説明

血液透析システムの洗浄方法

【課題】複数の透析用監視装置のうちのいずれかが透析治療を終了した場合に、透析治療が終了した透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄できる洗浄方法を提供すること。
【解決手段】A原液タンク、B原液タンク、RO装置、多人数用透析液供給装置、複数の透析用監視装置、RO水ライン、洗浄液ライン、透析液ライン、上流側透析液支ライン、下流側透析液支ライン、当該ラインに接続された三方弁を備え、各々の三方弁の一方の口が洗浄液ラインと他方の口が上流側透析液支ラインと接続された血液透析システムの洗浄方法であって、前記複数の透析用監視装置のうちのいずれかが透析治療を終了した際には前記三方弁によって流路を選択し、選択された流路を流れるRO水によって透析治療を終了した透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄する血液透析システムの洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の透析用監視装置が接続された血液透析システムの洗浄方法に関し、特に複数の透析用監視装置のうちのいずれかの透析用監視装置による透析治療が終了した際に、他の透析用監視装置による透析治療が進行中であっても、透析治療が終了した透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインの洗浄が可能な血液透析システムの洗浄方法に関する。
また、本発明は、複数の個人用透析装置が接続された血液透析システムの洗浄方法に関し、特に複数の個人用透析装置のうちのいずれかの個人用透析装置による透析治療が終了した際に、他の個人用透析装置による透析治療が進行中であっても、透析治療が終了した個人用透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインの洗浄が可能な血液透析システムの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透析用監視装置(コンソール)は、透析液原液であるA原液、B原液と希釈水であるRO水を所定の比率で混合して複数台分の透析液を作製する装置である多人数用透析液供給装置からの透析液の供給を受け、患者からの血液を血液ポンプでダイアライザに送り、半透膜を介して透析液と接触させ、血液を浄化する装置である。
なお、透析用監視装置は、前記したように多人数用透析液供給装置からの透析液の供給を受けて主に透析治療を行う装置であるが、血液濾過(ECUM)や補液ポンプを追加使用することにより血液濾過透析が可能であり、さらにはエンドトキシン・カット・フィルタを装着することによりオンラインHDFも可能である。
【0003】
一方、個人用透析装置は、上記の透析用監視装置の機能に加え、透析液の調製機能等を備えた装置である。各施設により使われ方は異なるが、個人用透析装置の利点は、患者に適した透析や病室、ICU、手術室等での透析が可能な点にあることから、処方透析や感染患者、透析室まで移動できない患者に対して利用されることが多い。
【0004】
透析用監視装置や個人用透析装置の血液透析装置においては、患者の疾患の程度に応じて週に1〜3回の割合で透析治療を行うことが通例であり、このような血液透析装置は高度な制御を必要とするため、複数の患者が一台の装置を交互に使用する環境にあるのが一般的である。
しかも、透析治療が終了した後の血液透析装置、特に血液透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインに生じる汚れについては、蛋白質や脂質に代表される有機物と炭酸カルシウムに代表される無機物が主な汚れではあるけれども、患者に投薬された薬物成分や生体由来以外の物質も含まれる上、単純な付着形態ではない。例えば、汚れ成分が積層していたり、有機物のマトリクス中に無機物粒子が絡めとられていたり、カルシウムと有機物が複合物を形成していたりして、細菌が繁殖し易い状態となる。
【0005】
このため、透析治療を提供する医療機関ないし医療従事者は、血液透析装置を通じた患者への感染には十分な注意を払わなければならない。患者の安全上、特に血液透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを清浄に維持することが要請される。このため、医療従事者は、透析治療が終了するたびにRO水を用いて透析液供給ラインおよび透析液排液ラインの水洗作業を行い、必要に応じて消毒液による消毒作業を実施して、次の透析治療に備えるようにしている。
【0006】
例えば、特許文献1は、少なくとも、水道水に含まれる不純物を逆浸透法で除去することによりRO水を精製するRO装置、透析液を調合する多人数用透析液供給装置、前記多人数用透析液供給装置から透析液の供給を受けて患者に対し透析治療を行う複数の透析用監視装置等を備えた血液透析システムの洗浄殺菌方法に関するものである。
このような複数の透析用監視装置を備えた血液透析システムの洗浄殺菌作業には長時間を要するので、当該文献記載の方法においては、その管理の容易化と作業時間の短縮を主な解決課題としている。
そして、当該文献記載の方法においては、多人数用透析液供給装置の洗浄・殺菌供給ポンプより洗浄・殺菌液を供給することにより、多人数用透析液供給装置、その下流側に接続される複数の透析用監視装置、および、これら装置間を接続する配管類を容易かつ短時間に洗浄殺菌することができるとしている。
しかしながら、当該文献記載の方法においては、複数の透析用監視装置のうちのいずれかの透析用監視装置による透析治療が終了した場合であっても、他の透析用監視装置による透析治療が進行中であるならば、透析治療が終了した透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄することはできない。また、当該文献を含むその他の文献においても、当該課題に関する記載や言及は一切なされていない。
【特許文献1】特開2005−296158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記したように血液透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインは、透析治療で付着した汚れによって細菌が繁殖し易い状態となるので、できるだけ早期に洗浄すべきである。望ましくは透析治療の終了直後に洗浄すべきである。また、汚れが付着した状態のまま放置しておくと、付着した汚れが頑強にこびりついて取り除くことが困難となる一方、汚れが付着した直後に洗浄すれば、付着の程度が弱いので比較的容易に取り除くことができる。
【0008】
しかしながら、従来技術に係る複数の透析用監視装置を備えた血液透析システムにおいては、すべての透析用監視装置による透析治療が終了しなければ、透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄することができないので、いずれかの透析用監視装置による透析治療が終了した場合であっても、すべての透析用監視装置による透析治療が終了するまで、汚れが付着した不衛生の状態のまま放置しておく以外に方法はなかった。
【0009】
本発明の解決すべき課題は、複数の透析用監視装置のうちのいずれかの透析用監視装置による透析治療が終了した場合に、たとえ他の透析用監視装置による透析治療が進行中であっても、当該他の透析用監視装置による透析治療が終了するのを待たずして、透析治療が終了した透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄することができる血液透析システムの洗浄方法を提供することである。
【0010】
ここで、上記課題は、複数の透析用監視装置が接続された血液透析システムに関するものであるが、複数の個人用透析装置が接続された血液透析システムにおいても同様の課題が生じている。
したがって、本発明の解決すべき別の課題は、複数の個人用透析装置のうちのいずれかの個人用透析装置による透析治療が終了した場合に、たとえ他の個人用透析装置による透析治療が進行中であっても、当該他の個人用透析装置による透析治療が終了するのを待たずして、透析治療が終了した個人用透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄することができる血液透析システムの洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決すべく様々な実験的検討および理論的検討を重ねた結果、以下の技術的知見を得た。
【0012】
(A)複数の透析用監視装置を備えた血液透析システムの洗浄方法に関する知見
図7は、従来技術に係る血液透析システムの一態様を示す構成図である。図7に示すように、この血液透析システムは、A原液を貯蔵するA原液タンク11、B原液を貯蔵するB原液タンク21、RO水を精製するRO装置31、これら透析液原液をRO水で希釈して透析液を作製する多人数用透析液供給装置41、および、多人数用透析液供給装置から透析液の供給を受けて透析治療を行う複数の透析用監視装置60から構成される。
【0013】
透析用監視装置60が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインの洗浄については、多人数用透析液供給装置41への透析液原液の供給を止めて、透析液の代わりにRO水を透析液ライン42に流す方法によって行われる。この場合には、多人数用透析液供給装置41、透析液ライン42、当該透析液ラインから分岐する複数の透析液支ライン43、当該透析液支ラインに接続された透析用監視装置が備える透析液供給ライン、そして、透析液排液ラインがRO水で洗浄される。
なお、透析治療が終了した際には、透析液供給ラインの端部であるカプラと、透析液排液ラインの端部であるカプラをダイアライザから取り外すのが一般的である。したがって、ダイアライザから取り外した両者のカプラを結合させて、透析液供給ラインを流れるRO水をカプラを介して透析液排液ラインに流し込んで、透析液排液ラインを洗浄している。
また、透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄する別の方法としては、A原液タンク11とB原液タンク21を空にして、これに直接RO水を供給する方法もある。この場合には、A原液タンク11、A原液ライン12、B原液タンク21、B原液ライン22についてもRO水で洗浄される。
【0014】
すなわち、このような複数の透析用監視装置60を備えた血液透析システムにおいては、すべての透析用監視装置60による透析治療が終了しなければ、各透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄することができない。これは、多人数用透析液供給装置41から個々の透析用監視装置60までの流路としては透析液ライン42しか存在せず、しかも個々の透析用監視装置60が透析液ライン42を共有するためである。
【0015】
そこで、本発明者は、図1に示すように新たな流路として洗浄液ライン33を設け、また、個々の透析用監視装置60が繋がる透析液支ラインに三方弁を設置し、当該三方弁で分割された透析液支ラインのうち透析用監視装置が接続される側を下流側透析液支ライン45、透析液ラインに接続される側を上流側透析液支ライン44とした。換言すると、透析用監視装置60が接続される下流側透析液支ライン45に三方弁50を接続し、その一方の口は新たに設けた洗浄液ライン33と、他方の口は上流側透析液支ライン44と接続することとした。
【0016】
このようにすれば、前記三方弁50によって、下流側透析液支ライン45にRO水を流すか透析液を流すかを選択することができる。例えば、下流側透析液支ライン45と上流側透析液支ライン44との流路を閉塞するとともに、下流側透析液支ライン45と洗浄液ライン33との流路を形成すれば、下流側透析液支ライン45にRO水を流すことができる。すなわち、当該下流側透析液支ライン45には、透析用監視装置が備える透析液供給ラインが接続されているので、当該透析液供給ラインにRO水を流して洗浄することができる。また、ダイアライザから取り外した透析液供給ラインのカプラと透析液排液ラインのカプラを結合させることにより、透析液排液ラインにRO水を流して洗浄することができる。
反対に、下流側透析液支ライン45と上流側透析液支ライン44との流路を形成するとともに、下流側透析液支ライン45と洗浄液ライン33との流路を閉塞すれば、下流側透析液支ライン45、およびこれに接続される透析液供給ラインに透析液を流すことができる。
【0017】
したがって、複数の透析用監視装置60のうちのいずれかの透析用監視装置による透析治療が終了した場合には、下流側透析液支ライン45に接続された三方弁50によって、透析治療を終了した透析用監視装置に接続された下流側透析液支ライン45と上流側透析液支ライン44との流路を閉塞するとともに、下流側透析液支ライン45と洗浄液ライン33との流路を形成すれば、下流側透析液支ライン45、当該ラインに接続される透析液供給ライン、および取り外したカプラを結合させることにより透析液排液ラインにRO水を流すことができる。これにより他の透析用監視装置による透析治療が進行中であっても、当該他の透析用監視装置による透析治療が終了するのを待たずして、透析治療が終了した透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄することができる。
【0018】
上記の知見に基づき、本発明者は上記した前者の課題を解決することができる血液透析システムの洗浄方法に想到した。すなわち、本発明は、A原液を貯蔵するA原液タンクと、B原液を貯蔵するB原液タンクと、RO水を精製するRO装置と、A原液とB原液をRO水で希釈して透析液を作製する多人数用透析液供給装置と、前記多人数用透析液供給装置から透析液の供給を受けて透析治療を行う複数の透析用監視装置と、前記RO装置と多人数用透析液供給装置とを接続するRO水ラインと、前記RO水ラインに接続された洗浄液ラインと、前記多人数用透析液供給装置に接続された透析液ラインと、前記透析液ラインから分岐する複数の上流側透析液支ラインと、各々の透析用監視装置が備える透析液供給ラインに接続された下流側透析液支ラインと、各々の下流側透析液支ラインに接続された三方弁を備え、各々の三方弁の一方の口が洗浄液ラインと、他方の口が上流側透析液支ラインと接続された血液透析システムの洗浄方法であって、前記複数の透析用監視装置のうちのいずれかが透析治療を終了した際には、前記三方弁によって、透析治療を終了した透析用監視装置に接続された下流側透析液支ラインと上流側透析液支ラインとの流路を閉塞するとともに、下流側透析液支ラインと洗浄液ラインとの流路を形成し、形成された流路を流れるRO水によって、透析治療を終了した透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄する血液透析システムの洗浄方法である。
【0019】
(B)複数の個人用透析装置を備えた血液透析システムの洗浄方法に関する知見
図8は、従来技術に係る血液透析システムの別の一態様を示す構成図である。図8に示すように、この血液透析システムは、A原液を貯蔵するA原液タンク11、B原液を貯蔵するB原液タンク21、RO水を精製するRO装置31、および、これら透析液原液とRO水の供給を受けて、内部で自らこれら透析液原液をRO水で希釈して透析液を作成して、透析治療を行う複数の個人用透析装置61から構成される。
【0020】
個人用透析装置61が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインの洗浄については、個人用透析装置61への透析液原液の供給を止めて、透析液原液の代わりにRO水をA原液ライン12、B原液ライン22に流す方法によって行われる。この場合には、A原液ライン12、当該ラインから分岐する複数のA原液支ライン13、当該A原液支ラインに原液ポンプを介して接続された、個人用透析装置61が備える透析液供給ライン、そして、透析液排液ラインがRO水で洗浄される。同様に、B原液ライン22、当該ラインから分岐する複数のB原液支ライン23、当該B原液支ラインに原液ポンプを介して接続された、個人用透析装置61が備える透析液供給ライン、そして、透析液排液ラインがRO水で洗浄される。
また、透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄する別の方法としては、A原液タンク11とB原液タンク21を空にして、これに直接RO水を供給する方法もある。この場合には、A原液タンク11、B原液タンク21についてもRO水で洗浄される。
【0021】
すなわち、このような複数の個人用透析装置61を備えた血液透析システムにおいては、すべての個人用透析装置による透析治療が終了しなければ、各個人用透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄することができない。これは、A原液タンク11から個々の個人用透析装置61までの流路としてはA原液ライン12しか存在せず、しかも個々の個人用透析装置がA原液ラインを共有するためである。同様に、B原液タンク21から個々の個人用透析装置61までの流路としてはB原液ライン22しか存在せず、しかも個々の個人用透析装置がB原液ラインを共有するためである。
【0022】
そこで、本発明者は、図4に示すように新たな流路として洗浄液ライン33を設け、また、個々の個人用透析装置が繋がるA原液支ラインに第1の三方弁51を設置し、当該第1の三方弁で分割されたA原液支ラインのうち個人用透析装置が接続される側を下流側A原液支ライン15、A原液ラインに接続される側を上流側A原液支ライン14とした。換言すると、個人用透析装置が接続される下流側A原液支ライン15に第1の三方弁51を接続し、その一方の口は新たに設けた洗浄液ライン33と、他方の口は上流側A原液支ライン14と接続することとした。
同様に、個々の個人用透析装置が繋がるB原液支ラインに第2の三方弁52を設置し、当該第2の三方弁で分割されたB原液支ラインのうち個人用透析装置が接続される側を下流側B原液支ライン25、B原液ラインに接続される側を上流側B原液支ライン24とした。換言すると、個人用透析装置が接続される下流側B原液支ライン25に第2の三方弁52を接続し、その一方の口は新たに設けた洗浄液ライン33と、他方の口は上流側B原液支ライン24と接続することとした。
【0023】
このようにすれば、第1の三方弁51によって、下流側A原液支ライン15にRO水を流すかA原液を流すかを選択することができる。例えば、下流側A原液支ライン15と上流側A原液支ライン14との流路を閉塞するとともに、下流側A原液支ライン15と洗浄液ライン33との流路を形成すれば、下流側A原液支ライン15にRO水を流すことができる。すなわち、当該下流側A原液支ライン15には、個人用透析装置が備える透析液供給ラインが原液ポンプを介して接続されているので、当該透析液供給ラインにRO水を流して洗浄することができる。また、ダイアライザから取り外した透析液供給ラインのカプラと透析液排液ラインのカプラを結合させることにより、透析液排液ラインにRO水を流して洗浄することができる。
反対に、下流側A原液支ライン15と上流側A原液支ライン14との流路を形成するとともに、下流側A原液支ライン15と洗浄液ライン33との流路を閉塞すれば、下流側A原液支ライン15、およびこれに接続される透析液供給ラインにA原液を流すことができる。
【0024】
同様に、第2の三方弁52によって、下流側B原液支ライン25にRO水を流すかB原液を流すかを選択することができる。例えば、下流側B原液支ライン25と上流側B原液支ライン24との流路を閉塞するとともに、下流側B原液支ライン25と洗浄液ライン33との流路を形成すれば、下流側B原液支ライン25にRO水を流すことができる。すなわち、当該下流側B原液支ライン25には、個人用透析装置が備える透析液供給ラインが原液ポンプを介して接続されているので、当該透析液供給ラインにRO水を流して洗浄することができる。また、ダイアライザから取り外した透析液供給ラインのカプラと透析液排液ラインのカプラを結合させることにより、透析液排液ラインにRO水を流して洗浄することができる。
反対に、下流側B原液支ライン25と上流側B原液支ライン24との流路を形成するとともに、下流側B原液支ライン25と洗浄液ライン33との流路を閉塞すれば、下流側B原液支ライン25、およびこれに接続される透析液供給ラインにB原液を流すことができる。
【0025】
したがって、複数の個人用透析装置61のうちのいずれかの個人用透析装置による透析治療が終了した場合には、下流側A原液支ライン15に接続された第1の三方弁51によって、透析治療を終了した個人用透析装置に接続された下流側A原液支ライン15と上流側A原液支ライン14との流路を閉塞するとともに、下流側A原液支ライン15と洗浄液ライン33との流路を形成すれば、下流側A原液支ライン15、当該ラインに接続される透析液供給ライン、および取り外したカプラを結合させることにより透析液排液ラインにRO水を流すことができる。
同様に、下流側B原液支ライン25に接続された第2の三方弁52によって、透析治療を終了した個人用透析装置に接続された下流側B原液支ライン25と上流側B原液支ライン24との流路を閉塞するとともに、下流側B原液支ライン25と洗浄液ライン33との流路を形成すれば、下流側B原液支ライン25、当該ラインに接続される透析液供給ライン、および取り外したカプラを結合させることにより透析液排液ラインにRO水を流すことができる。
これにより他の個人用透析装置による透析治療が進行中であっても、当該他の個人用透析装置による透析治療が終了するのを待たずして、透析治療が終了した個人用透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄することができる。
【0026】
上記の知見に基づき、本発明者は上記した後者の課題を解決することができる血液透析システムの洗浄方法に想到した。すなわち、本発明は、A原液を貯蔵するA原液タンクと、B原液を貯蔵するB原液タンクと、RO水を精製するRO装置と、A原液とB原液をRO水で希釈して透析液を作製するとともに透析治療を行う複数の個人用透析装置と、前記RO装置と複数の個人用透析装置とを接続するRO水ラインと、前記RO水ラインに接続された洗浄液ラインと、前記A原液タンクに接続されたA原液ラインと、前記A原液ラインから分岐する複数の上流側A原液支ラインと、各々の個人用透析装置が備える透析液供給ラインに原液ポンプを介して接続された下流側A原液支ラインと、各々の下流側A原液支ラインに接続された第1の三方弁と、前記B原液タンクに接続されたB原液ラインと、前記B原液ラインから分岐する複数の上流側B原液支ラインと、各々の個人用透析装置が備える透析液供給ラインに原液ポンプを介して接続された下流側B原液支ラインと、各々の下流側B原液支ラインに接続された第2の三方弁を備え、各々の第1の三方弁の一方の口が洗浄液ラインと、他方の口が上流側A原液支ラインと接続され、各々の第2の三方弁の一方の口が洗浄液ラインと、他方の口が上流側B原液支ラインと接続された血液透析システムの洗浄方法であって、前記複数の個人用透析装置のうちのいずれかが透析治療を終了した際には、第1の三方弁によって、透析治療を終了した個人用透析装置に接続された下流側A原液支ラインと上流側A原液支ラインとの流路を閉塞するとともに、下流側A原液支ラインと洗浄液ラインとの流路を形成し、さらに、第2の三方弁によって、透析治療を終了した個人用透析装置に接続された下流側B原液支ラインと上流側B原液支ラインとの流路を閉塞するとともに、下流側B原液支ラインと洗浄液ラインとの流路を形成し、形成された流路を流れるRO水によって、透析治療を終了した個人用透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄する血液透析システムの洗浄方法である。
【発明の効果】
【0027】
(イ)複数の透析用監視装置が接続された血液透析システムの洗浄方法に係る本発明によれば、複数の透析用監視装置のうちのいずれかの透析用監視装置による透析治療が終了した場合には、たとえ他の透析用監視装置による透析治療が進行中であっても、当該他の透析用監視装置による透析治療が終了するのを待たずして、透析治療が終了した透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄することができる。
【0028】
(ロ)複数の個人用透析装置が接続された血液透析システムの洗浄方法に係る本発明によれば、複数の個人用透析装置のうちのいずれかの個人用透析装置による透析治療が終了した場合には、たとえ他の個人用透析装置による透析治療が進行中であっても、当該他の個人用透析装置による透析治療が終了するのを待たずして、透析治療が終了した個人用透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄することができる。
【0029】
(ハ)すなわち、透析用監視装置や個人用透析装置の血液透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインは、透析治療で付着した汚れによって細菌が繁殖し易い状態となって、血液透析装置を通じた患者への感染要因の一つとなるところ、本発明に係る血液透析システムの洗浄方法によれば、透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを常に清浄な状態に維持することができるので、患者に対して感染事故のない安全な透析治療を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図1〜図6を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明に係る血液透析システムの一態様を示す構成図である。図1に示すように、この血液透析システムは、A原液タンク11、B原液タンク21、RO装置31、多人数用透析液供給装置41、複数の透析用監視装置60、下記に示す各種ライン、および流路を選択する三方弁50から構成される。
【0031】
A原液タンク11は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、無水酢酸ナトリウム、ブドウ糖等を含有するA原液10を貯蔵するタンクであり、A原液ライン12を介して多人数用透析液供給装置41に接続される。
B原液タンク21は、炭酸水素ナトリウム等を含有するB原液20を貯蔵するタンクであり、B原液ライン22を介して多人数用透析液供給装置41に接続される。
【0032】
RO装置31は、水道水に含まれる不純物を逆浸透法で除去することによりRO水30を精製する装置であり、RO水ライン32を介して多人数用透析液供給装置41に接続される。逆浸透法とは、RO膜を介して一次側溶液に浸透圧以上の圧力を加えることにより、水成分がRO膜を濾過してくる現象を利用した膜分離法であり、この方法により水道水に含まれる不純物である溶解イオン、有機物、バクテリア、パイロジェン等をほぼ完全に除去することができる。
【0033】
RO水ライン32には、本発明に係る血液透析システムの特徴の一つである洗浄液ライン33が接続される。当該洗浄液ライン33は、透析治療を終了した透析用監視装置60が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄するためのRO水30が流れるラインである。
【0034】
多人数用透析液供給装置41は、A原液タンクから供給される透析液原液であるA原液10、B原液タンクから供給される透析液原液であるB原液20、そしてRO装置から供給されるRO水30を所定の比率で混合して、複数台分の透析液40を作製する装置である。
多人数用透析液供給装置41には、作製された透析液40が流れる透析液ライン42が接続され、当該透析液ライン42からは複数の上流側透析液支ライン44が分岐する。
【0035】
図2は透析用監視装置60の一態様を示す構成図である。図2に示すように個々の透析用監視装置60(コンソール)は、下流側透析液支ライン45が接続される透析液供給ライン62、透析液排液ライン63、および血液ポンプ66を備え、下流側透析液支ライン45および透析液供給ライン62を介して多人数用透析液供給装置41から透析液40の供給を受け、患者からの血液を血液ポンプ66でダイアライザ64に送り、半透膜を介して透析液40と接触させ、血液を浄化する装置である。
図2に示すように下流側透析液支ライン45には、本発明に係る血液透析システムの特徴の一つである三方弁50が接続され、各々の三方弁50の一方の口は洗浄液ライン33と、他方の口は上流側透析液支ライン44と接続される。
なお、図2に例示した透析用監視装置60の接続態様においては、静脈側血液ライン71に静脈側チャンバー69が接続されているが、別の態様として、さらに動脈側血液ライン70に動脈側チャンバーが接続された態様のものでもよい。
【0036】
複数の透析用監視装置60が接続された本発明に係る血液透析システムは以上の構成としているので、以下に示すように前記三方弁50によって、任意の下流側透析液支ライン45にRO水30を流すか透析液40を流すかを選択することができる。
【0037】
図3は本発明に係る血液透析システムの洗浄方法の一態様を模式的に示す説明図であり、血液透析システムを構成する4台の透析用監視装置60のうち、左から2番目の透析用監視装置による透析治療が終了して洗浄している状態を、他の3台の透析用監視装置による透析治療が進行中である場合を模式的に示している。なお、当該図においては4台の透析用監視装置を接続しているが、透析用監視装置60の接続台数はこれに限定されるものではない。
【0038】
透析治療が終了した左から2番目の透析用監視装置60については、透析治療が進行中である他の3台と同様に、下流側透析液支ライン45と上流側透析液支ライン44との流路を形成するとともに、下流側透析液支ライン45と洗浄液ライン33との流路を閉塞することにより、下流側透析液支ライン45、および図2に示すように当該ライン45に接続される透析液供給ライン62に透析液40を流すことで透析治療を行っていたものである。
【0039】
以下、透析治療が終了した当該透析用監視装置60が備える透析液供給ライン62および透析液排液ライン63の洗浄方法について説明する。
先ずは、透析治療が終了した透析用監視装置60の下流側透析液支ライン45に接続された三方弁50によって、透析治療中は流路が形成されていた下流側透析液支ライン45と上流側透析液支ライン44との流路を閉塞する(ステップ1)。
次いで、前記三方弁50によって、下流側透析液支ライン45と洗浄液ライン33との流路を形成する(ステップ2)。これにより、下流側透析液支ライン45にRO水30を流す。すなわち、当該下流側透析液支ライン45には、透析用監視装置60が備える透析液供給ライン62が接続されているので、当該透析液供給ライン62にRO水30を流して透析液供給ライン62を洗浄する。
【0040】
このときの三方弁50の具体的な開閉動作については表1の実施例1に示すように、ステップ1として44側と45側の弁を閉じて、ステップ2として45側と33側の弁を開けるようにするのが安全確保の観点から望ましい。また、実施例2に示すように、ステップ1として44側の弁を閉じ、ステップ2として33側の弁を開けるようにしてもよい。あるいは、実施例3に示すように、透析治療状態から44側の弁を閉じ、33側の弁を開けることによって洗浄工程に移行することも可能ではある。
なお、表1に示す○表記は弁が開いている状態を、×表記は弁が閉じている状態を示す。すなわち、表1に示す開閉動作については、三方にそれぞれ開閉弁を備えるタイプの三方弁を使用した場合の開閉動作を示している。
【0041】
【表1】

【0042】
三方にそれぞれ開閉弁を備えるタイプではなく、二者択一的な流路を選択するセレクタータイプの三方弁を使用する場合には、当該三方弁50は下流側透析液支ライン45に接続しているので、44側を選択することにより下流側透析液支ライン45と上流側透析液支ライン44との流路が形成され、下流側透析液支ライン45と洗浄液ライン33との流路が閉塞される。一方、33側を選択することにより下流側透析液支ライン45と洗浄液ライン33との流路が形成され、下流側透析液支ライン45と上流側透析液支ライン44との流路が閉塞される。
【0043】
透析液排液ライン63については、ダイアライザ64から取り外した透析液供給ラインのカプラ65と透析液排液ラインのカプラ65を結合させることにより、透析液供給ラインを流れたRO水30をカプラ65を介して透析液排液ライン63に流し込んで、透析液排液ライン63を洗浄する。
【0044】
一方、透析治療が進行中である他の3台については、図3に示すように下流側透析液支ライン45と上流側透析液支ライン44との流路を形成するとともに、下流側透析液支ライン45と洗浄液ライン33との流路を閉塞することにより、下流側透析液支ライン45、およびこれに接続される透析液供給ライン62に透析液40を流すことができるので、透析治療を継続することができる。
【0045】
以上のように、複数の透析用監視装置60が接続された血液透析システムの洗浄方法に係る本発明によれば、複数の透析用監視装置60のうちのいずれかの透析用監視装置による透析治療が終了した場合には、下流側透析液支ライン45に接続された三方弁50によって、透析治療を終了した透析用監視装置60に接続された下流側透析液支ライン45と上流側透析液支ライン44との流路を閉塞するとともに、下流側透析液支ライン45と洗浄液ライン33との流路を形成することにより、下流側透析液支ライン45、当該ラインに接続される透析液供給ライン62、および取り外したカプラを結合させることにより透析液排液ライン63にRO水30を流すことができる。
これにより他の透析用監視装置60による透析治療が進行中であっても、当該他の透析用監視装置による透析治療が終了するのを待たずして、透析治療が終了した透析用監視装置60が備える透析液供給ライン62および透析液排液ライン63を洗浄することができる。
すなわち、透析用監視装置60が備える透析液供給ライン62および透析液排液ライン63は、透析治療で付着した汚れによって細菌が繁殖し易い状態となって、透析用監視装置を通じた患者への感染要因の一つとなるところ、複数の透析用監視装置60が接続された血液透析システムの洗浄方法に係る本発明によれば、透析液供給ライン62および透析液排液ライン63を常に清浄な状態に維持することができるので、患者に対して感染事故のない安全な透析治療を提供することができる。
【0046】
図4は本発明に係る血液透析システムの別の一態様を示す構成図である。図4に示すように、この血液透析システムは、A原液タンク11、B原液タンク21、RO装置31、複数の個人用透析装置61、下記に示す各種ライン、および流路を選択する第1の三方弁51、第2の三方弁52から構成される。
【0047】
A原液タンク11は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、無水酢酸ナトリウム、ブドウ糖等を含有するA原液10を貯蔵するタンクである。A原液タンク11にはA原液10が流れるA原液ライン12が接続され、当該A原液ライン12からは複数の上流側A原液支ライン14が分岐する。
B原液タンク21は、炭酸水素ナトリウム等を含有するB原液20を貯蔵するタンクである。B原液タンク21にはB原液20が流れるB原液ライン22が接続され、当該B原液ライン22からは複数の上流側B原液支ライン24が分岐する。
【0048】
RO装置31は、水道水に含まれる不純物を逆浸透法で除去することによりRO水30を精製する装置であり、RO水30が流れるRO水ライン32を介して個々の個人用透析装置61に接続される。
そして、RO水ライン32には、本発明に係る血液透析システムの特徴の一つである洗浄液ライン33が接続される。当該洗浄液ライン33は、透析治療を終了した個人用透析装置61が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄するためのRO水30が流れるラインである。
【0049】
個人用透析装置61は、A原液タンクから供給される透析液原液であるA原液10、B原液タンクから供給される透析液原液であるB原液20、そしてRO装置から供給されるRO水30を所定の比率で混合して1台分の透析液40を作製するとともに、患者からの血液を血液ポンプ66でダイアライザ64に送り、半透膜を介して透析液と接触させ、血液を浄化する装置である。すなわち、個人用透析装置61は、上記の透析用監視装置60の機能に加え、透析液の調製機能等を備えた装置である。
【0050】
図5は個人用透析装置61の一態様を示す構成図である。図5に示すように個々の個人用透析装置61は、透析液供給ライン62、透析液排液ライン63、および血液ポンプ66を備え、透析液供給ライン62にはRO水ライン32、および原液ポンプ67を介して下流側A原液支ライン15と下流側B原液支ライン25が接続される。
透析液40の作製、ならびに作製された透析液40の透析液供給ライン62への供給については、下流側A原液支ライン15と下流側B原液支ライン25とに各々接続された電磁弁68を交互に開閉することにより、下流側A原液支ライン15を流れるA原液10と下流側B原液支ライン25を流れるB原液20を、原液ポンプ67を介して交互に透析液供給ライン62に注入することにより行われる。
なお、図5に例示した個人用透析装置61の接続態様においては、静脈側血液ライン71に静脈側チャンバー69が接続されているが、別の態様として、さらに動脈側血液ライン70に動脈側チャンバーが接続された態様のものでもよい。
そして、各々の下流側A原液支ライン15には、本発明に係る血液透析システムの特徴の一つである第1の三方弁51が接続され、各々の第1の三方弁51の一方の口は洗浄液ライン33と、他方の口は上流側A原液支ライン14と接続される。
同様に、各々の下流側B原液支ライン25には、本発明に係る血液透析システムの特徴の一つである第2の三方弁52が接続され、各々の第2の三方弁52の一方の口は洗浄液ライン33と、他方の口は上流側B原液支ライン24と接続される。
【0051】
複数の個人用透析装置61が接続された本発明に係る血液透析システムは以上の構成としているので、以下に示すように前記第1の三方弁51によって、任意の下流側A原液支ライン15にRO水30を流すかA原液10を流すかを選択することができる。同様に、前記第2の三方弁52によって、任意の下流側B原液支ライン25にRO水30を流すかB原液20を流すかを選択することができる。
【0052】
図6は本発明に係る血液透析システムの洗浄方法の別の一態様を模式的に示す説明図であり、血液透析システムを構成する2台の個人用透析装置61のうち、右側の個人用透析装置61による透析治療が終了して洗浄している状態を、左側の個人用透析装置61による透析治療が進行中である場合を模式的に示している。なお、当該図においては2台の個人用透析装置61を接続しているが、個人用透析装置61の接続台数はこれに限定されるものではない。
【0053】
透析治療が終了した右側の個人用透析装置61については、透析治療が進行中である左側と同様に、下流側A原液支ライン15と上流側A原液支ライン14との流路を形成するとともに、下流側A原液支ライン15と洗浄液ライン33との流路を閉塞することにより、下流側A原液支ライン15、および原液ポンプを介してこれに接続される透析液供給ライン62にA原液10を流すことで、また、下流側B原液支ライン25と上流側B原液支ライン24との流路を形成するとともに、下流側B原液支ライン25と洗浄液ライン33との流路を閉塞することにより、下流側B原液支ライン25、および原液ポンプを介してこれに接続される透析液供給ライン62にB原液20を流すことで透析治療を行っていたものである。
【0054】
以下、透析治療が終了した当該個人用透析装置61が備える透析液供給ライン62および透析液排液ライン63の洗浄方法について説明する。
先ずは、透析治療が終了した個人用透析装置61が備える第1の三方弁51によって、下流側A原液支ライン15と上流側A原液支ライン14との流路を閉塞する。同様に、第2の三方弁52によって、下流側B原液支ライン25と上流側B原液支ライン24との流路を閉塞する(ステップ1)。
次いで、前記第1の三方弁51によって、下流側A原液支ライン15と洗浄液ライン33との流路を形成する。同様に、第2の三方弁52によって、下流側B原液支ライン25と洗浄液ライン33との流路を形成する(ステップ2)。これにより、下流側A原液支ライン15および下流側B原液支ライン25にRO水30を流す。すなわち、下流側A原液支ライン15および下流側B原液支ライン25には、原液ポンプを介して個人用透析装置61が備える透析液供給ライン62が接続されているので、当該透析液供給ライン62にRO水30を流して透析液供給ライン62を洗浄する。
【0055】
このときの第1の三方弁51の具体的な開閉動作については表2の実施例4に示すように、ステップ1として14側と15側の弁を閉じて、ステップ2として15側と33側の弁を開けるようにするのが安全確保の観点から望ましい。また、実施例5に示すように、ステップ1として14側の弁を閉じ、ステップ2として33側の弁を開けるようにしてもよい。あるいは、実施例6に示すように、透析治療状態から14側の弁を閉じ、33側の弁を開けることによって洗浄工程に移行することも可能ではある。
また、第2の三方弁52の具体的な開閉動作については、ステップ1として24側と25側の弁を閉じて、ステップ2として25側と33側の弁を開けるようにするのが安全確保の観点から望ましい。また、ステップ1として24側の弁を閉じ、ステップ2として33側の弁を開けるようにしてもよい。あるいは、透析治療状態から24側の弁を閉じ、33側の弁を開けることによって洗浄工程に移行することも可能ではある。
なお、表2に示す○表記は弁が開いている状態を、×表記は弁が閉じている状態を示す。すなわち、表2に示す開閉動作については、三方にそれぞれ開閉弁を備えるタイプの三方弁を使用した場合の開閉動作を示している。
【0056】
【表2】

【0057】
三方にそれぞれ開閉弁を備えるタイプではなく、二者択一的な流路を選択するセレクタータイプの三方弁を使用する場合には、第1の三方弁51は下流側A原液支ライン15に接続しているので、14側を選択することにより下流側A原液支ライン15と上流側A原液支ライン14との流路が形成され、下流側A原液支ライン15と洗浄液ライン33との流路が閉塞される。一方、33側を選択することにより下流側A原液支ライン15と洗浄液ライン33との流路が形成され、下流側A原液支ライン15と上流側A原液支ライン14との流路が閉塞される。同様に、第2の三方弁52は下流側B原液支ライン25に接続しているので、24側を選択することにより下流側B原液支ライン25と上流側B原液支ライン24との流路が形成され、下流側B原液支ライン25と洗浄液ライン33との流路が閉塞される。一方、33側を選択することにより下流側B原液支ライン25と洗浄液ライン33との流路が形成され、下流側B原液支ライン25と上流側B原液支ライン24との流路が閉塞される。
【0058】
透析液排液ライン63については、ダイアライザ64から取り外した透析液供給ラインのカプラ65と透析液排液ラインのカプラ65を結合させることにより、透析液供給ラインを流れたRO水30をカプラ65を介して透析液排液ライン63に流し込んで、透析液排液ライン63を洗浄する。
【0059】
一方、透析治療が進行中である左側の個人用透析装置61については、図6に示すように第1の三方弁51によって、下流側A原液支ライン15と上流側A原液支ライン14との流路を形成するとともに、下流側A原液支ライン15と洗浄液ライン33との流路を閉塞することにより、下流側A原液支ライン15、および原液ポンプを介してこれに接続される透析液供給ライン62にA原液10を流すことができるので、透析治療を継続することができる。
同様に、第2の三方弁52によって、下流側B原液支ライン25と上流側B原液支ライン24との流路を形成するとともに、下流側B原液支ライン25と洗浄液ライン33との流路を閉塞することにより、下流側B原液支ライン25、および原液ポンプを介してこれに接続される透析液供給ライン62にB原液20を流すことができるので、透析治療を継続することができる。
【0060】
以上のように、複数の個人用透析装置61が接続された血液透析システムの洗浄方法に係る本発明によれば、複数の個人用透析装置61のうちのいずれかの個人用透析装置による透析治療が終了した場合には、下流側A原液支ライン15に接続された第1の三方弁51によって、透析治療を終了した個人用透析装置に接続された下流側A原液支ライン15と上流側A原液支ライン14との流路を閉塞するとともに、下流側A原液支ライン15と洗浄液ライン33との流路を形成することにより、下流側A原液支ライン15、原液ポンプを介して当該ラインに接続される透析液供給ライン62、および取り外したカプラを結合させることにより透析液排液ライン63にRO水を流すことができる。
同様に、下流側B原液支ライン25に接続された第2の三方弁52によって、透析治療を終了した個人用透析装置に接続された下流側B原液支ライン25と上流側B原液支ライン24との流路を閉塞するとともに、下流側B原液支ライン25と洗浄液ライン33との流路を形成することにより、下流側B原液支ライン25、原液ポンプを介して当該ラインに接続される透析液供給ライン62、および取り外したカプラを結合させることにより透析液排液ライン63にRO水を流すことができる。
これにより他の個人用透析装置61による透析治療が進行中であっても、当該他の個人用透析装置による透析治療が終了するのを待たずして、透析治療が終了した個人用透析装置61が備える透析液供給ライン62および透析液排液ライン63を洗浄することができる。
すなわち、個人用透析装置61が備える透析液供給ライン62および透析液排液ライン63は、透析治療で付着した汚れによって細菌が繁殖し易い状態となって、個人用透析装置61を通じた患者への感染要因の一つとなるところ、複数の個人用透析装置61が接続された血液透析システムの洗浄方法に係る本発明によれば、透析液供給ライン62および透析液排液ライン63を常に清浄な状態に維持することができるので、患者に対して感染事故のない安全な透析治療を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る血液透析システムの一態様を示す構成図である。
【図2】透析用監視装置の一態様を示す構成図である。
【図3】本発明に係る洗浄方法の一態様を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明に係る血液透析システムの別の一態様を示す構成図である。
【図5】個人用透析装置の一態様を示す構成図である。
【図6】本発明に係る洗浄方法の別の一態様を模式的に示す説明図である。
【図7】従来技術に係る血液透析システムの一態様を示す構成図である。
【図8】従来技術に係る血液透析システムの別の一態様を示す構成図である。
【符号の説明】
【0062】
10 A原液 11 A原液タンク
12 A原液ライン 13 A原液支ライン
14 上流側A原液支ライン 15 下流側A原液支ライン
20 B原液 21 B原液タンク
22 B原液ライン 23 B原液支ライン
24 上流側B原液支ライン 25 下流側B原液支ライン
30 RO水 31 RO装置
32 RO水ライン 33 洗浄液ライン
40 透析液 41 多人数用透析液供給装置
42 透析液ライン 43 透析液支ライン
44 上流側透析液支ライン 45 下流側透析液支ライン
50 三方弁 51 第1の三方弁
52 第2の三方弁 53 初期抜水用バルブ
60 透析用監視装置 61 個人用透析装置
62 透析液供給ライン 63 透析液排液ライン
64 ダイアライザ 65 カプラ
66 血液ポンプ 67 原液ポンプ
68 電磁弁 69 静脈側チャンバー
70 動脈側血液ライン 71 静脈側血液ライン
72 オーバーフローライン 73 中継ジョイント
74 クランプ
P1 第1送液手段 P2 第2送液手段
P3 第3送液手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A原液を貯蔵するA原液タンクと、
B原液を貯蔵するB原液タンクと、
RO水を精製するRO装置と、
A原液とB原液をRO水で希釈して透析液を作製する多人数用透析液供給装置と、
前記多人数用透析液供給装置から透析液の供給を受けて透析治療を行う複数の透析用監視装置と、
前記RO装置と多人数用透析液供給装置とを接続するRO水ラインと、
前記RO水ラインに接続された洗浄液ラインと、
前記多人数用透析液供給装置に接続された透析液ラインと、
前記透析液ラインから分岐する複数の上流側透析液支ラインと、
各々の透析用監視装置が備える透析液供給ラインに接続された下流側透析液支ラインと、
各々の下流側透析液支ラインに接続された三方弁を備え、
各々の三方弁の一方の口が洗浄液ラインと、他方の口が上流側透析液支ラインと接続された血液透析システムの洗浄方法であって、
前記複数の透析用監視装置のうちのいずれかが透析治療を終了した際には、前記三方弁によって、透析治療を終了した透析用監視装置に接続された下流側透析液支ラインと上流側透析液支ラインとの流路を閉塞するとともに、下流側透析液支ラインと洗浄液ラインとの流路を形成し、形成された流路を流れるRO水によって、透析治療を終了した透析用監視装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄する血液透析システムの洗浄方法。

【請求項2】
A原液を貯蔵するA原液タンクと、
B原液を貯蔵するB原液タンクと、
RO水を精製するRO装置と、
A原液とB原液をRO水で希釈して透析液を作製するとともに透析治療を行う複数の個人用透析装置と、
前記RO装置と複数の個人用透析装置とを接続するRO水ラインと、
前記RO水ラインに接続された洗浄液ラインと、
前記A原液タンクに接続されたA原液ラインと、
前記A原液ラインから分岐する複数の上流側A原液支ラインと、
各々の個人用透析装置が備える透析液供給ラインに原液ポンプを介して接続された下流側A原液支ラインと、
各々の下流側A原液支ラインに接続された第1の三方弁と、
前記B原液タンクに接続されたB原液ラインと、
前記B原液ラインから分岐する複数の上流側B原液支ラインと、
各々の個人用透析装置が備える透析液供給ラインに原液ポンプを介して接続された下流側B原液支ラインと、
各々の下流側B原液支ラインに接続された第2の三方弁を備え、
各々の第1の三方弁の一方の口が洗浄液ラインと、他方の口が上流側A原液支ラインと接続され、各々の第2の三方弁の一方の口が洗浄液ラインと、他方の口が上流側B原液支ラインと接続された血液透析システムの洗浄方法であって、
前記複数の個人用透析装置のうちのいずれかが透析治療を終了した際には、第1の三方弁によって、透析治療を終了した個人用透析装置に接続された下流側A原液支ラインと上流側A原液支ラインとの流路を閉塞するとともに、下流側A原液支ラインと洗浄液ラインとの流路を形成し、さらに、第2の三方弁によって、透析治療を終了した個人用透析装置に接続された下流側B原液支ラインと上流側B原液支ラインとの流路を閉塞するとともに、下流側B原液支ラインと洗浄液ラインとの流路を形成し、形成された流路を流れるRO水によって、透析治療を終了した個人用透析装置が備える透析液供給ラインおよび透析液排液ラインを洗浄する血液透析システムの洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−56271(P2009−56271A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228574(P2007−228574)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】