伝えるとともに、コントローラ160と連通する流体源681及び柔軟流体プレナム685によって四肢に対して順次に加えられる圧縮力を用いて四肢内の血液を積極的に圧送するため、本明細書中で説明される他の部品と併せて使用することができる。
【0112】
図12A〜12Bは、哺乳類1230の血流量を増大させて体温を制御するために装置1200を哺乳類1230の皮膚1231の所望部位を覆うように配置させることができる本発明の一実施形態を示している。図12Aは、哺乳類1230の皮膚1231に対して貼り付けられた装置1200の側断面図である。図12Bは、哺乳類1230の皮膚1231に対して貼り付けられた装置1200の平面図を示している。装置1200は、一般に、本体要素1210と、1つ以上の熱交換ユニット1220とを含んでいる。本体要素1210は、一般に、シール要素1211と、1つ以上の柔軟要素1212とを含んでいる。図12Aに示される装置1200の一実施形態の本体要素1210は、第1の本体要素1210Aと第2の本体要素1210Bとの間に位置される加圧領域1214を含んでおり、この加圧領域1214内には、内部で正圧を得て第2の本体要素1210Bを1つ以上の熱交換ユニット1220及び皮膚1231に対して押し付けるために流体が供給される。加圧領域1214内に供給される圧力は、任意の所望の圧力、例えば大気圧を超える約0.1mmHg〜約80mmHgにすることができる。一実施形態において、加圧領域1214内に供給される圧力は、大気圧を上回る約0.1mmHg〜約15mmHgである。このようにすれば、例えば人間の背中、胸、大腿又は首上の位置などの患者の任意の開放領域上に装置1200を位置させて、加圧領域1214に対して圧力を印加し且つ1つ以上の熱交換ユニット1220を熱制御することにより、被検者の血流量を増大させて体温を制御することができる。
【0113】
一般に、本体要素1210の部品は、使い捨て可能な低コスト材料、生体適合性材料、滅菌可能な材料、及び/又は、本体要素110に関連して前述した材料に類似する低刺激性材料から形成することができる。柔軟要素1212は、一般に、特にウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ(塩化ビニル)、ゴム、エラストマー、高分子材料、複合材料を含むがこれらに限定されない押し潰すことができる曲げ易い材料から形成される。柔軟要素1212は、哺乳類1230の皮膚1231の領域を見ることができるようにする透明材料又は半透明材料から形成できる。柔軟要素1212の厚さは、装置1200が使用されるときにそれが加圧状態を維持できる限り、制限されない。一例では、内部に収容された皮膚1231の部分の形状及びサイズに柔軟に適合するために約1.5ミル〜約12ミルの厚さを使用することができる。
【0114】
シール要素1211は、一般に、内部領域1213内で1つ以上の熱交換ユニット1220を囲繞するべく哺乳類1230の皮膚1231に対するシールを形成するために使用される。シール要素1211は、一般に、制御システム164及び前述した他の支援装置(例えば、参照符号160〜163)を用いて形成された加圧領域1214内に加圧状態を適用できるようにするために、本体要素1210と皮膚との間にシールを形成するようになっている。シール要素1211は、特にヒドロゲル、ポリウレタン、ウレタンなどの粘着性のあるシール材料から形成することができる。他の例は、Deerfield Urethane Inc.が提供しているPSシリーズ熱可塑性ポリウレタンである。使い捨てできるシール材料は、様々な健康要件及び安全要件を満たすべく、それらが使用前に無菌状態となり及び/又は低刺激となるように製造されて包装されてもよい。シール要素1211は、空気の流れを可能にするため、通気性部分を含んでいてもよく、及び/又は、透過膜材料又は通気性材料から形成されてもよい。
【0115】
1つ以上の熱交換ユニット1220は、一般に、図3A〜3Bに関連して前述した装置と類似している。一実施形態では、図12Aに示されるように、1つ以上の熱交換ユニット1220は、皮膚1231から環境へと逃げる熱損失を減少させ及び/又は皮膚1231に対する熱伝達プロセスを向上させるために装置の1つ以上の辺に配置される絶縁層1221を有している。
【0116】
図12Bを参照すると、作動中、制御システム164の部品は、本体要素1210に形成された1つ以上のアパーチャーを貫通する流体供給ポート174、176などの様々な流体ポート又は圧力ポートを用いて加圧領域1214内に加圧状態を形成するために使用される。一実施形態において、1つ以上の熱交換ユニット1220は、流体供給ラインポート177を介してシステムコントローラ164の部品と連通する。
【0117】
一実施形態において、装置1200内に形成される内部領域1213(図12A)は、内部領域1213内に真空状態を作成するために圧力ポート1216に接続される真空ポンプ(図示せず)を用いて真空引きされる。内部領域1213内に作成される減圧により、装置1200の外部の大気圧は、柔軟要素1212を1つ以上の熱交換ユニット1220及び/又は皮膚1231に対して押し付け、それにより、哺乳類1230の血流量が増大されて体温が制御される。一実施形態では、内部領域1213が大気に対して開放され、それにより、加圧領域1214が加圧状態となって第2の本体要素1210Bが患者の皮膚に対して押し付けられるときに、この領域内でガス圧が増大することを防止してもよい。このようにすれば、例えば人間の背中、胸、大腿又は首上の位置などの被検者の任意の開放領域上に装置1200を位置させることにより、被検者の血流量を増大させて体温を制御することができる。
【0118】
本発明の一態様において、患者の深部体温を制御するために使用される装置は、感染の広がりを減少させ或いは最小限に抑えるように設計されている。一実施形態では、複数の患者間での感染の広がりを防止するために、患者又は他の細菌源と接触する部品が1回使用された後に捨てられる。例えば、図1を参照すると、1つ以上の本体要素110、1つ以上の熱交換ユニット120A、120B、及び、マニホールド114がそれぞれの使用後に廃棄される。
【0119】
本明細書に記載される本発明の1つ以上の実施形態は、熱を患者に伝えるために患者の皮膚にわたって空気を移動させる必要がある従来技術の装置で共通に見出される感染の機会を防止し或いは最小限に抑えることもできる。従来技術の装置における空気の移動は、感染を引き起こす可能性がある望ましくない材料の移動をもたらす。一実施形態において、患者の少なくとも一部は、装置の1つ以上の要素(例えば、図1における本体要素110)によって部分的に囲繞され、したがって、患者又は他の晒される人において感染を引き起こす可能性がある汚染をもたらす空気の移動を引き起こさないとともに、それを防止する傾向がある。
【0120】
以上は本発明の実施形態に関するものであるが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく本発明の他の更なる実施形態が想起されてもよく、また、上記範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の一実施形態に係る典型的な装置を示している。
【図2A】本発明の一実施形態に係る典型的な装置の斜視図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係る、図2Aに示されたガスプレナムの一部の拡大された部分分解図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係る熱交換ユニットの一例を示している。
【図3B】本発明の一実施形態に係る熱交換ユニットの他の例を示している。
【図4A】四肢を囲繞するために使用できる本発明の一実施形態に係る他の典型的な装置の斜視図である。
【図4B】本発明の一実施形態に係る図4Aの典型的な装置の断面図である。
【図4C】本発明の一実施形態に係る図4Bの方向とは異なる方向から見た図4Aの典型的な装置の断面図である。
【図5A】人間の四肢と共に囲繞される本発明の一実施形態に係る典型的な装置の平面図である。
【図5B】四肢を囲繞する前に折り畳まれる本発明の一実施形態に係る他の典型的な装置の平面図である。
【図6A】未だ折り畳まれても囲繞されてもいない本発明の一実施形態に係る典型的な下肢装置の平面図である。
【図6B】未だ折り畳まれても囲繞されてもいない本発明の一実施形態に係る典型的な下肢装置の斜視図である。
【図6C】本発明の一実施形態に係る典型的な下肢装置の斜視図である。
【図6D】折り畳まれてシールされた本発明の一実施形態に係る典型的な下肢装置の斜視図である。
【図7】様々なガスライン、真空ライン、流体ラインに接続される1つ以上の取付具を有する本発明の一実施形態に係る典型的なマニホールドを示している。
【図8】本発明の一実施形態に係る装置に接続された制御ユニットの一実施形態を示している。
【図9】本発明の一実施形態に係る典型的な装置の斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る典型的な装置の側面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る典型的な装置の側面図である。
【図12A】本発明の一実施形態に係る典型的な装置の側面図である。
【図12B】本発明の一実施形態に係る図12Aに示される典型的な装置の平面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、人間の四肢内の血流量を増大させ及び/又は身体深部の体温を調整して維持するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間などの恒温動物は、周囲環境の温度変化及び細胞代謝副生成物として解放される内部熱の変動にかかわらず、比較的一定の内部温度を維持しようとする。人間において、熱深部は、一般に、身体の重要臓器、例えば脳、腹部及び胸部内に保たれる幾つかの臓器を含んでいる。周辺組織、例えば、皮膚、脂肪、筋肉は、内臓中の深部体温から動物の表面の近環境温度までの範囲をとる温度勾配を維持することにより、熱深部と動物の外部環境との間の緩衝器としての機能を果たす。
【0003】
哺乳類の体温調整は、過度の資源支出を伴うことなく哺乳類の生存を可能にして安定した内部熱環境を生成するために、適応機構、例えば、断熱、呼吸熱保全、受動放熱などを必要とする。内部又は外部の断熱は、環境状態から身体深部への熱伝達を妨げるとともに、動物を寒さから守る。同様に、皮下断熱は、皮膚表面から身体深部への熱の伝達を遅らせる。周辺組織の断熱特性は、組織を通じた血流によって決定され、血流がないと、組織を通じた熱伝達が極僅かとなる。例えば、血流を欠き且つ血液かん流が悪いと、脂肪組織が良好な絶縁体となる。かん流が乏しい任意の組織は絶縁体となる場合がある。組織血液かん流は、局部的な熱伝達を決定するとともに、身体部位への熱の供給(あるいは、身体部位からの熱の除去)を可能にする。
【0004】
呼吸熱保全は、哺乳類の肺胞のガス交換面での循環血液と空気との間の熱交換、熱損失を防止する適応機能である。循環血液の全ては肺のガス交換面を通過する。
【0005】
熱は、循環系の範囲内で血流を介して熱深部から身体表面へと環境に向かって放散される。全身血液の分配は、局所的な組織代謝要求にしたがっている。全ての血液は心臓及び肺の室を通過する。休んでいる人間の心拍出量は約5L/分であり、これにより、全血液容量は、毎分1サイクルの回転率で循環する。哺乳類の血液容量及び心拍出量は、身体内の全ての組織を均一にかん流させるのに不十分である。特殊な脈管構造は、血流中での熱交換を促進させる。
【0006】
哺乳類では、2つのタイプの脈管構造、すなわち、栄養脈管部及び熱交換脈管部が見出される。これらの機能は互いに排他的である。すなわち、栄養脈管部は、皮膚全体にわたって均一に分布された壁が薄い小径の血管、例えば細動脈、毛細血管、小静脈を含んでおり、局所組織に対して栄養を供給するために緩慢な血流の流通を必要とする。熱交換脈管部は、壁の厚い大径の小静脈、例えば静脈叢、動静脈吻合(AVA;小動脈と静脈叢との間を繋ぐ血管)を含んでおり、熱放散を促進させるために多くの血液容量の流れを必要とする。人間において、人間の熱交換脈管部の静脈叢及びAVAは、主に、断熱されていない手の掌、足の裏、耳、顔の毛がない領域で見出される。
【0007】
恒温動物における温度調節系は、多くの要因(麻酔、外傷、環境、他)によって危険に晒されるとともに、様々な熱的な疾患及び疾病状態を引き起こす場合がある。全身麻酔の誘導時、例えば誘発低体温症は、麻酔薬によって引き起こされる体系的な血管拡張による深部から周辺への温度再分配に起因して起こる場合がある。熱的な疾患、例えば低体温及び高体温は、過酷な環境条件によって温度調節系が打ち負かされるときに起こる場合がある。AVAの収縮は、身体深部を環境から熱的に分離するが、AVAの拡張は、身体深部と環境との間の熱の自由な交換を促進させる。
【0008】
熱交換脈管構造を通じて流れる血流は極めて変わり易く、例えば、熱応力中又は高体温中の血流の高い容量は、全心拍出量の60%程度まで増大し得る。一方、低体温は、寒い環境に長い間さらされる結果であり、この場合、静脈叢及びAVAを通じて流れる血流は、ほぼゼロの全心拍出量となり得る。周辺血管の血管収縮は、血流を四肢へと制限して身体の熱深部から離れる熱伝達を減少させることにより更なる熱損失を防止するべく低体温下で起こる。しかしながら、血管収縮は、低体温状態を逆転させることをかなり難しくする。なぜなら、血管収縮は、身体表面から熱深部への熱の伝達を妨げるとともに、身体の表面に対して単に熱を加えることを難しくするからである。熱伝達に対するこの生理学的障害は、熱交換に対する血管収縮封鎖と称される。熱的疾患を妨害して補正するためには、熱交換脈管部の静脈叢及びAVAへの血流を調整する必要性がある。
【0009】
他の熱的疾患関連の病気、例えば静脈血栓塞栓症は、かなりの疾病率及び死亡率を引き起こし続ける。静脈血栓症及び肺塞栓(PE)に起因する入院は年間300000〜600000人に及ぶ。様々なタイプの外科手術及び外傷並びに神経障害に続いて、多くの患者は、深部静脈血栓症(DVT)を患う危険性があり、これは肺塞栓(PE)を来たし得る。PEは、通常、脚の深部静脈内の血栓によって生じる。この場合、血栓(凝血塊)片が断ち切れて肺へと移動する場合がある。入院の当初の理由にかかわらず、全国で入院中の百人に一人の患者はPEが原因で死亡する。整形外科手術、脊髄損傷、GI又はGU外科手術を受ける腰、脛骨、膝の骨折を患う患者は、特に、DVTを患う危険性が高い。したがって、DVTの予防が臨床的に重要である。
【0010】
血流の鈍化又は脚からの血液戻り系は、外科的切開の行為により引き起こされる酵素遊離及び移動の欠如(麻酔症)に起因して手術段階中に最も大きな効果を伴うDVT形成に関連付けられる主な要因となり得る。また、術後期間も心配の種である。一般に、移動性がないと、心臓への血液の戻りは遅くなり、また、個人の血管は、血管運動神経性緊張及び/又は血液を元の心臓へ圧送するための弱い筋肉の限られた収縮のみに依存している。1つの研究は、3〜4時間程度の短い時間の航空旅行がDVTを誘発し得ることを示している。
【0011】
医学的予防の現在の手法は、抗凝固治療及び/又は空気圧縮装置によって圧力を筋肉に対して加えるための機械的圧縮を含んでいる。抗凝固治療は、血液の凝固を防止して血管中の血栓を除去するために血液抗凝固薬を必要とし、これには、効果がでるまでに数日を要さなければならない。また、これらの薬は、出血性合併症の危険をもたらし、したがって、手術で誘発されるDVTを予防するために使用することができない。機械的に圧縮してふくらはぎ及び足の筋肉に対して連続的にプラスのメッセージ型圧力を直接に印加する連続空気圧縮装置(SCD)は、病院環境でごく普通に使用されるが、扱いにくく、使用が難しい。
【0012】
Grahnに対して発行され且つスタンフォード大学に対して譲渡された米国特許第5,683,438号は、身体部位内の血管を機械的に広げて低体温哺乳類の身体深部に対して熱伝達を行なうことにより熱交換に対する血管収縮封鎖を克服するための装置及び方法を開示している。開示された装置は、身体部位上にわたって配置される管状の長尺な硬いシェルスリーブ内に収容される流体で満たされた加熱パッドを備えている。減圧が加えられてスリーブ内で維持される。しかしながら、体温を調整するための殆どの装置は、熱伝達の最適化のため或いは加熱素子及び患者の身体表面を介して熱を均一に分配できるようにするために十分な熱及び適切な表面積を供給しない場合がある。また、装置は、患者のサイズの可変性に適合できない場合があり、あるいは、長い処置中に身体部位の移動性を与えない場合がある。
【0013】
したがって、熱交換部の静脈叢及びAVAに対する及びこれらを通じた血流を増大させ、それにより、血管収縮封鎖を減少させて、体温調整のための熱交換及び/又は鬱血、DVT形成、及び、PEにより引き起こされ得る死亡の防止を促進させるための装置及び方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【0014】
本発明の実施形態は、血流量を増大させ及び/又は体温を制御するための方法及び装置であって、哺乳類の内部の損傷した熱調整系に起因する熱的疾患、深部静脈血栓症、PE、及び、他の疾患を防止し及び/又は妨げるために体温を調整する際に使用できる方法及び装置を提供する。一実施形態では、体温を調整し且つ手、腕、脚、足又は脚のふくらはぎ等の哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を供給して四肢中の血流量を増大させるための可撓性の四肢装置が提供される。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、四肢に可能な限り近くなるように1つ以上の圧力印加ガスプレナムを取り付けることにより加圧圧縮力を哺乳類の四肢に対してフレキシブルに加えることができる可撓性の四肢装置が提供される。可撓性の四肢装置は、独立に使用することができ、あるいは、可撓性の四肢装置の本体に対して配置される熱パッドと共に使用することができる。
【0016】
本発明は、一般に、血流量を増大させて体温を制御するための装置であって、内部領域を取り囲む1つ以上の壁を有し、上記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが患者の部位上にわたって配置されるようになっているプレナムと、上記1つ以上の壁と患者の上記部位との間に配置される1つ以上の熱交換ユニットと、患者の上記部位に対して上記1つ以上の熱交換ユニットを押し付けて上記1つ以上の熱交換ユニットと患者の上記部位との間の熱接触を高めるために上記内部領域内の圧力を制御するようになっているポンプとを備える装置を提供する。
【0017】
本発明の実施形態は、更に、哺乳類の血流量を増大させて体温を制御するための装置であって、内部領域を取り囲む1つ以上の壁を有し、上記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが患者の部位上にわたって配置されるようになっているプレナムと、上記1つ以上の壁と患者の上記部位との間に配置される1つ以上の熱交換ユニットと、上記プレナムの上記内部領域と流体連通する第1の取付具と、上記1つ以上の熱交換ユニットのうちの1つに形成される流体プレナムと流体連通する第2の取付具とを有するマニホールドと、コントローラシステムとを備え、上記コントローラシステムは、上記第1の取付具と流体連通するときに上記内部領域内の圧力を制御するようになっている第1のポンプと、上記1つ以上の熱交換ユニットと流体連通するときに上記1つ以上の熱交換ユニットの温度を制御するようになっている熱交換流体を有する流体熱交換器と、上記プレナムの上記内部領域と流体連通する圧力センサと、哺乳類の体温を測定するようになっている温度センサと、上記温度センサ及び上記圧力センサから受けられる入力を使用して上記プレナムの上記内部領域の圧力及び熱交換流体の温度を制御するとともに、上記第1のポンプを制御するコントローラとを備える装置を提供する。
【0018】
本発明の実施形態は、更に、哺乳類の血流量を増大させて体温を制御する方法であって、内部領域を取り囲む1つ以上の壁を備えるプレナムアセンブリを哺乳類の四肢の一部を覆うように配置するステップと、四肢の上記部分の表面上に1つ以上の熱交換ユニットを配置するステップと、上記1つ以上の熱交換ユニットの温度を制御するステップと、上記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが上記1つ以上の熱交換ユニットのうちの少なくとも1つを四肢の表面に対して押し付けるように上記内部領域内の圧力を調整するステップとを備える方法を提供する。
【0019】
他の実施形態において、血流量を増大させて体温を制御するための装置は、1つ以上の圧力印加ガスプレナムと1つ以上の圧力ポートとが取り付けられた1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素を含んでいる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素は、哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を加えることができる。また、四肢の一部が1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素内で囲繞されるときに1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素をシールするためにシール要素も設けられている。
【0020】
更なる実施形態において、血流量を増大させて体温を制御するための装置は第1の本体要素と第2の本体要素とを含んでおり、これらの本体要素は、第1の本体要素と第2の本体要素とを互いに囲繞することによって1つの空間へと折り畳むことができる。また、装置は、哺乳類の四肢の一部が内部に挿入される1つの空間へと第1の本体要素及び第2の本体要素が折り畳まれて囲繞されるときに第1の本体要素及び第2の本体要素の端部から形成される開口部も含んでいる。この場合、第1の本体要素及び第2の本体要素によって形成される空間は、最小の第1の容積から、内部に四肢の一部を収容するための拡張された第2の容積へと拡張することができる。装置は、更に、1つ以上の圧力印加ガスプレナムと、第1の本体要素及び第2の本体要素に対して取り付けられる1つ以上の圧力ポートとを含んでいる。第1の本体要素及び第2の本体要素は、押し潰すことができる曲げ易い材料から形成されており、哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を加えることができる。また、四肢の一部が第1の本体要素及び第2の本体要素内で囲繞されるときに第1の本体要素及び第2の本体要素をシールするためにシール要素も設けられている。
【0021】
更に他の実施形態において、血流量を増大させて体温を制御するための装置は、1つ以上の流体チャンネルを囲繞する本体部を内部に有し且つ哺乳類の四肢の一部と接触するようになっている熱交換ユニットを含んでいる。この場合、1つ以上の熱交換ユニットの本体部は押し潰すことができる曲げ易い材料から構成される。また、装置は、圧力印加ガスプレナムと、それに取り付けられた1つ以上の圧力ポートとを含んでいる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素は、哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を加えることができる。また、四肢の一部が1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素内で囲繞されるときに1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素をシールするためにシール要素も設けられている。
【0022】
また、方法が提供されており、当該方法は、前述した1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素を有する1つ以上の装置を哺乳類の1つ以上の四肢に対して設けるステップと、装置の開口部に取り付けられたシール要素を使用して当該開口部の周囲で1つ以上の四肢の一部をシールするステップと、1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素に取り付けられた1つ以上の圧力ポート及び1つ以上の圧力印加ガスプレナムに対して正圧を加えるステップとを含んでいる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素は、哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を加えることができるとともに、1つ以上の装置を使用して1つ以上の四肢の血流量を増大させることができる。1つ以上の装置は、哺乳類の体温を調整するための流動媒体が内部で流れる1つ以上の熱交換ユニットを含んでいてもよい。また、1つ以上の装置は、電気的な熱交換ユニットを含んでいてもよい。
【0023】
また、哺乳類の血流量を増大させて体温を制御するための方法が提供される。本発明の1つ以上の実施形態によれば、本方法は、1つ以上の装置を哺乳類の1つ以上の四肢に対して設けるステップと、1つ以上の装置の開口部の一部に形成されるシール要素を使用して当該開口部の周囲で1つ以上の四肢の一部をシールするステップとを含んでいる。1つ以上の装置は、1つ以上の四肢の一部と接触するようになっている1つ以上の熱交換ユニットと、1つ以上の圧力印加ガスプレナム及び1つ以上の圧力ポートが取り付けられた1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素とを含んでいる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素は、哺乳類の四肢に対して正圧又は圧縮を加えることができる。方法は、更に、1つ以上の圧力印加ガスプレナム内の正圧を調整するステップと、1つ以上の装置を使用して1つ以上の四肢の血流量を増大させるステップとを含んでいる。
【0024】
更なる実施形態において、血流量を増大させる方法は、哺乳類の1つ以上の四肢の温度を調整するステップと、可撓性の四肢装置の1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素に取り付けられた1つ以上の圧力印加ガスプレナムから供給される正圧又は圧縮に対して1つ以上の四肢を晒すステップとを含んでいる。
【0025】
その一部が添付図面に示されている実施形態を参照することにより、本発明の前述した特徴を詳しく理解できるように、先において簡単に要約した本発明の更に特定の説明について述べる。しかしながら、添付図面は、この発明の単なる典型的な実施形態を示すものであり、したがって、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではないことに留意すべきである。これは、本発明が他の等しく有効な実施形態を認め得るからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態は、哺乳類の四肢に対して正圧を加えることによって哺乳類の血流量を増大させるための方法及び装置を含んでいる。装置は、一般に、哺乳類の四肢に対して圧縮力を加えることができる1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素を含んでいる。一実施形態において、1つ以上の熱交換ユニットが1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素に取り付けられており、したがって、四肢の温度を制御できるように四肢の一部と接触するように構成されている。したがって、加熱された或いは冷却された流動媒体又は電気的な熱エネルギを1つ以上の熱交換ユニットに対して供給することにより、哺乳類の四肢の温度を調整することができる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素を加圧することにより、哺乳類の四肢の皮膚と接触する1つ以上の熱交換ユニットに作用する印加圧力に起因して、哺乳類の四肢と1つ以上の熱交換ユニットとの間の接触表面積を増大させることができる。圧力を加えることにより、十分な接触及び熱伝達(加熱又は冷却)が哺乳類の四肢に対してなされる。1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素間に位置される哺乳類の四肢に対する圧力の印加を制御することにより、皮膚かん流を改善することができる。四肢を取り囲む領域に対して加えられる圧力は、四肢の皮膚表面での血液かん流を増大させ且つ血液及び身体の残りの部分に対する熱伝達を高めるために調整される。哺乳類の四肢に対して加えられる圧力を約13.5mmHgに調整すると、血液かん流の所望の増加が得られると考えられる。なお、印加圧力を約40〜80mmHgを越えて増大させると、四肢中の血流量が減少する可能性があることに留意すべきである。
【0027】
四肢は、哺乳類の任意の種類の四肢、例えば、腕、手、前腕、肘を伴う前腕、手首を伴う手、肢、足、脚、ふくらはぎ、くるぶし、つま先など(動静脈吻合(AVA)の位置が特定された部分及び/又は血流量の増大が望ましいとき)になり得る。動脈と静脈とを接続する動静脈吻合(AVA)は、主に、手の掌と指、足の裏とつま先、頬及び耳などに位置される特殊な血管である。本明細書に記載された装置は、本明細書に記載される血流増大方法に適する脈管構造を有する他の四肢に使用するようになっていてもよいことは言うまでもない。哺乳類の四肢の温度を調整することは、哺乳類の体温を上昇、冷却及び/又は維持することを含んでいてもよい。哺乳類は、人間又は他の哺乳類であってもよい。特に、DVT、PE及び他の状態(例えば、特に浮腫、外傷性腫脹、静脈うっ滞性潰瘍、糖尿病性外傷、褥瘡性潰瘍)の危険性が高い人、整形外科患者、脊髄損傷患者は、本発明の利益を享受し得る。
【0028】
本発明の1つ以上の実施形態によれば、熱的疾患(例えば、低体温及び高体温など)に対応し、哺乳類の温度調節系が危険に晒されている(例えば、全身麻酔、局部麻酔、外傷、術後状態、又は、他の要因により)ときに哺乳類の四肢の温度を調整し、及び/又は、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓(PE)又は他の疾患を防止するための装置及び方法が提供される。本明細書に記載される装置及び方法は、付属肢を含んでいてもよい哺乳類の四肢における血流量を増大することができるように検査される。糖尿病を有する人間に対して行なわれた実験により、血流量を増大させるのに最適な圧力は約13〜14mmHgであるが、0〜100mmHgの間、より好ましくは3〜40mmHgの間、更に好ましくは5〜20mmHgの間にある圧力は血液かん流を増大できることが分かっている。約14mmHgの圧力と適切な熱とを組み合わせると、付属肢(この場合には、腕)の容積の1%/分の方法で、約4%/分のベースレベルから約8%/分の増大レベルへと血流量を増大させることができる。装置により皮膚に対して加えられる圧力は血流量を増大させるために使用することができ、これは、加圧又は膨張、付属肢のかなりの部分を取り囲むカフを含むがこれらに限定されない様々な方法によって達成できる。以下、幾つかの結果について説明する。
【0029】
一実施形態において、血液を増大させ且つ深部静脈血栓症(DVT)を防止するための装置は、装置の柔軟な(compliant:追従性のある)可撓性のある本体要素に取り付けられた1つ以上の圧力印加ガスプレナムに対して圧力を加えることにより哺乳類の四肢に対して設けられ、これにより、血流量が増大されるとともに、静脈血還流が促進され、哺乳類の四肢内の血栓が減少される。理論に縛られたくないが、装置の本体要素に対して正圧を加えることにより、哺乳類の四肢の皮膚に対して加えられる圧縮力が血流量を増大させる。また、圧縮力を加えることに関連して1つ以上の熱交換ユニットが使用されると、哺乳類の四肢と1つ以上の熱交換ユニットとの間の接触表面積が増大され、それにより、哺乳類の四肢の温度が調整されて、可能な限り多くの熱交換がなされ、哺乳類の四肢の血流量が増大し及び/又は静脈還流が増大する。特に、本発明は、体温を効率的に調整し及び/又は哺乳類の四肢に対して圧縮力を加えるための使いやすい非侵襲性の装置を提供し、特に、血流量を増大させ、静脈血還流を促進させ、静脈中の血栓を防止する。一実施形態において、装置は、哺乳類の1つの四肢の一部と装置内に収容される1つ以上の熱交換要素との間で熱を交換することにより哺乳類の身体の深部体温を調整するために使用される。
【0030】
図1は、哺乳類の四肢に対して熱を伝えることにより血流を増大させるために使用される装置100の一実施形態の斜視図である。図2Aは、装置100の一実施形態の分解斜視図である。装置100は、哺乳類の四肢、例えば、腕、手、前腕、肘を伴う前腕、手首を伴う手、肢、足、脚、ふくらはぎ、くるぶし、つま先など(患者の体温及び四肢の血流の向上された効率的な制御を行なうために、AVAの位置が特定された部分)に対して及び/又はこれらの四肢から熱を伝えるために使用される。一実施形態において、装置100は、哺乳類の四肢130を挿入できる空間150を形成している1つ以上の押し潰すことができる曲げ易い本体要素(すなわち、以下の本体要素110)を含んでいる。装置100は、1つ以上の本体要素110一部分同士の間に形成された開口部112を含んでおり、これにより、その開口内に配置された四肢は、1つ以上のガスプレナム172A、172B及び/又は1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bの使用によって、圧縮力を受けることができ及び/又は加熱され或いは冷却されることができる。場合により、装置内に入れられた四肢130を固定するために、開口部112にはシール要素140が取り付けられる。
【0031】
本体要素110は、一般に、最小量の空間や体積を占めるように設計されており、これにより、本体要素を容易且つ都合良く折り畳み、保管し又は出荷することができる。本体要素110の材料は可撓性の材料から形成されており、これは、四肢の形状へと適合し且つ装置100に四肢の部分をしっかりと取り囲むように、曲げ易く且つ容易に押し潰すことができる。したがって、四肢130の表面と本体要素110との間で良好な接触が成される。本体要素110は、一般に、哺乳類の四肢の一部を内部に収容するために最小容積から拡張容積へと拡張させることができる。一般的には、装置100内に入れられた四肢130のそれぞれの及び全ての部分に対して加えられる圧力を均一に且つ等しく分配できる十分な可撓性の本体要素110を使用することが望ましい。一般に、本体要素110は1つ以上のガスプレナム172を備えており、これらのガスプレナム172は、当該プレナム間に配置された哺乳類の四肢に対して圧力を加える。本体要素110のガスプレナム172は1つ以上の流体ラインに接続されており、これらの流体ラインは、本体要素110におけるガスプレナム172にガス(例えば、空気)及び/又は液体を供給するか、及び/又はガスプレナム172からガス(例えば、空気)及び/又は液体が供給される。一実施形態では、図1に示されるように、流体供給ラインは、マニホールド114に備えられている流体供給ポート174、176に接続される。
【0032】
本体要素110は押し潰すことができる曲げやすい材料から構成されており、その材料は、特にウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル、ゴム、エラストマー、高分子材料、複合材料を含むがこれらに限定されない。例えば、本体要素110は、使い捨て式低コスト材料から形成することができる。押し潰すことができる曲げ易い材料は、任意の適した可撓性材料、例えば、ガス透過性の熱可塑性プラスチック、Consolidated Polymer Technologies, Inc.(フロリダ州、ラルゴ)が提供するC−FLEX(商標)などのエラストマー材料、GLS Corporation(イリノイ州のマックヘンリー)が提供するDynaFlex、Argotec(マサチューセッツ州のグリーンフィールド)から市販されている材料及び同様の特性を有する他のエラストマー材料を含んでいてもよい。一実施形態において、押し潰すことができる曲げ易い材料は耐熱性材料を含んでいる。また、本体要素110は、生体適合性材料又は低刺激性材料(したがって、哺乳類の皮膚と接触しても安全である)から形成することもでき、代替的に、本体要素は、内部に位置された四肢130を見ることができるようにする透明材料又は半透明材料から形成することができる。他の実施例として、本体要素110は、オートクレーブ又はエチレンオキシド滅菌によって殺菌されてもよい材料から形成されてもよい。これは、無菌状態が非常に重要な手術中に装置100が使用される場合に特に重要である。押し潰すことができる曲げ易い材料の厚さは、装置100が使用される際に加圧状態を維持できさえすれば、制限されない。一実施形態では、内部に収容される四肢130の部分の形状及びサイズに柔軟に適合するために、約1.5ミル〜約12ミルの厚さを有するウレタン材料を使用できる。一般に、押し潰すことができる曲げ易い材料の厚さは、それが四肢に実質的に適合し得る十分な柔軟性を有し且つ装置100が使用されている際に所望の加圧状態を維持できる限り、制限されない。
【0033】
本発明の実施形態は、本体要素110のガスプレナム172にガス及び/又は液体を供給することにより哺乳類の四肢の一部を加圧状態に晒し、それにより、空間150内に配置された四肢に圧力を供給して、四肢130の血流を増大させることができるようにする。本体要素110の1つ以上のガスプレナム172内の圧力は、約5mmHg〜約20mmHgの圧力レベルに調整することができ、それにより、四肢の部分に供給される圧力が血液かん流を高めることができる。
【0034】
場合により、1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bが本体要素110の1つ以上の部分に対して取り付けられ、これらの熱交換ユニットは、内部に受けられた四肢130の温度を増大、減少又は維持するために、加圧状態下で四肢130の一部と接触するようになっている。熱交換ユニット120A、120Bは、内部に受けられた四肢130に熱交換を行なうために、装置100内に取り外し不能に又は取り外し可能に配置することができる。幾つかの典型的な熱交換ユニット120A、120Bの実施形態が示されており、これらについては図3A、3Bと併せて更に説明する。
【0035】
加熱流体、加熱空気、冷却流体又は冷却空気などの熱交換流動媒体は、流体源161から1つ以上の流体供給ライン124A、124Bを介して熱交換ユニット120A、120B内へ供給することができるとともに、1つ以上の流体戻しライン122A、122Bを介して装置100から排出することができる。装置100内に位置される1つ以上の熱交換ユニットの温度は、個別に或いは組み合わせて使用される電気パッド、流体型熱交換装置、又は、任意の他の適した熱交換ユニットの使用によって制御されてもよい。熱エネルギは、加熱中に熱交換ユニットから四肢130へと伝えることができ、又は四肢130を冷却するプロセス中に四肢130から1つ以上の熱交換ユニットへと伝えることができる。例えば、熱交換ユニット120A、120Bは、例えば循環型の熱交換システムを使用することにより供給される加熱水を有する流体加熱パッドであってもよい。他の実施例として、熱交換ユニット120A、120Bは、四肢を加熱又は冷却するために使用される化学物質を内部に有するパッドであってもよい。代替的に、熱交換ユニット120A、120Bは、参照によって本明細書に組み入れられる2006年8月2日に出願された同時係属の米国仮特許出願第60/821,201号明細書に詳しく記載された電気パッドを含んでいてもよい。一般的には、患者の四肢と熱交換ユニットとの間で等しく均一な接触を確保することにより熱接触を最大にして四肢と熱交換ユニットとの間での熱交換を向上させるようにすることが望ましい。
【0036】
使用時、熱交換ユニット120A、120Bと四肢130との間の良好な接触は、四肢130と熱交換ユニット120A、120Bとの間の熱伝達を最大にするために重要である。本体要素110の1つ以上のガスプレナム172に対して流体を供給することにより、熱交換ユニット120A、120Bに対して、また、四肢に対しても圧縮力が及ぼされ、それにより、熱交換ユニット120A、120Bと四肢130との間の接触面積が増大される。したがって、四肢130の表面にわたって熱エネルギを効率的に且つ均一に分配することができる。そのため、本体要素110及び熱交換ユニット120A、120Bの材料は、四肢の形状に適合でき且つ四肢の一部をしっかりと取り囲んで良好な熱接触及び/又は物理接触を行なう可撓性材料から形成される。本体要素110の1つ以上のガスプレナム172に対して供給される圧力を制御するため、圧力検出装置(すなわち、圧力センサ162)を1つ以上の流体供給ポート174、176に対して接続することができる。
【0037】
一実施形態では、装置100に対する様々な外部部品間の接続を行なうため、マニホールド114が一部の本体要素110上に形成され又は配置されてもよい。流体供給ポート174、176、流体供給ラインポート177、流体供給ライン124A、124B及び/又は流体戻しライン122A、122Bは保護シースによって覆われてもよい。マニホールド114は、一般に流体供給ラインポート177及び1つ以上の流体供給ポート174、176を含んでおり、この流体供給ラインポート177及び流体供給ポート174、176は、装置100における様々な外部部品を装置100内の様々な部品に対して接続するために、様々な種類のチューブ及び/又はコネクタに対して接続される。マニホールド114の一実施形態が図7に示されており、急速(クイック式)着脱用接続金具を組み込んであいる。マニホールド114の位置は、ガス供給ライン及び流体ラインを一括して集めることによって本体要素110の任意の都合の良い部分の近傍に置くことができる。
【0038】
開口部112の一部にはシール要素140が形成されており、このシール要素140は、本体要素110と四肢130の一部との間にシールを形成するようになっている。シール要素140は、一般に、四肢130の一部のサイズにしたがって開口部をシールするように寸法付けられて使用される。シール要素140は、生体適合性があり(したがって、哺乳類の皮膚と接触しても安全で)且つ気密シールを形成できる材料から形成されてもよい。一実施形態では、シール要素140が開口部120に対して取り外し可能に取り付けられる。他の実施形態において、シール要素140は、使い捨て式のライナ又は挿入材料などの使い捨て式の材料からなる。例えば、シール要素140の材料は、特にヒドロゲル、粘着性シール材料、ポリウレタン、ウレタンであってもよい。材料の一例はヒドロゲルである。他の例は、Deerfield Urethane Inc.が提供しているPSシリーズ熱可塑性ポリウレタンである。使い捨て式シール材料は、様々な健康要件及び安全要件を満たすべく、それらが使用前に無菌状態であり及び/又は低刺激性であるように製造されて包装されてもよい。シール要素140は、シール要素140にわたる空気の交換を可能にするため、通気性部分を含んでいてもよく、及び/又は、透過膜材料から形成されてもよい。通気性材料の例はSecuron Manufacturing Ltd.又は3M Companyから市販されている。
【0039】
一実施形態において、シール要素140は、開口部112をシールするために哺乳類の四肢の一部を包み込むことができる。シール要素140の例としては、機械的な締結具又は他の締結ユニット(例えば、マジックテープ(Velcro fasteners))が挙げられる。一例としては、装置100にスナップ係合できる1つ以上の従来の嵌め合いリングが挙げられる。他の例としては、使用できる状態にあるときに取り外すことができる、3Mリムーバブルテープ等の取り外し可能なライナを有するテープの使用が挙げられる。一実施形態では、シール要素140が使い捨てシールである。他の実施形態では、使い捨てシール要素140が装置100に対して取り付けられ、1回の使用後に装置及びシール要素140が処分される。更なる他の実施形態では、シール要素140が装置100から取り外されてもよく、また、他のシール要素と共に装置が繰り返し使用されてもよい。
【0040】
一実施形態において、シール要素140は、0.5インチ〜6インチの範囲の幅、例えば四肢130の底部を覆うことができる十分大きい幅の取り外し可能な一片の接着テープを備えていてもよい。シール要素140が接着面と裏部とを備えていてもよい。シール要素140は、一般に、開口部112の縁部の周囲で端同士を上下に重ね合わせて巻く際に約0.5インチ以上、例えば約2インチの重なりが存在するように十分長い。重なりは、ユーザが四肢の周囲にシール要素140を非常にきつく巻きつけることを促さないことが好ましく、それにより、適度なシール力、例えば20mmHg未満のシール力を形成することが好ましい。シール要素140の材料は、哺乳類の四肢に取り付けるための取り外し可能な接着材料をある部分に備えるとともに、シール要素140を装置100に対して取り付けるためのより耐久性の接着剤を他の部分に備えていてもよい。取り外し可能な接着材料は、高い初期接着力及び低い接着除去力を有する任意の多種多様な市販の材料であってもよく、それにより、シール要素140は、髪の毛又は皮膚を引っ張らず、また、それが除去されるときに痛みを与えない。例えば、取り外し可能な接着剤は、使い捨て接着剤であってもよい。また、接着材料は、ガスを満たすためにそれが変形でき或いは撓むことができるように厚く且つ可鍛性を有していてもよい。水が高分子ゲル中で分散している接着剤、例えばヒドロゲルが一般に有効である。このような接着剤の一例は、一般に火傷や外傷を覆うために使用される薄い(5mm)通気性接着剤である、Tagadermブランドの3M接着剤(部品番号9841)である。他の例は、更に厚い(25mm)接着剤である3M部品番号MSX5764などの心電図(EKG)接着剤である。シール要素140は、真空漏れが無いように締め付けられなければならない。
【0041】
一実施形態において、シール要素140は、薄い弾性のない可撓性材料であってもよい裏地を有している。裏地は、接着剤を支持すると共に、ガスプレナムが加圧されるときに接着剤が開口部112から引き離されないようにする。また、裏地は、接着剤が四肢130の形状及び開口部120の形状の両方に適合できるようにする。更に、裏地は、接着剤が他の表面に付着することを防止する。最大で約10mmの厚さの市販のポリエチレンが裏地に使用されてもよい。約10mmよりも厚いポリエチレンは、自身が重なる能力及び隙間を埋める能力を制限する場合がある。また、裏地は、薄い弾性のない可撓性材料へと製作されてもよい任意のポリマーを含んでいてもよい。一実施形態において、シール要素140は、それを本体要素110及び四肢130に対して取り付けることができるように、2つの対向する接着面上に接着剤が配置された裏地を含む。例えば、3M EKG接着剤製品MSX 5764は、接着剤の複数の層間に支持的な裏地を有している。裏地の複数の層は、シール要素140のための支持を行なうために使用することもできる。
【0042】
装置の開口部112は、シール要素140が覆わなければならない寸法差を最小にするために、患者の四肢のサイズに近いことが好ましい。足のサイズなど、四肢寸法の範囲に対応する最も小さい開口部サイズが好ましい。シール要素140は、一般に、小柄な成人のサイズから大柄な成人の様々なサイズに至る四肢サイズに対応するように異なるサイズをなすことができる。例えば、更に幅広い範囲の足サイズに対応するために、複数の開口部サイズ、例えば小、中、大のサイズが使用されてもよい。
【0043】
代替的に、開口部112は、力を更に最小にして、シール要素140によるシールプロセスを更に簡単にするために、血流を妨げることなく四肢130のサイズ範囲内で収縮するようになっていてもよい。例えば、開口部112を四肢130に対して締め付けるために1本以上の紐が使用されてもよい。他の実施形態では、装置100の開口部112を取り囲み、四肢130の周囲で開口部112を固定するために、特に、外部バックル、マジックテープ(Velcro fasteners)及びストラップが使用されてもよい。
【0044】
また、本体要素110の1つ以上の部分が透明材料から形成されてもよく、それにより、装置の使用中に装置の機能及び四肢の状態が監視されてもよい。他の実施形態において、本体要素110は、装置110の中に組み立てられるべき二つ以上の本体部分に分けられて、マジックテープ(Velcro fasteners)やスナップなどの1つ以上の締結ユニット(例えば図9の装置900)により固定されてもよい。
【0045】
装置100は制御システム164を更に含み、制御システム164は、装置100の様々な部品に接続されるコントローラ160を収容しており、1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bに接続される1つ以上の流体ライン(例えば、流体供給ライン124A、124B、流体戻りライン122A、122B)に接続される流体源161と、1つ以上の圧力ポートに接続されるポンプ163及び圧力センサ162とを含む。一実施形態において、ポンプ163は、ガスプレナム172を加圧及び減圧するようになっている機械ポンプ又はガス源(例えば、ガスシリンダ)である。コントローラ160は装置100によって果たされるプロセス及び機能を調整するようになっていてもよく、特に、熱交換ユニット120A、120Bに対する流入・流出量を調整すること、熱交換ユニット120A、120Bの温度を調節すること、1つ以上の圧力センサ162を介して1つ以上のガスプレナム172内の圧力レベルを監視すること及び内部に受けられた四肢130の温度を監視することを含む。
【0046】
一実施形態において、本明細書に記載された装置は使用中センサを含んでいてもよく、この使用中センサは、1つ以上のガスプレナム172に接続される圧力センサ162又は圧力スイッチ(図示せず)を使用することにより、装置が使用中であることを示す。また、使用中センサ及び/又はコントローラ160は、装置が使用された回数を示してもよい。
【0047】
一実施形態において、制御システム164は、患者の温度制御を高めるために使用される。したがって、作動時、ポンプ163は、制御コントローラ160及び圧力センサ162と共に、1つ以上のガスプレナム172に流体を供給するようになっており、それにより、圧力を約3mmHg〜約20mmHgの範囲で印加して調整し、四肢の血液かん流を高めることができる。例えば、圧力を約10mmHg±2mmHgなどのプラス圧力レベルに調整することができる。一実施形態では、コントローラ160を使用して、熱交換ユニット120A、120Bの温度を流体源161を用いて制御するとともに、1つ以上のガスプレナム172内の圧力をポンプ163及び圧力センサ162を用いて制御し、それにより、四肢130に加えられる力及び温度を積極的に制御し、患者の温度制御及び血液潅流を高めることが望ましい。他の実施形態では、四肢130に対して連続的に圧縮力を加えて患者の身体にわたる血液の圧送を助けるために、制御システム164が使用されてもよい。
【0048】
図2Aは、上側本体要素110Aと下側本体要素110Bとに分割されて示される本体要素110を有する、図1に示される装置100の分解図であり、その両方とも押し潰すことができる曲げ易い材料から形成される。図示のように、各本体要素110A、110Bはガスプレナム172A、172Bをそれぞれ含んでいてもよい。流体供給ポート174、176は、ポンプ163(図1)を用いることにより空気、ガス等を本体要素110A、110B内へ供給するために、ガスプレナム172A、172Bに接続するようになっている。一実施形態において、本体要素110A、110Bは、シール領域140Bで互いに結合されて空間150を形成する、個別に形成された要素であり、空間150内には、通常の作動中に、四肢が配置される。本体要素110A、110B間のシール領域140Bで形成される結合は、RF溶接、熱シール、糊付け、ボンディング又は本体要素110を形成するために用いられる材料(例えば、ウレタン材料、ゴム、エラストマー材料、高分子材料、複合材料)を結合するべく使用される他の技術によって形成されてもよい。装置100を四肢上の所望の位置に保持するために、本体要素110A、110B上の適切な場所に1つ以上のシール要素140Aが設けられてもよい。
【0049】
一実施形態では、図2Bに示されるように、各ガスプレナム172A、172Bはそれぞれ、押し潰すことができる曲げ易い材料からなる2つの層(例えば、層231、232)を互いに結合するか、シールして複合要素230を形成することにより形成される。図2Bは、本発明の一実施形態に係るガスプレナム172A、172Bの一部の部分分解断面図である。形成されたガスプレナム172A、172Bはそれぞれ、結合されてシールされた層(例えば、層231、232)間に流体プレナム233が形成されており、この流体プレナム233により、ポンプ163によって供給される流体は、流体プレナム233内の空間に入ってこれを加圧することができる。層231及び層232は、ヒートシール、糊付け又は他の従来の柔軟層結合技術の使用によってシールすることができ(例えば、シール234)、それにより、囲繞されてシールされた流体プレナム233が形成される。その後、ヒートシール、糊付け又は他の従来の技術を使用してシール領域235で2つ以上の複合要素230を互いに結合し(図2Bの「A」参照)、それにより、四肢130を内部に配置できる空間150を形成することができる。使用時、ポンプ163は流体を供給するために用いられ、いずれかのガスプレナム172A、172Bに形成された流体プレナム233のうちの少なくとも一方を加圧するとともに、影響が及ぼされたガスプレナム中の層232を拡張させることにより、ガスプレナム172A,162B間に形成された空間150内に配置される哺乳類の四肢に対して圧力を加える。層231、232は、押し潰すことができる曲げ易い材料から構成されてもよく、特にウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル、ゴム、エラストマー、高分子材料、複合材料を含むがこれらに限定されない。ガスプレナムを形成するために使用される押し潰すことができる曲げ易い材料の厚さは、ガスプレナムが約1mmHg〜約15mmHgのレベルまで加圧されるときに加圧状態を維持できさえすれば制限されない。例えば、空間150内に配置された四肢130の部分の形状及びサイズに柔軟に適合するために、約0.5ミル〜約20ミルの厚さ(例えば、約1.5ミル〜約12ミル)を有するウレタン材料を使用することができる。
【0050】
一実施形態において、熱交換ユニット120A、120Bは、本体要素110A、110Bの少なくとも1つの表面又は側面上に取り外し可能に取り付けられる。熱交換ユニット120A、120Bの対向面は、空間150内に配置された四肢と熱交換を行なうために、哺乳類の四肢と効率的に且つ快適に接触するように設けられており設計されている。作動時、本体要素110A、110B、熱交換ユニット120A、120Bは、哺乳類の四肢の一部を空間150内に受けるように組み立てられる。一実施形態では、1つ以上の熱交換ユニットを装置内で予め組み立てることができる。他の実施形態では、1つ以上の熱交換ユニットを使用前に装置へと組み立てることができる。
【0051】
図3A〜3Bは、熱交換ユニット120A、120Bの一実施形態を示しており、この熱交換ユニットは、柔軟材料からなる2つの層を使用して形成され、縁部領域335において、RF溶接、熱シール、糊付け又は他の結合プロセスを使用することによりシールされて、シールされた熱交換本体346を形成する。図3Aは、本発明の一実施形態に係る熱交換ユニット120の一例を示している。熱交換体ユニット120は、熱交換本体346を含む。熱交換本体346の一方の面320は、本体要素110のガスプレナム172から及ぼされる加圧圧縮力を受けるために設けられている。熱交換本体346の他方の面310は、四肢の一部と接触するために設けられており、複数の熱接触ドーム348を含んでいる。
【0052】
熱交換本体346は、入口ポート344及び出口ポート343を有していてもよく、これらは、流体源161と流体連通しており、また、それぞれ流体戻しライン122及び流体供給ライン124と流体連通する。したがって、柔軟材料341の2つの層間に形成される領域は、流体源161から供給される熱流動媒体を受けた(矢印A1参照)後に排出する(矢印A3参照)ことができる流体プレナムとして使用される(図3B)。一実施形態では、入口ポート344に供給される流体と出口ポート343に供給される流体とを分離するため、したがって、熱交換流体が流体プレナムを通じて所望の経路を辿ることができるようにして熱伝達プロセスを最適化し及び/又は熱伝達プロセスの効率を高めるために、熱交換ユニット内に分離特徴部336が形成される。一例において、流体流路は矢印A1,A2及びA3を順次に辿る。分離特徴部336は、RF溶接、熱シール、糊付け、又は、柔軟材料341の2つの層を互いに結合するための他の結合プロセスによって、シールされた熱交換本体346に形成することができる。一実施形態において、熱交換ユニット120は、RF溶接又は熱シール技術によって形成されて組み立てられる。他の実施形態では、熱交換ユニット120が射出成形によって形成されて組み立てられてもよい。一実施形態において、図3A〜3Bに示される熱交換ユニット120は、曲げ易い材料から形成されており、特にウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ(塩化ビニル)、ゴム、エラストマー、高分子材料、複合材料を含むがこれらに限定されない。一実施形態では、熱交換ユニット120をRF溶接によって形成して組み立てることができる。他の実施形態では、熱交換ユニット120が射出成形によって形成されて組み立てられてもよい。漏れの無い可撓性の熱交換ユニットを提供するべく熱交換ユニットを設計して製造する可能な方法は多く存在する。
【0053】
一実施形態において、シールされた熱交換本体346には、柔軟材料341の層間に、RF溶接、熱シール、糊付け、又は、他の結合プロセスによって複数のドーム348が形成され、それにより、シールされた熱交換本体346の内部領域に熱交換流体が供給されるときに拡張しない構造が形成される。各熱接触ドーム348は、四肢と直接に接触される熱接触面347を含んでいる。熱接触面347の直径及びその形状又はサイズは変えることができ、それにより、熱接触面347の全体の総面積を最大まで増大することができる。熱交換ユニット120は、熱交換ユニット120の熱交換本体346を通じて熱流動媒体を循環させるために、熱流体源に接続された流体供給ライン124及び流体戻しライン122を更に含んでもよい。
【0054】
一実施形態において、熱接触ドーム348は、熱交換ユニット120における点又は領域であり、この場合には、熱交換ユニット120を通じた流路(例えば、矢印A2)に制約又は障害を形成するために、柔軟材料341の層が互いに結合又は溶接される。流路に障害物の配置を調整することにより、熱交換ユニット120を通じて流れる流体と患者の四肢との間の熱交換を高めることができると考えられる。一実施形態において、熱交換ユニット120を通じた流量は、四肢と接触する柔軟材料341と流れる流体との間での熱伝達を最大にするために、それが実質的に乱流となるように制御される。一例では、熱交換ユニット120内で乱流を得るために、毎分1リットルの43℃の水の流れが約0.060平方インチ(38.7mm2)の平均面積にわたって供給される。平均面積は、一般に、縁部領域335、分離特徴部336の間に形成される領域及び柔軟材料341の層間に形成される空間で測定される断面積である。この構成において、熱接触ドーム348は、実際には、柔軟材料341の層に形成される凹部であるが、熱接触ドーム348と患者の四肢との間に位置される柔軟材料341の領域間で十分な熱接触を得ることができると考えられる。柔軟材料341と患者の四肢との間で等しい均一な接触が形成されるようにして、熱交換ユニット120と患者の四肢との間で十分な熱交換が形成されるようにすることが望ましい。
【0055】
図3Bは、最適化された空間的関係を成して配置された複数の熱接触ドーム348を有する熱交換ユニット120の一例を示している。少なくとも3つの熱接触ドーム348間で形成される角度αを含むように熱接触ドーム34が配置されると最適な熱交換を得ることができることが分かった。角度αは、30°〜約75°の範囲に最適化することができ、好ましくは約45°である。一例において、各熱接触ドーム348間の最も近い隣接間隔は約8mm〜約9mmであり、また、縁部領域335と分離特徴部336との間の距離は約70mm〜約80mmである。
【0056】
一態様においては、装置100の作動中に最大の熱交換が起こるように熱交換ユニット120を設計することが望ましい。
【0057】
一実施形態において、熱接触ドーム348は、四肢に対する良好な熱接触及び物理接触を行なうために、個別の硬質材料、例えば金属、導電プラスチック、又は、他の類似の材料から形成される。熱接触ドーム348の材料は、高い熱伝導率、好ましくは熱交換本体346の材料よりもかなり高い熱伝導率を与える材料であってもよい。例えば、熱接触ドーム348は、アルミニウムから形成されてもよく、熱交換本体346に対して取り付けられてもよい。アルミニウムから形成されるドームは、プラスチック材料又はゴム材料よりも少なくとも400倍高い熱伝導率を与えるであろう。高導電材料からなる熱接触ドームを有する典型的な熱交換ユニットの一例は、参照により本明細書に組み入れられる2007年11月10日付けに出願された同一出願人による米国特許出願第11/870,780号(代理人整理番号#DYNA0007)明細書に更に記載されている。しかしながら、いくつかの場合において、内部流体流路を形成するために互いに結合される材料の2つ以上の層から製造される熱交換ユニットは、熱接触を殆ど行なわない不均一な表面又はでこぼこの表面をもたらし、それにより、最大熱伝達のために必要な表面積が減少される。また、例えばポリウレタンなどの熱交換本体346のための材料は、一般に、熱伝達にとって良好な導体でなくてもよい。したがって、熱交換本体346は、大きな総接触面積をもたらす平坦で均一な四肢への接触面を設けることができるように1つ以上の裏地シートによって覆われてもよい。また、熱交換ユニット120と四肢との間で高い熱伝導率を与えるために、裏地シートを熱伝導率が高い材料から形成することができる。例えば、裏地は、薄い金属シート、例えばアルミニウム(箔のような)シート又は他の金属シートから形成されてもよい。一般に、アルミニウム又は他の金属材料は、プラスチック又はゴムよりも高い熱伝導率、例えば少なくとも400倍高い熱伝導率を与え得る。
【0058】
代替的に、1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bは、電源に接続された1つ以上の電気ワイヤを有する電気パッドであってもよい。例えば、電源が低電圧DC電流電源であってもよい。また、1つ以上の熱交換ユニットは、温度を監視するための熱電対と、電気パッドの温度が安全レベルを通り過ぎるときに電力を自動的に遮断するためのサーモスイッチとを含んでいてもよい。
【0059】
本明細書に記載される本発明の実施形態に係る熱交換ユニットは、一般に、哺乳類の四肢の体温を暖め、冷やし、及び/又は、調整するために、増大した表面積を有する熱交換面を与える。熱交換ユニットは、様々な手段によって外肢の血流を調整するために使用できる。例えば、約0℃〜10℃の手に対して温度を加えると、ハンターや漁師が極寒中に素手で作業する間に凍傷にならないようにする「ハンティング反応」と呼ばれる現象に起因して平均血流量を増大させることができる。異なる個人は、手に加えられる寒さに対して異なる反応をし、また、いくつかの周知の実験室試験では、インド亜大陸出身の人の手に対して寒さを加えると、平均血流量が増大するが、典型的なエスキモー人では、ほぼ同じ処置を行なっても、平均血流量が増大しなかった。
【0060】
いくつかの場合において、暖かさの知覚は、血流量を高めるのに十分である。例えば、23℃(室温)のウォータパッドは、さもなければ暖かさを感じる正常温度の被検者の脚と密に接触すると、冷たく感じ、また、パッドの「COOLNESS(冷たさ)」は、ある程度まで脚の血流量を減少させ得る。しかしながら、同じ人の脚が長い期間にわたって5℃の冷たさに晒される場合、この同じ23℃(室温)のウォータパッドは相対的に暖かく感じ、それにより、実際には、同じ脚の血流量を増大させることができる。したがって、温度血流量関係は、感じられる暖かさ及び加えられる温度の両方によって決定される。深部体温を越える熱を加えても血流量を増大させることができる。本明細書中で説明される本発明の1つ以上の実施形態の1つの望ましい特徴は、患者の深部の体温を制御するプロセス中に患者によって感じられる暖かさの感覚及び患者の快適さが従来技術の構造よりも増大されることである。一実施形態において、快適さ及び暖かさの感覚の増大は、例えば患者の四肢を少なくとも部分的に囲繞するなどの隔離作用により、また、患者の四肢を温度制御された熱交換ユニットと密に接触して配置することにより作り出されると考えられる。
【0061】
また、熱交換ユニット120は、哺乳類の四肢の温度を監視して温度制御フィードバックを行なうために1つ以上の温度センサ及び熱電対を含んでいてもよい。例えば、深部体温を監視してコントローラ160に対して深部体温フィードバックを与えるために、哺乳類の他の身体部分、例えば外耳道などに対して鼓膜温度プローブが挿入されてもよい。
【0062】
図4Aは装置400の一例の斜視図である。図4B〜4Cは装置400の側面図である。装置400は、図4A〜4Cに示されるように、柔軟な1つ以上のガスプレナム172A、172B及び熱交換ユニット120A、120Bを展開させてそれらの間に形成される空間150内に哺乳類の四肢をより容易に位置させることができるように装置400の一方側だけが互いに結合されていることを除き、図1〜3Bに示される装置100と同様である。装置400は、哺乳類の四肢を内部に挿入できる空間150を設けるために、押し潰すことができる曲げ易い材料から形成される1つの本体要素110を含んでいる。本体要素110は、一般に、平坦であり、又は最小の空間や体積を占めており、それにより、装置400を都合良く折り畳み、保管し、又は出荷することができる。一実施形態において、本体要素110は、2つ以上のガスプレナム172A、172B間に形成されるシール領域140Bにおいて装置400の一方側を結合することにより形成することができる。
【0063】
装置400は、場合により、熱交換ユニット120A、120Bと、流体供給ライン124A、124Bと、流体戻しライン122A、122Bとを含んでいる。四肢が空間150内に配置されると、ガスプレナム172Aに取り付けられたシール要素140Aとガスプレナム172Bに取り付けられたシール要素140Aとを互いに一致させることにより装置をシールすることができる。流体供給ポート174、176、流体供給ライン124A、124B、流体戻しライン122A、122Bは、様々な流体源、ガス源及び/又はポンプを都合良く接続するために場合により、マニホールド114に対して接続することができる。
【0064】
図5Aは、四肢130(図5B参照)を受けるために「開放」位置にある本発明の一実施形態に係る他の装置500の部分断面斜視図である。図5Bは、内部に配置された四肢130の一部を囲繞するように構成される本発明の一実施形態に係る装置500を示している。装置500は、開口部112を形成して哺乳類の四肢130の一部を囲むように折り畳み及び/又はまくり上げて下ろすことができる本体要素510を含んでいる。本体要素510は、装置100の本体要素110と同じ材料から構成されてもよい。また、装置500は、1つ以上のガスプレナム172A、172Bと、内部に熱交換流動媒体を収容できる1つ以上の熱交換ユニット120A及び120B(図4Aには1つだけが示されている)とを更に含んでいてもよい。
【0065】
図5Bを参照すると、四肢130が装置500内で囲繞される際に形成される開口部112のサイズは、シール要素542を使用することによりシールされてもよい。シール要素の材料は、シール要素140と同じ材料であってもよい。
【0066】
作動時、装置500は、熱交換ユニット120A、120B及び四肢130を覆って囲繞するために、矢印Cの方向にしたがって展開されて折り畳まれる。図5Bは囲繞形態を成す装置500を示している。一実施形態では、四肢130を取り囲むプロセス中に、1つ以上の囲繞クリップ552によってガスプレナム172A、172Bの縁部550同士が互いに押し付けられ、内部に挿入される四肢130の部分のために開口部112を形成することができる。囲繞クリップ552を使用して縁部550を囲繞できる機構は、特に、ファスナ、ジッパ、スナップ、ヒドロゲルコーティングされたタブ、従来のテープ、ボタン、及び、フック/ループ型システムを含んでいてもよい。例えば、ガスプレナム172A、172Bの縁部550は、囲繞クリップ552によって縁部550をシールしてしっかりスナップ固定できるように補強されてもよい。また、マニホールド114を使用して、コントローラ160、流体源161、圧力センサ162及び/又はポンプ163に接続される様々な流体ライン及び圧力ラインを一緒に束ねることができる(図1)。
【0067】
図6Aは、折り畳まれることもなく、又は本体要素610によって囲繞されることもない典型的な下肢装置の斜視図である。より具体的には、図6Aは、伝熱を制御して人の足に対して圧力を加えることにより人間の体温を制御するために使用される装置600の一例の斜視図である。図6Bは、本発明の1つ以上の実施形態にしたがって折り畳まれ、囲繞され、シールされる典型的な下肢装置の斜視図である。装置600は、図6Aに示されるように平らに横たえて、丸め及び/又は展開することができる単一の本体要素610を含んでいてもよい。代替的に、装置600が複数の本体要素610を含んでいてもよい。装置600は、哺乳類の下肢を内部に収容するための開口部112を含んでいる。また、装置600は、複数のガスプレナム172A、172Bへと形成するための本体要素610も含んでいる。加圧圧縮力を四肢に対して加えるために、圧力印加ガスプレナム672内へガス又は空気を供給することができる。
【0068】
また、装置600は、熱交換流動媒体を内部に収容できる1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bを更に含んでいる。本体要素610及び熱交換ユニット120A、120Bは、哺乳類の四肢130の一部を囲繞するために例えば矢印Dの方向を通って折り畳むことができる。作動時、装置600は、ガスプレナム672A、672B及び熱交換ユニット120A、120Bの位置を固定し且つ四肢130のサイズにしたがって調整することにより折り畳まれる。ガスプレナム672A、672B及び熱交換ユニット120A、120B及び本体要素610は、本体要素610及び熱交換ユニット120A、120B上の1つ以上の位置に配置された1つ以上の囲繞クリップ652によって、適切に折り畳み、固定し、及び/又は、調整することができる。1つ以上の囲繞クリップ652は、例えば、脚が内部に位置される前又は後において、図6A及び6Bに示されるようにベルクロ型ファスナであってもよく、又は、他の適したクリップ、ファスナ、ジッパ、スナップ、タブ、トング、接着剤、ヒドロゲルコーティングされたタブ、従来のテープ、ボタン、閉塞カフス、フック/ループ型システムなどであってもよい。続いて、その後、四肢130が配置される開口部112(図6B参照)を形成するために、本体要素610をガスプレナム672A、672B及び熱交換ユニット120A、120B上にわたって位置させることができる。開口部112のサイズがシール要素640によってシールされてもよい(図6A)。
【0069】
図1〜3Bに示されるガスプレナム172A、172Bに類似するガスプレナム672A、672Bは、空気又はガスで満たされるべく拡張することができる。本体要素610は、本体要素110と同じ押し潰すことができる曲げ易い材料、例えば内部に位置される四肢130を見ることができるようにする透明材料又は半透明材料から構成されてもよい。本体要素610は、それが圧力印加ガスプレナム672A、672Bへと延ばせるように押し潰すことができ且つ曲げ易くてもよい。したがって、本体要素610及び熱交換ユニット120A、120Bの材料は、下肢の形状へと適合し且つ下肢の一部を強固に取り囲むために曲げ易く且つ容易に押し潰すことができる可撓性材料から形成される。熱交換ユニット120A、120B及び本体要素610のための材料は、熱交換ユニット120A、120Bと下肢との間の表面接触を高めるために押し潰すことができる曲げ易い材料から構成される。材料は、加圧圧縮力下で拡張又は圧縮を維持してもよい。したがって、下肢の表面と熱交換ユニット120A、120Bとの間及び/又は本体要素610との間で良好な表面接触が成され、四肢を装置600内に受けるための空間150が最小限に抑えられる。
【0070】
また、汎用ポート625(図6B)は、様々な流体ポート及び圧力ポートを一緒に束ねるために使用することができるとともに、コントローラ160、流体源161、圧力センサ162及び/又はポンプ163に対して接続することができる。輸送を容易にし且つ接続を容易にするために、1つ以上のチューブ、ライン及びポートを一緒に束ねて、熱調節流体源、真空ポンプ、及び/又は、制御ユニット(図示せず)に接続するためのマニホールド114に対して接続することができる。図6A及び6Bに示されるように、マニホールドは、足のつま先部分の近傍に位置されるのが都合良い。
【0071】
図6Bを参照すると、一実施形態において、本体要素610及び/又は熱交換ユニット120A、120Bは、装置600の使用中に四肢130の動きを許容する1つ以上の解放領域623を含んでいる。熱交換ユニット120A、120Bにおける解放領域623の配置は、四肢130の所望の領域のみへ熱を伝えることができるように意図的に位置されてもよい。特定の四肢の特定の領域との熱交換が不快になり得ることが分かっている。例えば、足の踵領域に対して熱を供給することが一部の被検者にとって不快な経験となり得ることが分かっており、したがって、図6Bに示されるように、解放領域623を踵に形成するために熱交換ユニット120A、120Bの踵領域が除去されている。一実施形態では、プロセスが不快になるのを取り除き或いは防止するために、踵領域の近傍にある熱交換ユニット120A、120Bの熱伝達部が除去される。
【0072】
ガスプレナム672A、672Bを形成するために使用される押し潰すことができる曲げ易い材料の厚さは、ガスプレナム672A、672Bに約1psi〜約15psiの圧力レベルで流体が満たされるときにそれが加圧状態を維持できる限り、制限されない。ガスプレナム672A、672Bの厚さは、装置600が使用されるときにそれが加圧状態を維持できさえすれば制限されず、例えば、内部に収容される四肢130の部分の形状及びサイズに柔軟にに適合するために、(約1.5ミル〜約12ミルなどの)約0.5ミル〜約20ミルの厚さを使用できる。一例では、内部に収容される四肢130の部分の形状及びサイズに柔軟に適合するために、約1.5ミル〜約12ミルの厚さを有するウレタン材料を使用できる。
【0073】
熱交換ユニット120A、120Bは、内部に受けられる四肢130のための熱交換を行なうために装置600内に取り外し不能に或いは取り外し可能に配置することができる。熱交換ユニット120A、120Bの一例が図3A〜3Bに示されている。加熱流体、加熱空気、冷却流体、又は、冷却空気などの熱交換流動媒体は、1つ以上の流体供給ライン及び1つ以上の流体戻しラインを介して、流体源(図示せず)から熱交換ユニット120A、120Bに供給し、及び熱交換ユニット120A、120Bを出ることができる。例えば、熱交換ユニット120A、120Bは、加熱水が流通供給される水加熱パッドであってもよい。代替的に、熱交換ユニットは、いずれも参照することにより本明細書に組み入れられる10/11/2007に出願された同一出願人による米国特許出願第11/870,780号(代理人整理番号#DYNA0007)明細書及び2006年8月2日に出願された米国仮特許出願第60/821,201号明細書に詳しく記載された電気パッドを含んでいてもよい。
【0074】
装置の様々な部品をシールし且つ下肢が開口部112を通じて空間150内に配置されるときに下肢に対して圧力を加えることができるように下肢の一部を固定するために、シール要素が使用されてもよい。シール要素640は、哺乳類の下肢の一部のサイズにしたがって開口部112をシールするために使用されてもよい。シール要素640は、シール要素140と同じ材料から形成されてもよく、開口部112に対して取り付けるか、又は取り外し可能に取り付けることができる。
【0075】
図6Cは他の典型的な下肢装置600の斜視図である。図6Dは、図6Cに示される装置600の分解斜視図である。装置600は、複数の圧力印加ガスプレナム672A、672Bを有する本体要素610A及び本体要素610Bを含んでいてもよい。本体要素610A,610Bは、一般に、平坦であるか、又は最小の空間や体積を占めており、それにより、装置600を容易に都合良く折り畳み、保管し、又は出荷することができる。
【0076】
一実施形態において、本体要素610A,610Bは、本体要素610A,610B間に形成される空間150内に取り付けられるか、又は位置される1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bも含んでいる。熱交換ユニット120A、120Bは、本体要素610A,610B上に位置されると、哺乳類の下肢に対して圧力を加えることができるように流体がガスプレナム672A、672B内へ供給される際に、下肢の一部(例えば、人間の足及びふくらはぎ)と接触するようになっている。熱交換ユニット120A、120Bは、ガスプレナム672A、672Bによって四肢に対して圧縮力が加えられる際に熱を効率的に交換できるように下肢の一部と直接に接触するための複数の熱接触ドーム648を含んでいる。下肢に対して加えられる圧縮力は、ガスプレナム672A、672B内に供給される流体の圧力レベルを変えることにより調整することができる。一般に、約5mmHg〜約25mmHgの圧力レベルを加えることができる。空間150内に受けられる下肢の温度は、熱交換ユニット120A、120B内へ供給される熱流体の温度を調整することにより増加、低減又は維持することができる。
【0077】
加熱流体、加熱空気、冷却流体、又は、冷却空気などの熱交換流動媒体は、1つ以上の流体供給ライン624A,624B及び1つ以上の流体戻しライン622A,622Bを介して流体源(図示せず)から熱交換ユニット120A、120Bに供給し、及び熱交換ユニット120A、120Bを出ることができる。マニホールド114は、マニホールド114上に位置された供給ライン630及び供給ライン632を用いて、1つ以上の流体供給ライン624A,624B及び1つ以上の流体戻しライン622A,622Bに対して接続されてもよい。マニホールドは、マニホールド114上の流体ポート177A,177Bを複数の供給ライン630、供給ライン632と熱交換ユニット120A、120Bの流体供給ライン624A,624B及び流体戻しライン622A,622Bとに対して取り付けて接続することができるように、内部流体チャンネルを含んでいてもよい。また、マニホールド114は、1つ以上のガスライン634,636を介して圧力印加ガスプレナム672A、672B内へガス又は空気を供給するために1つ以上のガス供給ラインに対して接続されていてもよい。
【0078】
装置の様々な部品をシールし且つ四肢が開口部112を通じて空間150内に配置されるときに四肢の一部を固定するために、複数の囲繞クリップ652が使用されてもよい。囲繞クリップ652は、例えば、下肢、足又は脚が内部に位置される前又は後において、ベルクロ型ファスナであってもよく、又は、他の適したクリップ、ファスナ、ジッパ、スナップ、タブ、トング、接着剤、ベルクロ、ボタン、閉塞カフス、フック/ループ型システムなどであってもよい。
【0079】
装置600の作動時、熱交換ユニット120A、120Bが下肢の少なくとも一部と接触できるように、本体要素610A,610B間に形成された空間150内に下肢が配置される。その後、所望の嵌め合いを成すように囲繞クリップ652を用いて本体要素610A,610Bを下肢の周囲に固定することができる。その後、ガスプレナム672A、672Bを加圧して、熱的に制御された熱交換ユニット120A、120Bを下肢の表面に対して押し付け、それにより、下肢と温度制御された熱交換ユニット120A、120Bとの熱交換を行なうことにより、患者の体温を制御することができる。装置600は、哺乳類の足、脚、肢などの異なるサイズへと延ばされてもよい。例えば、装置600は、1つ以上の熱交換ユニット120が取り付けられた1つ以上の本体要素610を含んでいてもよい。例えば、圧力印加ガスプレナムを有する上側本体要素が脚の足部に取り付けられ、圧力印加ガスプレナムを有する下側本体要素が脚の膝下又はその近傍のふくらはぎ部分に取り付けられる。代替的に、装置600の1つの本体要素を哺乳類の全脚部のために設けることができる。
【0080】
図7は、本発明の1つ以上の実施形態に係る装置700の内外の様々な部品に対して様々なガス、流体ラインを接続するために使用される1つ以上の取付具を有するマニホールド714の一例を示している。マニホールド714は、本体要素及び熱交換ユニットにおける1つ以上の開口部を通じて、装置の本体要素、ガスプレナム、熱交換ユニットに対して取り付けることができる。図7は、装置100,400〜600及び800〜1000に関連して本明細書中で説明される様々な部品を含む装置700を概略的に示す部分断面図であり、マニホールド714は、一般に、本明細書中で説明される任意の構造において有用である。一態様において、マニホールド14は、前述したマニホールド114,625の代わりに使用される。
【0081】
マニホールド714は、一般に、圧力ポート716、718などの1つ以上の流体ポート又は圧力ポートと、流体供給ライン724と、流体戻しライン722とを含んでおり、これらは、マニホールド本体715に対して接続するか、又は射出成形、熱積層(heat stacking)、接着剤又は他の製造方法を使用して一体的に形成することができる。したがって、熱交換ユニット、ガスプレナム、流体パッド、他の加熱部品、電気パッド、真空ライン、圧力検出ラインなどを接続するための接続点を形成するために急速接続型取付具又はコネクタを組み込むことができる。例えば、マニホールド714は、ミネソタ州のセントポールにあるColder Products CompanyのCPCに類似する急速接続タイプのコネクタなどのコネクタ730、732、734、736を含んでいてもよい。作動時、装置700内に形成される真空空間は、装置の外部の熱伝達流体及び/又は空気がプロセスの動作に影響を与えないように丈夫で気密なシールを必要とする。マニホールド714は、それが低コストであることから射出成形プラスチック材料から形成することができるか、又は任意の他の適した材料から形成することができる。シールは、一般に、ポンプ163を用いて装置700のガスプレナム172A、172B内が所望の圧力に達することができるように、マニホールド714(様々な1つ以上の流体ポート又は圧力ポート(例えば、参照符号716、718))と本体要素710(例えば、本体要素110、510に類似する)の間で形成される。本体要素710とマニホールド714の様々な部品との間で形成されるシールは、数例を挙げると、従来の接着剤、機械的な力、又は、Oリングを使用して作成することができる。
【0082】
図7に示されるように、マニホールド714は、流体供給ライン724を使用し、コネクタ732及び流体源161の流体供給ライン161Aと流体連通する1つ以上の流体供給取付具754及び従来のチューブ753を介して、図3A〜3Bに関連して説明した装置に類似する熱交換ユニット720A及び720Bの入口に接続されてもよい。熱交換ユニット720A,720Bの出口は、コネクタ730及び流体源161の戻し流体ライン161Bと流体連通する1つ以上の流体供給取付具752及び従来のチューブ755を介して流体戻しライン722に対して接続されている。
【0083】
一実施形態において、ガスプレナム172A、172Bの内部領域は、マニホールド714内に収容されたコネクタ734,736を含む圧力ポート716、718に接続されるポンプ163と、装置700の内部領域内に配置される取付具756,758とに対して接続されている。一実施形態において、装置700の本体要素内に形成されたガスプレナム172A、172Bは流体で周期的に満たされ、それにより、哺乳類の四肢の一部に対してベローズ状の動作及び/又は圧縮力を適時に加えることができる。
【0084】
装置700の作動中、手、前腕、足、脚、上肢、又は、下肢(図示せず)は、装置700の開口部712内に配置されて、1つ以上のガスプレナム172A、172Bと1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bとが取り付けられ且つマニホールド714が取り付けられた本体要素710内で囲繞される。代替的に、装置は、1つ以上の本体要素を折り畳んで丸めることによって組み立てられて1つ以上の囲繞クリップで囲繞される必要があってもよい。また、1つ以上の取り外し可能な熱交換ユニットは、装置内で予め組み立てられてもよく、四肢を装置内に配置する際に組み立てられてもよい。その後、内部領域713内に配置された四肢に対して装置を取り付けるために、シール要素740のシール部741が装置の開口部の周囲に巻き付けられる。
【0085】
一実施形態では、1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bに入る流体の温度を検出するために流体供給ライン161A内に流体検出アセンブリ760が配置されており、それにより、流体源161内に収容された加熱要素又は冷却要素をコントローラ160によって制御することができる。流体検出アセンブリ760は、一般に、本体762と、1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bに対して供給される流体と熱伝達状態にある1つ以上のセンサ761とを含んでいる。1つ以上のセンサ761は、サーミスタ、RTD、熱電対、又は、本体762及び流体供給ライン161Aを通じて流れる流体の温度を検出するために使用できる他の同様の装置であってもよい。一般的には、1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bに対して供給される流体の温度制御に対して環境が影響を与えないようにするために、1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bに対して可能な限り近接するように1つ以上のセンサ761を位置させることが望ましい。
【0086】
血流を増大させるプロセス及び哺乳類の体温制御の様々な態様を制御するため、コントローラ160は、処理シーケンスの全ての態様を制御するようになっている。一実施形態において、コントローラ160は、流体源161、ポンプ163、及び、装置700の全ての他の必要とされる要素を制御するようになっており、それにより、制御された圧力をガスプレナム172A、172Bによって四肢に対して供給できるとともに、制御された温度を1つ以上の熱交換ユニット720A,720Bに対して供給して患者の体温を制御することができる。コントローラ160は、一般に、ユーザ及び/又は装置内の様々なセンサ(例えば、圧力センサ162、流体検出アセンブリ760)からの入力を受けるとともに、様々な入力及びコントローラのメモリに保持されるソフトウェア命令にしたがって部品を適切に制御するように構成されている。コントローラ160は、一般に、様々なプログラムを保持し、プログラムを処理し、必要なときにプログラムを実行するためにコントローラによって利用されるメモリ及びCPUを含んでいる。メモリは、CPUに接続されており、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フロッピディスク、ハードディスク、又は、任意の他の形態のデジタル記憶装置、局部記憶装置、リモート記憶装置など、容易に利用できるメモリのうちの1つ以上であってもよい。ソフトウェア命令及びデータは、CPUに命令するために、コード化してメモリ内に記憶させることができる。プロセッサを従来の様態でサポートするために、CPUには支援回路も接続されている。支援回路は、キャッシュ、電源、クロック回路、入力/出力回路、サブシステムなどを含んでおり、これらは当分野で周知である。コントローラ160によって読み取ることができるプログラム(又は、コンピュータ命令)は、どのタスクが装置内で実行できるのかを決定する。好ましくは、プログラムは、コントローラ160によって読み取ることができるソフトウェアであり、所定の規則及び入力データに基づいてプロセスを監視して制御するための命令を含んでいる。
【0087】
図8は、本発明の一実施形態に係る装置800の様々な部品に対して接続される制御システム864を有する制御アセンブリ801の一実施形態を示している。装置800及び制御システム864は、本明細書中で説明される装置(例えば、参照符号100、400〜1000)及び制御システム164と同様である。制御システム864は、一般に、装置800内で見出されるガスプレナムに対して供給される圧縮加圧力及び温度を調整するために必要とされる全ての電子機器及び機械部品を収容するコントローラ160を内部に有するコントローラモジュール860を含んでいる。この構成において、制御システム864は、一般に、例えば、ポンプ163、圧力センサ162、従来のチューブ824、流体源161、流量センサ852、流体検出アセンブリ760、及び、温度センサ810を含んでいる。温度センサ810は、一般に、血流量を増大させて患者の体温を制御するプロセスが行なわれている間に患者の体温を測定するために使用される装置である。患者の体温は、適切な従来の温度検出装置を使用して耳、口、皮膚上又は経直腸的に測定することができる。また、制御システム864は、特に、コントローラ160によって制御される、熱交換媒体ポンプ、ヒータ、クーラ、熱電対、加熱媒体ポンプ、真空及び温度のプロセス制御のための比例・積分・微分(PID)コントローラ、1つ以上の電源、ディスプレイパネル、アクチュエータ、コネクタ等を含んでいてもよい。制御システム864内の様々な要素の設定値及び電流読取値は、オペレータインタフェースを与えるディスプレイパネル(例えば、ライトディスプレイ、CRT)上に都合良く位置されてもよい。他の実施形態では、圧力制御装置及び温度制御装置が2つの異なるコントローラによって制御されてもよい。
【0088】
制御システム864は、温度センサや圧力センサなどの装置センサが故障し或いは接続が外れる場合に作動される装置停止機能を含む安全機能を与えてもよい。また、制御システム864は、装置の温度が正確に調整されない場合にアラーム回路又は警告信号を含んでいてもよい。ガスプレナム内の圧力が特定のレベルを超える場合にガスプレナムからガスを放出できるように、装置の圧力ループ内にリリーフバルブが設けられてもよい。
【0089】
一実施形態では、肢、脚、装置が取り付けられる他の四肢以外の哺乳類の部分の温度を測定するために温度プローブ862を設けることができる。他の実施形態では、深部体温読取値を供給するために、外耳道に対して温度センサ810として鼓膜を取り付けることができる。したがって、患者などの人間における基準温度を得ることができる。他のセンサは、患者の血流量、血圧及び心拍数を含んでいてもよい。これらのデータは、患者を正常な体温に維持して様々な熱的疾患から守る適切な患者の健康管理にとって重要である。装置内の皮膚の温度を測定して、身体部分が血管収縮状態又は血管拡張状態にあるかどうか又は皮膚の何の温度が2つの装置流体温度と比較されるのかを示すことができる。皮膚の温度は、熱電対、サーミスタ、熱流束及び他の測定装置のような異なる装置及び異なる手段によって測定することができる。また、血流量を測定してデータをコントローラ160に送ることもできる。
【0090】
図8に示されるように、装置800は、装置800内のガスプレナムに対して圧力を供給するために、ポート812及び圧力センサ戻しライン822を介してポンプ163(例えば、機械ポンプ)に対して接続することができる。圧力レベルを維持するとともに、ガスプレナム内の圧力レベルを正確に検出して読み取ることは重要である。より良い応答及び真空レベルのより正確な制御を行なうことができるように、マニホールド714(図7)内に圧力トランスデューサを配置することもできる。ポンプを制御する信号は、圧力トランスデューサから配線を通じてコントローラ160内の制御回路に送られる。データの更なるセット、例えばポンプによって四肢に対して加えられる圧力データは、評価を行うために圧力レベルを記録してデータをコントローラ160へ送るために、装置内に配置された一連の圧力センサによって測定することができる。その後、コントローラ160は、最高レベルの血流量を生成して必要に応じて身体の深部体温を高めるために、装置内の圧力及び温度のレベルを調整することができる。
【0091】
また、1つ以上の熱交換ユニット(例えば、図1における参照符号120A、120B)を内部に有する装置800は、熱交換媒体供給ライン842及び熱交換媒体戻しライン844を介して流体源161に接続されてもよい。また、熱交換媒体供給ライン842の内部を流れる熱交換媒体の流れは、流量センサ852及び/又は流体検出アセンブリ760によって監視して調整することができる。一実施形態において、流体源161は、内部に熱交換媒体861Cが存在する流体タンク861Aと、熱交換媒体861Cを装置800内に収容される1つ以上の熱交換ユニット(図示せず)に対して供給するために使用される機械ポンプ861Bと、ヒータアセンブリ861Fとを含んでいる。ヒータアセンブリ861Fは、加熱素子861Dと、加熱素子861D及び熱交換媒体861Cの温度を制御するために使用されるヒータコントローラ861Eとを含んでいてもよい。また、流体源のリザーバ内の流体レベルをオペレータに警告するために、低流体LEDが使用されてコントローラ160のフロントパネル上に表示されてもよい。流体レベルが低く且つより多くの流体が必要とされるときに信号を送るため、更なるセンサが流体リザーバに対して加えられる。更に、装置の手順又は単一の動作が完了する際に流体を流体パッドから戻す形態で従来の流体ポンプが作動できるようにする制御信号が存在してもよい。また、装置は、様々なチューブ及び流体ラインを通じて循環する加熱流体又は冷却流体のための温度センサを含んでいてもよい。また、本発明の熱交換ユニットは、哺乳類の四肢の温度を監視して温度制御フィードバックを行なうために、1つ以上の温度センサ及び熱電対を含んでいてもよい。
【0092】
本発明のこれらのライン及びポートは、コントローラ160に接続された同じ或いは異なる保護シース内に束ねられて、収容されて張力が解放されてもよい。また、ラインは、流体ライン、圧力ライン、電熱ライン、空気ラインなど、使用される各媒体毎に異なる囲繞体を用いて同じ又は異なるチューブセット内に収容されてもよい。
【0093】
一実施形態において、熱交換ユニットは、閉じられたループの構成で、熱交換媒体を供給する流体源161と結合される。例えば、熱交換ユニットは、閉じられた液体ループの構成で、コントローラモジュール860内に収容された流体源161内に収容される液体タンクと結合されてもよい。一実施形態において、流体源161内に収容された1つ以上の抵抗加熱素子(例えば、参照符号861D)及び/又は熱電装置は、タンク861A内に収容された熱交換媒体861Cを加熱し或いは冷却するために使用される。閉ループ構成は、一般に熱交換ユニットが熱交換媒体源から取り外される場合に起こる熱交換媒体の損失を最小限に抑えるため、オペレータのためのメンテナンス要件を減少させる。閉ループ構成によって、熱交換媒体源の汚染も最小限に抑えられる。水などの熱交換媒体の汚染は、熱交換媒体源に対して抗菌剤を加えることによって減少させることもできる。異なる実施形態において、熱交換媒体は液体又は気体であってもよい。実際には、熱交換媒体の流量は可能な限り高くなければならない。パッドを通じた流入温度及び流出温度が約1.0℃内でなければならないことが試験により分かった。また、特定の場合には、パッド流体温度が40℃を下回る場合には血流量が全く減少しないことが分かった。高い流量は良好な温度一貫性を可能にし、その結果、熱損失が少なくなり、良好な熱交換がなされる。熱交換ユニット及び熱交換媒体源を含む閉ループ構成では、システム全体の容積(例えば、0.75リットル)を用いると、多くの流量(例えば、毎分2リットル)が熱交換ユニットを通じて流れる(例えば、毎分0.35リットルの流量の2倍)。
【0094】
一実施形態において、流体源161内に収容される加熱素子861D及びヒータコントローラ861Eは、システム内の様々な部品に対する損傷及び/又は患者への負傷を防止するようになっている。この場合、危険な状態が制御アセンブリ801の使用中に起こらないようにするために、熱交換媒体861Cと熱を交換するために使用される加熱素子861Dには1つ以上の電圧又は電流制限装置が接続されている。一実施形態において、加熱素子861Dは、加熱素子861Dの温度が増大するにつれて加熱素子861Dの抵抗を減少させるプラス温度係数を有する材料を含んでいる。したがって、ヒータコントローラ861E内の電力供給素子及び加熱素子861Dの注意深い選択により、所望の加熱素子温度を達成できつつ装置に対する望ましくない損傷又は危険な状態が起こらないようにシステムを設計することができる。危険な状態は、ヒータコントローラ861Eによって供給される電圧又は電流を制限することにより加熱素子861Dによって生成される電力(例えば、電流×抵抗)制限に起因して加熱素子861Dによって達成できる最大温度を制限することより回避される。
【0095】
他の実施形態において、熱交換ユニット及び圧力供給ラインは、自動遮断機構を有する急速接続取付具などの作動取付具を使用してコントローラ160に対して接続されてもよい。自動遮断機構は、圧力供給ラインが外れると直ぐに圧力印加及び加熱媒体流れを中断させる。また、作動取付具によってオペレータが熱交換ユニットを交換できてもよい。また、装置の様々な使い捨て式の部品をそれぞれの使用後に取り外すことができるようにするため、様々な急速切断コネクタがコントローラ160に対して加えられてもよい。一般的には、温度制御プロセス及び/又は外科手術などの患者に対して実行される他の処置中に患者を自由に移動して位置決めすることができるように、必要に応じて装置800の1つ以上の部分を制御システム864の1つ以上の部品から分離できるようにすることが望ましい。前述したように、本明細書中で説明される1つ以上の実施形態の従来技術を超える1つの利点は、少なくとも単一の四肢の部分を使用して患者の深部の体温を調整できることである。
【0096】
前述した装置の実施形態は、哺乳類の1つ以上の四肢における血流量を増大させるとともに、熱的疾患を調整し及び/又は部静脈血栓症(CVT)を防止するために静脈内の血栓を減少させる方法を提供する。当該方法は、本発明の1つ以上の装置を哺乳類に対して与え、装置を使用して哺乳類の1つ以上の四肢の温度を調整することを含んでいる。その結果、哺乳類の四肢内の1つ以上の動静脈吻合(AVA)血管が拡張されて、AVA血管の収縮が減少され、それにより、1つ以上の四肢における血流量及び血液容量が増大されて、血流の血管壁接触時間が減少されるとともに、鬱血に起因する静脈内の血栓が減少される。四肢の任意の適した部分、好ましくは装置により血管拡張できる脈管構造を有する四肢は、装置内に配置されて装置内でシールされてもよい。患者の深部体温の効率的な制御は、高密度のAVAを有する四肢(例えば、手、足、腕)と熱を交換することによって向上させることができる。
【0097】
図1を参照すると、前述した装置100を使用するプロセスは、一般に、装置100の空間150内に四肢130を位置させることによって始まる。哺乳類の体温及び血流量を高めるプロセスが装置100に関連して説明されているが、この構成は本発明の範囲を限定しようとするものではない。なぜなら、本明細書に記載された任意の装置を用いてこのプロセスを実行できるからである。四肢130が装置100内で囲繞されると、流体供給ポート176に対して圧力が加えられ、それにより、1つ以上のガスプレナム内の圧力が増大され、1つ以上のガスプレナムによって供給される接触圧に四肢130が晒される。加えられた圧力は、例えば、(約10mmHg〜約14mmHgなどの)約0〜約25mmHgの範囲であってもよい。同時に又は連続して、温度制御された熱交換媒体が、装置100の空間150内に位置される1つ以上の熱交換ユニット120A、120B内へ導入される。流体源161から供給される流体の流量は一定であってもよく、また、流量は、熱交換ユニット120A、120B内で所望の温度を達成できるように維持しさえすれば良い。
【0098】
一実施形態において、コントローラ160は、例えば約30分であってもよい処置の継続時間にわたってガスプレナム内の圧力及び熱交換媒体を管理する。継続時間は、処置される四肢のサイズ及び四肢の温度に応じて更に長くてもよく、更に短くてもよい。プロセスは必要に応じて1回以上の回数、繰り返されてもよい。いくつかの場合では、処置の継続時間が周期的に繰り返されることにより、所定時間「ON」された後に所定時間「OFF」されてもよい。一例では、処置の継続時間が約1分以上であり、その後、約1分以上の期間にわたってOFFされ、これが5サイクル以上繰り返される。コントローラは、各処置期間後に処置を中止するように構成されている。制御ユニット上の「停止」ボタンを使用して、熱交換媒体供給及びガスプレナムに供給される圧力の両方をOFFにしてもよい。一態様において、コントローラ160は、下肢の拡張を監視して、再充満時間を所望のように調整できるように静脈再充満を決定するように設計される。一般に、四肢内で血液の移動を引き起こすためには、四肢に対して僅かな大きさの圧力、例えば約0mmHg〜約25mmHgの圧力だけを供給すれば済む。一実施形態では、血液の移動を引き起こすために約10mmHg〜約15mmHgの圧力が四肢に対して加えられる。一例では、約3mmHgの正圧を四肢に対して加えて熱交換ユニットとの間で良好な接触を形成することにより1つ以上の熱交換ユニット120A、120Bが四肢と接触され、その後、30〜60秒間にわたって内部領域の圧力が約20mmHgまで増大されることにより、四肢に対する圧力が増大され、その結果、血液が圧送される。その後、四肢に対して加えられる圧力を低圧レベルと高圧レベルとの間で所望の回数にわたって周期的に変えることができる。周期圧力が低圧(例えば、0〜3mmHg)レベルまで降下すると、これにより、静脈再充満のための時間が与えられる。一実施形態では、次の圧力サイクルが実行される前に肢を完全に再充満させるために、患者の四肢の静脈再充満時間(VRT)を測定し、及び/又は、四肢に対する圧力の供給を制御することが望ましい。一実施形態において、コントローラ160は、患者の四肢のVRTに関する入力をユーザ又は1つ以上のセンサから受けるようになっており、それにより、コントローラ160は、圧力サイクル、熱交換ユニットの温度、及び/又は、処置の継続時間を制御して最適に管理することができる。
【0099】
本発明の実施形態は、熱交換装置に対して供給される熱交換媒体の温度を、哺乳類を火傷させることなく可能な限り高い温度まで高めることにより、血流量を増大させて哺乳類の体温を調整するために使用されてもよい。健康な患者において、付属肢上の細胞の燃焼は、細胞温度が約43摂氏温度(℃)を越える場合に起こり得るが、これは、晒している時間及び熱伝達率に伴って変わる場合がある。したがって、熱交換媒体の温度は、皮膚温度が43℃未満に維持されるように較正されることが好ましい。例えば、異なる人は、その年齢や健康状態等にしたがって、異なる温度範囲において異なる許容範囲レベルを有する。一般に、四肢を加熱するためには、熱交換媒体の温度、したがって熱交換ユニットの表面の温度を、約30℃〜約43℃の温度に制御することが望ましい。一実施形態において、熱交換媒体の温度、したがって熱交換ユニットの表面の温度は約37℃〜約40℃である。
【0100】
また、装置を使用して患者の体温を冷やすことができる。一般的には、患者の体温を維持することができ、あるいは、処置によってそれが必要とされる場合には、約33℃まで積極的に冷却することにより患者の深部体温を下げることができる。一般に、四肢を冷却するためには、熱交換媒体の温度、したがって熱交換ユニットの表面の温度を約0℃〜約30℃の温度に制御することが望ましい。一実施形態では、熱交換媒体の温度、したがって熱交換ユニットの表面の温度が約0℃〜約10℃である。
【0101】
その結果、患者の不快感を減らすために、コントローラは、異なる温度設定及び真空設定を伴って構成されてもよい。一実施形態において、1つの処置設定は「High」であり、これは最高温度設定及び最高圧力設定を含んでいる。「Medium」及び「Low」設定は、温度及び/又は圧力に関して次第に更に低い設定を有している。長い時間にわたって処置される患者又は更なる合併症の危険が高い患者は、「Low」設定で処置されてもよい。例えば、麻酔がかけられている患者に対する圧力の印加及び温度調整に関しては特別な注意が払われる。一実施形態において、高い温度は約42℃であり、中間の温度は約41℃であり、低い温度は40℃であり、一方、真空レベルは、全ての温度設定にわたって約10mmHgのままである。
【0102】
更なる態様において、装置は、身体の深部体温を約4℃/時〜約12℃/時の速度で上げるために、約5ワット〜約250ワットの電力を使用してもよい。印加される電力は約5ワット〜約80ワットであることが好ましいが、最大で約250ワットまでの電力が使用されてもよい。一方、身体全体を加熱する従来の対流加温ブランケットは約500ワットを使用する場合があり、これは、制御が困難であり、効率が低い。
【0103】
表1は、接触表面積に対する適切な印加電力(ワット)の典型を示している。一実施形態において、熱交換ユニット(例えば、参照符号120A、120B,220,320A,320B)と四肢上の皮膚との間の接触表面積は、約30平方インチ(例えば、0.019m2)〜約410平方インチ(例えば、0.264m2)である。他の実施形態において、熱交換ユニットと四肢の皮膚との間の接触表面積は約800平方インチ(例えば、0.516m2)未満である。一般的には、熱交換ユニットと四肢の皮膚との間の接触を最大にして熱伝達を高めることが望ましい。しかしながら、それは、四肢と熱交換ユニットとの間で最も効率的且つ制御された熱伝達を行なう四肢中で主に見出されるAVAの使用によるものである。
【表1】
【0104】
本明細書に記載される試験は、図1に示される装置と類似する装置を使用して実験室内で行なわれた。四肢の局所的な血液容量における1分当たりのパーセンテージ(%)増大が測定された。ボランティアの人の被検者が研究に参加した。「%面積」の横列は、プロセスを実行するために使用される熱交換ユニット(例えば、図1における参照符号120A、120B)により覆われる患者身体の面積のパーセンテージを示している。「面積 平方インチ」の横列は、熱交換ユニットによって覆われる実際の平方インチを示している。「ワット/平方インチ」、「ワット」及び「深部に対するワット」は、本明細書中で説明される典型的なバージョンの装置で使用される電力及び電力密度の例である。「1」〜「8」のラベルが付された縦列は、異なる熱交換ユニット及び装置構造を示している。
【0105】
一実施形態では、図9に示されるように、装置900は、コントローラ160と連通する流体源981を用いて、流体プレナム901内に形成される空間950内に配置される哺乳類の四肢に対して圧力を加えるために使用される。使用時、流体源981は、空間950内に配置された患者の体温を熱的に調整して四肢に対して圧力を加えるために、柔軟流体プレナム902A、902Bを介して熱交換流体を供給して再循環させるようになっている。四肢130に対して圧力を供給して四肢の温度を調整するために1つ以上の柔軟流体プレナム902A、902Bを使用すると、システムコスト及び複雑度を低減することができる。この構成において、流体源981は、一般に、四肢と柔軟流体プレナム902A、902Bとの間で効率的な熱伝達を作成するために所望の温度及び所望の圧力における柔軟流体プレナム902A、902Bを介して流体を供給するようになっている。それぞれの柔軟流体プレナムは、流体チューブ982及び流体源981に対して接続される1つ以上の内部領域(すなわち、ユニット内の内部シール領域)を含んでいてもよく、これにより、四肢130が装置900内に位置されるときに内部領域を流体で満たすことができる。
【0106】
流体プレナム901は、一般に、柔軟流体プレナム902A、902Bと、支持特徴部920A,920Bと、シール要素904とを含んでいる。一実施形態において、図9に示されるように、流体プレナム901の支持特徴部920A,920Bは、一端(すなわち、ヒンジ913)がヒンジ結合され且つ他端(すなわち、隙間905)がシール要素904(例えば、ジッパ、ベルクロファスナ)によって接続される2つの部品を成して形成される。一実施形態において、柔軟流体プレナム902A、902Bは、前述した熱交換ユニット(例えば、参照符号120A、120B)に関連して先に説明した材料と同じ材料から形成される。一実施形態において、支持特徴部920A,920Bは、硬質プラスチック、金属、複合材料又は他の構造的に望ましい材料から形成されており、それにより、柔軟流体プレナム902A、902Bによって患者の四肢に対して与えられる圧力負荷(例えば、参照符号「B」)を受けることができる十分な強度を有する。一実施形態においては、環境への熱損失を減らすために支持特徴部920A,920Bの外面を断熱することが望ましい。
【0107】
図10は、本発明の1つ以上の実施形態にしたがって内部に配置されてシールされる四肢130の温度を制御するために使用される装置1000の一例を示す側面図である。装置1000内で囲繞される四肢130は、例えば、図10に示されるような手及び前腕であってもよいが、この構成は本発明の範囲を限定しようとするものではない。この構成において、1つ以上の熱交換ユニット1020は、本体要素1010の内部領域1013内に位置される四肢130の所望の領域を加熱するように寸法付けられる。熱交換ユニット1020の温度は、図10に概略的に示されるコントローラ160及び流体源161を用いて調整することができる。四肢に対して加えられる圧力は、ガスプレナム(図示せず)に対して接続されるコントローラ160、ポンプ163、センサ162を用いて調整することができ、流体源161から供給される圧力は、1つ以上の熱交換ユニット1020に対して供給される温度調整された流体の流体圧力を制御することによって所望の大きさの圧力を患者の四肢に対して供給できるように制御することができる。図10には1つの熱交換ユニット1020だけが示されているが、この構成は本発明の範囲を限定しようとするものではなく、したがって、かん流を向上させるために四肢130の様々な部分の周囲に2つ以上の熱交換ユニット1020が位置されてもよい。図10を参照すると、様々な流体ポート及び圧力ポートを一緒にまとめてコントローラ160、流体源161、圧力センサ162、及び/又は、ポンプ163に対して接続するために汎用ポート1025を使用することができる。
【0108】
一実施形態では、図11に示されるように、装置680は、哺乳類の四肢130に対して圧力を加えるために使用される。この構成において、流体源681は、患者の体温を熱的に調整して四肢に対して圧力を加えるために、柔軟流体プレナム685を介して熱交換流体を供給して再循環させるようになっている。四肢130に対して圧力を供給して温度を調整するために1つの柔軟流体プレナム685を使用すると、システムコスト及び複雑度を低減することができる。この構成において、流体源681は、一般に、四肢と柔軟流体プレナム685との間で効率的な熱伝達を形成するために所望の温度及び所望の圧力で柔軟流体プレナム685に流体を供給するようになっている。それぞれの柔軟流体プレナム685は、流体チューブ682及び流体源681に対して接続される1つ以上の内部領域(すなわち、ユニット内の内部シール領域)を含んでいてもよく、これにより、四肢130が装置680内に位置されるときに内部領域を流体で満たすことができる。図11は、下肢に対する装置680の使用を示しているが、この構成は、本明細書に記載される本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0109】
一実施形態において、柔軟流体プレナム685は、十分な可撓性があるとともに、図11に示されるようにそれを四肢130の一部の周囲に巻き付けることができるように寸法付けられている。柔軟流体プレナム685の端部684,686は、流体源681から供給される流体によって四肢130に対して圧力が加えられるときに柔軟流体プレナム685の端部684,686を保持するように寸法付けられる1つ以上のシール要素683を使用して結合することができる。他の実施形態において、1つ以上のシール要素683は、ベルクロファスナ、ストラップ、又は、他の同様の装置である。
【0110】
一実施形態において、柔軟流体プレナム685は、特にウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル、ゴム、エラストマー、高分子材料、複合材料等を含むがこれらに限定されない曲げ易い材料から形成されている。一実施形態において、柔軟流体プレナム685は、互いにRF溶接され、結合され、又は熱シールされる柔軟材料からなる2つ以上のシートを使用して形成されて組み立てられる。他の実施形態において、柔軟流体プレナム685は、射出成形によって形成されて組み立てられてもよい。漏れない熱交換ユニットを提供するべく柔軟流体プレナム685を設計して製造する方法は多く存在する。
【0111】
一実施形態においては、圧力の大きさ及び圧力が加えられる時間間隔を調整することが望ましい。この実施形態において、柔軟流体プレナム685の内部領域内の圧力は、ベローズ状の動きを与えて様々な異なる圧縮圧力を四肢130に対して断続的に、連続的に或いは適時な態様で加えるべく、流体源681から供給される流体を使用して制御することができる。高レベルから低レベルへと圧力を変える周期的プロセスは、必要に応じて1回以上の回数繰り返されてもよい。幾つかの場合では、処置の継続時間は、所定期間にわたって高圧にし、その後、所定期間にわたってベースライン圧力にするべく周期的に繰り返されてもよい。一例において、処置の継続時間は、高圧で10秒以上、その後、ベースライン圧力で約60秒〜約120秒であり、これは5サイクル以上繰り返される。一実施形態において、高圧処置の継続時間は約10秒〜約5分であり、ベースライン圧処置の継続時間は約60秒〜約2分である。一実施形態において、高圧範囲は約20mmHg〜約60mmHgであり、ベースライン圧力は約0mmHg〜約15mmHgである。四肢130の一部に対して空気圧縮又は力を加えると、四肢内の血流量が増大され、静脈内における血栓及び鬱血が防止され、深部静脈血栓症が防止され得ると考えられる。ここで説明するベースライン圧力を加えた後に高圧を加えるという順序は、本明細書に記載される本発明の範囲を限定しようとするものではない。一実施形態において、印加されるベースライン圧力と印加される高圧との間の差は、約0mmHg〜約120mmHgの間で変化してもよい。他の実施形態において、印加されるベースライン圧力と印加される高圧との間の差は、約0.1mmHg〜約60mmHgの間で変化してもよい。一実施形態において、印加されるベースライン圧力と印加される高圧との間の差は、約0mmHg〜約45mmHgの間で変化してもよい。装置680内で見出される膨張可能なカフアセンブリ構造は、熱を四肢に対して伝えるとともに、コントローラ160と連通する流体源681及び柔軟流体プレナム685によって四肢に対して順次に加えられる圧縮力を用いて四肢内の血液を積極的に圧送するため、本明細書中で説明される他の部品と併せて使用することができる。
【0112】
図12A〜12Bは、哺乳類1230の血流量を増大させて体温を制御するために装置1200を哺乳類1230の皮膚1231の所望部位を覆うように配置させることができる本発明の一実施形態を示している。図12Aは、哺乳類1230の皮膚1231に対して貼り付けられた装置1200の側断面図である。図12Bは、哺乳類1230の皮膚1231に対して貼り付けられた装置1200の平面図を示している。装置1200は、一般に、本体要素1210と、1つ以上の熱交換ユニット1220とを含んでいる。本体要素1210は、一般に、シール要素1211と、1つ以上の柔軟要素1212とを含んでいる。図12Aに示される装置1200の一実施形態の本体要素1210は、第1の本体要素1210Aと第2の本体要素1210Bとの間に位置される加圧領域1214を含んでおり、この加圧領域1214内には、内部で正圧を得て第2の本体要素1210Bを1つ以上の熱交換ユニット1220及び皮膚1231に対して押し付けるために流体が供給される。加圧領域1214内に供給される圧力は、任意の所望の圧力、例えば大気圧を超える約0.1mmHg〜約80mmHgにすることができる。一実施形態において、加圧領域1214内に供給される圧力は、大気圧を上回る約0.1mmHg〜約15mmHgである。このようにすれば、例えば人間の背中、胸、大腿又は首上の位置などの患者の任意の開放領域上に装置1200を位置させて、加圧領域1214に対して圧力を印加し且つ1つ以上の熱交換ユニット1220を熱制御することにより、被検者の血流量を増大させて体温を制御することができる。
【0113】
一般に、本体要素1210の部品は、使い捨て可能な低コスト材料、生体適合性材料、滅菌可能な材料、及び/又は、本体要素110に関連して前述した材料に類似する低刺激性材料から形成することができる。柔軟要素1212は、一般に、特にウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ(塩化ビニル)、ゴム、エラストマー、高分子材料、複合材料を含むがこれらに限定されない押し潰すことができる曲げ易い材料から形成される。柔軟要素1212は、哺乳類1230の皮膚1231の領域を見ることができるようにする透明材料又は半透明材料から形成できる。柔軟要素1212の厚さは、装置1200が使用されるときにそれが加圧状態を維持できる限り、制限されない。一例では、内部に収容された皮膚1231の部分の形状及びサイズに柔軟に適合するために約1.5ミル〜約12ミルの厚さを使用することができる。
【0114】
シール要素1211は、一般に、内部領域1213内で1つ以上の熱交換ユニット1220を囲繞するべく哺乳類1230の皮膚1231に対するシールを形成するために使用される。シール要素1211は、一般に、制御システム164及び前述した他の支援装置(例えば、参照符号160〜163)を用いて形成された加圧領域1214内に加圧状態を適用できるようにするために、本体要素1210と皮膚との間にシールを形成するようになっている。シール要素1211は、特にヒドロゲル、ポリウレタン、ウレタンなどの粘着性のあるシール材料から形成することができる。他の例は、Deerfield Urethane Inc.が提供しているPSシリーズ熱可塑性ポリウレタンである。使い捨てできるシール材料は、様々な健康要件及び安全要件を満たすべく、それらが使用前に無菌状態となり及び/又は低刺激となるように製造されて包装されてもよい。シール要素1211は、空気の流れを可能にするため、通気性部分を含んでいてもよく、及び/又は、透過膜材料又は通気性材料から形成されてもよい。
【0115】
1つ以上の熱交換ユニット1220は、一般に、図3A〜3Bに関連して前述した装置と類似している。一実施形態では、図12Aに示されるように、1つ以上の熱交換ユニット1220は、皮膚1231から環境へと逃げる熱損失を減少させ及び/又は皮膚1231に対する熱伝達プロセスを向上させるために装置の1つ以上の辺に配置される絶縁層1221を有している。
【0116】
図12Bを参照すると、作動中、制御システム164の部品は、本体要素1210に形成された1つ以上のアパーチャーを貫通する流体供給ポート174、176などの様々な流体ポート又は圧力ポートを用いて加圧領域1214内に加圧状態を形成するために使用される。一実施形態において、1つ以上の熱交換ユニット1220は、流体供給ラインポート177を介してシステムコントローラ164の部品と連通する。
【0117】
一実施形態において、装置1200内に形成される内部領域1213(図12A)は、内部領域1213内に真空状態を作成するために圧力ポート1216に接続される真空ポンプ(図示せず)を用いて真空引きされる。内部領域1213内に作成される減圧により、装置1200の外部の大気圧は、柔軟要素1212を1つ以上の熱交換ユニット1220及び/又は皮膚1231に対して押し付け、それにより、哺乳類1230の血流量が増大されて体温が制御される。一実施形態では、内部領域1213が大気に対して開放され、それにより、加圧領域1214が加圧状態となって第2の本体要素1210Bが患者の皮膚に対して押し付けられるときに、この領域内でガス圧が増大することを防止してもよい。このようにすれば、例えば人間の背中、胸、大腿又は首上の位置などの被検者の任意の開放領域上に装置1200を位置させることにより、被検者の血流量を増大させて体温を制御することができる。
【0118】
本発明の一態様において、患者の深部体温を制御するために使用される装置は、感染の広がりを減少させ或いは最小限に抑えるように設計されている。一実施形態では、複数の患者間での感染の広がりを防止するために、患者又は他の細菌源と接触する部品が1回使用された後に捨てられる。例えば、図1を参照すると、1つ以上の本体要素110、1つ以上の熱交換ユニット120A、120B、及び、マニホールド114がそれぞれの使用後に廃棄される。
【0119】
本明細書に記載される本発明の1つ以上の実施形態は、熱を患者に伝えるために患者の皮膚にわたって空気を移動させる必要がある従来技術の装置で共通に見出される感染の機会を防止し或いは最小限に抑えることもできる。従来技術の装置における空気の移動は、感染を引き起こす可能性がある望ましくない材料の移動をもたらす。一実施形態において、患者の少なくとも一部は、装置の1つ以上の要素(例えば、図1における本体要素110)によって部分的に囲繞され、したがって、患者又は他の晒される人において感染を引き起こす可能性がある汚染をもたらす空気の移動を引き起こさないとともに、それを防止する傾向がある。
【0120】
以上は本発明の実施形態に関するものであるが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく本発明の他の更なる実施形態が想起されてもよく、また、上記範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の一実施形態に係る典型的な装置を示している。
【図2A】本発明の一実施形態に係る典型的な装置の斜視図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係る、図2Aに示されたガスプレナムの一部の拡大された部分分解図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係る熱交換ユニットの一例を示している。
【図3B】本発明の一実施形態に係る熱交換ユニットの他の例を示している。
【図4A】四肢を囲繞するために使用できる本発明の一実施形態に係る他の典型的な装置の斜視図である。
【図4B】本発明の一実施形態に係る図4Aの典型的な装置の断面図である。
【図4C】本発明の一実施形態に係る図4Bの方向とは異なる方向から見た図4Aの典型的な装置の断面図である。
【図5A】人間の四肢と共に囲繞される本発明の一実施形態に係る典型的な装置の平面図である。
【図5B】四肢を囲繞する前に折り畳まれる本発明の一実施形態に係る他の典型的な装置の平面図である。
【図6A】未だ折り畳まれても囲繞されてもいない本発明の一実施形態に係る典型的な下肢装置の平面図である。
【図6B】未だ折り畳まれても囲繞されてもいない本発明の一実施形態に係る典型的な下肢装置の斜視図である。
【図6C】本発明の一実施形態に係る典型的な下肢装置の斜視図である。
【図6D】折り畳まれてシールされた本発明の一実施形態に係る典型的な下肢装置の斜視図である。
【図7】様々なガスライン、真空ライン、流体ラインに接続される1つ以上の取付具を有する本発明の一実施形態に係る典型的なマニホールドを示している。
【図8】本発明の一実施形態に係る装置に接続された制御ユニットの一実施形態を示している。
【図9】本発明の一実施形態に係る典型的な装置の斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る典型的な装置の側面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る典型的な装置の側面図である。
【図12A】本発明の一実施形態に係る典型的な装置の側面図である。
【図12B】本発明の一実施形態に係る図12Aに示される典型的な装置の平面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流量を増大させて体温を制御する装置であって、
内部領域を取り囲む1つ以上の壁を有し、前記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが患者のある部位を覆うように配置されるように構成されているプレナムと、
前記1つ以上の壁と患者の前記部位との間に配置される1つ以上の熱交換ユニットと、
患者の前記部位の表面に対して前記1つ以上の熱交換ユニットを押し付けて前記1つ以上の熱交換ユニットと患者の前記部位との間の熱接触を高めるために、前記内部領域内の圧力を制御するように構成されているポンプと、
を備える装置。
【請求項2】
前記内部領域が約0.1mmHg〜約80mmHgの圧力に維持される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つ以上の熱交換ユニットのうちの1つにおける熱交換プレナムと流体連通する流体源を更に備え、
前記1つ以上の熱交換ユニットが可撓性のある柔軟な材料から形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
1つ以上の圧力ポートと前記1つ以上の熱交換ユニットとに対して接続されるコントローラユニットを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記1つ以上の熱交換ユニットと患者の前記部位の表面との間の接触表面積が約410平方インチ(0.264m2)未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記1つ以上の壁と四肢の一部との間でシールを形成するように構成されているシール部材を更に備え、前記シール部材が、ヒドロゲル、ウレタン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記1つ以上の熱交換ユニットが1つ以上の電気パッドである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記部位が、手、前腕、肘を伴う前腕、手首を伴う手、足、脚、ふくらはぎ及びくるぶしからなる群から選択される四肢の一部を含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記プレナムの前記1つ以上の壁を形成する材料が、ウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及びポリ塩化ビニルからなる群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記四肢の前記一部を覆うように配置される膨張可能なカフの内部領域と流体連通するポンプを更に備える装置であって、前記装置が、前記膨張可能なカフの内部領域内の圧力を調整するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
哺乳類の血流量を増大させて体温を制御するための装置であって、
内部領域を取り囲む1つ以上の壁を有し、前記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが患者の部位を覆うように配置されるように構成されているプレナムと、
前記1つ以上の壁と患者の前記部位との間に配置される1つ以上の熱交換ユニットと、
前記プレナムの前記内部領域と流体連通する第1の取付具と、前記1つ以上の熱交換ユニットのうちの1つに形成される流体プレナムと流体連通する第2の取付具とを有するマニホールドと、
コントローラシステムと、
を備え、
前記コントローラシステムが、
前記第1の取付具と流体連通するときに前記内部領域内の圧力を制御するように構成されている第1のポンプと、
前記1つ以上の熱交換ユニットと流体連通するときに前記1つ以上の熱交換ユニットの温度を制御するように構成されている熱交換流体を有する流体熱交換器と、
前記プレナムの前記内部領域と流体連通する圧力センサと、
哺乳類の体温を測定するように構成されている温度センサと、
前記温度センサ及び前記圧力センサから受ける入力を使用して前記プレナムの前記内部領域の圧力及び熱交換流体の温度を制御するとともに、前記第1のポンプを制御するように構成されているコントローラと、
を備える装置。
【請求項12】
前記1つ以上の熱交換ユニットが電気パッドである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記部位が、手、前腕、肘を伴う前腕、手首を伴う手、足、脚、ふくらはぎ及びくるぶしからなる群から選択される四肢の一部を含んでいる、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
哺乳類の血流量を増大させて体温を制御する方法であって、
内部領域を取り囲む1つ以上の壁を備えるプレナムアセンブリを哺乳類の四肢の一部を覆うように配置するステップと、
前記四肢の前記一部の表面上に1つ以上の熱交換ユニットを配置するステップと、
前記1つ以上の熱交換ユニットの温度を制御するステップと、
前記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが前記1つ以上の熱交換ユニットのうちの少なくとも1つを前記四肢の前記表面に対して押し付けるように前記内部領域内の圧力を調整するステップと、
を備える方法。
【請求項15】
前記プレナムアセンブリの前記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つを前記四肢に対してシールして、前記四肢の前記一部を外部環境から実質的に分離する囲繞領域を形成するステップを更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記内部領域内の前記圧力を調整する前記ステップが、約3mmHg〜約25mmHgの圧力に達するまで前記内部領域に対して流体を供給する工程を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の熱交換ユニットの温度を制御する前記ステップが、前記四肢と接触する前記1つ以上の熱交換ユニットの表面を約0℃〜約43℃の温度にする工程を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳類の前記四肢に対して圧縮力を加えるステップを更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の熱交換ユニットを流体コントローラに対して接続するステップと、
前記内部領域をポンプに接続するステップと、
前記1つ以上の熱交換ユニットの表面の温度が約0℃〜約43℃の温度となるように制御するとともに、前記内部領域内の圧力を約0.1mmHg〜約25mmHgの圧力に制御するステップと、
を更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
約0mmHg〜約15mmHgの第1の正圧を第1の期間にわたって前記四肢の前記一部に対して加えるステップと、
約20mmHg〜約60mmHgの第2の正圧を第2の期間にわたって前記四肢の前記一部に対して加えるステップと、
を更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の期間が約60秒〜約2分であり、前記第2の期間が約10秒〜約5分である、請求項20に記載の方法。
【請求項1】
血流量を増大させて体温を制御する装置であって、
内部領域を取り囲む1つ以上の壁を有し、前記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが患者のある部位を覆うように配置されるように構成されているプレナムと、
前記1つ以上の壁と患者の前記部位との間に配置される1つ以上の熱交換ユニットと、
患者の前記部位の表面に対して前記1つ以上の熱交換ユニットを押し付けて前記1つ以上の熱交換ユニットと患者の前記部位との間の熱接触を高めるために、前記内部領域内の圧力を制御するように構成されているポンプと、
を備える装置。
【請求項2】
前記内部領域が約0.1mmHg〜約80mmHgの圧力に維持される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つ以上の熱交換ユニットのうちの1つにおける熱交換プレナムと流体連通する流体源を更に備え、
前記1つ以上の熱交換ユニットが可撓性のある柔軟な材料から形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
1つ以上の圧力ポートと前記1つ以上の熱交換ユニットとに対して接続されるコントローラユニットを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記1つ以上の熱交換ユニットと患者の前記部位の表面との間の接触表面積が約410平方インチ(0.264m2)未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記1つ以上の壁と四肢の一部との間でシールを形成するように構成されているシール部材を更に備え、前記シール部材が、ヒドロゲル、ウレタン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記1つ以上の熱交換ユニットが1つ以上の電気パッドである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記部位が、手、前腕、肘を伴う前腕、手首を伴う手、足、脚、ふくらはぎ及びくるぶしからなる群から選択される四肢の一部を含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記プレナムの前記1つ以上の壁を形成する材料が、ウレタン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及びポリ塩化ビニルからなる群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記四肢の前記一部を覆うように配置される膨張可能なカフの内部領域と流体連通するポンプを更に備える装置であって、前記装置が、前記膨張可能なカフの内部領域内の圧力を調整するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
哺乳類の血流量を増大させて体温を制御するための装置であって、
内部領域を取り囲む1つ以上の壁を有し、前記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが患者の部位を覆うように配置されるように構成されているプレナムと、
前記1つ以上の壁と患者の前記部位との間に配置される1つ以上の熱交換ユニットと、
前記プレナムの前記内部領域と流体連通する第1の取付具と、前記1つ以上の熱交換ユニットのうちの1つに形成される流体プレナムと流体連通する第2の取付具とを有するマニホールドと、
コントローラシステムと、
を備え、
前記コントローラシステムが、
前記第1の取付具と流体連通するときに前記内部領域内の圧力を制御するように構成されている第1のポンプと、
前記1つ以上の熱交換ユニットと流体連通するときに前記1つ以上の熱交換ユニットの温度を制御するように構成されている熱交換流体を有する流体熱交換器と、
前記プレナムの前記内部領域と流体連通する圧力センサと、
哺乳類の体温を測定するように構成されている温度センサと、
前記温度センサ及び前記圧力センサから受ける入力を使用して前記プレナムの前記内部領域の圧力及び熱交換流体の温度を制御するとともに、前記第1のポンプを制御するように構成されているコントローラと、
を備える装置。
【請求項12】
前記1つ以上の熱交換ユニットが電気パッドである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記部位が、手、前腕、肘を伴う前腕、手首を伴う手、足、脚、ふくらはぎ及びくるぶしからなる群から選択される四肢の一部を含んでいる、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
哺乳類の血流量を増大させて体温を制御する方法であって、
内部領域を取り囲む1つ以上の壁を備えるプレナムアセンブリを哺乳類の四肢の一部を覆うように配置するステップと、
前記四肢の前記一部の表面上に1つ以上の熱交換ユニットを配置するステップと、
前記1つ以上の熱交換ユニットの温度を制御するステップと、
前記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つが前記1つ以上の熱交換ユニットのうちの少なくとも1つを前記四肢の前記表面に対して押し付けるように前記内部領域内の圧力を調整するステップと、
を備える方法。
【請求項15】
前記プレナムアセンブリの前記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つを前記四肢に対してシールして、前記四肢の前記一部を外部環境から実質的に分離する囲繞領域を形成するステップを更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記内部領域内の前記圧力を調整する前記ステップが、約3mmHg〜約25mmHgの圧力に達するまで前記内部領域に対して流体を供給する工程を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の熱交換ユニットの温度を制御する前記ステップが、前記四肢と接触する前記1つ以上の熱交換ユニットの表面を約0℃〜約43℃の温度にする工程を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳類の前記四肢に対して圧縮力を加えるステップを更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の熱交換ユニットを流体コントローラに対して接続するステップと、
前記内部領域をポンプに接続するステップと、
前記1つ以上の熱交換ユニットの表面の温度が約0℃〜約43℃の温度となるように制御するとともに、前記内部領域内の圧力を約0.1mmHg〜約25mmHgの圧力に制御するステップと、
を更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
約0mmHg〜約15mmHgの第1の正圧を第1の期間にわたって前記四肢の前記一部に対して加えるステップと、
約20mmHg〜約60mmHgの第2の正圧を第2の期間にわたって前記四肢の前記一部に対して加えるステップと、
を更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の期間が約60秒〜約2分であり、前記第2の期間が約10秒〜約5分である、請求項20に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【公開番号】特開2008−246196(P2008−246196A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−41950(P2008−41950)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
2.VELCRO
【出願人】(506099867)ダイナサーム メディカル,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41950(P2008−41950)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
2.VELCRO
【出願人】(506099867)ダイナサーム メディカル,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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