説明

血管作動性腸管ペプチドの類似体

肺閉塞性疾患、例えばCOPDを処置するために、例えば吸入により投与される式[X−(配列番号2)−Y]で示されるVPAC−2レセプターアゴニスト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
血管作動性腸管ペプチド(VIP)はブタの腸管から最初に発見され、単離され、そして精製された。[US3879371]。このペプチドは28個のアミノ酸を有し、セクレチンおよびグルカゴンに対して広範囲の相同性を持っている。[Carlquist et al., Horm. Metab. Res., 14, 28-29(1982)]。VIPのアミノ酸配列は以下のとおりである:
【0002】
【化1】

【0003】
VIPは、消化管および循環系全体に幅広い生物活性を表すことが知られている。消化管ホルモンとの類似性に照らして、VIPは、膵液および胆汁分泌、肝臓のグリコーゲン分解、グルカゴンおよびインスリン分泌を刺激し、且つ膵臓の重炭酸塩放出を活性化することが判明している。
【0004】
2種類のVIPレセプターが知られ、ヒト、ラット、マウス、ニワトリ、魚およびカエルからクローニングされている。これらは現在VPAC1およびVPAC2として同定されており、天然VIPに対して同等の親和性で応答する。VPAC2レセプターmRNAは、気管および気管支上皮を含むヒトの気道、腺および免疫細胞、肺胞壁およびマクロファージに見いだされる。[Groneberg et al., Lab. Invest. 81:749-755(2001) およびLaburthe et al., Receptors and Channels 8:137-153(2002)]。
【0005】
VIPを含むニューロンは、イムノアッセイによって内分泌および外分泌系、腸および平滑筋の細胞に存在することが特定されている。VIPは、プロラクチン、サイロキシン、ならびにインスリンおよびグルカゴンを包含する幾つかのホルモンの放出を引き起こす神経効果器であることが判明している。さらにVIPは、インビボおよびインビトロで腎臓からのレニン放出を刺激することも見いだされている。VIPは、様々な動物種およびヒトの気道において神経および神経終末に存在することが見いだされている。VIPが末梢、肺、および冠血管床に作用する強力な血管拡張物質および強力な平滑筋弛緩物質であることが判明しているため、VIPの心血管および気管支肺作用は興味深い。VIPは脳血管に対して血管拡張作用を有することが知られている。インビトロ研究では、脳動脈に体外から適用された血管作動性腸管ペプチドが血管拡張を誘導することが証明されており、このことは、VIPが脳血管拡張の潜在的な伝達物質であることを示唆している。目においてもVIPが強力な血管拡張物質であることが示されている。
【0006】
VIPは、免疫系に対して調節作用を有し得、例えばVIPはリンパ球の増殖および移動を調節し得る。天然のVIPは、IFNγ合成への作用と共に、LPS刺激マクロファージにおけるIL−12の産生を阻害することが示されている。VIPはマウスマクロファージにおけるTGF−β1産生を阻害し、NFкBを介してヒト単球におけるIL−8の産生を阻害する。[Sun et al., J. Neuroimmunol. 107:88-99(2000) およびDelgado and Ganea, Biochem. Biophys. Res. Commun. 302:275-283(2003)]。
【0007】
上に述べたようにVIPは平滑筋を弛緩させることが見いだされており、そしてそれは通常、気道組織に存在していることから、VIPが気管支平滑筋弛緩の内因性仲介物質であるかも知れないという仮説が立てられている。喘息患者由来の組織は正常な患者由来の組織と比較して免疫反応性VIPを含まないということが示されている。このことは、VIP又はVIP作動性神経線維の喪失が喘息疾患に関連していることを示している可能性がある。インビトロおよびインビボ試験は、VIPが、気管平滑筋を弛緩させ、ヒスタミンおよびプロスタグランジンF2αのような気管支収縮物質からの防御を行うことを示した。静脈内投与された場合、VIPはヒスタミン、プロスタグランジンF2α、ロイコトリエン、血小板活性化因子、および抗原誘導性気管支収縮物質のような気管支収縮物質からの防御を行うことが判明した。VIPはまた、ヒト気道組織の粘液分泌をインビトロで阻害することが見いだされている。
【0008】
気道の疾患は様々な原因を有するが、種々の病態生理学的および臨床的特徴を共有する。これらの疾患の特徴は、気道閉塞に起因する気流の制限、気道壁の肥厚、間質組織の炎症又は弾性喪失である。併存疾患には、粘液の過剰分泌、気道の過反応性、および気体交換異常があり、それらによって、咳嗽、喀痰産生、喘鳴および呼吸困難が起こり得る。一般的な気道の疾患には、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、気腫、および肺高血圧症がある。[Mayer et al., Respiration Physiol. 128:3-11(2001)]。
【0009】
COPDは、肺気道の閉塞により定義される慢性病態の一群である。COPDは、慢性(閉塞性)気管支炎および気腫という二つの主要な呼吸疾患を包含する。両疾患は呼吸困難および息切れと関係している。COPDは、肺高血圧症を伴うことがある。長期の喫煙はCOPDの顕著な危険因子である。COPDに関連する気道の制限は一般的に不可逆的であるとされる。
【0010】
慢性気管支炎は進行性の炎症性疾患である。この疾患は気道粘液産生の増加および細菌感染の増加を伴う。この慢性炎症状態は、鬱血および呼吸困難の増加をもたらす気管支壁の肥厚を誘発する。
【0011】
気腫は、気腔の拡大および肺胞表面積の喪失を伴う肺組織の損傷によるCOPDの基礎病理である。肺の損傷は、肺内部の肺胞嚢が脆弱化し破壊されることにより引き起こされる。肺組織の本来の弾性も失われ、過剰伸展および破裂につながる。小気管支が損傷を受けることがあり、それがそれらの崩壊と気流の妨害をもたらし、息切れにつながる。
【0012】
COPDは、実質的な医学的意義において、常に気管支閉塞を伴う。したがって、COPDの最も一般的な症状は、息切れ、慢性咳嗽、胸部圧迫感、呼吸のためのより大きな努力、粘液産生増加および頻回の咳払いを包含する。患者は普通の日常活動を行うことができない。慢性気管支炎および気腫が独立して発症することはあり得るが、COPDをもつ殆どの人々は当該疾患を併発している。
【0013】
肺実質中の結合組織、特にエラスチンの崩壊は、多くの気道疾患に見いだされる弾性の喪失を引き起こす。エラスチン分解の証拠が気腫およびCOPDで示されている。好中球エラスターゼが、エラスチン破壊の原因となる主たるプロテアーゼであると考えられる。[Barnes et al., Eur. Respir. J. 22:672-688(2003)]。好中球エラスターゼの産生がCOPD患者の肺で亢進していることが示されている。[Higashimoto et al., Respiration 72:629-635(2005)]。
【0014】
VIPの興味深い且つ潜在的な臨床上有用な生物活性の故に、このペプチドは、この分子の1以上の性質を増強する目的を持つ幾つかの報告されている合成プログラムの標的とされてきた。Takeyama等は、8位のアスパラギン酸がグルタミン酸に置換されているVIP類似体を報告している。この化合物は天然VIPより効果が弱いことが判明した。[Chem. Pharm. Bull. 28:2265-2269(1980)]。Wendlberger 等は、17位のメチオニンがノルロイシンに置換されているVIP類似体の製造を開示している。[Peptide Proc. 16th Eur. Pept. Symp., 290-295(1980)]。このペプチドは、肝臓の膜調製物から放射性ヨウ素化VIPを駆逐する能力について天然VIPと同等の効力があることが見いだされた。WattsおよびWootonは、天然配列の6から12残基までを含む一連の直線状および環状VIPフラグメントを報告している。[EP184309、EP325044;US4737487、US4866039]。Turner等は、フラグメントVIP(10−28)がVIPのアンタゴニストであると報告している[Peptides 7:849-854(1986)]。置換類似体[4−Cl−D−Phe,Leu17]−VIPもまたVIPレセプターに結合しVIPの活性に拮抗すると報告されている[Pandol et al., Gastrointest. Liver Physiol. 13:G553-G557(1986)]。Gozes et al. は、類似体[Lys,Pro,Arg,Arg,Pro,Tyr]−VIPが、グリア細胞上にあるそのレセプターに結合するVIPの競合的インヒビターであることを報告した。[Endocrinology 125:2945-2949(1989)]。Robberecht等は、天然VIPのN末端に置換されたD残基を有する幾つかのVIP類似体を報告している。[Peptides 9:339-345(1988)]。これらの類似体は全てVIPレセプターとの結合がより緊密でなく、c−AMP活性化において天然VIPよりも低い活性を示した。TachibanaおよびItoは、前駆体分子の、幾つかのVIP類似体を報告している。[Peptide Chem. Shiba and Sakakibara(eds.), Prot. Res. Foundation, 1988, 481-486, JP1083012, US4822774]。これらの化合物は、VIPよりも1〜3倍強力な気管支拡張物質であることが示されており、そして1〜2倍高いレベルの降圧作用を有していた。Musso et al. はさらに、幾つかのVIP類似体が6−7、9−13、15−17、および19−28位に置換を有することを報告した。[Biochem 27:8174-8181(1988);US4835252]。これらの化合物は、VIPレセプターとの結合および生物学的応答において天然VIPと同等であるか、又はより効力が弱いことが判明した。Bartfai等は、一連の多置換[Leu17]−VIP類似体を報告している。[WO89/05857]。
【0015】
Gourlet等は、VIPレセプターとの親和性を持つ[Arg16]−VIP誘導体を報告している[BBA 1314:267-273(1996)]。Onoue等 は、VIPの一連のアルギニン誘導体および末端切除を報告している[Onoue et al., Life Sci. 74:1465-77(2004) およびOhmori et al., Regul. Pept. 123:201-207(2004)]。一連のポリアラニン誘導体もまた報告されている[Igarashi et al., J. Pharm. Exper. Ther. 303:445-460(2002)およびIgarashi et al., J. Pharm. Exper. Ther. 315:370-81(2005)]。
【0016】
US20050203009では、選択的VPAC1アゴニスト活性を有するVIPの類似体が記載されている。VIPの類似体およびC末端peg化誘導体が報告されており、それは糖尿病を包含する代謝性疾患の処置に有用である[例えばWO2006042152]。VPAC2アゴニスト活性を持つペプチドが同定されており、それらはPACAPおよびVIP類似体を包含している[Gourlet et al., Peptides 18:403-408;Xia et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:629-633(1997)]。強化された安定性および活性を有するVIPの環状類似体が報告されている[Bolin et al., Biopolymers 37:57-66(1995), US5677419]。
【0017】
ヒトにおいては、喘息患者に静脈内注入で投与された場合、VIPは最大呼気速度の増大を惹起し、ヒスタミン誘発気管支拡張に対する防御を行うことが示されている。[Morice and Sever, Peptides 7:279-280(1986);Morice et al., The Lancet, II 1225-1227(1983)]。しかしながら、このVIP静脈内注入により観察される肺への影響は、心血管副作用、最も顕著なものとして血圧低下および頻脈、そしてさらに顔面紅潮を伴った。心血管作用を惹起しない静脈内用量を投与した場合、VIPは特異的気道コンダクタンスを変化させることができなかった。[Palmer et al., Thorax 41:663-666(1986)]。この活性の欠如は、低投与量のため、そしてことによると当該化合物の速やかな分解によるものであると説明された。エアロゾルによってヒトに投与した場合、天然VIPはヒスタミン誘発気管支収縮に対する防御において辛うじて有効であった。[Altieri et al., Pharmacologist 25:123(1983)]。VIPはベースライン気道パラメータには有意な作用がないが、ヒトに吸入投与する時、ヒスタミン誘発気管支収縮に対する防御的効果を有することが見いだされた。[Barnes and Dixon, Am. Rev. Respir. Dis., 130:162-166(1984)]。エアロゾルで投与された場合、VIPは、気管支拡張に併せて頻脈や血圧低下作用を示すことはないと報告された。[Said et al., in: Vasoactive Intestinal Peptide, Said]ed.), Raven Press, New York, 1928, 185-191]。
【0018】
VIPの誘導体であるRO25−1553は、軽度喘息患者において前臨床的にも臨床的にも気管支拡張薬としての有効性があると報告されている[Kallstrom and Waldeck, Eur. J. Pharm. 430:335-40(2001) およびLinden et al., Thorax 58:217-21(2003)]。天然VIPは、COPD、肺高血圧症およびその他の気道疾患の処置に有用性があると報告されている[WO03061680, WO0243746およびWO2005014030]。
【0019】
しかしながら、既存のVPACアゴニストと同等又はより良好な効力、薬物動態学的性質および薬理学的性質を持ちつつVPAC2レセプターに対する選択性を有する血管作動性腸管ペプチドの新規な類似体に対する必要性が存在する。好ましくは、過去に入手可能であったものよりも活性持続時間が長い化合物に対する必要性が存在する。
【0020】
本発明は、式(I):
【化2】


[式中、
Xは、ヒスチジンのN末端アミノの水素であって、これは、場合により、加水分解可能なアミノ保護基、最も好ましくはアセチル基に置き換えられていてもよく、
Yは、スレオニンのC末端カルボキシのヒドロキシであって、これは、場合により、加水分解可能なカルボキシ保護基、最も好ましくはNHに置き換えられていてもよく、
下線を付した残基は、そのセグメント内の最初(Lys21)および最後(Asp25)のアミノ酸の側鎖−側鎖共有結合を示し、
は、Ser又はAlaであり、
は、Thr、Ser、Asp、Gln、Pro又はCαMeValであり、
16は、Gln、Ala、又はArgであり、
18は、Ala、Lys又はGluであり、
27は、Lys又はLeu(但し、RがCαMeValであり且つR16がArgである時、R27はLysでなければならない)であり、
28は、Lys又はAsnである]
で示されるVPAC−2レセプターアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0021】
本発明化合物は、VPAC2レセプターの活性なアゴニストであり、ヒト好中球エラスターゼに対して増強された安定性を有する。したがって、ヒト肺に存在するエラスターゼの作用に対して改善された抵抗性を有する天然VIPの安定な選択的類似体としての本化合物は、COPDを包含する気道疾患の処置に有用となるであろう。
【0022】
本明細書で言及される全てのペプチド配列は、特に断りのない限り、N末端アミノ酸を左に、そしてC末端アミノ酸を右に表記する通常の慣習に従って記載される。2個のアミノ酸残基の間の短い線はペプチド結合を示す。下線付きのアミノ酸セグメントは、当該セグメント内部の最初と最後のアミノ酸の側鎖−側鎖共有結合を示す。典型的には、これはアミド結合である。アミノ酸が異性体型を有する場合、それは別途指摘のない限り、表現されているアミノ酸のL型である。本発明の説明に際する便宜のため、種々のアミノ酸に対する常套的および非常套的略語を使用する。これらの略語は当業者にとって周知であるが、明確にするため以下に列挙する:
【0023】
Asp=D=アスパラギン酸;Ala=A=アラニン;Arg=R=アルギニン;Asn=N=アスパラギン;Gly=G=グリシン;Glu=E=グルタミン酸;Gln=Q=グルタミン;His=H=ヒスチジン;Ile=I=イソロイシン;Leu=L=ロイシン;Lys=K=リジン;Met=M=メチオニン;MeVal=MeV=CαMeVal;Nle=ノルロイシン;Phe=F=フェニルアラニン;Pro=P=プロリン;Ser=S=セリン;Thr=T=スレオニン;Trp=W=トリプトファン;Tyr=Y=チロシン;およびVal=V=バリン。
【0024】
「加水分解可能なアミノ保護基」および「加水分解可能なカルボキシ保護基」という語に関して、本発明に従い、加水分解によって除去できる任意の常套的保護基が利用できる。そのような基の例を以下に示す。好ましいアミノ保護基は、式:
【化3】


[式中、Xは、低級アルキル又はハロ低級アルキルである]
で示されるアシル基である。これらの保護基のうち、XがC−Cアルキル又はハロ−C−Cアルキルである基が特に好ましい。好ましいカルボキシ保護基は低級アルキルエステル、NHおよび低級アルキルアミドであり、C−Cアルキルエステル、NHおよびC−Cアルキルアミドが特に好ましい。
【0025】
これもまた便宜のため、そして当業者には容易に理解できることであるが、本発明において使用する部分および試薬などを表記するために、以下の略語又は記号を使用する:Nle:ノルロイシン;CαMeVal:Cα−メチル−L−バリン;MeVal:Cα−メチル−L−バリン;CHCl:塩化メチレン;Ac:アセチル;AcO:無水酢酸;AcOH:酢酸;ACN:アセトニトリル;DMAc:ジメチルアセトアミド;DMF:ジメチルホルムアミド;DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン;TFA:トリフルオロ酢酸;HOBT:N−ヒドロキシベンゾトリアゾール;DIC:N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド;BOP:ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスファート;HBTU:2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム−ヘキサフルオロホスファート;NMP:1−メチル−2−ピロリジノン;MALDI−TOF:マトリクス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型;FAB−MS:高速原子衝突質量分析;ES−MS:エレクトロスプレー質量分析;RT:室温。
【0026】
本明細書で使用する「アルキル」という語は、分岐又は非分岐の環式又は非環式飽和又は不飽和(例えばアルケニル又はアルキニル)ヒドロカルビル基を意味し、これは置換されていても非置換であってもよい。環式である場合、このアルキル基は好ましくはC〜C12、より好ましくはC〜C10、さらに好ましくはC〜Cである。非環式である場合、このアルキル基は好ましくはC〜C10、より好ましくはC〜C、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル(n−プロピル又はイソプロピル)、ブチル(n−ブチル、イソブチル又はtert−ブチル)又はペンチル(n−ペンチルおよびイソペンチルを包含する)、さらに好ましくはメチルである。
【0027】
本明細書で使用する「低級アルキル」という語は、分岐又は非分岐の環式又は非環式飽和又は不飽和(例えばアルケニル又はアルキニル)ヒドロカルビル基を表し、ここで、この環式低級アルキル基はC、C又はCであり、この非環式低級アルキル基はC、C、C又はCであり、好ましくはメチル、エチル、プロピル(n−プロピル又はイソプロピル)又はブチル(n−ブチル、イソブチル又はtert−ブチル)から選ばれる。
【0028】
本明細書で使用する「アシル」という語は、カルボニル基を介して結合している、場合により置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、ヘテロ環、アリール又はヘテロアリール基を意味し、例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、3−ピリジニルカルボニル、2−モルホリノカルボニル、4−ヒドロキシブタノイル、4−フルオロベンゾイル、2−ナフトイル、2−フェニルアセチル、2−メトキシアセチルなどを包含する。
【0029】
本明細書で使用する「アリール」という語は、置換もしくは非置換炭素環式芳香族基、例えばフェニルもしくはナフチル、又は1個以上、好ましくは1個のヘテロ原子を含む置換もしくは非置換ヘテロ芳香族基を意味する。
【0030】
アルキルおよびアリール基は置換されていても非置換であってもよい。置換されている場合、一般的に1〜3個の置換基、好ましくは1個の置換基が存在する。置換基は、炭素含有基、例えばアルキル、アリール、アリールアルキル(例えば置換および非置換フェニル、置換および非置換ベンジル);ハロゲン原子およびハロゲン含有基、例えばハロアルキル(例えばトリフルオロメチル);酸素含有基、例えばアルコール(例えばヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール(ヒドロキシ)アルキル)、エーテル(例えばアルコキシ、アリールオキシ、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル)、アルデヒド(例えばカルボキシアルデヒド)、ケトン(例えばアルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アリールカルボニルアルキル)、酸(例えばカルボキシ、カルボキシアルキル)、酸誘導体、例えばエステル(例えばアルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルカルボニルオキシアルキル)、アミド(例えばアミノカルボニル、モノ−又はジ−アルキルアミノカルボニル、アミノカルボニルアルキル、モノ−又はジ−アルキルアミノカルボニルアルキル、アリールアミノカルボニル)、カルバメート(例えばアルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、モノ−又はジ−アルキルアミノカルボニルオキシ、アリールアミノカルボニルオキシ)および尿素(例えばモノ−又はジ−アルキルアミノカルボニルアミノ又はアリールアミノカルボニルアミノ);窒素含有基、例えばアミン(例えばアミノ、モノ−又はジ−アルキルアミノ、アミノアルキル、モノ−又はジ−アルキルアミノアルキル)、アジド、ニトリル(例えばシアノ、シアノアルキル)、ニトロ;硫黄含有基、例えばチオール、チオエーテル、スルホキシドおよびスルホン(例えばアルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルチオアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールチオアルキル、アリールスルフィニルアルキル、アリールスルホニルアルキル);および、1個以上、好ましくは1個のヘテロ原子を含むヘテロ環式基を包含できる。
【0031】
本明細書で使用する「ハロゲン」という語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素基、好ましくはフッ素、塩素又は臭素基、より好ましくはフッ素又は塩素基を意味する。
【0032】
「薬学的に許容される塩」とは、式Iの化合物の生物学的有効性および性質を保持し、適当な非毒性の有機もしくは無機酸又は有機もしくは無機塩基から形成される常套的な酸付加塩又は塩基付加塩を指す。例としての酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸などの無機酸から誘導される塩、ならびにp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、蓚酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸などの有機酸から誘導される塩がある。例としての塩基付加塩には、アンモニウム、カリウム、ナトリウムおよび第四アンモニウム水酸化物、例えば水酸化テトラメチルアンモニウムから誘導される塩がある。医薬化合物(即ち、薬物)から塩への化学的修飾は、化合物の物理的又は化学的安定性に関与する性質、例えば吸湿性、流動性又は溶解性の改善を試みる際に利用される周知の技術である。例えば、 Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(6th Ed. 1995) at pp. 196 and 1456-1457を参照されたい。
【0033】
「薬学的に許容されるエステル」とは、常套的にエステル化された、カルボキシ基を有する式Iの化合物を指し、このエステルは、式Iの化合物の生物学的有効性および性質を保持し、インビボ(生体内)で、対応する活性なカルボン酸に開裂する。対応するカルボン酸にインビボで開裂する(この場合、加水分解される)エステル基の例は、開裂した水素が、場合により、例えばヘテロ環、シクロアルキルなどで置換されていてもよい低級アルキルに置き換わっているものである。置換低級アルキルエステルの例は、低級アルキルがピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピペラジンなどで置換されているものである。インビボで開裂する基は、例えばエチル、モルホリノエチル、およびジエチルアミノエチルであってよい。本発明に関連して、−CONHもまたエステルと考えられるが、それは、−NHはインビボで開裂してヒドロキシ基に置き換えられ、対応するカルボン酸を形成するためである。
【0034】
医薬化合物のデリバリーのためのエステルの例およびその使用に関するさらなる情報は、Design of Prodrugs, Bundgaard(ed.)(Elsevier, 1985) で入手できる。さらに、Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(6th Ed. 1995) at pp. 108-109;Krogsgaard-Larsen et. al., Textbook of Drug Design and Development(2d Ed. 1996) at pp. 152-191をも参照されたい。
【0035】
或る態様では、本発明は、XがヒスチジンのN末端アミノの水素であるか、又はこの水素がアセチル基に置き換えられている、式Iの化合物を提供する。別の態様では、本発明は、XがヒスチジンのN末端アミノの水素である式Iの化合物を提供する。
【0036】
或る態様では、本発明は、YがスレオニンのC末端カルボキシのヒドロキシであるか、又はこの水素がNHに置き換えられている、式Iの化合物を提供する。別の態様では、本発明は、YがスレオニンのC末端カルボキシのヒドロキシである式Iの化合物を提供する。
【0037】
或る態様では、本発明は、RがSerである式Iの化合物を提供する。別の態様では、本発明は、RがAlaである式Iの化合物を提供する。
【0038】
或る態様では、本発明は、RがThr、Ser又はCαMeValである式Iの化合物を提供する。別の態様では、本発明は、RがThrである式Iの化合物を提供する。別の態様では、本発明は、RがSerである式Iの化合物を提供する。別の態様では、本発明は、RがCαMeValである式Iの化合物を提供する。
【0039】
或る態様では、本発明は、R16がGln又はArgである式Iの化合物を提供する。別の態様では、本発明は、R16がGlnである式Iの化合物を提供する。別の態様では、本発明は、R16がArgである式Iの化合物を提供する。
【0040】
或る態様では、本発明は、R18がAlaである式Iの化合物を提供する。別の態様では、本発明は、R18がLysである式Iの化合物を提供する。別の態様では、本発明は、R18がGluである式Iの化合物を提供する。
【0041】
或る態様では、本発明は、R27がLysである式Iの化合物を提供する。
【0042】
或る態様では、本発明は、R28がLysである式Iの化合物を提供する。
【0043】
或る態様では、本発明は、式I:
[式中、
Xは、ヒスチジンのN末端アミノの水素であるか、又はこの水素がアセチル基に置き換えられており、
Yは、スレオニンのC末端カルボキシのヒドロキシであるか、又はこのヒドロキシがNHに置き換えられており、
は、Ser又はAlaであり、
は、Thr、Ser又はCαMeValであり、
16は、Gln又はArgであり、
18は、Ala、Lys又はGluであり、
27は、Lys又はLeu(但し、RがCαMeValであり且つR16がArgである時、R27はLysでなければならない)であり、そして
28は、Lysである]
で示される化合物を提供する。
【0044】
別の態様では、本発明は、式I:
[式中、
Xは、ヒスチジンのN末端アミノの水素であるか、又はこの水素がアセチル基に置き換えられており、
Yは、スレオニンのC末端カルボキシのヒドロキシであるか、又はこのヒドロキシがNHに置き換えられており、
は、Ser又はAlaであり、
は、Thr、Ser又はCαMeValであり、
16は、Gln又はArgであり、
18は、Ala、Lys又はGluであり、
27は、Lys又はLeu(但し、RがCαMeValであり且つR16がArgである時、R27はLysでなければならない)であり、そして
28は、Lysである]
で示される化合物を提供する。
【0045】
別の態様では、本発明は、式I:
[式中、
Xは、ヒスチジンのN末端アミノの水素であるか、又はこの水素がアセチル基に置き換えられており、
Yは、スレオニンのC末端カルボキシのヒドロキシであるか、又はこのヒドロキシがNHに置き換えられており、
は、Ser又はAlaであり、
は、Ser又はCαMeValであり、
16は、Glnであり、
18は、Alaであり、
27は、Lys又はLeuであり、そして
28は、Lysである]
で示される化合物を提供する。
【0046】
この代表的化合物は、アミノ酸間のペプチド結合形成のための既知の常法によって容易に合成できる。そのような常法には、例えば、カルボキシ基およびその他の反応性基が保護された、アミノ酸又はその残基の遊離αアミノ基と、アミノ基又はその他の反応性基が保護された別のアミノ酸又はその残基の遊離第一カルボキシ基の間の縮合を可能にする任意の液相法がある。
【0047】
本発明に係る新規化合物を合成するためのこのような常法には、例えば任意の固相ペプチド合成法がある。このような方法では、新規化合物の合成は、固相法の一般原則に従い、成長するペプチド鎖の中に、一度に1個ずつ所望のアミノ酸残基を連続的に組み込んでいくことによって実施できる。このような方法は、例えば、Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85:2149-2154(1963);Barany et al., The Peptides, Analysis, Synthesis and Biology, Vol.2, Gross and Meienhofer,(Eds.) Academic Press 1-284(1980) に開示されており、これらを引用により本明細書の一部とする。ペプチド合成は手動で又は自動装置によって実施できる。マイクロ波支援合成もまた利用できる。
【0048】
様々なアミノ酸部分の反応性側鎖基を適当な保護基で保護することは、ペプチドの化学合成にとって一般的であり、それは、保護基が最後に除去されるまでその部位で化学反応が起こることを防ぐ。カルボキシ基において反応する間、アミノ酸又はフラグメント上のαアミノ基を保護し、その後このαアミノ保護基を選択的に除去し、その部位でその後の反応が起こるようにさせることもまた、通常一般的である。固相合成法に関連した特異的保護基が開示されているが、各々のアミノ酸は、液相合成においてそれぞれのアミノ酸に常套的に使用される保護基によって保護することができるということに留意すべきである。
【0049】
芳香族ウレタン型保護基、例えばアリルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル(Z)および置換ベンジルオキシカルボニル、例えばp−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)およびp−メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz);脂肪族ウレタン型保護基、例えばt−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、およびアリルオキシカルボニルから選ばれる適当な保護基によってαアミノ基を保護できる。本発明においてFmocがαアミノ保護に最も好ましい。
【0050】
グアニジノ基は、ニトロ、p−トルエンスルホニル(Tos)、(Z,)2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc);4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)から選ばれる適当な保護基によって保護できる。PmcおよびMtrがアルギニン(Arg)のために最も好ましい。
【0051】
ε−アミノ基は、2−クロロ−ベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモ−ベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)−およびBocから選ばれる適当な保護基によって保護できる。Bocが(Lys)のために最も好ましい。
【0052】
ヒドロキシ基(OH)は、ベンジル(Bzl)、2,6ジクロロベンジル(2,6−ジCl−Bzl)、およびtert−ブチル(t−Bu)から選ばれる適当な保護基によって保護できる。tBuが(Tyr)、(Ser)および(Thr)のために最も好ましい。
【0053】
β−およびγ−アミド基は、4−メチルトリチル(Mtt)、2,4,6−トリメトキシベンジル(Tmob)、4,4−ジメトキシジチル/ビス−(4−メトキシフェニル)−メチル(Dod)およびトリチル(Trt)から選ばれる適当な保護基によって保護できる。Trtが(Asn)および(Gln)のために最も好ましい。
【0054】
インドール基は、ホルミル(For)、メシチル−2−スルホニル(Mts)およびBocから選ばれる適当な保護基によって保護できる。Bocが(Trp)のために最も好ましい。
【0055】
β−およびγ−カルボキシ基は、t−ブチル(tBu)、および2−フェニルイソプロピルエステル(2Pip)から選ばれる適当な保護基によって保護できる。tBuが(Glu)のために最も好ましく、2Pipが(Asp)のために最も好ましい。
【0056】
イミダゾール基は、ベンジル(Bzl)、Boc、およびトリチル(Trt)から選ばれる適当な保護基によって保護できる。Trtが(His)のために最も好ましい。
【0057】
全ての溶媒、イソプロパノール(iPrOH)、塩化メチレン(CHCl)、DMFおよびNMPは、Fisher、JT Baker又はBurdick & Jacksonから購入し、さらなる蒸留をせずに使用した。TFAはHalocarbon、Aldrich又はFlukaから購入し、さらなる精製をせずに使用した。
【0058】
DICおよびDIPEAは、Fluka又はAldrichから購入し、さらなる精製をせずに使用した。HOBT、ジメチルスルフィド(DMS)および1,2−エタンジチオール(EDT)は、Aldrich、Sigma Chemical Co. 又はAnaspecから購入し、さらなる精製をせずに使用した。保護アミノ酸は一般にL配置であり、Bachem、Advanced ChemTech、CEM又はNeosystemから商業的に取得した。これらの試薬の純度は、薄層クロマトグラフィー、NMRおよび融点により、使用前に確認した。ベンズヒドリルアミン樹脂(BHA)は、Bachem、Anaspec又はAdvanced Chemtechから取得したスチレン−1%ジビニルベンゼンのコポリマー(100−200又は200−400メッシュ)であった。これらの樹脂の総窒素含有量は一般に0.3〜1.2meq/gであった。
【0059】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、Constametric IおよびIIIポンプ、Gradient Master溶媒プログラマーおよびミキサー、ならびにSpectromonitor III可変波長UV検出器より成るLDC装置で実施した。分析用HPLCは、Pursuit C18カラム(4.5x50mm)を用いて逆相モードで実施した。分取HPLC分離はPursuitカラム(50x250mm)でランした。
【0060】
好ましい態様では、ペプチドを、Merrifield(J. Amer. Chem. Soc. 85:2149(1963))に一般的に記載された方法により、固相合成を用いて製造したが、前述のように、当分野において既知の他の同等の化学合成も使用できた。固相合成は、保護αアミノ酸を適当な樹脂にカップリングさせることにより、当該ペプチドのC末端から開始する。このような出発材料は、p−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂にαアミノ保護アミノ酸をエステル結合で結合させることにより製造でき、或いはFmocリンカー、例えばp−((R,S)−α−(1−(9H−フルオレン−9−イル)−メトキシホルムアミド)−2,4−ジメチルオキシベンジル)フェノキシ酢酸(Rinkリンカー)とベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂の間のアミド結合によって製造できる。ヒドロキシメチル樹脂の製造は当分野で周知である。Fmoc−リンカー−BHA樹脂支持体は市販されており、一般に、合成される所望ペプチドがC末端に非置換アミドを有する場合に使用される。
【0061】
典型的には、アミノ酸又は類似物を、1−5当量のアミノ酸および適当なカップリング試薬を用いて、アミノ酸又は類似物のFmoc保護型を使用してFmoc−リンカー−BHA樹脂上にカップリングさせる。カップリングの後、樹脂を洗浄し、減圧乾燥する。樹脂へのアミノ酸のロードは、Fmoc−アミノ酸樹脂のアリコートのアミノ酸分析によって、又はUV分析によるFmoc基の測定によって測定できる。未反応アミノ基があればそれは、樹脂を、塩化メチレン又はDMF中の無水酢酸およびジイソプロピルエチルアミンで処理することによりキャッピングできる。
【0062】
樹脂を、数回の連続サイクルに付して連続的にアミノ酸を付加する。αアミノFmoc保護基を塩基性条件下に除去する。この目的にはDMF中のピペリジン、ピペラジン又はモルホリン(20−40%v/v)を使用できる。好ましくはDMF中40%ピペリジンを典型的に使用する。
【0063】
αアミノ保護基を除去した後、次の保護アミノ酸を所望の順序で段階的にカップリングさせて、中間体、保護ペプチド−樹脂を得る。ペプチドの固相合成においてアミノ酸のカップリングに使用される活性化試薬は当分野で周知である。例えば、このような合成のための適切な試薬は、BOP、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスファート(PyBroP)、HBTUおよびDICである。ここで好ましいのはHBTUおよびDICである。BaranyおよびMerrifield(The Peptides, Vol.2, Meienhofer(ed.), Academic Press, 1979, pp1-284)により記載されているその他の活性化剤も利用できる。合成サイクルを最適化するため、HOBT、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)および3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOOBT)などの種々の試薬をカップリング混合物に添加できる。ここで好ましいのはHOBTである。
【0064】
典型的な合成サイクルのプロトコルは以下の通りである:
【0065】
【表1】

【0066】
全ての洗浄およびカップリング用溶媒は10−20ml/g(樹脂)の体積であった。合成全体のカップリング反応は、完結の程度を測定するためカイザーニンヒドリン試験により監視した[Kaiser et al., Anal. Biochem. 34:595-598(1970)]。不完全なカップリング反応を、新たに調製した活性化アミノ酸を用いて再カップリングするか、又はペプチド樹脂を前記のように無水酢酸で処理することによりキャッピングした。完全に組み立てられたペプチド−樹脂を数時間減圧乾燥した。
【0067】
ペプチド合成は、Applied Biosystem 433A合成機(Foster City, CA)を用いて実施でき、FastMoc 0.25mmoleサイクルを、樹脂サンプリング又は非樹脂サンプリング、41mL反応容器と共に使用した。Fmoc−アミノ酸樹脂を、2.1g NMP、DMF中の2gの0.45M HOBT/HBTU、および2M DIEAを用いて溶解し、次いで反応容器に移した。基本的なFastMocカップリングサイクルはモジュール「BADEIFD」で表され、ここでは各々の文字がモジュールを表す。例えば、Bは、20%ピペリジン/NMPを用いるFmoc脱保護、および関連洗浄、および30分間の読み取り(UV監視又は伝導度のいずれか)のモジュールを表し;Aは、0.45M HBTU/HOBtおよび2.0M DIEAを伴うカートリッジ中でのアミノ酸の活性化、ならびにN2通気を伴う混合のモジュールを表し;Dは、反応容器中での樹脂のNMP洗浄のモジュールを表し;Eは、カップリング用反応容器への活性化アミノ酸の移動のモジュールを表し;Iは、反応容器を断続的に撹拌しながら10分間の待機時間のモジュールを表し;そしてFは、カートリッジを綺麗にし、およそ10分間カップリングし、そして反応容器の水分を捨てるモジュールを表す。カップリングは典型的にはモジュール「I」を1回又は複数回追加することにより延長した。例えば、手順「BADEIIADEIFD」を行うことにより二重カップリングを実施した。塩化メチレン洗浄のc、および無水酢酸によるキャッピングの「C」といったような他のモジュールも使用した。個々のモジュールは、例えば移動させる溶媒又は試薬の量を変えるため、移動時間のような様々な機能のタイミングを変化させることによっても修飾可能であった。上のサイクルを、典型的には1個のアミノ酸のカップリングに使用した。しかしながらテトラペプチドの合成には、このサイクルを反復し、ひと続きとした。例えば、第一のアミノ酸のカップリングにBADEIIADEIFDを使用し、続いて第二のアミノ酸のカップリングにBADEIIADEIFDを、次に第三のアミノ酸のカップリングにBADEIIADEIFDを、次に第四のアミノ酸のカップリングにBADEIIADEIFDを、そして最後の脱保護および洗浄にBIDDccを使用した。
【0068】
ペプチド合成は、マイクロ波ペプチド合成機、Liverty(CEM Corporation, Matthews, NC)を用いて実施できる。この合成機を、プレロードされた0.25mmolサイクルを改変することにより二重カップリングおよびキャッピング用にプログラムした。Fmoc脱保護、アミノ酸カップリング、および無水酢酸によるキャッピングの間に使用するため、マイクロ波エディターを使用してマイクロ波出力方法をプログラムした。このタイプのマイクロ波制御は、反応が設定された温度で設定された時間行われるよう制御する方法を創成することを可能にする。Livertyは、反応へと送られる出力の量を自動調節して、設定点における温度を保持する。アミノ酸付加および最終的脱保護のためのデフォルトサイクルをサイクルエディターで選択し、ペプチドを創成する間に自動的にロードした。
【0069】
合成を、Fmoc−リンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を用いて0.25mmolスケールで実施した。DMF10mLを入れた30mL反応容器に樹脂を加えた。Fmoc脱保護はDMF溶液中20%ピペリジンで行った。各々のアミノ酸カップリングのために、Fmoc保護アミノ酸をDMFに溶解して0.2M溶液を作製し、反応容器に添加した。全てのカップリング反応を0.5M HOBT/HBTUおよび2M DIEA/NMPで実施した。不完全なカップリング反応があれば、新たに調製した活性化アミノ酸で再カップリングするか、又はペプチド樹脂をDMF中の25%無水酢酸で処理することによりキャッピングした。各々の脱保護、カップリングおよびキャッピング反応は、50ワットの出力、70℃で300秒間のマイクロ波および窒素通気を用いて行った。
【0070】
各々のアミノ酸カップリングには、以下の0.25mmolカップリングサイクルを使用した:
【0071】
【表2】

【0072】
本明細書に記載の化合物の合成のため、好ましい合成手順をスキーム1に示す。
【化4】

【0073】
Fmoc−Rink−MBHA樹脂1をピペリジン/DMFで処理し、次いでDIC、BOP又はHBTUなどの試薬を用いてFmoc−AA(P)31とカップリングさせる[ここで、AA31は31番目のアミノ酸残基を表し、Pは適当な保護基を表す]と、Fmoc−AA(P)31−Rink−樹脂2が生成する。各サイクルにおいて適当な保護アミノ酸を加えることにより工程1および2を30サイクル反復すると、ペプチド樹脂3が生成する。AA25およびAA21上の側鎖保護基を、それぞれCHCl中の2%TFAおよびPdCl/nBuSnHで処理することにより除去する。AA21およびAA25の側鎖アミンおよびカルボキシをDMF中のBOPおよびNMMで処理することにより環化すると4が生成する。
【0074】
各化合物について保護基を除去し、同じ工程でペプチドを樹脂から開裂させる。例えば、ペプチド−樹脂を、RTで、樹脂1gあたりエタンジチオール100μL、ジメチルスルフィド100μL、アニソール300μL、およびTFA 9.5mLで180分間処理できる。或いは、ペプチド−樹脂を、RTで、樹脂1gあたりトリイソプロピルシラン1.0mLおよびTFA9.5mLで180分間処理することもできる。樹脂を濾去し、濾液を冷エチルエーテル中で沈殿させる。沈殿を遠心し、エーテル層をデカンテーションする。残留物を2又は3体積のEtOで洗浄し、再度遠心する。粗生成物5を減圧乾燥する。
【0075】
粗製ペプチドの精製を、逆相Pursuit C-18カラム(50x250mm、300Å、10μm)上の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりShimadzu LC-8A系で実施する。ペプチドを最少量の水およびアセトニトリルに溶解し、カラムに注入する。勾配溶離を一般に、2% B緩衝液、2%−70% Bで70分間(緩衝液A:0.1%TFA/HO、緩衝液B:0.1%TFA/CHCN)、流速50ml/分で開始する。UV検出を220/280nmで行う。生成物を含有する画分を分離し、それらの純度を、逆相Pursuit C-18カラム(4.6x50mm)を使用し流速2.5ml/分、10分間の勾配(2−70%)のShimadzu LC-10AT分析系で判断する。[緩衝液A:0.1%TFA/HO、緩衝液B:0.1%TFA/CHCN]。充分な純度を持つと判断された画分をプールし凍結乾燥する。
【0076】
最終生成物の純度を、上に述べたように逆相カラムの分析用HPLCにより確認する。全ての最終生成物をさらに、高速原子衝突質量分析(FAB−MS)又はエレクトロスプレー質量分析(ES−MS)にかける。実施例において、全ての生成物が、許容限界内の予想親M+Hイオンを生成した。
【0077】
本発明に記載したVIPの類似体は、実施例25で立証されるようにVPAC2レセプターのアゴニストである。実施例25のエラスターゼ安定性実験によれば、このような化合物はヒト好中球エラスターゼに対して増強された安定性を有する。故に、これらVPAC2レセプターアゴニストの投与は、COPDのような気道疾患の治療に有用性を持つであろう。
【0078】
本発明化合物は薬学的に許容される塩の形態で提供できる。好ましい塩の例は、薬学的に許容される有機酸、例えば酢酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、又はパモ酸、ならびにポリマー酸、例えばタンニン酸又はカルボキシメチルセルロースによって形成される塩、ならびに、無機酸、例えばハロゲン化水素酸(例えば塩酸)、硫酸、又はリン酸などによって形成される塩である。当業者にとって既知の、薬学的に許容される塩を取得するための任意の方法が使用できる。
【0079】
本発明の方法の実施にあたり、本発明に係るペプチドのうち任意の一つ又は本発明に係る任意のペプチドの組み合わせ又はその薬学的に許容される塩の有効量を、単独でか又は組み合わせて、当分野で既知の通常の且つ許容される方法によって投与する。したがって当該化合物又は組成物は、経口(例えば口腔)、舌下、非経口(例えば、筋肉内、静脈内、又は皮下)、直腸内(例えば、坐剤又は洗浄液によって)、経皮(例えば皮膚エレクトロポレーション)又は吸入によって(例えばエアロゾルにより)、そして、錠剤および懸濁剤を包含する固体、液体又は気体剤型で投与できる。投与は、連続的治療による単位投薬形態で、又は単回投与治療で随意に行うことができる。治療用組成物は、パモ酸のような親油性塩と併せて油性乳剤もしくは分散剤の形態とすることも、又は皮下もしくは筋肉内投与用の生分解性持続放出組成物の形態とすることもできる。
【0080】
したがって本発明の方法は、症状の軽減が特に必要、又はことによるとそれが差し迫っている時に実施する。或いは、本発明の方法は、持続的又は予防的処置として有効に実施される。
【0081】
本発明組成物の製造のために有用な薬学的担体は、固体、液体又は気体であってよく、したがって本組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、散剤、腸溶被覆もしくはその他の保護された調合物(例えば、イオン交換樹脂上に結合、又は脂質−蛋白ベシクル中にパッケージング)、持続放出調合物、液剤、懸濁剤、エリキシル、エアロゾルなどの形態をとることができる。担体は、石油、動物、植物もしくは合成起源の油を包含する種々の油、例えば落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油などから選択できる。水、生理食塩水、水性デキストロース、およびグリコールが、特に(血液と等張である場合に)注射用液剤のために好ましい液体担体である。例えば、静脈内投与のための製剤は、活性成分(群)の無菌水溶液を含み、これは、固体活性成分(群)を水に溶解して水溶液を作製し、この溶液を無菌とすることによって製造する。好適な薬学的賦形剤には、澱粉、セルロース、タルク、グルコース、乳糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどがある。この組成物は、常套的な薬学的添加物、例えば保存剤、安定剤、湿潤又は乳化剤、浸透圧を調節するための塩類、緩衝剤などの影響を受ける。好適な薬学的担体およびそれらの製剤は、E. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。いずれにせよこのような組成物は、有効量の活性化合物を適当な担体と共に含有し、レシピエントへの適切な投与のための適正な投与型に調製される。
【0082】
本発明化合物の用量は、幾つかの因子、例えば投与方法、対象の年齢および体重、および治療される対象の状態に依存し、最終的には担当している医師又は獣医師によって決定される。担当している医師又は獣医師により決定されるこのような活性化合物の量を、本明細書および請求項では「有効量」と称する。例えば、吸入投与の用量は、典型的には約0.5〜約100μg/kg(体重)の範囲である。好ましくは、本発明化合物は、約1μg/kg〜約50μg/kg/日の用量率で投与する。
【0083】
代表的なデリバリーレジメンには、経口、非経口(皮下、筋肉内および静脈内を包含する)、直腸内、バッカル(舌下を包含する)、経皮、肺内および鼻内がある。好ましい投与経路は経口吸入による肺内投与である。肺内投与の方法は、本発明に係る環状ペプチドの水溶液のエアロゾル化、又は、微粉化した乾燥粉末製剤の吸息を包含する。エアロゾル化組成物は、逆ミセル又はリポソーム中に内包された該化合物を包含し得る。有効な肺胞デリバリーを提供するために適切に粒子径を制御した微粉化粉末の製造は周知である。このような製剤の特定用量を直接肺内にデリバリーするための吸入器(定量吸入器又は「MDI」)は当分野で周知である。
【0084】
したがって、本発明はさらに、このようなアゴニストを含有する医薬組成物、およびCOPDを包含する肺疾患の治療のための、係るアゴニストの使用を包含する。
【0085】
或る態様では、本発明は、式Iの化合物および少なくとも一つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を溶液又は微粉化乾燥粉末形態中に含む、吸入投与用医薬組成物を提供し、ここでこの化合物は、前記組成物の肺内デリバリーのための薬理学的に有効な濃度で存在する。別の態様では、本発明は、式Iの化合物および少なくとも一つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を溶液又は微粉化乾燥粉末形態中に含む、吸入投与用医薬組成物を提供し、ここでこの化合物の濃度は、1回の吸入用量において該化合物を約1μg/kg〜約50μg/kgデリバリーするに充分である。
【0086】
或る態様では、本発明は、式Iの化合物および少なくとも一つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を溶液又は微粉化乾燥粉末形態中に含む、吸入投与用医薬組成物の有効量、例えば約1μg/kg/日〜約50μg/kg/日を、吸入によって投与することを含む、肺閉塞性疾患、例えばCOPDを治療する方法を提供し、ここでこの化合物は、例えばそのような疾患に罹患している人間に、該組成物を肺内デリバリーするための薬理学的に有効な濃度で存在する。
【0087】
ここで本発明を以下の実施例においてさらに記載するが、それらは例示のみを意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0088】
実施例
実施例1:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Thr−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号3)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがThrであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0089】
【化5】

【0090】
上のペプチドを、Applied Biosystem 433A又はマイクロ波ペプチド合成機でFmoc化学を使用して合成した。この合成機を、上記プロトコル1又は2に記載のモジュールを使用して二重カップリング用にプログラムした。この合成は、Fmoc−Rinkリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を使用し0.25mmolスケールで実施した。合成終了時に、樹脂を振盪機上の反応容器に移した。DMF中のペプチド樹脂を濾過し、CHClで洗浄した。この樹脂を、CHCl中の2%TFAで3分間ずつ5回処理した。直ちに樹脂を5%DIPEA/CHClで2回処理し、CHClおよびDMFで洗浄した。ペプチド樹脂を、ゴムの隔壁をしっかりと取り付けた振盪容器に入れたDMFに懸濁した。ここにPdCl(PhP)60mg、モルホリン150μlおよびAcOH300μlを加えた。この容器をArでよくパージした。次にnBuSnHをシリンジで添加した。この黒色溶液を30−45分間振盪し、DMFで洗浄し、反復した。2度目のPd処理の後、樹脂を、DMF、2xiPrOH、DMF、5%DIPEA/DMFおよびDMFで洗浄した。DMF中でBOPおよびNMMで一夜処理することによりペプチド樹脂を環化した。樹脂をDMFおよびCHClで洗浄し、次いで減圧乾燥した。
【0091】
97%TFA/3%HO 13.5mLおよびトリイソプロピルシラン1.5mLをRTで180分間使用してペプチドを樹脂から開裂させた。脱保護溶液を冷EtO 100mLに加え、TFA1mLおよび冷EtO 30mLで洗浄してペプチドを沈殿させた。このペプチドを、2本の50mLポリプロピレン管に入れて遠心した。個々の管からの沈殿を1本の管に合し、冷EtOで3回洗浄し、ハウスバキューム下にデシケーター中で乾燥した。
【0092】
粗生成物をPursuit C18カラム(250x50mm、10μm粒子径)上の調製用HPLCにより精製し、2−70%Bの直線勾配(緩衝液A:0.1%TFA/HO;緩衝液B:0.1%TFA/CHCN)で90分間、流速60mL/分で溶出し、220/280nmで検出した。画分を集め、分析用HPLCで確認した。純粋な生成物を含有する画分を合し、白色のアモルファス粉末106mg(9.7%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1592564647としての理論値(calcd)3565.05、実測値3563.7。
【0093】
実施例2:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号4)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0094】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末28mg(2.5%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1582544647としての理論値3551.02、実測値3548.7。
【0095】
実施例3:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Asp−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号5)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがAspであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0096】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末9.2mg(1%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1592544648としての理論値3579.03、実測値3577.8。
【0097】
実施例4:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Gln−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号6)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがGlnであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0098】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末9.8mg(1%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1602574747としての理論値3592.07、実測値3589.5。
【0099】
実施例5:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Pro−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号7)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがProであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0100】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末15.2mg(1.4%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1602564646としての理論値3561.06、実測値3560.0。
【0101】
実施例6:Ac−His−Ser−Asp−Ala−MeVal−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号8)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがMeValであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0102】
【化6】

【0103】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末40mg(3.6%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1612604646としての理論値3577.10、実測値3576.8。
【0104】
実施例7:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Glu−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号9)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がGlnであり、R18がGluであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0105】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末126mg(11.4%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1602564649としての理論値3609.06、実測値3609.2。
【0106】
実施例8:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Leu−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号10)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLeuであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0107】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末77mg(7.3%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1582534547としての理論値3536.00、実測値3534.95。
【0108】
実施例9:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Lys−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号11)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がGlnであり、R18がLysであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0109】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末79mg(7.5%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1612614747としての理論値3608.11、実測値3607.6。
【0110】
実施例10:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Ala−Nle−Glu−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号12)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がAlaであり、R18がGluであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0111】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末65mg(6%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1582534548としての理論値3552.00、実測値3551.2。
【0112】
実施例11:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Leu−Asn−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号13)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLeuであり、そしてR28がAsnである、式Iの化合物の製造。
【0113】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末109mg(10.6%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1562474548としての理論値3521.93、実測値3520.5。
【0114】
実施例12:Ac−His−Ala−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号14)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがAlaであり、RがSerであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0115】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末20mg(1.8%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1582544646としての理論値3535.02、実測値3533.4。
【0116】
実施例13:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Arg−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号15)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がArgであり、R18がAlaであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0117】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末60mg(5.3%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1592584846としての理論値3579.08、実測値3577.8。
【0118】
実施例14:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Arg−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Leu−Asn−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号16)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がArgであり、R18がAlaであり、R27がLeuであり、そしてR28がAsnである、式Iの化合物の製造。
【0119】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末40mg(3.7%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1572514747としての理論値3549.99、実測値3549.2。
【0120】
実施例15:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Arg−Nle−Glu−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号17)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がArgであり、R18がGluであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0121】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末36mg(3.6%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1612604848としての理論値3637.11、実測値3636.4。
【0122】
実施例16:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Arg−Nle−Lys−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号18)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がArgであり、R18がLysであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0123】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末51mg(4.4%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1622654946としての理論値3636.17、実測値3634.8。
【0124】
実施例17:Ac−His−Ala−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Arg−Nle−Glu−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号19)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがAlaであり、RがSerであり、R16がArgであり、R18がGluであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0125】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末27mg(2.7%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1612604847としての理論値3621.11、実測値3620.4。
【0126】
実施例18:Ac−His−Ala−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Arg−Nle−Lys−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号20)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがAlaであり、RがSerであり、R16がArgであり、R18がLysであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0127】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末53.5mg(4.6%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1622654945としての理論値3620.17、実測値3618.8。
【0128】
実施例19:Ac−His−Ser−Asp−Ala−Ser−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Arg−Nle−Glu−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Leu−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号21)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがSerであり、R16がArgであり、R18がGluであり、R27がLeuであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0129】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末33mg(3.3%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1612594748としての理論値3622.10、実測値3620.8。
【0130】
実施例20:Ac−His−Ser−Asp−Ala−MeVal−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Leu−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号22)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがMeValであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLeuであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0131】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末55mg(5.2%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1612594546としての理論値3562.09、実測値3561.09。
【0132】
実施例21:Ac−His−Ala−Asp−Ala−MeVal−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号23)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがAlaであり、RがMeValであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0133】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末49mg(4.5%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1612604645としての理論値3561.10、実測値3560.0。
【0134】
実施例22:Ac−His−Ser−Asp−Ala−MeVal−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Arg−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号24)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがSerであり、RがMeValであり、R16がArgであり、R18がAlaであり、R27がLysであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0135】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末13.8mg(1.2%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1622644845としての理論値3605.16、実測値3604.0。
【0136】
実施例23:Ac−His−Ala−Asp−Ala−MeVal−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Leu−Lys−Gly−Gly−Thr−NH[Ac−(配列番号25)−NH]、即ち、XがAcであり、YがNHであり、RがAlaであり、RがMeValであり、R16がGlnであり、R18がAlaであり、R27がLeuであり、そしてR28がLysである、式Iの化合物の製造。
【0137】
Fmoc−Rink−Linker−BHA樹脂(450mg、0.25mmol)を実施例1の手順に従って固相合成および精製に付し、白色アモルファス粉末30.2mg(2.8%)を得た。(ES)+−LCMS m/e、C1612594745としての理論値3546.09、実測値3544.8。
【0138】
実施例24:Sup−T1 cAMPアゴニストアッセイ
VPAC2レセプターを発現するヒトTリンパ球系セルラインSup−T1をAmerican Type Culture Collection(ATCC、CRL−1942)から入手し、37℃のCOインキュベーター中の増殖培地に0.2〜2x10細胞/mLの間の密度で維持した。増殖培地は、25mM HEPES緩衝液および10%牛胎児血清(Gemini Bioproducts)を補充したRPMI 1640(Invitrogen)であった。
【0139】
VPAC2アゴニスト化合物の活性を評価するため、対数増殖期の細胞をRTにおいて増殖培地で1回洗浄し、増殖培地150μL中に、ウェルあたり4x10細胞の密度で96ウェルプレートに撒いた。次に、増殖培地中に適当な濃度に調製した被験化合物50μLを、指定されたウェルに添加した。RTで5分後、各ウェルに溶解試薬1A(cAMP Biotrak EIA system, Amersham Biosciences, RPN225)25μLを加えることにより、細胞を溶解した。この96ウェルプレートを振盪しつつRTで10分間保持し、次いでcAMPを分析するまで4℃で保存した(2時間以内)。サイクリックAMPレベルを、各溶解液100μL中で、cAMP Biotrak Enzymeイムノアッセイ(EIA)キットを使用し、製造者(Amersham Biosciences, RPN225)の指示に従って測定した。GraphPad Prismプログラム(GraphPad Software, Inc.)により提供されたシグモイド用量反応式に7濃度の用量反応データを当てはめることにより、各々のVPAC2アゴニスト化合物の活性(EC50値)を評価した。
【0140】
【表3】

【0141】
実施例25:好中球エラスターゼに対するペプチドの安定性
ペプチド類似体の蛋白分解安定性を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP HPLC)エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI MS)で評価した。ペプチド類似体をヒト好中球エラスターゼと共にインキュベートし、未消化類似体の量を適当な時点でESI MSにより測定した。HPLC保持時間および/又は分子量で区別できる限り、複数のペプチド類似体を一つの実験に含めることができた。Ac−His Ac−His−Ser−Asp−Ala−Val−Phe−Thr−Glu−Asn−Tyr−Thr−Lys−Leu−Arg−Lys−Gln−Nle−Ala−Ala−Lys−Lys−Tyr−Leu−Asn−Asp−Leu−Lys−Lys−Gly−Gly−Thr−NHを全実験において対照およびリファレンス標準として使用した。リファレンス標準と共に複数のペプチド類似体を同時使用することで、複数の実験にわたる酵素の蛋白分解忠実度における変動が補償可能となる。個々の未消化ペプチドについて得られた統合イオン電流を定量に使用した。半減期の算出のため、一次速度論的挙動であると仮定し、全ての計算をリファレンス標準の半減期に対して正規化した。
【0142】
ペプチド保存溶液を、水で2.5mg/mLの濃度に作製した。使用していない時は全ての保存溶液を−20℃に維持した。作製した保存溶液中の相対的ペプチド含有量を測定するため、アリコートで逆相HPLCを行い、観測されたUV吸収をリファレンス標準由来の同等のアリコートと比較した。それに従ってペプチド類似体の濃度を調節した。蛋白分解的消化を行うため、ペプチドを0.1mg/mL濃度となるようにリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)に溶解した。6つの異なるペプチド類似体を一つの50μL反応体積中に混合した。リファレンス標準を全ての実験にリファレンスおよび内部標準として加えた。エラスターゼ保存溶液からエラスターゼ(Human Neutrophil, Calbiochem, Cat#324681)を1〜2μg/mL濃度となるように加えた。ペプチド類似体の蛋白分解安定性の相違を補償するため、異なる量の酵素を選択した。前もって濃度1mg/mLのエラスターゼ保存溶液を水で作製した。融解および凍結サイクルの回数を制限することにより酵素活性をより良好に維持するため、酵素保存溶液の小アリコートを−20℃に維持した。HPLC系(Agilent 1100 Series)のオートサンプラー内のオートサンプラー管中で、消化を周囲温度で実施した。経時変化を知るため、5μLアリコートを逆相HPLCカラム(Phenomenex, Luna C18、3μ、100Å、150x2.00mm)に70分間隔で注入した。開始時点のためには、蛋白分解酵素の添加直前にアリコートを注入した。一つの実験で、開始点を含めて合計8個の時点で記録ができた。5%〜30%有機相の50分間勾配を用いた逆相カラムでペプチドを分離した。水相は、水中0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸であり、有機相はアセトニトリル中0.045%(v/v)トリフルオロ酢酸であった。それぞれ214および280nmで吸光度を記録した。全てのカラム流出液をエレクトロスプレーイオン化質量分析計(ABI 4000 QTrap LC/MS/MS System)のターボVソース中に導入した。非分解ペプチド類似体の三重荷電イオンを全て含んだ質量範囲で、質量スペクトルをQ3MSモードで取得した。クロマトグラフィーの保持時間又は分子量の相違のいずれかによってペプチド類似体が明瞭に区別できることを保証するよう留意した。各々の未消化ペプチド類似体の相対量を、統合された総イオン電流から算出した。2.5Daのウィンドウを選択し、製造者のソフトウェアを使用して個々のイオン電流を統合した。一次速度論的挙動をとると仮定することにより、個々のペプチド類似体の全ての半減期を算出し、リファレンス標準の半減期に関して正規化した。
【0143】
【表4】

【0144】
実施例26:雄性C57BL/6マウスにおけるLPS誘発性肺炎症に及ぼす化合物の効果。
エアロゾルLPS:リポ多糖(LPS、滅菌生理食塩水中500μg/mL)のエアロゾルに15〜30分間暴露する前にC57bl/6マウスを媒質又は薬物で前処置する。このエアロゾルは、Pari Ultraジェット噴霧器によって発生させ、その出口を動物を入れた小さな透明プラスチック箱[HxWxD、10.7x25.7x11cm(4x10x4.5インチ)]に接続する。24時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行って細胞の炎症強度を測定する。BAL手順は下記のように実施する。
【0145】
LPSの鼻腔内投与:リポ多糖の鼻腔内投与(滅菌生理食塩水中0.05〜0.3mg/kg;総体積50μL、25μL/鼻孔)の前に、マウスを媒質又は薬物で前処置する。鼻腔内投与は、25〜50μLエッペンドルフピペットを用いて投与溶液の小滴を鼻孔に投与することにより行う。BALを前記のようにLPSチャレンジの3〜24時間後に実施して、細胞の炎症強度を測定する。
【0146】
気管支肺胞洗浄:LPS暴露の24時間後、ペントバルビタール(80〜100mg/kg、i.p.)、ケタミン/キシザリン(80〜120mg/kg/2〜4mg/kg、i.p.)又はウレタン(1.5〜2.4g/kg、i.p.)で動物を麻酔し、小さな頸部正中切開(15〜20mm)によって気管を露出させ、20ゲージのチューブアダプターを用いてカニューレを挿入する。Ca++およびMg++を含まない滅菌ハンクス均衡塩類溶液(HBSS)2x1mLで肺を洗浄する。30秒後、穏やかな吸引により洗浄液を回収し、各動物についてプールする。次に試料を5℃、2000rpmで10分間遠心する。上清を吸引し、得られたペレット由来の赤血球細胞を蒸留水0.5mLで30秒間溶解し、その後、残存細胞に対する浸透圧をHBSS 5mLの添加によって保持する。試料を5℃、2000rpmで10分間再遠心し、上清を吸引する。得られたペレットをHBSS 1mLに再懸濁する。血球計又はコールターカウンターを使用し、細胞懸濁液のアリコートから、トリパンブルー(Sigma Chemical, St. Louis, MO)エクスクルージョンによって総細胞数を測定する。分画細胞のカウントのため、細胞懸濁液のアリコートをCytospinで遠心し(5分間、1300rpm;Shandon Southern Instruments, Sewickley, PA)、スライドを改良ライト染色(Hema 3 染色キット、Fisher Scientific)で固定および染色する。標準的形態学基準を用いて、光学顕微鏡の下で少なくとも300の細胞を分類する。表3のデータは、好中球および総細胞についてBAL細胞x10/動物、又はLPSで誘発されたBAL液好中球増加反応の阻害パーセントとして表されている。
【0147】
【表5】

【0148】
実施例27:マウスにおけるメタコリン誘発性気管支攣縮に及ぼす化合物の効果
BUXCO Electronics, Inc(Troy, NY)社製全身プレチスモグラフ(WBP)を使用して、自由に動ける覚醒マウスで呼吸機能を測定する。WBP室では、呼吸機能を測定する間、動物は室内を自由に動くことができる。8室を同時に使用し、8匹のマウスを同時に測定できる。各々のWBP室をバイアスフローレギュレータに接続し、試験の間、円滑で一定の新鮮な空気の流れを供給する。各室に取り付けたトランスデューサーが、動物が呼吸する際に起こる圧力変化を検出する。圧力の信号をMAX IIひずみゲージプリアンプで増幅し、当該システム(BUXCO Electronics, Inc.)と共に供給されるBiosystem XAソフトウェアで分析する。各室内部の圧力変化は、試験前に注入口から正確に1mLの空気を注入し、コンピューターシグナルを適宜調節することにより、較正する。マウスをWBP室に入れ、試験前に10分間順応させる。試験は、動物を15分間自由に運動および呼吸させつつ以下のパラメータを測定することによって遂行する:1回換気量(mL)、呼吸速度(1分あたりの呼吸)、分時拍出量(呼吸速度を乗じた1回拍出量、mL/分)、吸気時間(秒)、呼気時間(秒)、ピーク吸気流(mL/秒)、およびピーク呼気流(mL/秒)。上に列挙した各パラメータのための生データをソフトウェアのデータベースに捕捉し、1分間に1回平均して、パラメータ毎に合計15のデータ点を求める。この15のデータ点の平均を報告する。累積体積(mL)は累積した体積(平均していない)であり、15分間の試験セッションについての1回換気量を全て合計したものを表す。
【0149】
スパスモーゲンチャレンジの前、最中、および後の測定値を含めてこのプロトコルをカスタマイズし、Penhを決定する。ネブライザーでエアロゾルをおよそ5〜10分の間隔で投与(30〜60秒間の暴露)することにより、特定のスパスモーゲン(即ち、メタコリン(MCh)、アセチルコリンなど)の用量反応効果を得る。
【0150】
マウス(balb/c)は、スパスモーゲンチャレンジの前に、上記のように、媒質(HO中2%DMSO)又は媒質4mLに溶解した薬物を用いてエアロゾルにより20分間処置する。チャレンジの5、30および60分後にPenhを測定する。データは媒質と比較したPenhの阻害パーセントとして報告する。
【0151】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化7】


[式中、
Xは、ヒスチジンのN末端アミノの水素であって、これは、場合により、加水分解可能なアミノ保護基、最も好ましくはアセチル基に置き換えられていてもよく、
Yは、スレオニンのC末端カルボキシのヒドロキシであって、これは、場合により、加水分解可能なカルボキシ保護基、最も好ましくはNHに置き換えられていてもよく、
下線を付した残基は、そのセグメント内の最初(Lys21)および最後(Asp25)のアミノ酸の側鎖−側鎖共有結合を示し、
は、Ser又はAlaであり、
は、Thr、Ser、Asp、Gln、Pro又はCαMeValであり、
16は、Gln、Ala、又はArgであり、
18は、Ala、Lys又はGluであり、
27は、Lys又はLeu(但し、RがCαMeValであり且つR16がArgである時、R27はLysでなければならない)であり、
28は、Lys又はAsnである]
で示される環状血管作動性腸管ペプチド類似体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がSer又はCαMeValである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
27がLysである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
【化8】


より成る群から選ばれる化合物。
【請求項5】
X−(配列番号8)−Yである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物および少なくとも一つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
肺閉塞性疾患を治療する方法であって、請求項1に記載の化合物および少なくとも一つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む組成物の有効量を吸入によって当該疾患に罹患しているヒトに投与することを含む方法。
【請求項8】
肺閉塞性疾患を処置するための医薬を製造するための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物の製造方法。
【請求項10】
本明細書前記の発明。

【公表番号】特表2009−542593(P2009−542593A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517165(P2009−517165)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056351
【国際公開番号】WO2008/003612
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】