説明

血液撮像装置および血液撮像方法

【課題】 血球分析情報に基づいて、より適切に撮像条件を設定する。
【解決手段】 血液が塗抹された血液標本に含まれる血球を撮像する撮像部と、前記血液を血球分析装置によって分析することにより得られた血球分析情報を取得する取得手段と、取得手段によって取得された血球分析情報が、前記血液中の血小板凝集の出現の可能性を示す血小板凝集情報を含む場合には、前記血液標本に含まれる血小板凝集を撮像するために、前記血液標本の周縁部を撮像するように撮像部を制御する制御部(118)と、を備えた血液撮像装置

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液撮像装置および血液撮像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、血球算定と形態学的血球分類を同一検体から同時に自動的に行うことができる血球自動分析装置が開示されている。
この血球自動分析装置は、血液検体から血液をスライドガラスに塗沫してから染色して血液標本を作成し、この血液標本上の血球像を識別分類する自動血球分類システムと、上記血球検体から一定容積中の血球数を計測する自動血球算定システムとを備え、血球算定と血球分類の結果を同時に報告する構成とされている。
【0003】
より具体的には、この血球分析装置では、標本を光学顕微鏡にて拡大し、カメラにて血球画像として取り込み、特徴抽出回路で血球の特徴量を演算抽出し、各種の血球に分類する。さらに、この血球自動分析装置では、ヘモグロビン濃度、白血球、赤血球、血小板の検出信号に基づいて、血球を選別し計数する。
【0004】
そして、この血球自動分析装置では、血球数が、マイクロコンピュータであらかじめプログラム設定された正常範囲を超え、異常値として疑わしい検体に対してはマイクロコンピュータから入出力コントローラに信号を送る。
入出力コントローラは、この異常検体のIDを確認した上、それと一致したIDの標本に対して血球分類の血球数を2倍または3倍と多く指定したり、また、標本上の血球探査方法を変更し、特に、塗沫面の端の部分に異常球の存在比率が高いといわれていることから、この特定範囲を詳細に探す方法を取って異常血球の検出感度を高める。
【特許文献1】特開昭60−162955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記血球自動分析装置では、「血球数」の算定情報に基づいて、検体の異常を判定し、血球分類の血球数を2倍または3倍と多く指定したり、また、標本上の血球探査方法を変更しているが、血球数による検体異常判定では、血球数の指定や血球探査方法の変更といった条件設定を適切に行えないという問題が生じる。
【0006】
具体的には、血球数に基づいて検体の異常を判定すると、血球数は正常であるが異常血球が出現している検体を異常検体として判定できず、条件を適切に変更できない。
また、「血球数」に基づいて検体の異常を判定すると、血球数が多少正常範囲を超えているが異常血球が出現しておらず正常である検体を、異常検体として判定してしまい、条件設定を不適切に行ってしまう。
【0007】
つまり、血球数は、異常検体であるか否かの1つの目安にはなる(例えば、白血球数が正常とされる数を超えた場合には、白血病の疑いがある)が、血球数は、検体中における異常細胞の出現の可能性を示す直接的な情報ではなく、異常検体であるか否かの確実な目安とはならない。
【0008】
すなわち、白血病のため白血球数が増加しても、投薬治療等によって、白血球数が正常範囲にまで減少する。この場合、白血球数は正常範囲でも、異常血球が存在する異常検体としての血液分類の条件設定を行うべきである。
【0009】
あるいは、白血病でない正常人であっても、状態によっては、白血球数が正常範囲を超える場合があるが、異常血球が存在しなければ、正常検体としての血液分類のための条件設定とすれば十分であるのに、不適切に血液分類の条件設定を異常検体用としてしまうのは好ましくない。
【0010】
そこで、本発明は、血球分析情報に基づいて、より適切に撮像条件を設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[血液撮像装置]
血液撮像装置に係る本発明は、血液が塗抹された血液標本に含まれる血球を撮像する撮像部と、前記血液を血球分析装置によって分析することにより得られた血球分析情報を取得する取得手段と、取得手段によって取得された血球分析情報が、前記血液中の血小板凝集の出現の可能性を示す血小板凝集情報を含む場合には、前記血液標本に含まれる血小板凝集を撮像するために、前記血液標本の周縁部を撮像するように撮像部を制御する制御部と、を備えたものである。
【0012】
[血液撮像方法]
血液撮像方法に係る本発明は、血液が塗抹された血液標本に含まれる血球を撮像する血液撮像方法であって、前記血液を血球分析装置によって分析することにより得られた血球分析情報を取得し、取得した血球分析情報が、前記血液中の血小板凝集の出現の可能性を示す血小板凝集情報を含む場合には、前記血液標本に含まれる血小板凝集を撮像するために、前記血液標本の周縁部を撮像することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、血球数で撮像条件を設定する場合に比べてより適切に撮像条件を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[システム全体構成]
本実施形態では、血液撮像装置の具体例として、血液の撮像及び分析を行う血液像分析装置1を挙げて説明する。図1は、血液像分析装置1を含むシステム全体構成を示している。このシステムは、病院等の血液検査を行う施設に設置されるものであり、ネットワーク(LAN)2を介して、各種機器が接続されている。
システム内の機器としては、血液像分析装置1以外に、血液分析装置3、標本作製装置4、連携ユニット5、ホストコンピュータ6、集中レビュー端末装置7等が設けられている。
【0015】
[血液分析装置の構成]
血液分析装置3は、血液中の所定項目(多項目)に対して測定及び結果の分析を行う自動血球分析装置として構成されている。
図2に示すように、この血液分析装置3は、RF/DC検出法、シースフローDC検出法、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法、SLS−ヘモグロビン法等の各種測定を行うための測定部31、測定部31の測定結果に基づいて解析を行うための解析部32、解析結果に基づいて所定の判定項目についての判定を行って血液分析情報を生成する判定部33を備えている。
【0016】
血液分析装置3は、上記測定部31により血液に関する種々の測定等を行うことができる。
具体的には、測定部31では、血液中の赤血球数及び血小板数を測定するRBC/PLT測定(シースフローDC検出法による計数)、血液中の血色素量を測定するHGB測定(SLS−ヘモグロビン法による測定)を行うことができ、測定結果であるRBC、HGB、HCTに基づいて、解析部32は、赤血球恒数(平均赤血球容積、平均赤血球血色素量、平均赤血球血色素濃度)を算出することができる。
【0017】
さらに、測定部31では、WBC分画測定として、白血球内のリンパ球、単球、好酸球、好中球及び好塩基球の集団を分画測定する4DIFF測定(フローサイトメトリー法による測定)、血液中の白血球数及び白血球中の好塩基球を分画測定するWBC/BASO測定(フローサイトメトリー法による測定)、幼若球の情報の測定であるIMI(Immature Information)測定(RF/DC検出法による検出)を行うことができる。
【0018】
また、解析部32は、WBC解析として、4DIFFスキャッタグラムとWBC/BASOスキャッタグラム、IMIスキャッタグラムを生成することができる。
4DIFFスキャッタグラムは、フローサイトメトリー法による側方散乱光強度をX軸に、側方蛍光強度をY軸にとったものであり、赤血球ゴースト、リンパ球、単球、好酸球、好中球及び好塩基球の集団の分画を表示するものである。
WBC/BASOスキャッタグラムはフローサイトメトリー法による側方散乱光強度をX軸に、前方散乱光強度をY軸にとったものであり、赤血球ゴースト、白血球中の好塩基球、それ以外の白血球(リンパ球、単球、好中球、好酸球)の集団の分画を表示するものである。
IMIスキャッタグラムは、RF/DC法により、血球の大きさと、血球内部(核の大きさなど)の密度の2次元分布をスキャッタグラムとして描いたものであり、白血球の未成熟細胞を成熟細胞と分別することができる。
【0019】
また測定部31は、血球中の有核赤血球の集団を分画測定するNRBC測定(フローサイトメトリー法による測定)を行うことができ、解析部32は、NRBC解析として、NRBCスキャッタグラムを生成することができる。
NRBCスキャッタグラムは、フローサイトメトリー法による側方蛍光強度をX軸に、前方散乱光強度をY軸にとったものであり、赤血球ゴースト、白血球及び有核赤血球の集団の分画を表示するものである。
【0020】
さらに、測定部31は、血球中の網赤血球、血小板の集団を分画測定するRET測定(フローサイトメトリー法による測定)を行うことができ、解析部32は、RET解析として、RETスキャッタグラムを生成することができる。
RETスキャッタグラムは、フローサイトメトリー法による側方蛍光強度をX軸に、前方散乱光強度をY軸にとったものであり、成熟赤血球、網赤血球、血小板を分画し、網赤血球比率及び網赤血球、赤血球数、血小板数を算出するために用いられる。
【0021】
なお、解析部32は、RBC粒度分布の解析や、PLT粒度分布の解析も行うことができる。
【0022】
血液分析装置3は、以上の測定・解析結果に基づき、判定部33により、白血球その他の血球の血球数情報と、異常細胞の出現の可能性を示す異常細胞情報と、を含む血液分析情報を生成することができる。
【0023】
[血液分析装置によって生成される血液分析情報]
図3〜図5は、血液分析情報の一覧を示している。この血液分析情報は、WBC(白血球)、RBC(赤血球)、PLT(血小板)それぞれの血球に関するものであり、各血球に関して、血球数の異常(主に血球数の多い少ない)を示す血球数情報(図3〜図5のITEM欄において<Abnormal>とある項目)と、異常細胞の出現の可能性を示す異常細胞情報(図3〜図5のITEM欄において<Suspect>とある項目)とが設けられている。
【0024】
後述の血液像分析装置1では、WBCの異常細胞情報(有核異常情報)と、PLTの異常細胞情報(血小板凝集情報)とが条件設定のために用いられることから、ここでは、図3のWBC及びPLTの異常細胞情報について、さらに説明する。
【0025】
[有核血球情報]
WBCの異常細胞情報には、Blast?(芽球)、Immature Gran?(未成熟顆粒球)、Left Shift?(左方移動)、Atypical Lympho?(異型リンパ球)、Abn Lympho/L−Blasts?(異常リンパ球・リンパ芽球)、NRBC?(有核赤血球)、RBC Lyse resistance?(溶血不良)があり、正常時には末梢血中には存在しない白血球の幼若細胞の出現の可能性などを示している。
【0026】
なお、ここでは、WBCに関する異常細胞情報として、NRBC(有核赤血球;通常、赤血球は核を有しない)の存在の可能性を示す情報を含めており、(核を有する)幼若白血球、(核を有する)異型リンパ球、及び有核赤血球を総称して「有核異常血球」といいう。
また、幼若白血球の出現の可能性を示す情報を幼若白血球情報、異型リンパ球の出現の可能性を示す情報を異型リンパ球情報、有核赤血球の出現の可能性を示す情報を有核赤血球情報といい、これらを総称して、有核異常血球情報という。
【0027】
前記有核異常血球情報は、図3に示すように、DIFFスキャッタグラム、IMIスキャッタグラムにおける画像パターン等から判定され、例えば、スキャッタグラムが分画不能であること、あるいはスキャッタグラムにおいて通常出現しない位置に現れたドット等によって有核異常血球の存在可能性が判定される。
【0028】
[血小板凝集情報]
PLTの異常細胞情報(血小板凝集情報)には、PLT Clumps?(血小板凝集)とPLT Clumps?(血小板凝集)とがあり、正常時には発生しない血小板凝集の出現の可能性を示している。これらの血小板凝集情報は、有核異常血球情報と同様に、スキャッタグラム等に基づいて判定される。
【0029】
[血液分析情報の出力]
上記のようにして生成された有核異常血球情報、血小板凝集情報及びその他の情報を含む血液分析情報(IPメッセージ)は、血液分析装置3から、分析された検体のID(検体の固有識別情報)とともに、ホストコンピュータ7に送信され、検体IDとともに血液分析情報がホストコンピュータの記憶部(血液分析情報データベース)に蓄積される。
【0030】
[標本作製装置及び連携ユニット]
前記標本作製装置4では、血液分析装置3で分析された検体と同じ検体についての血液標本を自動作成する。標本作製装置4は、図6及び図7に示すように、標本担持体である標本スライド41上に検体の血液標本Sを塗沫した塗沫標本(ウェッジ標本)を作製する。
【0031】
標本担持体(標本スライド)41の標本が塗沫されていない範囲には、2次元コード(2次元バーコード)からなる標本記憶部41aが印刷によって形成されている。この2次元コード41aは、少なくとも検体IDを示す情報を含んでおり、その他、患者名、測定日付、血液分析装置3によって分析された当該検体の血液分析情報などを含んでも良い。
この標本記憶部41は、血液像分析装置3その他の機器によって機械的に(コンピュータ)読み取り可能なものであり、この標本記憶部41の情報を読み取ることで標本に関する必要な情報を得ることができる。
なお、標本記憶部41は、1次元バーコード、無線タグ等その他の情報記憶媒体によって構成してもよい。
また、標本担持体41には、検体ID、患者名、測定日付などの情報が人可読情報41bとして印刷されている。
【0032】
標本作製装置4において、標本が塗沫された標本スライド41は、検体カセット42に収納される。この検体カセット42は、連携ユニット5を介して、血液像分析装置1に搬送される。
【0033】
[血液像分析装置の構成]
図1に戻り、血液像分析装置1は、検体の血液標本の血液像を撮像する撮像部を備えた自動顕微鏡装置(撮像本体装置)110と、細胞の識別分類集計等の処理を行う画像処理装置(処理装置)120とを備えており、両装置110,120は、互いに通信可能に接続されている。
【0034】
[自動顕微鏡装置の構成]
図8に示すように、自動顕微鏡装置110は、連携ユニット5から搬送されてきた標本スライド(スライドガラス)41を自動顕微鏡装置110内で搬送するスライドガラス搬送部111aと、これを駆動するスライドガラス搬送駆動部111bとを備えている。
カセット42が、連携ユニット5によって所定位置まで搬送されてくると、カセット検知センサ112aによって検知されて、カセット42から標本スライド41が取り出される。すると、ID読取部112bが標本スライド41の標本記憶部41aである2次元コードを読みとって検体ID等の情報を獲得する。
【0035】
さらに、標本スライド41は、ステージ113aに装着され、ステージ113aに装着された標本を顕微鏡114aで拡大観察し、認識すべき血球(白血球)をWBC検出部114bによって検出し、ステージ駆動回路113bによってステージ113aを移動させて観察視野を移動させる。更にオートフォーカス部115aによって検出した像に基づいてフォーカス駆動回路115bによって像の焦点調整を行う。同時に、その像をカラーCCDカメラ116aによって撮像する。CCDカメラ116aからは、RGBカラー画像が出力され、この画像データは、画像処理装置120側へ与えられる。
なお、本発明の撮像部は、上記CCDカメラ116a、ステージ113a、ステージ駆動回路113b、オートフォーカス部115a、フォーカス駆動回路115b等によって構成されている。
【0036】
以上のような自動顕微鏡装置110における撮像部の制御その他の各種制御や、ネットワークボード117を介したネットワーク側とのデータ伝送その他の通信制御は自動顕微鏡制御部118によって行われる。
【0037】
自動顕微鏡制御部(以下、単に制御部ということもある)118は、図9に示すように、CPU118aと、ROM118bと、RAM118cと、入出力インターフェース118dとを備えている。ROM118bは、オペレーティングシステム、自動顕微鏡装置110の動作を制御するための制御プログラム、及び制御プログラムの実行に必要なデータが格納されている。CPU118aは、制御プログラムをRAM118cにロードし、またはROM118bから直接実行することが可能である。このようにしてCPU118aが処理した結果のデータは、入出力インターフェース118dを介して、装置110の各部又は装置110の外部(画像処理装置120等)へと送信され、CPU118aの処理に必要なデータは、装置110の各部、又は装置110の外部(画像処理装置120等)から入出力インターフェース118dを通じて受信される。CPU118aは、制御プログラムを実行することにより、自動顕微鏡装置110の動作の制御を行うことが可能である。
【0038】
[画像処理装置の構成]
図8に戻り、画像処理装置(処理装置)120は、CPU121と、ROM122aと、RAM122bと、CRT等の表示装置123と、キーボード124a・専用キーボード124b・マウス124cなどの入力装置と、ホストI/F125、ネットワークボード126、ハードディスク(記憶部)127と、を備えている。また、画像処理装置120にはプリンタ128が接続されている。
さらに、画像処理装置120では、自動顕微鏡装置110から出力されたRGBカラー画像をA/D変換部129aによってA/D変換し、画像メモリ129bに記憶する。この画像メモリ129bに記憶された画像がCPU121による処理対象となる。
【0039】
ROM122aは、オペレーティングシステム、画像処理装置120における処理を実行するためのプログラム、及び当該プログラムの実行に必要なデータが格納されている。CPU121は、プログラムをRAM122bにロードし、またはROM122aから直接実行することが可能である。このようにしてCPU121が処理した結果のデータは、ホストI/F125又はネットワークボード126を介して、装置120の外部(自動顕微鏡装置110等)へと送信され、CPU121の処理に必要なデータは、装置120の外部(自動顕微鏡装置110等)からホストI/F又はネットワークボード126を通じて受信される。
【0040】
CPU121は、プログラムを実行することにより、画像をデータ処理し、血液細胞の認識分類に必要な特徴量の演算を行い、その特徴量をもとに細胞の識別分類集計を行う。
また、CPU121は、識別分類結果と血液像をCRT123に表示し、レビューのために血液像をハードディスク127に保存する。
【0041】
[撮像処理の流れ]
図10に示すように、自動顕微鏡装置110のカセット検知センサ112aによって検体カセット42が検知されると(ステップS1−1)、カセット42から標本スライド41が取り出され(ステップS1−2)、当該標本スライド41の標本記憶部41aの読み取り(バーコードの読み取り)が行われ(ステップS1−3)、当該標本スライド41の検体ID(識別情報)が取得される。取得された検体IDは、自動顕微鏡装置110から画像処理装置120へ送信され(ステップS1−4)、自動顕微鏡装置110は撮像条件の受信待機状態となる(ステップS1−5)。
【0042】
図11に示すように、画像処理装置120では、検体ID(識別情報)を自動顕微鏡装置110から受信すると(ステップS2−1)、ネットワーク2を介して、ホストコンピュータ6の記憶部(血液分析情報データベース)を参照し、検体IDに対応する血液分析情報を取得する(ステップS2−2;血液分析情報取得手段)。
【0043】
続いて、取得した血液分析情報(IPメッセージ)中に、異常細胞の出現の可能性を示す異常細胞情報(Suspect(サスペクト)メッセージ)が含まれているか否かの判定が行われる(ステップS2−3)。
血液分析情報に異常細胞情報が含まれていなければ、血液像の撮像枚数を示す血球カウント数を100カウントとした撮像条件(血球カウント数に関する第1撮像条件)を設定し、この撮像条件を自動顕微鏡装置110へ送信する(ステップS2−4)。
【0044】
血液分析情報に異常細胞情報が含まれている場合、当該異常細胞情報(Suspect(サスペクト)メッセージ)がWBCに関するものが含まれているか否か(有核異常血球情報が含まれているか否か)を判定する(ステップS2−5)。
異常細胞情報(Suspect(サスペクト)メッセージ)としてWBCに関するものを含まない場合には、有核異常血球の存在の可能性は示されていないものとみなされ、血液像の撮像枚数を示す血球カウント数を100カウントとした撮像条件(血球カウント数に関する第1撮像条件;通常の撮像条件)を設定し、この撮像条件を自動顕微鏡装置110へ送信する(ステップS2−4)。
【0045】
異常細胞情報(Suspect(サスペクト)メッセージ)がWBCに関するものを含む場合には、有核異常血球の存在の可能性が示されているものとみなされ、血液像の撮像枚数を示す血球カウント数を300カウントとした撮像条件(血球カウント数に関する第2撮像条件;異常時の撮像条件)を設定し、この撮像条件を自動顕微鏡装置110へ送信する(ステップS2−6)。
このように、血液分析情報が、有核異常血球の出現の可能性を示している場合には、より多くの血液像を取得できるように、有核異常血球の出現の可能性を示していない場合よりも多い血球カウント数が撮像条件として設定される。
【0046】
続いて、血液分析情報に異常細胞情報が含まれている場合、当該異常細胞情報(Suspect(サスペクト)メッセージ)がPLTに関するものが含まれているか否か(血小板凝集情報が含まれているか否か)を判定する(ステップS2−7)。
【0047】
異常細胞情報(Suspect(サスペクト)メッセージ)にPLTに関するものが含まれていない場合、特に、自動顕微鏡装置110への情報は送信されず、後述のように自動顕微鏡装置110では、標本の撮像位置として、第1の位置(初期設定位置:標本の中央又は中央付近C(周縁部から血液標本Sの1/4の距離近辺);図7の符号Cを参照)だけを撮像する撮像条件(撮像位置に関する第1撮像条件)で撮像が行われる。
【0048】
異常細胞情報(Suspect(サスペクト)メッセージ)にPLTに関するものが含まれている場合、血小板凝集が生じているものとみなして、標本の撮像位置として、第2の位置(標本の周縁部位置;図7の符号Eを参照)をも撮像する撮像条件(撮像位置に関する第2撮像条件)を設定し、この撮像条件を自動顕微鏡装置110に送信する(ステップS2−8)。
【0049】
なお、上記では、血球カウント数に関する撮像条件と撮像位置に関する撮像条件とを別々に自動顕微鏡装置110へ送信したが、まとめて送信してもよい。
【0050】
図10に戻り、自動顕微鏡装置110の自動顕微鏡制御部117では、撮像条件(血球カウント数に関する撮像条件及び/又は撮像位置に関する撮像条件)の情報を受信すると(ステップS1−5)、標本スライド41を113aへ搬送し(ステップS1−6)、受信した撮像条件に基づいて撮像を行う(ステップS1−7)。
【0051】
撮像の際には、図12に示すように、白血球モードの撮像(ステップS3−1)と必要に応じて血小板モードの撮像(ステップS3−2)が行われる。
白血球モードの撮像を行う場合、図13に示すように、制御部118は、受信した血球カウント数に関する撮像条件の判別を行い(ステップS3−1−1)、撮像条件が100カウント(第1撮像条件)であれば、白血球の100カウント撮像(100個の白血球の撮像)を行い、撮像条件が300カウント(第2撮像条件)であれば、白血球の300カウント撮像(300個の白血球の撮像)を行うよう撮像部を制御する。
なお、白血球モードでは、第1の位置(初期設定位置:標本の中央又は中央付近C;図7の符号Cを参照)を撮像する。
【0052】
このように、血液分析情報が有核異常血球の存在の可能性を示しているときには、血球カウント数を多くして撮像することにより、確実に有核異常血球を撮像することができる。なお、血球カウント数に関する第2撮像条件は、300カウントである必要はなく、適当なカウント数とすることができる。
【0053】
白血球モードの撮像処理(ステップS3−1)後の血小板モードの撮像処理(ステップS3−2)では、図14に示すように、撮像実行が必要か否かの判定が行われる(ステップS3−2−1)。この判定は、受信した撮影条件に、撮像位置に関する撮像条件が含まれているか否かによって行われる。
撮像位置に関する撮像条件が含まれていない場合、血小板モードの撮像実行は不要であり、撮像を行わずに当該モードを終了する。
【0054】
撮像位置に関する撮像条件が含まれている場合、制御部118は、血小板モードの撮像として、標本周縁部Eの撮像を行うように撮像部を制御する(ステップS3−2−2)。標本の周縁部Eは、標本中央Cよりも血小板凝集が存在しやすい位置である。制御部118は、この周縁部Eを撮像できるように、ステージ駆動回路113bを介してステージ113aを移動させて、観察視野を周縁部Eへ移動させ、撮像を行う。
これにより、血小板凝集の存在の可能性が示されている場合に、観察視野の移動により、血小板凝集をより確実に撮像することができる。
【0055】
[血球分類処理]
上記のように撮像された血球像(標本画像;白血球デジタル画像)は、画像処理装置120へ送信され、当該標本画像に基づき、当該画像処理装置において、血球(白血球)の特徴抽出処理と血球(白血球)分類処理が行われる(血球分類手段)。
特徴抽出処理は、白血球の標本画像の核画素を核に相当する画素、細胞質に関する画素、それ以外の画素に分けることによって行われる。
【0056】
分類処理は、核に関する特徴パラメータ、細胞質に関する特徴パラメータを用いて、対象血球の種類を識別し、血球カウント数分の血球の分類を行う。
白血球(有核血球)の分類処理は、対象血球を成熟白血球6種(桿状核好中球、分葉核好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球)、未熟白血球3種(芽球、幼若顆粒球、異型リンパ球)、赤芽球に分類することで行われる。なお、6種の成熟白血球が正常な有核血球であり、3種の未熟白血球3種及び赤芽球が有核異常血球である。
【0057】
以上のように、血液分析装置3の血液分析情報が、有核異常血球の存在の可能性を示している場合には、血球カウント数を多くして、分類対象血球数を多くしているため、確実に有核異常血球を検出・分類することができる。
また、血液分析装置3の血液分析情報が、血小板凝集の存在の可能性を示している場合には、血小板凝集を発見しやすい標本周縁部を撮像することで、確実に血小板凝集を捕らえ、血小板凝集による血小板の偽低値の報告を防ぐことができる。
【0058】
撮像した画像や分類結果は、検体IDとともに、血液像分析装置1からホストコンピュータ6に送信され、ホストコンピュータ6にて蓄積される。ホストコンピュータ6に蓄積された血液分析情報、撮像画像、血球分類結果などは、集中レビュー端末7にて閲覧することが可能である。
【0059】
図15は、図13の300カウント撮像処理(血球カウント数に関する第2撮像条件での撮像処理:ステップS3−1−3)の変形例を示している。
自動顕微鏡制御部118が、受信した血球カウント数に関する撮像条件が、第2撮像条件(300カウント)であった場合、まず、血球カウント数に関する第1撮像条件の数(100カウント)分の撮像を行う(ステップS4−1)。
そして、カウンタ=100(第1撮像条件の血球カウント数)とし(ステップS4−2)、標本を撮像して画像処理装置120へ送信するとともに、カウンタを1増加させる(ステップS4−3)。
【0060】
画像処理装置120では、標本画像を受信してRAM等のメモリに保存し(ステップS4−4)、当該標本画像に基づいて血球(白血球)の分類処理を行う(ステップS4−5)。分類結果はメモリに記憶されるとともに(ステップS4−6)、自動顕微鏡装置110側へ送信される(ステップS4−7)。
【0061】
自動顕微鏡制御部118では、撮像した血球の分類結果を受信すると(ステップS4−8)、その分類結果が、有核異常血球であるか否かを判別する(ステップS4−9)。
撮像した血球が有核異常血球である場合には、その後の撮像を行わずに、血球カウント数に関する第2撮像条件での撮像を終了する。
撮像した血球が有核異常血球でない場合には、カウンタの値が第2撮像条件における血球カウント数(300カウント)以上になっていない限り、ステップS4−3に戻り、撮像を繰り返す。
【0062】
以上の処理によれば、血液カウント数に関する第2撮像条件での撮像では、分類結果に少なくとも1個の有核異常血球が含まれるまで撮像が行われるため、比較的少ない回数で確実に有核異常血球を撮像することができる。しかも、上記の第2撮像条件での撮像では、第1撮像条件での撮像と同じ数の撮像回数(第1血液カウント数=100回)が確保されており、分類に必要な標本画像の数も確保される。
さらに、第2撮像条件での撮像では、血球カウント数の最大値(第2血球カウント数=300回)が設定されており、分類結果に有核異常血球が含まれていなくても、撮像数が当該最大値に至った場合には撮像を停止するので、撮像が終了しないことを防止できる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、撮像条件としては、血球カウント数に関する撮像条件、撮像位置に関する撮像条件以外に、撮像の要否に関する条件を追加してもよい。撮像の要否に関する条件としては、WBCの異常細胞情報(サスペクトメッセージ)として、Blasts?(芽球)のように異常度合の高い情報が存在する場合には、血液像分析装置1による撮像ではなく、人による顕微鏡観察を行うべきであるから、異常度合いが高いため撮像不要である旨の条件を付加してもよい。
【0064】
また、逆に、血液分析情報が、異常細胞情報の存在の可能性を全く示していない場合には、異常度合いが低いため、分析の必要が低いため撮像不要である旨の条件を付加してもよい。
このような撮像要否の条件は、図13のステップS3−1−1の処理に先だって判定されることになる。
【0065】
また、上記実施形態では、血液像分析装置1は、標本の血液分析情報をホストコンピュータ6から取得したが、血液分析装置3から取得してもよい。さらに、標本スライド41の標本記憶部41aが血液分析情報をも記憶している場合には、当該標本記憶部41aから取得してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、異常細胞情報(サスペクトメッセージ)がWBCに関するものを含む場合には、有核異常血球の存在の可能性が示されているものとみなされ、血液像の撮像枚数を示す血球カウント数を300カウントとした第2の撮像条件を設定するようにしているが、複数存在する異常細胞情報の種類に応じて第2撮像条件を異ならせて設定してもよい。例えば、サスペクトメッセージがBlasts?の場合、血球カウント数を200カウント、Immature Gran?の場合、血球カウント数を400カウントに設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】血液像分析装置を含む検査システムの構成図である。
【図2】血液分析装置のブロック図である。
【図3】WBC(白血球:有核血球)に関する血液分析情報一覧である。
【図4】RBC(赤血球)に関する血液分析情報一覧である。
【図5】PLT(血小板)に関する血液分析情報一覧である。
【図6】標本スライドの部分拡大図である。
【図7】標本スライドとカセットの斜視図である。
【図8】自動顕微鏡装置と画像処理装置のブロック図である。
【図9】自動顕微鏡制御部のブロック図である。
【図10】自動顕微鏡制御部の処理フローチャートである。
【図11】画像処理装置の処理フローチャートである。
【図12】撮像処理の処理フローチャートである。
【図13】白血球モードの処理フローチャートである。
【図14】血小板モードの処理フローチャートである。
【図15】300カウント撮像処理の変形例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 血液像分析装置(血液撮像装置)
110 自動顕微鏡装置(撮像本体装置)
113a ステージ(撮像部)
113b ステージ駆動回路(撮像部)
114a 顕微鏡(撮像部)
114b WBC検出部(撮像部)
115a オートフォーカス部(撮像部)
115b フォーカス駆動回路(撮像部)
116a CCDカメラ(撮像部)
118 自動顕微鏡制御部(制御部)
120 画像処理装置(処理装置)
3 血液分析装置
41 スライドガラス(標本担持体)
41a 2次元コード(標本記憶部)
6 ホストコンピュータ(コンピュータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液が塗抹された血液標本に含まれる血球を撮像する撮像部と、
前記血液を血球分析装置によって分析することにより得られた血球分析情報を取得する取得手段と、
取得手段によって取得された血球分析情報が、前記血液中の血小板凝集の出現の可能性を示す血小板凝集情報を含む場合には、前記血液標本に含まれる血小板凝集を撮像するために、前記血液標本の周縁部を撮像するように撮像部を制御する制御部と、
を備えた血液撮像装置。
【請求項2】
制御部は、前記血球分析情報が前記血小板凝集情報を含む場合には、前記血液標本に含まれる白血球の撮像と、前記血小板凝集の撮像とを行うように撮像部を制御する、
請求項1に記載の血液撮像装置。
【請求項3】
制御部は、前記血球分析情報が前記血小板凝集情報を含まない場合には、前記血小板凝集の撮像は行わずに、前記血液標本に含まれる白血球の撮像を行うように撮像部を制御する、
請求項1又は2に記載の血液撮像装置。
【請求項4】
制御部は、前記血液標本に含まれる白血球を撮像するときには、前記血液標本の中央部又は中央部付近を撮像するように撮像部を制御する、
請求項2又は3に記載の血液撮像装置。
【請求項5】
取得手段は、ネットワークを介して、血球分析装置、及び/又は、血球分析情報が蓄積された記憶部を有するコンピュータから血球分析情報を取得する、
請求項1〜4のいずれかに記載の血液撮像装置。
【請求項6】
血液標本は、血球分析情報を記憶する読取可能媒体を備えた標本担持体によって担持され、
取得手段は、読取可能媒体から血球分析情報を読み取る
請求項1〜4のいずれかに記載の血液撮像装置。
【請求項7】
血液が塗抹された血液標本に含まれる血球を撮像する血液撮像方法であって、
前記血液を血球分析装置によって分析することにより得られた血球分析情報を取得し、
取得した血球分析情報が、前記血液中の血小板凝集の出現の可能性を示す血小板凝集情報を含む場合には、前記血液標本に含まれる血小板凝集を撮像するために、前記血液標本の周縁部を撮像する、
血液撮像方法。
【請求項8】
前記血球分析情報が前記血小板凝集情報を含む場合には、前記血液標本に含まれる白血球の撮像と、前記血小板凝集の撮像とを行う、
請求項7に記載の血液撮像方法。
【請求項9】
前記血球分析情報が前記血小板凝集情報を含まない場合には、前記血小板凝集の撮像は行わずに、前記血液標本に含まれる白血球の撮像を行う、
請求項7又は8に記載の血液撮像方法。
【請求項10】
前記血液標本に含まれる白血球を撮像するときには、前記血液標本の中央部又は中央部付近を撮像する、
請求項8又は9に記載の血液撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−2465(P2011−2465A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208591(P2010−208591)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【分割の表示】特願2005−282291(P2005−282291)の分割
【原出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】