血液成分濃度の分析方法及びその装置
【課題】血液成分濃度の定量を非侵襲で精度良く行う。。
【解決手段】近赤外光として1,300〜2,500nmの範囲の波長のものを用い、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバー4aの他端で生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点を、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバー4bの他端で表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点を形成し、上記光投射点と光検出点との間隔を上記両光ファイバーの間に介在させたスペーサで2mm以下の単一距離に設定することで生体の表層組織における真皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは真皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光を受光手段に導いて分光分析を行う。
い、定量を目的とする成分の血中成分濃度と上記真皮部分中の濃度との相関を利用して定量分析を行う。
【解決手段】近赤外光として1,300〜2,500nmの範囲の波長のものを用い、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバー4aの他端で生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点を、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバー4bの他端で表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点を形成し、上記光投射点と光検出点との間隔を上記両光ファイバーの間に介在させたスペーサで2mm以下の単一距離に設定することで生体の表層組織における真皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは真皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光を受光手段に導いて分光分析を行う。
い、定量を目的とする成分の血中成分濃度と上記真皮部分中の濃度との相関を利用して定量分析を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析法による血液成分濃度の分析方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外光から赤外光を利用した分光分析は現在、広範囲の分野で利用されている。利用する波長によって吸光にかかわる物理的性質は異なるが、紫外域では電子の励起、赤外域では分子振動の共鳴、近赤外領域では分子振動の共鳴の高調波などが計測できるために、これらに基づいて分析を行うことができる。
【0003】
これらの波長の中で可視域に隣接する近赤外域の光を用いて物質の定量、定性分析を行う近赤外分光分析法は、近年、農業分野をはじめ様々な分野で利用されはじめており、最近では生体分野において非侵襲、無害の分析手法として注目されている。近赤外分光分析法は0.8μmから2.5μmの波長の光を物質に照射し、透過あるいは反射した光のスペクトルより分析を行う手法である。この近赤外分光分析法は、エネルギーの低い電磁波を用いるので試料を損傷することがない固体、粉体、繊維、液体、気体など様々な状態の試料への適用が可赤外光にくらべ近赤外光では水の吸収強度が弱くなるので、水溶液での分析が可などの利点を有しており、グルコースといった血液成分濃度の定量、定性分析を非侵襲で行うことが可能である。
【0004】
ただし、近赤外光を用いる場合、吸収シグナルは高調波をあつかうために赤外光に比較して非常に微弱である上、バンドの帰属が明確でないという欠点を有しており、このために近赤外分光分析にはその定量、定性のためにいわゆる“ケモメトリクス”と呼ばれる手法が用いられる。これは、多変量解析手法や統計解析手法を用いて化学分析を行う手法で、コンピュータの発達とともに発展し、最近の近赤外分光分析では主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析といった多変量解析手法を用いて行われることが多い。またニューラルネットワーク等の解析への応用も試みられている。
【0005】
近赤外分光分析を化学成分分析に利用した従来例として水分計がある。近赤外光による水分計は現在、数種類が市販されているが、初期の頃の単純な水分定量は、水の吸収の1.93μmにおける吸光度と物質の吸収に関係しない中立波長の2.08μmにおける吸光度の差(差吸光度)と、水分との単回帰式によりあらかじめ求めた検量線を用いて行われている。実際の計測においては差吸光度を測定し、検量線と比較することで物質の水分量を測定する。ただし、この水分量計測は物質表面に光を照射しその反射光を検出することにより行われるので、表面近傍の深さ方向の水分量を選択的に検出する能力はない。
【0006】
また、分光学的方法とは異なる手法も提案されている。これは特表平8−502912号公報に示されているように、多重に散乱した光の空間的に分解された測定によってグルコース濃度を求めようとしたもので、生体を通った近赤外光の測定を2つの受発光間隔で行うとともに、受発光間隔に対する強度の依存性に基づいてグルコース濃度を求めている。
【0007】
しかし、残念ながら今のところグルコースといった血液成分濃度を生体組織から非侵襲で定量定性分析することは実用化に至っていないのが現状である。これは、生体組織における皮膚組織は300μm程度の厚さの表皮と,その下層の厚さ1mm程度の真皮組織、さらにその下層の多量の脂肪細胞からなる皮脂組織で構成されているのに対して、従来は生体組織が均質なものと仮定しているためであると思われる。複雑な組織構造がからみあう生体組織においては、グルコースのような生体成分は、組織が異なればその濃度も大きく異なっており、この点を考慮しなくては正確な定量は望めない。
【特許文献1】特表平8−502912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、グルコースといった血液成分濃度の定量を非侵襲で精度良く行うことができる血液成分濃度の分析方法及びその装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る血液成分濃度の分析方法は、生体の血液成分濃度を近赤外光の分光分析で行うにあたり、近赤外光として1,300〜2,500nmの範囲の波長のものを用い、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端で生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点を形成するとともに、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端で表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点を形成して、この光投射点と光検出点との間隔を発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサで2mm以下の単一距離に設定することで生体の表層組織における真皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは真皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光を受光手段に導いて分光分析を行い、定量を目的とする成分の血中成分濃度と上記真皮部分中の濃度との相関を利用して定量分析を行うことに特徴を有している。
【0010】
生体の皮膚組織のなかで真皮部分は血液成分に関してその濃度の点で相関が高い上に、近赤外光を真皮部分に選択的に透過させたり真皮部分で選択的に拡散反射させたりすることが可能であることに着目したものである。すなわち、図2に示すように発光プローブPと受光プローブRとを平行に配置して測定物9に対向させた場合、発光プローブPから出て受光プローブRで観察される光はいわゆる「バナナシェイプ」とよばれる経路を通ることが実験的にも数値解析手法を用いたシミュレーションにおいても確認されており、この時、発光プローブPと受光プローブRとの間隔の調節によって測定物9の深さ方向への光の到達度を変化させることができることに着目し、生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点と表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点との間隔を2mm以下することで、真皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは真皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光を取り出して近赤外光分析を行うようにしたものである。
【0011】
前記公報の実施例で示された3mmや5mmといった受発光間隔では、真皮組織の信号だけでなく、その下層に位置する筋肉組織や脂肪組織の信号をも重畳した信号を検出してしまうことになり、外乱信号が多くなるために、空間的に分離された2つの近赤外光を検出した信号を利用しても、複雑な生体組織から精度の良いグルコース濃度の測定は難しいが、皮膚組織のなかで最も良好なグルコース信号(つまり血中グルコース濃度と相関の高いグルコース信号)を外乱が少なくて安定した真皮組織から選択的に取り出すことができる。
【0012】
また、上記発光プローブと受光プローブとを上記のような間隔で設けることは実際上困難であるが、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端を光投射点とし、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端を光検出点とすることで、この問題を解決することができる上に、発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサで上記光投射点と光検出点の間隔を設定しているために、真皮部分を選択的に透過させたり真皮部分で選択的に反射させるための間隔設定を容易に行うことができる。。
【0013】
なお、光ファイバーとしてはその線径が1mm以下のものを好適に用いることができる。光ファイバーには直径が数μmから数千μm(数mm)のものを用いることができるが、この中で特に、直径70μmから1000μmの光ファイバーの利用が適している。人間の真皮中の化学成分の定量分析を行う用途に用いるものについて述べるならば、人間の真皮9bは図3に示すように300μm程度の厚さの表皮9aと多量の脂肪細胞からなる皮下組織9cとに挟まれた1mm程度の厚さの組織であり、このような真皮9b中の血液成分の分析には線径が250〜750μmの光ファイバー、たとえば500μmの光ファイバーの束を用いて図1のような光ファイバーを作製して分光分析を行うことで、真皮9b中の血液成分の分析が可能となる。皮膚組織中を透過する光の経路は組織の物性や分析に用いる波長により異なるので、予め予備実験や数値シミュレーションを行い、測定に用いる線径を決定する必要がある。得られた吸光信号は演算部で数値計算され目的とする成分濃度が算出される。
【0014】
目的とする血液成分としてはグルコースをあげることができ、この時、真皮組織からは血中グルコース濃度と相関の高いグルコース信号を得ることができるために、グルコース濃度の定量分析を高い精度で行うことができるが、グルコースに限るものではない。
【0015】
そして、生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点と表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点とを複数設けるとともに、上記両点の最小間隔を2mm以下,好ましくは1mm以下としても、真皮部分を選択的に透過させたり真皮部分で選択的に拡散反射させることができる。
【0016】
近赤外光による分光分析にあたり、近赤外光としては、1,300〜2,500nmの範囲の波長のものを好適に用いることができる。1,300nm未満の光ではS/N比の良い信号を得ることができない。生体での透過性に優れるものの、吸収信号が非常に小さいために、2mm以下に設定した受発光間隔での測定では、真皮組織に微量含まれるグルコースのような成分の定量が難しくなるためであり、1,300〜2,500nmの波長は生体での透過性に劣るものの、吸収信号が大きくてS/N比が良く、分析精度も向上するためである。
【0017】
上記波長範囲内においても、1,400〜1,800nmの範囲の波長の近赤外光もしくは2,000〜2,500nmの範囲の波長の近赤外光の少なくとも一方を用いることで好ましい結果を得ることができる。
【0018】
そして生体の表層組織における表皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは表皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光をリファレンス光として併用することも好ましい。表皮組織の影響を受けない真皮組織の吸収信号を抽出することができるために、より正確な定量を行うことが可能となる。
この場合、光投射点とリファレンス光測定用の光検出点との間隔を上記分光分析用の間隔より小さくすることで、表皮部分からの光を検出することができる。リファレンス光は、表皮組織、とりわけ角質層のような生体外部の環境の影響を受けやすく、毛細血管がほとんど存在しない組織を主として透過したり拡散反射した光となり、このような表皮組織の吸収信号の寄与の大きい透過光あるいは拡散反射光をリファレンス光とすることで、真皮組織の吸収信号を抽出することができることになり、より正確な定量を行うことが可能となる。
【0019】
そして本発明にかかる血液成分濃度の分析装置は、生体の血液成分濃度を近赤外光の分光分析で行う分析装置であって、1,300〜2,500nmの範囲の波長の近赤外光を生体の表層組織表面に投射する投射部と、生体の表層組織表面から近赤外光を検出する検出部とを備えるとともに、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端を上記投射部とし、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端を上記検出部としたものであり、発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサによって上記投射部と上記検出部との間隔を、上記投射部から生体組織に導入されて検出部で検出される近赤外光が生体の表層組織における真皮部分を選択的に透過する間隔あるいは真皮部分で選択的に拡散反射する間隔である2mm以下の単一距離とし、更に定量を目的とする成分の血中成分濃度と上記真皮部分中の濃度との相関を利用して定量分析を行う演算手段を備えていることに特徴を有している。
【0020】
上記方法による血液成分濃度の分析を行うことができる。また、光ファイバーを利用することで、特殊な受発光部品を用いずとも通常のハロゲンランプや発光ダイオードのような比較的光量の弱い光源、SiやGeやInGaAs製のフォトダイオードのような通常の受光素子を用いても、物質の表面近傍の化学組成を分析するのに十分な光量あるいは受光感度を得ることができるものとなる。
【0021】
このものにおいて、リファレンス光を併用する場合、リファレンス光用の投射部と検出部との間隔は上記単一距離よりも短くしておく。たとえば0.5mm以下、好ましくは0.35mm以下とする。
【0022】
成分濃度の算出は検量線あるいはキャリブレーション式を用いて行われる。検量線あるいはキャリブレーション式は予め個人あるいは複数の被験者の様々な状態における吸光スペクトルを解析して得られる。解析は、多変量解析手法や統計解析手法を用いて定量、定性分析を行う手法で、近赤外分光分析では主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析といった多変量解析手法を用いて行われることが多い。
【0023】
スペクトル測定はハロゲンランプのような光源からの光を干渉フィルターのような光学フィルターを用いて任意波長の光に分光したり、発光ダイオードやレーザーダイオードのような単色光源を組み合わせて複数波長の吸光度を測定する方式や、通常の分光分析法のようにハロゲンランプのような光源からの光を回折格子あるいはフーリエ変換方式(FT−IR方式)を用いて連続的に所定の波長の吸光スペクトルを求めるようにしてもかまわない
【発明の効果】
【0024】
本発明は、生体の皮膚組織のなかで真皮部分は血液成分に関してその濃度の点で相関が高い上に、この真皮部分に選択的に透過させたり真皮部分で選択的に拡散反射させた光で分光分析を行うために、きわめて精度の高い分析を行うことができるものである。しかも、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端と一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端と夫々生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点及び表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点を受光用光ファイバーの他端で形成しているために、2mm以下の間隔で光投射点と光検出点とを設けることを物理上の問題を招くことなく実現することができるとともに、特殊な受発光部品を用いずとも通常のハロゲンランプや発光ダイオードのような比較的光量の弱い光源、SiやGeやInGaAs製のフォトダイオードのような通常の受光素子を用いても、血液成分濃度を皮膚組織の非侵襲で分析するのに十分な光量あるいは受光感度を得ることができるものであり、更には上記光投射点と上記光検出点との間隔を発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサで設定していることから、真皮部分を選択的に透過させたり真皮部分で選択的に反射させるための間隔設定を容易に行うことができる。
【0025】
そして本発明にかかる血液成分濃度の分析装置は、上記分析方法によるところの血液成分濃度の分析を効果的に行うことができる。また、投射部と検出部との間隔を発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサで設定しているために、用いる光ファイバーの径に制限が生じにくくなり、適宜な光ファイバーを選択して用いることができるほか、レファレンスを得る場合も、同じ径の光ファイバーで得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すと、図4に示すものは人間の皮膚組織内のグルコース濃度を定量するためのもので、150W程度のハロゲンランプ1、ハロゲンランプ1からの光の分光を行う回折格子を納めた回折格子ユニット2、前記回折格子の回転角制御を行って分光波長の調節を行うステッピングモータユニット3、分光後の光を被測定物に伝えるとともにその透過光を受光ユニット5に送る光ファイバーバンドル4、受光ユニット5からの信号をもとに数値解析を行いグルコース濃度の定量を行う演算ユニット6から構成されている。
【0027】
上記光ファイバーバンドル4は図6に示すように、クラッド径が750μmの2本の大口径ファイバーを測定プローブPとなる一端B側において相互に接触させた状態で束ねたものとなっている。クラッド径は目的とする真皮9b組織の厚さに応じて決定され、750μmのものは適切な一例である。この光ファイバーバンドル4の発光用光ファイバー4aの端部Aを回折格子ユニット2へ、受光用光ファイバー4bの端部Cを受光ユニット5へ接続し、端部Bを分析する皮膚へ直角に突き当てて計測を行う。
【0028】
このように線径を適切に選んだ発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを接触させて両者の間隔を特定すれば、図3に示すように、透過光路(の深さ)が選定され、真皮組織9bを選択的に透過(あるいは真皮組織9bで選択的に拡散反射)させることができる。従って、真皮組織9bにおける血液成分濃度の分析が容易にできる。また、光ファイバーバンドル4の作製も容易である。端部Bの皮膚への押圧力が測定時に一定となるように圧力ゲージと押し治具とを組み合わせたものを利用すれば精度の高い測定ができる。
【0029】
受光ユニット5では受光感度域が0.9〜1.7μmのInGaAs製のフォトダイオードの受光信号を増幅後、AD変換し、マイクロコンピュータからなる演算ユニットへ信号を伝達する。演算ユニットで行われるグルコース濃度定量には1.25μm〜1.7μmの近赤外領域に属する吸光スペクトルを利用し、多変量解析を実施する。この多変量解析はPLS(Partial LeastSquare)回帰分析により得られる検量線(検量式)を用いている。この検量線は、予め上記分析装置を用いた実験より得る。つまり、複数の被験者の皮膚組織から測定した吸光スペクトルを説明変量とし、実測した真皮細胞液中のグルコース濃度を目的変量としてPLS回帰分析することで検量線を取得する。
【0030】
図5に他例を示す。ここでは反射鏡10を備えた150W程度のハロゲンランプ1からの光をレンズ11を通じて発光用光ファイバー4aに導入し、受光用光ファイバー4bから射出される光をスリット20を通じてフラットフィールド型回折格子ユニット2に導き、回折格子ユニット2で分光した光をアレイ型受光ユニット5で受けている。図中60は受光ユニット5と演算ユニット6との間に配したA/D変換装置である。上記受光ユニット5にはたとえば受光感度域が0.9〜2.1μmのInGaAs製のフォトダイオードを直線状に256素子並べるとともにペルチェ素子で冷却しているものを用いる。そして、上記演算ユニット6では、1.4μm〜1.8μmの近赤外領域に属する吸光スペクトルを利用し、上記の場合と同様に検量式(検量線)を用いてグルコース濃度の定量を行う。
【0031】
図7に光ファイバーバンドル4の他例を示す。これは光ファイバーバンドル4の測定プローブPとなる端部Bを示しており、ここではクラッド径が750μmの光ファイバーをかごめ格子状に7本束ねたものを利用するとともに、中心の光ファイバー(図中で斜線を施したもの)を発光用光ファイバー4aとし、周囲の6本の光ファイバーを受光用光ファイバー4bとしている。受光用光ファイバー4bを発光用光ファイバー4aの周囲に配置することで、皮膚組織透過中に減衰・散乱した透過光をより多く集光できるので高精度の分析が可能となる。
【0032】
図8に示すものは、端部Bにおいてクラッド径が500μmの光ファイバーを70本程度束ねたものである。発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aと受光用光ファイバー4bの本数の比は約1:2となるようにし、発光用光ファイバー4aの周囲を受光用光ファイバー4bが取り囲むように規則的な配列としている。このような光ファイバーバンドル4であれば、光源や受光素子の能力に応じて光ファイバーの本数を調節することで発光光量と受光光量とを決められるために高精度の分析が可能となる。
【0033】
図9に示すものでは、端部Bにおいてクラッド径が500μmの光ファイバーを70本程度ランダムに束ねるにあたり、発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aと受光用光ファイバー4bの本数の比を約1:3としている。この場合、ランダムに束ねても発光用光ファイバー4aの周囲を受光用光ファイバー4bがほぼ取り囲むことになり、配列を規則正しく並べる作業を行わなくとも図7に示すものとほぼ同等の性能を得ることができる。この光ファイバーバンドル4であれば、光源や受光素子の能力に応じて光ファイバーの本数を調節することで高精度の分析が可能となる上に、光ファイバーバンドル4の製作が容易となる。
【0034】
ここにおいて、多数本の光ファイバーを規則的にあるいはランダムに並べた場合、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの最小間隔は隣接するもので決定されるものの、多様な間隔のものが生じることになる。しかし、最小間隔以外のものは実質上無視してもよい。すなわち、図2(b)に示すように、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを接触させた状態でその端面を測定物9の表面にほぼ直角につき当てて(透過する光路が特定できれば直角に限るものではない)、発光用光ファイバー4aを通じて測定物9の表面に送り込めば、隣接する受光用光ファイバー4bへの光路イ、さらに離れた受光用光ファイバー4bヘの光路ロ、さらに離れた受光用光ファイバー4bヘの光路ハ等、様々な光路を通って受光用光ファイバー4bに入射される。ここで光路イ,ロ,ハの光路長を比較すると、同一径の光ファイバーを受発光用光ファイバー4a,4bに用いている場合、光路ロ,ハは光路イのほぼ2倍、3倍と考えてよい。光学的に不透明で散乱の多い生体等の物質中の光の透過は厳密にはLambert−Beerの法則には従わないが、透過光量は光路長に応じて急激に減少し、光路長が2倍になると散乱状態によっては1/10以下、光路長が3倍となるとさらにそれの1/10以下の程度となる。このために受光用光ファイバー4bに集光される透過光は基本的には隣接する発光用光ファイバー4aからの透過光の和と考えてよいものであり、このために、発光用光ファイバー4aとこれに接して配された受光用光ファイバー4bとの中心間距離で、必要とする深さに光の透過経路を設定することができる。
【0035】
図10に示すように、クラッド径が250μmの光ファイバーにナイロン被覆を施して被覆外径を500μmとしたものを50本程度束ねたものを用いてもよい。ここでは発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aと受光用光ファイバー4bの本数の比を約1:2とするとともに、発光用光ファイバー4aの周囲を受光用光ファイバー4bが取り囲むように規則的に配列させている。この光ファイバーバンドル4を利用すれば、光源や受光素子の能力に応じて光ファイバーの本数の調節で高精度の分析が可能となる上に、光ファイバーの受発光部が線径の中心部分に限定されるので光路の限定をよりシャープにすることができ、解像度の高い分析が可能となる。
【0036】
図11に示すものは、図7で示した光ファイバーの束を更に束ねたもので、図7に示した束を1単位とするとき、図示例では7単位の束としている。もちろん、発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aと受光用光ファイバー4bは反対端において夫々個別に束ねて前記端部A,Cとしている。この光ファイバーバンドル4を利用すれば、光源や受光素子の能力に応じて光ファイバーの本数の調節で高精度の分析が可能となる上に、光ファイバーバンドル4の製作が容易となる。
【0037】
図12に別の例を示す。基本的構成は図4に示したものと同じであるが、ここで用いている光ファイバーバンドル4は、図13に示すように端部Bにおいてクラッド径が500μmの発光用光ファイバー4a(図中で斜線を施したもの)1本と、クラッド径が500μmと250μmの2本の受光用光ファイバー4bを束ねたものとしている。
【0038】
そして発光用光ファイバー4aの他端Aは回折格子ユニット2に接続し、2本の径が異なる受光用光ファイバー4b,4bの各他端C,Dは受光ユニット5における個別の受光素子に導いている。径の小さい方の受光用光ファイバー4bで受光した光をリファレンス光として用いることができるようにしているのである。つまり、図14に示すように、500μm径の受光用光ファイバー4bで受光される透過光は主に真皮組織9bを透過し、250μmの光ファイバー4bで受光される透過光は主に表皮組織9aを透過した光であることから、その差スペクトルを用いることで真皮組織9bのスペクトルのみを取り出すことができる。もちろん、光ファイバー径は上記の値に限定されるものではなく、線径は適切に選択するものとする。いずれにしても、分光分析装置で不可欠なリファレンス測定を同一の光ファイバーバンドル4で可能であり、2個の受光素子を用いれば同時測定も可能である。なお、このような構成は、図7〜図11に示した光ファイバーバンドル4にも適用することができるのはもちろんである。
【0039】
たとえば図15に示す光ファイバーバンドル4では、端部Bをクラッド径が500μmと250μmの光ファイバーを夫々複数本束ねたものとして構成するとともに、500μm径の光ファイバーのうちの数本を発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aとし、500μm径の光ファイバーの残りと250μmの光ファイバーとを受光用光ファイバー4bとしている。また発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとは規則正しく並べることで効率的に光ファイバーを利用できるようにしている。この光ファイバーバンドル4を利用すれば、光源や受光素子の能力に応じた光ファイバー本数の調節で高精度の分析が可能となる。図16に示す光ファイバーバンドル4では、クラッド径が500μmの光ファイバー2本と250μmの光ファイバー2本を束ねたものを1単位として、これを7単位束ねたものとして構成するとともに、各単位中のクラッド径が500μmの光ファイバー1本を発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aとし、500μm径の光ファイバーの残りと250μmの光ファイバーとを受光用光ファイバー4bとしている。受光用光ファイバー4bは反対端において線径別に別けて束ねて端部C、端部Dとしている。この光ファイバーバンドル4を利用すれば、光源や受光素子の能力に応じた光ファイバーの本数調節で高精度の分析が可能となる上に、光ファイバーバンドルの製作が容易となるという利点を有する。
【0040】
図17及び図18に更に別の例を示す。ここで用いている光ファイバーバンドル4は、クラッド径500μmと250μmの光ファイバーを夫々発光用光ファイバー4a及び受光用光ファイバー4bとして用いるとともに、端部Aにおいて径を問わずに束ねた発光用光ファイバー4aは、端部B,B’側において径別に分けて、500μm径の発光用光ファイバー4aは500μm径の受光用光ファイバー4bと束ね、250μm径の発光用光ファイバー4aは250μm径の受光用光ファイバー4bと束ねている。そして各径別の受光用光ファイバー4b,4bの束の各端部C,Dを受光ユニット5に接続している。
【0041】
端部C及び端部Dからの光は各々受光素子(たとえばInGaAs製のフォトダイオード)に導かれ、径の小さい光ファイバー4bで受光した光をリファレンス光とし、径の大きい光ファイバー4bで受光した光を測定光として使用する。500μm径の光ファイバー4bで受光される透過光は主に真皮を透過し、250μmの光ファイバー4bで受光される透過光は主に表皮層を透過した光である。そこで、その差スペクトルを用いることで真皮のスペクトルのみを取り出すことができる。また発光源の光量及び受光部の感度に応じて適切なファイバー数のバンドルとすればよい。
【0042】
図19及び図20に示すものにおいては、クラッド径500μmの光ファイバーを発光用光ファイバー4aに、クラッド径500μmと250μmと100μmの光ファイバー3本を受光用光ファイバー4bとし、これら4本を端部Bにおいて束としたものを1単位として複数の単位を組み合わせて光ファイバーバンドル4を構成し、更に反対端では発光用光ファイバー4aをまとめて端部Aとして回折ユニット2に接続し、夫々の径の受光用ファイバー4bを径ごとにまとめて端部C,D,Eとして受光ユニット5に接続している。
【0043】
そしてクラッド径100μmの光ファイバー4bで受光した光をリファレンス光とし、クラッド径500μmと250μmの光ファイバー4bで受光した光を夫々測定光として使用する。500μm径の光ファイバー4bで受光される透過光は主に真皮組織9b中央部を透過し、250μmの光ファイバー4bで受光される透過光は主に真皮組織9b上部あるいは表皮層9a下部を透過し、100μmの光ファイバー4bで受光される透過光は主に表皮層9a中央部を透過した光である。そこで、これら差スペクトルを用いることで深さ方向のグルコース濃度分布を一度に測定することができる。また同一測定で測定光とリファレンス光を測定できるために測定時間を短縮することができる。ここではクラッド径500μmと250μmと100μmの光ファイバーを使用したが、線径を適切に選択することで任意深さの成分分析を行うことが可能である。また発光源の光量及び受光部の感度に応じて適切なファイバー数のバンドルとすればよい。
【0044】
図21に示す光ファイバーバンドル4は、クラッド径が200μmの発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを各50本束ねたもので、プローブとなる一端B側において両光ファイバー4a,4bを相互に接触させた状態で束ねている。すなわち、発光用光ファイバー4aの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、受光用光ファイバー4bを上記矩形状格子点の中心点に位置させると同時に、受光用光ファイバー4bの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、発光用光ファイバー4aを上記矩形状格子点の中心点に位置させる状態で束ねている。この場合、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの中心間距離は、どの位置においてもこれら光ファイバー4a,4bの線径と同じ値、この場合は200μmとなり、透過光路(の深さ)を特定することができるために、真皮9bでの成分分析を容易にできる。また、端部Bの皮膚への押圧力が測定時に一定となるように圧力ゲージと押し治具とを組み合わせたものを利用すれば精度の高い測定ができる。
【0045】
図22に示すように、発光用光ファイバー4aを並べた列と受光用光ファイバー4bを並べた列とを半ピッチずらした状態で積層したものや、図23に示すように、発光用光ファイバー4a間に発光用光ファイバー4bよりも小径の受光用光ファイバー4bを配したもの(たとえば発光用光ファイバー4aとしてクラッド径が200μmのもの、受光用光ファイバー4bとしてクラッド径が75μmのもの)であってもよい。前者においては各列が発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとに別れるために両者の分離が容易で作製しやすいものであり、後者においては両種光ファイバー4a,4bで径が異なるために両者の分離が容易で作製しやすいものである。
【0046】
以上の各例は、基本的に発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの間隔(中心間隔)が光ファイバーの線径(クラッド径)で定まるようにしたものであるが、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの間にスペーサー7を介在させて、該スペーサー7で上記間隔を設定するようにしてもよい。なお、この場合においても光ファイバーの線径が間隔を決定する一要素となるのはもちろんである。
【0047】
図24はスペーサー7を用いた場合の一例を示しており、端部Bにおいて発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを束ねるにあたり、同径である発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bの直径と等しい長さの辺を有する正方形断面のスペーサー7を用意して、該スペーサー7を光ファイバー4a,4b間に密着配置するとともに、発光用光ファイバー4aの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、受光用光ファイバー4bを上記矩形状格子点の中心点に位置させると同時に、受光用光ファイバー4bの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、発光用光ファイバー4aを上記矩形状格子点の中心点に位置させる状態で束ねている。各光ファイバー4a,4bの他端側においては、上述のものと同じく、発光用光ファイバー4aのみを束ねた端部Aと、受光用光ファイバー4bのみを束ねた端部Cとを形成している。
【0048】
この場合、光ファイバー4a,4bとしてクラッド径が200μmのものを用いたならば、スペーサー7の介在により、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの中心間距離は、どの位置においても280μmとなり、透過光路(の深さ)を特定することができるために、真皮組織9bでの成分分析が容易にできる。また、発光用光ファイバー4aとスペーサー7のみ、あるいは受光用光ファイバー4bとスペーサー7のみが並ぶ列に別れるために、両種光ファイバー4a,4bの分離が容易で作成しやすいものともなっている。
【0049】
図25に他例を示す。端部Bにおいて発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを束ねるにあたり、同径である発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bの直径と等しい長さの辺を有する正方形断面のスペーサー7aと、両種光ファイバー4a,4bの直径と等しい厚み(短片長さ)の長方形断面のスペーサー7bとを用意して、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを第1のスペーサー7aを介して並べた列を、第2のスペーサー7bを介して積層配置し、この時、スペーサー7bを挟んだ2つの列において、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bの位置を1ピッチずらせることで、発光用光ファイバー4aの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、受光用光ファイバー4bを上記矩形状格子点の中心点に位置させると同時に、受光用光ファイバー4bの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、発光用光ファイバー4aを上記矩形状格子点の中心点に位置させる状態で束ねている。
【0050】
この場合、光ファイバー4a,4bとしてクラッド径が200μmのものを用いた場合、スペーサー7a,7bの介在により、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの中心間距離は、どの位置においても400μmとなり、透過光路(の深さ)を特定することができるために、表面近傍の深さ方向の成分分析が容易にできる。
【0051】
なお、上記の発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとが格子状に並ぶ状態で束ねられた光ファイバーバンドル4は、次のようにして製造することができる。図21に示した光ファイバーバンドル4は、クラッド径200μmで長さ40cmの発光用光ファイバー4aを50本、クラッド径200μmで長さ30cmの受光用光ファイバー4bを50本用意して、図26(a)に示すように、5本の発光用光ファイバー4aと5本の受光用光ファイバー4bとを平面上で交互に並べて接着し、平板状ユニットを得る。この平板状ユニットを10組作製した後、図26(b)に示すように、各ユニットを積層接着して、図26(c)に示すものを得る。この時、上下に並ぶ2つのユニット間で裏表を異ならせて積層する。得られた光ファイバー4a,4bの束は、図21に示すステンレス製チューブ8に入れて該チューブ8内面との間にエポキシ系充填材91を充填する。
【0052】
他端側では、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを分離して夫々束ね、やはりステンレス製チューブに入れてエポキシ系充填材を充填する。発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの長さを異ならせているのは、この分離を容易とするためであるが、長さではなく、たとえば色分けによって分離できるようにしておいてもよい。なお、各端部A,B,Cの端面は最終的には研磨機で研磨して仕上げる。図22に示した光ファイバーバンドル4も同様の方法で作製することができる。
【0053】
図24に示した光ファイバーバンドル4は、クラッド径200μmで長さ40cmの発光用光ファイバー4aを25本、クラッド径200μmで長さ30cmの受光用光ファイバー4bを25本用意して、5本の発光用光ファイバー4aと5個のスペーサー7を平面上で交互に並べて接着したユニットを5つ作製するとともに、5本の受光用光ファイバー4bと5個のスペーサー7を平面上で交互に並べて接着したユニットを5つ作製し、上記両種のユニットを交互に積層して接着した後、ステンレス製チューブ8に入れてエポキシ系充填材91を充填することで形成することができる。他端側では、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを分離して夫々束ね、やはりステンレス製チューブに入れてエポキシ系充填材を充填する。各端部A,B,Cの端面は最終的には研磨機で研磨して仕上げる。
【0054】
スペーサー7として、図27(a)に示すように、複数個が一端側において連結されているものを用いて、スペーサー7間の溝に発光用光ファイバー4aを収納したものと、スペーサー7間の溝に受光用光ファイバー4bを収納したものとを作製し、これらを図27(b)(c)に示すように交互に積層して接着してもよい。スペーサー7同士を連結している一端部は最終の研磨時に削り落とせばよい。
【0055】
図25に示した光ファイバーバンドル4は、クラッド径200μmで長さ40cmの発光用光ファイバー4aを18本、クラッド径200μmで長さ30cmの受光用光ファイバー4bを18本用意して、3本の発光用光ファイバー4aと3本の受光用光ファイバー4bと5個のスペーサー7aを平面上で交互に並べて接着したユニットを6つ作製し、各ユニットとスペーサー7bとを交互に積層して接着した後、ステンレス製チューブ8に入れてエポキシ系充填材91を充填することで形成することができる。他端側では、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを分離して夫々束ね、やはりステンレス製チューブに入れてエポキシ系充填材を充填する。各端部A,B,Cの端面は最終的には研磨機で研磨して仕上げる。
【0056】
図28に示すように、スペーサー7aとスペーサー7bとを一体としたものを用いれば、スペーサー7a間の溝に光ファイバー4a,4bを収納して組み立てることができるために、光ファイバーバンドル4の作製が更に容易となる。スペーサー7を用いる場合、その形態は上記の各例に限定されるものではない。たとえば図29に示すように、表裏に溝を交互に形成することになる矩形波型断面のスペーサー7を用意して、表裏の各溝に光ファイバー4a,4bを収納したユニットを複数形成し、これらユニットを積層接着するようにしてもよい。この時、スペーサー7の片面側に発光用光ファイバー4aを、他面側に受光用光ファイバー4bを収納すればよく、またスペーサー7の厚みによって光ファイバー4a,4bの中心間距離を自由に設定することができる。
【0057】
発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの配列及びスペーサー7の形状の他例を図30に示す。ここでのスペーサー7は円筒状となっており、該スペーサー7の外周面に受光用光ファイバー4bをほぼ等間隔で並べるとともにスペーサー7の内周面に発光用光ファイバー4aをほぼ等間隔で並べて、図30(a)に示すものでは受光用光ファイバー4bと発光用光ファイバー4aとを周方向において同じ位置に配置している。スペーサー7とこれの周面に密着固定した両種光ファイバー4a,4bの軸線方向を平行としたこのものでは、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの中心間距離はどの一においても発光用光ファイバー4aの半径と受光用光ファイバー4bの半径とスペーサー7の厚みの和となり、両種光ファイバー4a,4bに200μmのクラッド径のものを用いるとともに厚み100μmのスペーサー7を用いれば、上記中心間距離は300μmとなる。もちろん、図30(b)に示すように、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを周方向においてずらした位置に設けてもよく、この場合、上記中心間距離は上記値より長くなる。
【0058】
図31は上記の筒状スペーサー7を用いる場合の他例を示しており、径の異なる2つの円筒状スペーサー7,7を用意して、径の小さなスペーサー7の外周面に発光用光ファイバー4aを固定し、径の大きなスペーサー7の外周面に受光用光ファイバー4bを固定した上で、径の大きなスペーサー7の内部に径の小さなスペーサー7をはめ込むようにしている。径の大きなスペーサー7の内径(半径)と径の小さなスペーサー7の外径(半径)との差を発光用光ファイバー4aの直径とほぼ等しくしておくことで、両スペーサー7,7の軸合わせが容易となる。この場合、スペーサー7の内周面に光ファイバーを固定するという困難な作業が不要となるために製作が容易である。
【0059】
スペーサー7は図32に示すように、シート状のものであってもよい。シート状スペーサー7の片面に発光用光ファイバー4aを、他面に受光用光ファイバー4bを密着固定しておくのである。このものでは、シート状スペーサー7を曲げて図30に示したような形態としたり、あるいは渦巻き状に巻いたり波状としたり折り畳んだりすることで適宜形態のものとすることができる。また、広げて平板状としている状態のスペーサー7に光ファイバー4a,4bを取り付けることができるために、光ファイバー4a,4bの位置決め及び接着固定が容易なものである。
【0060】
スペーサー7の厚みが発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの中心間距離の設定の要件となるものを示したが、スペーサー7としては、光ファイバー4a,4bを通すことができる貫通孔71を備えたものであってもよい。図33に示すように、複数個の貫通孔71をスペーサー7に設けておき、これら貫通孔71に夫々光ファイバー4a,4bを通すことで、貫通孔71の間隔で光ファイバー4a,4bの中心間距離を設定するのである。図示例では、1本の発光用光ファイバー4aを複数本の受光用光ファイバー4bが取り囲む配列となるようにしているが、該配列は貫通孔71の配置と両種光ファイバー4a,4bをどの貫通孔71に挿通するかによって定まるものであり、多様な配列が可能である。
【0061】
上記貫通孔71を備えたスペーサー7は、測定プローブPの生体に接触させる端面を形成する部材として利用することができるが、この時、図34に示すように、光ファイバー4a,4bの先端をスペーサー7より少し突出させておくと、皮膚組織表面に測定プローブPを当てる際に、光ファイバー4a,4bと皮膚組織との間に隙間が生じて迷光が生じてしまうおそれを無くすことができる。
【0062】
図35はかごめ格子状に光ファイバー4a,4bを配置するスペーサーにおいて、リファレンス用の受光用光ファイバー4bを発光用光ファイバー4aの近傍に位置させることができるようにしたものを示している。本発明にかかる血液成分濃度の分析装置は、光ファイバー4を必須とするものではない。たとえば図36に示すように、測定プローブPの先端面に微小な発光ダイオード41a及び受光素子41bを配列させた基板を装着し、これら発光ダイオード41a及び受光素子41bを生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点と表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点としてもよいものである。図36(b)に示すものではL2(100μm)角の大きさの発光ダイオード41a及び受光素子41bをL1(200μm)ピッチで並べるとともに、発光ダイオード41aと受光素子41bとの間にL3(100μm)の間隔をあけているが、この配列に限るものではなく、上記光ファイバーを用いたものと同様の配列あるいはランダム配置を採用することができる。
【0063】
上記発光ダイオード41aや受光素子41bのうちの一方を光ファイバーに置き換えたものであってもよい。図37は発光用光ファイバー4aを複数の受光素子41bで取り囲んだものを示しているが、発光ダイオード41aの回りを複数の受光用光ファイバー4bが取り囲むものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に用いる光ファイバーバンドルの一例を示すもので、(a)は正面図、(b)は一端側の端面図である。
【図2】(a)(b)は皮膚組織における光の透過経路の説明図である。
【図3】人間の皮膚組織に対する光の透過経路の説明図である。
【図4】本発明の分析装置の一例の概略説明図である。
【図5】同上の他例の概略説明図である。
【図6】同上に用いている光ファイバーバンドルの一端の端面図である。
【図7】光ファイバーバンドルの他例の端面図である。
【図8】光ファイバーバンドルの更に他例の端面図である。
【図9】光ファイバーバンドルの別の例の端面図である。
【図10】光ファイバーバンドルの更に別の例の端面図である。
【図11】光ファイバーバンドルの異なる例の端面図である。
【図12】別の例の概略説明図である。
【図13】同上に用いている光ファイバーバンドルの一端の端面図である。
【図14】レファレンス光についての説明図である。
【図15】光ファイバーバンドルの他例の端面図である。
【図16】光ファイバーバンドルの更に他例の端面図である。
【図17】更に別の例の概略説明図である。
【図18】同上に用いている光ファイバーバンドルの一例の端面図である。
【図19】異なる例の概略説明図である。
【図20】同上に用いている光ファイバーバンドルの一例の端面図である。
【図21】光ファイバーバンドルの別の例の端面図である。
【図22】光ファイバーバンドルのさらに別の例の端面図である。
【図23】光ファイバーバンドルの他例の端面図である。
【図24】光ファイバーバンドルの更に他例の端面図である。
【図25】光ファイバーバンドルの異なる例の端面図である。
【図26】(a)(b)(c)は光ファイバーバンドルの製造方法の説明図である。
【図27】(a)(b)(c)は他の光ファイバーバンドルの製造方法の説明図である。
【図28】(a)(b)(c)は別の光ファイバーバンドルの製造方法の説明図である。
【図29】(a)(b)は異なる光ファイバーバンドルの製造方法の説明図である。
【図30】(a)(b)は夫々光ファイバーバンドルの他例の端面図である。
【図31】(a)は光ファイバーバンドルのスペーサーの他例の端面図、(b)は同上の分解斜視図である。
【図32】光ファイバーバンドルのスペーサーの別の例の斜視図である。
【図33】(a)(b)はスペーサーのさらに別の例の斜視図である。
【図34】光ファイバーバンドルの他例の斜視図である。
【図35】スペーサーの異なる例の正面図である。
【図36】(a)は測定プローブの他例の正面図、(b)は同上の拡大正面図である。
【図37】測定プローブのさらに他例の正面図である。
【符号の説明】
【0065】
4 光ファイバーバンドル
4a 発光用光ファイバー
4b 受光用光ファイバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析法による血液成分濃度の分析方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外光から赤外光を利用した分光分析は現在、広範囲の分野で利用されている。利用する波長によって吸光にかかわる物理的性質は異なるが、紫外域では電子の励起、赤外域では分子振動の共鳴、近赤外領域では分子振動の共鳴の高調波などが計測できるために、これらに基づいて分析を行うことができる。
【0003】
これらの波長の中で可視域に隣接する近赤外域の光を用いて物質の定量、定性分析を行う近赤外分光分析法は、近年、農業分野をはじめ様々な分野で利用されはじめており、最近では生体分野において非侵襲、無害の分析手法として注目されている。近赤外分光分析法は0.8μmから2.5μmの波長の光を物質に照射し、透過あるいは反射した光のスペクトルより分析を行う手法である。この近赤外分光分析法は、エネルギーの低い電磁波を用いるので試料を損傷することがない固体、粉体、繊維、液体、気体など様々な状態の試料への適用が可赤外光にくらべ近赤外光では水の吸収強度が弱くなるので、水溶液での分析が可などの利点を有しており、グルコースといった血液成分濃度の定量、定性分析を非侵襲で行うことが可能である。
【0004】
ただし、近赤外光を用いる場合、吸収シグナルは高調波をあつかうために赤外光に比較して非常に微弱である上、バンドの帰属が明確でないという欠点を有しており、このために近赤外分光分析にはその定量、定性のためにいわゆる“ケモメトリクス”と呼ばれる手法が用いられる。これは、多変量解析手法や統計解析手法を用いて化学分析を行う手法で、コンピュータの発達とともに発展し、最近の近赤外分光分析では主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析といった多変量解析手法を用いて行われることが多い。またニューラルネットワーク等の解析への応用も試みられている。
【0005】
近赤外分光分析を化学成分分析に利用した従来例として水分計がある。近赤外光による水分計は現在、数種類が市販されているが、初期の頃の単純な水分定量は、水の吸収の1.93μmにおける吸光度と物質の吸収に関係しない中立波長の2.08μmにおける吸光度の差(差吸光度)と、水分との単回帰式によりあらかじめ求めた検量線を用いて行われている。実際の計測においては差吸光度を測定し、検量線と比較することで物質の水分量を測定する。ただし、この水分量計測は物質表面に光を照射しその反射光を検出することにより行われるので、表面近傍の深さ方向の水分量を選択的に検出する能力はない。
【0006】
また、分光学的方法とは異なる手法も提案されている。これは特表平8−502912号公報に示されているように、多重に散乱した光の空間的に分解された測定によってグルコース濃度を求めようとしたもので、生体を通った近赤外光の測定を2つの受発光間隔で行うとともに、受発光間隔に対する強度の依存性に基づいてグルコース濃度を求めている。
【0007】
しかし、残念ながら今のところグルコースといった血液成分濃度を生体組織から非侵襲で定量定性分析することは実用化に至っていないのが現状である。これは、生体組織における皮膚組織は300μm程度の厚さの表皮と,その下層の厚さ1mm程度の真皮組織、さらにその下層の多量の脂肪細胞からなる皮脂組織で構成されているのに対して、従来は生体組織が均質なものと仮定しているためであると思われる。複雑な組織構造がからみあう生体組織においては、グルコースのような生体成分は、組織が異なればその濃度も大きく異なっており、この点を考慮しなくては正確な定量は望めない。
【特許文献1】特表平8−502912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、グルコースといった血液成分濃度の定量を非侵襲で精度良く行うことができる血液成分濃度の分析方法及びその装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る血液成分濃度の分析方法は、生体の血液成分濃度を近赤外光の分光分析で行うにあたり、近赤外光として1,300〜2,500nmの範囲の波長のものを用い、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端で生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点を形成するとともに、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端で表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点を形成して、この光投射点と光検出点との間隔を発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサで2mm以下の単一距離に設定することで生体の表層組織における真皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは真皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光を受光手段に導いて分光分析を行い、定量を目的とする成分の血中成分濃度と上記真皮部分中の濃度との相関を利用して定量分析を行うことに特徴を有している。
【0010】
生体の皮膚組織のなかで真皮部分は血液成分に関してその濃度の点で相関が高い上に、近赤外光を真皮部分に選択的に透過させたり真皮部分で選択的に拡散反射させたりすることが可能であることに着目したものである。すなわち、図2に示すように発光プローブPと受光プローブRとを平行に配置して測定物9に対向させた場合、発光プローブPから出て受光プローブRで観察される光はいわゆる「バナナシェイプ」とよばれる経路を通ることが実験的にも数値解析手法を用いたシミュレーションにおいても確認されており、この時、発光プローブPと受光プローブRとの間隔の調節によって測定物9の深さ方向への光の到達度を変化させることができることに着目し、生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点と表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点との間隔を2mm以下することで、真皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは真皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光を取り出して近赤外光分析を行うようにしたものである。
【0011】
前記公報の実施例で示された3mmや5mmといった受発光間隔では、真皮組織の信号だけでなく、その下層に位置する筋肉組織や脂肪組織の信号をも重畳した信号を検出してしまうことになり、外乱信号が多くなるために、空間的に分離された2つの近赤外光を検出した信号を利用しても、複雑な生体組織から精度の良いグルコース濃度の測定は難しいが、皮膚組織のなかで最も良好なグルコース信号(つまり血中グルコース濃度と相関の高いグルコース信号)を外乱が少なくて安定した真皮組織から選択的に取り出すことができる。
【0012】
また、上記発光プローブと受光プローブとを上記のような間隔で設けることは実際上困難であるが、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端を光投射点とし、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端を光検出点とすることで、この問題を解決することができる上に、発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサで上記光投射点と光検出点の間隔を設定しているために、真皮部分を選択的に透過させたり真皮部分で選択的に反射させるための間隔設定を容易に行うことができる。。
【0013】
なお、光ファイバーとしてはその線径が1mm以下のものを好適に用いることができる。光ファイバーには直径が数μmから数千μm(数mm)のものを用いることができるが、この中で特に、直径70μmから1000μmの光ファイバーの利用が適している。人間の真皮中の化学成分の定量分析を行う用途に用いるものについて述べるならば、人間の真皮9bは図3に示すように300μm程度の厚さの表皮9aと多量の脂肪細胞からなる皮下組織9cとに挟まれた1mm程度の厚さの組織であり、このような真皮9b中の血液成分の分析には線径が250〜750μmの光ファイバー、たとえば500μmの光ファイバーの束を用いて図1のような光ファイバーを作製して分光分析を行うことで、真皮9b中の血液成分の分析が可能となる。皮膚組織中を透過する光の経路は組織の物性や分析に用いる波長により異なるので、予め予備実験や数値シミュレーションを行い、測定に用いる線径を決定する必要がある。得られた吸光信号は演算部で数値計算され目的とする成分濃度が算出される。
【0014】
目的とする血液成分としてはグルコースをあげることができ、この時、真皮組織からは血中グルコース濃度と相関の高いグルコース信号を得ることができるために、グルコース濃度の定量分析を高い精度で行うことができるが、グルコースに限るものではない。
【0015】
そして、生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点と表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点とを複数設けるとともに、上記両点の最小間隔を2mm以下,好ましくは1mm以下としても、真皮部分を選択的に透過させたり真皮部分で選択的に拡散反射させることができる。
【0016】
近赤外光による分光分析にあたり、近赤外光としては、1,300〜2,500nmの範囲の波長のものを好適に用いることができる。1,300nm未満の光ではS/N比の良い信号を得ることができない。生体での透過性に優れるものの、吸収信号が非常に小さいために、2mm以下に設定した受発光間隔での測定では、真皮組織に微量含まれるグルコースのような成分の定量が難しくなるためであり、1,300〜2,500nmの波長は生体での透過性に劣るものの、吸収信号が大きくてS/N比が良く、分析精度も向上するためである。
【0017】
上記波長範囲内においても、1,400〜1,800nmの範囲の波長の近赤外光もしくは2,000〜2,500nmの範囲の波長の近赤外光の少なくとも一方を用いることで好ましい結果を得ることができる。
【0018】
そして生体の表層組織における表皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは表皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光をリファレンス光として併用することも好ましい。表皮組織の影響を受けない真皮組織の吸収信号を抽出することができるために、より正確な定量を行うことが可能となる。
この場合、光投射点とリファレンス光測定用の光検出点との間隔を上記分光分析用の間隔より小さくすることで、表皮部分からの光を検出することができる。リファレンス光は、表皮組織、とりわけ角質層のような生体外部の環境の影響を受けやすく、毛細血管がほとんど存在しない組織を主として透過したり拡散反射した光となり、このような表皮組織の吸収信号の寄与の大きい透過光あるいは拡散反射光をリファレンス光とすることで、真皮組織の吸収信号を抽出することができることになり、より正確な定量を行うことが可能となる。
【0019】
そして本発明にかかる血液成分濃度の分析装置は、生体の血液成分濃度を近赤外光の分光分析で行う分析装置であって、1,300〜2,500nmの範囲の波長の近赤外光を生体の表層組織表面に投射する投射部と、生体の表層組織表面から近赤外光を検出する検出部とを備えるとともに、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端を上記投射部とし、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端を上記検出部としたものであり、発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサによって上記投射部と上記検出部との間隔を、上記投射部から生体組織に導入されて検出部で検出される近赤外光が生体の表層組織における真皮部分を選択的に透過する間隔あるいは真皮部分で選択的に拡散反射する間隔である2mm以下の単一距離とし、更に定量を目的とする成分の血中成分濃度と上記真皮部分中の濃度との相関を利用して定量分析を行う演算手段を備えていることに特徴を有している。
【0020】
上記方法による血液成分濃度の分析を行うことができる。また、光ファイバーを利用することで、特殊な受発光部品を用いずとも通常のハロゲンランプや発光ダイオードのような比較的光量の弱い光源、SiやGeやInGaAs製のフォトダイオードのような通常の受光素子を用いても、物質の表面近傍の化学組成を分析するのに十分な光量あるいは受光感度を得ることができるものとなる。
【0021】
このものにおいて、リファレンス光を併用する場合、リファレンス光用の投射部と検出部との間隔は上記単一距離よりも短くしておく。たとえば0.5mm以下、好ましくは0.35mm以下とする。
【0022】
成分濃度の算出は検量線あるいはキャリブレーション式を用いて行われる。検量線あるいはキャリブレーション式は予め個人あるいは複数の被験者の様々な状態における吸光スペクトルを解析して得られる。解析は、多変量解析手法や統計解析手法を用いて定量、定性分析を行う手法で、近赤外分光分析では主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析といった多変量解析手法を用いて行われることが多い。
【0023】
スペクトル測定はハロゲンランプのような光源からの光を干渉フィルターのような光学フィルターを用いて任意波長の光に分光したり、発光ダイオードやレーザーダイオードのような単色光源を組み合わせて複数波長の吸光度を測定する方式や、通常の分光分析法のようにハロゲンランプのような光源からの光を回折格子あるいはフーリエ変換方式(FT−IR方式)を用いて連続的に所定の波長の吸光スペクトルを求めるようにしてもかまわない
【発明の効果】
【0024】
本発明は、生体の皮膚組織のなかで真皮部分は血液成分に関してその濃度の点で相関が高い上に、この真皮部分に選択的に透過させたり真皮部分で選択的に拡散反射させた光で分光分析を行うために、きわめて精度の高い分析を行うことができるものである。しかも、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端と一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端と夫々生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点及び表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点を受光用光ファイバーの他端で形成しているために、2mm以下の間隔で光投射点と光検出点とを設けることを物理上の問題を招くことなく実現することができるとともに、特殊な受発光部品を用いずとも通常のハロゲンランプや発光ダイオードのような比較的光量の弱い光源、SiやGeやInGaAs製のフォトダイオードのような通常の受光素子を用いても、血液成分濃度を皮膚組織の非侵襲で分析するのに十分な光量あるいは受光感度を得ることができるものであり、更には上記光投射点と上記光検出点との間隔を発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサで設定していることから、真皮部分を選択的に透過させたり真皮部分で選択的に反射させるための間隔設定を容易に行うことができる。
【0025】
そして本発明にかかる血液成分濃度の分析装置は、上記分析方法によるところの血液成分濃度の分析を効果的に行うことができる。また、投射部と検出部との間隔を発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサで設定しているために、用いる光ファイバーの径に制限が生じにくくなり、適宜な光ファイバーを選択して用いることができるほか、レファレンスを得る場合も、同じ径の光ファイバーで得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すと、図4に示すものは人間の皮膚組織内のグルコース濃度を定量するためのもので、150W程度のハロゲンランプ1、ハロゲンランプ1からの光の分光を行う回折格子を納めた回折格子ユニット2、前記回折格子の回転角制御を行って分光波長の調節を行うステッピングモータユニット3、分光後の光を被測定物に伝えるとともにその透過光を受光ユニット5に送る光ファイバーバンドル4、受光ユニット5からの信号をもとに数値解析を行いグルコース濃度の定量を行う演算ユニット6から構成されている。
【0027】
上記光ファイバーバンドル4は図6に示すように、クラッド径が750μmの2本の大口径ファイバーを測定プローブPとなる一端B側において相互に接触させた状態で束ねたものとなっている。クラッド径は目的とする真皮9b組織の厚さに応じて決定され、750μmのものは適切な一例である。この光ファイバーバンドル4の発光用光ファイバー4aの端部Aを回折格子ユニット2へ、受光用光ファイバー4bの端部Cを受光ユニット5へ接続し、端部Bを分析する皮膚へ直角に突き当てて計測を行う。
【0028】
このように線径を適切に選んだ発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを接触させて両者の間隔を特定すれば、図3に示すように、透過光路(の深さ)が選定され、真皮組織9bを選択的に透過(あるいは真皮組織9bで選択的に拡散反射)させることができる。従って、真皮組織9bにおける血液成分濃度の分析が容易にできる。また、光ファイバーバンドル4の作製も容易である。端部Bの皮膚への押圧力が測定時に一定となるように圧力ゲージと押し治具とを組み合わせたものを利用すれば精度の高い測定ができる。
【0029】
受光ユニット5では受光感度域が0.9〜1.7μmのInGaAs製のフォトダイオードの受光信号を増幅後、AD変換し、マイクロコンピュータからなる演算ユニットへ信号を伝達する。演算ユニットで行われるグルコース濃度定量には1.25μm〜1.7μmの近赤外領域に属する吸光スペクトルを利用し、多変量解析を実施する。この多変量解析はPLS(Partial LeastSquare)回帰分析により得られる検量線(検量式)を用いている。この検量線は、予め上記分析装置を用いた実験より得る。つまり、複数の被験者の皮膚組織から測定した吸光スペクトルを説明変量とし、実測した真皮細胞液中のグルコース濃度を目的変量としてPLS回帰分析することで検量線を取得する。
【0030】
図5に他例を示す。ここでは反射鏡10を備えた150W程度のハロゲンランプ1からの光をレンズ11を通じて発光用光ファイバー4aに導入し、受光用光ファイバー4bから射出される光をスリット20を通じてフラットフィールド型回折格子ユニット2に導き、回折格子ユニット2で分光した光をアレイ型受光ユニット5で受けている。図中60は受光ユニット5と演算ユニット6との間に配したA/D変換装置である。上記受光ユニット5にはたとえば受光感度域が0.9〜2.1μmのInGaAs製のフォトダイオードを直線状に256素子並べるとともにペルチェ素子で冷却しているものを用いる。そして、上記演算ユニット6では、1.4μm〜1.8μmの近赤外領域に属する吸光スペクトルを利用し、上記の場合と同様に検量式(検量線)を用いてグルコース濃度の定量を行う。
【0031】
図7に光ファイバーバンドル4の他例を示す。これは光ファイバーバンドル4の測定プローブPとなる端部Bを示しており、ここではクラッド径が750μmの光ファイバーをかごめ格子状に7本束ねたものを利用するとともに、中心の光ファイバー(図中で斜線を施したもの)を発光用光ファイバー4aとし、周囲の6本の光ファイバーを受光用光ファイバー4bとしている。受光用光ファイバー4bを発光用光ファイバー4aの周囲に配置することで、皮膚組織透過中に減衰・散乱した透過光をより多く集光できるので高精度の分析が可能となる。
【0032】
図8に示すものは、端部Bにおいてクラッド径が500μmの光ファイバーを70本程度束ねたものである。発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aと受光用光ファイバー4bの本数の比は約1:2となるようにし、発光用光ファイバー4aの周囲を受光用光ファイバー4bが取り囲むように規則的な配列としている。このような光ファイバーバンドル4であれば、光源や受光素子の能力に応じて光ファイバーの本数を調節することで発光光量と受光光量とを決められるために高精度の分析が可能となる。
【0033】
図9に示すものでは、端部Bにおいてクラッド径が500μmの光ファイバーを70本程度ランダムに束ねるにあたり、発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aと受光用光ファイバー4bの本数の比を約1:3としている。この場合、ランダムに束ねても発光用光ファイバー4aの周囲を受光用光ファイバー4bがほぼ取り囲むことになり、配列を規則正しく並べる作業を行わなくとも図7に示すものとほぼ同等の性能を得ることができる。この光ファイバーバンドル4であれば、光源や受光素子の能力に応じて光ファイバーの本数を調節することで高精度の分析が可能となる上に、光ファイバーバンドル4の製作が容易となる。
【0034】
ここにおいて、多数本の光ファイバーを規則的にあるいはランダムに並べた場合、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの最小間隔は隣接するもので決定されるものの、多様な間隔のものが生じることになる。しかし、最小間隔以外のものは実質上無視してもよい。すなわち、図2(b)に示すように、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを接触させた状態でその端面を測定物9の表面にほぼ直角につき当てて(透過する光路が特定できれば直角に限るものではない)、発光用光ファイバー4aを通じて測定物9の表面に送り込めば、隣接する受光用光ファイバー4bへの光路イ、さらに離れた受光用光ファイバー4bヘの光路ロ、さらに離れた受光用光ファイバー4bヘの光路ハ等、様々な光路を通って受光用光ファイバー4bに入射される。ここで光路イ,ロ,ハの光路長を比較すると、同一径の光ファイバーを受発光用光ファイバー4a,4bに用いている場合、光路ロ,ハは光路イのほぼ2倍、3倍と考えてよい。光学的に不透明で散乱の多い生体等の物質中の光の透過は厳密にはLambert−Beerの法則には従わないが、透過光量は光路長に応じて急激に減少し、光路長が2倍になると散乱状態によっては1/10以下、光路長が3倍となるとさらにそれの1/10以下の程度となる。このために受光用光ファイバー4bに集光される透過光は基本的には隣接する発光用光ファイバー4aからの透過光の和と考えてよいものであり、このために、発光用光ファイバー4aとこれに接して配された受光用光ファイバー4bとの中心間距離で、必要とする深さに光の透過経路を設定することができる。
【0035】
図10に示すように、クラッド径が250μmの光ファイバーにナイロン被覆を施して被覆外径を500μmとしたものを50本程度束ねたものを用いてもよい。ここでは発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aと受光用光ファイバー4bの本数の比を約1:2とするとともに、発光用光ファイバー4aの周囲を受光用光ファイバー4bが取り囲むように規則的に配列させている。この光ファイバーバンドル4を利用すれば、光源や受光素子の能力に応じて光ファイバーの本数の調節で高精度の分析が可能となる上に、光ファイバーの受発光部が線径の中心部分に限定されるので光路の限定をよりシャープにすることができ、解像度の高い分析が可能となる。
【0036】
図11に示すものは、図7で示した光ファイバーの束を更に束ねたもので、図7に示した束を1単位とするとき、図示例では7単位の束としている。もちろん、発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aと受光用光ファイバー4bは反対端において夫々個別に束ねて前記端部A,Cとしている。この光ファイバーバンドル4を利用すれば、光源や受光素子の能力に応じて光ファイバーの本数の調節で高精度の分析が可能となる上に、光ファイバーバンドル4の製作が容易となる。
【0037】
図12に別の例を示す。基本的構成は図4に示したものと同じであるが、ここで用いている光ファイバーバンドル4は、図13に示すように端部Bにおいてクラッド径が500μmの発光用光ファイバー4a(図中で斜線を施したもの)1本と、クラッド径が500μmと250μmの2本の受光用光ファイバー4bを束ねたものとしている。
【0038】
そして発光用光ファイバー4aの他端Aは回折格子ユニット2に接続し、2本の径が異なる受光用光ファイバー4b,4bの各他端C,Dは受光ユニット5における個別の受光素子に導いている。径の小さい方の受光用光ファイバー4bで受光した光をリファレンス光として用いることができるようにしているのである。つまり、図14に示すように、500μm径の受光用光ファイバー4bで受光される透過光は主に真皮組織9bを透過し、250μmの光ファイバー4bで受光される透過光は主に表皮組織9aを透過した光であることから、その差スペクトルを用いることで真皮組織9bのスペクトルのみを取り出すことができる。もちろん、光ファイバー径は上記の値に限定されるものではなく、線径は適切に選択するものとする。いずれにしても、分光分析装置で不可欠なリファレンス測定を同一の光ファイバーバンドル4で可能であり、2個の受光素子を用いれば同時測定も可能である。なお、このような構成は、図7〜図11に示した光ファイバーバンドル4にも適用することができるのはもちろんである。
【0039】
たとえば図15に示す光ファイバーバンドル4では、端部Bをクラッド径が500μmと250μmの光ファイバーを夫々複数本束ねたものとして構成するとともに、500μm径の光ファイバーのうちの数本を発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aとし、500μm径の光ファイバーの残りと250μmの光ファイバーとを受光用光ファイバー4bとしている。また発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとは規則正しく並べることで効率的に光ファイバーを利用できるようにしている。この光ファイバーバンドル4を利用すれば、光源や受光素子の能力に応じた光ファイバー本数の調節で高精度の分析が可能となる。図16に示す光ファイバーバンドル4では、クラッド径が500μmの光ファイバー2本と250μmの光ファイバー2本を束ねたものを1単位として、これを7単位束ねたものとして構成するとともに、各単位中のクラッド径が500μmの光ファイバー1本を発光用光ファイバー(図中で斜線を施したもの)4aとし、500μm径の光ファイバーの残りと250μmの光ファイバーとを受光用光ファイバー4bとしている。受光用光ファイバー4bは反対端において線径別に別けて束ねて端部C、端部Dとしている。この光ファイバーバンドル4を利用すれば、光源や受光素子の能力に応じた光ファイバーの本数調節で高精度の分析が可能となる上に、光ファイバーバンドルの製作が容易となるという利点を有する。
【0040】
図17及び図18に更に別の例を示す。ここで用いている光ファイバーバンドル4は、クラッド径500μmと250μmの光ファイバーを夫々発光用光ファイバー4a及び受光用光ファイバー4bとして用いるとともに、端部Aにおいて径を問わずに束ねた発光用光ファイバー4aは、端部B,B’側において径別に分けて、500μm径の発光用光ファイバー4aは500μm径の受光用光ファイバー4bと束ね、250μm径の発光用光ファイバー4aは250μm径の受光用光ファイバー4bと束ねている。そして各径別の受光用光ファイバー4b,4bの束の各端部C,Dを受光ユニット5に接続している。
【0041】
端部C及び端部Dからの光は各々受光素子(たとえばInGaAs製のフォトダイオード)に導かれ、径の小さい光ファイバー4bで受光した光をリファレンス光とし、径の大きい光ファイバー4bで受光した光を測定光として使用する。500μm径の光ファイバー4bで受光される透過光は主に真皮を透過し、250μmの光ファイバー4bで受光される透過光は主に表皮層を透過した光である。そこで、その差スペクトルを用いることで真皮のスペクトルのみを取り出すことができる。また発光源の光量及び受光部の感度に応じて適切なファイバー数のバンドルとすればよい。
【0042】
図19及び図20に示すものにおいては、クラッド径500μmの光ファイバーを発光用光ファイバー4aに、クラッド径500μmと250μmと100μmの光ファイバー3本を受光用光ファイバー4bとし、これら4本を端部Bにおいて束としたものを1単位として複数の単位を組み合わせて光ファイバーバンドル4を構成し、更に反対端では発光用光ファイバー4aをまとめて端部Aとして回折ユニット2に接続し、夫々の径の受光用ファイバー4bを径ごとにまとめて端部C,D,Eとして受光ユニット5に接続している。
【0043】
そしてクラッド径100μmの光ファイバー4bで受光した光をリファレンス光とし、クラッド径500μmと250μmの光ファイバー4bで受光した光を夫々測定光として使用する。500μm径の光ファイバー4bで受光される透過光は主に真皮組織9b中央部を透過し、250μmの光ファイバー4bで受光される透過光は主に真皮組織9b上部あるいは表皮層9a下部を透過し、100μmの光ファイバー4bで受光される透過光は主に表皮層9a中央部を透過した光である。そこで、これら差スペクトルを用いることで深さ方向のグルコース濃度分布を一度に測定することができる。また同一測定で測定光とリファレンス光を測定できるために測定時間を短縮することができる。ここではクラッド径500μmと250μmと100μmの光ファイバーを使用したが、線径を適切に選択することで任意深さの成分分析を行うことが可能である。また発光源の光量及び受光部の感度に応じて適切なファイバー数のバンドルとすればよい。
【0044】
図21に示す光ファイバーバンドル4は、クラッド径が200μmの発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを各50本束ねたもので、プローブとなる一端B側において両光ファイバー4a,4bを相互に接触させた状態で束ねている。すなわち、発光用光ファイバー4aの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、受光用光ファイバー4bを上記矩形状格子点の中心点に位置させると同時に、受光用光ファイバー4bの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、発光用光ファイバー4aを上記矩形状格子点の中心点に位置させる状態で束ねている。この場合、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの中心間距離は、どの位置においてもこれら光ファイバー4a,4bの線径と同じ値、この場合は200μmとなり、透過光路(の深さ)を特定することができるために、真皮9bでの成分分析を容易にできる。また、端部Bの皮膚への押圧力が測定時に一定となるように圧力ゲージと押し治具とを組み合わせたものを利用すれば精度の高い測定ができる。
【0045】
図22に示すように、発光用光ファイバー4aを並べた列と受光用光ファイバー4bを並べた列とを半ピッチずらした状態で積層したものや、図23に示すように、発光用光ファイバー4a間に発光用光ファイバー4bよりも小径の受光用光ファイバー4bを配したもの(たとえば発光用光ファイバー4aとしてクラッド径が200μmのもの、受光用光ファイバー4bとしてクラッド径が75μmのもの)であってもよい。前者においては各列が発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとに別れるために両者の分離が容易で作製しやすいものであり、後者においては両種光ファイバー4a,4bで径が異なるために両者の分離が容易で作製しやすいものである。
【0046】
以上の各例は、基本的に発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの間隔(中心間隔)が光ファイバーの線径(クラッド径)で定まるようにしたものであるが、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの間にスペーサー7を介在させて、該スペーサー7で上記間隔を設定するようにしてもよい。なお、この場合においても光ファイバーの線径が間隔を決定する一要素となるのはもちろんである。
【0047】
図24はスペーサー7を用いた場合の一例を示しており、端部Bにおいて発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを束ねるにあたり、同径である発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bの直径と等しい長さの辺を有する正方形断面のスペーサー7を用意して、該スペーサー7を光ファイバー4a,4b間に密着配置するとともに、発光用光ファイバー4aの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、受光用光ファイバー4bを上記矩形状格子点の中心点に位置させると同時に、受光用光ファイバー4bの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、発光用光ファイバー4aを上記矩形状格子点の中心点に位置させる状態で束ねている。各光ファイバー4a,4bの他端側においては、上述のものと同じく、発光用光ファイバー4aのみを束ねた端部Aと、受光用光ファイバー4bのみを束ねた端部Cとを形成している。
【0048】
この場合、光ファイバー4a,4bとしてクラッド径が200μmのものを用いたならば、スペーサー7の介在により、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの中心間距離は、どの位置においても280μmとなり、透過光路(の深さ)を特定することができるために、真皮組織9bでの成分分析が容易にできる。また、発光用光ファイバー4aとスペーサー7のみ、あるいは受光用光ファイバー4bとスペーサー7のみが並ぶ列に別れるために、両種光ファイバー4a,4bの分離が容易で作成しやすいものともなっている。
【0049】
図25に他例を示す。端部Bにおいて発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを束ねるにあたり、同径である発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bの直径と等しい長さの辺を有する正方形断面のスペーサー7aと、両種光ファイバー4a,4bの直径と等しい厚み(短片長さ)の長方形断面のスペーサー7bとを用意して、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを第1のスペーサー7aを介して並べた列を、第2のスペーサー7bを介して積層配置し、この時、スペーサー7bを挟んだ2つの列において、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bの位置を1ピッチずらせることで、発光用光ファイバー4aの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、受光用光ファイバー4bを上記矩形状格子点の中心点に位置させると同時に、受光用光ファイバー4bの相互に隣接する4本を矩形状格子の格子点に、発光用光ファイバー4aを上記矩形状格子点の中心点に位置させる状態で束ねている。
【0050】
この場合、光ファイバー4a,4bとしてクラッド径が200μmのものを用いた場合、スペーサー7a,7bの介在により、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの中心間距離は、どの位置においても400μmとなり、透過光路(の深さ)を特定することができるために、表面近傍の深さ方向の成分分析が容易にできる。
【0051】
なお、上記の発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとが格子状に並ぶ状態で束ねられた光ファイバーバンドル4は、次のようにして製造することができる。図21に示した光ファイバーバンドル4は、クラッド径200μmで長さ40cmの発光用光ファイバー4aを50本、クラッド径200μmで長さ30cmの受光用光ファイバー4bを50本用意して、図26(a)に示すように、5本の発光用光ファイバー4aと5本の受光用光ファイバー4bとを平面上で交互に並べて接着し、平板状ユニットを得る。この平板状ユニットを10組作製した後、図26(b)に示すように、各ユニットを積層接着して、図26(c)に示すものを得る。この時、上下に並ぶ2つのユニット間で裏表を異ならせて積層する。得られた光ファイバー4a,4bの束は、図21に示すステンレス製チューブ8に入れて該チューブ8内面との間にエポキシ系充填材91を充填する。
【0052】
他端側では、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを分離して夫々束ね、やはりステンレス製チューブに入れてエポキシ系充填材を充填する。発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの長さを異ならせているのは、この分離を容易とするためであるが、長さではなく、たとえば色分けによって分離できるようにしておいてもよい。なお、各端部A,B,Cの端面は最終的には研磨機で研磨して仕上げる。図22に示した光ファイバーバンドル4も同様の方法で作製することができる。
【0053】
図24に示した光ファイバーバンドル4は、クラッド径200μmで長さ40cmの発光用光ファイバー4aを25本、クラッド径200μmで長さ30cmの受光用光ファイバー4bを25本用意して、5本の発光用光ファイバー4aと5個のスペーサー7を平面上で交互に並べて接着したユニットを5つ作製するとともに、5本の受光用光ファイバー4bと5個のスペーサー7を平面上で交互に並べて接着したユニットを5つ作製し、上記両種のユニットを交互に積層して接着した後、ステンレス製チューブ8に入れてエポキシ系充填材91を充填することで形成することができる。他端側では、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを分離して夫々束ね、やはりステンレス製チューブに入れてエポキシ系充填材を充填する。各端部A,B,Cの端面は最終的には研磨機で研磨して仕上げる。
【0054】
スペーサー7として、図27(a)に示すように、複数個が一端側において連結されているものを用いて、スペーサー7間の溝に発光用光ファイバー4aを収納したものと、スペーサー7間の溝に受光用光ファイバー4bを収納したものとを作製し、これらを図27(b)(c)に示すように交互に積層して接着してもよい。スペーサー7同士を連結している一端部は最終の研磨時に削り落とせばよい。
【0055】
図25に示した光ファイバーバンドル4は、クラッド径200μmで長さ40cmの発光用光ファイバー4aを18本、クラッド径200μmで長さ30cmの受光用光ファイバー4bを18本用意して、3本の発光用光ファイバー4aと3本の受光用光ファイバー4bと5個のスペーサー7aを平面上で交互に並べて接着したユニットを6つ作製し、各ユニットとスペーサー7bとを交互に積層して接着した後、ステンレス製チューブ8に入れてエポキシ系充填材91を充填することで形成することができる。他端側では、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを分離して夫々束ね、やはりステンレス製チューブに入れてエポキシ系充填材を充填する。各端部A,B,Cの端面は最終的には研磨機で研磨して仕上げる。
【0056】
図28に示すように、スペーサー7aとスペーサー7bとを一体としたものを用いれば、スペーサー7a間の溝に光ファイバー4a,4bを収納して組み立てることができるために、光ファイバーバンドル4の作製が更に容易となる。スペーサー7を用いる場合、その形態は上記の各例に限定されるものではない。たとえば図29に示すように、表裏に溝を交互に形成することになる矩形波型断面のスペーサー7を用意して、表裏の各溝に光ファイバー4a,4bを収納したユニットを複数形成し、これらユニットを積層接着するようにしてもよい。この時、スペーサー7の片面側に発光用光ファイバー4aを、他面側に受光用光ファイバー4bを収納すればよく、またスペーサー7の厚みによって光ファイバー4a,4bの中心間距離を自由に設定することができる。
【0057】
発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの配列及びスペーサー7の形状の他例を図30に示す。ここでのスペーサー7は円筒状となっており、該スペーサー7の外周面に受光用光ファイバー4bをほぼ等間隔で並べるとともにスペーサー7の内周面に発光用光ファイバー4aをほぼ等間隔で並べて、図30(a)に示すものでは受光用光ファイバー4bと発光用光ファイバー4aとを周方向において同じ位置に配置している。スペーサー7とこれの周面に密着固定した両種光ファイバー4a,4bの軸線方向を平行としたこのものでは、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの中心間距離はどの一においても発光用光ファイバー4aの半径と受光用光ファイバー4bの半径とスペーサー7の厚みの和となり、両種光ファイバー4a,4bに200μmのクラッド径のものを用いるとともに厚み100μmのスペーサー7を用いれば、上記中心間距離は300μmとなる。もちろん、図30(b)に示すように、発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとを周方向においてずらした位置に設けてもよく、この場合、上記中心間距離は上記値より長くなる。
【0058】
図31は上記の筒状スペーサー7を用いる場合の他例を示しており、径の異なる2つの円筒状スペーサー7,7を用意して、径の小さなスペーサー7の外周面に発光用光ファイバー4aを固定し、径の大きなスペーサー7の外周面に受光用光ファイバー4bを固定した上で、径の大きなスペーサー7の内部に径の小さなスペーサー7をはめ込むようにしている。径の大きなスペーサー7の内径(半径)と径の小さなスペーサー7の外径(半径)との差を発光用光ファイバー4aの直径とほぼ等しくしておくことで、両スペーサー7,7の軸合わせが容易となる。この場合、スペーサー7の内周面に光ファイバーを固定するという困難な作業が不要となるために製作が容易である。
【0059】
スペーサー7は図32に示すように、シート状のものであってもよい。シート状スペーサー7の片面に発光用光ファイバー4aを、他面に受光用光ファイバー4bを密着固定しておくのである。このものでは、シート状スペーサー7を曲げて図30に示したような形態としたり、あるいは渦巻き状に巻いたり波状としたり折り畳んだりすることで適宜形態のものとすることができる。また、広げて平板状としている状態のスペーサー7に光ファイバー4a,4bを取り付けることができるために、光ファイバー4a,4bの位置決め及び接着固定が容易なものである。
【0060】
スペーサー7の厚みが発光用光ファイバー4aと受光用光ファイバー4bとの中心間距離の設定の要件となるものを示したが、スペーサー7としては、光ファイバー4a,4bを通すことができる貫通孔71を備えたものであってもよい。図33に示すように、複数個の貫通孔71をスペーサー7に設けておき、これら貫通孔71に夫々光ファイバー4a,4bを通すことで、貫通孔71の間隔で光ファイバー4a,4bの中心間距離を設定するのである。図示例では、1本の発光用光ファイバー4aを複数本の受光用光ファイバー4bが取り囲む配列となるようにしているが、該配列は貫通孔71の配置と両種光ファイバー4a,4bをどの貫通孔71に挿通するかによって定まるものであり、多様な配列が可能である。
【0061】
上記貫通孔71を備えたスペーサー7は、測定プローブPの生体に接触させる端面を形成する部材として利用することができるが、この時、図34に示すように、光ファイバー4a,4bの先端をスペーサー7より少し突出させておくと、皮膚組織表面に測定プローブPを当てる際に、光ファイバー4a,4bと皮膚組織との間に隙間が生じて迷光が生じてしまうおそれを無くすことができる。
【0062】
図35はかごめ格子状に光ファイバー4a,4bを配置するスペーサーにおいて、リファレンス用の受光用光ファイバー4bを発光用光ファイバー4aの近傍に位置させることができるようにしたものを示している。本発明にかかる血液成分濃度の分析装置は、光ファイバー4を必須とするものではない。たとえば図36に示すように、測定プローブPの先端面に微小な発光ダイオード41a及び受光素子41bを配列させた基板を装着し、これら発光ダイオード41a及び受光素子41bを生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点と表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点としてもよいものである。図36(b)に示すものではL2(100μm)角の大きさの発光ダイオード41a及び受光素子41bをL1(200μm)ピッチで並べるとともに、発光ダイオード41aと受光素子41bとの間にL3(100μm)の間隔をあけているが、この配列に限るものではなく、上記光ファイバーを用いたものと同様の配列あるいはランダム配置を採用することができる。
【0063】
上記発光ダイオード41aや受光素子41bのうちの一方を光ファイバーに置き換えたものであってもよい。図37は発光用光ファイバー4aを複数の受光素子41bで取り囲んだものを示しているが、発光ダイオード41aの回りを複数の受光用光ファイバー4bが取り囲むものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に用いる光ファイバーバンドルの一例を示すもので、(a)は正面図、(b)は一端側の端面図である。
【図2】(a)(b)は皮膚組織における光の透過経路の説明図である。
【図3】人間の皮膚組織に対する光の透過経路の説明図である。
【図4】本発明の分析装置の一例の概略説明図である。
【図5】同上の他例の概略説明図である。
【図6】同上に用いている光ファイバーバンドルの一端の端面図である。
【図7】光ファイバーバンドルの他例の端面図である。
【図8】光ファイバーバンドルの更に他例の端面図である。
【図9】光ファイバーバンドルの別の例の端面図である。
【図10】光ファイバーバンドルの更に別の例の端面図である。
【図11】光ファイバーバンドルの異なる例の端面図である。
【図12】別の例の概略説明図である。
【図13】同上に用いている光ファイバーバンドルの一端の端面図である。
【図14】レファレンス光についての説明図である。
【図15】光ファイバーバンドルの他例の端面図である。
【図16】光ファイバーバンドルの更に他例の端面図である。
【図17】更に別の例の概略説明図である。
【図18】同上に用いている光ファイバーバンドルの一例の端面図である。
【図19】異なる例の概略説明図である。
【図20】同上に用いている光ファイバーバンドルの一例の端面図である。
【図21】光ファイバーバンドルの別の例の端面図である。
【図22】光ファイバーバンドルのさらに別の例の端面図である。
【図23】光ファイバーバンドルの他例の端面図である。
【図24】光ファイバーバンドルの更に他例の端面図である。
【図25】光ファイバーバンドルの異なる例の端面図である。
【図26】(a)(b)(c)は光ファイバーバンドルの製造方法の説明図である。
【図27】(a)(b)(c)は他の光ファイバーバンドルの製造方法の説明図である。
【図28】(a)(b)(c)は別の光ファイバーバンドルの製造方法の説明図である。
【図29】(a)(b)は異なる光ファイバーバンドルの製造方法の説明図である。
【図30】(a)(b)は夫々光ファイバーバンドルの他例の端面図である。
【図31】(a)は光ファイバーバンドルのスペーサーの他例の端面図、(b)は同上の分解斜視図である。
【図32】光ファイバーバンドルのスペーサーの別の例の斜視図である。
【図33】(a)(b)はスペーサーのさらに別の例の斜視図である。
【図34】光ファイバーバンドルの他例の斜視図である。
【図35】スペーサーの異なる例の正面図である。
【図36】(a)は測定プローブの他例の正面図、(b)は同上の拡大正面図である。
【図37】測定プローブのさらに他例の正面図である。
【符号の説明】
【0065】
4 光ファイバーバンドル
4a 発光用光ファイバー
4b 受光用光ファイバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の血液成分濃度を近赤外光の分光分析で行うにあたり、近赤外光として1,300〜2,500nmの範囲の波長のものを用い、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端で生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点を形成するとともに、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端で表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点を形成して、この光投射点と光検出点との間隔を発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサで2mm以下の単一距離に設定することで生体の表層組織における真皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは真皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光を受光手段に導いて分光分析を行い、定量を目的とする成分の血中成分濃度と上記真皮部分中の濃度との相関を利用して定量分析を行うことを特徴とする血液成分濃度の分析方法。
【請求項2】
目的とする血液成分がグルコースであることを特徴する請求項1記載の血液成分濃度の分析方法。
【請求項3】
生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点と表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点とを複数設けるとともに、上記両点の最小間隔を2mm以下とすることを特徴とすることを特徴とする請求項1または2記載の血液成分濃度の分析方法。
【請求項4】
近赤外光として、1,400〜1,800nmの範囲の波長の近赤外光もしくは2,000〜2,500nmの範囲の波長の近赤外光の少なくとも一方を用いることを特徴とする請求項1記載の血液成分濃度の分析方法。
【請求項5】
生体の表層組織における表皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは表皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光をリファレンス光として併用するとともに光投射点とリファレンス光測定用の光検出点との間隔を上記間隔より小さくしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液成分濃度の分析方法。
【請求項6】
生体の血液成分濃度を近赤外光の分光分析で行う分析装置であって、1,300〜2,500nmの範囲の波長の近赤外光を生体の表層組織表面に投射する投射部と、生体の表層組織表面から近赤外光を検出する検出部とを備えるとともに、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端を上記投射部とし、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端を上記検出部としたものであり、発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサによって上記投射部と上記検出部との間隔を、上記投射部から生体組織に導入されて検出部で検出される近赤外光が生体の表層組織における真皮部分を選択的に透過する間隔あるいは真皮部分で選択的に拡散反射する間隔である2mm以下の単一距離とし、更に定量を目的とする成分の血中成分濃度と上記真皮部分中の濃度との相関を利用して定量分析を行う演算手段を備えていることを特徴とする血液成分濃度の分析装置。
【請求項7】
投射部と検出部との間隔が上記単一距離より短いものをリファレンス用として併用していることを特徴とする請求項6記載の血液成分濃度の分析装置。
【請求項1】
生体の血液成分濃度を近赤外光の分光分析で行うにあたり、近赤外光として1,300〜2,500nmの範囲の波長のものを用い、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端で生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点を形成するとともに、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端で表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点を形成して、この光投射点と光検出点との間隔を発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサで2mm以下の単一距離に設定することで生体の表層組織における真皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは真皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光を受光手段に導いて分光分析を行い、定量を目的とする成分の血中成分濃度と上記真皮部分中の濃度との相関を利用して定量分析を行うことを特徴とする血液成分濃度の分析方法。
【請求項2】
目的とする血液成分がグルコースであることを特徴する請求項1記載の血液成分濃度の分析方法。
【請求項3】
生体の表層組織表面に近赤外光を導く光投射点と表層組織表面から近赤外光を取り出す光検出点とを複数設けるとともに、上記両点の最小間隔を2mm以下とすることを特徴とすることを特徴とする請求項1または2記載の血液成分濃度の分析方法。
【請求項4】
近赤外光として、1,400〜1,800nmの範囲の波長の近赤外光もしくは2,000〜2,500nmの範囲の波長の近赤外光の少なくとも一方を用いることを特徴とする請求項1記載の血液成分濃度の分析方法。
【請求項5】
生体の表層組織における表皮部分を選択的に透過させた近赤外光あるいは表皮部分で選択的に拡散反射させた近赤外光をリファレンス光として併用するとともに光投射点とリファレンス光測定用の光検出点との間隔を上記間隔より小さくしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液成分濃度の分析方法。
【請求項6】
生体の血液成分濃度を近赤外光の分光分析で行う分析装置であって、1,300〜2,500nmの範囲の波長の近赤外光を生体の表層組織表面に投射する投射部と、生体の表層組織表面から近赤外光を検出する検出部とを備えるとともに、一端が発光手段に接続された発光用光ファイバーの他端を上記投射部とし、一端が受光手段に接続された受光用光ファイバーの他端を上記検出部としたものであり、発光用光ファイバーと受光用光ファイバーとの間に介在させたスペーサによって上記投射部と上記検出部との間隔を、上記投射部から生体組織に導入されて検出部で検出される近赤外光が生体の表層組織における真皮部分を選択的に透過する間隔あるいは真皮部分で選択的に拡散反射する間隔である2mm以下の単一距離とし、更に定量を目的とする成分の血中成分濃度と上記真皮部分中の濃度との相関を利用して定量分析を行う演算手段を備えていることを特徴とする血液成分濃度の分析装置。
【請求項7】
投射部と検出部との間隔が上記単一距離より短いものをリファレンス用として併用していることを特徴とする請求項6記載の血液成分濃度の分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2006−231075(P2006−231075A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121322(P2006−121322)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【分割の表示】特願平9−271709の分割
【原出願日】平成9年10月3日(1997.10.3)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【分割の表示】特願平9−271709の分割
【原出願日】平成9年10月3日(1997.10.3)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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