説明

血液脳関門を通過する担体としてのアプロチニンおよび類似体

【課題】本発明は、薬剤送達の分野における改善に関する。
【解決手段】より詳細には本発明は、化合物または薬剤を個体の血液脳関門を通過して輸送するための非侵襲性であり柔軟性のある方法および担体に関する。特に本発明は、担体に結合した物質を血液脳関門を通過して輸送するための担体に関するものであり、この担体は、物質との結合後に血液脳関門を通過することができ、それによって物質を血液脳関門を通過して輸送することができる。本発明は、薬剤送達の分野における改良に関する。より詳細には本発明は、化合物または薬剤を個体の血液脳関門を通過して輸送するための非侵襲性であり柔軟性のある方法および担体に関する。特に本発明は、担体に結合した物質を血液脳関門を通過して輸送するための担体に関するものであり、この担体は、物質との結合後に血液脳関門を通過することができ、それによって血液脳関門を通過して物質を輸送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達の分野における改良に関する。より詳細には本発明は、化合物または薬剤を個体の血液脳関門を通過して輸送するための非侵襲性で柔軟性のある方法および担体に関する。
【背景技術】
【0002】
脳の病態の新しい治療の開発において、血液脳関門(BBB)は、中枢神経系(CNS)の障害を治療するための薬剤の考えられる使用に対する大きな障害と考えられる。CNS薬剤の世界市場は1998年には330億ドルであり、これは心血管系薬剤の世界市場の約半分であったが、それにもかかわらず米国では、心血管疾患のほぼ2倍の人々がCNS障害に罹患している。この偏りの理由は、すべての潜在的CNS薬剤の98%超は、血液脳関門を通過しないからである。さらに、世界中のCNS薬剤の開発の99%超は、CNS薬剤の創薬のみに向けられており、1%未満がCNS薬剤の送達に向けられている。この比率によって、有効な治療が脳腫瘍、アルツハイマー病および脳卒中などの主な神経性疾患に現在利用可能ではない理由を立証することができると思われる。
【0003】
脳は、2つの関門系、すなわち血液脳関門(BBB)および血液脳脊髄液関門(BCSFB)の存在によって、潜在的に毒性である物質に対して保護されている。BBBは、血清リガンドの取り込みの主な経路であると考えられる。なぜなら、その表面積は、BCSFBの表面積の約5000倍大きいからである。BBBを構成する脳の内皮は、CNSの多くの障害に対する潜在的薬剤の使用に対する大きな障害となる。一般的に、約500ダルトンより小さい親油性分子のみが、BBBを、すなわち血液から脳へ通過することができる。しかしながら、動物試験において有望な結果を示す、CNS障害を治療するための多くの薬剤はそれよりかなり大きい。したがって、ペプチドおよびタンパク質治療剤は、脳毛細血管の内皮壁からのこれらの薬剤の透過性は無視できる程度であるために、血液から脳への輸送から一般に除外される。脳毛細血管内皮細胞(BCEC)は、緊密な結合によってしっかりと封じられており、他の器官の毛細血管と比較して、窓および細胞内小胞が少ない。BCECは細胞外マトリクス、星状細胞、周皮細胞および小膠細胞で囲まれている。内皮細胞と星状細胞足突起および毛細血管の基底膜のしっかりした結合は、血液-脳交換の厳密な調節を可能にするBBBの性質の発現および維持のために重要である。
【0004】
今日まで、脳に利用可能な有効な薬剤送達手法は存在していない。ペプチドおよびタンパク質薬剤を脳へ送達するための検討中の方法は、3つの主な戦略に分けることができる。第1に、侵襲性手順は、外科手術による薬剤の心室内直接投与、および高浸透圧溶液の心臓内注入によるBBBの一時的破壊を含む。第2に、薬理学系戦略は、ペプチドまたはタンパク質の脂質溶解度を上昇させることにより、BBBの通過を容易にすることからなる。第3に、生理学系戦略は、BBBにおいて様々な担体機構を利用するものであり、これらは近年特徴付けられてきている。この手法では、BBB上で受容体標的化送達媒体と同様に働くタンパク質ベクターに薬剤を結合させる。この手法は非常に特異的であり、非限定的な標的を有する臨床適応症に対して、高い有効性および非常に高い柔軟性を示す。本発明では、後者の手法を検討した。
【0005】
薬剤送達の分野における改良を提供することが、非常に望ましいと思われる。
【0006】
化合物または薬剤を個体のBBBを通過して輸送するための非侵襲性であり柔軟性のある方法および担体を提供することも、非常に望ましいと思われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】The mammalian low-density lipoprotein receptor family.Anne.Rev.Mut.1999、19、141〜172
【非特許文献2】Dehouck M.P.、Meresse S.、Delorme P.、Fruchart J.C.、Cecchelil、R.An Easier、Reproductible、and Mass-Production Method to Study the Blood-Brain Barrier In Vitro.J.Neurochem、54、1798〜1801、1990
【非特許文献3】Dehouck、M.P.、Jolliet-Riant、P.、Bree、F.、Fruchart、J.C.、Cecchelli、R.、Tillement、J.P.、J.Neurochem.58:1790〜1797、1992
【非特許文献4】Dagenais他、2000、J.Cereb.Blood Flow Metab.20(2):381〜386
【非特許文献5】Triguero他、1990、J Neurochem.54(6):1882〜8)
【非特許文献6】Smith(1996、Pharm、Biotechnol.8:285〜307)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、薬剤送達の分野における改良を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、化合物または薬剤を個体の血液脳関門を通過して輸送するための非侵襲性であり柔軟性のある方法および担体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に従い、物質を患者の血液脳関門を通過して輸送するための方法であって、アプロチニン、薬剤として許容されるアプロチニンの塩、アプロチニンの断片または薬剤として許容されるアプロチニンの断片の塩と結合した物質を含む化合物を患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0011】
本発明の他の実施形態に従い、それに結合した化合物を患者の血液脳関門を通過して輸送するための、アプロチニン、薬剤として許容されるアプロチニンの塩、アプロチニンの断片または薬剤として許容されるアプロチニンの断片の塩の使用を提供する。
【0012】
本発明の他の実施形態に従い、患者の血液脳関門を通過する神経性疾患治療用医薬品を製造する際の、アプロチニン、薬剤として許容されるアプロチニンの塩、アプロチニンの断片または薬剤として許容されるアプロチニンの断片の塩の使用を提供する。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態に従い、患者の血液脳関門を通過する中枢神経系障害治療用医薬品を製造する際の、アプロチニン、薬剤として許容されるアプロチニンの塩、アプロチニンの断片または薬剤として許容されるアプロチニンの断片の塩の使用を提供する。
【0014】
本発明の他の実施形態に従い、Rがアプロチニンまたはその断片であり、Lが連結基または単結合であり、Mが小分子薬剤、タンパク質、ペプチド、および酵素からなる群から選択される物質または薬剤である、式R-L-Mの化合物、または薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0015】
本発明の他の実施形態に従い、患者の神経性障害を治療するための方法であって、アプロチニン、薬剤として許容されるアプロチニンの塩、アプロチニンの断片または薬剤として許容されるアプロチニンの断片の塩および神経性障害の治療に適合しており、アプロチニンと結合している化合物を含む医薬品を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0016】
本発明の他の実施形態に従い、患者の中枢神経系障害を治療するための方法であって、アプロチニン、薬剤として許容されるアプロチニンの塩、アプロチニンの断片または薬剤として許容されるアプロチニンおよび中枢神経系障害の治療に適合しており、アプロチニンと結合している化合物を含む医薬品を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0017】
本発明の一実施形態に従い、担体に結合した物質を血液脳関門を通過して輸送するための担体であって、担体は、物質との結合後に血液脳関門を通過することができ、それによって物質を血液脳関門を通過して輸送することができる担体を提供する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、輸送は血液脳関門の完全性に影響を与えない。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、担体は、アプロチニン、アプロチニンの機能性誘導体、Angio-pep1およびAngio-pep1の機能性誘導体からなる群から選択される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、物質は、薬剤、医薬品、タンパク質、ペプチド、酵素、抗生物質、抗癌剤、中枢神経系のレベルで活性がある分子、放射性イメージング剤、抗体、細胞毒素、検出可能な標識および抗血管新生化合物からなる群から選択される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、抗癌剤はパクリタクセルである。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、検出可能な標識は、放射性標識、緑色蛍光タンパク質、ヒスタグタンパク質およびβ-ガラクトシダーゼからなる群から選択される。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、物質は160,000ダルトンの最大分子量を有する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、輸送は、受容体介在型トランスサイトーシスまたは吸着介在型トランスサイトーシスによって実施される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、物質は神経性疾患治療用である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、神経性疾患は、脳腫瘍、脳転移、統合失調症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチングトン病、脳卒中および血液脳関門に関連する機能不全疾患からなる群から選択される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、血液脳関門に関連する機能不全疾患は肥満症である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、輸送は、個体の中枢神経系(CNS)への物質の送達をもたらす。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、物質は、血液脳関門を通過する輸送後に担体から放出可能である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、物質は、血液脳関門を通過する輸送後に担体から放出される。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、血液脳関門を通過して物質を輸送するための薬剤組成物を提供し、この組成物は、薬剤として許容される賦形剤と共に、本発明の一実施形態の担体を含む。
【0032】
本発明の他の実施形態に従い、神経性疾患を治療するための薬剤組成物を提供し、この組成物は、薬剤として許容される賦形剤と共に、本発明の一実施形態の担体を含む。
【0033】
本発明の他の実施形態に従い、個体のCNSへ物質を送達するための薬剤組成物を提供し、この組成物は、薬剤として許容される賦形剤と共に、本発明の一実施形態の担体を含む。
【0034】
本発明の他の実施形態に従い、血液脳関門を通過して物質を輸送するための複合体を提供し、この複合体は(a)担体、および(b)担体と結合する物質を含み、この複合体は血液脳関門を通過することができ、それによって物質を血液脳関門を通過して輸送することができる。
【0035】
本発明の他の実施形態に従い、物質を血液脳関門を通過して輸送するための薬剤組成物を提供し、この組成物は、薬剤として許容される賦形剤と共に、本発明の一実施形態の複合体を含む。
【0036】
本発明の一実施形態に従い、神経性疾患を治療するための薬剤組成物を提供し、この組成物は、薬剤として許容される賦形剤と共に、本発明の一実施形態の複合体を含む。
【0037】
本発明の他の実施形態に従い、個体のCNSへ物質を送達するための薬剤組成物を提供し、この組成物は、薬剤として許容される賦形剤と共に、本発明の一実施形態の複合体を含む。
【0038】
本発明の他の実施形態に従い、血液脳関門を通過して物質を輸送するための医薬品を製造する際の、担体に結合した物質を血液脳関門を通過して輸送するための担体の使用を提供する。
【0039】
本発明の他の実施形態に従い、血液脳関門を通過して物質を輸送するための薬剤組成物を提供し、この組成物は、薬剤として許容される賦形剤と共に、本発明の一実施形態で定義したのと同様に製造した医薬品を含む。
【0040】
本発明の他の実施形態に従い、個体の神経性疾患を治療するための医薬品を製造する際の、担体に結合した物質を血液脳関門を通過して輸送するための担体の使用を提供する。
【0041】
本発明の他の実施形態に従い、薬剤として許容される賦形剤と共に、本発明の一実施形態で定義したのと同様に製造した医薬品を含む、神経性疾患を治療するための薬剤組成物を提供する。
【0042】
本発明の他の実施形態に従い、個体の中枢神経系障害を治療するための医薬品を製造する際の、担体に結合した物質を血液脳関門を通過して輸送するための担体の使用を提供する。
【0043】
本発明の他の実施形態に従い、中枢神経系障害を治療するための薬剤組成物を提供し、この組成物は、薬剤として許容される賦形剤と共に、本発明の一実施形態で定義したのと同様に製造した医薬品を含む。
【0044】
本発明の他の実施形態に従い、RがL-Mとの結合後に血液脳関門を通過することができ、それによって血液脳関門を通過してMを輸送することができる担体であり、Lが連結基または化学結合であり、Mが、薬剤、医薬品、タンパク質、ペプチド、酵素、抗生物質、抗癌剤、中枢神経系のレベルで活性がある分子、放射性イメージング剤、抗体、細胞毒素、検出可能な標識および抗血管新生化合物からなる群から選択される物質である、式R-L-Mの複合体、または薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0045】
本発明の他の実施形態に従い、担体に結合した物質を血液脳関門を通過して輸送するための、本発明の一実施形態の複合体の使用を提供する。
【0046】
本発明の他の実施形態に従い、個体の神経性疾患を治療するための、本発明の一実施形態の複合体の使用を提供する。
【0047】
本発明の他の実施形態に従い、個体の中枢神経系障害を治療するための、本発明の一実施形態の複合体の使用を提供する。
【0048】
本発明の他の実施形態に従い、物質を血液脳関門を通過して輸送するための方法であって、本発明の一実施形態の薬剤組成物を個体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0049】
本発明の好ましい方法では、薬剤組成物を個体に、動脈内、鼻腔内、腹膜内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮または経口投与する。
【0050】
本発明の他の実施形態に従い、個体の神経性疾患を治療するための方法であって、本発明の一実施形態の薬剤組成物を治療上有効量、治療を必要とする個体に投与することを含む方法を提供する。
【0051】
本発明の他の実施形態に従い、個体の中枢神経系障害を治療するための方法であって、本発明の一実施形態の薬剤組成物を治療上有効量、治療を必要とする個体に投与することを含む方法を提供する。
【0052】
本発明の目的用に、以下の用語を以下に定義する。
【0053】
用語「担体」または「ベクター」は、血液脳関門を通過することができ、他の化合物または物質と結合または複合することができ、それによって他の化合物または物質を血液脳関門を通過して輸送することができる化合物または分子を意味するものとする。例えば担体は、脳内皮細胞上に存在する受容体と結合することができ、それによってトランスサイトーシスにより、血液脳関門を通過して輸送することができる。担体は、血液脳関門の完全性にいかなる影響も与えずに、非常に高レベルの経内皮輸送が得られる、タンパク質または分子であることが好ましい。担体は、タンパク質、ペプチド、または模倣ペプチドだけには限られないがこれらであってよく、天然に存在してよく、あるいは化学合成または組換え遺伝子技術(遺伝子工学技術)によって生成することができる。
【0054】
用語「担体-物質複合体」は、担体と他の化合物または物質の複合体を意味するものとする。複合体は、連結基などとの化学的性質のもの、または例えば組換え遺伝子技術による遺伝的性質のもの、例えば緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼまたはヒスタグタンパク質との融合タンパク質などであってよい。
【0055】
表現「小分子薬剤」は、1000g/mol以下の分子量を有する薬剤を意味するものとする。
【0056】
用語「治療」、「治療する」などは、望ましい薬理学的および/または生理学的効果、例えば癌細胞増殖の阻害、癌細胞の死、または神経性疾患または状態の回復を得ることを意味するものとする。この効果は、完全または部分的に疾患またはその症状を予防する点において、予防的である可能性があり、かつ/あるいは、疾患および/またはその疾患に起因する悪影響を、部分的または完全に治癒する点において、治療的である可能性がある。本明細書で使用する「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を含み、(a)疾患に罹患する可能性があるが、まだ疾患を有するとは診断されていない個体において、疾患または状態が生じるのを予防すること(例えば、癌を予防する)、(b)疾患を抑制すること(例えば、疾患の進行を阻止する);または(c)疾患を緩和すること(例えば、疾患に付随する症状を低下させる)を含む。本明細書で使用する「治療」は、個体への担体-物質複合体の投与を非制限的に含めた、個体の状態を治療、治癒、緩和、改善、低下または抑制するための、個体への薬剤物質または化合物の任意の投与を含む。
【0057】
用語「癌」は、その特有な性質が、制御不能な増殖をもたらす通常の調節の消失、分化の欠如、および局所の組織に侵襲し転移する能力である、任意の細胞悪性腫瘍を意味するものとする。任意の器官の任意の組織において、癌が進行する可能性がある。より詳細には癌は、脳の癌を非制限的に含むものとする。
【0058】
用語「投与する」および「投与」は、動脈内、鼻腔内、腹膜内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮または経口を非制限的に含めた、送達の形態を意味するものとする。好ましいのは、経口投与である。1日当たりの用量は、時間期間中に1回、2回以上投与するのに適した形の、1回、2回以上の用量に分けることができる。
【0059】
用語「治療上有効」は、疾患または医学的状態に付随するいくらかの症状を実質的に改善するのに十分な、化合物の量を意味するものとする。例えば、癌または精神状態または神経性またはCNS疾患の治療において、疾患または状態の任意の症状を低減、予防、遅延、抑制、あるいは阻止する物質または化合物が、治療上有効であると思われる。治療上有効量の物質または化合物は、疾患または状態を治癒するために必要とされないが、疾患または状態の発症が遅延、阻害、または予防され、あるいは疾患または状態の症状が改善され、あるいは疾患または状態の期間が変わり、あるいは例えば、個体の重症度が低下し、すなわち回復が加速するような、疾患または状態の治療をもたらすであろう。
【0060】
本発明の担体および担体-物質複合体は、従来の治療法および/または療法と組み合わせて使用することができ、あるいは、従来の治療法および/または療法とは別に、使用することができる。
【0061】
本発明の担体-物質複合体を、併用療法において他の物質と共に投与するとき、それらは逐次的または同時に個体に投与することができる。あるいは、本発明の薬剤組成物は、本明細書に記載する薬剤として許容される賦形剤、および当分野で知られている他の治療または予防物質と結合した、本発明の担体-物質複合体の組合せからなっていてよい。
【0062】
任意の個々の個体に特異的な「有効量」は、使用する特定の物質の活性、個体の年齢、体重、一般的健康状態、性別、および/または食生活、投与時間、投与経路、排出率、薬剤の組合せ、および予防または治療を施されている個々の疾患の重症度を含めた、様々な要因に依存するであろうことは理解されよう。
【0063】
薬剤として許容される酸添加塩は、当分野で知られており使用されている方法によって、調製することができる。
【0064】
本明細書で使用する、「薬剤として許容される担体」は、任意のすべての溶媒(リン酸緩衝生理食塩水バッファー、水、生理食塩水など)、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬剤として活性がある物質用に、このような媒体および物質を使用することは、当分野でよく知られている。任意の従来の媒体または物質が、活性成分と適合しない場合以外は、治療組成物中のその使用が企図される。補助的活性成分を、組成物中に取り込ませることもできる。
【0065】
用語「機能性誘導体」は、「化学誘導体」、「断片」、または「変異体」、本発明の担体または物質または担体-物質複合体またはこれらの塩の、生物学的活性がある配列または一部分を意味するものとする。担体の機能性誘導体は、他の化合物または物質と結合し、すなわち複合し、血液脳関門を通過し、それによって他の化合物または物質を血液脳関門を通過して輸送することができる。
【0066】
用語「化学誘導体」は、本発明の担体、物質、または担体-物質複合体を意味するものとし、それは、その担体、物質、または担体-物質複合体の一部分ではない他の化学成分を含む。共有結合修飾は、本発明の範囲内に含まれる。化学誘導体は、当分野でよく知られている方法を使用する直接的な化学合成によって、都合よく調製することができる。このような修飾は、標的アミノ酸残基と、選択した側鎖または末端鎖と反応することができる有機誘導化剤を反応させることによって、例えばタンパク質またはペプチド担体、物質または担体-物質複合体に導入することができる。担体の化学誘導体は、血液脳関門を通過し、他の化合物または物質と結合し、すなわち複合し、それによって他の化合物または物質を血液脳関門を通過して輸送することができる。好ましい実施形態では、血液脳関門を通過する非常に高レベルの経内皮輸送が、血液脳関門の完全性にいかなる影響も与えずに得られる。
【0067】
用語「断片」は、担体、物質または担体-物質複合体の任意の小片または一部分を意味するものとする。タンパク質またはペプチドの断片は、例えば、タンパク質またはペプチド全体の配列を構成する、アミノ酸のサブセットであってよい。担体の断片は、他の化合物または物質と結合し、すなわち複合し、血液脳関門を通過し、それによって他の化合物または物質を血液脳関門を通過して輸送することができる。
【0068】
用語「変異体」は、本発明の担体、物質または担体-物質複合体、またはこれらの任意の断片の構造のいずれかと実質的に同じである、担体、物質または担体-物質複合体を意味するものとする。担体の変異体は、他の化合物または物質と結合し、すなわち複合し、血液脳関門を通過し、それによって他の化合物または物質を血液脳関門を通過して輸送することができる。変異体タンパク質、ペプチド、模倣ペプチド、および本発明の担体の化学構造が企図される。
【0069】
用語「アプロチニン断片」は、BBBを通過して化合物を輸送することが依然としてできる、アプロチニンの一部分を意味するものとする。このような断片は、少なくとも12アミノ酸、好ましくは少なくとも25アミノ酸、およびより好ましくは少なくとも35アミノ酸を含むことができる。メガリンと相互作用するのに有効な、アプロチニンの最小配列を決定するための研究は、Hussain、M.、Strickland、D.K.、Bakillah、A.によって、The mammalian low-density lipoprotein receptor family.Anne.Rev.Mut.1999、19、141〜172中で行われてきた。例えば、アプロチニンとメガリン受容体を相互作用させるための最小配列は、CRAKRNNFKSA(配列番号1)であると決定された。したがって、この最小配列を含む断片は、この用語によって含まれることを意味する。
【0070】
用語「物質」は、治療用物質または化合物、マーカー、トレーサーまたは画像用化合物などの薬剤または化合物を、無差別に意味するものとする。
【0071】
用語「治療物質」または「物質」は、疾患、物理的または精神的状態、損傷または感染の症状を治療するために使用される、物質および/または医薬品および/または薬剤を意味するものとし、抗生物質、抗癌剤、抗血管新生物質、および中枢神経系のレベルで活性がある分子を非制限的に含む。例えば、パクリタクセルを静脈内投与して、脳癌を治療することができる。
【0072】
用語「患者」または「治療される個体」は、何らかの医学的治療を受ける任意のものを意味するものとし、腫瘍などの状態を検出、追跡、マーキングまたは画像化するための、担体と物質または化合物の複合体の投与を施されることを含む。患者または治療される個体は、哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。
【0073】
用語「状態」は、神経性疾患、損傷、感染、あるいは慢性または急性の痛みを含めた、個体に対する、あるいは個体中の、痛み、不快、疾病、疾患または障害(精神的または肉体的)を引き起こす、任意の状況を意味するものとする。本発明によって治療することができる神経性疾患には、脳腫瘍、脳転移、統合失調症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチングトン病および脳卒中があるが、これらだけには限られない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ウシの脳毛細血管内皮細胞(BBCEC)を通過する、アプロチニン(●)、p97(◆)、およびセルロプラスミン(■)のトランスサイトーシス実験の結果を示すプロットである。
【図2】ウシの脳毛細血管内皮細胞(BBCEC)を通過する、アプロチニン(●)およびトランスフェリン(○)のトランスサイトーシス実験の結果を示すプロットである。
【図3】血液脳関門モデルにおいて、アプロチニンがトランスフェリンより高いトランスサイトーシス能力を有することを示す棒グラフである。
【図4】アプロチニンの完全性が、BBCEC単層を通過するそのトランスサイトーシスによって影響を受けないことを示すSDS-PAGE分析の図である。
【図5】時間の関数として表した、[14C]-スクロースのクリアランスのプロットである。スクロースのクリアランスは、250nMのアプロチニンの存在下および不在下において測定した。
【図6】ウシの脳毛細血管内皮細胞(BBCEC)の、スクロースの透過性試験の結果を示すグラフである。
【図7】アプロチニンが血液脳関門の完全性に影響を与えないことを示す、時間の関数として表した[14C]-スクロースのクリアランスのプロットである。スクロースのクリアランスは、5μMのアプロチニンの存在下および不在下において測定した。
【図8】ヒトおよびラット毛細血管中の[125I]-アプロチニンの蓄積を示す棒グラフである。
【図9】ヒトおよびラット毛細血管中のアプロチニン摂取の時間行程を示すプロットである。
【図10】アプロチニン-ビオチン複合体とアプロチニンが、同じトランスサイトーシス能力を有することを示す棒グラフである。
【図11】アプロチニンとアプロチニン-ビオチン複合体のトランスサイトーシスが、温度依存性かつ立体配座依存性であることを示す棒グラフである。
【図12A】BBCEC細胞中のアプロチニンのトランスサイトーシスに対する、温度および加熱の影響を示すプロットの組の図である。
【図12B】BBCEC細胞中のアプロチニン-ビオチン複合体のトランスサイトーシスに対する、温度および加熱の影響を示すプロットの組の図である。
【図13】アプロチニン-ビオチン複合体の存在下での、ストレプトアビジンのトランスサイトーシスの増大を示す棒グラフである。
【図14】LRPアンタゴニスト、受容体結合タンパク質(RAP)による、アプロチニンのトランスサイトーシスの阻害を示す棒グラフである。
【図15】in situ脳灌流実験におけるアプロチニン摂取を示す棒グラフである。
【図16】合成アプロチニン配列を示す図である。
【図17】アプロチニンと類似のドメインを有する3つのヒトタンパク質の間の配列アラインメントを示す図である。
【図18】トランスフェリン、アプロチニンおよびAngio-pep1のin situ脳灌流を示す棒グラフである。
【図19】アプロチニンのトランスサイトーシスと比較した、Angio-pep1のトランスサイトーシスを示すプロットである。
【図20】in vitro血液脳関門モデルを通過する、Angio-pep1のトランスサイトーシスを示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明は、物質、医薬品または他の分子を脳および/または中枢神経系(CNS)に輸送するための、新たなベクターまたは担体に関する。この担体は、担体と結合または連結した(結びついた)、自力では血液脳関門を通過することができない物質、医薬品または他の分子の通過、これらが血液脳関門を通過して輸送されるのを可能にする。担体-複合体は、担体-治療物質複合体であってよい。このような複合体は、状態または疾患を治療するための、薬剤組成物などの組成物の形であってよい。本発明は、アプロチニンが非常に有効な方法で、脳毛細血管内皮壁と結合し、それを通過するという発見に基づく。アプロチニンは、トリプシン、キモトリプシン、カリクレインおよびペプシンを含めた様々なセリンプロテアーゼを、効果的に阻害する塩基性ポリペプチドであることが、当分野では知られている。アプロチニンの経内皮輸送は、トランスフェリンまたはセルロプラスミンを含めた他のタンパク質のそれより約10〜50倍多い。この高い通過率は、血液脳関門の完全性の破壊によって引き起こされるものではない。なぜなら、スクロースの透過係数は、アプロチニンによって影響を受けないからである。
【0076】
この手法は非常に用途が広い。なぜなら、この手法は、非常に多様な治療標的を有する、小分子および大分子の結合を可能にするからである。
【0077】
本発明に従うと、血液脳関門を通過して物質を輸送するための方法は、アプロチニン、またはその機能性誘導体などの、担体と結合した活性成分または薬剤物質を含む物質を、個体に投与することを含む。
【0078】
本発明に従うと、化合物は患者に、動脈内、鼻腔内、腹膜内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮または経口投与することができる。物質は、抗血管新生化合物であることが好ましい。物質は、160,000ダルトンの最大分子量を有することができる。物質は、小分子、薬剤、タンパク質、ペプチド、または酵素などの、マーカーまたは薬剤であることが好ましい。薬剤は、患者の神経性疾患または中枢神経系障害を治療するのに、適合していることが好ましい。薬剤は細胞毒性薬剤であってよく、マーカーは、放射性標識、緑色蛍光タンパク質、ヒスタグタンパク質またはβ-ガラクトシダーゼなどの、検出可能な標識であってよい。物質は、患者の中枢神経系に送達されることが好ましい。
【0079】
本発明のさらに他の好ましい実施形態に従うと、本発明の使用、方法、化合物、物質、薬剤または医薬品が、患者の血液脳関門の完全性を変えることはない。
【0080】
本発明の他の好ましい実施形態に従うと、アプロチニンは、患者の血液脳関門を通過して物質または化合物を輸送するために、物質または化合物と結合することができ、物質または化合物は、神経性疾患を治療するのに、あるいは中枢神経系障害を治療するのに適合している。
【0081】
本発明の担体またはその機能性誘導体、あるいはそれらの混合物は、例えば放射性イメージング剤-抗体-担体複合体であって、抗体が疾患または状態に特異的な抗原と結合する複合体を使用することによって、疾患または状態を検出するために、放射性イメージング剤などの放射線を発する物質などの検出可能な標識と結合させるか、あるいはそれを用いて標識することができる。抗体以外の、当分野で知られており使用されている他の結合分子も、本発明によって企図される。あるいは、本発明の担体またはその機能性誘導体、あるいはそれらの混合物は、疾患または状態を治療するための治療物質と結合させることができ、あるいはそれらの混合物と結合させるか、あるいはそれを用いて標識することができる。血液脳関門を通過して物質を輸送することができる条件下において、個体に本発明の抗体-物質複合体を投与することによって治療を実施する。
【0082】
本発明の治療物質は、細胞を殺傷することができる薬剤、医薬品、放射線を発する物質、細胞毒素(例えば化学療法剤)および/または生物学的活性があるこれらの断片、および/またはこれらの混合物であってよく、あるいは、本発明の治療物質は、治療する個体の疾患または状態を治療、治癒、緩和、改善、低下または抑制するための物質であってよい。治療物質は、合成の生成物、または真菌、細菌、またはマイコプラズマ、ウイルスなどの他の微生物、爬虫類などの動物、または植物起源の生成物であってよい。治療物質および/または生物学的活性があるその断片は、酵素活性のある物質および/またはその断片であってよく、あるいは、重要および/または必須細胞経路を抑制または阻害することによって、あるいは重要および/または必須の本来存在する細胞要素と競合することによって働くことができる。
【0083】
本発明で使用するための放射線を発する放射性イメージング剤(検出可能な放射標識)は、インジウム-111、テクニチウム-99、または低線量ヨウ素-131によって例示される。
【0084】
本発明で使用するための検出可能な標識またはマーカーは、放射標識、蛍光標識、核磁気共鳴活性標識、発光標識、発色団標識、PETスキャナー用の陽電子放出核種、化学発光標識、または酵素標識であってよい。蛍光標識には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、フルオレセイン、およびローダミンがあるが、これらだけには限られない。化学発光標識には、ルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼがあるが、これらだけには限られない。酵素標識には、ペルオキシダーゼおよびホスファターゼがあるが、これらだけには限られない。ヒスタグも、検出可能な標識であってよい。
【0085】
例えば担体と物質の間の化学結合の酵素による切断または破壊によって、血液脳関門を通過する輸送後に、担体から物質が放出可能であることが企図される。次いで放出物質が、担体の不在下において、その目的の能力で機能すると思われる。
【0086】
本発明の範囲を制限するためではなく本発明を例示するために与える、以下の実施例を参照することによって、本発明はさらに容易に理解されよう。
【0087】
実験項
適切な担体の決定
in vivoの特性を実証する再現性のある血液脳関門in vitroモデルが、スクリーニングアッセイおよび脳への薬剤輸送の機械的試験に使用されてきている。CELLIAL(商標)Technologies社によって開発された、血液脳関門のこの有効なin vitroモデルは、脳に到達する種々の担体の能力の信頼性のある評価のために最重要であった。このモデルは、ウシの脳毛細血管内皮細胞とラットのグリア細胞の同時培養からなる。それは、緊密な結合、窓状チャンネルの欠如、経内皮チャンネルの欠如、親油性分子の低い透過性、および高い電気抵抗性を含めた、脳内皮に特徴的な超微細構造の特徴を示す。さらに、このモデルは、試験した分子の広範囲のin vitro分析とin vivo分析の間の良い相関係数を示している。今日までに得られているすべてのデータによって、このBBBモデルは、組織培養と関係がある実験の利点を保ちながら、in vivoに存在する細胞環境のいくらかの複雑性を再生することによってin vivoの状況を厳密に模倣することが示される。したがって、多くの試験によって、この細胞の同時培養は、BBBの最も再現性のあるin vitroモデルの1つとして確認されている。
【0088】
BBBのin vitroモデルは、BBCECと星状細胞の同時培養を使用することによって確立した。細胞培養の前に、プレート挿入体(Millicell-PC3.0μM;30-mm径)を、ラット尾部コラーゲンと共に上部側にコーティングした。次いでそれらを、星状細胞を含む6ウェルのマイクロプレート中に置き、BBCECをフィルタの上部側、2mLの同時培養培地中に平板培養した。このBBCEC培地は、1週間に3回交換した。これらの条件下において、分化したBBCECは、7日後に融合性単層を形成した。実験は、融合状態に達した後に5〜7日間行った。スクロースの透過係数を測定して、内皮の透過性を確認した。
【0089】
混合した星状細胞の初代培養物は、新生ラットの大脳皮質から作製した(Dehouck M.P.、Meresse S.、Delorme P.、Fruchart J.C.、Cecchelil、R.An Easier、Reproductible、and Mass-Production Method to Study the Blood-Brain Barrier In Vitro.J.Neurochem、54、1798〜1801、1990)。簡潔には、髄膜を除去した後、82μmのナイロンシーブによって脳組織を軽く取り出した。星状細胞は、1.2×105細胞/mLの濃度で6ウェルのマイクロプレート、10%の非動化ウシ胎児血清を補った2mLの最適培養培地(DMEM)中に平板培養した。この培地は1週間に2回交換した。
【0090】
ウシの脳毛細血管内皮細胞(BBCEC)は、Cellial Technologiesから得た。10%(v/v)ウマ血清および10%非動化子ウシ血清、2mMのグルタミン、50μg/mLのゲンタマイシンを補ったDMEM培地の存在下で、細胞を培養し、1ng/mLの塩基性繊維芽細胞増殖因子を1日おきに加えた。
【0091】
本発明に適した担体を決定するために、BBBのin vitroモデルを使用して、いくつかの試験を行った。図1に例示するように、異なるタンパク質のトランスサイトーシス実験(ウシの脳毛細血管内皮細胞(BBCEC)中の、アプロチニン(●)、p97(◆)、およびセルロプラスミン(■))を行った。図2および3は、図1の実験と同じ方法を使用して、アプロチニン(●)およびトランスフェリン(○)に関して行った、トランスサイトーシス実験の結果を示す。BBCECを含む1つの挿入体を、2mLのRinger-Hepesを含む6ウェルのマイクロプレート中に置き、37℃で2時間プレインキュベートした。[125I]-アプロチニン、[125I]-p97、[125I]-セルロプラスミンまたは[125I]-トランスフェリン(250nMの最終濃度)を、細胞を含むフィルタの上部側に加えた。様々な時間で、挿入体を他のウェルに移して、BBCECの流出側近くの考えられる[125I]-タンパク質の再度のエンドサイトーシスを避けた。実験の最後に、TCA沈殿により500μLのウェルの下側チャンバー中の、[125I]-タンパク質を評価した。これらの結果は、血液脳関門モデルにおいて、アプロチニンが、トランスフェリン、p97またはセルロプラスミンより高いトランスサイトーシス能力を有することを示す。
【0092】
アプロチニン、p97およびウシホロ-トランスフェリンを、Sigma(商標)からのヨード-ビーズを使用し標準的な手順でヨウ化した。ウシホロ-トランスフェリンは、0.1Mのリン酸バッファー、pH6.5(PB)に希釈した。中和クエン酸バッファー、pH7.0に溶かしたSynapse Technologiesから得たP97を、このPBで透析した。2つのヨード-ビーズを、それぞれのタンパク質に使用した。これらのビーズをWhatman(商標)フィルタ上において3mLのPBで二回洗浄し、60μLのPBに再懸濁させた。Amersham-Pharmacia biotechからの125I(1mCi)を、室温で5分間ビーズ懸濁液に加えた。それぞれのタンパク質のヨウ化は、100μg(80〜100μL)を加えることによって開始させた。室温で10分間のインキュベーション後、Pierceからの5mLの架橋デキストランを充填した脱塩カラムに上清を施し、125I-タンパク質は10mLのPBSを用いて溶出させた。0.5mLの分画を回収し、5μLのそれぞれの分画の放射活性を測定した。125I-タンパク質に対応する分画を集め、Ringer-Hepes、pH7.4で透析した。放射標識の有効性は、0.6×108〜1×108cpm/タンパク質100μgであった。
【0093】
図1〜3から、アプロチニンが、他の試験したタンパク質より非常に高い、トランスサイトーシス能力を有することは明らかである。図1〜3のデータは表1中に要約しており、異なるタンパク質の比較を行っている。
【0094】
【表1】

【0095】
表2は、他の異なるタンパク質の比較を行った、他の実験を要約するものである。
【0096】
【表2】

【0097】
表1および2を鑑みると、アプロチニンに関しては、他の試験したタンパク質と比較して、優れた経内皮輸送が得られたこと、アプロチニンの高いトランスサイトーシスは、これらの他のタンパク質より約10〜50倍高いことを理解することができる。
【0098】
アプロチニンの完全性は、BBCEC単層を通過するそのトランスサイトーシスによって影響を受けない
250nMの最終濃度の[125I]-タンパク質(0.5〜1.5μCi/アッセイ)を、6ウェルプレート中に置いた、BBCEC細胞ありまたはなしのフィルタの上部側に加えた。それぞれの時点で、フィルタを6ウェルプレートの隣のウェルに置いた。実験の最後に、等分試料をそれぞれのウェルで採取し、SDS-PAGEに施した。次いでゲルを、オートラジオグラフィーによる検出に施した。図4に示す結果は、アプロチニンの完全性が、BBCEC単層を通過するそのトランスサイトーシスによって影響を受けないことを示す。
【0099】
アプロチニンは、血液脳関門の完全性に影響を与えない
BBBモデル、星状細胞の存在下においてフィルタ上で増殖させたBBCEC単層において、[14C]スクロースの透過性を測定することによって、他の試験を行い、BBBの完全性に対する250nMのアプロチニンの影響を測定した。この試験を実施するために、挿入体上で増殖させた脳内皮細胞単層を、37℃で2時間、ウェル当たり2mLのRinger-Hepes(基底外側区画)を含む6ウェルプレートに移した。Ringer-Hepes溶液は、150mMのNaCl、5.2mMのKCl、2.2mMのCaCl2、0.2mMのMgCl2、6mMのNaHCO3、5mMのHepes、2.8mMのHepes、pH7.4から構成されていた。それぞれの先端チャンバーにおいて、培養培地を、標識[14C]スクロースを含む1mLのRinger-Hepesと交換した。異なる時間で、挿入体を他のウェル中に置いた。[14C]スクロースの透過を、5μMのアプロチニンの不在下(△)または存在下(○)において、細胞を含まない(□)フィルタ、またはBBCEC細胞をコーティングしたフィルタ上において、37℃で測定した(図6)。これらの結果は、時間(分)の関数として、スクロースのクリアランス(μl)としてプロットした。スクロースの透過係数を、次いで測定した。透過係数(Pe)は、以下のように計算した:
【0100】
1)クリアランス(μl)=[C]A×VA/[C]L
上式で:[C]A=流出トレーサー濃度
VA=流出チャンバーの体積
[C]L=管腔トレーサー濃度
【0101】
2)1/Pe=(1/PSt-1/PSf)フィルタ表面積(4.2cm2)
【0102】
実験の最後に、基底外側区画中のラジオトレーサーの量を、液体シンチレーションカウンターにおいて測定した。スクロースの透過係数(Pe)は、ECをコーティングしたフィルタまたは非コーティング状態のフィルタを使用して、以前に記載されたのと同様に計算した(Dehouck、M.P.、Jolliet-Riant、P.、Bree、F.、Fruchart、J.C.、Cecchelli、R.、Tillement、J.P.、J.Neurochem.58:1790〜1797、1992)。2つの実験の結果は、[14C]スクロースのクリアランス(μl)を鑑みて時間(分)の関数として、別々にプロットした(図5および6)。図5および6では、PStは、同時培養の透過性×フィルタの表面積を表し、PSfは、コラーゲン、およびフィルタBの底部側に平板培養した星状細胞をコーティングした、フィルタの透過性を表す。透過係数(Pe)を計算し、BBBの完全性はアプロチニンによって影響を受けないことを実証した(図5から計算したPeに関しては図6、および図7から計算したPeに関しては表3を参照のこと)。
【0103】
【表3】

【0104】
ヒトおよびラット毛細血管中の[125I]-アプロチニンの蓄積
37℃で1時間、蓄積を測定した。インキュベーション培地は、Ringer/Hepes溶液中に最終100nMの濃度で、アプロチニンを含んでいた。氷冷した停止溶液の添加、および0.45μMのフィルタによる真空中での濾過によって、蓄積を停止させた。アプロチニンと毛細血管表面の非特異的結合は、インキュベーション培地を加える前に、氷冷溶液を加えることによって評価した。この値を蓄積値から引いて、真の蓄積値を得た。この実験の結果は、図8に示す。
【0105】
ヒトおよびラット毛細血管中のアプロチニン摂取の時間行程
37℃で様々な時間、アプロチニン摂取を測定した。インキュベーション培地は、Ringer/Hepes溶液中に最終100nMの濃度で、アプロチニンを含んでいた。それぞれの時点で、氷冷した停止溶液の添加、および0.45μMのフィルタによる真空中での濾過によって、蓄積を停止させた。それぞれの時点で、アプロチニンと毛細血管表面の非特異的結合は、インキュベーション培地を加える前に、氷冷溶液を加えることによって評価した。この実験の結果は、図9に示す。
【0106】
アプロチニン-ビオチン複合体:ビオチン化手順
水溶性ビオチン類似体Sulfo-NHS-LC-LC-ビオチン(Pierce)を、結合用に使用した。この類似体は、有機溶媒の不在下および中性pHで、第一級アミンと反応する。12倍モル過剰のビオチン類似体を、10mg/mlのアプロチニン溶液に加えた。ビオチン類似体とアプロチニン混合物を、4℃で2時間インキュベートした。未反応ビオチン試薬を除去するために、3500Da分画を有するslide-a-lyzer透析カセット(Pierce)中で、一晩透析を行った。次いでビオチン取り込みの測定を、アビジンと結合する染料HABA(2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン)-安息香酸)を用いて行い、500nmにおける吸収をもたらした。この結合は、遊離ビオチンまたはビオチン化タンパク質と置き換えることができ、ビオチン取り込みの定量化を可能にする。この結合に関して得られた比率は、それぞれのアプロチニンに関して3個のビオチンであった。
【0107】
アプロチニン-ビオチン複合体とアプロチニンは、同じトランスサイトーシス能力を有する
[125I]-アプロチニンおよび[125I]-アプロチニン-ビオチンのトランスサイトーシスを、37℃で評価した。250nMの最終濃度の[125I]-タンパク質(0.5〜1.5μCi/アッセイ)を、トランスサイトーシス測定用に、細胞を含むフィルタの上部側に加えた。実験の最後に、[125I]-タンパク質の細胞におけるトランスサイトーシスを、TCA沈殿によって直接測定した。この実験の結果は、図10に示す。
【0108】
アプロチニンとアプロチニン-ビオチン複合体のトランスサイトーシスは、温度依存性かつ立体配座依存性である
[125I]-アプロチニンおよび[125I]-アプロチニン-ビオチンの蓄積を、37℃および4℃、あるいはタンパク質を10分間100℃で沸騰させた後に37℃において評価した。250nMの最終濃度の[125I]-タンパク質(0.5〜1.5μCi/アッセイ)を、トランスサイトーシス測定用に、細胞を含むフィルタの上部側に加えた。実験の最後に、細胞を含むフィルタを切断し、[125I]-タンパク質の細胞における蓄積を、TCA沈殿によって直接測定した。この実験の結果は、図11に示す。
【0109】
BBCEC細胞中のアプロチニンおよびアプロチニン-ビオチン複合体のトランスサイトーシスに対する、温度および加熱の影響
[125I]-アプロチニン(図12A)および[125I]-アプロチニン-ビオチン(図12B)のトランスサイトーシスを、37℃および4℃、あるいはタンパク質を10分間100℃で沸騰させた後に37℃において評価した。250nMの最終濃度の[125I]-タンパク質(0.5〜1.5μCi/アッセイ)を、トランスサイトーシス測定用に、細胞を含むフィルタの上部側に加えた。それぞれの時点で、フィルタを6ウェルプレートの隣のウェルに移動させた。実験の最後に、[125I]-タンパク質を、TCA沈殿によってそれぞれのウェルの下側区画において評価した。
【0110】
アプロチニン-ビオチン複合体の存在下でのストレプトアビジンのトランスサイトーシスの増大
[125I]-ストレプトアビジンのトランスサイトーシスを、単独またはアプロチニン-ビオチン複合体の存在下で評価した。250nMの最終濃度の[125I]-タンパク質(0.5〜1.5μCi/アッセイ)を、トランスサイトーシス測定用に、細胞を含むフィルタの上部側に加えた。それぞれの時点で、フィルタを6ウェルプレートの隣のウェルに動かした。実験の最後に、[125I]-タンパク質を、TCA沈殿によってそれぞれのウェルの下側区画において評価した。この実験の結果は、図13に示す。
【0111】
LRPアンタゴニスト、受容体結合タンパク質(RAP)による、アプロチニンのトランスサイトーシスの阻害
タンパク質のトランスサイトーシスを、37℃で評価した。250nMの最終濃度の[125I]-アプロチニン(0.5〜1.5μCi/アッセイ)を、ラップありまたはなしの、細胞を含むフィルタの上部側に加えた。実験の最後に、[125I]-アプロチニンを、TCA沈殿によってそれぞれのウェルの下側区画において評価した。この実験の結果は、図14に示す。
【0112】
アプロチニン摂取:IN SITUマウス脳灌流
外科手術手順
マウスの脳毛細血管の管腔側への、[125I]-アプロチニンの摂取を、マウス脳内の薬剤摂取の研究(Dagenais他、2000、J.Cereb.Blood Flow Metab.20(2):381〜386)用に我々の研究室において適合させたin situ脳灌流法を使用して測定した。簡潔には、ケタミン/キシラジン(140/8mg/kg、腹膜内)麻酔したマウスの、右側の共通頚動脈を露出させ、共通頚動脈、頭側から後頭動脈の分岐点のレベルで結さつした。次いで共通頚動脈を、ヘパリン(25U/ml)を充填し26ゲージの針を備えるポリエチレンチューブ(0.30mm i.d.×0.70mm o.d.)を、頭側にカテーテル挿入した。灌流液(10nMの[125I]-アプロチニン、95%の02および5%のC02でガス処理したKrebs/重炭酸塩バッファー、pH7.4中)を含む注射器を、注入ポンプ(HarvardポンプPHD2000;Harvard Apparatus)中に置き、カテーテルと結合させた。灌流の直前に、心室を切断して逆方向の血流の貢献を排除することによって、心臓を停止させた。脳は、2.5ml/分の流速で10分間灌流した。10分間の灌流後、Ringer/HEPES溶液(150mMのNaCl、5.2mMのKCl、2.2mMのCaCl2、0.2mMのMgCl2、6mMのNaHCO3、5mMのHepes、2.8mMのグルコース、pH7.4)を、脳に30秒間さらに灌流させて、過剰な[125I]-アプロチニンを洗浄した。次いでマウスを断頭して灌流を停止させ、毛細血管を消耗させる前に、右脳半球を氷上に単離した(Triguero他、1990、J Neurochem.54(6):1882〜8)。ホモジェネート、上清、ペレットおよび灌流液の等分試料を採取して、TCA沈殿により[125I]-アプロチニン中のそれらの含有量を測定し、見た目の分布体積を評価した。
【0113】
BBB輸送定数の決定
簡潔には、Smith(1996、Pharm、Biotechnol.8:285〜307)によって以前に記載されたのと同様に、計算を行った。アプロチニン摂取は、以下の等式から分布体積(Vd)として表した:
Vd=Q*brC*pf
上式でQ*brは、右脳半球1グラム当たりの[125I]-アプロチニンの計算した量であり、C*pfは、灌流液において測定した標識トレーサーの濃度である。
【0114】
図15に示すこの実験の結果は、トランスフェリンよりもアプロチニンの十分な脳への摂取があり、ビオチンとの結合がアプロチニンの脳への摂取を変えることはないことを示す。
【0115】
前述の試験に関して得られた結果を鑑みて、アプロチニンは、BBBを通過して物質または化合物を輸送するための有望な担体である。なぜなら、アプロチニンには、他のタンパク質のそれより十分なBBCEC単層を通過するトランスサイトーシスがあり、アプロチニンが、血液脳関門の完全性を変えることはないからである。さらに、アプロチニンはトランスサイトーシス中に分解せず、アプロチニンとビオチンの結合がそのトランスサイトーシスに影響を与えることもない。さらにアプロチニンは、用途が広く柔軟性のある担体である。なぜなら、小さな薬剤分子、タンパク質、ペプチドおよび酵素などの多くの分子は、BBBを通過するその通過を助長するために、アプロチニンタンパク質と容易に結合することができるからである。これらの分子はおそらく、連結基によってアプロチニンと結合することができる。
【0116】
アプロチニンの脳分布体積は、トランスフェリンのそれより大きいことも決定されてきている。トランスサイトーシスは温度感受性かつ立体配座依存性であることが、さらに決定されてきており、LDL-Rファミリー受容体、おそらくLRPが、アプロチニンのトランスサイトーシスと関係があることが示唆される。
【0117】
したがってアプロチニンは、血液脳関門を介して脳に物質を送達するための、効果的かつ有効な担体である。
【0118】
脳用の薬剤ベクターとしてのペプチドの設計
National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイト上のBLAST(商標)プログラムを使用して、アプロチニンのN末端配列(MRPDFCLEPPYTGPCVARIIR)(図16)(配列番号2)において、配列比較を行った。この配列比較によって、4個の配列が同定された。これらの同定した配列はいずれも、ヒトタンパク質に対応しなかった。
【0119】
アプロチニンのC末端配列(GLCQTFVYGGCRAKRNNFKSAE)(図16)(配列番号3)も、NCBIのウェブサイト上で比較した。この配列比較によって、27個の配列が同定され、いくつかはヒトタンパク質に対応した。次いで、最高値を有するタンパク質を、アプロチニンの配列と並べた(図17)。このアラインメントから、以下のAngio-pep1ペプチドを作製した:TFFYGGCRGKRNNFKTEEY(実質電荷+2)(配列番号4)。
【0120】
トランスフェリン、アプロチニンおよびAngio-pep1のin situ脳灌流
[125I]-トランスフェリン、[125I]-アプロチニンおよび[125I]-Angio-pep1に関して、脳内の見た目の分布体積を測定した。マウスの脳は10分間灌流した。脳毛細血管を消耗させて、脳実質中の見た目の分布体積を評価した。この実験の結果は、図18に示す。
【0121】
アプロチニンのトランスサイトーシスと比較した、Angio-pep1のトランスサイトーシス
Angio-pep1のトランスサイトーシスを、アプロチニンのトランスサイトーシスと比較した。[125I]-Angio-pep1および[125I]-アプロチニンの、内皮細胞単層の先端から基底外側への輸送は、前に記載したのと同様に測定した。この実験でangiopep1およびアプロチニンに関して使用した最終濃度は、2.5μMであった。この実験の結果は、図19に示す。
【0122】
in vitro血液脳関門モデルを通過する、Angio-pep1のトランスサイトーシス
内皮細胞単層で覆われているか、あるいは覆われていない挿入体の先端から基底外側への、Angio-pep1の輸送を測定した。これらの結果は、時間の関数として、Angio-pep1のクリアランスとして表す。これらの勾配は、フィルタのみを通過するペプチドの透過性(Psf)、および内皮細胞単層の全体の透過性(Pst)に対応する。Angio-pep1の透過係数(Pe)は、1.2×10-3cm/分であった。この実験の結果は、図20に示す。
【0123】
Angio-pep1、アプロチニン、レプチンおよびトランスフェリンの透過係数を、in vitro血液脳関門モデルを使用して測定した。透過係数(Pe)は、前に記載したのと同様に計算した。透過係数の比較を表4に示す。
【0124】
【表4】

【0125】
前述の実験によって、Angio-pep1の脳透過係数は、アプロチニンおよびトランスフェリンのそれより大きいことが示される。この実験は、in vitro血液脳関門モデルを使用して測定した、Angio-pep1のトランスサイトーシスは、アプロチニン、レプチンおよびトランスフェリンを含めた他のタンパク質のトランスサイトーシスより大きいことも示す。
【0126】
本発明を、その特定の実施形態に関して記載してきたが、他の変更形態が可能であり、本出願は本発明の任意の変形、使用、または適合を含むことを目的とし、本発明の原理に概して従い、本発明が関係する分野の知られているかあるいは通常の実施の範囲内であり、本明細書で前述した本質的特長に適合させることができるような本開示からの逸脱を含み、添付の特許請求の範囲に従うことは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドAngiopep-1(TFFYGGCRGKRNNFKTEEY)、および前記ペプチドの断片を含むペプチドAngiopep-1の機能性誘導体からなる群より選択される担体。
【請求項2】
前記機能性誘導体が前記ペプチドの断片を含み、特に前記ペプチドの断片が前記ペプチドのアミノ酸のサブセットである、請求項1に記載の担体。
【請求項3】
血液脳関門を通過する前記担体の脳透過またはトランスサイトーシスが、アプロチニンおよびトランスフェリンの脳透過またはトランスサイトーシスよりも大きい、請求項1または2に記載の担体。
【請求項4】
メガリン結合ドメインを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の担体。
【請求項5】
Angiopep-1である、請求項1に記載の担体。
【請求項6】
(a) 請求項1から5のいずれか一項に記載の担体、および
(b) 前記担体に結合した物質
を含み、血液脳関門を通過することができる複合体。
【請求項7】
前記物質が160,000ダルトンの最大分子量を有する、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記物質が1000g/mol以下の分子量を有する小分子薬剤である、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記物質が、薬剤、医薬品、タンパク質、ペプチド、酵素、抗生物質、抗癌剤、中枢神経系のレベルで活性がある分子、放射性イメージング剤、抗体、細胞毒素、検出可能な標識および抗血管新生化合物からなる群より選択される、請求項6に記載の複合体。
【請求項10】
前記物質が抗癌剤である、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
前記物質が抗体である、請求項9に記載の複合体。
【請求項12】
血液脳関門を通過する前記複合体の輸送が血液脳関門の完全性に影響を与えない、請求項6から11のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項13】
請求項6から12のいずれか一項に記載の複合体、および薬剤として許容される賦形剤を含む、薬剤組成物。
【請求項14】
動脈内、鼻腔内、腹膜内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮または経口投与することができる、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
患者の神経性疾患を治療するための、請求項6から12のいずれか一項に記載の複合体、または請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
前記神経性疾患が、脳腫瘍、脳転移、統合失調症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチングトン病、脳卒中および血液脳関門に関連する機能不全疾患からなる群から選択され、特に前記神経性疾患が脳腫瘍または脳転移である、請求項15に記載の複合体または組成物。
【請求項17】
前記物質がパクリタクセルである、請求項9、12から16のいずれか一項に記載の複合体または組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−31197(P2012−31197A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237203(P2011−237203)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【分割の表示】特願2006−500425(P2006−500425)の分割
【原出願日】平成16年1月5日(2004.1.5)
【出願人】(505255699)アンジオケム・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】