説明

血液成分測定装置及び血液成分測定用チップ

【課題】穿刺により出血した血液が相当に少ない量であっても試験紙等の測定部まで血液を確実に導入する。
【解決手段】チップ12は、穿刺針34と、穿刺箇所Pの周囲の皮膚に当接する当接部22と、採取された血液の成分を測定する試験紙28と、該試験紙28から第1ハウジング14の内壁面14aに連通する血液流通路26と、該血液流通路26の開口部26a近傍から穿刺箇所Pの近傍に向かって延在する血液導入ガイド24と、先端が血液導入ガイド24に隣接するように挿入された径突起32とを有する。径突起32の先端面である第1補助ガイド面32aは血液導入ガイド24に沿って血液流通路26の開口部近傍まで延在している。血液導入ガイド24の凹部24cにおける底面と第1補助ガイド面32aは狭い隙間33aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液中のブドウ糖等の成分を測定するための血液成分測定装置及び血液成分測定用チップに関し、特に、ハウジング及び穿刺針とを備える血液成分測定用チップ、及び該血液成分測定用チップが装着される血液成分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者には、血糖値の変動を自分自身で測定することによる日常的な自己管理が推奨されている。血糖値の測定は、血液中のブドウ糖量に応じて呈色する試薬が含浸された試験紙を装着し、該試験紙に血液を供給して呈色させ、その呈色の度合いを光学的に測定することにより血糖値を求めて表示をする血液成分測定装置が実用化されている。また、電気化学センサーを用いた血液成分測定装置も実用化されている。
【0003】
患者が自分の血液を採取する際には、軸方向に進退可能な穿刺針を備える血液成分測定用チップを用い、穿刺針に対して弾性体による反発力を与えて瞬間的に突出させて該穿刺針が皮膚(例えば、指、掌、腕等)を穿刺することにより血液を微量出血させる。このような血液成分測定チップに上記の試験紙を一体的に設けるとともに血液成分測定装置に装着して光学的な測定を行うことにより、穿刺工程と測定工程とを自動的、且つ連続的に行うことができる。これにより操作が簡便となり、しかも正確且つ確実な測定が可能となる。
【0004】
血液成分測定チップに試験紙を設ける場合には、穿刺により採取された血液を該試験紙まで導入するために、穿刺箇所の近傍まで延出する血液導入ガイドを用いるとよい(例えば、特許文献1参照)。このような血液導入ガイドによれば、出血した微量の血液が該血液導入ガイドに接触した後、表面張力現象等によりハウジングの内壁面まで導かれ、さらにその後は細径の流通路を毛管現象によって試験紙まで導入される。したがって、血液導入ガイドを用いることにより不必要に多量の血液を出血させる必要がないことから、測定者の抵抗感を和らげることができて好適である。
【0005】
【特許文献1】特開2001−309905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の血液導入ガイドによれば微量の血液を試験紙まで導入することができるが、ハウジングの内壁面までは主に表面張力の効果で導かれるのであって、出血した血液が極微量である場合には表面張力だけでは導入が不十分となる懸念がある。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、穿刺により出血した血液が相当に少ない量であっても試験紙等の測定部まで一層確実に導入することのできる血液成分測定装置及び血液成分測定用チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る血液成分測定装置は、ハウジング及び穿刺針を備えた血液成分測定用チップが装着される血液成分測定装置において、前記穿刺針による穿刺箇所の周囲の皮膚に当接する当接部と、採取された血液の成分を測定する測定部と、前記測定部から前記ハウジングの内壁面に連通する血液流通路と、前記ハウジングの内壁面における前記血液流通路の開口部近傍から前記穿刺箇所の近傍に向かって径方向に延在する血液導入ガイドと、先端面が前記血液導入ガイドに隣接するように前記ハウジングの内周部に挿入される挿入部材とを有し、前記先端面は前記血液導入ガイドに沿って前記開口部近傍まで延在する第1補助ガイド面を形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る血液成分測定用チップは、ハウジング及び穿刺針を備え、血液成分測定装置に対して着脱自在な血液成分測定用チップにおいて、前記穿刺針による穿刺箇所の周囲の皮膚に当接する当接部と、採取された血液の成分を測定する測定部と、前記測定部から前記ハウジングの内壁面に連通する血液流通路と、前記ハウジングの内壁面における前記血液流通路の開口部近傍から前記穿刺箇所の近傍に向かって延在する血液導入ガイドと、先端面が前記血液導入ガイドに隣接するように前記ハウジングの内周部に挿入される挿入部材とを有し、前記先端面は前記血液導入ガイドに沿って前記開口部近傍まで径方向に延在する第1補助ガイド面を形成することを特徴とする。
【0010】
このように血液成分測定装置又は血液成分測定用チップにおける血液導入ガイドに沿って隣接する第1補助ガイド面を設けることにより挟幅な隙間が形成されて毛管現象を利用することができ、穿刺により出血した血液が相当に少ない量であっても、ハウジングの内壁面まで血液を確実に導入することができる。ここでいう径方向とは正面視の同一断面上における厳密な径方向に限らず、断面側面視で傾斜していてもよいことはもちろんである。
【0011】
この場合、前記挿入部材は、前記第1補助ガイド面に対して連続的に設けられ、前記血液導入ガイドの基端部から前記開口部に向かって軸方向に延在する第2補助ガイド面を形成し、該第2補助ガイド面は前記ハウジングの内壁面に隣接して設るとよい。このように、軸方向に延在する第2補助面を設けることにより、ハウジングの内壁面との間に、血液導入ガイドの基端部から血液流通路の開口部まで血液を導通する隙間が形成され、血液をより確実に血液流通路まで導入できて好適である。前記導入ガイドの側面と前記第1補助ガイド面、及び内壁面と第1補助ガイド面は、前記血液が毛管現象により吸い上げられる間隔の隙間となるように設定しておくとよい。
【0012】
また、前記ハウジングは、前記測定部を保持するホルダーを有し、前記第2補助面に対向する前記ハウジングの内壁面は、前記ホルダーにおける内周方向に突出した突起部により形成するとよい。これにより、ホルダーをハウジングに装着するだけで第2補助ガイド面との間に流路が簡便に形成される。したがって、微細幅の流路を形成するための精密な切削加工等が不要である。
【0013】
前記挿入部材は、径方向に延在して前記第1補助ガイド面を構成する突起を備え、前記血液導入ガイドは、径方向に延在して前記突起が挿入される凹部を備えているとよい。これにより、血液が導入される隙間を形成しやすい。
【0014】
また、前記挿入部材は、前記ハウジングに対する挿入量を規定するストッパを有すると、第1補助ガイド面と挿入部材の先端面との隙間を正確に規定することができる。
【0015】
さらに、前記挿入部材は、前記ハウジングに対する挿入角度を規定する位置決め部を有すると、ハウジングに対する挿入部材の位置決めがなされ、出血した血液を前記血液流通路の開口部の方向へ正確に導入できる。
【0016】
前記挿入部材は前記穿刺針が挿通する中心孔を有し、前記先端面は、前記第1補助ガイド面と滑らかに接続された環状面を有するとよい。これにより、環状面に接触した血液が第1補助ガイド面に集められ、出血した血液をより多く採取することができる。また、未使用時には中心孔に栓をして菌等の進入を防止できる。
【0017】
この場合、前記血液導入ガイドは、前記穿刺針の進退軸線を中心として対称な2方向に延在するフォーク部を有し、前記環状面の少なくとも一部は、前記フォーク部の側面に隣接した位置に設けられているとよい。これにより、環状面とフォーク部の側面との隙間に入り込んだ血液は毛管現象により吸い上げられ、出血した血液の多くを確実に導入することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る血液成分測定装置及び血液成分測定用チップによれば、血液導入ガイドに沿って隣接する補助ガイド面を設けることにより挟幅な隙間が形成されて毛管現象を利用することができ、穿刺により出血した血液が相当に少ない量であっても、ハウジングの内壁面まで血液を確実に導入することができる。このように導入された血液は、さらにハウジングの血液流通路の毛管現象によって測定部まで導入され、より確実な測定がなされる。したがって、穿刺によって出血させる血液の量は少量で足り、測定者の血液成分測定に対する抵抗感を一層低減することができる。
【0019】
また、前記の挟幅な隙間は、挿入部材と血液成分測定用チップのハウジングとを組み合わせるという簡便な手順で形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る血液成分測定装置及び血液成分測定用チップについて実施の形態を挙げ、添付の図1〜図7を参照しながら説明する。本実施の形態に係る血液成分測定装置10(図5参照)及びチップ(血液成分測定用チップ)12は、血液中のブドウ糖等の成分又はその成分量(以下、血糖値という。)を測定及び表示するものであり、チップ12は血液成分測定装置10に装着して用いられる。血液成分測定装置10は、血液成分の測定に先立ってチップ12により皮膚に穿刺を行う穿刺装置を兼ねる。
【0021】
図1及び図2に示すように、チップ12は、円筒型の第1ハウジング14と、先端の小径部(挿入部材)16aが第1ハウジングに挿入された段付き円筒型の第2ハウジングと16と、該第2ハウジング16内で軸方向に進退可能な穿刺針ユニット18と、第1ハウジング14の外側面に設けられた試験紙ホルダー20とを有する。
【0022】
第1ハウジング14の端部には、測定時に測定者の皮膚における穿刺箇所P(図7参照)の周囲の皮膚に当接する環状の当接部22が設けられている。該当接部22は、正面視楕円形で中心に向かって緩やかに縮径するテーパ部22aが形成され、掌や指の側面等に当接させやすく、しかも縮径形状により皮膚を適度に盛り上がらせて穿刺時の出血を適度に促進させることができる。
【0023】
第1ハウジング14の内壁面14aの一部からは、穿刺箇所Pの近傍に向かって血液導入ガイド24が延在している。血液導入ガイド24は第1ハウジング14と一体成型されており、親水性を有する材質で構成され、又は表面に親水化処理がなされている。該血液導入ガイド24は、内壁面14aから内径方向に突出した突出片24aと、正面視で突出片24aの両端部からさらに内径方向に向かって延在する2本のフォーク部24bと、突出片24aの軸方向側面中央部に設けられた凹部24c(図3参照)とを有する。フォーク部24bは、第1ハウジング14の中心軸を中心として対称な2方向に延在しており、その先端部は、テーパ部22aよりもやや奥の位置となるように設定されている。2本のフォーク部24bの間隔は、想定される穿刺時に出血した皮膚上に形成される血液の滴の外径程度に設定されている。凹部24cは径方向に延在する溝形状であり、内壁面14aまで達している。
【0024】
図4に示すように、試験紙ホルダー20は四角板の小片であり、上面の円形凹部20aと、中心部の孔20bと、内周方向に突出した突起部25とを有し、第1ハウジング14の外側面における嵌合部14bに嵌合され、融着(例えば、超音波融着)されている。突起部25は第1ハウジング14に設けられた孔14eに挿入され、その内周側先端面25aは内壁面14aよりも僅かに外周側に配置される。突起部25の軸方向後方面25bは、孔14eの軸方向後方面との間に僅かな隙間を形成する。
【0025】
第1ハウジング14における嵌合部14bの底面には、孔20bに対して僅かな隙間を有して嵌合する突起14dと、該突起14dから孔14eまで延在する微細な溝14cとが設けられている。
【0026】
また、試験紙ホルダー20を嵌合部14bに嵌合することにより、血液流通路26が形成される。この血液流通路26は、内径側端部の開口部26aが突起部25の軸方向後方面25bと孔14eの軸方向後方面との間の隙間により形成され、他端部が、孔20bと突起14dとの間の隙間により形成され、その中間部分は溝14cの上部が試験紙ホルダー20の下面で覆われることにより形成される。血液流通路26の開口部26aは、血液導入ガイド24における突出片24aの基端部近傍に設定されている。
【0027】
さらに、試験紙ホルダー20を嵌合部14bに嵌合することにより、内周側先端面25aと後述する第2補助ガイド面32bとの間に僅かな隙間が形成される。この第2補助ガイド面32bは、血液導入ガイド24の基端部から開口部26aに向かって軸方向に延在しており、血液を導通する狭い隙間27が形成され、血液をより確実に血液流通路26まで導入できる。これらの血液流通路26及び隙間27は血液を毛管現象により吸い上げる程度に十分細径に設定されている。また、これらの血液流通路26及び隙間27は、試験紙ホルダー20を第1ハウジング14に装着するだけで簡便に形成され、精密な切削加工等が不要である。
【0028】
円形凹部20aには所定の試薬が含浸された試験紙(測定部)28が固定されている。試験紙28の材質としは、例えば、ポリエーテルスルホンが挙げられる。試薬としては、例えば、グルコースオキシターゼ(GOD)、ペルオキシターゼ(POD)、4−アミノアンチピリン、N−エチルN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)等の発色剤が挙げられる。また、試薬には所定の緩衝剤が含まれていてもよい。また、測定部としては電気化学センサーを用いることもできる。
【0029】
図3に示すように、第2ハウジング16における小径部16aの先端には、同軸状には環状突起30と、環状突起30の外周部から連続して小径部16aの外径位置まで直線的に延在する径突起32が設けられている。環状突起30及び径突起32の軸方向先端面は、同一平面状の環状面30a及び第1補助ガイド面32aを形成している。環状突起30の内径部は中心孔30bを形成している。補助ガイド面32aは血液導入ガイド24の形状に応じて、断面側面視で傾斜していてる形状でもよい。また、径突起32の外径方向には、第1補助ガイド面32aに対してC面を介して連続的に設けられた第2補助ガイド面32bが形成されている。第2補助ガイド面32bは平面であって、小径部16aの外周面とほぼ同径位置に設けられている。
【0030】
環状面30a及び第1補助ガイド面32a及び第2補助ガイド面32bの幅tは、採取した血液が必要十分量だけ導入できる寸法に設定される。すなわち、幅tが狭すぎると導入量が十分に得られず、また広すぎると、広範囲に拡散してしまい血液流通路26の開口部の方向に導入されないこととなる。これらの観点から、幅tは狭い箇所で0.1mm以上、広い箇所で3mm以下となるように設定し、実際上、一定幅とするとよい。環状面30a及び第1補助ガイド面32aの周囲は、いわゆるC面の面取り形状となるように成型してもよい。また、環状突起30、径突起32は、第2ハウジング16と一体成型されており、親水性を有する材質で構成され、又は表面に親水化処理がなされている。
【0031】
図1及び図2に戻り、小径部16aの外径と第1ハウジング14の内壁面14aの内径は同径であって、小径部16aを内壁面14aに挿入することにより、第1ハウジング14と第2ハウジング16は一体的に固定される。このとき、第2ハウジング16の外径段差部16bにおける突起16cが第1ハウジング14の端面における切欠き部14fに嵌合することにより、第1ハウジング14に対する第2ハウジング16との挿入角度を規定する位置決め部として作用する。
【0032】
さらに、図3及び図4に示すように、凹部24cの周方向の幅は、係合相手である径突起32の幅tよりも広く設定されている。また、該径突起32が係合することにより凹部24cの底面と第1補助ガイド面32aは軸方向に離間した狭い隙間33aを形成する。この隙間33aは、例えば0.02mm〜1.0mm幅とすると毛管現象が有効に利用される。環状面30aの一部はフォーク部24bの先端側面24dに隣接した位置に設けられ、軸方向に離間した狭い隙間33bを形成する。第2ハウジング16の外径段差部16b(図2参照)は第1ハウジング14の端部に当接することにより小径部16aの挿入量を規定するストッパとして作用し、凹部24cの底面と第1補助ガイド面32aとの隙間33a及び先端側面24dと環状面30aとの隙間33bが正確に規定される。
【0033】
一方、第2補助ガイド面32bは、前記のとおり、血液導入ガイド24の基端部から開口部26aに向かって軸方向に延在する位置に挿入され、内周側先端面25aとの間に隙間27を形成する。実際上、これらの隙間33a、33b、27は、前記の血液流通路26と同様に、血液を毛管現象により吸い上げる程度に十分狭く設定されている。
【0034】
図2に示すように、穿刺針ユニット18は、先端の穿刺針34と、該穿刺針34を保持する支持部材36と、該支持部材36の後端部に接続されたハブ38とを有する。支持部材36の外径は小径部16aにおける内径と略同一であって、ハブ38の外径は第2ハウジング16の大径部16dにおける内径と略同一である。大径部16dにおける内壁面には内径方向に僅かに突出した環状のアンダーカット39が設けられており、ハブ38は該アンダーカット39と当接して軽く固定されている。また、未使用時には先端の中心孔30bには栓40をすることにより、穿刺針34が存在する空間に対して栓40及びアンダーカット39がシール作用を奏し、菌等の進入を防止できる。穿刺針34はあらかじめ滅菌処理されており、使用時までこの滅菌状態が維持される。ハブ38の後方面には、後述するプランジャ106に係合する被把持突起38aが設けられている。
【0035】
次に、チップ12が装着される血液成分測定装置10について図5及び図6を参照しながら説明する。
【0036】
図5に示すように、血液成分測定装置10は携帯に適した小型・軽量の装置であって、先端部にチップ12が装着される装着穴100が設けられている。また、図6に示すように、血液成分測定装置10は、先端側の機構部102と後端側の制御部104とを有する。
【0037】
機構部102は、内部シリンダ部105内を摺動可能なプランジャ106と、該プランジャ106の後端側に設けられた駆動用コイルスプリング108と、先端側に設けられた戻り用コイルスプリング110と、プランジャ106と同軸に接続されて前方に延在する把持バー112と、プランジャ106の上部から前方に延在する弾性片114とを有する。
【0038】
把持バー112の先端は、チップ12におけるハブ38の被把持突起38aを弾性的に拡開可能な2本の挟持材116が設けられている。弾性片114は、上方に向けて弾性付勢されており、プランジャ106の移動にともなって先端の係合ノブ120が天井面122に対して摺動移動し、又は上面に開口した係合孔124に係止される。係合孔124の上面はメンブレンシート及び下方に下方に突出した突起部からなる穿刺ボタン126で覆われている。
【0039】
装着穴100にチップ12aを挿入し、押し込むことにより、駆動コイルスプリング108を圧縮しながらプランジャ106が一体的に後方に移動し、同時にハブ38の被把持突起38aが2本の挟持材116の間にはまり込み、把持される。駆動用コイルスプリング108を十分に圧縮するまでプランジャ106が移動したとき、係合ノブ120が係合穴124に係止され、プランジャ106が固定される。
【0040】
また、別の方法によりチップ12aを装着することも可能である。すなわち、プランジャ106は側面の復帰レバー128(図5参照)と連結されており、該復帰レバー128を後方に引くことにより、駆動用コイルスプリング108を圧縮しながらプランジャ106が一体的に後方に移動する。駆動用コイルスプリング108を十分に圧縮する位置までプランジャ106が移動したとき、係合ノブ120が係合孔124に係止され、プランジャ106が固定される。このようにプランジャ106が後方に移動し、固定された状態で装着穴100にチップ12を装着すると、ハブ38の被把持突起38aが2本の挟持材116の間にはまり込み、把持される。
【0041】
また、機構部102には、装着されたチップ12における試験紙28と対向する位置に光学測定部130が設けられている。該光学測定部130は制御部104の作用下に制御され、図示しない発光素子(発光ダイオード等)、受光素子(フォトダイオード等)及び増幅部を備えている。チップ12を装着穴100に装着した状態で発光素子を点灯させると、発光素子から発せられた光は試験紙28に照射、反射され、その反射光は受光素子に受光され、光電変換される。受光素子からは、受光光量に応じたアナログ信号が出力され、適度に増幅された後に制御部104へ供給される。機構部102には、穿刺時における穿刺針34の突き出し量を調整する機構(例えば、ダイヤル調整によるストッパ高さの調整機構)を設けてもよい。
【0042】
次に、制御部104は、電気的に統括制御を行う制御基板150と、測定された血液成分を表示する液晶モニタ152と、電源スイッチ154と、該電源スイッチ154の操作に連動して電力の供給、停止を行う電池156とを有する。また、制御部104は、データ記憶部166、スイッチ部169及び外部出力部168を有する(図5参照)。
【0043】
制御基板150は、光学測定部130と信号線を介して接続されており、発光素子を適切なタイミングで発光させ(例えば、間欠的にパルス発光させ)、受光素子から供給されるアナログ信号をA/D変換器によりデジタル信号に変換して取得し、データ解析を行うことができる。制御基板150では、取得したデジタル信号に基づき、受光光量及びその変化率等に基づいて所定の演算処理を行い、また、必要に応じ補正計算を行って、血液中の血糖値を求める。求めた血糖値は液晶モニタ152に表示し、測定者に知らせる(図1の符号152a参照)。
【0044】
次に、このように構成される血液成分測定装置及び血液成分測定用チップの作用について説明する。
【0045】
先ず、電源スイッチ154をオンにした後、前記のとおり装着穴100にチップ12を装着してプランジャ106を移動させ、係合ノブ120を係合孔124に係合させることによりプランジャ106を係止させ図6に示す状態とする。このとき、光学測定部130は制御部104の作用下にパルス的な投光を開始する。
【0046】
次いで、チップ12の当接部22を測定者の皮膚(例えば、指、掌、腕等)180に押し当て、穿刺ボタン126を介して係合ノブ120を押し下げる。これにより、穿刺ボタン126の突起が係合ノブ120を押し下げて係合孔124との係合状態が解除され、プランジャ106は駆動用コイルスプリング108によって弾性付勢され前方へ勢いよく駆動され、把持バー112を介して穿刺針ユニット18を押し出す。
【0047】
穿刺針ユニット18の先端に設けられた穿刺針34は、中心孔30b及び当接部22におけるテーパ部22aよりも前方まで押し出され、皮膚180を穿刺する。このとき、プランジャ106は勢いよく移動することから、瞬間的に戻し用コイルスプリング110を適度に圧縮している。したがって、該戻し用コイルスプリング110が元の長さに復帰する弾性力によってプランジャ106は即時に後方に押し戻され、結局、プランジャ106は駆動用コイルスプリング108と戻し用コイルスプリング110の弾性力が釣り合う位置まで戻されて停止することになる。
【0048】
一方、図7に示すように、穿刺針34によって穿刺された穿刺箇所Pから出血する。出血した血液は、先ず血液導入ガイド24のフォーク部24bの先端に付着し、表面張力の効果によってフォーク部24bの表面全体に拡がる。やがて、その一部はフォーク部24bの先端側面24dに達し、環状面30aとの隙間33bに入り込む。この隙間33bは十分に狭く設定されていることから、毛管現象が生じ、穿刺箇所Pから出血している血液を吸い込むことになる。
【0049】
この隙間33bに入り込んだ血液は、さらに環状面30aに沿って第1補助ガイド面32aに集められるように移動する。環状面30aと第1補助ガイド面32aは同一面であることから、血液はスムーズに移動可能である。実際上、環状面30aと第1補助ガイド面32aは滑らかに接続されていればよい。
【0050】
次に、血液はフォーク部24bの表面に沿って、又は環状面30aから第1補助ガイド面32aに導入され、突出片24aと第1補助ガイド面32aとの隙間33aに到達する。この隙間33aも十分に狭く設定されていることから毛管現象が生じ、血液がさらに吸い込まれ、第1ハウジング14の内壁面14aに向かって導かれる。
【0051】
この後、第1補助ガイド面32aと第2補助ガイド面32bが連続的に設けられており、しかも第2補助ガイド面32bと内周側先端面25aとの隙間27が十分狭く設定されていることから、血液は毛管現象によりさらに血液流通路26の開口部26aまで挿入されることになる。この際、血液導入ガイド24、環状突起30及び径突起32は親水性であることから、血液が導入されやすい。
【0052】
次に、血液は血液流通路26内を毛管現象によって吸い上げられ円形凹部20aの試験紙28まで導入されることになる。血液は試験紙28に含浸し、試薬に反応して血中の血糖値に応じて呈色する。
【0053】
この間、光学測定部130はパルス的な投光及び受光量の測定を継続しており、制御基板150では試験紙28の変色に基づく受光量の変化により血液が含浸されたことを自動認識し、所定の演算処理により血糖値を求め、液晶モニタ152に表示するとともに、データ記憶部166に記憶し測定を終了する。また、スイッチ部169の操作に基づいて、データ記憶部に記録された過去のデータの再表示又は消去が可能であり、さらに外部出力部168によりこれらのデータ等を外部コンピュータとの間で授受するようにしてもよい。測定が終了した後には、電源スイッチ154をオフにして制御部104の動作を停止させるとともに、使用済みのチップ12を所定の方法により廃棄する。
【0054】
また、本実施の形態に係る血液成分測定装置10及びチップ12においては、血液導入ガイド24は第1ハウジング14と一体成型される一方、環状突起30及び径突起32は第2ハウジング16と一体成型されている。したがって、第1ハウジング14に対して第2ハウジング16の小径部16aを挿入するだけで隙間33a、33bを精密に形成することができ、これらの隙間33a、33bを形成するための専用の加工工程が不要である。また、小径部16aの挿入時に、第2ハウジング16の外径段差部16bは挿入量を規定するストッパとして作用し、隙間33a、33bの幅が簡便且つ正確に設定される。
【0055】
環状面30aの一部はフォーク部24bの先端側面24dに隣接した位置に設けられていることから、環状面30aと先端側面24dとの隙間33bに入り込んだ血液は毛管現象により吸い上げられ、出血した血液をより多く血液流通路26に導入することができる。フォーク部24bは中心軸を中心として対称な2方向に延在していることから、穿刺針34が進退する際に障害とならない。
【0056】
なお、血液導入ガイド24の凹部24cと径突起32の第1補助ガイド面32aとの軸方向位置は逆であってもよく、この場合、径突起32を有する所定の挿入部材を先端の開口側から後端側に向かって挿入するとよい。
【0057】
本発明に係る血液成分測定装置及び血液成分測定用チップは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態に係るチップの斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るチップの断面側面図である。
【図3】血液導入ガイドを後方部と、第1ハウジング先端部の嵌合の様子を示す拡大斜視図である。
【図4】チップ先端部の断面斜視図である。
【図5】本実施の形態に係る血液成分測定装置の平面図である。
【図6】本実施の形態に係る血液成分測定装置の断面側面である。
【図7】血液成分測定装置により穿刺を行い血液が突出した状態を示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0059】
10…血液成分測定装置 12…(血液成分測定用)チップ
14…第1ハウジング 14a…内壁面
16…第2ハウジング 16a…小径部(挿入部材)
20…試験紙ホルダー 22…当接部
24…血液導入ガイド 24a…突出片
24b…フォーク部 24c…凹部
26…血液流通路 27、33a、33b…隙間
28…試験紙(測定部) 30…環状突起
30a…環状面 32…径突起
32a…第1補助ガイド面 32b…第2補助ガイド面
34…穿刺針 180…皮膚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング及び穿刺針を備えた血液成分測定用チップが装着される血液成分測定装置において、
前記穿刺針による穿刺箇所の周囲の皮膚に当接する当接部と、
採取された血液の成分を測定する測定部と、
前記測定部から前記ハウジングの内壁面に連通する血液流通路と、
前記ハウジングの内壁面における前記血液流通路の開口部近傍から前記穿刺箇所の近傍に向かって延在する血液導入ガイドと、
先端面が前記血液導入ガイドに隣接するように前記ハウジングの内周部に挿入される挿入部材と、
を有し、
前記先端面は前記血液導入ガイドに沿って前記開口部近傍まで径方向に延在する第1補助ガイド面を形成することを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の血液成分測定装置において、
前記挿入部材は、前記第1補助ガイド面に対して連続的に設けられ、前記血液導入ガイドの基端部から前記開口部に向かって軸方向に延在する第2補助ガイド面を形成し、該第2補助ガイド面は前記ハウジングの内壁面に隣接して設けられていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の血液成分測定装置において、
前記ハウジングは、前記測定部を保持するホルダーを有し、
前記第2補助面に対向する前記ハウジングの内壁面は、前記ホルダーにおける内周方向に突出した突起部により形成されていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項4】
請求項1記載の血液成分測定装置において、
前記挿入部材は、径方向に延在して前記第1補助ガイド面を構成する突起を備え、
前記血液導入ガイドは、径方向に延在して前記突起が挿入される凹部を備えていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項5】
請求項1記載の血液成分測定装置において、
前記挿入部材は、前記ハウジングに対する挿入量を規定するストッパを有することを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項6】
請求項1記載の血液成分測定装置において、
前記挿入部材は、前記ハウジングに対する挿入角度を規定する位置決め部を有することを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項7】
請求項1記載の血液成分測定装置において、
前記第1補助ガイド面の幅は、0.1mm以上3mm以下であることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項8】
請求項1記載の血液成分測定装置において、
前記挿入部材は前記穿刺針が挿通する中心孔を有し、
前記先端面は、前記第1補助ガイド面と滑らかに接続された環状面を有することを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項9】
請求項8記載の血液成分測定装置において、
前記血液導入ガイドは、前記穿刺針の進退軸線を中心として対称な2方向に延在するフォーク部を有し、
前記環状面の少なくとも一部は、前記フォーク部の側面に隣接した位置に設けられていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項10】
ハウジング及び穿刺針を備え、血液成分測定装置に対して着脱自在な血液成分測定用チップにおいて、
前記穿刺針による穿刺箇所の周囲の皮膚に当接する当接部と、
採取された血液の成分を測定する測定部と、
前記測定部から前記ハウジングの内壁面に連通する血液流通路と、
前記ハウジングの内壁面における前記血液流通路の開口部近傍から前記穿刺箇所の近傍に向かって延在する血液導入ガイドと、
先端面が前記血液導入ガイドに隣接するように前記ハウジングの内周部に挿入される挿入部材と、
を有し、
前記先端面は前記血液導入ガイドに沿って前記開口部近傍まで径方向に延在する第1補助ガイド面を形成することを特徴とする血液成分測定用チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−280443(P2006−280443A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101153(P2005−101153)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】